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特許7071527廃棄ポリエステル材料の連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法
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  • 特許-廃棄ポリエステル材料の連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】廃棄ポリエステル材料の連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/24 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020551521
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2020076455
(87)【国際公開番号】W WO2021004070
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】201910617917.9
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520362583
【氏名又は名称】艾凡佳徳(上海)環保科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】AVANTGARDE (SHANGHAI) ENVIRONMENTAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room A3-7338, No. 58 Fumin Branch Road, Hengsha Town, Chongming District, (Hengtai Economic Development Zone, Shanghai)Shanghai 201500 China
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】方 華玉
(72)【発明者】
【氏名】朱 恩斌
(72)【発明者】
【氏名】王 読彬
(72)【発明者】
【氏名】余 国清
(72)【発明者】
【氏名】李 天源
(72)【発明者】
【氏名】陳 錦程
(72)【発明者】
【氏名】呉 建通
(72)【発明者】
【氏名】陳 建華
(72)【発明者】
【氏名】林 勝尭
【審査官】越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0105781(KR,A)
【文献】特開2003-033916(JP,A)
【文献】特開2000-086807(JP,A)
【文献】特開2015-021054(JP,A)
【文献】特開2011-079807(JP,A)
【文献】特開2007-186549(JP,A)
【文献】特開2002-249557(JP,A)
【文献】特開2006-335856(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1347906(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-11/28
B29B 17/00-17/04
B09B 3/00- 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄ポリエステル材料を乾燥、脱酸素して廃棄ポリエステル原料を得る材料前処理ステップと、
前記廃棄ポリエステルを溶融する溶融ステップと、
溶融した前記廃棄ポリエステル原料、液相状態の加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入して1回目の加アルコール分解を行い、溶融体Aを得、前記溶融体Aを前記第1加アルコール分解釜に直列した第2加アルコール分解釜に連続的に投入して2回目の加アルコール分解を行い、加アルコール分解物を得る加アルコール分解ステップと、
エステル交換釜内でエステル交換反応を行い、エステル交換生成物を得るエステル交換ステップと、
粗DMTの結晶化、分離および精製ステップと、を含み、
前記エステル交換釜は、第1エステル交換釜を含み、前記加アルコール分解物、エステル交換剤およびエステル交換触媒を溶融状態で一緒に第1エステル交換釜に連続的に投入して1回目のエステル交換を行い、エステル交換生成物を得、
