(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】丸編機用シンカカム
(51)【国際特許分類】
D04B 15/32 20060101AFI20220511BHJP
D04B 9/02 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
D04B15/32
D04B9/02
(21)【出願番号】P 2019554966
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2018058554
(87)【国際公開番号】W WO2018197166
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】102017108676.5
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591027710
【氏名又は名称】ジプラ パテントエントビクルングス-ウント ベタイリグングスゲゼルシャフト エムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SIPRA PATENTENTWICKLUNGS-UND BETEILIGUNGS-GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】トレンクレ・ディートマー
(72)【発明者】
【氏名】ライク・ツォーラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォールレープ・マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ボス・ベルント
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-240193(JP,A)
【文献】特開2005-240192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 15/32
D04B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンカ(105)の引き出しと戻りの動きを制御するため
のカム担持体(1)に配置された少なくとも1つのカム部材(3)を備え、カム部材(3)は、シンカ(105)の移動方向にカム担持体(1)に対して調整可能である、丸編機、特にシングルジャージー機用のシンカカムにおいて、
カム部材(3)
はカム担持体(1)に直接配置されて
いて、
調整部材(4)は、カム部材(3)に統合され
ていて、
調整部材(4)によって
、カム担持体(1)に対してカム部材(3)が
変位可能であることを特徴とする、シンカカム。
【請求項2】
カム部材(3)は、カム担持体(1)上でばね予張力を受けていて、カム担持体(1)に対して調整部材(4)によってカム支持面
とカム部材
(3)の下側の摩擦を克服することで、カム部材
(3)が
変位可能であることを特徴とする、請求項1に記載のシンカカム。
【請求項3】
カム部材(3)は、皿ばね(7)を備えた少なくとも1本のネジ(6)によってカム担持体(1)に固定されていて、スロット又はカム部材(3)を通すネジの軸よりも大きな直径の穴(8)を通るネジ(6)がガイドされることを特徴とする、請求項2に記載のシンカカム。
【請求項4】
ネジ(6)が、カム部材(3)の調整経路の方向に傾斜してカム担持体(1)にねじ込まれていることを特徴とする、請求項3に記載のシンカカム。
【請求項5】
調整部材(4)は、調整部材(4)又はカム担持体1の螺旋溝(4.5)に係合するピン(4.4)に接続された回転可能な調整ヘッド(4.1)を備えていることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載のシンカカム。
【請求項6】
調整部材(4)は、カム部材(3)の端面に配置され
ていて、カム部材
(3)は、歯車、歯付きラック又はウォームギアによっ
てカム担持体(1)に対して変位可能であることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載のシンカカム。
【請求項7】
シンカ(105)の長手運動方向に垂直なカム部材(3)の移動を防ぐガイド(9)が提供されていることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載のシンカカム。
【請求項8】
ガイド(9)が、縦溝(9.2)に係合する円筒状ピン(9.1)又はフェザーキーによって形成されていることを特徴とする、請求項
7に記載のシンカカム。
【請求項9】
カム担持体(1)は環状又は環状セグメントの形状であり、少なくとも1つのカム部材(3)はカム担持体(1)の半径方向に調整可能であることを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載のシンカカ
ム。
【請求項10】
請求項1から
9に記載のシンカカム付き丸編機。
【請求項11】
少なくとも28針/インチ
(2.54cm)のゲージを持っていることを特徴とする、請求項
