(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】微結晶性ジケトピペラジン粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/22 20060101AFI20220511BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220511BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220511BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61K47/22
A61K9/14
A61K9/72
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2020211421
(22)【出願日】2020-12-21
(62)【分割の表示】P 2019049517の分割
【原出願日】2014-03-14
【審査請求日】2020-12-21
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503208552
【氏名又は名称】マンカインド コーポレイション
【住所又は居所原語表記】30930 Russell Ranch Road, Suite 301, Westlake Village, California 91362, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、ブライアン アール
(72)【発明者】
【氏名】ガーネリ、ジョセフ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】グラント、マーシャル エル
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特許第6523247(JP,B2)
【文献】特表2008-510824(JP,A)
【文献】特表2009-527583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約0.05μmから約10μmの範囲の粒子サイズにおけるバイモーダル分布を有する懸濁液中にジケトピペラジン粒子を形成する工程、
b)活性剤を前記懸濁液に添加する工程、
c)空気またはガス流下において噴霧乾燥機を使用して前記懸濁液を噴霧する工程、および、
d)噴霧乾燥により粒子を再形成して、実質的に中空の球体を有する微結晶性ジケトピペラジン粒子を含む乾燥粉末にする工程、
を含み、
粒子サイズにおけるバイモーダル分布の粒子の第1のピークは約0.2μmから約2.4μmの平均値を有し、粒子の第2のピークは約2.1μmから約2.4μmの平均サイズを有する、
乾燥粉末で肺投与するのに適切な微結晶性ジケトピペラジン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ジケトピペラジンは、式3,6-ビス(N-X-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジン(式中、Xは、フマリル、スクシニル、マレイル、マロニルおよびグルタリルからなる群から選択される)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジケトピペラジンは、3,6-ビス(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジンである、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、前記懸濁液に1または複数の活性剤を含む溶液を添加する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
微結晶性ジケトピペラジン(DKP)粒子、組成物、粒子の製造方法および粒子の使用方法をここに開示する。特に、当該粒子は、例えば糖尿病および肥満を含む内分泌由来の疾患または障害の治療における、薬物または活性剤のための送達システムとして使用され得る。
【背景技術】
【0002】
薬物の送達は、特に、その標的箇所に到達する前、対象に経口投与され胃腸管内で遭遇する条件下で送達される化合物が不安定となる時において、長年にわたって主たる問題となっている。例えば、特に、投与の容易さ、患者のコンプライアンスおよびコスト低減の点において、薬物を経口投与する多くの場合で好まれるものである。しかし、多くの化合物は、経口投与の場合、効果が無いか、または低いもしくは可変的な効力を示す。これは、薬物が消化管における条件に対して不安定であるため、または非効率的に吸収されているためと考えられる。
【0003】
経口薬物送達に関する問題のため、肺への薬物送達が検討されている。例えば、典型的な肺への薬物送達は肺の組織上に効果を有するように設計されており、例えば血管拡張剤、界面活性剤、化学療法剤、または、インフルエンザもしくは他の呼吸器疾患のためのワクチンが挙げられる。塩基薬物を含む他の薬物は、例えば嚢胞性線維症における遺伝子療法の治療のために特に適切な組織であるので、肺へ送達される。この場合は、欠陥アデノシンデアミナーゼを発現するレトロウイルスベクターが肺へ投与される。
【0004】
全身効果を有する薬剤での肺への薬物送達も行うことができる。全身薬剤の送達における肺の利点は、大きな表面積と、肺の粘膜表面による取り込み易さとを含む。肺の薬物送達システムは多くの困難性を示し、例えば、噴射剤の使用、ならびに、タンパク質およびペプチドが変性し、送達される薬剤の過剰損失へと繋がり得るような生物学的薬剤のエアロゾル化が挙げられる。肺の薬物送達のこれらの形態の全てに関連するもう1つの他の問題は、気管の内側を覆う繊毛等の全ての天然の障壁を過ぎて薬物を得ること、ならびに均一な薬物の体積および重量を投与しようとすることにおける問題のため、肺への薬物の送達が困難であることである。
【0005】
従って、薬物の肺送達において、改善の余地がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、改善された微結晶性粒子、組成物、粒子の製造方法、ならびに、対象における疾患および障害を治療するための改善された肺への薬物送達を可能とする方法を提供する。ここに開示される実施の形態は、1または複数の活性剤を高い薬物含有量で有する粉末をもたらす薬物吸着のための高い能力を有する微結晶性ジケトピペラジン粒子を含む結晶性(結晶質)ジケトピペラジン組成物を提供することにより、改善された送達を達成する。本開示の微結晶性粒子を用いて製造された粉末は、より少ない粉末用量において増加した薬物含有量を送達することができ、患者への薬物送達を容易にすることができる。粉末は、出発材料に応じて界面活性剤を含まない溶液または界面活性剤を含む溶液を使用する方法を含んでいる、様々な方法により、製造することができる。
【0007】
ここに記載する特定の実施の形態は、実質的に均一な複数の微結晶性粒子を含む粉末を含み得る。当該粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、かつポーラスであることができ、自己集合しないジケトピペラジンの微結晶を含むシェルを備える。
【0008】
ここに記載する特定の実施の形態は、実質的に均一な複数の微結晶性粒子を含む粉末を含み得る。当該粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、かつポーラスであることができ、自己集合しないジケトピペラジンの微結晶を含むシェルを備え、当該粒子は5μm未満の体積平均幾何学的直径を有する。
【0009】
ここでの特定の実施の形態では、微結晶性粒子の約92%までが、5.8μm以下の体積平均幾何学的直径を有する。1つの実施の形態では、当該粒子のシェルは、ジケトピペラジン結晶が、その表面上に1または複数の薬物を吸着した状態で連結した構成となっている。ある実施の形態では、当該粒子は、それらの内部の空隙容量内において、および/または、微結晶の表面に吸着される薬物と球の内部の空隙容量内において捕捉される薬物との組み合わせにおいて、薬物を捕捉し得る。
【0010】
特定の実施の形態では、実質的に均一に形成された複数の微結晶性粒子を含むジケトピペラジン組成物が提供される。当該粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、かつ自己集合しないジケトピペラジンの微結晶を含むシェルを備え、当該粒子は、界面活性剤の非存在下において、溶液中に約45%から約65%の範囲のトランス異性体含有量を有するジケトピペラジンと酢酸溶液とを組み合わせ、2000psiまでの高圧下で高剪断ミキサー内で同時に均質化(ホモジナイズ)して沈殿物を形成する工程、脱イオン水を用いて懸濁液中の沈殿物を洗浄する工程、および、懸濁液を濃縮して噴霧乾燥装置内で懸濁液を乾燥する工程を含む方法により、形成される。
【0011】
当該方法は、活性剤または活性成分が粒子上または粒子内に吸着または捕捉されるように、噴霧乾燥工程の前に、薬物または生物活性剤等の活性剤または活性成分を含む溶液を混合しながら添加する工程を、さらに含むことができる。この方法により製造された粒子は、噴霧乾燥前に、サブミクロンサイズの範囲内であり得る。
【0012】
特定の実施の形態では、実質的に均一に形成された複数の微結晶性粒子を含むジケトピペラジン組成物が提供される。当該粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、かつ自己集合しないジケトピペラジンの微結晶を含むシェルを備え、当該粒子は5μm以下の体積平均幾何学的直径を有する。当該粒子は、界面活性剤の非存在下において、溶液中におけるジケトピペラジンと酢酸溶液とを組み合わせ、2000psiまでの高圧下で高剪断ミキサー内で同時に均質化して沈殿物を形成する工程、脱イオン水を用いて懸濁液中の沈殿物を洗浄する工程、および、懸濁液を濃縮して噴霧乾燥装置内で懸濁液を乾燥する工程を含む方法により、形成される。
【0013】
当該方法は、活性剤または活性成分が粒子上または粒子内に吸着または捕捉されるように、噴霧乾燥工程の前に、薬物または生物活性剤等の活性剤または活性成分を含む溶液を混合しながら添加する工程を、さらに含むことができる。この方法により製造された粒子は、噴霧乾燥前に、サブミクロンサイズの範囲内であり得る。
【0014】
特定の実施の形態では、実質的に均一に形成された複数の微結晶性粒子を含むジケトピペラジン組成物が提供される。当該粒子は、実質的に中空の球状構造を有し、かつ自己集合しないジケトピペラジンの微結晶を含むシェルを備え、当該粒子は5μm以下の体積平均幾何学的直径を有する。当該粒子は、界面活性剤の非存在下かつ活性剤の非存在下において、溶液中におけるジケトピペラジンと酢酸溶液とを組み合わせ、2000psiまでの高圧下で高剪断ミキサー内で同時に均質化して沈殿物を形成する工程、脱イオン水を用いて懸濁液中の沈殿物を洗浄する工程、および、懸濁液を濃縮して噴霧乾燥装置内で懸濁液を乾燥する工程を含む方法により、形成される。
