(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04B 15/02 20060101AFI20220512BHJP
F04C 13/00 20060101ALI20220512BHJP
F04C 2/107 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
F04B15/02 B
F04C13/00 B
F04C2/107
(21)【出願番号】P 2018100078
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000239758
【氏名又は名称】兵神装備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 秀明
(72)【発明者】
【氏名】杉野 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】布施 竜児
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-014217(JP,A)
【文献】実開平07-044889(JP,U)
【文献】特開2000-210934(JP,A)
【文献】特開2009-185626(JP,A)
【文献】特開2005-133676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 15/02
F04C 13/00
F04C 2/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に貯留される貯留液を汲み上げるポンプ部と、
容器の周囲に配置され、前記容器を介して前記貯留液を加温する容器側加温装置と、
制御装置とを有し、
前記貯留液の汲み上げに応じて変動する液面の変動方向に、前記ポンプ部を前記容
器に対して相対移動可能であり、
前記容器側加温装置が、前記変動方向に形成される複数の加温対象領域毎に温度条件を変更可能であり、
前記制御装置が、前記ポンプ部の吸込口に対応する位置にある前記加温対象領域、あるいは吸込口に対応する位置にある前記加温対象領域及びこれに対して前記液面の減少方向に隣接する一又は複数の加温対象領域において、他の前記加温対象領域よりも高温になるように前記容器側加温装置を作動させることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記容器側加温装置が、
発熱により前記貯留液を加温する複数の加温部を備え、
複数の前記加温部の発熱状態を異ならせることにより、1又は2以上の前記加温対象領域の加温状態と、他の前記加温対象領域の加温状態とを異ならせることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記容器を前記液面の変動方向に移動可能とする移動装置を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記ポンプ
部に取り付けられ、前記容器の内側において前記液面を覆うように配置されるプレート部を有し、
前記貯留液の汲み上げに伴う前記液面の変動に追従して、前記ポンプ
部及び前記プレート部が前記変動方向に移動することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記容器側加温装置が、通電により発熱する複数の加温部を備えるものであり、
前記容器と前記ポンプ部との相対位置を検知する検知部と、
前記加温部への通電状態を調整する通電調整装置とを備え、
前記通電調整装置が、
複数設けられた前記加温部のそれぞれと電源とを繋ぐ電源回路と、
前記加温部に対する通電状態を調整する通電調整部とを有し、
前記検知部による検知情報に基づいて前記通電調整部により通電調整を行い、前記吸込口に対応する位置にある前記加温対象領域内の加温部を、前記吸込口から離れた位置にある前記加温対象領域内の加温部よりも高温とさせることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記通電調整部が、複数の接点を備えた多投型スイッチを複数備えており、
前記接点のそれぞれに、前記加温部のそれぞれに対応する電源回路が接続されており、
前記通電調整部が、前記多投型スイッチにおいて導通状態とされる接点の組み合わせを変更することにより通電調整を行うことを特徴とする請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記容器と前記ポンプ部との相対位置を検知する検知部を有し、
前記容器側加温装置が、発熱により前記貯留液を加温可能とする複数の加温部を備えるものであり、
前記検知部の検知情報に基づいて、前記加温部の発熱状態が制御されることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記吸込口の位置に対応する前記加温対象領域、及びこれに対して前記液面の減少方向に隣接する前記加温対象領域を、他の前記加温対象領域よりも高温になるように前記容器側加温装置を作動させることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のポンプ装置。
【請求項9】
前記ポンプ部が、
雄ねじ状の形状とされた雄ねじ部を備え、回転動力が伝達されて回転するロータと、
前記雄ねじ部を挿入可能な雌ねじ状の貫通孔が形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプであることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペール缶等の容器に貯留されているシール剤や食品材料等の貯留液を汲み出すポンプ装置、及び貯留液の加温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペール缶等の容器に貯留されている貯留液を汲み出すポンプ装置として、貯留液を加温して液の粘度を低下させて液の汲み出しを行うポンプ装置や、ポンプ部や配管などを加温して液の粘度を低下させる方法が提供されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、加熱手段が設けられた押圧手段を備える粘性材料の供給装置が開示されている。特許文献1の供給装置は、粘性材料を加熱手段により所定温度に加熱して、粘性材料の圧送且つ供給時に流動性が良好になった粘性材料を確実且つ容易に吸引することができるとされている。
