(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
(21)【出願番号】P 2020170311
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2020-10-08
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514024712
【氏名又は名称】台湾ナノカーボンテクノロジー股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TAIWAN CARBON NANO TECHNOLOGY CORPORATION
【住所又は居所原語表記】5F.,NO.50-1, Keyan Rd.,Zhunan Township, Miaoli County, Taiwan(R.O.C.)
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】張 光瑞
(72)【発明者】
【氏名】廖 育萱
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群賢
(72)【発明者】
【氏名】李 庭鵑
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群栄
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-235136(JP,A)
【文献】特開2011-211225(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101083207(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0043799(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0264054(US,A1)
【文献】国際公開第99/067817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化されたフォトレジスト層が設けられ、前記フォトレジスト層によって遮蔽された保持領域と、露出する被エッチング領域とを有する半導体基板を、上方電極と下方電極とを含む反応チャンバに配置するステップ1と、
六フッ化硫黄、酸素、ヘリウム、三フッ化窒素、及び
ジクロロシランを含む第1エッチングガスを前記反応チャンバに入れて第1エッチング工程を行うことにより、前記被エッチング領域の一部を除去して第1深さを有するトレンチを形成するステップ2と、
六フッ化硫黄、酸素、ヘリウム、及び
ジクロロシランを含む第2エッチングガスを前記反応チャンバに入れて第2エッチング工程を行うことにより、前記トレンチの前記第1深さからさらに第2深さまでエッチングするステップ3と
を備え、
前記第2エッチング工程における前記反応チャンバの圧力は前記第1エッチング工程における前記反応チャンバの圧力より大きく、
臭化水素酸、酸素、及びヘリウムを含む第3エッチングガスを前記反応チャンバに入れて第3エッチング工程を行うステップ4を含み、
前記反応チャンバで1秒あたりの温度変化は±1%以内であり、前記反応チャンバで1秒あたりの圧力変化は±5%以内であり、前記上方電極又は前記下方電極で1秒あたりの出力変化は±1%以内であることを特徴とする半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセス。
【請求項2】
前記第1エッチング工程において、六フッ化硫黄の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmであり、三フッ化窒素の流量は10sccm~300sccmであり、
ジクロロシランの流量は50sccm~200sccmであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【請求項3】
前記第1エッチング工程において、前記第1エッチングガスに対する六フッ化硫黄の体積百分率は30%であり、前記第1エッチングガスに対する酸素の体積百分率は20%であり、前記第1エッチングガスに対するヘリウムの体積百分率は20%であり、前記第1エッチングガスに対する三フッ化窒素の体積百分率は10%であり、前記第1エッチングガスに対する
ジクロロシランの体積百分率は20%であることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【請求項4】
前記第1エッチング工程において、前記上方電極の出力は3000Wであり、前記下方電極の出力は500Wであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【請求項5】
前記第2エッチング工程において、六フッ化硫黄の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmであり、
ジクロロシランの流量は50sccm~200sccmであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【請求項6】
前記第2エッチング工程において、前記第2エッチングガスに対する六フッ化硫黄の体積百分率は20%であり、前記第2エッチングガスに対する酸素の体積百分率は20%であり、前記第2エッチングガスに対するヘリウムの体積百分率は40%であり、前記第2エッチングガスに対する
