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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20220511BHJP
   B29D 11/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G02B3/00 A
G02B3/00 Z
B29D11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019526946
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2018024241
(87)【国際公開番号】W WO2019004227
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017125298
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】福井 貞之
(72)【発明者】
【氏名】藤川 武
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-003541(JP,A)
【文献】特開2013-104931(JP,A)
【文献】特開2006-049419(JP,A)
【文献】特開2007-194469(JP,A)
【文献】特開2007-273743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
B29D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持テープ上に固定された、2個以上のレンズが2次元的に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状レンズを、前記接合部において下記方法で切断する工程を有するレンズの製造方法。
切断方法:支持テープに貼り合わせられた側とは反対側から前記接合部厚みの50%以上、99.9%以下の範囲まで切断深度を進行させた時点で、一旦、切断深度の進行を停止させ、その後、切断深度100%まで切断する
【請求項2】
アレイ状レンズの切断を、水冷しつつ行う、請求項1に記載のレンズの製造方法。
【請求項3】
アレイ状レンズは、レンズの接合部において支持テープに接着し、前記レンズの直径は1~5mmであり、前記接合部幅は1mm以下である、請求項1又は2に記載のレンズの製造方法。
【請求項4】
支持テープが3~20N/25mmの粘着力を有し、前記粘着力は紫外線照射又は加熱処理を施すことにより低下又は喪失する、請求項1~3の何れか1項に記載のレンズの製造方法。
【請求項5】
アレイ状レンズの切断を、高速回転するブレードを用いて行う、請求項1~4の何れか1項に記載のレンズの製造方法。
【請求項6】
硬化性組成物をモールドを用いて成型し、その後、硬化させて前記硬化性組成物の硬化物から成るアレイ状レンズを得、得られたアレイ状レンズを支持テープ上に固定して切断する、請求項1~5の何れか1項に記載のレンズの製造方法。
【請求項7】
アレイ状レンズの破断ひずみ(JIS-K7162:1994)が0.1~30%である、請求項1~6の何れか1項に記載のレンズの製造方法。
【請求項8】
レンズがマイクロレンズ、フレネルレンズ、マイクロレンズ若しくはフレネルレンズの複数個が接合部を介して結合した成型物、レンチキュラーレンズ、又はプリズムシートである、請求項1~7の何れか1項に記載のレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個以上のレンズが2次元的に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状レンズを、支持テープ上に固定した状態で接合部において切断して個片化レンズを製造する方法に関する。本願は、2017年6月27日に日本に出願した、特願2017-125298号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、スマートフォンをはじめとするモバイル電子機器においては、センサーやカメラ等の光学部品を搭載することにより製品価値を向上することが求められている。また、年々、小型化、薄型化が進み、使用される部品も、より小型でより薄型のものが求められている。
【0003】
そこで、小型で薄型のレンズの2個以上が2次元的に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状レンズを製造し、これをダイシングすることで小型で薄型のレンズを効率よく生産する方法が採用されている。しかし、ダイシングの際に生じる熱や静電気により切削屑がレンズに固着若しくは付着し易く、一度固着若しくは付着した切削屑は水洗などでは除去しにくいことから、切削屑により光学特性が低下することが問題となっている。
【0004】
特許文献1には、アレイ状レンズに除電処理と親水化処理を行い、その後、水洗しつつダイシングを行うことにより、ダイシングによって生じる切削屑がレンズに付着することを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-003541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、親水化処理を行うとレンズが吸水し易くなり、水洗時にレンズが吸水して膨張することによって、得られるレンズの形状の精度が低下し、光学特性も損なわれる場合がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、高精度且つ光学特性に優れるレンズを効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