IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立成功大学の特許一覧

特許7071744線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置
<>
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図1
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図2A
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図2B
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図3
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図4
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図5
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図6
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図7
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図8
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図9
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図10
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図11
  • 特許-線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】線維症のコンピューター補助分析方法と電子装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/155 20170101AFI20220512BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20220512BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220512BHJP
【FI】
G06T7/155
G01N33/48 M
G01N33/48 Z
G06T7/00 630
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019153511
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2020035444
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2019-10-18
(31)【優先権主張番号】62/723,460
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】108127947
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504455908
【氏名又は名称】国立成功大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チュン チャン パウ-チョー
(72)【発明者】
【氏名】周 楠華
(72)【発明者】
【氏名】蔡 弘文
(72)【発明者】
【氏名】鄭 國順
(72)【発明者】
【氏名】黄 俊承
【審査官】山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】吉野 進也 Shin'ya YOSHINO,慢性肝炎の生検組織像における線維化の定量的評価,電気学会論文誌C Vol.115-C No.12 The Transactions of The Institute of Electrical Engineers of Japan,日本,社団法人電気学会,1995年11月20日,第115-C巻
【文献】木谷 拓也 Takuya Kitani, 暗視野画像を利用した肝病理組織標本画像からの線維と核位置の抽出,FIT2008 第7回情報科学技術フォーラム 講演論文集 第2分冊 査読付き論文・一般論文 データベース 自然言語・音声・音楽 人工知能・ゲーム 生体情報科学 Forum on Information Technology 2008,日本,社団法人電子情報通信学会 社団法人情報処理学会,2008年08月20日,p.455-p.456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
G01N 33/48
