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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】親油性の化合物の固体経口剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20220511BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220511BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220511BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20220511BHJP
   A61K 31/568 20060101ALI20220511BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220511BHJP
   A61P 5/24 20060101ALI20220511BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K47/14
A61K47/04
A61K47/44
A61K47/26
A61K9/20
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/16
A61K9/48
A61K45/00
A61K31/337
A61K38/12
A61K38/08
A61K31/05
A61K31/568
A61P35/00
A61P5/24
A61P23/00
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020024021
(22)【出願日】2020-02-17
(62)【分割の表示】P 2016569987の分割
【原出願日】2015-06-17
(65)【公開番号】P2020090538
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】14173067.1
(32)【優先日】2014-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516353342
【氏名又は名称】ソルラル ファーマ エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ホイガールド ベント
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-534071(JP,A)
【文献】特表2008-504308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0135069(US,A1)
【文献】特表2002-541111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-33/44
A61K 38/00-38/58
A61K 45/00-45/08
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5のlog Pを有する親油性の化合物、および自己乳化型ビヒクルを含む組成物であって、前記自己乳化型ビヒクルが、(a)哺乳動物における前記親油性の化合物のリンパ吸収を達成し且つ脂肪成分を含まない組成物と比較して、絶食状態ならびに摂食状態における経口投与時の前記親油性の化合物の腸リンパ移行を強化または促進するのに十分な、経口剤形当り少なくとも700mgの量の脂肪成分であって、前記脂肪成分が、長鎖脂肪酸のモノグリセリドおよび長鎖脂肪酸のトリグリセリドのみからなり、トリグリセリド対モノグリセリドの重量比が、約2.8:1から約1:5の範囲であり、前記モノグリセリドにおける前記長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、前記トリグリセリドにおける前記長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み、重量比(a):(b)が、約10:1から約1:2であり、
前記組成物が、少なくとも約0.8のAUC(0-inf)(絶食)/AUC(0-inf)(摂食)を示し、
前記組成物が、液体、ゲル、カプセル、顆粒および錠剤からなる群より選択される単回用量の剤形である、組成物。
【請求項2】
前記(a):(b)の重量比が、約4:1から約1:2の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記モノグリセリドにおける前記長鎖脂肪酸が、リノレン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、またはステアリン酸から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記トリグリセリドにおける前記長鎖脂肪酸が、リノレン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、またはステアリン酸から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、精製水に希釈すると、約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満など、約40マイクロメートル未満などの、約200マイクロメートル未満のd50の液滴を形成する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記親油性の化合物が、錠剤コアなどの、固体コア内に完全にまたは部分的にある、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ビヒクルが、前記固体コア内に吸着される、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記親油性の化合物が、前記ビヒクルに溶解され、前記固体コア内に吸着される、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、前記親油性の化合物および固体コア内に吸着された前記ビヒクルを含む前記固体コアを有する錠剤であり、前記脂肪成分が、前記固体コアにおいて前記ビヒクル成分を含まない組成物と比較して、絶食状態ならびに摂食状態における経口投与時の前記化合物の腸リンパ移行を強化または促進するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記親油性の化合物が、前記ビヒクルに溶解され、前記固体コア内に吸着されているかあるいは前記親油性の化合物が、部分的または完全に前記固体コア内に調合され、次いで前記ビヒクルが前記固体コア内に吸着される、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記固体コアが、少なくとも40体積%など、少なくとも50体積%など、少なくとも60%体積などの、少なくとも30体積%の多孔率を有する、請求項10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記固体コアが、前記親油性の化合物を含まない組成物全体の少なくとも40重量%の量の二酸化ケイ素を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記親水性の界面活性剤が、水素化ヒマシ油エトキシレート、ポリソルベートまたは10以上の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する任意の他の親水性の界面活性剤、および任意のそれらの組み合わせから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記親油性の化合物が、酢酸アビラテロン、アシトレチン、アリルエストレノール、アルファトコフェロール、アミダロン、アプレピタント、アトルバスタチン、ベキサロテン、ブロモクリプチン、カンデサルタン、シナカルセト、クロミフェン、ジエチルスチルベストロール、ジホモ-ガンマ-リノール酸、エバスチン、エルゴカルシフェロール、フェノフィブラート、フシジン酸、ハロファントリン、イルベサルタン、イソトレチノイン、イトラコナゾール、ラパチニブ、リラグルチド、ロラチジン、デカン酸ナンドロロン、ネルフィナビル、オルメサルタン、オルリスタット、ポサコナゾール、プロブコール、ラロキシフェン、リトナビル、タモキシフェン、テルミサルタン、テプレノン、チプラナビル、バルサルタン、およびズクロペンチキソールから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記親油性の化合物が、少なくともリンパの取り込みに適したものにする少なくとも5のlog Pまで前記親油性の化合物の親油性を増加させるために親油性の部分の付加によって修飾されている化合物から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記親油性の化合物が、ドコサヘキサエン酸パクリタキセル、ウンデカン酸パクリタキセル、オレイン酸パクリタキセルおよびステアリン酸パクリタキセル、アミド形成において少なくとも20個の炭素原子を有する脂肪酸に共有結合しているオクトレオチド、ペプチド中に存在する脂肪族または芳香族のヒドロキシル基を介して脂肪酸エステルに共有結合しているロイプロリド、フェノール性芳香族のヒドロキシ基を介して脂肪酸エステルに共有結合しているプロポフォール、ならびにウンデカン酸テストステロンから選択される、請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンパによって少なくとも5のlog Pを有し、経口利用向けである化合物を送達することおよび取り込みをコントロールすることができる自己乳化型薬物送達システムを含む組成物に関する。
【0002】
本発明は、こうした化合物の取り込みをコントロールすること、吸収を改善することおよび同時に吸収における変動を減少することのための手段を提供し、それによって化合物の取り込みへの食効が減少または欠如した状態で摂食状態および絶食状態のどちらにおいても取ることができるという利点を有する。
【0003】
自己乳化型薬物送達システムは、場合によっては固体経口剤形に調合してよくさらに放出を修正しそれによって前記化合物の先行の経口固体剤形と比較してリンパによるより良好な取り込みに繋がる。本発明は、自己乳化型薬物送達システムを含有する固体経口剤形の組成物を提供する。自己乳化型薬物送達システムは、錠剤の圧縮性を改善するために錠剤コア内に部分的に含まれていてよい。
【0004】
本発明は、医薬品および栄養補助食品に関する。
【背景技術】
【0005】
固体経口剤形(顆粒、錠剤またはカプセルなど)は、最も都合のよく、柔軟な投与経路を代表する一方で、多くの化合物が非常に乏しく、変わりやすい経口吸収の性質を有することも事実である。これは、これらの化合物の経口投与を、治療活性にするのに十分高い血漿レベル、または治療効果を維持し、有毒なピークレベルを回避するための治療濃度域内にするのに十分安定な血漿レベルを得るためには不適切にさせる。吸収の問題は、通常は非常に低い溶解度または低い浸透性のいずれかの原因として分類される。低い溶解度は、化合物を溶解させること無く胃腸管(消化管)を通り抜けさせ、したがって化合物が吸収されない。浸透性の問題は、化合物は可溶性ではあるが、任意の有意の血中濃度を与えるために十分に吸収されない場合に生じる。こうした浸透性問題は、最も一般的には(1)消化管における代謝の不安定性(2)消化管バリア通過時の広範囲にわたる代謝(典型的なCYP代謝)(3)肝臓を通過する門脈からの初回通過代謝および(4)消化管におけるP糖タンパク質(P-gp)排出ポンプのための基質の種々の要因に起因し得る。
【0006】
ペプチドは、典型的には主に胃および腸上部における酵素分解が原因の消化管内の広範囲にわたる代謝に起因する乏しい経口吸収を示す分子のクラスの例である。
【0007】
パクリタキセルは、浸透性の問題を有する化合物の別の例である。パクリタキセルは、乳がんおよび卵巣がんのような腫瘍学徴候の治療のために使用され、3.6のlog Pを有するタキサンである。現在パクリタキセルは、治療の適切な薬剤濃度を提供することができない非常に低く、変わりやすい経口吸収が原因で静脈内注入に対してのみ利用可能である。パクリタキセルは、非常に低い溶解度(<0.05mg/ml)を有する分子である。腸および肝臓におけるCYP3A4代謝、ならびにP-gp仲介排出活性は、非特許文献1および非特許文献2によっても記述されているようにパクリタキセルの経口吸収に対する重要な障害である。
【0008】
さらに別の例は、過度の初回通過代謝が原因でわずか3%以下の経口生物学的利用能しかない静脈内薬物プロポフォールである。プロポフォール(2,6-ジイソプロピルフェノール)は、最も広く用いられている一般的な現在採用されている麻酔性の鎮静剤であるがその使用は、院内のみの使用を必要とする静脈内投薬に限定される。しかしながら、プロポフォールは、経口剤形が十分に生物利用可能にされ得る場合により良好に利用され得る長い範囲の薬理学的特性を有する。プロポフォールは、強力な酸化防止剤であり、タンパク質キナーゼCを刺激し、筋肉細胞におけるカルシウム流入を抑制し、心室筋細胞における筋フィラメントのカルシウム感受性を増加することが示されている。プロポフォールは、強力な直接血管拡張剤および気管支拡張剤でもあり、抗炎症および抗けいれん特性を有する。