、支持テープ上に貼着することにより固定したレンズを、ブレード等を使用して一気に切断しようとすると、ブレード等が支持テープに達した際に有する推進力が非常に大きく、その推進力によって支持テープが、レンズから引き剥がされる方向に押されることによりレンズと支持テープとの間に隙間が生じ、隙間から切削屑が入り込んでレンズ表面に付着し易いが(図1-a)、レンズを一気に切断せず、わずかに切り残した状態で一旦切断作業を休止、若しくは切断深度の進行を留め、ブレード等が有する推進力を緩和した後に切断作業を再開して切り残し部分を切断すると、ブレード等が支持テープに達した際に有する推進力を極めて小さく抑制することができ、ブレード等が支持テープに達した際に支持テープとレンズとの間に隙間が生じるのを抑制することができること(図1-b)、それにより、切削屑が入り込んでレンズ表面に付着するのを抑制することができ、高い光学特性を有するレンズが得られること、レンズに親水化処理を行う必要がないため、水冷若しくは水洗した場合にも、吸水によるレンズの膨張を抑制することができること、を見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、支持テープ上に固定された、2個以上のレンズが2次元的に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状レンズを、前記接合部において下記方法で切断する工程を有するレンズの製造方法を提供する。
切断方法:支持テープに貼り合わせられた側とは反対側から前記接合部厚みの50%以上、99.9%以下の範囲まで切断深度を進行させた時点で、一旦、切断深度の進行を停止させ、その後、切断深度100%まで切断する
【0010】
本発明は、また、アレイ状レンズの切断を水冷しつつ行う前記のレンズの製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、アレイ状レンズは、レンズの接合部において支持テープに接着し、前記レンズの直径は1~5mmであり、前記接合部幅は1mm以下である前記のレンズの製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、また、支持テープが3~20N/25mmの粘着力を有し、前記粘着力は紫外線照射又は加熱処理を施すことにより低下又は喪失する前記のレンズの製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、また、アレイ状レンズの切断を、高速回転するブレードを用いて行う前記のレンズの製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、また、硬化性組成物をモールドを用いて成型し、その後、硬化させて前記硬化性組成物の硬化物から成るアレイ状レンズを得、得られたアレイ状レンズを支持テープ上に固定して切断する、前記のレンズの製造方法を提供する。
【0015】
本発明は、また、アレイ状レンズの破断ひずみ(JIS-K7162:1994)が0.1~30%である、前記のレンズの製造方法を提供する。
【0016】
本発明は、また、レンズがマイクロレンズ、フレネルレンズ、マイクロレンズ若しくはフレネルレンズの複数個が接合部を介して結合した成型物、レンチキュラーレンズ、又はプリズムシートである、前記のレンズの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では上記の方法でレンズを製造するため、ブレード等が支持テープに達した際に支持テープとレンズとの間に隙間が生じるのを抑制することができる。そのため、切削屑が入り込んでレンズ表面に付着するのを抑制することができ、高い光学特性を有するレンズが得られる。また、レンズに親水化処理を行う必要がないため、レンズの親水化処理による精度低下や光学特性の低下を抑制することができる。
従って、本発明によれば、小型で薄型の、光学特性に優れるレンズを精度よく、且つ効率よく製造することができる。
本発明のレンズの製造方法は、例えば、携帯電話、スマートフォンをはじめとするモバイル電子機器のセンサー用レンズやカメラ用レンズの製造方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】支持テープ上に貼着したレンズを一気に切断して浮きが生じた場合の模式図(a)と、支持テープ上に貼着したレンズを、一旦停止を挟んで段階的に切断して浮きが生じなかった場合の模式図(b)である。
図2】本発明のアレイ状レンズの一例を示す模式図(平面図(a)と、前記平面図(a)のA-A’の位置で切断した断面図(b))である。
図3】実施例における、支持テープ上に固定されたアレイ状マイクロレンズと、これを切断して得られた個片化物(マイクロレンズ)を示す模式図である(個片化物の平面図(a)と断面図(b))。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[レンズの製造方法]
本発明のレンズの製造方法は、支持テープ上に固定された、2個以上のレンズが2次元的に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状レンズを、前記接合部において下記方法で切断する工程(=切断工程)を有する。
切断方法:支持テープに貼り合わせられた側とは反対側から、前記接合部厚みの50%以上、99.9%以下の範囲まで切断深度を進行させた時点で、一旦、切断深度の進行を停止させ、その後、切断深度100%まで切断する
【0020】
(切断工程)
本発明における切断工程は、アレイ状レンズを接合部において切断し、個片化する工程であり、アレイ状レンズを、支持テープに貼り合わせられた側とは反対側から前記接合部厚みの50%以上、99.9%以下の範囲まで切断深度を進行させた時点で、一旦、切断深度の進行を停止させ、その後、切断深度100%まで切断することを特徴とする。尚、本発明における切断工程では、切断深度の進行を停止する操作を、接合部厚みの50%以上、99.9%以下の範囲において少なくとも1回行えばよく、2回以上行うこともできる。
