(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】太陽光保護コーティング及び熱放射反射コーティングを有する複合ペイン
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20220511BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220511BHJP
【FI】
C03C27/12 L
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2020530576
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 EP2018078077
(87)【国際公開番号】W WO2019110172
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-07-21
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ベスラー
(72)【発明者】
【氏名】バレンティン シュルツ
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-530351(JP,A)
【文献】特表2015-511570(JP,A)
【文献】特表2015-529587(JP,A)
【文献】特開2001-039742(JP,A)
【文献】特表2015-527948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0046355(US,A1)
【文献】特表2015-512854(JP,A)
【文献】特表2010-531778(JP,A)
【文献】特表2007-527353(JP,A)
【文献】特表2008-516878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 7/023
B32B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面(I)及び内側面(II)を有する外部ペイン(1)、外側面(III)及び内側面(IV)を有する内部ペイン(2)、並びに前記外部ペイン(1)の前記内側面(II)を前記内部ペイン(2)の前記外側面(III)に接合する熱可塑性中間層(3)を含む複合ペインであって、
前記複合ペインは、前記外部ペイン(1)と前記内部ペイン(2)との間に、太陽放射の可視スペクトル外の光
線を実質的に反射するか又は吸収する少なくとも一つの太陽光保護コーティング(4)を有し、かつ
前記複合ペインは、前記内部ペイン(2)の前記内側面(IV)に、熱放射反射コーティング(5)(low-Eコーティング)を有し、
ここで、
- 前記熱可塑性中間層(3)が、2~80%の光線透過率を有する着色した熱可塑性中間層であり、
- 前記熱放射反射コーティング(5)が、透明な導電性酸化物を含み、
- 前記複合ペインが、1%~12%の光線透過率TL
複合ガラスペインを有し、かつ
- 前記複合ペインが、0.02~0.08の透過指数Aを有し、前記透過指数Aが、以下の式(I)によって決定されることを特徴とする、複合ペイン:
A=TL
複合ガラスペイン/(TL
low-E被覆ペイン × TE) (I)
式中、TLは、ISO 9050に従って測定した光線透過率であり、
TL
複合ガラスペイン
は、前記複合ペイン全体を通じた光線透過率であり、TL
low-E被覆ペイン
は、前記熱放射反射コーティングと一緒になった前記内部ペインを通じた光線透過率であり、かつTEは、ISO 9050に従って測定した
、前記複合ペイン全体を通じたエネルギー透過率である。
【請求項2】
前記内部ペイン(2)の前記内側面(IV)の8°の角度での光線反射率が、6%未満である、請求項1に記載の複合ペイン。
【請求項3】
前記太陽光保護コーティング(4)が、誘電酸化物又は誘電窒化物
層の間に組み込まれた少なくとも一つの金属
層を有する層システムを含む、請求項1又は2に記載の複合ペイン。
【請求項4】
前記太陽光保護コーティング(4)が、前記外部ペイン(1)の内側面(II)に直接適用されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項5】
前記太陽光保護コーティング(4)が、前記中間層(3)に組み込まれたキャリアフィルム上に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項6】
前記中間層(3)が、少なくとも一つのポリマーフィルムから形成されて
いる、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項7】
少なくとも一つの前記ポリマーフィルムが
、5~50%
の光線透過率を有する、請求項6に記載の複合ペイン。
【請求項8】
前記熱放射反射コーティング(5)が、インジウムスズ酸化物、アンチモンをドープした若しくはフッ素をドープした酸化スズ、及び/又はアルミニウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:Al)、及び/又はガリウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:Ga)を含
む、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項9】
前記内部ペイン(2)と、前記内部ペインに適用された前記熱放射反射コーティング(5)とが一緒になって、25%~95%の光線透過率TL
