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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】エジェクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/50 20060101AFI20220511BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20220511BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H01L21/50 C
H01L21/52 F
H01L21/78 P
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020079916
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2020184627
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】108115797
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】505441638
【氏名又は名称】致茂電子股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Chroma Ate Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】蔡俊偉
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065367(JP,A)
【文献】特開2001-118862(JP,A)
【文献】特開2010-232678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/50 -21/52
H01L 21/301
H01L 21/67 -21/687
H05K 13/00 -13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜に配置されたチップを取り出すためのエジェクタ装置であって、前記チップが第1の方向に第1の長さを有し、第2の方向に第1の幅を有し、前記エジェクタ装置が、
接触面を規定するピンカバーを備え、前記接触面に配置されたピンホールが前記第1の方向に第2の長さを有し、前記第2の方向に第2の幅を有し、
前記エジェクタ装置が、前記接触面から前記ピンホールを介して突出可能な少なくとも1つのピンを備え、
前記接触面が前記薄膜に接触するように構成され、前記第1の長さが前記第2の長さよりも長い場合、前記第1の幅が前記第2の幅よりも広くなく、前記第1の幅が前記第2の幅よりも広い場合、前記第1の長さが前記第2の長さよりも長くなく、
前記ピンカバーが前記接触面に配置された複数の抜き取り孔及び第3の窪み領域をさらに備え、前記第3の窪み領域が前記ピンホールを取り囲み、前記複数の抜き取り孔の少なくとも一部が前記第3の窪み領域に配置され
前記複数の抜き取り孔がポンプシステムに接続され、前記接触面が前記薄膜に接触すると、前記ポンプシステムが前記複数の抜き取り孔および前記ピンホールを介して負圧をかけ前記薄膜を吸引する、エジェクタ装置。
【請求項2】
前記ピンカバーが前記接触面に配置された第1の窪み領域をさらに備え、前記第1の窪み領域が前記第1の方向に沿って延び、前記複数の抜き取り孔の少なくとも一部が前記第1の窪み領域に配置されている、請求項に記載のエジェクタ装置。
【請求項3】
