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特許7071498体液中の分析物を検出するためのセンサおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】体液中の分析物を検出するためのセンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20220511BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20220511BHJP
   A61B 5/1486 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
A61B5/1473
G01N27/30 A
A61B5/1486
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020524786
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2018080570
(87)【国際公開番号】W WO2019092083
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】17200660.3
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キューブラー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ケールカー、カール-ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】レシキ、ティーロ
(72)【発明者】
【氏名】ジーベル、デビッド
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-509166(JP,A)
【文献】特表2013-543405(JP,A)
【文献】特開平09-182738(JP,A)
【文献】特表平11-513914(JP,A)
【文献】特表2007-524816(JP,A)
【文献】特表2004-527769(JP,A)
【文献】特表2015-534483(JP,A)
【文献】特開2005-083994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145-5/1495
G01N 27/30-27/327
G01N 27/416
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの体組織に少なくとも部分的に埋め込まれて、電気化学測定によって体液中の分析物を検出するための、作用電極、対電極および参照電極を備えるセンサ(110)を製造する方法であって、前記方法は、以下の、
a)前記分析物に対して浸透性を有する膜層(112)を設けるステップと、
b)前記作用電極用に、少なくとも1つの第1導電性材料(141)を、前記膜層(112)上に直接的または間接的に堆積させるステップ、または、
前記作用電極および前記対電極用に、少なくとも1つの第1導電性材料(141)を、前記膜層(112)上に直接的または間接的に堆積させるステップ、または、
前記作用電極および前記参照電極用に、少なくとも1つの第1導電性材料(141)を、前記膜層(112)上に直接的または間接的に堆積させるステップと、
c)少なくとも1つの電気絶縁性材料(142)を、少なくとも1つの前記膜層(112)および前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)上に直接的または間接的に堆積させるステップと、
d)ステップb)において前記作用電極用に前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が堆積される場合、前記対電極および前記参照電極用に、少なくとも1つの第2導電性材料(144)を、前記電気絶縁性材料(142)上に直接的または間接的に堆積させるステップ、または、
ステップb)において前記作用電極および前記対電極用に前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が堆積される場合、前記参照電極用に、少なくとも1つの第2導電性材料(144)を、前記電気絶縁性材料(142)上に直接的または間接的に堆積させるステップ、または、
ステップb)において前記作用電極および前記参照電極用に前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が堆積される場合、前記対電極用に、少なくとも1つの第2導電性材料(144)を、前記電気絶縁性材料(142)上に直接的または間接的に堆積させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
ステップb)は、作用電極(124)の少なくとも1つの電極パッド(128)を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)において前記作用電極および前記対電極用に前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が堆積される場合、ステップb)は、前記対電極用の、少なくとも1つの電極パッドを形成することを含む、または、
ステップb)において前記作用電極および前記参照電極用に前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が堆積される場合、ステップb)は、前記参照電極用の、少なくとも1つの電極パッドを形成することを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)において前記作用電極用に前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が堆積される場合、ステップb)は、前記作用電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リード(134)を形成することを含む、または、
ステップb)において前記作用電極および前記対電極用に前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が堆積される場合、ステップb)は、前記作用電極および前記対電極の少なくとも1つに電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リード(134)を形成することを含む、または、
ステップb)において前記作用電極および前記参照電極用に前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が堆積される場合、ステップb)は、前記作用電極および前記参照電極の少なくとも1つに電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リード(134)を形成することを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記作用電極、または、前記作用電極および前記対電極、または、前記作用電極および前記参照電極の少なくとも1つに電気的に接触するための前記少なくとも1つの導電性リード(134)を形成する前に、少なくとも1つの電気絶縁層(120)を前記少なくとも1つの膜層(112)上に堆積させることをさらに含み、前記少なくとも1つの導電性リード(134)は、前記電気絶縁層(120)が前記導電性リード(134)と前記膜層(112)との間に配置されるように形成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップd)は、対電極(148)および参照電極からなる群から選択される少なくとも1つの裏面電極(146)用の、少なくとも1つの電極パッドを形成することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ステップd)は、前記少なくとも1つの裏面電極(146)に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リード(150)を形成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ユーザの体組織に少なくとも部分的に埋め込まれて、電気化学測定によって体液中の分析物を検出するための、作用電極、対電極および参照電極を備えるセンサ(110)であって、前記センサ(110)は、
i)前記分析物に対して浸透性を有する少なくとも1つの膜層(112)と、
ii)前記作用電極用の、前記膜層(112)上に直接的または間接的に堆積される少なくとも1つの第1導電性材料(141)、または、
前記作用電極および前記対電極用の、前記膜層(112)上に直接的または間接的に堆積される少なくとも1つの第1導電性材料(141)、または、
前記作用電極および前記参照電極用の、前記膜層(112)上に直接的または間接的に堆積される少なくとも1つの第1導電性材料(141)と、
iii)前記少なくとも1つの膜層(112)および前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)上に直接的または間接的に堆積される、少なくとも1つの電気絶縁性材料(142)と、
iv)前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が前記作用電極用の場合に、前記対電極および前記参照電極用の、前記電気絶縁性材料(142)上に直接的または間接的に堆積される、少なくとも1つの第2導電性材料(144)、または、
