(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】郵便物の高速封入装置
(51)【国際特許分類】
B43M 3/04 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
B43M3/04
(21)【出願番号】P 2017248550
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】508132470
【氏名又は名称】株式会社サム技研
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】幸 貴広
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-507943(JP,A)
【文献】特開平06-183197(JP,A)
【文献】特開平06-227724(JP,A)
【文献】米国特許第05911668(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43M 3/04
B65H 5/00 - 5/38
B65D 5/00 - 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
郵便に供される印刷物を丁合した封入物を封筒に封入する装置であって、フラップを下にして封筒を待機させる封入部を備え、該封入部の上流側で到来する封入物を、丁合フィンガーから丁合物上面側で走行する封入フィンガーに
順次に受渡しする受渡部を備え、前記封入フィンガーを少なくとも2個で対を成すL字状に形成し、前記した封入部で、封入物の後端部を前記封入フィンガーL字端部で底面支持したまま、待機する封筒に封入するとともに、その封入動作を継続したまま封入後の封筒を前記封入部から搬出するべく構成したことを特徴とする郵便物の高速封入装置。
【請求項2】
丁合物の先行端部が封筒に封入され始めてから後端部が封入し終えるまでの間に、次の封筒を封入部へ追加供給する送込み装置を備えて構成したことを特徴とする請求項1に記載した郵便物の高速封入装置。
【請求項3】
送込み装置を構成する搬送ベルトの上面に一端を接して押圧部を形成する押圧板を備え、該押圧部を封入部に於ける封筒の所定位置手前直前位置に設定すべく構成したことを特徴とする請求項2に記載した郵便物の高速封入装置。
【請求項4】
搬送ベルトを吸着ベルトにして構成したことを特徴とする請求項3に記載した郵便物の高速封入装置。
【請求項5】
封入部に於ける封筒の所定位置に対する
送込み装置の搬送方向末端位置に、上面に吸引孔を形成したズレ止め機構を備えて構成したことを特徴とする請求項3または4に記載した郵便物の高速封入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、郵便物に供される封入物を従来にない高速度で封筒に封入するための封入装置に関する。例えば、郵便物を大量に生産する業界にあって、予め決められた種類の印刷物を次々と丁合する丁合コンベアの下流に設置され、到来する丁合物、即ち、封入物をして所定の封筒に封入する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置は2種類に大別される。封筒に封入物を封入する封入部に於いて、封筒の入り口部にある封筒フラップを上にした状態で封入する方式のものと、逆に下にして封入する方式のものである。本願に係る装置は後者に属し、典型的な先行技術として下記のものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の欠点として、封入速度遅いことがあげられる。それは時間当たりの生産数を指し、次々と短サイクルで封入を終える高速性能に難点があった。言い換えると、封筒に封入物を挿入するに早い速度で臨むとうまくいかないということであり、考察するに、封入時に生起される封入抵抗に起因するものと考えられる。従って、エアーを吹き付ける等の補助的手段でその改善を図っているが、いまだ根本的な解決に至っていない。
