(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】モルホリノキナゾリン系化合物の結晶形の結晶、その製造方法、使用および医薬品組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20220511BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220511BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220511BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220511BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20220511BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220511BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20220511BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220511BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220511BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220511BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220511BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220511BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220511BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220511BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220511BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20220511BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/5377
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/00
A61P3/00
A61P5/00
A61P9/00
A61P31/12
A61P29/00
A61P25/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/06
A61P1/04
A61P11/06
A61P17/08
A61P37/08
(21)【出願番号】P 2021516990
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 CN2019105688
(87)【国際公開番号】W WO2020063368
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201811131702.8
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317008399
【氏名又は名称】シャンハイ インリー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】シュ ズーシェン
(72)【発明者】
【氏名】ルー ヤントン
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533372(JP,A)
【文献】特表2017-519021(JP,A)
【文献】BAVIN, Mike,Polymorphism in process development,Chemistry & Industry,1989年,Vol.21,pp.527-529
【文献】BYRN, S. et al.,Pharmaceutical solids: A strategic approach to regulatory considerations,Pharmaceutical Research,1995年,Vol.12, No.7,pp.945-954
【文献】森部久仁一 ほか,非晶質医薬品の調製と評価,低温生物工学会誌,2005年,Vol.51, No.1,pp.19-24
【文献】GOEL, R. K. et al.,Quinazolines revisited: search for novel anxiolytic and GABA ergic agents,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2005年,Vol.15, No.8,pp.2145-2148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが:7.7±0.2°、9.7±0.2°、12.4±0.2°、15.4±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°及び18.4±0.2°において回折ピークを有する、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶。
【化1】
【請求項2】
2θ角で表される粉末X線回折スペクトルは、さらに、以下の一つ又は複数の2θ角:11.0±0.2°、11.3±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、21.8±0.2°、22.6±0.2°、23.2±0.2°、23.6±0.2°、24.3±0.2°、25.8±0.2°及び28.7±0.2°において回折ピークを有することを特徴とする、請求項1に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶。
【請求項3】
2θ角で表される粉末X線回折スペクトルは:7.7±0.2°、9.7±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、15.4±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°、18.4±0.2°、23.6±0.2°及び24.3±0.2°において回折ピークを有し;
及び/又は、赤外線吸収スペクトルは以下の位置:3445cm
-1、3246cm
-1、3018cm
-1、3001cm
-1、2972cm
-1、2953cm
-1、2924cm
-1、2910cm
-1、2891cm
-1、2850cm
-1、1604cm
-1、1589cm
-1、1552cm
-1、1506cm
-1、1489cm
-1、1458cm
-1、1413cm
-1、1365cm
-1、1155cm
-1及び775cm
-1において特徴的なピークを有し;
及び/又は、示差走査熱量曲線のスペクトルは204.3±3℃において吸熱ピークを有し、融解熱は98.70J/gであり;
及び/又は、動的水分吸着スペクトルにおいて、初期質量と比較して、結晶形Iの増加した質量は、0%~90%の相対湿度の範囲で0.23%増加し、0%~95%の相対湿度の範囲で0.34%増加することを特徴とする、請求項1に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶。