前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が前記作用電極および前記対電極用の場合に、前記参照電極用の、前記電気絶縁性材料(142)上に直接的または間接的に堆積される、少なくとも1つの第2導電性材料(144)、または、
前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が前記作用電極および前記参照電極用の場合に、前記対電極用の、前記電気絶縁性材料(142)上に直接的または間接的に堆積される、少なくとも1つの第2導電性材料(144)と、
を含む、センサ(110)。
【請求項9】
前記第1導電性材料(141)は、少なくとも1つの作用電極(124)の少なくとも一部を形成する、請求項8に記載のセンサ(110)。
【請求項10】
前記第1導電性材料(141)は、
前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が前記作用電極および前記対電極用の場合に、前記対電極の少なくとも一部を形成する、または、
前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が前記作用電極および前記参照電極用の場合に、前記参照電極の少なくとも一部を形成する、
請求項8または9に記載のセンサ(110)。
【請求項11】
前記第1導電性材料(141)は、
前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が前記作用電極用の場合に、前記作用電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リード(134)を形成する、または、
前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が前記作用電極および前記対電極用の場合に、前記作用電極および前記対電極の少なくとも1つに電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リード(134)を形成する、または、
前記少なくとも1つの第1導電性材料(141)が前記作用電極および前記参照電極用の場合に、前記作用電極および前記参照電極の少なくとも1つに電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リード(134)を形成する、
請求項8~10のいずれか1項に記載のセンサ(110)。
【請求項12】
前記センサ(110)は、前記膜層(112)と前記第1導電性材料(141)との間に、少なくとも1つの電気絶縁層(120)をさらに含む、請求項8~11のいずれか1項に記載のセンサ(110)。
【請求項13】
前記第2導電性材料(144)は、対電極(148)および参照電極からなる群から選択される、少なくとも1つの裏面電極(146)を含む、請求項8~12のいずれか1項に記載のセンサ(110)。
【請求項14】
前記第2導電性材料(144)は、前記少なくとも1つの裏面電極(146)に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リード(150)をさらに含む、請求項13記載のセンサ(110)。
【請求項15】
前記センサ(110)は、前記センサ(110)を完全にまたは部分的に囲繞する少なくとも1つの生物的適合性層をさらに含む、請求項8~14のいずれか1項に記載のセンサ(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、体液中の分析物の検出のためのセンサおよびその製造の方法に関する。本発明の装置および方法は主に、体液中の分析物の濃度の連続監視または長期監視のため、たとえばグルコース濃度、または1つまたは複数の他の種類の体液中の分析物の濃度の連続または長期監視のために使用され得る。本発明は、在宅医療の分野、および病院など専門医療の分野の両方に適用され得る。他の適用が実行可能である。
【背景技術】
【0002】
特定の身体機能の監視、とりわけ体液中の少なくとも1つの代謝物濃度のうちの1つまたは複数の濃度の監視は、様々な病気の予防および治療において重要な役割を果たす。そのような代謝物は、一例として、しかし非排他的に、血糖、乳酸、コレステロールまたは他の種類の分析物および代謝物を含み得る。さらなる可能な適用を制限することなく、以下の文章にて本発明を血糖監視に関して説明する。しかし、追加的に、または代替的に、本発明は、上記の分析物など、他の種類の分析物にも適用され得る。
【0003】
連続または長期監視の分野において、センサの組み立ておよび製造は、技術上の課題である。典型的には、ユーザの体組織に経皮的に挿入される電子化学センサが使用される。センサは、典型的に、細長い可撓性基板を含み、細長い可撓性基板には、1つまたは複数の作用電極、ならびに1つまたは複数のさらなる電極、たとえば1つまたは複数の対電極および/または1つまたは複数の参照電極を含む複数の電極が適用される。
【0004】
特許文献1は、体内への埋込のためのセンサおよびセンサを作製する方法を開示する。センサは、基板にネックダウン領域を形成する切り欠きを有する基板を含む。センサは、1つまたは複数の導電性層から形成される少なくとも1つの電極をさらに含む。好ましくは基板の厚さは約25μm~350μmの範囲であり、基板の厚さは5μm~750μmの範囲であってもよい。センサは、スロットを有する針を含むセンサアセンブリに組み込まれてもよい。ネックダウン領域を生むノッチにより、基板が、ネックダウン領域の通過を可能にするのに十分狭いスロットを有する、スロット付き針内を摺動することが可能になる。基板の非ネックダウン領域は、スロットを通過してスロット付き針から引き抜かれることが防止される。スロット付き針のスロットは、基板のネックダウン領域がスロットを下方向に摺動させることも可能にしてもよい。
【0005】
特許文献2は、媒体中、特に体組織および/または体液中の、少なくとも1つの分析物の濃度を判定するために使用され得る埋込可能センサを開示する。前述の埋込可能センサは、少なくとも1つの絶縁性支持基板および少なくとも2つの電極を含む層状構造を有し、少なくとも2つの電極は、埋込可能センサの少なくとも2つの異なる層のレベルに配置され、少なくとも1つの絶縁性支持基板により互いから電気的に分離されている。電極には、電極表面が設けられ、電極表面は、センサが埋め込まれると媒体に面し、直接、または分析物浸透性膜層を介して、大きな面積に亘って略均一に、媒体と接触する。
【0006】
特許文献3は、体液に関連した使用のための分析物センサを開示する。分析物センサは、生物流体と生物流体の派生物との間の任意の適切な界面、および分析物に関する情報の任意の適切なトランスデューサを含んでもよい。少なくとも1つの触媒は、界面の場所またはその近傍に提供されてもよい。タンパク性触媒または非タンパク性、有機金属触媒などの触媒剤が、界面の近傍に存在し得る活性酸素および/または窒素種の分解に触媒作用を及ぼす。分析物検出キットおよび分析物を検出する用法も説明される。
【0007】
これらの公知の経皮的な挿入のためのセンサの利点にもかかわらず、多数の技術上の課題が残る。これらの課題のいくつかは、いくつかのプロセス・ステップを用いることによって機能させられなければならない、キャリア基板の使用に関連する。導電性リードは、高精度かつ低公差で絶縁性基板に適用されなければならず、コストのかかる製造技術および材料が必要となる。さらに、この製造プロセスは、概して、基板の製造、被覆の湿式化学プロセス、乾燥ステップ、および検証または検査ステップを含む多数のプロセス・ステップを必要とする。上記のように、トレランスチェーン(chain of tolerances)が非常に厳しいため、これらのプロセス・ステップのほとんどが、極めて高い精度を要求する。さらに、基板の変形につながるかもしれない熱および感応条件など他の製造条件の影響が考慮されなければならない。主に、最新の製造プロセスが必要とされるため、材料および検査のための高コストが考慮されなければならない。それ自体は実測には必要とされない補助材料の使用により、製造コストが付加的に増加される場合がある。さらに、基板の組み立てに、Cuのような電気化学的に活性の金属など特定の材料を使用することは、測定に影響を及ぼす場合がある。その結果、分析物センサの生体適合性を保証するために、基板またはセンサは、典型的に、体液に対して密封されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7,003,336号明細書
【文献】国際公開第2007/071562号
【文献】国際公開第2005/078424号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記の技術上の課題に対処する、体液中の分析物の検出のためのセンサ、およびセンサを製造する方法を提供することが望ましい。したがって、少数のプロセス・ステップを有するプロセスを用いて、低価格で製造され得るセンサを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項の特徴を有する、体液中の分析物の検出のためのセンサ、およびそのようなセンサを製造する方法により対処される。単独の様式で、または任意の組み合わせで実現されてもよい有利な実施形態が、従属請求項に記載される。
【0011】
以下において用いられるように、「有する」、「備える」という用語または「含む」またはそれらの任意の文法上の変形例は、非排他的に用いられる。したがって、これらの用語は、これらの用語により導入される特徴以外に、この文脈において記述される実体に、さらなる特徴が存在しない状況、および1つまたは複数のさらなる特徴が存在する状況の両方を参照してもよい。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、AにはB以外に他の要素が存在しないという状況(すなわち、Aは単独かつ排他的にBからなるという状況)、および、B以外に実体Aには、B以外に、要素C、要素CおよびDまたはそれ以上の要素など、1つまたは複数のさらなる要素が存在するという状況の両方を参照してもよい。