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコマンドを記憶するメモリと、
前記コマンドを実行して複数の工程を完成するためのプロセッサと、
を備え、
前記複数の工程は、
医療画像をとって、前記医療画像に対して畳み込みニューラルネットワークである分割演算法を行って、繊維部と細胞部を含む分割映像をとる工程と、
前記分割映像に基づいて前記医療画像における少なくとも1つの環状繊維を検出する工程と、
前記少なくとも1つの環状繊維のサイズによって画分を決める工程と、
を含む電子装置。
【請求項2】
前記分割映像に基づいて前記医療画像における前記少なくとも1つの環状繊維を検出する工程は、
前記繊維部を取り除き、前記細胞部に対して少なくとも1つのエロージョンプログラムを行って少なくとも1つの包囲領域を取得する工程と、
前記少なくとも1つの包囲領域の円形度を計算する工程と、
前記少なくとも1つの包囲領域の前記円形度が第1の閾値よりも大きくなると、前記少なくとも1つの包囲領域が前記環状繊維であると判断する工程と、
を含む請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記円形度は、以下の方程式(1)によって計算され、
【数1】
ただし、
【数2】
が前記円形度であり、Aが前記少なくとも1つの包囲領域の面積であり、Pが前記少なくとも1つの包囲領域の周長である請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの環状繊維のサイズによって画分を決める工程は、
前記少なくとも1つの環状繊維の面積の総和を前記細胞部の面積で除算して比率を取得する工程と、
前記比率が第2の閾値以上になると、前記画分を第1の画分に設定するが、でなければ、前記画分を第2の画分に設定し、前記第1の画分が前記第2の画分よりも大きい工程と、
を含む請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
前記複数の工程は、
前記医療画像における複数の門脈域と複数の中心静脈を検出する工程と、
前記分割映像に基づいて前記門脈域と前記中心静脈のブリッジ数を計算する工程と、
前記ブリッジ数によって前記画分を第3の画分又は第4の画分に設定する工程と、
を更に含む請求項4に記載の電子装置。
【請求項6】
前記分割映像に基づいて前記門脈域と前記中心静脈の前記ブリッジ数を計算する工程は、
前記門脈域と前記中心静脈を複数のノードとする工程と、
前記ノードに対して三角化演算法を行って各々の前記ノードの隣接ノードを判断する工程と、
各々の前記ノードに対して、前記分割映像に基づいて前記ノードが前記繊維部によって対応する前記隣接ノードに接続されるかを判断して、前記ブリッジ数を計算する工程と、
を含み、
前記ブリッジ数によって前記画分を前記第3の画分又は前記第4の画分に設定する工程は、
前記ブリッジ数と辺数との間の比率が第3の閾値よりも大きいかを判断し、そうであれば、前記画分を前記第3の画分に設定するが、でなければ、前記画分を前記第4の画分に設定し、前記第3の画分が前記第4の画分よりも大きく、前記辺数が(3n-3-k)であり、nが前記ノードの数であり、kが前記ノードからなるコンベックスフル(convex hull)のノードの数である工程、
を含む請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記分割映像に基づいて前記門脈域と前記中心静脈の前記ブリッジ数を計算する工程は、
前記門脈域と前記中心静脈を複数のノードとし、前記ノードの間の距離を辺として図を形成する工程と、
前記図を各々の前記ノードの対応する隣接ノードを指示するツリー構造に変換する工程と、
各々の前記ノードに対して、前記分割映像に基づいて前記ノードが前記繊維部によって対応する前記隣接ノードに接続されるかを判断して、前記ブリッジ数を計算する工程と、
を含み、
前記ブリッジ数によって前記画分を前記第3の画分又は前記第4の画分に設定する工程は、
前記繊維部によって接続される前記ノードの数とすべての前記ノードの数との間の比率が第3の閾値よりも大きいかを判断し、そうであれば、前記画分を前記第3の画分に設定するが、でなければ、前記画分を前記第4の画分に設定する工程、
を含む請求項5に記載の電子装置。
【請求項8】
前記複数の工程は、
各々の前記門脈域に対して、前記分割映像に基づいて前記門脈域における前記繊維部の面積と前記門脈域の面積との間の比率が第4の閾値よりも大きいかを判断し、そうであれば、前記門脈域が門脈拡張であると判断し、拡張数が前記門脈域にいくつの門脈域が門脈拡張であるかを示す工程と、
前記拡張数によって前記画分を第5の画分、第6の画分又は第7の画分に設定する工程と、
を更に含む請求項7に記載の電子装置。
【請求項9】
前記複数の工程は、
前記拡張数と前記門脈域の数との間の比率が第5の閾値よりも大きくなると、前記画分を前記第5の画分に設定する工程と、