【請求項4】
2θ角で表される粉末X線回折スペクトルは:7.7±0.2°、9.7±0.2°、11.0±0.2°、11.3±0.2°、12.4±0.2°、15.4±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°、18.4±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、21.8±0.2°、22.6±0.2°、23.2±0.2°、23.6±0.2°、24.3±0.2°、25.8±0.2°及び28.7±0.2°において回折ピークを有し;
及び/又は、赤外線吸収スペクトルの特徴的なピーク、振動タイプ、基、及び吸収ピーク強度は以下の表に示す通りで
あることを特徴とする、請求項3に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶。
【表1】
【請求項5】
2θ角で表される粉末X線回折パターン、その回折ピーク、及びピーク高さの百分率が以下の表に示される通りであることを特徴とする、請求項1~4の少なくとも1項に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶。
【表2】
【請求項6】
方法1:式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を溶媒中で熱飽和溶液を形成させ、冷却させ;前記溶媒は、アセトニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、エタノール及びイソプロパノールの中から選択される1つ又は複数であり;
方法2:式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を溶媒Aと溶媒Bの中で混合し、溶解させ、結晶化させ;前記溶媒Aはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドの中から選択される1つ又は複数であり;前記溶媒Bはn-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、n-ペンタン、石油エーテル及び水の中から選択される1つ又は複数であり;
前記方法1又は前記方法2であることを特徴とする請求項1~
5の少なくとも1項に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶の製造方法。
【請求項7】
方法1において、前記冷却方法は急速冷却又は徐冷であり、前記冷却方法が急速冷却である場合、前記冷却の最終温度は-15~-25°Cであり;前記冷却方法が徐冷である場合、前記冷却の速度は5~15℃/hであり;
及び/又は、方法2において、前記溶媒Aが、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール及び酢酸エチルの中から選択される1つ又は複数である場合、前記溶媒Bは、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロペンタン、n-ペンタン及び石油エーテルの中から選択される1つ又は複数であり;
及び/又は、方法2において、前記溶媒Aが、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドの中から選択される1つ又は複数である場合、前記溶媒Bは水であり;
及び/又は、前記方法2は:前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を溶媒Aに溶解させ、混合溶液を得、前記溶媒Bを前記混合溶液に添加し、結晶化させるステップを含むことを特徴とする、請求項
6に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶の製造方法。
【請求項8】
PI3キナーゼ阻害剤の製造における請求項1~
5の少なくとも1項に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶の使用。
【請求項9】
PI3キナーゼに関連する疾患の予防及び/又は治療に使用される医薬の製造における請求項1~
5の少なくとも1項に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶の使用。
【請求項10】
前記PI3キナーゼに関連する疾患は、癌、免疫疾患、代謝及び/又は内分泌機能障害、心血管疾患、ウイルス感染及び炎症、並びに神経疾患の中の一つ又は複数であることを特徴とする、請求項
9に記載の使用。
【請求項11】
前記免疫疾患は関節リウマチ、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病及び全身性エリテマトーデスの中の一つ又は複数であり;
及び/又は、前記心血管疾患は血液腫瘍であり;
及び/又は、前記ウイルス感染及び炎症は喘息及び/又はアトピー性皮膚炎であることを特徴とする、請求項
10に記載の使用。
【請求項12】
その他の治療薬と併用してPI3キナーゼに関連する疾患を予防及び/又は治療する医薬の製造における請求項1~
5の少なくとも1項に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶の使用。
【請求項13】
請求項1~
5の少なくとも1項に記載の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I
の結晶と、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2018年9月27日である中国特許出願第201811131702.8号の優先権を要求する。本出願は前記中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、モルホリノキナゾリン系化合物の結晶形の結晶、その製造方法、使用および医薬品組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
モルホリノキナゾリン系化合物であって、その構造は式A
【化1】
(以下では式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物と呼ぶ)で表される通りであり、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼδ(PI3Kδ)を阻害する活性を有する。
【0004】
PI3Kδは、細胞内ホスファチジルイノシトールキナーゼの一種であり、イノシトールの3位のヒドロキシルのリン酸化を触媒できる。PI3Kは、I型、II型、III型キナーゼに分類でき、最も広く研究されているのは、細胞表面受容体によって活性化できるI型PI3Kである。哺乳動物の細胞におけるI型PI3Kは、構造と受容体によって、またIa型とIb型に分類され、それらはそれぞれチロシンキナーゼ共役型受容体とGタンパク質共役型受容体からのシグナルを伝達する。Ia型PI3KはPI3Kα、PI3Kβ、PI3Kδのサブタイプを含み、Ib型PI3KはPI3Kγサブタイプを含む(非特許文献1)。Ia型PI3Kは、触媒サブユニットp110と調節サブユニットp85で構成される二量体タンパク質であり、脂質キナーゼとタンパク質キナーゼの二重活性を持ち(非特許文献2)、細胞増殖と癌の発生、免疫疾患、及び炎症を伴う疾患に関連していると考えられている。
【0005】
