(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
(21)【出願番号】P 2020551473
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(86)【国際出願番号】 CN2020076451
(87)【国際公開番号】W WO2021004068
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】201910617806.8
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520362583
【氏名又は名称】艾凡佳徳(上海)環保科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】AVANTGARDE (SHANGHAI) ENVIRONMENTAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room A3-7338, No. 58 Fumin Branch Road, Hengsha Town, Chongming District, (Hengtai Economic Development Zone, Shanghai)Shanghai 201500 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】方 華玉
(72)【発明者】
【氏名】李 天源
(72)【発明者】
【氏名】朱 恩斌
(72)【発明者】
【氏名】王 読彬
(72)【発明者】
【氏名】余 国清
(72)【発明者】
【氏名】陳 錦程
(72)【発明者】
【氏名】呉 建通
(72)【発明者】
【氏名】陳 建華
(72)【発明者】
【氏名】林 勝尭
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0105781(KR,A)
【文献】特開2003-033916(JP,A)
【文献】特開2000-086807(JP,A)
【文献】特開2015-021054(JP,A)
【文献】特開2007-186549(JP,A)
【文献】特開2011-079807(JP,A)
【文献】特開2002-249557(JP,A)
【文献】特開2006-335856(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1347906(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-11/28
B29B 17/00-17/04
B09B 3/00- 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄ポリエステルを乾燥、脱酸素して廃棄ポリエステル原料を得る材料前処理ステップと、
廃棄ポリエステル原料を溶融する溶融ステップと、
加アルコール分解触媒を加アルコール分解剤に溶解して加アルコール分解液を調製するステップと、
溶融した前記廃棄ポリエステル原料、
および前記加アルコール分解液を、溶融状態で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入し、1回目の加アルコール分解を行い、溶融体Aを得、前記溶融体Aを第2加アルコール分解釜に連続的に投入し、2回目の加アルコール分解を行い、加アルコール分解物を得る加アルコール分解ステップと、
前記加アルコール分解物、エステル交換剤およびエステル交換触媒を、溶融状態でエステル交換釜に投入し、エステル交換反応を行い、粗DMTを得るエステル交換ステップと、
粗DMTの結晶化、分離および精製ステップと、を含み、
前記第1加アルコール分解釜と第2加アルコール分解釜とは直列して連通することを特徴とする、廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項2】
前記加アルコール分解ステップの前に、前記廃棄ポリエステル原料を濾過処理するステップをさらに含む。ことを特徴とする、請求項1に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項3】
前記加アルコール分解剤は、エチレングリコールであり、前記廃棄ポリエステル原料と加アルコール分解剤とは、重量比1.0:1.0-2.0で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入されることを特徴とする、請求項1に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項4】
前記加アルコール分解触媒は、炭酸カリウムまたは酢酸亜鉛であり、前記廃棄ポリエステル原料の重量に対して前記加アルコール分解触媒の添加量は0.3wt%-3.0wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項5】