【0015】
当該方法は、活性剤または活性成分が粒子上または粒子内に吸着または捕捉されるように、噴霧乾燥工程の前に、薬物または生物活性剤等の活性剤または活性成分を含む溶液を混合して添加する工程を、さらに含むことができる。この方法により製造された粒子は、噴霧乾燥前に、サブミクロンサイズの範囲内であり得る。
【0016】
1つの実施の形態では、当該組成物は、1または複数の活性成分を含む微結晶性粒子を含み得る。当該活性成分は、ペプチド、タンパク質、核酸分子、有機小分子またはこれらの組み合わせである。活性成分がペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である実施の形態では、当該ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、内分泌ホルモン、神経伝達物質、血管作用性ペプチド、受容体ペプチド、受容体アゴニストまたは受容体アンタゴニスト等を挙げることができる。ある実施の形態では、当該内分泌ホルモンは、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、レプチンまたはこれらの内分泌ホルモンの類似体である。実施の形態では、賦形剤は、噴霧乾燥工程において使用される1つの、別の、または全ての供給原料への添加により、粒子中に組み込むことができる。
【0017】
当該組成物が活性成分としてインスリンを含む1つの実施の形態では、当該組成物は、患者に送達される粉末の1ミリグラムにつき、例えば9単位または10単位までの量において、インスリンを含有することができる。この実施の形態では、インスリンは、乾燥粉末吸入器を使用する単回吸入において、例えば100単位までの量において、患者に送達され得る。当該組成物は、糖尿病および/または高血糖症の治療のためのインスリンの必要に応じて患者に投与することができる。
【0018】
例示的な実施の形態では、当該結晶性ジケトピペラジン組成物は、式2,5-ジケト-3,6-ビス(N-X-4-アミノアルキル)ピペラジンのジケトピペラジンを含み、当該アルキルは、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチル等を含む3から20の炭素原子を含有するアルキルを表す。当該式は、例えば、2,5-ジケト-3,6-ビス(N-X-4-アミノブチル)ピペラジン(式中、Xは、フマリル、スクシニル、マレイル、マロニルおよびグルタリルからなる群から選択される)、または、その塩である。特定の実施の形態では、当該ジケトピペラジンは、(ビス-3,6-(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケト-ジケトピペラジンであり、次の式を有する。
【化1】
【0019】
様々な実施の形態では、肺投与に適した微結晶性粒子を含む乾燥粉末の製造方法が提供される。当該方法は、界面活性剤を含まない溶液または界面活性剤を含む溶液を使用して行うことができる。1つの態様では、当該ジケトピペラジンは、約45%から65%の範囲のトランス異性体含有量を含む。
【0020】
ここに記載する特定の実施の形態は、遊離酸ジケトピペラジンを含む出発材料からの結晶性ジケトピペラジン微粒子を含む乾燥粉末の製造方法を含む。
【0021】
ここに記載する特定の実施の形態は、ジケトピペラジン塩を含む出発材料からの結晶性ジケトピペラジン微粒子を含む乾燥粉末を製造する方法を含む。
【0022】
1つの実施の形態では、当該方法は、
アンモニア水の中にジケトピペラジンを溶解させて、第1の溶液を形成する工程、
当該第1の溶液および約10.5%の酢酸を含む第2の溶液を、高圧下で約6.0未満のpHにある高剪断ミキサーに同時に供給する工程、
当該第1の溶液および当該第2の溶液を均質化して、懸濁液中においてジケトピペラジンの微結晶を含む懸濁液を形成する工程であって、当該懸濁液が直径において約0.05μmから約10μmの範囲の粒子サイズを有する微結晶のバイモーダル分布を有する、工程、
空気またはガス流下において当該懸濁液を噴霧する工程、および、
噴霧乾燥により粒子を再形成して、実質的に中空の球体を有する微結晶性粒子を含む乾燥粉末にする工程、を含む。
【0023】
別の実施の形態では、当該方法は、
水酸化ナトリウム水溶液および任意に界面活性剤の中にジケトピペラジンを溶解させて、第1の溶液を形成する工程、
当該第1の溶液および約10.5%の酢酸を含む第2の溶液、ならびに、任意における界面活性剤を、高圧下で約6.0未満のpHにある高剪断ミキサーに同時に供給する工程、
当該第1の溶液および当該第2の溶液を均質化して、懸濁液中にジケトピペラジンの微結晶を含む懸濁液を形成する工程であって、当該懸濁液が直径において約0.05μmから約10μmの範囲の粒子サイズを有し、約45%から65%の範囲のトランス異性体含有量を含む微結晶のバイモーダル分布を有する、工程、
空気またはガス流下において当該懸濁液を噴霧する工程、および、
噴霧乾燥により粒子を再形成して、実質的に中空の球体を有する微結晶性粒子を含む乾燥粉末にする工程、を含む。
【0024】
1つの実施の形態では、当該方法は、
アンモニア水の中にジケトピペラジンを溶解させて、第1の溶液を形成する工程、
当該第1の溶液および約10.5%の酢酸を含む第2の溶液を、高圧下で約6.0未満のpHにある高剪断ミキサーに同時に供給して、懸濁液中にジケトピペラジンの微結晶を含む懸濁液を形成する工程であって、当該懸濁液が直径において約0.05μmから約10μmの範囲の粒子サイズを有する微結晶のバイモーダル分布を有する、工程、
空気またはガス流下において当該懸濁液を噴霧する工程、および、
噴霧乾燥により粒子を再形成して、実質的に中空の球体を有する微結晶性粒子を含む乾燥粉末にする工程、を含む。
【0025】
当該方法は、当該懸濁液を噴霧する前に、ジケトピペラジン微結晶懸濁液に第3の溶液を添加する工程を、さらに含むことができる。当該溶液は、薬物または薬学的活性成分を含有し、噴霧工程は、窒素ガスを含む空気またはガス下における高効率サイクロン分離器を装着した噴霧乾燥器内に挿入されている外部混合2流体ノズルを使用して行うことができる。
【0026】
特定の実施の形態では、懸濁液中の粒子は、レーザー回折により測定されるようなバイモーダル曲線としての粒子サイズ分布を有する。直径において、粒子の第1のピークは約0.2μmから約0.4μmの平均粒子サイズを有し、粒子の第2のピークは約2.1μmから約2.4μmの平均サイズを有する。
【0027】
ある実施の形態では、懸濁液の噴霧工程は、プロセスガスとして1時間毎に約700リットルの窒素気流を使用し、ノズル温度は約25℃に維持され得る。
【0028】
上記の方法により形成された微結晶性粒子は、水または他の水性溶媒等の溶液中において懸濁された時、自己集合しない。特定の実施の形態では、当該方法は、式2,5-ジケト-3,6-ビス(N-X-4-アミノブチル)ピペラジンのジケトピペラジンを含み、Xは、フマリル、スクシニル、マレイル、マロニルおよびグルタリルからなる群から選択される。具体的な実施の形態では、当該方法は、高剪断ミキサー内でのジケトピペラジンの溶液の均質化を含み、当該ジケトピペラジンは、(ビス-3,6-(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケト-ジケトピペラジン、または、二ナトリウム塩、二カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩および二リチウム塩を含むその塩である。
【0029】
実施の形態では、実質的に均一なサイズの複数の微結晶性粒子を含む結晶性ジケトピペラジン組成物は、噴霧乾燥工程の生成物として得られる。
【0030】
実施の形態では、バイモーダルサイズ分布を有する複数の微結晶性粒子を含む結晶性ジケトピペラジン組成物は、結晶化工程の生成物として得られる。
【0031】
破砕工程が使用された時、バイモーダル分布のより大きな種を、より小さいサイズへ移すことができる。
【0032】
特定の実施の形態は、大きい薬物含有量を担持する乾燥粉末を製造するための、ジケトピペラジン酸の微結晶性粒子を形成する方法を含む。当該方法は、出発化合物として、2,5-ジケト-3,6-ビス(N-フマリル-4-アミノブチル)ピペラジン二ナトリウム塩を含むジケトピペラジン塩の使用を含む。当該方法は、
約0.2%(w/w)から約6%(w/w)の量の界面活性剤を含む水中に、ジケトピペラジン塩を溶解して、第1の溶液を形成する工程、
当該第1の溶液を、約8%(w/w)から約12%(w/w)の酢酸を含む第2の溶液と、高圧下で約6.0未満のpHにある高剪断ミキサー内で同時に混ぜ合わせる工程、
当該第1の溶液および当該第2の溶液を均質化して、懸濁液中にジケトピペラジンの微結晶を含む懸濁液を形成する工程であって、当該懸濁液が直径において約0.05μmから約10μmの範囲の粒子サイズを有する微結晶のバイモーダル分布を有する、工程、
空気またはガス流下において当該懸濁液を噴霧する工程、および、
噴霧乾燥により粒子を再形成して、実質的に中空の球体を有するジケトピペラジン酸の微結晶性粒子を含む乾燥粉末にする工程、を含む。
【0033】
具体的な実施の形態では、微結晶性粒子は、例えば2,5-ジケト-3,6-(N-フマリル-4-アミノブチル)ピペラジン二ナトリウム塩等の水中におけるジケトピペラジンおよびポリソルベート80等の界面活性剤を含む第1の溶液を調製する工程、約10.5%(w/w)の濃度の酢酸および約0.5%(w/w)の濃度の界面活性剤を含む第2の溶液を調製する工程、当該第1の溶液および当該第2の溶液を高剪断ミキサー内で混合して、懸濁液を形成する工程、任意に、粒子の直径が約0.2μmから約10μmのサイズの範囲であるバイモーダル粒子サイズ分布であって、粒子の第1のピークが約0.4μmの平均直径を有し、粒子の第2のピークが約2.4μmの平均直径を有する、当該分布を、懸濁液が備えるように、懸濁液を試験して、粒子サイズ分布を決定する工程、および、当該懸濁液を噴霧乾燥して乾燥粉末を得る工程を含む方法により製造することができる。
【0034】
特定の実施の形態は、バイモーダル分布においてより大きなサイズの集団のサイズを小さくするために、例えば超音波処理、攪拌または均質化を利用する、破砕工程を含むことができる。実施の形態では、破砕工程は、当該懸濁液を噴霧する前に行われ得る。
【0035】
ここでの実施の形態では、微結晶性ジケトピペラジン粒子の製造方法は、脱イオン水を用いる洗浄工程を、さらに含むことができる。1つの実施の形態では、噴霧工程は、例えば高効率サイクロン分離器を装着した噴霧乾燥器内に挿入されている外部混合2流体ノズルを使用して、行われ得る。
【0036】