本願発明は、封入抵抗を軽減するための工法として、従来工法は、封入物の後端をして単に押し込む封入工法であったものを、その後端から何十ミリかに及んで底面から支持した状態、言わば後端部を確実に幾分持ち上げた状態で押し込む工法を開発したもので、その工法によって、封入処理の高速化を達成せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、郵便に供される印刷物を丁合した封入物を封筒に封入する装置であって、フラップを下にして封筒を待機させる封入部を備え、該封入部の上流側で到来する封入物を、丁合フィンガーから丁合物上面側で走行する封入フィンガーに順次に受渡しする受渡部を備え、前記封入フィンガーを少なくとも2個で対を成すL字状に形成し、前記した封入部で、封入物の後端部を前記封入フィンガーL字端部で底面支持したまま、待機する封筒に封入するとともに、その封入動作を継続したまま封入後の封筒を前記封入部から搬出するべく構成したことを特徴とする郵便物の高速封入装置を提供する。
【0006】
また、丁合物の先行端部が封筒に封入され始めてから後端部が封入し終えるまでの間に、次の封筒を封入部へ追加供給する送込み装置を備えて構成した郵便物の高速封入装置を提供する。また、送込み装置を構成する搬送ベルトの上面に一端を該搬送ベルトに接して押圧部を形成する押圧板を備え、該押圧部を封入部に於ける封筒の所定位置手前直前位置に設定すべく構成した郵便物の高速封入装置を提供する。
更に、前記した搬送ベルトを吸着ベルトにして構成し、必要に応じて、封入部に於ける封筒の所定位置に対する送込み装置の搬送方向末端位置に、上面に吸引孔を形成したズレ止め機構を備えて構成した郵便物の高速封入装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
封筒に封入物を封入する封入部に於いて、封入フィンガーのL字端部で封入物の後端部底面を確実に支持したまま、待機する封筒に封入するとともに、その封入動作を継続したまま封入後の封筒を前記封入部から搬出する構成にしたことによって、封筒への封入抵抗が軽減され、また一連的な連続動作であるため、封入サイクルを著しく短くすることが可能になった。因みに、封入物の先行端が封筒に入り始めてから後端部が入り終えるまでについて考察すると、封入が進むにつれて徐々に封入抵抗が加重されてくるものであるが、後端部が底面支持されているので、その終盤での軽減化は大きな差となって現れる。
【0008】
また、押圧板を具備した送込み装置では、その搬送ベルトを吸着ベルトにするか否かに関わらず、次の封筒を供給するに、封入中の封筒の下側に確実供給できる効果がある。
更に、ズレ止め機構を具備したものにあっては、封入を終えた封筒を搬出する時に生起される次の封筒をずらせようとする摩擦力に抗して、次の封筒を所定の位置に留めておく効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本願装置の動作を時系列的に図示した説明図であり、図中、(b)は(a)の主要部について部分的に拡大図示したものである。
【
図2】本願装置の動作を時系列的に図示した説明図であり、図中、(b)は(a)の主要部について部分的に拡大図示したものである。
【
図3】本願装置の動作を時系列的に図示した説明図であり、図中、(b)は(a)の主要部について部分的に拡大図示したものである。
【
図4】本願装置の動作を時系列的に図示した説明図であり、図中、(b)は(a)の主要部について部分的に拡大図示したものである。
【
図6】封入物の受渡しに関して時系列的に図示した説明図である。
【
図7】好ましい実施例について平面図で図示した説明図である。
【
図8】好ましい実施例について正面断面図で図示した説明図である。
【
図9】好ましい封筒の供給装置の説明図(平面図)である。
【
図10】好ましい封筒の供給装置の説明図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
以下、本願発明の実施例装置について詳細に説明する。
図1乃至
図4は、実施例装置が時系列的に動作していく様を図示したものである。また、(b)図は(a)図の主要部を部分拡大して図示したものである。尚、
図4の次なる動作の後は、
図1の状態になり、丁合フィンガー22aが22b、封筒2aが2bという具合に、次の封入サイクルへと循環しながら継続的に動作する。
【0011】
図中、11は丁合チェーンを指す。該チェーン11は回転軸14に嵌装されたチェーンスプロケット13で駆動され、丁合物1cが載置される個所にはトップカバー15が装備されている。即ち、7で指す搬送テーブルの上面から幾分か高い位置で、封入物1bならびに1cの中央部を下面から支持して搬送できるように構成されている。