前記拡張数と前記門脈域の数との間の比率が前記第5の閾値以下であり且つゼロよりも大きくなると、前記画分を前記第6の画分に設定する工程と、
前記拡張数がゼロであると、前記画分を前記第7の画分に設定する工程と、
を更に含む請求項8に記載の電子装置。
【請求項10】
電子装置に適用されるコンピューター補助分析方法において、
医療画像をとって、前記医療画像に対して畳み込みニューラルネットワークである分割演算法を行って繊維部と細胞部を含む分割映像をとる工程と、
前記分割映像に基づいて前記医療画像における少なくとも1つの環状繊維を検出する工程と、
前記少なくとも1つの環状繊維のサイズによって画分を決める工程と、
を備える線維症のコンピューター補助分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画分を客観的に計算できる線維症のコンピューター補助分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝線維症は、慢性B肝又はC肝患者の一般的な変化であり、次第に肝硬変や肝癌に進行する可能性があり、如何に早期に肝線維症の程度を診断して適切な治療を行うかは、疾患の進行を防ぐための重要な課題である。しかしながら、従来の線維症の病期分類方法は、医師の主観的判断に依存するので、如何に客観的なコンピューター補助の病期分類方法を提供するかは、当業者の関心のある問題である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施例は、複数のコマンドを記憶するメモリと、コマンドを実行して複数の工程を完成するためのプロセッサと、を備え、前記複数の工程は、医療画像を取って、医療画像に対して分割演算法を行って、繊維部と細胞部を含む分割映像を取る工程と、分割映像に基づいて医療画像における少なくとも1つの環状繊維を検出する工程と、少なくとも1つの環状繊維のサイズによって画分を決める工程と、を含む電子装置を提出する。この電子装置によって、画分を客観的に計算することができる。
【0004】
いくつかの実施例において、分割映像に基づいて医療画像における環状繊維を検出する工程は、繊維部を取り除き、細胞部に対して侵食プログラムを行って繊維により囲まれる包囲領域を取得する工程と、包囲領域の囲まれた程度を計算する工程と、包囲領域の程度が第1の閾値よりも大きくなると、包囲領域が環状繊維であると判断する工程と、を含む。
【0005】
いくつかの実施例において、前記環状繊維の判断は、また円形度によって可能性のある誤判定を除去することができる。円形度は、以下の方程式(1)によって計算され、ただし、
【数1】
円形度であり、Aが包囲領域の面積であり、Pが包囲領域の周長である。
【数2】
【0006】
いくつかの実施例において、前記環状繊維のサイズによって画分を決める工程は、環状繊維の面積の総和を細胞部の面積で除算して比率を取得する工程と、この比率が第2の閾値以上になると、画分を第1の画分に設定するが、でなければ、画分を第2の画分に設定し、第1の画分が第2の画分よりも大きい工程と、を含む。
【0007】
いくつかの実施例において、前記工程は、医療画像における複数の門脈域と複数の中心静脈を検出する工程と、分割映像に基づいて門脈域と中心静脈のブリッジ数を計算する工程と、ブリッジ数によって画分を第3の画分又は第4の画分に設定する工程と、を更に含む。
【0008】
いくつかの実施例において、前記分割映像に基づいて門脈域と中心静脈のブリッジ数を計算する工程は、門脈域と中心静脈を複数のノードとする工程と、ノードに対して三角化演算法を行って各々のノードの隣接ノードを判断する工程と、各々のノードに対して、分割映像に基づいてノードが繊維部によって対応する隣接ノードに接続されるかを判断して、ブリッジ数を計算する工程と、を含み、前記ブリッジ数によって画分を第3の画分又は第4の画分に設定する工程は、ブリッジ数と辺数との間の比率が第3の閾値よりも大きいかを判断し、そうであれば、画分を第3の画分に設定するが、でなければ、画分を第4の画分に設定し、第3の画分が第4の画分よりも大きく、辺数が(3n-3-k)であり、nがノードの数であり、kがノードからなるコンベックスフル(convex hull)のノードの数である工程、を含む。
【0009】
いくつかの実施例において、ブリッジ数を計算する工程は、門脈域と中心静脈を複数のノードとし、ノードの間の距離を辺として図を形成する工程と、この図によって各々のノードの対応する隣接ノードを指示するためのツリー構造を構築する工程と、各々のノードに対して、分割映像に基づいてこのノードが繊維部によって対応する隣接ノードに接続されるかを判断して、ブリッジ数を計算する工程と、を含む。ある実施例において、前記ブリッジ数によって画分を第3の画分又は第4の画分に設定する工程は、繊維部によって他のノードに接続されるノードの数とすべてのノードの数との間の比率が閾値よりも大きいかを判断し、そうであれば、画分を第3の画分に設定するが、でなければ、画分を第4の画分に設定する工程、を更に含む。