前記ピンカバーが前記接触面に配置された第2の窪み領域をさらに備え、前記第2の窪み領域が前記第2の方向に沿って延び、前記複数の抜き取り孔の少なくとも一部が前記第2の窪み領域に配置されている、請求項に記載のエジェクタ装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのピンは第1のピンを含み、前記第1のピンが前記接触面から前記ピンホールを介して選択的に突出し、前記第1のピンの上面が前記第1の方向に第3の長さを有し、前記上面が前記第2の方向に第3の幅を有し、前記第3の長さが前記第3の幅よりも長い、請求項1に記載のエジェクタ装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのピンは第2のピン及び第3のピンを含み、前記第2のピン及び前記第3のピンが前記接触面から前記ピンホールを介して選択的に突出し、前記第2のピンが前記第3のピンから第1の距離だけ離間し、前記第1の距離の前記第2の長さに対する割合が0.3から0.7までの間である、請求項1に記載のエジェクタ装置。
【請求項6】
前記ピンホールが長方形であり、前記第2の長さが前記長方形の長辺の長さであり、前記第2の幅が前記長方形の短辺の長さである、請求項1に記載のエジェクタ装置。
【請求項7】
前記ピンホールが楕円であり、前記第2の長さが前記楕円の長軸の長さであり、前記第2の幅が前記楕円の短軸の長さである、請求項1に記載のエジェクタ装置。
【請求項8】
前記第2の長さが前記第2の幅よりも長い、請求項1に記載のエジェクタ装置。
【請求項9】
薄膜に配置されたチップを取り出すためのエジェクタ装置であって、前記チップが第1の方向に第1の長さを有し、第2の方向に第1の幅を有し、前記エジェクタ装置が、
接触面を規定するピンカバーを備え、前記接触面に配置されたピンホールが前記第1の方向に第2の長さを有し、前記第2の方向に第2の幅を有し、
前記エジェクタ装置が、前記接触面から前記ピンホールを介して突出可能な少なくとも1つのピンを備え、
前記接触面が前記薄膜に接触するように構成され、前記第1の長さが前記第2の長さよりも長い場合、前記第1の幅が前記第2の幅よりも広くなく、前記第1の幅が前記第2の幅よりも広い場合、前記第1の長さが前記第2の長さよりも長くなく、
前記ピンカバーが前記接触面に均一に配置された複数の抜き取り孔及び複数の第4の窪み領域をさらに備え、
前記複数の抜き取り孔のそれぞれが前記複数の第4の窪み領域の1つに対応し、前記接触面の前記複数の第4の窪み領域のそれぞれの面積が前記接触面の前記複数の抜き取り孔の1つの面積よりも大きく、
前記複数の抜き取り孔がポンプシステムに接続され、前記接触面が前記薄膜に接触すると、前記ポンプシステムが前記複数の抜き取り孔および前記ピンホールを介して負圧をかけ前記薄膜を吸引する、エジェクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月8日に提出された台湾特許出願第108115797号の優先権を主張するものであり、その全内容を本出願に参照により含めるものである。
【0002】
本発明はエジェクタ装置に関し、特に、薄膜からチップを取り出すためのエジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来では、ウエハへの半導体製造がすべて完了した後、そのウエハにアライメントプロセス及びダイシングプロセスを施し、特定の機能を有する多数のチップに切断する。ダイシングしたこれらのチップは通常、薄膜に接着され、均一に配列される。一般に、チップの貼り付けに薄膜を使用する利点は、チップ間の摩擦又は衝突を回避できることであり、これにより搬送プロセス中の損傷を低減できる。また、チップを貼り付けて固定するために接着剤を一時的に使用するため、チップをピックアップするプロセスも比較的容易であり、精密な設備が不要であり、これによりウエハからチップをピックアップする効率を高めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、従来、チップをピックアップすることに関しては、チップを押し出すために薄膜下でピンを使用する必要があることが多く、薄膜からチップを持ち上げまたは取り除いた後、チップを吸引するか又はピンセットによってピックアップし得る。しかし、薄膜の接着性が領域によって異なり得るため、通常は、ピンを用いてチップを押圧することによって薄膜からチップを持ち上げたり剥離させたりすることが十分にできない。