【0009】
リンパ経路は、それによって高度に親油性の化合物が小腸によって分泌されたカイロミクロンにおける取り込みにより体循環に到達でき、それによってリンパ内で輸送され得る経口吸収への代替経路である。さらにこの経路は、肝臓の初回通過代謝の回避の利点を有する。
【0010】
リンパ吸収は、調合物ならびに投薬時に取られた食物によって影響を受ける複合過程である。文献には高いlog P値を有する親油性の化合物は、腸細胞内に吸収されて腸細胞内部のリポタンパク質に組み込まれ得ることが記載されている。化合物は、腸細胞への吸収に先立って消化管内で溶解して不撹拌水層を通過しなければならない。これを達成するために、薬物は、脂質消化生成物および胆汁からまたは調合物内に存在する界面活性剤から形成されたミセル内に「隠れて」いてよい。
【0011】
脂肪酸およびモノグリセリドは、同時に取り込まれてトリグリセリドに再合成され、これがリポタンパク質の中心を形成する。それらのリポタンパク質は、次いで腸細胞から内腔内へエキソサイトーシスにより放出されてリンパに拡散する必要がある。この化合物の移動は、リポタンパク質の流れを増加することによって増加することができ、これはまた腸管内の脂質の量に依存する。
【0012】
脂肪酸およびモノグリセリドは、この吸収反応機構に不可欠であるため、食物からまたは化合物の調合物から供給される必要がある。これは、脂肪、トリグリセリド、モノグリセリドまたは脂肪酸の形態であってよい。脂肪は、吸収されるために胃および腸内の酵素によって脂肪酸とモノグリセリドとに消化される必要がある。小さい液滴へのより良好な分散は、酵素に対するアクセスを与える脂肪粒子の表面を増加することにより消化を助ける。文献では脂肪、グリセリドまたは脂肪酸の異なる組み合わせが、リンパ吸収への影響に関して試験されている。どの組み合わせが最適であるかの一般的合意には達していないが文献から取られた脂肪の量だけではなく脂肪組成物が重要な役割を果たすことは明白である。非特許文献3は、わずか600mgの調合された脂肪組成物が、絶食したイヌにおいて消化管内の脂質代謝を誘引して化合物ハロファントリンの高リンパ吸収を誘発するのに十分であったことを実証した。さらには、調合物からの脂質と比較して、脂質の5倍の流れがリンパに輸送されたことが分かったので、調合物において供給された外因性の脂質は、内因性の脂質の移動を誘発することが実証された。
【0013】
リンパ吸収のための目標とされる調合物における奏功する薬物候補になるために化合物は、少なくとも5のlog Pおよび脂質における高い溶解度を有さなければならない。これらの要件を満たすため化合物の化学的修飾は、リンパ移動が可能な程度まで化合物の親油性特性を増加するための、親分子への親油性の部分の結合によって必要とされ得る。修飾化合物は、吸収の後に血流または作用の部位のいずれかにおける酵素的開裂によって元の化合物に再変換される。しかしながら、これらの要件を満たす化合物の選択は、これをリンパ吸収に適したものにするが、化合物が高脂肪食と一緒に取られない限り経口生物学的利用能における変動性を必ずしも制限しない。
【0014】
ウンデカン酸テストステロンは、男性性腺機能低下症の治療のために使用されるこうした化合物の例である。経口投与される場合テストステロンは、消化管および肝臓における吸収時の両方で広範囲にわたる初回通過代謝を受ける。したがってテストステロンは、市販されている経口生成物として利用できない。したがってウンデカン酸テストステロンなどのテストステロンの誘導体が、経口送達用に開発され市販されている。ウンデカン酸テストステロン(TU)は、約8.7のlog Pを有するテストステロンの脂溶性エステルプロドラッグである。ウンデカン酸テストステロンは、Andriol(登録商標)カプセルとして軟ゼラチンカプセル中のヒマシ油/プロピレングリコールモノラウレート(293mgの混合物)内に調合される。本調合物からのTUのリンパ吸収は、しかしながら食物脂肪の摂取に高度に依存すると示されている。したがって本調合物は、ウンデカン酸テストステロンの吸収を確実にするために常に通常食と共に取られるべきである。吸収は食物摂取に極めて依存するのでその後の吸収は非常に変動しやすくなりしばしば不十分になる。Andriol(登録商標)のラベルによれば、摂食状態の患者におけるウンデカン酸テストステロンの経口生物学的利用能は、絶食状態の患者の50倍以上である。この食効が原因で、経口ウンデカン酸テストステロンは、多くの高齢患者などの、低食物摂取または低脂肪摂取の患者のための療法には適さない。したがって、本経口調合物の主要な欠点の1つは、吸収における変動性であり、それによって信頼できない経口生物学的利用能および血清中レベルのゆらぎが治療レベルを下回りこれは信頼できない効能をもたらす。
【0015】
酢酸アビラテロンは、転移性前立腺がんの治療のために使用される。APIは、低い水溶性および5.1のlog Pを有する。化合物は、変わりやすい吸収をもたらす低浸透性を有する。APIの吸収は非常に変わりやすく食物摂取すると増加するのでAPIは、空腹時に取られる経口生成物Zytiga(登録商標)として市販されている。したがって食物の摂取は、薬物の重篤な副作用のリスクを増加する。
【0016】
トリグリセリド、エチルエステル、遊離脂肪酸およびそれらの誘導体などのオメガ-3油は、広範な生物学上の利益を有する医薬品および栄養補助食品のために用いられる。オメガ-3油は、高いLog P値≧5および脂質における高い溶解度を有することによって特徴付けられる。しかしながら、カプセル内に調合される場合こうした油は、しばしば消化管内のいくつかの異なる吸収経路による不完全かつ変わりやすい吸収を示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【文献】Kruijerら著、「The Oncologist 7、516~530、2002年」
【文献】Jong Soo Wooら著、「Pharm.Res.20、24~30、2003年」
【文献】Khooら著、「Pharm.Res.、20、1460~1464、2003年」
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、長鎖脂肪酸のモノグリセリドおよび/または長鎖脂肪酸のトリグリセリドを含むある種の脂肪組成物が、摂食状態ならびに絶食状態における化合物のリンパ吸収を達成し、さらに高い経口生物学的利用能および同時に吸収における低い変動性を達成するように少なくとも5のlog Pを有する化合物を支持し得ることを認識している。
【0019】
本発明は、少なくとも5のlog Pを有し、摂食状態ならびに絶食状態における化合物のリンパ吸収をコントロールおよび達成するためにビヒクルにおいて十分な脂肪を担持する親油性の化合物を含む医薬組成物などの、組成物に関する。
【0020】
したがって、本発明は、少なくとも5のlog Pを有する化合物とビヒクルとを含む医薬組成物であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な量の脂肪成分を含む、医薬組成物に関する。
【0021】
さらなる態様において本発明は、少なくとも5のlog Pを有する化合物とビヒクルとを含む組成物であって、ビヒクルが、脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な量の脂肪成分を含む、組成物に関する。
【0022】
別のさらなる態様において本発明は、少なくとも5のlog Pを有する化合物とビヒクルとを含む組成物であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な量の脂肪成分と(b)投薬を最適化することおよびリンパを目標とするために薬物/ビヒクルシステムの放出を修正することに適した錠剤コア組成物とを含む、組成物に関する。
【0023】
さらに別の態様において本発明は、少なくとも5のlog Pを有する化合物を含む組成物であって、化合物自体が、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な量の脂肪成分と(b)投薬を最適化することおよびリンパを目標とするために化合物/ビヒクルシステムの放出を修正することに適した錠剤コア組成物とを含む、組成物に関する。
【0024】
さらなる態様において本発明は、少なくとも5のlog Pを有する親油性の化合物と、ビヒクルとを含む組成物であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み、重量比(a):(b)が、約10:1から約1:2である、組成物に関する。こうした組成物は、典型的には液体、ゲル、顆粒、カプセルまたは錠剤から選択される。
【0025】
一実施形態において組成物は、医薬組成物である。
【0026】
別の実施形態において組成物は、食事組成物である。
【0027】
組成物のさらに別の実施形態において脂肪成分は、トリグリセリド対モノグリセリドの重量比が、約2.8:1から約1:5の範囲である、長鎖脂肪酸のモノグリセリドおよびトリグリセリドを含む。
【0028】
組成物の一層のさらなる実施形態において脂肪成分は、脂肪成分を含まない組成物と比較して、絶食状態ならびに摂食状態において経口投与すると化合物の腸リンパ移行を強化または促進するのに十分な量で存在する。
【0029】
組成物のさらに別の実施形態において脂肪成分の量は、500mgから1200mgである。
【0030】
組成物のさらに別の実施形態において脂肪成分の量は、500mgから10gである。1500mgから10g、2000mgから8g、3000mgから7g、4000mgから6g、または2000mgから6gなどである。
【0031】
一層のさらなる実施形態において組成物は、少なくとも約0.8など、少なくとも約0.4のAUC(0-inf)(絶食)/AUC(0-inf)(摂食))を示す。
【0032】
組成物のさらなる実施形態において(a):(b)の重量比は、約4:1から約1:2の範囲である。
【0033】
組成物の一層のさらなる実施形態においてモノグリセリドにおける長鎖脂肪酸は、リノレン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、およびステアリン酸から選択される。
【0034】
組成物のさらなる実施形態においてトリグリセリドにおける長鎖脂肪酸は、リノレン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、およびステアリン酸から選択される。
【0035】
組成物の一層のさらなる実施形態において長鎖脂肪酸のトリグリセリドを含む脂肪成分は、天然由来油から選択される。一実施形態において天然由来油は、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、ピーナツ油、菜種油、ヒマワリ油、ココナツ油、トウモロコシ油、ヒマワリ種子油、綿種子油、パーム油、およびラッカセイ油、ならびに任意のそれらの組み合わせから選択される。
【0036】
組成物のさらなる実施形態において脂肪成分は、オリーブ油、大豆油、オリーブ油とモノオレイン酸グリセリンとの混合物、および大豆油とモノオレイン酸グリセリンとの混合物から選択される。一実施形態において脂肪成分は、いかなるトリグリセリドも含まないがモノオレイン酸グリセリンなどの、モノグリセリドのみ含む。
【0037】
組成物の一層のさらなる実施形態において親油性の化合物の少なくとも約95重量%が、25℃および60%の相対湿度において保管の2年後の組成物中に存在する。
【0038】
組成物のさらに別の実施形態において親油性の化合物は、組成物の100%の総重量に基づいて約0.5%から約60重量%、および典型的には約01%から約30重量%の量で存在する。
【0039】
組成物の一層のさらなる実施形態においてビヒクルは、自己乳化型である。
【0040】
さらなる別の実施形態において組成物は、精製水に希釈すると、約200マイクロメートル未満のd50を有する液滴を形成する。一実施形態において液滴は、約40マイクロメートル未満、約20マイクロメートル未満、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満などの、約100マイクロメートル未満など、約150マイクロメートル未満のd50を有する。
【0041】
組成物の一層のさらなる実施形態において親油性の化合物は、錠剤コアなどの、固体コア内にある。一実施形態においてビヒクルは、固体コア内に吸着される。さらなる別の実施形態においてビヒクルは、錠剤コア内に吸着される。別の実施形態において親油性の化合物は、ビヒクルに溶解し、固体コア内に吸着される。一層のさらなる実施形態において親油性の化合物は、ビヒクルに溶解し、錠剤コア内に吸着される。
【0042】
さらに別の実施形態において組成物は、少なくとも5のlog Pを有する親油性の化合物と、固体コア内に吸収されるビヒクルとを含む固体コアを有する錠剤であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み、重量比(a):(b)が、約10:1から約1:2であり、脂肪成分が、前記固体コアにおいてビヒクル成分を含まない組成物と比較して、絶食状態ならびに摂食状態において経口投与すると化合物の腸リンパ移行を強化または促進するのに十分な量で存在する、錠剤である。一実施形態において親油性の化合物は、ビヒクルに溶解し、固体コア内に吸着される。別の実施形態において親油性の化合物は、部分的または完全に固体コア内に調合され、次いでビヒクルが固体コア内に吸着される。