特許文献1は、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物及びその製造方法を開示した。式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形は、医薬の製造、加工、貯蔵及び輸送中の安定性に重大な影響を及ぼす。
【0006】
物質が2つ以上の異なる結晶形構造で存在できる現象を、ポリモーフィズム現象と呼ぶ。化合物の異なる固体形態は、しばしば異なる物理的及び化学的特性を示す。薬物の場合、このようなポリモーフィズム現象は薬物の吸収に影響を及ぼし、更に薬物の生物学的利用能に影響を及ぼす可能性があり、それによって異なる臨床効果及び毒性副作用を示す。これを考慮すると、優勢性能を有する式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形を開発することは非常に重要な意義がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Trends.Biochem.Sci.,1997,22,267~272
【文献】Nat.Rev.Cancer2002,2,489~501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的問題は、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形の結晶、製造方法、使用および医薬品組成物を提供することであり、当該結晶形は製造方法が簡単で、工業生産に適し、吸湿性が低く、比較的に良好な安定性を有し、医薬の最適化と開発に重要な価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の技術的解決策を通じて前記技術的問題を解決する。
【0011】
本発明は2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが:7.7±0.2°、9.7±0.2°、12.4±0.2°、15.4±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°及び18.4±0.2°において回折ピークを有する、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの結晶(以下、結晶形Iと略す)を提供する。
【0012】
前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、その2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが、さらに、以下の一つ又は複数の2θ角:11.0±0.2°、11.3±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、21.8±0.2°、22.6±0.2°、23.2±0.2°、23.6±0.2°、24.3±0.2°、25.8±0.2°及び28.7±0.2°において回折ピークを有することができる。
【0013】
好ましくは、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、その2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが:7.7±0.2°、9.7±0.2°、11.0±0.2°、12.4±0.2°、15.4±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°、18.4±0.2°、23.6±0.2°及び24.3±0.2°において回折ピークを有することができる。
【0014】
より好ましくは、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、その2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが:7.7±0.2°、9.7±0.2°、11.0±0.2°、11.3±0.2°、12.4±0.2°、15.4±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°、18.4±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、21.8±0.2°、22.6±0.2°、23.2±0.2°、23.6±0.2°、24.3±0.2°、25.8±0.2°及び28.7±0.2°において回折ピークを有する。
【0015】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、その2θ角で表される粉末X線回折スペクトルの回折ピークとピーク高さの百分率が、また表1に示す通りであることができる。
【0016】
【0017】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、その2θ角で表される粉末X線回折スペクトルの回折ピークとピーク面積の百分率がまた表2に示す通りであることができる。
【0018】
【0019】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、その2θ角で表される粉末X線回折スペクトル、その回折ピーク、ピーク幅値、ピーク高さの百分率及びピーク面積の百分率がまた表3に示す通りであることができる。
【0020】
【0021】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、2θ角で表される粉末X線回折スペクトルがまた基本的に
図1で示される通りであることができる。
【0022】
本発明において、前記粉末X線回折スペクトルはいずれもCu標的Kα線を使用して測定される。
【0023】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの赤外線吸収スペクトル(IR)がまた以下の位置:3445cm-1、3246cm-1、3018cm-1、3001cm-1、2972cm-1、2953cm-1、2924cm-1、2910cm-1、2891cm-1、2850cm-1、1604cm-1、1589cm-1、1552cm-1、1506cm-1、1489cm-1、1458cm-1、1413cm-1、1365cm-1、1155cm-1及び775cm-1において特徴的なピークを有することができる。
【0024】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの赤外線吸収スペクトルの特徴的なピーク、振動タイプ、基、及び吸収ピーク強度はまた表4に示す通りであり得る:
【0025】
【0026】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの赤外線吸収スペクトルはまた基本的に
図2で示される通りであり得る。
【0027】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの熱重量分析曲線のスペクトル(TGA)はまた基本的に
図3で示される通りであり得る。
【0028】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの示差走査熱量曲線のスペクトル(DSC)はまた204.3±3℃において吸熱ピークを有することができ、融解熱は98.70J/gであり得る。
【0029】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの示差走査熱量曲線のスペクトルはまた基本的に
図4で示される通りであり得る。