【0021】
本明細書における「切断深度」においては、切断すべき部位(具体的には、アレイ状レンズの接合部)の切断開始点の深度を0%とし、切断が完了する時点の深度を100%とする。
【0022】
前記アレイ状レンズは、2個以上のレンズが2次元的に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有する。前記レンズの直径は、例えば1~5mmである。また、前記接合部幅は、例えば1mm以下、好ましくは0.05~1mm、特に好ましくは0.05~0.5mmであり、前記接合部厚みは、例えば0.1~1.5mmである。
【0023】
前記レンズには、例えば、マイクロレンズ、フレネルレンズ、マイクロレンズ若しくはフレネルレンズの複数個が接合部を介して結合した成型物、レンチキュラーレンズ、及びプリズムシート等が含まれる。また、前記レンズには、携帯電話、スマートフォンをはじめとするモバイル電子機器のセンサー用レンズやカメラ用レンズ等が含まれる。
【0024】
前記アレイ状レンズの破断ひずみ[より詳細には、アレイ状レンズを構成する素材(例えば、後述の硬化性組成物の硬化物)の破断ひずみ]は、例えば0.1%以上、好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.5%以上である。尚、破断ひずみの上限は、例えば30%、好ましくは20%、特に好ましくは10%、最も好ましくは5%、とりわけ好ましくは3%である。尚、破断ひずみは、JIS-K7162:1994に準拠して、試験片5B型を用いて測定できる。破断ひずみが上記範囲を外れるアレイ状レンズの場合は、本発明の切断方法を適用しても、ブレード等が支持テープに達した際に支持テープとレンズとの間に隙間が生じるのを抑制することが困難となる場合があり、レンズの光学特性が低下するのを抑制する効果が得られにくい場合がある。また、破断ひずみが小さすぎる場合は、レンズが脆くなり取り扱い中に欠けたり割れたりすることがある。
【0025】
前記アレイ状レンズは、レンズの接合部において支持テープに接着し、固定される。そして、本発明においては上記方法で切断するため、支持テープとの接着面積が小さくても、また、レンズに親水化処理を行わなくても、ブレード等が支持テープに達した際に支持テープとレンズとの間に隙間が生じるのを抑制することができ、隙間から入り込んだ切削屑がレンズ表面に付着することによりレンズの光学特性が低下するのを抑制することができる。
【0026】
切断深度の進行を停止させるタイミングは、接合部厚みの50%以上、99.9%以下の範囲まで切断深度を進行させた時点であり、切断深度の下限は、なかでもブレード等が支持テープに達した際に有する推進力を極めて小さくすることができる点で、60%が好ましく、より好ましくは70%、特に好ましくは80%、最も好ましくは85%、とりわけ好ましくは90%である。また、上限は、好ましくは99%である。
【0027】
また、切断深度の進行を停止させるタイミングは、接合部の切り残し厚みが、例えば1μm以上の範囲の何れか1点に達した時であることが好ましく、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上、最も好ましくは5μm以上である。また、接合部の切り残し厚みが、例えば50μm以下の範囲の何れか1点に達した時であることが好ましく、なかでも、ブレード等が支持テープに達した際に有する推進力を極めて小さくすることができる点で、より好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは25μm以下である。
【0028】
本発明においては切断深度、若しくは接合部の切り残し厚みが上記範囲となるタイミングで切断深度の進行を一旦停止させるため、ブレード等が支持テープに達した際に有する推進力を極めて小さく抑制することができ、前記推進力によって引き起こされていた支持テープとレンズとの隙間の発生を抑制若しくは防止することができる。
【0029】
一旦切断深度の進行を停止させた後、切断深度の進行を再開するタイミング(若しくは、切断深度の進行を停止させる時間)としては、ブレード等が有する推進力が緩和された時点であることが好ましく、切断深度の進行を停止させる時間としては、例えば1秒以上、好ましくは3秒以上、特に好ましくは5秒以上、最も好ましくは10秒以上である。尚、上限は特に制限されないが、あまり長く停止させると作業効率が低下するため好ましくない。
【0030】
アレイ状レンズの切断手段としては特に制限されることがなく周知慣用の手段を採用することができるが、なかでも高速回転するブレードを用いて行うことが好ましい。
【0031】
高速回転するブレードを使用して切断する場合、ブレードの回転速度は例えば10000~50000回転/分程度である。また、ブレードの進行速度(すなわち、切断深度の進行速度)は、10~200mm/秒程度である。
【0032】
また、アレイ状レンズを高速回転するブレード等を用いて切断すると摩擦熱が生じるため、アレイ状レンズを冷却しながら切断することが、摩擦熱によってレンズが変形したり光学特性が低下するのを抑制することができる点で好ましい。本発明においては、特に、アレイ状レンズを水冷しながら行うことが、摩擦熱の除去と同時に切削屑を洗い流すことができ、切削屑の付着リスクをより一層低下させることができる点で好ましい。
【0033】
