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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】再生キトサンを含む有機物凝集用組成物
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20220512BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
B01D21/01 107
C08B37/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017148715
(22)【出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2019026763
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391003130
【氏名又は名称】甲陽ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公彦
(72)【発明者】
【氏名】黒住 誠司
(72)【発明者】
【氏名】清瀬 正敏
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-045299(JP,A)
【文献】特開平02-090903(JP,A)
【文献】特表2014-505588(JP,A)
【文献】特開2000-288572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/
B01D 21/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生キトサンを含むリノール酸凝集用組成物
【請求項2】
再生キトサンを含むアルデヒド類凝集用組成物
【請求項3】
再生キトサンを含むオレイン酸凝集用組成物
【請求項4】
再生キトサンを含む直接染料凝集用組成物
【請求項5】
再生キトサンを含むアルデヒド凝集用組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生キトサンを含む有機物凝集用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キトサンは、キチンから濃アルカリにより脱アセチル化して得られる多糖類である。これまで、抗菌性、各種生理活性などの機能性を持った素材として、農業分野から医療分野まで多岐にわたり利用されている。
また、キトサンは、生分解性、徐放性等の機能を有することが知られており、抗菌材料や医用材料、化粧品材料、食品添加材、分離材料、農業資材、シート材料、水処理材等の幅広い分野において利用が期待されている。
【0003】
キトサンは、水に不溶であり、溶解性を得るために、酸性水溶液に溶解する必要がある。このような観点から、水への分散性が高く、長時間室温で保存することができる再生キトサンが知られている(特許文献1)。
再生キトサンは、キトサンのみでゲル化することができ、未再生キトサンとは異なり、ゲル化のためにキトサン以外の物質を必要としないので、安全性に優れ、特に食品添加剤や化粧品材料、医用材料として利用できることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-176584号公報
【文献】特開2006-045299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い有機物凝集(吸着)能を有する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、再生キトサンが、未再生キトサンよりも高い有機物凝集能を有することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下を含む。
1.再生キトサンを含む有機物凝集用組成物。
2.前記有機物が脂質である、前項1に記載の組成物。
3.前記有機物が染料である、前項1に記載の組成物。
4.前記有機物がアルデヒド類である、前項1に記載の組成物。
5.前記脂質がオレイン酸である、前項2に記載の組成物。
6.前記染料が直接染料である、前項3に記載の組成物。
7.前記アルデヒド類がアセトアルデヒドである、前項4に記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、従来の未再生キトサンと比較して、高い有機物凝集能を有する。より詳しくは、従来の未再生キトサンと比較して、脂質、染料及びアルデヒド類等の有機物の凝集能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例2における凝集状態の観察結果。左から順にブランク実験1、2、3及び4の結果を示す。
図2】実施例2における凝集状態の観察結果。左から順に比較例1、2、3及び4の結果を示す。
図3】実施例2における凝集状態の観察結果。左から順に実施例2-1、2-2、2-3及び2-4の結果を示す。
