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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20220511BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20220511BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20220511BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20220511BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20220511BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20220511BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20220511BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20220511BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220511BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/0206
H01M8/2483
C25B1/042
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B9/65
C25B13/04 302
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020027763
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131999
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞邉 健太
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204698(JP,A)
【文献】特開2010-073631(JP,A)
【文献】特開2011-129265(JP,A)
【文献】特開昭58-194262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層に対して第1の方向の一方側に配置された空気極と、前記電解質層に対して前記第1の方向の他方側に配置された燃料極と、をそれぞれ含み、前記第1の方向に並べて配置された複数の単セルと、
前記複数の単セルについて設けられ、それぞれ、前記単セルの前記燃料極と電気的に接続された導電性の集電部材と、
複数の導電性の第1のインターコネクタであって、それぞれ、前記集電部材に電気的に接続されていると共に、導電性接合材を介して前記単セルの前記空気極に接合された、複数の第1のインターコネクタと、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、さらに、
前記複数の集電部材の内の最も前記第1の方向の前記他方側に位置する前記集電部材である特定集電部材に対して前記第1の方向の前記他方側に配置された導電性のターミナル部材と、
前記特定集電部材と前記ターミナル部材との間に配置され、前記ターミナル部材に電気的に接続された第1の導電性部材と、
前記特定集電部材と前記第1の導電性部材との間に配置され、前記特定集電部材と電気的に接続されると共に、導電性接合材を介して前記第1の導電性部材に接合された第2のインターコネクタと、
を備え、
前記第1の導電性部材の熱膨張係数と前記第2のインターコネクタの熱膨張係数との差の絶対値は、前記ターミナル部材の熱膨張係数と前記第2のインターコネクタの熱膨張係数との差の絶対値より小さく、
前記第1の導電性部材の熱膨張係数は、前記ターミナル部材の熱膨張係数より小さく、かつ、前記第2のインターコネクタの熱膨張係数以上である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
各前記単セルの前記空気極に面する空気室にガスを供給する第1のマニホールドと、各前記単セルの前記空気極に面する前記空気室からガスを排出する第2のマニホールドと、が形成されており、
前記第2のインターコネクタと前記ターミナル部材との間の空間である特定空間は、前記第1のマニホールドと前記第2のマニホールドとの少なくとも一方と連通しており、
前記ターミナル部材は、耐酸化性が高い材料により構成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記特定空間は、前記第1のマニホールドと前記第2のマニホールドとの一方と連通し、かつ、前記第1のマニホールドと前記第2のマニホールドとの他方と連通していない、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
請求項または請求項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
各前記単セルの前記燃料極に面する燃料室にガスを供給する第3のマニホールドと、各前記単セルの前記燃料極に面する前記燃料室からガスを排出する第4のマニホールドと、が形成されており、
前記電気化学反応セルスタックは、さらに、前記第3のマニホールドと前記第4のマニホールドとの少なくとも一部を形成し、前記ターミナル部材に隣接するガラスシール部を備え、
前記第1の方向において前記ガラスシール部を挟んで前記ターミナル部材と対向する他の部材は、前記ターミナル部材と同一の材料により形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、さらに、
前記第1の方向において前記ターミナル部材を挟んで前記第1の導電性部材と対向する位置に配置され、前記第1の導電性部材と同一の材料により形成された第2の導電性部材を備える、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)は、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを備える。
【0003】
SOFCは、一般に、燃料電池スタックの形態で利用される。燃料電池スタックは、複数の単セルと、複数の導電性のインターコネクタと、複数の導電性の集電部材とを備える。各インターコネクタは、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材を介して単セルの空気極に接合されている。また、各集電部材は、単セルの燃料極に接合されている。燃料電池スタックにおいては、単セルと集電部材とインターコネクタとが上記所定の方向に繰り返し並べられているため、インターコネクタは、単セルと接続された側とは反対側において、集電部材とも接続されている。
【0004】
また、燃料電池スタックは、電力の出力端子としての導電性のターミナルプレートを備える。従来の燃料電池スタックの構成では、ターミナルプレートに最も近い位置に配置された単セルと、ターミナルプレートとが、集電部材を介して接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-57407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池スタックの製造工程の効率化を実現するために、単セルと、単セルの燃料極に接合された集電部材と、集電部材に接合されたインターコネクタとを備える単位(以下、「組立単位」という。)を予め複数作製し、複数の組立単位を積層することにより燃料電池スタックを作製する製造方法が採用されることがある。しかしながら、上記従来の燃料電池スタックの構成では、ターミナルプレートに最も近い位置に配置された単セルと、該ターミナルプレートとは、集電部材を介して接続されているため、該単セルについては、上述した組立単位ではなく、インターコネクタを備えない別の組立単位を作製して組み付ける必要がある。そのため、上記従来の燃料電池スタックの構成では、製造工程の効率化を十分に実現することができない、という課題がある。