【0012】
また、図中、12は丁合フィンガーを指している。この丁合フィンガー12は、所定のピッチ毎に前記した丁合チェーン11に取付けられ、図示は略したが、紙面右側の上流域で、何種類かの印刷物を1部ずつ次々と重ねるようにして丁合し、結果的に1cで指す封入物として次位の封入工程へ供給する。具体的に例示すると、ペラちらし,二つ折りチラシ,四つ折りチラシ、中綴じカタログなど任意の印刷物がワンセットにされ、必要に応じて宛名用紙なども丁合される。尚、この丁合フィンガー12は後述する受渡し部で役割を終えると、
図2で図示した通り、公知のフィンガー式搬送装置と同じようにチェーンピンを中心にして搬送方向後方(紙面右回り)に転回して戻り動作に移る。
【0013】
そして、その搬送方向下流側にあって、封入物1a乃至1cの上面側にも封入チェーン21が備えられている。図示した実施例では、該封入チェーン21は、回転軸24aに嵌装されたチェーンスプロケット23aと、回転軸24bに嵌装されたチェーンスプロケット23bとの間に張架され、所定間隔毎に丁合フィンガー22a乃至22eを備えている。尚、前記した丁合チェーン11と封入チェーン21は、同じ速度で走行すべく、前記回転軸14と24aまたは24bは機械的に関連付けられている。また、丁合フィンガー12の取付け間隔と、封入フィンガー22a乃至22eの取付け間隔は同じであり、係る条件下で次のような注目すべき動作を創出する。
【0014】
即ち、時系列的に図示した
図6乃至
図8から明らかなように、丁合フィンガー12から封入フィンガー22cに封入物1cを受渡しする受渡し部に於いて、搬送されてきた封入物1cに対して封入フィンガー22cが図示の如く作用し、その結果、封入フィンガー22cのL字端部で封入物11cの後端部をして底面支持するような受渡しが行われる。尚、
図5は係る実施例装置の平面図を例示したものであるが、搬送方向に対する左右方向の搬送バランスを堅実に維持するために、前記封入フィンガー22cは少なくとも2個で対を成す構成にする。即ち、例えば、チェーン21を2本張架して、例示したようなL字形状を成す封入フィンガー22a乃至22eを配備する。また、斯様な受渡しを良好化するために、封入フィンガー22a乃至22eの走行位置は、前記丁合チェーンまたは該チェーンの上面を覆うトップカバー15の走行ラインの両側に近い位置を走行するように構成される。そうすることで、封入物1cの概ね中央部位をして底面支持することで、該封入物1cのその余の部分は7で指す搬送テーブル上で支持され、結果的に後端中央部位を幾分か凸状に変形維持しつつ、次位の封入部へ搬入する。
【0015】
次に、封筒に封入物を挿入する封入部について説明する。
図1は、封入フィンガー22aによって封入物1aが封筒2aに封入されて後、封入方向と同方向に継続する動作で搬出している状況を図示している。同時に、封入部の直前位置まで次の封入フィンガー22bをして封入物1bが搬送されてきており、そのために封入部では常道の吸着パッド6が次の封筒2bの開口動作に入っている。
【0016】
図2は、上記
図1の状態から遷移して、封入部に於いて、封筒2bの開口部へ封入物1bの先行端が幾分挿入された時点に至っている。尚、ここで注目すべきは封入部に在る封筒2bのフラップが下側に位置していることである。そして、そのフラップはフラップカバー8の下側に位置しており、封入の妨げにならないように構成されている。一方、前記した封入済みの封筒2aは、搬出コンベア3による搬送が封入フィンガー22aより勝り始める直前の状態である。
【0017】
図3は、前記搬出コンベア3が封入済み封筒2aを封入フィンガー22aから引き抜いて搬出している状況を図示している。即ち、搬出コンベア3を速度的に幾分か早く設定している。また、封入部に於いては、概ね40%程度を残して、封筒2bに封入物1bを挿入している状態である。
図4は、封入部に於いて、封入フィンガー22bをして封入物1bを封筒2bに封入完了する直前の状態を図示している。また、封入部の上手にある受渡し部では、
図6乃至
図8に関連して説明した通り、丁合フィンガー12から封入フィンガー22cに、封入物1cの受渡し動作が開始される直前の状態にある。即ち、封入部での封入と、受渡し部での受渡しが、機械的に確実化されたタイミングで循環的にして継続的に行われる。尚、本図の状態から