図4】実施例2における脂質凝集能(%)の評価結果。縦軸は脂質凝集能(%)、横軸は各種キトサン添加量(g)を示す。**はp<0.01を示し、*p<0.05を示す。
図5】実施例2における各種キトサン1gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)の評価結果。縦軸は各種キトサン1gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)、横軸は各種キトサン添加量(g)を示す。**はp<0.01を示す。
図6】実施例3の2.各種キトサンの直接染料凝集能の検討における上清の性状観察の結果。上段はキトサン代替品としてのろ紙、中段は未再生キトサン、下段は再生キトサンの結果を示す。左から順に、直接染料の添加量2、4、6、8、10 mlの結果を示す。
図7】実施例3の2.各種キトサンの直接染料凝集能の検討における上清染料濃度の結果。
図8】実施例3の2.各種キトサンの直接染料凝集能の検討における直接染料凝集能(g/g chitosan)の結果。
図9】実施例4におけるアセトアルデヒド残存濃度(ppm)の経時変化の結果。
図10】実施例4におけるアセトアルデヒド残存率(%)の経時変化の結果。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(使用するキトサン)
再生キトサンの製造に使用するキトサンは、自体公知のキトサンを使用することができる。例えば、脱アセチル化率(DAC度)が50~100%程度のものが使用され、好ましくは80~100%である。また、重量平均分子量(標準品にプルランを用いGPC分子量測定により算出)が1万~400万程度のものが使用され、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下である。
粘度は、20℃において0.5%W/W溶液粘度が1~400mPa・s、より好ましくは300mPa・s以下、さらに好ましくは200mPa・s以下である。
【0011】
キトサンは、その特性により、低粘度キトサン(DAC度 80%以上、1.0%粘度15mPa・s以下)、中粘度キトサン(DAC度 80%以上、0.5%粘度10~100mPa・s)、及び高粘度キトサン(DAC度 80%以上、0.5%粘度100mPa・s以上)に分類される。
本発明の再生キトサンの製造に使用するキトサンは、上記いずれのキトサンも使用することができる。
【0012】
(再生キトサン)
本発明において、再生キトサンは、キトサン分子鎖が結晶構造により接合した接合領域(結晶構造の領域)と接合していないほぐれた領域(非結晶の領域)とを有する状態のキトサンを意味する。
再生キトサンは、通常のキトサンを酸性水溶液に溶解して得たキトサン水溶液に、アルカリ性水溶液を攪拌しながら注ぎ込むことによりアルカリ中和して、析出させることにより得られる。アルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム等を使用することができる。
再生キトサンは、酸性水溶液に溶解していたキトサンがアルカリ中和によって再び結晶構造をとるために溶液中に析出する。析出した再生キトサンの結晶化度や配向性は、酸性水溶液に溶解する前の結晶キトサンより低下しており、キトサン分子鎖が部分的に水和結晶構造により接合しており、その他の部分はキトサン分子鎖が結晶構造をとっていない状態である。
【0013】
(再生キトサンの脱水ケーキ)
再生キトサンは、ろ過や遠心分離により回収して水洗する。繊維状の水和結晶再生キトサンはろ過により容易に回収できる。ろ過により回収が困難な粒子状の水和結晶再生キトサンの場合は遠心分離により回収する。水洗は、ろ過の場合はろ液が中性(pH5.0~pH9.0、好ましくはpH5.8~pH8.5)、塩濃度(アルカリ中和のアルカリ性水溶液として水酸化ナトリウムを用いた場合は、Na濃度)200ppm以下、好ましくは100ppm以下になるまで、遠心分離の場合は上清が中性、前記塩濃度になるまで行う。水洗後にろ過や遠心分離により脱水する。
以上の操作により、再生キトサンの脱水ケーキが得られる。
再生キトサンの脱水ケーキの水分は、特に限定されないが、例えば、0%~99.9%、30%~99%、50%~99%、60%~95%、75~95%又は80%~90%であってもよい。
再生キトサンのキチン含有率は、特に限定されないが、例えば、0.1%~99.9%、1%~50%、1%~30%、5%~25%又は10%~20%であってもよい。
【0014】
(再生キトサン分散液)
再生キトサンは、水への分散性が高い。
再生キトサンの脱水ケーキに、水を添加し、ブレンダー、ホモジナイザー等で撹拌することで、再生キトサン分散液が得られる。再生キトサンは、該分散液中でゾル状態である。
再生キトサン分散液の再生キトサン濃度は、特に限定されないが、例えば、0.01%~10%、0.1%~5.0%又は0.25%~2.5%であってもよい。
再生キトサン分散液の再生キトサン濃度は、分散液の蒸発残留物(水中に浮遊又は溶解して含まれるものを蒸発乾固して得られる総量)を測定することにより得られる。例えば、約10gの分散液を秤量し、110℃で3時間乾燥させ、デシケーターで1時間放冷後、乾燥物の重量を測定する。乾燥物重量/分散液重量×100から再生キトサン濃度(%)を求める。