low-E被覆ペインを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項10】
2%~10%の光線透過率TL
複合ガラスペインを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項11】
前記内部ペイン(2)と、前記内部ペインに適用された前記熱放射反射コーティング(5)とが一緒になって、6%未満
の、8°の角度での光線透過率を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項12】
- 前記中間層(3)の光線透過率が5~20%のとき、前記透過指数Aが、0.02~0.08の範囲内であり、
- 前記中間層(3)の光線透過率が20~25%のとき、前記透過指数Aが、0.04~0.08の範囲内であり、
- 前記中間層(3)の光線透過率が25~30%のとき、前記透過指数Aが、0.05~0.08の範囲内であり、かつ
- 前記中間層(3)の光線透過率が30%を超え
るとき、前記透過指数Aが、0.07~0.08の範囲内である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項13】
前記外部ペイン(1)及び/又は前記内部ペイン(2)が、0.5mm~4m
mの厚さを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項14】
電気的に制御可能な光学特性を有する機能要
素が、前記中間層(3)に組み込まれている、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合ペイン。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の複合ペインの、乗物のルーフパネルとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光保護コーティング及び熱放射反射コーティングを有する複合ペインと、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の一般的な部分に記載した特徴を有する複合ペインは公知であり、例えば、独国特許第19927683 C1号明細書から知られている。
【0003】
独国特許第19927683 C1号明細書は、少なくとも2つのガラスペインからなり、これらのペインを接合する透明な複合層を有し、かつ太陽放射の可視スペクトル外の光線、特に赤外線を実質的に反射する太陽光保護層を有する複合ガラスペインを記載しており、この複合ガラスペインは、その内部空間に面した面に、太陽光保護層とは空間的に離れた、熱放射を実質的に反射するさらなる透明なコーティング(low-E層)を具備することを特徴とする。独国特許第19927683 C1号明細書の目的は、太陽光保護特性を有するとともに、低い外部温度において、大きな面積のグレージングによる乗物内部からの熱の吸収を大幅に削減する複合ガラスペインを提供することにある。この複合ペインを通じた光線透過率は、例えば、31%である。
【0004】
サンルーフやスライド式ルーフなどに使用するもののようなグレージングには、2~10%の光線透過率と特定の太陽光からの保護とが必要とされ、これは、例えば、ISO 9050に従って測定する、ペインを通じて伝わる太陽からの全熱放射の測定値であるTTS値(日射熱取得率)によって特徴付けられる。より高い光線透過率の場合、一つには、過度の量の熱放射が伝わり、かつもう一つには、グレージングの後ろにいる人間が、過剰な光線によって視覚的に支障を来たしかねない。より低い光線透過率の場合、グレージングが全体として暗くなりすぎ、それによって、グレージングの後ろにいる人間は、もはやこのグレージングを通じて見ることができない。
【0005】
このため、2~10%の光線透過率と組み合わせた、可能な限り低いTTS値が目的とされており、それによって、ルーフを通じた外側の視覚と、良好な熱的特性との間の考え得る最良の妥協を保証するようになっている。したがって、低い放射輝度と、赤外線反射機能、すなわち、太陽放射制御機能とは、積層サンルーフ及びスライド式ルーフにおいて組み合わされなければならない。赤外線反射機能、すなわち、太陽放射制御機能は、外部ペインの内側の銀ベースのコーティングによって、又は2つのポリビニルブチラールフィルムの間のポリエチレンテレフタレートフィルムによって達成される。銀ベースのコーティングは、可視領域の光線の反射が、少なくとも10%と比較的高いという固有の不利益を有する。この反射率は、グレージングの内側で認識される反射率に影響を与える。6%未満、好ましくは4%未満の光線反射率は、乗物の乗員にとって邪魔なものとしては認識されない。日光を制御するコーティングと内部ペインとの間に、暗く着色したポリビニルブチラールフィルムを使用しても、この影響を完全に補償することはできず、かつ光線透過率によっては、内部ペインの内側の光線反射率を増加させる可能性がある。サンルーフ又はスライド式ルーフを通じた視界が損なわれ、かつ光学的な不快感を生じ、例えば、その結果として、サンルーフ又はスライド式ルーフにおけるダッシュボードの強い反射を生じるので、この光線反射率の増加は、乗物の乗員にとって、特に後部座席の乗員にとって不都合なものとして認識される。
【0006】
これらの不都合な点は、独国特許第19927683 C1号明細書で開示されているように、サンルーフ及びスライド式ルーフにおける複合ガラスペインにも影響を与える。
【0007】