当該方法は、分散および/または噴霧乾燥前に、1または複数の活性剤を含む溶液を懸濁液に添加する工程をさらに含むことができ、当該活性剤は、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸分子または有機小分子である。ペプチドは、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、レプチンおよびこれらの内分泌ホルモンの類似体等を含む、内分泌ホルモンを挙げることができる。当該方法は、界面活性剤ならびに/または薬学的に許容される担体を含む溶液を添加する工程を任意に含むことができ、当該薬学的に許容される担体は、ロイシン、イソロイシン等のアミノ酸、ならびに/または、ラクトース、トレハロース等の単糖、二糖、オリゴ糖、および/もしくは、マンニトール、ソルビトール等を含む糖アルコールを含む。
【0037】
別の実施の形態では、2以上の活性剤を含む組成物を、本開示の方法を使用して製造することができる。そのような組成物の製造方法は、2以上の活性剤を含む微結晶性ジケトピペラジン粒子を製造する工程を含み、それぞれの活性剤/活性成分は、溶液中において別個に処理され、別個のジケトピペラジン粒子の懸濁液に添加され、溶液条件は微結晶の表面上への当該活性剤の吸着を促進するように変更され、その後、活性剤を含む2以上の別個の懸濁液は、粒子の分散および噴霧乾燥前に配合される。変形した手順では、配合物は、例えば全体にわたってより少ない活性剤の含有量を達成するために、活性剤無しにジケトピペラジン粒子を含有する懸濁液を含んでいる。代替の実施の形態では、単一の活性剤を含有する1または複数の独立した溶液が、粒子の分散および噴霧乾燥前に、ジケトピペラジン粒子を含む単一の懸濁液と組み合わされ得る。得られる乾燥粉末は、2以上の活性成分を含む組成物を含む。これらの実施の形態では、当該組成物中のそれぞれの成分の量は、治療される患者集団の要求に応じて制御することができる。
【0038】
別の実施の形態では、当該乾燥粉末は、2,5-ジケト-3,6-ビス(N-X-4-アミノブチル)ピペラジンを含む組成物を含み、Xはフマリルであり、当該組成物は薬物を含む実質的に均質な微結晶性粒子を含む。当該粒子は実質的な中空のコアを有する形状における実質的な球体であり、当該微結晶は球体のシェルを形成している。別の実施の形態では、当該乾燥粉末は、式2,5-ジケト-3,6-ビス(N-X-4-アミノブチル)ピペラジンのジケトピペラジンおよび薬物を含み、当該薬物はペプチドであり、当該ペプチドは、様々なペプチドの長さ、分子サイズまたは分子量とすることができる。これには、インスリン、グルカゴン様ペプチド-1、グルカゴン、エキセンジン、副甲状腺ホルモン、カルシトニンおよびオキシントモジュリン等が含まれる。
【0039】
さらなる実施の形態は、カートリッジ装着または非装着の吸入器を備える薬物送達システムを含み、当該カートリッジは、例えばカートリッジである単位用量乾燥粉末薬剤容器、ならびに、ここに記載される粒子および活性剤を含む粉末である。1つの実施の形態では、乾燥粉末を用いて使用するための送達システムは、粉末を解凝集および分配するための導管を通る空気流に対して高抵抗を付与する空気導管を持つ高抵抗吸入器を備える吸入システムを含む。1つの実施の形態では、吸入システムは、例えば、毎分約0.065(√kPa)/Lから約0.200(√kPa)/Lの抵抗値を有する。特定の実施の形態では、毎分約7Lと70Lとの間のピーク流量を生じさせることができるピーク吸入圧力差が約2kPaから約20kPaの範囲となり得る吸入システムでの吸入により、当該乾燥粉末は効果的に送達され得る。特定の実施の形態では、当該吸入システムは、連続流として、または患者に送達される粉末の1または複数の波(パルス)として、吸入器から粉末を排出することにより、単回用量を提供するように構成されている。ここに記載されるある実施の形態では、当該乾燥粉末吸入システムは、吸入器内の所定の質量流量バランスを備え、当該吸入導管は、吸入の間に可変流量分布を有するように設計されている。例えば、吸入器を出て患者に入る総流量の約10%から70%の流量バランスが、1または複数の分配ポートにより送達され、その空気流は粉末製剤を含有する領域を備えて設計されている空気導管を通り過ぎる。そして、約30%から90%の空気流が、吸入操作の間に吸入器の他の導管から生じる。さらに、バイパス流、またはカートリッジを通る等の粉末含有領域を出入りしない流れは、マウスピースを出る前に、流動化した粉末を薄め、加速させ、最終的には解凝集するように、吸入器内で粉末分配ポートを出る流れと再度組み合わされ得る。1つの実施の形態では、毎分約7Lから70Lの範囲の流量では、1mgから50mgの間の充填質量において分配された容器またはカートリッジ含有量の75%より大きいという結果をもたらす。特定の実施の形態では、上記の吸入システムは、単回吸入において、40%、50%、60%または70%より大きい割合での粉末用量の充填毎呼吸性画分を放出することができる。
【0040】
特定の実施の形態では、吸入器を備える薬物送達システムは、例えば結晶性または非晶質の形態等の乾燥粉末を含む粒子の形態で使用するために特に適した吸入器を備え得る。
【0041】
特定の実施の形態では、乾燥粉末吸入器、45%から65%の間のFDKPトランス異性体含有量を有するフマリルジケトピペラジンの微結晶性粒子を含む乾燥粉末製剤、および、1または複数の活性剤を備える吸入システムが提供される。当該吸入システムのこの実施の形態のある態様では、当該乾燥粉末製剤は、単位用量カートリッジにおいて提供される。代替では、当該乾燥粉末製剤は、吸入器内に予め充填されていてもよい。この実施の形態では、当該吸入システムの構造的構成は、吸入器の解凝集メカニズムに、50%より大きい呼吸性画分をもたらすことを可能とする。すなわち、吸入器(カートリッジ)内に含有された粉末の半分より多くが、5.8μm未満の粒子として放出される。当該吸入器は、投薬の間に容器内に含有された粉末薬剤の85%より多くを放出することができる。特定の実施の形態では、当該吸入器は、単回吸入において、含有された粉末薬剤の85%より多くを放出することができる。1つの実施の形態では、当該吸入器は、30mgまでの範囲の充填質量について2kPaから5kPaの間の圧力差において3秒未満で、カートリッジ含有量または容器含有量の90%より多くを放出することができる。
【0042】
ここに記載する実施の形態は方法も含む。1つの実施の形態では、内分泌関連疾患または障害を治療する方法であり、約45%から約65%のトランス異性体含有量を有し得るFDKPを含むFDKP微結晶性粒子と前記疾患または障害を治療するために適している薬物とを含む乾燥粉末製剤を、それを必要とする人に投与することを含み、当該微粒子は本開示の方法により製造される。1つの実施の形態は、インスリン関連障害を治療する方法を含み、上記のFDKPの微結晶性粒子を含む乾燥粉末をそれを必要とする人に投与することを含む。当該方法は、約45%から65%の範囲のトランス異性体含有量を有するフマリルジケトピペラジンの微結晶性粒子を含む乾燥粉末製剤を対象に投与することを含み、当該粒子は中空の球体であり界面活性剤を含まない。様々な実施の形態では、インスリン関連障害とは、具体的には、糖尿病前症、1型糖尿病(ハネムーン期、ハネムーン期後または両方)、2型糖尿病、妊娠糖尿病、低血糖症、高血糖症、インスリン抵抗性、分泌機能不全、インスリンの初期放出不全、膵臓β細胞機能の喪失、膵臓β細胞の損失および代謝障害のうちの任意または全てを含み、または除くことができる。1つの実施の形態では、当該乾燥粉末はインスリンを含む。他の実施の形態では、当該乾燥粉末は、オキシントモジュリン、ペプチドYY、レプチン、オキシトシン、グルカゴン、エキセンジン、GLP-1類似体またはそれらの組み合わせを含む。
【0043】
ここに記載される別の実施形態は、GLP-1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、オキシトシンおよびインスリンを含むペプチドを、それを必要とする患者に送達する方法を含み、ここに記載されるジケトピペラジン微結晶性粒子を含む乾燥粉末を患者による乾燥粉末の吸入によって肺深部へ投与することを含む。この実施の形態の態様では、吸入システムの特定の特徴が具体化される。
【0044】
次の図面は本明細書の一部を形成し、ここに記載される実施例の特定の態様をさらに証明するために含まれるものである。ここに示される具体的な実施の形態の詳細な記載と組み合わせてこれらの1または複数の図面を参照することにより、本開示はより理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1A】インスリンを含むフマリルジケトピペラジン粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)の図であり、低倍率における凍結乾燥させた粒子の固体組成物を示す図である。
【
図1B】インスリンを含むフマリルジケトピペラジン粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)の図であり、高倍率における凍結乾燥させた粒子の固体組成物を示す図である。
【
図2】確率密度関数(pdf、左y軸)スケールおよび累積分布関数(cdf、右y軸)スケールにより測定される
図1Aおよび
図1Bに示した粒子の粒子サイズ分布のグラフを示す図である。
【
図3】使用溶液中に界面活性剤を含ませずに微結晶性粒子を形成させた懸濁液で調製された実施の形態から得られた粒子の粒子サイズ分布のグラフを示す図である。グラフは、確率密度関数(pdf、左y軸)スケールおよび累積分布関数(cdf、右y軸)スケールにより測定される微結晶性粒子の典型的なバイモーダル分布を示す。
【
図4】界面活性剤を含まない粒子懸濁液を凍結乾燥させた実施の形態から回収されたFDKP粒子の低倍率(2500×)におけるSEMの図である。
【
図5】界面活性剤を含ませずに形成させた
図4に示す懸濁液中の凍結乾燥させた粒子サイズ分布のグラフを示す図であり、確率密度関数(pdf、左y軸)スケールおよび累積分布関数(cdf、右y軸)スケールにより測定される粒子サイズにおける増加を示している。
【
図6】噴霧乾燥された界面活性剤を含まない溶液から製造された微結晶性粒子を示す請求項の実施の形態のSEM(2500×)の図である。
【
図7】水中に分散させた、噴霧乾燥された界面活性剤を含まない粒子の粒子サイズ分布のグラフを示す図である。
【
図8】0.01M HCl(pH2)中に分散させた、噴霧乾燥された界面活性剤を含まない粒子の粒子サイズ分布のグラフを示す図である。
【
図9】界面活性剤の存在下において酢酸でNa
2FDKPを結晶化することにより形成された懸濁液のバイモーダル粒子サイズ分布のグラフを示す図である。
【
図10A】Na
2FDKPから調製された結晶の懸濁液を噴霧乾燥することにより調製された粒子の2500×の倍率における走査型電子顕微鏡の図である。
【
図10B】Na
2FDKPから調製された結晶の懸濁液を噴霧乾燥することにより調製された粒子の10000×の倍率における走査型電子顕微鏡の図である。
【
図11A】約10wt%のインスリンを有する噴霧乾燥された界面活性剤を含まないFDKP粒子の2500×の倍率における走査型電子顕微鏡の図である。
【