前記エステル交換釜は、第1エステル交換釜に直列した第2エステル交換釜をさらに含み、
第1エステル交換釜で得られたエステル交換生成物を前記第2エステル交換釜に連続的に投入して2回目のエステル交換反応を行うことを特徴とする、廃棄ポリエステル材料の連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法。
【請求項2】
前記加アルコール分解ステップの前に、前記廃棄ポリエステル原料を濾過処理するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項3】
前記加アルコール分解剤は、エチレングリコールであり、前記廃棄ポリエステル原料と加アルコール分解剤とは重量比1.0:1.0-2.0で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入されることを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項4】
前記加アルコール分解触媒は、炭酸カリウムまたは酢酸亜鉛であり、前記廃棄ポリエステル原料の重量に対して、前記加アルコール分解触媒の添加量は0.3wt%-3.0wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項5】
前記第1加アルコール分解釜および第2加アルコール分解釜内の反応プロセス条件は、いずれも加アルコール分解温度180℃-200℃、加アルコール分解時間40min-90minであることを特徴とする、請求項3または4に記載の回収方法。
【請求項6】
前記エステル交換剤はメタノールであり、前記廃棄ポリエステル原料とエステル交換剤とは重量比1.0:1.0-3.0で一緒に第1エステル交換釜に連続的に投入されることを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項7】
前記エステル交換触媒は、水酸化ナトリウムまたは炭酸カリウムであり、前記廃棄ポリエステル原料の重量に対して、前記エステル交換触媒の添加量は0.2wt%-5.0wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項8】
前記第1エステル交換釜内の反応プロセス条件は、反応温度60℃-75℃、反応時間30min-60minであることを特徴とする、請求項6または7に記載の回収方法。
【請求項9】
前記第2エステル交換釜内の反応プロセス条件は、反応温度70℃-85℃、反応時間30min-60minであることを特徴とする、請求項8に記載の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄ポリエステル材料の回収方法および装置に関し、特に、廃棄ポリエステルを化学方法により回収してテレフタル酸ジメチル(DMT)を製造する方法および装置に関し、廃棄ポリエステル回収利用の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)は、生産量が最も多い合成繊維材料であり、繊維、ファブリック、服装、ポリエステルボトル、フィルム、シート材などの製品に幅広く用いられている。環境意識の向上、資源の節約、持続可能性の必要性に応じて、ポリエステル製品の製造で発生する切れ端とポリエステル製品の廃棄物をどのように処理するかは解決すべき課題となっており、廃棄ポリエステルの回収利用は環境に優しい紡績の発展方向となっている。
【0003】
現在、廃棄ポリエステルの回収方法には、主に物理的回収および化学的回収がある。物理的回収方法は簡単で、経済的であるが、再生製品の性能が悪い。化学的回収では、廃棄ポリエステルをエチレングリコール(EG)により加アルコール分解してビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)またはオリゴマーを生成し、その後、メタノール中でエステル交換反応させ、テレフタル酸ジメチル(DMT)およびエチレングリコールを生成し、精製して得られた精製DMTをポリエステルの生産原料として使用し、メタノールおよびエチレングリコールを精製して反応系に再利用することにより、廃棄ポリエステルの循環利用を実現する。
【0004】