国際公開第2013/127563 A1号は、ガラスペインと、内側面上のlow-Eコーティングとの間に太陽光保護層を有する別の複合ペインを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、2~10%という、複合ペインを通じた好ましい光線透過率の必要な範囲にわたって、内部ペインの内側で認識される、6%未満、好ましくは4%未満の一定の光線反射率を達成することにある。本発明のさらなる目的は、可能な限り低いTTS値を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明にしたがって、請求項1による複合ペインによって達成される。本発明による複合ペインは、外側面及び内側面を有する外部ペイン、外側面及び内側面を有する内部ペイン、並びに外部ペインの内側面を内部ペインの外側面に接合する熱可塑性中間層を含む複合ペインであって、ここで、この複合ペインは、外部ペインと内部ペインとの間に、太陽放射の可視スペクトル外の光線、特に赤外線を実質的に反射するか又は吸収する少なくとも一つの太陽光保護コーティングを有しており、かつこの複合ペインは、内部ペインの内側面に熱放射反射コーティングを有し、この複合ペインは、0.02~0.08の透過指数Aを有し、この透過指数A(A値)は、以下の式(I)によって決定される:
A=TL複合ガラスペイン/(TLlow-E被覆ペイン × TE) (I)
式中、TLは光線透過率であり、かつTEはエネルギー透過率であり、これらはそれぞれ、ISO 9050に従って測定された透過率である。
【0010】
「TL複合ガラスペイン」は、複合ペイン全体を通じた光線透過率を指す。「TLlow-E被覆ペイン」は、熱放射反射コーティングと一緒になった内部ペインを通じた光線透過率を指す。これらのTL値は、複合ペインの構成要素、すなわち、内部ペイン、外部ペイン、及び中間層の着色の選択によって適切に調整することができる。同様にTE値は、複合ペインの構成要素の着色の選択によって決定され、かつ太陽光保護コーティング及び熱放射反射コーティングの特性によっても決定される。これらの相応する値は、本発明による透過指数Aを達成するために、当業者が適切に選択することができる。
【0011】
基本的に、透過率の値は、ISO 9050以外の規格によっても測定することができ、この場合は透過指数Aがわずかに変化するだけである。
【0012】
驚くべきことに、こうした複合ペインは、複合ペインの光線反射率が6%未満、特に4%未満でありながら、1~12%、好ましくは2~10%という低い光線透過率を有し、かつ同時に、特に、50%未満、好ましくは35%未満、特に好ましくは25%未満という低い全透過熱放射(TTS)を有することが見出された。
【0013】
ここで、光線反射率は、8°の角度での反射率を指す。
【0014】
したがって、入射太陽放射の少ない部分のみがペインの後ろの空間へ到達し、それによって、一方では、有利なことに太陽光線からの保護を保証し、かつ他方では、複合ペインの後ろの空間の加熱を大部分防止すると同時に、内部ペインの内側での反射を最小限に減らすことができる。
【0015】
光線の透過率(TL)及び反射率(RL)についての値は、(自動車グレージングに通常であるように)タイプAの光線、すなわち、380nm~780nmの波長の太陽光の可視部の光線に関するものである。実質的に太陽放射の可視スペクトルの光線である光線、特に赤外線は、約800nmを超える波長の光線である。
【0016】
透過指数Aは、0.02~0.08、好ましくは0.04~0.08、特に好ましくは0.06~0.08、最も特に好ましくは0.07~0.08である。
【0017】
ウィンドウの開口部において、複合ペインは、内部空間、特に乗り物の内部を、外部環境から隔てることを意図している。複合ペインは積層体であり、かつ本発明の意味するところにおいて、「外部ペイン」及び「内部ペイン」と呼ばれ、かつ熱可塑性中間層を介して互いに接合している第一のペイン及び第二のペインを含む。本発明の意味するところにおいて、「内部ペイン」とは、設置位置において内側を向いたペインである。「外部ペイン」とは、設置位置において外部環境を向いたペインである。本発明の意味するところにおいて、「内側面(又は内面若しくは内部面)」とは、設置位置において内側を向いたペインの表面である。本発明の意味するところにおいて、「外側面(又は外面若しくは外部面)」とは、設置位置において外部環境を向いたペインの表面である。
【0018】
ガラスペインの表面は、典型的には以下のように言及される:
外部ペインの外側の面を面1と呼ぶ。外部ペインの内側の面を面2と呼ぶ。内部ペインの外側の面を面3と呼ぶ。内部ペインの内側の面を面4と呼ぶ。
【0019】
外部ペインの内側面及び内部ペインの外側面は、互いに向き合っており、かつ熱可塑性中間層によって互いに接合している。
【0020】
熱可塑性中間層は、一つの又は複数の熱可塑性フィルムから形成されている。熱可塑性フィルムは、好ましくは、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン(PU)、及び/又はそれらの混合物、及び/又はそれらのコポリマーを含み、特に好ましくはポリビニルブチラールを含む。このフィルムは、好ましくは上記の材料をベースとするが、その他の成分、例えば、可塑剤、着色剤、赤外線(IR)又は紫外線(UV)吸収剤などを含むことができ、好ましくは、これらの成分を50%未満の含有量で含む。
【0021】
