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特許7071373弾性体取り付けのためのホットメルト接着剤組成物
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  • 特許-弾性体取り付けのためのホットメルト接着剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】弾性体取り付けのためのホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20220511BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220511BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/06
C08L53/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019534812
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017083541
(87)【国際公開番号】W WO2018114949
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】16306761.4
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】デュプラガ, ウルシュラ
(72)【発明者】
【氏名】フセイン, ナジ
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/109160(WO,A1)
【文献】特開2016-044289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08L 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・少なくとも1つの放射状スチレンブロックコポリマー(A1)と、少なくとも1つのスチレンジブロックコポリマー(A2)とを有する、少なくとも1つの熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)であって、
該熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)の合計重量に対して、
・少なくとも30重量%のスチレン含分、及び
・50重量%未満でゼロではないジブロック含分
を有する、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)と、
・少なくとも1つの直線状スチレンブロックコポリマー(B1)と、少なくとも1つのスチレンジブロックコポリマー(B2)とを有する、少なくとも1つの熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)であって、
該熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)の合計重量に対して、
・少なくとも35重量%のスチレン含分、及び
・少なくとも50重量%のジブロック含分
を有する、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)と
を含む、ポリマー混合物において、
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)の、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)に対する重量比率が、1~2の範囲にある、ポリマー混合物。
【請求項2】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)が、30~50重量%の範囲のスチレン含分を有する、請求項1に記載のポリマー混合物。
【請求項3】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)が、20~49重量%の範囲のジブロック含分を有する、請求項1又は2に記載のポリマー混合物。
【請求項4】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)が、少なくとも40重量%のスチレン含分を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリマー混合物。
【請求項5】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)が、55~80重量%の範囲のジブロック含分を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリマー混合物。
【請求項6】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)及び(B)が、スチレン-ブタジエン系ブロックコポリマーである、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリマー混合物。
【請求項7】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)が、25℃で25重量%のトルエン溶液として、250mPa.sより大きく500mPa.sまでの粘度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリマー混合物。
【請求項8】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)が、25℃で25重量%のトルエン溶液として、200mPa.s以下の粘度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリマー混合物。
【請求項9】
・少なくとも1つの、請求項1から7までのいずれか一項に規定されるポリマー混合物の成分、
・少なくとも1つの粘着性付与樹脂(C)、
・少なくとも1つのワックス(D)、及び
・少なくとも1つの可塑剤(E)
を混合することによって得られやすい、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
ホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して、
・少なくとも1つの粘着性付与樹脂(C)を40~65重量%、
・少なくとも1つのワックス(D)を0.5~5重量%、
・少なくとも1つの可塑剤(E)を5~25重量%、
含む、請求項9に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項11】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)及び(B)の合計量が、ホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して、15~35重量%の範囲にある、請求項9又は10に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの弾性材料及び少なくとも2つの基材を有する積層体であって、該弾性材料は、2つの基材の間に挿入されており、かつ請求項9から11のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物によって覆われている、積層体。
【請求項13】
請求項12に記載の少なくとも1つの積層体を備える、使い捨て衛生用品。
【請求項14】
2つの別個の基板の間で弾性材料を結合するための、請求項9から11のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの特定のスチレンブロックコポリマー(SBC)混合物、少なくとも1つの粘着性付与樹脂、少なくとも1つのワックス、及び少なくとも1つの可塑剤を含むホットメルト接着剤組成物、並びに弾性体取り付けのための該接着剤組成物の使用に関する。
【0002】
本発明はまた、使い捨て衛生用品を製造するために使用可能な本発明によるホットメルト接着剤組成物を備える積層体に関する。
【背景技術】
【0003】
使い捨て衛生用品は、接着材料と接合された多様な基材(不織布、弾性材料、フィルム、例えばポリオレフィンフィルム、特にポリエチレン又はポリプロピレンのフィルム)から作製される。使い捨て衛生用品の例としては、おむつ、ナプキン、又は成人失禁用使い捨て製品を挙げることができる。
【0004】
使い捨て衛生用品は、高速ラインレートで製造される。このような製造では通常、ホットメルト接着剤が使用される。なぜならば、ホットメルト接着剤は、(溶融状態で)基材に容易に塗布することができ、冷却するとすぐに強固な接合力を発現し、溶媒除去等の追加的な製造工程も何ら必要としないからである。
【0005】
ホットメルト接着剤は、おむつ製造産業において多様な基材を接合するために、幅広い接着用途のプロセスウィンドウで使用される。
【0006】
使い捨て衛生用品において一般的には、配置場所及び最終的な機能に応じて、数種類のホットメルト接着剤が見られ、それは例えば、以下のものである:
・芯材接着剤(Core adhesives):おむつを製造する間、またおむつを使用する間、主におむつが濡れてしまった後に、おむつの芯材(フラフ(fluff)及び超吸収性ポリマー「SAP」)の位置を保つために使用される。
・組立用接着剤(Construction adhesives):ポリエチレン裏面シートを、不織布基材に結合させるか、又は2枚の不織布基材を結合させるものである。
・弾性体用接着剤(Elastic adhesives):弾性材料(例えばポリウレタンに基づくストランド)をシート状基材(例えばポリエチレン「PE」又はポリプロピレン「PP」、及び不織布基材)に結合させるために使用される。
【0007】
目的とする用途に応じて、ホットメルト接着剤は、最終的な用途及び塗布(コーティング)法に関連して幾つかの最小限の要求を満たすべきである。
【0008】
ホットメルト接着剤は特に、良好な加工性を示すべきである。
【0009】
溶融した接着剤は通常、円筒形又は平らな表面にスプレーされるか、繊維状にされるか、又はコーティングされる。いったん冷却されると、接着剤は複数の要求、例えば機械的応力のもとで又はその後に、また様々な熱的条件のもとで又はその後に、剥離力又は接合保持力によって測定される接合強度を、満たさなければならない。
【0010】
特に弾性体取り付け用途では、特に使い捨て衛生用品を製造及び使用する間に必要に応じて、接着剤が弾性材料を適切な位置に保持すべきである。実際には、製造工程の間、弾性材料(例えば一組の弾性ストランド)を通常、まず接合に先立って伸ばし、それから非接触式(スプレー)塗布又は接触式塗布のいずれかによって、弾性材料に塗布し、それから接着剤によってコーティングされた弾性材料を、2つのシート状基材(例えば不織布基材とポリオレフィンフィルム)の間に迅速に積層化する。その後、弾性材料を緩和させると、かなりの可撓性を有するギャザー加工(又はラッシュ加工)された積層体ができる。よって接着剤は、クリープ強度に対して充分な耐性を有するためには、高い凝集力及び弾性を示す必要がある。さらに、あらゆる接着不良を避けるためには、弾性材料における良好な接着性も推奨される。
【0011】
昨今、市場の動向は、高速のライン生産性でより良好な品質のおむつを製造すること、及びコストの削減に向かって動いている。この必要性を満たすために、衛生産業では高速おむつ製造機が開発されており、コスト削減のための様々な手段が、求められている。
【0012】
製造コストを下げるための1つの可能性が、より薄い基材を用いることである。しかしながら、ホットメルト接着剤は通常、高温(少なくとも150℃)で基材に塗布されるため、プラスチック基材(例えばポリエチレンフィルム)を薄くすると、熱による損傷の問題が生じる。特に、ホットメルト接着剤をこのような温度でポリエチレンフィルムに塗布することによって、「溶け落ち」問題(例えば基材の溶融)又は基材でのしわ形成につながることがある。
【0013】
製造コストを下げるために取り得る別の手段は、より低い温度(150℃未満、例えば130~140℃)でホットメルト接着剤を塗布することである。しかしながら、塗布温度を下げることによって、ホットメルト接着剤の粘度が増加し、通常は低温での接着剤の加工性が悪くなる。
【0014】
特に、製造ラインが1分あたり400メーター(m/mn)又はそれより高速になるとしばしば、圧力警報限界を超える高い圧力レベルが、ポンプ及びコーティングシステムの配管において観察され、ラインの停止及び/又はコーティングされた接着剤付与のばらつきを引き起こす。