【0043】
組成物の一層のさらなる実施形態において固体コアは、少なくとも40体積%など、少なくとも50体積%など、少なくとも55体積%など、少なくとも60体積%などの、少なくとも30体積%、例えば30体積%から60体積%、または40体積%から55体積%の多孔率を有する。こうした高い多孔率を有する固体コアの例は、例えば欧州特許出願第EP1765297号に記載されている。
【0044】
特定の有用な組成物は、固体コアが、親油性の化合物を含まない組成物全体の少なくとも40重量%の量の二酸化ケイ素を含む、固体コアである。
【0045】
組成物が固体コアから選択される場合、こうしたコアは、典型的には20Nから150Nの硬度を有する圧縮または成形された錠剤コアである。
【0046】
組成物のさらなる別の実施形態において親水性の界面活性剤は、10以上の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する親水性の界面活性剤から選択される。典型的には、親水性の界面活性剤は、水素化ヒマシ油エトキシレート、ポリソルベートおよび任意のそれらの組み合わせから選択される。
【0047】
組成物の一層のさらなる実施形態において親油性の化合物は、酢酸アビラテロン、アシトレチン、アリルエストレノール、アルファトコフェロール、アミダロン(amidarone)、アプレピタント、アトルバスタチン、ベキサロテン、ブロモクリプチン、カンデサルタン、シナカルセト、クロミフェン、ジエチルスチルベストロール、ジホモ-ガンマ-リノール酸、エバスチン、エルゴカルシフェロール、フェノフィブラート、フシジン酸、ハロファントリン、イルベサルタン、イソトレチノイン、イトラコナゾール、ラパチニブ、リラグルチド、ロラチジン、デカン酸ナンドロロン、ネルフィナビル、オルメサルタン、オルリスタット、ポサコナゾール、プロブコール、ラロキシフェン、リトナビル、タモキシフェン、テルミサルタン、テプレノン、チプラナビル、バルサルタン、およびズクロペンチキソールから選択される。これらの化合物のそれぞれは、個々の実施形態を構成し、例えば、酢酸アビラテロンなどの、上記の実施形態および本発明の態様のいずれかにおける具体的な親油性の化合物として選択してよい。
【0048】
組成物のさらに別の実施形態において親油性の化合物は、少なくともリンパの取り込みに適したものにする少なくとも5のlog Pまで親油性の化合物の親油性を増加させるために親油性の部分の付加によって修飾されている化合物から選択される。典型的には、化合物は、エステルまたはアミドなどの、プロドラッグである。こうしたプロドラッグの例は、ドコサヘキサエン酸パクリタキセル、ウンデカン酸パクリタキセル、オレイン酸パクリタキセルおよびステアリン酸パクリタキセル、アミド形成において少なくとも20個の炭素原子を有する脂肪酸に共有結合しているオクトレオチド、ペプチド中に存在する脂肪族または芳香族のヒドロキシル基を介して脂肪酸エステルに共有結合しているロイプロリド、フェノール性芳香族のヒドロキシ基を介して脂肪酸エステルに共有結合しているプロポフォール、ならびにウンデカン酸テストステロンから選択される。これらの修飾化合物のそれぞれは、個々の実施形態を構成し、例えば、ドコサヘキサエン酸パクリタキセルなどの、上記の実施形態および本発明の態様のいずれかにおける具体的な親油性の化合物として選択してよい。
【0049】
特別な実施形態において本発明は、酢酸アビラテロンと、ビヒクルとを含む組成物であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み、重量比(a):(b)が、前立腺がん、例えば去勢抵抗性前立腺がんなどの、がんの治療において使用するために、約10:1から約1:2である、組成物に関する。
【0050】
別の特別な実施形態において本発明は、ドコサヘキサエン酸パクリタキセル、ウンデカン酸パクリタキセル、オレイン酸パクリタキセルおよびステアリン酸パクリタキセルなどの、パクリタキセルプロドラッグと、ビヒクルとを含む組成物であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み重量比(a):(b)が、乳がん、卵巣がん、非小細胞肺がん(NSCLC)および前立腺がんなどの、がんの治療において使用するために、約10:1から約1:2である、組成物に関する。
【0051】
一層のさらなる態様において本発明は、ドコサヘキサエン酸パクリタキセル、ウンデカン酸パクリタキセル、オレイン酸パクリタキセルおよびステアリン酸パクリタキセルなどの、パクリタキセルプロドラッグと、ビヒクルとを含む組成物を投与することを含む、ヒトなどの、哺乳動物におけるがんの治療のための方法であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み重量比(a):(b)が、約10:1から約1:2であり、組成物が、前記がんを治療するために有効である、方法に関する。
【0052】
さらなる態様において本発明は、酢酸アビラテロンと、ビヒクルとを含む組成物を投与することを含む、ヒトなどの、哺乳動物におけるがんの治療のための方法であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み重量比(a):(b)が、約10:1から約1:2であり、組成物が、前記がんを治療するために有効である、方法に関する。
【0053】
一層のさらなる態様において本発明は、オメガ-3油および/またはオメガ-6油と、ビヒクルとを含む組成物であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み重量比(a):(b)が、約10:1から約1:2である、組成物に関する。一実施形態においてオメガ-3油および/またはオメガ-6油は、オメガ-3油から選択される。別の実施形態においてオメガ-3油および/またはオメガ-6油は、オメガ-6油から選択される。さらに別の実施形態においてオメガ-3油および/またはオメガ-6油は、オメガ-3油とオメガ-6油との混合物から選択される。さらなる実施形態は、少なくとも5のlog Pを有する親油性の化合物を含む組成物の上記の態様および当業者によって理解されるようなその実施形態に関連して上記の実施形態のいずれかから選んでよい。
【0054】
さらなる態様において本発明は、(i)固体コアと(ii)オメガ-3油およびビヒクルを含む組成物とを含む錠剤であって、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み重量比(a):(b)が、約10:1から約1:2であり、固体コアが、二酸化ケイ素を含み、オメガ-3油およびビヒクルを含む組成物が、固体コア内に吸着される、錠剤に関する。さらなる実施形態は、少なくとも5のlog Pを有する親油性の化合物を含む組成物の上記の態様および当業者によって理解されるようなその実施形態に関連して上記の実施形態のいずれかから選んでよい。
【0055】
さらなる態様において本発明は、(i)固体コアと(ii)オメガ-3油および親水性の界面活性剤を含むビヒクルを含む組成物とを含む錠剤であって、固体コアが、二酸化ケイ素を含み、オメガ-3油およびビヒクルを含む組成物が、固体コア内に吸着される、錠剤に関する。さらなる実施形態は、少なくとも5のlog Pを有する親油性の化合物を含む組成物の上記の態様および当業者によって理解されるようなその実施形態に関連して上記の実施形態のいずれかから選んでよい。別の実施形態においてオメガ-3油:界面活性剤の重量比は、約3:2から約10:1の範囲である。
【0056】
一層のさらなる態様において本発明は、固体コアとオメガ-3油とを含む錠剤であって、固体コアが、二酸化ケイ素を含み、オメガ-3油が、固体コア内に吸着される、錠剤に関する。一実施形態において固体コアは、少なくとも40体積%など、少なくとも50体積%など、少なくとも55体積%など、少なくとも60体積%などの、少なくとも30体積%、例えば30体積%から60体積%、または40体積%から55体積%の多孔率を有する。特定の有用な錠剤において二酸化ケイ素は、少なくともオメガ-3油を含まない総組成物の40重量%の量で存在する。
【0057】
固体コアを含む錠剤のさらなる実施形態において、固体コアは、前記固体コア内に吸着されない組成物またはオメガ-3油と比較して、絶食状態ならびに摂食状態において経口投与するとオメガ-3油の腸リンパ移行を強化または促進する。一実施形態においてオメガ-3油は、固体コアの100%の総重量に基づいて約0.5%から約80%および典型的には約30から約60重量%の量で存在する。
【0058】
さらなる態様において本発明は、固体コアを含む錠剤であって、固体コアが、二酸化ケイ素と亀裂およびキャッピングがない高レベルの二酸化ケイ素錠剤を生成できるようにするために二酸化ケイ素の乏しい圧縮性を改善するための適切な賦形剤とを含む、錠剤に関する。好ましくは、適切な賦形剤は、ヒプロメロース100cps、マルトデキストリン、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選択される。一実施形態において錠剤は、いかなる液体組成物およびいかなる医薬品化合物、またはオメガ-3油も含まない。別の実施形態において固体コアは、少なくとも40体積%など、少なくとも50体積%など、少なくとも55体積%など、少なくとも60体積%などの、少なくとも30体積%、例えば30体積%から60体積%、または40体積%から55体積%の多孔率を有する。さらなる実施形態において固体コアは、これに限定されないがアルファ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、クエン酸または没食子酸プロピルなどの、酸化防止剤をさらに含む。
【0059】
本発明のさらなる目的および利点は、以下の記述、および特許請求の範囲に登場する。
【発明を実施するための形態】
【0060】
高log Pおよびトリグリセリドにおける高溶解度を有する親油性の化合物の実効的なリンパ吸収が、単回用量の調合物に適する少量の脂質で達成され得るかどうかが熟考される。
【0061】
親油性の化合物のリンパ吸収を改善することは、2つの方法で達成され得る。
【0062】
脂肪成分のミセルへの可溶化は、界面活性剤の適切な選択によって達成され得る。可溶化は、脂肪の消化の速度ならびに脂肪および不撹拌水層上を移行した親油性の化合物の量の両方を改善する。親油性の化合物および調合物の可溶化は、本発明の技術コンセプトの一部である。
【0063】
さらには、消化管における脂質代謝を誘引し、親油性の化合物のリンパシステムへの放出を誘発する脂肪成分の適切な選択は、本発明の技術コンセプトの一部である。Khooら(Pharm.Res.、20、1460~1464、2003年)およびSchnabelら(Clin Endocrin.66、579~585、2007年)から報告されたデータ間の対比が行われ本発明者らは、脂肪組成物および脂肪の量はともにシステムがリンパの取り込みをコントロールしなければならない場合の重要なパラメータであることを認識する。脂肪の量は、特に親油性の化合物が絶食状態において取られる場合、および脂肪組成物が最適ではないまたは量が少なすぎる場合に問題であり、吸収の変動は、予期される結果になる。
【0064】
より大量の選択された可溶化剤および脂肪の組み込みに基づく有効な調合物は、現在の親油性の化合物の調合物と比較して生物学的利用能の増加および/または変動性の減少をもたらす可能性が最も高い。さらには、リンパの取り込みをコントロールするための調合物を有することは、同時食物摂取の必要性をなくすであろう。
【0065】
本発明は、少なくとも5のlog Pを有する化合物とビヒクルとを含む組成物であって、ビヒクルが、(a)哺乳動物におけるリンパ吸収をコントロールおよび達成するのに十分な量の脂肪成分を含み、脂肪成分が、長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択される、組成物に関する。
【0066】
本発明による調合物に適し得る少なくとも5のlog Pを有する化合物の例には、これに限らないが次が含まれる:
酢酸アビラテロン、アシトレチン、アリルエストレノール、アルファトコフェロール、アミダロン、アプレピタント、アトルバスタチン、ベキサロテン、ブロモクリプチン、カンデサルタン、シナカルセト、クロミフェン、ジエチルスチルベストロール、ジホモ-ガンマ-リノール酸、エバスチン、エルゴカルシフェロール、フェノフィブラート、フシジン酸、ハロファントリン、イルベサルタン、イソトレチノイン、イトラコナゾール、ラパチニブ、リラグルチド、ロラチジン、デカン酸ナンドロロン、ネルフィナビル、オルメサルタン、オルリスタット、ポサコナゾール、プロブコール、ラロキシフェン、リトナビル、タクロリムス、タモキシフェン、テルミサルタン、テプレノン、チプラナビル、バルサルタン、ズクロペンチキソール。
【0067】
親油性の化合物は、遊離酸、遊離塩基または塩の形態であってよく、親油性の化合物の混合物は、療法上有効な場合に用いてよい。
【0068】