ジクロロシランの体積百分率は20%であることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【請求項7】
前記第2エッチング工程において、前記上方電極の出力は7000Wであり、前記下方電極の出力は2000Wであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【請求項8】
前記第3エッチング工程において、臭化水素酸の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【請求項9】
前記第3エッチング工程において、前記第3エッチングガスに対する臭化水素酸の体積百分率は60%であり、前記第3エッチングガスに対する酸素の体積百分率は10%であり、前記第3エッチングガスに対するヘリウムの体積百分率は30%であることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【請求項10】
前記第3エッチング工程において、前記上方電極の出力は1000Wであり、前記下方電極の出力は100Wであることを特徴とする請求項1に記載のドライエッチングプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングプロセスに関し、特に、半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体産業では飛躍的な発展が遂げられ、半導体設計及び材料における技術の進歩により、半導体デバイスにおいてサイズがより小さく、より複雑な回路が実現されている。半導体デバイスの機能が豊富になり小型化されることで、生産効率の向上とコストの削減が実現される。
【0003】
半導体デバイスの機能は半導体ウェハーの面積によって制限されるが、半導体技術の発展により、3次元積層技術を利用して部品の密度を増やす傾向が見られる。しかしながら、3次元積層技術は半導体デバイスの製造プロセスの複雑さを上げ、半導体デバイスの製造プロセスの質と安定性を維持することが難しくなるだけでなく、生産量にも影響を与える。三次元集積回路の半導体ウェハーには、トレンチのアスペクト比(aspect ratio)が高いことが求められる。従来の技術では、トレンチを製造するためにボッシュ(Bosch)社によって開発されたディープ反応性イオンエッチング(Deep reactive-ion etching、略称DRIE)プロセスを利用することが一般的である。しかしながら、従来のDRIEプロセスには、トレンチの側壁が比較的粗いという問題があり、半導体ウェハーの電気的及び機械的特性に影響がある。したがって、半導体デバイスの製造プロセスの改善により、プロセスの質と安定性を上げることが解決すべき課題になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、半導体デバイスの品質と安定性を上げ、生産量を増やすために、半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスを提供する。
【0005】
本発明の他の目的と利点は、本発明で開示される技術的特徴から明瞭になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスは、パターン化されたフォトレジスト層が設けられ、当該フォトレジスト層によって遮蔽された保持領域と、露出する被エッチング領域とを有する半導体基板を、上方電極と下方電極とを含む反応チャンバに配置するステップ1と、
六フッ化硫黄、酸素、ヘリウム、三フッ化窒素、及び第1有機ケイ素化合物を含む第1エッチングガスを当該反応チャンバに入れて第1エッチング工程を行うことにより、当該被エッチング領域の一部を除去して第1深さを有するトレンチを形成するステップ2と、
六フッ化硫黄、酸素、ヘリウム、及び第2有機ケイ素化合物を含む第2エッチングガスを当該反応チャンバに入れて第2エッチング工程を行うことにより、当該トレンチの当該第1深さからさらに第2深さまでエッチングするステップ3とを備え、当該第2エッチング工程における当該反応チャンバの圧力は当該第1エッチング工程における当該反応チャンバの圧力より大きく、
臭化水素酸、酸素、及びヘリウムを含む第3エッチングガスを当該反応チャンバに入れて第3エッチング工程を行うステップ4を含む。なお、当該反応チャンバで1秒あたりの温度変化は±1%以内であり、当該反応チャンバで1秒あたりの圧力変化は±5%以内であり、当該上方電極又は当該下方電極で1秒あたりの出力変化は±1%以内である。
【0007】
本発明の一実施例では、上記の第1エッチング工程において、六フッ化硫黄の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmであり、三フッ化窒素の流量は10sccm~300sccmであり、当該第1有機ケイ素化合物の流量は50sccm~200sccmである。
【0008】
本発明の一実施例では、上記の第1エッチング工程において、当該第1エッチングガスに対する六フッ化硫黄の体積百分率は30%であり、当該第1エッチングガスに対する酸素の体積百分率は20%であり、当該第1エッチングガスに対するヘリウムの体積百分率は20%であり、当該第1エッチングガスに対する三フッ化窒素の体積百分率は10%であり、当該第1エッチングガスに対する当該第1有機ケイ素化合物の体積百分率は20%である。
【0009】
本発明の一実施例では、上記の第1エッチング工程において、当該上方電極の出力は3000Wであり、当該下方電極の出力は500Wである。
【0010】