吸引するか又はピンセットによってチップをピックアップすることに失敗する可能性も大いにある。また、チップが長方形を有するか又はその構造が比較的壊れやすい場合、ピンによってチップを押圧するプロセスで、チップを直接損壊させるか又は損傷させる傾向さえもある。このため、産業では、ピンが薄膜上のチップを押圧すると同時にそのチップを薄膜から容易に剥離させ、これによりチップが損壊又は損傷する可能性を低減させる新しいエジェクタ装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、より改良された設計のピンカバーを有し、薄膜からチップをより容易に剥離するエジェクタ装置を提供し、これによりチップを損壊させるか又は損傷させる可能性を低減する。
【0006】
本発明は、チップを取り出すためのエジェクタ装置を開示する。チップは薄膜に配置され、第1の方向に第1の長さを有し、第2の方向に第1の幅を有する。エジェクタ装置は、接触面の範囲を定めるピンカバーを備える。接触面にはピンホールが配置され、第1の方向に第2の長さを有し、第2の方向に第2の幅を有する。接触面は、薄膜に接触するように構成される。第1の長さが第2の長さよりも長い場合、第1の幅は第2の幅よりも広くない。又は、第1の幅が第2の幅よりも広い場合、第1の長さは第2の長さよりも長くない。
【0007】
一実施形態において、ピンカバーは、接触面に複数の抜き取り孔をさらに備えている。前記抜き取り孔はポンプシステムに接続されている。接触面が薄膜に接触すると、ポンプシステムは上述の複数の抜き取り孔を介して負圧をかけ薄膜を吸引する。ここにおいて、ピンカバーは接触面に配置された第1の窪み領域を備え得るものであり、ここで第1の窪み領域は第1の方向に沿って延び、上述の複数の抜き取り孔の少なくとも一部が第1の窪み領域の中に配置されている。ピンカバーは接触面に配置された第2の窪み領域をも備えてもよく、ここで第2の窪み領域は第2の方向に沿って延び、上述の複数の抜き取り孔の少なくとも一部が第2の窪み領域の中に配置されている。ピンカバーはさらに接触面に配置された第3の窪み領域を備え得るものであり、ここで第3の窪み領域はピンホールを取り囲み、上述の複数の抜き取り孔の少なくとも一部が第3の窪み領域の中に配置されている。また、ピンカバーは接触面に配置された複数の第4の窪み領域をさらに備え得るものであり、上述の複数の抜き取り孔の各々は上述の複数の第4の窪み領域の一つに対応しており、接触面の複数の第4の窪み領域の各面積は、接触面の複数の抜き取り孔の一つの面積よりも大きい。
【0008】
一実施形態において、エジェクタ装置は第1のピンを備え得る。第1のピンは、接触面からピンホールを介して選択的に突出し得る。第1のピンの上面は第1の方向に第3の長さを有し、第2の方向に第3の幅を有し、ここで第3の長さは第3の幅よりも長い。また、エジェクタ装置は、第2のピン及び第3のピンを備え得る。第2のピン及び第3のピンは、接触面からピンホールを介して選択的に突出し得る。第2のピンは第3のピンから第1の距離だけ離間しており、第1の距離の第2の長さに対する割合は0.3から0.7までの間にある。
【0009】
一実施形態において、ピンホールは長方形であり得るものであり、ここで第2の長さは長方形の長辺の長さであり、第2の幅は長方形の短辺の長さである。又は、ピンホールは楕円でもあり得るものであり、ここで第2の長さは楕円の長軸の長さであり、第2の幅は楕円の短軸の長さである。
【0010】
上記に基づき、本発明で提供されるエジェクタ装置は新しい設計のピンカバーを有する。ピンカバーのピンホールはピンを自由に貫通させ得るものであり、ピンホールの一辺の長さはチップの同様に対応する辺の長さよりも短い。これにより、薄膜がピンホールの中に僅かに押し下げられると、チップが接触面をブロックすることになり、薄膜からチップをより容易に剥離することが可能になり、これによりチップを損壊させるか又は損傷させる可能性が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態によるエジェクタ装置の絵画図である。
図2図2は、本発明の一実施形態によるエジェクタ装置の一部を示す絵画図である。