【0010】
いくつかの実施例において、前記工程は、各々の門脈域に対して、分割映像に基づいて門脈域における繊維部の面積と門脈域の面積との間の比率が第4の閾値よりも大きいかを判断し、そうであれば、門脈域が門脈拡張であると判断し、拡張数が門脈域にいくつの門脈域が門脈拡張であるかを示す工程と、拡張数によって画分を第5の画分、第6の画分又は第7の画分に設定する工程と、を更に含む。
【0011】
いくつかの実施例において、前記工程は、拡張数と門脈域の数との間の比率が第5の閾値よりも大きくなると、画分を第5の画分に設定する工程と、拡張数と門脈域の数との間の比率が第5の閾値以下であり且つゼロよりも大きくなると、画分を第6の画分に設定する工程と、拡張数がゼロであると、画分を第7の画分に設定する工程と、を更に含む。
【0012】
一方、本発明の実施例は、電子装置に適用されるコンピューター補助分析方法において、医療画像をとって、医療画像に対して分割演算法を行って繊維部と細胞部を含む分割映像をとる工程と、分割映像に基づいて医療画像における環状繊維を検出する工程と、環状繊維のサイズによって画分を決める工程と、を備えるコンピューター補助分析方法を提出する。
【0013】
本発明の上記特徴、及びメリットをより分かりやすくするために、下文では、特に実施例を挙げて、添付の図面に合わせて、下記のように説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施例による電子装置を示す模式図である。
図2A】いくつかの実施例による医療画像と分割映像を示す模式図である。
図2B】いくつかの実施例による医療画像と分割映像を示す模式図である。
図3】一実施例による環状繊維を判断することを示す模式図である。
図4】一実施例による部分医療画像を示す模式図である。
図5】一実施例による部分医療画像を示す模式図である。
図6】一実施例による部分医療画像を示す模式図である。
図7】一実施例による三角化後の様子を示す模式図である。
図8】一実施例による分割映像におけるノードを示す模式図である。
図9】一実施例による三角化後のいくつかのノードからなるコンベックスフルを示す模式図である。
図10】一実施例による接続マトリックスを構築することを示す模式図である。
図11】一実施例による環が取り除かれた様子を示す模式図である。
図12】一実施例による線維症のコンピューター補助分析方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に使用される「第1の」、「第2の」等については、順序又は順位を特定する意味ではなく、同一の技術用語で記述される素子又は操作を区別するためのものだけである。
【0016】
図1は、一実施例による電子装置を示す模式図である。図1を参照すると、電子装置100は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピューター、ノート型パソコン、工業用パソコン、或いは計算能力を持つ様々な電子機器又は医療機器等であってよいが、本発明はこれらに限定されない。電子装置100は、プロセッサ110と、メモリ120と、を備え、プロセッサ110は中央プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、画像処理チップ、特殊用途集積回路等であってよいが、メモリ120は複数のコマンドが記憶される揮発性メモリ又は非揮発性メモリであってよいが、プロセッサ110はこれらのコマンドを実行して線維症病期分類方法を完成する。まず、イシャク(Ishak)線維症画分を紹介し、以下の表1を参照されたい。
【表1】
【0017】
表1の線維症画分は、医師の主観的判断に依存し、以下、客観的な線維症病期分類方法を提出する。まず、肝臓組織スライススキャン画像であってよい医療画像をとって、図2Aの例において、医療画像210は肝臓組織のスライス画像であるが、他の実施例において、他の臓器の医療画像であってもよいが、本発明はこれらに限定されない。次に、医療画像210に対して分割(segmentation)演算法を行って、各ピクセルが繊維であるかを示す二値化画像である分割映像220をとる。いくつかの実施例において、前記分割演算法としては、畳み込みニューラルネットワークを採用するが、他の実施例において任意の分割演算法を採用してもよく、本発明はこれらに限定されない。例として、トレーニング段階では、畳み込みニューラルネットワークは、入力が医療画像であり、出力が繊維を人工的に付された二値化画像である。テスト段階では、医療画像210をトレーニング済み畳み込みニューラルネットワークに入力してよく、この畳み込みニューラルネットワークが分割映像220を出力する。上記実施例において、分割映像220は二値化画像であるが、他の実施例において、生じた分割映像により多くのカテゴリを有してもよい。例として、図2Bを参照すると、医療画像310と医療画像330の何れも肝臓組織のスライススキャン画像であり、分割映像320は医療画像310に対して分割を行った結果であり、分割映像340は医療画像330に対して分割を行った結果である。分割映像320は、細胞部321、血管部322、胆管部323及び繊維部324を含む。分割映像340は、細胞部341、血管部342及び繊維部343を含む。他の実施例において、他のカテゴリに分けることもでき、本発明はこれに限定されない。