図1の状態に至るには、吸着パッド6による封筒2bの拘束を適切なタイミングで解除する必要がある。そのひとつの手段は、封入を完了する直前乃至完了までの間に、吸着パッド6内の負圧を解除すべく電気的あるいはメカ的に圧力制御する制御機構を備える。また、簡素な手段として、斯様な圧力制御をせずに封入フィンガー22bで無理抜きするように構成することもあり、必要なら併用するべく構成することも可能である。いずれにしても、本願では、封筒に対して該封筒内に完全に没するまで挿入することに制限せず、実務的に大きな支障が生じない場合もあって、例えば、
図4の状態、即ち、まだ一部が挿入されきっていない状態をして封入完了とすることもある。
【0018】
ここで、注目すべきは、
図3ならびに
図4に於いて、封入中の封筒2bの下側に次の封筒2cを図示している点である。因みに、
図1ならびに
図2には次の封筒2cは図示していない。要は、封筒に封入物の先行端部を挿入し始めた頃から、概ね挿入し終えるまでの間に次の封筒を、その下位置に供給することを図示している。より原則的に言うなら、吸着パッド6が次の封筒を開口するために下降して吸着を開始するまでに、次の封筒を供給し終えれば足り、好ましくは、幾分かでも早めに終えるべく構成する。
例えば、
図4の状態下にある実施例装置の平面図的説明図を図示した
図5に於いて、図中、5はロール4に張架された供給ベルトを指しているが、2で指す封筒から公知の手段(図示省略)でタイミング良く一枚ずつ供給する。
【0019】
次に、好ましい封筒の供給装置
(送込み装置)について
図9ならびに
図10に基づいて説明する。ここで例示した実施例装置は、主に次の封筒をより好ましく供給するために成されたもので、搬送ベルト5に多数の孔を形成するとともに、その裏面側に第1吸引ボックス35と第2吸引ボックス32を備え、それらボックスに形成した吸引スリット35aならびに32aを介して封筒2をして吸着搬送するものである。また、図中、36は搬送ベルト5の上面側に備えた押圧板であり、その押圧先端部36aを該搬送ベルト5の上面に接することでライン状に押圧部を形成している。そして、その押圧部の位置は、封入部に於ける封筒2の所定位置、即ち、ストッパー30の位置から封筒2の幅寸法までの位置であるが、その手前側の直前位置に設定されている。即ち、封入部に搬入された封筒2の幅方向後端縁をして逆戻りすることを防止して位置決めするとともに、次なる封筒2を封入中の封筒の下側に供給するのを確実にする効果がある。尚、押圧部の安定化を担保するに、その前後にバックアップロール33,34を備えるのが望ましく、必要なら上流側のバックアップロール34を省くこともある。
【0020】
また、図示した例では、封入部に於けるストッパー30の手前に、上面に吸引孔を形成した吸着保持ボックス31を具備している。そして、このボックス31内の圧力を、必要に応じて制御する。例えば、搬送ベルト5で封筒2を搬入している間は負圧を解除し、搬入完了後に負圧を付与する。そうすれば、前記した
図4の状態から
図1の状態に遷移する時、封入済み封筒2bの搬出に伴って生起される摩擦力によって、その下にある封筒2cがずらせようとするのに対抗することができる。即ち、下にある封筒のズレ止め機構として前記吸着保持ボックスが機能する。尚、吸着保持ボックス31を負圧制御することなく、常時、弱い負圧を付与し続けることも効果的である。その場合、搬送ベルト5による封筒2の搬送力が、吸着保持ボックス31のブレーキ力に勝って、所定の位置まで封筒を送込むように構成される。
【0021】
以上の通り、本発明に係る郵便物の高速封入装置は、フラップを下にした封筒への封入方式に於いて、その処理能力の高さは特筆すべきものであって、郵便物を生産する業界に寄与すること確実である。
【符号の説明】
【0022】
1a,1b,1c,1d・・・封入物
2,2a,2b・・・封筒
3・・・搬出コンベア
4・・・ロール
5・・・供給ベルト
6・・・吸着パッド
7・・・搬送テーブル
8・・・フラップカバー
11・・・丁合チェーン
12・・・丁合フィンガー
13・・・チェーンスプロケット
14・・・回転軸
15・・・トップカバー
21・・・封入チェーン
22a,22b,22c,22d,22e・・・封入フィンガー
23a,23b・・・チェーンスプロケット
24a,24b・・・回転軸
30・・・ストッパ-
31・・・吸着保持ボックス
32・・・第2吸引ボックス
33,34・・・バックアップロール
35・・・第1吸引ボックス
36・・・押圧板
36a・・・押圧先端部