アレイ状レンズの切断は支持テープ上に固定された状態で行う。前記支持テープとしては、不要となった際には剥離できる再剥離性粘着テープを使用することが、得られたレンズを破損することなく支持テープから剥離することができる点で好ましい。再剥離性粘着テープには、感圧型粘着テープや、加熱処理や紫外線照射を行う前は適度な粘着力(粘着力は、例えば3N/25mm以上、好ましくは4N/25mm以上、特に好ましくは5N/25mm以上であり、例えば20N/25mm以下、好ましくは18N/25mm以下、特に好ましくは15N/25mm以下である)を有し、加熱処理及び/又は紫外線照射を行うことによって粘着性が急激に低下する、若しくは粘着性を喪失する粘着テープ(すなわち、熱硬化型粘着テープやUV硬化型粘着テープ)が挙げられる。本発明においては、なかでも、切断時はレンズをしっかり保持することができ、レンズの剥離が必要となった際には粘着力を低下若しくは喪失させることにより容易にレンズを剥離することができ、剥離時にレンズが破損することを防止することができる点で、熱硬化型粘着テープやUV硬化型粘着テープを使用することが好ましく、特にUV硬化型粘着テープを使用することが、速やかに、且つ選択的にレンズを剥離することができる(例えば、複数の個片化されたレンズのうち特定のレンズのみを剥離したい場合は、支持テープのうち、剥離したいレンズが貼着した部分のみにUV照射を行うことで、レンズを選択的に剥離することができる)点で好ましい。
【0034】
支持テープの粘着剤層の厚みは、例えば1μm以上、好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上、特に好ましくは8μm以上であり、例えば30μm以下、好ましくは18μm以下、特に好ましくは15μm以下である。粘着剤層の厚みが上記範囲を下回ると、レンズを固定するのに十分な粘着性を有することができず、レンズが切断中に剥離して破損する場合がある。また、粘着剤層の厚みが上記範囲を上回ると、粘着剤層が弾性を有するため、切断する際のブレード等の振動によってレンズが揺れて、精度よく切断することが困難となる場合がある。
【0035】
本発明においては、支持テープとして、例えば、市販のダイシングテープ(例えば、日東電工(株)製の「エレップホルダー」シリーズ、リンテック(株)製の「ADWILL」シリーズ、デンカアドテックス(株)製の「エレグリップ」シリーズ等)を好適に使用することができる。
【0036】
切断深度の進行を再開後、切断深度100%まで切断する際には、支持テープの厚みの一部も共に切断しても良いが支持テープを完全に切断しないことが好ましい。支持テープが完全に切断されると、例えば、水冷しつつ切断する場合にレンズが水で流され、破損する恐れがあるためである。
【0037】
切断工程を経て、レンズサイズに切断された支持テープが付着したレンズ(より詳細には、レンズサイズに切断された支持テープが付着したアレイ状レンズの個片化物であって、前記アレイ状レンズの個片化物にはレンズ凹部とその周辺部とが含まれる)(=切断支持テープ付きレンズ)が得られる。支持テープを完全に切断することなくレンズを接合部において切断した場合は、2個以上のレンズ(より詳細には、アレイ状レンズの個片化物であって、レンズ凹部とその周辺部とを含む構造体)が2次元的に配列した状態で支持テープ上に固定された、支持テープ付き配列レンズが得られる。
【0038】
得られた切断支持テープ付きレンズ(若しくは、支持テープ付き配列レンズ)は、支持テープの種類に応じた方法で粘着力を低下若しくは喪失させてレンズを剥離することが、レンズを破損することなく剥離することができる点で好ましい。例えば、加熱処理及び/又は紫外線照射を行うことによって粘着力が急激に低下する、若しくは喪失する粘着テープを使用した場合は、加熱処理及び/又は紫外線照射を行うことで粘着力を低下若しくは喪失させてレンズを剥離することが好ましい。そして、切断支持テープ若しくは支持テープから剥離されたレンズは、携帯電話、スマートフォンをはじめとするモバイル電子機器のセンサー用レンズやカメラ用レンズ等に好適に使用することができる。
【0039】
(アレイ状レンズ製造工程)
上記切断工程に付すアレイ状レンズとしては、硬化性組成物をモールドを用いて成型し、その後、硬化させて製造されるものであることが好ましい。
【0040】
従って、本発明のレンズの製造方法としては、硬化性組成物をモールドを用いて成型し、その後、硬化させて2個以上のレンズが2次元的に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状レンズを得、得られたアレイ状レンズを支持テープ上に固定し、支持テープ上に固定されたアレイ状レンズを、前記接合部において下記方法で切断する工程を有するレンズの製造方法、であることが好ましい。
切断方法:支持テープに貼り合わせられた側とは反対側から前記接合部厚みの50%以上、99.9%以下の範囲まで切断深度を進行させた時点で、一旦、切断深度の進行を停止させ、その後、切断深度100%まで切断する
【0041】
前記硬化性組成物は、加熱処理及び/又は紫外線照射を行うことで硬化して、光学特性に優れた硬化物を形成することができるものが好ましい。本発明においては、なかでも、紫外線照射により硬化して、光学特性に優れた硬化物を形成することができる組成物(すなわち、光硬化性組成物)が好ましく、硬化性化合物としてカチオン硬化性化合物を含む組成物が硬化性に優れる点で特に好ましく、(カチオン)硬化性化合物として少なくともエポキシ樹脂を含む組成物が硬化性に優れ、光学特性(特に、透明性)、高硬度、及び耐熱性を兼ね備えた硬化物(すなわち、レンズ)が得られる点で最も好ましい。
【0042】
エポキシ樹脂としては、分子内に1以上のエポキシ基(オキシラン環)を有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、例えば、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。本発明においては、なかでも、耐熱性、及び透明性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内に脂環構造と、官能基としてのエポキシ基を2個以上有する、多官能脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0043】