【0030】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの動的水分吸着スペクトル(DVS)において、初期質量と比較して、前記結晶形Iの質量はまた、0%~90%の相対湿度の範囲で0.23%増加し、0%~95%の相対湿度の範囲で前記結晶形Iの質量は0.34%増加できる。
【0031】
本発明において、前記結晶形Iの動的水分吸着のスペクトルは、また基本的に
図5で示される通りであり得る。
【0032】
本発明は、更に、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造方法を提供し、それは方法1又は方法2であり;
方法1:式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を溶媒中で熱飽和溶液を形成させ、冷却させ;前記溶媒は、アセトニトリル、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、エタノール及びイソプロパノールの中から選択される1つ又は複数である。
【0033】
前記熱飽和溶液の調製方法は、当技術分野における従来の調製方法を参照することができ、好ましくは、前記冷却工程の前に、前記熱飽和溶液を濾過処理する。前記濾過処理方法は、当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の濾過方法であり、好ましくは熱濾過である。前記熱濾過は膜濾過である。前記濾過膜の孔径は、好ましくは0.45μmである。
【0034】
前記冷却方法は、当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の冷却方法であり得、好ましくは急速冷却方法又は徐冷方法である。
【0035】
好ましくは、前記冷却方法が急速冷却である場合、前記冷却の最終温度は、-15~-25℃であり、例えば、-20℃である。
【0036】
好ましくは、前記冷却方法が徐冷である場合、前記冷却の速度は5~15℃/hであり、例えば10℃/hである。
【0037】
本発明において、前記冷却後、更に後処理工程:濾過及び乾燥工程を含むことができる。
【0038】
前記濾過は、当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の条件と操作であり得、好ましくは、減圧濾過である。前記乾燥は、当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の条件と操作であり得、好ましくは真空乾燥である。
【0039】
方法2:式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を溶媒Aと溶媒Bの中で混合し、溶解させ、結晶化させ;
前記溶媒Aはテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)の中から選択される1つ又は複数であり;前記溶媒Bはn-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、n-ペンタン、石油エーテル及び水の中から選択される1つ又は複数である。
【0040】
好ましくは、前記溶媒Aが、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール及び酢酸エチルの中から選択される1つ又は複数である場合、前記溶媒Bは、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロペンタン、n-ペンタン及び石油エーテルの中から選択される1つ又は複数である。
【0041】
好ましくは、前記溶媒Aが、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)及びジメチルスルホキシド(DMSO)の中から選択される1つ又は複数である場合、前記溶媒Bは水である。
【0042】
前記結晶化の方法は、当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の方法であり得る。好ましくは、室温まで自然冷却させて結晶化させる方法である。
【0043】
前記溶解条件は、当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の条件であり得る。好ましくは、前記溶解条件は加熱であり、より好ましくは、加熱しながら攪拌することである。
【0044】
前記加熱温度は、一般的に、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を溶解するための溶媒の沸点であり、好ましくは40~90℃であり、例えば50℃である。
【0045】
前記攪拌の回転速度は、200~350rpmであり得、例えば、260rpmである。
【0046】
好ましくは、前記溶解工程の後に、また濾過の工程を含むことができる。前記濾過は当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の濾過方法であり得、好ましくは膜濾過である。濾過膜の孔径は、好ましくは0.45μmである。
【0047】
前記方法2は、さらに好ましくは、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を前記溶媒Aに溶解させ、混合溶液を得、前記溶媒Bを前記混合溶液に添加し、結晶化させる。
【0048】
好ましくは、前記添加の方法は滴下する方法であり得る。
【0049】
本発明において、前記結晶化の後に以下の後処理工程:濾過及び乾燥を含むことができる。
【0050】
前記濾過は、当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の条件と操作であり得、好ましくは、減圧濾過である。前記乾燥は、当技術分野におけるこのタイプの操作の従来の条件と操作であり得、好ましくは真空乾燥である。
【0051】
本発明はまた、PI3キナーゼ阻害剤の製造における前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの使用を提供する。
【0052】
ここで、前記PI3キナーゼ阻害剤は生体内又は生体外のキナーゼ阻害剤であり得る。
【0053】
ここで、前記キナーゼは、好ましくは、PI3キナーゼ(PI3K)のp110δサブタイプである。
【0054】
本発明はまた、医薬の製造における前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの使用を提供し、前記医薬は、PI3キナーゼ関連疾患の予防及び/又は治療に使用される。
【0055】
本発明において、前記キナーゼは、好ましくは、PI3キナーゼ(PI3K)のp110δサブタイプである。
【0056】
本発明において、前記PI3キナーゼに関連する疾患は、癌、免疫疾患、代謝性及び/又は内分泌機能障害、心血管疾患、ウイルス感染及び炎症、並びに神経疾患の中の一つ又は複数を含むが、これらに限定されなく、好ましくは癌及び/又は免疫疾患である。
【0057】
ここで、前記免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病及び全身性エリテマトーデスの中の一つ又は複数を含むが、これらに限定されなく;前記心血管疾患は血液腫瘍を含むが、これに限定されなく;前記ウイルス感染及び炎症は喘息及び/又はアトピー性皮膚炎を含むが、これらに限定されない。
【0058】
