(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】較正方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N35/00 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021009826
(22)【出願日】2021-01-25
(62)【分割の表示】P 2018178776の分割
【原出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ クリンガウフ
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-331630(JP,A)
【文献】特開2000-180453(JP,A)
【文献】特開2013-024783(JP,A)
【文献】特許第6860536(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0070675(US,A1)
【文献】国際公開第2015/098473(WO,A1)
【文献】特開2015-184017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
G01N 33/48-33/52
G01N 33/58-33/98
G01N 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより実施される、体外診断分析器を較正する方法であって、前記方法が、
複数のキャリブレータレベルを測定し(10、11、12)、それによって複数のそれぞれのキャリブレーションポイント(1-n)を得ることを含む多点較正手順(100、100’、100’’、100’’’)を実施すること、
前記多点較正手順(100、100’、100’’、100’’’)の結果を計算し(20)、計算結果(20)に基づいて前記多点較正手順(100、100’、100’’、100’’’)の不合格または合格を決定すること(30)、
前記多点較正手順(100、100’、100’’、100’’’)が不合格の場合に、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント(1-n)に関連するかどうかを決定し(40)、肯定の場合(50、51)に、前記多点較正手順(100、100’、100’’、100’’’)の不合格に関連すると決定された前記不合格キャリブレーションポイント(1、3、6)に関してのみキャリブレータレベルの測定(10)の繰り返し(60、62、66)をトリガーし、前記不合格キャリブレーションポイント(1、3、6)のみを新しく得られたキャリブレーションポイント(1、3、6)で置き換えた後に前記多点較正手順(100、100’、100’’、100’’’)の結果を再計算する(20’)ことを含
み、
後のユーザ検証を可能にするために、前記不合格キャリブレーションポイント(1)のためのみの前記キャリブレータレベルの測定(10)の繰り返し(60)が自動的にトリガーされる場合、前記多点較正手順(100)の再計算された較正結果(20’)にフラグを立てること(71)をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記多点較正手順(100’)および/または前記キャリブレータレベルの測定(10、11、12)の繰り返しが、各キャリブレーションポイント(1-n)について1対の測定データ(1、1’、2、2’、n、n’、22、23)を得るために、各キャリブレーションポイント(1-n)について、それぞれの前記キャリブレータレベルを2回測定すること(10、11、12)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント(6)に関連するかどうかを決定すること(40)が、各キャリブレーションポイント(1-6)または各キャリブレーションポイント(1-6)についての2回測定データ間の平均値の、適合多点キャリブレーション曲線(80)からの偏差を比較することを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント(3)に関連するかどうかを決定すること(40)が、各キャリブレーションポイント(1-6)についての2回測定データをそれぞれ比較すること、およびそれらの値の差が所定の閾値を超えるかどうかを決定することを含む、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント(1-n)に関連するかどうかを決定すること(40)が、前記不合格キャリブレーションポイント(1-n)の不合格に関連し得る前記体外診断分析器の1つまたは複数の所定の操作パラメータ(1-n)を評価することを含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、各キャリブレーションポイント(1-n)についての2回測定のそれぞれの実施に関連する前記1つまたは複数の所定の操作パラメータ(1-n)を比較することを含む、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
前記不合格キャリブレーションポイント(1)のためのみの前記キャリブレータレベルの測定(10)の繰り返し(62)をトリガーすることが、繰り返されるべき、不合格の可能性のあるキャリブレーションポイントを表示すること(51)、および表示されたキャリブレーションポイント(1)のユーザの確認を要求すること(61)を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記多点較正手順(100’’’)の不合格が、1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント(1-n)に関連することを自動的に決定することができない場合(52)、前記方法は、前記不合格キャリブレーションポイント(1)のユーザの選択を要求すること(65)、選択されたキャリブレーションポイント(1)に関してのみ前記キャリブレータレベルの測定(10)の繰り返し(66)をトリガーすること、および前記選択されたキャリブレーションポイント(1)のみを新しく得られたキャリブレーションポイント(1)で置き換えた後に前記多点較正手順(100’’’)の結果を再計算すること(20’)をさらに含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ユーザの確認(63)またはユーザの選択(67)のためのタイムリミットを設定すること、および前記タイムリミット(63、67)を超えた場合、前記多点較正手順(100’’’)の全体の繰り返し(64、68)をトリガーすることをさらに含む請求項
