(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】石膏ボードの製造方法、石膏ボード
(51)【国際特許分類】
B32B 13/08 20060101AFI20220512BHJP
B32B 3/04 20060101ALI20220512BHJP
E04C 2/04 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
B32B13/08
B32B3/04
E04C2/04 C
(21)【出願番号】P 2019549834
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2018021028
(87)【国際公開番号】W WO2019082433
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017204776
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】津野 則男
(72)【発明者】
【氏名】網蔵 俊二
(72)【発明者】
【氏名】石橋 政剛
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-157608(JP,U)
【文献】特開昭51-054608(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208226(WO,A1)
【文献】国際公開第03/080329(WO,A1)
【文献】特開2003-293515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04C 2/00-2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏スラリーと、前記石膏スラリーの表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有する板状の成形体を形成する成形工程を有しており、
前記成形体は、前記カバー原紙として、表面カバー原紙と、裏面カバー原紙とを有しており、
前記成形工程においては、
前記表面カバー原紙上に前記石膏スラリーを配置し、前記表面カバー原紙の幅方向の端部が前記石膏スラリーの上部に回り込むように前記表面カバー原紙を折り曲げ、
前記石膏スラリーの上部に回り込んだ前記表面カバー原紙の一部と重なり合うように、前記石膏スラリー上に前記裏面カバー原紙を配置し、
前記表面カバー原紙と、前記石膏スラリーと、前記裏面カバー原紙とを含む板状の前記成形体に成形し、
前記成形体の長手方向と垂直な断面において、
前記カバー原紙は、前記石膏スラリーの外周を完全に覆い、かつ一部が重なり合っており、
前記カバー原紙の重なり合いにより、
前記裏面カバー原紙を配置した前記成形体の裏面に生じた
前記裏面カバー原紙の幅方向の端部である段差部と、前記成形体の幅方向の端部との間の距離が15mm以上である石膏ボードの製造方法。
【請求項2】
石膏スラリーと、前記石膏スラリーの表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有する板状の成形体を形成する成形工程を有しており、
前記成形工程においては、
前記カバー原紙上に前記石膏スラリーを配置し、前記カバー原紙の幅方向の端部が前記石膏スラリーの上部に回り込み、前記石膏スラリーの上部に回り込んだ前記カバー原紙の一部が重なり合うように前記カバー原紙を折り曲げ、
前記カバー原紙と、前記石膏スラリーとを含む板状の前記成形体に成形し、
前記成形体の長手方向と垂直な断面において、
前記カバー原紙は、前記石膏スラリーの外周を完全に覆い、かつ一部が重なり合っており、
前記カバー原紙の重なり合いにより、生じた段差部と、前記成形体の幅方向の端部との間の距離が15mm以上である石膏ボードの製造方法。
【請求項3】
前記石膏スラリーを硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の後、得られた石膏ボードに桟を固定する桟配置工程とをさらに有しており、
前記桟の前記石膏ボードとの接着面は、前記段差部と、前記石膏ボードの幅方向の端部との間に配置される請求項1
または請求項2に記載の石膏ボードの製造方法。
【請求項4】
石膏硬化体と、前記石膏硬化体の表面の少なくとも一部を覆うように配置され
た2枚のカバー原紙
である表面カバー原紙と、裏面カバー原紙とを有し、板状形状を備えた石膏ボードであって、
前記石膏硬化体の長手方向と垂直な断面において、
前記カバー原紙
である前記表面カバー原紙と、前記裏面カバー原紙とが、前記石膏硬化体の外周を完全に覆い、かつ一部
が2箇所で重なり合っており、
前記カバー原紙の重なり合いにより、
前記裏面カバー原紙を配置した前記石膏ボードの裏面に生じた
前記裏面カバー原紙の幅方向の端部である段差部と、前記石膏ボードの幅方向の端部との間の距離が15mm以上である石膏ボード。
【請求項5】
石膏硬化体と、前記石膏硬化体の表面の少なくとも一部を覆うように配置された1
枚のカバー原紙とを有し、板状形状を備えた石膏ボードであって、
前記石膏硬化体の長手方向と垂直な断面において、
前記カバー原紙は、前記石膏硬化体の外周を完全に覆い、かつ一部が1箇
所で重なり合っており、
前記カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、前記石膏ボードの幅方向の端部との間の距離が15mm以上である石膏ボード。
【請求項6】
前記カバー原紙の重なり合いにより生じた
前記段差部と、前記石膏ボードの幅方向の端部との間の距離が19mm以上である
請求項4または請求項5に記載の石膏ボード。
【請求項7】
前記カバー原紙の重なり合いにより生じた
前記段差部と、前記石膏ボードの幅方向の端部との間の距離が40mm以上である
請求項4または請求項5に記載の石膏ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードの製造方法、石膏ボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、石膏ボードは天井板等の内装用建材としても用いられている。天井板等の内装用建材として石膏ボードを用いる場合、例えば石膏ボードの裏面に該石膏ボードを固定するための桟を取り付け、裏桟付き石膏ボードとする場合があった。また、石膏ボードを裏桟付き石膏ボードとする場合、石膏ボードの表面、及び側面には、意匠性を高めるため模様等が印刷された化粧シートを貼付する場合があった。
【0003】
例えば特許文献1には、石膏ボード製の基材の表面に化粧シートを貼り、裏面両側縁に施工用の一組の桟木をとりつけてなる天井材において、化粧シートとして、ほぼ均一な地合い中に繊維または繊維塊が分散しているのが目視でき、かつその繊維または繊維塊が、太さ1~10デニール、長さ5~50mmの繊維またはその集合体である不織布を基質シート上に積層し、不織布にインキを含浸させてなるものを使用し、一方の桟木は外側に向う突条を長手方向に有し、他方の桟木は切欠きを長手方向に有していて、これを基材にとりつけることにより基材との間に上記突条と嵌合するための溝を形成し、前記化粧シートの側端は、一方を基材の端面を覆って突条の表側面まで及ぼし、他方を基材の端面を覆った上で裏面まで巻き込んであって、突条を溝へ嵌合することにより、2枚の天井材をそれらの両側縁が若干の距離をおいて組み合わされるように構成したことを特徴とする天井材が開示されている。
【0004】
ところで、上述の裏桟付き石膏ボードに用いる石膏ボードは、表面カバー原紙と、裏面カバー原紙との間に石膏スラリーを配置し、表面カバー原紙を裏面カバー原紙の下まで回り込むように折り曲げ、板状に成形されていた。そして、該石膏スラリーを硬化させることで製造されていた。
【0005】
ここで、従来の裏桟付き石膏ボードに使用されていた石膏ボードについて、
図1A、
図1Bを用いて説明する。
図1Aは、石膏ボードの裏面カバー原紙側の面、すなわち裏面10Bの上面図である。また、
図1Bは
図1AのA-A´線での断面図を示している。なお、
図1A、
図1B中X軸方向が石膏ボード10の幅方向、Y軸方向が石膏ボード10の長手方向、Z軸方向が石膏ボード10の厚さ方向となる。
【0006】
図1A、
図1Bに示すように、石膏ボード10は、石膏コア11の表面に、カバー原紙である、表面カバー原紙121及び裏面カバー原紙122が配置された構造を有している。表面カバー原紙121は主に石膏ボード10の表面10Aを、裏面カバー原紙122は石膏ボード10の裏面10Bをそれぞれ構成している。そして、上述のように表面カバー原紙121は、石膏ボード10の長手方向(Y軸方向)と垂直な、幅方向(X軸方向)の両端部が裏面カバー原紙122の下まで回り込むように石膏ボード10の長手方向と平行な図示しない複数の折り曲げ線に沿って折り曲げられている。このため、裏面カバー原紙122の幅方向の端部である、辺122Aと、辺122Bとは、表面カバー原紙121上に配置される。
【0007】
石膏ボード10の裏面10Bにおいて、表面カバー原紙121の折り返し部分とその折り返し部分の上に位置する裏面カバー原紙122の重なり合う部分である紙合わせ部12A、12Bでは、石膏コア11の表面をカバー原紙2枚で覆うことになる。これに対して、他の部分では石膏コア11は、その表面がカバー原紙1枚で覆われている。
【0008】