別の実施形態において本発明は、例えば化合物の親油性を少なくともリンパの取り込みに適したものにするために少なくとも5のlog Pまで増加するために親油性の部分の付加によって修飾されなければならない化合物を含む組成物に関する。こうした親油性の部分は、エステルまたはアミドの形態であってよい。次の吸収で部分の結合は、内在性ペプチダーゼによって開裂またはヒドロキシラーゼによって加水分解されそれによって血流中のまたは治療行為の部位における活性分子を遊離する。組成物は、ビヒクルが、(a)哺乳動物におけるリンパ吸収をコントロールおよび達成するのに十分な量の脂肪成分を含み、脂肪成分が、長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択される、ビヒクルをさらに含む。
【0069】
パクリタキセルは、前記組成物におけるリンパ吸収のために十分に高い親油性を得るためにエステル化してよい5未満のlog Pを有する化合物の例である。こうしたエステルの例は、これに限定されないがドコサヘキサエン酸塩、ウンデカン酸塩、オレイン酸塩およびステアリン酸塩である。
【0070】
プロポフォールは、これに限定されないがプロポフォール-酢酸塩、プロポフォール-ウンデカン酸塩、プロポフォールパルミチン酸塩、プロポフォールオレイン酸塩、プロポフォール-ドコサヘキサエン酸塩(propofol-docosahexexoate)およびプロポフォール-エイコサペンタエン酸塩(propofol-eicosapentanoate)などの、脂肪酸エステルにエステル化してよい化合物の別の例である。
【0071】
テストステロンは、前記組成物におけるリンパ吸収のために十分に高い親油性を得るためにエステル化してよい5未満のlog Pを有する別の化合物の例である。こうしたエステルの例は、これに限定されないがウンデカン酸塩、パルミチン酸塩およびオレイン酸塩である。
【0072】
修飾される必要があるさらに別の化合物の群は、エステルまたはアミドで親油性修飾され得るペプチドである。ペプチドに結合した親油性の部分のサイズおよび長さは、前記化合物の十分な親油性を得るために変更してよい。オクトレオチドは、log P約1を有する相対的に親水性の小ペプチドの例である。アミド形成において少なくとも20個の炭素原子を有する脂肪酸の付加によって、少なくとも5のlog Pを有する化合物が得られる。別の例は、脂肪酸エステルが少なくとも5のlog Pを提供するペプチド中に存在する脂肪族または芳香族のヒドロキシル基上に形成され得る約3のlog Pを有するノナペプチドロイプロリドである。
【0073】
本発明のさらに別の実施形態において組成物は、トリグリセリド、遊離オメガ-3-脂肪酸、オメガ-3-脂肪酸エチルエステル、少なくとも5のlog Pを有するそれらの塩または誘導体などのオメガ-3またはオメガ-6油あるいはその混合物である化合物を含む。組成物は、ビヒクルが、(a)哺乳動物におけるリンパ吸収をコントロールおよび達成するのに十分な量の脂肪成分を含み、脂肪成分が、長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択される、ビヒクルをさらに含む。
【0074】
オメガ-3-脂肪酸の例は、これに限らないがアルファ-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)であり、オメガ-6脂肪酸の例は、ガンマ-リノレン酸(GLA)である。オメガ-3脂肪酸エチルエステルの例は、これに限らないがEPAエチルエステル:(all-Z)-5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸エチルエステルおよびDHAエチルエステル:(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸エチルエステルである。これらのオメガ-3油のそれぞれは、個々の実施形態を構成し、例えば、ALAなどの、上記の実施形態および本発明の態様のいずれかにおける具体的な親油性の化合物またはオメガ-3油として選択してよい。これらのオメガ-6油のそれぞれは、個々の実施形態を構成し、例えば、GLAなどの、上記の実施形態および本発明の態様のいずれかにおける具体的な親油性の化合物またはオメガ-6油として選択してよい。
【0075】
一実施形態においてビヒクルは、重量比(a):(b)が、約4:1から約1:2などの、約10:1から約1:2である、(b)親水性の界面活性剤をさらに含む。重量比(a):(b)は、約50:50から約70:30など、約40:60から約80:20の範囲であってよい。一実施形態において、比率(a):(b)は、約60:40など、約55:45から約65:35の範囲である。
【0076】
親水性の界面活性剤は、本明細書に述べるいずれでもよい。適した親水性の界面活性剤には、水素化ヒマシ油エトキシレート(ポリオキシル35ヒマシ油など)、ポリソルベート(ポリソルベート80など)または10以上の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する任意の他の親水性の界面活性剤、および前述のいずれかの任意の組み合わせが含まれる。
【0077】
別の実施形態において脂肪成分は、トリグリセリド対モノグリセリドの重量比が約2.8:1から約1:5の範囲である、長鎖脂肪酸のトリグリセリドをさらに含む。1種または複数のトリグリセリドが脂肪成分中に存在する場合、トリグリセリド対モノグリセリドの比は、例えば、約3:2から約1:4など、約2:1から約1:5の範囲であってよい。一実施形態において、比は、約1:1から約1:3である。
【0078】
さらに別の実施形態において脂肪成分は、脂肪成分を含まない組成物と比較して、絶食状態ならびに摂食状態において経口投与すると親油性の化合物の腸リンパ移行を強化または促進するのに十分な量で存在する。
【0079】
さらに別の実施形態において脂肪成分の量は、約500mgから約1000mgなど、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも1000mgなどの少なくとも約500mgである。
【0080】
組成物のさらなる実施形態において脂肪成分の量は、500mgから10gである。1500mgから10g、2000mgから8g、3000mgから7g、4000mgから6g、または2000mgから6gなどである。
【0081】
大量の脂肪は、例えば2400mgの脂肪が、好ましくはそれぞれ400mgの脂肪の6投与量として、またはそれぞれ800mgの3投与量として投与され得ることを明確にする、2つ以上の組成物において投与されなければならない場合があることは、当業者に既知である。したがって本発明の組成物は、典型的には、全体で少なくとも500mgの脂肪、例えばそれぞれ100mgの脂肪を含有する5個のカプセルまたは例えばそれぞれ400mgの脂肪を含む6個のカプセルを含む1つまたは複数の組成物を意味することが意図される。
【0082】
一層のさらなる実施形態において組成物は、少なくとも約0.4のAUC(0-inf)(絶食)/AUC(0-inf)(摂食)を示す。本組成物は、強化された生物学的利用能および減少した食効を示す。理論に拘泥または限定されるものではないが、調合物は、門脈循環によってではなく腸のリンパシステムによって親油性の化合物の吸収をコントロールおよび強化することによりこの結果を達成すると考えられる。好ましい実施形態において、調合物は、少なくとも約0.4のAUC0-inf(絶食)/AUC0-inf(摂食)(すなわち、AUC(0-inf)(絶食)/AUC(0-inf)(摂食))を示す。さらなる好ましい実施形態において、調合物は、少なくとも約0.6、少なくとも約0.7、または少なくとも約0.8のAUC0-inf(絶食)/AUC0-inf(摂食)を示す。
【0083】
モノグリセリドおよびトリグリセリドにおける長鎖脂肪酸は、14から24個の炭素原子の長さの範囲であってよい。
【0084】
さらなる実施形態においてモノグリセリドにおける長鎖脂肪酸は、16から20個の炭素原子などの、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される。
【0085】
一層のさらなる実施形態においてトリグリセリドにおける長鎖脂肪酸は、16から20個の炭素原子などの、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される。
【0086】
モノグリセリドおよびトリグリセリドのために適した脂肪酸には、これに限定されないが、(A)リノール酸(18:2)、(B)オレイン酸(18:1)、(C)パルミチン酸(16)、(D)リノール酸(18:3)、および(E)ステアリン酸(18:0)が含まれる。(先行の文の挿入句内の第1の数字は、脂肪酸鎖内の炭素原子の数を指し、第2の数字は、不飽和の程度を指す(例えば、1は1つの二重結合を指す))。
【0087】
トリグリセリドが、脂肪成分中に存在する場合、トリグリセリドは、典型的には油として存在し得る。さらなる実施形態において長鎖脂肪酸のトリグリセリドを含む脂肪成分は、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油、または任意のそれらの組み合わせなどの油から選択される。
【0088】
時には脂肪成分は、いかなるトリグリセリドも含まないがモノオレイン酸グリセリンなどのモノグリセリドのみ含む。
【0089】
別の実施形態において、脂肪成分は、モノグリセリドおよびトリグリセリドを含む。
【0090】
さらなる実施形態において、脂肪成分は、オリーブ油から選択される。
【0091】
一層のさらなる実施形態において、脂肪成分は、大豆油から選択される。
【0092】
一層のさらなる実施形態において、脂肪成分は、オメガ3油から選択される。
【0093】
さらに別の実施形態において、脂肪成分は、オリーブ油およびモノオレイン酸グリセリンの混合物から選択される。
【0094】
一層のさらなる実施形態において、脂肪成分は、大豆油およびモノオレイン酸グリセリンの混合物から選択される。
【0095】
一層のさらなる実施形態において、脂肪成分は、オメガ3油およびモノオレイン酸グリセリンから選択される。
【0096】
ビヒクル調合物は、液体であってよく、水性媒体に導入された場合に自己乳化型でもあってよい。ある種の実施形態において、組成物は、精製水に希釈すると、約50μm未満のd50を有する液滴を形成する。さらなる実施形態において組成物は、精製水に希釈すると、約0.1から約40μmなど、約0.01から約200μmの範囲のd50を有する液滴などの、約150マイクロメートル未満など、約100マイクロメートル未満など、約40マイクロメートル未満など、約20マイクロメートル未満など、約10マイクロメートル未満、または約5マイクロメートル未満などの、約200マイクロメートル未満のd50を有する液滴を形成する。
【0097】
さらなる実施形態において親油性の化合物は、錠剤コアなどの、固体コア内にある。
【0098】
一層のさらなる実施形態においてビヒクルは、固体コア内に吸着される。組成物が錠剤の形態である場合、親油性の化合物は、場合によってはビヒクルに溶解してよくまたは親油性の化合物は、場合によってはビヒクルの吸着の前に完全にまたは部分的に錠剤コア内に含まれていてよい。一実施形態において親油性の化合物は、ビヒクルに溶解し、固体コア内に吸着される。
【0099】
剤形が固体である場合は約20Nから約150Nの硬度を有する圧縮または成形された錠剤であってよい。
【0100】
さらなる実施形態において(少なくとも5のlog Pを有する)親油性の化合物は、エステルまたはアミドなどの、プロドラッグである。
【0101】
本発明の組成物は、液体、ゲル、顆粒、カプセルまたは錠剤から選択してよい。一実施形態において、組成物、例えば経口組成物は、液体で有り得る。このような場合親油性の化合物は、ビヒクルに可溶化される。別の実施形態において、組成物、例えば経口組成物は、カプセルであり、この場合親油性の化合物は、ビヒクルに可溶化され、軟性または硬性のカプセル内に充填される。
【0102】
さらなる態様において本発明は、本発明の医薬組成物を含む、固体経口剤形などの、経口剤形に関する。組成物は、以下で説明されるような吸着剤を有する固体経口剤形に組み込んでよい。化合物は、ビヒクルに可溶化してよくまたは錠剤への圧縮の前に組成物に完全にまたは部分的に加えてよい。
【0103】
さらには、錠剤コアなどの、固体コアへの吸収は、胃腸管内のSEEDシステムの放出を遅らせることにおいて有益で有り得る。自己乳化型薬物送達システムがカプセル内に調合される場合自己乳化型薬物送達システムは、典型的には経口摂取後直ちに放出される一方で、自己乳化型薬物送達システムが錠剤コア内に吸収される場合、自己乳化型薬物送達システムの溶解は、変更され、幾分遅延される。この効果は、カプセルまたは錠剤いずれかからの自己乳化型薬物送達システムの溶解プロファイルを比較した場合に観察され得る。驚いたことに、錠剤は、自己乳化型薬物送達システムの放出速度を減少し吸収における変動を減少することも助け、したがって吸収プロファイルが食物摂取とほとんど無関係になることをさらに助ける。これは、狭い治療濃度域を有する化合物のために特に重要かつ有用な特性である。
【0104】