10に記載の丸編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンカの展開及び後退運動を制御するための、カム担持体上に配置された少なくとも1つのカム部を有する、丸編機、特にシングルジャージー機用のシンカカムに関する。カム部材は、カム担持体に関してシンカの移動方向に調整可能である。
【背景技術】
【0002】
シンカカム部がカム担持体に固定的に組み立てられたシンカカムが知られていて、広く使用されている。ただし、これらのカムはE44を超えるファインゲージの機械には適していない。カム部品は調整できないため、ファインゲージの場合に製造公差を均等にするためにはカム部品の調整が必要である。
【0003】
非常に高いニードルゲージを備えた機械の場合、製造公差を均等にするために、シンカカム部の位置を微調整するには、シンカカム担持体に固定され、シンカカムの調整部材を備えたシンカカムセグメントが、したがって、現在まで一般的に使用されている。本明細書のシンカカム部品は、シンカカムセグメントの下側で長手方向に変位可能に配置されている。
【0004】
ただし、シンカカムセグメントは、シンカカム担持体とシンカカム部分を、比較的かなり超えて突出しているため、機械のシンカとシリンダー針を見られる範囲は、妨げられる。さらに、シリンダー針にアクセスするのは困難である。公知のシンカカムのさらなる欠点は、糸の毛羽が編地から不適切な程度にしか吹き飛ばされないことである。毛羽は、シンカとシンカカムセグメントの間のくぼみに蓄積する傾向がある。
【0005】
特許文献1は、カム部材の調整装置を記載し、調整装置はカム担持体に配置され、カム部材の下側に係合する別個の調整要素によってカム部の長手方向の調整を可能にする。しかしながら、この調整装置は、調整要素のためのクリアランスを持つように特別に設計されたカム担持体を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、調整可能なシンカカム部材を有し、上記の欠点を回避するシンカカムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、シンカの展開及び後退運動を制御するために、カム担持体上に配置された少なくとも1つのカム部を有する丸編機、特にシングルジャージー機用のシンカカムによって達成される。カム部材がカム担持体に関して、シンカの移動方向に調整可能であり、前記シンカカムは、カム部材がカム担持体上に直接配置され、調整部材がカム部材又はカム担持体に統合された調整部材が設けられていて、これにより、カム部材がカム担持体に対して調整可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明によるシンカカムは、シンカカムセグメントを不要にする。代わりに、カム部材は、カム担持体上で直接変位可能に配置されている。したがって、カムの構造高さは、カムセグメントを有するシンカカムの場合よりも著しく低い。シンカと針のある編み場所の視界は、妨げられない。さらに、糸の毛羽は編み場所から容易に清掃可能であり、糸の毛羽はさらに、既知のカムの場合よりも少ない程度でカム部分に堆積する。ここで必要なカム部品の調整可能性は、最大限に維持されている。さらに、本発明によるシンカカムは、特定のパターンを編成する必要がある場合にカム部材の調整を可能にする。さらに、カム部材は、異なるパターンに適応するために、つまり交換可能な部分を持つために、2つの部分で構成してもよい。パターン切り替えの場合、全てのカム部品ではなく、交換可能な部分のみの交換が求められる。そのため、資材の面で大幅に節約可能である。
【0010】
カムの1つの好ましい設計の実施形態では、カム部材は、ばねによって予張力がかかるようにカム担持体に当接し、調整部材は、カム担持体表面との摩擦を克服することによりカム担持体に対して調整可能である。本明細書では、調整部材によるカム部材の調整性を損なうことなく、バネによる予張力のために、カム担持体上のカム部材の不注意な変位が回避される。
【0011】
この目的のために、カム部材は、好ましくは、皿ばねを有する少なくとも1つのネジによってカム担持体に固定可能であり、ネジは、細長い穴、又はネジ軸部の直径よりも大きい穴を介してカム部材に案内される。細長い穴は、調整部材によるカム部材の変位運動を可能にする。ネジは、カム部材の調整方向に傾斜するようにカム担持体にねじ込んでもよい。
【0012】
さらに、調整部材がカム部材に組み込まれていると便利である。調整は、カム担持体に統合してもよい。ただし、カム担持体の構成及びゲージに関係なく、全ての機械でカム部材を使用可能であるという利点がある。
【0013】
また、複数のシンカカム部品の共通調整部材も設けられてもよい。
【0014】
調整部材は、調整部材又はカム担持体の螺旋溝に係合するピンに接続された回転可能な調整ヘッドを有してもよい。したがって、調整部材は、既知のロックで既に使用されているステッチ長さ調整部材に対応する。ソケットレンチで設定ヘッドを回転可能であって、回転によりシンカカム部材が移動可能である。この場合、カム部材の位置の調整を容易にするために、スケールを備えたディスク又はリングをそれ自体既知の方法で調整ヘッドに配置可能してもよい。
【0015】
しかしながら、調整は、カム部材の端面に配置してもよく、ギア、ラック又はウォームギアによりシンカカム部材は調整可能である。
【0016】