前記多官能脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、
(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(すなわち、脂環エポキシ基)を有する化合物
(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を有する化合物
(iii)脂環とグリシジル基とを有する化合物
等が挙げられる。
【0044】
上述の脂環エポキシ基を有する化合物(i)としては、例えば、下記式(i)で表される化合物を挙げられる。
【化1】
【0045】
上記式(i)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。尚、式(i)中のシクロヘキセンオキシド基には、置換基(例えば、アルキル基等)が結合していてもよい。
【0046】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0047】
上記炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2~4のアルケニレン基である。
【0048】
上記Xにおける連結基としては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、-CO-、-O-CO-O-、-COO-、-O-、-CONH-、エポキシ化アルケニレン基;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と上記二価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基等が挙げられる。
【0049】
上記式(i)で表される化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタンや、下記式(i-1)~(i-10)で表される化合物等が挙げられる。下記式(i-5)中のLは炭素数1~8のアルキレン基であり、中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(i-5)、(i-7)、(i-9)、(i-10)中のn1~n8は、それぞれ1~30の整数を示す。
【0050】
【化2】
【化3】
【0051】
上述の脂環エポキシ基を有する化合物(i)には、エポキシ変性シロキサンも含まれる。
【0052】
エポキシ変性シロキサンとしては、例えば、下記式(i’)で表される構成単位を有する、鎖状又は環状のポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【化4】
【0053】
上記式(i’)中、R1は下記式(1a)又は(1b)で表されるエポキシ基を含む置換基を示し、R2はアルキル基又はアルコキシ基を示す。
【化5】
【0054】
式中、R1a、R1bは、同一又は異なって、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
【0055】
エポキシ変性シロキサンのエポキシ当量(JIS K7236に準拠)は、例えば100~400、好ましくは150~300である。
【0056】
エポキシ変性シロキサンとしては、例えば、下記式(i’-1)で表されるエポキシ変性環状ポリオルガノシロキサン(商品名「X-40-2670」、信越化学工業(株)製)等の市販品を用いることができる。
【化6】
【0057】
上述の脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を有する化合物(ii)としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物等が挙げられる。
【化7】
【0058】
式(ii)中、R'は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、n9はそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R'-(OH)p]としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(炭素数1~15のアルコール等)等が挙げられる。pは1~6が好ましく、n9は1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの角括弧(外側の括弧)内の基におけるn9は同一でもよく異なっていてもよい。上記式(ii)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
【0059】
上述の脂環とグリシジル基とを有する化合物(iii)としては、例えば、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビフェノール型エポキシ化合物、水添フェノールノボラック型エポキシ化合物、水添クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAの水添クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ナフタレン型エポキシ化合物、トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物の水添エポキシ化合物等の水素化芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物等が挙げられる。
【0060】