【0004】
また、下記特許文献2には、主ヒーターが設けられたプレートを備える高粘度材料用ポンプが記載されている。特許文献2に記載された高粘度材料用ポンプでは、高粘度材料がヒータに直接密着しているため加熱時間を短くすることができることに加え、従来の加熱室を必要としないため設備費が少なくて済むとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3328809号公報
【文献】特公平07-45871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の粘性材料の供給装置や特許文献2の高粘度材料用ポンプのように、貯留液の液面を押圧するプレートに対して加温装置を設け、貯留液の液面を加温する場合(液面側を加温する場合)では、貯留液の液面付近が表面的に加温されるため、貯留液が二次元的に加温されるに過ぎない。そのため、液面側を加温する場合では、ポンプの吸込口より少し容器の底面側に離間した貯留液は十分に加温されず、粘度を低下させた貯留液が吸込口まで供給されずに、ポンプが空気を吸って液を吸わない現象(エアー吸い)が発生する。エアー吸いが発生すると、貯留液を十分に汲み出すことが出来ず貯留液の汲み上げ効率が低下するという問題がある。
【0007】
また、例えば、貯留液の粘度を十分低下させるために、容器全体を加温することも考えられる。しかしながら、容器内の貯留液全体に一度に熱を加えると、大量の気泡が発生して液の品質低下につながることが懸念される。
【0008】
さらに、貯留液が収容された容器全体を加温しつつ貯留液の汲み上げを行うこととすると、容器上部の貯留液と容器下部の貯留液とで加温される時間に差異が生じ、容器下部の貯留液は必要以上に加温され続けることとなりかねない。そのため、容器全体を加温する場合には、容器下部の貯留液が必要以上に加温され続け、液性が変質することが懸念される。さらに、容器全体を温めるために、相応の加熱時間や電力を要し、コストが増加することが懸念される。
【0009】
そこで本発明は、気泡の発生及び貯留液の液性の変質を抑制し、貯留液の加温に要するコストを低減させて容器内の貯留液を汲み上げることができるポンプ装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決すべく提供される本発明のポンプ装置は、容器に貯留される貯留液を汲み上げるポンプ部と、容器の周囲に配置され、前記容器を介して前記貯留液を加温する容器側加温装置と、制御装置とを有し、前記貯留液の汲み上げに応じて変動する液面の変動方向に、前記ポンプ部を前記容器に対して相対移動可能であり、前記容器側加温装置が、前記変動方向に形成される複数の加温対象領域毎に温度条件を変更可能であり、前記制御装置が、前記ポンプ部の吸込口に対応する位置にある前記加温対象領域、あるいは吸込口に対応する位置にある前記加温対象領域及びこれに対して前記液面の減少方向に隣接する一又は複数の加温対象領域において、前記吸込口から離れた位置にある他の前記加温対象領域よりも高温になるように前記容器側加温装置を作動させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のポンプ装置によれば、容器内に配置されるポンプ部の吸込口近傍において貯留液を加温し、吸込口近傍の貯留液の粘度を低下させることができる。そのため、本発明のポンプ装置は、高粘度の貯留液を好適に汲み上げることができる。また、本発明のポンプ装置によれば、吸込口の相対位置に応じて加温対象とする加温対象領域を、貯留液の汲み出し状況に応じて段階的に切り替えて貯留液を加温することができる。
【0012】
また、本発明のポンプ装置によれば、ポンプ部の吸込口近傍の貯留液を加温しつつ、吸込口から離れた他の加温対象領域にある貯留液を加温しない状態、又は仮に加温するとしても比較的低温の状態とすることができる。言い換えれば、本発明のポンプ装置は、ポンプによる吸い込みに影響のある加温対象領域にある貯留液を加温する一方で、それ以外の加温対象領域にある貯留液がむやみに加温されるのを抑制できる。その結果、本発明のポンプ装置は、貯留液が必要以上に加温され続けて液の性状が変質することを抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明のポンプ装置によれば、必要に応じて液面の変動方向における一部の貯留液を加温することにより、容器全体を加温する場合と比較して加熱電力に要するコストを削減することができるほか、容器全体を一度に加熱する場合に懸念される気泡の発生等の問題を抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明のポンプ装置によれば、容器の周方向外側から貯留液を加温することができる。言い換えれば、本発明のポンプ装置によれば、液面から底部に向けた所定の領域の貯留液を三次元的に加温することができる。これにより、本発明のポンプ装置は、液面の表面側のみが加熱されて、ポンプ部の吸込口近傍が加熱されず、エアー吸いが発生することを抑制することができる。
【0015】
本発明のポンプ装置は、前記容器側加温装置が、発熱により前記貯留液を加温可能とする複数の加温部を備え、複数の前記加温部の発熱状態を異ならせることにより、1又は2以上の前記加温対象領域の加温状態と、他の前記加温対象領域の加温状態とを異ならせるものであることが望ましい。
【0016】
上述の構成によれば、加温部ごとに発熱状態を切り替えて、複数の加温対象領域の加温状態を異ならせることができる。
【0017】
ここで、本発明の発明者が容器及びポンプ部の相対移動について鋭意検討したところ、ポンプ装置全体においてポンプ部の位置を維持することとした場合、ポンプ部と液の吐出口とを連結する配管などを変位させる必要がなく、配管等の固定が可能となり、装置全体の構造を簡素化することができるとの知見に至った。