剤形として錠剤コアを有することの利益は、最初から自己乳化型薬物送達システムに溶解されている活性化合物が無くてさえも示されている。これは、化合物が液体であり、従来型のカプセルとして投薬される場合と比較して錠剤内に吸収されている場合に油を投薬することによってより高吸収およびより低変動性ならびに魚類の味または匂い(burbs)の除去が達成され得る場合の剤形および特にオメガ3脂肪酸、トリグリセリド、エチルエステルおよびそれらの誘導体などにおいて化合物の高配合が必要とされる場合に特に有用である。
【0105】
さらに別の実施形態は、(i)吸着性賦形剤、(ii)場合によっては結合剤または放出増強剤、(iii)場合によっては崩壊剤または他の標準的な錠剤賦形剤、(iv)本発明の組成物を含む経口錠剤である。
【0106】
固体経口剤形は、吸着性賦形剤および場合によっては(a)結合剤(1種または複数)の粒状体を調製することならびに吸着性賦形剤、場合によっては結合剤、場合によっては放出増強剤、場合によっては崩壊剤および場合によっては他の通常の錠剤賦形剤(結合剤、潤滑剤、流動性向上剤など)、を含む錠剤を調製すること、ならびに例えば、吸着容量の約50%以上(例えば、70%以上)まで、親油性の化合物が吸着されるまで、ビヒクル内の化合物の混合物を錠剤内に吸着することによって調製してよい。
【0107】
吸着は、ビヒクル内の過剰な量の親油性の化合物内に錠剤を十分な時間配置することによって実施してよい。一実施形態において、吸着は、圧力下で実行される。化合物を吸着する期間は、約15分間から約10時間であってよい。
【0108】
さらに別の実施形態は、本発明の固体経口剤形または経口医薬品調合物の哺乳動物対象への経口投与によってリンパ移行システムを介して化合物を体循環に送達する方法である。
【0109】
好ましくは、固体経口剤形には、少なくとも約300mg(例えば、少なくとも約400mg、少なくとも約500mg、少なくとも約550mg、または少なくとも約600mg)の長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、または長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドである長鎖脂質が含まれる。
【0110】
さらなる実施形態において、固体経口剤形における長鎖脂質の総含有量は、約600から約700mgなど、約600から約800mgの範囲である。
【0111】
固体経口剤形の典型的な実施形態は、脂肪成分が、長鎖脂肪酸のモノグリセリド、および(ii)場合によっては、1種または複数の親水性の界面活性剤を含み、(ai)混合物が、多孔質の二酸化ケイ素内に吸着され、(bi)固体経口剤形が、約600から約1000mg(例えば、約600から約800mg)の長鎖脂質を含む、(A)吸着体二酸化ケイ素を含む固体基剤と、(B)(a)哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な量の脂肪成分を含むビヒクル内の親油性の化合物を含む混合物とを含む。
【0112】
本明細書において説明されるように医薬本発明の組成物は、摂食状態において化合物を経口投与することの必要性を回避するために投与してよい。
【0113】
さらなる態様において本発明は、ビヒクルが、(a)脂肪成分が長鎖脂肪酸のモノグリセリド、長鎖脂肪酸のトリグリセリド、ならびに長鎖脂肪酸のモノおよびトリグリセリドから選択され、モノグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択され、トリグリセリドにおける長鎖脂肪酸が、14から24個の炭素原子を有する脂肪酸鎖から選択される、哺乳動物におけるリンパ吸収を達成するのに十分な少なくとも500mgの量の脂肪成分と、(b)親水性の界面活性剤とを含み、重量比(a):(b)が、摂食または絶食状態における組成物の経口投与がリンパ移行システムを介して体循環への化合物の送達を容易にするような約10:1から約1:2である、ビヒクルと共に親油性の化合物を調合することを含む、本発明の組成物を調製する方法に関する。
【0114】
本発明の固体経口剤形は、対象内の化合物の送達のために従来型の方法に勝るいくつかの利点を提供し得る。例えば、本発明の組成物を含む固体経口剤形は、親油性の化合物の十分な経口生物学的利用能および同時に対象が摂食状態かまたは絶食状態かにかかわらず吸収における低変動性を提供し得る。したがって、記述された治療の方法において、固体経口剤形は、摂食状態または絶食状態の両方において投与してよい。
【0115】
これは、食物が原因の吸収における変動性が重篤な副作用のリスクまたは不十分な薬物レベルのいずれかを提供する可能性がある場合に狭い治療指数の薬物(親油性の化合物)を投与する場合の特段の利点である。これは、典型的には吸収される食物摂取に依存する薬物の満足な吸収を達成するために十分な量の脂肪を食さない、高齢者集団を治療する場合の利点でもある。
【0116】
本発明の固体経口剤形は、門脈血を介した肝臓への化合物の移動を実質的に回避し得る。
【0117】
これは、消化管バリアを通過するときに広範囲にわたる代謝を受ける化合物またはP-GP排出ポンプのための基質でありしたがって治療薬物レベルを達成するために十分な量で門脈を介して吸収されない化合物あるいは十分な吸収を不可能にする高い初回通過代謝を有する薬物のための利点である。
【0118】
錠剤の形態の調合物は、減少した食効、機能的被覆を含むことの可能性、酸素保護、標的放出、カプセルと適合性のない賦形剤の使用、より簡易な製造プロセス、および標準的な設備の使用を含めた、いくつかの利点を有し得る。
【0119】
化合物
親油性の化合物は、上記で説明されるような薬物のプロドラッグまたは塩のいずれかであってよい。化合物は、少なくとも5のlog Pを有するべきである。
【0120】
上記で説明されるように化合物は、固体経口剤形の固体吸着体に吸着する前にビヒクルに可溶化してもよくまたは化合物は、カプセル内に充填する前にビヒクルに可溶化してもよい。
【0121】
典型的な実施形態において経口剤形には、部分的にまたは完全に吸着体と共に錠剤コアに組み込まれた化合物が含まれ、ビヒクルは、固体経口剤形を生成するためにこの錠剤コア内に吸着される。吸着されたビヒクルは、可溶化された化合物の一部が無くても有していてもよい。
【0122】
さらに別の実施形態において化合物自体は、固体経口剤形内に吸着されたビヒクルに可溶化されていない。これは、API(親油性の化合物)が液体であり、従来型のカプセルとして投薬される場合と比較して錠剤内に吸収された油の投薬によってより高吸収およびより低変動性ならびに魚類の味または匂いの除去が達成され得る場合に特にオメガ3脂肪酸、トリグリセリド、エチルエステルおよびそれらの誘導体などの化合物のために剤形において高薬剤配合が必要とされる場合に特に有用である。
【0123】
ビヒクル
ビヒクルは、脂質(モノおよび/またはトリグリセリド)および場合によっては上記で説明されるような親水性の界面活性剤から構成されていてよい。
【0124】
脂質は、別段の表示がない限り、飽和、一価不飽和および多価不飽和の脂肪酸およびそれらの誘導体を指すと理解される。誘導体には、モノ、ジおよびトリグリセリドなどのエステル、ならびにリン脂質または他のグリセリドエステルが含まれる。
【0125】
脂質は、脂肪酸鎖内の14個の炭素原子から脂肪酸鎖内の24個までの炭素原子を示す、C14からC24の長鎖脂肪酸またはその誘導体から構成され得る。脂肪酸は、飽和、一価不飽和または多価不飽和の脂肪酸あるいはその誘導体であってよい。脂肪酸またはグリセリド内のそれぞれの鎖は、例えば、0、1、2、または3個の二重結合を有していてよい。「長鎖脂質」という語は、長鎖の(すなわち、C14~C24またはC16~C18などの、C14以上の)脂肪酸、ならびに長鎖脂肪酸の誘導体を指す。ビヒクルに適した脂質の例には、参照によりその内容全体が本書に組み込まれる、米国特許第6,096,338号に記載されているものなどの内因性脂質の生成を刺激するものが含まれる。
【0126】
脂質は、大豆油、オリーブ油、ピーナツ油、菜種油、ヒマワリ油、ココナツ油、トウモロコシ油、ヒマワリ種子油、綿種子油、パーム油、ラッカセイ油、サフラワー油、オメガ3油またはそれらの組み合わせなどの、天然由来油の形態の親油性の化合物と共に調合してよい。他の適した脂質には、これに限定されないが、前述の油のモノおよびジグリセリド、モノオレイン酸グリセリン、モノリノール酸グリセリル、ならびに前述のいずれかの任意の組み合わせが含まれる。
【0127】
脂質(1種または複数)は、単独であるいは1種または複数と組み合わせて用いてよい。一実施形態において、脂質は、単独または界面活性剤と組み合わせて内因性脂質の生成を刺激するかまたはさもなければ薬物または薬物誘導体のリンパ移行を強化または促進する。例えば、ビヒクルは、長鎖脂質から、および親水性の界面活性剤と組み合わせて長鎖脂質から選択してよい。
【0128】
適し得る界面活性剤の例には、モノまたはジグリセリドのエステル(酢酸、コハク酸、乳酸、クエン酸または酒石酸エステルなど)、プロピレングリコール、脂肪酸のモノまたはジエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、脂肪酸の酸およびエステルエトキシレート、脂肪酸のソルビタンエステル、天然または水素化植物油トリグリセリドおよびポリアルキレンポリオールのエステル交換生成物、アルコールエトキシレート、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンコポリマー、リン脂質、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸誘導体(ポリソルベートなど、例えば、ポリソルベート80)、ヒマシ油または水素化ヒマシ油エトキシレート、例えばポリオキシル35ヒマシ油/Cremophor EL(商標)、硫酸ラウリルナトリウムまたはオレイン酸ナトリウムなどの、アニオン性界面活性剤、アルキルフェノール界面活性剤、ならびにこうした界面活性剤の混合物が含まれる。こうした組み合わせにおいて、界面活性剤は、腸の内腔からの脂肪酸の取り込みを助けるために作用し得る。一実施形態において、Cremophor EL(商標)などの、HLB値>10を有する親水性の界面活性剤が、場合によってはHLB値<10を有する疎水性の界面活性剤であってよい、共界面活性剤と組み合わせて用いられる。
【0129】
典型的には、ビヒクルは、オリーブ油、大豆油、オメガ3油、モノオレイン酸グリセリン、および前述のいずれかの任意の組み合わせから選択される脂質を含む。一実施形態において、ビヒクルは、オリーブ油およびモノオレイン酸グリセリンを含む。別の実施形態において、ビヒクルは、大豆油およびモノオレイン酸グリセリンを含む。さらに別の実施形態において、ビヒクルは、オメガ3油およびモノオレイン酸グリセリンを含む。
【0130】
ビヒクルは、界面活性剤を含む場合、典型的にはポリソルベート80、ポリオキシル35ヒマシ油、および前述のいずれかの任意の組み合わせから選択される。
【0131】
一実施形態において、ビヒクルは、(a)脂質オリーブ油およびモノオレイン酸グリセリンならびに(b)界面活性剤ポリオキシル35ヒマシ油を含む。
【0132】
好ましい実施形態において、ビヒクルは、(a)脂質大豆油およびモノオレイン酸グリセリン、ならびに(b)界面活性剤ポリオキシル35ヒマシ油を含む。
【0133】
別の好ましい実施形態において、ビヒクルは、(a)脂質オリーブ油およびモノオレイン酸グリセリン、ならびに(b)界面活性剤ポリソルベート80およびポリオキシル35ヒマシ油を含む。
【0134】
さらなる実施形態において、ビヒクルは、(a)長鎖脂質、および(b)界面活性剤(親水性の界面活性剤)の混合物を含む。(a):(b)の重量比は、約8:1から約1:6の範囲であってよい。例えば、(a):(b)の重量比は、約4:1から約1:2であってよい。一実施形態において、(a):(b)の重量比は、約3:1から約1:2の範囲である。別の実施形態において、(a):(b)の重量比は、約2:1から約1:1の範囲である。好ましい一実施形態において、(a):(b)の重量比は、約3:2である。
【0135】
ビヒクルは、好ましくは親油性の化合物のリンパ移行を強化または促進するのに十分な量で存在する。Porterら、Pharm.Res.20(9):1460~1465(2003年)を参照されたい。一実施形態において、脂肪成分は、少なくとも約500mgの量で存在する。例えば、量は、単一の固体経口剤形に容易に組み込むことができる量に相当する、約0.1から約1gなどの、約0.05から約4gであってよい。別の実施形態において、脂肪成分は、少なくとも約600mgである量、例えば、約600mgから約1200mgまたは約600mgから約1000mgで存在する。さらなる実施形態において脂肪成分は、少なくとも500mgから10gである量で存在する。1500mgから10g、2000mgから8g、3000mgから7g、4000mgから6g、または2000mgから6gなどである。
【0136】
ビヒクルは、脂質を基材とするエマルションまたはマイクロエマルション、あるいは自己乳化型または自己マイクロ乳化型(self-microemulsifying)調合物として調合してよい。自己乳化型および自己マイクロ乳化型調合物は、固体経口剤形の内容物の胃または腸液との接触で自然発生的にエマルションまたはマイクロエマルションを形成するものであり、一般に自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)または自己マイクロ乳化型薬物送達システム(SMEDDS)と呼ばれる。親油性の化合物は、経口剤形内へのビヒクルの吸着の前または後のいずれかにビヒクルに可溶化されることが意図される。