【0018】
次に、分割映像によって医療画像における環状繊維を検出し、この環状繊維とは、繊維により囲まれた肝細胞であり、結節(nodule)とも言われる。分割映像において細胞部と繊維部が分離されているため、繊維部を取り除くと、環状繊維は肝細胞を残し、その大部分の形が円形状に近似している。しかし、このような作法では、繊維により完全に囲まれた肝細胞しか見つけることができず、実際には、肝細胞がある比率で(例えば75%)囲まれるようになると、環状繊維と判断することができる。従って、ここで、分割映像における繊維部を取り除き、包囲領域を取得するために、残りの細胞部に対して画像処理の侵食(erosion)プロセスを実行することができ、ある領域における肝細胞の75%以上が繊維に囲まれるようになると、侵食プログラムは、囲まれていない肝細胞を除去して、残りの肝細胞を独立させる(他の肝細胞に接続されない)。図3を参照すると、分割映像350は、細胞部351と繊維部352を含み、繊維部352を取り除いて細胞部351に対して侵食プログラムを実行した後で画像360が得られ、異なるグレースケールによって、例えば包囲領域361~365のようなそれぞれ独立した包囲領域を表す。
【0019】
次に、各包囲領域の円形度を計算し、円形度が閾値よりも大きくなると環状繊維であると判断することができる。いくつかの実施例において、前記円形度として、以下の方程式(1)を採用することができる。
【数3】
【0020】
ただし、
【数4】
が円形度であり、Aが包囲領域の面積であり、Pが包囲領域の周長であり、円形度が大きいほど、包囲領域が円形に近似している。この実施例において、包囲領域の長軸(領域内の最も遠い2点間の距離)が1cm以上であり且つ円形度が0.3以上である場合に環状繊維であると判断される。例えば、画像370に環状繊維371~374がしめされ、残りの包囲領域が環状繊維ではない。いくつかの実施例において、繊維部352を取り除いた後でも細胞部351に対して侵食プログラムを複数回行ってよく、毎回の侵食プログラムで異なるコアを採用し、毎回の侵食プログラムの後で上記円形度の計算を行い環状繊維であるかを判断し、これらの判断の結果に対して和集合を取り、つまり包囲領域は、何れの侵食プログラムで環状繊維であると判断されると、環状繊維である。コアが小さい侵食プログラムを使う場合、包囲領域361~365の間の繋がる肝細胞を遮断することはできないため、包囲領域361~365が見つからないので、複数回の侵食プログラムを行う。
【0021】
環状繊維を判断した後で、これらの環状繊維のサイズによって画分を5点又は6点と決めることができる。具体的に、すべての環状繊維371~374の面積総和を分割映像のすべての細胞部351の面積で除算して比率を取得することができ、この比率が閾値以上になると、画分を6点に設定するが、でなければ、画分を5点に設定する。
【0022】
医療画像に環状繊維がない場合、画分が0~4点の内の1つであると示す。線維症が厳しい場合、門脈域と中心静脈には繊維ブリッジがあるので、画分が3点又は4点である。繊維ブリッジがない場合、0~2点の内の1つである。従って、次に、医療画像210における門脈域(portal area)と中心静脈(central vein)を検出し、検出された門脈域と中心静脈は図4のようにバウンディングボックス(bounding box)で囲まれ、一部の拡大医療画像410に門脈域411~413がある。上記検出工程は、畳み込みニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等のような画像分析又は任意の機械学習演算法を採用してよいが、本発明はこれらに限定されない。いくつかの実施例において、機械学習モデルを訓練して門脈域と中心静脈を検出し、又は2つの機械学習モデルを訓練してそれぞれ門脈域と中心静脈を検出することができる。
【0023】