多官能脂環式エポキシ化合物としては、表面硬度が高く、透明性に優れた硬化物が得られる点で、脂環エポキシ基を有する化合物(i)が好ましく、上記式(i)で表される化合物(特に、(3,4,3',4'-ジエポキシ)ビシクロヘキシル)が特に好ましい。
【0061】
本発明における硬化性組成物は、硬化性化合物としてエポキシ樹脂以外にも他の硬化性化合物を含有していても良く、例えば、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等のカチオン硬化性化合物を1種又は2種以上含有することができる。
【0062】
前記硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)に占めるエポキシ樹脂の割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上である。尚、上限は、例えば100重量%、好ましくは90重量%である。
【0063】
また、前記硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)に占める脂環エポキシ基を有する化合物(i)の割合は、例えば20重量%以上、好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上である。尚、上限は、例えば70重量%、好ましくは60重量%である。
【0064】
また、前記硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)に占める式(i)で表される化合物の割合は、例えば10重量%以上、好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。尚、上限は、例えば50重量%、好ましくは40重量%である。
【0065】
前記硬化性組成物は、上記硬化性化合物と共に光重合開始剤を含有することが好ましく、特に光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤は、光の照射によって酸を発生して、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物(特に、カチオン硬化性化合物)の硬化反応を開始させる化合物であり、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。
【0066】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等を挙げられる。
【0067】
本発明においては、なかでも、スルホニウム塩系化合物を使用することが、硬化性に優れた硬化物を形成することができる点で好ましい。スルホニウム塩系化合物のカチオン部としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムイオン、トリ-p-トリルスルホニウムイオン等のアリールスルホニウムイオン(特に、トリアリールスルホニウムイオン)を挙げられる。
【0068】
光カチオン重合開始剤のアニオン部としては、例えば、[(Y)sB(Phf)4-s-(式中、Yはフェニル基又はビフェニリル基を示す。Phfは水素原子の少なくとも1つが、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基を示す。sは0~3の整数である)、BF4 -、[(Rf)tPF6-t-(式中、Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を示す。tは0~5の整数を示す)、AsF6 -、SbF6 -、SbF5OH-等を挙げられる。
【0069】
本発明における光カチオン重合開始剤としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]フェニル-2-チオキサントニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、商品名「サイラキュアUVI-6970」、「サイラキュアUVI-6974」、「サイラキュアUVI-6990」、「サイラキュアUVI-950」(以上、米国ユニオンカーバイド社製)、「Irgacure250」、「Irgacure261」、「Irgacure264」(以上、BASF社製)、「CG-24-61」(チバガイギー社製)、「オプトマーSP-150」、「オプトマーSP-151」、「オプトマーSP-170」、「オプトマーSP-171」(以上、(株)ADEKA製)、「DAICAT II」((株)ダイセル製)、「UVAC1590」、「UVAC1591」(以上、ダイセル・サイテック(株)製)、「CI-2064」、「CI-2639」、「CI-2624」、「CI-2481」、「CI-2734」、「CI-2855」、「CI-2823」、「CI-2758」、「CIT-1682」(以上、日本曹達(株)製)、「PI-2074」(ローディア社製、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トリルクミルヨードニウム塩)、「FFC509」(3M社製)、「BBI-102」、「BBI-101」、「BBI-103」、「MPI-103」、「TPS-103」、「MDS-103」、「DTS-103」、「NAT-103」、「NDS-103」(以上、ミドリ化学(株)製)、「CD-1010」、「CD-1011」、「CD-1012」(以上、米国、Sartomer社製)、「CPI-100P」、「CPI-101A」(以上、サンアプロ(株)製)等の市販品を使用できる。
【0070】
光重合開始剤の含有量は、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物(特に、カチオン硬化性化合物)100重量部に対して、例えば0.1~5.0重量部となる範囲である。光重合開始剤の含有量が上記範囲を下回ると、硬化不良を引き起こすおそれがある。一方、光重合開始剤の含有量が上記範囲を上回ると、硬化物が着色しやすくなる傾向がある。
