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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】空気圧式スラグストッパ
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/14 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
F27D3/14 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020552323
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019057741
(87)【国際公開番号】W WO2019185728
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】18164879.1
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ロスナー
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ゲオルク・オーベルフーマー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・フォラベルガー
(72)【発明者】
【氏名】エーリヒ・シュテファン・ヴィンマー
(72)【発明者】
【氏名】ゼバット・スマイッチ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・シュトラッサー
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-51139(JP,A)
【文献】実開平6-22897(JP,U)
【文献】特開昭59-66970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 1/00-21/14
F27D 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラグの流出に関して、少なくとも1つのガス出口開口部(19)からタップホール管(18)に導入される少なくとも1つのガスフローを用いて、冶金容器の前記タップホール管(18)を空気圧によって閉鎖するための空気圧式スラグストッパであって、前記ガス出口開口部(19)は、旋回アーム(13)に取り付けられており、前記旋回アームは、旋回駆動部を用いて、旋回軸(15)の周りに旋回可能であり、前記旋回アーム(13)は、少なくとも1つの前記ガス出口開口部(19)に合流するガス供給管(23)を有している空気圧式スラグストッパにおいて、
少なくとも1つの前記ガス出口開口部(19)の長手軸(14)が、前記旋回軸(15)に対して略平行であることを特徴とし、前記略平行とは、平行と、平行から+/- 5 °までの逸脱が含まれている、空気圧式スラグストッパ。
【請求項2】
前記ガス出口開口部(19)の前記旋回軸(15)からの距離が調整可能であることを特徴とする、請求項1に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項3】
最大旋回角度が調整可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項4】
旋回アーム(25)が、少なくとも1つのアームモジュール(26)と、少なくとも1つのガス出口モジュールとを含んでおり、前記ガス出口モジュールは、
-少なくとも1つの前記ガス出口開口部を含んでおり、
-前記アームモジュール(26)に、解除可能に固定されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項5】
複数のガス出口開口部が存在していることを特徴とする、請求項4に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項6】
1つ又は複数の前記ガス出口開口部が、1つ又は複数のガス管(30a、30b、30c)として、ノズルヘッド要素(29)内で具体化されており、前記ノズルヘッド要素は、前記旋回アーム又は前記ガス出口モジュールに挿入可能であることを特徴とする、請求項4または5に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項7】
前記ノズルヘッド要素(29)の位置が、調整要素を用いて調整可能であることを特徴とする、請求項6に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項8】
