(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】工作機械およびワーク計測方法
(51)【国際特許分類】
B23B 25/06 20060101AFI20220512BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20220512BHJP
B23B 13/12 20060101ALI20220512BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
B23B25/06
B23Q17/20 A
B23B13/12 B
B23Q17/00 A
(21)【出願番号】P 2018010943
(22)【出願日】2018-01-25
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【氏名又は名称】池田 建志
(74)【代理人】
【識別番号】100126077
【氏名又は名称】今井 亮平
(72)【発明者】
【氏名】賀来 則夫
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-003902(JP,U)
【文献】特開2003-136368(JP,A)
【文献】特開2002-052445(JP,A)
【文献】特開2004-090170(JP,A)
【文献】特開昭61-125705(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106736862(CN,A)
【文献】特開2009-125856(JP,A)
【文献】特開平5-131301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 25/06
B23Q 17/00、20
B23B 13/02、12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸が把持するワークを前記主軸の前方で支持するガイドブッシュ又は前記主軸を支持する支持部の少なくとも一方に
内蔵された変位センサと、
加工後の前記ワークに対する前記変位センサによる計測値に基づいて加工後の前記ワークの径を演算する演算部と、を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記主軸は軸方向の前後に移動可能であり、前記ワークの加工後の前記主軸の後退により前記ワークの被加工部位を前記軸方向における前記変位センサによる所定の計測位置へ移動させ、当該移動後の前記ワークの被加工部位に対して前記変位センサによる計測を行うことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記ガイドブッシュは、回転しない筒状の非回転部と、前記非回転部の内側で前記主軸の回転と同期して回転可能であって前記ワークを支持する回転部と、を含み、
前記回転部は、支持する前記ワークの一部分を露出させる貫通孔を有し、
前記非回転部に
内蔵された前記変位センサは、前記貫通孔を通じて前記ワークに対する計測を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記支持部は、前記ガイドブッシュを着脱可能であり、
前記支持部に
内蔵された前記変位センサは、前記支持部から前記ガイドブッシュが取り外された状態で、前記主軸が把持する前記ワークに対する計測を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
前記変位センサが
内蔵される位置の近傍の温度を計測する温度センサを更に備え、
前記演算部は、前記温度センサによる計測値に基づいて、前記変位センサによる計測値を補正し、当該補正後の前記変位センサによる計測値に基づいて前記径を演算することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の工作機械。
【請求項6】
主軸が把持するワークを前記主軸の前方で支持するガイドブッシュ又は前記主軸を支持する支持部の少なくとも一方に
内蔵された変位センサにより加工後の前記ワークに対する計測を行う計測工程と、
前記計測工程による計測値に基づいて、加工後の前記ワークの径を演算する演算工程と、を備えることを特徴とするワーク計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械およびワーク計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野において、ワークの径を計測する方法が開示されている。(特許文献1,2,3参照)。
文献1においては、NC旋盤は、タレット刃物台の一面に測定器を装着し、測定器のタッチセンサをワークに接触させてワークの径を検出する。
文献2においては、レーザ測定器を備えたワーク径計測装置は、主軸台、刃物台、対向主軸、タレット型刃物台の全てが載るベッドに取り付けられている。
文献3においては、ワークの径を測定する測定器は、一対の測定爪の間に測定対象物を挟持することにより挟持箇所の寸法を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62‐130156号公報