図11B】約10wt%のインスリンを有する噴霧乾燥された界面活性剤を含まないFDKP粒子の5000×の倍率における走査型電子顕微鏡の図である。
【
図12A】Na
2DKPから調製された結晶の懸濁液を噴霧乾燥することにより調製された粒子の2500×の倍率における走査型電子顕微鏡の図である。
【
図12B】Na
2DKPから調製された結晶の懸濁液を噴霧乾燥することにより調製された粒子の10000×の倍率における走査型電子顕微鏡の図である。
【
図13】Na
2FDKPおよびポリソルベート80の溶液から結晶化されたFDKPの懸濁液を噴霧乾燥することにより形成された粒子のサイズ分布のグラフを示す図である。粒子は測定のために水中に分散させた。
【
図14】噴霧乾燥された組み合わせ粉末および個々の活性剤を有する結晶性懸濁液の粒子サイズ分布のグラフを示す図である。1は、別個のジケトピペラジン-活性剤粒子懸濁液中での2つの異なる活性剤を含む組み合わせ微結晶性粉末組成物の粒子サイズ分布を示しており、懸濁液中にFDKP-GLP-1の粒子を含有する一方の組成物とFDKP-インスリン(3)を含有する他方の組成物とは、噴霧乾燥される前に組み合わされた。
【発明を実施するための形態】
【0046】
述べてきたように、肺への薬物送達は多くの利点を提供する。しかし、薬物の均一な体積および重量での天然の物理障壁を通過する薬物輸送における問題のため、肺の中へ薬物を送達することは困難である。結晶性ジケトピペラジン組成物、乾燥粉末および粒子の製造方法を、ここに記載する。結晶性組成物およびそれから作られる乾燥粉末は、ジケトピペラジンの微結晶を含むシェルおよびコアを備える実質的に均一に規定される球体であるジケトピペラジン微結晶性粒子を含む。特定の実施の形態では、コアは中空であり得る。1つの実施の形態では、ジケトピペラジンは、薬物送達剤としての粒子、粒子の製造方法および粒子を使用する治療方法に対して有益となり得る規定のトランス異性体含有量を有する。ここに記載する粒子は、標準的な先行技術の粒子よりも少ない用量で、薬物含有物を担持し患者に送達する、より高い能力を有する。
【0047】
ここで使用される“類似体”は、別の化合物に対して構造的な類似性を有する化合物を含む。従って、親化合物の生物学的または化学的活性を模倣する、別の化合物(親化合物)に対して構造的な類似性を有する化合物は、類似体である。提供された類似体が親化合物の生物学的または化学的特性について、同一的、相補的または競合的のいずれかのある関連した様式において摸倣可能であれば、化合物を類似体としてみなすために必要とされる元素または官能基置換の最小または最大数は、存在しない。ある例では、類似体は、分離している、または別の分子に対して結合した親化合物の断片を含み、同様に他の代替となるものも含有してもよい。ここに記載する化合物の類似体は、それらの親化合物と同等の活性、より小さい活性またはより大きい活性を有していてもよい。
【0048】
ここで使用される“微粒子”の用語は、正確な外部または内部構造にかかわらず、約0.5μmから約1000μmの直径(粒径)を有する粒子を示す。約0.5ミクロンから約10ミクロンの間の直径を有する微粒子は、肺へ到達することができ、ほとんどの天然の障壁の通過に成功する。約10ミクロン未満の直径は喉の屈曲を通り抜けるために必要であり、約0.5ミクロン以上の直径は吐き出されることを回避するために必要である。最も効果的な吸収が起こると考えられる肺深部(または肺胞領域)に到達するために、“呼吸性画分”(RF)において含有される粒子の割合を最大化することが好ましい。これは、いくつかの参照例は例えばアンダーセンカスケードインパクターを用いる標準的な技術を使用して測定されるいくらか異なる範囲を使用するが、一般的には、約0.5ミクロンから約5.7ミクロンの空気力学的直径を有する粒子が許容される。空気力学的粒子サイズを測定するために、NEXT GENERATION IMPACTOR(商標)(NGI(商標)、MSP Corporation)等の他のインパクターを使用することができ、呼吸性画分は、例えば6.4μm未満の類似した空気力学的サイズにより規定される。ある実施の形態では、レーザー回折装置が粒子サイズを測定するために使用され、例えば、2010年3月18日に提出された米国特許出願第12/727179号に記載されているレーザー回折装置を挙げることができ、これを、その関連する教示についてその全体においてここに組み込む。ここでは、粒子の体積平均幾何学的直径(VMGD)が、吸入システムの性能を評価するために測定されている。例えば、様々な実施の形態において、80%、85%または90%以上のカートリッジの排出および12.5μm、7.0μm、5.8μmまたは4.8μm以下の放出粒子のVMGDが、段階的なより良い空気力学的性能を示し得る。ここに記載する実施の形態は、約45%から約65%の間のトランス異性体含有量を有するFDKP粒子が、改善された空気力学的性能等の肺への薬物の送達に対して有益な特徴を表すことを示している。
【0049】
充填毎呼吸性画分(RF/Fill)は、投薬での使用のために充填される粉末含有量の排出において吸入器から放出され、呼吸に適切である用量での粉末の割合を表す。すなわち、肺送達のために適切なサイズを有して放出される充填用量からの粒子の割合であり、粒子力学的性能の尺度である。ここに記載するように、40%以上のRF/Fill値が、許容される空気力学的性能特性を示すものである。ここに記載する特定の実施の形態では、充填毎呼吸性画分は50%よりも大きくなり得る。例示的な実施の形態では、充填毎呼吸性画分を約80%にまですることができ、充填量の約80%が、標準的な技術を使用して測定される5.8μm未満の粒子サイズで放出される。
【0050】
ここで使用される“乾燥粉末”の用語は、推進剤、担体または他の液体中において懸濁または溶解しない、細かい粒子状の組成物を示す。全ての水分子が完全に存在しないものを必ずしも示すということを意味するわけではない。
【0051】
具体的なRF/Fill値は、粉末を送達するために使用される吸入器に依るものとなり得る。粉末は一般的に凝集する傾向があり、特定の結晶性DKP粒子は特に凝集性粉末を形成する。乾燥粉末吸入器の機能の1つは、得られる粒子が吸入によって用量を送達するために適している呼吸性画分を含むように、粉末を解凝集することである。しかし、凝集性粉末の解凝集は典型的に不完全であり、吸入器により送達される呼吸性画分を測定する時に見られる粒子サイズ分布は、初期の粒子のサイズ分布に合致しないだろう。すなわち、プロファイルがより大きな粒子の方へと移るだろう。吸入器の設計はそれらの解凝集の効率において変化するため、異なる設計を使用して観察されたRF/Fillの絶対値も変化しているだろう。しかし、異性体含有量の関数での最適なRF/Fillは、どの吸入器であっても同様となるだろう。
【0052】
ここで使用される“約”の用語は、値を決定するために使用される装置または方法での測定の標準偏差を含む値であることを示すために使用される。
【0053】
ここで使用される“界面活性剤を含まない(界面活性剤の非存在下)”との用語は、微結晶性粒子の製造方法において使用される溶液および/または懸濁液を含む試薬のいずれにおいても界面活性剤が存在していないことを示すために使用される。
【0054】
ここで使用される“微結晶(結晶子)”の用語は、変化するサイズを有し得る、ジケトピペラジン粒子の一体的な結晶性単位を示すために使用される。
【0055】
ここで使用される“微結晶性粒子”は、ジケトピペラジンの微結晶を含み、約0.05μmから約100μmの粒子サイズ分布を有し、直径において50μm未満、20μm未満または10μm未満の粒子サイズを有するレーザー回折により測定される。実施の形態では、微結晶は0.01μmから1μmのサイズの範囲となり得る。
【0056】
ジケトピペラジン
薬物の不安定性および/または吸収不良等の医薬分野における問題を克服するために使用されている薬物送達剤の1つの種類に、2,5-ジケトジケトピペラジンがある。2,5-ジケトジケトピペラジンは、以下に示す一般式1の化合物によって表され、E
1およびE
2は、独立して、Nまたは特にNHである。他の実施の形態では、E
1およびE
2は、独立して、酸素または窒素であり、E
1およびE
2の置換基のいずれか1つが酸素であり他方が窒素である場合には、式は置換類似体ジケトモルホリンとなる。または、E
1およびE
2の両方が酸素である場合には、式は置換類似体ジケトジオキサンとなる。
【化2】
【0057】
これらの2,5-ジケトジケトピペラジンは薬物送達において有用であることが示されており、特に、例えば、“Self Assembling Diketopiperazine Drug Delivery System”との題の米国特許第5352461号明細書、“Method For Making Self-Assembling Diketopiperazine Drug Delivery System”との題の同第5503852号明細書、“Microparticles For Lung Delivery Comprising Diketopiperazine”との題の同第6071497号明細書、および、“Carbon-Substituted Diketopiperazine Delivery System”との題の同第6331318号明細書において記載されている、酸性R1およびR2基を有するものがある。これらのそれぞれは、ジケトピペラジンおよびジケトピペラジン媒介薬物送達に関して教示する全てについてその全体において参照によりここに組み込まれる。ジケトピペラジンは、薬物を組み込む微粒子またはその上に薬物が吸着され得る微粒子へと形成され得る。薬物とジケトピペラジンとの組み合わせは、改善された薬物の安定性および/または吸収特性を得ることができる。これらの微粒子は様々な投与経路により投与され得る。乾燥粉末としての微粒子は、肺を含む呼吸器系の具体的な領域へ吸入によって送達され得る。
【0058】
このような従来技術の微粒子は、典型的に、遊離酸(または塩基)のpHに基づく沈殿により得られ、赤みがかった形態を有する凝集された結晶プレートを含む自己集合した微粒子をもたらす。粒子の安定性は、粒子を沈殿させるDKP溶液中におけるポリソルベート80等の少量の界面活性剤により向上させることができる(例えば、“Method of drug formulation based on increasing the affinity of crystalline microparticle surfaces for active agents”との題の米国特許第7799344号明細書を参照、当該開示はDKP微粒子およびその乾燥粉末の製剤および充填に関して教示する全てについてその全体において参照によりここに組み込まれる。)。乾燥粉末を得るために、最終的に溶媒は除去され得る。溶媒を除去する方法は、凍結乾燥および噴霧乾燥を含む(例えば、“A method for improving the pharmaceutic properties of microparticles comprising diketopiperazine and an active agent”との題の米国特許第8039431号明細書、および、“Purification and stabilization of peptide and protein pharmaceutical agents”との題の米国特許第6444226号明細書を参照、これらのそれぞれはDKP微粒子およびその乾燥粉末の製剤および充填に関して教示する全てについてその全体において参照によりここに組み込まれる。)。ここに記載する粒子は、物理的に従来技術の粒子とは異なり、形態学的に異なる実体であり、改善された方法により製造される。本開示は、遊離酸または溶解したアニオンとして理解されるFDKPについて示す。