再生キトサン分散液のpHは、特に限定されないが、pH4.0~pH8.5が好ましい。
【0015】
(再生キトサンを含む有機物凝集用組成物)
本発明の再生キトサンを含む有機物凝集用組成物(「本発明の組成物」と称する場合がある)は、有機物を凝集することができる。
より詳しくは、本発明の組成物は、従来の未再生キトサンと比較して、脂質、染料及びアルデヒド類等の有機物の凝集能に優れる。
本発明の再生キトサンを含む有機物凝集用組成物は、医薬品、医薬部外品、食品、飲料、化粧品、食品添加物、繊維製品、繊維処理剤、消臭剤、洗剤、入浴剤、衛生用品等に配合される成分として好適に利用することができる。
【0016】
(脂質)
本発明の組成物により凝集される脂質は、特に限定されないが、例えば、脂肪酸、コレステロール、中性脂肪、リン脂質等が挙げられる。脂肪酸は、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸を含む。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。
【0017】
(染料)
本発明の組成物により凝集される染料は、特に限定されないが、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料等が挙げられる。
【0018】
(アルデヒド類)
本発明の組成物により凝集されるアルデヒド類は、特に限定されないが、例えば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトン等が挙げられる。
【0019】
(再生キトサン含有量)
本発明の組成物の再生キトサン含有量(乾燥重量)は、特に限定されないが、例えば、0.1mg/g~1000mg/g、100mg/g~1000mg/g、200mg/g~900mg/g、300mg/g~900mg/g、1mg/g~500mg/g、0.1mg/g~5mg/g、50mg/g~150mg/g、250mg/g~500mg/g、500mg/g~1000mg/g、700mg/g~950mg/g又は950mg/g~1000mg/gであってもよい。
本発明の組成物を食品の成分とする場合、例えば、食品1gあたり、以下の範囲より選択される量を含めることができる。
再生キトサン乾燥重量:0.1mg/g食品~1000mg/g食品、0.1mg/g~5mg/g、0.4mg/g~0.8mg/g、50mg/g~150mg/g又は60mg/g~140mg/g。
【0020】
本発明の組成物は、食品に配合される場合、一般の加工食品のほかに、健康食品、機能性食品、濃厚流動食、栄養補助食品、飲料および食品を含む飲食物、または、これらの添加物とすることができる。
本発明の組成物は、前記の再生キトサン含有量となるように食品の原材料に対して配合することにより、液状、ゲル状、粉末状、顆粒状、丸剤、錠剤あるいは固形状等の食品の形態とすることができる。
【0021】
(再生キトサンの製造方法)
本発明の再生キトサンの製造方法を以下に説明する。
(1)キトサンを酸性水溶液に溶解する。
キトサンの溶解濃度は、特に限定されないが、酸性水溶液に対して0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~8重量%溶解する。
酸性水溶液としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、塩酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸等が挙げられ、好ましくは酢酸である。酸の濃度は、特に限定されないが、酢酸を用いる場合、キトサン水溶液における終濃度は0.03重量%~10重量%、好ましくは0.15重量%~5重量%、より好ましくは0.3重量%~3重量%である。
(2)得られたキトサン水溶液に塩基性物質を添加し、水溶液をアルカリ中和して、再生キトサンを析出させる。
アルカリ中和は、0.15時間~24時間、好ましくは0.3時間~3時間かけて撹拌しながら行う。
アルカリ中和後のpHは、pH7以上、好ましくはpH8以上、より好ましくはpH9以上である。
塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムである。
塩基性物質は、水溶液、固体であってもよいが、好ましくは水溶液である。水溶液の場合、塩基性物質の濃度は特に限定されないが、0.1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~10重量%である。
(3)析出した再生キトサンを分散させる。
キトサンを分散させる方法としては、例えば、キトサン水溶液をホモミクサー等のミキサーで撹拌及び/又はホモジナイズする。撹拌速度及び時間は、5,000rpm~15,000rpmで1分~1時間、好ましくは9,000rpm~12,000rpmで5分~10分である。
(4)再生キトサンを水洗し、再生キトサンの脱水ケーキを得る。