少なくとも一つの熱可塑性ポリマーフィルム、特に少なくとも一つのPVBフィルムが、2~80%、好ましくは5~50%、特に好ましくは8~36%の光線透過率を有する着色した熱可塑性ポリマーフィルム、特に着色したPVBフィルムであることが好ましい。着色した熱可塑性ポリマーフィルムを使用すると、積層ガラス全体に対する光線透過率を、熱可塑性ポリマーフィルムの選択によって有利に調節することができるという点で有利である。加えて、特定の光線透過率及び特定のlow-E層を有する複数の熱可塑性ポリマーフィルムを組み合わせることによって、複合ガラスペインの面4の反射率を6%未満という好ましい範囲に調整することができる。
【0022】
個々のポリマーフィルム、特にPVBフィルムは、好ましくは、約0.2mm~1mm、例えば、0.38mm又は0.76mmの厚さを有する。複合ガラスペインのその他の特性は、これらのフィルムの厚さによって影響を受けることがある。例えば、より厚いPVBフィルムは、特に音響的に活性なコアを含むときに、改善した音響減衰を付与し、複合ガラスペインの増加した破壊抵抗性をもたらし、かつ紫外線放射に対する増大した保護(UV防護)も提供する。
【0023】
本発明によれば、太陽光保護コーティング(又は太陽光保護層)を、外部ペインと内部ペインの間に配置する。好ましい実施態様では、太陽光保護コーティングを、外部ペインの内側面に適用する。別の好ましい実施態様では、太陽光保護コーティングを、熱可塑性中間層に組み込む。この目的のために、2つの熱可塑性フィルムの間に配置したキャリアフィルムに、太陽光保護コーティングを適用する。キャリアフィルムは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、20μm~100μm、例えば、おおよそ50μmの厚さを有する。別の実施態様では、太陽光保護コーティングを、内部ペインの外側面に適用する。
【0024】
太陽光保護コーティングの役割は、太陽放射の一部、特に赤外領域の部分を除去することである。太陽光保護コーティングは、好ましくは、少なくとも一つの誘電体層それぞれの間に組み込んだ、少なくとも一つの薄い透明な金属層を含む。比較的中間的な色彩効果を有し、かつ太陽放射の可視領域外の赤外線放射を選択的に反射する、という両者の特性を備えているので、銀は、この金属層のために好ましい金属としてそれ自体が認められている。誘電体層は、その屈折率に起因して、被覆したペインの光学特性を向上させ、かつこの金属機能層を酸化から保護する役割を有する。例えば、反応性スパッタリング法を用いて製造することができるこうした太陽光保護層は、建物用のグレージングに広く使用されているが、既に動力乗物にも広く使用されている。銀機能層の効果的な働きを理由として、すなわち、可視光の透過に比較して可視領域外の赤外線放射の反射がより大きいという理由から、大抵の場合、2つの銀機能層を有する層システム、さらには、3つまたは4つの銀機能層を有する層システムを使用する。
【0025】
好適な太陽光保護コーティングは公知であり、例えば、国際公開第2013/104439 A1号から、及び独国特許第19927683 C1号明細書から知られている。
【0026】
誘電体層は、好ましくは、誘電酸化物又は誘電窒化物をベースとし、例えば、ZnO、SnZnO、AlN、SiO2、TiO2、又はSi3N4などである。
【0027】
無機コーティング、特に銀ベースのコーティングの代替として、太陽光保護コーティングを、非金属の有機物ベース上に形成することもできる。この場合、太陽光保護コーティングは、好ましくは、異なる屈折率又は交互の屈折率を有する、数個の、典型的には数百の有機層の積層体である。この積層体は、干渉効果に起因して赤外線放射を反射する複屈折の誘電性干渉積層体である。金属コーティングと比較して、このような有機コーティングは、より高い色彩の中間性及びより高い光線透過率という利点を有する。さらに、これらのコーティングは、電磁信号の伝達を妨げない。PETキャリアフィルム上のこうした太陽光保護コーティングは、例えば、商標名「Ultra-Clear Solar Film」の下で3M社から提供されている。
【0028】
本発明によれば、熱放射を反射するコーティングを、内部ペインの内側(面4)に適用する。このようなコーティングは公知であり、例えば、国際公開第2013/131667 A1号から知られている。熱放射反射コーティングは、低放射率コーティング、放射率低減コーティング、low-Eコーティング、又はlow-E層とも呼ばれている。熱放射反射コーティングの役割は、熱放射を反射することであり、すなわち、特に太陽放射の赤外部成分よりも長い波長を有する赤外線放射を反射することである。外部温度が低いとき、low-Eコーティングは、熱を反射して内部に戻し、かつ内部の冷却を低減する。外部温度が高いとき、low-Eコーティングは、外側で加熱された複合ペインの熱放射を反射し、かつ内部の加熱を低減する。内部ペインの内側では、本発明によるコーティングは、夏に特に効果的に、内部へのペインからの熱放射の放出を低減し、かつ冬に外部環境への熱の放出を低減する。
【0029】
熱放射反射コーティングは、好ましくは、透明な導電性酸化物(TCO)を含む機能性層を含み、透明な導電性酸化物は、好ましくは、インジウムスズ酸化物、アンチモンをドープした若しくはフッ素をドープした酸化スズ、及び/又はガリウム及び/又はアルミニウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:Ga及び/又はZnO:Al)を含み、好ましくはインジウムスズ酸化物を含む。しかしながら、機能性層は、他の導電性酸化物、例えば、フッ素をドープした酸化スズ(SnO2:F)、アンチモンをドープした酸化スズ(SnO2:Sb)、インジウム亜鉛混合酸化物(IZO)、ガリウムをドープした又はアルミニウムをドープした酸化亜鉛、ニオブをドープした酸化チタン、スズ酸カドミウム、及び/又はスズ酸亜鉛を含むこともできる。したがって、本発明によるコーティングの放射率及び曲げ性の観点から、良好な結果を達成する。機能性層の材料の屈折率は、好ましくは、1.7~2.5である。