【0018】
上述の知見により提供される本発明のポンプ装置は、前記容器を前記液面の変動方向に移動可能とする移動装置を有するものであることを特徴とするものである。
【0019】
本発明のポンプ装置によれば、装置全体の構造を簡素化することができる。
【0020】
さらに本発明のポンプ装置は、前記ポンプ部に取り付けられ、前記容器の内側において前記液面を覆うように配置されるプレート部を有し、前記貯留液の汲み上げに伴う前記液面の変動に追従して、前記ポンプ部及び前記プレート部が前記変動方向に移動するものであっても良い。
【0021】
上述の構成によれば、プレート部によって液面を押さえつけながら貯留液を汲み出すことができる。その結果、本発明のポンプ装置は、より効率的に貯留液を汲み出すことができる。
【0022】
上述したようなプレート部を設ける場合には、前記液面と接触して前記貯留液を加温可能とされたプレート側加温装置を設けても良い。
【0023】
上述の構成によれば、容器側加温装置により容器の径方向外側から貯留液を加温することに加え、プレート側加温装置により液面側より貯留液を加温することができる。その結果、本発明のポンプ装置は、より効率的に貯留液を加温することができる。
【0024】
本発明のポンプ装置は、前記容器側加温装置が、通電により発熱する複数の加温部を備えるものであり、前記容器と前記ポンプ部との相対位置を検知する検知部と、前記加温部への通電状態を調整する通電調整装置とを備え、前記通電調整装置が、複数設けられた前記加温部のそれぞれと電源とを繋ぐ電源回路と、前記加温部に対する通電状態を調整する通電調整部とを有し、前記検知部による検知情報に基づいて前記通電調整部により通電調整を行い、前記吸込口に対応する位置にある前記加温対象領域内の加温部を、前記吸込口から離れた位置にある前記加温対象領域内の加温部よりも高温とさせることを特徴とするものである。
【0025】
本発明のポンプ装置では、通電調整装置による加温部に対する通電状態の調整が、検知部により検知される容器とポンプ部との相対位置に応じて行われる。これにより、吸込口に対応する位置にある加温対象領域内の加温部が、吸込口から離れた位置にある加温対象領域内の加温部よりも高温とされる。そのため、本発明のポンプ装置によれば、容器とポンプ部との相対位置に応じて、吸込口が配置される加温対象領域の貯留液を効率的に加温することができる。例えば、ポンプ装置全体に対してポンプ部の位置を維持しつつ容器及び容器側加温装置を移動可能とした場合に、液面の変位に応じて発熱させる加温部を段階的に切り替えることができる。その結果、本発明のポンプ装置は、液面の変位に対応して加温対象とされる加温対象領域を段階的に切り替えつつ、他の加温対象領域の貯留液が加温され続けることを抑制することができる。
【0026】
ここで、複数の加温部にそれぞれスイッチ部を設け、さらに各スイッチ部に対応する電源回路を設けた場合、加温部を発熱させる制御を柔軟に行い得る。その一方で、複数の加温部のうち、全ての加温部を加温させることが想定されない場合も存在する。例えば、加温部を3以上設けた場合において、吸込口の位置に応じて1又は2の加温部を発熱させる場合などでは、全ての加温部を発熱させる状況が生じない。このようなことを考慮して本発明の発明者が鋭意検討した結果、通電調整装置に複数の接点を備えた多投型スイッチを用いて適切に制御を行えば、装置構成及び制御方法の簡略化により一層貢献できるとの知見に至った。
【0027】
上述の知見により提供される本発明のポンプ装置は、前記通電調整部が、複数の接点を備えた多投型スイッチを複数備えており、前記接点のそれぞれに、前記加温部のそれぞれに対応する電源回路が接続されており、前記通電調整部が、前記多投型スイッチにおいて導通状態とされる接点の組み合わせを変更することにより通電調整を行うことを特徴とするものである。
【0028】
上述の構成によれば、多投型スイッチにおいて導通状態とされる接点の組み合わせを適宜変更することで、加温が必要な箇所にある加熱部を適切に作動させることができる。従って、上述した構成によれば、ポンプ装置の装置構成及び制御方法をより一層簡略化させることができる。
【0029】
本発明のポンプ装置は、前記容器と前記ポンプ部との相対位置を検知する検知部を有し、前記容器側加温装置が、発熱により前記貯留液を加温可能とする複数の加温部を備えるものであり、前記検知部の検知情報に基づいて、前記加温部の発熱状態が制御されるものであってもよい。
【0030】
上述の構成によれば、容器とポンプ部との相対位置を検出して容器に対する吸込口の位置を判定し、対応する加温対象領域の貯留液を加温することができる。
【0031】
本発明のポンプ装置は、前記吸込口の位置に対応する前記加温対象領域、及びこれに対して前記液面の減少方向に隣接する前記加温対象領域を、他の前記加温対象領域よりも高温になるように前記容器側加温装置を作動させるものであってもよい。
【0032】
上述の構成によれば、吸込口の位置に対応する加温対象領域に加え、これに対して液面の減少方向に隣接する加温対象領域においても貯留液を予備的に加温することができる。例えば、貯留液の温度や粘度、あるいは室温等を考慮して、吸込口より少し離れた貯留液の予備的に加温することができる。これにより本発明のポンプ装置は、より効率的に貯留液を汲み出すことができる。
【0033】
本発明のポンプ装置は、前記ポンプ部が、雄ねじ状の形状とされた雄ねじ部を備え、回転動力が伝達されて回転するロータと、前記雄ねじ部を挿入可能な雌ねじ状の貫通孔が形成されたステータとを有する一軸偏心ねじポンプであることが望ましい。
【0034】
上述の構成によれば、高い定量性及び強い吸引力により、貯留液を汲み上げることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、気泡の発生及び貯留液の液性の変質を抑制し、貯留液の加温に要するコストを低減させて容器内の貯留液を汲み上げることができるポンプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るポンプ装置を示す斜視図である。