本発明の一実施例では、上記の第2エッチング工程において、六フッ化硫黄の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmであり、当該第2有機ケイ素化合物の流量は50sccm~200sccmである。
【0011】
本発明の一実施例では、上記の第2エッチング工程において、当該第2エッチングガスに対する六フッ化硫黄の体積百分率は20%であり、当該第2エッチングガスに対する酸素の体積百分率は20%であり、当該第2エッチングガスに対するヘリウムの体積百分率は40%であり、当該第2エッチングガスに対する当該第2有機ケイ素化合物の体積百分率は20%である。
【0012】
本発明の一実施例では、上記の第2エッチング工程において、当該上方電極の出力は7000Wであり、当該下方電極の出力は2000Wである。
【0013】
本発明の一実施例では、上記の第3エッチング工程において、臭化水素酸の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmである。
【0014】
本発明の一実施例では、上記の第3エッチング工程において、当該第3エッチングガスに対する臭化水素酸の体積百分率は60%であり、当該第3エッチングガスに対する酸素の体積百分率は10%であり、当該第3エッチングガスに対するヘリウムの体積百分率は30%である。
【0015】
本発明の一実施例では、上記の第3エッチング工程において、当該上方電極の出力は1000Wであり、当該下方電極の出力は100Wである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスは、第1エッチングガスを用いて第1エッチング工程を、第2エッチングガスを用いて第2エッチング工程を、第3エッチングガスを用いて第3エッチング工程をそれぞれ行って、深いトレンチ構造を有する半導体デバイスを製造することにより、プロセスの質と安定性を上げ、生産量を増やすことができる。
【0017】
次に、本発明の上述した特徴及び利点が一層明瞭で分かりやすくなるように、実施例を挙げ、図面を添えて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】、本発明の一実施例に係る半導体デバイスのトレンチ構造を製造するドライエッチング装置の模式図である。
【
図2A】いくつかの実施例に基づいて作成される半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスの中間段階に関する断面図である。
【
図2B】いくつかの実施例に基づいて作成される半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスの中間段階に関する断面図である。
【
図2C】いくつかの実施例に基づいて作成される半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスの中間段階に関する断面図である。
【
図2D】いくつかの実施例に基づいて作成される半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスの中間段階に関する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の前述した及び他の技術内容、特徴及び効果は、図面を参照する好ましい一実施例の詳細な説明において明瞭に表示される。次の実施例の説明で方向を表すために使用される用語、例えば、上、下、左、右、前、後などは、図面の方向に基づいていうものである。したがって、方向を表すために使用されるこれらの用語は本発明を非限定的に説明するものに過ぎない。本明細書では、「約」又は類似の用語は一般に所定の値又は範囲の10%以内、5%以内、3%以内、2%以内、1%以内、又は0.5%以内であることを意味する。記載される数量はおおよそのものであり、即ち「約」を添えなくても、「約」の意味合いを含むものと理解することができる。
【0020】
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る半導体デバイス10のトレンチ構造を製造するドライエッチング装置17の模式図である。
【0021】
説明には
図2A、
図2B、
図2C、
図2Dも参照される。
図2A、
図2B、
図2C、
図2Dは、いくつかの実施例に基づいて作成される半導体デバイス10のトレンチ構造を製造するドライエッチングプロセスの中間段階に関する断面図である。まずは
図2Aを参照して説明する。本実施例に係る半導体デバイス10のトレンチ構造を製造するドライエッチングプロセスは次のステップを含む。
【0022】
ステップ1で、半導体基板11を配置する。半導体基板11は、パターン化されたフォトレジスト層13が設けられ、且つ反応チャンバ171に配置される(
図1参照)。半導体基板11はフォトレジスト層13によって遮蔽された保持領域111と、露出する被エッチング領域113とを有する。反応チャンバ171は上方電極173と、下方電極175とを含む。半導体基板11の材料には、例えば、シリコンが含まれる。反応チャンバ171はドライエッチング装置17の内部に設けられる(
図1参照)。
【0023】
さらに、半導体デバイス10は酸化物層15を含んでもよい。酸化物層15は半導体基板11の下方に設けられる。
【0024】
【0025】
ステップ2で、第1エッチングガスg1を反応チャンバ171に入れて第1エッチング工程E1を行うことにより、被エッチング領域113の一部を除去してトレンチ19aを形成する。トレンチ19aは第1深さd1を有する。本実施例では、第1エッチングガスg1は六フッ化硫黄(SF6)、酸素(O2)、ヘリウム(He)、三フッ化窒素(NF3)、第1有機ケイ素化合物を含む。