表面カバー原紙121や、裏面カバー原紙122は厚紙であり、特に裏面カバー原紙122の端部である辺122Aと、辺122Bの部分では段差部が生じ易い。また、係る段差部を含む紙合わせ部は、他の部分よりもボードの厚みが厚くなり易い。このため、石膏ボード10の裏面10Bにおいて、裏面カバー原紙122の端部を含む紙合わせ部12A、12Bではそれ以外の他の部分と比べるとその平滑性が悪い。なお、通常、石膏ボード10の裏面10Bにおいて、裏面カバー原紙122の端部である辺122Aと辺122Bは石膏ボード10の幅方向の両端部からそれぞれ10mm程度に位置する。このため、石膏ボード10の幅方向の端部の近傍に段差部を含む紙合わせ部が位置することになり、石膏ボードの幅方向の端部近傍の平滑性が悪かった。
【0009】
従って、石膏ボード10の裏面10Bに、石膏ボード10の長手方向(Y軸方向)に沿って、石膏ボード10の幅方向(X軸方向)の両端部に桟を接着しようとすると、該平滑性の悪さにより接着が不良になる恐れがあった。
【0010】
そこで、従来は、該平滑の悪い部分を除去するため、例えば切断線13A、13Bに沿って切断し、石膏ボード10の幅方向(X軸方向)の両端部14A、14Bを除去してから、桟を取り付けたり、化粧シートの貼付を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述のように石膏ボード10の幅方向の両端部14A、14Bを除去すると、側面に石膏コア11が露出する。このため、石膏ボード10の表面10A側から側面にかけて化粧シートを貼付した際、切断後の石膏ボード10の側面部分において化粧シートと、石膏コア11との接着不良が生じやすく、側面に膨らみ等が生じ、意匠性の観点から好ましくなかった。
【0013】
また、石膏ボードの幅方向の端部の切断を行うため工程数が増加し、また両端部14A、14Bを除去するため材料のロスが発生しており、生産性やコストの観点からも好ましくなかった。
【0014】
このため、石膏ボードの裏面に桟を取り付けて裏桟付き石膏ボードとする場合に端部の切断等を要せず、裏桟との密着性に優れる、裏桟付き石膏ボードに適した石膏ボードを製造することができる石膏ボードの製造方法が求められていた。
【0015】
また、石膏ボードは、天井板以外にも建物の壁等を形成するための内装用建材としても用いられている。しかし、
図1A、
図1Bを用いて説明したように、石膏ボードはその裏面の幅方向端部近傍に石膏ボードの長手方向に沿って段差部を有している。このため、石膏ボードを間柱等の下地材と接合する際、係る石膏ボードの段差部が、石膏ボードの長手方向に沿って配置した間柱等の下地材との接合面に含まれると、石膏ボードと間柱等の下地材との密着性が十分ではない場合があった。このため、係る間柱等と接合する際に、間柱等の下地材との密着性に優れた石膏ボードを製造できる石膏ボードの製造方法も求められていた。
【0016】
以上のように、裏桟や、間柱等の下地材との接合に適した石膏ボードを製造することができる石膏ボードの製造方法が求められていた。
【0017】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の一側面では、下地材との接合に適した石膏ボードを製造することができる石膏ボードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため本発明の一形態によれば、石膏スラリーと、前記石膏スラリーの表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有する板状の成形体を形成する成形工程を有しており、
前記成形体の長手方向と垂直な断面において、
前記カバー原紙は、前記石膏スラリーの外周を完全に覆い、かつ一部が重なり合っており、
前記カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、前記成形体の幅方向の端部との間の距離が15mm以上である石膏ボードの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一形態によれば、下地材との接合に適した石膏ボードを製造することができる石膏ボードの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】従来の裏桟付き石膏ボードを製造する際に用いられていた石膏ボードの説明図。
【
図1B】従来の裏桟付き石膏ボードを製造する際に用いられていた石膏ボードの説明図。
【
図2】本発明の実施形態に係る石膏ボードの製造方法の説明図。
【
図3A】本発明の実施形態に係る石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第1の構成例。
【
図3B】本発明の実施形態に係る石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第1の構成例。
【
図4A】本発明の実施形態に係る石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第2の構成例。
【
図4B】本発明の実施形態に係る石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第2の構成例。
【
図5A】本発明の実施形態に係る石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第3の構成例。
【
図5B】本発明の実施形態に係る石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第3の構成例。
【
図8A】石膏ボードを下地材に接合した構造物の説明図。
【
図8B】石膏ボードを下地材に接合した構造物の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[石膏ボードの製造方法]
本実施形態の石膏ボードの製造方法について説明する。
【0022】
本発明の発明者らは、裏桟付き石膏ボードに適した石膏ボードを製造することができる石膏ボードの製造方法について鋭意検討を行った。さらに、裏桟だけではなく、間柱等との接合にも適した石膏ボード、すなわち下地材との接合に適した石膏ボードを製造することができる石膏ボードの製造方法について鋭意検討を行った。
【0023】
その結果、石膏ボードの裏面において、石膏ボードの幅方向の端部の近傍に段差部を含む紙合わせ部による平滑性の悪い部分を有しない石膏ボードとすることで、幅方向の端部の切断等を要せず桟を取り付けることができる、裏桟付き石膏ボードに適した石膏ボードとすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0024】
また、同様に構成することで、間柱等のその他の下地材の固定にも適した石膏ボードとすることができることも見出した。
【0025】
本実施形態の石膏ボードの製造方法は、石膏スラリーと、石膏スラリーの表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有する板状の成形体を形成する成形工程を有することができる。
そして、成形体の長手方向と垂直な断面において、カバー原紙は、石膏スラリーの外周を完全に覆い、かつ一部が重なり合っており、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離を15mm以上とすることができる。
【0026】
また、本実施形態の石膏ボードの製造方法は、石膏スラリーと、石膏スラリーの表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有する板状の成形体を形成する成形工程を有することができる。
そして、成形体の長手方向と垂直な断面において、カバー原紙は、石膏スラリーの外周を完全に覆い、かつ一部が重なり合っており、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部を、成形体の幅方向の端部に配置することもできる。
【0027】
ここでまず、本実施形態の石膏ボードの製造方法の概略について、
図2を用いながら説明する。なお、
図2中X軸方向は表面カバー原紙21や、裏面カバー原紙26、成形体の幅方向、Y軸方向は、表面カバー原紙21や、裏面カバー原紙26、成形体の長手方向、Z軸方向は成形体の厚さ方向となる。
【0028】
上述のように、本実施形態の石膏ボードの製造方法は、石膏スラリーと、石膏スラリーの表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有する板状の成形体を形成する成形工程を有することができる。なお、以下に説明するようにカバー原紙として、表面カバー原紙と裏面カバー原紙とを用いる場合と、1枚のカバー原紙(表面カバー原紙)のみを用いる場合とがある。
【0029】
図2中にブロック矢印で示したように、右側から左側へY軸に沿って表面材である表面カバー原紙(第1のボード用原紙)21が、生産ラインに沿って搬送される。また、裏面カバー原紙(第2のボード用原紙)26も供給、搬送されている。なお、上述のように、裏面カバー原紙26は用いず、表面カバー原紙21のみを用いて石膏ボードを製造することもできる。この場合は、裏面カバー原紙26は供給、搬送されないことになる。
【0030】
石膏スラリーを製造、供給するミキサー22は、搬送ラインと関連する所定の位置、例えば、搬送ラインの上方または横に配置することができる。そして、ミキサー22において、石膏スラリーの原料である焼石膏と、水と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造できる。