【
図3】
図1のポンプ装置のポンプ部を示す断面図である。
【
図4】本発明のポンプ装置において、プレート側加温装置を備えるフォロープレートの例を示す断面図である。
【
図5】
図1のポンプ装置の昇降装置及び容器側加温装置を示す模式図である。
【
図6】
図1のポンプ装置の検知部を示す模式図である。
【
図7】
図1のポンプ装置の通電調整装置、検知部、及び制御部を示す模式図である。
【
図8】
図1のポンプ装置の吸込口及び加温対象領域の配置を示す模式図である。
【
図9】
図1のポンプ装置のヒータ部の制御の一例を示す図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係るポンプ装置を示す模式図である。
【
図11】
図10のポンプ装置のヒータ部の通電状態の第一の例を示す図である。
【
図12】
図10のポンプ装置のヒータ部の通電状態の第二の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るポンプ装置10を示す斜視図である。ポンプ装置10は、ペール缶やドラム缶などの容器2に貯留された貯留液1を汲み出すために用いられる。
【0038】
本実施形態で説明する貯留液1は、例えばペースト状又はクリーム状の食品材料、シール剤、等の高粘度液とされている。貯留液1は、ペール缶などの容器2に収容されている。なお、本発明のポンプ装置の汲み出し対象とされた液は、高粘度液に限定されない。本発明のポンプ装置は、低粘度液を汲み出し対象としてもよい。
【0039】
容器2は、ポンプ装置10に配置されると、軸線方向が上下方向に沿うように配置される。そのため、容器2に収容された貯留液1の液面Fは、貯留液1の上下方向に変位する。より具体的に説明すると、容器2に収容された貯留液1の液面Fは、貯留液1が容器2から汲み出され、容器2に収容された貯留液1の残量が減少するのに伴って、容器2に対して下方に変位する。なお、以下の説明において、貯留液1の液面Fの変位方向(上下方向)を「変動方向X」と記載して説明する場合がある。
【0040】
図1に示すとおり、ポンプ装置10は、台座部12、支柱部14、ポンプ部20、昇降装置40(移動装置)、容器側加温装置50、フォロープレート70(プレート部)、及び制御部90を有している。また、
図6及び
図7に示すとおり、ポンプ装置10は、通電調整装置60、及び検知部80を有している。
【0041】
ポンプ装置10は、台座部12に対して支柱部14を上下方向(変動方向X)に延びるように立設させた構成とされている。また、ポンプ装置10は、支柱部14に対してポンプ部20及び昇降装置40を取り付けた構成とされている。
【0042】
ポンプ部20は、貯留液1を吸引して搬送するためのものである。本実施形態のポンプ部20は、容積型回転ポンプの一軸偏心ねじポンプが採用されている。
図2に示すとおり、ポンプ部20は、ブラケット16を介して支柱部14の上方端に取り付けられている。
【0043】
図1及び
図3に示すとおり、ポンプ部20は、ステータケーシング22、ステータ26、ロータ28、動力伝達部32、及び駆動部36を有している。
図3に示すとおり、ポンプ部20は、ステータケーシング22の内部に、ステータ26、ロータ28、及び動力伝達部32等を収容させた構成とされている。
【0044】
図3に示すとおり、ポンプ部20には、第一開口21a及び第二開口21bが設けられている。ポンプ部20は、第一開口21aを吸込口24として機能させ、貯留液1を容器2から所定の流量で汲み出すことができる。また、ポンプ部20は、第二開口21bを吐出口34として機能させることができる。なお、第二開口21bには、移送管(図示を省略)が接続され、移送管を介して貯留液1を他の容器などに移送することができる。
【0045】
ポンプ部20は、ロータ28を正方向に回転させることにより、第一開口21aを吸込口24、第二開口21bを吐出口34として機能させることができる。また、メンテナンス等のためにロータ28を逆方向に回転させることにより、ポンプ部20は、第二開口21bから洗浄のための液を吸引して、吸引した洗浄液等を第一開口21aから吐出させてステータケーシング22の内部空間等の洗浄等を行うことができる。
【0046】
ステータ26は、ゴムに代表される弾性体や樹脂などで作成され、略円筒形の外観形状を有する部材である。ステータ26の材質は、ポンプ装置10の汲み出し対象とされた貯留液1の種類や性状などにあわせて適宜選択される。ステータ26には挿通孔27が形成され、内周面26aがn条で単段あるいは多段の雌ねじ形状とされている。本実施形態では、
図3に示すように、ステータ26には、2条で多段の雌ねじ形状とされた挿通孔27が形成されている。
【0047】
図3に示すとおり、ロータ28は、金属製の軸体であり、n-1条で単段又は多段の雄ねじ形状とされている。本実施形態では、ロータ28は、1条で偏心した雄ねじ形状とされている。ロータ28は、長手方向のいずれの位置においても断面形状が略真円形とされている。ロータ28は、上述したステータ26に形成された挿通孔27に挿通され、挿通孔27の内部において自由に偏心回転可能とされている。
【0048】
ロータ28をステータ26に対して挿通すると、ロータ28の外周壁28aとステータ26の内周面26aとが両者の接線で密接した状態になり、ステータ26の内周面26aとロータ28の外周壁28aとの間に流体搬送路30(キャビティ)が形成される。流体搬送路30は、ステータ26やロータ28の長手方向に向けて螺旋状に伸びている。
【0049】
流体搬送路30は、ロータ28をステータ26の挿通孔27内において回転させると、ステータ26内を回転しながらステータ26の長手方向に進む。そのため、ロータ28を回転させると、ステータ26の一端側から流体搬送路30内に流体(貯留液1)を吸い込むと共に、この流体を流体搬送路30内に閉じこめた状態でステータ26の両端のうち一端に向けて移送し、ステータ26の他端において吐出させることが可能である。
【0050】