密封位置においてのみ、ガス源導管(32)が、弁を有さずに、少なくとも旋回シャフト(35)内に偏心に配置された接続管(34)を通じて、ガス供給管(36)に接続されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項9】
前記旋回アーム内の少なくとも1つの前記ガス出口開口部の周囲には、複数のガス出口(31a、31b、31c)が存在していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項10】
ガス出口モジュール内の少なくとも1つの前記ガス出口開口部の周囲には、複数のガス出口(31a、31b、31c)が存在していることを特徴とする、請求項9に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項11】
前記旋回駆動部が、ギアを有していないことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項12】
前記旋回駆動部が、少なくとも1つのクランクシャフト、及び、前記クランクシャフトを駆動するための少なくとも1つの空気圧シリンダを含んでいることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項13】
前記旋回駆動部が、熱的に絶縁されたハウジング(16)内に格納されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の空気圧式スラグストッパ。
【請求項14】
タップホール管(3)と、冶金容器(1)に固定された請求項1から13のいずれか一項に記載のスラグストッパとを有する冶金容器(1)において、
前記タップホール管(3)の長手軸が、旋回軸に対して略平行であることを特徴とし、前記略平行とは、平行と、平行から+/- 5 °までの逸脱が含まれている、冶金容器(1)。
【請求項15】
スラグの流出に関して、少なくとも1つのガス出口開口部から供給されるガスフローを用いて、冶金容器のタップホール管を空気圧によって閉鎖するための方法であって、旋回アームに取り付けられた少なくとも1つの前記ガス出口開口部は、前記タップホール管のタップホール(24)の手前において、密封位置に配置される方法において、
このために、前記旋回アームは、旋回運動で、前記タップホール(24)の手前の密封位置に旋回され、前記旋回運動は、前記タップホール管(18)の長手軸に対して略垂直な平面において行われることを特徴とし、前記略垂直とは、垂直と、垂直から+/- 5 °までの逸脱が含まれている、方法。
【請求項16】
前記タップホール管の空気圧による閉鎖の間に、ガスが、前記旋回アーム内の少なくとも1つの前記ガス出口開口部の周囲に存在する複数のガス出口から流れることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、スラグの流出に関して、少なくとも1つのガス出口開口部からタップホール管に導入される少なくとも1つのガスフローを用いて、冶金容器のタップホール管を空気圧によって閉鎖するための空気圧式スラグストッパと、タップホール管を空気圧によって閉鎖するための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融金属の冶金プロセスステップでは、液体金属製品の他に、液体金属製品よりも密度の低い液体スラグが生じる。プロセスステップが行われた冶金容器から液体金属製品を取り出す際に、スラグの同伴が生じ得る。これは望ましくないので、可能な限り完全なスラグと金属製品との分離を得るべく努められる。流出する液体フローに占めるスラグの割合が、許容できない程度に高くなり次第、冶金容器のタップホール管を閉鎖することが知られている。このような方法は、例えばガスを吹き込むことによる、タップホール管の空気圧での閉鎖に基づいている。当該方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
当該方法を実施するための装置は、大抵の場合、冶金容器に取り付けられており、従って、極端な環境条件に晒されている。当該装置の寿命は限られており、保守及び交換を頻繁に実施しなければならない。空気圧による閉鎖を成功裏に実施するために、ガスは、タップホール管に関して可能な限り左右対称に吹き込まれた方がよい。スラグストッパ装置の位置は、対応して調整されるべきである。これによって、保守及び交換は、複雑になる。特許文献2からは、その構造によって、交換及び保守を容易にする装置が知られている。しかしながら、特許文献1の原則に対応する構造によって、冶金容器の回転外側輪郭は拡大する。このことから場合によって生じる、既存の冶金容器周囲における場所の問題は、有用性を制限する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許発明第2639712号明細書