加アルコール分解剤の重量
に対して前記加アルコール分解触媒の添加量は10wt%-70wt%であることを特徴とする、請求項
1に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項6】
前記第1加アルコール分解釜および第2加アルコール分解釜内の反応プロセス条件は、いずれも加アルコール分解温度180℃-200℃、加アルコール分解時間40min-90minであることを特徴とする、請求項5に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項7】
前記エステル交換剤はメタノールであり、前記廃棄ポリエステル原料とエステル交換剤との重量比は1.0:1.0-3.0であることを特徴とする、請求項1に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項8】
前記エステル交換触媒は水酸化ナトリウムまたは炭酸カリウムであり、前記廃棄ポリエステル原料の重量に対して、前記エステル交換触媒の添加量は0.2wt%-5.0wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項9】
前記廃棄ポリエステル原料の重量に対して、前記エステル交換触媒の添加量は0.3wt%-2.0wt%であることを特徴とする、請求項8に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【請求項10】
前記エステル交換反応のプロセス条件は、反応温度60℃-80℃、反応時間30min-90minであることを特徴とする、請求項7または8に記載の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄ポリエステル材料の回収方法に関し、特に、廃棄ポリエステルを化学方法により回収してテレフタル酸ジメチル(DMT)を製造する方法に関し、廃棄ポリエステル回収利用の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)は、生産量が最も多い合成繊維材料であり、繊維、ファブリック、服装、ポリエステルボトル、フィルム、シート材などの製品に幅広く用いられている。環境意識の向上、資源の節約、持続可能性の必要性に応じて、ポリエステル製品の製造で発生する切れ端とポリエステル製品の廃棄物をどのように処理するかは解決すべき課題となっており、廃棄ポリエステルの回収利用は環境に優しい紡績の発展方向となっている。
【0003】
現在、廃棄ポリエステルの回収方法には、主に物理的回収および化学的回収がある。物理的回収方法は簡単で、経済的であるが、再生製品の性能が悪い。化学的回収では、廃棄ポリエステルをエチレングリコール(EG)により加アルコール分解してビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)またはオリゴマーを生成し、その後、メタノール中でエステル交換反応させ、テレフタル酸ジメチル(DMT)およびエチレングリコールを生成し、精製して得られた精製DMTをポリエステルの生産原料として使用し、メタノールおよびエチレングリコールを精製して反応系に再利用することにより、廃棄ポリエステルの循環利用を実現する。
【0004】
米国特許US6706843B1には、廃棄ポリエステルを回收してDMTを製造する方法が開示されている。この特許において、廃棄ポリエステル重量の0.5-20倍のEGを用い、触媒の存在で、温度175℃-190℃の条件下で廃棄ポリエステルを加アルコール分解し、その後、加アルコール分解物を蒸留濃縮してEGを留出し、濃縮後の加アルコール分解物中のEGと廃棄ポリエステルとの重量比を0.5-2とする。濃縮後の加アルコール分解物をさらにメタノールとエステル交換反応させてDMTを生成し、精留により精製して精製DMTを製造する。この技術では、固体ポリエステルと液体のEGの加アルコール分解反応を使用し、加アルコール分解反応は固-液不均一相系反応であり、反応時間が長く、廃棄ポリエステルの加アルコール分解過程において、加アルコール分解に必要なEG量が大きく、エステル交換反応をスムーズに進行させ、最終生成物への過剰なEGの混入などによるDMT製品品質に対する影響を回避するために、加アルコール分解生成物中のEGの一部を留出する必要があり、加アルコール分解物の濃縮工程があるので、エネルギー消費が高くなり、濃縮設備を増設する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、従来技術に所存する固-液不均一相系加アルコール分解の反応時間が長く、製品中の不純物が多く、濃縮設備の増設によるエネルギー消費、手動メンテナンスのコストが高いという問題を解決するために、廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、廃棄ポリエステルを乾燥、脱酸素して廃棄ポリエステル原料を得る材料前処理ステップと、