動力伝達部32は、駆動部36から上述したロータ28に対して動力を伝達するためのものである。動力伝達部32は、駆動部36の回転軸とロータ28とを、偏心回転を許容するように連結している。なお、動力伝達部32は、フレキシブルロッド、オルダムジョイント等、種々選択可能である。
【0051】
昇降装置40(移動装置)は、容器2及び容器側加温装置50のポンプ部20に対する相対位置を変位させるために設けられている。より具体的には、昇降装置40は、容器2及び容器側加温装置50を変動方向Xに沿って上昇させ、あるいは下降させることにより、ポンプ部20に対する容器2及び容器側加温装置50の相対位置を変位可能とされている。
【0052】
図1及び
図5に示すとおり、昇降装置40は、レール部42、スライダ部44、及び支持台46を備えている。
【0053】
レール部42は、スライダ部44を変動方向Xに移動させるためのガイド部材として設けられている。レール部42は、長手方向が変動方向Xに沿う姿勢となるように支柱部14に取り付けられている。また、スライダ部44は、レール部42に取り付けられている。スライダ部44は、レール部42上をスライドして移動可能とされている。
【0054】
支持台46は、容器2を支持するために設けられている。支持台46は、平坦面とされた積置面46aが形成され、容器2を積置可能とされている。また、支持台46は、連結部48を介してスライダ部44に取り付けられている。さらに、連結部48には容器側加温装置50が取り付けられている。そのため、容器2及び容器側加温装置50は、スライダ部44の移動に伴って変動方向Xに移動する。
【0055】
図2に示すとおり、支柱部14の上方端には、変動方向Xに沿う姿勢となるようにブラケット16を介してポンプ部20が取り付けられている。言い換えれば、ポンプ部20は、支柱部14に対する相対位置を維持した状態で配置されている。そのため、支柱部14に対して支持台46が変位すると、支持台46に積置された容器2はポンプ部20に対する相対位置を変化させる。別の言い方をすれば、本実施形態のポンプ装置10は、ポンプ部20の位置を維持して容器2を移動させることにより、ポンプ部と容器2とを相対的に移動させる。これにより、ポンプ装置10は、容器2内の貯留液1の残量の変化に応じて貯留液1の液面Fが変位した場合に、吸込口24の近傍に液面Fが配置されるように容器2(支持台46)を変位させる。
【0056】
なお、昇降装置40のスライダ部44を移動させる機構については、例えばスライダ部44と連結される回動機構を設け、手動あるいはモーター等の動力によるものとすることができる。また、スライダ部44を移動させる機構として、シリンダ等の機構を設けてもよい。スライダ部44を移動させる昇降装置40の構造は、種々選択可能である。
【0057】
容器側加温装置50は、容器2内に収容された貯留液1を加温するために設けられている。
図1に示すとおり、容器側加温装置50は、容器2の周囲に配置される。本実施形態の容器側加温装置50は、電気抵抗により発熱する複数のヒータ部52(加温部)が設けられている。ヒータ部52は、通電されることにより発熱する発熱状態とされ、通電が遮断されると発熱しない非発熱状態とされる。
【0058】
また、後で詳述するとおり、複数(本実施形態では3つ)のヒータ部52は、それぞれに対して通電の接続及び遮断の切り替えを行うスイッチ部62に接続されている。そのため、各ヒータ部52は、それぞれ発熱状態及び非発熱状態の切り替えを行うことができる。容器側加温装置50は、各ヒータ部52を発熱状態及び非発熱状態のいずれかに制御して、後述する加温対象領域Rごとに貯留液1を加温させるか否かの加温状態を切り替え可能としている。
【0059】
図5に示すとおり、容器側加温装置50は、複数のヒータ部52として、第一ヒータ部52a、第二ヒータ部52b、及び第三ヒータ部52cを備えている。第一ヒータ部52a、第二ヒータ部52b、及び第三ヒータ部52cは、変動方向Xに沿って配列される。容器側加温装置50は、ヒータ部52を発熱させるにより、容器2内の貯留液1を容器2の径方向外側から加温可能としている。また、容器側加温装置50は、ヒータ部52により、容器2の変動方向Xに所定の範囲に亘って、貯留液1を加温することができる。
【0060】
容器側加温装置50は、ヒータ部52を発熱させることにより容器2の内側の貯留液1を加温することができる3の加温対象領域Rを形成する。より具体的には、
図5に示すとおり、容器側加温装置50は、第一ヒータ部52aを発熱させることにより貯留液1が加温される第一加温対象領域R1と、第二ヒータ部52bを発熱させることにより貯留液1が加温される第二加温対象領域R2と、第三ヒータ部52cを発熱させることにより貯留液1が加温される第三加温対象領域R3とを形成する。
【0061】
容器側加温装置50は、1又は2のヒータ部52を発熱させて他のヒータ部52を発熱させないことにより、1の加温対象領域Rと他の加温対象領域Rとの加温状態を異ならせることができる。言い換えれば、容器側加温装置50は、容器2の変動方向Xにおいて、貯留液1が加温される部分と、比較的低温で貯留液1が加温される又は貯留液1が加温されない部分とを形成し、複数の加温対象領域R間で加温状態を異ならせることができる。なお、本発明のポンプ装置は、ヒータ部(加温部)の発熱状態を段階的あるいは無段階に切り替え可能としてもよい。例えば、本発明のポンプ装置は、複数の加温対象領域間で温度の異なる発熱状態とし、一部の加温対象領域の加温状態と他の加温対象領域の加温状態とを異ならせてもよい。
【0062】
通電調整装置60は、後述する検知部80の検出情報に基づき、制御部90による制御のもとヒータ部52への通電調整を行うために設けられている。
図7に示すとおり、通電調整装置60は、スイッチ部62(通電調整部)、及び電源回路64を備えている。通電調整装置60は、制御部90を介して伝達される検知部80の検出情報に基づいてスイッチ部62により通電調整を行い、ヒータ部52の発熱状態の制御を行う。
【0063】
スイッチ部62は、いわゆる一極単投型のスイッチとされている。スイッチ部62は、電源回路64を介して電源チャンネル66に接続されたヒータ部52への通電状態を切り替え可能とされている。通電調整装置60は、スイッチ部62をオン状態とすることによりヒータ部52への通電を許容し、オフ状態とすることによりヒータ部52への通電を遮断することができる。スイッチ部62は、制御部90からから出力される制御信号に基づき作動する。