水洗方法は、(3)で得られたキトサン分散液に含まれる塩を取り除くことができれば特に限定されないが、例えば、水、好ましくは25℃~90℃に加熱した水を添加し、遠心(例えば、遠心脱水機)又は濾過により脱水する。この操作を1回以上、好ましくは3回~10回繰り返す。この場合、脱水により取り除かれた水溶液が、塩濃度0.1%以下、好ましくは0.01%以下、pH9.0以下、好ましくはpH8.5以下となればよい。
本工程で得られる再生キトサンの脱水ケーキは、ポリ瓶、ガラス瓶、袋等の耐熱性の容器に入れ、容器ごと70℃~100℃、好ましくは75℃~90℃で30分以上の温水加熱、又は、110~130℃で10~60分のオートクレーブ滅菌をし、密封状態で安定に保存することができる。
(5)再生キトサン分散液を調製する。
再生キトサン分散液は、再生キトサンの脱水ケーキに溶液を添加し、撹拌することにより得られる。使用する溶液は、再生キトサンを分散できれば特に限定されないが、水、脱イオン水、超純水等である。
撹拌する時間は、再生キトサンが分散状態となれば、特に限定されないが、1分~1、5分~12時間、5分~6時間、5分~3時間、10分~1時間又は20分~40分である。
再生キトサン分散液の再生キトサン濃度は、特に限定されないが、例えば、0.01%~10%、0.1%~5.0%又は0.25%~2.5%であってもよい。
本工程で得られる再生キトサン分散液は、ポリ瓶、ガラス瓶、袋等の耐熱性の容器に入れ、容器ごと70℃~100℃、好ましくは75℃~90℃で30分以上の温水加熱、又は、110~130℃で10~60分のオートクレーブ滅菌をし、密封状態で安定に保存することができる。
【0022】
(再生キトサンの有機物凝集能)
本発明の再生キトサンは、有機物凝集能を有する。
より詳しくは、本発明の再生キトサンは、以下の有機物凝集能を有する。
(1)脂質凝集能
本発明の再生キトサンは、脂質凝集能を有する。
本発明の再生キトサン1gあたりの脂質凝集重量は、特に限定されないが、例えば、1.00g以上、5.00g以上、5.67g~35.20g、5.00g~36.00g、6.10g~36.00g、10.00g~36.00g、10.13g~35.20g又は15.0g~36.00gであってもよい。
(2)染料凝集能
本発明の再生キトサンは、染料凝集能を有する。
本発明の再生キトサン1gあたりの染料凝集重量は、特に限定されないが、例えば、1.00g以上、10.00g以上、14.29g以上、10.00g~20.00g、14.60g~20.00g、14.0g~16.0g、14.29g~14.78g又は14.65g~14.78gであってもよい。
(3)アルデヒド類凝集能
本発明の再生キトサンは、アルデヒド類凝集能を有する。
本発明の再生キトサン1gあたりのアルデヒド類凝集量は、特に限定されないが、例えば、1ppm以上、10ppm以上、15ppm以上、14.2ppm~30ppm、又は20ppm~30ppmであってもよい。
本発明の再生キトサンは、上記(1)~(3)の3つの凝集能のうち、少なくとも1つの凝集能を有し、好ましくは2つ以上の凝集能を有し、より好ましくは3つ全ての凝集能を有する。
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
<再生キトサン及び再生キトサン分散液の調製>
[再生キトサンの調製]
以下の方法により、再生キトサンを調製した。
(1)キトサンFM-80(DAC度 80%以上、0.5%粘度10~100mPa・s:甲陽ケミカル株式会社製)100 gを脱イオン水1867 g及び酢酸33 gに溶解し、5%キトサン溶液とした。
(2)5%キトサン溶液に、5%NaOH水溶液を約500g添加し、pH9以上となるように中和した。その結果、沈殿が生成した。
(3)ホモミクサー(MARK-2 Model 2.5、PRIMIX社製)で9000~12000 rpm、5~10分間ホモジナイズし、沈殿をコロイド状に分散させた。
(4)沈殿をコロイド状に分散させた液に、加熱した水約2Lを加え、遠心脱水機(MYWAVE SuperSpinDry3.0、ケーズウェーブ社製)で2800 rpm、5分間遠心し、水分を除去した。この作業を6回繰り返し、Na濃度0.01%以下(実測:100ppm)、pH8.5以下(実測7.81)とした。Na濃度は、コンパクトイオンメータ C-122(ナトリウムイオンメータ、HORIBA社製)で測定した。
(5)これにより、再生キトサンの脱水ケーキを得た(重量:624g、水分:84.3%、キチン含有率:15.7%)。
【0025】
[再生キトサン分散液の調製]
以下の方法により、再生キトサン分散液を調製した。
(1)上記で調製した再生キトサンの脱水ケーキに脱イオン水を加え、スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散し、2.5%分散液200 gを調製した。
(2)(1)の分散液から終濃度0.25%、0.5%、1.0%の希釈液を作製した。
【実施例2】
【0026】
<再生キトサンの脂質凝集能の評価>
以下の方法により、再生キトサンの脂質凝集能を評価した。
【0027】
[実施例2-1]
(1)実施例1で調製した再生キトサンの脱水ケーキ2.0 g(乾物換算重量:0.05 g)に、脱イオン水を加えて全量20 g(再生キトサン終濃度0. 25 w/w%)に調製した。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、脂質としてオレイン酸(関東化学社製)を5 g添加し、さらに1時間撹拌分散した。