【文献】オーストリア国特許発明第408965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、先行技術に対して拡大された有用性を可能にする、空気圧式スラグストッパと、タップホール管を空気圧によって閉鎖するための方法とを供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、スラグの流出に関して、少なくとも1つのガス出口開口部からタップホール管に導入される少なくとも1つのガスフローを用いて、冶金容器のタップホール管を空気圧によって閉鎖するための空気圧式スラグストッパによって解決され、ガス出口開口部は、旋回アームに取り付けられており、旋回アームは、旋回駆動部を用いて、旋回軸の周りに旋回可能であり、旋回アームは、少なくとも1つのガス出口開口部に合流するガス供給管を有しており、旋回アームは、少なくとも1つのガス出口開口部の長手軸が、旋回軸に対して略平行であることを特徴としている。
【0007】
スラグ又はスラグを同伴する溶融金属フローは、タップホール管を通って、又は、タップホール管の端部において、タップホールから流出する。空気圧式スラグストッパは、スラグの流出に関して、冶金容器のタップホール管を、又は、その端部においてタップホールを閉鎖し、つまり、タップホール管の端部におけるタップホールは、ガスフローが、スラグ又はスラグを同伴する溶融金属フローの流出を止める場合、開かれている。このために、ガスフローは、タップホール管、又は、タップホール管の端部においてタップホールに導入される。ガスは、少なくとも1つのガス出口開口部から、スラグ又はスラグを同伴する溶融金属フローの流れ方向に反して、タップホール管内に流入し、それによって、タップホール管を実際に、スラグの流出に関して閉鎖する。
【0008】
タップホール管は、ガス出口開口部から流出するガスによって、スラグ又はスラグを同伴する溶融金属フローを止めるのに適している。ガス供給管と少なくとも1つのガス出口開口部と含むガス供給装置は、タップホール管、又は、タップホールを通って流れるスラグ、又は、スラグを同伴する溶融金属フローを止めるのに適している。タップホール管は、冶金容器の壁を通って延在している。タップホール管を通って、溶融金属は、冶金容器から排出される。タップホール管は、冶金容器の外面において、タップホールで終端している。タップホールは、いわゆるタップホールカラー、タップホール管の長手軸に対して垂直なプレートから構成されている。
【0009】
冶金容器は、例えばBOF法又はLD法のための製鋼所の転炉である。ガス出口開口部は、旋回アームに取り付けられている。なぜなら、ガス出口開口部は、スラグが流出しそうな場合に初めて、タップホールの手前に位置すべきものだからである。それまでは、ガス出口開口部は、別の位置にあるべきである。時が来たら、ガス出口開口部は、迅速に、タップホールの手前に配置され得るべきである。これは、ガス出口開口部が、旋回駆動部を用いて旋回軸の周りに旋回可能である旋回アームに取り付けられていることによって得られる。
【0010】
ガス出口開口部は、旋回アームに取り付けられており、旋回アームは、旋回駆動部を用いて、旋回軸の周りに旋回可能であり、旋回アームは、少なくとも1つのガス出口開口部に合流するガス供給管を有しており、旋回アームは、少なくとも1つのガス出口開口部の長手軸が、旋回軸に対して略平行であることを特徴としており、旋回アームは、旋回運動で、旋回軸に対して略垂直な平面において、旋回可能である。
【0011】
旋回アームは、旋回駆動部を用いて、旋回軸の周りにおいて、密封位置に旋回可能である。旋回アームは、旋回運動で、旋回軸に対して略垂直な平面において、密封位置に旋回可能である。
【0012】
好ましくは、密封位置は、場合によっては旋回アームの出発位置を始点として、旋回運動のみによって到達され、すなわち、旋回運動には、さらなる運動は付加されない。
【0013】
少なくとも1つのガス出口開口部が存在しなければならないが、複数のガス出口開口部が存在していてもよい。
【0014】
旋回アームは、少なくとも1つのガス出口開口部に合流するガス供給管を有している。当該ガス供給管を通じて、空気圧による閉鎖に必要なガスが、ガス出口開口部に供給される。旋回アーム内での誘導によって、小型かつ単純な構造が得られる。本発明によると、ガス出口開口部の長手軸は、旋回軸に対して略平行である。略平行には、平行だけではなく、+/-5°までの平行からの逸脱も含まれており、このような平行からのわずかな逸脱は、機能性を受容できない程度に制限することなく、動作中に生じ得る。+/-5°の逸脱は、ガス出口開口部の長手軸と旋回軸とが、平行に変位した後交差するように配置される場合、ガス出口開口部の長手軸と旋回軸との間の、両方の軸を含む平面内の角度に関するものである。
【0015】