【0064】
図7に示すとおり、本実施形態の通電調整装置60は、各ヒータ部52にそれぞれ対応するようにスイッチ部62、電源回路64、及び電源チャンネル66を設けたものとされている。より具体的には、本実施形態の通電調整装置60は、第一ヒータ部52aに対応するスイッチ部62a、電源回路64a、及び電源チャンネル66a、第二ヒータ部52bに対応するスイッチ部62b、電源回路64a、及び電源チャンネル66b、及び第三ヒータ部52cに対応するスイッチ部62c、電源回路64c、及び電源チャンネル66cが設けられている。そのため、通電調整装置60は、各ヒータ52毎に個別に通電制御できる。
【0065】
検知部80は、スライダ部44の変動方向Xにおける位置を検出するために設けられている。検知部80は、例えばエンコーダなどによりスライダ部44の変位量を検出可能なものとすることができるが、本実施形態では3つのセンサ82を設けることによりスライダ部44の位置検出可能なものとされている。より具体的には、検知部80は、第一センサ82a、第二センサ82b、及び第三センサ82cを備えている。検知部80は、第一センサ82a、第二センサ82b、及び第三センサ82cにより、スライダ部44の存否を検知可能とされている。検知部80から出力される検知信号は、後に詳述するように制御部90においてスライダ部44の位置を導出するために活用される。
【0066】
フォロープレート70(プレート部)は、容器2に収容された貯留液1の液面Fを押圧するために設けられている。
図1に示すとおり、フォロープレート70は、所定の厚みを有する略円板状の外観とされている。
【0067】
図1及び
図3に示すとおり、フォロープレート70は、容器2の内径と概ね一致するような直径を備えている。そのため、フォロープレート70を容器2に嵌め込むと、フォロープレート70は容器2を閉塞するように配置され、貯留液1の液面Fと略密着する。
【0068】
図3に示すとおり、フォロープレート70は、ポンプ部20に対して取り付けられている。より具体的には、フォロープレート70は、第一開口21a(吸込口24)を取り囲むようにポンプ部20に対して取り付けられている。そのため、フォロープレート70の貯留液1側に配置される押圧面70a(
図3において下方側の面)の位置と、吸込口24の位置とは、容器2の変動方向Xにおいて略一致する。また、フォロープレート70は、ポンプ部20に対して取り付けられている。そのため、フォロープレート70は、ポンプ装置10と共に変動方向Xに移動可能とされている。
【0069】
図3に示すとおり、フォロープレート70は、ステータケーシング22の端部を取り囲むようにポンプ部20に取り付けられている。
【0070】
本発明のポンプ装置10のフォロープレート70は、プレート側加温装置72を備えるものであってもよい。例えば
図4に示すフォロープレート70に設けられたプレート側加温装置72は、電気抵抗により発熱する電気ヒータとして設けられている。プレート側加温装置72は、フォロープレート70の押圧面70a側に配置され、液面Fと接触しつつ貯留液1を加温することができる。これにより、ポンプ装置10は、容器側加温装置50により容器2の周方向外側から貯留液1を加温可能とすることに加え、プレート側加温装置72によっても貯留液1を加温することができる。
【0071】
続いて、ポンプ装置10における容器2の位置と加温状態の制御について、
図7、
図8及び
図9を参照しつつ説明する。上述のとおり、本実施形態のポンプ装置10は、検知部80の検知情報に基づいて、制御部90による制御の下、各ヒータ部52への通電制御(発熱制御)が行われる。
【0072】
例えば、
図7に示す状態、すなわち第三センサ82cによりスライダ部44が検知され、第二センサ82bによりスライダ部44が検知されない状態では、第一加温対象領域R1の貯留液1は加温され、第二加温対象領域R2の貯留液1は加温されない状態又は予備加熱される。より具体的には、第三センサ82cによりスライダ部44が検知され、第二センサ82bによりスライダ部44が検知されない状態では、制御部90は、第一ヒータ部52aを発熱状態(オン)とし、第二ヒータ部52bを発熱状態(オン)又は非発熱状態(オフ)とする通電制御を行う。
【0073】
また、
図8(a)に示すとおり、第二センサ82b及び第三センサ82cによりスライダ部44が検知される状態では、スライダ部44が第二センサ84及び第三センサ86の双方に隣接する位置Ps1に配置される。また、吸込口24は第一ヒータ部52aにより加温される第一加温対象領域R1に配置された状態となる。
【0074】
このように、第二センサ82b及び第三センサ82cによりスライダ部44が検知された状態になると、制御部90は、
図9(a)に示すように第一ヒータ部52a及び第二ヒータ部52bを発熱状態(オン)とし、第三ヒータ部52cを発熱状態(オン)又は非発熱状態(オフ)とする通電制御を行う。これにより、第一加温対象領域R1及び第二加温対象領域R2の貯留液1は加温され、第三加温対象領域R3の貯留液1は加温されない状態又は予備加温される状態となる。なお、第三加温対象領域R3を発熱状態とした場合には、第二加温対象領域R2の貯留液1を予備加温することができる。なお、本発明のポンプ装置は、貯留液の状態に応じて、ポンプ部の吸込口に対応する位置にある加温対象領域が加温されない状態としてもよい。例えば、
図8(a)のように、ポンプ部20の吸込口24に対応する位置にある第一加温対象領域R1の貯留液1が所定の温度域まで加温された後であって、第一加温対象領域R1の貯留液1の汲み出しが間もなく終了するタイミングでは、第一加温対象領域R1の第一ヒータ部52aを非発熱状態(オフ)としてもよい。
【0075】
また、
図8(a)に示す状態から、貯留液1の汲み出しに伴って貯留液1の残量が変化すると、ポンプ装置10は、スライダ部44を上昇させて液面Fがフォロープレート70の押圧面70aと接触するように容器2を変位させる。例えば、