【文献】特許第4865490号
【文献】特許第3901290号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
文献1,2においては、測定器と、測定対象物(ワーク)との距離が遠く、また、測定器およびワークや、測定器とワークとを繋ぐ経路に存在する複数の構造体(例えば、刃物台、ベッド、主軸台等)のそれぞれに生じる熱変位の影響で、測定器とワークとの位置関係が安定しなかった。そのため、ワークの径の計測結果に誤差が生じ易かった。また、文献3の一対の測定爪の間に測定対象物を挟持して測定する構成の場合、旋盤のようにワークの切屑が大量に発生する環境下では、切屑を挟む等して測定誤差が生じ易く、ワークの径を精度良く計測することが難しかった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、ワークの径を正確に計測する工作機械およびワーク計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の1つは、工作機械は、主軸が把持するワークを前記主軸の前方で支持するガイドブッシュ又は前記主軸を支持する支持部の少なくとも一方に搭載された変位センサと、加工後の前記ワークに対する前記変位センサによる計測値に基づいて加工後の前記ワークの径を演算する演算部と、を備える。
当該構成によれば、変位センサは、ワークを支持するガイドブッシュ又は主軸を支持する支持部の少なくとも一方に搭載される。つまり、変位センサとワークとの距離が近く、また両者が置かれた環境も殆ど同じである。よって、誤差の少ないワークの径の計測結果(演算結果)を得ることができる。
【0007】
本発明の態様の1つは、前記主軸は軸方向の前後に移動可能であり、前記ワークの加工後の前記主軸の後退により前記ワークの被加工部位を前記軸方向における前記変位センサによる所定の計測位置へ移動させ、当該移動後の前記ワークの被加工部位に対して前記変位センサによる計測を行うとしてもよい。
当該構成によれば、加工後のワークの被加工部位を変位センサにより的確に計測することができる。
【0008】
本発明の態様の1つは、前記ガイドブッシュは、回転しない筒状の非回転部と、前記非回転部の内側で前記主軸の回転と同期して回転可能であって前記ワークを支持する回転部と、を含み、前記回転部は、支持する前記ワークの一部分を露出させる貫通孔を有し、前記非回転部に搭載された前記変位センサは、前記貫通孔を通じて前記ワークに対する計測を行うとしてもよい。
当該構成によれば、ガイドブッシュの非回転部に搭載された変位センサは、回転部に設けられた貫通孔を通じて、加工後のワークに対する計測を行うことができる。
【0009】
本発明の態様の1つは、前記支持部は、前記ガイドブッシュを着脱可能であり、前記支持部に搭載された前記変位センサは、前記支持部から前記ガイドブッシュが取り外された状態で、前記主軸が把持する前記ワークに対する計測を行うとしてもよい。
当該構成によれば、支持部に搭載された変位センサは、支持部が支持する主軸が把持する加工後のワークに対する計測を行うことができる。
【0010】
本発明の態様の1つは、工作機械は、前記変位センサが搭載される位置の近傍の温度を計測する温度センサを更に備え、前記演算部は、前記温度センサによる計測値に基づいて、前記変位センサによる計測値を補正し、当該補正後の前記変位センサによる計測値に基づいて前記径を演算するとしてもよい。
当該構成によれば、演算部は、変位センサによる計測値の、温度の影響による変動を、温度センサによる計測値に基づいて補正することで、加工後のワークの径をより正確に演算することができる。
【0011】
本発明の技術的思想は、工作機械という物以外によっても実現される。
例えば、主軸が把持するワークを前記主軸の前方で支持するガイドブッシュ又は前記主軸を支持する支持部の少なくとも一方に搭載された変位センサにより加工後の前記ワークに対する計測を行う計測工程と、前記計測工程による計測値に基づいて、加工後の前記ワークの径を演算する演算工程と、を備えるワーク計測方法を、一つの発明として把握することができる。また、前記方法を実現するためのプログラムや、プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な記憶媒体も、夫々に発明として成り立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】NC旋盤における電気的な接続関係を簡易的に示すブロック図。
【
図3】加工後ワーク径の計測処理を示すフローチャート。
【
図4】第1実施例の変位センサを説明するための図。
【
図5】ガイドブッシュをZ軸方向の前側からの視点で簡易的に示す図。
【
図6】第2実施例の変位センサを説明するための図。
【
図7】第2実施例に対応する加工後ワーク径の計測処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。また、各図は例示であるため、形状や比率等が互いに整合していないこともある。
【0014】
1.装置構成の説明:
図1は、本実施形態にかかるNC(Numerical Control)旋盤10の一例を簡易的に示している。NC旋盤10は工作機械の一種である。NC旋盤10は、コンピューターとしてのNC(Numerical Control)装置11を有し、NC装置11が主軸52を始めとした、ワークWの加工のために動作する各部(加工部)を数値制御することにより、ワークWに対する加工を実施する。NC旋盤10が含む少なくとも一部の構成により、ワーク計測方法が実現される。
【0015】
NC旋盤10の加工部は、例えば、主軸52、主軸52を搭載した主軸台53、刃物台43、ガイドブッシュ(GB)20、GB支持部30、アクチュエータ61を含む。主軸台53は、主軸52の軸(Z軸)方向に、主軸52とともに移動可能である。Z軸は、
図1においては左右方向を向いている。便宜上、Z軸方向のプラス側(
図1においては右側)を「前」、Z軸方向のマイナス側(
図1においては左側)を「後」として説明を行う。主軸52は、主軸台53の後方からZ軸上に供給される棒状のワークWを開放可能に把持するコレット(
図6の符号57参照)を前端部に備える。
【0016】
主軸52は、Z軸を中心として回転する。
図1において符号52で示す部位は、ワークWを把持してZ軸を中心として回転可能な主軸と、主軸を内包しつつ回転しない筒状の部材等とを含んでおり、このような部位を主軸構造体とも呼ぶ。つまり、主軸52は、主軸構造体を指すと解してもよい。
【0017】
主軸52の前方には、GB支持部30が設けられている。GB支持部30は、NC旋盤10の加工部内で固定されている。GB支持部30は、Z軸を含んだ範囲にZ方向に貫通する貫通孔31を有しており、貫通孔31に対応してGB20が取り付けられる。GB20は、GB支持部30に対して着脱可能な部材であり、例えば、GB支持部30の貫通孔31に一部分を嵌め込むことによりGB支持部30に取り付けられる。
図1では、GB20がGB支持部30に取り付けられた(支持された)状態を示している。また、
図1に示すように、主軸52から前方に突出したワークWは、GB支持部30およびGB20を貫通してさらに前方へ突出する。GB20は、自身を貫通して前方に突出したZ軸上のワークWを周囲から支持する。
【0018】
刃物台43には、GB支持部30よりも前方へ突出した(
図1の例では、GB20よりも前方へ突出した)ワークWの加工に用いられる工具43aが装着される。刃物台43には、正面加工用のバイト、突っ切り加工用のバイト等を含む複数種類の工具が同時に取り付けられても良いし、これらの工具が交換可能に取り付けられてもよい。刃物台43が移動するX軸方向は、Z軸方向に対して垂直であり、
図1においては上下方向を向いている。また、刃物台43が移動するY軸方向は、X軸方向およびZ軸方向に対して垂直な方向(
図1の紙面に対して垂直な方向)である。
図1では、刃物台43とGB支持部30とは離れているが、例えば、刃物台43は、X軸方向およびY軸方向に移動可能な状態でGB支持部30により支持されているとしてもよい。あるいは、GB支持部30は、刃物台43とは別の図示しない刃物台を支持する構造を兼ねているとしてもよい。
【0019】
図1の例では、アクチュエータ61が、ボールねじ機構62を動作させることで、ボールねじ機構62のZ軸方向と平行なねじ軸63に沿って直進移動体64を移動させる。ボールねじ機構62の直進移動体64と主軸台53とが直接あるいは間接的に固定されているため、直進移動体64とともに主軸台53および主軸台53に搭載された主軸52がZ軸方向に沿って前後に移動する。アクチュエータ61は、ボールねじ機構62の動力源となるモータ(サーボモータ、リニアモータ等)である。ただし、ボールねじ機構62は、主軸台53および主軸52をZ軸方向に移動させるための一手段に過ぎない。例えば、アクチュエータ61は、油圧や電動で直線運動を行うシリンダーを動作させることにより、主軸台53および主軸52をZ軸方向に移動させるとしてもよい。
【0020】
図2は、NC旋盤10における各部の電気的な接続関係を、ブロック図により簡易的に示している。NC装置11は、例えば、コントローラーとしてのCPU11a、RAM11b、ROM11cを有する。また、NC装置11に対しては、サーボアンプ40、主軸用アンプ50、サーボアンプ60、変位センサ70等が、バス11dによって通信可能に接続されている。サーボアンプ40は、X軸モータ41、Y軸モータ42とそれぞれ接続しており、接続する各モータ41,42に対して電力を供給する。X軸モータ41およびY軸モータ42は刃物台43と接続しており、供給された電力を刃物台43を移動させるための動力に変換し、刃物台43をX軸方向、Y軸方向それぞれへ移動させる。
【0021】
サーボアンプ60は、アクチュエータ61と接続し、アクチュエータ61に対して電力を供給する。主軸用アンプ50は、主軸モータ51と接続し、主軸モータ51に電力を供給する。主軸モータ51は主軸52と接続している。主軸モータ51は、供給された電力を主軸52を回転させるための動力に変換し、主軸52を回転させる。その他、主軸52が備えるコレット57に開閉動作をさせるアクチュエータ(不図示)等も、NC装置11によって制御される。
【0022】
