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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/466 20210101AFI20220512BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20220512BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20220512BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220512BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220512BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALI20220512BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220512BHJP
   H01M 6/02 20060101ALI20220512BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20220512BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20220512BHJP
【FI】
H01M50/466
H01M50/46
H01M50/449
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M10/0583
H01M10/04 Z
H01M6/02 Z
H01G11/52
H01G11/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017250121
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019117703
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 明彦
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/083389(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0207480(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0058387(US,A1)
【文献】特開2016-006718(JP,A)
【文献】特表2015-503832(JP,A)
【文献】特開2015-201400(JP,A)
【文献】特開2013-191485(JP,A)
【文献】特開2006-049114(JP,A)
【文献】国際公開第2016/137142(WO,A1)
【文献】特開2013-222602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0317375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/00-10/04;10/06-10/34
H01M 6/00-6/22
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の第一の電極と、該第一の電極と長尺方向を揃えた状態で該第一の電極に重ねられた長尺状のセパレータとをターン部で折り返した折り返し部を有する電極体を備え、
前記セパレータは、前記ターン部を構成し且つ前記第一の電極の内側に重ねられた第一部位と、前記ターン部を構成し且つ前記第一の電極の外側に重ねられた第二部位とを有し、
前記第一部位は、基材層と無機酸化物を含有する無機層とを有し、
前記第二部位は、前記基材層と前記無機酸化物とのうち少なくとも前記基材層を有し、
前記第二部位の前記基材層は、前記ターン部の外側に向けて露出している、蓄電素子。
【請求項2】
前記電極体は、前記折り返し部の外側に配置され且つ前記第一の電極と極性の異なる第二の電極を有し、
前記折り返し部は、前記ターン部の端縁から第一方向にそれぞれ延びる一対の延在部を有すると共に、該一対の延在部の延びる方向を揃えた状態で前記一対の延在部が並ぶ方向に複数並んで設けられ、
前記第一の電極は、前記一対の延在部をそれぞれ構成する電極延在部を有し、
前記セパレータは、前記延在部を構成し且つ前記電極延在部及び前記第二の電極に挟まれる第三部位を有し、
前記第三部位は、前記基材層及び前記無機層の両方を有し、
前記第三部位の前記基材層は、該第三部位の全域において前記第一方向に延び、
前記第三部位の前記無機層は、該第三部位の全域において前記第一方向に延びる、請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
長尺状のセパレータをターン部で折り返した折り返し部を有すると共に、該折り返し部の内側に配置される第一の電極と、前記折り返し部の外側に配置され且つ前記第一の電極と極性の異なる第二の電極とを有する電極体を備え、
前記セパレータは、基材層と無機酸化物を含有する無機層とを有し、
前記ターン部の前記基材層は、前記ターン部の外側に向けて露出し
前記折り返し部は、前記ターン部の端縁から第一方向にそれぞれ延びる一対の延在部を有すると共に、該一対の延在部の延びる方向を揃えた状態で前記一対の延在部が並ぶ方向に複数並んで設けられ、
前記延在部の前記基材層は、該延在部の全域において前記第一方向に延び、
前記延在部の前記無機層は、該延在部の全域において前記第一方向に延びる、蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極とセパレータとを有する電極体を備えた蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極及び負極の一方が蛇腹状に折り畳まれて積層されているリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」と称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的に、この電池は、図16に示すように、負極・セパレータ圧着体121と正極122とを組み合わせて、これを蛇腹状に折り畳んで構成された電極体102を備える。
【0003】