【0031】
なお、焼石膏等の固体は予め混合撹拌して混合物である石膏組成物としてからミキサー22に供給することもできる。また、ミキサー22の台数は1台に限定されず、2台以上とすることもできる。
【0032】
そして、表面カバー原紙21は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙26は、転向ローラ28A、28Bによって表面カバー原紙21の搬送ライン方向に転向される。そして、表面カバー原紙21及び裏面カバー原紙26の両方は、成形機29に達し、成形工程を実施できる。まず、表面カバー原紙21と、裏面カバー原紙26との間に、ミキサー22から管路226を通じて第1の石膏スラリー24が供給される。
【0033】
次いで、表面カバー原紙21の幅方向(図中のX軸方向)の両端部が、第1の石膏スラリー24の上部に回り込むように、表面カバー原紙21を長手方向(図中のY軸方向)と平行な複数の折り曲げ線に沿って折り曲げることができる。そして、成形機29で表面カバー原紙21、第1の石膏スラリー24、及び裏面カバー原紙26を含む板状の成形体に成形できる。その後、成形体中の石膏コアの石膏スラリーが硬化することで、該成形体を石膏ボードとすることができる。
【0034】
なお、石膏ボードを製造する際、上述のように石膏ボードの表面側に配置されるカバー原紙上に石膏スラリーを配置し、カバー原紙を折り曲げて成形することが一般的である。従って、石膏ボードの製造する過程で成形体は、該成形体の長手方向と垂直な断面において、石膏ボードとした場合に表面に位置する側が下部に、裏面に位置する側が上部に配置される場合がある。このため、以下の説明では、石膏ボードとした場合に裏面に位置する側を、石膏スラリーの上部、石膏コアの上部のように記載する場合もある。
【0035】
裏面カバー原紙26を用いず、表面カバー原紙21のみを用いる場合、表面カバー原紙21の幅方向(図中のX軸方向)の両端部が、第1の石膏スラリー24の上部を覆い、重なり合うように、表面カバー原紙21を長手方向(図中のY軸方向)と平行な複数の折り曲げ線に沿って折り曲げることができる。そして、成形機29で表面カバー原紙21、及び第1の石膏スラリー24を板状の成形体に成形できる。
【0036】
なお、本実施形態の石膏ボードの製造方法により製造する石膏ボードの幅は特に限定されないが、例えば400mm以上1280mm以下の石膏ボードを製造することができる。成形体の幅についても製造する石膏ボードに対応した幅とすることができる。
【0037】
いずれの場合であっても、得られる成形体の裏面において、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離が、接着する下地材に対応する長さとなるように調整することが好ましい。段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離は、例えば15mm以上となるように調整することができ、19mm以上となるように調整することが好ましく、22.5mm以上となるように調整することがより好ましく、40mm以上となるように調整することがさらに好ましい。上記距離は50mm以上となるように調整することが特に好ましい。
【0038】
段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離は、例えば得られた石膏ボードを固定する下地材にあわせて調整することもできる。この場合、段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離は、石膏ボードとなった成形体の長手方向に沿って配置し、各段差部と成形体の幅方向の端部との間に接することになる下地材の幅の半分以上の長さとなるように調整することが好ましい。
【0039】
下地材とは、石膏ボードを固定する各種下地材を意味しており、例えば裏桟や、間柱、受材、胴縁等から選択された1種類以上を意味する。
【0040】
なお、15mmは受材又は胴縁の30mm幅の1/2であり、19mmは2×4工法の枠材の38mm幅の1/2であり、22.5mmはC型スタッドの45mm幅の1/2である。このため、段差部と成形体の幅方向の端部との間の距離を上記好適な範囲とすることで、各下地材と接合する場合に好適に用いることができる。
【0041】
上述の得られる成形体の裏面において、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離とは、段差部と、2つある成形体の幅方向の端部のうち、係る段差部に近接した方の成形体の幅方向の端部との間の距離を意味する。このため、後述する
図3A、
図3Bに示した例であれば、段差部となる裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322Aと、成形体30の幅方向の端部30Cとの間の距離L1が上記範囲を満たすことが好ましい。また、同様に
図3A、
図3Bに示した例であれば、段差部となる裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322Bと、成形体30の幅方向の端部30Dとの間の距離L2が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0042】
既述の様に、石膏ボードの裏面において、段差部を含む紙合わせ部はそれ以外の部分に比べて平滑性が悪くなる。よって、その紙合わせ部はそれ以外の部分に比べると厚くなったり薄くなったりしやすい。このため、上述の様にカバー原紙の重なり合いにより生じた段差部が、得られる成形体の幅方向の端部から15mm以上離れるようにすることで、該成形体の石膏スラリーが硬化して得られる石膏ボードの幅方向の端部から段差部を含む紙合わせ部までの距離を十分に確保できる。そして、石膏ボードの幅方向の端部近傍を平坦な状態とすることができる。このように石膏ボードの幅方向の端部の近傍を平坦な状態とすることで、桟や間柱等の下地材を該石膏ボードの幅方向の端部の平坦部分に取付けることができ、下地材と石膏ボードとの間の接合力を十分に高められる。
【0043】
なお、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、得られる成形体の幅方向の端部との間の距離の上限値は、成形体の幅により選択することができ、特に限定されない。
【0044】
また、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部を、成形体の幅方向の端部に配置することもできる。すなわち、段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離を0とすることもできる。係る構成とすることで、該成形体の石膏スラリーが硬化して得られる石膏ボードの幅方向の端部に段差部が配置されることになるため、該石膏ボードの裏面には段差部がなく、平坦な面にすることができる。このため、桟や間柱等の下地材を平坦部に取付けることができ、下地材と石膏ボードとの間の接合力を十分に高められる。
【0045】
ここで、本実施形態の石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第1の構成例について、
図3A、
図3Bを用いて説明する。
図3Aは、成形体30の裏面30Bの上面図である。また、
図3Bは
図3AのB-B´線での断面図を示している。なお、
図3A、
図3B中X軸方向が成形体30の幅方向、Y軸方向が成形体30の長手方向、Z軸方向が成形体30の厚さ方向となる。
【0046】
なお、成形工程で製造する成形体30中の石膏コア31の石膏スラリーを硬化させることで、石膏ボードとすることができる。このため、石膏コア31の石膏スラリーが硬化する前の成形体と、石膏コア31の石膏スラリーが硬化した後の成形体である石膏ボードとは、石膏コア31の石膏スラリーの状態が異なるのみであり、共に
図3A、
図3Bに示した成形体30の構成となる。
【0047】
成形工程で得られる成形体30は、石膏スラリーを成形した石膏コア31の表面に表面カバー原紙(第1のボード用原紙)321、及び裏面カバー原紙(第2のボード用原紙)322が配置された構造を有することができる。
【0048】
なお、成形体30を製造した直後は、石膏スラリーは硬化していない、もしくは極一部が硬化しているのみのため、石膏コア31はほぼ石膏スラリーから構成され、未硬化の石膏スラリーの成形物となっている。ただし、既述のように石膏コア31の石膏スラリーの成形物は徐々に硬化して硬化体となり、成形体30は石膏ボードとなる。このため、成形体30の石膏コア31は、未硬化の石膏スラリーの成形物、石膏スラリーの成形物の硬化体、及び未硬化の石膏スラリーの成形物から石膏スラリーの成形物の硬化体への遷移中間体の3種類の状態から選択されたいずれかの形態を有することができる。
【0049】
表面カバー原紙321は主に成形体30の表面30Aを、裏面カバー原紙322は成形体30の裏面30Bをそれぞれ構成している。そして、上述のように表面カバー原紙321は、幅方向(X軸方向)の両端部が石膏コア31の上部に回り込むように、成形体30の長手方向と平行な複数の折り曲げ線に沿って折り曲げられている。このため、成形体30において、表面カバー原紙321の幅方向の端部である、辺321Aと、辺321Bとは、石膏コア31上に配置される。
【0050】