(3)(2)の後、凝集状態を観察した。
(4)直径60mmブフナロート及びフィルターとしてのろ紙(No.6、直径55mm、ADVANTEC製)を用いて吸引ろ過した。
(5)(4)で得られた、フィルターとしてのろ紙上の残渣に脱イオン水5 mLを上からふりかけ、吸引ろ過した。
(6)(5)で得られた、フィルターとしてのろ紙上の残渣にヘキサン(関東化学社製)5 mLを上からふりかけ、吸引ろ過した。
(7)フィルターとしてのろ紙上の残渣をかき取り(ヘキサンをかけているので残渣はフィルターとしてのろ紙からきれいに剥がれる)、磁性るつぼに採取した。
(8)残渣を入れたるつぼをホットプレート(HTP453AA、ADVANTEC社製)を用いて150~180℃で2時間加熱し、残渣を乾固した。
(9)乾固後の残渣重量を測定した。
(10)脂質凝集能(%)(計算式:「測定した残渣重量(g)/キトサン添加量(g)」-後述の「ブランク実験1」で算出した脂質凝集能(%)のブランク)及びキトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)(計算式:「{測定した残渣重量(g)-キトサン添加量(g)}/添加したオレイン酸重量(5g)×100」-後述の「ブランク実験1」で算出した脂質凝集重量のブランク)を評価した。
(1)~(10)は独立して3回行った。結果は、平均値±SDで示しており、統計学的有意差はt検定(Student’s t-test)により確認した。
【0028】
[実施例2-2]
実施例1で調製した再生キトサンの脱水ケーキ4.0 g(乾物換算:0.1 g)に、脱イオン水を加えて全量20 g(再生キトサン終濃度0.5 w/w%)に調製した点並びに「ブランク実験1」ではなく後述の「ブランク実験2」で算出した脂質凝集能(%)のブランク及び脂質凝集重量のブランクを用いた点以外は、[実施例2-1]と同様の手順で脂質凝集能(%)及びキトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)を評価した。
【0029】
[実施例2-3]
実施例1で調製した再生キトサンの脱水ケーキ8.0 g(乾物換算:0.2 g)に、脱イオン水を加えて全量20 g(再生キトサン終濃度1.0 w/w%)に調製した点並びに「ブランク実験1」ではなく後述の「ブランク実験3」で算出した脂質凝集能(%)のブランク及び脂質凝集重量のブランクを用いた点以外は、[実施例2-1]と同様の手順で脂質凝集能(%)及びキトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)を評価した。
【0030】
[実施例2-4]
実施例1で調製した再生キトサンの脱水ケーキ20 g(乾物換算:0.5g)に、脱イオン水を加えて全量20 g(再生キトサン終濃度2.5w/w%)に調製した点並びに「ブランク実験1」ではなく後述の「ブランク実験4」で算出した脂質凝集能(%)のブランク及び脂質凝集重量のブランクを用いた点以外は、[実施例2-1]と同様の手順で脂質凝集能(%)及びキトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)を評価した。
【0031】
[比較例1]
(1)脱イオン水19.95 gにオレイン酸5 gを添加し、全量24.95gとした。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、未再生キトサンを0.05 g添加し、未再生キトサン終濃度0.25 w/w%とした後、さらに1時間撹拌分散した。
その後の手順は、[実施例2-1]の手順(3)~(10)と同様の手順により、脂質凝集能(%)及び未再生キトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)を評価した。
【0032】
[比較例2]
(1)脱イオン水19.9 gにオレイン酸5 gを添加し、全量24.9gとした。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、未再生キトサンを0.1 g添加し、未再生キトサン終濃度0.5 w/w%とした後、さらに1時間撹拌分散した。
その後の手順は、「ブランク実験1」ではなく後述の「ブランク実験2」で算出した脂質凝集能(%)のブランク及び脂質凝集重量のブランクを用いた点以外は、[実施例2-1]の手順(3)~(10)と同様の手順により、脂質凝集能(%)及び未再生キトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)を評価した。
【0033】
[比較例3]
(1)脱イオン水19.8gにオレイン酸5gを添加し、全量24.8gとした。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、未再生キトサンを0.2 g添加し、未再生キトサン終濃度1.0 w/w%とした後、さらに1時間撹拌分散した。