このような構造においては、冶金容器にスラグストッパを取り付ける際、回転外側輪郭は、特許文献1に比べて減少する。
【0016】
好ましくは、ガス出口開口部の旋回軸からの距離は、調整可能である。調整は、例えば、所定の長さの旋回アームとして用いられる、旋回駆動部に接続された部材が、回転軸に関して様々な位置に設定可能であることによって実現し得る。それによって、例えばタップホール管の交換の後での、タップホールに関するガス出口開口部の調整が容易になり、冶金容器への取り付け及びスラグストッパの保守の複雑さも減少する。特許文献2に係るスラグストッパの場合、ハウジングを含むスラグストッパ全体が、冶金容器において調整されなければならないので、はるかに複雑である。すなわち、本発明に係るスラグストッパは、比較的減少した取り付け時間及び取り付け費用を提供する。
【0017】
旋回アームは、出発位置から最大旋回角度まで旋回可能である。好ましくは、最大旋回角度は調整可能である。これは例えば、旋回運動の制限のために、回転駆動部に、調整可能なストッパ要素を取り付けることによって行われ得る。これによって、タップホールに関するガス出口開口部の調整が容易になり、冶金容器への取り付け、スラグストッパの保守及び交換の複雑さが減少する。
【0018】
好ましくは、旋回アームは、少なくとも1つのアームモジュールと、少なくとも1つのガス出口モジュールとを含んでおり、ガス出口モジュールは、
-少なくとも1つのガス出口開口部を含んでおり、
-アームモジュールに、解除可能に固定されている。このような、モジュール式の構造によって、旋回アームはより容易に製造可能であり、保守の際の複雑さの原因となることがより少ない。なぜなら、例えば必要に応じて、ガス出口モジュールのみを新しくすればよいからである。
【0019】
有利な態様の変型例によると、複数のガス出口開口部が存在している。これは、スラグストッパから流出した後のガスフローの流れ挙動に関して、利点を有し得る。タップホール管の空気圧による閉鎖の際、スラグの流出の阻止に関する結果は、ガスフローを、タップホール管の長手軸に対して同軸に、タップホール内へ良好に導入するほど、さらに良好になる。複数のガス出口開口部が設けられている場合、これらのガス出口開口部は、個々のより大きなガス出口開口部と全横断面面積が同じ場合に、比較して小さい横断面を有し得る。利用できる場所が非常に狭い場合は、ガス出口開口部に関して実現できる長さは非常に短くてよい。結果として、ガスフローが、流出の際に、例えばガス供給管からガス出口開口部へ移動する場合の流れ方向の変更の際の、片側における大きな圧力損失に起因して、ガス出口開口部の長手軸に関して屈折し、従って、タップホール管の長手軸とガス出口開口部の長手軸とが同軸であるにもかかわらず、タップホール管への同軸の導入は困難になる可能性がある。それによって、スラグの流出の阻止に関する結果は、準最適であり得る。加えて、屈折したガスフローの流出は、望ましくない騒音の放出につながる。ガスフローが、同じ全横断面面積を通るが、より小さい横断面を有する複数のガス出口開口部を通って流出する場合、屈折は比較的小さくてよい。対応して、タップホール管に同軸に導入することがより容易になり、スラグの流出は、より良好に阻止され、騒音の放出はより少なくなるであろう。
【0020】
有利な態様の変型例によると、1つ又は複数のガス出口開口部は、1つ又は複数のガス管として、ノズルヘッド要素内で具体化されており、ノズルヘッド要素は、旋回アーム又はガス出口モジュールに挿入可能である。これによって、ガス出口開口部の、場合によっては異なる形状を容易な方法で用いること、又は、解決すべき問題の変更された境界条件に反応すること、又は、摩耗に起因する交換を実施することが可能になる。1つのノズルヘッド要素のみが存在していてよいが、複数のノズルヘッド要素が存在していてもよい。
【0021】
有利な態様の変型例によると、ノズルヘッド要素の位置は、調整要素を用いて調整可能である。例えば、ガス出口開口部の長手軸の、旋回軸に対する角度に関してである。当該調整要素は、例えば調整ネジであってよい。調整可能性によって、上述したように、ガスフローとタップホール管の長手軸との求められる同軸度が、調整不可能なノズルヘッド要素の場合よりも早く実現可能である。
【0022】
スラグの流出に関する、冶金容器のタップホール管の空気圧による閉鎖のために設けられている旋回アームの位置を、密封位置とも呼ぶことができる。旋回軸は、旋回シャフトを通って延在している。スラグストッパには、ガス供給管にガスを供給するためのガス源導管が設けられている。
【0023】
有利な態様の変型例によると、密封位置においてのみ、ガス源導管は、弁を有さずに、少なくとも旋回シャフト内に偏心に配置された接続管を通じて、ガス供給管に接続されている。場合によっては、旋回シャフトの外側に、さらなる接続管が存在していてもよく、それによって、ガスが、旋回シャフト内の接続管から、ガス供給管に導入される。