【0012】
さらに、特徴または要素が、一度、または二度以上存在してもよいことを示す「少なくとも1つの」、「1つまたは複数の」という用語、または類似の表現は、典型的に、それぞれの特徴または要素の導入の際に一度のみ使用されることに注意する。以下においては、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を参照する際に、それぞれの特徴または要素は一度または二度以上存在してもよいにもかかわらず、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」という表現は繰り返されない。
【0013】
さらに、以下において用いられるように、「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「とりわけ」、「具体的には」、「より具体的には」という用語、または類似の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴と併せて用いられる。したがって、これらの用語により導入される特徴は、任意の特徴であり、請求項の範囲を制限する意図はまったくない。当業者が理解するように、本発明は、代替の特徴を用いて行われてもよい。同様に、「本発明の実施形態では」または類似の表現により導入される特徴は、任意の特徴であるように意図され、本発明の代替の実施形態に関する制限はなく、本発明の範囲に関する制限はなく、そして本発明の他の任意の、または非任意の特徴とともに導入される特徴を組み合わせる可能性に関する制限はない。
【0014】
本発明の第1の態様において、体液中の分析物の検出のためのセンサを製造する方法を開示する。センサは、具体的には、ユーザの体組織への少なくとも部分的な埋込、具体的には、経皮的挿入のために構成される分析物センサ、より具体的には、分析物の連続監視のための分析物センサであってもよく、またはその分析物センサを含んでもよい。方法は、以下のステップを含み、ステップは、具体的には、示される順番で、または異なる順番、たとえば逆の順番で行われてもよい。したがって、異なる順番も可能であってもよい。さらに、2つ以上のプロセス・ステップは、同時に、または部分的に同時に行われてもよい。さらに、方法ステップのうちの1つまたは複数、またはすべてが、一度以上、または反復的もしくは連続的に行われてもよい。方法は、記載のない追加の方法ステップをさらに含んでもよい。
方法は、以下の、
a)膜層を設けるステップと、
b)少なくとも1つの第1導電性材料を、膜層上に直接的または間接的に堆積させるステップと、
c)少なくとも1つの電気絶縁性材料を、少なくとも1つの膜層および少なくとも1つの第1導電性材料上に直接的または間接的に堆積させるステップと、
d)少なくとも1つの第2導電性材料を電気絶縁性材料上に直接的または間接的に堆積させるステップと、
を含む。
【0015】
既に説明したように、プロセス・ステップは、所定の順番で、または、一例として、逆の順番で行われてもよい。所定の順番では、膜層は、ステップb)~d)において、キャリアとして機能してもよく、その上で堆積が行われる。逆の順番では、追加のキャリアが設けられてもよく、少なくとも1つの第2導電性材料は、その上に、直接的または間接的に堆積され、次に電気絶縁性材料が堆積され、次に少なくとも1つの第1導電性材料が堆積され、そしてその後に、膜層の追加の積層がされてもよい。その後は、たとえばキャリアを剥離することによって、キャリアは、構成から除去されてもよく、それによって、上で列挙された、所定の順番と同一または類似の構成が得られる。
【0016】
膜層を設けるステップは、商業的に製造された膜層、または別個のステップもしくはプロセスにおいて製造された膜層など、すでに確立された、および/または既に製造された膜層またはその一部を設けることを含んでもよい。追加的に、または代替的に、膜層を設けるステップは、少なくとも1つの膜層またはその一部を、液相からの製造、印刷など、完全にまたは部分的に製造することも含んでもよい。
【0017】
以下においてより詳細に説明するように、方法は、少なくとも1つの試験化学物質を適用することをさらに含んでもよく、試験化学物質は、少なくとも1つの第1導電性材料と物理的に接触するように適用される。一例として、少なくとも1つの化学試薬を含んでもよい、少なくとも1つの試験化学物質の適用は、ステップb)において、および/または別個の方法ステップにおいて行われてもよい。少なくとも1つの試験化学物質は、作用電極であってもよく、または作用電極を画定してもよい第1導電性材料の一部と接触してもよい。
【0018】
本明細書において用いられる「試験化学物質」という用語は、広義の用語であり、当業者に対し、その通常および慣習的意味が与えられ、特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、具体的には、少なくとも1つの材料または材料の混合物、たとえば、少なくとも1つの分析物を定性的および/または定量的に検出するための少なくとも1つの検出反応を行うことに適した、少なくとも1つの化合物、または化合物の少なくとも1つの混合物などを言い得る。具体的には、少なくとも1つの試験化学物質は、少なくとも1つの分析物が存在する場合に少なくとも1つの検出可能反応を行うことに適した、少なくとも1つの酵素など、少なくとも1つの化学試薬を含んでもよい。一例として、その反応は、酵素酸化還元反応であってもよい。他の反応が可能である。少なくとも1つの試験化学物質は、1つまたは複数の導電性材料および/または、電子移動のような荷電キャリア移動の改善に適した材料など、1つまたは複数の追加の材料を含んでもよい。可能である試験化学物質の一例として、たとえば、J.ホーネスら:The Technology Behind Glucose Meters:Test Strips、Diabetes Technology&Therapeutics、Vol.10、Supplement1、2008、ならびにそこに記載される試験化学物質および化学試薬を参照してもよい。しかし、他の試験化学物質が実行可能であることに注意する。
【0019】
本明細書において用いられる「センサ」という用語は、広義の用語であり、当業者に対し、その通常および慣習的意味が与えられ、特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、限定されないが、具体的には、少なくとも1つの状態を検出するように構成された、または少なくとも1つの測定変数を測定するように構成された、任意の要素または装置を言い得る。センサは、具体的には、ユーザの体組織への少なくとも部分的な埋込のための分析物センサ、より具体的には分析物の連続監視用の分析物センサであってもよく、またはその分析物センサを含んでもよい。センサは、具体的には、モノリシックセンサ要素であってもよい。
【0020】
さらに、本明細書において用いられる「分析物」という用語は、広義の用語であり、当業者に対し、その通常および慣習的意味が与えられ、特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、限定されないが、具体的には、体液中に存在してもよい任意の要素、構成要素または化合物を言い得、その濃度が、たとえばユーザまたは医療専門家にとっての目的であってもよい。具体的には、分析物は、少なくとも1つの代謝物質など、ユーザの代謝に関与してもよい任意の化学物質もしくは化学化合物であってもよく、または任意の化学物質もしくは化学化合物を含んでもよい。一例として、少なくとも1つの分析物は、グルコース、コレステロール、トリグリセリド、乳酸からなる群から選択されてもよい。しかし、追加的に、または代替的に、他の種類の分析物が使用されてもよく、および/または分析物の任意の組み合わせが使用されてもよい。
【0021】
本明細書において用いられる「ユーザ」という用語は、広義の用語であり、当業者に対し、その通常および慣習的意味が与えられ、特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、限定されないが、具体的には、人間または動物は、それぞれ、健康体であってもよく、または、1つまたは複数の病気を罹っていてもよいということは関係なく、人間または動物を言い得る。一例として、ユーザは、糖尿病に罹っている人間または動物であってもよい。しかし、追加的に、または代替的に、本発明は、他の種類のユーザに適用されてもよい。
【0022】
概して、任意の種類の体液が使用されてもよい。好ましくは、体液は、ユーザの体組織内、たとえば間質内に存在する体液である。したがって、一例として、体液は、血液および間質液からなる群から選択されてもよい。しかし、追加的に、または代替的に、1つまたは複数の他の種類の体液が使用されてもよい。体液は、概して、体組織内に含まれてもよい。したがって、概して、体液中の少なくとも1つの分析物の検出は、好ましくは、生体内で判定されてもよい。
【0023】
センサは、体組織に、具体的には経皮的に、完全にまたは部分的に埋め込まれてもよい。センサは、具体的には、50mm以下の長さ、たとえば2mm~30mmの長さを有してもよい。センサは、5mm以下の幅、たとえば0.1mm~2mmの幅をさらに有してもよい。センサは、具体的には、埋込状態において典型的に生じる力を受けると変形可能である可撓性センサであってもよい。センサは、2mm以下の厚さ、好ましくは0.2~1.0mmの厚さを有してもよい。センサは、具体的には、薄く細長い短冊の形状を有する短冊状であってもよい。センサは、具体的には、たとえば生体適合性コーティングを有することによって生体適合性を有してもよい。