図8(b)に示すとおり、貯留液1の残量変化に伴って液面Fが容器2の変動方向Xに対する位置を距離L1分変位すると、スライダ部44もこれに伴って変動方向Xに距離L1移動する。
【0076】
図8(b)に示すとおり、スライダ部44が変動方向Xに距離L1上昇すると、スライダ部44は第一センサ82a及び第二センサ82bの双方と隣接する位置Ps2に配置され、吸込口24は第二ヒータ部52bにより加温される第二加温対象領域R2に配置された状態となる。
【0077】
このように、第一センサ82a及び第二センサ82bによりスライダ部44が検知された状態になると、制御部90は、
図9(b)に示すとおり、第一ヒータ部52aを非発熱状態(オフ)とし、第二ヒータ部52bを発熱状態(オン)とし、第三ヒータ部52cを発熱状態(オン)とする制御を行う。これにより、第一加温対象領域R1は加温されない状態となり、第二加温対象領域R2及び第三加温対象領域R3は加温される状態となる。
【0078】
このように、ポンプ装置10は、吸込口24が配置される加温対象領域Rと他の加温対象領域Rとの加温状態を異ならせることができる。これにより、ポンプ装置10は、吸込口24が配置される加温対象領域Rの貯留液1を加温して、他の加温対象領域Rの貯留液1を加温しない又は比較的低い温度で加温する。これにより、ポンプ装置10は、吸込口24の近傍の貯留液1を加温して粘度を低下させ、円滑に汲み出しを行うとともに、未だ汲み出し対象領域に到達しない貯留液1が加温され続けることを抑制し、貯留液1の液性が変質することを抑制することができる。
【0079】
上記において説明のとおり、ポンプ装置10は、検知部80により検知された検知情報に基づき、吸込口24が配置されている加温対象領域R及び液面Fの減少方向にある加温対象領域Rを、他の加温対象領域Rよりも高温となるように加温させる制御を行うことができる。
【0080】
上述のとおり、第二センサ82b及び第三センサ82cによりスライダ部44が検知された場合は、吸込口24が第一加温対象領域R1に配置された状態となる。この場合において、第一ヒータ部52a及び第二ヒータ部52bを発熱状態(オン)とし、第三ヒータ部52cを非発熱状態(オフ)とすることができる。これにより、第一加温対象領域R1に配置された吸込口24近傍の貯留液1及び液面Fの減少方向にある第二加温対象領域R2の貯留液1を加温し、他の加温対象領域Rの貯留液1が必要以上に加温され続けることを抑制することができる。
【0081】
また、ポンプ装置10は、検知部80により検知された検知情報に基づき、吸込口24の位置を判定して、吸込口24が配置されている加温対象領域R及びこれに隣接する加温対象領域を加温させる制御を行うことができる。
【0082】
このように、第二センサ82b及び第三センサ82cによりスライダ部44が検知された場合は、吸込口24が第一加温対象領域R1に配置された状態となる。この場合において、第一ヒータ部52a及び第二ヒータ部52bを発熱状態(オン)とし、第三ヒータ部52cを非発熱状態(オフ)とする。これにより、第一加温対象領域R1に配置された吸込口24近傍の貯留液1を加温すると共に隣接する貯留液1を予備加温し、他の加温対象領域Rの貯留液1が必要以上に加温され続けることを抑制することができる。なお、本発明のポンプ装置は、吸込口に対応する位置にある一の加温対象領域の貯留液を加温し、液面の減少方向にある加温対象領域の貯留液を予備加温又は加温しない制御が行われるものであってもよい。
【0083】
さらに、本発明のポンプ装置は、検知部として、センサに代わりエンコーダやリミットスイッチなど被検知部材の変位量を検知可能なものを用いてもよい。
【0084】
なお、上述のヒータ部52の切り替え制御は、後述する第二実施形態におけるポンプ装置100においても同様に適用することができる。
【0085】
<第二実施形態>
続いて、本発明の第二実施形態に係るポンプ装置100について説明する。ポンプ装置100は、台座部12、支柱部14、ポンプ部20、昇降装置40、フォロープレート70、検知部80、及び制御部90を有している。なお、これらの構成は、第一実施形態に係るポンプ装置10の各構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0086】
図10に示すとおり、ポンプ装置100は、上述の構成に加え、容器側加温装置150、及び通電調整装置160を有している。
【0087】
本実施形態の容器側加温装置150は、4つのヒータ部152を備えている。より具体的には、容器側加温装置50は、第一ヒータ部152a、第二ヒータ部152b、第三ヒータ部152c、及び第四ヒータ部152dを備えている。容器側加温装置150は、これらの4つのヒータ部152を変動方向Xに配列させた構成とされている。また、第一実施形態におけるヒータ部52と同様に、ヒータ部152は、通電されることにより発熱する発熱状態とされ、通電が遮断されると発熱しない非発熱状態とされる。
【0088】
容器側加温装置150は、各ヒータ部152を発熱させることにより、4つの加温対象領域R100において貯留液1を加温可能とされている。より具体的には、容器側加温装置150は、第一ヒータ部152aを発熱させることにより第一加温対象領域R101において貯留液1を加温可能とされている。同様に、容器側加温装置150は、第二ヒータ部152bを発熱させることにより第二加温対象領域R102において貯留液1を加温し、第三ヒータ部152cを発熱させることにより第三加温対象領域R103において貯留液1を加温し、第四ヒータ部152dを発熱させることにより加温第四加温対象領域R104において貯留液1を加温可能とされている。
【0089】
通電調整装置160は、2つのスイッチ部162(通電調整部)及び2つの電源チャンネル166により、4つの電源回路164への通電調整を行えるようにしたものである。具体的には、通電調整装置160は、スイッチ部162として、いわゆる2極双投型のスイッチを採用することにより、1度のスイッチ部162の操作で2つの電源回路164を開閉可能としている。
【0090】