図3図3は、本発明の一実施形態によるエジェクタ装置の動作を示す図である。
図4図4は、本発明の別の実施形態によるエジェクタ装置の絵画図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態によるエジェクタ装置の一部を示す絵画図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴、目的、及び機能を以下にさらに開示する。しかし、これは単に本発明の可能な実施形態のいくつかであり、本発明の範囲はこれらに限定されない。つまり、本発明の請求項に従ってなされる同等の変更及び変形は、以前として本発明の主題である。これは本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明のさらなる可能性として考慮されるものである。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態によるエジェクタ装置の絵画図である。図2は、本発明の一実施形態によるエジェクタ装置の一部を示す絵画図である。図1及び図2を参照すると、エジェクタ装置1はピンカバー10及び基台12を備え得る。ピンカバー10は基台12の一端に構成され、ピンカバー10はエジェクタ装置1の外側に面する接触面10aを規定している。一実施形態において、ピンカバー10及び基台12の構造は一体に形成され得る。又は、ピンカバー10の構造はプレート形状又はシート形状であり得るものであり、ピンカバー10は基台12の一端に組み立てられるように分離可能であり得るものであり、これは本実施形態において限定されない。ピンカバー10及び基台12が分離可能である場合、ピンカバー10及び基台12を組み立てる方法についても本実施形態において限定されない。例えば、ピンカバー10及び基台12を共にラッチするか、接着するか、又は螺子で締め合わせるなどし得る。ピンカバー10及び基台12を共に強固に固定し得る限り、それは本実施形態における前記ピンカバー10及び前記基台12の範囲内にある。さらに、基台12は中空管又は中空の円柱の一種であり得る。基台12は一定の強度を有し得るものであり、基台12の内側に収容スペースが存在し得る(不図示)。実際には、前記収容スペースは、ピン(不図示)又はポンプシステムの一部(不図示)を収容するように構成され得る。例えば、ポンプシステムを接続するための抜き取りパイプを、前記収容スペースに収容し得る。さらに、基台12はピン又はポンプシステムを保護し、これによりピン又はポンプシステムが基台12の側面から外側に押し出されるか又は屈曲するのを防ぐために使用され得る。
【0014】
図1及び図2に示したピンカバー10を一例として取り上げると、ピンカバー10の外側の上面は接触面10aを規定しており、接触面10aはエジェクタ装置1の最大突出端部とみなし得る。実用では、接触面10aは、エジェクタ装置1によって薄膜上のチップを取り出すために、薄膜に直接接触し得る。エジェクタ装置1の動作方法を示すために、図2及び図3を参照するが、ここで、図3は本発明の一実施形態によるエジェクタ装置の動作を示す図を示している。図2及び図3に示すように、チップ3は薄膜2の一方の面に接着され得る。ピンカバー10の接触面10aは薄膜2の他方の面に接触し得るものであり、ピンカバー10及びチップ3は薄膜2の両面の正に対向する位置にある。即ち、ピンカバー10の接触面10aは薄膜2に直接接触し得るものであり、薄膜2を介してチップ3と間接的に接触し得る。一例では、エジェクタ装置1にチップ3を的確に取り出させるために、エジェクタ装置1及びチップ3の位置較正を、取り出しの前に実行し得る。ここで、エジェクタ装置1を固定して薄膜2を移動させるか、又は薄膜2を固定してエジェクタ装置1を移動させるかは、本実施形態において限定されない。エジェクタ装置1及びチップ3が相互に対して較正され得るものである限り、それは本実施形態の範囲内にある。
【0015】