【0024】
本明細書において用いられる「膜層」という用語は、広義の用語であり、当業者に対し、その通常および慣習的意味が与えられ、特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、限定されないが、具体的には、選択的バリアを提供する少なくとも1つの材料の層を言い得る。したがって、膜層は、概して、1つまたは複数の分子および/または化合物を選択的に通過させるが、他の分子および/または化合物は、膜層によって阻止されることを可能にしてもよい。提案する方法および装置では、具体的には、基板上の構成を用いる従来の方法および装置と比較して逆の構成を用いて、膜層は、具体的には基板としても機能してもよい。その結果、本発明の膜層は、具体的には、機械的安定性を提供してもよい。したがって、膜層は、一例として、たとえば上記のセンサの長さおよび幅を有する細長い短冊の形状を有する短冊状であってもよい。一例として、膜層は、機械的安定性を提供するために十分である厚さを有してもよい。膜層のため、および膜層の可能な厚さのための可能な材料の例を以下に示す。
【0025】
膜層を設けることは、いくつかの技術および方法を用いることによって行われてもよい。したがって、一例として、既製の膜層をプロセスに導入することによって、単純に行われてもよい。一例として、膜層は、たとえばリール・ツー・リール法でエンドレスシートまたはストリップとして設けられてもよく、センサのための膜層を設けることは、切断による切断プロセスを含んでもよい。複数のセンサは、エンドレスシートまたはストリップ上に製造されてもよい。追加的に、または代替的に、膜層を設けることは、たとえばコーティング、鋳造、印刷または現場重合により、完全にまたは部分的に膜層を製造することにより行われてもよい。したがって、一例として、膜層は、鋳型、たとえばセンサまたは複数のセンサの形状を有する鋳型に適切な液体を鋳込み、たとえば、その後に焼結プロセスまたは重合プロセスが続くことによって製造されてもよい。ここでも、追加的に、または代替的に、1つまたは複数のセンサのための膜層は、基板上に印刷またはコーティングされてもよい。そのような技術の組み合わせが実行可能である。
【0026】
本明細書において用いられる「導電性材料」という用語は、広義の用語であり、当業者に対し、その通常および慣習的意味が与えられ、特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、限定されないが、具体的には、電流を維持することが可能である材料を言い得る。具体的には、導電性材料は、金、銅、銀、パラジウムまたはプラチナのうちの1つまたは複数など、少なくとも1つの金属であってもよく、または少なくとも1つの金属を含んでもよい。追加的に、または代替的に、少なくとも1つの導電性材料は、少なくとも1つの導電性の有機または無機化合物など、少なくとも1つの導電性化合物であってもよく、または少なくとも1つの導電性化合物を含んでもよい。一例として、Ag/AgClなどの化合物が言及されてもよい。追加的に、または代替的に、少なくとも1つの導電性材料は、少なくとも1つの非金属導電性材料、たとえばカーボンペーストであってもよく、または少なくとも1つの非金属導電性材料を含んでもよい。
【0027】
以下においてより詳細に説明するように、少なくとも1つの第1導電性材料は、直接的または間接的に、膜層上に堆積されてもよい。したがって、導電性材料と膜層との間に直接的な物理的接触があってもよく、または少なくとも1つの追加の材料が、第1導電性材料を堆積させる前に膜層上に堆積されてもよい。したがって、一例として、作用電極の領域において、少なくとも1つの化学試薬を含む試験化学物質のような、試験化学物質が、第1導電性材料を試験化学物質上に、したがって間接的に膜層上に堆積させる前に膜層上に堆積されてもよい。他の領域では、第1導電性材料は、たとえば、直接かつ追加の材料なしで、膜層と接触する電極を形成する電極パッドが形成される1つまたは複数の領域で、膜層と直接接触していてもよい。概して、少なくとも1つの第1導電性材料は、少なくとも1つの試験化学物質、たとえば少なくとも1つの化学試薬を含む少なくとも1つの試験化学物質と接触していてもよい。
【0028】
少なくとも1つの第1導電性材料は、具体的には、パターン化された様式で堆積された1つまたは複数の導電性層を含んでもよい。したがって、一例として、少なくとも1つの第1導電性材料の堆積は、たとえばスクリーン印刷および/または孔版印刷などの印刷技術を用いることによる、1つまたは複数の導電性層のパターン化された堆積を意味してもよい。ここでも、追加的に、または代替的に、大面積の堆積が行われ、その後に、たとえばレーザパターニングまたはエッチングによるパターニングステップが行われてもよい。少なくとも1つの第1導電性材料をパターン化された様式で堆積させることにより、たとえば、少なくとも1つの作用電極、または、たとえば対電極もしくは参照電極のうちの少なくとも1つである少なくとも1つのさらなる電極のうちの1つまたは複数のための、1つまたは複数の電極パッド、たとえば1つまたは複数の円形、楕円形または多角形電極パッドが、直接的または間接的に膜層上に堆積されてもよい。追加的に、少なくとも1つの第1導電性材料を、直接的または間接的に、膜層上に堆積させることにより、少なくとも1つの電極に電気的に接触するための1つまたは複数の導電性リード、たとえば1つまたは複数の上記の電極パッドを1つまたは複数の接触パッドと接続させる1つまたは複数の導電性リードが、堆積されてもよい。したがって、一例として、センサは、一方の端部に接触部を有してもよく、導電性リードは、センサの長手方向の延伸の軸に沿って、接触部内の1つまたは複数の接触パッドからセンサの反対側の端部の近位の1つまたは複数の電極パッドまで延びてもよい。
【0029】
「第1」および「第2」という用語、ならびに、要素を特定するために使用されるさらなる数字は、概して、命名することのみを意図される。したがって、具体的には、明記されない限りは、「第1」要素は、「第2」または「第3」要素が存在することなく存在してもよい、また、その逆も同様である。さらに、いくつかの要素が識別番号により識別される場合、これらの識別番号は、要素が異なることを必ずしも意味しない。したがって、一例として、少なくとも1つの第1導電性材料および少なくとも1つの第2導電性材料は、第2導電性材料が、第1導電性材料と完全にまたは部分的に異なるように選択されてもよく、または代替的に、第2導電性材料は、完全にまたは部分的に、第1導電性材料と同一のものであるように選択される。したがって、一例として、第1導電性材料および第2導電性材料の両方において、同一の金属素材が選択されてもよい。したがって、一例として、第1および第2導電性材料が、異なる構造要素、たとえば異なる電極を形成し得るとしても、同じ材料がこれらの異なる構造要素に使用されてもよい。
【0030】
本明細書において用いられる「電気絶縁性材料」という用語は、広義の用語であり、当業者に対し、その通常および慣習的意味が与えられ、特別な、またはカスタマイズされた意味に限定されない。この用語は、限定されないが、具体的には、電荷の移動を防止し、大きな電流を維持しない材料または材料の組み合わせを言い得る。具体的には、他の可能性を制限することなく、少なくとも1つの電気絶縁性材料は、電子プリント回路基板の製造に用いられる絶縁性エポキシ樹脂など、少なくとも1つの絶縁樹脂であってもよく、または少なくとも1つの絶縁樹脂を含んでもよい。
【0031】
直接的または間接的な、少なくとも1つの膜層上への少なくとも1つの電気絶縁性材料の堆積は、ここでも、非パターン化された、および/またはパターン化された様式で行われてもよい。具体的には、少なくとも1つの液相プロセス・ステップを使用し、少なくとも1つの電気絶縁性材料を液体として堆積させ、たとえばその後に固化(setting)プロセスおよび/または現場重合または硬化プロセスを行うことによって、少なくとも1つの電気絶縁性材料が堆積されてもよい。したがって、一例として、コーティング技術または印刷技術が、具体的には、1つまたは複数の樹脂を堆積させるために、使用されてもよい。ここでも、スクリーン印刷または孔版印刷などの印刷技術が可能である。さらに、1つまたは複数の投与針を使用するなど、投与技術が実行可能である。他の堆積技術が、追加で、または代替的に使用されてもよい。一例として、少なくとも1つの電気絶縁層は、800μm未満、好ましくは500μm未満、さらに好ましくは300μm未満または200μm未満の厚さ、たとえば1μm~250μm、具体的には5~50μmの厚さを有してもよい。一例として、電気絶縁層は、少なくとも、体組織内に埋め込まれる際の機械的負荷に耐えるために適した厚さを有してもよく、そして依然として電気的絶縁性を維持する。しかし、概して、均質な層を得ることは、厚みのある層では困難であるため、厚さは可能な限り薄く維持されるべきである。
【0032】
少なくとも1つの電気絶縁性材料は、具体的には、少なくとも1つの膜および少なくとも1つの第1導電性材料が少なくとも1つの電気絶縁性材料で完全に被覆されるように堆積されてもよい。したがって、一方となる少なくとも1つの第2導電性材料と、他方となる少なくとも1つの第1導電性材料および膜層との間の少なくとも1つの電気絶縁性材料により、電気絶縁バリアが提供され得る。したがって、まず、第1導電性材料と第2導電性材料との間の電気的接触は、電気絶縁性材料により防止され得る。さらに、膜層および第2導電性材料を通じてセンサに入る1つまたは複数の分析物間の接触が防止され得る。したがって、少なくとも1つの膜層上に直接的または間接的に堆積される電気絶縁性材料および少なくとも1つの第1導電性材料が、従来のセンサの絶縁基板の機能を引き継ぎ得る。