7または
8記載の方法。
【請求項10】
前記多点較正手順(100、100’、100’’、100’’’)の計算結果(20)、および/または前記不合格キャリブレーションポイント(1)のみを置き換えた後の、前記多点較正手順(100、100’、100’’、100’’’)の再計算結果(20’)を表示することをさらに含む請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記計算結果(20)および前記再計算結果(20’)を直接比較することをさらに含む請求項
10記載の方法。
【請求項12】
表示することが、各キャリブレーションポイント(1-6)についての2回測定データ(22、23)をリスト化および/またはプロットすることを含む、請求項
10または
11記載の方法。
【請求項13】
表示することが、不合格の、もしくは不合格の可能性のあるキャリブレーションポイント(1)、および/または繰り返されたキャリブレーションポイント(1)を表示すること(50)を含む、請求項
10~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
表示することが、不合格キャリブレーションポイント(1)を選択および/または確認するための選択領域(61’、62’)を表示することを含む、請求項
10~
13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータにより実施される、体外診断分析器を較正するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学では、医者の診断および患者の処置は、しばしば患者のサンプルにおける検体の濃度またはその他のパラメータの測定に依存している。この測定は、一般的にはある種のサンプルを分析し、各種の検出技術を用いてある種の検体を検出するように構成され得る体外診断分析器によって行われる。患者の生命は、かかる測定の精度および信頼性に依存しているので、計器は正しく実行されることが重要である。
【0003】
体外診断分析器は、それらが正しく作動することを確認するために、一連の品質管理(QC)手順を実行することが一般的な要件である。
【0004】
これらの手順の1つが較正である。ほとんどの場合、既知の濃度を有する標準溶液を用いて実行される。このような方法において、測定された信号を量的な結果に関連付けることが可能である。較正は、システムおよび性能に影響する可能性のあるその他の変動要因に応じて、多かれ少なかれ頻繁に実行されるべきである。
【0005】
ときどき、較正中にエラーが起こる可能性があり、較正不合格が報告される。ほとんどの場合、不合格の原因が何かは不明である。ほとんどの場合、不合格の原因は、偶然誤差によるもので、たとえば、ピペット操作のエラーによる気泡、よごれ、汚染の存在などの測定中の干渉によるものである。
【0006】
結果として、不合格の原因が何であるのかを調べるよりも、次回は不合格が報告されないという希望を持って、較正手順が通常通り繰り返される。
【0007】
体外診断分析器のランニングコストと同様に有効な処理能力および使用性能は、相当な時間が較正手順の実行および繰り返しに向けられなければならないという事実に影響され得る。このことは、任意の順序で、異なるサンプルを処理し、異なる検体に対してテストするように構成される体外診断分析器にも当てはまり、体外診断分析器では、サンプルの種類および/または対象となる検体に応じて異なる試薬が使用され、このことは、異なるサンプル/検体/試薬の組み合わせに対する異なる較正手順が、かなりの頻度で要求されることを意味する。さらに、同じ較正手順に対して要求されるキャリブレータレベルの数が増えるにつれて、較正手順を実施する時間およびコストが増える。
【発明の概要】
【0008】
コンピュータにより実施される、体外診断分析器を較正するための方法が本明細書中に提供され、この方法によれば、較正手順に費やされる時間を最小にし、較正を失敗することによる日常の操作の遅れを最小にし、キャリブレータの使用を最小にし、それによってコストも節約し、しばしば高額な材料の浪費を防ぐことが可能になる。
【0009】
この方法の別の利点は、系統誤差(systematic error)と偶然誤差(random error)の区別を可能にし、いくつかのケースでは、不合格となった較正手順の原因を決定することが可能になることである。
【0010】
いくつかのケースでは、この方法の別の利点は、トラブルシューティングを容易にし、メンテナンスおよびサービスの費用を減らし、不具合処理を早め、さらなる計器の停止時間を最小にすることが可能になることである。
【0011】
体外診断分析器を較正するための方法は、複数のキャリブレータレベルを測定して、それによって複数のそれぞれのキャリブレーションポイントを得ることを含む多点較正手順を実施すること、多点較正手順の結果を計算すること、計算結果に基づいて多点較正手順の不合格または合格を決定することを含む。多点較正手順が不合格の場合に、方法は、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連するかどうかを決定し、肯定の場合に、不合格キャリブレーションポイントに関してのみキャリブレータレベルの測定の繰り返しをトリガーし、不合格キャリブレーションポイントのみを新しく得られたキャリブレーションポイントで置き換えた後に多点較正手順の結果を再計算することを含む。
【0012】
「体外診断分析器」は、体外診断用のサンプルの分析に専用の検査室用の自動装置である。体外診断分析器は、必要に応じておよび/または所望の実験室ワークフローに応じて異なる構成を有していてもよい。追加の構成が、複数の装置および/またはモジュールを共に結合することにより得られてもよい。「モジュール」は、一般的には専用の機能を有する、全臨床診断システムよりもサイズが小さい作業セルである。この機能は、分析的であり得るが、事前分析的もしくは事後分析的でもあり得るか、または、任意の事前分析機能、分析機能もしくは事後分析機能に対する補助機能であり得る。特には、モジュールは、たとえば、1つまたは複数の事前分析的および/または分析的および/または事後分析的工程を実行することによって、サンプル処理ワークフローの専用のタスクを行うための1つまたは複数のその他のモジュールと協働するように構成され得る。このように、体外診断分析器は、1つの分析装置または任意のかかる分析装置とそれぞれのワークフローとの組み合わせを備え、事前分析的および/または事後分析的モジュールは個々の分析装置と接続されてもよく、または複数の分析装置によって共有されてもよい。代わりに、事前分析的および/または事後分析的機能が、分析装置に一体化されたユニットによって実行されてもよい。体外診断分析器は、サンプルおよび/または試薬および/またはシステム流体のピペット操作および/またはポンプ操作および/または混合のための液体ハンドリングユニットなどの機能ユニットを備えることができ、分類、保管、輸送、識別、分離、検知のための機能ユニットを備えることができる。体外診断分析器の例としては、臨床化学分析器、免疫化学分析器、凝固分析器、血液分析器、分子診断分析器があげられるが、これらに限られるものではない。
