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特許7071492整列した貫通孔を有するワークピースの取り付けファスナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】整列した貫通孔を有するワークピースの取り付けファスナ
(51)【国際特許分類】
   F16B 33/06 20060101AFI20220511BHJP
   C23C 4/129 20160101ALI20220511BHJP
   C23C 4/131 20160101ALI20220511BHJP
   C23C 4/134 20160101ALI20220511BHJP
   C23C 4/126 20160101ALI20220511BHJP
【FI】
F16B33/06 A
F16B33/06 Z
C23C4/129
C23C4/131
C23C4/134
C23C4/126
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020512084
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018061590
(87)【国際公開番号】W WO2018202887
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】17169432.6
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519395189
【氏名又は名称】フェアチャイルド ファスナーズ ヨーロッパ - ファウエスデー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】レージンク、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ビュッセ、メインデルト
(72)【発明者】
【氏名】ドーマイヤー、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゼボ、シード
(72)【発明者】
【氏名】ティンペ、トルステン
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01441279(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 33/06
C23C 4/129
C23C 4/131
C23C 4/134
C23C 4/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整列した貫通孔を有する、ワークピース(50a、50b)を互いに取り付けるためのファスナ(10)、特に高強度ファスナであって、前記ファスナ(10)は、
シャンク部(11)と前記シャンク部(11)の一端に設けられたヘッド部(13)と
を備え、
前記シャンク部(11)の直径は、前記ファスナ(10)が前記整列した孔に小さな公差で取り付け可能であるように選択され、
前記ファスナ(10)はオーバサイズ構造(20)を更に備え、
このオーバサイズ構造(20)は、前記シャンク部(11)の少なくとも一部を拡大して、オーバサイズ構造(20)のないファスナ(10)に要求されるよりも大きな直径を持つ整列した孔(60a、60b)に前記ファスナ(10)を装着可能とするために、前記シャンク部(11)の少なくとも一部に強固に接着され、
前記オーバサイズ構造(20)は、前記シャンク部(11)の外面にコーティング、溶射又は他の方法で被覆された材料から成ることを特徴とする、ファスナ。
【請求項2】
前記オーバサイズ構造(20)の厚さは、前記オーバサイズ構造(20)なしの前記ファスナ(10)に必要な前記整列した孔を再穿孔又は穿孔除去した結果による、前記整列した孔の増大した直径を補償するように選択される、請求項1に記載のファスナ(10)。
【請求項3】
前記オーバサイズ構造(20)は、前記シャンク部(11)の材料に化学的に適合する材料でできているか、前記オーバサイズ構造(20)は、ブリネル硬度が少なくとも60でかつ降伏強度が20,000p.s.i(=1379バール)超であるかの、少なくともいずれかである、請求項1又は請求項2に記載のファスナ(10)。
【請求項4】
前記オーバサイズ構造(20)は、前記シャンク部(11)の材料とは異なる材料でできている、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項5】
前記オーバサイズ構造(20)の材料は、コーティング堆積法によって、前記シャンク部(11)の外面の少なくともいくつかの領域に被覆される、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項6】
前記オーバサイズ構造(20)の材料は、ろう付けプロセス、冷ガスダイナミック溶射プロセス、フレーム溶射プロセス、アーク溶射プロセス、プラズマ溶射プロセス、HVOF溶射プロセス、爆発溶射プロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、化学蒸着プロセス、気相コーティングプロセス及び/又は拡散浸透処理プロセスによって、前記シャンク部(11)の外面の少なくともいくつかの領域に被覆される、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項7】