負極・セパレータ圧着体121は、帯状に連続する一対のセパレータ123の間に、負極を基材とする帯状の負極体124を圧着して構成されており、全体として帯状に連続している。正極122は、複数の短冊状の金属箔を正極リードにより連結して構成されている。正極122は、正極122の厚み方向で、負極・セパレータ圧着体121と対向している。
【0004】
前記電極体102を製造する際には、まず、基材表面にセラミック層を有するセパレータ123を一対準備し、このセパレータ123の間に帯状の負極体124を配置して、これらをプレス等により圧着することで、負極・セパレータ圧着体121を形成する。さらに、負極・セパレータ圧着体121に折り目を形成し、負極・セパレータ圧着体121に正極122を挿入した後、これを折り目に沿って折り畳むことで前記電極体102が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-222602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記電極体102を備えた電池では、正極122や負極体124が膨張すると、この膨張に起因する圧力が、負極・セパレータ圧着体121の折り目周辺にかかり、セパレータ123の基材からセラミック層が剥がれ落ちることがある。特に、負極・セパレータ圧着体121の折り目の外側(山折り面側)でセラミック層が剥がれ落ちると、電極体102の周辺にこのセラミック層が付着するおそれがあった。セラミック層が電極体周囲に付着した場合は挿入時に不良率上昇につながるおそれがあった。
【0007】
そこで、本実施形態は、無機層を含むセパレータをターン部で折り返した折り返し部を有する蓄電素子であって、ターン部の外側において無機層が剥がれ難い蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の蓄電素子は、
長尺状の第一の電極と該第一の電極と長尺方向を揃えた状態で該第一の電極に重ねられた長尺状のセパレータとをターン部で折り返した折り返し部を有する電極体を備え、
前記セパレータは、前記ターン部を構成し且つ前記第一の電極の内側に重ねられた第一部位と、前記ターン部を構成し且つ前記第一の電極の外側に重ねられた第二部位とを有し、
前記第一部位は、基材層と無機酸化物を含有する無機層とを有し、
前記第二部位は、前記基材層と前記無機層とのうち少なくとも前記基材層を有し、
前記第二部位の前記基材層は、前記ターン部の外側に向けて露出している。
【0009】
かかる構成によれば、第二部位の外側の少なくとも一部では、無機層がなく、基材層がターン部の外側に向けて露出しているため、ターン部の外側において無機層の剥がれを抑えることができる。
【0010】
前記蓄電素子では、
前記電極体は、前記折り返し部の外側に配置され且つ前記第一の電極と極性の異なる第二の電極を有し、
前記折り返し部は、前記ターン部の端縁から第一方向にそれぞれ延びる一対の延在部を有すると共に、該一対の延在部の延びる方向を揃えた状態で前記一対の延在部が並ぶ方向に複数並んで設けられ、
前記第一の電極は、前記一対の延在部をそれぞれ構成する電極延在部を有し、
前記セパレータは、前記延在部を構成し且つ前記電極延在部及び前記第二の電極に挟まれる第三部位を有し、
前記第三部位は、前記基材層及び前記無機層の両方を有し、
前記第三部位の前記基材層は、該第三部位の全域において前記第一方向に延び、
前記第三部位の前記無機層は、該第三部位の全域において前記第一方向に延びてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、無機層が第三部位の全域に存在することにより、第三部位に無機層の段差が存在しないため、蓄電素子に圧力がかかっても、このような段差に圧力が集中することがなく、第二の電極にかかる圧力は第一方向の全域において均一になる。
【0012】
別の実施形態の蓄電素子は、
長尺状のセパレータをターン部で折り返した折り返し部を有すると共に、該折り返し部の内側に配置される第一の電極と、前記折り返し部の外側に配置され且つ前記第一の電極と極性の異なる第二の電極とを有する電極体を備え、
前記セパレータは、基材層と無機酸化物を含有する無機層とを有し、
前記ターン部では、前記基材層が前記ターン部の外側に向けて露出している。
【0013】
かかる構成によれば、ターン部の外側の少なくとも一部には無機層がなく、基材層がターン部の外側に向けて露出しているため、ターン部の外側において無機層の剥がれを抑えることができる。
【0014】
前記蓄電素子では、
前記折り返し部は、前記ターン部の端縁から第一方向にそれぞれ延びる一対の延在部を有すると共に、該一対の延在部の延びる方向を揃えた状態で前記一対の延在部が並ぶ方向に複数並んで設けられ、
前記延在部の前記基材層は、該延在部の全域において前記第一方向に延び、
前記延在部の前記無機層は、該延在部の全域において前記第一方向に延びてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、無機層が延在部の全域に存在することにより、延在部に無機層の段差が存在しないため、蓄電素子に圧力がかかっても、このような段差に圧力が集中することがなく、第二の電極にかかる圧力は第一方向の全域において均一になる。
【発明の効果】
【0016】
本実施形態の蓄電素子によれば、無機層を含むセパレータをターン部で折り返した折り返し部を有する蓄電素子であって、ターン部の外側において無機層が剥がれ難い蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
図2図2は、前記蓄電素子の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III位置における断面図である。
図4図4は、電極体を説明するための断面図である。
図5図5は、電極体を説明するための斜視図である。
図6図6は、負極の構成を説明するための図である。
図7図7は、セパレータの構成を説明するための図である。
図8図8は、つづら折り状態の負極及びセパレータの構成を説明するための斜視図である。
図9図9は、折り返し部を説明するための斜視図である。
図10図10は、電極体のターン部を説明するための断面模式図である。
図11図11は、正極の構成を説明するための図である。
図12図12は、他実施形態に係る電極体を説明するための斜視図である。
図13図13は、他実施形態に係る電極体のターン部を説明するための断面模式図である。
図14図14は、他実施形態に係る電極体のターン部を説明するための断面模式図である。
図15図15は、前記蓄電素子を備える蓄電装置の斜視図である。