【0013】
用語「サンプル」は、対象となる1つまたは複数の検体を含むと考えられ、その量および/または質の検知が臨床状態に関連付けられる生物学的な物質をいう。サンプルは、血液、唾液、接眼レンズ液、脳脊椎液、汗、尿、乳、腹水液、粘液、滑液、腹膜液、羊水、組織、細胞などを含む生理学的流体などの生理学的起源に由来し得る。サンプルは、血液からの血漿の精製、粘性流体の希釈、溶解など、使用前に前処理をすることができ、処理方法としては、濾過、遠心分離、蒸留、濃縮、干渉成分の不活性化および試薬の添加を含み得る。サンプルは、いくつかのケースでは、起源から得られたままで直接使用されてもよく、またはたとえば、1つまたは複数の体外診断テストを可能にし、対象の検体を富化(抽出/分離/濃縮)し、および/または対象の検体の検知を干渉する可能性のあるマトリックス成分を取り除くために、たとえば、内標準を追加した後、または他の溶液で希釈後、または試薬と混合した後でなど、サンプルの性質を変更するための前処理および/またはサンプル調製ワークフローに続いて使用されてもよい。
【0014】
「キャリブレータ」は、較正に用いられる既知の数値の1つまたは複数の較正材料を含み、一般的には試薬の使用を含む、サンプルと同じ条件で測定されるキャリブレーション溶液である。キャリブレータは、ゼロ濃度、すなわちブランク溶液を含む較正材料の異なる濃度範囲に対応する異なるレベルで提供され得る。一般的には、同じキャリブレータの1つまたは2つのレベルが、検体濃度に対して線形応答する場合に、1ポイントまたは2ポイント較正のそれぞれのために使用される。3つ以上のキャリブレータレベル、たとえば、5つ、6つまたはそれ以上のレベルが、キャリブレーション曲線が非直線の場合に使用されてもよい。
【0015】
「較正材料」は、濃度が既知の、対象の検体と同じ検体であり得るか、または反応もしくは誘導体化により、たとえば断片化によって、濃度が既知の、対象の検体と同じ検体を生成する検体であり得るか、または対象の検体とよく似た、もしくはそうでなければ対象のある種の検体と関連付けられる、濃度が既知の他の同等の物質であり得る。
【0016】
「試薬」は、反応が起こることを可能にするか、またはサンプルもしくはキャリブレータに含まれたサンプルキャリブレータもしくは検体の物理的パラメータの検出を可能にするために、たとえば、分析のためのサンプルまたは測定のためのキャリブレータを調製するために、サンプルまたはキャリブレータの処理のために使用される物質である。特には、試薬は、反応物、一般的には、たとえば、1つまたは複数の検体または望まれないマトリックス成分に結合し得るか、またはそれらを化学的に変形させることができる化合物または試剤であるか、それらを含む物質であり得る。反応物の例としては、酵素、酵素基質、共役染料、タンパク結合分子、リガンド、核酸結合分子、抗体、キレート剤、促進剤、抑制剤、エピトープ、抗原などが挙げられる。しかしながら、試薬という用語は、希釈液、水もしくはその他の溶媒もしくはバッファ溶液を含む、サンプルもしくはキャリブレータに添加され得る任意の流体、または検体のタンパク質、結合タンパク質もしくは表面への特異的または非特異的な結合を分裂させるために用いる物質を含むように使用される。
【0017】
サンプルは、たとえば、一次管および二次管を含むサンプル管、もしくはマルチウェルプレートなどのサンプルコンテナ、または任意のその他の開放もしくは密閉型のサンプル搬送支持体に提供される。試薬は、たとえば、個々の試薬または試薬のグループを含むコンテナまたはカセットの形態で配置されるか、また保管区画またはコンベヤ内の適当な受け器または位置に置かれてもよい。その他の種類の試薬またはシステム流体がバルクコンテナに、または供給ラインを経由して提供されてもよい。
【0018】
「較正手順」は、同じワークフローおよび最終的には同じ(1つまたは複数の)試薬の使用を含む、測定サンプルの同じ条件下で、キャリブレータ中に存在するキャリブレーション材料の既知の値を測定することにより、測定されたサンプル信号をサンプル中の検体の濃度の定量結果に関連付けすることを可能にするプロセスである。特定のサンプル、対象となる特定の(1つまたは複数の)検体、特定のワークフローおよび測定条件に応じて変化する可能性のある、信号の種類、および特には異なる濃度における信号の直線性または非直線性に応じて、較正手順は、分析器の検出範囲内(ダイナミックレンジ)および/またはサンプル中に発見され得る検体の代表的な濃度範囲内に入るキャリブレーション材料の異なる濃度範囲に対応するキャリブレータの1つまたは複数のレベルを測定することを含み得る。1つのキャリブレータレベルのみを測定する場合、較正手順は、1点較正手順である。キャリブレータの2つのレベルを測定する場合、較正手順は、2点較正手順などである。「多点較正手順」は、複数のキャリブレータレベル、すなわち少なくとも2つおよび一般的には3つまたはそれ以上のキャリブレータレベルを測定すること、および特には複数のキャリブレーションポイントの各々のキャリブレータレベルを測定し、それによって複数のそれぞれのキャリブレーションポイントを得ることを含む較正手順である。
【0019】
特定のサンプル、対象である特定の(1つまたは複数の)検体、サンプル/(1つまたは複数の)試薬の組合せおよび条件測定を含む、特定のワークフローに応じて、異なる較正手順を実行する必要があってもよく、その各々が、異なる1つまたは複数のキャリブレータ、ならびに最終的にはキャリブレータの異なるレベルおよび/または異なる数のレベルを含む可能性がある。
【0020】
「多点較正手順の結果を計算すること」は、測定されたキャリブレーションポイントに最も適合する曲線、または数学的関数を構築するプロセスであって、測定されたキャリブレーションポイントの変化またはバラツキの量(標準偏差)を計算することにより、プロセスにおいて発生する未知の誤差および/または偶然誤差による測定誤差のために、構築された曲線にどれだけの不確実性が存在するかなどの統計的推測を考慮に入れる回帰分析を含むプロセスである。プロセスは、同条件下で、構築された曲線を基準曲線または以前に構築された曲線と比較すること、および/または個々のキャリブレーションポイントを基準値または以前に測定された値と比較することを含んでいてもよい。
【0021】