具体的には、2つ設けられたスイッチ部162のうち、1つめのスイッチ部162xは、第一の電源チャンネル166aに接続されている。スイッチ部162xの第一極162aには、第一ヒータ部152aに繋がる電源回路164aが接続され、第二極162cには、第三ヒータ部152cに繋がる電源回路164cが接続されている。そのため、スイッチ部162xを切り替え操作することにより、第一ヒータ部152a及び第三ヒータ部152cのうちいずれか一方を通電状態(発熱状態)とし、他方を非通電状態(非発熱状態)とすることができる。
【0091】
また、2つめのスイッチ部162yは、第二の電源チャンネル166bに接続されている。スイッチ部162yの第一極162bには、第二ヒータ部152bに繋がる電源回路164bが接続され、第二極162dには、第四ヒータ部152dに繋がる電源回路164dが接続されている。そのため、スイッチ部162yを切り替え操作することにより、第二ヒータ部152b及び第四ヒータ部152dのうちいずれか一方を通電状態(発熱状態)とし、他方を非通電状態(非発熱状態)とすることができる。
【0092】
通電調整装置160は、上述したような構成とされているため、2つのスイッチ部162x,162yにおいて導通状態とされる接点の組み合わせを変更することにより、第一ヒータ部152a、第二ヒータ部152b、第三ヒータ部152c、及び第四ヒータ部152dからなる4つのヒータ部152への通電制御(発熱制御)を行うことができる。
【0093】
例えば、
図11に示すとおり、第一のスイッチ部162xにおいて第一極162aをオン状態とすると、第二極162cはオフ状態となる。また、第二のスイッチ部162yにおいて第一極162bをオン状態とすると、第二極162dはオフ状態となる。このようにスイッチ部162x,162yを操作することにより、ポンプ装置100は、第一ヒータ部152a及び第二ヒータ部152bに通電させて発熱させ、第一加温対象領域R101及び第二加温対象領域R102にある貯留液1を加温することができる。
【0094】
また、例えば、
図12に示すとおり、第一のスイッチ部162xにおいて第一極162aをオフ状態とすると、第二極162cはオン状態となる。また、第二のスイッチ部162yにおいて第一極162bをオン状態とすると、第二極162dはオフ状態となる。このようにスイッチ部162x,162yを操作することにより、ポンプ装置100は、第二ヒータ部152b及び第三ヒータ部152cに通電させて発熱させ、第二加温対象領域R102及び第三加温対象領域R103にある貯留液1を加温することができる。
【0095】
本実施形態のポンプ装置100のように、複数(本実施形態では2つ)の接点を備えた多投型スイッチ(本実施形態では2極双投型のスイッチ)をスイッチ部162として採用することにより、スイッチ部162及び電源チャンネル166を最小限に抑制しつつ、加温が必要な箇所にあるヒータ部152をきめ細かく作動制御することができる。従って、上述した構成によれば、ポンプ装置100の装置構成及び制御方法をより一層簡略化させることができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態に係るポンプ装置10及びポンプ装置100ついて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【0097】
上述の実施形態では、ヒータ部(加温部)を通電させることにより、ヒータ部を発熱状態(オン)及び非発熱状態(オフ)のいずれかに切り替え可能とした例を示したが、ヒータ部により制御される加温状態はこれに限定されない。例えば、本発明のポンプ装置は、加温部の発熱状態を段階的あるいは無段階に切り替え可能としてもよい。具体的には、本発明のポンプ装置は、温度の異なる2以上の発熱状態に切り替え可能として、一部の加温対象領域の加温状態と他の加温対象領域の加温状態とを異ならせてもよい。
【0098】
また、上述のポンプ装置10は、容器側加温装置50を容器2の周方向の全域に設けた例を示したが、本発明のポンプ装置はこれに限定されない。例えば、本発明のポンプ装置の容器側加温装置は、容器2の周囲にヒータ部等の発熱装置を周方向において断続的に設けたものであってもよい。
【0099】
本実施形態では、容器側加温装置50,150に加え、フォロープレート70側にもプレート側加温装置72を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、プレート側加温装置72を設けないこととしても良い。また、プレート側加温装置72に代えて、あるいはプレート側加温装置72に加えて、他の加温装置を設けるなどしても良い。
【0100】
さらに、本発明のポンプ装置の汲み上げ対象とされた貯留液1は、いかなる形状の容器に収容されたものであってもよい。例えば、容器は、ペール缶、ドラム缶等の円形の断面形状を有するもののほか、一斗缶等の略矩形の断面形状を有するものであってもよい。
【0101】
また、上述の実施形態では、容器2を変動方向Xに移動可能とし、ポンプ部20の位置を維持する構成としたが、本発明のポンプ装置はこれに限定されない。例えば、本発明のポンプ装置は、容器の位置を維持するものとし、ポンプ部を移動可能なものとしてもよい。さらに、本発明のポンプ装置は、移動装置によりポンプ部及び容器側加温装置の双方又は一方を移動可能としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のポンプ装置は、ペール缶等の容器に貯留されているシール剤や食品材料等の貯留液を汲み出すポンプに好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 貯留液
2 容器
10,100 ポンプ装置
20 ポンプ部
24 吸込口
26 ステータ
28 ロータ
40 昇降装置
50,150 容器側加温装置
52,152 ヒータ部
60,160 通電調整装置
62,162 スイッチ部(通電調整部)
64,164 電源回路
70 フォロープレート
72 プレート側加温装置
80 検知部
82 センサ
F 液面
R 加温対象領域
R1,R100 第一加温対象領域
R100 加温対象領域
X 変動方向