ここに、繊維ブリッジがないことを説明し、この場合、門脈域に繊維拡張があるかを判断する必要がある。具体的には、各門脈域について、繊維部の面積とゲート領域の面積の比率が臨界値(例えば50%)よりも大きいかを判断でき、そうであれば、門脈域に門脈拡張があると判断することができる。この門脈域の面積とは、繊維部の面積に血管部又は細胞部の面積を加えたものを指し、これらの面積の何れも上記の分割映像に基づいて得られる。例として、図5の例において、門脈域は、繊維性部分510と非繊維性部分520を有し、図5の例において、繊維性部分510の面積と門脈域全体の面積との間の比率が50%以下であるため、この門脈域に門脈拡張がない。図6の例において、門脈域は繊維性部分610と非繊維性部分620を有するが、繊維性部分610の面積と全体門脈域の面積との間の比率がもう50%よりも大きくなるため、この門脈域に門脈拡張がある。
【0024】
ここで、拡張数は、医療画像においていくつかの門脈領域が門脈拡張を有するかを示している。拡張数とすべての門脈域の数との間の比率が閾値(例えば50%)よりも大きくなると、画分を2画分に設定する。拡張数とすべての門脈域の数との間の比率が50%以下であり且つ1つの閾値(例えば0、1、2又は他の適切な数値)よりも大きくなると、画分を1画分に設定し、拡張数がこの閾値(例えば0)以下になると、画分を0画分に設定する。これらの比率は、一致する演算法に従って調整することもでき、すべてこの特許の範囲に属す。
【0025】
ここに、繊維ブリッジがあることを説明し、線維症の程度が厳しい場合、門脈域又は中心静脈の繊維は周りの隣接する門脈域又は中心静脈に接続されてブリッジ繊維を形成するので、門脈域と中心静脈の間のブリッジの数を計算しなければならない。注意すべきなのは、このブリッジ数は2つの門脈域の間のブリッジ、2つの中心静脈の間のブリッジ、及び門脈域と中心静脈の間のブリッジを含む。具体的には、医療画像におけるすべての門脈域と中心静脈を複数のノードとし、これらのノードに対して三角化演算法を行って、結果が図(graph)であり、複数のノードと複数の辺を含み、例えば図7のように、この三角化演算法は例えばDelaunay Triangulationであるが、本発明はこれらに限定されない。三角化の後、各ノードの何れも三角形の辺により付近の複数のノード(隣接ノードともいう)に接続され、三角化後の各ノードに対して、何れも上記の分割映像に基づいてこのノードが繊維により対応する隣接ノードに接続されるかを判断することができる。例として、図8を参照すると、図8においてノード801~808を分割映像に示して、ノード801~808の間にブリッジ繊維があるかが見られる。上記のように、各ノード801~808の何れも1つの門脈又は中心静脈に対応し、いくつかの実施例においてノード801~808の座標が対応するバウンディングボックスの中心点である。ノード804を例として、三角化の結果により、ノード804はノード801、806、808と805と隣接するが、ノード804とノード801の間にブリッジ繊維がなく、ノード804とノード805、806、808の間にブリッジ繊維(ブリッジ数に3を加えてよい)があり、つまり、ブリッジ数が大きいほど、線維症の程度が厳しくなることを示す。上記ブリッジがあるかの判断は幅優先検索(breadth first search)を採用でき、これにより2つのノードの間に連続的な繊維の接続があるかを判断するが、他の実施例において他の適切な演算法により2つのノードの間が繊維により接続されるかを判断でき、本発明はこれらに限定されない。
【0026】
図9は、一実施例による三角化後のいくつかのノードからなるコンベックスフルを示す模式図である。図9を参照すると、上記の三角化の後、共に(2n-2-k)の三角形及び(3n-3-k)の辺が形成され、ただし、nがすべてのノードの数であり、kがこれらのノードからなるコンベックスフル910(convex hull)におけるノードの数であり、(3n-3-k)が辺数とも言われ、(2n-2-k)が三角形数とも言われる。上記ノードの間が繊維により互いに接続されるかを判断する工程はこの(3n-3-k)の辺がブリッジ繊維であるかを検査する。いくつかの実施例において、前記ブリッジ数と辺数(3n-3-k)の比率が閾値(例えば50%)よりも小さいと、画分を3画分と判定し、でなければ、画分を4画分と判定する。
【0027】
いくつかの実施例において、門脈域と中心静脈をノードとした後、ノードの間の距離を辺として1つの完全な接続図を形成してから、この完全な接続図を1つのツリー構造(例えば最小重みスパニングツリー又は他のツリー構造)に変換し、このツリー構造は、各ノードの対応する隣接ノードを指示することに用いられる。各ノードに対して、このノードが繊維部により対応する隣接ノードに接続されるかを判断して、ブリッジ数を計算することができる。いくつかの実施例において、ブリッジ数をすべてのノードの数(即ち正整数n)で除算して比率を取得することができ、この比率が閾値よりも大きくなると4画分と判定し、でなければ、3画分と判定する。いくつかの実施例において、繊維部により互いに接続されるノードの数とすべてのノードの数との間の比率が閾値よりも大きいかを計算することができ、そうであれば4画分と判定し、でなければ、3画分と判定する。
【0028】