【0030】
好ましくは、インジウムスズ酸化物のターゲットをマグネトロン強化カソードスパッタリングすることによって、インジウムスズ酸化物を堆積する。好ましくは、このターゲットは、75重量%から95重量%までの酸化インジウム、及び5重量%から25重量%までの酸化スズ、並びに製造関連の混ぜ物を含む。スズをドープした酸化インジウムの堆積は、好ましくは、保護ガス雰囲気下で、例えばアルゴン下で行われる。例えば、機能性層の均質性を向上させるために、保護ガスに少量の酸素を添加することもできる。
【0031】
あるいは、ターゲットは、好ましくは、75重量%から95重量%までのインジウム、及び5重量%から25重量%までのスズを含むことができる。インジウムスズ酸化物の堆積は、好ましくは、カソードスパッタリング中に、反応性ガスとしての酸素を添加しながら行われる。
【0032】
熱放射反射コーティングは、典型的には誘電体層も含み、特に、誘電酸化物又は誘電窒化物、例えば、ZnO、SnZnO、AlN、TiO2、SiO2、又はSi3N4でできている。反射導電性酸化物の層は、上下に追加の誘電体層を使用することによって、反射防止にし、かつ内側からの十分に低い反射を保証する。
【0033】
本発明によるペインの放射率は、熱放射反射コーティングの機能性層の厚さによって影響を受けることがある。機能性層の厚さは、好ましくは40nm~200nm、特に好ましくは60nm~150nm、最も特に好ましくは65nm~85nmであり、例えば約75nmである。この範囲の厚さにおいて、特に有利な放射率の値が得られ、かつ損傷することなく曲げ加工又は強化処理のような機械的変形に耐える特に有利な熱放射反射コーティングの能力が得られる。
【0034】
本発明による複合ペインの内側放射率は、好ましくは、50%又はこれ未満であり、特に好ましくは10%~50%、最も特に好ましくは20%~35%である。「内側放射率」は、理想的な熱放射(黒体)と比較して、例えば建物の又は乗物の内部へ設置位置においてペインが放射する熱放射がどのくらいであるかを示す測定値である。本発明の意味するところにおいて、「放射率」とは、EN 12898規格に従う、283Kでの垂直放射率を意味する。
【0035】
本発明による複合ペインはまた、好ましくは、複合ペインに適用した熱放射反射コーティング(low-E層)と一緒になった内部ペインが、25%~95%の光線透過率を有することを特徴とする。
【0036】
外部ペイン及び内部ペインは、互いに独立して、好ましくはガラス又はプラスチックでできており、好ましくは、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、ポリカーボネート、又はポリメタクリレートでできている。特に好ましい実施態様では、外部ペイン及び内部ペインは、ガラスでできている。
【0037】
好適なガラスペインは、サン-ゴバン社からの商標名VG10,VG20、VG40又はTSANx、TSA3+、TSA4+の下で知られている、VGシリーズのグレーの着色ガラスからのガラス、及びTSAシリーズのグリーンの着色ガラスからのガラスを有するガラスペインを含む。
【0038】
外部ペイン及び/又は内部ペインは、互いに独立して、好ましくは、0.1~4mmの厚さを有し、好ましくは1~4mm、特に好ましくは1.6mm~約2.1mmの厚さを有する。
【0039】
本発明による複合ペインは、好ましくは、1%~12%の光線透過率を有し、好ましくは2%~10%の光線透過率を有する(ISO 9050に従って測定した透過率)。
【0040】
熱放射反射コーティング(low-Eコーティング)を適用した内部ペインは、好ましくは、8°の角度で6%未満の光線反射率(RL)を有し、特に好ましくは4.0%未満の光線反射率を有する(ISO 9050に従って測定した反射率)。これは、複合ペインの一部としての被覆された内部ペインの光線反射率を意味し、言い換えれば、複合ペインの内側反射率、すなわち、外部ペインとは反対側の内部ペインの表面での光線反射率を意味する。
【0041】
透過指数Aは、理想的には、中間層の光線透過率の関数として設定され、それによって、最適な特性を達成するようになっている。好ましくは、透過指数Aは、以下のとおりである:
- 中間層の光線透過率(TL)が5~20%のとき、0.02~0.08の範囲内であり、
- 中間層の光線透過率が20~25%のとき、0.04~0.08の範囲内であり、
- 中間層の光線透過率が25~30%のとき、0.05~0.08の範囲内であり、かつ
- 中間層の光線透過率が30%を超え、好ましくは30~50%のとき、0.07~0.08の範囲内である。
【0042】
好ましくは、中間層の光線透過率の上記範囲は決定的であり、つまり、中間層は、中間層の光線透過率について上記の依存関係を示す透過指数Aを有しつつ、5~50%の光線透過率を有する。
【0043】
特に有利な実施形態では、複合ペインは、中間層の光線透過率が8%~36%でありながら、0.07~0.08の透過指数を有する。これは、特に良好な結果を与える。
【0044】