実用例において、チップ3の一方の上面から見た場合、チップ3の形状は通常長方形に見え得る。つまり、チップ3は、第1の方向に第1の長さを有し、第2の方向に第1の幅を有し得る。説明を容易にすると、第1の方向及び第2の方向は、長方形の直角をなす二辺の方向であり、即ち、第1の方向は第2の方向と直角をなし得る。即ち、第1の長さは、チップ3の第1の方向における一辺の長さであり、第1の幅は、チップ3の第2の方向における他辺の長さであり得る。チップ3が正方形である場合、第1の長さは第1の幅と同一であり得る。チップが長方形である場合、第1の長さ(即ち、長辺の長さ)は、第1の幅(即ち、短辺の長さ)よりも長くなり得る。
【0016】
続いて図2を参照すると、ピンカバー10の接触面10aはピンホール102を備え得るものであり、ピンホール102は通例接触面10aの中央領域にあり得るが、これは本実施形態において限定されない。エジェクタ装置1及びチップ3に対して位置較正がすでに実行された状態で、チップ3の垂直に突出した領域の一部がピンホール102の垂直に突出した領域と重なり得る。即ち、位置較正がエジェクタ装置1及びチップ3に対してすでに実行された状態で、チップ3の位置がピンホール102に一致し得るだけでなく、チップ3の形状についてもピンホール102の開口形状に基本的に一致し得る(例えば、長方形の延長方向における長辺及び短辺と同一である)。一例において、ピンホール102は第1の方向に開口長さD1(即ち、第2の長さ)を備え、第2の方向に開口幅D2(即ち、第2の幅)を備える。
【0017】
一例では、ピンホール102の開口長さD1が開口幅D2よりも長いことにより、ピンホール102は長方形であり得る。又は、ピンホール102の開口長さD1が開口幅D2と概ね同一であることにより、ピンホール102は正方形であり得る。しかし、ピンホール102は、長方形(又は正方形)のコーナーにおいて必ずしも角を有する必要はない。図2に示したように、ピンホール102のコーナー角は、ピンホール102の形状がカプセルの形状により近くなり得るようなアーチ型であり得る。また、ピンホール102の形状は、長方形でなく楕円により近いものであり得る。ピンホール102の形状が楕円であるとすると、第1の方向における開口長さ(即ち、第2の長さ)は楕円の長軸であり得、第2の方向における開口幅(即ち、第2の幅)は楕円の短軸であり得る。
【0018】
薄膜2は軟質材料で作られ得るが、ピン102の開口形状の適切な設計により、チップ3が基本的にピンホール102に吸引されないことは、言及するに値する。即ち、技術者が、どの寸法及び仕様のチップ3にエジェクタ装置1を使用するかがすでに分かっている場合、ピンカバー10にピンホール102を設計することにより、チップ3がピンホール102に吸引されるのを防ぐことが可能である。チップ3がピンホール102に吸引されるのを防ぐため、本実施形態は、ピンホール102を設計する多数の可能な方法を提供する。その例の一つにおいて、第1の方向及び第2の方向におけるチップ3の長さはすでに分かっており、第1の方向におけるチップ3の長さ(即ち、第1の長さ)が第1の方向におけるピンホール102の開口長さD1(即ち、第2の長さ)よりも長い場合、第2の方向におけるチップ3の長さ(即ち、第1の幅)は、第2の方向におけるピンホール102の開口幅D2(即ち、第2の幅)よりも長くない。別の例については、第2の方向におけるチップ3の長さ(即ち、第1の幅)が第2の方向におけるピンホール102の開口幅D2(即ち、第2の幅)よりも長い場合、第1の方向におけるチップ3の長さ(即ち、第1の長さ)は第1の方向におけるピンホール102の開口長さD1(即ち、第2の長さ)よりも長くない。
【0019】