その後の手順は、「ブランク実験1」ではなく後述の「ブランク実験3」で算出した脂質凝集能(%)のブランク及び脂質凝集重量のブランクを用いた以外は、[実施例2-1]の手順(3)~(10)と同様の手順により、脂質凝集能(%)及び未再生キトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)を評価した。
【0034】
[比較例4]
(1)脱イオン水19.5 gにオレイン酸5 gを添加し、全量24.5gとした。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、未再生キトサンを0.5 g添加し、未再生キトサン終濃度2.5 w/w%とした後、さらに1時間撹拌分散した。
その後の手順は、「ブランク実験1」ではなく後述の「ブランク実験4」で算出した脂質凝集能(%)のブランク及び脂質凝集重量のブランクを用いた点以外は、[実施例2-1]の手順(3)~(10)と同様の手順により、脂質凝集能(%)及び未再生キトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)を評価した。
【0035】
[ブランク実験1]
(1)脱イオン水19.95 gにオレイン酸5 gを添加し、全量24.95 gとした。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、キトサン代替品としてのろ紙(No.6、直径55mm、ADVANTEC製)を細かく切り刻んだものを0.05 g添加し、さらに1時間撹拌分散した。
(3)(2)の後、凝集状態を観察した。
(4)直径60mmブフナロート及びフィルターとしてのろ紙(No.6、直径55mm、ADVANTEC製)を用いて吸引ろ過した。
(5)(4)で得られた、フィルターとしてのろ紙上の残渣に脱イオン水5 mLを上からふりかけ、吸引ろ過した。
(6)(5)で得られた、フィルターとしてのろ紙上の残渣にヘキサン(関東化学社製)5 mLを上からふりかけ、吸引ろ過した。
(7)フィルターとしてのろ紙上の残渣を磁性るつぼに採取した。
(8)残渣を入れたるつぼをホットプレート(HTP453AA、ADVANTEC社製)を用いて150~180℃で2時間加熱し、残渣を乾固した。
(9)乾固後の残渣重量を測定した。
(10)脂質凝集能(%)のブランク(計算式:「測定した残渣重量(g)/キトサン代替品としてのろ紙添加量(g)」)及びキトサン代替品としてのろ紙1 gあたりの脂質凝集重量のブランク(計算式:「{測定した残渣重量(g)-キトサン代替品としてのろ紙添加量(g)}/添加したオレイン酸重量(5g)×100」)を評価した。
【0036】
[ブランク実験2]
(1)脱イオン水19.90 gにオレイン酸5 gを添加し、全量24.90 gとした。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、キトサン代替品としてのろ紙(No.6、直径55mm、ADVANTEC製)を細かく切り刻んだものを0.1 g添加し、さらに1時間撹拌分散した。
その後の手順は、[ブランク実験1]の手順(3)~(10)と同様の手順により、脂質凝集能(%)のブランク及びキトサン代替品としてのろ紙1 gあたりの脂質凝集重量のブランクを評価した。
【0037】
[ブランク実験3]
(1)脱イオン水19.80 gにオレイン酸5 gを添加し、全量24.80 gとした。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、キトサン代替品としてのろ紙(No.6、直径55mm、ADVANTEC製)を細かく切り刻んだものを0.2 g添加し、さらに1時間撹拌分散した。
その後の手順は、[ブランク実験1]の手順(3)~(10)と同様の手順により、脂質凝集能(%)のブランク及びキトサン代替品としてのろ紙1 gあたりの脂質凝集重量のブランクを評価した。
【0038】
[ブランク実験4]
(1)脱イオン水19.50 gにオレイン酸5 gを添加し、全量24.50 gとした。
(2)スターラー(ヤマト社製MG600)で30分間撹拌分散した後、キトサン代替品としてのろ紙(No.6、直径55mm、ADVANTEC製)を細かく切り刻んだものを0.5 g添加し、さらに1時間撹拌分散した。
その後の手順は、[ブランク実験1]の手順(3)~(10)と同様の手順により、脂質凝集能(%)のブランク及びキトサン代替品としてのろ紙1 gあたりの脂質凝集重量のブランクを評価した。
【0039】
<結果>
ブランク実験1~4の凝集状態を観察した結果を図1に示す。
図1から、キトサン代替品としてろ紙を用いた場合は、いずれのキトサン添加量においても凝集がみられなかった。また、全てのキトサン添加量において、オレイン酸の油層がみられた。
比較例1~4の凝集状態を観察した結果を図2に示す。
図2から、未再生キトサン添加量0.05 g~0.2 gにおいて、オレイン酸の油層がみられた。
実施例2-1~2-4の凝集状態を観察した結果を図3に示す。
図3から、再生キトサンを用いた場合は、全てのキトサン添加量においてオレイン酸の油層がみられず、オレイン酸凝集能の高いことが示された。
図2及び図3から、再生キトサンを用いた場合(実施例2-1~2-4)は、対照として未再生キトサンを用いた場合(比較例1~4)と比較すると、いずれのキトサン添加量においても、オレイン酸がより凝集した。