前記オーバサイズ構造(20)の材料は、前記シャンク部(11)の外面の少なくともいくつかの領域に、それ以前に存在した表面層をこれらの領域から除去するための物理的又は化学的分離プロセスを施した後に、これらの前記シャンク部(11)の外面の少なくともいくつかの領域に被覆される、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項8】
前記オーバサイズ構造(20)は、前記シャンク部(11)の基本直径に対応する内径と、前記シャンク部(11)の前記基本直径より少なくとも0.1mm大きい外径を有するスリーブ形構造である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項9】
前記シャンク部(11)は、n×1/64インチ(=n×0.396875mm)、ここでnは1又は1の整数倍、である基本直径を有する、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項10】
前記シャンク部(11)は、1/32インチ(=0.79mm)又は1/32インチ(=0.79mm)の倍数、特に1/16インチ(=1.59mm)の基本直径を有するか、又は前記シャンク部(11)は、約0.5mm又は0.5mmの倍数の基本直径を有する、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項11】
前記ファスナ(10)は、前記シャンク部(11)の前記ヘッド部(13)とは反対側の端部に設けられたねじ部(12)を有するか、又は前記ファスナ(10)は、一端が前記ヘッド部(13)で終端し、かつ他端においてロック溝付きの複数のねじを有するねじ部12を含む、細長いシャンク部を有するピン部材を備える、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項12】
前記オーバサイズ構造(20)は、前記ねじ部(12)には被覆されていない、請求項11に記載のファスナ(10)。
【請求項13】
前記オーバサイズ構造(20)は、前記ヘッド部の少なくとも一部を拡大し、前記ファスナ(10)の前記ヘッド部に接触して嵌合し、また前記ファスナ(10)の前記ヘッド部に強固に接着されるフレア部が設けられる、請求項11又は請求項12に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記オーバサイズ構造(20)の外面には、少なくとも部分的に溝が形成されている、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載のファスナ(10)。
【請求項15】
ワークピース(50a、50b)の孔に設置された元のファスナを交換するための修理アセンブリであって、前記修理アセンブリは、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載のファスナ(10)を備え、
前記ファスナ(10)の前記オーバサイズ構造(20)の半径方向の厚さは、前記元のファスナに必要な前記孔の再穿孔又は穿孔除去の結果による、前記元のファスナに必要とされるよりも大きな直径を有する孔を補償するように選択される、修理アセンブリ。
【請求項16】
前記元のファスナは、n×1/64インチ(=n×0.396875mm)、ここでnは1又は1の整数倍、である基本直径を有する標準ファスナであるか、又は、前記元のファスナは、約0.5mm又は0.5mmの倍数の基本直径を有する標準ファスナである、請求項15に記載の修理アセンブリ。
【請求項17】
オーバサイズ構造(20)を有するファスナ(10)であって、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載のファスナを製造する方法であって、
シャンク部(11)と、前記シャンク部(11)の一端のヘッド部(13)とを有する標準ファスナ(F)を提供するステップと、
オーバサイズ構造(20)を形成するなどして、前記シャンク部(11)の少なくとも外面に追加的な材料を堆積させて前記シャンク部(11)の直径を少なくとも部分的に増大させるステップと、
少なくとも前記オーバサイズ構造(20)を所望により補足的に処理するステップと、
を含み、
前記追加的な材料は、前記追加的な材料が前記シャンク部(11)に強固に接着され、前記シャンク部(11)の前記外面に被覆される、方法。
【請求項18】
記追加的な材料は、ろう付けプロセス、冷ガスダイナミック溶射プロセス、フレーム溶射プロセス、アーク溶射プロセス、プラズマ溶射プロセス、HVOF溶射プロセス、爆発溶射プロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、化学蒸着プロセス、気相コーティングプロセス及び/又は拡散浸透処理プロセスの少なくとも1つによって、前記シャンク部(11)に被覆される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ワークピース(50a、50b)の孔に装着された元のファスナを交換する方法であって、
前記元のファスナを取り外すステップと、
オーバサイズ構造(20)を有する新規のファスナ(10)であって、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載のファスナのための適切な寸法の前記孔を加工するステップと、
前記加工された孔に、前記オーバサイズ構造(20)を有する前記新規のファスナ(10)を装着するステップと、
を含み、
前記新規のファスナの前記オーバサイズ構造(20)は、前記元のファスナを取り外すプロセスによって影響された前記孔の前記直径のいかなる増大をも補償するように選択される、方法。
【請求項20】
前記元のファスナは、前記元のファスナを穿孔除去することにより取り除かれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