【0033】
第2導電性材料に関して、ここでも、第1導電性材料の文脈で既に説明した定義および可能な材料を参照してもよい。第1導電性材料と同様に、少なくとも1つの第2導電性材料の、電気絶縁性材料への直接的または間接的な堆積が、具体的には、パターン化された様式で行われてもよい。したがって、第1導電性材料の文脈において既に説明した技術を参照してもよく、その技術は、第2導電性材料を堆積させるために適用されてもよい。少なくとも1つの第2導電性材料の堆積は、具体的には、少なくとも1つの第2導電性材料が電気絶縁性材料のみと接触するが、第1導電性材料と第2導電性材料との接触が、および/または第2導電性材料と膜層との接触が回避されるように行われてもよい。第2導電性材料は、具体的には、1つまたは複数の電極パッド、たとえば、ここでも、円形、楕円形または多角形の電極パッドのうちの1つまたは複数である1つまたは複数の電極パッドが生成されるように、パターン化されてもよい。したがって、一例として、第2導電性材料は、具体的には、少なくとも1つの対電極または少なくとも1つの参照電極のうちの1つまたは複数が生成されるようにパターン化されてもよい。さらに、ここでも、追加的に、少なくとも1つの第2導電性材料をパターン化された様式で堆積させることにより、少なくとも1つの電極パッドに電気的に接触するための1つまたは複数の導電性リード、たとえば、1つまたは複数の上記の電極パッドを1つまたは複数の接触パッドと接続させる1つまたは複数の導電性リードが、堆積されてもよい。したがって、一例として、センサは、上記のように一方の端部に接触部を有してもよく、導電性リードは、センサの長手方向の延伸の軸に沿って、接触部内の1つまたは複数の接触パッドからセンサの反対側の端部の近位の1つまたは複数の電極パッドまで延びてもよい。
【0034】
少なくとも1つの分析物を検出するためのセンサを製造する方法は、具体的には、少なくとも1つの分析物の連続監視または長期監視用のセンサであってもよく、様々な方法で具現化されてもよく、またはさらに発展されてもよい。以下においてこれらの選択肢のいくつかを説明し、それらは、単独で、または組み合わせで実現されてもよい。
【0035】
したがって、既に説明したように、膜層は、少なくとも1つの検出すべき分析物に対し浸透性を有する。したがって、一例として、膜層は、血糖、ラクターゼ、コレステロールまたは他の種類の分析物のうちの1つまたは複数に対して浸透性を有していてもよい。
【0036】
少なくとも1つの第1導電性材料を堆積させるステップ、すなわち、上記のステップのシーケンス中のステップb)は、具体的には、作用電極の、少なくとも1つの電極パッドを形成することを含んでもよい。既に説明したように、一例として、電極パッドは、円形、楕円形または多角形の形状を有してもよく、一例として、完全にまたは部分的に、少なくとも1つの金属層で形成されてもよい。他の可能性が示される。
【0037】
作用電極に対しては、具体的には、1つまたは複数の試験化学物質の使用が想定されてもよい。したがって、方法は、ステップb)の前または同時に、少なくとも1つの試験化学物質を膜層上に堆積させることをさらに含んでもよく、試験化学物質は、検出すべき分析物が存在する場合に、少なくとも1つの検出反応を行うように構成される。本明細書において使用されてもよい試験化学物質は、一般的に当業者に公知である。したがって、一例として、少なくとも1つの試験化学物質は、少なくとも1つの分析物が存在する場合に反応を行うように構成される少なくとも1つの酵素であってもよく、またはその少なくとも1つの酵素を含んでもよい。1つまたは複数の電気化学メディエータなど、さらなる構成要素が存在してもよい。可能である実施形態に対して、J.ホーネスら:The Technology Behind Glucose Meters:Test Strips,Diabetes Technology&Therapeutics、Vol.10、Supplement1、2008など、上記の先行技術文献も参照してもよい。試験化学物質は、具体的には、パターン化された様式で堆積されてもよい。したがって、一例として、1つまたは複数の試験化学物質パッドは、直接的または間接的に膜上に堆積され、その後、作用電極のための少なくとも1つの電極パッドが、1つまたは複数の試験化学物質パッド上に堆積されてもよい。1つまたは複数の作用電極パッドは、具体的には、それらが試験化学物質のみと接触するが、膜層との直接接触が回避されるように寸法決めおよび位置決めされてもよい。しかし、他の選択肢が実行可能であることに注意する。
【0038】
少なくとも1つの作用電極パッドに加えて、またはその代替として、ステップb)は、少なくとも1つのさらなる電極のための少なくとも1つの電極パッドを形成することも含んでもよい。既に説明したように、少なくとも1つのさらなる電極は、具体的には、対電極および参照電極からなる群から選択されてもよい。したがって、一例として、少なくとも1つの作用電極パッド、および追加的に、少なくとも1つの対電極パッドまたは少なくとも1つの参照電極パッドのうちの少なくとも1つは、直接的または間接的に膜上に堆積されてもよい。少なくとも1つのさらなる電極パッドは、具体的には、少なくとも部分的に、少なくとも1つの酸化還元材料、具体的にはAg/AgClで作製されてもよい。
【0039】
上記のように、ステップb)は、少なくとも1つの作用電極および/または少なくとも1つのさらなる電極に接触するための1つまたは複数の導電性リードを形成することも含んでもよい。したがって、ステップb)は、少なくとも1つの電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードを形成することも含んでもよく、少なくとも1つの電極は、具体的には、作用電極、ならびに少なくとも1つのさらなる電極、より具体的には対電極および参照電極のうちの少なくとも1つからなる群から選択される。
【0040】
ステップb)において1つまたは複数の導電性リードが設けられる場合、一例として、これらの導電性リードは、たとえば、膜を通じてセンサに入る1つまたは複数の分析物と導電性リードの第1導電性材料との間での直接接触を回避するために膜層から分離されてもよい。この分離をもたらすために、具体的には、少なくとも1つの電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードを形成する前に、方法は、少なくとも1つの電気絶縁層を少なくとも1つの膜層上に堆積させることを含んでもよく、少なくとも1つの導電性リードは、電気絶縁層が導電性リードと膜との間に配置されるように形成される。そのようにして、導電性リードと膜との完全な、または部分的な分離が提供されてもよい。上記のように定義された電気的に絶縁性の、少なくとも1つの電気絶縁層に対しては、一例として、ステップc)における電気絶縁性材料と同じ材料が使用されてもよい。しかし、他の種類の材料の使用も可能である。ここでも、少なくとも1つの電気絶縁層の堆積は、たとえば、これらの電極パッドを膜の電気絶縁層によって被覆されていない領域上に堆積させることによって、作用電極、ならびに対電極および/または参照電極などの少なくとも1つのさらなる電極用の電極パッドが、依然として、膜上に堆積されてもよいように、パターン化された様式で行われてもよい。したがって、ここでも、液体堆積技術、たとえばスクリーン印刷または孔版印刷などの印刷技術が、電気絶縁層を製造するために使用されてもよい。ここでも、ステップc)における電気絶縁性材料に関して、一例として、電気絶縁層は、完全にまたは部分的に、樹脂、たとえばエポキシ樹脂、たとえば回路基板の製造に典型的に使用される樹脂で作製されてもよい。
【0041】
既に説明したように、少なくとも1つの第2導電性材料を堆積させるステップ、すなわちプロセス・ステップの上記一覧中のステップd)において、具体的には、少なくとも1つの電極パッド、少なくとも1つの導電性リードまたは少なくとも1つの接触パッドのうちの1つまたは複数が形成されてもよい。したがって、ステップd)は、対電極および参照電極からなる群から選択される少なくとも1つの裏面電極用の少なくとも1つの電極パッドを形成することを含んでもよい。本明細書において用いられるように、「裏面電極」という用語は、概して、第1導電性材料の反対側の導電性材料において、完全にまたは部分的に第2導電性層内に形成される電極のことを言い得る。ステップd)は、少なくとも1つの裏面電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードを形成することをさらに含んでもよい。少なくとも1つの裏面電極は、具体的には、少なくとも1つの導電性酸化還元材料、具体的にはAg/AgClを含んでもよい。
【0042】
少なくとも1つの作用電極、および任意に少なくとも1つのさらなる電極は、好ましくは、膜層上に直接堆積される1つまたは複数の正面電極を形成してもよい。少なくとも1つの正面電極と、少なくとも1つの裏面電極とは、少なくとも1つの電気絶縁性材料の反対側に堆積されてもよい。上記のように、接触パッドは、少なくとも1つの正面電極および少なくとも1つの裏面電極のそれぞれに電気的に接触するために設けられてもよい。したがって、少なくとも1つの導電性正面電極リードにより、少なくとも1つの正面電極に電気的に接続され得る、少なくとも1つの正面電極接触パッドが設けられてもよい。さらに、少なくとも1つの導電性裏面電極リードは、少なくとも1つの裏面電極接触パッドを少なくとも1つの裏面電極と接続させるために設けられてもよい。接触パッド、すなわち少なくとも1つの正面電極接触パッドおよび少なくとも1つの裏面電極接触パッドの両方は、センサの同一の面から電気的に接触可能であってもよい。したがって、一例として、少なくとも1つの正面電極用の、および少なくとも1つの裏面電極用の両方の接触パッドは、絶縁材料により被覆されないままであってもよく、膜層に対向する、センサの裏面上に位置してもよい。その結果、正面電極および裏面電極の両方は、同一の面から接触されてもよく、これにより、センサが少なくとも1つの分析物を検出するためのセンサ装置に組み込まれる場合、電気的接続技術における利点がもたらされる。