計算結果に基づいた多点較正手順の「不合格または合格を決定すること」は、測定誤差を定量化し、誤差が分析器の仕様に従って要求される閾値よりも小さいかどうかを決定するプロセスである。特には、多点較正手順の不合格は、誤差が要求される閾値よりも大きい場合に決定され、一方で、多点較正手順の合格または解除は、誤差が要求される閾値よりも小さい場合に決定される。
【0022】
多点較正手順の不合格の場合、本開示の方法は、個々のキャリブレーションポイントの各々の測定誤差を定量化することによって、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連するかどうかを決定することを含む。不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連すると決定された場合、方法は、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントのみに対応するキャリブレータレベルの測定の繰り返し、すなわち測定を繰り返すことをトリガーすること、および、すべての他の不合格ではないか、または合格した(解除された)キャリブレーションポイントを保持しながら、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントのみを新しく得られた(1つまたは複数の)キャリブレーションポイントで置き換えた後、多点較正手順の結果を再計算することを含む。
【0023】
用語「トリガー」または「トリガーする」は、本明細書中においては、体外診断分析器によって自動的に開始され実行される自動手順、または体外診断分析器によって生成され、ユーザに手動で介在するように促す警報のいずれか、または両者の組合せとしての半自動の手順を意図するものとして使用される。
【0024】
一実施形態によれば、多点較正手順および/または(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントに対するキャリブレータレベルの測定の繰り返しは、各キャリブレーションポイントのために1対の測定データ(生の結果データ)を得るために、各キャリブレーションポイントのそれぞれのキャリブレータレベルを2回測定することを含む。
【0025】
一実施形態によれば、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連するかどうかを決定することは、各キャリブレーションポイントまたは各キャリブレーションポイントの2回測定データの間の平均値のそれぞれの、適合多点キャリブレーション曲線からの偏差を比較することを含む。
【0026】
一実施形態によれば、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連するかどうかを決定することは、各キャリブレーションポイントの2回測定データをそれぞれ比較し、それらの数値の差が所定の閾値を超えるかどうかを決定することを含む。たとえば、2回測定データの間の差が実在するが、平均値は依然として、不合格となるキャリブレーションの閾値により画定された許容範囲内にあることが起こり得る。偶然誤差の場合に、2回測定データがお互いに実質的に相違する可能性が高いので、各対内の2回測定データを比較することにより、誤差が発生したかどうかを決定することができる。
【0027】
一実施形態によれば、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連するかどうかを決定することは、各キャリブレーションポイントの2回測定データにそれぞれ関連する反応曲線を比較すること、および反応曲線が互いに実質的に異なっているかどうかを測定することを含む。特には、サンプル測定は、いくつかの場合、たとえば、凝固分析において、たとえば、検体濃度またはサンプルの特徴を示す反応時間またはその他の変動パラメータを測定するために、反応曲線をモニタリングすることを含む。反応曲線の異常形状は、ワークフローにおいてまたは測定中に起こる誤差、たとえば、空気、破片、ダストなどの、光路中の干渉物の存在などを示し得る。各キャリブレーションポイントの2回測定の反応曲線をそれぞれ比較することにより、誤差が発生したかどうかを決定することができる。というのは、偶然誤差の場合には、2つの測定データのうちの1つにおいてのみに誤差が発生する可能性が高いからである。
【0028】
一実施形態によれば、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連するかどうかを決定することは、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントの不合格に関連し得る体外診断分析器の1つまたは複数の所定の操作パラメータを評価することを含む。
【0029】
一実施形態によれば、方法は、各キャリブレーションポイントそれぞれの2回測定の実施に関係する1つまたは複数の所定の操作パラメータを比較することを含む。
【0030】
「操作パラメータ」とは、体外診断分析器の操作中、および特には、多点較正手順の実行中に検出され、および定量化され得る、電流、電圧、電気抵抗、静電容量、磁場、時間、距離、サイズ、形状、面積、容積、高さ、速度、位置、温度、圧力、粘度、pH、表面特性、化学的および/または生物学的特性、機械的抵抗、光度、波長、周波数、ノイズなどであって、これらに限定されない、測定可能な性質、または任意の種類の区別できる、物理的および/または化学的な信号を含む生データから導き出され得る性質である。「ソースデータ」と呼ばれることもある「生データ」という用語は、使用のために処理されなかったデータではあるが、選択的な抽出、組織化、および時には、プレゼンテーションのための分析およびフォーマット化により、情報となる可能性を有するデータである。一旦処理されると、データは、操作パラメータとなり得る。特には、監視される場合、一般的には、体外診断分析器の、特には、たとえば(1つまたは複数の)ピペット操作ユニット、検出ユニットなどの、キャリブレーション手順の実行に係る任意の機能性(操作)ユニットを示し得る1つまたは一式の操作パラメータを選択することができる。
【0031】
(1つまたは複数の)操作パラメータの「監視」は、特定のパラメータおよび実際の操作状況によって、連続的、または間隔をおいて実行されてもよく、また、同時に、または異なる、または重なる時間で実行されてもよい。特には、一式の操作パラメータのうちの全ての操作パラメータが同時におよび任意の所定の時間で監視される必要があるわけではない。たとえば、いくつかの操作パラメータの監視が、いくつかの機能性ユニットが作用している時にのみ生じてもよい。特には、少なくともいくつかの操作パラメータの監視が、特定の実際の操作状況において、一時停止されて、再開され、または単に無視されてもよい。
【0032】