【0137】
固体基剤
粒状体である、固体基剤は、二酸化ケイ素である、吸着性賦形剤、ならびに場合によっては結合剤(1種または複数)および/または崩壊剤を含む錠剤の形態に圧縮してよい。固体錠剤は、不活性であってよくまたは代わりに固体錠剤は、部分的にまたは完全に親油性の化合物を組み込んでいてよい。固体基剤は、錠剤の形態であってよい。固体基剤は、ビヒクルを吸着する能力がある。
【0138】
固体基剤が顆粒の形態である場合、顆粒の粒径中央値は、約5ミクロンから約600ミクロン、例えば約10から約300ミクロンの範囲であってよい。顆粒は、固体基剤として用いられる錠剤を形成するために圧縮してよい。
【0139】
吸着性賦形剤
吸着性賦形剤は、典型的には固体基剤の大部分を形成する。吸着性賦形剤(および固体基剤)は、約15%v/vより大きい、約20%v/vより大きい、約30%v/vより大きいまたは約30%v/vより大きいなどの、例えば、約10%v/vより大きい多孔率を有していてよい。好ましい実施形態において、多孔率は、約30%v/vより大きい、例えば、約30から約50%v/vである。別の実施形態において、多孔率は、最大約97%(例えば、約90から約94%)である(Zeofree 5170またはAeroperl 300など)。
【0140】
吸着性賦形剤は、約5ミクロンから約600ミクロン、例えば約10から約300ミクロンの粒径中央値を有してしてよい。一実施形態において、多孔質の賦形剤は、約10ミクロンから約150ミクロンの粒径を有していてよい。
【0141】
固体基剤は、約25%w/w以上、約30%w/w以上、約35%w/w以上、約40%w/w以上、約45%w/w以上、約50w/w以上、約60%w/w以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、または約98%以上など、約20%w/w以上の濃度で吸着性賦形剤を含んでよい。追加の実施形態において、吸着性賦形剤は、固体基剤の100%の総重量に基づいて、約30%から約90%w/w、約50%から約90%w/w、約60%から約90%w/w、約70%から約90%w/w、約65%から約85%w/w、約75%から約85w/wまたは約70%から約80%w/wなど、約20%から約95%w/wの濃度で存在する。
【0142】
多くの吸着性賦形剤は、金属酸化物および金属ケイ酸塩の群において見つかる。二酸化ケイ素は、他の吸着性賦形剤と比較して加えられた活性成分に対してより不活性であったことが分かった。
【0143】
しかしながら二酸化ケイ素は、あまり圧縮せず高レベルの二酸化ケイ素を含む錠剤を生成することは当業者にとってさえも容易ではない。高レベルの吸着性賦形剤は、本発明に必要な量の液体を吸着するために必要になる。本発明の一部は、したがって亀裂およびキャッピングを伴わない高レベルの二酸化ケイ素錠剤を生成できるようにするために二酸化ケイ素の乏しい圧縮性を改善するための適切な賦形剤の選択である。これを達成するために、非常に多くの結合剤賦形剤が相応のレベルで試験されてきた。これらの調合物のほとんどは、キャッピングおよび錠剤がばらばらに壊れる結果を伴う乏しい凝集特性を有する錠剤を生成した。本文書に示される固体基剤(carries)の例は、二酸化ケイ素との使用のために好ましい結合賦形剤を例証する。
【0144】
好ましい実施形態において、吸着性賦形剤は、Zeofree 5170(J.M.Huber Corporationから入手可能)またはAeroperl(Evonik industriesから入手可能)などの、二酸化ケイ素である。
【0145】
追加の賦形剤
錠剤などの、経口剤形の固体コアは、1種または複数の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含んでよい。こうした賦形剤の例には、これに限定されないが、充填剤、希釈剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、増強剤、湿潤剤、界面活性剤、酸化防止剤、金属除去剤、pH調整剤、酸性化剤、アルカリ化剤、防腐剤、緩衝剤、キレート剤、安定剤、着色剤、錯化剤、乳化および/または可溶化剤、吸収増強剤、放出調節剤、香料添加剤、矯味剤、保水剤、および甘味剤が含まれる。
【0146】
適した充填剤、希釈剤および/または結合剤の例には、ラクトース(例えば噴霧乾燥ラクトース、α-ラクトース、β-ラクトース)、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチレン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、スクロース、アガロース、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプンまたは変性デンプン(ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよびコメデンプンを含む)、リン酸カルシウム(例えば塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムおよびリン酸水素カリウムが含まれる。
【0147】
金属除去剤の例には、これに限定されないが、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、EDTAおよびそれらの塩、ならびにDPTA(ジエチレントリアミン五酢酸)およびそれらの塩が含まれる。
【0148】
酸化防止剤の例には、これに限定されないが、BHT、BHA、没食子酸プロピル、トコフェロール、TBHQ(t-ブチルヒドロキノン)、およびパルミチン酸アスコルビルが含まれる。
【0149】
希釈剤の例には、これに限定されないが、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化(pregelatinized)デンプン、スクロース、および糖が含まれる。
【0150】
結合剤の例には、これに限定されないが、アラビアゴム、アルギン酸、寒天、カラギーナンカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、PEG、ポビドン、マルトデキストリンおよびアルファ化デンプンが含まれる。
【0151】
流動促進剤および潤滑剤の例には、これに限定されないが、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは他の金属ステアリン酸塩、滑石、蝋およびグリセリド、軽油、PEG、ベヘン酸グリセリル、コロイド状シリカ、水素化植物油、トウモロコシデンプン、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、硫酸アルキル、安息香酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムが含まれる。
【0152】
酸化防止剤の例には、これに限定されないが、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(sodium formaldehylde sulfoxylate)、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ヘミコハク酸トコフェロール、およびTPGSまたは他のトコフェロール誘導体が含まれる。錠剤における酸化防止剤および/または安定剤の濃度は(いかなる吸着された化合物および脂質/ビヒクルも含まない錠剤の100%の総重量に基づいて)、例えば、約0.1%w/wから約5%w/wであってよい。
【0153】
崩壊剤の例には、これに限定されないが、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ポラクリリンカリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンまたはアルファ化デンプンが含まれる。
【0154】
固体経口剤形
固体経口剤形における固体基剤の量は、液剤調合物としての、その多孔率に応じて異なってよい。固体剤形には、好ましくは少なくとも600mgの脂肪(脂質)および絶食状態におけるリンパ吸収を可能にするのに十分な界面活性剤が含まれる。
【0155】
錠剤またはカプセルなどの、固体経口剤形は、ヒトの対象などの、哺乳動物による経口摂取向けであるため、固体経口剤形は好ましくは、約200mgから約2000mg、または約600mgから約1500mgなどの、約50mgから約5000mgの重量である。一実施形態において、固体経口剤形は、約700mgから約1200mgの重量である。
【0156】
本明細書に述べる固体経口剤形(例えば、経口錠剤)は、場合によってはサブコーティングおよび/または放出調節コーティング(例えば腸溶コーティング)などの、1種または複数のコーティングを含んでいてよい。サブコーティングは、例えば、Opadray AMB OY-Bであってよい。腸溶コーティングは、例えば、Acryl EZE、ジメチコーンおよびクエン酸トリエチルを含有してよい。
【0157】
一実施形態において、固体経口剤形は、コーティングを有さない。好ましい実施形態において、固体経口剤形は、腸溶コーティングを有さない。別の実施形態において、固体経口剤形は、放出調節コーティングを有さない。好ましい実施形態において、固体経口剤形は、薬物または薬物誘導体の即時放出を提供する。さらに別の実施形態において、固体経口剤形は、薬物または薬物誘導体の持続放出を提供する。
【0158】
固体経口剤形は、錠剤の形態であってよい。一実施形態において、錠剤は、例えば、約20Nから約150Nの硬度を有する、圧縮または成形された錠剤である。錠剤の硬度は、約30、40、または50Nから約70、80、90または100Nであってよい。
【0159】
経口錠剤には、これに限らないが、香料添加剤、潤滑剤、結合剤、防腐剤、および崩壊剤を含めた上述のものなどの、1種または複数の賦形剤が含まれていてよい。
【0160】
別の実施形態において、固体剤形は、固体基剤の顆粒、ビヒクルにおける親油性の化合物、および場合によっては他の賦形剤を含む。顆粒は、例えば、投与されるカプセル内に充填されていてよい。
【0161】
固体経口剤形の調製
本明細書に述べられる固体経口剤形は、(i)固体基剤の調製、(ii)ビヒクルの調製、(iii)ビヒクルを固体基剤内に吸着することおよび顆粒をカプセル内に充填することによって形成してよい。
【0162】
一実施形態において、本発明の錠剤は、(ix)固体基剤の調製、(iix)固体基剤ならびに場合によっては崩壊剤および/または他の錠剤賦形剤を吸着性錠剤内に押し固めること、(iiix)ビヒクルの調製、(ivx)ビヒクルを配合可能な錠剤内に吸着することによって調製される。
【0163】
一実施形態において、化合物は、基剤の一部であり、別の実施形態において化合物は、ビヒクル内に可溶化され、第3の実施形態において化合物は、部分的に基剤内にあり、部分的にビヒクル内に可溶化される。
【0164】
化合物およびビヒクルは、合わせて自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)または自己マイクロ乳化型薬物送達システム(SMEDDS)を形成する。
【0165】
ステップ(ix)は、結合剤を混合することまたは結合剤溶液を多孔質の賦形剤の顆粒上に噴霧すること、混合物を高せん断ミキサーにおいて粒状化して粒状体を提供するために顆粒を乾燥することによって実行してよい。
【0166】
基剤粒状体は、錠剤賦形剤、例えば崩壊剤、潤滑剤など、および場合によっては薬物誘導体と混合して錠剤内に押し固めてよい。
【0167】
ビヒクルの調製は、成分および場合によっては親油性の化合物を透明な溶液が現れるまでを単に混合することによってなされる。
【0168】
吸着は、化合物の余剰において錠剤をビヒクル内に浸漬することによって行われ、薬物誘導体を吸着する期間は、コントロールされ、約30分間から約1時間など、約30分間から約5時間の範囲であってよい。吸着は、計算された油混合物を錠剤の床、例えば、回転している何らかの形状のドラム上に注ぐことによって達成してもよい。
【0169】
上記の方法の全てにおいて、吸着性賦形剤および放出増強剤を含む粒状体は、約20N以上、約25N以上、約30N以上、約35N以上、約40N以上、約45N以上、約50N以上、約60N以上、約70N以上、約90N以上、約100N以上の硬度などの、適した硬度を有する錠剤内に圧縮または成形するなど、凝縮してよい。一実施形態において、錠剤の硬度は、約30Nから約100Nなどの、約30Nから約150Nである。
【0170】
定義
経口生物学的利用能への「無食効」および「食効がない」と言う語は、対数変換データに基づいた、摂食治療と絶食治療との間の集団幾何平均の比率に関する90パーセントCIが、AUC0-inf(適切な場合はAUC0-t)およびCmaxについて80~125パーセントの等価限界(equivalence limits)に含まれる場合を指す。
【0171】