本発明のさらに有利な発展形態では、電気的に制御可能な光学特性を有する機能性要素を熱可塑性中間層に組み込む。これは、複合ペインを通じた視界を電気的に制御すること、特に、澄み渡って透明な状態と、透過率が減少した状態との間で制御することを可能にする。複合ペイン又は中間層の光線透過率について示した値は、澄み渡って透明な状態にある、機能性要素を有する複合ペインについてのものである。
【0045】
このような機能性要素を、典型的には、赤外線放射による損傷から機能性要素を保護するための太陽光保護コーティングと組み合わせて使用する。低減した内部側の反射を有する本発明による複合ペインは、特に、電気的に制御可能な機能性要素と組み合わさってその利点を示す。つまり、特に、ペインが透明な状態に切り替えられたとき、この状態はまさに、外部に対する遮るもののない視界が望ましいときであるので、不必要な内部側での反射は、邪魔なものとして認識される。
【0046】
中間層の熱可塑性材料の少なくとも2つの層の間、特に、2つのポリマーフィルムの間に機能性要素を配置し、ここで、機能性要素は、第一の層によって外部ペインに結合し、かつ第二の層によって内部ペインに結合する。機能性要素の側端部は、中間層で完全に取り囲まれており、それによって、機能性要素が複合ペインの側端部までは延在せず、したがって、機能性要素が周囲の外気と接触しないようにされている。縁の領域での機能性要素の厚さを補償するために、機能性要素を熱可塑性材料の第三の層の凹部に挿入することができる。
【0047】
機能性要素は、第一のキャリアフィルムと第二のキャリアフィルムとの間に配置した少なくとも一つの活性層を含む。活性層は、この活性層に加える電圧によって制御することができる変化する光学特性を有する。本発明の意味するところにおいて、「電気的に制御可能な光学特性」とは、無限に制御可能であるが、2つまたはそれを超える個別の状態間で切り替えることができる特性も意味する。これらの光学特性は、特に、光学透過率及び/又は散乱挙動に関する。機能性要素は、活性層に電圧を加えるための表面電極を含み、好ましくは、表面電極をキャリアフィルムと活性層の間に配置する。
【0048】
好ましい実施形態では、機能性要素は、PDLC機能性要素(ポリマー分散型液晶)である。PDLC機能性要素の活性層は、ポリマーマトリックスに組み込んだ液晶を含む。表面電極に電圧が加えられていないときは、液晶は無秩序な形態で配向しており、その結果、活性層を通過した光を強く散乱する。表面電極に電圧が加えられると、液晶それら自体が共通の方向に整列し、活性層を通じた光線の透過が増大する。
【0049】
別の好ましい実施形態では、機能性要素は、SPD機能性要素(懸濁粒子デバイス)である。活性層が懸濁粒子を含んでおり、この活性層による光の吸収を、表面電極に電圧を加えることによって変化させることができる。しかしながら、原則として、別のタイプの制御可能な機能性要素、例えば、エレクトロクロミック機能性要素を使用することも可能である。言及した機能性要素とそれらの操作様式は、それ自体当業者に公知であり、そのため、詳細な説明はここでは省略する。
【0050】
表面電極は、好ましくは、透明な導電層として設計される。表面電極は、好ましくは、少なくとも、金属、金属合金、又は透明な導電性酸化物(TCO)を含む。表面電極は、例えば、銀、金、銅、ニッケル、クロム、タングステン、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムをドープした若しくはアルミニウムをドープした酸化亜鉛、及び/又はフッ素をドープした若しくはアンチモンをドープした酸化スズを含むことができる。表面電極は、好ましくは、10nm~2μmの厚さを有し、特に好ましくは20nm~1μm、最も特に好ましくは30nm~500nmの厚さを有する。
【0051】
機能性要素は、2つの外側キャリアフィルムを有する多層フィルムとして存在する。このような多層フィルムにおいて、表面電極と活性層とは、典型的には2つのキャリアフィルムの間に配置される。ここで、「外側キャリアフィルム」とは、このキャリアフィルムが多層フィルムの2つの表面を形成していることを意味する。したがって、有利に加工することができる積層フィルムとして機能性要素を提供することができる。機能性要素は、有利には、キャリアフィルムによって損傷、特に腐食から保護されている。多層フィルムは、少なくとも一つのキャリアフィルム、少なくとも一つの表面電極、少なくとも一つの活性層、別の表面電極、及び別のキャリアフィルムを、ここに示した順番で含む。典型的には、キャリアフィルムは、それぞれ、活性層に面しておりかつ表面電極として機能する導電性コーティングを有する。キャリアフィルムは、典型的にはPETを含み、かつ0.1mm~1mm、特に0.1mm~0.2mmの厚さを有する。
【0052】
本発明はまた、乗物における本発明による複合ペインの使用に関し、好ましくは乗物のルーフパネルとしての、特に好ましくは動力乗物、特に乗用車のルーフパネルとしての使用に関する。
【0053】
本発明は、さらに、本発明の複合ガラスペインを含む乗物、好ましくは動力乗物に関する。
【0054】
以下に、図面及び例示的な実施形態を参照しながら、本発明を詳細に説明する。図面は概略図であって、正確な縮尺ではない。図面は決して本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明による複合ペインの実施形態の断面図である。
【
図2】中間層(PVB)の光線透過率(TL)の関数として、本発明による複合ペインの実施形態の反射率(RL)を示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、本発明による複合ペインの実施形態の断面図を示したものである。この複合ペインは、熱可塑性中間層3を介して互いに接合している外部ペイン1及び内部ペイン2を含む。複合ペインは、おおよそ1m