用語「性能状態(performance status)」は、製造者によって指定された、意図される目的を達成し、分析性能を確実にするための、体外診断分析器の能力、すなわち、対象の検体を正しく検出し、および/または測定する能力をいう。このように、一式の操作パラメータに関する「性能状態を示す」という用語は、体外診断分析器が仕様に従って実行しているか、もしくは実行していないかを決定するか、または少なくとも決定する(示す)ことに寄与することを意味する。
【0033】
したがって、多点較正手順に関連して体外診断分析器の1つまたは複数の所定の操作パラメータを評価することは、多点較正手順の実行中に、および特には各キャリブレーションポイントに関するキャリブレータレベルの測定中、または同じキャリブレーションポイントの2回測定中に、(1つまたは複数の)所定の操作パラメータが仕様から外れているかどうかをチェックすることを含む。
【0034】
各キャリブレーションポイントの2回測定を実行し、それぞれの2回測定の実行に関する1つまたは複数の所定の操作パラメータを比較することにより、不合格が、キャリブレータの取り扱いにおける偶然誤差によるものか、または体外診断分析器の系統誤差によるものかを決定するのに役立ち得る。一例を挙げると、操作パラメータが温度である場合、サンプルと同様に一定量のキャリブレータを吸引時に所定の温度にまで暖めることになっているピペット操作ノズルの温度センサが、所定の温度に到達していないことを示すことが可能である。系統誤差が繰り返し起こる1つの可能性のある理由は、ノズルヒータまたは温度センサが損傷しているからである可能性がある。偶然誤差が1回のみ、または数回起こる1つの可能性のある理由は、キャリブレータが直近に冷凍機から取り出され、したがって、利用可能な時間内で所定の温度に達するには依然として冷たすぎるからである。同じキャリブレーションポイントのための2回目の測定が行われるときまでに、キャリブレータの温度は、その間に上がってしまっている可能性がある。
【0035】
「実質的に異なる」または「実質的な差違」という用語は、本明細書において、所定の許容範囲、すなわち、標準偏差(SD)の2倍または3倍を超える範囲の外にある、基準値、量、尺度、形状からの任意の偏差を含むように使用される。
【0036】
一実施形態によれば、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントに関してのみキャリブレータレベルの測定の繰り返しをトリガーすることが、繰り返されるべき、不合格となった可能性のある(1つまたは複数の)キャリブレーションポイントを表示し、表示された(1つまたは複数の)キャリブレーションポイントのユーザの確認を要求することを含む。
【0037】
一実施形態によれば、多点較正手順の不合格が、1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連することが自動的に決定することができない場合、方法は、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントのユーザの選択を要求すること、選択された(1つまたは複数の)キャリブレーションポイントに関してのみキャリブレータレベルの測定の繰り返しをトリガーすること、および選択された(1つまたは複数の)キャリブレーションポイントのみを新しく得られたキャリブレーションポイントで置き換えた後に多点較正手順の結果を再計算することをさらに含む。
【0038】
一実施形態によれば、方法は、ユーザの確認またはユーザの選択のためにタイムリミットを設定すること、タイムリミットを超えた場合、全多点較正手順の繰り返しをトリガーすることをさらに含む。特には、タイムリミットは、定期的に予定された2つの多点較正手順間の時間間隔、または多点較正手順において、少なくとも1つのキャリブレーションポイントが合格した時点から計測してもよい、較正手順の所定の満了時間を超えてはいけない。このように、ユーザが個々のキャリブレーションポイントのみを繰り返すことにより故意に部分的な較正手順のみを実行することを防止することができる。
【0039】
一実施形態によれば、方法は、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントのためのみのキャリブレータレベルの測定の繰り返しが、後のユーザ検証を可能にするために、自動的にトリガーされる場合、多点較正手順の再計算された較正結果にフラグを立てることをさらに含む。
【0040】
方法は、1つを超える、または2つを超える、または50%を超えるキャリブレーションポイントが不合格である場合、全多点較正手順を繰り返すことを含む。
【0041】
一実施形態によれば、方法は、多点較正手順の計算結果、および/または、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントのみを置き換えた後の多点較正手順の再計算結果を表示することを含み、表示することは、キャリブレーションポイントおよび/もしくはキャリブレーション曲線をプロットすること、ならびに/または各キャリブレーションポイントについての測定データを、たとえば、テーブル表示方式でリスト化することを含む。方法は、たとえば、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントの置き換えの前後で、最初の計算結果および再計算結果を同じスクリーン上で重ねるか、もしくは表示することにより、または表示を交替することにより、2つの結果を直接比較することをさらに含む。
【0042】
表示することは、各キャリブレーションポイントについての2回測定データをプロットすること、および/またはリスト化することを含んでもよい。
【0043】
表示することは、不合格の、または不合格の可能性のある(1つまたは複数の)キャリブレーションポイント、および/または繰り返されたキャリブレーションポイントを表示することを含んでもよい。
【0044】
表示することは、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントを選択および/または確認するための選択領域を表示することを含んでもよい。ユーザは、たとえば、プロットされたキャリブレーションポイントおよび/または2回測定データを見ることにより不合格キャリブレーションポイントを確認または認識することができ、プロットされた(1つまたは複数の)キャリブレーションポイント上の、またはリストテーブル中の表示を直接クリックするか、またはタッチすることにより、繰り返されるべき任意のキャリブレーションポイントを選択することができる。また、選択された(1つまたは複数の)キャリブレーションポイントについて、選択を確認し、および繰り返しを開始するために、特定の表示ボタンが提供されてもよい。
【0045】