「絶食状態」という語は、本発明による調合物に含まれている可能性があるものは別として、いくらかでもある場合、脂質のみが、対象の腸中に存在し、内因性の脂質である、哺乳動物またはヒトなどの、対象の状態を指す。本発明による薬物または調合物の「絶食状態の」対象への経口投与についての言及は、薬物の治療的有効量のリンパシステム内への取り込み時に、対象が絶食状態であるような、対象の消化器システム内への経口投与を指す。これは一般には、対象が投与の少なくとも3から4時間前に食事を取っておらず、取り込みの速度および薬物の効能に応じて、食後1から6時間食物を取っていないことを意味する。
【0172】
「摂食状態」という語は、本明細書で使用する場合上記で述べたような「絶食状態」以外の対象の任意の状態を指す。
【0173】
「log P」という語は、物質の分配係数を指す。物質のlog Pは、物質の水への溶解度に対するn-オクタノールへの物質の溶解度の比率の底が10の対数である。
【0174】
界面活性剤の「HLB」または「HLB値」という語は、親水性-親油性のバランスを指し、分子の異なる領域の値を計算することによって決定される、それがどの程度まで親水性または親油性であるかの測定値である。非イオン性界面活性剤についてはHLB=20Mh/Mである(式中Mは分子全体の分子量であり、Mhは分子の親水性の部分の分子量である)。0のHLB値は、完全に親油性/疎水性の分子に相当し、20の値は、完全に親水性/疎油性の分子に相当する。HLB値≧10は、親水性の界面活性剤を表す。
【0175】
本明細書で使用する場合「内因性脂質の生成」という語は、生前駆体(bio-precursor)がそれら自体グリセリドなどの、脂質または脂質複合体で有り得る、生前駆体からの、モノ、ジまたはトリグリセリドおよびリン脂質を含めた、脂質の腸の吸収細胞内での生合成を指す。例えば生合成は、薬剤のリンパ移行システム内への移行を促進することができない脂質種の可能な種への変換に関与し得る。「内因性脂質の生成」という語は、脂質種、またはその脂質代謝産物が、薬物のリンパ移行システム内への移行を促進することができるような、脂質種の他の場所から腸細胞内への移動も指し得る。
【0176】
本明細書で使用する場合「哺乳動物」または「哺乳動物対象」(これらは交換可能)という語は、ヒト、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ヒツジなどの、哺乳動物の全種類を指す。
【0177】
本明細書に引用される公報、特許出願、および特許を含めた全ての参照は、あたかもそれぞれの参照が個々に、具体的に示されて参照によって組み込まれ、その全体が本明細書に記述されているのと同程度に参照により本書に含まれる。
【0178】
本明細書で使用される全ての見出しおよび小見出しは、利便性のためだけのものであり、いかなる方法においても本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0179】
それらの全ての可能な変形形態における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示が無い限りまたは文脈によって明確に否定されない限り本発明によって包含される。
【0180】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示が無い限り、単に範囲内にあるそれぞれの別個の範囲を個々に参照する簡単な方法として役立つことが意図され、それぞれの別個の範囲は、あたかも個々に本明細書に列挙されるように本明細書に組み込まれる。特に明記しない限り、本明細書において提供される全ての正確な値は、対応する概算値の典型である(例えば、特定の因子または測定値に関して提供された全ての正確な例示的な値は、適切な場合、「約」によって修正された、対応する概算の測定値も提供するものと見なしてよい)。
【0181】
本明細書に述べる全ての方法は、本明細書に別段の指示が無い限りまたは文脈によって明確に否定されない限り任意の適した順序で実行してよい。
【0182】
本発明を記述する文脈において使用されるような「1つの(a)」および「1つの(an)」ならびに「前記(the)」ならびに類似の指示語は、本明細書に別段の指示がない限りまたは文脈によって明確に否定されない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈される。したがって、「1つの(a)」および「1つの(an)」ならびに「前記(the)」は、少なくとも1つ、あるいは1つまたは複数を意味し得る。
【0183】
本明細書に提供される任意のおよび全ての例または例示的な言葉(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く例示することが意図されるものであり別段の指示が無い限り本発明の範囲に制限を課さない。本明細書における言葉は、同じ程度に明確に述べられていない限り、任意の要素が本発明の実践に不可欠であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0184】
本明細書における特許文書の引用および組み込みは、利便性のためだけになされるものであり、こうした特許文書の妥当性、特許性および/または執行可能性のいかなる見解も反映しない。
【0185】
要素(1つまたは複数)への参照と共に「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含有する(containing)」などの語を用いる本発明の任意の態様または実施形態の本明細書における記述は、別段の指示がない限りまたは文脈によって明確に否定されない限り、その特定の要素(1つまたは複数)「からなる」、「から本質的になる」または「を実質的に含む」本発明の類似の態様または実施形態のための支持を提供することが意図される(例えば、特定の要素を含むものとして本明細書に述べられた組成物は、別段の指示がない限りまたは文脈によって明確に否定されない限り、その要素からなる組成物を記述するものとしても理解されるべきである)。
【0186】
本発明には、最大限の範囲まで準拠法によって許可されるような本明細書に提示された態様または特許請求の範囲に列挙されている主題の全ての修正および同等物が含まれる。
【0187】
前述の説明において開示された特徴は、別々におよび任意のそれらの組み合わせにおいて、その種々の形態の本発明を実現するための材料で有り得る。
【実施例
【0188】
本発明のさらなる説明が、ここで以下の非限定的な例によってなされる。本発明によって包含される多くの変形形態および同等物が本開示を読むことで当業者に明らかになるので、実施例は、単に本発明の例示であり、いかなる方法においても本発明の範囲を限定するものと理解すべきではないことが明確に留意されるべきである。
【0189】
実施例1:リンパ標的のための経口SEDDS調合物の調製
6種の経口SEDDS調合物を、表1に概説するように調製した。
【0190】
【表1】
【0191】
6種の異なるSEDDシステムを、下表2に示すように調製した。
【0192】
【表2】
【0193】
いずれの場合にも、油成分を分散させて透明な単相のプラセボビヒクルシステムを達成するために混合した。活性の親油性の化合物を加えてプラセボSEDD調合物に溶解する。
【0194】
実施例2:固体錠剤調合物
固体基剤
固体基剤を、二酸化ケイ素(Zeofree 5170)を微結晶セルロース(Avicel PH 301)または低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC LH-21)と混合し、次いで混合物を高せん断ミキサーにおいてマルトデキストリン(Lycatab DSH)に加えて適切な量の水の溶液と共に粒状化することによって生成した。粒状化後顆粒を、流動床において乾燥して篩にかけた。
【0195】
基剤組成物を表3に示す。
【0196】
【表3】
【0197】
不活性基剤錠剤
記述したように調製した固体基剤を、5%から15%の崩壊剤と10分間混合した。次いで0.5%のステアリン酸マグネシウムを加えて5分間混合した。混合物を、Diaf打錠機を用いて10x22mmの楕円形金型上で錠剤内に圧縮した。錠剤重量は、錠剤の所望のサイズおよび吸着容量に適合するために800mgから1200mgの間であった。錠剤組成物を表4に示す。錠剤硬度は、25Nから50Nであった。
【0198】
【表4】
【0199】
実施例3:固体経口剤形
全ての固体剤形は、600mgの長鎖脂質を含有するように調製した。
(a)基剤錠剤:錠剤吸着は、基剤錠剤をSEDDSビヒクルに浸漬することによって達成した。それぞれの調合物の20個の錠剤を、均一性を確保するために分類して、3リットルビーカー内でSEDDSビヒクルの過剰において錠剤を浮かべてビヒクルを錠剤内に吸収させることにより吸着させた。吸着は、所望の量のSEDDSが吸着されるまで継続した。(60%の脂肪SEDDS調合物の場合は1000mgのSEDDSおよび80%の脂肪SEDDS調合物の場合は750mgのSEDDS)
(b)カプセル:活性SEEDSを、ピペットによって空のゼラチンカプセル殻内に分注してカプセルを閉じた。
【0200】
実施例4:基剤錠剤調合物
固体基剤
固体基剤を、コロイド状二酸化ケイ素(Aeroperl 300)を10%の微結晶セルロース(Avicel PH 101)および5%のヒプロメロース(Metolose 90SH-100SR)と混合し、次いで混合物を高せん断ミキサーにおいて5%のヒプロメロース(Metolose 90SH-100SR)に加えて適切な量の水の溶液と共に粒状化することによって生成した。粒状化後顆粒を、流動床において乾燥して篩にかけた。
【0201】
吸着される活性成分を安定させるために酸化防止剤が必要な場合は、粒状化に加える前に結合剤溶液に酸化防止剤を(エタノール中の0.2%の溶液として)加えた。
【0202】
基剤組成物を表5に示す。
【0203】
【表5】
【0204】
基剤錠剤
記述したように調製した固体基剤を、微結晶セルロースおよび/または2%~5%のクロスカルメロースナトリウムと10分間混合した。次いで0.5%のステアリン酸マグネシウムを加えて5分間混合した。混合物を、Diaf打錠機を用いて10x22mmの楕円形金型上で錠剤内に圧縮した。錠剤組成物を表6に示す。錠剤硬度は、34Nであった。
【0205】
【表6】
【0206】
基剤錠剤に、実施例3に記載のようにSEDDSを配合した。
【0207】
実施例5:活性成分を含有する錠剤
活性固体基剤
活性固体基剤を、高せん断ミキサーにおいて酢酸アビラテロンをSEDDS S2(表9参照)(5%濃度)に溶解すること、二酸化ケイ素(Zeofree 5170)を40%のマルトデキストリン(Lycatab DSH)と混合することならびに混合物を酢酸アビラテロン溶液および適切な量の水で湿らせることにより調製する。粒状化後顆粒を、トレイ上で乾燥させて篩にかける。
【0208】
基剤組成物を表7に示す。
【0209】
【表7】
【0210】
酢酸アビラテロンを含有する錠剤
配合可能なコア錠剤内の全量の酢酸アビラテロンについて:実施例2に記載のように調製した固体基剤Eを、2%のクロスカルメロースナトリウムおよび酢酸アビラテロンと10分間混合した。次いで0.5%のステアリン酸マグネシウムを加えて5分間混合した。混合物を、Diaf打錠機を用いて10x22mmの楕円形金型上で錠剤内に圧縮した。
【0211】
配合可能なコア錠剤内の部分量の酢酸アビラテロンについて:記述したように調製した活性固体基剤を、2%のクロスカルメロースナトリウムと10分間混合した。次いで0.5%のステアリン酸マグネシウムを加えて5分間混合した。混合物を、Diaf打錠機を用いて10x22mmの楕円形金型上で錠剤内に圧縮した。
【0212】
【表8】
【0213】
SEDDSビヒクル
2種のSEDDSビヒクル(S2およびS2A)を、下表9に示すように、基剤錠剤内に吸着されるように調製する。
【0214】
【表9】
【0215】
いずれの場合にも、油成分は、分散させて透明な単相のプラセボビヒクルシステムを与えるために混合した。S2Aビヒクルについては、酢酸アビラテロンを分散させてビヒクルシステムに一晩溶解した。
【0216】
固体経口剤形
全ての固体剤形は、40mgの酢酸アビラテロンおよび600mgの長鎖脂質を含有するように調製した。固体剤形は、下記のように調製した。
【0217】
配合可能錠剤:錠剤吸着は、配合可能錠剤をSEDDSビヒクルに浸漬することによって達成した。それぞれの調合物の20個の錠剤を、均一性を確保するために分類して、3リットルビーカー内でSEDDSビヒクルの過剰において錠剤を浮かべてビヒクルを錠剤内に吸収させることによって吸着させた。
【0218】
【表10】
【0219】
実施例6:メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと比較した二酸化ケイ素の安定性調査
二重実験において、40mgのウンデカン酸テストステロンを含有する1mlの大豆油ベースのSEEDS(実施例1におけるS2に相当)を、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(Neusilin NS2N顆粒)または二酸化ケイ素のいずれかの試料に加えた。試料を、安定性チャンバー内の密閉ガラスバイアル内に40℃/75RHで1か月間おいた。安定性貯蔵に続いて、試料を、3mLのヘプタンに溶解し、3mLの2-プロパノールの後に25mLのメタノールに取った。試料を、HPLCによってKinetex C18カラム(50x4.6mm)5μm、カラム温度30℃、移動相:メタノール中5%の水、波長260nmで流速1.5ml/分を用いて分析した。クロマトグラムは、二酸化ケイ素と比較してメタケイ酸アルミン酸マグネシウムにおいて有意により豊富であった2種のウンデカン酸テストステロン関連の不純物を示した。