また、裏面カバー原紙322は、裏面30Bにおいて石膏コア31、及び表面カバー原紙321の上方に配置され、表面カバー原紙321と紙合わせ部33A、33Bを形成する。
【0051】
そして、この様に表面カバー原紙321と、裏面カバー原紙322とを用いる場合、裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、及び辺322Bが、カバー原紙の重なり合いにより生じる段差部となる。このため、成形体30では、裏面における裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、及び辺322B、すなわち段差部と、成形体30の幅方向の端部30C、30Dとの間の距離L1、L2が15mm以上となるように構成されている。別の言い方をすると、
図3A、
図3Bに示した成形体30の場合、裏面30Bの表面カバー原紙321が露出している領域323A、領域323Bの幅がそれぞれ15mm以上となっている。なお、既述のように領域323A、領域323Bの幅は19mm以上であることが好ましく、22.5mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることがさらに好ましく、50mm以上であることが特に好ましい。
【0052】
領域323A、323Bの幅は、例えば下地材にあわせて調整することもできる。この場合、領域323A、323Bの幅は、石膏コアの石膏スラリーを硬化させることで得られる石膏ボードの長手方向に沿って配置し、それぞれの領域と接することになる下地材の幅の半分以上の長さとなるように調整することが好ましい。
【0053】
成形体30の裏面において、裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322Aと、成形体30の幅方向の端部30Cとの間の距離L1と、辺322Bと、成形体30の幅方向の端部30Dとの間の距離L2とは同じである必要はなく、それぞれが上記範囲を充足していることが好ましい。また、距離L1、L2の上限値は特に限定されない。
【0054】
上述のように構成することで、成形体30の裏面30Bの段差部を含む紙合わせ部33A、33Bが成形体30の裏面30Bの幅方向の中央部側に形成される。このため、石膏スラリーが硬化した成形体30である石膏ボードにおいて、該石膏ボードの裏面の、石膏ボードの幅方向の両端部側に、石膏ボードの長手方向に沿って、桟や間柱等の下地材を配置する場合に、石膏ボードの該下地材を配置する領域に段差がなく、平坦な面上に下地材を配置、固定することが可能になる。従って、下地材と石膏ボードとの間の接合力を高めることができる。
【0055】
なお、
図3A、
図3Bを用いて説明したように、成形体30がカバー原紙として、表面カバー原紙321と、裏面カバー原紙322を有する場合、成形工程では、表面カバー原紙321上に石膏スラリーを配置し、表面カバー原紙321の幅方向の端部が石膏スラリーの上部に回り込むように表面カバー原紙321を折り曲げることができる。そして、石膏スラリーの上部に回り込んだ表面カバー原紙321の一部と重なり合うように、石膏スラリー上に裏面カバー原紙322を配置し、表面カバー原紙321と、石膏スラリーと、裏面カバー原紙322とを含む板状の成形体30に成形することができる。
【0056】
ここで、本実施形態の石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第2の構成例について、
図4A、
図4Bを用いて説明する。なお、
図4A、
図4Bに示した成形体301は、
図3A、
図3Bに示した成形体30において、裏面カバー原紙322の幅方向の端部を該石膏ボードの幅方向の端部に配置した例であり、
図3A、
図3Bに示した成形体30の変形例となる。
【0057】
図4Aは、成形体301の裏面301Bの上面図である。また、
図4Bは
図4AのC-C´線での断面図を示している。なお、
図4A、
図4B中X軸方向が成形体301の幅方向、Y軸方向が成形体301の長手方向、Z軸方向が成形体301の厚さ方向となる。
【0058】
なお、成形工程で製造する成形体301中の石膏コア311の石膏スラリーを硬化させることで、石膏ボードとすることができる。このため、石膏コア311の石膏スラリーが硬化する前の成形体と、石膏コア311の石膏スラリーが硬化した後の成形体である石膏ボードとは、石膏コア311の石膏スラリーの状態が異なるのみであり、共に
図4A、
図4Bに示した成形体301の構成となる。
【0059】
成形工程で得られる成形体301は、石膏スラリーを成形した石膏コア311の表面に表面カバー原紙(第1のボード用原紙)3211、及び裏面カバー原紙(第2のボード用原紙)3221が配置された構造を有することができる。
【0060】
なお、成形体301を製造した直後は、石膏スラリーは硬化していない、もしくは極一部が硬化しているのみのため、石膏コア311はほぼ石膏スラリーから構成され、未硬化の石膏スラリーの成形物となっている。ただし、既述のように石膏コア311の石膏スラリーの成形物は徐々に硬化して硬化体となり、成形体301は石膏ボードとなる。このため、成形体301の石膏コア311は、未硬化の石膏スラリーの成形物、石膏スラリーの成形物の硬化体、及び未硬化の石膏スラリーの成形物から石膏スラリーの成形物の硬化体への遷移中間体の3種類の状態から選択されたいずれかの形態を有することができる。
【0061】
表面カバー原紙3211は主に成形体301の表面301Aを、裏面カバー原紙3221は成形体301の裏面301Bをそれぞれ構成している。そして、上述のように表面カバー原紙3211は、幅方向(X軸方向)の両端部が石膏コア311の上部に回り込むように、成形体301の長手方向と平行な複数の折り曲げ線に沿って折り曲げられている。このため、成形体301において、表面カバー原紙3211の幅方向の端部である、辺3211Aと、辺3211Bとは、石膏コア311上に配置される。
【0062】
また、裏面カバー原紙3221は、裏面301Bにおいて石膏コア311、及び表面カバー原紙3211の上方に配置され、表面カバー原紙321と紙合わせ部331A、331Bを形成する。
【0063】
ただし、
図4A、
図4Bに示した成形体301の場合、裏面カバー原紙3221の幅方向の端部である辺3221A、辺3221Bは、成形体の30幅方向の端部301C、301Dに位置する。すなわち、裏面カバー原紙3221の幅方向の端部である辺3221A、辺3221Bと、成形体301の幅方向の端部301C、301Dとの間の距離は、それぞれ0となっている。
【0064】
上述のように構成することで、成形体301の裏面301Bには段差部がない状態となる。このため、石膏スラリーが硬化した成形体301である石膏ボードにおいて、該石膏ボードの裏面の、石膏ボードの幅方向の両端部側に、石膏ボードの長手方向に沿って、桟や間柱等の下地材を配置する場合に、石膏ボードの該下地材を配置する領域に段差がなく、平坦な面上に下地材を配置、固定することが可能になる。従って、下地材と石膏ボードとの間の接合力を高めることができる。
【0065】
次に、本実施形態の石膏ボードの製造方法の成形工程で得られる成形体の第3の構成例について、
図5A、
図5Bを用いて説明する。
【0066】
既述のように、ボード用原紙として、裏面カバー原紙を用いず、表面カバー原紙のみで成形体を製造することもできる。この場合の構成例を
図5A、
図5Bを用いて説明する。
【0067】
図5Aは、成形体40の裏面40Bの上面図である。また、
図5Bは
図5AのD-D´線での断面図を示している。なお、
図5A、
図5B中X軸方向が成形体40の幅方向、Y軸方向が成形体40の長手方向、Z軸方向が成形体40の厚さ方向となる。
【0068】
なお、成形工程で製造する成形体40中の石膏コア41の石膏スラリーを硬化させることで、石膏ボードとすることができる。このため、石膏コア41の石膏スラリーが硬化する前の成形体と、石膏コア41の石膏スラリーが硬化した後の成形体である石膏ボードとは、石膏コア41の石膏スラリーの状態が異なるのみであり、共に
図5A、
図5Bに示した成形体40の構成となる。
【0069】
成形工程で得られる成形体40は、石膏スラリーを成形した石膏コア41の表面を表面カバー原紙421で覆った構造を有することができる。
【0070】
なお、この場合も、成形体40を製造した直後は、石膏スラリーは硬化していない、もしくは極一部が硬化しているのみのため、石膏コア41はほぼ石膏スラリーから構成され、未硬化の石膏スラリーの成形物となっている。ただし、石膏コア41の石膏スラリーの成形物は徐々に硬化して硬化体となり、成形体40は石膏ボードとなる。このため、成形体40の石膏コア41は、未硬化の石膏スラリーの成形物、石膏スラリーの成形物の硬化体、及び未硬化の石膏スラリーの成形物から石膏スラリーの成形物の硬化体への遷移中間体の3種類の状態から選択されたいずれかの形態を有することができる。
【0071】
表面カバー原紙421は成形体40の表面40A及び裏面40Bを構成している。そして、上述のように表面カバー原紙421は、幅方向(X軸方向)の両端部が石膏コア41の上部を覆うように、成形体40の長手方向と平行な複数の折り曲げ線に沿って折り曲げられている。このため、成形体40において、表面カバー原紙421の幅方向の端部である、辺421Aと、辺421Bとは、石膏コア41上に配置される。また、この際、辺421Aと、辺421Bは重なり合い、紙合わせ部43を形成する。すなわち、成形体40において、表面カバー原紙421は、石膏コア41の幅方向の周面を包むように構成できる。