【0059】
他の従来の粒子は、米国特許第7820676号明細書および“Diketopiperazine salts for drug delivery and related methods”との題の同第8278308号明細書に記載されているように、DKP溶液を噴霧乾燥することにより、典型的に崩壊した球状の形態を有する無定形のDKP塩の粒子が得られる。
【0060】
ジケトピペラジンを合成するための方法は、例えば、Katchalski,et al.,J.Amer.Chem.Soc.68,879-880(1946年)、および、Kopple,et al.,J.Org.Chem.33(2),862-864(1968年)において記載されており、これらの教示はその全体において参照によりここに組み込まれる。2,5-ジケト-3,6-ジ(アミノブチル)ピペラジン(Katchalskiらはリジン無水物としてこれを示している)は、適切な試薬および条件でのブロッキング(P)基の除去に続く、Kopple法と同様の溶解フェノール中でのN-ε-P-L-リジンのシクロ二量体化を介しても、調製され得る。例えば、CBz保護基は、酢酸中の4.3M HBrを使用して除去することができる。この経路は市販で入手可能な出発材料を使用し、生成物中で出発材料の立体化学を維持することが報告されている反応条件を伴うものであり、全ての工程が製造のために容易にスケールアップされ得る。ジケトピペラジンを合成するための方法は、“Catalysis of Diketopiperazine Synthesis”との題の米国特許第7709639号明細書においても記載されており、当該開示も同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。
【0061】
フマリルジケトピペラジン(ビス-3,6-(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケト-ジケトピペラジン;FDKP)は、肺での適用のために好ましい1つのジケトピペラジンである。
【化3】
【0062】
FDKPは、酸性では低い溶解度を有するが中性または塩基性pHで容易に溶解するため、有益な微粒子マトリックスを提供する。このような特性は、FDKPの結晶化を可能とし、当該結晶を酸性条件下で微粒子へと自己集合することを可能にする。粒子は、pHが中性である生理的条件下で容易に溶解する。述べたように、約0.5μmから約10μmの間の直径を有する微粒子は肺へと到達することができ、ほとんどの天然の障壁を通過することに成功する。このサイズ範囲における粒子は、FDKPから容易に調製することができる。
【0063】
FDKPは、ジケトピペラジン環において2つの不斉中心を有する。FDKPは、ジケトピペラジンの中央の“環”に対する側鎖の配置によって“シス-FDKP”および“トランス-FDKP”として同定される幾何異性体の混合物として製造される。R,RおよびS,S鏡像異性体はジケトピペラジン環の同じ平面側から突出するプロペニル(アミノブチル)“サイドアーム”を有しているので(以下のAおよびB)、シス異性体として示される。その一方で、R,S化合物はジケトピペラジン環の反対の平面側から突出する“サイドアーム”を有しており(以下のC)、トランス異性体として示される。
【化4】
【0064】
“Unit Dose Cartridge and Dry Powder Inhaler”との題の米国特許第7464706号明細書において記載されているMEDTONE(登録商標)吸入器等の適度に効率のよい吸入器でのRF/Fillによる測定で、許容される空気力学的性能を有するFDKP微粒子粉末が、約45%から約65%の範囲のトランス異性体含有量を有するFDKPから製造された。なお、この開示は同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。この範囲における異性体含有量を有する粒子は、2009年6月12日に提出された“A Dry Powder Inhaler and System for Drug Delivery”との題の米国特許第8499757号明細書、2009年6月12日に提出された“Dry Powder Inhaler and System for Drug Delivery”との題の同第8424518号明細書、2013年7月12日に提出された“Dry Powder Drug Delivery System and Methods”との題の米国特許出願第13/941365号、および、2010年3月4日に提出された“Improved Dry Powder Drug Delivery System”との題の同第12/717884号において記載されているような高い効率の吸入器を用いても、よく機能する。これらの開示は、同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。65%より多いトランス-FDKPを含有する微粒子を含む粉末は、より低い、かつより多く変化するRF/Fillを有する傾向がある。FDKPのトランス異性体に富む微粒子は、形態が変化しており、処理が困難である粘性の懸濁液にも繋がる。
【0065】
約45%から約65%のトランス異性体含有量を有するFDKP微粒子の製剤は、米国特許第8227409号明細書において記載されているような、許容される空気力学的特性を持つ粉末を提供する。この開示は、同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。67m2/g未満の規定された比表面積を有するFDKP粒子の製剤は、2010年6月11日に提出された“Diketopiperazine Microparticles with Defined Specific Surface Areas”との題の米国特許第8551528号明細書において記載されているような、許容される空気力学的特性を持つ吸入のための乾燥粉末も提供する。この開示は、同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。しかしながら、これらのFDKP粉末は凝集性となる傾向があり、吸入器はこの特徴を克服するために設計される。
【0066】
従って、より効果的な薬物送達とより少ない吸入器の周囲設計とを可能とする、より少ない凝集性の粒子組成物を有するジケトピペラジン粉末を作ることが所望される。本開示では、FDKPおよびFDKP二ナトリウム塩により例示されるジケトピペラジンの微結晶性粒子の製造方法が、許容される空気力学的性能を持つ微結晶性乾燥粉末を提供することを確かめている。当該粉末は、より少ない凝集性となっており、密度が異なっており、懸濁液中で自己集合しない別の物理的構造を有しており、かつ1または複数の活性剤の送達を含む薬物含有量について予測できなかった程の向上した能力を提供する。
【0067】
ジケトピペラジン微粒子の異なる製造方法をもって、粒子の均質性での改善された一貫性を得ることができるということが分かった。組成物を製造するための本開示の方法、および本開示の微結晶性ジケトピペラジン粒子を含む組成物は、有益な物理的および形態学的な空気力学的特性を有する肺吸入のための乾燥粉末を提供する。
【0068】
活性剤の選択および組み込み
【0069】
FDKPを含む例示的な実施の形態では、少なくともここに記載する微結晶性粒子が上記の異性体含有量を保持する限り、肺への送達および/または薬物吸収のために有益な他の追加の特徴を採用することができる。“Method for Drug Delivery to the Pulmonary System”との題の米国特許第6428771号明細書には、肺へのDKP粒子送達について記載されており、当該開示は同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。“Purification and Stabilization of Peptide and Protein Pharmaceutical Agents”との題の米国特許第6444226号明細書には、微粒子表面上への薬物吸着のための有益な方法について記載されており、当該開示も同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。“Method of Drug Formulation based on Increasing the Affinity of Crystalline Microparticle Surfaces for Active Agents”との題の米国特許第7799344号明細書において記載されているように、微粒子表面の特性は所望する特徴を達成するように操作することができ、当該開示は同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。“Method of Drug Formation based on Increasing the Affinity of Active Agents for Crystalline Microparticle Surfaces”との題の米国特許第7803404号明細書には、微粒子上への活性剤の吸着を促進させるための方法が記載されている。米国特許第7803404号明細書も、同様のものに関するその教示について参照によりここに組み込まれる。これらの教示は、例えば噴霧乾燥前の、懸濁液中の微結晶への活性剤の吸着に適用することができる。
【0070】