【0220】
【表11】
【0221】
実施例7:酢酸アビラテロンを含有する錠剤
固体基剤を、コロイド状二酸化ケイ素(Aeroperl 300)をブチル化ヒドロキシトルエンと混合し次いで高せん断ミキサーにおいて混合物を12.5%のマルトデキストリン(Lycatab DSH)に加えて適切な量の水の溶液と共に粒状化することによって生成した。粒状化後顆粒を、流動床において乾燥して篩にかけた。バッチサイズは、6Lの高せん断ミキサーに対して700gであった。
【0222】
基剤組成物を表7に示す。
【0223】
【表12】
【0224】
基剤錠剤
記述したように調製した固体基剤を、L-HPC LH11と10分間混合した。次いで0.5%のステアリン酸マグネシウムを加えて5分間混合した。混合物を、Diaf打錠機を用いて10x22mmの楕円形金型上で錠剤内に圧縮した。錠剤組成物を表6に示す。錠剤重量は、約850mgであり硬度は30Nであった。
【0225】
【表13】
【0226】
SEDDSビヒクル
SEDDSビヒクルを、下表9に示すように、基剤錠剤内に吸着されるように調製した。
【0227】
【表14】
【0228】
いずれの場合にも、油成分を、分散させて透明な単相のプラセボビヒクルシステムを与えるために混合した。次いで酢酸アビラテロンを、ビヒクルシステムに分散させ溶解させて一晩溶解した。
【0229】
固体経口剤形
全ての固体剤形は、16.7mgの酢酸アビラテロンおよび400mgの長鎖脂質を含有するように調製した。固体剤形を、下記のように調製した:
配合可能錠剤:錠剤吸着は、配合可能錠剤をSEDDSビヒクルに浸漬することによって達成した。それぞれの調合物の20個の錠剤を、均一性を確保するために分類して、3リットルビーカー内でSEDDSビヒクルの過剰において錠剤を浮かべてビヒクルを錠剤に吸収させることにより吸着させた。
【0230】
カプセル:カプセルを、ピペットによってSEDDS溶液で充填した。
【0231】
【表15】
【0232】
実施例8:二酸化ケイ素を用いる添加剤の効果の安定性調査
二酸化ケイ素、大豆油を基材とするSEDDSおよびウンデカン酸テストステロン(testosterone undecnoate)の上記の調合物を用いて、酸化防止剤(アルファ-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル)および/または金属除去剤(EDTA)の添加によってシステムをさらに安定化することを調査した。0.1%のEDTA二ナトリウム塩を、造粒流体に溶解して基剤(基剤K、表5)に加えおよびそれによって基剤錠剤(表6)に加えた。0.02%のアルファ-トコフェロールおよび0.025%のパルミチン酸アスコルビルを、40mgのウンデカン酸テストステロン/1000mgのSEDDS(実施例1におけるS2に相当)と共にSEDDSに溶解した。試料を、安定性チャンバー内の密閉HdPE容器内に30℃/65RHで2か月間おいた。安定性貯蔵に続いて、試料を、HPLCによって実施例6に記載のようにおよび欧州薬局方に従って過酸化物について分析した。
【0233】
【表16】
【0234】
実施例9:C11-パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセルの合成
700mgのパクリタキセルを、500mlのジクロロメタンに溶解する。この溶液に100mgのジメチルアミノピリジンおよび210mgのジイソプロピルカルボジイミドを加える。溶液を撹拌して窒素またはアルゴンのような不活性ガスを勢いよくかけ流す。溶液に186mgのウンデカン酸または328mgのドコサヘキサエン酸(docosahexaene acid)のいずれかを加えて溶液を不活性ガス下で1時間撹拌する。反応混合物を、次いで2~5mlに濃縮してクロマトグラフの精製のために溶離剤としてヘキサンおよび酢酸エチルの1:1混合物を用いて30gのシリカカラムに適用する。それぞれ約5mlの溶出液の画分を回収してエステル化された生成物の含有量についてHPLCによって分析する。高含有量の反応生成物を含む画分をプールして不活性気体下で蒸発乾固する。単離された生成物を、直ちにSEDDに溶解してカプセル内に充填されるまで不活性雰囲気下に維持する。それぞれのカプセルは、パクリタキセルの誘導体を親化合物すなわちパクリタキセルの10または12.5mgに相当する量で含有する。生成物を、実施例12に記載のようにビーグル犬における薬物動態学的調査のために使用する。
【0235】
実施例10:C11-パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセルの絶食状態のビーグル犬における単回用量薬物動態学的調査
調査は、増加した生物学的利用能、C11-パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセルの減少した吸収の変動を実証するための絶食状態のビーグル犬の比較薬物動態における無作為化、比較検討、単回用量、交差試験である。
【0236】
実施例9に記載のように調製されたC11-パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセル生成物を、比較対象(comparator)であるパクリタキセルの注入濃縮物の経口溶液と比較する。提供された総経口投薬量は、親化合物として計算して75mgである。
【0237】
イヌは、投薬の前日夕方から食物を与えない。ペンタガストリンを、投与より30分前にIMによって投薬する(6μg/kg、水中200μg/mL)。ペンタガストリンを、そうしないとヒトの胃ほど低いpHにならない、イヌの胃において低pHを確保するために投与する。胃のpHは、ペンタガストリン投薬の直前および酢酸アビラテロン調合物の投薬の直前に測定する。
【0238】
カプセルを、錠剤が噛み砕かれないが全体が嚥下されることを確実にするためにイヌの喉頭口上に直接おく。イヌは、投薬のすぐ後に全部で100mlの水を与えられる。
【0239】
血液試料(約0.5mL)を、投薬前を含めた投薬後24時間までの10の時点の各投薬時にそれぞれの動物から取る。
【0240】
計算された薬物動態学的パラメータは、すなわち総暴露量、または濃度-時間曲線(AUC0-inf、AUC0-t)下の面積、最大暴露量(Cmax)、および最大暴露までの時間(Tmax)である。
【0241】
実施例11:SEDDS中の酢酸アビラテロンを含有する錠剤の絶食および摂食状態のビーグル犬における単回用量薬物動態学的調査
調査は、それぞれSEDDS中の酢酸アビラテロンを含む錠剤の減少した食効または無食効のように良好に増加した生物学的利用能、減少した吸収の変動を実証するための絶食および摂食状態のビーグル犬比較薬物動態における無作為化、比較検討、単回用量、交差試験である。
【0242】
SEDDS中の酢酸アビラテロンを含有する錠剤を、Zytiga(登録商標)錠剤(比較対象生成物)と比較する。イヌは、それぞれの生成物の単回用量を与えられる。絶食状態ではイヌは、投薬の前日夕方から食物を与えられない。イヌは、調査の摂食状態の部分においては投薬より5分前に摂食する。
【0243】
ペンタガストリンを、投与より30分前にIMによって投薬する(6μg/kg、水中200μg/mL)。ペンタガストリンを、そうしないとヒトの胃ほど低いpHにならない、イヌの胃において低pHを確保するために投与する。胃のpHは、ペンタガストリン投薬の直前および酢酸アビラテロン調合物の投薬の直前に測定する。
【0244】
錠剤を、錠剤が噛み砕かれないが全体が嚥下されることを確実にするためにイヌの喉頭口上に直接おく。完全な経口投薬を受けることを確実にするために、イヌは、錠剤投薬のすぐ後に100mlの水を与えられる。
【0245】
血液試料(約0.5mL)を、投薬前を含めた投薬後24時間までの10の時点の各投薬時にそれぞれの動物から取る。
【0246】
計算された薬物動態学的パラメータは、すなわち総暴露量、または濃度-時間曲線(AUC0-inf、AUC0-t)下の面積、最大暴露量(Cmax)、および最大暴露までの時間(Tmax)である。吸収の変動を計算して摂食および絶食状態の両方におけるZytigaの吸収の変動と比較する。
【0247】
実施例12:カプセル中のSEDDS調合物S2において投与されるC11-パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセルの絶食状態のビーグル犬における単回用量薬物動態学的調査
調査は、それぞれSEDDS調合物S2中の、C11-パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセルを含有するカプセルの絶食状態におけるビーグル犬比較薬物動態における無作為化、比較検討、単回用量、並行群間調査であった(表1を参照)。
【0248】
C11-パクリタキセルおよびDHA-パクリタキセル生成物を、実施例8に記載のように調製して比較対象であるパクリタキセルの注入濃縮物の経口溶液2mg/mlと比較した。それぞれのカプセルの強度は、C-11パクリタキセルカプセルについては12.5mgのパクリタキセル当量およびDHA-パクリタキセルについては10mgのパクリタキセル当量(ewquivalents)であった。提供された総経口投薬量は、親化合物として計算してパクリタキセルおよびC11-パクリタキセルについてはそれぞれ、75mg、およびDHA-パクリタキセルについては親化合物として計算して60mgであった。
【0249】
イヌは、投薬の前日夕方から食物を与えられなかった。カプセルを、カプセルが噛み砕かれないが全体が嚥下されることを確実にするためにイヌの喉頭口上に直接おいた。全てのイヌは、投薬の後すぐに全部で100mlの水を与えられた。
【0250】
血液試料(約0.5mL)を、投薬前を含めた投薬後24時間までの10の時点の各投薬時にそれぞれの動物から取った。
【0251】
計算された薬物動態学的パラメータは、すなわち総暴露量、または濃度-時間曲線(AUC0-inf、AUC0-t)下の面積、最大暴露量(Cmax)、最大暴露までの時間(Tmax)、終末相半減期t1/2およびプロドラッグから親への変換率である。
【0252】
【表17】
【0253】
実施例13:SEDDS調合物S2中の酢酸アビラテロンを含有する錠剤およびカプセルの絶食および摂食状態のビーグル犬における単回用量薬物動態学的調査
調査は、それぞれSEDDS調合物S2(表1参照)中の酢酸アビラテロンをそれぞれ含有する、錠剤およびカプセルの減少した食効または無食効のように良好に吸収の低い変動をそれぞれ実証するための、絶食および摂食状態のビーグル犬比較薬物動態における無作為化、比較検討、単回用量、交差試験であった。
【0254】
イヌは、単回用量として100mgの酢酸アビラテロンに相当する16.7mgの6個のカプセルまたは錠剤を与えられた。絶食状態ではイヌは、投薬の前日夕方から食物を与えられなかった。イヌは、調査の摂食状態の部分においては投薬より30分前に摂食した。
【0255】
ペンタガストリンを、投与より30分前にIMによって投薬した(6μg/kg、水中200μg/mL)。ペンタガストリンを、そうしないとヒトの胃ほど低いpHにならない、イヌの胃において低pHを確保するために投与する。胃のpHは、ペンタガストリン投薬の直前および酢酸アビラテロン調合物の投薬の直前に測定した。
【0256】
錠剤またはカプセルを、生成物が噛み砕かれないが全体が嚥下されることを確実にするためにイヌの喉頭口上に直接おいた。完全な経口投薬を受けることを確実にするために、イヌは、投薬の後すぐに100mlの水を与えられた。
【0257】
血液試料(約0.5mL)を、投薬前を含めた投薬後24時間までの10の時点の各投薬時にそれぞれの動物から取った。
【0258】
計算された薬物動態学的パラメータは、すなわち総暴露量、または濃度-時間曲線(AUC0-inf、AUC0-t)下の面積、最大暴露量(Cmax)、最大暴露までの時間(Tmax)および終末相半減期t1/2ある。摂食および絶食状態の両方における吸収の変動を計算した。
【0259】
【表18】
【0260】
カプセルについてのCmax、AUC0-tおよびAUC0-∞のCV%は、それぞれ、絶食状態において23.4%、10.4%および10.5%、ならびに摂食状態において33.6%、19.3%および19.2%であった。
【0261】
錠剤についてのCmax、AUC0-tおよびAUC0-∞のCV%は、それぞれ、絶食状態において21.7%、16.1%および16.6%、ならびに摂食状態において45.0%、43.2%および10.0%であった。
【0262】
実施例14:オクトレオチドのドコサヘキサエン酸アミドの合成
400mgのオクトレオチドおよび45mgのジメチルアミノピリジンを、7mlのDMFに溶解する。200μlのジイソプロピルカルボジイミドを加える。163mgのヘキサコサン酸を、わずかに加熱した9mlクロロホルムに溶解する。溶液を、混合して1時間撹拌する。反応混合物を、濃縮してヘキサン/酢酸エチル1/1を用いるカラムクロマトグラフィーのために15gの二酸化ケイ素に移す。生成物を、ヘキサン/酢酸エチル1/1で3gの二酸化ケイ素カラムを通してろ過することによってさらに精製し溶出物を回収して濃縮乾固する。総収量は、約80%の全体収量に相当する440mgのオクトレオチドセロアート(octreotide ceroate)である。