【0007】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電解質層と、前記電解質層に対して第1の方向の一方側に配置された空気極と、前記電解質層に対して前記第1の方向の他方側に配置された燃料極と、をそれぞれ含み、前記第1の方向に並べて配置された複数の単セルと、前記複数の単セルについて設けられ、それぞれ、前記単セルの前記燃料極と電気的に接続された導電性の集電部材と、複数の導電性の第1のインターコネクタであって、それぞれ、前記集電部材に電気的に接続されていると共に、導電性接合材を介して前記単セルの前記空気極に接合された、複数の第1のインターコネクタと、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、さらに、前記複数の集電部材の内の最も前記第1の方向の前記他方側に位置する前記集電部材である特定集電部材に対して前記第1の方向の前記他方側に配置された導電性のターミナル部材と、前記特定集電部材と前記ターミナル部材との間に配置され、前記ターミナル部材に電気的に接続された第1の導電性部材と、前記特定集電部材と前記第1の導電性部材との間に配置され、前記特定集電部材と電気的に接続されると共に、導電性接合材を介して前記第1の導電性部材に接合された第2のインターコネクタと、を備え、前記第1の導電性部材の熱膨張係数と前記第2のインターコネクタの熱膨張係数との差の絶対値は、前記ターミナル部材の熱膨張係数と前記第2のインターコネクタの熱膨張係数との差の絶対値より小さい。
【0011】
このように、本電気化学反応セルスタックでは、特定集電部材に対して第1の方向の他方側(特定集電部材とターミナル部材との間)に、第2のインターコネクタが配置されている。そのため、電気化学反応セルスタックの製造の際に、単セルと、単セルの燃料極に接合された集電部材と、集電部材に接合されたインターコネクタとを備える単位(組立単位)を予め複数作製し、複数の組立単位を積層することにより電気化学反応セルスタックを作製する製造方法を採用することができる。このとき、ターミナル部材に最も近い位置に配置された単セルを含む組立単位についても、他の組立単位と同様に、インターコネクタ(第2のインターコネクタ)を備えた構成とすることができる。そのため、本電気化学反応セルスタックによれば、製造工程の効率化を実現することができる。
【0012】
また、本電気化学反応セルスタックでは、第2のインターコネクタが導電性接合材を介して第1の導電性部材に接合されており、第1の導電性部材の熱膨張係数と第2のインターコネクタの熱膨張係数との差の絶対値は、ターミナル部材の熱膨張係数と第2のインターコネクタの熱膨張係数との差の絶対値より小さい。そのため、第1の導電性部材を備えず、第2のインターコネクタが導電性接合材を介して直接的にターミナル部材に接合された構成と比較して、該導電性接合材により接合される2つの部材の間の熱膨張係数の差の絶対値を小さくすることができ、該2つの部材間の熱膨張差に起因して導電性接合材の剥離が発生することを抑制することができ、該剥離に起因して電気化学反応セルスタックの電気抵抗が上昇することを抑制することができる。
【0013】
このように、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応セルスタックの製造工程の効率化を実現しつつ、導電性接合材の剥離に起因して電気化学反応セルスタックの電気抵抗が上昇することを抑制することができる。
【0014】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の導電性部材の熱膨張係数は、前記ターミナル部材の熱膨張係数より小さく、かつ、前記第2のインターコネクタの熱膨張係数以上である構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、第1の導電性部材の熱膨張係数が、ターミナル部材の熱膨張係数と第2のインターコネクタの熱膨張係数との間の値となるため、導電性接合材により接合される2つの部材間の熱膨張差に起因して導電性接合材の剥離が発生することを効果的に抑制することができ、該剥離に起因して電気化学反応セルスタックの電気抵抗が上昇することを効果的に抑制することができる。
【0015】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、各前記単セルの前記空気極に面する空気室にガスを供給する第1のマニホールドと、各前記単セルの前記空気極に面する前記空気室からガスを排出する第2のマニホールドと、が形成されており、前記第2のインターコネクタと前記ターミナル部材との間の空間である特定空間は、前記第1のマニホールドと前記第2のマニホールドとの少なくとも一方と連通しており、前記ターミナル部材は、耐酸化性が高い材料により構成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、第2のインターコネクタとターミナル部材との間の特定空間が第1のマニホールドと第2のマニホールドとの少なくとも一方と連通しているため、該マニホールドから流入するガスによって特定空間を酸化雰囲気とすることができ、第2のインターコネクタと第1の導電性部材とを接合する導電性接合材の剥離の発生を効果的に抑制することができる。また、ターミナル部材が耐酸化性が高い材料により構成されているため、特定空間を酸化雰囲気としても、ターミナル部材の劣化を抑制することができる。
【0016】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記特定空間は、前記第1のマニホールドと前記第2のマニホールドとの一方と連通し、かつ、前記第1のマニホールドと前記第2のマニホールドとの他方と連通していない構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、一方のマニホールドから流入したガスによって特定空間が満たされた後には、特定空間へのさらなるガスの流入が抑制され、電気化学反応に寄与しない特定空間へのガスの流通を抑制することができ、電気化学反応セルスタックの効率の低下を抑制することができる。
【0017】
(5)上記電気化学反応セルスタックにおいて、各前記単セルの前記燃料極に面する燃料室にガスを供給する第3のマニホールドと、各前記単セルの前記燃料極に面する前記燃料室からガスを排出する第4のマニホールドと、が形成されており、前記電気化学反応セルスタックは、さらに、前記第3のマニホールドと前記第4のマニホールドとの少なくとも一部を形成し、前記ターミナル部材に隣接するガラスシール部を備え、前記第1の方向において前記ガラスシール部を挟んで前記ターミナル部材と対向する他の部材は、前記ターミナル部材と同一の材料により形成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、ガラスシール部の存在により、第3のマニホールドや第4のマニホールドのガスシール性を向上させることができると共に、ガラスシール部を挟んで対向するターミナル部材と他の部材との間の熱膨張差に起因してガラスシール部に割れが発生することを抑制することができる。
【0018】
(6)上記電気化学反応セルスタックにおいて、さらに、前記第1の方向において前記ターミナル部材を挟んで前記第1の導電性部材と対向する位置に配置され、前記第1の導電性部材と同一の材料により形成された第2の導電性部材を備える構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、ターミナル部材が第1の導電性部材および第2の導電性部材に挟まれ、ターミナル部材と第1の導電性部材との熱膨張差と、ターミナル部材と第2の導電性部材との熱膨張差とを略同一にすることができるため、該熱膨張差に起因するターミナル部材の反りの発生を抑制することができる。
【0019】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図6】燃料極側集電部材148の作製方法の一例を示す説明図
図7図4のVII-VIIの位置における燃料電池スタック100のXY断面構成を示す説明図
図8】変形例における燃料電池スタック100の断面構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1(および後述する図7)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1(および後述する図7)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0022】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、一対のターミナルプレート70,80と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態ではZ軸方向)に並べて配置されている。上記配列方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、Z軸方向に沿った上側は、特許請求の範囲における第1の方向の一方側に相当し、Z軸方向に沿った下側は、特許請求の範囲における第1の方向の他方側に相当する。
【0023】