カム担持体上のカム部材の横方向の変位を回避するために、シンカの移動の長手方向に垂直なシンカカム部材の移動を防止するガイドを設けてもよい。縦溝に係合する円筒ピン又はキーを、例えば、ガイドとみなしてもよい。そこでは、シリンダーピン又はフェザーキーは好ましくは、シンカカム部材に配置される。フェザーキーを使用すると、溝に直線状だけでなく平らに配置できるという利点がある。しかしながら、シンカカム部材を受け入れて案内するための隙間をシンカカム担持体に設けてもよい。
【0017】
カム担持体は、環状又は環状セグメント形状であってもよく、カム担持体に対する半径方向の少なくとも1つのカム部材は調整可能である。シンカカムのこのような設計は、シンカが針に垂直に移動する丸編み機では一般的である。しかしながら、本発明は、いわば、シンカカムセグメントをなしに、そしてカム部品の調整機能を維持しながらの、カム担持体上のカム部材の直接配置は、他のシンカカムにも適用可能である。また、機械の針に対して、シンカを垂直に配置する必要はない。本発明によるシンカは、シンカが針に対して異なる角度で、又は平行に配置される機械でも、使用可能である。
【0018】
本発明は、本発明によるシンカを備えた丸編機にも関する。機械は、好ましくはシングルジャージー機械であることが可能で、及び/又は少なくとも28針/インチのゲージを持つことが可能である。特に有利なのは、本発明によるシンカカムを備えた少なくとも44針/インチの非常に高いゲージを有する機械である。
【0019】
以下では、図面を参照し、従来技術によるカムと比較して、本発明によるシンカカムの好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【0020】
図面の内容は、以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図2は、本発明によるシンカカムの断片の平面図を示す。
【
図4】
図4は、二部分シンカカム部の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示される従来技術のシンカカム100は、複数のシンカカムセグメント102が上部に配置された環状シンカカム担持体101を有し、そのうちの3つが例として
図2に示されている。シンカカムセグメント102は、シンカカム担持体101にしっかりとボルト締めされている。シンカカム部材103の下面には、シンカ105用の制御カムが配置されていて、シンカカム部材103は、シンカカムセグメント102上をスライド可能に、シンカカム担持体101に対して半径方向に微調整するように配置されている。シンカカム部材103を調整するために、調整部材104がシンカカムセグメント102に設けられていて、シンカカムセグメント102の上側でアクセス可能である。シンカカムセグメントの構成高さは比較的大きいため、シンカ105とシリンダーニードルの視界が厳しく限られている。さらに、シンカ105とシンカカムセグメント102の間に繊維の毛羽が蓄積することがある。
【0023】
図2に、本発明によるシンカカム10の一部分が示されている。このシンカカム10では、シンカカムセグメントを無くし、代わりに、シンカカム部材3が環状シンカカム担持体1に直接取り付けられている。シンカカム部材3は、皿バネ7を備えたネジ6によりシンカカム担持体1の上部にそれぞれ押し付けられている。それにより、ネジ6は、
図3から明らかなように、スロット又はシンカカム部材3を通るネジ軸よりも大きな直径の穴8を通過し、シンカカム部材3は、シンカカム部材3とシンカカム担持体1との間の摩擦力をシンカカム担持体1の半径方向に克服することにより変位可能になっている。この径方向の調整を可能にするために、シンカカム部材3に調整部材4が設けられている。変位の運動中、シンカカム部材は、ガイド9により横方向にガイドされる。
【0024】
図3に示すように、調整部材4は、ソケットレンチ(図示せず)を受け入れるための開口部4.2を備えた調整ヘッド4.1を有する。シンカカム部材3の調整をより良く確認するために、環状部4.3がスケールを持って、調整ヘッド4.1の外周に設けられている。調整ヘッド4.1は、調整部材4の螺旋溝4.5に案内される円筒ピン4.4と相互作用する。横ガイド9は、シンカカム担持体1の縦溝9.2に案内される円筒ピン9.1によって形成される。
【0025】
図4は、本発明による、調整部材4を持つ第1の部品3.1′と、交換可能な第2の部品3.2′を備えた二部分カム部材3′を示す。図は、分離された状態の2つの部分3.1′及び3.2′を示す。ネジによって、部品3.1′、3.2′が互いに、またカム担持体と、接続される(ここには図示なし)。調整部材4′により、例えば製造公差を補償するためのカム部材3′の微調整が行われる。しかし、編み機を別のパターンに切り替えるためにカム部材3′のより大きな調整が必要な場合は、カム部材3′の交換可能部3.2′を別のものと交換してもよい。ただし、調整部材4を持つ部品3.1′はカム担持体に残る。
【符号の説明】
【0026】
1 カム担持体
3 カム部材
3′ 二部分カム部材
3.1′ 第1の部品
3.2′ 第2の部品
4 調整部材
4′ 調整部材
4.1 調整ヘッド
4.2 開口部
4.3 環状部
4.4 円筒状ピン
4.5 らせん溝
6 ネジ
7 皿ばね
8 ボアホール
9 ガイド
9.1 円筒状ピン
9.2 縦溝
10 シンカカム
100 シンカカム
101 環状カム担持体
102 シンカカムセグメント
103 シンカカム部材
104 調整部材
105 シンカ