標準ファスナは、n×1/64インチ(=n×0.396875mm)、ここでnは1又は1の整数倍、である基本直径を有するか、又は前記標準ファスナは、約0.5mm又は0.5mmの倍数の基本直径を有する、請求項19又は請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にファスナに関し、具体的には整列した貫通孔を有するワークピースを互いに取り付けるための高強度ファスナ、より具体的には、シャンク部とそのシャンク部の一端に設けられたヘッド部とを備えるファスナに関する。ファスナはさらに、シャンク部及び/又はヘッド部の少なくとも一部に強固に接着されたオーバサイズ構造を備える。オーバサイズ構造は、ファスナのシャンク部の有効直径を増大させ、かつファスナがワークピースの貫通孔を通して所定位置にあるときにワークピースに支持接触する外径を有する。
【0002】
本発明は、必ずしもこれに限るものではないが、航空宇宙用構造物を主たる目標としている。そのような構造物においては、ファスナへのせん断方向荷重が特に一般的であって、公差の小さい孔に精密なファスナが使用されることが最も多い。本発明は、特に航空宇宙用構造物におけるファスナ装着に関する問題の解決を意図する。
【背景技術】
【0003】
一般に、ビルディングや橋などの静止体か、陸上、海上、空又は宇宙で動作する移動物体などの可動体かを問わず、複雑な人工構造物は通常互いに取り付けられた多くの構成部品から作製されて複雑な構造を形成する。普通、ジョイントとして知られる取付け部の設計には、工学設計及び解析の特別の知識と技術が必要とされる。その業務の主要部分は、構造を相互に結合及び固定するためのファスナなどの、適切な構成部品を選択することである。
【0004】
ジョイント設計の主目的及び第1の目標は、構造体の1つの部品から別の部品への荷重移動を容易にすることである。結合された構造体は、その本来の機能を果たすときに受け得る外部荷重及び内部荷重に耐えられなければならない。荷重は、持続性の静過重、又は可変の動荷重であり得る。機能する環境は、本質的に腐食性であって、ファスナと構造材料の材料特性及び完全性に影響する可能性がある。動作環境もまた温度変化を受け、ジョイント及びファスナの荷重支持特性に影響し得る。これらの全ての因子は、ジョイント設計及びファスナ選択において考慮されなければならない。
【0005】
建築構造体及び移動物体への人類の最初の試み以来、多種のファスナが考案、開発され、成功裡に使用されてきた。しかしながら、絶えず進化する文明においては、明らかに継続的な改善が常に求められる。ほとんどのジョイント設計における1つの一般的な特徴は、通常ワークピースと呼ばれるジョイント部品に孔又は開口を形成して、一致する孔に適切なファスナを配置することで部品を相互に挿入及び取り付けることである。これらのファスナは、多くの異なる名前や用語で参照されるが、建築物、道具、車両及び現在の文明及び物理的生活の形態を構成するその他の重要な構造体を構築する上で、主要な貢献者である。
【0006】
特に航空宇宙産業においては、ねじ付きのファスナを必要なトルクで固定し、かつ使用中に確実に固定され続けるようにするために様々な技術が用いられてきた。一例はブラインドファスナであり、これは普通2つ以上のワークピースにおいて、ワークピースの1つの下側(ブラインド側)の面に他の方法ではアクセス不可能な場合に、それらを相互固定するために使用される。そのようなファスナは、航空機及び宇宙船の組み立てに広く適用されている。これらの環境において遭遇する振動及び音響疲労のために、耐久力及び信頼性を有するファスナの形成が必要である。
【0007】
ブラインドファスナは一般的に、ねじ、スリーブ、ナット及び駆動ナットから成る。一般的に、ねじは外側のねじ面を有し、それぞれに内面にねじ溝を持つスリーブ、ナット、及び駆動ナットをその上に配置することができる。ブラインドファスナは、互いに固定しようとするワークピースの整列した開口に挿入されて、装着後にスリーブとナットがシートを互いにクランプする。
【0008】
一般的に、高負荷のかかる構造体において整列した貫通孔を有するワークピースを互いに取り付けるための高強度ファスナは、標準的なグレードを有する寸法で提供される。
【0009】
整列した孔の直径は、その整列した孔に装着されるべきファスナの少なくともその部分の直径よりも、少しだけ大きくなければならない。しかしながら、整列した孔が不注意かつ不適切に準備されて、孔の直径とファスナ部分の直径との差が大きすぎる場合には、標準的なグレードの寸法を有するファスナを、もはや小さい公差で装着することは不可能である。
【0010】
さらに実際に、これらの標準的なファスナの1つが、重要かつ高負荷構造のワークピースに、不注意かつ不適切に装着されたことが分かった場合には、これらのファスナをそこから取り除いて交換することが必要となる。
【0011】
このような条件下では、ファスナが交換されようとするとき、ワークピースを貫通する整列孔は、不適切に装着されたファスナ又は腐食により生じる損傷のために、一段大きい標準寸法に再穿孔されなければならない。このために、その前にそこに装着されたファスナよりも明らかに大きな、標準ファスナを使用することが必要となる。
【0012】