ここに記載する微結晶性粒子は1または複数の活性剤を含むことができる。ここで使用される“活性剤”は、“薬物”と交換可能に使用され、小分子医薬品、生物製剤および生物活性剤を含む医薬物質を示す。活性剤は、天然由来、組み換えまたは合成起源のものでもよく、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、有機高分子、合成有機化合物、多糖類および他の糖類、脂肪酸、脂質、ならびに、抗体およびそれらの断片を含む。これには、限定されないが、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体、F(ab)、F(ab)2、単独もしくは他のポリペプチドと融合した一本鎖抗体、または、癌抗原に対する治療もしくは診断のモノクローナル抗体が含まれる。活性剤は、血管作用剤、オピオイドアゴニストおよびアンタゴニストを含む神経活性剤、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節剤、細胞毒性剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗原、感染因子、炎症仲介物質、ホルモン、細胞表面受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、ならびに、細胞表面抗原等の、様々な生物学的活性および種類に分類することができる。より具体的には、活性剤は、限定されないが、サイトカイン、リポカイン、エンケファリン、アルキン、シクロスポリン、抗-IL-8抗体、ABX-IL-8を含むIL-8アンタゴニスト、PG-I2を含むプロスタグランジン、LY29311、BIIL284およびCP105696を含むLTB受容体ブロッカー、スマトリプタンおよびパルミトレイン酸塩等のトリプタン、インスリンおよびその類似体、成長ホルモンおよびその類似体、副甲状腺ホルモン(PTH)およびその類似体、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)、グレリン、オベスタチン、エンテロスタチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、アミリン、アミリン類似体、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、クロピドグレル、PPACK(D-フェニルアラニル-L-プロリル-L-アルギニンクロロメチルケトン)、オキシントモジュリン(OXM)、ペプチドYY(3-36)(PYY)、アディポネクチン、コレシストキニン(CCK)、セクレチン、ガストリン、グルカゴン、モチリン、ソマトスタチン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、IGF-1、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インテグリンベータ-4前駆体(ITB4)受容体アンタゴニスト、鎮痛薬、ノシセプチン、ノシスタチン、オルファニンFQ2、カルシトニン、CGRP、アンジオテンシン、サブスタンスP、ニューロキニンA、膵臓ポリペプチド、ニューロペプチドY、デルタ睡眠誘導ペプチド、血管作用性腸ペプチド、ならびに、当該活性剤の類似体を含むことができる。
【0071】
FDKPまたはFDKP二ナトリウム塩から形成される微結晶性粒子で送達される薬物含有量は、典型的に、0.01%(w/w)よりも大きくすることができる。1つの実施の形態では、微結晶性粒子で送達される薬物含有量を、約0.01%(w/w)から約75%(w/w)、約1%(w/w)から約50%(w/w)、約10%(w/w)から約30%(w/w)または約10%(w/w)から約20%(w/w)とすることができる。1つの実施の形態では、例えば薬物がインスリンである場合、当該微粒子は、典型的に、約10%から45%(w/w)または約10%から約20%(w/w)のインスリンを含む。特定の実施の形態では、粒子の薬物含有量は、送達される薬物の形態およびサイズに応じて変えることができる。活性剤としてGLP-1が使用される実施の形態では、GLP-1の含有量は、粉末含有量の40%(w/w)までとすることができる。
【0072】
実施の形態では、2以上の活性剤を含む組成物は、例えば乾燥粉末を形成する前の微結晶に活性剤を結合させることによって、吸着による本開示の方法を使用して製造することができる。
【0073】
実施の形態では、2以上の活性剤を含む組成物は、微結晶に活性剤を最初に吸着させることなく、例えば材料を噴霧乾燥することによって、微結晶の間および中において活性剤を捕捉することによる本開示の方法を使用して製造することができる。
【0074】
このような組成物の製造方法は、2以上の活性剤を含む微結晶性ジケトピペラジン粒子を製造する工程を含み得る。それぞれの活性剤/成分は別個の溶液中において処理され、ジケトピペラジン粒子の別個の懸濁液に添加され、その後、活性剤を含む2以上の別個の懸濁液は、粒子を分散して噴霧乾燥する前に、配合される。
【0075】
特定の実施の形態では、微結晶は1または複数の活性剤を含む溶液と混合され得る。
【0076】
特定の実施の形態では、微結晶は、溶液の条件を微結晶表面上への活性剤の吸着を促進するように変化させて、1または複数の活性剤を含む溶液と混合され得る。
【0077】
複数の活性剤のそれぞれは、微結晶の別個のアリコートまたは種へ吸着し得る。アリコート吸着微結晶は、その後一緒に混合され、噴霧乾燥され得る。代替では、微結晶上への活性剤の吸着に使用される条件を変更することなく乾燥粉末における活性剤の全体の含有量を調整するように、アリコートに活性剤を全く含有させないことができる。
【0078】
代替の実施の形態では、単一の活性剤を含有する1または複数の独立した溶液を、粒子を再形成するために分散および噴霧乾燥する前に、ジケトピペラジン粒子を含む懸濁液と組み合わせることができる。得られる乾燥粉末組成物は、2以上の活性成分を含む。この実施の形態では、それぞれの成分の量は、治療される患者集団の必要に応じて組成物中において制御され得る。
【0079】
前述の開示から明らかなように、ここに記載する実施の形態の微粒子は、多くの異なる形態を取ることができ、多くの異なる薬物または活性剤を組み込むことができる。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は、ここに記載する微結晶性ジケトピペラジン粒子の実施の形態を実証するために含まれているものである。以下の実施例において開示される技術は、本開示の実践において十分に機能する本発明者らにより開発された技術を示しており、従って、その実践のために好ましい様式を構成するように考え得ることは、当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、開示されている具体的な実施の形態における多くの変形が可能であり、本発明の範囲から逸脱することなく、同様または類似した結果をなお得ることができることを理解すべきである。
【0081】
実施例1
標準的なFDKP微粒子の製造
【0082】
従来の製造方法を使用して比較のためのFDKP微粒子を製造した。これは、米国特許第7799344号明細書、同第7803404号明細書および同第8227409号明細書において記載されているような標準的な粒子であり、これらの開示は関連する主題の教示について参照によりここに組み込まれる。要約すると、典型的なFDKP粒子の製剤方法では、それぞれ0.05%(w/w)ポリソルベート80(PS80)を含有するFDKPおよび酢酸の供給溶液を、高剪断ミキサー内で組み合わせる。以下の表1は、FDKPおよびインスリン原液についての構成要素を示している。
【0083】
【0084】
【0085】
濃縮されたインスリン原液は、1部のインスリンと9部の約2%wt酢酸とで調製され得る。インスリンは、約11.4%wtの担持(負荷)を得るように、懸濁液へ重量測定しながら添加し得る。インスリン含有懸濁液は、少なくとも約15分間混合され、その後、約14wt%から約15wt%のアンモニア水を用いて約3.5の初期pHから約4.5のpHになるように滴定され得る。懸濁液は、例えば米国特許第8590320号明細書に記載されているように、低温造粒機を使用してペレットを形成するように液体窒素中で急速冷凍され得る。なお、この開示はその全体において参照によりここに組み込まれる。そして、バルクインスリン担持FDKP微粒子を生成するように凍結乾燥し、
図1Aおよび
図1Bにおいて見られるような開放構造を有するFDKP粒子へと自己集合する小さな結晶またはクラスターを形成する。
【0086】
形成された粒子の試料を、懸濁液中におけるこれらの粒子のサイズ分布を測定するために調査した。結果は
図2において示されている。
図2におけるデータは、粒子サイズ分布測定のグラフを示しており、確率密度関数(pdf、左y軸)および累積分布関数(cdf、右y軸)として対数スケールでプロットされている。データは、懸濁液中の粒子が、2μm上またはその近くを中央とする直径において約1.0μmから約10μmの範囲の単一のピークでのサイズ分布を有するということを示している。
【0087】
微結晶性FDKP粒子の製造
2.5%(w/w)FDKPを、アンモニア水(1.6%アンモニア)の塩基溶液中に溶解した。10.5%(w/w)酢酸原液を、高圧下で約2.0のpHにある高剪断ミキサー(Snolator)内へ添加し、粒子を製造した。形成された粒子を、脱イオン水中で洗浄した。ジケトピペラジン微粒子は、溶液中において界面活性剤を含まないと不安定であることが見いだされていたが、本実施例の粒子の製造においては、溶液または試薬のいずれにも界面活性剤は添加されていない。
【0088】
これらの実施例では、デュアルフィード高剪断ミキサーを使用することで、約16℃±約2℃において、約10.5wt%酢酸溶液および約2.5wt%FDKP溶液の等質量が、0.001-in2の開口部(オリフィス)を通って2000psiで供給され、均質化によって沈殿物を形成した。沈殿物は、ほぼ等しい質量および温度の脱イオン(DI)水リザーバ中に回収された。沈殿物を濃縮し、脱イオン水を用いた接線流濾過により洗浄した。懸濁液は、最終的に、例えばFDKPの初期質量に基づき約2%から3.5%等の、約5%未満の固形分に濃縮することができる。濃縮された懸濁液は、オーブン乾燥方法により、固形分含有量について分析することができる。活性成分、すなわちインスリンおよび/またはGLP-1を含有する試料については、上記のFDKPの懸濁液について、インスリン原液(2%酢酸中に溶解されたインスリン)を混合しながら懸濁液に添加し、その後懸濁液のpHを水酸化アンモニウムを用いてpH4.5±0.3へと滴定したものを使用した。同様に、2%酢酸中に溶解させたGLP-1原液を、FDKP-懸濁液に攪拌しながら重力測定しつつ添加した。そして、GLP-1-FDKP懸濁液を、pH4.5±0.1へと滴定した。インスリン-FDKP懸濁液およびGLP-1-FDKP懸濁液のそれぞれを、高効率サイクロンを装着したNiro SD-Micro(商標)噴霧乾燥器内に挿入されている外部混合2流体ノズルを使用して独立して分散させた。処理ガス(25kg/h)および噴霧流体(2.8kg/hr)として、窒素を使用した。試料は、表3において列挙されている噴霧乾燥における2つの処理条件を使用して処理された。
【0089】
【0090】
コントロールの試料では、インスリンまたはGLP-1充填工程を省き、ブランクFDKP微結晶性粒子が同様に製造された。
【0091】
図3は、供給溶液に界面活性剤を含まない上記の実験でのデータを示す。
図3は、典型的な粒子のバイモーダルサイズ分布を示す、FDKPの粒子懸濁液の粒子サイズ分布を示しているグラフである。ここでの粒子サイズは、直径において0.2μmを中央とする1つの粒子集団と直径において2.1μmを中央とする他の粒子集団とを有する、直径において約0.1μmから約10μmの範囲となっている。
【0092】
当該懸濁液の試料は、凍結乾燥され、噴霧乾燥はされなかった。