【0072】
そして、この様に表面カバー原紙421のみを用いる場合、表面カバー原紙421の幅方向の端部である辺421A、及び辺421Bが、カバー原紙の重なり合いにより生じる段差部となる。このため、既述のように、表面カバー原紙421の幅方向の端部である辺421A、及び辺421B、すなわち段差部は、それぞれ成形体40の幅方向の端部40C、40Dから15mm以上離すことができ、19mm以上離れていることが好ましく、22.5mm以上離れていることがより好ましく、40mm以上離れていることがさらに好ましく、50mm以上離れていることが特に好ましい。
【0073】
段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離は、例えば下地材にあわせて調整することもできる。この場合、段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離は、石膏スラリーを硬化させることで得られる石膏ボードの長手方向に沿って配置し、各段差部と成形体の幅方向の端部との間に接することになる下地材の幅の半分以上の長さとなるように調整することが好ましい。
【0074】
上述のように構成することで、成形体40の裏面40Bの表面カバー原紙421の幅方向の端部、すなわち辺421Aと、辺421Bとの間で形成される紙合わせ部43が、成形体40の裏面40Bの幅方向の中央部側に形成される。このため、石膏スラリーが硬化した成形体40である石膏ボードにおいて、該石膏ボードの裏面の、石膏ボードの幅方向の両端部側に、石膏ボードの長手方向に沿って、桟や間柱等の下地材を配置する場合に、該下地材を配置する領域に段差がなく、平坦な面上に下地材を配置、固定することが可能になる。従って、下地材と石膏ボードとの間の接合力を高めることができる。
【0075】
表面カバー原紙421の幅方向の端部である辺421A、辺421Bと、成形体40の幅方向の端部40C、40Dとの間の距離の上限は成形体の幅により選択することができ、特に限定されない。
【0076】
なお、
図5A、
図5Bを用いて説明したように、表面カバー原紙421のみを用いて石膏ボードを製造する場合、成形工程においては、カバー原紙である表面カバー原紙421上に石膏スラリーを配置し、表面カバー原紙421の幅方向の端部が石膏スラリーの上部に回り込み、石膏スラリーの上部に回り込んだ表面カバー原紙421の一部が重なり合うように表面カバー原紙421を折り曲げることができる。そして、表面カバー原紙421と、石膏スラリーとを含む板状の成形体40に成形することができる。
【0077】
成形工程では、必要に応じて任意の構成をさらに有することもできる。例えば、成形工程において、成形体に含まれる石膏スラリーの内、成形体の厚さ方向(
図2中のZ軸方向)等に沿って異なる密度の石膏スラリーを積層するように構成することもできる。
【0078】
この場合、例えば泡を石膏スラリーの分取口221、222、225より添加し、泡の添加量を調整することにより任意の密度の石膏スラリーとすることができる。例えば泡の添加量を調整することで、密度の異なる第1の石膏スラリー24と、第2の石膏スラリー23とを調製することができる。
【0079】
そして、得られた第2の石膏スラリー23を、送出管223、224を通じて、ロールコーター25の搬送方向における上流側で表面カバー原紙21及び裏面カバー原紙26上に供給する。
【0080】
ここで、
図2中の271、272及び273は、それぞれ、塗布ロール、受けロール、及び粕取りロールを示す。表面カバー原紙21及び裏面カバー原紙26上の第2の石膏スラリー23は、それぞれ、ロールコーター25の延展部に至り、延展部で延展される。第2の石膏スラリー23の薄層が、表面カバー原紙21上に形成される。また、同様に第2の石膏スラリー23の薄層が、裏面カバー原紙26上に形成される。なお、
図2ではロールコーター25を用いて第2の石膏スラリー23を表面カバー原紙21及び裏面カバー原紙26に塗布する例を示しているが、係る形態に限定されるものではない。例えば、ロールコーター25を用いて第2の石膏スラリー23を表面カバー原紙21、または裏面カバー原紙26のいずれか一方のみに塗布してもよい。また、第2の石膏スラリー23を表面カバー原紙21の側端部側の一部の領域のみに配置することもできる。
【0081】
既述のように裏面カバー原紙26を用いない場合には、表面カバー原紙21のみに第2の石膏スラリーを塗布することもできる。
【0082】
図2では1台のミキサー22により第1の石膏スラリー24と、第2の石膏スラリー23と、を製造した例を示したが、ミキサーを2台設け、各ミキサーで第1の石膏スラリー24と、第2の石膏スラリー23と、を製造してもよい。
【0083】
なお、第1の石膏スラリーと、第2の石膏スラリーと、を用いる形態に限定されるものではなく、例えば1種類の密度の石膏スラリーを製造し、これを表面カバー原紙上に供給する形態であっても良い。また、3種類以上の密度の異なる石膏スラリーを製造し、これを表面カバー原紙上に供給することもできる。
【0084】
本実施形態の石膏ボードの製造方法は、上述の成形工程以外の任意の工程を有することもできる。
【0085】
例えば石膏スラリーを調製する混練工程を有することもできる。
【0086】
混練工程では、焼石膏、及び水を含有する原料を混練することができる。
【0087】
ここで、原料に含まれる焼石膏は硫酸カルシウム・1/2水和物ともいい、水硬性を有する無機組成物である。本実施形態の石膏ボードの製造方法で用いる焼石膏としては、天然石膏、副産石膏、排煙脱硫石膏及び石膏ボード廃材等の単独若しくは混合した石膏を大気中又は水中(蒸気中を含む)で焼成して得られるα型、β型焼石膏のいずれか単独、若しくは両者の混合品を使用できる。また、本実施形態の石膏ボードの製造方法で用いる焼石膏は、焼石膏を得る際に微量に生成するIII型無水石膏を含んでいても問題ない。
【0088】
なお、α型焼石膏は天然石膏等の二水石膏をオートクレーブを用い、水中又は水蒸気中で加圧焼成する必要がある。また、β型焼石膏は天然石膏等の二水石膏を大気中で常圧焼成することにより製造できる。
【0089】
次に、石膏スラリーを調製する際に添加する水について説明する。
【0090】
焼石膏等を混練して石膏スラリーとするため、水を添加することができる。石膏スラリーを形成する際の水の添加量は特に限定されるものではなく、要求される流動性等に応じて任意の添加量とすることができる。
【0091】
石膏スラリーの原料は、ここまで説明した焼石膏、水以外にも任意の成分を含有することができる。
【0092】
例えば、石膏スラリーを形成する際には既述のように泡を添加することもできる。泡の添加量を調整することにより得られる石膏ボードの比重を所望の範囲とすることができる。
【0093】
石膏スラリーを形成する際に泡を添加する方法は特に限定されず、任意の方法により添加することができる。例えば予め発泡剤(起泡剤)を水(泡形成用の水)に添加し、空気を取り込みながら撹拌することで泡を形成し、形成した泡を、焼石膏や水(石膏スラリーの練水)と一緒に混合することにより、泡を添加した石膏スラリーを形成できる。または、焼石膏と水等とを予め混合して形成した石膏スラリーに、形成した泡を添加することにより、泡を添加した石膏スラリーとすることもできる。
【0094】
泡を形成する際に使用する発泡剤としては特に限定されるものではないが、例えば、アルキル硫酸ソーダ、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などが挙げられる。
【0095】
泡の添加量は特に限定されるものではなく、作製する石膏ボードに要求される比重に応じて任意に選択することができる。
【0096】
また、原料はその他に、澱粉やポリビニルアルコール等の、被覆材と石膏コアとの接着性を向上させる接着性向上剤や、ガラス繊維等の無機繊維及び軽量骨材、バーミキュライト等の耐火材、凝結調整剤、減水剤、スルホコハク酸塩型界面活性剤等の泡径調整剤、シリコーンやパラフィン等の撥水剤等の従来から石膏硬化体の原料に添加される各種添加剤を添加することもできる。
【0097】
原料を混練し、石膏スラリーを調製する際、原料を構成する全ての成分を同時に混練してもよいが、混練を複数回に分けて実施することもできる。例えば、原料のうち固体成分を混合、混練して石膏組成物を形成した後、得られた石膏組成物に原料のうちの水等の液体成分を添加しさらに混練を行い、石膏スラリーとすることもできる。
【0098】
なお、原料を混練する手段は特に限定されるものではなく、例えば
図2を用いて説明したように、ミキサー等を用いることができる。
【0099】
また、本実施形態の石膏ボードの製造方法は、石膏スラリーを硬化させる硬化工程を有することもできる。すなわち、成形体の石膏コアに含まれる石膏スラリーを硬化させる硬化工程を有することができる。
【0100】
硬化工程は、石膏スラリー中の焼石膏(半水石膏)が、水和反応により二水石膏の針状結晶が生じて凝結、凝固することにより実施できる。このため、成形工程で形成した成形体の石膏コア内で、石膏スラリー中に含まれる焼石膏と水との間で反応し、焼石膏の水和反応が進行することにより硬化工程を実施することができる。
【0101】
また、本実施形態の石膏ボードの製造方法は、さらに必要に応じて、粗切断工程や、乾燥工程、裁断工程、積込工程等の任意の工程を設けることもできる。
【0102】