米国特許US6706843B1には、廃棄ポリエステルを回收してDMTを製造する方法が開示されている。この特許において、廃棄ポリエステル重量の0.5-20倍のEGを用い、触媒の存在で、温度175℃-190℃の条件下で廃棄ポリエステルを加アルコール分解し、その後、加アルコール分解物を蒸留濃縮してEGを留出し、濃縮後の加アルコール分解物中のEGと廃棄ポリエステルとの重量比を0.5-2とする。濃縮後の加アルコール分解物をさらにメタノールとエステル交換反応させてDMTを生成し、精留により精製して精製DMTを製造する。この技術では、固体ポリエステルと液体のEGの加アルコール分解反応を使用し、加アルコール分解反応は固-液不均一相系反応であり、反応時間が長く、廃棄ポリエステルの加アルコール分解過程において、加アルコール分解に必要なEG量が大きく、エステル交換反応をスムーズに進行させ、最終生成物への過剰なEGの混入などによるDMT製品品質に対する影響を回避するために、加アルコール分解生成物中のEGの一部を留出する必要があり、加アルコール分解物の濃縮工程があるので、エネルギー消費が高くなり、濃縮設備を増設する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、従来技術に存在する間欠反応による加アルコール分解時間が長く、品質が不均一であり、加アルコール分解物およびエステル交換生成物の品質が不安定であり、濃縮設備を設ける必要があるという問題を解決するために、廃棄ポリエステル材料の連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、
廃棄ポリエステル材料を乾燥、脱酸素して廃棄ポリエステル原料を得る材料前処理ステップと、
上記廃棄ポリエステル原料、加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒を溶融状態で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入して1回目の加アルコール分解を行い、溶融体Aを得、上記溶融体Aを上記第1加アルコール分解釜に直列した第2加アルコール分解釜に連続的に投入して2回目の加アルコール分解を行い、加アルコール分解物を得る加アルコール分解ステップと、
エステル交換釜内でエステル交換反応を行い、エステル交換生成物を得るエステル交換ステップと、
粗DMTの結晶化、分離および精製ステップと、を含み、
上記エステル交換釜は、第1エステル交換釜を含み、上記加アルコール分解物、エステル交換剤およびエステル交換触媒を溶融状態で一緒に第1エステル交換釜に連続的に投入して1回目のエステル交換を行い、エステル交換生成物を得、
上記エステル交換釜は、第1エステル交換釜に直列した第2エステル交換釜をさらに含み、上記第2エステル交換釜は、連続的に投入される上記エステル交換生成物を収容し、そこで2回目のエステル交換が発生する廃棄ポリエステル材料の連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法が提供される。
【0007】
従来技術に比べ、本発明は少なくとも以下の有益な効果を有する。
本発明の回収方法は、連続供給、連続加アルコール分解および連続エステル交換のプロセスを採用し、材料を溶融状態下で均一相系の加アルコール分解することにより、加アルコール分解の時間が短く、直列した2つ以上の加アルコール分解釜により連続加アルコール分解を行うことにより、加アルコール分解物の製品品質が安定する。加アルコール分解物を連続エステル交換することにより、副反応の発生が回避され、エステル交換物の製品品質が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の技術内容、構造特徴、目的および効果を説明する。
【0010】
本発明の廃棄ポリエステル材料の連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法は、
廃棄ポリエステル材料を乾燥、脱酸素して廃棄ポリエステル原料を得る材料前処理ステップと、
上記廃棄ポリエステル原料、加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒を溶融状態で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入して1回目の加アルコール分解を行い、溶融体Aを得、上記溶融体Aを上記第1加アルコール分解釜に直列した第2加アルコール分解釜に連続的に投入して2回目の加アルコール分解を行い、加アルコール分解物を得る加アルコール分解ステップと、
エステル交換釜内でエステル交換反応を行い、エステル交換生成物を得るエステル交換ステップと、