一対のターミナルプレート70,80のうちの一方(以下、「上側ターミナルプレート70」という。)は、7つの発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、上側ターミナルプレート70の上側に配置されている。また、一対のターミナルプレート70,80のうちの他方(以下、「下側ターミナルプレート80」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他方(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、下側ターミナルプレート80の下側に配置されている。なお、上側ターミナルプレート70と上側エンドプレート104との間、および、下側ターミナルプレート80と下側エンドプレート106との間には、絶縁シート92が介在している。絶縁シート92は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成されている。
【0024】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、ターミナルプレート70,80、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上側エンドプレート104から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0025】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによる上下方向の圧縮力によって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と上側エンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と下側エンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24と下側エンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成されている。
【0026】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。酸化剤ガス供給マニホールド161は、特許請求の範囲における第1のマニホールドに相当し、酸化剤ガス排出マニホールド162は、特許請求の範囲における第2のマニホールドに相当する。
【0027】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス供給マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料ガス供給マニホールド171は、特許請求の範囲における第3のマニホールドに相当し、燃料ガス排出マニホールド172は、特許請求の範囲における第4のマニホールドに相当する。
【0028】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0029】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110を内包している。そのため、各ボルト22およびナット24によるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。
【0030】
(ターミナルプレート70,80の構成)
一対のターミナルプレート70,80は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレスといった導電性材料により形成されている。上側ターミナルプレート70の中央付近には、Z軸方向に貫通する孔71が形成されている。Z軸方向視で、上側ターミナルプレート70に形成された孔71の内周線は、後述する各単セル110を内包している。なお、本実施形態では、Z軸方向視で、上側ターミナルプレート70に形成された孔71の内周線は、上側エンドプレート104に形成された孔32の内周線と略一致している。上側ターミナルプレート70は、Z軸方向視で、上側エンドプレート104の外周線から外側に突出した突出部78を備えており、該突出部78は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能する。また、下側ターミナルプレート80は、Z軸方向視で、下側エンドプレート106の外周線から外側に突出した突出部88を備えており、該突出部88は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。下側ターミナルプレート80は、特許請求の範囲におけるターミナル部材に相当する。
【0031】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102(最下部に位置する2つの発電単位102)のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102(最下部に位置する2つの発電単位102)のYZ断面構成を示す説明図である。
【0032】
図4および図5に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム部材130と、燃料極側フレーム部材140と、燃料極側集電部材148と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム部材130、燃料極側フレーム部材140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
【0033】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された中間層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、中間層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0034】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。中間層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)とYSZとを含むように構成されている。中間層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されることを抑制する機能を有する。
【0035】
単セル用セパレータ120は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120における孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、電解質層112における空気極114の側(上側)の表面の周縁部に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。
【0036】
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部(孔121を取り囲む部分)を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
【0037】
単セル用セパレータ120における孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0038】
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。インターコネクタ190(より詳細には、インターコネクタ190の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102(以下、「最下部発電単位102X」という。)の下側のインターコネクタ190(以下、「最下部インターコネクタ190X」という。)は、導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114ではなく、後述する第1の導電性部材98(下側ターミナルプレート80に電気的に接続された導電性部材)に接合されている。また、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190は、IC用セパレータ180を介して上側ターミナルプレート70に電気的に接続されている。なお、最下部インターコネクタ190Xは、特許請求の範囲における第2のインターコネクタに相当し、最下部インターコネクタ190X以外のインターコネクタ190は、特許請求の範囲における第1のインターコネクに相当する。
【0039】