上記廃棄ポリエステル原料、加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒を、溶融状態で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入し、1回目の加アルコール分解を行い、溶融体Aを得、上記溶融体Aを第2加アルコール分解釜に連続的に投入し、2回目の加アルコール分解を行い、加アルコール分解物を得る加アルコール分解ステップと、
上記加アルコール分解物、エステル交換剤およびエステル交換触媒を、溶融状態でエステル交換釜に投入し、エステル交換反応を行い、粗DMTを得るエステル交換ステップと、
粗DMTの結晶化、分離および精製ステップと、を含み、
上記第1加アルコール分解釜と第2加アルコール分解釜とは直列して連通する廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法が提供される。
【0007】
従来技術に比べ、本発明は少なくとも以下の有益な効果を有する。
本発明の回収方法は、連続供給、連続加アルコール分解のプロセスを採用し、材料を溶融状態下で均一相系の加アルコール分解することにより、加アルコール分解の時間が短く、直列した2つ以上の加アルコール分解釜により連続加アルコール分解を行うことにより、加アルコール分解物の製品品質が安定する。また、加アルコール分解過程のEG使用量を最適化することにより、加アルコール分解ステップ後に蒸留濃縮の必要がなく、加アルコール分解物はそのままエステル交換釜に入ってエステル交換反応を行うので、濃縮設備が節約される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の技術内容、構造特徴、目的および効果を説明する。
【0010】
本発明の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法は、
廃棄ポリエステルを乾燥、脱酸素して廃棄ポリエステル原料を得る材料前処理ステップと、
上記廃棄ポリエステル原料、加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒を、溶融状態で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入し、1回目の加アルコール分解を行い、溶融体Aを得、上記溶融体Aを第2加アルコール分解釜に連続的に投入し、2回目の加アルコール分解を行い、加アルコール分解物を得る加アルコール分解ステップと、
上記加アルコール分解物、エステル交換剤およびエステル交換触媒を、溶融状態でエステル交換釜に投入し、エステル交換反応を行い、粗DMTを得るエステル交換ステップと、
粗DMTの結晶化、分離および精製ステップと、を含み、
上記第1加アルコール分解釜と第2加アルコール分解釜とは直列して連通する。
【0011】
本発明者は、大量の研究により、廃棄ポリエステルを乾燥および脱酸素処理しないと、含水率およびその表面酸素が後続の加アルコール分解反応の過程および反応生成物に大きい影響を与え、上記廃棄ポリエステルを一般的なプロセスにより乾燥除水、脱酸素処理するだけで、自然環境での廃棄ポリエステルの含水率を2%から300ppm以下に減少でき、得られた廃棄ポリエステル原料をスクリュー溶融するときに副反応の発生可能性が低下し、後続製品の純度および反応効率が保証されることを発見した。
【0012】
上記廃棄ポリエステル原料、加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒を溶融状態で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入して1回目の加アルコール分解を行う。例えば、スクリューにより廃棄ポリエステル原料を溶融状態に加熱して回転推進することにより溶融しながら材料を供給し、スクリューの回転速度により溶融廃棄ポリエステルの輸送量を調節する。スクリューの回転速度は、加アルコール分解釜の液位に応じて制御され、加アルコール分解釜内の相対的に安定した液位を達成する。加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒も液相状態で計量ポンプに制御される所定で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入し、第1加アルコール分解釜内で1回目の加アルコール分解が終了した後、溶融体Aを得る。上記溶融体Aは、上記第1加アルコール分解釜に直列した上記第2加アルコール分解釜に連続的に入って2回目の加アルコール分解を行う。同様に、輸送ポンプの回転速度により溶融体Aの輸送量を制御し、輸送ポンプの回転速度は第2加アルコール分解釜内の液位により制御され、第2加アルコール分解釜内の相対的に安定した液位を保証する。大量の研究により、本発明によれば、加アルコール分解反応がより十分に進行し、加アルコール分解の度合の均一性が保証され、エステル交換ステップで得られるDMTの収率および純度がより高くなる。