NC装置11においては、CPU11aが、RAM11bをワークエリアとして加工プログラムPに従った処理を実行し、各アンプ40,50,60による電力供給等を数値制御する。その結果、NC旋盤10によるワークWに対する加工が実現され、ワークWから製品が製造される。加工プログラムPは各種のコマンドで構成される。また、NC装置11は、操作受付部12や、表示部13等を備える。操作受付部12は、ユーザーの入力操作を受付ける複数のボタンやキー等からなり、表示部13上のタッチパネルを含むものであってもよい。表示部13は、ユーザーが操作受付部12を介して入力した各種数値や設定の内容や、NC旋盤10に関する各種情報を画面に表示するディスプレイである。
【0023】
変位センサ70は、主軸52が把持するワークWを主軸52の前方で支持するGB20、又は、主軸52を支持する支持部の少なくとも一方に搭載される。主軸52を支持する支持部とは、
図1の例では、GB支持部30が該当する。変位センサ70の搭載位置についての具体例は、
図4~6を用いて後述する。
言うまでもなく、NC旋盤10の構成は上述した内容に限られない。例えば、刃物台43が移動可能な方向は上述した方向に限定されない。また、NC旋盤10は、主軸52から前方に突出するワークWの前端部を把持して回転可能な背面主軸等を有するとしてもよい。
【0024】
2.加工後ワーク径の計測処理:
図3は、本実施形態においてNC装置11(CPU11a)が加工プログラムPに従って実行する加工後ワーク径の計測処理をフローチャートにより示している。上述したようにNC装置11は、加工プログラムPを構成する各種コマンドに従った処理を実行することにより、NC旋盤10(加工部)によるワークWに対する加工を実現させる。加工後ワーク径の計測処理は、このような加工プログラムPに従ったワークWの加工処理の中に組み込まれる処理である。つまり、加工後ワーク径の計測処理に対応するコマンドも加工プログラムPに組み込まれている。NC装置11は、加工後ワーク径の計測処理に対応するコマンドが実行されることで、加工後ワーク径の計測処理を開始する。加工後ワーク径の計測処理を開始するタイミングは、ワークWの加工処理における所定のタイミングである。
【0025】
加工後ワーク径の計測処理を開始する所定のタイミングとは、例えば、前回の加工後ワーク径の計測処理を実行した後、所定の時間(例えば、数十分)が経過したタイミングである。つまり、NC装置11は、加工部によるワークWの加工(ワークWからの製品の製造)を製品単位で繰り返す中で、定期的に加工後ワーク径の計測処理を実行する。また、前記所定のタイミングとは、例えば、前回の加工後ワーク径の計測処理を実行した後、所定個数(例えば、数十個)の製品をワークWから製造したタイミングであってもよい。また、NC装置11は、ワークWの加工処理がユーザーの指示等により停止された後の加工処理の再開後の最初にワークWを加工し終えた(再開後の1つ目の製品を製造した)タイミングで、加工後ワーク径の計測処理を開始してもよい。加工プログラムPは、このような所定のタイミングで加工後ワーク径の計測処理に対応するコマンドが実行されるように構成されている。
【0026】
NC装置11は、加工後ワーク径の計測処理の開始後、先ず、加工後のワークWを変位センサ70による所定の計測位置へ移動させる(ステップS100)。現在、ワークWの前端部は、工具43a等による加工が施された後の状態(かつ、加工が施された当該前端部がワークWから分断される前の状態)である。工具43a等による加工が施された後の状態のワークWの前端部を、ワークWの被加工部位とも呼ぶ。NC装置11は、Z軸方向におけるワークWの被加工部位の位置を、当然に把握している。ステップS100では、NC装置11は、サーボアンプ60によりアクチュエータ61を動作させて主軸台53および主軸52を後方へ移動させる。ワークWは、主軸52が有するコレット57により把持された状態であるため、主軸52とともに後方へ移動する。このとき、NC装置11は、ワークWの被加工部位が、前記計測位置として予め決められているZ軸上の所定位置へ到達するまで、主軸台53および主軸52を後方へ移動させる。
【0027】
ステップS100の移動後、NC装置11は、変位センサ70にて、加工後のワークW、つまり被加工部位に対する計測を実行し、変位センサ70による計測結果(計測値)を取得する(ステップS110)。ステップS110は、本発明の計測工程の一種に該当する。
【0028】
変位センサ70は、稼働可能な状態では、ワークWに対する計測を、例えば、常時あるいは繰り返し実行している。そのため、NC装置11は、変位センサ70による計測値をステップS110のタイミングで取得することで、加工後のワークWに対する変位センサ70による計測値を取得することができる。
【0029】
NC装置11は、ステップS110で取得した計測値に基づいて加工後のワークWの径(加工後ワーク径)を演算する(ステップS120)。ステップS120は、本発明の演算工程に該当する。ステップS120を実行する点で、NC装置11は、演算部として機能すると言える。以上により、加工後ワーク径の計測は終了したと言える。ただし
図3の例では、NC装置11は、ステップS120の後、ステップS130を実行する。
【0030】
ステップS130では、NC装置11は、ステップS120で演算した加工後ワーク径に基づいて、ワークWの加工誤差を演算する。NC装置11は、加工後ワーク径「d1」の目標値「d2」を情報として有している。目標値d2は、例えば、ユーザーが操作受付部12を操作して予め設定した値である。そこで、NC装置11は、ステップS120で演算した加工後ワーク径d1と目標値d2との差分、|d1-d2|を、ワークWの加工誤差とする。このように加工誤差の演算を終えたら、NC装置11は、