IC用セパレータ180は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180における孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190(平板部150)の周縁部における上側の表面に、例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176(または外部空間)とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166(または、後述する特定空間59)とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。
【0040】
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部(孔181を取り囲む部分)を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(空気室166側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
【0041】
空気極側フレーム部材130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム部材130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム部材130は、単セル用セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側(上側)の表面の周縁部と、上側のIC用セパレータ180における空気室166に対向する側(下側)の表面の周縁部とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム部材130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム部材130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0042】
燃料極側フレーム部材140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム部材140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム部材140は、単セル用セパレータ120における電解質層112に対向する側(下側)の表面の周縁部と、下側のIC用セパレータ180における燃料室176に対向する側(上側)の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム部材140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0043】
燃料極側集電部材148は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材148は、導電性部144と弾性部149とを有する。導電性部144は、燃料極116とインターコネクタ190とを電気的に接続する部分であり、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。導電性部144は、燃料極116の下側の表面に接触した電極対向部145と、インターコネクタ190の上側の表面に接触したインターコネクタ対向部146と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを有している。また、弾性部149は、燃料極側集電部材148の弾性を確保するための部分であり、例えば、マイカ等により形成されている。導電性部144のうちのインターコネクタ対向部146は、Z軸方向においてインターコネクタ190と弾性部149との間に配置され、導電性部144のうちの電極対向部145は、Z軸方向において燃料極116と弾性部149との間に配置されている。これにより、燃料極側集電部材148が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材148を介した燃料極116とインターコネクタ190との電気的接続が良好に維持される。なお、以下では、最下部発電単位102Xの燃料極側集電部材148(すなわち、燃料電池スタック100に含まれる燃料極側集電部材148の内の最も下側に位置する燃料極側集電部材148)を、「最下部燃料極側集電部材148X」という。燃料極側集電部材148は、特許請求の範囲における集電部材に相当し、最下部燃料極側集電部材148Xは、特許請求の範囲における特定集電部材に相当する。
【0044】
図6は、燃料極側集電部材148の作製方法の一例を示す説明図である。燃料極側集電部材148は、例えば、図6に示すように、平板状の材料(例えば、厚さ10~200μmのニッケル箔)に切り込みSLを入れ、該材料の上に複数の孔が形成されたシート状の弾性部149を配置した状態で、複数の矩形部分を曲げ起こして弾性部149を挟むように加工することにより作製される。曲げ起こされた各矩形部分が電極対向部145となり、曲げ起こされた部分以外の穴OPが開いた状態の平板部分がインターコネクタ対向部146となり、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ部分が連接部147となる。なお、図6では、燃料極側集電部材148の製造方法を示すため、一部の矩形部分について、曲げ起こし加工が完了する前の状態を示している。
【0045】
図5に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172における空気極側フレーム部材130(および後述する特定フレーム部材130X)の連通孔108により形成された部分に、ガラスシール部96が設けられている。ガラスシール部96は、Z軸方向視で略円環形状であり、ガラスシール部96の内周面が燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172の一部を形成している。ガラスシール部96は、空気極側フレーム部材130(および後述する特定フレーム部材130X)と他の部材(単セル用セパレータ120やIC用セパレータ180、下側ターミナルプレート80)との界面を介した燃料ガスFGおよび燃料オフガスFOGのリークを抑制する。
【0046】
なお、上述したように、燃料電池スタック100は、複数の発電単位102を備えており、各発電単位102は、単セル110と燃料極側集電部材148と一対のインターコネクタ190とを有している。また、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100は、複数の単セル110と、複数の単セル110について設けられた複数の燃料極側集電部材148と、複数の単セル110について設けられた複数のインターコネクタ190とを備えると言える。
【0047】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0048】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は導電性接合材196を介してインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材148を介してインターコネクタ190に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、燃料電池スタック100において、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190は上側ターミナルプレート70に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ190は下側ターミナルプレート80に電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能する一対のターミナルプレート70,80から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0049】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0050】
A-3.燃料電池スタック100の最下部付近の詳細構成:
次に、本実施形態における燃料電池スタック100の最下部付近の詳細構成について説明する。図7は、図4のVII-VIIの位置における燃料電池スタック100のXY断面構成を示す説明図である。
【0051】