図16図16は、従来の電池の積層構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、図1図12を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0019】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0020】
蓄電素子は、図1図5に示すように、長尺状(帯状)の長尺部材20を有する電極体2を備える。また、蓄電素子1は、電極体2を収容するケース3と、少なくとも一部が外部に露出した状態でケース3に取り付けられる外部端子4と、電極体2と外部端子4とを接続する集電体5と、電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材6等も備える。
【0021】
本実施形態の電極体2は、第一の電極21と極性の異なる第二の電極24を有する。また、本実施形態の電極体2では、第一の電極21は負極であり、第二の電極24は正極である。尚、各図においては、構造を示すために、電極体2を構成する電極等の厚さを誇張して表す等、電極体2の構成を模式的に表している。
【0022】
本実施形態の長尺部材20は、ターン部234で折り返した折り返し部23を有する。具体的に、長尺部材20は、複数の折り返し部23を有するつづら折り状態(蛇腹状)に折り畳まれている。換言すると、長尺部材20は、ターン部234を反対に向けた状態で隣り合う折り返し部23同士がその一部を共通させた状態で連続するつづら折り状態である。
【0023】
折り返し部23は、図8に示すように、谷折り面231及び山折り面232(即ち、谷折り面231と反対側の面)をそれぞれ有し且つ谷折り面231同士を対向させた一対の延在部233と、一対の延在部233の端部同士を接続するターン部234と、を含む。換言すると、折り返し部23は、ターン部234と、このターン部234の端縁から延びる一対の延在部233とを有する。尚、折り返し部23の内側には、正極24が配置されている。
【0024】
本実施形態の長尺部材20では、複数の折り返し部23が、一対の延在部233の延びる方向を揃えた状態で、一対の延在部233が並ぶ方向に並んで設けられる。一つの折り返し部(第一折り返し部)23Aに着目したときに、第一折り返し部23Aと、その隣(図8における後ろ側)の折り返し部(第二折り返し部)23Bとでは、第一折り返し部23Aのターン部234Aと、第二折り返し部23Bのターン部234Bとの間の延在部233A、233Bを共通させている。これにより、第一折り返し部23Aと第二折り返し部23Bとは、延在部233が延びる方向における反対側に配置されている。
【0025】
以下では、延在部233が並ぶ方向を直交座標系におけるX軸方向とし、延在部233が延びる方向(図8における左右方向)を直交座標系におけるY軸方向(第一方向)とし、ターン部234のターン軸Sの延びる方向を直交座標系のZ軸方向とする。
【0026】
複数のターン部234のそれぞれは、Z軸方向に延びるターン軸S周りでの長尺部材20が旋回(方向転換)している部位である。換言すると、複数のターン部234のそれぞれは、湾曲している部位である。本実施形態のターン部234は、長尺部材20の湾曲の開始位置Bより外側の部位である(図10参照)。
【0027】
本実施形態の一対の延在部233は、略平坦な形状をしている。また、本実施形態の一対の延在部233は、折り返し部23のうちターン部234を除く部位、換言すると、長尺部材20の湾曲の開始位置Bより内側の部位である。
【0028】
本実施形態の長尺部材20は、負極21と、負極21と長尺方向を揃えた状態で負極21に重ねられた長尺状のセパレータ22とを有する。また、上述のように、長尺部材20が、ターン部234で折り返した折り返し部23を有するため、本実施形態の折り返し部23は、負極21とセパレータ22とをターン部234で折り返すことで形成されることになる。
【0029】
負極21は、図6に示すように、金属箔211と、金属箔211の両面のそれぞれに重ねられる負極活物質層212と、を有する。即ち、負極21は、一つの金属箔211と一対の負極活物質層212とを有する。本実施形態の金属箔211は、例えば、銅箔である。この負極21は、長尺状(帯状)である。
【0030】
負極活物質層212は、負極活物質と、バインダーと、を有する。
【0031】
負極活物質は、例えば、グラファイト、難黒鉛化炭素、及び易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極活物質は、グラファイトである。
【0032】
負極活物質層212に用いられるバインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダーは、スチレンブタジエンゴムである。
【0033】
負極活物質層212は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層212は、導電助剤を有していない。
【0034】
負極21は、例えば、Y軸方向に延びる略平坦な電極延在部213と、湾曲した電極ターン部214とを有するつづら折り状態に折り畳まれている。電極延在部213と電極ターン部214とは、交互に連続して形成されている。具体的に、長尺な負極21は、図6に示す長手方向に所定間隔で交互に設定された山折り線21Aの位置と谷折り線21Bの位置とで山折りと谷折りとが交互に繰り返されることによって、つづら折り状態となる。即ち、負極21は、上述のように、電極延在部213と電極ターン部214とが交互に連続して形成されるつづら折り状態に折り畳まれる(図10参照)。
【0035】
電極ターン部214は、負極21のうちターン部234に対応する(ターン部234を構成する)部位である。また、電極ターン部214は、X軸方向において隣り合う電極延在部213の長尺方向の一端側の端部同士と他端側の端部同士とを交互に接続している。尚、電極ターン部214は、負極21のうち長尺部材20の湾曲の開始位置Bより外側の部位である。
【0036】
電極延在部213は、負極21のうち延在部233に対応する(延在部233を構成する)部位である。また、電極延在部213は、平行若しくは略平行に並んでいる。また、電極延在部213は、概ね、Y軸方向に長い矩形状である。尚、電極延在部213は、負極21のうち長尺部材20の湾曲の開始位置Bより内側の部位(負極21のうち電極ターン部214を除く部位)である。
【0037】