【0015】
さらに、現在のホットメルト接着剤は、このようなライン速度では連続的又は断続的な塗布法のもとで不規則な接着パターンにつながることが観察された。特に、様々な種類の連続的又は断続的な接触式又は非接触式の塗布法を用いると、ノズル出口における接着剤の散らばり、付着、弾性ストランドの不充分な包み込み、及び不良なスパイラルパターンが観察された。
【0016】
これらの問題は全て、生産ラインの効率を大きく低下させる。それと言うのも、ライン停止、ラインの清掃及びメンテナンス、並びに開始時及び停止時における廃棄物管理が必要となり、また不良なパターン又は不良な接合性能が原因で所望の品質に適合しない最終製品の割合が増加するからである。よって、ホットメルト接着剤に関連する問題、又はホットメルト接着剤により引き起こされる問題に起因して生産ラインを停止させないことが、非常に重要である。
【0017】
様々な特許文献が、低温で塗布可能なホットメルト接着剤を得るため、例えば比較的薄い基材又は熱に敏感な基材(例えばポリオレフィン基材)の場合に「溶け落ち」現象を回避するために、軟化点の低い粘着剤を用いること、又はポリマー含分を少なくするとともに可塑剤を多くすることを教示している。しかしながら、これによってしばしば、凝集力が悪くなり、接着剤の耐クリープ性が悪化した。また、これらの接着剤の加工性は、少なくとも400m/mnの高速ライン及び断続的な塗布様式には適していなかった。
【0018】
国際公開第2014/175410号(Henkel Ag&Co KGAA)は、ビニル芳香族炭化水素の熱可塑性ブロックコポリマーと共役ジエン化合物とのブレンドを含むホットメルト接着剤組成物に取り組んでおり、この接着剤は、以下のものを含有する:(A1)スチレン含分が35~45重量%であり、ジブロック含分が50~90重量%であり、25℃で25重量%のトルエン溶液としての粘度が250mPa.s以下である放射状スチレンブロックコポリマー、及び(A2)スチレン含分が30重量%未満であり、25℃で25重量%のトルエン溶液としての粘度が250mPa.sより大きいスチレンブロックコポリマー、及び粘着性付与樹脂。この組成物は、低温(140℃以下)で塗布可能なこと、及び使い捨て製品を製造するために使用されるポリオレフィン基材に対して優れた接着性を示すことが教示されている。
【0019】
しかしながらこの文献には、本発明によるホットメルト接着剤は記載されていない。少なくとも400m/mnという高速ラインで積層化工程を使用することについても、何ら言及されていない。前述のように、このような高速ライン工程を用いることにより、従来の低速塗布法を用いる場合とは異なる新たな問題が生じ得る。
【0020】
よって、高速での加工性が強化されており、安定的で良好な性能をもたらす弾性体取り付け用接着剤に対する必要性が現実に存在し、この接着剤は、新世代のより薄い基材にも、また接触式及び非接触式塗布技術にも、適合しているべきである。
【0021】
低温で塗布可能であり(「溶け落ち」現象の回避)、高速ライン(少なくとも400m/mn)で優れた加工性を有し、様々な基材に対して弾性体を取り付けるために良好なコーティング特性及び接着特性を有し、様々な塗布法のもとで良好な接着パターンを制御可能な、SBCに基づく接着剤を創り出せることが判明した。
【0022】
前述のように、本発明によるホットメルト接着剤組成物の利点の1つは、比較的低温(130℃と低い)及び低圧で高速ライン(少なくとも400m/mn)で使用可能なことであり、これによってメンテナンスの問題及び生産ラインの停止時間を回避することができる。
【0023】
実際に、使い捨て衛生用品を製造するために用いることが意図されている本発明によるホットメルト接着剤組成物は、高速コーティングシステムで優れた加工性を示し(少なくとも400m/mn~600m/mnまでの速度レート)、ラインを停止させることなく(通常は、ポンプ又は配管の圧力レベルが最大限度圧に達するか又はこれを超えるとラインが停止する)、かつ/又はコーティングされた接着剤付与のばらつきを引き起こすことがない。
【0024】
本明細書で使用する「加工性」という用語は、溶融可能なこと、また溶融した接着材料を接合が必要とされる最終的な場所へと、標準的なコーティングシステム(例えば使い捨て衛生用品を製造するために通常使用されるもの、及び実施例でさらに説明するもの)の給送システムにおける圧力限界(通常は60bar以上)を超えることなく、容易に給送及び移送できることに相当する。
【0025】
前述のように、本発明によるホットメルト接着剤組成物の別の利点は、その接着特性に関する。
【0026】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、様々な塗布法のもと、例えば使い捨て衛生用品を製造するために通常使用される連続的又は断続的な接触式又は非接触式コーティングシステムで、保持力(凝集力)と、様々な基材(不織布(NW)基材、ポリオレフィン、例えばPE又はPP、弾性材料、例えば弾性ストランド)に対する接着性(粘着性)との良好な一致点を示す。
【0027】
特に、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、接触式又は非接触式塗布法において、優れた耐クリープ性又は接合保持力(少なくとも75%)で積層体を製造可能なことが判明した。特に、本発明のホットメルト接着剤組成物により、75%より大きい、好ましくは80~95%の範囲の当初耐クリープ性がもたらされる。
【0028】
これらの特性は、実施例に示したように経時的に(室温(23℃)又はより高温で)維持されることが観察された。特に、本発明によるホットメルト接着剤の長期的な性質は、長期間にわたってエージングした後であっても(室温又は高温(55℃まで)において2~4週間まで)、概ね変わらないままであった。
【0029】
前述のように、本発明によるホットメルト接着剤組成物の別の利点は、様々な塗布法のもとでの、良好なコーティング特性、及び良好な接着パターン制御に関連する。これらの特性は、一定のコーティング結果を得るために重要である。
【0030】
本発明によるホットメルト接着剤組成物により、連続的又は断続的な塗布様式において、規則的なパターン及び/又は整ったカットオフがもたらされることが判明した。
【0031】
特に、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、所望の量で、接合が必要とされる所望の場所に高速(≧400m/min)及び低温(130~140℃)で、連続的な又は高頻度の断続的なモードで、標準的なコーティングシステムを用いて塗布可能なことが判明した。
【0032】
特に、本発明のホットメルト接着剤組成物により、高速ラインにおける安定的で良好な弾性ストランドの包み込みが提供される。
【0033】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、使い捨て衛生用品の製造ラインにおいて高速でも低速でも、加工性、パターン制御、コーティング特性又は接着性の観点で何ら問題を生ずることなく使用可能なことが判明した。
【0034】
別の態様では、本発明によるホットメルト接着剤はまた、室温(23℃)で高いコールドフロー耐性を示し、このため取り扱い及び貯蔵がより容易である。
【0035】
別の態様では、本発明によるホットメルト接着剤は、塗布システムの構成変化に対して、特に接着剤放出軸とコーティングすべき基材表面との接触角という観点で、より敏感性が低いことが判明した。
【0036】
本発明のさらなる特徴及び利点は、非限定的な例として挙げられる本発明の実施態様に関する以下の記述から明らかになる。
【発明の概要】
【0037】
本発明の第一の対象は、
・少なくとも1つの熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)(「SBC(A)」と呼ぶ)であって、
・少なくとも1つの放射状スチレンブロックコポリマー(A1)(以下、「放射状SBC(A1)」と記載)、及び
・少なくとも1つのスチレンジブロックコポリマー(A2)(以下、「ジブロック(A2)」と記載)
を含有し、
・SBC(A)の合計重量に対して少なくとも30重量%のスチレン含分、及び
・SBC(A)の合計重量に対して50重量%未満で0ではないジブロック(A2)含分
を有する、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)と、
・少なくとも1つの熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)(「SBC(B)」と呼ぶ)であって、
・少なくとも1つの直線状スチレンブロックコポリマー(B1)(以下、「直線状SBC(B1)」と記載)、及び
・少なくとも1つのスチレンジブロックコポリマー(B2)(以下、「ジブロック(B2)」と記載)
を含有し、
・SBC(B)の合計重量に対して少なくとも35重量%のスチレン含分、及び
・SBC(B)の合計重量に対して少なくとも50重量%のジブロック(B2)含分
を有する、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)と、
を含むポリマー混合物である。
【0038】
SBC(A)は好ましくは、
・SBC(A)の合計重量に対して30~50重量%の範囲のスチレン含分、
・SBC(A)の合計重量に対して20~49重量%の範囲のジブロック(A2)含分、及び
・25℃で25重量%のトルエン溶液として、250mPa.sより大きく500mPa.sまでの粘度
を有する。
【0039】
SBC(A)はより好ましくは、
・SBC(A)の合計重量に対して35~45重量%の範囲のスチレン含分、
・SBC(A)の合計重量に対して22~45重量%の範囲のジブロック(A2)含分、及び
・25℃で25重量%のトルエン溶液として、300~500mPa.sの範囲、さらにより好ましくは300~450mPa.sの範囲の粘度
を有する。
【0040】
SBC(B)は好ましくは、
・SBC(B)の合計重量に対して少なくとも40重量%のスチレン含分、
・SBC(B)の合計重量に対して55~80重量%の範囲のジブロック(B2)含分、及び
・25℃で25重量%のトルエン溶液として、200mPa.s以下、好ましくは100~200mPa.sの範囲の粘度
を有する。
【0041】
SBC(B)はより好ましくは、
・SBC(B)の合計重量に対して40~55重量%の範囲のスチレン含分、
・SBC(B)の合計重量に対して60~70重量%の範囲のジブロック(B2)含分、及び
・25℃で25重量%のトルエン溶液として、100~200mPa.sの範囲の粘度
を有する。
【0042】
SBC(A)の、SBC(B)に対する重量比率は好ましくは、0.5~2.5、好ましくは1~2である。
【0043】
好ましくは、本発明によるポリマー混合物は、熱可塑性スチレンブロックコポリマー混合物である。
【0044】
好ましくは、前述のポリマー混合物のスチレン含分全体は、このポリマー混合物の合計重量の少なくとも40重量%を占め、前述のポリマー混合物のスチレンジブロックコポリマー含分全体は、このポリマー混合物の合計重量の30~60重量%を占める。
【0045】
より好ましくは、前述のポリマー混合物のスチレン含分全体は、このポリマー混合物の合計重量の40~45重量%を占め、前述のポリマー混合物のスチレンジブロックコポリマー含分全体は、このポリマー混合物の合計重量の34~55重量%を占める。
【0046】
より好ましくは、SBC(A)及び(B)はともに、スチレン-ブタジエン系ブロックコポリマーであり、これは、SBC(A)及び(B)、特に(A1)、(A2)、(B1)及び(B2)に含まれるスチレンブロックコポリマーのそれぞれが、少なくとも1つの非エラストマーブロックとしてポリスチレンを含み、少なくとも1つのエラストマーブロックとしてポリブタジエンを含むことを意味する。
【0047】
本発明の第二の対象は、本発明による前述のポリマー混合物の成分に加えて、以下のもの:
・少なくとも1つの粘着性付与樹脂(C)、
・少なくとも1つのワックス(D)、及び
・少なくとも1つの可塑剤(E)
を含む、ホットメルト接着剤組成物である。
【0048】
1つの実施態様では、SBC(A)及び(B)の合計量が、本発明によるホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して、好ましくは15~35重量%の範囲、より好ましくは18~35重量%の範囲、さらに好ましくは20~30重量%の範囲にある。
【0049】