【0024】
弁を有さない構造は、故障しやすさと、保守の負担とを減少させる。ガス源導管の端部にある開口部と、旋回シャフト内に配置された接続管のガス源導管側の開口部とは、密封位置においてのみ重なり合っており、対応して、ガスのみが流れる。出発位置では、ガスが流れることは不可能である。なぜなら、旋回シャフトが、ガス源導管を閉鎖するからである。
【0025】
密封位置への移動の間、及び、タップホール管の空気圧による閉鎖の間に、溶融金属又はスラグの飛沫は、旋回アームで凝固し得る。これは、旋回運動と、ガスフローのタップホール管への導入とに、ネガティブな影響を与え得る。有利な態様の変型例によると、旋回アーム内、好ましくはガス出口モジュールにおける、少なくとも1つのガス出口開口部の周囲には、複数のガス出口が存在している。ガス出口は、1つ又は複数のガス出口開口部が配置されている領域から離れて配置されている。周囲とは、旋回アーム又はガス出口モジュールの、タップホールカラーの手前の密封位置にある領域であると理解されるべきである。ガス出口が、ガス供給管に合流している場合、ガス出口を通って、例えばガス供給管を通って供給されるガスが流出する。ガス出口によって表面が減少することによって、溶融金属又はスラグの凝固が困難になる。動作中に流出するガスによって、溶融金属又はスラグの凝固が困難になる。すなわち、ガス出口は、上述の問題を減少させるために用いられる。
【0026】
有利な態様の変型例によると、旋回駆動部は、ギアを有していない。これによって、製造費用、故障しやすさ、及び、冶金容器に固定されたスラグストッパが耐えなければならない極端な環境条件下で必要とされる保守の負担が減少する。
【0027】
有利な態様の変型例によると、旋回駆動部は、少なくとも1つのクランクシャフトと、クランクシャフトを駆動するための、少なくとも1つの空気圧シリンダと、を含んでいる。これによって、故障しやすさ、及び、冶金容器に固定されたスラグストッパが耐えなければならない極端な環境条件下で必要とされる保守の負担が減少する。
【0028】
有利な態様の変型例によると、旋回駆動部は、熱的に絶縁されたハウジング内に格納されている。これによって、故障しやすさ、及び、冶金容器に固定されたスラグストッパが耐えなければならない極端な環境条件下で必要とされる保守の負担が減少する。特に、空気圧シリンダの寿命が、これによって延長される。
【0029】
本出願のさらなる対象は、タップホール管と、冶金容器に固定された本発明に係るスラグストッパとを有する冶金容器であり、タップホール管の長手軸は、旋回軸に対して略平行である。このように取り付けられた本発明に係るスラグストッパにおいては、上述した利点が生じる。スラグストッパは、直接又は間接に、冶金容器に固定されていてよい。好ましくは、スラグストッパは、解除可能に固定されている。冶金容器への固定は、例えば、冶金容器上に存在するブラケットを通じて間接的に行われ得る。例えば、特許文献2に係るスラグストッパに用いられるブラケットは、本発明に係るスラグストッパにも用いられ得る。これによって、特許文献2に記載のスラグストッパを、本発明に係るスラグストッパに改造することが容易になる。その場合、既存のブラケット上に存在する供給導管のための接続は、スラグストッパの対応する構造によって、変更を加えずに利用可能である。
【0030】
本発明に係るスラグストッパは、自明のことながら、特許文献2の教示と同様に、スラグストッパの部分を支持するフレームを有していてよく、この、スラグストッパの部分を支持しているフレームの方は、冶金容器に解除可能に固定されている。
【0031】
本出願のさらなる対象は、スラグの流出に関して、少なくとも1つのガス出口開口部から供給されるガスフローを用いて、冶金容器のタップホール管を空気圧によって閉鎖するための方法であり、旋回アームに取り付けられた少なくとも1つのガス出口開口部は、タップホール管のタップホールの手前において、密封位置に配置され、このために、旋回アームは、旋回運動で、タップホールの手前の密封位置に旋回され、当該旋回運動は、タップホール管の長手軸に対して略垂直な平面において行われることを特徴としている。
【0032】
特許文献1及び特許文献2に示されているような既知のスラグストッパの場合、旋回アームは、ガス出口開口部とタップホールとの間の距離が、タップホール管の長手軸に沿って見て、密封位置に到達するまで減少するように、タップホールの手前で旋回される。
【0033】
その際、旋回運動は、タップホール管の長手軸が位置する平面で行われる。ガス出口開口部は、タップホール管の長手軸の方向に見て、実際には、前方からタップホールに接近する。
【0034】
これとは対照的に、本発明によると、旋回運動が、タップホール管の長手軸に対して略垂直な平面で行われるように、旋回される。ガス出口開口部は、タップホール又はタップホール管の長手軸に、実際には側方から接近する。