【0026】
ステップ3で、
図2Cに示すように、第2エッチングガスg2を反応チャンバ171に入れて第2エッチング工程E2を行うことにより、トレンチ19aの第1深さd1からさらに第2深さd2までエッチングする。第2エッチング工程E2では、さらにトレンチ19aの底部の酸化物をエッチング除去して、トレンチ19bを形成する。トレンチ19bは部分的に保護層18aによって覆われる。本実施例では、第2エッチングガスg2は、六フッ化硫黄(SF
6)、酸素(O
2)、ヘリウム(He)、第2有機ケイ素化合物を含む。
【0027】
ステップ4で、
図2Dに示すように、第3エッチングガスg3を反応チャンバ171に入れて第3エッチング工程E3を行う。当該第3エッチングガスは、臭化水素酸(HBr)、酸素(O
2)、ヘリウム(He)を含む。第3エッチング工程E3で、トレンチ19bの第2深さd2からさらに酸化物層15までエッチングして、トレンチ19cを形成する。第3エッチングガスg3が酸化物層15をエッチングしない。
【0028】
本実施例では、反応チャンバ171で1秒あたりの温度変化は±1%以内である。
【0029】
本実施例では、反応チャンバ171で1秒あたりの圧力変化は±5%以内である。
【0030】
本実施例では、上方電極173又は下方電極175で1秒あたりの出力変化は±1%以内である。
【0031】
図1に示すように、具体的には、ドライエッチング装置17は、複数のタンクt1、t2、t3、t4及びパイプラインpを含んでもよい。これらのタンクt1、t2、t3、t4は各エッチング工程に使用されるガスを貯蔵し、パイプラインpは各エッチング工程に使用されるガスを反応チャンバ171に送るように構成される。本発明ではタンクの数量とエッチングガスの貯蔵位置及び貯蔵の方式が限定されない。上方電極173及び下方電極175は各エッチングガスと作用してエッチングするように構成されるもので、その詳細な説明は省略される。当該第1有機ケイ素化合物及び当該第2有機ケイ素化合物は、例えば、ジクロロシラン(H
2SiCl
2)ガスであってよい。
【0032】
具体的には、ステップ1で、半導体基板11の露出する被エッチング領域113には酸化物(native oxide)(不図示)が生成される。ステップ2の第1エッチング工程E1で、エッチングを続けるには、第1エッチングガスg1を用いてエッチングして酸化物を分解する必要がある。六フッ化硫黄イオンとラジカルは半導体基板11のシリコンをエッチングできる。
図2Bに示す保護層18では、当該第1有機ケイ素化合物と酸素が二酸化ケイ素(SiO
2)を生成して、フォトレジスト層13の上部及び側壁を保護する。酸素とシリコン及びフッ素が反応してオキシフッ化シリコン(SiO
xF
y)ポリマーを生成して、トレンチ19aの側壁を六フッ化硫黄イオンとラジカルの腐食から保護する。三フッ化窒素は、フォトレジスト層13における酸化ポリマー及びトレンチ19aの側壁におけるオキシフッ化シリコンポリマーをエッチングして、トレンチ19aの輪郭を整えるために用いられる。
【0033】
図2Aで、半導体基板11の厚さは、例えば、約600μmであり、フォトレジスト層13の厚さは、例えば、約20μmである。
図2Bで、トレンチ19aの幅は、例えば、約5μmであり、保護層18の厚さは、例えば、約30nmである。
【0034】
本実施例では、第2エッチング工程E2(ステップ3)における反応チャンバ171の圧力は第1エッチング工程E1(ステップ2)における反応チャンバ171の圧力より大きい。
【0035】
本実施例では、第1エッチング工程E1(ステップ2)において、六フッ化硫黄の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmであり、三フッ化窒素の流量は10sccm~300sccmであり、当該第1有機ケイ素化合物の流量は50sccm~200sccmである。
【0036】
本実施例では、第1エッチング工程E1(ステップ2)において、第1エッチングガスg1に対する六フッ化硫黄の体積百分率は30%であり、第1エッチングガスg1に対する酸素の体積百分率は20%であり、第1エッチングガスg1に対するヘリウムの体積百分率は20%であり、第1エッチングガスg1に対する三フッ化窒素の体積百分率は10%であり、第1エッチングガスg1に対する当該第1有機ケイ素化合物の体積百分率は20%である。
【0037】
本実施例では、第1エッチング工程E1(ステップ2)において、上方電極173の出力は約3000Wであり、下方電極175の出力は約500Wである。
【0038】
さらに、第1エッチング工程E1において、エッチングの深さを増やすために、反応チャンバ171の圧力は100mT(milli-Torr)未満とする必要がある。第1エッチング工程E1において、第1エッチング工程E1で、ディープ反応性イオンエッチングにおけるガス流の不安定性を緩和し、エッチングプロセスでエッチングが不意に止まってしまうような状況を減らすために、エッチング時間は30秒間より長くする必要がある。
【0039】
本実施例では、第1エッチング工程E1後に、フォトレジスト層13の厚さはエッチング前の厚さの2/3~1/2が保持される。前述したように、ポリマーを堆積させてフォトレジスト層13及びトレンチ19aの側壁を保護してもよい。反応チャンバ171の圧力は150mTより大きくする必要がある。上方電極173の出力は7000W以下であり、下方電極175の出力は50W以下である。この場合には、ガスは約40体積%の酸素及び60体積%のSi有機化合物を含む。