本発明は更に、医薬の製造における前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの使用を提供し、前記医薬は疾患の予防及び/又は治療に使用され、前記疾患は癌、免疫疾患、代謝及び/又は内分泌機能障害、心血管疾患、ウイルス感染、炎症及び神経疾患の中の1つ又は複数である。
【0059】
ここで、前記免疫疾患、前記心血管疾患、前記ウイルス感染及び炎症は、前に記載の通りである。
【0060】
本発明は更に、その他の治療薬と併用してPI3キナーゼに関連する疾患を予防及び/又は治療する医薬の製造における前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの使用を提供する。
【0061】
ここで、前記PI3キナーゼに関連する疾患はいずれも前に記載の通りである。
【0062】
ここで、前記その他の治療薬はPI3キナーゼに関連する疾患を予防及び/又は治療できる。前記疾患は癌、免疫疾患(例えば、関節リウマチ、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病及び全身性エリテマトーデス)、代謝性及び/又は内分泌機能障害、心血管疾患(例えば、血液腫瘍)、ウイルス感染及び炎症(例えば、喘息及び/又はアトピー性皮膚炎)、及び神経疾患の中の一つ又は複数であり得る。
【0063】
本発明は更に、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0064】
本発明は更に、PI3キナーゼに関連する疾患を予防及び/又は治療するための薬物の製造における前記医薬組成物の使用を提供する。
【0065】
ここで、前記PI3キナーゼに関連する疾患は前記に記載の通りである。
【0066】
本発明において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iはまた、1つ又は複数のその他の有効成分と組み合わせて使用でき;組み合わせて使用する場合、有効成分は、別々の組成物であり得、治療中同じ又は異なる投与経路で同時に投与するか又は異なる時間でそれぞれ投与し、或いはそれらは同じ医薬組成物で一緒に投与することもできる。
【0067】
本発明において、前記医薬組成物の投与方法は特に限定されなく、患者の年齢、性別及びその他の条件及び症状に応じて、様々な剤形の製剤を選択して投与することができ;例えば、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤又はカプセル剤は経口投与されることができ;注射剤は単独で、又は注射液(例えば、グルコース溶液及びアミノ酸溶液)と組み合わせて静脈注射により投与されることができ;坐剤は直腸に投与される。
【0068】
いくつかの実施例において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、1つ又は複数の薬学的に許容される担体及び/又はアジュバント及び/又は希釈剤と製剤に調製する場合、変化が発生しない。
【0069】
他のいくつかの実施例において、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、医薬組成物に製造する場合、溶解できる。本発明はまた、治療を必要とする対象に治療有効量の前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形I又は前記医薬組成物を投与するステップを含む、PI3キナーゼに関連する疾患の治療方法を提供する。
【0070】
ここで、前記疾患は、好ましくは、癌、免疫疾患、代謝及び/又は内分泌機能障害、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、及び神経疾患の中の1つ又は複数である。
【0071】
本発明の一つの実施の態様において、前記対象は、PI3キナーゼに関連する前述の疾患に罹患している人である。
【0072】
本発明において、「防治」は「予防」を意味する。「予防」とは、疾患又は障害を獲得又は発症するリスクの低減を指す(即ち、疾患を引き起こす薬剤に曝露された可能性があるか、または疾患の発症前に病気にかかりやすい被験者において病気にかかっている臨床症状の少なくとも1つが発生していない)。
【0073】
本発明において、「治療」は、疾患又は障害を改善すること(即ち、疾患を抑制又はその症状、その臨床症状の程度又は重症度を低減すること)、又は少なくとも1つの身体的パラメータを改善し、それは被験者に気づかないこと;又は病気の進行を遅らせることを指す。
【0074】
本発明の結晶形は、1つ又は複数の固体分析方法によって検出できる。例えば、X線粉末回折、単結晶X線回折、赤外線吸収スペクトル、示差走査熱量測定、熱重量曲線などである。当業者は、X線粉末回折のピーク強度及び/又はピーク条件は、実験条件が違うと異なる可能性があることを知っている。同時に、計器の精度が異なるため、測定された2θ値には約±0.2°の誤差がある。しかし、ピークの相対強度値は、結晶形のサイズの大きさと純度のレベルなど、ピークの位置よりも測定試料の特定の特性に依存するため、測定されたピーク強度に約±20%の偏差がある可能性がある。試験誤差、計器誤差、及び配向の好みが存在するにもかかわらず、当業者は、本出願によって提供されるX線粉末回折データから各結晶形を識別するための十分な情報を依然として得ることができる。赤外分光法の測定では、各モデルの計器の性能の違い、試験品の製造中の粉砕度と吸水度の違いなどにより、スペクトルの形状と位置にある程度の影響が発生する。DSC測定では、加熱速度、結晶形形状及び純度、並びに他の測定パラメータに基づき、測定された吸熱ピークの初期温度、最高温度、及び融解熱データはいずれもある程度の変動性を有する。
【0075】
本発明において、用語「急速冷却」は、飽和高温溶液を直接的に当該飽和高温溶液の溶媒の沸点よりはるかに低い温度下(例えば、-20℃)に置いて冷却させることを意味し、当該過程は冷却速度が速い。
【0076】
本発明において、用語「徐冷」は、飽和高温溶液を5~15℃/hの速度(例えば、10℃/h)で室温まで冷却させることを意味し、当該過程は冷却速度が遅い。
【0077】
本発明において、「室温」は、「10~30℃」を指す。
【0078】
前記好ましい条件は、当分野の通常の知識に違反しない限り、任意に組み合わせることができ、即ち、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0079】
本発明で使用される試薬及び原料は市販品として入手できる。
【発明の効果】
【0080】
本発明の積極的な進歩効果は:本発明によって提供される式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、製造方法が簡単で、比較的に良好な安定性を有し、吸湿性が低く、医薬の最適化と開発に重要な価値があることにある。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】実施例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IのX線粉末回折スペクトルである。
【
図2】実施例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの赤外吸収スペクトルがである。
【
図3】実施例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの熱重量分析スペクトルである。
【
図4】実施例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの示差走査熱量測定スペクトルである。
【