図4および図5に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100は、最下部発電単位102X(最も下側に位置する発電単位102)と下側ターミナルプレート80との間に、特定フレーム部材130Xが配置されている。特定フレーム部材130Xは、空気極側フレーム部材130と同様の構成の部材である。すなわち、特定フレーム部材130Xは、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131Xが形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。Z軸方向視で、特定フレーム部材130Xに形成された孔131Xの内周線は、空気極側フレーム部材130に形成された孔131の内周線と略一致している。特定フレーム部材130Xの孔131Xは、特定空間59を構成する。特定フレーム部材130Xは、最下部発電単位102Xの下側のIC用セパレータ180の下側の表面の周縁部と、下側ターミナルプレート80の上側の表面の周縁部とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、特定空間59のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、特定フレーム部材130Xによって、最下部発電単位102Xの下側のIC用セパレータ180(すなわち、該IC用セパレータ180に接続されたインターコネクタ190)と下側ターミナルプレート80との間が電気的に絶縁される。
【0052】
また、本実施形態の燃料電池スタック100は、最下部インターコネクタ190Xと下側ターミナルプレート80との間の空間である特定空間59に配置された第1の導電性部材98を備える。第1の導電性部材98は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、導電性材料(例えば金属)により形成されている。上述したように、第1の導電性部材98は、導電性接合材196を介して最下部インターコネクタ190Xに接合されている。また、第1の導電性部材98は、所定の接合方法(例えば、溶接やロウ付け)により、下側ターミナルプレート80に接合されている。なお、第1の導電性部材98は、最下部インターコネクタ190X(最下部発電単位102Xの下側のインターコネクタ190)と下側ターミナルプレート80との間に配置されている。これを換言すれば、第1の導電性部材98は、最下部燃料極側集電部材148X(最下部発電単位102Xの燃料極側集電部材148)と下側ターミナルプレート80との間に配置され、最下部インターコネクタ190Xは、最下部燃料極側集電部材148Xと第1の導電性部材98との間に配置されていると言える。
【0053】
また、図4および図7に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、最下部インターコネクタ190Xと下側ターミナルプレート80との間の空間である特定空間59が、酸化剤ガス供給マニホールド161と連通している一方、酸化剤ガス排出マニホールド162と連通していない。すなわち、特定空間59を構成する孔131Xが形成された特定フレーム部材130Xには、酸化剤ガス供給マニホールド161と特定空間59とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132Xが形成されているが、特定空間59と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通するガス流路は形成されていない。なお、本明細書において、特定空間59が、あるマニホールド(例えば、酸化剤ガス排出マニホールド162)に連通していないとは、特定空間59と該マニホールドとを連通する専用のガス流路が存在しないことを意味し、特定空間59が単セル110の空気室166や他のマニホールドを介して該マニホールドと連通している形態を含まない。
【0054】
上述したように、燃料電池スタック100の運転動作の際には、酸化剤ガスOGが、酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して空気室166に供給される。ここで、本実施形態の燃料電池スタック100では、第1の導電性部材98が配置される特定空間59が、酸化剤ガス供給マニホールド161と連通しているため、酸化剤ガス供給マニホールド161に供給された酸化剤ガスOGは、酸化剤ガス供給連通孔132Xを介して特定空間59にも供給される。これにより、特定空間59が酸化雰囲気となる。
【0055】
ただし、各空気室166は酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している一方、特定空間59は酸化剤ガス排出マニホールド162には連通していない。そのため、酸化剤ガス供給マニホールド161から流入した酸化剤ガスOGによって特定空間59が満たされた後は、各空気室166と比べて特定空間59の圧力が高くなるため、特定空間59へのさらなる酸化剤ガスOGの流入は抑制される。
【0056】
ここで、本実施形態の燃料電池スタック100では、最下部インターコネクタ190Xと第1の導電性部材98と下側ターミナルプレート80との熱膨張係数について、「第1の導電性部材98の熱膨張係数と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数との差の絶対値は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数との差の絶対値より小さい」、という関係を満たしている。換言すれば、このような関係を満たすように、最下部インターコネクタ190Xと第1の導電性部材98と下側ターミナルプレート80との形成材料が決められている。
【0057】
例えば、700℃において、フェライト系ステンレスであるSUS444(以下、「第1のステンレス材料」という。)の熱膨張係数は12.4(10-6/℃)であり、Alの含有量が2質量%以上であるフェライト系ステンレス(以下、「第2のステンレス材料」という。)の熱膨張係数は13.0(10-6/℃)であり、Crの含有量が18質量%以上であるフェライト系ステンレス(以下、「第3のステンレス材料」という。)の熱膨張係数は11.4(10-6/℃)である。すなわち、第1~第3のステンレス材料の熱膨張係数の大小関係は、下記の通りである。
第2のステンレス材料の熱膨張係数(=13.0)>第1のステンレス材料の熱膨張係数(=12.4)>第3のステンレス材料の熱膨張係数(=11.4)
【0058】
そのため、例えば、第1の導電性部材98を上記第1のステンレス材料により形成し、最下部インターコネクタ190Xを上記第3のステンレス材料により形成し、下側ターミナルプレート80を上記第2のステンレス材料で形成すると、第1の導電性部材98の熱膨張係数(=12.4)と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数(=11.4)との差の絶対値(=1.0)は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数(=13.0)と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数(=11.4)との差の絶対値(=1.6)より小さい、という関係が満たされることとなる。また、例えば、第1の導電性部材98を上記第3のステンレス材料により形成し、最下部インターコネクタ190Xを上記第3のステンレス材料により形成し、下側ターミナルプレート80を上記第2のステンレス材料で形成しても、第1の導電性部材98の熱膨張係数(=11.4)と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数(=11.4)との差の絶対値(=0)は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数(=13.0)と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数(=11.4)との差の絶対値(=1.6)より小さい、という関係が満たされることとなる。
【0059】