【0013】
さらに、上記廃棄ポリエステル原料の形態は加アルコール分解による回収の効果に影響を与える。加アルコール分解釜に入る前に、固体から液体に溶融し、濾過ステップにより未溶融の不純物が除去されることにより、加アルコール分解による回収の収率および反応効率が向上し、次の反応のエネルギーおよび設備のコストが最大限に節約される。特に、第2加アルコール分解釜に入る溶融体Aは、1回目の加アルコール分解が発生したので、その相対モル質量および粘度がいずれも低くなる。これによって、溶融体Aが第2加アルコール分解釜に入る前のフィルタの濾過精度は、第1加アルコール分解釜に入る前のフィルタよりも高く設定される必要がある。
【0014】
好ましくは、上記加アルコール分解ステップ前に上記廃棄ポリエステル原料を濾過処理するステップをさらに含む。
【0015】
さらに、上記廃棄ポリエステル原料と加アルコール分解剤との重量比は、解重合反応に対して影響を与える。加アルコール分解剤の使用量が多すぎると、加アルコール分解物に過剰な加アルコール分解剤が混在し、加アルコール分解物に他の副生成物が生成する場合がある。加アルコール分解剤の使用量が少なすぎると、加アルコール分解が十分ではなく、加アルコール分解物に多い長鎖の廃棄ポリエステルが残る場合がある。この2つの場合は、いずれも加アルコール分解物の製品品質の安定性に影響を与え、さらに次のエステル交換反応に影響を与える。また、間欠供給も生成する加アルコール分解物の品質安定性に対して影響を与える。計量条件下での継続的で安定した供給によってのみ、生成する加アルコール分解物の製品の品質安定性が確保される。
【0016】
好ましくは、上記廃棄ポリエステル原料と加アルコール分解剤とを重量比1:1-2で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入する。
【0017】
さらに、加アルコール分解反応に必要な加アルコール分解触媒の使用量も、加アルコール分解物に対して比較的大きい影響を与える。加アルコール分解触媒の添加量を適切な範囲に制御することによってのみ、廃棄ポリエステル原料の加アルコール分解の効率が保証され、触媒の浪費が低減される。
【0018】
好ましくは、上記廃棄ポリエステル原料の重量に対して、上記加アルコール分解触媒の添加量は0.3wt%-3.0wt%である。
【0019】
本発明者は、さらなる研究により、加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒を液体として第1加アルコール分解釜に連続的に投入した後、所定の関係で最適な-COOH/-OH比を有する液体に混合し、未溶融不純物が除去された所定範囲の廃棄ポリエステル原料と反応させることにより、必要な重合度を有する加アルコール分解物を不可逆的に取得することが保証される。
【0020】
好ましくは、上記加アルコール分解触媒を加アルコール分解剤に溶解して加アルコール分解液を得た後、上記加アルコール分解液と廃棄ポリエステル原料とを一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入する。加アルコール分解液の重量に対して、上記加アルコール分解触媒の添加量は10wt%-70wt%である。
【0021】
さらに、加アルコール分解釜内の反応温度および反応時間はいずれも生成物の品質安定性に対して一定の作用を奏する。加アルコール分解釜の温度は、加アルコール分解釜の外部加熱ジャケットおよび内部加熱パイプ内に熱源媒体を導入し、熱源媒体の量来を制御することにより実現される。加アルコール分解の温度が低すぎると、加アルコール分解反応の進行に不利であり、温度が高すぎると、副反応の発生を引き起こす。
【0022】
好ましくは、上記第1加アルコール分解釜内の加アルコール分解温度は180℃-200℃、加アルコール分解時間は40min-90minである。
【0023】
好ましくは、上記第2加アルコール分解釜内の加アルコール分解温度は180℃-200℃、加アルコール分解時間は40min-90minである。
【0024】
さらに、加アルコール分解触媒の種類は加アルコール分解反応に対して影響を与える。大量の研究により、炭酸カリウムおよび酢酸亜鉛はポリエステルを加アルコール分解するための好ましい加アルコール分解触媒であることが発見された。
【0025】
本発明者は、大量の研究により、廃棄ポリエステルの形態はスクリューの加熱および原料投入過程に大きい影響を与えることをさらに発見した。そのため、解重合すべき廃棄ポリエステルを緻密化加工により5mm-10mm×5mm-10mmの均一なペレットに形成することにより、材料の輸送が容易になる。上記緻密化プロセスは、一般的な技術、例えば、半溶融摩擦緻密化、溶融造粒緻密化などのプロセスにより廃棄ポリエステルを前処理することができる。理解できるように、廃棄ポリエステルボトル破片、ポリエステルフィルム、ポリエステル繊維、廃棄織物のうちの1種または2種以上の混合物を緻密化プロセスにより加工して均一なペレットを原料として使用してもよいが、加工された廃棄ポリエステルの均一なペレットを購入してそのまま原料として使用してもよい。