図3のフローチャート(加工後ワーク径の計測処理)を終了して、上述のワークWの加工処理へ復帰する。
【0031】
NC装置11は、演算した加工誤差に基づいて、復帰後の加工処理に補正を加えることができる。つまり、NC装置11は、今後のワークWの加工において加工誤差を0に近づけるために、例えば、刃物台43の移動量等、加工部の動作に関する各数値設定を、加工誤差に基づいて補正する。演算した加工誤差は、加工部を構成する各部それぞれの熱変位が合わさった結果の加工誤差と言える。そのため、演算した加工誤差に基づく補正を、熱変位補正とも呼ぶ。
【0032】
3.実施例:
次に、本実施形態に含まれる実施例を幾つか説明する。
[第1実施例]
図4は、第1実施例の変位センサ70を主に説明するための図であり、GB支持部30の貫通孔31に取り付けられたGB20等の断面(Y軸方向に垂直な面)を示している。
図4は断面図であるが、見易さを優先して、GB20の各部位の断面に付すハッチングを省略している。
【0033】
GB20は、回転しない筒状の非回転部21と、非回転部21の内側で主軸52の回転と同期してZ軸を中心として回転可能であってワークWを支持する回転部(23,24)と、を含んでいる。非回転部21と回転部(23,24)との間には、ベアリング部22が設けられており、ベアリング部22の内側、つまり回転部(23,24)が回転する構成となっている。回転部(23,24)は、例えば、主軸52を回転させる主軸モータ51(
図2)が生み出す動力を受けることで、主軸52と同期して回転する。あるいは、回転部(23,24)は、主軸モータ51とは別のモータ(不図示)が生み出す動力を受けて回転可能であり、NC装置11が、主軸モータ51と当該別のモータとを同期させて制御することにより、主軸52の回転に同期させて回転部(23,24)を回転させる。
【0034】
回転部(23,24)は、外側、つまり非回転部21側の第1回転部23と、第1回転部23の内側のコレット(把持機構)24とを含んでいる。GB20の内部では、コレット24がワークWを支持する。コレット24は、ワークWがZ軸方向に摺動可能な程度にワークWを支持する。言うまでもなく、コレット24は、ワークWの把持、開放が可能であり、コレット24によるワークWの把持と開放も、加工プログラムPに基づいてNC装置11が制御する。
【0035】
図4の例においては、変位センサ70は、非回転部21の第1回転部23側に臨む位置に内蔵されている。変位センサ70は、例えば、渦電流式、光学式、画像認識方式等によるセンサであり、測定対象物との距離を計測する。変位センサ70を、測距センサと呼んでもよい。
図4に示すワークWの一部分は、上述の被加工部位であると仮定する。つまり
図4は、ステップS100(
図3)が終了して、ワークWの被加工部位が、変位センサ70による計測位置としてのZ軸上の所定位置へ到達した状態を示している。NC装置11は、ステップS100の終了後から、例えばステップS110までは、ワークWの位置を変動させないために、コレット24にワークWを把持させる。
【0036】
回転部(23,24)は、ワークWの一部分を露出させる貫通孔25(第2貫通孔)を有する。さらに、第1回転部23は、コレット24の一部分を露出させる貫通孔26(第3貫通孔)を有する。貫通孔25は、第1回転部23およびコレット24を貫通している。貫通孔26は、貫通孔25とは別の位置で、第1回転部23を貫通している。貫通孔25,26はいずれも、Z軸方向における位置が、変位センサ70による計測位置と一致する。
【0037】
図5は、主に貫通孔25,26の位置の例を説明するための図であり、GB20をZ軸方向の前側からの視点で簡易的に示している。上述したように、変位センサ70は非回転部21の第1回転部23側に臨む位置に内蔵されている。
図5の例では、第1回転部23およびコレット24を貫通する貫通孔25と、第1回転部23を貫通する貫通孔26とは、Z軸に垂直な面内で、Z軸を中心として180度異なる位置にそれぞれ形成されている。ただし、貫通孔25と貫通孔26とは、Z軸に垂直な面内で互いが重ならない位置に在ればよい。
【0038】
このような構成によれば、回転部(23,24)がZ軸を中心として回転し、Z軸に垂直な面内でZ軸と変位センサ70とを結ぶ直線上に貫通孔25が一致したとき、変位センサ70は、貫通孔25を通じてワークW(被加工部位)の表面までの距離L2を計測することができる。また、回転部(23,24)がZ軸を中心として回転し、Z軸に垂直な面内でZ軸と変位センサ70とを結ぶ直線上に貫通孔26が一致したとき、変位センサ70は、貫通孔26を通じてコレット24の表面までの距離L1を計測することができる。変位センサ70は、回転部(23,24)がZ軸を中心として回転している間、貫通孔25,26の何れも変位センサ70に対して位置が一致しない期間は、計測する距離は0に近い極めて短い距離(変位センサ70から第1回転部23の表面までの距離)である。つまり、変位センサ70は、回転部(23,24)がZ軸を中心として回転している間、それぞれ明確に異なる3種類の距離を計測することができる。そのため、NC装置11は、当該3種類の距離の中で最も長い距離を距離L2とし、2番目に長い距離を距離L1とすることができる。