また、本実施形態の燃料電池スタック100において、「第1の導電性部材98の熱膨張係数は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数より小さく、かつ、最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数以上である」、という関係を満たすことが好ましい。例えば、第1の導電性部材98を上記第1のステンレス材料により形成し、最下部インターコネクタ190Xを上記第3のステンレス材料により形成し、下側ターミナルプレート80を上記第2のステンレス材料で形成すると、第1の導電性部材98の熱膨張係数(=12.4)は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数(=13.0)より小さく、かつ、最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数(=11.4)以上である、という関係が満たされることとなる。また、例えば、第1の導電性部材98を上記第3のステンレス材料により形成し、最下部インターコネクタ190Xを上記第3のステンレス材料により形成し、下側ターミナルプレート80を上記第2のステンレス材料で形成しても、第1の導電性部材98の熱膨張係数(=11.4)は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数(=13.0)より小さく、かつ、最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数(=11.4)以上である、という関係が満たされることとなる。
【0060】
なお、インターコネクタ190は、導電性接合材196を介して単セル110に接合されるため、インターコネクタ190(最下部インターコネクタ190Xを含む)の熱膨張係数は、単セル110の熱膨張係数に近いことが好ましい。具体的には、インターコネクタ190と第1の導電性部材98と下側ターミナルプレート80との熱膨張係数について、単セル110の熱膨張係数との差の絶対値を比較したとき、単セル110の熱膨張係数とインターコネクタ190の熱膨張係数との差の絶対値が最大にならないことが好ましい。単セル110の熱膨張係数(単セル110の内、厚さが最も厚いために支配的である燃料極116の熱膨張係数)は、おおよそ12.0(10-6/℃)程度である。そのため、例えば、インターコネクタ190を上記第3のステンレス材料により形成し、第1の導電性部材98を上記第1のステンレス材料により形成し、下側ターミナルプレート80を上記第2のステンレス材料で形成すると、単セル110の熱膨張係数(=12.0)とインターコネクタ190の熱膨張係数(=11.4)との差の絶対値(=0.6)は、単セル110の熱膨張係数(=12.0)と第1の導電性部材98の熱膨張係数(=12.4)との差の絶対値(=0.4)と同等であり、単セル110の熱膨張係数(=12.0)と下側ターミナルプレート80の熱膨張係数(=13.0)との差の絶対値(=1.0)より小さいため、上記関係が満たされることとなる。
【0061】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、下側ターミナルプレート80が、耐酸化性が高い材料により形成されている。ここで、耐酸化性が高い材料とは、100℃での25分間の加熱および5分間の空冷のサイクルを400回繰り返したときの重量変化量が、SUS310Sより小さい(すなわち、重量が変化しにくい)材料である。例えば上記第2のステンレス材料は、耐酸化性が高い材料に該当する。
【0062】
また、上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172の一部を形成するガラスシール部96を有する(図5参照)。また、特定フレーム部材130Xの位置に配置されたガラスシール部96(すなわち、下側ターミナルプレート80に隣接するガラスシール部96)を挟んでZ軸方向に下側ターミナルプレート80と対向する部材であるIC用セパレータ180は、下側ターミナルプレート80と同一の材料により形成されている。例えば、下側ターミナルプレート80とIC用セパレータ180とは、共に上記第2のステンレス材料により形成されている。
【0063】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、Z軸方向に並べて配置された複数の単セル110を備える。各単セル110は、電解質層112と、電解質層112に対して上側に配置された空気極114と、電解質層112に対して下側に配置された燃料極116とを含む。また、燃料電池スタック100は、複数の単セル110について設けられた導電性の燃料極側集電部材148を備える。燃料極側集電部材148は、単セル110の燃料極116と電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100は、複数の導電性のインターコネクタ190(最下部インターコネクタ190X以外のインターコネクタ190)を備える。インターコネクタ190は、燃料極側集電部材148に電気的に接続されていると共に、導電性接合材196を介して単セル110の空気極114に接合されている。また、燃料電池スタック100は、導電性の下側ターミナルプレート80と、第1の導電性部材98と、最下部インターコネクタ190Xとを備える。下側ターミナルプレート80は、複数の燃料極側集電部材148の内の最も下側に位置する燃料極側集電部材148である最下部燃料極側集電部材148Xに対して下側に配置されている。第1の導電性部材98は、最下部燃料極側集電部材148Xと下側ターミナルプレート80との間に配置され、下側ターミナルプレート80に電気的に接続されている。最下部インターコネクタ190Xは、最下部燃料極側集電部材148Xと第1の導電性部材98との間に配置され、最下部燃料極側集電部材148Xと電気的に接続されると共に、導電性接合材196を介して第1の導電性部材98に接合されている。また、本実施形態の燃料電池スタック100では、第1の導電性部材98の熱膨張係数と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数との差の絶対値は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数との差の絶対値より小さい。
【0064】
このように、本実施形態の燃料電池スタック100では、最下部燃料極側集電部材148Xの下側(最下部燃料極側集電部材148Xと下側ターミナルプレート80との間)に、最下部インターコネクタ190Xが配置されている。そのため、燃料電池スタック100の製造の際に、図4および図5に示すように、単セル110(および単セル用セパレータ120)と、単セル110の燃料極116に接合された燃料極側集電部材148と、燃料極側集電部材148に接合されたインターコネクタ190(およびIC用セパレータ180)と、燃料極側フレーム部材140とから構成される単位(以下、「組立単位101」という。)を予め複数作製し、複数の組立単位101を積層することにより燃料電池スタック100を作製する製造方法を採用することができる。このとき、下側ターミナルプレート80に最も近い位置に配置された単セル110を含む組立単位101についても、他の組立単位101と同様に、インターコネクタ190(最下部インターコネクタ190X)を備えた構成とすることができる。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、製造工程の効率化を実現することができる。
【0065】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、最下部インターコネクタ190Xが導電性接合材196を介して第1の導電性部材98に接合されており、第1の導電性部材98の熱膨張係数と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数との差の絶対値は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数との差の絶対値より小さい。そのため、第1の導電性部材98を備えず、最下部インターコネクタ190Xが導電性接合材196を介して直接的に下側ターミナルプレート80に接合された構成と比較して、該導電性接合材196により接合される2つの部材(本実施形態では、最下部インターコネクタ190Xおよび第1の導電性部材98)の間の熱膨張係数の差の絶対値を小さくすることができ、該2つの部材間の熱膨張差に起因して導電性接合材196の剥離が発生することを抑制することができ、該剥離に起因して燃料電池スタック100の電気抵抗が上昇することを抑制することができる。
【0066】