チップ3が本実施形態で説明したピンホール102の中に吸引されないことは、実際に意味のあることである。実際の動作例において、エジェクタ装置1及びチップ3の位置較正が完了し、エジェクタ装置1がチップ3を取り出そうとする時、接触面10aは薄膜2に接触し、ポンプシステムが作動する。一例において、ピンカバー10の接触面10aには複数の抜き取り孔104がある。前記複数の抜き取り孔104は抜き取りパイプを介して前記ポンプシステムに接続され得るものであり、抜き取りパイプは基台12の中に収容され得る。ポンプシステムが作動すると、ポンプシステムは抜き取りパイプを介して負圧をかけ、上述の複数の抜き取り孔104を、ガスを抜き取る状態にする(即ち、これらの抜き取り孔104のガスを吸引し始める)。この時、これらの抜き取り孔104が負圧を有する抜き取りパイプと接続されているため、薄膜2は接触面10aに吸引され密着する。特に、ピンホール102上の薄膜2は、負圧から得られる吸引引張力により、ピンホール102内に押し下げられる傾向にある。しかし、上記の薄膜2はチップ3に固着しており、チップ3はピンホール102の中に押し下げられないため、チップ3に固着している薄膜2はピンホール102の中に容易には押し下げられない。
【0020】
特に、本実施形態は、薄膜2及び薄膜2に固着しているチップ3を共にピンホール102の中に押し下げることが目的ではない。代わりに、本実施形態は、チップ3よりも比較的小さいピンホール102の設計を利用して、チップ3にピンホール102の上部をブロックさせる(即ち、接触面10aをブロックさせる)ことにより、薄膜2をピンホール102の方向へ引張するものである。ポンプシステムで提供される負圧値を調節することにより、負圧からの引張力が薄膜2とチップ3との間の接着力よりも僅かに大きければ、チップ3から薄膜2を適切に剥離することができるということは、当業者は理解し得る。一例において、負圧からの引張力は、薄膜2とチップ3との間の接着力の101%から105%であり得る。このような割合は、薄膜2とチップ3とを分離する時間に関係する。つまり、引張力と接着力との間の差がより大きい場合、薄膜2とチップ3とをより迅速に分離することになる。当業者は、必要に応じ、引張力及び接着力を調節し得る。
【0021】
チップ3が薄膜2から一定の面積だけ剥離されるとチップ3が容易にピックアップされることは、言及するに値する。チップ3を薄膜2から一定の面積だけより容易に剥離させ、且つ実際の動作を容易にするために、本実施形態のピンホール102の開口長さD1又は開口幅D2のうち一方はチップ3に対応する長さよりも短くあり得るものであり、一方、他方の開口長さD1又は開口幅D2はチップ3に対応する他方の長さよりも長くなり得る。このため、ピンホール102の面積はより大きくなり得、負圧をかける面積についてもより大きくなり得る。また、ピンホール102がチップ3よりも長い一辺を有するため、チップ3から現れ、且つピンホール102の範囲内にある薄膜2は、チップ3の接着力を受けず、ピンホール102の中に迅速に押し下げられ得る。その後、ピンホール102の中にすでに押し下げられた薄膜2はチップ3の下の薄膜2を横方向に引張し、チップ3の下の薄膜2をピンホール102の中により容易に押し下げ、チップ3から分離させ得る。即ち、本実施形態におけるピンホール102の設計は、チップ3を薄膜2からその側部を介して迅速に分離可能にし得るものであり、同時に、チップ3をチップ3よりも短いピンホール102の側面に固着可能にもし得るものであり、これにより薄膜2からチップ3を分離する効率及びその利便性を高めるものである。
【0022】
反対に、開口長さ又は開口幅がいずれもチップ3に対応する長さよりも長い場合、これはチップ3の面積がピンホール102の面積よりも小さいことを示している。ここでは、チップ3及び薄膜2が共にピンホール102内に吸引され、負圧からの引張力によって薄膜2をチップ3から分離させることが容易でなくなる。一方、ピンホール102の開口長さ又は開口幅がいずれもチップ3に対応する長さよりも小さいか又は同一である場合、これは、チップ3の面積が、ピンホール102の面積よりも大きいか又はこれと同一であることを示している。ここでは、本実施形態における設計と異なり、チップ3は薄膜2から側面を介して迅速に剥離され得る。つまり、ピンホール102が小さすぎると、薄膜2は、負圧からの引張力によって下方に引張されるのみであり得る。明らかに、ピンホールがこのような小さい設計であると、薄膜2とチップ3とを一定の面積だけ分離させるためにはより大きな負圧が必要となり得るものであり、これは、薄膜2とチップ3とを分離させる時間をも増大させる。
【0023】