【0039】
ステップS110(
図3)では、NC装置11は、変位センサ70による、経時的に変化する計測値から上述したような距離L1,L2を取得する。NC装置11は、ステップS110においては、GB20(回転部(23,24))を回転させる。
【0040】
ステップS120では、NC装置11は、ステップS110で取得した計測値(距離L1,L2)に基づいて、以下の式(1)により、加工後ワーク径d1を演算する。
d1=D1-2×ΔLa …(1)
【0041】
距離D1(
図4)は、コレット24の径であり既知の値である。NC装置11は、距離D1の値を予め情報として有している。距離ΔLa(
図4)は、L2-L1、である。このように、第1実施例によれば、ワークWを支持するGB20に搭載された変位センサ70に計測させた距離L1,L2と既知の距離D1とを利用することで、NC装置11は、加工後ワーク径d1を正確に演算することができる。
【0042】
[第2実施例]
図6は、第2実施例の変位センサ70を主に説明するための図であり、GB支持部30の貫通孔31に挿入された主軸52等の断面(Y軸方向に垂直な面)を示している。
図6は断面図であるが、見易さを優先して、主軸52の各部位の断面に付すハッチングを省略している。
図6は、
図1,4と比較すると判るように、GB20がGB支持部30から取り外されている。つまり、NC旋盤10では、GB20がGB支持部30から取り外された状態で、主軸台53および主軸52を前方へ移動させ、主軸52をGB支持部30の貫通孔31に挿入することで、GB支持部30に主軸52を支持させることができる。GB支持部30の貫通孔31の内壁は、主軸52が挿入されたとき主軸52を安定して支持可能な形状とされている。
【0043】
GB支持部30の貫通孔31に主軸52を挿入して、GB支持部30に対して主軸52を位置決めしたとき、
図6の上段に示すように、主軸52の前端の一部は、GB支持部30よりも前方へ突出する。そのため、NC旋盤10では、GB支持部30に支持された主軸52に把持されて主軸52の前端よりも前方へ突出したワークWに対して、刃物台43の工具43a等を作用させて加工することができる。このように主軸52をGB支持部30で支持した状態で実行するワークWの加工を、ノンガイドブッシュ方式の加工処理と呼ぶ。一方、
図1,4に示したように、GB支持部30にGB20を取り付け、主軸52が把持するワークWを主軸52よりも前方のGB20で支持した状態で実行するワークWの加工を、ガイドブッシュ方式の加工処理と呼ぶ。上述の第1実施例は、ガイドブッシュ方式の加工処理の中で所定のタイミングで実行される加工後ワーク径の計測処理、に対応する実施例である。
【0044】
一方、第2実施例は、ノンガイドブッシュ方式の加工処理の中で所定のタイミングで実行される加工後ワーク径の計測処理、に対応する実施例である。
主軸52は、回転しない筒状の非回転部54と、非回転部54の内側でZ軸を中心として回転可能であってワークWを把持する回転部(56,57)と、を含んでいる。非回転部54と回転部(56,57)との間には、ベアリング部55が設けられており、ベアリング部55の内側、つまり回転部(56,57)が回転する。回転部(56,57)は、主軸モータ51(
図2)が生み出す動力を受けて回転する。回転部(56,57)の前端側の一部分は、ワークWを把持するためのコレット(把持機構)57である。
【0045】
図6の例においては、変位センサ70は、GB支持部30に内蔵されている。また、GB支持部30には、貫通孔31の内壁から変位センサ70まで到達するX軸方向と平行な貫通孔32(第4貫通孔)が形成されている。ここで、
図6に示すワークWの前端部(細い部分)は、被加工部位であると仮定する。つまり
図6の上段は、ノンガイドブッシュ方式の加工処理においてワークWへの加工が終了した(ワークWの前端部が被加工部位となった)状態を示し、
図6の下段は、ステップS100(
図3)が終了して、ワークWの被加工部位が、変位センサ70による計測位置としてのZ軸上の所定位置へ到達した状態を示している。
【0046】
ただし、第2実施例における加工後ワーク径の計測処理は、
図3の替わりに
図7のフローチャートを用いて説明する。
図7を
図3と比較したとき、変位センサ70による計測位置や、変位センサ70による計測値の中身は異なるものの、基本的にステップS210~S240は、ステップS100~S130に相当する。
図7の
図3との大きな違いは、ステップS200を有する点である。
【0047】
第2実施例では、NC装置11は、加工後ワーク径の計測処理を開始する所定のタイミングとなったと判定した場合、変位センサ70にて、主軸52に対する計測を実行し、変位センサ70による計測結果(計測値)を取得する(ステップS200)。ステップS200の時点では、
図6の上段に示すようにワークWへの加工が終了した状態、つまり、主軸52の前端部がGB支持部30よりも前方へ突出した状態であるため、変位センサ70は、貫通孔32を通じて、変位センサ70から主軸52(非回転部54)の表面までの距離L3を計測することになる。NC装置11は、変位センサ70による計測値をステップS200のタイミングで取得することで、距離L3を取得することができる。