【0043】
既に説明したように、ステップc)において使用される電気絶縁性材料は、具体的には、少なくとも1つの電気絶縁性樹脂を含んでもよい。一例として、1つまたは複数のエポキシ樹脂が使用されてもよい。他の可能性を示す。
【0044】
膜層の場合、既に説明したように、いくつかの材料は、単独で、または組み合わされて使用されてもよい。したがって、一例として、膜層は、具体的には、ポリウレタン、ハイドロゲル、ポリアクリル酸塩のうちの1つまたは複数を含んでもよい。これらの種類の膜が、当業界に公知である。一例として、ハイドロゲル膜、たとえば国際公開第2007/071562号明細書および/または国際公開第2005/078424号明細書に開示される膜が、使用されてもよい。しかし、他の種類のセンサの組み立てが使用されてもよい。膜層は、具体的には、1μm~150μmの厚さを有してもよい。
【0045】
既に説明したように、方法は、複数の堆積ステップを含む。その点で、具体的には、パターン化された堆積が様々な方法で実行可能である。パターン化には、具体的には、プリント法が実行可能である。一例として、方法ステップa)~d)のうちの1つまたは複数は、スクリーン印刷または孔版印刷などの、少なくとも1つのプリント法を利用してもよい。しかし、代替的または追加的に、他のパターン化または非パターン化の堆積技術が使用されてもよいことに注意する。
【0046】
本発明のさらなる態様において、体液中の分析物の検出のためのセンサを提案する。センサは、具体的には、すでに開示した、または以下においてより詳細に開示する実施形態のいずれか1つの方法を用いて作製されてもよい。結果として、定義および任意の実施形態のために、方法の説明を参照してもよい。センサは、好ましくは示される順番で提供される、以下の要素を含む。追加の要素が実行可能である。
【0047】
したがって、センサは、
i)少なくとも1つの膜層と、
ii)膜層上に直接的または間接的に堆積される少なくとも1つの第1導電性材料であって、具体的には、少なくとも1つの試験化学物質が、特に、少なくとも1つの作用電極を形成するために少なくとも1つの第1導電性材料に接触してもよい少なくとも1つの第1導電性材料と、
iii)少なくとも1つの膜層および少なくとも1つの第1導電性材料上に直接的または間接的に堆積される少なくとも1つの電気絶縁性材料と、
iv)電気絶縁性材料上に直接的または間接的に堆積される少なくとも1つの第2導電性材料
とを含む。
【0048】
既に説明したように、センサは、具体的には、前述の方法のクレームのいずれか1つの方法を用いて取得可能である、または取得されてもよい。
【0049】
したがって、層の構成が、分析物に対しては浸透性を有しない電気絶縁性基板の両面に堆積される従来技術と比較すると、本発明のセンサは、具体的には、検出すべき分析物に対して浸透性を有し得る膜上に、上記の材料および層が堆積される、膜または第2導電性材料のいずれから始めるかによる、一種のトップダウン式またはボトムアップ式の構成を含んでもよい。最終製品において、第1に、センサは、具体的には、検出すべき分析物に対し浸透性を有しない絶縁基板を含まなくてもよいため、および一例として、膜への逆の堆積は、膜が残りの層上に堆積される構成と区別可能であるため、この組み立ては、層の組み立ての横断面の顕微鏡検査で可視であってもよい。
【0050】
センサの任意の実施形態に対しては、上述の、または以下においてより詳細に説明される方法を幅広く参照してもよい。したがって、一例として、第1導電性材料は、少なくとも1つの作用電極の少なくとも一部を形成してもよい。作用電極は、具体的には、膜上に、および膜と第1導電性材料との間に堆積される少なくとも1つの試験化学物質をさらに含んでもよく、試験化学物質は、検出すべき分析物が存在する場合に、少なくとも1つの検出反応を行うように構成される。第1導電性材料は、たとえば、検出反応を従来の電流測定および/または電位差測定技術を用いることによって電気化学的に検出するために、試験化学物質と接触している少なくとも1つの作用電極パッドを形成してもよい。
【0051】
第1導電性材料は、対電極および参照電極からなる群から選択される少なくとも1つの電極の少なくとも一部をさらに形成してもよい。この少なくとも1つのさらなる電極は、具体的には、少なくとも1つの酸化還元材料、具体的にはAg/AgClを含んでもよい。
【0052】
第1導電性材料は、第1導電性材料内に形成される少なくとも1つの電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードをさらに形成してもよく、少なくとも1つの電極は、具体的には作用電極、ならびに少なくとも1つのさらなる電極、より具体的には、対電極および参照電極のうちの少なくとも1つからなる群から選択される。
【0053】
既に説明されたように、センサは、膜と第1導電性材料との間に少なくとも1つの電気絶縁層をさらに含んでもよい。さらに、第2導電性層は、対電極および参照電極からなる群から選択される少なくとも1つの裏面電極を含んでもよい。第2導電性層は、少なくとも1つの裏面電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードをさらに含んでもよい。
【0054】
センサを生体適合性にするために、1つまたは複数の追加の手段が取られてもよい。したがって、一例として、センサは、センサを完全にまたは部分的に囲繞する少なくとも1つの生物的適合性層をさらに含んでもよい。一例として、この少なくとも1つの適合性層は、少なくとも1つの膜層と同じ材料を含んでもよく、センサの構成要素が体組織に入ることを回避してもよい。一例として、少なくとも1つの適合性層は、少なくとも1つのポリアクリル酸塩材料を含んでもよい。一例として、適合性層は、センサを適切な液体を用いてディップコーティングすることにより作製されてもよい。他の技術が実行可能である。
【0055】
既に説明したように、センサは、具体的には、基板、具体的には少なくとも1つの検出すべき分析物に対して浸透性を有していない基板を回避して作製されてもよい。したがって、具体的には、センサは、膜以外に基板を含まなくてもよい、具体的には、センサの全幅に亘り延在する基板がなくてもよい。
【0056】
既に記した、または以下においてより詳細に記される実施形態のうちの1つまたは複数の方法およびセンサは、公知の方法およびセンサに対し多数の利点を提供する。したがって、具体的には、基板は、可撓性回路基板またはポリイミド基板などの埋込可能センサの製造に典型的に使用され、基板は回避され得、また、基板はセンサの機能性に寄与する機能層である膜で置換され得る。その結果、基板のセンサ機能と機械的安定性機能とが組み合わされ得る。これによって、センサの機能性に寄与しないプロセス・ステップが回避され得る。別個の基板を用いる、センサの製造に典型的に含まれる材料および試験のためのコストが、これにより低減され得る。さらに、センサの構成は、完全に、電気化学測定のために必要とされる要素で作製され得る。
【0057】
さらに、逆の構成は、「トップダウン式」の構成とも呼称され、製造ステップの数を著しく減少させることができる。したがって、典型的かつ従来式のセンサの製造では、基板の製造、被覆材料の調製、乾燥および試験を含む、10以上のプロセス・ステップが必要とされる。より少ない数のプロセスインターフェースが使用されることにより、さらに、厳密な公差が達成され得る。
【0058】
提案するプロセスによる製造は、センサの幾何学的形状に対する大きな自由度をさらに可能にする。したがって、既に説明したように、任意の形状を有する膜層を設けるために様々な技術が使用され得る。具体的には、膜層のための可撓性の高い材料の使用が、機械的な制限をさらに減少させることができる。さらに、高度な小型化が可能であり、センサ全体の幾何学的形状が、任意に、および特定の要件に従って選択され得る。
【0059】
要約すると、さらなる可能な実施形態を排除することなく、以下の実施形態が想定されてもよい。
【0060】
実施形態1:体液中の分析物を検出するためのセンサを、具体的には、ユーザの体組織内への少なくとも部分的な埋込のための分析物センサを、より具体的には分析物の連続監視のための分析物センサを製造する方法であって、方法は、以下の、
a)膜層を設けるステップと、
b)少なくとも1つの第1導電性材料を、膜層に直接的または間接的に堆積させるステップと、
c)少なくとも1つの電気絶縁性材料を、少なくとも1つの膜層および少なくとも1つの第1導電性材料上に直接的または間接的に堆積させるステップと、
d)少なくとも1つの第2導電性材料を、電気絶縁性材料上に直接的または間接的に堆積させるステップと、
を含む方法。
【0061】
実施形態2:膜層は、検出すべき分析物に対し浸透性を有する、実施形態1の方法。
【0062】
実施形態3:ステップb)は、作用電極の少なくとも1つの電極パッドを形成することを含む、実施形態1または2の方法。
【0063】
実施形態4:方法は、ステップb)の前に、またはステップb)と同時に、膜層上に少なくとも1つの試験化学物質を堆積させることをさらに含み、試験化学物質は、検出すべき分析物が存在する場合に、少なくとも1つの検出反応を行うように構成される、実施形態3の方法。
【0064】
実施形態5:作用電極の電極パッドは、試験化学物質上に少なくとも部分的に堆積される、実施形態4の方法。
【0065】
実施形態6:ステップb)は、対電極および参照電極からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる電極用の、少なくとも1つの電極パッドを形成することを含む、実施形態1~5のいずれか1つの方法。