【0040】
具体的には、ステップ3の第2エッチング工程E2で、ヘリウムは六フッ化硫黄を薄め、エッチングの速度を下げるとともに、トレンチの底部でのポリマー成長を緩和することができる。
【0041】
本実施例では、第2エッチング工程E2(ステップ3)において、六フッ化硫黄の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmであり、当該第2有機ケイ素化合物の流量は50sccm~200sccmである。
【0042】
本実施例では、第2エッチング工程E2(ステップ3)において、第2エッチングガスg2に対する六フッ化硫黄の体積百分率は20%であり、第2エッチングガスg2に対する酸素の体積百分率は20%であり、第2エッチングガスg2に対するヘリウムの体積百分率は40%であり、第2エッチングガスg2に対する当該第2有機ケイ素化合物の体積百分率は20%である。
【0043】
本実施例では、第2エッチング工程E2(ステップ3)において、上方電極173の出力は約7000Wであり、下方電極175の出力は約2000Wである。
【0044】
本実施例では、第2エッチングガスg2が酸化物層15の材料をエッチングするため、第3エッチング工程E3を行う必要がある。第3エッチングガスg3は酸化物層15の材料をエッチングしない。
【0045】
具体的には、ステップ4の第3エッチング工程E3はオーバーエッチング(over-etch)プロセスである。第3エッチング工程E3では臭化水素酸、酸素、ヘリウムを用いてポリマー(不図示)を堆積させることによって、フォトレジスト層13、トレンチ19cを保護する。臭化水素酸はシリコンをエッチングし、且つ、水素(H2)、臭化シリコン(SiOxBry)を製造するために用いられる。臭化シリコンが堆積されると下方の酸化物層15及びフォトレジスト層13は保護される。酸素、シリコンと水素はSiOHポリマー(不図示)を形成して、トレンチ19cの側壁を保護できる。
【0046】
本実施例では、第3エッチング工程E3(ステップ4)において、臭化水素酸の流量は10sccm~2000sccmであり、酸素の流量は10sccm~500sccmであり、ヘリウムの流量は10sccm~500sccmである。
【0047】
本実施例では、第3エッチング工程E3(ステップ4)において、第3エッチングガスg3に対する臭化水素酸の体積百分率は60%であり、第3エッチングガスg3に対する酸素の体積百分率は10%であり、第3エッチングガスg3に対するヘリウムの体積百分率は30%である。
【0048】
本実施例では、第3エッチング工程E3(ステップ4)において、上方電極173の出力は約1000Wであり、下方電極175の出力は約100Wである。
【0049】
本実施例に係る半導体デバイス10のトレンチ構造を製造するドライエッチングプロセスでは、温度及び/又は出力パラメータの調整、特定のエッチングガスの使用、エッチングパラメータの調整により、深いトレンチ(トレンチ19c)構造を有する半導体デバイスを製造する。底部の酸化物層15には微細なトレンチが生じにくく、トレンチ19cにはネッキング(necking/bowing)が生じることはない。トレンチ19cの側壁の粗さを改善し、酸化物層15における微細なトレンチの発生を避けることができ、さらには半導体デバイス10の生産量を増やすことができる。
【0050】
本実施例に係る半導体デバイス10のトレンチ構造を製造するドライエッチングプロセスにおいて、第1エッチング工程E1、第2エッチング工程E2、第3エッチング工程E3には反応時間が充分に設定され、温度、圧力、出力に対する厳格な制御により、トレンチ19cの側壁の粗さ及びトレンチ19cの輪郭を大幅に改善することができる。本実施例でトレンチ19cの側壁の粗さ(roughness)は10nm未満になり、アスペクト比(aspect ratio)は100を上回り、しかもトレンチ19cの底部の角度は89.7~90.3°になり得る。従来の技術で製造されるトレンチ(不図示)は、一般に側壁の粗さが100nmを上回り、アスペクト比が30~60であり、トレンチの底部の角度が88~92°である。
【0051】
本実施例に係る高いアスペクト比を有するトレンチ19cを備える半導体デバイス10は、例えば、微小電気機械システム(Microelectromechanical Systems、略称MEMS)に適用される。
【0052】
上述したように、本発明の実施例に係る半導体デバイスのトレンチ構造を製造するためのドライエッチングプロセスは、第1エッチングガスを用いて第1エッチング工程を、第2エッチングガスを用いて第2エッチング工程を、第3エッチングガスを用いて第3エッチング工程をそれぞれ行って、深いトレンチ構造を有する半導体デバイスを製造することにより、プロセスの質と安定性を上げ、生産量を増やすことができる。
【符号の説明】
【0053】
10 半導体デバイス
11 半導体基板
111 保持領域
113 被エッチング領域
13 フォトレジスト層
15 酸化物層
17 ドライエッチング装置
171 反応チャンバ
173 上方電極
175 下方電極
18、18a 保護層
19a、19b、19c トレンチ
d1 は第1深さ
d2 第2深さ
E1 第1エッチング工程
E2 第2エッチング工程
E3 第3エッチング工程
g1 第1エッチングガス
g2 第2エッチングガス
g3 第3エッチングガス
t1、t2、t3、t4 タンク
p びパイプライン