脂質凝集能(%)及び各種キトサン1 gあたりの脂質凝集重量(g/gキトサン)の評価結果を表1、図4及び図5に示す。
表1、図4及び図5から明らかなように、全てのキトサン添加量において、再生キトサンの方が未再生キトサンに比べて約2~9倍と凝集能が有意に高かった。
表1及び図4の再生キトサン添加量0.5 gの脂質凝集能が100%を超えたことから、オレイン酸5gを完全に凝集する時の再生キトサンの添加量は約0.5 g(キトサン濃度2.5%)であることを確認した。
表1及び図5から明らかなように、再生キトサン1 gあたりの最大脂質凝集重量は、添加量0.05 g(キトサン濃度0.25%)のとき、約35 g/gキトサンであることを確認した。
なお、全ての添加量で有意差があることが明らかになった(p<0.01)。
【0040】
【表1】
【実施例3】
【0041】
<再生キトサンの染料凝集能の評価>
以下の方法により、再生キトサンの染料凝集能を評価した。
【0042】
1.直接染料の紫外可視吸収スペクトルの測定
染料の一例として、直接染料(Congo Red、ナカライテスク社製)を用いた。
直接染料の紫外可視吸収スペクトルを測定した。該測定において、最大吸収ピークが存在する波長を確認した。その結果、497 nmにおいて最大吸収ピークが存在した。
よって、下記の検討において、波長497 nmにおける吸光度を測定し、各種キトサンにおける直接染料の凝集能の算出に用いた。
【0043】
2.各種キトサンの直接染料凝集能の検討(n = 3)
(1)再生キトサンはwet品であるため、上記の実施例1において、最大の脂質凝集量を示した0.05%になるように脱イオン水に添加することで再生キトサン分散液を調製した。
より詳しくは、実施例1で調製した再生キトサン脱水ケーキ(キチン含有率15.7%)に脱イオン水を加えて1分間ホモジナイズし、2.5%分散液200 gを調製した。次に、この分散液0.4 g(乾物換算重量:0.01 g)に脱イオン水を加え、全量20 g(再生キトサン終濃度0.05w/w%)の再生キトサン分散液を調製した。
(2)再生キトサン分散液を撹拌しながら2 ml採取したものに直接染料(Congo Red:30 mg/L)2、4、6、8、10 mlを各々後添加した。
(3)1時間撹拌し、3500 rpm、10分間遠心分離(テーブルトップ、冷却遠心機KUBOTA5500)し、上清を採取し、性状を観察した。
(4)(3)で採取した上清について、波長497 nmの吸光度を測定した(日立U-2900形分光光度計)。
(5)下記の(7)で算出した直接染料凝集量のブランクを差し引き、直接染料凝集量(g/g chitosan)を算出した。
(6)未再生キトサンについても、再生キトサンと同濃度になるように調製した。より詳しくは、未再生キトサン分散液は、0.01gのキトサンFM-80(甲陽ケミカル株式会社製)に脱イオン水を加え全量20g(キトサン終濃度0.05w/w%)に調製した。その後、上記の(2)~(5)と同様の手順により直接染料凝集量を算出した。
(7)キトサン代替品として、ろ紙(No.6、直径55mm、ADVANTEC製)についても、再生キトサンや未再生キトサンと同濃度になるように調製した。その後、上記の(2)~(5)と同様の手順により直接染料凝集量のブランクを算出した。
【0044】
<結果>
上記2.各種キトサンの直接染料凝集能の検討の結果を図6~8及び表2に示す。
上清の性状観察の結果を図6に示す。
ブランクでは、上清の色は、直接染料の添加量増加に伴って次第に濃く残っていた。よって、キトサン代替品としてのろ紙は、直接染料を全く凝集しなかった。
未再生キトサンでは、上清の色は、直接染料の添加量が少量(2 ml)の場合は無色に近かったが、直接染料の添加量増加に伴って次第に濃く残っていた。よって、未再生キトサンは、直接染料を少量凝集したが、凝集しきれずに上清中に残存して行く傾向が認められた。
再生キトサンでは、上清の色は、全ての直接染料の添加量(2、4、6、8、10 ml)において、ほぼ無色透明のままであった。
従来の未再生キトサンの方が直接染料の添加量増加に伴って、上清における直接染料残存率も大きく上昇する傾向が認められたのに対し、再生キトサンでは、添加量の増加に関わらずほとんど凝集され上清における残存率も非常に僅かな上昇が見られる程度であることが確認出来た(表2および図7参照)。
以上より、再生キトサンは、未再生キトサンと比較して、少なくとも5倍の直接染料を凝集することが確認できた。
一方、キトサン1 g当たりの直接染料の凝集能に関しては、再生キトサンの方が未再生キトサンに比べて最大で約2倍高く、直接染料の添加量の増加に関わらず常に14~15 g/g chitosanであることが示唆された(表2および図8)。なお、2 ml以外の添加量で有意差があることが明らかになった(添加量4 mlの時p<0.05でそれ以外はp<0.01,Student’s t-test)。
以上より、再生キトサンにおける直接染料の凝集能は、未再生キトサン(粉末)に比べて5倍高かった。