体外診断分析器は、制御器を備えるか、または制御器に接続されてもよい。「制御器」という用語は、任意の物理的または仮想処理デバイス、および特には、操作計画に従って操作を実行するための、特には多点較正手順の実行および不合格キャリブレーションポイントの繰り返しに関連する命令が提供される、コンピュータで読み取り可能なプログラムを動作するプログラム可能論理コンピュータを含む。制御器は、体外診断分析器の一部であってもよく、または体外診断分析器と通信する、分離した論理要素であってもよい。いくつかの実施形態では、制御器は、データ管理ユニットと一体であってもよく、サーバーコンピュータによって備えられていてもよく、および/または複数の体外診断分析器に亘って分配されてもよい。制御器は、また、(1つまたは複数の)ワークフローおよび(1つまたは複数の)ワークフロー工程が体外診断分析器によって行われる方法で体外診断分析器を制御するように構成可能であってもよい。特には、制御器は、多点較正手順および/または(1つもしくは複数の)不合格キャリブレーションポイントの繰り返しをいつ実行するかを計画するために、入力される分析指令および/または受け取る分析指令、ならびに分析指令の実行に関連する、多くの予定された処理操作を考慮するため、スケジューラおよび/またはデータマネージャと通信および/または協働してもよい。
【0046】
このように、また、本開示は、多点較正手順を実行するように構成された制御器を備える体外診断分析器に関し、多点較正手順は、複数のキャリブレータレベルを測定し、それにより複数のそれぞれのキャリブレーションポイントを得ること、多点較正手順の結果を計算すること、および計算結果に基づいて、多点較正手順の不合格または合格を決定することを含む。多点較正手順が不合格の場合、制御器は、さらに、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連するかどうかを決定し、肯定の場合に、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントに関してのみキャリブレータレベルの測定の繰り返しをトリガーし、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントのみを新しく得られたキャリブレーションポイントで置き換えた後に多点較正手順の結果を再計算するように構成される。
【0047】
制御器は、さらに、上記の実施形態のいずれかに係る方法の工程のいずれかを実行するように構成されてもよい。
【0048】
制御器は、多点較正手順の不合格および/またはキャリブレーションポイントの不合格が決定されるときに保守手順もトリガーするように構成されてもよい。
【0049】
「保守手順」は、操作パラメータが仕様範囲外である原因である技術的な問題の根本原因を調べること、および/もしくは系統誤差の原因である、同定された技術的な問題を解決することが意図された手順、ならびに/または技術的な問題が起こることを防ぐことが意図された予防処置である。保守手順は、チェック、調整、修正、清掃、修理、取り換え、などの動作を含んでいてもよい。
【0050】
「仕様に従って」または「仕様の範囲内」という用語は、測定可能な値を有し、製造者によって特定された範囲または閾値をいうものであって、医療診断システムがその意図された目的を達成し、および診断性能を確実にするために、操作パラメータが、その範囲内、またはそれより低いかまたは高くなるようになっている。これは、また、操作パラメータが仕様範囲外であるが、依然として許容されると考えられる許容範囲を含み得る。仕様範囲または閾値および最終的な許容範囲は、異なる操作パラメータに対して異なっていてもよく、また、測定ユニットが異なっていてもよい。
【0051】
「仕様範囲外」という用語は、「仕様範囲内」という用語の反対の意味を有する。
【0052】
制御器は、さらに、多点較正手順が合格するまで、分析命令を受取っているが、まだ処理が始まっていない、順番待ちのサンプルが、体外診断分析器に入ることおよび/またはサンプル分析ワークフローを開始することを防止するように構成されてもよい。
【0053】
このように、サンプルおよび試薬を含む消耗品の不必要な消費を防止することができ、間違った結果の発生を防止することができ、較正の失敗によるルーチン操作の遅れを軽減することができ、システムまたはシステムモジュールの損傷を防止することができ、および操作の安全性を向上させることができる。
【0054】
本開示は、また、多点較正手順の計算結果および/または(1つもしくは複数の)不合格キャリブレーションポイントのみを置き換えた後の多点較正手順の再計算結果を表示するように、および任意に2つの結果を直接比較するように構成されたユーザインタフェースにも関する。
【0055】
一実施形態によれば、ユーザインタフェースは、さらに、各キャリブレーションポイントについての2回測定データをリスト化するか、および/またはプロットするように構成される。
【0056】
一実施形態によれば、ユーザインタフェースは、さらに、不合格の、または不合格の可能性のある(1つもしくは複数の)キャリブレーションポイント、および/または繰り返されたキャリブレーションポイントを表示するように構成される。
【0057】
一実施形態によれば、ユーザインタフェースは、さらに、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントを選択および/または確認するための選択領域を表示するように構成される。その他の、およびさらなる目的、特徴および利点が、原理をより詳細に説明するために用いられる、例示的な実施形態および添付図面の、以下の記載から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】体外診断分析器を較正するための方法を表わすフローチャートである。
【
図3】較正手順において不合格をどのように決定することができるかを示す例である。
【
図4】較正手順において不合格をどのように決定することができるかを示す別の例である。
【
図5】較正手順において不合格をどのように決定することができるかを示す別の例である。
【
図6】較正手順において不合格をどのように決定することができるかを示す別の例である。
【
図7】較正手順において不合格をどのように決定することができるかを示す別の例である。
【