例えば上記成形工程の後、硬化工程の進行中または硬化工程が終了した後に、成形工程で成形した成形体を粗切断カッターにより粗切断する粗切断工程を実施してもよい。粗切断工程では粗切断カッターにより、成形工程で形成された連続的な成形体を所定の長さに切断することができる。
【0103】
また、成形工程で成形した成形体、または粗切断工程で粗切断された成形体について余剰な水分を乾燥させる乾燥工程を実施できる。なお、乾燥工程には、硬化工程が終了した成形体を供給することができる。乾燥工程では乾燥機を用いて成形体を強制乾燥することにより実施できる。
【0104】
乾燥機により成形体を強制乾燥する方法は特に限定されるものではないが、例えば成形体の搬送経路上に乾燥機を設け、成形体が乾燥機内を通過することにより連続的に成形体を乾燥することができる。また、乾燥機内に成形体を搬入しバッチごとに成形体を乾燥することもできる。
【0105】
またさらに、例えば成形体を乾燥した後に、所定の長さの製品に裁断する裁断工程や、得られた石膏ボードをリフター等に積み重ね、倉庫内に保管したり、出荷したりするためにリフター等へ積み込む積込工程等を実施することができる。
【0106】
さらに本実施形態の石膏ボードの製造方法は、硬化工程の後、得られた石膏ボードと桟等の下地材とを接合する下地材固定工程を有することもできる。本実施形態の石膏ボードの製造方法は、下地材固定工程として、例えば得られた石膏ボードに桟を固定する桟配置工程を有することができる。
【0107】
桟配置工程では、得られた石膏ボードの長手方向に沿って、桟(縦桟)を配置、固定することができる。
【0108】
この際、桟の石膏ボードとの接着面は、既述の段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間に配置されることが好ましい。
【0109】
桟を配置、固定した裏桟付き石膏ボードについて、
図6を用いて説明する。なお、
図6は、裏桟付き石膏ボード50の、断面を模式的に示している。また、
図6は、
図3A、
図3Bに示した成形体30の石膏コア31に含まれる石膏スラリーが硬化した石膏ボードに裏桟を配置、固定した例を示している。すなわち石膏ボードとなった成形体30に裏桟を配置、固定した例を示している。このため、対応する部材には同じ番号を付し、説明を一部省略する。
【0110】
桟51、52は、
図6に示すように、石膏ボードとなった成形体30の幅方向の端部30C、30D近傍に設けることができる。桟51は、石膏ボードとなっている成形体30との間に、石膏ボードの長手方向(Y軸方向)に沿って凹部511を形成するような形状を、桟52は石膏ボードの長手方向に沿って凸部521を有するような形状を有することができる。このため、桟51、52はいずれも石膏ボードとなった成形体30の長手方向(Y軸方向)と垂直な面での断面形状が、該長手方向の位置によらず同じ形状であることが好ましい。
【0111】
後述するように、裏桟付き石膏ボードは、隣接する裏桟付き石膏ボードについて、一方の裏桟付き石膏ボードの桟により形成された凹部と、他方の裏桟付き石膏ボードの桟が有する凸部とを嵌合するようにして施工することができる。このため、それぞれの裏桟付き石膏ボードの幅方向の一方の端部に凸部が、他方の端部に凹部が、それぞれ長手方向に沿って形成できればよく、桟の具体的な形状は特に限定されない。
【0112】
そして、桟51、52を配置する際、桟51、桟52の石膏ボードとなった成形体30との接着面512、522はそれぞれ、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部、すなわち裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、辺322Bと、石膏ボードとなった成形体30の幅方向の端部30C、30Dとの間に配置されることが好ましい。
【0113】
本実施形態の石膏ボードの製造方法によれば、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部が、石膏ボードの幅方向の中央寄り、もしくは石膏ボードの幅方向の端部に配置されている。このため、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、石膏ボードとなった成形体の幅方向の端部との間の領域が広くなっている。もしくは該段差部が、石膏ボードとなった成形体の幅方向の端部に位置する。従って、桟と、石膏ボードとなった成形体との接着面を段差のない平坦部に配置でき、桟と、石膏ボードとなった成形体との接合力を十分に高めることができる。
【0114】
なお、石膏ボードとなった成形体に桟を配置、固定する際の手段は特に限定されないが、例えば各種接着剤により固定することができる。
【0115】
ここでは石膏ボードに桟を固定する場合を例に説明したが、間柱等の他の下地材と接着する場合についても同様のことがいえる。
【0116】
図6では、
図3A、
図3Bに示した成形体30の石膏コア31に含まれる石膏スラリーが硬化し、石膏ボードとなった成形体30に桟51、桟52を配置した例を示したが、係る形態に限定されない。例えば
図5A、
図5Bに示した成形体40の石膏コア41に含まれる石膏スラリーが硬化し、石膏ボードとなった成形体40に対しても同様に桟を配置することができる。
【0117】
また、例えば
図4A、
図4Bに示した成形体301の石膏コア311に含まれる石膏スラリーが硬化し、石膏ボードとなった成形体301に対しても桟を配置することができる。ただし、この場合、石膏ボードとなった成形体301の裏面には段差部がなく平坦面となっているため、桟は使用態様にあわせて任意の位置に配置できる。
【0118】
ここでは、石膏ボードの長手方向に沿って桟を配置した例を示したが、桟配置工程において、必要に応じてさらに石膏ボードの幅方向に沿って桟を配置することもできる。
【0119】
なお、桟配置工程後に得られた裏桟付き石膏ボードは、例えば
図7に示したように、石膏ボード501の桟5012の凸部と、石膏ボード502の桟5021の凹部とが嵌合するように施工することができる。また、例えば石膏ボード502の桟5022の凸部と、石膏ボード503の桟5031の凹部とが嵌合するようにして施工することができる。このように、隣接する裏桟付き石膏ボードの、裏桟の凹部と、凸部とを嵌合させることで、裏桟付き石膏ボードを施工し、天井面等を形成することができる。
【0120】
裏桟付き石膏ボードは、野縁61等に固定することができ、野縁61は例えば図示しない吊木等により天井に固定することができる。
【0121】
ここでは桟配置工程を例に説明したが、係る形態に限定されず、桟以外の他の下地材と、石膏ボードとを接合する下地材固定工程とすることもできる。この場合、下地材の材質、特性等にあわせた方法により、下地材に石膏ボードを接合、固定できる。
【0122】
既述のように、天井板等の内装用建材として石膏ボードを用いる場合、その表面側に模様等がプリントされた化粧シートを貼付し、化粧石膏ボードとする場合がある。このため、桟配置工程の前等に、石膏ボードの表面、すなわち桟を配置する面とは反対側の面や、側面に化粧シートを貼付する化粧シート貼付工程を有することもできる。
【0123】
本実施形態の石膏ボードの製造方法によれば、従来と異なり、桟を取り付けるために石膏ボードの幅方向の端部を切断する必要が無い。このため、石膏ボードの幅方向の端部の側面が表面カバー原紙に覆われているため、化粧シート等を貼付する場合でも化粧シートとの密着性に優れ、石膏ボードの側面で化粧シートに膨らみ等が生じることを防ぐことができる。
【0124】
以上に説明した本実施形態の石膏ボードの製造方法によれば、石膏ボードの裏面において、該石膏ボードの幅方向の端部の近傍に段差部を含む紙合わせ部による平滑性の悪い部分を有しない石膏ボードを得ることができる。このため、石膏ボードの裏面の幅方向の端部近傍を平坦にすることができ、桟や間柱等の下地材を取り付けた場合に、下地材と石膏ボードとの接合力を高めることができる。従って、本実施形態の石膏ボードの製造方法によれば、下地材との接合に適した石膏ボードを製造することができる。本実施形態の石膏ボードの製造方法によれば、例えば裏桟付き石膏ボードに適した石膏ボードを製造することができる。
[石膏ボード]
本実施形態の石膏ボードについて、以下に説明する。なお、本実施形態の石膏ボードは、既述の石膏ボードの製造方法により製造することができる。このため、既に説明した事項の一部については説明を省略する。
【0125】
本実施形態の石膏ボードは、石膏硬化体と、石膏硬化体の表面の少なくとも一部を覆うように配置された、1枚または2枚のカバー原紙とを有し、板状形状を備えることができる。
そして、石膏硬化体の長手方向と垂直な断面において、カバー原紙は、石膏硬化体の外周を完全に覆い、かつ一部が1箇所または2箇所で重なり合っており、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離を15mm以上とすることができる。
【0126】
カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離は、19mm以上であることが好ましく、22.5mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることがさらに好ましい。上記距離は50mm以上であることが特に好ましい。
【0127】