【0048】
NC装置11は、ステップS200の後、ステップS210へ進み、加工後のワークWを変位センサ70による所定の計測位置へ移動させる。つまり、ワークWの被加工部位が、前記計測位置として予め決められているZ軸上の所定位置へ到達するまで、主軸台53および主軸52を後方へ移動させる。
【0049】
ステップS210の移動後、NC装置11は、変位センサ70にて、加工後のワークW、つまり被加工部位に対する計測を実行し、変位センサ70による計測結果(計測値)を取得する(ステップS220)。ステップS220は、本発明の計測工程の一種に該当する。ステップS220の時点では、
図6の下段に示すようにワークWの被加工部位は、Z軸方向において、変位センサ70に対応する位置に在る。そのため、変位センサ70は、貫通孔32を通じて変位センサ70から、主軸52が把持するワークWの被加工部位の表面までの距離L4を計測することになる。NC装置11は、変位センサ70による計測値をステップS220のタイミングで取得することで、距離L4を取得することができる。
【0050】
NC装置11は、ステップS200とステップS220で取得した計測値に基づいて加工後ワーク径d1を演算する(ステップS230)。ステップS230は、本発明の演算工程に該当する。ステップS230では、NC装置11は、取得した計測値(距離L3,L4)に基づいて、以下の式(2)により、加工後ワーク径d1を演算する。
d1=D2-2×ΔLb …(2)
【0051】
距離D2(
図6)は、主軸52の径(主軸52のステップS200で計測される位置の径)であり既知の値である。NC装置11は、距離D2の値を予め情報として有している。距離ΔLb(
図6)は、L4-L3、である。このように、第2実施例によれば、ノンガイドブッシュ方式の加工処理のために主軸52を支持するGB支持部30に搭載された変位センサ70に計測させた距離L3,L4と既知の距離D2とを利用することで、NC装置11は、加工後ワーク径d1を正確に演算することができる。
【0052】
ステップS240では、ステップS130と同様に、NC装置11は、ステップS230で演算した加工後ワーク径d1と目標値d2との差分、|d1-d2|をワークWの加工誤差とする演算を行う。
【0053】
4.まとめ、及び、その他の説明:
このように本実施形態によれば、工作機械は、主軸52が把持するワークWを主軸52の前方で支持するGB20又は主軸52を支持する支持部(GB支持部30)の少なくとも一方に搭載された変位センサ70と、加工後のワークWに対する変位センサ70による計測値に基づいて加工後ワーク径d1を演算する演算部(NC装置11、CPU11a)と、を備える。つまり、変位センサ70と、計測対象のワークWとが狭い範囲に存在するため、熱変位の影響による誤差が殆ど載らない正確な加工後ワーク径d1を計測(演算)することができる。
【0054】
本発明による効果を、より詳しく説明する。
例えば、
図4に示したGB20やワークWや、その他の周囲の各部位は、ワークWの加工中、NC旋盤10内で大量の切削油に晒されているため、それらの温度は切削油の温度に追従し、結果的に、狭い範囲に存在するGB20や、GB20に搭載された変位センサ70や、ワークWの被加工部位の温度は、ほぼ同じである。物体は、温度が変われば熱変位の程度も変わるが、互いの温度に差が無い複数の物体それぞれの熱変位の程度は、互いに似たものとなる。従って本発明のように、加工部における、変位センサ70によるワークWの被加工部位の計測に関わる系が全体で同様の温度となる構成においては、温度が異なる条件でそれぞれ計測を行ったとしても、計測結果は、殆ど変らない。
【0055】
具体例を示す。
第1実施例のNC旋盤10において、上述した加工誤差が0(つまり、加工後ワーク径d1=d2)となるように加工部の各設定を調整した状態(理想状態)を再現した。このとき、理想状態では、GB20や、GB20に搭載された変位センサ70や、被加工部位を含むワークW、を含む系の温度は20℃であり、
距離D1=30.000mm、
目標値d2=10.000mm、
距離L1=5.000mm、
距離L2=15.000mm、であった。
【0056】
一方、前記理想状態に対して前記系の温度を30℃に上昇させた場合、前記系における物体個々の熱変位により、変位センサ70による計測値としての距離L1が、5.00006mmとなった。
この場合、前記式(1)によれば、
d1=30.000-2×(9.99994)=10.0001mm、となる。
【0057】
つまり、前記系の温度を10℃上げた影響で、0.0001mmという、目標値d2とのずれ(加工誤差)が発生した。しかし、この0.1μm程度の加工誤差は、目標値d2=10.000mmとして、加工部の各部(例えば、ワークW、主軸52、主軸台53、主軸台53を支えるテーブル、刃物台43、刃物台43を支えるテーブル等…)にそれぞれ発生する熱変位の影響を受けて生じる加工誤差が100分の1ミリ程度のスケールである実情を鑑みると、相対的に非常に小さく、殆ど無視して良いと言える。すなわち、本実施形態によれば、加工部における温度にかかわらず、加工後ワーク径を正確に計測することができる。
【0058】