また、再生キトサン1 g当たりの直接染料の凝集能は、直接染料の添加量に関わらず常に約15 g/g chitosanであった。このことから、再生キトサンは、未再生キトサンと比較して、少なくとも30 mg/L直接染料添加量2 ml~10 mlにおいて、すなわち、直接染料0.06 mg~0.3 mgにおいて、直接染料の添加量が増加しても、凝集能が低下しないことを確認した。
以上の結果から、再生キトサンは、未再生キトサンと比較して、優れた染料凝集能を有することを確認した。
【0045】
【表2】
【実施例4】
【0046】
<再生キトサンのアセトアルデヒド消臭能の評価>
以下の方法により、再生キトサンのアセトアルデヒド消臭能を評価した。
【0047】
1.1%再生キトサン分散液の調製
(1)実施例1と同様の方法により調製した再生キトサンの脱水ケーキ31.91g(乾物換算重量:5g)に、水を約150mL加えて全量20g(再生キトサン終濃度0.05 w/w%)に調製した。
(2)ブレンダ―で約5分間撹拌分散し、さらに全量500gとなるように水を添加した。
(3)ブレンダ―で約5分間撹拌分散後、容器に入れ、キャップを閉めて封入し、1%再生キトサン分散液とした。
(4)1%再生キトサン分散液10mLをφ100mmガラスシャーレにキャストし、フリーズドライで乾燥させ、検体とした(乾燥重量:0.085 g)。
(5)対照として、未再生キトサン0.085gをφ100mmガラスシャーレに入れ、対照品とした。
【0048】
2.アセトアルデヒドガス調製
5.3 Lの密閉可能な容器(シール容器)にアセトアルデヒド500μL注入後、密閉し、一晩静置した。
【0049】
3.予備試験
シール容器(容量5.3 L)に空気を抜いた空の状態のテドラーバック(容量5 L)を接続し、上記2.で調製した5.3 Lのアセトアルデヒドガスを該シール容器に注入し、シリンジで更に700 mLの空気を注入した。2分後のシール容器+テドラーバック(気体総量6.0L)内の濃度が約20 ppmになるアセトアルデヒドガス注入量をアセトアルデヒドガス検知管(ガステック ガス検知管 92L アセトアルデヒド)で求めた。
その結果、アセトアルデヒド調製ガス3 mLを注入したところ、2分後のアセトアルデヒド濃度は22 ppmになった。
よって、アセトアルデヒドガス注入量3 mLで下記の消臭試験を行った。
【0050】
4.消臭試験
検体及び対照品をそれぞれにシール容器+テドラーバックに入れ、密封した。その後、上記3.の予備試験で求めた量(3 mL)のアセトアルデヒド調製ガスを注入後、更に空気を700mL入れ密封した。これを静置し、2分、10分、30分、60分、120分、180分後の経過時間ごとに袋内のガス濃度をアセトアルデヒドガス検知管で測定した。また、検体及び対照品を入れず、使用した容器(φ100 mmガラスシャーレ)のみ入れ、同様な操作をしたものをブランク(空試験)とした。
本試験は独立して3回行った。結果は、平均値±SDで示しており、統計学的有意差はTukey多重比較(Tukey’s multiple comparison)により検定した。
【0051】
<結果>
消臭試験の結果を図9図10、表3及び表4に示す。
表3及び表4に示す通り、ブランク、再生キトサン0.085 g、及び未再生キトサン0.085 gの180分静置後のアセトアルデヒド残存濃度は、それぞれ、8.5±1.3ppm、5.8±1.3ppm、及び7.3±1.2ppm(アセトルデヒド残存率:40.4±5.1%、27.7±5.4%、及び33.7±3.3%)になり、再生キトサンが最も多くのアセトアルデヒドガスを凝集(吸着)した(n=3,Mean ± SD)。
次に、上記のアセトアルデヒド残存濃度について、再生キトサン及び未再生キトサンの180分後の平均値から、それぞれブランクの180分後の平均値を差し引くことにより、再生キトサン及び未再生キトサンのアセトアルデヒド凝集量を算出した。
その結果、再生キトサン0.085 gあたりのアセトアルデヒド凝集量は、8.5-5.8=2.1 ppmであり、未再生キトサン0.085 gあたりのアセトアルデヒド凝集量は、8.5-7.3=1.2 ppmであった。換算すると、再生キトサン1 gあたりのアセトアルデヒド凝集量は、24.7 ppmであり、未再生キトサン1 gあたりのアセトアルデヒド凝集量は、14.1 ppmであった。
よって、再生キトサンは、本実験系において、未再生キトサンの少なくとも1.75倍のアセトアルデヒド凝集能を有した。
このことから、再生キトサンは、僅か0.085 gの量でもアセトアルデヒドガスを凝集する能力を持つため、アセトアルデヒド消臭能を有することを確認した。
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
<総論>
本発明の再生キトサンは、以下の利点を有する。
1.未再生キトサンと比較して、脂質凝集能が有意に高い。
2.未再生キトサンと比較して、染料の凝集能が有意に高く、及び、染料の添加量が増加しても凝集能が低下しない。
3.未再生キトサンと比較して、アルデヒド類凝集(吸着)能(消臭能)が高い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
従来の未再生キトサンと比較して、高い有機物凝集能を有する組成物を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10