2つの標準寸法のファスナの中間にある、特別のオーバサイズファスナを使用してワークピースを互いに固定することも可能である。そのようなオーバサイズファスナはごく少量しか作製する必要がないので、航空宇宙産業のような非常に多数のファスナが利用されている場合には、製造、在庫、及びこれらのファスナが使用される作業領域への配布のコストは、極めて高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、要求があり次第、容易にオーバサイズに作製されるファスナを提供することである。本発明の別の目的は、そのようなオーバサイズファスナの対応する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ファスナに関しては、本発明の基礎をなす目的は、独立請求項1の主題によって解決され、方法に関しては、請求項17及び請求項19の主題によって解決される。本発明のファスナ及び本発明の方法の更なる展開は、個々の従属クレームで提供される。
【0015】
したがって、本発明は特にファスナに関し、特に整列した貫通孔を有するワークピースを相互に取り付けるための高強度ファスナに関する。このファスナは、シャンク部とオーバサイズ構造とを備え、このオーバサイズ構造がシャンク部の少なくとも一部に強固に接着される。
【0016】
ファスナのシャンク部は所定の基本直径を有してもよい。ただし、本開示のいくつかの態様によると、ファスナのシャンク部は、例えばテーパのついたシャンク部の場合のように、一定の直径を持たない。
【0017】
好ましくは、オーバサイズ構造は、負荷荷重をファスナのシャンク部からワークピースへ伝達するように適合された、剛性で比較的硬くて強い材料でできている。
【0018】
また、オーバサイズ構造の直径は、外径公差が±0.006μm(=±0.00025インチ)の程度の小さい公差であることが好ましい。
【0019】
別の必須の特徴は、オーバサイズ構造が、シート端部とファスナ端部との距離関係を大幅に縮小する大きさの孔を必要としないことである。したがって、ファスナの基本直径に例えば1/64インチのオーバサイズで、構造の完全性を損なうことなく修理を遂行することができる。別の考慮すべきことは、孔同士の間の材料が大幅には減らないことである。これらの要件は、高負荷構造の締結を成功させるためにすべて必要不可欠である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ファスナのオーバサイズ構造は、ファスナの少なくともシャンク部の周りに設けられたスリーブ形構造を備える。オーバサイズ構造は、好ましくはワークピース同士を貫通して延在するファスナの少なくともシャンク部の周りに設けられることが好ましい。
【0021】
オーバサイズ構造は、ファスナのシャンク部の外面に強固に接着され、ファスナのシャンク部及び/又はヘッド部を特定の(所定の)程度にオーバサイズするように選択された厚さを有する。オーバサイズの程度、すなわちオーバサイズ構造の厚さは、ワークピースの整列孔の再穿孔された直径に依存して選択され、ファスナがワークピースを支持接触可能であって、接合部の負荷担持能力が、特にせん断力が低減しないように選択可能である。
【0022】
好ましくは(ただしこれに限らないが)、オーバサイズ構造は、ファスナの少なくともシャンク部を形成する材料と同一材料で作られる。
【0023】
本発明の一態様によれば、オーバサイズ構造は、シャンク部の外面に、コーティング、溶射又は他の方法で被覆された材料から成る。具体的には、オーバサイズ構造の材料は、可能な限り僅かしかシャンク部の構造完全性を損なわないように、シャンク部の外面の少なくともいくつかの領域に被覆される。この目的のために、オーバサイズ構造の材料は、例えば、ろう付けプロセス、コーティング堆積法、冷ガスダイナミック溶射プロセス、フレーム溶射プロセス、アーク溶射プロセス、プラズマ溶射プロセス、HVOF溶射プロセス、爆発溶射プロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、化学蒸着プロセス、気相コーティングプロセス及び/又は拡散浸透処理プロセスによって、シャンク部の外面に被覆される。
【0024】
本明細書に開示のいくつかの実施形態では、ファスナのシャンク部は、シャンク部の外面の少なくともいくつかの領域にオーバサイズ構造を被覆する前に、表面層、例えば(もしあれば)コーティングをシャンク部から除去するために、物理的又は化学的分離プロセスが施される。
【0025】
シャンク部の外面の少なくともいくつかの領域にオーバサイズ構造の材料が被覆された後、ファスナは最終外径に正確に嵌まるための再加工が施されてもよい。例えば、研削、研磨、及び/又はサンディングプロセスが、オーバサイズ構造で被覆されたファスナに施されてもよい。それに加えて、又はそれに代わって、ファスナはその後焼結プロセスで収縮されてもよい。また、必要又は所望があれば、ファスナはオーバサイズ構造とともに再被覆されてもよい。
【0026】
これらの全ての堆積方法又はプロセスは、オーバサイズ構造の形成中に、ファスナのシャンク部の構造完全性を、あるとしても最小にしか損なわないことを特徴とする。したがって、認定ファスナ、すなわち例えばASTMのファスナ規格などの特定のファスナ規格を満たすファスナのシャンク部にオーバサイズ構造を接着するとき、オーバサイズファスナはいまだにファスナ規格を満たしており、オーバサイズファスナの材料、寸法、機械的及び金属学的特性を新たに特定、テスト及び評価することは、実際的な意味を持たなくなる。
【0027】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付の図面に関連して記述される以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のファスナの例示的実施形態の側面図である。
図2図1に示す本発明の実施形態の、装着された状態の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
複数のワークピースを互いに固定し、そのようなワークピース50a、50bの整列した孔60a、60bに配置されるように適合されたファスナ10が開示される。例示的実施形態では、ファスナ10はシャンク部11を画定する、ピン又はボルト部材を含むことができる。