【0071】
本発明における硬化性組成物は、上記硬化性化合物と光重合開始剤と、必要に応じて他の成分(例えば、溶剤、酸化防止剤、表面調整剤、光増感剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、界面活性剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤等)を混合することによって製造することができる。他の成分の配合量は、硬化性組成物全量の、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0072】
本発明における硬化性組成物としては、例えば、商品名「CELVENUS OUH106」((株)ダイセル製)等の市販品を使用することもできる。
【0073】
前記モールドとしては、例えばシリコーンモールドを使用することができる。モールドとしては、レンズの反転形状(すなわち、逆凹凸形状)を複数個(反転形状の凹凸を、例えば10個以上、好ましくは20個以上、特に好ましくは30個以上、最も好ましくは50個以上有する。尚、反転形状の凹凸の数の上限は、例えば5000個、好ましくは2000個である)有することが好ましい。尚、モールドにおける、レンズの反転形状の凹凸の配置(2次元的配置)は特に制限されないが、なかでも、生産効率を向上することができる点で、2次元的に、一定の間隔で配列していることが好ましい。更にまた、レンズの形状によっては、上型と下型の2部構成(例えば、レンズの凹面の反転形状を有するモールドと、レンズの凸面の反転形状を有するモールドを、一方を上型、他方を下型とする2部構成)になっているモールドを使用することができる。
【0074】
モールドには、表面に離型剤を塗布してもよい。前記離型剤としては、例えば、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、ワックス系離型剤等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
モールドを用いて硬化性組成物を成型する方法としては、例えば、下記(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)基板に硬化性組成物を塗布し、その上にモールドを押し付け、硬化性組成物を硬化させた後、モールドを剥離する方法
(2)モールドに硬化性組成物を塗布し、その上から基板を押し付け、硬化性組成物を硬化させた後、モールドを剥離する方法
(3)モールドの上型と下型の少なくとも一方に硬化性組成物を塗布し、上型と下型とを合わせた上で硬化性組成物を硬化させ、その後、上型と下型を剥離する方法
【0076】
前記基板としては、400nmの波長の光線透過率が90%以上である基板を使用することが好ましく、石英やガラスからなる基板を好適に使用することができる。尚、前記波長の光線透過率は、基板(厚み:1mm)を試験片として使用し、当該試験片に照射した前記波長の光線透過率を分光光度計を用いて測定することで求められる。
【0077】
硬化性組成物の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、スクリーン印刷法等を利用することができる。
【0078】
硬化性組成物の硬化は、例えば硬化性組成物として光硬化性組成物を使用する場合は、紫外線を照射することによって行うことができる。紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒である。照度は、5~200mW程度である。紫外線照射後は、必要に応じて加熱(ポストキュア)を行って硬化の促進を図ってもよい。
【実施例
【0079】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0080】
実施例1~4
シリコーンモールド上に硬化性組成物(商品名「CELVENUS OUH106」、(株)ダイセル製、硬化物の破断ひずみ(JIS-K7162:1994に準拠した方法で、試験片5B型を用いて測定):0.8%)を塗布し、上から平板状のシリコーンモールドにて型閉じを行った。型閉じ後、UV照射(80mW×30秒)を行い、その後、型開きを行った。100個のマイクロレンズが縦10列×横10列に配列し、これらのマイクロレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状マイクロレンズを得た。
得られたアレイ状マイクロレンズを下記表1に記載の支持テープに貼着し、ブレードを使用して、アレイ状マイクロレンズの接合部(厚み:0.3mm)に下記切断方法で、縦、横各11本の支持テープに達する格子状切り込みを入れて、一辺の長さが4.0mmの個片化物(マイクロレンズ凹部とその周辺部とを含む)を100個の得た(図3)。得られた個片化物100個について、外観を目視で観察し、汚れの付着が無いものを計数して切削屑の付着抑制率を評価した。
切断方法
二段階に分けて切断を行った。
すなわち、一段階目は前記接合部の厚み方向において未切断(切り残し)部分を残した状態で切断を終え、続く二段階目で前記未切断(切り残し)部分を完全に切断した。尚、特定の切断部位における、一段階目の切断終了後、二段階目の切断開始までの時間は、25秒であった。
【0081】
【表1】
【0082】
比較例1~10
実施例と同様の方法で得られたアレイ状マイクロレンズを下記表2に記載の支持テープに貼着し、ブレードを使用して、接合部において、下記表2に記載の条件で一段階で切断し、一辺の長さが4.0mmの個片化物(マイクロレンズ凹部とその周辺部とを含む)100個を得た。得られた個片化物について、実施例と同様の方法で切削屑の付着抑制効果を評価した。
【0083】
【表2】
【0084】
<支持テープ>