【0026】
本発明の技術内容、構造特徴、目的および効果を詳しく説明するために、以下、図面および実施例を参照しながら説明する。これらの実施例は本発明をするためのものであり、本発明の範囲を制限しないと理解されるべきである。
【0027】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1は、廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解による回収方法を提供する。
原料は均一な廃棄ポリエステルペレットであり、平均粒径が10mm以下、水分含有量が0.5%であった。廃棄ポリエステルペレットを高位ホッパ5からロータリーフィーダー6を経てスクリュー押出機7に投入して溶融させ、さらにフィルタ8により未溶融不純物を濾別し、溶融状態で加アルコール分解釜21に連続的に投入した。スクリュー押出機7の溶融温度は275℃、フィルタ8の濾過精度は150μmであった。
【0028】
溶融状態の材料を1000kg/hrの速度で加アルコール分解釜21に連続的に投入し、材料の輸送量は溶融スクリュー押出機7の回転速度で調整した。この回転速度は、加アルコール分解釜21の液位の相対的な安定を達するために、加アルコール分解釜21の液位に応じて制御される。中央制御システムにより液位-回転速度の数値を設定した。
【0029】
EG貯蔵タンク1内のEG、加アルコール分解触媒貯蔵タンク3内の加アルコール分解触媒は、それぞれ計量ポンプ2、計量ポンプ4により加アルコール分解釜21に輸送された。計量ポンプ2、4の回転速度および廃棄ポリエステルスクリュー9の回転速度は、一定の比率に調節された。EGの供給速度は1500kg/hであり、加アルコール分解触媒である炭酸カリウムと加アルコール分解剤であるエチレングリコールの混合溶液中の炭酸カリウムの濃度は25%であり、炭酸カリウム溶液の供給速度は80kg/hであった。
【0030】
加アルコール分解釜内に同じ組成の加アルコール分解材料2000kgが存在する。廃棄ポリエステルを溶融状態で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入した後、撹拌器23による撹拌下で、既に存在する材料、新たに添加されたEG、新たに添加された加アルコール分解触媒とを均一に混合し、溶融状態で均一相系の加アルコール分解が発生した。加アルコール分解の温度は190℃、材料の滞留時間(加アルコール分解時間)は60minであった。
【0031】
第1加アルコール分解釜21における材料を溶融体ポンプ26、フィルタ27により濾過した後、第2加アルコール分解釜31に連続的に投入し、引き続き加アルコール分解した。第2加アルコール分解釜31内の相対的に安定した液位を保証するために、輸送ポンプ26の回転速度は、第2加アルコール分解釜31の液位に応じて制御された。フィルタ27の濾過精度は80μmであった。第2加アルコール分解釜31内の温度を195℃、加アルコール分解時間を50minに制御した。サンプリングして分析した結果、加アルコール分解物BHETの単量体の含有量は75%であり、単量体、二量体、三量体、四量体の総含有量は97%。
【0032】
第2加アルコール分解釜内の加アルコール分解物をエステル交換釜41に定量的で連続的に添加した。メタノールと、エステル交換触媒と、加アルコール分解物とを所定の比でエステル交換釜41に投入した。加アルコール分解材料とメタノールは触媒の存在下でエステル交換して粗DMTを生成した。メタノールと、上記加アルコール分解物との重量比は、初期廃棄ポリエステル:メタノール=1:2に換算され、触媒の存在下でエステル交換反応した。反応温度は75℃、反応時間は70minであった。
【0033】
加アルコール分解触媒は炭酸カリウムであり、炭酸カリウムの使用量は廃棄ポリエステルの使用量の2.0%であり、炭酸カリウムはEG溶液として添加され、EG溶液中の触媒の濃度は25%であった。
【0034】
上記エステル交換生成物は、DMT結晶化装置に入った。材料を40℃以下に降温し、DMTを結晶化して析出させた。濾過して粗DMT濾過ケーキおよび濾液を得た。粗DMT濾過ケーキをメタノールで複数回洗浄し、DMT濾過ケーキを得た。DMT濾過ケーキを6.65Kpa真空、温度200℃でショートパス精留システムにより精製し、精製DMTを得た。上記回収方法により回収されたDMTの純度は99.5%、収率は92%であった。
【0035】
(実施例2)
エステル交換触媒は炭酸カリウムのメタノール溶液、炭酸カリウムの濃度は25%である以外、実施例1と同様の連続加アルコール分解方法により廃棄ポリエステルを回収した。本発明の方法により得られたDMTの純度は99.5%、収率は92%であった。