粗DMTの結晶化、分離および精製ステップと、を含み、
上記エステル交換釜は、第1エステル交換釜を含み、上記加アルコール分解物、エステル交換剤およびエステル交換触媒を溶融状態で一緒に第1エステル交換釜に連続的に投入して1回目のエステル交換を行い、エステル交換生成物を得、
上記エステル交換釜は、第1エステル交換釜に直列した第2エステル交換釜をさらに含み、上記第2エステル交換釜は、連続的に投入される上記エステル交換生成物を収容し、そこで2回目のエステル交換が発生する。
【0011】
本発明者は、大量の研究により、廃棄ポリエステルの含水率およびその表面酸素が後続の加アルコール分解反応の過程および反応生成物に大きい影響を与え、上記廃棄ポリエステルを一般的なプロセスにより乾燥除水、脱酸素処理した後、スクリュー溶融するときに副反応の発生可能性が低下し、後続のアルコール分解物製品およびエステル交換生成物の純度および反応効率が保証されることを発見した。
【0012】
上記廃棄ポリエステル原料、加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒を溶融状態で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入して1回目の加アルコール分解を行う。例えば、スクリューにより廃棄ポリエステル原料を溶融状態に加熱して回転推進することにより溶融しながら材料を供給し、スクリューの回転速度により溶融廃棄ポリエステルの輸送量を調節する。スクリューの回転速度は、加アルコール分解釜の液位に応じて制御され、加アルコール分解釜内の相対的に安定した液位を達成する。加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒も液相状態で計量ポンプに制御される所定で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入し、第1加アルコール分解釜内で1回目の加アルコール分解が終了した後、溶融体Aを得る。上記溶融体Aは、上記第1加アルコール分解釜に直列した上記第2加アルコール分解釜に連続的に入って2回目の加アルコール分解を行う。同様に、輸送ポンプの回転速度により溶融体Aの輸送量を制御し、輸送ポンプの回転速度は第2加アルコール分解釜内の液位により制御され、第2加アルコール分解釜内の相対的に安定した液位を保証する。大量の研究により、本発明によれば、加アルコール分解反応がより十分に進行し、加アルコール分解の度合の均一性が保証される。さらに、加アルコール分解物、エステル交換剤およびエステル交換触媒を一緒にエステル交換釜に連続的に投入してエステル交換反応を行うことにより、間欠供給の間欠反応に比べ、エステル交換ステップで得られるDMTの収率および純度は大幅に向上する。
【0013】
さらに、廃棄ポリエステルの形態はスクリューの加熱および原料投入過程に大きい影響を与えることをさらに発見した。そのため、解重合すべき廃棄ポリエステルを緻密化加工により5mm-10mm×5mm-10mmの均一なペレットに形成することにより、材料の輸送が容易になる。上記緻密化プロセスは、一般的な技術、例えば、半溶融摩擦緻密化、溶融造粒緻密化などのプロセスにより廃棄ポリエステルを前処理することができる。理解できるように、廃棄ポリエステルボトル破片、ポリエステルフィルム、ポリエステル繊維、廃棄織物のうちの1種または2種以上の混合物を緻密化プロセスにより加工して均一なペレットを原料として使用してもよいが、加工された廃棄ポリエステルの均一なペレットを購入してそのまま原料として使用してもよい。
【0014】
さらに、大量の研究により、上記廃棄ポリエステル原料の携帯は加アルコール分解による回収の効果に影響を与えることが発見される。加アルコール分解釜に入る前に、廃棄ポリエステル原料は固体から液体に溶融し、濾過ステップにより未溶融の不純物が除去されることにより、加アルコール分解による回収の収率および反応効率が向上し、次の反応のエネルギーおよび設備のコストが最大限に節約される。特に、第2加アルコール分解釜に入る溶融体Aは、1回目の加アルコール分解が発生したので、その相対モル質量および粘度がいずれも低くなる。これによって、溶融体Aが第2加アルコール分解釜に入る前のフィルタの濾過精度は、第1加アルコール分解釜に入る前のフィルタよりも高く設定される必要がある。
【0015】
好ましくは、上記加アルコール分解ステップ前に上記廃棄ポリエステル原料を濾過処理するステップをさらに含む。
【0016】