2の大きさを有し、外部ペイン1が外部環境に面することを意図し、かつ内部ペイン2が乗物の内部に面することを意図しながら、乗用車のルーフパネルとして使用することを意図している。外部ペイン1は、外側面I及び内側面IIを有している。内部ペイン2は、外側面III及び内側面IVを有している。外側面I及び外側面IIIは、設置位置において外部環境に向けられており、内側面II及び内側面IVは、設置位置において乗物内部に向けられている。外部ペイン1の内側面IIと、内部ペイン2の外側面IIIとは互いに向き合っている。外部ペイン1及び内部ペイン2は、ソーダ石灰ガラスを含み、それぞれ2.1mmの厚さを有する。熱可塑性中間層3は、ポリビニルブチラール(PVB)を含むか、又はポリビニルブチラールでできており、0.76mmの厚さを有する。
【0057】
太陽光保護コーティング4は、外部ペイン1の内側面IIに配置されている。太陽光保護コーティング4は、8mmの幅を有する周縁フレームの形状のコーティングのない領域を除いて面IIの全体にわたって延在している。コーティングのない領域は、熱可塑性中間層3と接合することによって密閉してシールされている。したがって、太陽光保護コーティング4は、有利に、損傷及び腐食から保護されている。太陽光保護コーティング4は、例えば、少なくとも銀を含むか又は銀でできており、かつ10nm~20nmの層厚を有する少なくとも2つの機能層を含み、ここで、それぞれの機能層は、40nm~70nmの厚さを有する窒化ケイ素でできている2つの誘電体層の間に配置されている。
【0058】
熱放射反射コーティング5は、内部ペイン2の内側面IVの上に配置されている。このコーティング5は、60nm~150nmの厚さを有する機能性ITO層を含む。このコーティング5は、さらに、この機能層の上下に追加の誘電体層を含み、これらの誘電体層は、特に、AlをドープしたSiO2及びSi3N4でできている。
【0059】
太陽光保護コーティング4は、赤外線放射の反射によって、乗物の内部及び内部ペイン2の加熱を減少させることをもたらす。一方で、熱放射反射コーティング5は、特に外部温度が高い場合に、乗物の内部への複合ペインによる熱放射の放熱を低減する。他方で、熱放射反射コーティング5は、外部温度が低い場合に、乗物の内部から外への熱放射の放熱を低減する。
【0060】
図2は、PVBでできた中間層3の光線透過率(TL)の関数としての、透過指数Aの異なる値を有する複合ガラスペインの反射コーティング(low-E層)の光線反射率(RT)を示す。
【実施例】
【0061】
以下に、添付の図面を参照しながら、非限定的な例示の実施形態を用いて本発明を詳細に説明する。
【0062】
【0063】
表の説明:
IRRガラス: 太陽光保護コーティング4を有する外部ペイン1
太陽光保護コーティング4を有し、3つの機能性銀層を含む、
PLC 2.1mmガラスペイン(サン-ゴバン)
PVB: 中間層3
異なるTL(透過率)の着色したPVBフィルム
Low-Eガラス: 熱放射反射コーティング5を有する内部ペイン2
それぞれ熱放射反射コーティング5を有し、機能性ITO層を
含む、異なる光線透過率のガラスペイン(サン-ゴバン)
a)VG10ガラス、2.1mm
b)VG20ガラス、2.1mm
c)VG40ガラス、2.1mm
d)TSA4+ガラス、2.1mm
e)PLCガラス、2.1mm
製品: 完全な複合ペイン
RL 面4: 上記で定義したとおりの反射率
A: 上記で定義したとおりの透過率
【0064】
表1に列挙した組み合わせによって、6%未満の、好ましくは4%未満の有利な反射率を達成できることがわかる。加えて、0.05~0.08の高い透過指数で、面4におけるRL(反射率)に著しく悪影響を与えずに、使用する複数のPVBフィルムの透過率の大きな変動が可能であることがわかる。透過指数が小さくなればなるほど、面4の反射率を好ましい範囲から外れないようにするには、使用する複数のPVBフィルムの透過率の変動はより小さくなる。
【0065】
【0066】
暗色のVG10 2.1mmガラスは、0.08の透過指数Aを有している(
図2におけるダイヤ形の記号)。軽量PLC 2.1mmガラスは、0.02の透過指数Aを有している(
図2における三本線の*の記号)。
【0067】
図2は、中間層3の光線透過率の増加に伴って、透過指数Aの異なる値を有する全ての複合ガラスペインの反射コーティング(low-E層)の光線反射率が増加することを示している。例えば、0.08という高い透過指数Aを有する複合ガラスペインについて、中間層3の光線透過率の増加に伴う反射コーティング(low-E層)の光線反射率の増加は、例えば、0.02という低い透過指数Aを有する複合ガラスペインについてのものよりも、緩やかに上昇している。
【0068】
【0069】
比較例は、VG10ガラスでできた内部ペインの厚さが、2.1mmではなく3.9mmであり、36%の透過率(TL)の中間層のみを有する変形であるという点で、実施例のa)とは異なる。ここでの透過指数Aは、明らかに目標とする範囲外であることがわかる。内部ペインの厚さではなく、内部ペインの着色の度合いを高めた場合にも、類似の結果が起こり得る。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]外側面(I)及び内側面(II)を有する外部ペイン(1)、外側面(III)及び内側面(IV)を有する内部ペイン(2)、並びに前記外部ペイン(1)の前記内側面(II)を前記内部ペイン(2)の前記外側面(III)に接合する熱可塑性中間層(3)を含む複合ペインであって、