SBC(A)及び(B)は特に、ホットメルト接着剤組成物において前述の量範囲内にあるあらゆる重量比率で混合することができる。SBC(A)の、SBC(B)に対する重量比率は好ましくは、0.5~2.5の範囲、好ましくは1~2の範囲にある。
【0050】
別の実施態様において、粘着性付与樹脂(C)の量は、本発明によるホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して、35~65重量%の範囲にあり、ワックス(D)の量は、0.5~5重量%の範囲にあり、可塑剤(E)の量は、5~25重量%の範囲にある。
【0051】
より好ましくは、ホットメルト接着剤組成物は、ホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して、
・SBC(A)及び(B)を含む前述のポリマー混合物を15~35重量%、好ましくは18~35重量%、より好ましくは20~30重量%、
・少なくとも1つの粘着性付与樹脂(C)を35~65重量%、
・少なくとも1つのワックス(D)を0.5~5重量%、
・少なくとも1つの可塑剤(E)を5~25重量%、
含む。
【0052】
本発明のホットメルト接着剤組成物は好ましくは、3℃~10℃の範囲、より好ましくは4℃~9.5℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0053】
本発明の第三の対象は、ホットメルト接着剤組成物の製造方法である。
【0054】
本発明の第四の対象は、弾性体取り付けのため、特に2つの別個の基材の間で弾性材料を結合するための、本発明によるホットメルト接着剤組成物の使用である。
【0055】
本発明の第五の対象は、少なくとも1つの弾性材料及び少なくとも2つの基材を有する積層体であって、該弾性材料が2つの基材の間に挿入されており、かつ本発明によるホットメルト接着剤組成物によって覆われているものである。
【0056】
本発明の第六の対象は、本発明による積層体の製造方法である。
【0057】
本発明の別の対象は、本発明による少なくとも1つの積層体を備える、使い捨て衛生用品である。
【0058】
前述のように、本発明によるホットメルト接着剤組成物の利点の1つは、比較的低温(130℃と低い)及び低圧で高速ライン(少なくとも400m/mn)で使用可能なことであり、これによってメンテナンスの問題及び生産ラインの停止時間を回避することができる。
【0059】
本発明によるホットメルト接着剤は、市販のゴム系接着剤と同等の性能をもたらし、150℃を下回る温度(130~140℃)で、高速(少なくとも400m/nm)で使用できる。
【0060】
本発明のホットメルト接着剤組成物は特に、例えば実施例で説明するような、幾つかの使い捨て衛生用品の製造ラインに存在する低温(120℃)、低速ライン(200m/mn)での塗布にも適している。
【0061】
本発明のホットメルト接着剤組成物は特に、広いプロセスウィンドウで、相対的に低い温度(130~140℃)で、短いオープンタイム~長いオープンタイム(0.2~10秒)で塗布することができる。
【0062】
特に明示しない限り本願において、
・粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて適切な速度で、適切なスピンドルを用いて、当業者に知られたように測定することができ、
・軟化点(sp)は、当分野でよく知られたASTMのRing and Ball methodによって特定することができ、
・結晶化温度は、この分野でよく知られた標準的な熱分析法によって特定することができ、
・ガラス転移点(Tg)は、この分野でよく知られた動的機械分析法(DMA)によって測定できる。
【0063】
本発明のさらなる特徴及び利点は、非限定的な例として挙げられる本発明の実施態様に関する以下の記述から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の理解を助けるための図解を示す。この図は、縮尺通りではない。これは、積層体製造方法を部分的に示したものであり、ストランドガイド(8)付き接触ノズル(10)を端部として有する放出器(9)から構成される接触塗布装置が示されており、このストランドガイドは、複数のオリフィスを備える接触ノズル(10)(Allegro(R))によって基材(4)に一組の弾性ストランド(3)を糊付けするために用いられるものである。接触ノズルのオリフィスの数は、接着剤組成物によってコーティングすべき弾性ストランドの数に相当する。弾性ストランドは、弾性ストランドローラ(5)及びストランドガイド(8)により、各弾性ストランドが、接触ノズルのオリフィスから射出された接着剤組成物によって別個にコーティングされるように、分離及び誘導される。ローラ(6)によって誘導される基材(4)及びコーティングされた弾性材料は、ともに送られながら、ローラ(7)によって相互に接触され、{基材+弾性ストランド}材料(11)を形成する。{基材+弾性ストランド}材料は、方向(12)によって示されたように前方へと送られ、続いて、送られている別の基材により積層されて、2つの基材層の積層体(その間に弾性ストランドが含まれる)を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0065】
成分(A):
「熱可塑性スチレンブロックコポリマー」(A)(以下では「SBC(A)」、「ブレンド(A)」又は「SBCブレンド(A)」と記載)という用語は、本願において、少なくとも1つの放射状スチレンブロックコポリマー(A1)と少なくとも1つのスチレンジブロックコポリマー(A2)とを含む、熱可塑性スチレンブロックコポリマーのブレンドをいう。
【0066】
SBC(A)、特に(A1)及び(A2)に含まれるスチレンブロックコポリマーは、少なくとも1つの非エラストマーブロックA’としてスチレン系ポリマー(好ましくはポリスチレン)を、そして少なくとも1つのエラストマーブロックB’として共役ジエン系ブロックポリマーを含み、この共役ジエン系ブロックポリマーは、水素化されていないのが好ましい。
【0067】
スチレン系ポリマーは好ましくは、ポリスチレンである。しかしながらスチレン系ポリマーはまた、アルキル置換されたスチレンモノマー、アルコキシ置換されたスチレンモノマー、及び/又はこれらと非置換スチレンモノマーとの混合物から誘導されていてもよい。本明細書では便宜上、スチレン、例えば「スチレン系」、「スチレン(ジ)ブロック」、「スチレン-共役ジエン系ブロック」、「スチレン含分」などに関する用語は好ましくは、これらの置換されたスチレンモノマーを含むことが意図されている。
【0068】
特に、放射状SBC(A1)とは、複数の直線状スチレン共役ジエン系ブロックコポリマーが、カップリング剤から誘導される多官能性中心部から放射状に突出している構造を有する、分岐状のスチレン共役ジエン系ブロックコポリマーをいう。
【0069】
放射状SBC(A1)は、以下の式(0)によって表すことができる:
(A’-B’)-Y-(B’’)n’ (0)
式中、
・A’は、スチレン系ポリマーの非エラストマーブロックであり、これは好ましくはポリスチレンの非エラストマーブロックであり、
・B’及びB’’は、同一であるか又は異なって、共役ジエンブロックコポリマーのエラストマーブロックを表し、この共役ジエンは好ましくは、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物から選択され、より好ましくはブタジエンであり、
・Yは、放射状SBC(A1)の製造で使用される多官能性カップリング剤の残基であり、
・nは、少なくとも3の整数、好ましくは3~10の整数であり、より好ましくは3~5の整数であり、
・n’は、0~10の範囲の整数、好ましくは0~4の範囲の整数である。
放射状SBC(A1)は好ましくは、以下の式(1)によって表すことができる:
(A’-B’)-Y (1)
式中、
・A’は、スチレン系ポリマーの非エラストマーブロックであり、これは好ましくはポリスチレンの非エラストマーブロックであり、
・B’は、共役ジエンブロックコポリマーのエラストマーブロックであり、この共役ジエンは好ましくは、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物から選択され、より好ましくはブタジエンであり、
・Yは、放射状SBC(A1)の製造で使用される多官能性カップリング剤の残基であり、
・nは、少なくとも3の整数、好ましくは3~5の範囲の整数である。
【0070】
放射状SBC(A1)の直線状の腕部(A’-B’)を形成するエラストマーブロックと非エラストマーブロックはそれぞれ、同一であるか、又は異なっていてよい。特に、直線状スチレン共役ジエン系ブロックコポリマー(A’-B’)を形成するエラストマーブロックと非エラストマーブロックとの数平均分子量はそれぞれ、相互に異なっていてよく、この分野でよく知られた連続的な重合法のもとで制御できる。
【0071】
放射状SBC(A1)は好ましくは、3つに分岐したスチレンブロックコポリマー、又は4つに分岐したスチレンブロックコポリマーであり、これはより好ましくは、式(1)において、B’がポリブタジエンのエラストマーブロックであり、かつn=3又は4である場合に相当する。
【0072】
カップリング剤とは、幾つかの直線状スチレン共役ジエン系ブロックコポリマー(放射状SBC(A1)の腕部に相当)を放射状に結合可能な多官能性化合物である。使用可能なカップリング剤の種類について、特に制限は無い。
【0073】
カップリング剤の例には、シラン化合物、例えばハロゲン化シラン又はアルコキシシラン、スズ化合物、例えばハロゲン化スズ、エポキシ化合物、例えばポリカルボキシレートエステル又はエポキシ化された大豆油、アクリル酸エステル、例えばペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジビニル化合物、例えばエポキシシラン又はジビニルベンゼンなどが含まれる。これらの具体的な例には、トリクロロシラン、トリブロモシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、ジエチルアジペートなどが含まれる。
【0074】
スチレンジブロックコポリマー(A2)(以下では「ジブロック(A2)」と記載)は、スチレン共役ジエン系ブロックコポリマー、すなわち1つの非エラストマーブロックA’としてスチレン系ポリマー(好ましくはポリスチレン)を、そして1つのエラストマーブロックB’として共役ジエン系ポリマーブロックを含む2ブロックコポリマーであり、この共役ジエン系ブロックポリマーは、水素化されていないのが好ましい。
【0075】
スチレンジブロックコポリマー(A2)は、以下の式(2)によって表すことができる:
A’-B’ (2)
式中、
・A’は、スチレン系ポリマーの非エラストマーブロックであり、これは好ましくはポリスチレンの非エラストマーブロックであり、
・B’は、共役ジエンブロックコポリマーのエラストマーブロックであり、この共役ジエンは好ましくは、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物から選択され、より好ましくはブタジエンである。
【0076】
SBC(A)におけるジブロック(A2)含分とは、SBCブレンド(A)に含まれるスチレンジブロックコポリマー(A2)の重量割合をいう。ジブロック(A2)含分は好ましくは、SBC(A)の合計重量に対して20~49重量%の範囲、より好ましくは22~45重量%の範囲に入る。
【0077】
SBC(A)におけるスチレン含分とは、SBCブレンド(A)のスチレンブロックコポリマーに含まれるスチレン系ポリマーブロックの重量割合をいう。スチレン含分には、SBCブレンド(A)のスチレンブロックコポリマーに含まれる置換されたスチレン系ポリマーブロックの重量割合も、存在する場合には含まれ得る。スチレン含分は好ましくは、SBC(A)の合計重量に対して30~50重量%の範囲、より好ましくは35~45重量%の範囲に入る。
【0078】
放射状SBC(A1)のエラストマーブロック及びジブロック(A2)のエラストマーブロックを形成する共役ジエン系ブロックコポリマー(式(0)、(1)及び(2)におけるB’に相当)は、同じであるのが好ましい。SBC(A)は、スチレン-ブタジエン系のものであるのがより好ましく、これは、放射状SBC(A1)のエラストマーブロック及びジブロック(A2)のエラストマーブロックを形成する共役ジエン系ブロックコポリマーが、ポリブタジエンであること、よって式(0)、(1)及び(2)においてB’がポリブタジエンのエラストマーブロックであることを意味する。
【0079】