さらに、加アルコール分解剤の種類および使用量は、解重合反応に対して影響を与える。加アルコール分解剤の使用量が多すぎると、加アルコール分解物に過剰な加アルコール分解剤が混在し、加アルコール分解物に他の副生成物が生成する場合がある。加アルコール分解剤の使用量が少なすぎると、加アルコール分解が十分ではなく、加アルコール分解物に多い長鎖の廃棄ポリエステルが残る場合がある。この2つの場合は、いずれも加アルコール分解物の製品品質の安定性に影響を与え、さらに次のエステル交換反応に影響を与える。また、間欠供給も生成する加アルコール分解物の品質安定性に対して影響を与える。計量条件下での継続的で安定した供給によってのみ、生成する加アルコール分解物の製品の品質安定性が確保される。
【0017】
好ましくは、上記加アルコール分解剤はエチレングリコールであり、上記廃棄ポリエステル原料と加アルコール分解剤とは重量比1.0:1.0-2.0で一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入される。
【0018】
さらに、加アルコール分解触媒の種類および使用量は、解重合反応に対して影響を与える。大量の研究により、炭酸カリウムおよび酢酸亜鉛は、ポリエステルのアルコール分解のための好ましい加アルコール分解触媒であることが発見された。加アルコール分解剤および加アルコール分解触媒は、液体として一緒に第1加アルコール分解釜に連続的に投入された後、未溶融不純物が除去された所定範囲の廃棄ポリエステル原料と反応させることによってのみ、最適な水酸基価およびヒドロキシエチルテレフタレートBHET収率を有する液体を得ることができる。加アルコール分解触媒の添加量を適切な範囲に制御することによってのみ、廃棄ポリエステル原料の加アルコール分解の効率が保証され、触媒の浪費が低減される。
【0019】
好ましくは、上記加アルコール分解触媒は炭酸カリウムまたは酢酸亜鉛であり、上記廃棄ポリエステル原料の重量に対して、上記加アルコール分解触媒の添加量は0.3wt%-3.0wt%である。
【0020】
さらに、加アルコール分解釜内の反応温度および反応時間はいずれも生成物の品質安定性に対して一定の作用を奏する。加アルコール分解釜の温度は、加アルコール分解釜の外部加熱ジャケットおよび内部加熱パイプ内に熱源媒体を導入し、熱源媒体の量来を制御することにより実現される。加アルコール分解の温度が低すぎると、加アルコール分解反応の進行に不利であり、温度が高すぎると、副反応の発生を引き起こす。
【0021】
好ましくは、上記第1加アルコール分解釜および第2加アルコール分解釜内の反応プロセス条件はいずれも加アルコール分解温度180℃-200℃、加アルコール分解時間40min-90minである。
【0022】
さらに、エステル交換触媒の種類および添加量は、エステル交換反応の速度および生成物の品質に対して影響を与える。一定の範囲内で触媒の使用量を増加しても、エステル交換反応の速度を増大する目的を達することができず、逆に、過剰な触媒は他の副反応を引き起こす場合がある。他の不要な副生成物の生成は、生成物の品質を低下させる。触媒の量が少ないと、反応効率は低くなる。
【0023】
好ましくは、上記エステル交換触媒は水酸化ナトリウムまたは炭酸カリウムであり、上記廃棄ポリエステル原料の重量に対して、上記エステル交換触媒の添加量は0.2wt%-5.0wt%である。
【0024】
さらに、エステル交換釜での連続エステル交換反応のプロセス条件も最終的なエステル交換反応生成物に対して影響を与える。反応温度および反応時間は、エステル交換反応釜中の材料の成分、活性および互いの作用関係を十分に考慮して選択する必要がある。
【0025】
好ましくは、上記第1エステル交換釜内の反応プロセス条件は、反応温度60℃-75℃、反応時間30min-60minである。上記第2エステル交換釜内の反応プロセス条件は、反応温度70℃-85℃、反応時間30min-60minである。
【0026】
エステル交換反応で得られた粗DMTは材料中間貯蔵タンクに連続的に入り、次の粗DMTの結晶化、分離および精製に用いられる。粗DMTの結晶化、分離および精製は、一般的なプロセスにより行う。
【0027】
本発明の技術内容、構造特徴、目的および効果を詳しく説明するために、以下、図面および実施例を参照しながら説明する。これらの実施例は本発明をするためのものであり、本発明の範囲を制限しないと理解されるべきである。
【0028】
図1に示すように、実施例1、2はいずれも以下の廃棄ポリエステルの連続加アルコール分解および連続エステル交換による回収方法を採用する。