図5】実施例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの動的水分吸着スペクトルである;ここで、1は除湿曲線であり、2は吸湿曲線である。
【
図6】比較例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIのX線粉末回折スペクトルである。
【
図7】比較例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの熱重量分析スペクトルである。
【
図8】比較例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの示差走査熱量測定スペクトルである。
【
図9】比較例1によって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIのスペクトルであり;ここで、1は除湿曲線であり、2は吸湿曲線である。
【
図10】特許文献1のによって得られる、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の非晶質のX線粉末回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下は、実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、本発明をこれらの実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例に具体的な条件を指定しない実験方法は、従来の方法及び条件に従って、又は製品の説明書に従って選択される。
【0083】
【0084】
粉末X線回折分析(XRPD):光源はCuKであり、X線強度は40KV/40mAであり、走査モードはTheta-thetaであり、ステップ角は4°~40°であり、ステップ幅は0.05°であり、走査速度は0.5秒/ステップである。
【0085】
赤外線吸収スペクトル分析(IR):中国薬局方2015年版の4つの一般規則の0402赤外分光光度法に基づき、臭化カリウム打錠法によって試験品を製造し、4000~400cm-1の波数範囲で赤外線吸収スペクトルを収集する。試験品のスキャン回数は45回であり、装置の解像度は4cm-1である。
【0086】
示差熱分析(DSC):約2~4mgの試料を量り取って開放されたアルミニウム坩堝の試料パンに置き、窒素ガス流(50mL/min)の環境の中で、試料は25℃で平衡し、10℃/minの昇温速度で、25℃から300℃まで、又は400℃まで加熱する。
【0087】
熱重量分析(TGA):約8~12mgの試料を量り取って白金坩堝の試料パンに置き、窒素ガス流(50mL/min)の環境の中で、10℃/minの昇温速度で、25℃から300℃まで、又は400℃まで加熱する。
【0088】
動的水分吸着分析(DVS):約10mgの試料を量って取り、温度を25℃に設定し、湿度0%RHの条件下で60分間乾燥させた後、湿度が0%RHから95%RHに変化する場合の試料の吸湿性特徴、及び湿度が95%RHから0%RHに変化する場合の除湿性特徴を測定し、湿度変化ステップは5%RHであり、質量変化率dm/dt値が0.002%未満の場合は秤が平衡であるとみなされ、5分以内の質量変化率が0.01%/min未満の場合は検出中の平衡とみなされ、最長の平衡化時間は2時間である。当該検出条件下での等温吸着/脱着水の特性を測定し、DVS試験後の試料についてXRPD検出を実行する。
【0089】
特許文献1の実施例10の合成方法によって、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を製造し、XRPDにより非晶質であると特定され、そのXRPDスペクトルは
図10に示す通りである。
【0090】
実施例1 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0091】
約20mgの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物をバイアルに量って取り、バイアルの中に一定量のアセトニトリルを添加し、2分間超音波処理し、試料バイアルをマグネチックスターラーに置き、温度は50℃に、回転速度は260rpmに制御し、加熱して試料の溶解を促進し、溶液が透明になった時、一定量の固体の試料を添加し、続いて加熱して溶解を促進して、最後に試料の過飽和溶液を得ることを保証し、熱いうちに0.45μmの濾過膜で濾過し、新しいバイアルに移した。バイアルを直ちに-20℃の冷蔵庫に入れ、析出した固体を濾過して試料を得た。
【0092】
X線粉末回折スペクトルによって得られた試料が結晶形Iであることを検出した。X線粉末回折スペクトルは
図1に示す通りであり、その2θ角で表される粉末X線回折スペクトルが:7.7±0.2°、9.7±0.2°、11.0±0.2°、11.3±0.2°、12.4±0.2°、15.4±0.2°、17.4±0.2°、18.0±0.2°、18.4±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、21.8±0.2°、22.6±0.2°、23.2±0.2°、23.6±0.2°、24.3±0.2、°25.8±0.2°及び28.7.±0.2°において回折ピークを有した。
【0093】
そのIR図は
図2に示す通りであり、IRは3445cm
-1、3246cm
-1、3018cm
-1、3001cm
-1、2972cm
-1、2953cm
-1、2924cm
-1、2910cm
-1、2891cm
-1、2850cm
-1、1604cm
-1、1589cm
-1、1552cm
-1、1506cm
-1、1489cm
-1、1458cm
-1、1413cm
-1、1365cm
-1、1155cm
-1、775cm
-1において特徴的なピークを有した。
【0094】
TGA図は
図3に示す通りであった。
図3から分かるように、結晶形Iは無水物であり、水又は溶媒は含まれていなかった。
【0095】
DSC図は
図4に示す通りであった。結晶形Iの示差走査熱量において、204.3±3℃に吸収ピークがあり、融解熱は98.70J/gであった。
【0096】
DVS図は
図5に示す通りであった。結晶形Iの動的水分吸着スペクトルにおいて、初期質量と比較して、前記結晶形Iの質量は、0%~90%の相対湿度の範囲で0.23%増加し、0%~95%の相対湿度の範囲で0.34%増加した。
【0097】
実施例2 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0098】
約20mgの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物をバイアルに量って取り、バイアルの中に一定量のアセトニトリルを添加し、2分間超音波処理し、試料バイアルをマグネチックスターラーに置き、温度は50℃に、回転速度は260rpmに制御し、加熱して試料の溶解を促進し、溶液が透明になった時、一定量の固体試料を添加し、続いて加熱して溶解を促進して、最後に試料の過飽和溶液を得ることを保証し、熱いうちに0.45μmの濾過膜で濾過し、新しいバイアルに移した。10℃/hの速度でゆっくりと室温(25℃)に冷却させ、室温下で一晩撹拌し、析出した固体を濾過して試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0099】
実施例3 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0100】