25℃で、25重量%のトルエン溶液としての粘度とは、25℃でトルエンを溶媒として用いて25重量%の濃度で有する溶液としての粘度をいい、この粘度は、様々な粘度計、例えばブルックフィールド式粘度計を用いて(適切な速度で、適切なスピンドルを用いて)測定できる。
【0080】
SBC(A)(より好ましくはスチレン-ブタジエン系のもの)は、
・25℃で25重量%のトルエン溶液として、250Pa.s~500Pa.sまで、より好ましくは300~500mPa.sの範囲、さらにより好ましくは300~450mPa.sの範囲の粘度
を有するのが好ましい。
【0081】
有用なSBC(A)は有利なことに、前述の特徴(スチレン含分、ジブロック含分及び/又は粘度)のうち1つ又は複数を兼ね備えることができ、好ましくは前述の特徴を全て、兼ね備えることができる。
【0082】
有用な熱可塑性スチレンブロックコポリマー(A)は、少なくとも1つの置換又は非置換のスチレンモノマーと、少なくとも1つの共役ジエンモノマーとから、カップリング剤を用いて、この分野でよく知られたあらゆるブロック重合法によって作製でき、本発明で使用される、放射状スチレンブロックコポリマーとスチレンジブロックコポリマーとの混合物が形成される。
【0083】
有用なSBC(A)は、市販でも手に入る。市販で手に入る有用なSBCブレンド(A)の例としては、特に以下のものを挙げることができる:
・Eni Versalis社より市販のEuroprene Sol(R)T 6414:4つに分岐した少なくとも1つのスチレン-ブタジエンブロックコポリマーと、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンジブロックコポリマーとを含むSBCブレンド(A)であって、スチレン含分が約40重量%であり、ジブロック含分が約22重量%であり、25℃で25重量%のトルエン溶液としての粘度が400mPa.sであるものに相当、及び
・Eni Versalis社より市販のEuroprene Sol(R)T 6434:3つに分岐した少なくとも1つのスチレン-ブタジエンブロックコポリマーと、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンジブロックコポリマーとを含むSBCブレンド(A)であって、スチレン含分が約40重量%であり、ジブロック含分が約45重量%であり、25℃で25重量%のトルエン溶液としての粘度が350mPa.sであるものに相当。
【0084】
成分(B):
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)(以下では「SBC(B)」、「ブレンド(B)」又は「SBCブレンド(B)」と記載)という用語は、本願において、少なくとも1つの直線状スチレンブロックコポリマー(B1)と少なくとも1つのスチレンジブロックコポリマー(B2)とを含む、熱可塑性スチレンブロックコポリマーのブレンドをいう。
【0085】
SBC(B)、特に(B1)及び(B2)に含まれるスチレンブロックコポリマーは、少なくとも1つの非エラストマーブロックA’としてスチレン系ポリマー(好ましくはポリスチレン)を、そして少なくとも1つのエラストマーブロックXとして共役ジエン系ブロックポリマーを含み、この共役ジエン系ブロックポリマーは、水素化されていないのが好ましい。
【0086】
スチレン系ポリマーは好ましくは、ポリスチレンである。しかしながらスチレン系ポリマーはまた、アルキル置換されたスチレンモノマー、アルコキシ置換されたスチレンモノマー、及び/又はこれらと非置換スチレンモノマーとの混合物から誘導されていてもよい。本明細書では便宜上、スチレン、例えば「スチレン系」、「スチレン(ジ)ブロック」、「スチレン-共役ジエン系ブロック」、「スチレン含分」などに関する用語は好ましくは、これらの置換されたスチレンモノマーを含むことが意図されている。
【0087】
直線状スチレンブロックコポリマー(B1)(以下では「「SBC(B1)と記載」)とは、少なくとも3つのブロックから構成される直線状スチレン共役ジエン系ブロックコポリマーをいう。
【0088】
直線状SBC(B1)は特に、下記の式(3)のトリブロックSBC、又は式(4)のマルチブロックSBCであり得る:
A’-X-A’ A’-(X-A’)-X
(3) (4)
式中、
・A’は、スチレン系ポリマーの非エラストマーブロックであり、これは好ましくはポリスチレンの非エラストマーブロックであり、
・Xは、共役ジエンブロックコポリマーのエラストマーブロックを表し、この共役ジエンは好ましくは、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物から選択され、より好ましくはブタジエンであり、
Xは式(0)、(1)及び(2)で規定したB’と同じであるか、又は異なっており、
Xは、式(0)で規定したB’’と同じであるか、又は異なり、
・mは、少なくとも1の整数である。
【0089】
スチレンジブロックコポリマー(B2)(以下では「ジブロック(B2)」と記載)は、スチレン共役ジエン系ブロックコポリマー、すなわち1つの非エラストマーブロックA’としてスチレン系ポリマー(好ましくはポリスチレン)を、そして1つのエラストマーブロックXとして共役ジエン系ブロックポリマーを含む2ブロックコポリマーであり、この共役ジエン系ブロックポリマーは、水素化されていないのが好ましい。
【0090】
スチレンジブロックコポリマー(B2)は、以下の式(5)によって表すことができる:
A’-X (5)
式中、
・A’は、スチレン系ポリマーの非エラストマーブロックであり、これは好ましくはポリスチレンの非エラストマーブロックであり、
・Xは、共役ジエンブロックコポリマーのエラストマーブロックを表し、この共役ジエンは好ましくは、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物から選択され、より好ましくはブタジエンである。
【0091】
SBC(B)におけるジブロック(B2)含分とは、SBCブレンド(B)に含まれるスチレンジブロックコポリマー(B2)の重量割合をいう。ジブロック(B2)含分は好ましくは、SBC(B)の合計重量に対して55~80重量%の範囲、より好ましくは60~70重量%の範囲に入る。
【0092】
SBC(B)におけるスチレン含分とは、SBCブレンド(B)のスチレンブロックコポリマーに含まれるスチレン系ポリマーブロックの重量割合をいう。スチレン含分には、SBCブレンド(B)のスチレンブロックコポリマーに含まれる置換されたスチレン系ポリマーブロックの重量割合も、存在する場合には含まれ得る。スチレン含分は好ましくは、SBC(B)の合計重量に対して少なくとも40重量%を占め、より好ましくは40~55重量%の範囲に入る。
【0093】
直線状SBC(B1)のエラストマーブロック及びジブロック(B2)のエラストマーブロックを形成する共役ジエン系ブロックコポリマー(式(3)、(4)及び(5)におけるXに相当)は、同じであるのが好ましい。SBC(B)は、スチレン-ブタジエン系のものであるのがより好ましく、これは、直線状SBC(B1)のエラストマーブロック及びジブロック(B2)のエラストマーブロックを形成する共役ジエン系ブロックコポリマーが、ポリブタジエンであること、及び式(3)、(4)及び(5)においてB’がポリブタジエンのエラストマーブロックであることを意味する。
【0094】
25℃で、25重量%のトルエン溶液としての粘度とは、25℃でトルエンを溶媒として用いて25重量%の濃度で有する溶液としての粘度をいい、この粘度は、様々な粘度計、例えばブルックフィールド式粘度計を用いて(適切なスピンドルを用いて)測定できる。
【0095】
SBC(B)(より好ましくはスチレン-ブタジエン系のもの)は、
・25℃で25重量%のトルエン溶液として、好ましくは200mPa.s以下、より好ましくは100~200mPa.sの範囲の粘度
を有する。
【0096】
有用なSBC(B)は有利なことに、前述の特徴(スチレン含分、ジブロック含分及び/又は粘度)のうち1つ又は複数を兼ね備えることができ、好ましくは前述の特徴を全て、兼ね備えることができる。
【0097】
有用な熱可塑性スチレンブロックコポリマー(B)は、少なくとも1つの置換又は非置換のスチレンモノマーと、少なくとも1つの共役ジエンモノマーとから、この分野でよく知られたあらゆるブロック重合法によって作製でき、本発明で使用される、直線状スチレンブロックコポリマーとスチレンジブロックコポリマーとの混合物が形成される。
【0098】
有用なSBC(B)は、市販でも手に入る。市販で手に入る有用なSBCブレンド(B)の例としては、特に以下のものを挙げることができる:
・LCY Chemical Corp Companyより市販のGlobalprene(R)3545:少なくとも1つの直線状スチレン-ブタジエントリブロックコポリマーと、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンジブロックコポリマーとを含むSBCブレンド(B)であって、スチレン含分が43~47重量%であり、ジブロック含分が60~66重量%であり、25℃で25重量%のトルエン溶液としての粘度が150mPa.sであるものに相当、及び
・旭化成より市販のAsaprene(R)T439:少なくとも1つの直線状スチレン-ブタジエントリブロックコポリマーと、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンジブロックコポリマーとを含むSBCブレンド(B)であって、スチレン含分が約45重量%であり、ジブロック含分が60重量%であり、25℃で25重量%のトルエン溶液としての粘度が170mPa.sであるものに相当。
【0099】
放射状SBC(A1)のエラストマーブロック、直線状SBC(B1)のエラストマーブロック、並びにジブロック(A2)及び(B2)のエラストマーブロックを形成する共役ジエン系ブロックポリマー(式(0)~(5)におけるB’及びXに相当)は、同じであるのが好ましい。SBC(A)及び(B)は、スチレン-ブタジエン系ブロックコポリマーであるのがより好ましく、これは、放射状SBC(A1)のエラストマーブロック、直線状SBC(B1)のエラストマーブロック、並びにジブロック(A2)及び(B2)のエラストマーブロックを形成する共役ジエン系ブロックコポリマーが、ポリブタジエンであること、ひいては式(0)~(5)においてB’がポリブタジエンのエラストマーブロックであることを意味する。
【0100】
SBC(A)及び(B)は、あらゆる重量比率で混合できる。SBC(A)の、SBC(B)に対する重量比率は好ましくは、1~2である。
【0101】
SBC(A)及び(B)で先に言及した非エラストマーブロックは通常、80℃より高いTgを有し、SBC(A)及び(B)で先に言及したエラストマーブロックは通常、-10℃より低いTgを有する。
【0102】
SBC(A)及び(B)の合計量は、本発明によるホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して、好ましくは15~35重量%の範囲、より好ましくは18~35重量%の範囲、さらに好ましくは20~30重量%の範囲にある。
【0103】
成分(C):
本発明により使用される粘着性付与樹脂(C)は好ましくは、120℃までの軟化点、より好ましくは40~120℃の範囲の軟化点を有する。
【0104】
粘着性付与樹脂(C)は好ましくは、以下のものから選択される:
(i)約10℃~120℃の軟化点を有するテルペン樹脂のホモポリマー、このポリテルペン樹脂は一般的に、テルペン炭化水素、例えばモノテルペン(又はピネン)を、フリーデル・クラフツ触媒の存在下で重合させることによって得られるものである、
(ii)α-メチルスチレンの重合によって、又はα-メチルスチレンとその他の炭化水素モノマー(例えばスチレン及び/又はビニルトルエン)との共重合によって得られる樹脂、この樹脂は、1つ又は複数のフェノールの作用によって変性されていても、変性されていなくてもよい、
(iii)フェノール変性テルペン樹脂、例えば酸性媒体中でテルペン及びフェノールを縮合することにより得られる樹脂生成物、
(iv)天然由来の、又は変性されたロジン、例えば松脂から抽出したロジン、松根から抽出したウッドロジン、並びにモノアルコール又はポリオール(例えばグリセロール及びペンタエリトリトール)によって水素化、二量体化、ポリマー化又はエステル化された、これらの誘導体、
(v)脂肪族及び脂環式石油由来の炭化水素樹脂、この樹脂は、主に脂肪族又は脂環式オレフィンとジオレフィンとから成るモノマーの重合から得られるものであり、これには、水素化された脂肪族及び脂環式石油系炭化水素樹脂も含まれる、
(vi)芳香族石油由来の炭化水素樹脂、及び水素化されたその誘導体、
(vii)脂肪族/芳香族石油由来の炭化水素樹脂、及び水素化されたその誘導体、並びに