一方、薄膜2を接触面10aにより密着させるために、接触面10の複数の抜き取り孔104は均一に配置され、薄膜2に負圧からの引張力をより広い面積にかけ得る。複数の抜き取り孔104の配置及びパターンは、本実施形態において限定されない。例えば、複数の抜き取り孔104はある配列パターンに従って配置され得るか、又は複数の抜き取り孔104は、図2に示すように、中央から広がるパターンを有し得る。また、接触面10aはさらに1種類以上の窪み領域を備え得る。図2に示すように、接触面10aは窪み領域106a(即ち、第1の窪み領域)を有し、窪み領域106aは第1の方向に延び、複数の抜き取り孔104の少なくとも一部が窪み領域106aの中に配置される。ここでは、窪み領域106aの軸はピンホール102の長軸(即ち、第1の方向)と同一であり得る。即ち、複数の抜き取り孔104の一部はピンホール102の長軸上に配置され得る。これにより、すでに窪み領域106aの中にピンホール102の長軸の方向に押し下げられた薄膜2は、チップ3の下の薄膜2を横方向に引張することも可能であり、チップ3の下の薄膜2をチップ3からより容易に分離させる。窪み領域106aの長さ及び幅は、本実施形態において限定されない。つまり、抜き取り孔104が窪み領域106aの中に配置され得る限り、それは本実施形態における前記第1の窪み領域の範囲内にある。
【0024】
また、接触面10aは、窪み領域106b(即ち、第2の窪み領域)をも有し得る。窪み領域106bは第2の方向に延び、複数の抜き取り孔104の少なくとも一部が窪み領域106bの中に配置され得る。ここにおいて、窪み領域106bの軸は、ピンホール102の短軸(即ち、第2の方向)と同一であり得る。即ち、複数の抜き取り孔104の一部は、ピンホール102の短軸上に配置され得る。これにより、すでに窪み領域106bの中にピンホール102の短軸の方向に押し下げられた薄膜2は、チップ3の下の薄膜2を横方向に引張することも可能でもあり、チップ3の下の薄膜2をチップ3からより容易に分離させる。窪み領域106bの長さ及び幅は本実施形態において限定されない。つまり、抜き取り孔104が窪み領域106bの中に配置され得る限り、それは本実施形態における前記第2の窪み領域の範囲内にある。
【0025】
さらに、接触面10aは、窪み領域106c(即ち、第3の窪み領域)をも有し得る。窪み領域106cはピンホール102を取り囲み、複数の抜き取り孔104の少なくとも一部が窪み領域106cの中に配置され得る。ここでは、3つの同心のリング形状の窪み領域106cを図2に示すが、窪み領域106cの数量は本実施形態において限定されない。例えば、単に1つの窪み領域106cが存在し得る。これにより、窪み領域106cの中に押し下げられ、ピンホール2を取り囲む薄膜2についても、チップ3の下の薄膜2を横方向に引張し、チップ3の下の薄膜2をチップ3からより容易に分離させることができる。窪み領域106cの寸法及び幅は本実施形態において限定されない。つまり、抜き取り孔104が窪み領域106cの中に配置され、窪み領域106cのリングの中心位置が、ピンホール102の中心位置と概ね同一である限り、それは本実施形態における前記第3の窪み領域の範囲内にある。
【0026】
実際の動作例において、チップ3の下の薄膜2がチップ3から僅かだけ分離するか、又は薄膜2がチップ3から一定の面積だけ分離すると、本実施形態はその後ピンを駆動し、ピンホール102を介して接触面10aからピンを突出させる。このようなピンは、薄膜2を押圧するため、さらに薄膜2の上に位置するチップ3を押圧するための上面を有し得る。一例において、ピンの形状はピンホール102の形状に近似し得る。つまり、前記上面についても、第1の方向に第3の長さを有し、第2の方向に第3の幅を有し得る。ピンホール102の形状が長方形又は楕円に近い場合、第3の長さは第3の幅よりも長い。ここにおいて、ピンの上面はピン状ではなくむしろ一定の面積を有し得るため、且つ薄膜2がチップ3からすでに僅かに分離しているために、ピンが薄膜2を押圧する場合、薄膜2の上に位置するチップ3にかかる力はより均等に分配される。また、薄膜2とチップ3との間の接着力が比較的低いため、チップ3の損壊又は損傷が回避できる。例えば、ピンの上面面積は、ピンホール102の面積の5%~35%であり得る。このような割合は10%、20%又は30%でもあり得るが、これは本実施形態において限定されない。ピンホール102の前記面積は、チップ3が位置する全押し下げ領域に対応するものと想定し、基本的にチップ3の位置に対応しない押し下げ領域(即ち、窪み領域106a、窪み領域106b又は窪み領域106c)を含まない。