方法は実施例2と同様であるが、溶媒を2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールに変更し、固体を析出し濾過して試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0101】
実施例4 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0102】
約1gの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を量って取り、5mLのアセトンを添加し、加熱下で溶解し、加熱を停止し、一晩放置した。翌日、濾過し、乾燥させて、試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0103】
実施例5 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0104】
約20mgの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物をバイアルに量って取り、バイアルの中に一定量のテトラヒドロフランを添加し、2分間超音波処理し、試料バイアルをマグネチックスターラーに置き、温度は50℃に、回転速度は260rpmに制御し、加熱して試料の溶解を促進し、溶液が透明になった時、一定量の固定の試料を添加し、続いて加熱して溶解を促進して、最後に試料の過飽和溶液を得ることを保証し、熱いうちに0.45μmの濾過膜で濾過し、新しいバイアルに移した。バイアルにゆっくりと10倍容積のn-ヘプタンを添加しながら攪拌を続き、析出した固体を濾過して試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0105】
実施例6 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0106】
方法は実施例5と同様であるが、溶媒テトラヒドロフランをジオキサンに変更し、貧溶媒はn-ヘプタンであり、滴下した容積の倍数は13倍であった。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0107】
実施例7 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0108】
室温下で、1gの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物を5.5mLのDMFに溶解させ、攪拌しながらゆっくりと1mLの水を添加し、析出した固体を濾過して試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0109】
実施例8 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0110】
10gの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物に500mLのエタノールを添加し、加熱下で完全に溶解させ、熱いうちに濾過し、濾液を50~70mLに濃縮した後、室温で一晩攪拌し、n-ヘプタンを添加して大量の固体が析出するまで結晶化させ、濾過し、85℃未満で5~6時間真空乾燥させて試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0111】
実施例9 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0112】
5gの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物に25mLのエタノールと25mLのn-ヘプタンを添加し、16時間還流させた後、室温に冷却させ、濾過し、85℃未満で16時間真空乾燥させ、4gの試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0113】
実施例10 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0114】
室温下で、5gの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物に5.5mLのDMSOを添加して溶解させ、ゆっくりと5mLの水を添加して固体を析出させ、濾過し、85℃未満で17時間真空乾燥させて試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0115】
実施例11 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの製造
【0116】
室温下で、6gの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物に360gの酢酸エチルを添加して溶解させ、容積の半分に濃縮し、約60gのn-ヘプタンを添加し、固体を析出させ、濾過した。85℃未満で48時間真空乾燥させて試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルを実施例1の試料スペクトルと比較し、結晶形Iであることを確定した。
【0117】
比較例1 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの製造
【0118】
30mgの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物をバイアルに量って取り、バイアルに1,4-ジオキサン/イソプロピルエーテル(v/v=1:1)を添加し、超音波で試料の溶解を促進し、溶液が透明になった時、続いて一定量の固体試料を添加し、超音波で溶解を促進し、最終試料が過飽和溶液であることを保証し、0.45μmの濾過膜で濾過し、新しいバイアルに移し、バイアルを開口して放置し、室温下で自然に溶媒を揮発させ、固体、即ち、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIを得た。
【0119】
式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIのX線粉末回折スペクトルは
図6に示す通りであり、ここで、2θ、d(A)、ピークの数、及びピーク面積は以下の表6に示す通りであった:
【0120】
【0121】
TGA図は
図7に示す通りであった。
図7から分かるように、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIは無水物であった。
【0122】
DSC図は
図8に示す通りであった。式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの示差走査熱量において、202.83±3℃に吸収ピークがあり、融解熱は83.42J/gであった。
【0123】
DVS図は
図9に示す通りであった。式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの動的水分吸着スペクトルにおいて、0%~95%の相対湿度の範囲で重量は6.237%増加した。
【0124】
効果実施例1 安定性
1 水及び有機溶媒における、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの安定性
【0125】
1.1 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iを水及び有機溶媒中で室温で10日間放置した後の安定性