文献1~3等の従来技術によれば、加工後ワーク径の計測自体に誤差が載り易い。加工後ワーク径の計測結果が正確でない場合、当然、加工後ワーク径と目標値との差分である加工誤差も信頼できない値となり、加工誤差に基づく熱変位補正も適切に実行できない。これに対して本実施形態は、変位センサ70が置かれた環境の温度によらず、加工後ワーク径を正確に計測することができる。そのため、加工後ワーク径と目標値との差分である加工誤差は、NC旋盤10(加工部)における熱変位を的確に表しており、その結果、熱変位補正を適切に実行してワークWの加工精度を向上させることができる。
【0059】
本実施形態の一つとして、変位センサ70は、CPU等のプロセッサやメモリ等の記憶部を有する構成であってもよい。そして、変位センサ70は、NC装置11からステップS110やステップS200やステップS220の各タイミングで計測指示を受信し、受信した計測指示に応じてワークWや主軸52に対する計測を行い、計測値をNC装置11へ送信するとしてもよい。また、第2実施例では、変位センサ70は、ステップS200における計測値(距離L3)を記憶部に一旦記憶させ、NC装置11は、ステップS220において、変位センサ70が計測した計測値(距離L4)と、変位センサ70の記憶部に記憶された距離L3とを、読み出すとしてもよい。NC装置11と変位センサ70との間の通信は、有線方式、無線方式のいずれであってもよい。
【0060】
本実施形態の一つとして、変位センサ70が搭載される位置の近傍の温度を計測する温度センサ80を更に備え、NC装置11は、温度センサ80による計測値に基づいて、変位センサ70による計測値を補正し、当該補正後の変位センサ70による計測値に基づいて加工後ワーク径を演算するとしてもよい。
【0061】
図4を参照すると、GB20の非回転部21に、温度センサ80が取り付けられている。温度センサ80も、変位センサ70と同様に、NC装置11と有線又は無線により通信可能である。
図4に示す温度センサ80によれば、変位センサ70を搭載するGB20の温度、あるいはGB20近傍の温度を計測することができる。むろん、
図6の例において、GB支持部30の貫通孔31近傍等に、温度センサ80を取り付けてもよい。変位センサ70による計測値(距離L1,L2や距離L3,L4)としての電気信号は、環境温度に影響されて、そのレベルが微妙に変動することがある。そこで、NC装置11は、温度センサ80から温度の計測値を例えば、ステップS110やステップS200やステップS220のタイミングで併せて取得する。そして、ステップS120や、ステップS230では、加工後ワーク径を演算する前に、変位センサ70から取得した計測値(距離L1,L2や距離L3,L4)を、温度センサ80から取得した温度の計測値に応じた補正係数(予め各温度に対応して用意されている補正係数)を掛ける等して補正する。これにより、NC装置11は、温度の影響を排除した、より正確な加工後ワーク径を得ることができる。
【0062】
なお、加工後ワーク径の演算は、上述した方法に限られない。第1実施例において、NC装置11は、GB20の第1回転部23(
図4)の外径を、既知の値(距離D3)として有しているとする。この場合、ステップS120(
図3)では、NC装置11は、距離D3から距離L2を2倍した値を差し引くことで、加工後ワーク径d1を得ることができる。
【0063】
ステップS100(
図3)やステップS210(
図7)の説明では、加工後のワークWを主軸52とともに後へ移動させることで、被加工部位を変位センサ70による計測位置に位置合わせするとした。しかし、GB支持部30をZ軸方向に移動可能な構成とし、NC装置11は、ステップS100やステップS210では、GB支持部30を前方に移動させることによりワークWの被加工部位と変位センサ70による計測位置とを位置合わせしてもよい。
【0064】
本実施形態は、GB20、主軸52を支持する支持部(GB支持部30)のいずれか一方に変位センサ70が搭載される構成だけでなく、GB20、主軸52を支持する支持部(GB支持部30)の両方に変位センサ70が搭載される構成も、開示範囲に含んでいる。つまり、NC旋盤10は、ガイドブッシュ方式の加工処理の中で所定のタイミングで実行する加工後ワーク径の計測処理では、GB20が搭載する変位センサ70による計測を行い、ノンガイドブッシュ方式の加工処理の中で所定のタイミングで実行する加工後ワーク径の計測処理では、GB支持部30が搭載する変位センサ70による計測を行うことができる。
【0065】
本件において、変位センサ70が搭載される、主軸52の前端部近傍を支持する支持部は、GB支持部30以外の構造物であってもよい。例えば、ガイドブッシュを着脱する機能を有さないが主軸52の前端部近傍を支持可能な支持部に、変位センサ70が搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…NC旋盤、11…NC装置、11a…CPU、11b…RAM、11c…ROM、12…操作受付部、13…表示部、20…GB、21…非回転部、23,24…回転部(第1回転部、コレット)、25…貫通孔、26…貫通孔、30…GB支持部、31…貫通孔、32…貫通孔、43…刃物台、52…主軸、53…主軸台、61…アクチュエータ、70…変位センサ、80…温度センサ、P…加工プログラム、W…ワーク