さらに、電極延在部213は、矩形状の電極延在部本体215と、電極延在部本体215の矩形状の輪郭を構成する一辺から突出する(本実施形態の例では、Z軸方向の端縁からZ軸方向に延びる)負極タブ216と、を有する(図6参照)。電極延在部本体215では、金属箔211の両面が負極活物質層212に覆われ、負極タブ216では、金属箔211が露出している。即ち、負極タブ216は、負極活物質層212を有していない。
【0038】
つづら折り状態の負極21において、各電極延在部本体215の負極タブ216は、X軸方向から見て重なっている。本実施形態の負極21では、各負極タブ216は、電極延在部本体215のZ軸方向の一方(図8における上側)の端縁におけるY軸方向の一方(図8における右側)の端部からZ軸方向に延びている。この複数の電極延在部本体215のそれぞれから延びている負極タブ216は、束ねられ、集電体5を介して外部端子4と接続されている(図3参照)。本実施形態の負極タブ216の束は、集電体5に溶接されている。
【0039】
セパレータ22は、負極21の一方の面に重ねられる長尺状の第一セパレータ22Aと、負極21の他方の面(一方の面と反対側の面)に重ねられる長尺状の第二セパレータ22Bとを有する(図10参照)。本実施形態のセパレータ22では、第一セパレータ22A及び第二セパレータ22Bは、それぞれ、別体として形成されている。また、本実施形態のセパレータ22では、第一セパレータ22Aの構成と、第二セパレータ22Bの構成とは同じである。
【0040】
第一セパレータ22Aは、長尺状(帯状)の部材であり、絶縁性を有する部材である。また、第一セパレータ22Aは、基材層221と無機酸化物を含有する無機層222とを有する。基材層221は、多孔質膜(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロース、ポリアミド等により形成される多孔質膜)である。無機層222は、SiO粒子、Al粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機酸化物で構成される無機粒子を含んだ無機塗工層である。
【0041】
第一セパレータ22Aは、例えば、Y軸方向に延びる略平坦な平坦部223と、湾曲した第一部位224及び第二部位225とを有するつづら折り状態に折り畳まれている。第一セパレータ22Aでは、平坦部223と第一部位224と平坦部223と第二部位225とで構成される組が連続して形成されている。
【0042】
具体的に、長尺な第一セパレータ22Aは、図7に示す長手方向に所定間隔で交互に設定された山折り線22Cの位置と谷折り線22Dの位置とで山折りと谷折りとが交互に繰り返されることによって、つづら折り状態となる。
【0043】
より具体的に、第一セパレータ22Aの基材層221は、長尺方向に連続している。また、第一セパレータ22Aの基材層221に対して、上述した無機酸化物で構成される無機粒子を含んだ無機材料を間欠的に塗工することにより、長尺方向において間欠的に隙間をあけた状態で、基材層221に無機層222が重ねられている。これにより、第一セパレータ22Aでは、無機層222が重ねられている面から視ると、基材層221と無機層222とが交互に露出している。
【0044】
山折り線22Cは、例えば、基材層221が露出した部位の長尺方向における中心線であり、谷折り線22Dは、無機層222が露出した部位の長尺方向における中心線である。長尺な第一セパレータ22Aにおける基材層221の露出した部位は、つづら折り状態の第一セパレータ22Aの平坦部223や第二部位225に相当する。長尺な第一セパレータ22Aにおける無機層222の露出した部位は、つづら折り状態の第一セパレータ22Aの第一部位224に相当する。
【0045】
第一セパレータ22Aの第一部位224は、第一折り返し部23Aのターン部234Aに対応する(このターン部234Aを構成する)部位である。また、この第一部位224は、第一折り返し部23Aの電極ターン部214において内側に重ねられている。また、この第一部位224は、電極ターン部214の内側に重ねられた第一セパレータ22Aのうち、長尺部材20の湾曲の開始位置Bより外側の領域である。
【0046】
また、第一セパレータ22Aの第一部位224は、基材層221及び無機層222を有する。具体的に、この第一部位224は、電極ターン部214の内側に配置された基材層221と、この基材層221の内側に配置された無機層222(正極24側に配置された無機層222)とを有する。この第一部位224の基材層221は、電極ターン部214の内側の全域に重ねられている。また、この第一部位224の無機層222は、この第一部位224の基材層221の内側の全域に重ねられている。
【0047】
第一セパレータ22Aの第二部位225は、第二折り返し部23Bのターン部234Bに対応する(このターン部234を構成する)部位である。また、この第二部位225は、第二折り返し部23Bの電極ターン部214において外側に重ねられている。また、この第一セパレータ22Aの第二部位225は、電極ターン部214の外側に重ねられた第一セパレータ22Aのうち、長尺部材20の湾曲の開始位置Bより外側の領域である。
【0048】
また、第一セパレータ22Aの第二部位225は、基材層221及び無機層222のうち少なくとも基材層221を有する。本実施形態の電極体2では、この第二部位225は、基材層221のみを有する。換言すると、この第二部位225の基材層221の外側のいずれの領域にも、無機層222は重ねられていない。これにより、この第二部位225の基材層221は、第二折り返し部23Bのターン部234Bの外側に向けて露出している(図8図9図10参照)。具体的に、この第二部位225の基材層221は、電極ターン部214の外側の全域に重ねられた状態で、ターン部234Bの外側に向けて露出している。
【0049】
第一セパレータ22Aの平坦部223は、延在部233に対応する(延在部233を構成する)部位である。また、この平坦部223は、平行若しくは略平行に並んでいる。また、この平坦部223は、概ね、Y軸方向に長い矩形状である。また、この平坦部223の無機層222は、正極24側に配置されている。尚、平坦部223は、第一セパレータ22Aのうち長尺部材20の湾曲の開始位置Bより内側の部位(第一セパレータ22Aのうち第一部位224及び第二部位225の両方を除く部位)である。
【0050】
本実施形態の電極体2では、第一セパレータ22Aは、電極延在部213及び正極24に挟まれる第三部位226を有する。第三部位226は、基材層221及び無機層222の両方を有する。また、第三部位226は、平坦部223(延在部233を構成する部位)の一部である。尚、この第三部位226は、第一セパレータ22Aのうち、正極24のY軸方向における両端縁よりも内側の領域である。
【0051】