【0036】
(実施例3)
原料である廃棄ポリエステルフィルムを5mm-10mm×5mm-10mmの破片に加工する以外、実施例1と同様の連続加アルコール分解方法により廃棄ポリエステルを回収した。本発明の方法により得られたDMTの純度は99.5%、収率は92.5%であった。
【0037】
〈比較例1〉
原料は、廃棄ポリエステルペレットであり、平均粒径は10mm以下、水分含有量は0.5%以下であった。
【0038】
加アルコール分解反応に必要な材料を加アルコール分解釜に間欠的に投入する以外、実施例1-3と同様に操作した。同じ組成の加アルコール分解材料2000kgを含む加アルコール分解釜21に1500kgのEG、25%炭酸カリウム溶液80kgを投入し、撹拌しながら廃棄ポリエステルペレット1000kgを投入した。190℃に徐々に昇温し、加アルコール分解反応を行い、190℃で60min反応させた。サンプリングして分析した結果、加アルコール分解物のBHET単量体の含有量は57%であり、単量体、二量体、三量体、四量体の総含有量は74%であった。
【0039】
加アルコール分解釜21中の材料をフィルタ27により濾過した後、エステル交換釜41に投入し、加アルコール分解釜21に残った2000kgを次回の加アルコール分解に使用した。フィルタ27の濾過精度は80μmであった。エステル交換釜41にメタノール2000kgおよびエステル交換触媒を添加し、触媒の存在下でエステル交換反応を行い、反応温度は75℃、反応時間は70minであった。触媒は炭酸カリウムであり、炭酸カリウムの使用量は廃棄ポリエステル量の2.0%であり、炭酸カリウムはEG溶液の形態で投入され、EG溶液中の触媒の濃度は25%であった。
【0040】
上記エステル交換生成物は、DMT結晶化装置に入った。材料を40℃以下に降温し、DMTを結晶化して析出させた。濾過して粗DMT濾過ケーキおよび濾液を得た。粗DMT濾過ケーキをメタノールで複数回洗浄し、DMT濾過ケーキを得た。DMT濾過ケーキを6.65Kpa真空、温度200℃でショートパス精留システムにより精製し、精製DMTを得た。得られたDMTの純度は99.4%、収率は82%であった。
【0041】
〈比較例2〉
原料は、廃棄ポリエステルペレットであり、平均粒径は10mm以下、水分含有量は0.5%以下であった。比較例2は比較例1と同様に、間欠供給により加アルコール分解反応を行なった。
【0042】
同じ組成の加アルコール分解材料2000kgを含む加アルコール分解釜21に2500kgのEG、25%炭酸カリウム溶液80kgを投入し、撹拌しながら廃棄ポリエステルペレット1000kgを投入した。190℃に徐々に昇温し、加アルコール分解反応を行い、190℃で120min反応させた。サンプリングして分析した結果、加アルコール分解物の単量体BHETの含有量は74%であり、単量体、二量体、三量体、四量体の総含有量は89%であった。
【0043】
加アルコール分解釜21中の材料をフィルタ27により濾過した後、エステル交換釜41に投入し、加アルコール分解釜21に残った2000kgを次回の加アルコール分解に使用した。フィルタ27の濾過精度は80μmであった。エステル交換釜41にメタノール2000kgおよびエステル交換触媒を添加し、触媒の存在下でエステル交換反応を行い、反応温度は75℃、反応時間は70minであった。触媒は炭酸カリウムであり、炭酸カリウムの使用量は廃棄ポリエステル量の2.0%であり、炭酸カリウムはEG溶液の形態で投入され、EG溶液中の触媒の濃度は25%であった。
【0044】
上記エステル交換生成物は、DMT結晶化装置に入った。材料を40℃以下に降温し、DMTを結晶化して析出させた。濾過して粗DMT濾過ケーキおよび濾液を得た。粗DMT濾過ケーキをメタノールで複数回洗浄し、DMT濾過ケーキを得た。DMT濾過ケーキを6.65Kpa真空、温度200℃でショートパス精留システムにより精製し、精製DMTを得た。得られたDMTの純度は99.4%、収率は78%であった。
【符号の説明】
【0045】
1 加アルコール分解剤貯蔵タンク、
2、加アルコール分解剤計量ポンプ、
21 第1加アルコール分解釜、
22 第1加アルコール分解釜のモータ、
23 第1加アルコール分解釜の撹拌器、
24 第1加アルコール分解釜の精留塔、
25 第1塔頂コンデンサ、
26 第1材料輸送計量ポンプ、
27 溶融体Aフィルタ、
3 加アルコール分解触媒貯蔵タンク、
31 第2加アルコール分解釜、
32 第2加アルコール分解釜モータ、
33 第2加アルコール分解釜の撹拌器、
34 第2加アルコール分解釜の精留塔、
35 第2塔頂コンデンサ、
36 第2材料輸送計量ポンプ、
37 加アルコール分解物フィルタ、
4 加アルコール分解触媒計量ポンプ、
41 エステル交換釜、
5 廃棄ポリエステルホッパ、
6 ロータリーフィーダー、
7 スクリュー押出機、
8 フィルタ。