【0029】
1、廃棄ポリエステルの溶融
(1)廃棄ポリエステルの緻密化
廃棄ポリエステルは、廃棄ポリエステルボトル破片、ポリエステルフィルム、ポリエステル繊維、廃棄織物であってもよい。
半溶融摩擦緻密化、溶融造粒緻密化といった緻密化プロセスによりペレットに加工し、高位ホッパ5に貯蔵した。
【0030】
(2)ペレットの乾燥
乾燥は一般的な乾燥プロセスを採用することができる。必要に応じて連続または間欠プロセスを使用することができる。連続乾燥プロセスを使用する場合、廃棄ポリエステルペレットを高位ホッパ5からロータリーフィーダー6を経て連続乾燥塔7に投入し、乾燥させて水分を除去した。
【0031】
(3)廃棄ポリエステルの溶融濾過
乾燥塔7からのポリエステルペレットはロータリーフィーダー8を経てスクリュー押出機9に入って溶融され、溶融した材料はフィルタ10により濾過して未溶融不純物が除去され、溶融状態で加アルコール分解釜21に連続的に入った。
【0032】
2、廃棄ポリエステルのEGによる加アルコール分解
上記溶融状態材料は、加アルコール分解釜21に連続的に入った。溶融スクリュー押出機9の回転速度により廃棄ポリエステルの輸送量を調節し、この回転速度は第1加アルコール分解釜21の液位に応じて制御され、これにより加アルコール分解釜21の相対的に安定した液位が実現される。
【0033】
EG貯蔵タンク1内のEG、加アルコール分解触媒貯蔵タンク3内の加アルコール分解触媒は、それぞれ計量ポンプ2、計量ポンプ4により加アルコール分解釜21に輸送された。計量ポンプ2、4の回転速度および廃棄ポリエステルスクリュー9の回転速度は、一定の比率に調節された。
【0034】
第1加アルコール分解釜21内の液位は比較的に安定した。第1加アルコール分解釜内の材料の存在により、廃棄ポリエステルが溶融状態で第1加アルコール分解釜21に入った後、撹拌器23の撹拌下で、既に存在する材料、新たに添加されたEG、および新たに添加された触媒と均一に混合され、溶融状態で均一相系加アルコール分解が発生した。
【0035】
廃棄ポリエステルとEGとの重量比は1:1.0-2.0であり、加アルコール分解温度は180-200℃、加アルコール分解時間は40-90minであった。
【0036】
第1加アルコール分解釜の温度は、加アルコール分解釜の外部加熱ジャケットおよび内部加熱パイプ内に熱源媒体を導入し、熱源媒体の量来を制御することにより実現される。
【0037】
加アルコール分解触媒は炭酸カリウムまたは酢酸亜鉛であり、使用量が廃棄ポリエステルの0.3-3.0%であった。EG溶液の形態として、EG溶液中の触媒の濃度は10-70%であった。
【0038】
加アルコール分解釜内の温度が高くなると、EGは蒸発する。蒸発したEGは蒸留塔24および塔頂コンデンサ25を通して凝縮して加アルコール分解釜に還流した。システム内の少量の低沸点物質(例えば、水分)は、蒸留塔24および塔頂コンデンサ25からシステムの外へ排出された。
【0039】
第1加アルコール分解釜21から出た溶融体Aは、溶融体ポンプ26を介して第2加アルコール分解釜31に連続的に入り、引き続き加アルコール分解された。輸送ポンプ26の回転速度により輸送量を制御し、輸送ポンプ26の回転速度は第2加アルコール分解釜31の液位に応じて制御され、これにより、第2加アルコール分解釜31内の相対的に安定した液位が保証された。
【0040】
第2加アルコール分解釜の温度は、加アルコール分解釜の外部加熱ジャケットおよび内部加熱パイプ内に熱源媒体を導入し、熱源媒体の量来を制御することにより実現される。
【0041】
第2加アルコール分解釜内の温度が高くなると、EGは蒸発する。蒸発したEGは蒸留塔34および塔頂コンデンサ35を通して凝縮して加アルコール分解釜に還流した。システム内の少量の低沸点物質は、蒸留塔34および塔頂コンデンサ35からシステムの外へ排出された。
【0042】
第2加アルコール分解釜31内の加アルコール分解温度は180-200℃、加アルコール分解時間は40-90minであった。
【0043】
3、エステル交換
上記加アルコール分解物は、輸送ポンプ36により連続的に輸送され、フィルタ37により濾過された後、第1エステル交換釜41に連続的に入った。輸送ポンプ36の回転速度はエステル交換釜41の液位に応じて制御され、これにより、第1エステル交換釜41の相対的に安定した液位が保証された。
【0044】