このように、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料電池スタック100の製造工程の効率化を実現しつつ、導電性接合材196の剥離に起因して燃料電池スタック100の電気抵抗が上昇することを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態の燃料電池スタック100において、第1の導電性部材98の熱膨張係数は、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数より小さく、かつ、最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数以上であることが好ましい。このような構成を採用すれば、第1の導電性部材98の熱膨張係数が、下側ターミナルプレート80の熱膨張係数と最下部インターコネクタ190Xの熱膨張係数との間の値となるため、導電性接合材196により接合される2つの部材間の熱膨張差に起因して導電性接合材196の剥離が発生することを効果的に抑制することができ、該剥離に起因して燃料電池スタック100の電気抵抗が上昇することを効果的に抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各単セル110の空気極114に面する空気室166にガスを供給する酸化剤ガス供給マニホールド161と、各単セル110の空気極114に面する空気室166からガスを排出する酸化剤ガス排出マニホールド162とが形成されている。また、最下部インターコネクタ190Xと下側ターミナルプレート80との間の空間である特定空間59は、酸化剤ガス供給マニホールド161と連通している。また、下側ターミナルプレート80は、耐酸化性が高い材料により構成されている。このように、本実施形態の燃料電池スタック100では、最下部インターコネクタ190Xと下側ターミナルプレート80との間の特定空間59が酸化剤ガス供給マニホールド161と連通しているため、酸化剤ガス供給マニホールド161から流入するガス(酸化剤ガスOG)によって特定空間59を酸化雰囲気とすることができ、最下部インターコネクタ190Xと第1の導電性部材98とを接合する導電性接合材196の剥離の発生を効果的に抑制することができる。また、下側ターミナルプレート80が耐酸化性が高い材料により構成されているため、特定空間59を酸化雰囲気としても、下側ターミナルプレート80の劣化を抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100では、特定空間59は、酸化剤ガス供給マニホールド161と連通しているが、酸化剤ガス排出マニホールド162とは連通していない。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、酸化剤ガス供給マニホールド161から流入したガス(酸化剤ガスOG)によって特定空間59が満たされた後には、特定空間59へのさらなるガスの流入が抑制され、発電に寄与しない特定空間59へのガスの流通を抑制することができ、燃料電池スタック100の効率の低下を抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態の燃料電池スタック100では、各単セル110の燃料極116に面する燃料室176にガスを供給する燃料ガス供給マニホールド171と、各単セル110の燃料極116に面する燃料室176からガスを排出する燃料ガス排出マニホールド172とが形成されている。また、燃料電池スタック100は、さらに、燃料ガス供給マニホールド171と燃料ガス排出マニホールド172との少なくとも一部を形成するガラスシール部96を備える。Z軸方向において下側ターミナルプレート80に隣接するガラスシール部96を挟んで下側ターミナルプレート80と対向する他の部材であるIC用セパレータ180は、下側ターミナルプレート80と同一の材料により形成されている。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、ガラスシール部96の存在により、燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172のガスシール性を向上させることができると共に、ガラスシール部96を挟んで対向する下側ターミナルプレート80とIC用セパレータ180との間の熱膨張差に起因してガラスシール部96に割れが発生することを抑制することができる。
【0071】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0072】
上記実施形態における燃料電池スタック100の構成や燃料電池スタック100を構成する各部分の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。図8は、変形例における燃料電池スタック100の断面(YZ断面)構成を概略的に示す説明図である。図8に示す本変形例の燃料電池スタック100は、第2の導電性部材99を備える点が、上述した実施形態の燃料電池スタック100と異なる。第2の導電性部材99は、Z軸方向において下側ターミナルプレート80を挟んで第1の導電性部材98と対向する位置に配置されている。第2の導電性部材99は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、第1の導電性部材98の形成材料と同一の材料により形成されている。第2の導電性部材99は、所定の接合方法(例えば、溶接やロウ付け)により、下側ターミナルプレート80に接合されている。なお、第2の導電性部材99の形状(厚さやZ軸方向視での形状)は、第1の導電性部材98と略同一であることが好ましい。本変形例の燃料電池スタック100によれば、下側ターミナルプレート80が第1の導電性部材98および第2の導電性部材99に挟まれ、下側ターミナルプレート80と第1の導電性部材98との熱膨張差と、下側ターミナルプレート80と第2の導電性部材99との熱膨張差とを略同一にすることができるため、該熱膨張差に起因する下側ターミナルプレート80の反りの発生を抑制することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、第1の導電性部材98が配置される特定空間59は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通し、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通していないが、反対に、特定空間59は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通し、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通していないとしてもよい。このような構成を採用しても、酸化剤ガス排出マニホールド162から流入するガス(酸化剤オフガスOOG)によって特定空間59が酸化雰囲気に維持され、導電性接合材196の剥離が抑制され、該剥離に起因して燃料電池スタック100の電気抵抗が上昇することを抑制することができる。また、特定空間59が酸化剤ガス供給マニホールド161とは連通していないため、酸化剤ガス排出マニホールド162から流入したガス(酸化剤オフガスOOG)によって特定空間59が満たされた後には、特定空間59へのガスのさらなる流入が抑制され、発電に寄与しない特定空間59へのガスの流通を抑制することができ、燃料電池スタック100の効率を向上させることができる。このように、特定空間59が、酸化剤ガス供給マニホールド161と酸化剤ガス排出マニホールド162との一方と連通し、他方と連通していない構成を採用すれば、燃料電池スタック100の効率の低下を抑制しつつ、最下部インターコネクタ190Xと第1の導電性部材98とを接合する導電性接合材196の剥離の発生を効果的に抑制することができる。ただし、この構成は必須ではなく、特定空間59が酸化剤ガス供給マニホールド161と酸化剤ガス排出マニホールド162との両方に連通していてもよいし、特定空間59が酸化剤ガス供給マニホールド161と酸化剤ガス排出マニホールド162とのいずれとも連通していなくてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、第1の導電性部材98が、1枚の平板形状部材であるとしているが、第1の導電性部材98の構成は種々変形可能である。例えば、複数の平板形状部材を積層したものを第1の導電性部材98として用いてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、下側ターミナルプレート80の付近の構成について説明したが、上側ターミナルプレート70の付近の構成が同様の構成(インターコネクタと第1の導電性部材とターミナルプレートとの熱膨張係数が所定の関係にある構成)であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態における燃料極側集電部材148の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、燃料極側集電部材148の電極対向部145とインターコネクタ対向部146とがZ軸方向に並んだ位置にあり、両者の間に弾性部149が挟持された構成であるが、例えば特開2016-66415号公報に記載されているように、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とがZ軸方向に並ばず、電極対向部145とインターコネクタ190との間に一の弾性部149が挟持され、インターコネクタ対向部146と単セル110との間に他の一の弾性部149が挟持された構成を採用してもよい。