【0030】
図には示されていないが、ファスナ10は更にナットを含むことができる。他の実施形態では、ファスナ10は、ナットの代わりに、カラー、特にスエージカラーを含んでもよい。さらに、ファスナ10はまたスリーブ部材(これも図には示されていない)を備えてもよい。
【0031】
例示的実施形態において、ワークピース50a、50bは複数の材料で形成可能であり、材料としては、複合材料、金属材料又は複合/金属構造、あるいはこれらの任意の組み合わせを含み得る。具体的な実施形態では、ワークピース50a、50bは、チタン、アルミニウム、グラファイト複合物、又はこれらの任意の組み合わせで構築されてもよい。
【0032】
具体的に図1を参照すると、本発明の例示的実施形態は従来型の標準ファスナFで構成され、ここではヘッド部13、シャンク部11及びワークピースを互いに固定するためのねじ付きの端部12を有するピンとして示されている。ワークピース50a、50bは、そこを貫通する、所定の直径を有する整列した孔60a、60bを有する。孔60a、60bは、標準ファスナFのシャンク部11に対して通常作製されるものより少し寸法が大きくなっている。
【0033】
例えば、孔60a、60bのオーバサイズ量は標準の寸法差の1/2であってもよい。小径のファスナの場合、標準的な寸法差は例えば1/32インチ単位であり、大径のファスナの場合、標準的な寸法差は例えば1/16インチ単位であってもよい。他の実施形態では、標準的な寸法差は、例えば0.5mm単位であってもよい。ただし、これらの値は明らかに限定的なものではなく、他の値を選択することが可能である。
【0034】
別の実施例では、標準ファスナFのシャンク部11の直径が9.52mmであり、その一方でワークピース50a、50bが、直径約9.90mmの整列した貫通孔60a、60bを有してもよい。
【0035】
さらに別の実施例では、標準ファスナFのシャンク部11が、約15.850mm、19.050mm、22.220mm又は25.375mmの直径を有し、その一方でワークピース50a、50bが、標準ファスナFのシャンク部11のそれぞれの直径よりも約0.396mm大きい直径を持つ、整列した貫通孔60a、60bを有してもよい。
【0036】
図1に示す標準ファスナFは、一定直径のシャンク部を有する、露出されたヘッドのタイプであるが、他のタイプのファスナを使用可能であることは理解されたい。
【0037】
本発明に利用される従来型の標準ファスナFのタイプ及び/又は寸法に拘わらず、標準ファスナFには、従来型の標準ファスナFのシャンク部11及び/又はヘッド部13の少なくとも一部に強固に接着され、かつ好ましくは従来型の標準ファスナFの少なくともシャンク部11全体に強固に接着された、オーバサイズ構造20が設けられる。本明細書に開示のオーバサイズ構造20は、標準ファスナFのシャンク部11の有効直径を拡大して、オーバサイズファスナ接合部を作る役目をする。
【0038】
本明細書に開示のいくつかの実施形態では、標準ファスナFのシャンク部11は、オーバサイズ構造20を被覆する前に、(機械加工された)シャンク部11の外面の少なくともいくつかの領域において、物理的又は化学的分離プロセスが施される。これに関しては、オーバサイズ構造20が被覆される前に、全てのコーティング、外面層又は堆積物が、シャンク部11から除去されてよい。
【0039】
シャンク部11の外面の少なくともいくつかの領域にオーバサイズ構造の材料が被覆された後、被覆されたオーバサイズ構造22を有するファスナは正確に嵌合する最終外形に再加工が施されてもよい。例えば、研削、研磨、及び/又はサンディング処理が、オーバサイズ構造を被覆されたファスナに施されてもよい。それに加えて、又はそれに代わって、ファスナはその後焼結プロセスで収縮されてもよい。また必要又は所望があれば、ファスナはオーバサイズ構造22とともに再被覆されてもよい。
【0040】
具体的には、オーバサイズ構造20は、シャンク部11の外面にコーティング、溶射又は他の方法で被覆された材料から成る。言い換えれば、オーバサイズ構造20の材料は具体的には、標準のファスナFのシャンク部11の外面の少なくともいくつかの領域に、シャンク部11の構造完全性を損なうことなく、あるいはシャンク部11の構造完全性に少なくとも最小の影響しか与えないで、コーティング堆積法によって被覆される。
【0041】
この目的のために、オーバサイズ構造20の材料は、例えば、ろう付けプロセス、コーティング堆積法、冷ガスダイナミック溶射プロセス、フレーム溶射プロセス、アーク溶射プロセス、プラズマ溶射プロセス、HVOF溶射プロセス、爆発溶射プロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、化学蒸着プロセス、気相コーティングプロセス及び/又は拡散浸透処理プロセスによって、シャンク部11及び/又はヘッド部13の外面に被覆されてもよい。
【0042】
好ましくは、オーバサイズ構造20の材料は、標準ファスナFのシャンク部11の材料と同一、又は少なくとも化学的に類似するように選択される。
【0043】
これらの全ての堆積方法又はプロセスは、オーバサイズ構造20の形成中に、標準ファスナFのシャンク部11の構造完全性を、あるとしても最小にしか損なわないことを特徴とする。
【0044】
さらに、オーバサイズ構造20の材料がワークピース50a、50bと化学的に適合する場合、ファスナとワークピース50a、50bの間の腐食性化学反応が防止される。
【0045】