前記複合ペインは、前記外部ペイン(1)と前記内部ペイン(2)との間に、太陽放射の可視スペクトル外の光線、特に赤外線を実質的に反射するか又は吸収する少なくとも一つの太陽光保護コーティング(4)を有し、かつ
前記複合ペインは、前記内部ペイン(2)の前記内側面(IV)に、熱放射反射コーティング(5)(low-Eコーティング)を有し、
ここで、
- 前記熱放射反射コーティング(5)が、透明な導電性酸化物を含み、
- 前記複合ペインが、1%~12%の光線透過率TL
複合ガラスペイン
を有し、かつ
- 前記複合ペインが、0.02~0.08の透過指数Aを有し、前記透過指数Aが、以下の式(I)によって決定されることを特徴とする、複合ペイン:
A=TL
複合ガラスペイン
/(TL
low-E被覆ペイン
× TE) (I)
式中、TLは、ISO 9050に従って測定した光線透過率であり、かつTEは、ISO 9050に従って測定したエネルギー透過率である。
[2]前記内部ペイン(2)の前記内側面(IV)の8°の角度での光線反射率が、6%未満である、上記[1]に記載の複合ペイン。
[3]前記太陽光保護コーティング(4)が、誘電酸化物又は誘電窒化物層の間に組み込まれた少なくとも一つの金属層、特に少なくとも一つの金属銀層を有する層システムを含む、上記[1]又は[2]に記載の複合ペイン。
[4]前記太陽光保護コーティング(4)が、前記外部ペイン(1)の内側面(II)に直接適用されている、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[5]前記太陽光保護コーティング(4)が、前記中間層(3)に組み込まれたキャリアフィルム上に配置されている、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[6]前記中間層(3)が、少なくとも一つのポリマーフィルムから形成されており、このポリマーフィルムが、好ましくは、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、及び/又はそれらの混合物、及び/又はそれらのコポリマーを含み、好ましくはポリビニルブチラールを含む、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[7]少なくとも一つの前記ポリマーフィルムが、2~80%の、好ましくは5~50%の、特に好ましくは8~36%の光線透過率を有する、上記[6]に記載の複合ペイン。
[8]前記熱放射反射コーティング(5)が、インジウムスズ酸化物、アンチモンをドープした若しくはフッ素をドープした酸化スズ、及び/又はアルミニウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:Al)、及び/又はガリウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:Ga)を含み、好ましくはインジウムスズ酸化物を含む、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[9]前記内部ペイン(2)と、前記内部ペインに適用された前記熱放射反射コーティング(5)とが一緒になって、25%~95%の光線透過率TL
low-E被覆ペイン
を有する、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[10]2%~10%の光線透過率TL
複合ガラスペイン
を有する、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[11]前記内部ペイン(2)と、前記内部ペインに適用された前記熱放射反射コーティング(5)とが一緒になって、6%未満の、好ましくは4.0%未満の、8°の角度での光線透過率を有する、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[12] - 前記中間層(3)の光線透過率が5~20%のとき、前記透過指数Aが、0.02~0.08の範囲内であり、
- 前記中間層(3)の光線透過率が20~25%のとき、前記透過指数Aが、0.04~0.08の範囲内であり、
- 前記中間層(3)の光線透過率が25~30%のとき、前記透過指数Aが、0.05~0.08の範囲内であり、かつ
- 前記中間層(3)の光線透過率が30%を超え、好ましくは30~50%のとき、前記透過指数Aが、0.07~0.08の範囲内である、
上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[13]前記外部ペイン(1)及び/又は前記内部ペイン(2)が、0.5mm~4mm、好ましくは1.6mm~2.1mmの厚さを有する、上記[1]~[12]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[14]電気的に制御可能な光学特性を有する機能要素、特にPDLC構成要素又はSPD構成要素が、前記中間層(3)に組み込まれている、上記[1]~[13]のいずれか一つに記載の複合ペイン。
[15]上記[1]~[14]のいずれか一つに記載の複合ペインの、乗物のルーフパネルとしての使用。
【符号の説明】
【0070】
1 外部ペイン
2 内部ペイン
3 熱可塑性中間層
4 太陽光保護コーティング
5 熱放射反射コーティング/low-Eコーティング
I 外部ペイン1の外側面(外部面)
II 外部ペイン1の内側面(内部面)
III 内部ペイン2の外側面(外部面)
IV 内部ペイン2の内側面(内部面)