第一セパレータ22Aの第三部位226は、第一折り返し部23Aに着目すると、電極延在部213の内側に重ねられた基材層221と、この基材層221の内側に重ねられた無機層222とを有する。また、第一セパレータ22Aの第三部位226は、第二折り返し部23Bに着目すると、電極延在部213の外側に重ねられた基材層221と、この基材層221の外側に重ねられた無機層222とを有する。
【0052】
第一セパレータ22Aの第三部位226の基材層221は、第三部位226の全域においてY軸方向に延びる。また、この第三部位226の無機層222が、第三部位226の全域においてY軸方向に延びるため、この第三部位226は、無機層222が途切れることによる段差を有していない。さらに、この第三部位226の基材層221の負極21の厚み方向における厚みは略均一であると共に、この第三部位226の無機層222の負極21の厚み方向における厚みも略均一である。そのため、この第三部位226の負極21の厚み方向における厚みは略均一である。尚、この第三部位226の負極21の厚み方向における厚みは略均一であるとは、この第三部位226の負極21の厚み方向における厚みが均一である場合に加えて、この第三部位226の負極21の厚み方向における厚みが製造誤差の範囲内で異なっている場合も含む。
【0053】
第二セパレータ22Bは、第一セパレータ22Aと同様に、長尺状(帯状)の部材であると共に、絶縁性を有する部材であり、基材層221及び無機層222を有する。また、第二セパレータ22Bは、第一セパレータ22Aと同様に、平坦部223と第一部位224及び第二部位225とを有するつづら折り状態に折り畳まれている。第二セパレータ22Bにおいても、平坦部223と第一部位224と平坦部224と第二部位224とで構成される組が、連続して形成されている。尚、長尺な第二セパレータ22Bの構成(つづら折りされる前の第二セパレータ22Bの構成)は、図7に示した第一セパレータ22Aの構成と同じであるため、この構成についての説明を省略する。
【0054】
第二セパレータ22Bの第一部位224は、第二折り返し部23Bのターン部234Bに対応する(このターン部234Bを構成する)部位である。また、この第一部位224は、第二折り返し部23Bの電極ターン部214において内側に重ねられている。また、この第一部位224は、電極ターン部214の内側に重ねられた第二セパレータ22Bのうち、長尺部材20の湾曲の開始位置Bより外側の領域である。また、第二セパレータ22Bの第一部位224は、第一セパレータ22Aの第一部位224と同様に、電極ターン部214の内側の全域に重ねられた基材層221と、この基材層221の内側の全域に重ねられた無機層222(正極24側に配置された無機層222)とを有する。
【0055】
第二セパレータ22Bの第二部位225は、第一折り返し部23Aのターン部234Aに対応する(このターン部234Aを構成する)部位である。また、この第二部位225は、第一折り返し部23Aの電極ターン部214の外側において重ねられている。さらに、この第二部位225は、電極ターン部214の外側に重ねられた第二セパレータ22Bのうち、長尺部材20の湾曲の開始位置Bより外側の領域である。この第二部位225は、基材層221のみを有するため、第二折り返し部23Bのターン部234Aの外側に向けて露出している(図8図9図10参照)。具体的に、この第二部位225の基材層221は、電極ターン部214の外側の全域に重ねられた状態で、ターン部234Aの外側に向けて露出している。
【0056】
第二セパレータ22Bの平坦部223は、延在部233に対応する(延在部233を構成する)部位であり、平行若しくは略平行に並んでいる。この平坦部223は、概ね、Y軸方向に長い矩形状である。この平坦部223は、基材層221及び無機層222の両方を有する。また、この平坦部223の無機層222は、正極24側に配置されている。尚、この平坦部223は、第二セパレータ22Bのうち長尺部材20の湾曲の開始位置Bより内側の部位(第二セパレータ22Bのうち第一部位224及び第二部位225の両方を除く部位)である。
【0057】
本実施形態の電極体2では、第二セパレータ22Bは、電極延在部213及び正極24に挟まれた第三部位226であって、基材層221及び無機層222の両方を有する第三部位226を有する。第三部位226は、平坦部223(延在部233を構成する部位)の一部である。尚、この第三部位226は、第二セパレータ22Bのうち、正極24のY軸方向における両端縁よりも内側の領域である。
【0058】
第二セパレータ22Bの第三部位226は、第一折り返し部23Aに着目すると、電極延在部213の外側に重ねられた基材層221と、この基材層221の外側に重ねられた無機層222とを有する。また、第二セパレータ22Bの第三部位226は、第二折り返し部23Bに着目すると、電極延在部213の内側に重ねられた基材層221と、この基材層221の内側に重ねられた無機層222とを有する。
【0059】
第二セパレータ22Bの第三部位226の基材層221及び無機層222は、第三部位226の全域においてY軸方向に延び、この第三部位226は、無機層222が途切れることによる段差を有していない。また、この第三部位226の基材層221及び無機層222の負極21の厚み方向における厚みは、それぞれ均一であるため、この第三部位226の負極21の厚み方向における厚みは均一である。
【0060】
以上の構成により、第一セパレータ22Aや第二セパレータ22Bは、負極21と正極24との間に配置される。これにより、電極体2において、負極21と正極24とが互いに絶縁される。
【0061】
また、第一セパレータ22A及び第二セパレータ22Bは、いずれも、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、第一セパレータ22Aや第二セパレータ22Bを挟んで対向する負極21と正極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0062】
正極24は、図11に示すように、金属箔241と、金属箔241の両面にそれぞれ重ねられる正極活物質層242と、を有する。即ち、正極24は、一つの金属箔241と一対の正極活物質層242とを有する。本実施形態の金属箔241は、例えば、アルミニウム箔である。この正極24は、折り返し部23の外側に配置されている。換言すると、正極24は、つづら折り状態の長尺部材20(負極21及びセパレータ22)において、X軸方向に隣り合う延在部233間のそれぞれに配置されている。このため、本実施形態の電極体2は、複数の正極24を有している。具体的に、正極24のY軸方向における端縁のうちターン部234に覆われていない端縁は、この正極24と隣り合う折り返し部23のターン部234のY軸方向における端縁よりも、Y軸方向における内側に位置する(図10参照)。