航空宇宙産業における構造のように、特に高負荷がかかる構造においては、ワークピース50a、50bを貫通する隣接する孔60a、60b同士の間隔及び自由端距離は非常に重要で、次に大きい標準ファスナFを使用することは、基本設計に許容される安全幅を超えることがある。他方、オーバサイズ構造20の直径が小さい場合には、それを使用して、この安全幅を超えない範囲で標準ファスナを拡大することが可能である。
【0046】
図1をより具体的に参照すると、この実施形態に利用される標準ファスナFは、露出ヘッド部13を有する、一定直径のシャンクとなったファスナである。ファスナFのシャンク部11に接着されるオーバサイズ構造20は、図2に示すワークピース50a、50bの貫通孔60a、60bに精密に嵌合するように設計されたスリーブ状の構造である。
【0047】
ただし、本発明は、所定の基本直径のシャンク部11を有するファスナFに限定されるものではない。本開示のいくつかの態様によると、ファスナFのシャンク部11はむしろ、一定の直径を持たず、よくあるように例えばテーパのついたシャンク部を有する。
【0048】
スリーブ状のオーバサイズ構造20には、標準ファスナFのシャンク部11の少なくともいくつかの部分に強固に接着された内側面21を有する管状の側壁が含まれる。側壁の外側面22は一定の直径を有し、側壁は、標準ファスナFのシャンク部11の直径と、ワークピース50a、50bの再穿孔された孔60a、60bとの直径の差の半分の厚さを有する。
【0049】
上で述べたように、好ましくはこの厚さは公称で0.008インチ(=0.2mm)以下であり、通常は標準ファスナ直径の5%以下である。実際に、この厚さは、0.006インチ~0.009インチ(=0.15mm~0.29mm)の間を変化し得る。
【0050】
オーバサイズ構造20の長さは、通常ねじの切られた端部12を覆わないように形成される。
【0051】
図には示されていないが、標準ファスナFのシャンク部11に強固に接着されたオーバサイズ構造20には、複数の溝が設けられてもよい。例えば、円周上に延在し、軸方向に離間した複数のV字型の溝が、オーバサイズ構造20の側壁に設けられてもよい。
【0052】
オーバサイズ構造20は、普通のファスナFのシャンク部11に溝なしで被覆されて、後から溝が切られてもよい。
【0053】
本明細書に開示のいくつかの実施形態によれば、オーバサイズ構造20の溝は、装着されたときにシーラント又は接着剤のコーティングを閉じ込めて保持する、貯蔵器としての役目を果たすことができる。これにより、液体や気体がファスナ接合部を介して流れることが防止されるとともに、オーバサイズ構造20をワークピース50a、50bへ接着する。
【0054】
溝はオーバサイズ構造20の側壁に配置されるので、標準ファスナFの強度や剛性などの機械的性質は維持される。
【0055】
ワークピース50a、50bに対して化学的に適合する材料からオーバサイズ構造20が作製されるので、ワークピース50a、50bとの腐食反応もまた防止される。
【0056】
標準ファスナのシャンク部11の少なくとも一部に強固に接着されたオーバサイズ構造20を有する標準ファスナFが図2に示すように装着される。より詳細には、標準ファスナFと、標準ファスナFのシャンク部11に強固に接着されたオーバサイズ構造20とから成るアセンブリが、ワークピース50a、50bの整列した(オーバサイズの)孔60a、60bに貫通挿入される。
【0057】
オーバサイズ孔60a、60bは、オーバサイズ構造20の内径と外径の公差が±0.001インチ(=±0.025mm)程度に維持されるので、標準の、容易に入手可能なドリルとシーマー(seamer)とで作製可能である。
【0058】
図に示す例示的実施形態による本発明のファスナ10のピン部にナットをねじ込む前に、ファスナ10を受ける貫通路を有するワッシャを、シャンク部11のヘッドとは反対のワークピース50a、50bの側に配置してもよい。そうしてナットを取り付けて締めて、装着が完了する。
【0059】
ファスナ10を装着する前に、シーラント又は接着剤の層がオーバサイズ構造20の外側に塗布されてもよいことにも留意されたい。オーバサイズ構造20の外面に設けられた溝が、シーラントを閉じ込めて孔60a、60bの内側を完全に覆う役目を果たしてもよい。
【0060】
オーバサイズ構造20と共に、露出したヘッドと一定直径のシャンクを有するピンが示されているが、露出ヘッド又は平坦ヘッドを有する任意のファスナが共に使用され得ることを理解されたい。また、ファスナのシャンク部が一定直径である必要もない。
【0061】
上記のことから、本発明の方法が、標準ファスナF、すなわち標準的な寸法を有するファスナの有効シャンク直径を、限定された固定の小さな公差分だけ精密に拡大して、高負荷用途向けのワークピース50a、50bの構造的接合を可能とする役目をすることがわかるであろう。この方法は、ワークピース50a、50bと支持接触するファスナのその部分を、限定された厚さのオーバサイズ構造20で取り囲むこと、及び周りにオーバサイズ構造20を有するファスナをワークピース50a、50bの整列した孔60a、60bに挿入して、通常の方法でファスナを締め付けることを含む。
【0062】
具体的には、オーバサイズ構造20は標準ファスナFのシャンク部11に強固に接着される。オーバサイズ構造20の材料は好ましくはワークピース50a、50bに対して化学的に不活性であり、オーバサイズ構造20とワークピース50a、50bの間に化学的な腐食反応がない様になっている。
【0063】
オーバサイズ構造20の壁には様々な厚さが使用可能であるが、いくつかの実施形態ではこれらの厚さは、ファスナFの有効直径を全体として1/128~1/64インチ(=0.2mm~0.4mm)増加させる、実質的に約0.004インチ~約0.008インチ(=約0.1mm~約0.2mm)であることが望ましい。