(viii)これらの混合物。
【0105】
好ましい実施態様によれば、本発明によるホットメルト接着剤組成物で使用される粘着性付与樹脂(C)は、先に規定したタイプ(v)、(vi)及び(vii)の粘着性付与樹脂、並びにこれらの混合物から選択される。粘着性付与樹脂(C)は特に、石油フラクション(通常は、石油原料からのC5、C9又はC10留分と呼ばれる)から生じる、炭素数が概ね5、9又は10である不飽和脂肪族炭化水素の混合物を水素化、重合又は(芳香族炭化水素と)共重合することによって得られる粘着性付与樹脂から選択される。
【0106】
特に、タイプ(v)の粘着性付与樹脂は好ましくは、軟化点が約60℃~120℃である脂肪族(脂環式含む)石油炭化水素樹脂(C5又はC10)であり、この樹脂は通常、C5又はC10炭化水素モノマー(又は石油原料のC5若しくはC10留分)から生じ、相応する水素化された誘導体は、これら全体又はその一部を引き続き水素化することによって得られる。
【0107】
特に、タイプ(vi)の粘着性付与樹脂は好ましくは、軟化点が約60℃~120℃である芳香族石油炭化水素樹脂(C9)であり、この樹脂は通常、C9炭化水素モノマー(又は石油原料のC9留分)から生じ、相応する水素化された誘導体は、これら全体又はその一部を引き続き水素化することによって得られる。
【0108】
特に、タイプ(vii)の粘着性付与樹脂は好ましくは、軟化点が約60℃~120℃である脂肪族(脂環式含む)/芳香族石樹脂(C5又はC10/C9)であり、この樹脂は通常、C5又はC10/C9炭化水素モノマー(又は石油原料のC5若しくはC10及びC9留分)から生じ、相応する水素化された誘導体は、これら全体又はその一部を引き続き水素化することによって得られる。
【0109】
グループ(v)又は(vii)に属する粘着性付与樹脂を製造するために有用なC5炭化水素モノマーの例としては、トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンタジエン、シクロペンテン、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0110】
グループ(v)又は(vii)に属する粘着性付与樹脂を製造するために有用なC10炭化水素モノマーの例としては、C5炭化水素モノマーの二量体、例えばジシクロペンタジエンを挙げることができる。
【0111】
グループ(vi)又は(vii)に属する粘着性付与樹脂を製造するために有用なC9炭化水素モノマーの例としては、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、インデン、メチルスチレン、スチレン、メチルインデン、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0112】
粘着性付与樹脂(C)は、市販で手に入る。
【0113】
特に、先に規定したタイプ(i)、(ii)、(iii)及び(iv)のものについては、以下の製品を挙げることができる:
・タイプ(i)の樹脂:Arizona Chemical社から販売されている、取引名Sylvagum(R)TR、及びSylvares(R)TRシリーズ(7115,7125,A25L,B115,M1115)、
・タイプ(ii)の樹脂:Cray Valley社から手に入るNorsolene(R)W100、これは、フェノールを作用させずに、α-メチルスチレンの重合により得られるものである、
・タイプ(iii)の樹脂:DRT社から手に入るDertophene(R)1510;同社から得られるDertophene(R)H150;Arizona Chemical社から得られるSylvarez(R)TP 95、これらはフェノール変性されたテルペン樹脂である、
・タイプ(iv)の樹脂:Arizona Chemical社から手に入るSylvalite(R)RE 100、これはロジンとペンタエリトリトールとのエステルである、
(v)の樹脂:Exxon Chemicalsから手に入るEscorez(R)5400、これは約100℃の軟化点を概ね有する、水素化されたジシクロペンタジエン樹脂である、
・タイプ(vi)の樹脂:Eastmanから手に入るRegalite(R)R5100、及びCray-Valleyから手に入るWingtack(R)Extra。
【0114】
特に、先に規定したタイプ(v)、(vi)及び(vii)のものについては、以下の製品を挙げることができる:
・タイプ(v)の樹脂:Kolon社から市販のSukorez(R)SU210、おおよそ110℃の軟化点を有する、部分的に水素化された脂肪族及び脂環式石油由来の炭化水素樹脂、
・タイプ(vi)の樹脂:Kolon社から市販のHikotack(R)P 90、おおよそ90℃の軟化点を有する、水素化されていない芳香族石油由来の炭化水素樹脂、Arakawa社より市販のArkon(R)M90、おおよそ90℃の軟化点を有する、部分的に水素化された芳香族石油由来の炭化水素樹脂、及びArakawa社より市販のArkon(R)M100、おおよそ100℃の軟化点を有する、部分的に水素化された芳香族石油由来の炭化水素樹脂、
・タイプ(vii)の樹脂:Zeon社より市販のQuintone(R)DX390N、およそ90℃の軟化点を有する、水素化されていない脂肪族及び芳香族石油由来の炭化水素樹脂、及びKolon社より市販のSukorez(R)SU 400、およそ110℃の軟化点を有する、水素化された脂肪族及び芳香族石油由来の炭化水素樹脂。
【0115】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、少なくとも1つの粘着性付与樹脂(C)を、ホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して好ましくは35~65重量%、より好ましくは40~65重量%、含む。
【0116】
成分(D):
「ワックス」とは、室温(23℃)では固体であり、重量平均分子量が10,000g/mol未満の半結晶性化合物であると理解されるべきである。
【0117】
本発明により使用されるワックス(D)は好ましくは、結晶化温度が40~70℃の範囲、より好ましくは40~60℃の範囲にある。
【0118】
本発明により使用されるワックス(D)は好ましくは、融点が120℃以下、より好ましくは50~120℃の範囲にある。
【0119】
ワックス(D)は好ましくは、3~6dmmの範囲、好ましくは4~5dmmの範囲の硬度を有する。dmmで表される硬度は、ASTM D-5によって測定できる。
【0120】
ワックス(D)は、以下のものから選択することができる:
(D1)石油系ワックス、例えばパラフィンワックス、好ましくは融点(mp)が約54℃~77℃のもの、微結晶性ワックス、好ましくは融点が約57℃~94℃のもの、又はポリオレフィン系ワックス、
(D2)一酸化炭素と水素との重合によって得られる合成ワックス、例えばフィッシャー・トロプシュワックス、
(D3)動物、魚及び植物にしばしば由来する水素化された脂肪及び油に相当する天然ワックス、例えば水素化された獣脂、ラード、大豆油、水素化された綿実油、水素化されたヒマシ油、水素化されたニシン油、水素化された肝油、これらは全て、水素化されているお陰で室温(23℃)で固体である、及び
(D4)これらの混合物。
【0121】
ワックス(D)の融点は、ASTM法のD127-60によって特定できる。
【0122】
有用なワックス(D)は好ましくは、タイプ(D1)に基づくポリオレフィンであり、より好ましくは、ポリエチレン系ワックスである。
【0123】
タイプ(D1)のポリオレフィンワックスは好ましくは、85℃~120℃の範囲の融点を有する。
【0124】
ワックス(D)は、市販で手に入る。特に、以下のポリエチレン系ワックスを挙げることができる:Honeywellから手に入るAC(R)617、SCG Performance Chemicals社から手に入るLP1020P(R)、LP1040P(R)、及びLP1060P(R)、並びにWestlake Chemical社から手に入るEpolene(R)。
【0125】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は好ましくは、少なくとも1つのワックス(D)を、ホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して0.5~5重量%、含む。
【0126】
成分(E):
本発明により使用される可塑剤(E)は、SBC系ホットメルト接着剤組成物で通常使用される慣用の可塑化油について粘度を低下させたものから選択することができ、また以下のもののいずれか、又はこれらの混合物からも選択できる:鉱油、石油由来の油、例えばパラフィン油及びナフテン油、並びにオレフィンオリゴマー、及び低分子量ポリマー、グリコールベンゾエート、並びに水素化されていない植物油及び動物性油、及びこのような油の誘導体。
【0127】
本発明により使用される可塑剤(E)は、非晶質材料であり、通常は、室温(23℃)で、又は少なくともこの可塑剤を使用する温度では、液状である。
【0128】
使用可能な石油由来の油は、芳香族炭化水素を僅かな割合で含む相対的に沸点が高い材料である。この点について芳香族炭化水素は、油に対して好ましくは30重量%未満、特に15重量%未満であるのが望ましい。或いは、油は完全に非芳香族であり得る。
【0129】
オレフィンオリゴマーは、重量平均分子量が約100~10,000g/molであるポリプロピレン、ポリブテン、水素化されたポリイソプレン、水素化されたポリブタジエンなどであり得る。
【0130】
適切な水素化されていない植物油及び動物性油には、通常の脂肪酸のグリセロールエステル、及びその重合生成物が含まれる。その他の可塑剤は、本発明によるポリマー混合物と適切な相溶性を有していれば、使用できる。
【0131】
本発明によるホットメルト接着剤組成物において使用するのが好ましい可塑剤(E)は、石油由来の油から、より好ましくはナフテン油及びパラフィン油から選択される。
【0132】
ナフテン油及びパラフィン油は、以下のものの混合物から成る石油系油である:ナフテン系炭化水素(脂肪族、飽和若しくは不飽和のC~C員の炭化水素環、好ましくは脂肪族の飽和若しくは不飽和のC~C員環のシクロアルカン、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン)、パラフィン系炭化水素(飽和、直鎖状若しくは分枝状のアルカン)、及び芳香族炭化水素(芳香族炭化水素環、これは単環式若しくは多環式であってよく、好ましくは芳香族のC員の炭化水素環である)。
【0133】
ナフテン系油とパラフィン系油とは、油中の炭化水素の各タイプの量に基づいて分類される。パラフィン油は通常、パラフィン系炭化水素の含分が、可塑剤の合計重量に対して少なくとも50重量%であり、ナフテン系油は、ナフテン系炭化水素の含分が、可塑剤の合計重量に対して30~40重量%である。
【0134】
本発明により使用される1つ又は複数の可塑剤(E)は好ましくは、ナフテン系油である。
【0135】
本発明により使用される有用な可塑剤(E)は、市販で手に入る。例えば、NynasからNyflex(R)223及びNyflex(R)222Bという取引名で市販されているものを挙げることができ、これらを使用するのが好ましい。
【0136】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は好ましくは、少なくとも1つの可塑剤(E)を、ホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して5~25重量%、含む。
【0137】
安定剤:
本発明によるポリマー混合物又はホットメルト接着剤組成物において、少なくとも1つの安定剤を使用可能であるのが好ましい。
【0138】
安定剤は特に、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を含む。有用な安定剤は、SBC系ホットメルト接着剤組成物において通常使用されるもののいずれかであり得る。
【0139】
酸化防止剤は好ましくは、高分子量の立体障害フェノール及び多官能性フェノール、例えば硫黄及びリンを含有するフェノールから選択される。立体障害性フェノールは、当業者によく知られており、フェノール性ヒドロキシ化合物のすぐ近位に立体障害性ラジカルをも有するフェノール化合物として特徴付けることができる。特に、第三級ブチル基は一般的に、フェノール性ヒドロキシ基に対して少なくとも1つのオルト位にあるベンゼン環上で置換されている。これらの立体障害性置換ラジカルがヒドロキシ基の近位に存在することによって、その伸展頻度を遅らせ、これに相応してその活性をも妨げる。よってこのような立体障害性により、安定化特性を有するフェノール化合物がもたらされる。代表的な立体障害性フェノールには、以下のものが含まれ得る:
・1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;
・ペンタエリトリトールテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
・n-オクタデシル-3(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
・4,4′-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);
・4,4′-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール);
・2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;
・6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン;
・2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン;
・ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート
・2-(n-オクチルチオ)エチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート;及びソルビトールヘキサ-(3,3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート。
【0140】
これらの安定化剤の性能は、これらと相乗効果をもたらす化合物(例えばチオジプロピオネートエステル及びホスファイト)と組み合わせて利用することにより、さらに強化できる。
【0141】
特に好ましい酸化防止剤は、BASFから手に入るIrganox(R)1010(テトラキス(メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン)である。
【0142】
酸化防止剤は好ましくは、本発明によるポリマー混合物又は本発明によるホットメルト接着剤組成物に対して、0.1~2重量%、好ましくは0.3~1重量%を占める。
【0143】
その他の任意成分:
前述のもの以外の1つ又は複数の成分(添加剤とも呼ぶ)は、本発明によるポリマー混合物若しくは本発明によるホットメルト接着剤組成物において使用できるか、又はこれらのいずれかに含まれていてよい。
【0144】
1つ又は複数の任意成分は、本発明によるポリマー混合物又は本発明によるホットメルト接着剤組成物の物理特性を変性するために、組み込まれていてよい。
【0145】
使用可能な任意成分の中でも、充填材、界面活性剤、着色剤、蛍光剤、蛍光阻害剤、レオロジー調整剤、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0146】
本発明によるポリマー混合物又はホットメルト接着剤組成物に存在し得る1つ又は複数の任意成分の合計量は、本発明によるポリマー混合物又はホットメルト接着剤組成物の合計重量に対して0~10重量%の範囲、好ましくは0.1~5重量%の範囲、より好ましくは0.1~2重量%の範囲にあり得る。
【0147】
本発明によるポリマー混合物は、SBC(A)及び(B)を所定の割合で、任意選択的に1つ又は複数の安定剤及び/又は1つ又は複数の添加剤とともに混合し、この混合物を撹拌しながら溶融することによって、製造することができる。本発明によるポリマー混合物は特に、SBC(A)及び(B)を、2軸式押し出し機付き溶融混合槽内に装填することによって製造される。
【0148】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、
・本発明によるポリマー混合物の成分少なくとも1つ、
・少なくとも1つの粘着性付与樹脂(C)、
・少なくとも1つのワックス(D)、及び
・少なくとも1つの可塑剤(E)
を混合することによって製造できる。先に規定したその他の任意成分も、添加・混合できる。
【0149】
よって本発明はまた、本発明によるホットメルト接着剤組成物の製造方法に関する。
【0150】
特に、本発明による接着剤組成物は、あらゆる公知の技術を用いて製造することができる。この手順の代表例には、粘着性付与樹脂以外の全ての成分を、ローターを備えたジャケット式混合釜に入れ、その後、この混合物の温度を150℃~177℃の範囲の温度に上げることが含まれ得る。この工程において使用される厳密な温度は、具体的な成分の融点に依存することが、理解されるべきである。1つ又は複数の粘着性付与樹脂は、引き続き、撹拌下で釜に導入し、一定で均質な混合物が形成されるまで混合を続けることができる。別の実施態様では、1つ又は複数の粘着性付与樹脂の一部を熱のもとでまず全ての成分と混合し、それから1つ又は複数の粘着性付与樹脂の残りの部分を、撹拌しながら引き続き釜に導入し、一定で均質な混合物が形成されるまで、混合を続けることができる。
【0151】
釜の内容物は、混合工程全体の間、不活性ガス、例えば二酸化炭素及び窒素によって保護することができる。
【0152】
こうして生じるホットメルト接着剤組成物は、その後、様々なコーティング技術を用いて基材に塗布することができる。
【0153】
特に、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、2つの別個の基材間で弾性材料を結合し、これによって積層体を製造するために使用できる。
【0154】
よって本発明は、少なくとも1つの弾性材料と少なくとも2つの基材とを備える積層体に関し、該弾性材料は、2つの基材の間に挿入されており、かつ本発明によるホットメルト接着剤組成物によってこれらの基材に接合されている。
【0155】
「積層体」とは、多層材料、すなわち少なくとも2つの層から成る材料と理解されるべきである。
【0156】
材料は通常、付勢力をかけた後に弾性回復率が高ければ(すなわち低い永久ひずみ)、弾性と考えられる。弾性材料は理想的には、3つの温度依存特性(すなわち永久ひずみの低さ、及び応力緩和又は荷重緩和割合の低さ)の組み合わせによって特徴づけられる。これはすなわち、(1)材料が伸展している間の応力緩和又は荷重解放が無い又は低いこと、及び(2)伸展、付勢又は直線化後にもとの形状への完全な又は高い復元力が停止することである。よって弾性材料は通常、(繊維形態の場合には)縮れの有無に拘わらず100%超の破断点伸びを有する希釈剤を含有しないポリマーであり、その二倍の長さにまで伸ばし、1分間そのまま保ち、それから解放した場合に、解放されてから1分以内にもとの長さの1.5倍未満に収縮する。このようなポリマーには、天然ゴム又は合成ゴム、セグメント化されたポリウレタン(ポリウレタン尿素含む)、例えばポリエーテルウレタン及びポリエステルウレタン、ポリエーテルエステル、弾性ポリエチレン及びポリプロピレン、並びにポリエーテルアミドが含まれるが、これらに限られない。
【0157】
1つの実施態様によれば弾性材料は、弾性繊維、テープ、フィルム、ストリップ、コーティング、リボン及び/又はシート、並びに実質的に直鎖状のエチレンポリマーから選択される。
【0158】
弾性材料の例としては、スパンデックス(例えばLycra(R)スパンデックス、及びLycra(R)XA、潤滑仕上げ剤をほとんど又は全く表面に有さないスパンデックス)製のものを挙げることができる。1つの実施態様では弾性材料が、スパンデックス又はメルトスパンしたエラストマーを含む。別の実施態様では弾性材料が、天然又は合成ゴムを繊維の形態で、又は幅が約10mm未満のストリップの形態で含む。
【0159】
アメリカ国際貿易委員会はスパンデックスについて、繊維形成物質が、セグメント化されたポリウレタンを少なくとも85重量%含む長鎖合成ポリマーである人工繊維と規定している。Lycra(R)スパンデックスは、ほぼ理想的な温度依存弾性を示すことで知られている。
【0160】
1つの実施態様によれば、1つ又は複数の弾性材料は、ポリオレフィンフィルム(例えばポリエチレン又はポリプロピレンのフィルム)から選択される第一の基材と、不織布材料(例えば不織布ポリプロピレン又は不織布ポリエチレン)から選択される第二の基材との間に挿入されている。
【0161】
1つの実施形態によれば、本発明の積層体は、2つの基材の間に挿入された弾性材料を少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ有する。
【0162】
本発明の実施形態によれば、弾性材料は、弾性体ストランドの形状であり、好ましくは235dtx~1520dtx(デシテックス)の範囲にわたる線密度を有するものである。
【0163】
本発明による積層体は、当業者によく知られた方法によって製造することができる。米国特許第6,967,178号は、積層体の製造方法の例を記載している。
【0164】
本発明による積層体の製造方法は、以下の工程を含む:
・第一の基材(4)を用意する工程、
・少なくとも1つの弾性材料(3)を用意する工程、
・本発明による接着剤組成物を、少なくとも1つの弾性材料(3)上に塗布する工程、
・本発明によるホットメルト接着剤組成物によって覆われた1つ又は複数の弾性材料を、第一の基材(4)と接触させる工程、
・第二の基材を、1つ又は複数の弾性材料と接触させる工程、
・2つのローラ間で加圧する工程。
【0165】
弾性材料は、本発明によるホットメルト接着剤組成物の塗布前に伸ばし、特に弾性体の長さが静置状態(すなわち伸ばしていない状態)の長さの2~4倍になるように伸ばし、理想的には、弾性体の長さが静置状態の長さの3倍になるように伸ばす。
【0166】
好ましくは、ホットメルト接着剤組成物は、150℃未満の温度、好ましくは130~140℃の範囲、より好ましくはおよそ130℃の温度で塗布する。
【0167】
ニップロールにおける積層体の加圧レベルは好ましくは、約1barである。
【0168】
オープンタイムは、接着剤組成物がその接着特性を保つ間の時間と定義される。これは特に、弾性材料への接着剤組成物の塗布と、その上への第二の基材の塗布との間に時間に相当する。
【0169】
1つの実施態様によれば、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、0.2秒~10秒間の範囲のオープンタイムを有し、これによって本組成物は、あらゆる慣用の高速又は低速ラインで使用可能になる。
【0170】
ホットメルト接着剤組成物は好ましくは、0.2~2秒の範囲のオープンタイムを有し、これによって本組成物は、新型の高速ライン(少なくとも400m/mnのもの)で使用可能になる。
【0171】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、接触式塗布によって、又は非接式触塗布によって弾性材料に塗布することができる。
【0172】
例えば、本発明によるホットメルト接着剤組成物を塗布するために有用なコーティング法には、ロールコート、印刷法、スロットコーティング、押出又はスプレーガンコーテイング法が含まれる。スプレーガン技術は、接着性スプレー、ひいては接着パターンを形成する圧縮空気を用いて、又はこれを用いずに行うことができる。ホットメルト接着剤組成物は一般的に、タンク内で溶融させることができ、それからホースを通じて基材上にある最終的なコーティングスポットへと給送される。
【0173】
本発明によるホットメルト接着剤組成物は、弾性材料上に連続的に、又は断続的に塗布することができる。連続的な塗布では、溶融状態の接着剤組成物が、塗布手段(以下では放出機と呼ぶ)のノズルから中断されることなく射出され、稼働プロセスのもと、コーティングすべき弾性材料へと向けられる。断続的な塗布の場合、放出機の開口部によって制御される溶融接着組成物の射出は、非連続的である。この塗布様式では、短時間の間に放出機のスイッチを交互に入れたり切ったりする。
【0174】
ノズルは、様々な設計のものであってよく、接着剤組成物を射出しようとする幾つかの出口のうちの1つを備えることができる。
【0175】