図11】較正手順の計算結果を表示することを含むユーザインタフェースの例である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、体外診断分析器の較正方法を示す。方法は、複数のキャリブレータレベルを測定し(10、11、12)、それによって複数のそれぞれのキャリブレーションポイント1-nを得ることを含む多点較正手順100を実施すること、多点較正手順100の結果を計算すること(20)、および計算結果20に基づいて多点較正手順100の不合格または合格を決定すること(30)を含む。多点較正手順100が不合格の場合に、方法は、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント1-nに関連するかどうかを決定すること(40)、および肯定の場合(50)、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイント1のみに関するキャリブレータレベルの測定(10)の繰り返し(60)をトリガーし、不合格キャリブレーションポイント1のみを新しく得られたキャリブレーションポイント1で置き換えた後に多点較正手順100の結果を再計算すること(20’)を含む。(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイント1のみの手順の繰り返し(60)は、不合格キャリブレーションポイント1に関するキャリブレータレベルの測定(10)の繰り返しを含む。多点較正手順100が合格の場合に、手順は終了する(70)。キャリブレーションポイント1の不合格が例として示される。その他の任意のキャリブレーションポイント2-nのその他の例を推測することは容易である。
【0060】
図2は、
図1の多点較正手順100の変形例である多点較正手順100’である。
図2の多点較正手順100’と
図1の多点較正手順100との違いは、方法が、各キャリブレーションポイント1-nに対して1対の測定データ1、1’、2、2’-n、n’を得るために、各キャリブレーションポイント1-nについてそれぞれのキャリブレータレベルを2回測定すること(10、11、12)を含むことである。(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイント1について手順を繰り返す(60)ときに、それぞれのキャリブレータレベルは再度2回1、1’測定される(10)。
【0061】
図3は、
図1または
図2に係る較正手順100、100’において不合格をどのように決定することができるかを示す例である。
図3のグラフにおいて、2回測定された6つのキャリブレータレベル(各キャリブレーションポイント1-6について2回測定データ)に対応する6つのキャリブレーションポイント1-6の値(吸光度対濃度)がプロットされる。不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント1-6に関連するかどうかを決定する工程40は、各キャリブレーションポイント1-6または各キャリブレーションポイント1-6についての2回測定データ間の平均値の、適合多点キャリブレーション曲線80からの偏差を比較することを含む。この場合、不合格は、キャリブレーションポイント6に関連すると決定される(50)。
【0062】
図4は、
図2に係る較正手順100’において不合格をどのように決定することができるかを示す別の例である。
図4のグラフにおいて、2回測定された6つのキャリブレータレベルに対応する6つのキャリブレーションポイント1-6の値(吸光度対濃度)がプロットされる。適合多点キャリブレーション曲線80もプロットされる。不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント1-6に関連するかどうかを決定する工程40は、各キャリブレーションポイント1-6それぞれの2回測定データを比較すること、およびそれらの値の差が所定の閾値を超えるかどうかを決定することを含む。この場合、不合格は、キャリブレーションポイント3に関連すると決定される(50)。この例では、キャリブレーションポイント3についての2回測定データ間の平均値が、偶然にもキャリブレーション曲線80に適合している。したがって、キャリブレーションポイント3についての平均値の、適合曲線からの偏差のみを決定するだけでは、キャリブレーションポイント3の不合格は、気付かれないままとなる。
【0063】
図5は、
図2に係る較正手順100’において不合格をどのように決定することができるかを示す別の例である。
図5のグラフにおいて、同じ多点較正手順100’に属する複数のキャリブレーションポイントのうちの1つのキャリブレーションポイントについての2回測定データに関連する反応曲線90、90’が表示される(任意の単位、たとえば、吸光度対秒単位の反応時間)。特には、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイントに関連するかどうかを決定する工程40は、各キャリブレーションポイントそれぞれについての(この例では1つのキャリブレーションポイントについてのみの)2回測定データに関連する反応曲線90、90’を比較すること、反応曲線90、90’が互いに実質的に異なるかどうかを決定することを含む。この場合、キャリブレーションポイントの1つに関して、反応曲線90、90’が互いに実質的に異なると決定される(50)。特には、1つの反応曲線90が正常であって、すなわち基準パターンと同様のパターンを示し、その一方で、第2の反応曲線90’が異常であって、すなわち基準パターンからずれる。このように、多点較正手順100’の不合格が、この特定のキャリブレーションポイントの不合格に関連すると決定することができる。
【0064】
図6は、
図1に係る較正手順100において不合格をどのように決定することができるかを示す別の例である。特には、
図6は、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント1-nに関連するかどうかを決定する工程40が、不合格キャリブレーションポイント1-nの不合格に関連し得る体外診断分析器の1つまたは複数の所定の操作パラメータ1-nを評価する工程41を含むことを除いては、
図1と同じである。この例では、操作パラメータ1-nの評価41に基づいてキャリブレーションポイント1が不合格になったと決定される(50)。
【0065】
図7は、
図2に係る較正手順100’において不合格をどのように決定することができるかを示す別の例である。特には、
図7は、不合格が1つまたは複数の個々の不合格キャリブレーションポイント1-nに関連するかどうかを決定する工程40が、不合格キャリブレーションポイント1-nの不合格に関連し得る体外診断分析器の1つまたは複数の所定の操作パラメータ1-nを評価する工程41を含むこと、および、各キャリブレーションポイント1-nの2回測定をそれぞれ実施することに関して、1つまたは複数の所定の操作パラメータ1-nを比較する工程42を含むことを除いては、
図2と同じである。この例では、操作パラメータ1-nの評価41に基づいて、キャリブレーションポイント1の操作パラメータnの値が、キャリブレーションポイント1’の操作パラメータnの値と相違すると決定される(42)ので、キャリブレーションポイント1が不合格になったと決定される(50)。