【0064】
本明細書に開示の他の実施形態では、オーバサイズ構造20の壁の厚さは、ファスナFの有効直径を全体として0.396mm~0.793mm増加させる、実質的に約0.198mm~約0.397mmであることが望ましい。
【0065】
オーバサイズ構造20は、様々なオーバサイズ構造20とワークピース50a、50bの間の腐食化学反応を防止するために耐腐食材料で覆われてもよいことも理解される。また、オーバサイズ構造20の外面に、他の任意の堆積層及び/又は追加の外面層、又はコーティングが施されてもよい。
【0066】
本発明のファスナ10、すなわちファスナのシャンク部11の少なくとも一部に強固に接着されたオーバサイズ構造20を有する標準寸法のファスナFが修理に利用されるとき、古いファスナはワークピース50a、50bの整列した孔60a、60bから除去されて、整列した孔60a、60bが特定の量、例えば1/128インチ又は1/64インチ(=0.2mm~0.4mm)だけ拡大される。
【0067】
オーバサイズ構造20は、標準寸法のファスナのシャンク部11の少なくとも一部の周りに配置されて、そこに強固に接着される。オーバサイズ構造20の壁厚は、整列した孔60a、60bが拡大された特定の量に応じて決定される。強固に接着されたオーバサイズ構造20を有するファスナFは次に、拡大された孔60a、60bに挿入されてそこで締結される。
【0068】
同一サイズの標準ファスナFを多数装着して、ワークピース50a、50bの少数の孔60a、60bのみが損傷した場合、損傷した孔60a、60bのみを拡大しなければならない。
【0069】
本発明はさらに、オーバサイズ構造20を有するファスナの製造方法に関する。この方法では、シャンク部11と、そのシャンク部11の一端にヘッド部13とを有する標準ファスナFが提供され、その標準ファスナFのシャンク部11及び/又はヘッド部の直径が、そのシャンク部11の外面に追加的な材料を堆積させることにより、少なくとも部分的に増大される。具体的には、追加的な材料がシャンク部11の外面及び/又はヘッド部13の外面に被覆され、ファスナの構造完全性が全く損なわれないか、最小にしか損なわれないようにして、その追加的な材料がシャンク部11及び/又はヘッド部13に強固に接着される。
【0070】
これは、例えば、ろう付けプロセス、冷ガスダイナミック溶射プロセス、フレーム溶射プロセス、アーク溶射プロセス、プラズマ溶射プロセス、HVOF溶射プロセス、爆発溶射プロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、化学蒸着プロセス、気相コーティングプロセス及び/又は拡散浸透処理プロセス、の少なくとも1つによって達成される。
【0071】
要約すると、本開示は以下の態様に関係する。
【0072】
整列した貫通孔を有するワークピース50a、50bを互いに取り付けるためのファスナ10、特に高強度ファスナであって、このファスナ10が、シャンク部11と、シャンク部11の一端に設けられたヘッド部13と、を備え、シャンク部11及び/又はヘッド部13の直径は、ファスナ10が整列した孔に小さい公差で装着可能であるように選択され、このファスナ10はオーバサイズ構造20を更に備え、オーバサイズ構造20は、シャンク部11及び/又はヘッド部13の少なくとも一部に強固に接着されて、シャンク部11及び/又はヘッド部13の少なくとも一部を拡大し、オーバサイズ構造20のないファスナ10に要求される直径よりも大きな直径を持つ整列した穴60a、60bにファスナ10を装着可能とする。
【0073】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20の厚さは、オーバサイズ構造20なしのファスナ10に必要な整列した穴を再穿孔又は穿孔除去した結果である、整列した穴の増大した直径を補償するように選択される。
【0074】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20は、シャンク部11及び/又はヘッド部13の材料と化学的に適合する材料でできているか、オーバサイズ構造20は、ブリネル硬度が少なくとも60でかつ降伏強度が20,000p.s.i(=1379バール)超であるかの、少なくともいずれかである。
【0075】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20は、シャンク部11及び/又はヘッド部13の材料とは異なる材料でできている。
【0076】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20は、シャンク部11及び/又はヘッド部13の外面にコーティング、溶射又は他の方法で被覆された材料から成る。
【0077】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20の材料は、シャンク部11の構造の完全性を損なうことなく、コーティング堆積法によって、シャンク部11及び/又はヘッド部13の外面の少なくともいくつかの領域に被覆される。
【0078】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20の材料は、ろう付けプロセス、冷ガスダイナミック溶射プロセス、フレーム溶射プロセス、アーク溶射プロセス、プラズマ溶射プロセス、HVOF溶射プロセス、爆発溶射プロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、化学蒸着プロセス、気相コーティングプロセス及び/又は拡散浸透処理プロセスによって、シャンク部11及び/又はヘッド部13の外面の少なくともいくつかの領域に被覆される。