上記の0~6画分は一例だけであり、他の実施形態では画分に他の数値を用いてもよいし、任意の記号や文字で画分を表してもよく、本発明はこれに限定されない。言い換えれば、上記の0~6画分は、第7~第1の画分と呼ばれることもあるが、本発明は、第7~第1の画分に含まれる数字、符号又は単語を限定しない。
【0029】
いくつかの実施例において、前記環状繊維は、ブリッジの情况により判断されてよく、これはノードの間が繊維彼により互いに接続され且つ1つの環(circle)を形成するためであり、例えば図8のノード804、806、808の間に1つの環が形成される。すべての環の数を計算するために、ノードとノードの間の隣接関係により接続マトリックスを構築してよく、例として、図10において図(graph)1010を示し、図1010におけるノードが上記の門脈域と中心静脈であり、図1010における各辺がブリッジ繊維を示し、図1010のノードと辺により接続マトリックス1020を構築することができ、例えばノードAとノードBの間に辺(即ちこの2つの門脈域/中心静脈の間にブリッジ繊維があり)があるが、ノードBとノードDの間に辺がなく、このように類推する。この接続マトリックス1020により複数の環を判断することができ、例えば、論文「Finding All the Elementary Circuits of a Directed Graph」by D.B. Johnson,1975に開示された演算法を採用するが、本発明はこれらに限定されない。
【0030】
図11は、一実施例による複数の環を示す模式図である。図11の例において、共に3つの環1110~1112があり、環1110が4つのノードを有し、環1111と環1112の何れも3つのノードがあり、一方、環1111と環1112との和集合が環1110として構成される。上記Johnson演算法の結果は、共に4つの環があると指摘するが、このようにして繰り返して線維症の状況を計算するので、繰り返して計算する環を取り除かなければならない。具体的には、各環に対して、この環が他の環の和集合であるかを判断し、この判断工程は、以下の方程式(2)の通りに書かれてよい。
【数5】
【0031】
ただし、Ci、Cjは環を示す。方程式(2)が成立すると、環Ciを取り除き、すべての環に対して上記方程式(2)の判断を行った後、残りの環が他の環の和集合ではなくなり、繰り返して計算しなく、残りの環の合計は環数と呼ばれる。例えば、図11の実施例において環1110は取り除かれ、残りの環1111、1112がカウントされる。一方、上記環を見つけて重複環を取り除く工程は(2n-2-k)の三角形からブリッジ繊維からなる三角形を見つけることである。次に、この環数と上記三角形数(2n-2-k)の間の比率が閾値(例えば50%)よりも小さいかを判断し、そうであれば、画分を5画分に設定するが、でなければ、画分を6画分に設定する。
【0032】
図12は、一実施例による線維症のコンピューター補助分析方法のフロー図である。図12を参照すると、工程1201において、医療画像に対して分割演算法を行って分割映像をとる。工程1202において、環状繊維があるかを判断する。環状繊維があると、工程1203において、環状繊維のサイズによって画分5又は6を決める。環状繊維がないと、工程1204において門脈域と中心静脈を検出する。工程1205において、ブリッジがあるかを判断する。門脈域と中心静脈がブリッジを有すると、工程1206においてブリッジ数によって画分3又は4を決める。ブリッジがないと、工程1207において門脈の拡張状況によって画分0~2を決める。しかしながら、図12における各工程を以上のように説明したので、ここに説明しない。注意すべきなのは、図12における各工程は複数のプログラムコード又は回路として実作されてよいが、本発明はこれらに限定されない。また、図12の方法は以上の実施例に組み合わせて使用されてよく、単独して使用されてよい。言い換えれば、図12の各工程の間に他の工程を加えてよい。
【0033】
本発明では、実施形態を前述の通りに開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と領域から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0034】
100:電子装置
110:プロセッサ
120:メモリ
210、310、330:医療画像
220、320、340、350:分割映像
321、341、351:細胞部
322、342:血管部
323:胆管部
324、343、352:繊維部
360、370:画像
371~374:環状繊維
410:医療画像
411~413:門脈域
510、610:繊維性部分
520、620:非繊維性部分
801~808:ノード
910:コンベックスフル
1010:図
1020:接続マトリックス
1110~1112:環
1201~1207:工程
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12