【0066】
図8は、
図1の多点較正手順100の別の変形例である多点較正手順100’’を示す。
図1との相違点のみが説明される。特には、多点較正手順100’’は、繰り返されるべき、不合格の可能性のあるキャリブレーションポイント1-nを表示すること(51)、および表示された、不合格の可能性のあるキャリブレーションポイント1のユーザの確認を、確認された不合格キャリブレーションポイント1についてのキャリブレータレベルの測定(10)を繰り返す(62)前に要求すること(61)を含む。この例では、多点較正手順100’’は、さらに、ユーザの確認のためのタイムリミットを設定すること(63)、およびタイムリミットを超える場合、全多点較正手順100’’の繰り返し(64)をトリガーすることを含む。
【0067】
図9は、
図1の多点較正手順100の別の変形例である多点較正手順100’’’を示す。
図1との相違点のみが説明される。特には、多点較正手順100’’’の不合格が1つまたは複数の不合格キャリブレーションポイント1-nに関連することを自動的に決定することができない(52)場合、多点較正手順100’’’は、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイント1-nのユーザの選択を、選択された不合格キャリブレーションポイント1についてのキャリブレータレベルの測定(10)を繰り返す(66)前に要求すること(65)を含む。この例では、多点較正手順100’’’は、さらに、ユーザの選択のためのタイムリミットを設定すること(67)、およびタイムリミットを超える場合、全多点較正手順100’’’の繰り返し(68)をトリガーすることを含む。
【0068】
図10は、
図1の多点較正手順100のさらなる実施形態を示す。特には、
図10は、後のユーザ検証を可能にするために、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイント1-nのためのみの手順の繰り返し(60)が自動的にトリガーされる場合、多点較正手順100が、多点較正手順100の終了(70)前に多点較正手順100の再計算された較正結果20’にフラグを立てること(71)を含むことを除いては、
図1と同じである。再計算された較正結果20’にフラグを立てることは、繰り返されたキャリブレーションポイント1-nにフラグを立てること含んでいてもよい。同様の例が、
図2の多点較正手順から開始して、実施され得る。
【0069】
図11は、多点較正手順の計算結果20を表示することを含むユーザインタフェース200の例である。
図12は、
図11の例の続きであり、同じ多点較正手順の再計算結果20’を表示することを含む。
図11および
図12は、互いに直接比較する場合によりよく理解される。特には、
図11、
図12に関連する多点較正手順は、
図2の多点較正手順100’と
図8の多点較正手順100’’との組合せである。特には、
図11において、表示された計算結果20は、表21を含み、表21は、別々の欄において、キャリブレーションポイント1-6それぞれに対応する6つのキャリブレータレベルのそれぞれについての対の測定データ22、23および対の測定データの平均値24が報告される。表21は、濃度に関連する、割り当てられた正規化値を有する欄25をさらに含む。この例では、不合格(50)がキャリブレーションポイント1に関連して示されていることが分かる。また、キャリブレーションポイント1に対して、測定データが示されていない。この場合において測定データが無い理由としては、キャリブレータの代わりに空気が吸引される原因となるピペット操作エラーの可能性がある。また、正規化値は、キャリブレーションポイント1-6のいずれにも割り当てられない。また、キャリブレーション曲線はプロットされない。この場合、多点較正手順が不合格であり、不合格がキャリブレーションポイント1の不合格に関連すると決定される(30)。
【0070】
方法は、(1つまたは複数の)不合格キャリブレーションポイントを選択および/または確認するための選択領域61’、62’を表示することをさらに含み、不合格キャリブレーションポイント1のみについて、キャリブレータレベルの測定の繰り返しを開始するための指示ボタン28が含まれる。
【0071】
図12に戻ると、多点較正手順の再計算結果20’が、不合格キャリブレーションポイント1のみの繰り返しの後に表示される。表21において、測定データ22、23および平均値24は、繰り返されたキャリブレーションポイント1のためにも表示され、他のキャリブレーションポイント2-6についての全ての他の測定データおよび平均値は、変更されないままである。特には、表21の新しい欄29には、それらが既に前に測定されていて、結果20’を再計算するために引き継がれるということが時間スタンプとともに示される。また、正規化濃度値が、次に、欄25内において全てのキャリブレーションポイント1-6に割り当てられ、キャリブレーションポイント1に対する値0%がブランクキャリブレータを表わす。また、秒(s)単位の測定データ22、23および平均値24が、%単位の、割り当てられた正規化濃度値25に対してプロットされ、繰り返されたキャリブレーションポイント1を含む、全てのキャリブレーションポイントに適合するキャリブレーション曲線80もプロットされる。この場合、多点較正手順の合格が決定される(30)(多点較正手順が解除される)。
【0072】
取消し解除ボタン81もまた、再計算された結果20’を拒否し、最終的に全多点較正手順を繰り返す機会を与えるために表示される。
【0073】
これは単なる例示であって、計算結果20および再計算結果20’の表示は、相違するように見えてもよく、
図1~
図10の実施形態のいずれかおよびそれらの組合せを反映してもよいことが強調される。
【0074】
一般的に、全ての開示された実施形態の修正および変形が、上記の記載に鑑みて確実に可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、発明が、上記の例において具体的に案出されたもの以外の他の方法で実施されてもよいことが理解されるべきである。
【0075】
上記の明細書中の「一実施形態」、「実施形態」、「一実施例」または「実施例」の言及は、実施形態または実施例に関連して記載された、特定の特徴、構造または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所において、「一実施形態において」、「実施形態において」、「一実施例」または「実施例」などの文言は、必ずしも全てが同じ実施形態または実施例をいうものではない。
【0076】
さらに、特定の特徴、構造、または特性が、1つまたは複数の実施形態または実施例において、任意の適当な組合せおよび/または下位の組合せで組み合わされてもよい。