【0066】
実施形態7:少なくとも1つの電極パッドは、少なくとも部分的に、少なくとも1つの酸化還元材料、具体的にはAg/AgClで形成される、実施形態6の方法。
【0067】
実施形態8:ステップb)は、少なくとも1つの電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードを形成することを含み、少なくとも1つの電極は、具体的には、作用電極、ならびに少なくとも1つのさらなる電極、より具体的には対電極および参照電極のうちの少なくとも1つからなる群から選択される、実施形態1~7のいずれか1つの方法。
【0068】
実施形態9:方法は、少なくとも1つの電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードを形成する前に、少なくとも1つの電気絶縁層を少なくとも1つの膜層上に堆積させることをさらに含み、少なくとも1つの導電性リードは、電気絶縁層が導電性リードと膜層との間に配置されるように形成される、実施形態8の方法。
【0069】
実施形態10:少なくとも1つの電気絶縁層は、少なくとも1つの電気絶縁性樹脂を用いて少なくとも部分的に形成される、実施形態9の方法。
【0070】
実施形態11:ステップd)は、対電極および参照電極からなる群から選択される少なくとも1つの裏面電極用の、少なくとも1つの電極パッドを形成することを含む、実施形態1~10のいずれか1つの方法。
【0071】
実施形態12:ステップd)は、少なくとも1つの裏面電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードを形成することをさらに含む、実施形態11の方法。
【0072】
実施形態13:少なくとも1つの裏面電極は、少なくとも1つの導電性酸化還元材料、具体的にはAg/AgClを含む、実施形態11または12の方法。
【0073】
実施形態14:電気絶縁性材料は、少なくとも1つの電気絶縁性樹脂を含む、実施形態1~13のいずれか1つの方法。
【0074】
実施形態15:膜層は、ポリウレタン、ハイドロゲル、ポリアクリル酸塩のうちの1つまたは複数を含む、実施形態1~14のいずれか1つの方法。
【0075】
実施形態16:膜層は、1μm~100μmの厚さを有する、実施形態1~15のいずれか1つの方法。
【0076】
実施形態17:方法ステップa)~d)のうちの1つまたは複数は、少なくとも1つの印刷法を用いることを含む、実施形態1~16のいずれか1つの方法。
【0077】
実施形態18:体液中の分析物を検出するためのセンサであって、センサは、
i)少なくとも1つの膜層と、
ii)膜層上に直接的または間接的に堆積される少なくとも1つの第1導電性材料と、
iii)少なくとも1つの膜層および少なくとも1つの第1導電性材料上に直接的または間接的に堆積される、少なくとも1つの電気絶縁性材料と、
iv)電気絶縁性材料上に直接的または間接的に堆積される、少なくとも1つの第2導電性材料とを含む、センサ。
【0078】
実施形態19:センサは、前述の方法のクレームのいずれか1つの方法を用いることによって、取得可能である、または取得される、実施形態18のセンサ。
【0079】
実施形態20:第1導電性材料は、少なくとも1つの作用電極の少なくとも一部を形成する、実施形態18または19のセンサ。
【0080】
実施形態21:作用電極は、膜と第1導電性材料との間に、膜の上に堆積される少なくとも1つの試験化学物質をさらに含み、試験化学物質は、検出すべき分析物が存在する場合に、少なくとも1つの検出反応を行うように構成される、実施形態20のセンサ。
【0081】
実施形態22:第1導電性材料は、対電極および参照電極からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる電極の少なくとも一部を形成する、実施形態18~21のいずれか1つのセンサ。
【0082】
実施形態23:少なくとも1つの電極は、少なくとも1つの酸化還元材料、具体的にはAg/AgClを含む、実施形態22のセンサ。
【0083】
実施形態24:第1導電性材料は、少なくとも1つの電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードを形成し、少なくとも1つの電極は、具体的には、作用電極、ならびに少なくとも1つのさらなる電極、より具体的には対電極および参照電極のうちの少なくとも1つからなる群から選択される、実施形態18~23のいずれか1つのセンサ。
【0084】
実施形態25:センサは、膜層と第1導電性材料との間に、少なくとも1つの電気絶縁層をさらに含む、実施形態18~24のいずれか1つのセンサ。
【0085】
実施形態26:第2導電性材料は、対電極および参照電極からなる群から選択される、少なくとも1つの裏面電極を含む、実施形態18~25のいずれか1つのセンサ。
【0086】
実施形態27:第2導電性材料は、少なくとも1つの裏面電極に電気的に接触するための少なくとも1つの導電性リードをさらに含む、実施形態26のセンサ。
【0087】
実施形態28:センサは、センサを完全にまたは部分的に囲繞する少なくとも1つの生物的適合性層をさらに含む、実施形態18~27のいずれか1つのセンサ。
【0088】
実施形態29:センサは、膜以外には、他の基板を含まない、具体的には、センサの全幅に亘る基板は存在しない、実施形態18~28のいずれか1つのセンサ。
【0089】
さらなる任意の特徴および実施形態は、後に続く、実施形態の説明において、好ましくは従属請求項と併せて、より詳細に説明する。その点で、それぞれの任意の特徴は、単独で、および当業者が理解するように、任意の実行可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって制限されない。実施形態を、図面にて概略的に示す。その点で、これらの図面中の同一の参照符号は、同一または機能的に同等の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】体液中の分析物の検出のためのセンサの中間製品を示す図である。
図2】体液中の分析物の検出のためのセンサの中間製品を示す図である。
図3】体液中の分析物の検出のためのセンサの中間製品を示す図である。
図4】体液中の分析物の検出のためのセンサの中間製品を示す図である。
図5】体液中の分析物の検出のためのセンサの中間製品を示す図である。
図6】体液中の分析物の検出のためのセンサの中間製品を示す図である。
図7】プロセス・ステップ、および図1~6の中間製品を用いて製造される、体液中の分析物を検出するためのセンサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
図1~7には、体液中の分析物を検出するためのセンサ110を製造する方法を、可能なプロセス・ステップおよび中間製品により示す。センサ110は図7に示すが、図1~6は、様々な中間製品を示している。以下においては、これらの図面を連帯的に説明する。
【0092】
図1に示す第1の方法のステップでは、膜層112が設けられる。一例として、膜層112は、具体的には、検出すべき分析物に対し浸透性を有していてもよい。したがって、膜層112は、分析物を通過させるが、センサ110の被験物質の分子または混合物など、他の分子はセンサ内に保持される選択的バリアを提供し得る。一例として、膜層は、ハイドロゲルまたはポリウレタンのうちの1つまたは複数を含んでもよい。膜層112自体は、センサ110のための基板として機能してもよく、一般的に用いられるフレキシブルプリント回路基板と置き換わり、半透性膜の機能および機械的安定性の機能の両方を提供する。一例として、膜層は、2mm~30mmの長さL、および0.1mm~2mmの幅Wを有してもよい。一例として、膜層112は、0.2~1.0mmの厚さを有してもよい。図1に示すように、膜層112は、短冊状であってもよく、または、別の形状を有してもよい。一例として、膜層112は、挿入可能端114および接触部116を有してもよい。膜層112は、一例として、一定幅Wを有し得る挿入可能部118を提供してもよい。接触部116において、膜層112は、挿入可能部118の幅Wと比較して拡幅されてもよい。
【0093】
既に説明したように、膜層112は、様々な技術で設けられてもよい。一例として、膜層112は、1枚のホイルまたはエンドレステープから複数の膜層112が切り抜かれるリール・ツー・リール法で設けられてもよい。しかし、代替的に、膜層112を設けるために、鋳造技術または印刷技術など他の技術が実行可能である。一例として、膜層112のために、ポリウレタン、ポリアクリル酸塩またはハイドロゲルの少なくとも1つが使用されてもよい。一例として、膜層112は1μm~150μmの厚さを有してもよい。
【0094】
図2に示す、第2の任意のステップでは、1つまたは複数の未被覆領域122が、電気絶縁層120のない状態のままであるように、少なくとも1つの電気絶縁層120が膜層112上に堆積される。一例として、この目的のために、電気絶縁層120をパターン化された様式で堆積させるために、印刷技術が用いられてもよい。一例として、エポキシ樹脂のような絶縁樹脂が用いられてもよい。一例として、少なくとも1つの電気絶縁層120は、800μm未満、好ましくは500μm未満、さらに好ましくは300μmまたは200μm未満の厚さ、たとえば1μm~250μm、具体的には5μm~50μmの厚さを有してもよい。一例として、電気絶縁層120は、少なくとも、体組織内への埋込の際の機械的負荷を耐えるために適していながらも、電気的絶縁を維持する厚さを有してもよい。しかし、概して、均質な層を得ることは、厚みのある層では困難であるため、厚さは可能な限り薄く維持されるべきである。