【0035】
略垂直には、垂直だけではなく、垂直から+/-5°までの逸脱も含まれており、このような直交性からのわずかな逸脱は、機能性を受容できない程度に制限することなく、動作中に生じ得る。
【0036】
このような方法においては、旋回運動を可能にするために冶金容器に取り付けられたスラグストッパに関して、冶金容器の回転外側輪郭の外側で必要とする場所は、特許文献1及び特許文献2におけるよりも少ない。従って、特許文献1及び特許文献2に記載のスラグストッパの動作が、タップホールと製鋼取鍋との間の場所が狭いために実施不可能である場合にも、使用が可能である。
【0037】
ガス出口開口部は、タップホールカラー内のタップホールの手前で、すなわち冶金容器の外側で、例えば30mm~100mmの間隔を置いて配置される。その際、ガス出口開口部は、タップホールの方向に方向付けられている。
【0038】
密封位置では、タップホール管の長手軸と、ガスフローの長手軸とが、好ましくは略同軸である。タップホール管を空気圧によって最適に閉鎖するためには、このようなガスフローの、中央における、タップホールの縁部に関して左右対称の導入が重要である。
【0039】
1つのガス出口開口部のみが存在している場合、当該ガス出口開口部は、好ましくは中央において、タップホールの手前に位置しており、タップホール管の長手軸とガス出口開口部の長手軸とは、略同軸である。当該ガス出口開口部から流出するガスフローは、その長手軸が、ガス出口開口部の長手軸に対して略同軸であり、従って、タップホール管の長手軸とも略同軸であろう。
【0040】
複数のガス出口開口部が存在する場合、当該ガス出口開口部は、好ましくは中央において、タップホールの手前に配置され、それによって、ガスフローは、タップホール管の長手軸に対して略同軸になる。
【0041】
旋回アームは、旋回運動の際に、タップホール管が空気圧によって閉鎖され得る前に、不可避的に、タップホールから流出する溶融金属及び/又はスラグのフローに入らなければならないので、液状の材料は、タップホール管の長手軸から離れる方向に飛散する。設備の飛沫が当たった部分では、飛沫が凝固する可能性があり、スカルという言葉が用いられる。スカルは、スラグストッパ上、及び、タップホールの周囲、例えばタップホールカラー上にも生じる。固体のスカルは、ガス出口開口部の位置決めの際に、問題を引き起こす。なぜなら、例えば、これらのスカルは、所定の密封位置に到達する前に、旋回運動を制限するからである。例えば、タップホールには、スカルから成るいわゆるラッパが形成され、ラッパは、従来の手順では、各タッププロセスにおいて成長する。
【0042】
特許文献1及び特許文献2と比較すると、本発明に係る手順では、スカルがガス出口開口部の計画通りの位置決めを妨げる危険が減少する。これは、例えば、すぐ前のタッププロセスの際に、部分的に形成されたラッパが、旋回アームが側方から接近する場合に、押しのけられ、切り離されることによるものである。これによって、保守の負担は減少し、スカルに起因する、空気圧による閉鎖の際の問題も減少する。
【0043】
好ましい実施形態によると、タップホール管の空気圧による閉鎖の間に、ガスが、旋回アーム内の少なくとも1つのガス出口開口部の周囲に存在する複数のガス出口から流れる。これによって、ガス出口開口部周囲のスカルが防止される。
【0044】
本出願のさらなる対象は、機械可読プログラムコードを有する信号処理装置であり、当該プログラムコードが、本発明に係る方法を実施するための制御コマンドを有することを特徴としている。
【0045】
本出願のさらなる対象は、信号処理装置のための機械可読プログラムコードであり、プログラムコードが、信号処理装置に本発明に係る方法を実施させる制御コマンドを有することを特徴としている。
【0046】
本出願のさらなる対象は、本発明に係る機械可読プログラムコードを記憶する記憶媒体である。
【0047】
以下において、実施形態の概略的かつ例示的な図面に基づいて、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】従来のタップホール管の空気圧による閉鎖を示す図である。
図2】従来のタップホール管の空気圧による閉鎖を示す図である。
図3】出発位置にある、本発明に係る空気圧式スラグストッパの実施形態を、異なる見方で示す図である。
図4】出発位置にある、本発明に係る空気圧式スラグストッパの実施形態を、異なる見方で示す図である。
図5】本発明に係る旋回アームの実施形態を断面で示す図である。
図6図3及び図4に概ね類似した見方で、密封位置にある本発明に係る空気圧式スラグストッパの実施形態を示す図である。
図7】アームモジュールとガス出口モジュールとを有する旋回アームを概略的に示す図である。
図8】ノズルヘッド要素とガス出口開口部とを有するガス出口モジュールを示す図である。