段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離は、例えば下地材にあわせて選択することもできる。この場合、段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離は、石膏ボードとなった成形体の長手方向に沿って配置し、各段差部と成形体の幅方向の端部との間に接することになる下地材の幅の半分以上の長さとなるように選択することが好ましい。
【0128】
下地材とは、石膏ボードを固定する各種下地材を意味しており、例えば裏桟や、間柱、受材、胴縁等から選択された1種類以上を意味する。
【0129】
なお、15mmは受材又は胴縁の30mm幅の1/2であり、19mmは2×4工法の枠材の38mm幅の1/2であり、22.5mmはC型スタッドの45mm幅の1/2である。このため、段差部と成形体の幅方向の端部との間の距離を上記好適な範囲とすることで、各下地材と接合する場合に好適に用いることができる。
【0130】
また、本実施形態の石膏ボードは、石膏硬化体と、石膏硬化体の表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有し、板状形状を備えることができる。
そして、石膏硬化体の長手方向と垂直な断面において、カバー原紙は、石膏硬化体の外周を完全に覆い、かつ一部が重なり合っており、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部を、石膏ボードの幅方向の端部に配置することができる。
【0131】
既述の様に、従来の石膏ボードを、下地材と接合する際、石膏ボードの幅方向の端部近傍に生じた段差部が下地材との接合面に含まれる場合があり、石膏ボードと下地材との密着性が十分ではなくなり、接合強度が低くなる場合があった。なお、ここでいう下地材とは、石膏ボードを固定する各種下地材を意味しており、例えば既述の裏桟や、間柱、受材、胴縁等から選択された1種類以上を意味する。
【0132】
そこで、本実施形態の石膏ボードは、上述のように、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離を15mm以上としている。すなわち、本実施形態の石膏ボードは、幅方向の端部と段差部を含む紙合わせ部までの距離を十分に確保している。このため、本実施形態の石膏ボードを、石膏ボードの幅方向の端部近傍に、石膏ボードの長手方向に沿って配置した下地材と接合する際、既述の紙合わせ部により石膏ボードに生じた段差部が、下地材との接合部に含まれることを防止できる。すなわち、石膏ボードの長手方向に沿って配置する下地材との接合面に、石膏ボードの段差部が位置することを防止できる。
【0133】
また、本実施形態の石膏ボードは、上述のように、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部を、石膏ボードの幅方向の端部に配置することができる。すなわち、係る段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離を0とすることができる。係る本実施形態の石膏ボードによれば、裏面を平坦な面とすることができる。このため、係る本実施形態の石膏ボードを、石膏ボードの幅方向の端部近傍に、石膏ボードの長手方向に沿って配置した下地材と接合する際、既述の紙合わせ部により石膏ボードに生じた段差部が、下地材との接合部に含まれることを防止できる。すなわち、石膏ボードの長手方向に沿って配置する下地材との接合面に、石膏ボードの段差部が位置することを防止できる。
【0134】
上述の本実施形態の石膏ボードは、より具体的には例えば以下のように構成できる。
【0135】
係る石膏ボードは、石膏硬化体と、石膏硬化体の表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有し、板状形状を備えることができる。
そして、該石膏ボードは、カバー原紙として表面カバー原紙と、裏面カバー原紙とを有しており、石膏硬化体の長手方向と垂直な断面において、表面カバー原紙と、裏面カバー原紙とにより、石膏硬化体の外周を完全に覆うことができる。この際、石膏硬化体の長手方向と垂直な断面において、表面カバー原紙と、裏面カバー原紙とは、一部が2箇所で重なり合っており、裏面カバー原紙の幅方向の端部が、石膏ボードの幅方向の端部に位置するように構成できる。
【0136】
【0137】
例えば
図3A、
図3Bに示した、成形体30が石膏ボードとなった場合、該石膏ボードは、表面カバー原紙321と、裏面カバー原紙322との2枚のカバー原紙を有する。表面カバー原紙321は主に石膏ボードとなった成形体30の表面30Aを、裏面カバー原紙322は主に成形体30の裏面30Bをそれぞれ構成している。そして、表面カバー原紙321の幅方向の端部である、辺321Aと、辺321Bとは、硬化した石膏コア31上に配置される。
【0138】
また、裏面カバー原紙322は、裏面30Bにおいて石膏コア31、及び表面カバー原紙321の上方に配置され、表面カバー原紙321と紙合わせ部33A、33Bを形成する。すなわち、表面カバー原紙321と、裏面カバー原紙322とは、一部が重なり合っており、係る重なり合いは2箇所となっている。
【0139】
そして、
図3A、
図3Bに示した成形体30の石膏コア31が硬化した石膏ボードの場合、表面カバー原紙321と、裏面カバー原紙322とを用いており、裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、及び辺322Bが、カバー原紙の重なり合いにより生じる段差部となる。このため、既述のように成形体30の石膏コア31が硬化した石膏ボードでは、裏面における裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、及び辺322B、すなわち段差部と、石膏ボードとなった成形体30の幅方向の端部30C、30Dとの間の距離L1、L2が15mm以上となるように構成されている。別の言い方をすると、石膏ボードとなった成形体30の場合、裏面30Bの表面カバー原紙321が露出している領域323A、領域323Bの幅がそれぞれ15mm以上となっている。なお、既述のように領域323A、領域323Bの幅は19mm以上であることが好ましく、22.5mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることがさらに好ましく、50mm以上であることが特に好ましい。
【0140】
石膏ボードとなった成形体30の裏面において、裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322Aと、石膏ボードなった成形体30の幅方向の端部30Cとの間の距離L1と、辺322Bと、成形体30の幅方向の端部30Dとの間の距離L2とは同じである必要はない。それぞれが上記範囲を充足していることが好ましい。また、距離L1、L2の上限値は、成形体の幅により選択することができ、特に限定されない。
【0141】
上述のように構成することで、成形体30の裏面30Bの紙合わせ部33A、33Bが成形体30の裏面30Bの幅方向の中央部側に形成される。このため、石膏ボードとなった成形体30において、該石膏ボードの裏面の、石膏ボードの幅方向の両端部側に、石膏ボードの長手方向に沿って、下地材を配置する場合に、該下地材を配置する領域に段差がなく、平坦な面上に下地材を配置、固定することが可能になる。従って、下地材と石膏ボードとの間の接合力を高めることができる。
【0142】
また、例えば
図4A、
図4Bに示した、成形体301が石膏ボードとなった場合、該石膏ボードは、表面カバー原紙3211と、裏面カバー原紙3221との2枚のカバー原紙を有する。表面カバー原紙3211は主に石膏ボードとなった成形体301の表面301Aを、裏面カバー原紙3221は成形体301の裏面301Bをそれぞれ構成している。そして、表面カバー原紙3211の幅方向の端部である、辺3211Aと、辺3211Bとは、硬化した石膏コア311上に配置される。
【0143】
また、裏面カバー原紙3221は、裏面301Bにおいて石膏コア311、及び表面カバー原紙3211の上方に配置され、表面カバー原紙3211と紙合わせ部331A、331Bを形成する。すなわち、表面カバー原紙3211と、裏面カバー原紙3221とは、一部が重なり合っており、係る重なり合いは2箇所となっている。
【0144】
ただし、
図4A、
図4Bに示した成形体301の場合、裏面カバー原紙3221の幅方向の端部である辺3221A、辺3221Bは、成形体301の幅方向の端部301C、301Dに位置する。すなわち、裏面カバー原紙3221の幅方向の端部である辺3221A、辺3221Bと、成形体301の幅方向の端部301C、301Dとの間の距離は、それぞれ0となっている。
【0145】
上述のように構成することで、成形体301の裏面301Bには段差部がない状態となる。このため、石膏スラリーが硬化した成形体301である石膏ボードにおいて、該石膏ボードの裏面の、石膏ボードの幅方向の両端部側に、石膏ボードの長手方向に沿って、桟や間柱等の下地材を配置する場合に、石膏ボードの該下地材を配置する領域に段差がなく、平坦な面上に下地材を配置、固定することが可能になる。従って、下地材と石膏ボードとの間の接合力を高めることができる。
【0146】
また、
図5A、
図5Bに示した成形体40の石膏コア41が硬化した石膏ボードの場合、該石膏ボードは、表面カバー原紙421の1枚のカバー原紙を有する。石膏ボードとなった成形体40は、石膏スラリーを成形した石膏コア41の表面を表面カバー原紙421で覆った構造を有することができる。
【0147】