メタノール貯蔵タンク46内のメタノール、エステル交換触媒貯蔵タンク48内の触媒は、それぞれ計量ポンプ47、計量ポンプ49の制御によりエステル交換釜内に輸送された。第1エステル交換釜41に投入するとき、計量ポンプ47、計量ポンプ49の回転速度と加アルコール分解物輸送ポンプ36との回転速度の比は、一定であった。
【0045】
メタノールと、上記加アルコール分解物との重量比は、初期廃棄ポリエステル:メタノール=1:1-3.0に換算され、触媒の存在下でエステル交換反応した。反応温度は70℃-85℃、反応時間は30min-60minであった。
【0046】
エステル交換触媒は水酸化ナトリウムまたは炭酸カリウムであり、使用量は加アルコール分解物の重量の0.2-5.0%、好ましくは0.3-2.0%であった。EG溶液の形態で添加され、EG溶液中の触媒の濃度は10-70%であった。
【0047】
エステル交換釜41の温度は、加熱パイプ内に熱源媒体を導入し、熱源媒体の量来を制御することにより実現される。
【0048】
エステル交換釜41内の温度が高くなると、メタノールは蒸発し、蒸留塔44および塔頂コンデンサ45を通して凝縮してエステル交換釜に還流した。
【0049】
第1エステル交換釜内の材料は、輸送ポンプ50により第2エステル交換釜51に連続的に入った。輸送ポンプ50の回転速度は、第2エステル交換釜51の液位に応じて制御され、これにより、第2エステル交換釜51の相対的に安定した液位が保証された。
【0050】
エステル交換釜51内の温度が高くなると、メタノールは蒸発し、蒸留塔54および塔頂コンデンサ55を通して凝縮してエステル交換釜に還流した。
エステル交換釜51の温度は、導入した熱源媒体の量来を制御することにより実現される。
【0051】
第2エステル交換の反応温度は60-75℃、反応時間は30-60minであった。
【0052】
4、DMTの結晶化
第2エステル交換釜から出たエステル交換生成物は、材料ポンプ56により連続的に輸送され、フィルタ57により濾過された後、DMT結晶化装置61に連続的に入った。
【0053】
結晶化装置61において、材料を40℃以下に降温し、DMTを結晶化して析出させた。
【0054】
DMT結晶化装置61内の材料を濾過して粗DMT濾過ケーキおよび濾液を得た。濾過ケーキをメタノールで洗浄し、粗DMT濾過ケーキを得た。粗DMT濾過ケーキをメタノールで洗浄して濾過し、洗浄と濾過を2-3回繰り返した。DMT濾過ケーキを得た。
【0055】
濾液を合わせてエステル交換反応に再利用し、または蒸留精製した後、メタノールをエステル交換反応に使用した。
【0056】
5、DMTの精製
DMT濾過ケーキを精留精製して精製DMTを得た。
【0057】
DMTの蒸留精製は、真空条件下で行った。例えば、DMT濾過ケーキを6.65Kpa真空、温度200℃で真空精留して精製DMTを得た。
【0058】
実施例1において、原料は廃棄ポリエステルペレットであり、平均粒径は10mm以下、水分含有量は0.5%以下であり、スクリュー押出機7の溶融温度は285℃、フィルタ8の濾過精度は150μmであり、溶融状態材料は1000kg/hrの速度で加アルコール分解釜21に連続的に入り、EGの供給速度は1500kg/hrであり、触媒は炭酸カリウムのエタノール溶液(炭酸カリウムの濃度:25%)であり、炭酸カリウム溶液の供給速度は80kg/hrであった。加アルコール分解温度は190℃、材料の滞留時間(加アルコール分解時間)は60minであった。フィルタ27の濾過精度は80μmであった。第2加アルコール分解釜31内の温度を195℃、加アルコール分解時間を50minに制御し、得られた加アルコール分解物におけるBHET単量体の含有量は75%であり、単量体、二量体、三量体、四量体の総含有量は97%であった。エステル交換触媒である炭酸カリウムの使用量は加アルコール分解物の重量の2.0%であり、エステル交換反応の反応温度は65℃、反応時間は50minであった。第1エステル交換釜内の材料は、溶融ポンプ50により第2エステル交換釜51に連続的に入り、第2エステル交換の反応温度は75℃、反応時間は40minであった。第2エステル交換反応釜から出た粗DMT生成物はDMT結晶化装置に入り、材料を40℃以下に降温し、DMTを結晶化して析出させた。濾過して粗DMT濾過ケーキおよび濾液を得た。粗DMT濾過ケーキをメタノールで複数回洗浄し、DMT濾過ケーキを得た。DMT濾過ケーキを6Kpa真空、温度200℃でショートパス精留システムにより精製して精製DMTを得た。DMTの純度は99.5%、収率は95%であった。
【0059】