【0126】
それぞれ20mgの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの固体試料をバイアルに量って取り、それぞれバイアルに1mLの水又は有機溶媒を添加し、5分間超音波処理して懸濁液を得た。懸濁液を室温下で10日間回転させ、濾過した後の湿った試料をXRPDで特性評価した。結果は、各溶媒下で結晶形はいずれも変化せず、依然として結晶形Iであることを示した。前記溶媒は水、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、メチルtert-ブチルエーテル、アセトニトリル、n-ヘキサン、イソプロパノール、n-ヘプタン、トルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルエーテル、酢酸イソプロピル、n-ブタノール、メタノール水溶液(90%、75%、50%、10%)、アセトンの水溶液(95%、85%、15%)を含む。
【0127】
1.2 式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iを有機溶媒の中で高温で18時間スラリー化した後の安定性
【0128】
5gの式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの固体に、10gのエタノール、10gのイソプロパノール、10gのn-ヘプタンを添加した。混合物を80℃で18時間スラリー化し、室温に冷却させ、濾過し、85℃未満で16時間真空乾燥させ、約4gの試料を得た。当該方法で得られた試料の粉末X線回折スペクトルは、実施例1で得られた結晶形Iの試料の回折ピークと一致した。
【0129】
式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、水及び有機溶媒中で長時間室温、及び高温で放置しても変化しなく、従って、それは水及び有機溶媒中で比較的に良好な安定性を有することが分かった。
【0130】
2 高温、高湿度及び光照射条件下での式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの安定性
【0131】
適量の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの試料をペトリ皿に置き、それぞれ高温(40±2℃及び60±2℃)、高湿度(25℃、RH75±5%及びRH90±5%)及び光照射(4500±500Lux、25℃)の条件下で開口して置いた。5日目、10日目、1月目のサンプリング試験の結果は以下の表7~9に示す通りであった:
【0132】
適量の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の非晶質の試料と式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの試料をそれぞれペトリ皿に置き、それぞれ高温(60±2℃)、高湿度(25℃、RH75±5%)及び光照射(4500±500Lux、25℃)の条件下で開口して置いた。5日目、10日目、1月目のサンプリング試験の結果は以下の表10~11に示す通りであった:
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
上記の表7~9のデータは、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iが、高温、高湿度及び光照射の条件下でその化学的純度及び結晶形のいずれも変化がなく、良好な安定性を有していることを示した。
【0139】
式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の非晶質試料を、それぞれ光照射(4500±500Lux、25℃)、高温(60℃)及び高湿度(25℃、RH75%)の条件下で10日間置き、特性に明らかな変化はなかった。上記の表10のデータは、試料は高温(60℃)及び高湿度(25℃、RH75%)の条件下で総不純物含有量がわずかに増加し;光照射(4500±500Lux、25℃)の条件下で、総不純物含有量は有意に増加し、試料が光照射の条件下で不安定であることを示した。
【0140】
式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの獲得は比較的に困難であり、純度もわずかに悪い。試料をそれぞれ光照射(4500±500Lux、25℃)、高温(60℃)及び高湿度(25℃、RH75%)の条件下で10日間置き、特性に明らかな変化はなかった。上記の表11のデータは、試料は高温(60℃)及び高湿度(25℃、RH75%)の条件下で総不純物含有量がわずかに増加し;光照射(4500±500Lux、25℃)の条件下で、総不純物含有量は有意に増加したことを示し、試料が光照射の条件下で不安定であった。
【0141】
従って、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、高温、高湿度、及び光照射のいずれの条件下でも良好な安定性を有していることが分かった。
【0142】
効果実施例2 吸湿性
約10mgの試料を取り、温度を25℃に設定し、湿度0%RHの条件下で60分間乾燥させ、湿度が0%RHから95%RHに変化した時の試料の吸湿特性、及び湿度が95%RHから0%RHに変化した時の試料の除湿特性を測定し、湿度変化ステップ長は5%RHであり、質量変化率dm/dt値が0.002%未満の場合は秤が平衡であるとみなされ、5分以内の質量変化率が0.01%/min未満の場合は検出中の平衡とみなされ、最長の平衡時間は2時間である。当該検出条件下での水の等温吸着/脱着特性を測定し、DVS試験後の試料はXRPD検出を実行した。
【0143】
図5の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IのDVSから分かるように、前記結晶形Iの質量は、初期質量と比較して、0~90%の相対湿度の範囲で0.23%増加し、相対湿度0%~95%の範囲で0.34%増加したことが分かった。
【0144】
図9の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIのDVSから分かるように、前記式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの質量は、初期質量と比較して0~95%の相対湿度の範囲で6.237%増加したことが分かった。
【0145】
相対湿度0~95%の範囲で、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形IIの重量増加は、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iの重量増加の18倍であり、式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iが比較的低い吸湿性を有していることが分かった。
【0146】
従って、本発明の式Aで表されるモルホリノキナゾリン系化合物の結晶形Iは、良好な安定性及び非常に低い吸湿性を有していることが分かった。
【0147】
本明細書に記載の実施例は、説明のみを目的としており、実施例は、本発明をさらに理解するのに役立つが、本発明の内容を限定するために使用されないことを理解されたい。当業者にとって、材料及び方法の両方に対する多くの変更は、本発明の範囲から逸脱することなく実施することができ、これらの変更又は改善も、本出願の要旨及び範囲並びに添付の請求項の範囲に含まれる。