図4は、凍結乾燥された粒子の2500×倍率でのSEMである。
図4に見られるように、同様の懸濁液の凍結乾燥の際には、大きなフレーク状粒子が形成され、
図5に見られるように、水中で再懸濁した時には、はるかに大きな平均サイズとなった。
図5は、界面活性剤を使用せずに製造した粒子から、凍結乾燥された試料の懸濁液中の粒子サイズ分布を示す。この調査では、再懸濁した粒子の粒子サイズ直径が、約1μmから約90μm以上に増加していた。
【0093】
図6は、本開示の方法および上記のような噴霧乾燥を使用して形成された、微結晶性FDKP粒子での界面活性剤を含まない調製から得られた、粉末試料の走査型電子顕微鏡の典型的な2500×倍率のものを示す。
図6に見られるように、粒子は、微結晶のシェルを備える構造で、均質的に球状となっている。界面活性剤を含まない懸濁液を噴霧乾燥した時、
図6に示すように、約4μmの物理的直径を有する粒子が形成された。標準的なFDKP粒子とは異なり、これらの粒子は、
図7に示すように、水中に分散された時、直径において0.2μmの粒子へ解離した。従って、界面活性剤は粒子の一体性において役割を有しているということが実証される。
図8に実証されるように、0.01Mの塩酸中での粒子の分散は、粒子の解離を阻害した。溶解したFDKPが噴霧乾燥の間に析出し、一次粒子間の境界に沿って堆積し、セメントのように作用し得ることが考えられる。FDKP“セメント”は水中に溶解し、粒子は0.2μmの一次粒子に解離する。酸性中におけるFDKPのより低い溶解度は、溶解を防ぎ、粒子の一体性を維持する。
【0094】
実施例2
ジケトピペラジン塩を使用する代替の方法による微結晶性FDKP粒子の製造
【0095】
代替として、FDKPの微結晶を、界面活性剤を含有する供給溶液から形成することができる。FDKPの供給溶液は、試薬としてアンモニアを使用せずに、界面活性剤としてポリソルベート80(PS80)を含有する水中にFDKPの二ナトリウム塩(Na
2FDKP)を溶解することによって調製した。酢酸(10.5% w/w)およびPS80(0.5% w/w)を含有する供給溶液も調製した。デュアルフィードソノレーター内で2つの供給溶液の混合し、FDKPを結晶化させると、
図9に示されるバイモーダル粒子サイズ分布がもたらされた。
図9に示されるように、形成された約26%の一次結晶は約0.4μmの直径であり、約74%のより大きい粒子が約2.4μmの直径を有している。この懸濁液を、粒子を得るために処理および噴霧乾燥し、SEMで観察した。SEMの顕微鏡写真は2500×倍率および10000×倍率で取り、
図10Aおよび
図10Bにおいて示した。
図10Aおよび
図10Bは、遊離酸としてFDKPを使用して粒子が製造された実施例1の
図6において示されるものと比べると、その粒子は形状については類似した球状であるが、より小さくなっているということを示している。以下の表4は、FDKP二ナトリウム塩を使用して、凍結乾燥により製造された粉末および噴霧乾燥(SD)により製造された粉末について測定したいくつかの物理的特性を示す。
【0096】
【0097】
データは、噴霧乾燥粒子から製造された粉末は、凍結乾燥された粉末よりも、より高い呼吸性画分(62.8%対28%)、より高いカートリッジ排出(%CE、88.2%対83.8%)、ならびに、より大きいバルク密度(0.159g/mL)およびタップ密度(0.234g/mL)が見られたことを示している(凍結乾燥のバルク密度およびタップ密度は、それぞれ0.019g/mLおよび0.03g/mL)。
【0098】
実施例3
活性剤を含有する微結晶性FDKP粒子の製造
【0099】
活性医薬成分(活性剤)は、界面活性剤を含まないFDKP微結晶の懸濁液に活性剤の溶液を添加し、その後実施例1において記載したように溶媒を除去するために混合物を噴霧乾燥することにより、粒子へ組み込んだ。肺吸入のための粉末を製造するために、溶液中においてPS80を使用する標準的な自己集合の方法により、コントロール粒子(FDKP-インスリン)も製造した。この調査では、インスリンを希酢酸中に溶解させ、それを実施例1のように調製されたFDKPの界面活性剤を含まない微結晶の懸濁液に添加した(試料1および2、表5)。懸濁液を噴霧乾燥し、約10wt%のインスリンを含有する乾燥粉末を得た。粉末の試料について、高抵抗吸入器を通る送達および走査型電子顕微鏡撮影を含む、様々な分析を行った。その結果を表5に示す。当該粒子は、インスリン無しの粒子(実施例1)とほぼ同様のサイズであり、粒子の形態(
図11)は
図6のものと同様であった。さらに、試料1および試料2の両方が標準的な粒子よりも低密度の粒子であり、試料1の粒子は、コントロールよりも大きい比表面積(SSA)を有している。インスリンの分布が不明であるが、粒子表面上における明らかなインスリンの堆積は存在せず、インスリンが粒子内部に存在する、または粒子壁中へ組み込まれていることが示唆される。
【0100】
【0101】
しかし、表5に提示するデータは、界面活性剤を含まない粉末が同じインスリン含有量の標準的な粒子とは異なった挙動をとることを示している。例えば、同じインスリン含有量において、界面活性剤を含まない粉末は、標準的な粒子(85%)よりも効果的に吸入器から放出されていた(96.4%)。カートリッジ排出割合(%CE)における増加は、粉末の流動性が増加したことを示している。粉末を試験するために使用された吸入器はコントロール粉末のために設計されたものだったので、呼吸性画分(%RF/Fill)は、コントロール粒子について高かった。
【0102】
実施例4
ジケトピペラジン塩を使用する代替の方法による微結晶性FDKP粒子の製造
【0103】
この調査では、FDKPの二ナトリウム塩を使用して、実施例2に記載したようなFDKP塩粒子懸濁液を製造した。インスリン溶液を、実施例2のように調製したFDKPの界面活性剤を含まない微結晶の懸濁液に添加した。懸濁液を噴霧乾燥して、約10wt%インスリンを含有する乾燥粉末を得た。形成された粒子の形態を、
図12Aおよび
図12Bにおいて、それぞれ2500×倍率および10000×倍率のSEMで示す。
図12Aおよび
図12Bに見られるように、形態はインスリン無しの粒子と同様であり、
図13において示すように、2.6μmの粒子の平均径を有する球体形状の構造を示しており、約1.0μmから約10μmの範囲の直径の粒子によっても示される。
【0104】
実施例5
2以上の活性剤を含有する微結晶性FDKP粒子の製造
【0105】
別の実施の形態では、本開示の方法を使用して、2以上の活性剤を含む組成物を製造することができる。そのような組成物の製造方法は、それぞれの個々の活性剤について上述したような工程を含み、組成物へ組み込むそれぞれの活性剤の活性剤-FDKP懸濁液を形成する。そして、懸濁液を組み合わせて配合し、混合物を形成する。その配合された混合物を、上述したように分散および噴霧乾燥し、2以上の活性剤を含む微結晶性ジケトピペラジン粒子を製造する。1つの例示的な調査では、インスリンおよびGLP-1の組み合わせ粉末が製造された。
【0106】
実施例1のように調製したFDKP微結晶の懸濁液を、様々な活性剤(例えば、グレリン、低分子ヘパリン、オキシントモジュリン)の溶液と混合し噴霧乾燥して、実施例3のものと同様の特性の粒子を得た。
【0107】
実施例6
2つの活性剤を含有する微結晶性FDKP粒子の製造
【0108】
インスリンを有するFDKP微結晶の第1の懸濁液およびGLP-1を有する微結晶の第2の懸濁液を調製することによって、2つの活性剤(GLP-1およびインスリン)を有する組み合わせ粉末を製造した。2つの懸濁液をその後混合し、組み合わされた懸濁液を噴霧乾燥し、両方の活性剤を含有する乾燥粉末を得た。微結晶懸濁液は実施例1と同様に調製され、活性剤を添加した後、微結晶上への吸着を促進するために懸濁液をpH4.5に調整した。
図14は、噴霧乾燥された組み合わせ粉末(1)、ならびに、FDKP-インスリン(2)およびFDKP-GLP-1の個々の活性剤を有する微結晶懸濁液の粒子サイズ分布を示すデータのプロットである。
【0109】
図14に見られるように、組み合わせ粉末の粒子サイズ分布は2つの個々の懸濁液のそれの間の中間となっており、顕著に狭くなっていた。組み合わせ粉末は、約1μmから約10μmの直径を有する粒子を含んでいた。インスリンを含有する微結晶は、約0.5μmから約50μmの範囲の直径を有するGLP-1含有微結晶よりも小さかった(約0.25μmから約10μm)。噴霧乾燥における噴霧工程は、おそらく、懸濁液中の微結晶の元のクラスターを解離し、懸濁液中の条件および噴霧乾燥条件に依存するサイズ分布を持つ粒子を再形成するのだろう。
【0110】
実施例7
結晶性ジケトピペラジン粒子を含む乾燥粉末組成物の対象への投与
【0111】
FDKPの二ナトリウム塩(Na2FDKP)で製造された微結晶性ジケトピペラジン微粒子を含む乾燥粉末製剤を、組成物1ミリグラムにつき9Uのインスリンを含有するように、上記の実施例1のように作製した。カートリッジを含有する高抵抗吸入器(Dreamboat(商標)吸入器、MannKind Corporation)を、用量毎に1mgから10mgを含有するように調整し、糖尿病と診断された対象に投与するように調製した。インスリン用量を含有する吸入器は、治療される患者に提供され、患者は食事の開始時、食事の間または食事の後に、単回吸入においてインスリン用量を吸入する。
【0112】
別段の記載がない限り、本明細書および特許請求の範囲に使用されている、成分の量を表わす全ての数、分子量等の特性、反応条件等は、“約”という用語によって全ての場合に修正されるものとして理解されるべきである。従って、反対の記載がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本発明によって得ることが求められている所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、そして、特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定しようとするものとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告されている有効数字の数を考慮し、通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示している数の範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載されている数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、任意の数値は、各試験測定で認められる標準偏差によって必然的に生じるある種の誤差を本質的に含む。
【0113】