接触式塗布とは、接着剤組成物を弾性材料上に塗布する間に、接着ノズル出口が弾性材料と接触しているコーティング法をいう。接触式塗布は、弾性材料上に接着剤組成物を直線状に塗布するいわゆる接触ノズルを使用する。弾性材料がストランド形態の場合、接着剤組成物を弾性材料上に、ストランドに沿って直線状に塗布する。積層体中に複数の弾性ストランドがある場合、接着剤組成物は、各ストランド上に個別に塗布する。こうして得られる接着パターンは、1つ又は複数の弾性ストランドの1つ又は複数のラインに従う(一連の)連続的な線である。放出機は、接着剤組成物を幾つかの弾性ストランド上に同時に塗布するために、幾つかの出口を有する1つのノズル、又は複数のノズルに接続されていてよい。接触式塗布により接着剤組成物を塗布するための例示的な方法は、米国特許出願第2012/0258246号に記載されている。接着剤を接触式で塗布するために使用可能なノズルの例は、Nordson社のAllegro(R)ノズル、又はITW社のSCS(R)である。塗布法は、弾性材料上への接着性コーティングを助けるために、空気によって補助することができる。
【0176】
接触式塗布法によって塗布されるホットメルト接着剤組成物の量は好ましくは、1つの伸ばした弾性ストランド1リニアメータ当たり(mg/lm)10~100mgの範囲、好ましくは1つの伸ばした弾性ストランド1リニアメータ当たり20~50mgの範囲である。ホットメルト接着剤組成物を塗布する前の弾性ストランドの伸長比は好ましくは、伸ばした弾性ストランドの長さが、弾性ストランドの長さが静置状態(すなわち伸ばしていない状態)の長さの2~4倍になるようにし、理想的には、弾性ストランドの長さが静置状態の長さの3倍になるように伸ばす。
【0177】
本発明によるホットメルト接着剤組成物の別の利点は、市販の幾つかのSBC系ホットメルト接着剤組成物よりも、塗布装置の構成変化に対して敏感性が低いことである。特に、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、より広い接触角γ範囲で接触式塗布装置により弾性材料上に塗布することができる。実際に接触式塗布法では、市販のSBC系ホットメルト接着剤組成物よりも、本発明によるホットメルト接着剤組成物によって良好な接着剤コーティング及び良好な接着パターンを得ることが容易であることが判明した。それと言うのもSBC系ホットメルト接着剤組成物の場合、特定の接触角γを形成するためには、塗布装置のヘッド及びコーティングすべき弾性材料を、特定の位置に置く必要があったからである。
【0178】
接触角γとは、接着剤組成物を塗布することが意図されている弾性材料の上面と、弾性材料に面したノズル出口(又はオリフィス、ここから接着剤組成物が放出される)と並んでいる放出機の本体の軸との交点で形成される角度をいう。この角度の代表的なものが、本図説の目的として図1に示されており、γは、角度α及びβの合計に相当し、ここでβは、接着剤組成物を塗布することが意図されている弾性材料の上面と、地面に対して垂直な垂直軸(2)との交点で形成される角度であり、αは、ノズル出口(1)と並んでいる放出機本体の軸と、垂直軸(2)との交点で形成される角度である。
【0179】
非接触式塗布とは、接着剤組成物を弾性材料上に塗布する間に、接着ノズル出口が弾性材料と接触していないコーティング法をいう。非接触式塗布は、弾性材料から離れたところから弾性材料上に接着剤組成物を塗布する、いわゆる非接触ノズルを使用する。塗布法は、弾性材料のコーティングを助けるため、及び/又は特定のパターンを形成するために、空気によって補助することができる。幾つかの非接触式塗布法では、接着剤組成物を弾性材料上にスプレーする。非接触式塗布法によって、接触式塗布法によって得られるものとは異なる様々な種類の接着パターン様式を得ることが可能になる。
【0180】
非接触式コーティング法及びこのような方法によって得られる接着パターンの例には、以下のものが含まれる:
(NC1)以下で詳述するように、らせん状の接着パターン形成を可能にするスパイラルコーティング法、
(NC2)弾性材料の上面でオメガ状に接着パターンを形成可能なオメガコーティング法、
(NC3)弾性材料の上面で波打った及び/又は短繊維形態の接着パターンを形成可能な繊維状コーティング法、
(NC4)弾性材料の上面でドット状に接着パターンを形成可能な連続点接合コーティング法。この最後の方法では、コーターが通常、Nordson社のSurewrap(R)ノズルを備えている。
【0181】
スパイラル塗布(NC1)は、ノズルから射出されるとともに、1つ又は複数の弾性材料に塗布される前に空気流によって向きを変えられる接着剤組成物の塗布を含み、これによって接着剤組成物は、弾性材料の上面にらせんを形成することによって塗布される。積層体中に複数の弾性ストランドがある場合、接着剤組成物は、複数の弾性ストランド上に1工程で塗布される。例えば、積層体が3つの弾性ストランドを含む場合、1つのノズルは、3つのストランド上に接着剤組成物をスプレーすることによって同時に塗布できる。3つより多いストランド、例えば6つ又は9つのストランドを備えることも可能であり、このような場合、幾つかのノズルが、接着剤組成物をスパイラル塗布によって複数のストランド上に塗布することができる。
【0182】
タイプ(NC4)のコーティング法は、スパイラル塗布法(NC1)に比して、弾性ストランドを高速で、接着剤組成物について低い付与レベルでコーティングするために好ましい。この好ましいコーティング法において、接着剤組成物は、ノズルの一組の穴から射出される。各弾性ストランドは、ストランドガイドによって各オリフィスに近い距離で維持され、これにより、ノズルの各穴に対して、弾性ストランドが向かい合うことになる。各ノズルオリフィスから射出された接着剤組成物はその後、接着剤組成物を弾性ストランドに塗布する前に空気流を用いることによって向きを変えられて弾性ストランドが前記オリフィスに向かい合い、これにより接着剤組成物は、各弾性ストランドの周囲でそれぞれ巻きつくことによって、部分的に各弾性ストランドを包み込む。こうして得られる接着パターンは、弾性ストランドのラインに従う一組のドット状の線である(弾性ストランドの上から見た場合)。ドット接合塗布のためのノズルの例は、Nordson社のSurewrap(R)ノズルである。
【0183】
スパイラルコーティング法(NC1)について、このような方法によって塗布されるホットメルト接着剤組成物の量は、好ましくは5~100g/m2、好ましくは10~50g/m2、さらにより好ましくは10~20g/m2である。ホットメルト接着剤組成物の量は好ましくは、弾性材料と接触し、かつ接着剤を塗布することが意図されている基材1平方メートルあたりのグラム数(gsm)で表現される。
【0184】
タイプ(NC4)のコーティング法について、このような方法によって塗布されるホットメルト接着剤組成物の量は好ましくは、1つの伸ばした弾性ストランド1リニアメータ当たり(mg/lm)10~100mgの範囲、好ましくは1つの伸ばした弾性ストランド1リニアメータ当たり20~50mgの範囲である。ホットメルト接着剤組成物を塗布する前の弾性ストランドの伸長比は好ましくは、伸ばした弾性体の長さが、弾性体の長さが静置状態(すなわち伸ばしていない状態)の長さの2~4倍になるようにし、理想的には、弾性体の長さが静置状態の長さの3倍になるように伸ばす。
【0185】
前述の非接触式コーティング法以外について、塗布されるホットメルト接着剤組成物の量は、この分野で使用されるあらゆる慣用の量であり得る。
【0186】
接触式又は非接触式塗布法において、断続モードで設定すべきON/OFFパラメータは、製造すべき使い捨て衛生用品の種類に応じて、特に接着剤組成物を塗布する基材の長さに応じて、決定することができる。「OFF」とは、接着剤組成物が基材上に塗布されていないことを意味し、「ON」とは、接着剤組成物が基材上に塗布されていることを意味する。特に赤ちゃん用おむつについて、断続モードは通常、29cmOFF/33cmONに設定され、これは接着剤組成物が、62cmの基材長さごとに33cmの長さにわたって塗布され、接着剤でコーティングされた領域はそれぞれ、長さ29cmのコーティングされていない領域によって隔てられていることを意味する。大人用おむつについては、接着剤組成物がより長い基材部分に塗布されることになる。
【0187】
本発明の実施態様によれば、本発明によるホットメルト接着剤組成物は、121℃で測定した粘度が20,000mPa.s以下であり、好ましくは15000~20,000mPa.sの範囲にある。
【0188】
ホットメルト接着剤組成物は好ましくは、135℃で測定した粘度が、10,000mPa.s以下、好ましくは9,000mPa.s以下であり、ガラス転移温度Tgが1℃~15℃の範囲、好ましくは4℃~10℃の範囲にあり、このことは、加工及び使用するのが特に容易であるという、本発明によるホットメルト接着剤組成物の利点をもたらす。
【0189】
本発明の別の対象は、本発明による積層体を備える使い捨て製品である。
【0190】
使いすいて製品は好ましくは、使い捨て衛生用品であり、これは好ましくは、おむつ、トレーニングパンツ、吸収性アンダーパンツ、成人用失禁製品、女性用衛生用品などから選択される。
【実施例
【0191】
本発明による実施例1~5の接着剤組成物と、比較例1~3の接着剤組成物を以下に開示するが、これらの物理特性及び性能を比較した。
【0192】
比較例1、2の接着剤組成物、及び本発明による実施例1~5の接着剤組成物は、表1に示した成分を、先に詳細な説明で述べた方法に従って混合することにより製造した。表1で使用した各成分の量は、各接着剤組成物の合計重量に対して重量パーセンテージで表されている。特に、
・比較例1の接着剤組成物は、SBC(B)を含有するが、SBC(A)を含有せず、SBCの合計量は、接着剤組成物の合計重量に対して23重量%であり、
・比較例2の接着剤組成物は、SBC(A)を含有するが、SBC(B)を含有せず、SBCの合計量は、接着剤組成物の合計重量に対して約23重量%であり、
・比較例3の接着剤組成物は、Bostik SAより市販のSBC系接着剤組成物に相当し、SBC(A)及び(B)とは異なるSBCを、接着剤組成物の合計重量に対して約23重量%含有する。
【0193】
表1では以下の成分を使用した:
少なくとも1つの放射状SBCを含有するブレンドとして:
・Eni Versalis社より市販のEuroprene Sol(R)T 6414及びEuroprene Sol(R)T 6434、それぞれSBC(A)に相当、
少なくとも1つの直線状SBCを含有するブレンドとして:
・LCY Chemical Corp Companyより市販のGlobalprene(R)3545、及び旭化成より市販のAsaprene(R)T439、それぞれSBC(B)に相当、
・TSRC Corporation Companyより市販のTaipol(R)4202、これはSBS(B)とは異なり、直線状スチレン-ブタジエンブロックコポリマーに相当し、そのスチレン含分は40重量%であり、ジブロックは含有せず、25℃での粘度は、25%のトルエン溶液として620mPa.sである、
粘着性付与樹脂として:
・Kolon社より市販のSukorez(R)SU210、タイプ(v)の粘着性付与樹脂(C)に相当、
・Zeon社より市販のQuintone(R)DX390N、タイプ(vii)の粘着性付与樹脂(C)に相当、
・Kolon社より市販のSukorez(R)SU 400、タイプ(vii)の粘着性付与樹脂(C)に相当、
・Kolon社より市販のHikotack(R)P 90、タイプ(vi)の粘着性付与樹脂(C)に相当、
・Arakawa社より市販のArkon(R)M90、タイプ(vi)の粘着性付与樹脂(C)に相当、
ワックスとして:
SCG Performance Chemicals社から手に入るLP1020P(R)ワックス、ポリエチレンホモポリマーワックス(D)、
可塑剤として:
Nynasより市販のNyflex(R)223、ナフテン系油(E)、
安定剤として:
BASFより市販のIrganox(R)1010、フェノール系立体障害性酸化防止剤。
【0194】
ホットメルト接着剤組成物の物理特性:
各接着剤組成物の粘度は、異なる温度で、ブルックフィールド粘度計を用いて、適切な速度で、適切なスピンドルを用いて、当分野で知られているように測定したものである。
【0195】
ガラス転移温度(Tg)又は減衰率(Tangδ)の最大値に相当する温度は、動的機械分析(DMA)によって、引張力制御モード(1%)及び6℃/mnの温度勾配にて1Hzの走査速度で測定したものである。
【0196】
これらの測定結果を、以下の表2に示す。
【0197】
耐クリープ性:
Allegro(R)による接触式塗布法、又はSurewrap(R)による非接触式塗布法による積層体の製造:
耐クリープ性試験のための積層検体は、以下で説明するNordson CLT4400コーターにより接着剤組成物を塗布することによって、スパンボンドされた坪量14g/mのポリプロピレン(PP)不織布製の1つの層と、厚さ20μmの1枚の通気性ポリエチレン(PE)フィルムとの間に、300%伸ばした3つの弾性ストランド(T837 Lycra Hyft(R)Fiber)を積層することにより製造した。
【0198】