【0063】
正極活物質層242は、正極活物質と、バインダーと、を有する。
【0064】
本実施形態の正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、LiaMebOc(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(LiaCoyO、LiaNixO、LiaMnzO、LiaNixCoyMnzO等)、LiaMeb(XOc)d(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiaFebPO、LiaMnbPO、LiaMnbSiO、LiaCobPOF等)である。本実施形態の正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3である。
【0065】
正極活物質層242に用いられるバインダーは、負極活物質層212に用いられたバインダーと同様のものである。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0066】
正極活物質層242は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の正極活物質層242は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
【0067】
具体的に、複数の正極24のそれぞれは、矩形状の正極本体243と、正極本体243の矩形状の輪郭を構成する一辺から突出する(本実施形態の例では、Z軸方向の端縁からZ軸方向に延びる)正極タブ244と、を有する。本実施形態の正極本体243は、Y軸方向に長い矩形状である。正極本体243では、金属箔241の両面が正極タブ244側の端部を残して正極活物質層242に覆われ、正極タブ244では、金属箔241が露出している。即ち、正極タブ244は、正極活物質層242を有しない。
【0068】
正極本体243における正極活物質層242は、X軸方向に対向する(詳しくは、セパレータ22を介して対向する)延在部233の負極活物質層212よりY-Z面(Y軸とZ軸とを含む平面)方向において小さい。即ち、正極本体243の正極活物質層242は、全域において延在部233の負極活物質層212と対向し、延在部233の負極活物質層212は、周縁部を除いた領域において正極本体243の正極活物質層242と対向する。
【0069】
本実施形態の電極体2において、各正極24の正極タブ244は、X軸方向から見て重なっている。本実施形態の正極24では、各正極タブ244は、正極本体243のZ軸方向の一方(図5における上側)の端縁におけるY軸方向の他方(電極延在部本体215に対する負極タブ216の位置とは反対側:図5における左側)の端部からZ軸方向に延びている。この複数の正極本体243のそれぞれから延びている正極タブ244は、束ねられ、集電体5を介して外部端子4と接続されている。本実施形態の正極タブ244の束は、負極タブ2332の束と同様に、集電体5に溶接されている(図3参照)。
【0070】
図1図3に戻り、ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。このケース3では、ケース本体31と蓋板32とによって内部空間が画定される。ケース3は、この内部空間に、電極体2と共に電解液を収容する。
【0071】
この電解液は、非水溶液系電解液である。詳しくは、電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO、LiBF、及びLiPF等である。本実施形態の電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPFを溶解させたものである。
【0072】
ケース3は、上記の電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0073】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0074】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁部となる)部位である。本実施形態の閉塞部311は、矩形状である。
【0075】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、X軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0076】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。このケース本体31には、折り返し部23の延在部233が長壁部313と平行(略平行)となる(即ち、各ターン部234が短壁部314と対向する)ように、電極体2が収容される(図4参照)。
【0077】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ部材である。この蓋板32の輪郭形状は、ケース本体31の開口周縁部310(図2参照)に対応した形状である。即ち、蓋板32は、Y軸方向に長い矩形状の板材である。
【0078】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。このため、外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。また、外部端子4は、溶接性の高い金属材料によって形成される。例えば、正極の外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成され、負極の外部端子4は、銅又は銅合金等の銅系金属材料によって形成される。本実施形態の外部端子4は、少なくとも一部がケース3の外部に露出した状態で蓋板32に取り付けられる。
【0079】
絶縁部材6は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。具体的に、絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって蓋板32側が開口した袋状に形成されている(図2参照)。本実施形態の絶縁部材6は、ケース本体31に沿った形の袋状である。この袋状の絶縁部材6には、折り返し部23の延在部233及び正極24が絶縁部材6における長壁部313と対応する部位(X軸方向に対向する壁状の部位)と略平行となり、各ターン部234が絶縁部材6における短壁部314と対応する部位(Y軸方向に対向する壁状の部位)と対向するように、電極体2が収容される。