【0079】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20の材料は、シャンク部11及び/又はヘッド部13の外面の少なくともいくつかの領域においてそれ以前に存在した表面層をこれらの領域から除去するための物理的又は化学的分離プロセスを施した後に、これらのシャンク部11及び/又はヘッド部13の外面の少なくともいくつかの領域に被覆される。
【0080】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20は、シャンク部11の基本直径に対応する内径と、シャンク部11の基本直径より少なくとも0.1mm大きい外径を有する、スリーブ形構造である。
【0081】
本発明のファスナの実施形態によれば、シャンク部11は、1/32インチ(=0.79mm)又は1/32インチ(=0.79mm)の倍数、特に1/16インチ(=1.59mm)の基本直径を有するか、又はシャンク部11は、約0.5mm又は0.5mmの倍数の基本直径を有する。
【0082】
本発明のファスナの実施形態によれば、ファスナ10はシャンク部11のヘッド部13とは反対側の端部に設けられたねじ部12を有する。
【0083】
本発明のファスナの実施形態によれば、ファスナ10は、一端がヘッド部13で終端し、かつロック溝付きの複数のねじを有するねじ部12を含む、細長いシャンク部を有するピン部材を備える。本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20は、ねじ部12には被覆されない。本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20には、ファスナ10のヘッド部に隣接して嵌合し、またファスナ10のヘッド部に強固に接着されるフレア部が設けられる。
【0084】
本発明のファスナの実施形態によれば、オーバサイズ構造20の外面には、少なくとも部分的に溝が形成される。
【0085】
本開示はまた、ワークピース50a、50bの孔に装着された元のファスナを交換するための修理アセンブリに関する。そのファスナ修理アセンブリは、既に開示した実施形態の1つに記載のファスナ10を備え、ファスナ10のオーバサイズ構造20の半径方向の厚さは、元のファスナに必要であった穴の再穿孔又は穿孔除去の結果である、元のファスナに必要とされるよりも大きな直径を有する孔を補償するように選択される。
【0086】
本開示はまた、オーバサイズ構造20を有するファスナ10、特に既に開示した実施形態の1つによるファスナを製造する方法に関する。この方法は、シャンク部11と、そのシャンク部11の一端のヘッド部13とを有する標準ファスナFを提供するステップと、オーバサイズ構造20を形成するなどして、少なくともシャンク部11の外面に追加的な材料を堆積させてシャンク部11の直径を少なくとも部分的に増大させるステップと、少なくともオーバサイズ構造20を所望により補足的に処理するステップと、を含む。ここで、追加的な材料はシャンク部11の外面に被覆されて、追加的な材料がシャンク部11に強固に接着され、かつシャンク部11の構造的完全性を損なわないようにされる。
【0087】
本明細書に使用の「標準ファスナ」という表現は、一般的に、整列した貫通孔を有するワークピースを互いに取り付けるためのファスナ、特に高強度ファスナを指し、この標準ファスナは、標準的な寸法、特に標準的な寸法のシャンク部及び/又はヘッド部を有する。この標準ファスナは、基本的シャンクの公称寸法すなわちボルト直径がn×1/64インチ(=n×0.396875mm)、nは1又は1の整数倍、であるか、又は、ISOメートル法により、基本シャンクの公称寸法すなわちボルト直径が、1.0mm+n×0.5mm、nは1又は1の整数倍、であるかのいずれかである。
【0088】
標準ファスナに関しては、例えば、米国特許出願第2006/0046080(A1)号明細書、米国特許出願第2016/0076575(A1)号明細書、米国特許出願第2003/0219328(A1)号明細書及び米国特許第3、494、243号明細書に記載されている。
【0089】
本発明の方法の実施形態によれば、追加的な材料は、所望によりヘッド部13にも被覆される。ここで追加的な材料は、ろう付けプロセス、冷ガスダイナミック溶射プロセス、フレーム溶射プロセス、アーク溶射プロセス、プラズマ溶射プロセス、HVOF溶射プロセス、爆発溶射プロセス、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセス、化学蒸着プロセス、気相コーティングプロセス及び/又は拡散浸透処理プロセスの少なくとも1つのプロセスによって、シャンク部11及び/又はヘッド部13に被覆される。
【0090】
本開示は、ワークピース50a、50bの孔に装着された元のファスナを交換する方法に関する。この方法は、元のファスナを取り外すステップと、オーバサイズ構造20を有する新規のファスナ10、特に既に説明した実施形態の1つに記載のファスナを装着するための適切な寸法に孔を加工するステップと、加工された孔に、オーバサイズ構造20を有する新規のファスナ10を装着するステップと、を含む。ここで、新規ファスナのオーバサイズ構造20は、元のファスナを取り外すプロセスによって影響された孔の直径のいかなる増大をも補償するように選択される。本発明の方法の実施形態によれば、元のファスナは、元のファスナを穿孔除去することにより取り除かれる。
【0091】
上記の説明には多くの詳細が含まれるが、これらは本開示の範囲を制限するものとみなすべきではなく、むしろ本開示の実施形態の実例とみなされるべきである。本明細書に開示のファスナ及びその使用法は、開示される異なる種又は実施形態の任意の組み合わせを含む。
図1
図2