Nordson CLT4400コーターは、3つのストランドのコーティングを可能にする接触ノズル(Allegro(R))を備えるものか、又は3つのストランドのコーティングを可能にする非接触式ノズル(Surewrap(R))を備えるものを使用し、以下のような条件で作業した:
・ライン速度=500m/mn、
・塗布温度=130℃又は140℃、
・断続モード=29cmOFF/33cmON
・弾性材料への接着剤組成物の塗布と、その上への第二の基材の塗布との間の時間=0.2秒、
・ニップロールでの加圧=1bar、
・接着剤付与レベル=30mg/lm/ストランド。
【0199】
積層体は以下のように作製した:基材及び弾性ストランドは、ローラによってガイドされ、500m/nmのラミネータ速度レートで、積層体製造ラインで稼働させた。弾性材料のストランドは、接触式又は非接触式ノズルを用いてホットメルト接着剤組成物によりコーティングする前に、1:4の伸長比率で伸ばした。ホットメルト接着剤組成物は、130℃又は140℃で各ストランドに塗布した。コーティングされたストランドをその後、稼働条件下で第一の基材(不織PP)と接触させた。第二の基材(PE)を、稼働している重ねられた基材及びコーティングされ伸ばされた弾性ストランド上に塗布し(以下では、{基材+弾性ストランド}と記載する)、これによってコーティングされた弾性ストランドは、第一の基材と第二の基材の間でサンドイッチ状に挟まれる。最後に、ニップロールにより1barの加圧力で多層材料全体を加圧した。
【0200】
スパイラル型非接触式塗布法による積層体の製造:
積層体の製造は、Nordsonより手に入るCF(R)スプレーノズル(繊維状に制御可能なスプレーノズル)を備えたNordson CLT4400コーターを使用した点を除いて前述の通りであり、以下の条件で作業した:
・ライン速度=200m/mn、
・塗布温度=120℃、130℃又は140℃、
・断続モード=29cmOFF/33cmON、
・弾性材料への接着剤組成物の塗布と、その上への第二の基材の塗布との間の時間=0.9秒、
・ニップロールにおける加圧=1bar、
・接着剤付与レベル=15又は25gsm。
【0201】
積層体は以下のように作製した:基材及び弾性ストランドは、ローラによってガイドされ、200m/nmのラミネータ速度レートで、積層体製造ラインで稼働させた。弾性材料のストランドは、非接触式スパイラルノズルを用いてホットメルト接着剤組成物によりコーティングする前に、1:4の伸長比率で伸ばした。ホットメルト接着剤組成物は、120℃、130℃又は140℃で、弾性ストランド及び第一の基材(不織PP)上に、弾性ストランドが第一の稼働基材と接触する点でスプレーした。それから第二の基材(PE)を、稼働している重ねられた基材及びコーティングされ伸ばされた弾性ストランド上に塗布し(以下では、{基材+弾性ストランド}と記載する)、これによってコーティングされた弾性ストランドは、第一の基材と第二の基材の間でサンドイッチ状に挟まれる。最後に、ニップロールにより1barの加圧力で多層材料全体を加圧した。
【0202】
給送圧力
Nordson CLT4400コーターの給送圧力は、マノメータを用いて測定し、接着剤組成物は、接触式又は非接触式ノズルを用いて弾性ストランド上にコーティングした。60barを下回る測定圧が望ましい。その結果を以下の表3に示す(表記はbar)。
【0203】
【0204】
本発明による接着剤組成物(実施例1、3及び5)はいずれも、試験した塗布法全てに適していることが観察された。
【0205】
それとは対照的に、比較例3の接着剤組成物は、高速ラインで稼働する場合、コーターにおけるこの組成物の給送圧力が最大許容圧力(60bar)以上であるため、130℃において接触式塗布法及び非接触式塗布法の要件を満たさないこと、また140℃において非接触式法の要件を満たさないことが観察された。
【0206】
接着パターンの品質
得られた接着パターンの品質は、接着剤コーティングパターンを可視化するため、先に作製した6つの積層体検体について、紫外線により評価した。
【0207】
得られた接着パターンの品質は、以下で詳しく説明するように1~4の評点を付けたのだが、1は接着パターンの品質が最も低く、4は接着パターンの品質が最も高い。
1=接着パターンが極めて悪い:塗布法によって得られた検体が、次のようになることを意味する:
・Surewrap(R)を用いた場合には、ドット状の線のパターンが全く形成されない、
・Allegro(R)を用いた場合には、期待されるような連続的な線の少なくとも一部が、複数の箇所で切れている(又は不連続である)、
・CF(R)スプレーの場合、らせん状のパターンが得られない。
2=接着パターンが不良である:塗布法によって得られた検体が、次のようになることを意味する:
・Surewrap(R)を用いた場合には、幾つかのドット状の線が観察されるが、3本のうち1本が、期待された通りである、
・Allegro(R)を用いた場合には、連続的な線のうち少なくとも1つが、不規則な幅(又は線厚さ)を有する、
・CF(R)スプレーを用いた場合には、スパイラルの連続的な線が、不規則な形態のスパイラルを示すか、又は不適切な幅を有する、
3=接着パターンは良好であるが、なおも欠陥を有する:塗布法によって得られた検体が、次のようになることを意味する:
・Surewrap(R)を用いた場合、3本のドット状の線が観察されるが、特に接着剤の付着及び/又は散らばりの問題に起因して、線の少なくとも1つの開始部/終端部において不完全な点が幾つかある、
・Allegro(R)を用いた場合、均一な連続的な線のうち少なくとも1本が、特に付着及び/又は散らばりの問題に起因して、線の少なくとも1つの開始部/終端部において不完全な点が幾つかある、
・CF(R)スプレーを用いた場合、らせんの連続的な線は、規則的な形状及び規則的な線厚さを示すが、特に接着剤の散らばり、付着及び/又は圧力の問題に起因して、スパイラルラインの少なくとも1つの開始部及び終端部において不完全な部分が幾つかある、
4=接着パターンが完全である:塗布法によって得られた検体が、次のようになることを意味する:
・Surewrap(R)を用いた場合、3本のドット状の線が観察され、線について整った開始部及び終端部では整ったカットオフ、
・Allegro(R)を用いた場合、規則的で同一の線厚さを有する3本の連続的な線が観察され、線について整った開始部及び終端部では整ったカットオフ、
・CF(R)スプレーを用いた場合、良好な大きさ及び規則的で同一の線厚さを有する同一のスパイラルを有する連続的な線が観察され、線について整った開始部及び終端部では整ったカットオフ。
【0208】
評価した6つの積層体から平均点を出した。平均点は、以下の表4に記録した通りであった。3を上回る平均点が望ましい。
【0209】
【0210】
本発明による接着剤組成物(実施例1、3及び5)はいずれも、試験した塗布法全てについて良好な接着パターンにつながる。特に、従来の低速コーティング法で塗布された本発明による実施例5の接着剤組成物について、同じ品質のパターンが得られたことが観察された。
【0211】
それとは対照的に、比較例3の接着剤組成物は、高速ラインで適切に塗布することはできず、また接触式塗布法又は非接触式塗布法のいずれによっても、130℃及び140℃の塗布温度で良好なパターンをもたらさないことが観察された。
【0212】
耐クリープ性の測定
積層検体の耐クリープ性は、本発明による実施例1、3及び5の接着剤組成物と、比較例1、2及び3とを用いて、以下のように測定した。
【0213】
前述のように作製した全長91cmの検体(非接合部29cm+接合部33cm+非接合部29cm)を切り取った。その後、製造した積層体におけるサンドイッチ状弾性ストランドの開始部及び終端部に相当するしわ(以下、NW+弾性体+接着剤+PEフィルムと記載する)に、接合された弾性体の開始部及び終端部を特定するために、印を付ける。それからこの検体を、端部の一方において(以下、NW+PEと記載)、先端により硬質プレキシガラスの矩形片に対して取り付け、弾性ストランドが取り付けられないようにする。その後、積層体(Nw+弾性体+接着剤PEフィルム)を完全に伸ばし切って、検体のもう一方の端部(Nw+PE)を、その先端により同じプレキシガラス板に確実に取り付け、弾性ストランドが取り付けられないようにする。それから、印の間の当初長さを、定規により測定する。この距離をd0とする。それから、プレキシガラス板及び積層体の全体を、38℃の空気循環式炉に移す。これらの条件において応力下にある弾性ストランドは、特定の距離まで元に戻る。4時間後、プレキシガラス板を炉から取り出し、検体をプレキシガラスから取り外し、緩和させる。弾性ストランドが戻っていくにつれて、接合部(Nw+弾性体+接着剤+PEフィルム)は元に戻り、再度しわが形成される。その後、新たなしわの開始及び終了について印を付ける。それから、積層体を再び完全に伸ばし、新たな印の間の距離を定規により、伸ばされた検体で再度測定する。この距離をdとする。耐クリープ性又は接合保持力を、下記式によって計算する:
耐クリープ性(%)=100-(d0-d)×100/d0]
【0214】
試験した6つの検体について結果を平均し、それを以下の表5に記録した。少なくとも75%の平均耐クリープ性が、望ましい。
【0215】
積層検体の製造後、前述の試験を異なる回数及び温度貯蔵条件で行った。
・当初:積層検体の製造後24時間、
・23℃で2週間:積層検体を25℃で2週間貯蔵後、
・55℃で2週間:積層検体を55℃で2週間貯蔵後、
・23℃で4週間:積層検体を25℃で4週間貯蔵後、
・55℃で4週間:積層検体を55℃で4週間貯蔵後。
【0216】
*:130℃での接着剤コーティング性が悪かったため、弾性体取り付け試料を作製不能(弾性体の不良な包み込み、及び不良なカットオフ)
**:以前の試験で接合保持力の値が低かったため、エージングした弾性体の耐クリープ性は測定せず
***:測定せず
【0217】
Allegro(R)を用いた高速の接触式塗布法の場合
本発明による実施例1、3及び5の接着剤組成物から作製された積層体はいずれも、130℃及び140℃での高速レート接触式塗布法において、比較例1~3に比して、当初又は前述の異なる貯蔵条件後に、良好な耐クリープ耐性を示す。
【0218】
本発明によるホットメルト接着剤組成物の接着性能は、室温(23℃)での貯蔵後、又は積層体のエージング後でも、充分なレベル(70%超の耐クリープ性)で経時的に維持されていることも観察された。
【0219】
これとは対照的に、130℃又は140℃で塗布された比較例1及び2の接着剤組成物の耐クリープ性は、23℃又は55℃で2週間貯蔵した後に著しく低下し、満足のいかない耐クリープ性を示すことが観察された。
【0220】
130℃で塗布された比較例3の接着剤組成物の耐クリープ性は、55℃で4週間貯蔵した後に著しく低下し、満足のいかない耐クリープ性を示すことも観察された。
【0221】
比較例の組成物の接着性能は、時間とともに低下するため、耐クリープ性は、良好な弾性体取り付けをもたらすのには、もはや不充分である。
【0222】
Surewrap(R)を用いた高速の非接触式塗布法の場合
本発明による実施例1、3及び5の接着剤組成物から作製された積層体はいずれも、130℃及び140℃での高速レート非接触式塗布法において、比較例1~3に比して、当初又は前述の異なる貯蔵条件後に、同様の又は良好な耐クリープ耐性を示す。特に、比較例3の接着剤組成物は、Surewrap(R)を用いた高速レート非接触式塗布法では、130℃で塗布不能であったことが観察された。
【0223】
本発明によるホットメルト接着剤の接着性能は、室温での貯蔵後、又は積層体のエージング後でも、充分なレベル(70%超の耐クリープ性)で経時的に維持されていることも観察された。
【0224】
これとは対照的に、130℃で塗布された比較例1の接着剤組成物の耐クリープ性は、55℃で2週間貯蔵した後に著しく低下し、満足のいかない耐クリープ性を示すことが観察された。
【0225】
CF(R)スプレーノズル塗布を用いた慣用の非接触式スパイラル塗布の場合
従来の低速非接触式塗布法で塗布された、本発明による実施例5の接着剤組成物から作製した積層体は、経時的に優れた耐クリープ性を示すことが観察された。
【0226】
結論:
よって、本発明による接着剤組成物のみが、試験した方法及び条件の全般にわたって、良好な当初クリープ性能とともに、エージング後の(すなわち貯蔵後の)良好なクリープ性能を示した。
【0227】
実施した様々な試験全てに鑑みると、本発明による接着剤組成物のみが、使用した塗布法(低い塗布温度での早い速度によるライン製造、又は従来型のもの)に拘わらず、良好な加工性、良好なパターン制御性、及び良好な接着性能の間で優れたバランスを示す。
図1