【0027】
別の例において、ピンの本数は3本以上であり得る。隣接するピンは、一定の距離を置いて離間し得る。ピンの本数が2本である場合、この2本のピンは第1の方向に沿って配置される。ここにおいて、2本のピンの間の距離(即ち、第1の距離)は、第1の方向におけるピンホール102の開口長さD1(即ち、第2の長さ)に比例し得る。例えば、第1の距離の開口長さD1に対する割合は、0.3から0.7までの間であり得る。このような割合は、0.4、0.5、0.6等でもあり得るものであり、これは本実施形態において限定されない。ピンの本数が3本であるとすると、3本のピンは第1の方向に沿って配置される。その場合、第1の方向における最初のピンと最後のピンとの間の距離は第2の距離であり、第2の距離の開口長さD1に対する割合は、同様に0.3と0.7との間であり得る。このような割合は、0.4、0.5、0.6等でもあり得るものであり、本実施形態において限定されない。
【0028】
本実施形態は、前記の種類の窪み領域を有するのみではない。図4及び図5を参照すると、図4は本発明の別の実施形態によるエジェクタ装置の絵画図であり、図5は本発明の別の実施形態によるエジェクタ装置の一部を示す絵画図である。図4及び図5に示すように、エジェクタ装置4についても本発明の別の実施形態におけるピンカバー40及び基台42を有し得る。先の実施形態と同様に、ピンカバー40についても、接触面40a、ピンホール402、及び複数の抜き取り孔404を有し得る。尚、基台12と基台42とは概ね同一である。これらの器具の説明は、ここで繰り返さない。ピンカバー40は同様に基台42の一端に配置されており、ピンカバー40についてもエジェクタ装置4の外側に面する接触面40aを規定している。また、ピンカバー40及び基台42の構造についても一体に形成され得、又はピンカバー40の構造はプレート形状又はシート形状であり得る。同様に、ピンカバー40は基台42の一端に組み立てられるように分離可能であり得るものであり、これは本実施形態において限定されない。
【0029】
先の実施形態と異なり、接触面40aの窪み領域の形状は接触面10aの窪み領域の形状と異なる。図5に示すように、接触面40aは複数の窪み領域406(即ち、複数の第4の窪み領域)を有し得るものであり、窪み領域406は抜き取り孔404を取り囲んでいる。一例では、窪み領域406は、抜き取り孔404と1対1で対応している。即ち、1つの窪み領域406が、1つの抜き取り孔404を取り囲んでいる。この他、図5によると、接触面40aの窪み領域406の面積は接触面40aの抜き取り孔404の面積よりも大きく、抜き取り孔404が窪み領域406内にあることを可能にしている。これにより、薄膜が接触面40aに均一に配置された複数の窪み領域406の中に押し下げられるため、薄膜はピンカバー40により強固に吸引される。これは薄膜の横方向の張力を保持し、チップの下の薄膜を引張することになり、チップの下の薄膜をチップからより容易に分離させることを可能にする。本実施形態は窪み領域406の寸法及び幅を限定せず、抜き取り孔404が窪み領域406内に配置され得る限り、本実施形態の前記第4の窪み領域の範囲内にある。
【0030】
要約すると、本発明において提供されるエジェクタ装置はピンカバーの新しい設計を有する。ピンカバーのピンホールはピンを自由に貫通させ得るものであり、ピンホールの一辺の長さはチップの同様に対応する辺の長さよりも小さい。したがって、薄膜がピンホールの中に僅かに押し下げられると、チップが接触面をブロックし、薄膜からチップをより容易に剥離でき、チップを損壊させる可能性又は損傷させる可能性が回避される。
図1
図2
図3
図4
図5