・テープ(1):UV硬化型ダイシングテープ、リンテック(株)製、商品名「ADWILL-D-485H」、粘着剤層厚み:5μm、粘着力:4.9N/25mm
・テープ(2):UV硬化型ダイシングテープ、リンテック(株)製、商品名「ADWILL-D-611」、粘着剤層厚み:15μm、粘着力:12.3N/25mm
・テープ(3):UV硬化型ダイシングテープ、デンカアドテックス(株)製、商品名「UHP-1515MCE」、粘着剤層厚み:15μm、粘着力:10.2N/25mm
・テープ(4):UV硬化型ダイシングテープ、デンカアドテックス(株)製、商品名「UHP-1510M4」、粘着剤層厚み:10μm、粘着力:12.5N/25mm
【0085】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1] 支持テープ上に固定された、2個以上のレンズが2次元的に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状レンズを、前記接合部において下記方法で切断する工程を有する、レンズの製造方法。
切断方法:支持テープに貼り合わせられた側とは反対側から前記接合部厚みの50%以上、99.9%以下の範囲まで切断深度を進行させた時点で、一旦、切断深度の進行を停止させ、その後、切断深度100%まで切断する
[2] アレイ状レンズの切断を、アレイ状レンズを水冷しつつ行う、[1]に記載のレンズの製造方法。
[3] アレイ状レンズは、レンズの接合部において支持テープに接着し、前記レンズの直径は1~5mmであり、前記接合部幅は1mm以下である、[1]又は[2]に記載のレンズの製造方法。
[4] 支持テープが3~20N/25mmの粘着力を有し、前記粘着力は紫外線照射又は加熱処理を施すことにより低下又は喪失する、[1]~[3]の何れか1つに記載のレンズの製造方法。
[5] アレイ状レンズの切断を、高速回転するブレードを用いて行う、[1]~[4]の何れか1つに記載のレンズの製造方法。
[6] 硬化性組成物をモールドを用いて成型し、その後、硬化させて前記硬化性組成物の硬化物から成るアレイ状レンズを得、得られたアレイ状レンズを支持テープ上に固定して切断する、[1]~[5]の何れか1つに記載のレンズの製造方法。
[7] 硬化性組成物がカチオン硬化性化合物を含む、[6]に記載のレンズの製造方法。
[8] 硬化性組成物がエポキシ樹脂を含む、[6]に記載のレンズの製造方法。
[9] 硬化性組成物が脂環エポキシ基を有する化合物を含む、[6]に記載のレンズの製造方法。
[10] 硬化性組成物が多官能脂環式エポキシ化合物を含む、[6]に記載のレンズの製造方法。
[11] 硬化性組成物が式(i)で表される化合物を含む、[6]に記載のレンズの製造方法。
[12] 硬化性組成物が3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、及び1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタンから選択される少なくとも1種を含む、[6]に記載のレンズの製造方法。
[13] 硬化性組成物が(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、及び1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタンから選択される少なくとも1種を含む、[6]に記載のレンズの製造方法。
[14] 硬化性組成物がエポキシ樹脂(好ましくは脂環エポキシ基を有する化合物、特に好ましくは多官能脂環式エポキシ化合物)を含み、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量に占める前記エポキシ樹脂(好ましくは脂環エポキシ基を有する化合物、特に好ましくは多官能脂環式エポキシ化合物)の割合が20重量%以上(好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上であり、上限は、好ましくは70重量%、特に好ましくは60重量%)である、[6]に記載のレンズの製造方法。
[15] 硬化性組成物が式(i)で表される化合物を含み、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量に占める前記式(i)で表される化合物の割合が10重量%以上(好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上)である、[6]に記載のレンズの製造方法。
[16] JIS-K7162:1994に準拠した方法によるアレイ状レンズの破断ひずみが0.1~30%である、[1]~[15]の何れか1つに記載のレンズの製造方法。
[17] レンズがマイクロレンズ、フレネルレンズ、マイクロレンズ若しくはフレネルレンズの複数個が接合部を介して結合した成型物、レンチキュラーレンズ、又はプリズムシートである、[1]~[16]の何れか1つに記載のレンズの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の製造方法によれば、小型で薄型の、光学特性に優れるレンズを精度よく、且つ効率よく製造することができる。従って、本発明のレンズの製造方法は、例えば、携帯電話、スマートフォンをはじめとするモバイル電子機器のセンサー用レンズやカメラ用レンズの製造方法として好適である。
【符号の説明】
【0087】
1 高速回転するブレード
2 アレイ状レンズ
3 支持テープ
3’ レンズサイズに切断された支持テープ
4 レンズと支持テープとの浮き
5 アレイ状レンズのレンズ凹部
6 アレイ状レンズの接合部
7 アレイ状レンズの接合部厚み
8 支持テープに固定されたアレイ状マイクロレンズ
9 アレイ状レンズの個片化物
10 レンズ周辺部
11 レンズ凹部
12 接合部厚み
図1
図2
図3