このような構成であっても、導電性部144の一部分(インターコネクタ対向部146)がZ軸方向においてインターコネクタ190と弾性部149との間に配置され、導電性部144の他の一部分(電極対向部145)がZ軸方向において単セル110と弾性部149との間に配置された構成とすることができ、燃料極側集電部材148の導電性部144により、インターコネクタ190と単セル110との電気的接続を確保しつつ、燃料極側集電部材148の弾性部149により、燃料電池スタック100の運転時における単セル110の変形に対する追従性を確保することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、IC用セパレータ180および単セル用セパレータ120が、連結部188,128を有しているが、IC用セパレータ180および単セル用セパレータ120が、連結部188,128を有さなくてもよい。また、インターコネクタ190がIC用セパレータ180により支持されている必要はなく、インターコネクタ190が燃料電池スタック100の周縁部(Z軸方向視で空気極側フレーム部材130や燃料極側フレーム部材140と重なる部分)まで延伸していてもよい。なお、インターコネクタ190が燃料電池スタック100の周縁部まで延伸している構成では、上述したZ軸方向において下側ターミナルプレート80に隣接するガラスシール部96を挟んで下側ターミナルプレート80と対向する他の部材は、インターコネクタ190である。
【0078】
また、上記実施形態の燃料電池スタック100は、ガラスシール部96を備えているが、燃料電池スタック100がガラスシール部96を備えていなくてもよい。
【0079】
また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。例えば、上記実施形態では、最下部インターコネクタ190Xと第1の導電性部材98と下側ターミナルプレート80との形成材料について、第1~第3のステンレス材料を例示しているが、上述した熱膨張係数の関係を満たす限りにおいて、他の材料を用いてもよい。また、上記実施形態では、特定フレーム部材130Xの位置に配置されたガラスシール部96を挟んでZ軸方向に下側ターミナルプレート80と対向する部材は、下側ターミナルプレート80と同一の材料により形成されているが、両者が異なる種類の材料により形成されていてもよい。また、上記実施形態では、下側ターミナルプレート80が耐酸化性が高い材料により形成されているとしているが、この構成は必須ではない。
【0080】
また、上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106に孔32,34が形成されているが、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方について該孔32,34が形成されていなくてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が中間層118を有しているが、単セル110が中間層118を有さないとしてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0082】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池スタック100を対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの基本的な構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるが、おおよそ以下の通りである。すなわち、電解セルスタックの構成は、上述した実施形態の燃料電池スタック100の構成において、「発電単位」を「電解セル単位」と読み替え、「単セル」を「電解単セル」と読み替え、「酸化剤ガス供給マニホールド」を「空気排出マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス排出マニホールド」を「空気供給マニホールド」と読み替え、「燃料ガス供給マニホールド」を「水素排出マニホールド」と読み替え、「燃料ガス排出マニホールド」を「水蒸気供給マニホールド」と読み替え、「酸化剤ガス供給連通孔」を「空気排出連通孔」と読み替え、「酸化剤ガス排出連通孔」を「空気供給連通孔」と読み替え、「燃料ガス供給連通孔」を「水素排出連通孔」と読み替え、「燃料ガス排出連通孔」を「水蒸気供給連通孔」と読み替えた構成である。
【0083】
電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極(水素極)116がマイナス(陰極)となるように、一対のターミナルプレート70,80を介して電解セルスタックに電圧が印加される。また、ガス通路部材27を介して水蒸気供給マニホールドに原料ガスとしての水蒸気が供給される。なお、供給される水蒸気に、水素ガスが含まれていてもよい。水蒸気供給マニホールドに供給された水蒸気は、水蒸気供給マニホールドから各電解セル単位の水蒸気供給連通孔を介して燃料室176に供給され、各電解単セルにおける水の電気分解反応に供される。各電解単セルにおける水の電気分解反応により燃料室176で発生した水素ガスは、余った水蒸気と共に水素排出連通孔を介して水素排出マニホールドに排出され、水素排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に取り出される。
【0084】
また、電解セルスタックの運転の際には、電解セルスタックの温度の制御等のために、必要により空気が電解セルスタックの内部に供給される。この場合には、ガス通路部材27を介して空気供給マニホールドに供給された空気が、空気供給マニホールドから各電解セル単位の空気供給連通孔を介して、空気室166に供給される。空気室166に供給された空気は、空気極114で生成される酸素とともに空気排出連通孔を介して空気排出マニホールドに排出され、空気排出マニホールドからガス通路部材27を経て電解セルスタックの外部に排出される。
【0085】
このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成を採用することにより、上記実施形態における燃料電池スタック100の作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0086】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 32,34:孔 59:特定空間 70:上側ターミナルプレート 71:孔 78:突出部 80:下側ターミナルプレート 88:突出部 92:絶縁シート 96:ガラスシール部 98:第1の導電性部材 99:第2の導電性部材 100:燃料電池スタック 101:組立単位 102:発電単位 102X:最下部発電単位 103:発電ブロック 104:上側エンドプレート 106:下側エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:中間層 120:単セル用セパレータ 121:孔 124:接合部 125:ガラスシール部 126:内側部 127:外側部 128:連結部 130:空気極側フレーム部材 130X:特定フレーム部材 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 132X:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム部材 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:導電性部 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 148:燃料極側集電部材 148X:最下部燃料極側集電部材 149:弾性部 150:平板部 161:酸化剤ガス供給マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス供給マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:IC用セパレータ 181:孔 186:内側部 187:外側部 188:連結部 190:インターコネクタ 190X:最下部インターコネクタ 194:被覆層 196:導電性接合材 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス OP:穴 SL:切り込み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8