本発明を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)“1つの(a)”、“1つの(an)”、“当該(the)”という用語および類似の指示対象は、別段の記載がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むように解釈されるものとする。ここでの値の範囲の指定は、単に、その範囲に含まれる別個の値のそれぞれについて個々に述べるのを省略する方法としての役割を果たすためのものである。別段の記載がない限り、別個の値はそれぞれ、個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれている。ここに記載されている全ての方法は、別段の記載がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順番で実施することができる。ここに提供されている任意および全ての例または例示的な言葉(例えば、“等”)の使用は、単に本発明をより明確にするためのものであって、本発明の範囲さもなければ特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいずれの言語も、本発明の実践に不可欠である任意の特許請求の範囲にない要素を示していると解釈されるべきでない。
【0114】
特許請求の範囲における“または(or)”という用語の使用は、代替物のみを示すと明示的に記されていない限り、または代替物が相互排他的でない限り、本開示は代替物のみと“および/または(and/or)”とを参照する定義をサポートしているが、“および/または”を意味するものとして使用されている。
【0115】
ここに開示されている本発明の代替の要素または実施の形態の群は、限定して解釈されるべきではない。各群の構成要素は、個々に、または群の他の構成要素もしくはここに記載されている他の要素と任意に組み合わせて、参照および特許請求の範囲とすることができる。群の1または複数の構成要素は、便宜上および/または特許性のために、群に含めるかそこから削除する場合があると予想される。任意のそのような包含または削除が生じた場合、本明細書は添付の特許請求の範囲に使用されている全てのマーカッシュ群の記載を満たすように修正された群を含むとみなされる。
【0116】
本発明の好ましい実施の形態は、本発明を実施するために本発明者らによって知られている最良の形態を含んでここに記載されている。当然ながら、これらの好ましい実施の形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかとなるであろう。本発明者は当業者が適宜そのような変形を用いることを予期しており、本発明者らは本発明がここに具体的に記載されているものとは別の方法で実施されることを意図している。従って、この発明は、準拠法によって認められるものとして、添付されている特許請求の範囲に記載されている主題の全ての修正および均等物を含む。さらに、その全ての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせは、別段の記載がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0117】
ここに記載される具体的な実施の形態は、~からなる(consisting of)、または、本質的に~からなる(consisting essentially of)、という言葉を用いて特許請求の範囲においてさらに限定してもよい。出願または補正による追加にかかわらず、“~からなる(consisting of)”という移行用語は、特許請求の範囲に使用されている場合、特許請求の範囲に特定されていない任意の要素、工程または成分を除外する。“本質的に~からなる(consisting essentially of)”という移行用語は、請求項の範囲を特定されている材料または工程、および、基本的かつ新規な特性(1つまたは2つ以上)に物質的に影響を与えないものに限定する。そのような特許請求の範囲である本発明の実施の形態は、ここに本質的または明示的に記載されており、実施可能である。
【0118】
さらに、本明細書全体にわたり、特許および印刷刊行物について多数の参照がなされている。上記で引用されている参考文献および印刷刊行物のそれぞれは、個々に、参照により全てが本明細書に組み込まれる。
【0119】
さらに、ここに開示されている本発明の実施の形態は、本発明の原理の例示であることを理解されたい。使用され得る他の変形も、本発明の範囲に含まれる。従って、限定ではなく例として、本発明の代替の構成をここでの教示に従って利用してもよい。従って、本発明は明確に示されて説明されているものに限定されない。
【0120】
(付記)
(付記1)
実質的に中空の球状構造を有し、かつ自己集合しないジケトピペラジンの微結晶を含むシェルを備える、実質的に均一なサイズの複数の微結晶性粒子を含み、前記粒子は5μm未満の体積平均幾何学的直径を有する、結晶性ジケトピペラジン組成物。
【0121】
(付記2)
前記微結晶性粒子の92%までが、5.8μm以下の体積平均幾何学的直径を有する、付記1に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物。
【0122】
(付記3)
前記微結晶性粒子は、1または複数の活性成分をさらに含む、付記1に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物。
【0123】
(付記4)
前記1または複数の活性成分は、ペプチド、タンパク質、核酸分子または有機小分子である、付記3に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物。
【0124】
(付記5)
前記ペプチドは、内分泌ホルモンである、付記4に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物。
【0125】
(付記6)
前記内分泌ホルモンは、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、レプチンまたはこれらの内分泌ホルモンの類似体である、付記5に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物。
【0126】
(付記7)
前記ジケトピペラジンは、式2,5-ジケト-3,6-ビス(N-X-4-アミノブチル)ピペラジン(式中、Xは、フマリル、スクシニル、マレイル、マロニルおよびグルタリルからなる群から選択される)、または、その塩である、付記1に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物。
【0127】
(付記8)
前記ジケトピペラジンは、(ビス-3,6-(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジンである、付記7に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物。
【0128】
(付記9)
a)約0.05μmから約10μmの範囲の粒子サイズにおけるバイモーダル分布を有する懸濁液中にジケトピペラジン粒子を形成する工程、
b)空気またはガス流下において噴霧乾燥機を使用して前記懸濁液を噴霧する工程、および、
c)噴霧乾燥により粒子を再形成して、実質的に中空の球体を有する微結晶性ジケトピペラジン粒子を含む乾燥粉末にする工程、
を含む、乾燥粉末で肺投与するのに適切な微結晶性ジケトピペラジン粒子の製造方法。
【0129】
(付記10)
粒子サイズにおけるバイモーダル分布の粒子の第1のピークは約0.2μmから約2.4μmの平均値を有し、粒子の第2のピークは約2.1μmから約2.4μmの平均サイズを有する、付記9に記載の方法。
【0130】
(付記11)
前記ジケトピペラジンは、式2,5-ジケト-3,6-ビス(N-X-4-アミノブチル)ピペラジン(式中、Xは、フマリル、スクシニル、マレイル、マロニルおよびグルタリルからなる群から選択される)である、付記9に記載の方法。
【0131】
(付記12)
前記ジケトピペラジンは、(ビス-3,6-(N-フマリル-4-アミノブチル)-2,5-ジケトピペラジンである、付記11に記載の方法。
【0132】
(付記13)
工程a)において、前記懸濁液に1または複数の活性剤を含む溶液を添加する工程をさらに含む、付記9に記載の方法。
【0133】
(付記14)
前記溶液または前記懸濁液に界面活性剤を添加する工程をさらに含む、付記9に記載の方法。
【0134】
(付記15)
前記界面活性剤は、ポリソルベート80である、付記14に記載の方法。
【0135】
(付記16)
前記1または複数の活性剤は、ペプチド、タンパク質、核酸分子または有機小分子である、付記13に記載の方法。
【0136】
(付記17)
前記ペプチドは、内分泌ホルモンである、付記16に記載の方法。
【0137】
(付記18)
前記内分泌ホルモンは、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、レプチンまたはこれらの内分泌ホルモンの類似体である、付記17に記載の方法。
【0138】
(付記19)
前記ジケトピペラジンは、ジケトピペラジンの二ナトリウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、カルシウム塩またはカリウム塩である、付記9または11に記載の方法。
【0139】
(付記20)
約0.2%(w/w)から約6%(w/w)の量の界面活性剤を含む水中に、ジケトピペラジン塩を溶解して、第1の溶液を形成する工程、
前記第1の溶液を、約8%(w/w)から約12%(w/w)の酢酸を含む第2の溶液と、高圧下で約6.0未満のpHにある高剪断ミキサー内で、同時に混ぜ合わせる工程、
前記第1の溶液および前記第2の溶液を均質化(ホモジナイズ)して、懸濁液中にジケトピペラジンの微結晶を含む懸濁液を形成する工程であって、前記懸濁液が直径において約0.05μmから約10μmの範囲の粒子サイズを有する微結晶のバイモーダル分布を有する、工程、
空気またはガス流下において前記懸濁液を噴霧する工程、および、
噴霧乾燥により粒子を再形成して、実質的に中空の球体を有する微結晶性粒子を含む乾燥粉末にする工程、
を含む、乾燥粉末組成物の製造方法。
【0140】
(付記21)
前記懸濁液の噴霧は、窒素ガス下における、高効率サイクロン分離器を装着した噴霧乾燥器内に挿入されている外部混合2流体ノズルを使用することを含む、付記19に記載の方法。
【0141】
(付記22)
付記4に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物を、治療を必要とする対象に投与することを含む、疾患または障害の治療方法。
【0142】
(付記23)
付記6に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む、高血糖症および/または糖尿病の治療方法。
【0143】
(付記24)
付記1に記載の結晶性ジケトピペラジン組成物を含む、乾燥粉末。
【0144】
(付記25)
1または複数の活性剤をさらに含み、前記1または複数の活性剤は、ペプチド、タンパク質、核酸分子、有機小分子またはそれらの類似体である、付記24に記載の乾燥粉末。