図9a】ガス供給管の、弁を有さないガス供給の実施形態を概略的に示す図である。
図9b】ガス供給管の、弁を有さないガス供給の実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1及び図2は、特許文献1に記載のタップホール管の空気圧による閉鎖を示している。本図では製鋼所の転炉である冶金容器1からは、タップの際に、溶融金属2が、タップホール管3を通って流出する。タップホール4は、タップホールカラー5内に存在する。図示されているのは出発位置である。なぜなら、スラグ6がまだ流出していないからである。旋回アーム7には、ガス出口開口部8が取り付けられている。旋回アーム7は、旋回駆動部10を用いて、旋回軸9の周りに旋回可能である。紙面のガス出口開口部8の長手軸11は、旋回軸9に対して垂直である。図2には、旋回駆動部10を用いて実現した密封位置が示されている。紙面におけるガス出口開口部8の長手軸11は、タップホール管3の長手軸と同軸である。ガス出口開口部8は、タップホールカラー5のタップホール4内に存在している。ガス出口開口部8からは、空気圧による閉鎖のために、ガスがタップホール管3に流入するが、これは矢印で示されている。このガスフローは、タップホール4内で中央に配置されたガス出口開口部8の周囲の環状間隙12を通じて、空気も同伴するが、これは矢印で示されている。
【0050】
図3は、本発明に係る空気圧式スラグストッパを示している。旋回アーム13は、その端部に、ガス出口開口部を有している。旋回アーム13内に延在するガス供給管は図示されていない。示されたガス出口開口部の長手軸14は、旋回軸15に対して平行である。旋回駆動部は、ハウジング16内部に配置されており、特別に示されてはいない。ハウジング16は、熱的に絶縁されていてよい。
【0051】
図4は、図3に示された状況を、異なる見方で示している。
【0052】
図3及び図4の両方には、冶金容器のタップホールと共に、タップホールカラー17も示されており、当該タップホールカラーには、本発明に係るスラグストッパが取り付けられている。タップホール後方のタップホール管の長手軸18は、旋回軸15に対して略平行である。
【0053】
図5は、旋回アーム21内のガス出口開口部19の長手軸20の旋回軸22に対する関係を、断面で概略的に示している。旋回アーム21内には、ガス出口開口部19に合流するガス供給管23が延在している。
【0054】
図3及び図4では、スラグストッパが出発位置にある。図6は、タップホール24の長手軸18に対して略垂直な平面で旋回した後の、密封位置にあるスラグストッパを、同じように示している。密封位置では、ガス出口開口部が、タップホール24の手前に配置されている。
【0055】
図7は、旋回アーム25の、アームモジュール26と、アームモジュール26に解除可能に固定されたガス出口モジュール27とを含む部分を、断面で概略的に示している。
【0056】
図8は、ガス出口モジュール28に挿入された、ガス出口開口部として複数のガス管30a、30b、30cを有するノズルヘッド要素29を、断面で概略的に示している。ノズルヘッド要素29内のさらなるガス出口開口部が示されているが、参照符号は付されていない。ガス出口開口部の周囲には、任意で存在するガス出口31a、31b、31cが示されており、ノズルヘッド要素29内のさらなるガス出口が示されているが、参照符号は付されていない。
【0057】
図9aは、どのように、密封位置において、ガス源導管32が弁を有さずに、旋回シャフト35内の旋回軸33に対して偏心に配置された接続管34を通じて、旋回アーム37内のガス供給管36に接続されているかを概略的に示している。
【0058】
図9bは、図9aに比べて約135°回転した位置において、接続管34が、ガス源導管32ともはや接続していない様子を概略的に示している。
【符号の説明】
【0059】
1 冶金容器
2 溶融金属
3 タップホール管
4 タップホール
5 タップホールカラー
6 スラグ
7 旋回アーム
8 ガス出口開口部
9 旋回軸
10 旋回駆動部
11 ガス出口開口部の長手軸
12 環状間隙
13 旋回アーム
14 ガス出口開口部の長手軸
15 旋回軸
16 ハウジング
17 タップホールカラー
18 タップホール管
19 ガス出口開口部
20 ガス出口開口部の長手軸
21 旋回アーム
22 旋回軸
23 ガス供給管
24 タップホール
25 旋回アーム
26 アームモジュール
27 ガス出口モジュール
28 ガス出口モジュール
29 ノズルヘッド要素
30a、30b、30c ガス管
31a、31b、31c ガス出口
32 ガス源導管
33 旋回軸
34 接続管
35 旋回シャフト
36 ガス供給管
37 旋回アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b