【0080】
以上の蓄電素子1によれば、第二部位225では、無機層222がなく、基材層221がターン部234の外側に向けて露出しているため、ターン部234の外側において無機層222の剥がれを抑えることができる。本実施形態の電極体2では、ターン部234の全域において無機層222が存在しないため、ターン部234の外側において無機層222が剥がれにくい。
【0081】
ところで、第三部位255(第一折り返し部23Aの電極延在部213と第一折り返し部23Aの外側に配置される正極24(第二折り返し部23Bの内側に配置される正極24)との間に挟まれる第三部位255、及び、第二折り返し部23Bの電極延在部213と第二折り返し部23Bの外側に配置される正極24(第一折り返し部23Aの内側に配置される正極24)との間に挟まれる第三部位255)において、無機層222が途切れることによる段差が存在すると仮定すると、このような段差に圧力が集中するおそれがある。これに対して、本実施形態の電極体2では、無機層222が第三部位226の全域に存在することにより、第三部位226に無機層222の段差(無機層222が途切れることによる段差)が存在しない。そのため、蓄電素子1に圧力がかかったとしても、正極24にかかる圧力がY軸方向の全域において均一になる。
【0082】
さらに、正極24がオレフィン等で形成される基材層221と対向すると、基材層221が酸化されるおそれがある。これに対して、本実施形態の電極体2では、平坦部223及び第一部位224の全域(折り返し部23の内側の全域)において、正極24側(正極24と基材層221との間)に無機層222が配置されている。換言すると、平坦部223及び第一部位224の全域(折り返し部23の内側の全域)において、基材層221と正極24とは対向していない。そのため、正極24と基材層221とが対向することに起因する基材層221の酸化を防止できる。
【0083】
また、第一部位224の正極24側に無機層222が配置されている蓄電素子1(第一部位224の内側において無機層222が露出している蓄電素子1)では、負極21の厚み方向(X軸方向)において蓄電素子1に圧力がかかると、第一部位224の内側において無機層222が剥がれ落ちて正極24と第三部位の無機層222との隙間に入り込み、この入り込んだ無機層222の破片が、Y軸方向における移動を経て、電極体2の外部に移動するおそれがあった。これに対して、本実施形態の蓄電素子1では、上述のように、正極24にかかる圧力はY軸方向の全域において均一になるため、第一部位224の内側において無機層222が剥がれた場合であっても、第三部位226と正極24との間に隙間が生じにくく、この無機層222の破片が電極体2の外部に移動することを抑制できる。
【0084】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0085】
上記実施形態の電極体2では、第二部位225の基材層221(ターン部234を構成する基材層221)の外側のいずれの領域にも無機層222が重ねられていなかったが、第二部位225の基材層221(ターン部234を構成する基材層221)の外側の少なくとも一部の領域に無機層222が重ねられていてもよい。また、上記実施形態の電極体2では、第二部位225の基材層221(ターン部234を構成する基材層221)が負極21の外側に重ねられていたが、第二部位225の無機層222が負極21の外側に重ねられると共に、この第二部位225の無機層222の外側に第二部位225の基材層221が配置されていてもよい。換言すると、基材層221と負極21との間に無機層222が配置されていてもよい。さらに、このような場合においても、ターン部234を構成する基材層221の外側の少なくとも一部の領域に無機層222が重ねられていてもよい。このような場合であっても、第二部位225の少なくとも一部には無機層222がないことにより、第二部位225の基材層221がターン部234の外側に向けて露出しているため、ターン部234の外側において無機層222が剥がれることを抑制できる。
【0086】
上記実施形態の長尺部材20は負極21とセパレータ22とを有していたが、長尺部材20はセパレータ22のみを有していてもよく、折り返し部23はセパレータ22のみをターン部234で折り返して形成されてもよい。
【0087】
この場合、電極体2は、図12及び図13に示すように、長尺状のセパレータ22(セパレータ22のみで構成される長尺部材20)をターン部234で折り返した折り返し部23を有してもよい。この場合、電極体2は、第一折り返し部23Aの内側に配置される負極21(第二折り返し部23Bの内側に配置される負極21)と、第二折り返し部23Bの内側に配置される正極24(第一折り返し部23Aの外側に配置される正極24)とを有してもよい。この場合においても、セパレータ22は、基材層221と無機層222とを有し、ターン部234では、基材層221がターン部234の外側に向けて露出していればよい。
【0088】
この構成においても、ターン部234の外側には無機層がなく、基材層221がターン部234の外側に向けて露出しているため、ターン部234の外側において無機層222の剥がれを抑えることができる。
【0089】
また、この場合、基材層221及び無機層222が、セパレータ22の延在部233の全域において延びていてもよい。仮に、延在部233に無機層222の段差が存在すると、X軸方向において蓄電素子1に圧力がかかった場合に、この段差に圧力が集中するおそれがあった。これに対して、折り返し部23は、ターン部234の端縁からY軸方向にそれぞれ延びる一対の延在部233を有すると共に、該一対の延在部233の延びる方向を揃えた状態でX軸方向に複数並んで設けられていてもよい。この場合、基材層221の延在部233を構成する部位は、該延在部233の全域においてY軸方向に延びていてもよい。また、無機層222の延在部233を構成する部位は、該延在部233の全域においてY軸方向に延びていてもよい。この構成では、無機層222が延在部233の全域に存在することにより、延在部233に無機層222の段差が存在しないため、蓄電素子1に圧力がかかっても、圧力が集中することがなく、正極24にかかる圧力はY軸方向の全域において均一になる。
【0090】