【0095】
図3に示すさらなるプロセス・ステップでは、1つまたは複数の作用電極124が膜層112上に、具体的には未被覆領域122のうちの1つまたは複数に堆積される。これらの作用電極124の幾何学的形状は、自由に選択されてもよい。一例として、各作用電極は、第1に、検出すべき分析物、たとえばグルコースに対し選択的に感応性を有する、1つまたは複数の試験化学物質126製のパッドを含んでもよい。一例として、試験化学物質126は、グルコースオキシダーゼまたは他の酵素であってもよく、またはそれを含んでもよい。追加的に、膜層112の反対を向く面上に、作用電極124は、金パッドなど、導電性の作用電極パッド128を含んでもよい。しかし、図5に関して、以下においてさらに説明するように、これらの導電性作用電極パッド128は、除外され、導電性リードと組み合されてもよい、または導電性リードに置換されてもよい。
【0096】
図3のステップと順番が入れ替えられてもよい図4に示す、次の任意のステップでは、1つまたは複数のさらなる電極130が、膜層112上に、具体的には未被覆領域122上に任意に堆積されてもよい。任意の、少なくとも1つのさらなる電極130は、具体的には、少なくとも1つの参照電極132であってもよく、または少なくとも1つの参照電極132を含んでもよい。ここでも、参照電極132の幾何学的形状は、センサ110の実際の技術的要件に従い選択され得る。一例として、少なくとも1つの参照電極132は、検出すべき分析物の有無に影響されない、公知の電気化学的性質を有する少なくとも1つの酸化還元材料であってもよい、またはそれを含んでもよい。一例として、参照電極132は、Ag/AgClを含んでもよい。ここでも、作用電極124の堆積に関しては、少なくとも1つのさらなる電極130を堆積するために、スクリーン印刷または他の種類の印刷術などの印刷技術が用いられてもよい。さらに、少なくとも1つの参照電極132は、少なくとも1つの導電性材料であってもよいし、または少なくとも1つの導電性材料を含んでもよい。一例として、少なくとも1つの導電性材料は、導電性参照電極パッドにより提供されてもよく、または参照電極132は、Ag/AgClなど、それ自体が導電性を有してもよい。
【0097】
図5に示す、さらなるプロセス・ステップでは、1つまたは複数の導電性リード134が、作用電極124、および任意に、少なくとも1つのさらなる電極130、たとえば少なくとも1つの参照電極132に電気的に接触するために設けられてもよい。すでに説明したように、少なくとも1つの作用電極124のために、および任意で、少なくとも1つのさらなる電極130のためにも、導電性電極パッドがこのステップにおいて設けられてもよい。一例として、これらの導電性リード134は、膜層112の長手方向軸に沿って延在してもよく、挿入可能部118において、接触部116から電極124、130まで延在してもよい。その点で、たとえば図5に示すように、複数の作用電極124が設けられる場合、これら作用電極124のすべては、同一の導電性リード134によって、または代替的に、別個の導電性リード134によって接触されてもよい。このステップは、接触部116内に、導電性リード134によりそれぞれの電極124、130に接続される接触パッド136を設けるためにも用いられてもよい。したがって、一例として、接触パッド136は、少なくとも1つの作用電極接触パッド138および少なくとも1つの参照電極接触パッド140を含んでもよい。電気絶縁層120により、接触パッド136および導電性リード134は、分析物が、好ましくは、導電性リード134および接触パッド136と接触できないように、膜層112から分離される。
【0098】
図1~7に示す実施形態では、少なくとも1つの導電性リード134および少なくとも1つの接触パッド136、ならびに、任意で、電極124、130の1つまたは複数の電極パッド128は、図5に示す方法ステップ、ならびに、さらに任意で、図3および4に示す方法ステップにおいて、直接的または間接的に膜層112上に堆積される少なくとも1つの第1導電性材料141で作製されてもよい。少なくとも1つの第1導電性材料141を堆積させるために、様々な技術が可能である。一例として、少なくとも1つの第1導電性材料141は、スクリーン印刷などを用いることによって、パターン化された様式で印刷されてもよい。
【0099】
図6に示す、続くプロセス・ステップでは、少なくとも1つの電気絶縁性材料142が、図5の中間製品上に堆積されることによって、少なくとも、電極124、130および導電性リード134が被覆される。好ましくは、しかし、電気絶縁性材料142による被覆は、接触パッド136、138、140が、被覆されないままであるように行われる。一例として、電気絶縁性材料142のために、ここでも、1つまたは複数のエポキシ樹脂などの電気絶縁性樹脂が使用されてもよい。一例として、少なくとも1つの電気絶縁性材料142の堆積は、印刷技術によって行われてもよい。しかし追加的に、または代替的に、連続コーティング技術が使用されてもよい。電気絶縁性材料142をパターニングすることによって、任意で接触パッド136が被覆されない状態で、堆積パターン化の技術を用いて電気絶縁性材料142の堆積と同時に行われてもよいし、または後に、たとえば接触パッド136をアブレートすること(ablating)により行われてもよい。電気絶縁性材料142は、1つまたは複数の電気絶縁層を形成してもよい。電気絶縁性材料142は、ともに膜層112上に堆積される、少なくとも1つの作用電極124、および任意に、少なくとも1つのさらなる電極130を、電気絶縁性材料142の、膜層112とは反対側を向く面上の少なくとも1つのさらなる電極から電気的に分離させ、それによって、両面に電極を有するセンサが設けられる。
【0100】
図7に示すさらなる方法ステップでは、少なくとも1つの第2導電性材料144が、電気絶縁性材料142上に堆積される。第2導電性材料144は、少なくとも1つの裏面電極146を形成してもよく、または少なくとも1つの裏面電極146を含んでもよく、少なくとも1つの裏面電極146は、一例として、対電極148であってもよく、または対電極148を含んでもよい。一例として、対電極148は、金属電極であってもよく、もしくは金属電極を含んでもよく、または、代替的に、Ag/AgClなどの酸化還元材料であってもよく、もしくは酸化還元材料を含んでもよい。一例として、対電極148は、たとえば、作用電極124よりも大きい面積に亘り拡がる大面積を有する電極であってもよい。
【0101】
第2導電性材料144は、少なくとも1つの裏面電極146に接触するための1つまたは複数の導電性リード150も含んでもよい。第2導電性材料144は、裏面電極146に電気的に接触するために、一例として、導電性リード150と電気的に接触している、1つまたは複数の裏面電極接触パッド154などの、1つまたは複数の接触パッド152も含んでもよい。したがって、第1導電性材料141の接触パッド136が、電気絶縁性材料142を含まない状態で、少なくとも1つの作用電極124および任意で少なくとも1つのさらなる電極130を含む正面電極に接触するように設けられ、第2導電性材料144の少なくとも1つの接触パッド152が、少なくとも1つの裏面電極146に電気的に接触するように設けられる。
【0102】
センサ110を製造するプロセスは、追加の方法ステップを含んでもよく、センサ110は、図1~7に示されない追加の要素を含んでもよい。したがって、一例として、センサ110は、さらなるステップにおいて、たとえば裏面電極146を被覆するため、1つまたは複数の生物的適合性層などの、1つまたは複数の追加の材料で完全に、または部分的に被覆されてもよい。少なくとも1つの生物的適合性層に対しては、一例として、ここでも、分析物および/またはセンサ110の生態的適合性を上昇させる他の材料に対して浸透性を有する膜材料が使用されてもよい。
【0103】
さらに、たとえば複数のセンサ110が組み合わされた様式で製造される場合、1つまたは複数の切断ステップのような、1つまたは複数の分離ステップが用いられてもよい。
【0104】
図面に示すプロセス・ステップのうちの1つまたは複数は、完全にまたは部分的に組み合わされてもよいことに留意すべきである。したがって、一例として、図5に示すプロセス・ステップは、図4および/または図3のプロセス・ステップのうちの1つまたは複数と組み合されてもよい。一例として、少なくとも1つのさらなる電極130は、導電性リード134と共に生成されてもよい。したがって、少なくとも1つの第1導電性材料141の堆積のステップは、単一のステップであってもよく、または単一のステップを含んでもよく、または複数のプロセス・ステップ、たとえば印刷ステップを含んでもよい。さらに、図面に示すプロセス・ステップのうちの1つまたは複数は、複数のサブステップを含んでもよい。したがって、一例として、少なくとも1つの第1導電性材料141の堆積、および/または第2導電性材料144の堆積は、それぞれ、独立して、単一ステップ・プロセスまたは多重ステップ・プロセスであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
110 センサ
112 膜層
114 挿入可能端
116 接触部
118 挿入可能部
120 電気絶縁層
122 未被覆領域
124 作用電極
126 試験化学物質
128 導電性作用電極パッド
130 さらなる電極
132 参照電極
134 導電性リード
136 接触パッド
138 作用電極接触パッド
140 参照電極接触パッド
141 第1導電性材料
142 電気絶縁性材料
144 第2導電性材料
146 裏面電極
148 対電極
150 導電性リード
152 接触パッド
154 裏面電極接触パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7