実施例2において、原料を廃棄ポリエステルフィルムに変更し、5-10mm×5-10mmの破片に加工する以外、実施例1と同様に操作した。
【0060】
〈比較例1〉
連続加アルコール分解および非連続エステル交換による廃棄ポリエステルの回収方法を提供する。
比較例1において、加アルコール分解およびその前のステップは実施例1、2と同様である。比較例1において、第2加アルコール分解釜内の加アルコール分解物をエステル交換釜41に定量的に一気に投入し、メタノール、エステル交換触媒および加アルコール分解物を一定の比率でエステル交換釜41に投入した。加アルコール分解材料、メタノールは、エステル交換触媒の存在下でエステル交換して粗DMTを生成した。メタノールと上記加アルコール分解物の重量比を初期廃棄ポリエステル:メタノール=1:2に換算し、触媒の存在下でエステル交換反応した。反応温度は75℃、反応時間は70minであった。
【0061】
触媒は炭酸カリウムであり、炭酸カリウムの使用量は廃棄ポリエステル量の2.0%であり、炭酸カリウムはEG溶液の形態で投入され、EG溶液中の炭酸カリウムの濃度は25%であった。この方法により得られたDMTの純度は99.5%、収率は92%であった。
【0062】
〈比較例2〉
原料は廃棄ポリエステルペレットであり、平均粒径は10mm以下、水分含有量は0.5%以下であった。
【0063】
加アルコール分解ステップにおいて、1500kgのEG、25%炭酸カリウムのエチレングリコール溶液80kgおよび廃棄ポリエステルペレット1000kgを撹拌しながら組成が同じである加アルコール分解材料2000kgを含む加アルコール分解釜21に投入し、190℃に徐々に昇温して加アルコール分解反応を行ない、反応温度は190℃、反応時間は60minである以外、比較例1と同様である。サンプリングして分析した結果、加アルコール分解物BHET単量体の含有量は57%であり、単量体、二量体、三量体、四量体の総含有量は74%であった。
【0064】
加アルコール分解釜21中の材料をフィルタ27により濾過した後、エステル交換釜41に投入し、加アルコール分解釜21に残った2000kgを次回の加アルコール分解に使用した。フィルタ27の濾過精度は80μmであった。エステル交換釜41にメタノール2000kgおよびエステル交換触媒を添加し、触媒の存在下でエステル交換反応を行い、反応温度は75℃、反応時間は70minであった。触媒は炭酸カリウムであり、炭酸カリウムの使用量は廃棄ポリエステル量の2.0%であり、炭酸カリウムはEG溶液の形態で投入され、EG溶液中の触媒の濃度は25%であった。
【0065】
上記エステル交換生成物は、DMT結晶化装置に入った。材料を40℃以下に降温し、DMTを結晶化して析出させた。濾過して粗DMT濾過ケーキおよび濾液を得た。粗DMT濾過ケーキをメタノールで複数回洗浄し、DMT濾過ケーキを得た。DMT濾過ケーキを6.65Kpa真空、温度200℃でショートパス精留システムにより精製し、精製DMTを得た。上記方法により得られたDMTの純度は99.4%、収率は78%であった。
【符号の説明】
【0066】
1 加アルコール分解剤貯蔵タンク、
2 加アルコール分解剤計量ポンプ、
21 第1加アルコール分解釜、
22 第1加アルコール分解釜のモータ、
23 第1加アルコール分解釜の撹拌器、
24 第1加アルコール分解釜の精留塔、
25 第1塔頂コンデンサ、
26 第1材料輸送計量ポンプ、
3 加アルコール分解触媒貯蔵タンク、
31 第2加アルコール分解釜、
32 第2加アルコール分解釜のモータ、
33 第2加アルコール分解釜の撹拌器、
34 第2加アルコール分解釜の精留塔、
35 第2塔頂コンデンサ、
36 第2材料輸送計量ポンプ、
37 溶融体Aフィルタ、
4 加アルコール分解触媒計量ポンプ、
41 第1エステル交換釜、
42 第1エステル交換釜のモータ、
43 第1エステル交換釜の撹拌器、
44 第1エステル交換釜の精留塔、
45 第1塔頂コンデンサ、
46 メタノール貯蔵タンク、
47 メタノール計量ポンプ、
48 エステル交換触媒貯蔵タンク、
49 エステル交換触媒計量ポンプ、
5 廃棄ポリエステルホッパ、
50 第1輸送ポンプ、
51 第2エステル交換釜、
52 第2エステル交換釜のモータ、
53 第2エステル交換釜の撹拌器、
54 第2エステル交換釜の精留塔、
55 第2エステル交換釜の塔頂コンデンサ、
56 第2輸送ポンプ、
57 フィルタ、
6 ロータリーフィーダー、
61 粗DMT結晶化装置、
7 結晶乾燥器、
8 フィルタ、
9 スクリュー押出機、
10 フィルタ。
図1