さらに、上述のように、ターン部234の内側で無機層222が露出している蓄電素子1では、X軸方向において蓄電素子1に圧力がかかると、ターン部234の内側において無機層222が剥がれ落ちて、この剥がれ落ちた無機層222が電極体2の外部に移動するおそれがあった。これに対して、この構成では、無機層222が延在部233の全域に存在することにより、延在部233に無機層222の段差が存在しないことで、正極24にかかる圧力はY軸方向の全域において均一になるため、ターン部234の内側において無機層222が剥がれた場合であっても、延在部233と正極24との間に隙間が生じにくく、この剥がれた無機層222が電極体2の外部に移動することを抑制できる。
【0091】
この構成では、セパレータ22の延在部233が、基材層221の内側及び外側に無機層222が重ねられた三層構造であり、セパレータ22のターン部234は、基材層221の内側のみに無機層222が重ねられた二層構造である(図13参照)。しかしながら、セパレータ22の延在部233やターン部234は、別の構成であってもよい。
【0092】
例えば、セパレータ22のターン部234は、基材層221の内側の全域及び外側の一部に無機層222が重ねられた三層構造であってもよい。この構成であっても、ターン部234の少なくとも一部には無機層222がないことにより、基材層221がターン部234の外側に向けて露出しているため、ターン部234の外側において無機層222の剥がれを抑えることができる。
【0093】
また、例えば、正極24を挟むセパレータ22の延在部233が、基材層221の内側(基材層221の正極24側)に無機層222が重ねられた二層構造であると共に、負極21を挟むセパレータ22の延在部233が、基材層221の外側(基材層221の負極21と反対側)に無機層222が重ねられた二層構造であってもよい。この構成では、負極21を挟むセパレータ22の延在部233が二層構造であるため、三層構造である場合と比べて、電極体2の薄型化を図れる。
【0094】
上記実施形態の電極体2では、第一セパレータ22A及び第二セパレータ22Bは、それぞれ別体として形成されていたが、これらが一体として形成されていてもよい。具体的に、長尺部材20は、長尺状のセパレータ22を長尺方向の中心位置で折り曲げたものと、セパレータ22の折り曲げ部に端縁が当たった状態でセパレータ22の内側に配置された負極21とを有してもよい。この場合、セパレータ22は、負極21の一方の面を覆うと共に、負極21の端縁を覆うように延び、且つ、負極21の他方の面を覆ってもよい。また、長尺部材20は、袋状のセパレータ22と、セパレータ22に収容される負極21とを有してもよい。
【0095】
さらに、上記実施形態の電極体2では、長尺状の第二セパレータ22Bの構成は、長尺状の第一セパレータ22Aの構成と同じであったが、これらの構成は異なっていてもよい。これらの構成を異ならせることで、例えば、第一セパレータ22Aと第二セパレータ22Bとで、第一部位224、第二部位225、及び、第三部位226等の構成を異ならせることができる。
【0096】
上記実施形態の電極体2では、第一セパレータ22Aの基材層221に対して、無機材料を間欠的に塗工していたが、この代わりに、第一セパレータ22Aの基材層221の全域に対して無機材料を塗工した後に、無機塗工層を間欠的に取り除いてもよい。この場合においても、第一セパレータ22Aの基材層221に対して、長尺方向において間欠的に隙間をあけた状態で、無機層222を重ねることができる。
【0097】
また、上記実施形態の電極体2では、正極24のY軸方向における端縁のうちターン部234に覆われていない端縁は、この正極24と隣り合う折り返し部23のターン部234のY軸方向における端縁と比較して、Y軸方向における内側に位置していたが、Y軸方向における外側に位置していてもよい。さらに、正極24のY軸方向における端縁のうちターン部234に覆われていない端縁の位置は、この正極24と隣り合う折り返し部23のターン部234のY軸方向における端縁の位置と、Y軸方向において揃っていてもよい。
【0098】
上記実施形態の蓄電素子1では、負極21及びセパレータ22を有する長尺部材20がつづら折り状態で、正極24が枚葉状(短冊状)であるが、この構成に限定されない。正極24及びセパレータ22を有する長尺部材20がつづら折り状態で、負極21が枚葉状であってもよい。また、セパレータ22を有する長尺部材20や負極21とセパレータ22とを有する長尺部材20は、つづら折り状態でなくてもよく、少なくとも一つの折り返し部23を有していればよい。具体的に、図14に示すように、負極21及びセパレータ22を有する長尺部材20が互いに離間した複数の折り返し部23を有し、各折り返し部23の外側及び各折り返し部23の内側に正極24を配置してもよい。この場合、ターン部234の外側には無機層がなくてもよく、基材層221がターン部234の外側に向けて露出していてもよい。これにより、ターン部234の外側において無機層222が剥がれることを防止できる。
【0099】
また、この構成では、ターン部234がY軸方向における反対側に並ぶよう、折り返し部23が配置されているが、ターン部234がY軸方向における同じ側に並ぶよう、折り返し部23が配置されていてもよい。
【0100】
さらに、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0101】
蓄電素子(例えば電池)1は、図15に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【符号の説明】
【0102】
1…蓄電素子、2…電極体、20…長尺部材、21…負極、第一の電極、21A、22C…山折り線、21B、22D…谷折り線、211…金属箔、212…負極活物質層、213…電極延在部、214…電極ターン部、215…電極延在部本体、216…負極タブ、22…セパレータ、22A…第一セパレータ、22B…第二セパレータ、221…基材層、222…無機層、223…平坦部、224…第一部位、225…第二部位、226…第三部位、23…折り返し部、23A…第一折り返し部、23B…第二折り返し部、231…谷折り面、232…山折り面、233、233A、233B…延在部、234…ターン部、S…ターン軸、24…正極、第二の電極、3…ケース、31…ケース本体、310…開口周縁部、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、4…外部端子、5…集電体、6…絶縁部材、11…蓄電装置、12…バスバ部材、102…電極体、121…負極・セパレータ圧着体、122…正極、123…セパレータ、124…負極体、B…湾曲の開始位置
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