この場合、表面カバー原紙421は石膏ボードとなった成形体40の表面40A及び裏面40Bを構成している。そして、表面カバー原紙421は、幅方向(X軸方向)の両端部が石膏コア41の上部を覆うように、成形体40の長手方向と平行な複数の折り曲げ線に沿って折り曲げられている。このため、石膏ボードとなった成形体40において、表面カバー原紙421の幅方向の端部である、辺421Aと、辺421Bとは、石膏コア41上に配置される。また、この際、辺421Aと、辺421Bは重なり合い、紙合わせ部43を形成する。すなわち、表面カバー原紙421は、一部が重なり合っており、係る重なり合いは1箇所となっており、成形体40において、表面カバー原紙421は、石膏コア41の幅方向の周面を包むように構成できる。
【0148】
そして、この様に表面カバー原紙421のみを用いる場合、表面カバー原紙421の幅方向の端部である辺421A、及び辺421Bが、カバー原紙の重なり合いにより生じる段差部となる。このため、既述のように表面カバー原紙421の幅方向の端部である辺421A、及び辺421B、すなわち段差部は、それぞれ石膏ボードとなった成形体40の幅方向の端部40C、40Dから15mm以上離すことができ、19mm以上離れていることが好ましく、22.5mm以上離れていることがより好ましく、40mm以上離れていることがさらに好ましく、50mm以上離れていることが特に好ましい。
【0149】
上述のように構成することで、石膏ボードとなった成形体40の裏面40Bの表面カバー原紙421の幅方向の端部、すなわち辺421Aと、辺421Bとの間で形成される紙合わせ部43が、成形体40の裏面40Bの幅方向の中央部側に形成される。このため、石膏ボードとなった成形体40において、該石膏ボードの裏面の、石膏ボードの幅方向の両端部側に、石膏ボードの長手方向に沿って、桟や間柱等の下地材を配置する場合に、該下地材を配置する領域に段差がなく、平坦な面上に下地材を配置、固定することが可能になる。従って、下地材と石膏ボードとの間の接合力を高めることができる。
【0150】
表面カバー原紙421の幅方向の端部である辺421A、辺421Bと、成形体40の幅方向の端部40C、40Dとの間の距離の上限は成形体の幅により選択することができ、特に限定されない。
【0151】
ここで、本実施形態の石膏ボードを、下地材に接合、固定した構造物の構成例を
図8A、
図8Bを用いて説明する。
【0152】
図8A、
図8Bは、下地材731、732に、3枚の石膏ボード701、702、703を接合、固定し、壁面を形成した例を示している。
図8Aは、下地材に石膏ボードを接合、固定することで形成した壁を、構造が分かるように下地材側から見た図を示している。通常、石膏ボードの下地材と接合した面とは反対側の面が壁面となるため、
図8Aの裏面が壁面となる。また、
図8Bは、
図8AのE-E´線での断面図を示している。
図8A、
図8B中X軸方向が石膏ボード701、702、703の幅方向、Y軸方向が石膏ボード701、702、703の長手方向、Z軸方向が石膏ボード701、702、703の厚さ方向となる。なお、石膏ボード701、702、703は、いずれも、
図3A、
図3Bに示した成形体30が石膏ボードになったものである。
【0153】
石膏ボード701、702、703は、それぞれ石膏コア711、712、713の表面、及び裏面を覆うように、表面カバー原紙7211、7212、7213と、裏面カバー原紙7221、7222、7223とが配置されている。表面カバー原紙7211、7212、7213は主に各石膏ボードの表面701A、702A、703Aを構成している。また、裏面カバー原紙7221、7222、7223は主に各石膏ボードの裏面701B、702B、703Bをそれぞれ構成している。
【0154】
このため、石膏ボード701、702、703においては、下地材731、732と接合する側の面である裏面701B、702B、703Bに、裏面カバー原紙7221、7222、7223の幅方向の端部である辺7221B、7222A、7222B、7223Aが配置される。裏面カバー原紙7221、7222、7223は、表面カバー原紙7211、7212、7213と紙合わせ部を形成し、裏面カバー原紙7221、7222、7223の幅方向の端部である辺7221B、7222A、7222B、7223Aが、カバー原紙の重なり合いにより生じる段差部となっている。
【0155】
本実施形態の石膏ボード701、702、703においては、裏面における裏面カバー原紙の幅方向の端部である辺7221B、7222A、7222B、7223A、すなわち段差部と、石膏ボードの幅方向の端部701D、702C、702D、703Cとの間の距離L12、L21、L22、L31が15mm以上となるように構成されている。このため、例えば
図8Bに示すように、石膏ボード701、702、703の、下地材731、732との接合部には段差部を含まず、平滑な面に下地材を接合できる。従って、石膏ボードと、下地材との密着性を高め、接合強度を特に高くすることができる。
【0156】
なお、既述のように段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離は、19mm以上であることが好ましく、22.5mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることがさらに好ましく、50mm以上であることが特に好ましい。
【0157】
また、本実施形態の石膏ボードは、既述の段差部を、石膏ボードの幅方向の端部に配置することもできる。すなわち、係る段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離を0とすることもできる。
【0158】
具体的には、
図4A、
図4Bに示した成形体301の石膏コア311の石膏スラリーが硬化した石膏ボードとすることができる。
【0159】
係る構成とすることで、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部に当たる、裏面カバー原紙の幅方向の端部を、石膏ボードの幅方向の端部に配置できる。
【0160】
このため、該石膏ボードの裏面には段差部がなく平坦な面とすることができる。従って、下地材を係る平坦な面に接合でき、石膏ボードと下地材との密着性を高めることができる。
【0161】
また、本実施形態の石膏ボードは、該石膏ボードを配置する下地材のサイズに応じて、既述の段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離を選択した構成とすることもできる。
【0162】
具体的には、本実施形態の石膏ボードは、石膏硬化体と、前記石膏硬化体の表面の少なくとも一部を覆うように配置されたカバー原紙とを有し、板状形状を備えることができる。
【0163】
石膏硬化体の長手方向と垂直な断面において、カバー原紙は、石膏硬化体の外周を完全に覆い、かつ一部が重なり合っている。そして、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離が、石膏ボードの長手方向に沿って配置する下地材の幅の半分以上の長さとすることができる。
【0164】
図8A、
図8Bを用いて上述の石膏ボードの構成例について説明する。
【0165】
石膏ボード701の場合、既述の様に裏面カバー原紙7221の幅方向の端部である辺7221Bが段差部となる。そして、該石膏ボード701においては、段差部である辺7221Bと、石膏ボード701の幅方向の端部である701Dとの間の距離L12を、石膏ボード701の長手方向、すなわち図中のY軸方向に沿って配置する下地材731の幅W1の半分以上とすることができる。
【0166】
石膏ボード702の場合であれば、段差部である辺7222Aと石膏ボード702の幅方向の端部である702Cとの間の距離L21を、下地材731の幅W1の半分以上とすることができる。また、段差部である辺7222Bと石膏ボード702の幅方向の端部である702Dとの間の距離L22を、下地材732の幅W2の半分以上とすることができる。
【0167】
石膏ボード703の場合であれば、段差部である辺7223Aと石膏ボード703の幅方向の端部である703Cとの間の距離L31を、下地材732の幅W2の半分以上とすることができる。
【0168】
下地材に石膏ボードを固定して壁等を作製する場合、例えば
図8A、
図8Bに示したように、下地材の幅方向の略中央部に、石膏ボードの幅方向の端部が位置するように固定するのが一般的である。このため、石膏ボードの段差部と、石膏ボードの幅方向の端部との間の距離L12、L21、L22、L31を、これに接する下地材731、732の幅W1、W2の半分以上とすることができる。これにより、下地材は、石膏ボードの段差部と幅方向の端部との間の平坦部と接合でき、石膏ボードと下地材との密着性を高めることができる。
【0169】
なお、下地材の幅は特に限定されないが、例えば幅が30mmの下地材、幅が38mmの下地材、幅が45mmの下地材、幅が65mmの下地材等から選択された1種以上の下地材を用いることができる。
【0170】
本実施形態の石膏ボードによれば、
図8A、
図8Bに示すように、石膏ボードの長手方向に沿って配置する下地材は、石膏ボードの段差部と幅方向の端部との間の平坦部に接合でき、石膏ボードと下地材との密着性を高めることができる。
【0171】
また、本実施形態の石膏ボードは、例えば
図4A、
図4Bに示した成形体301の石膏コア311の石膏スラリーが硬化した構造を有する場合、該石膏ボードの裏面には段差部がなく平坦な面とすることもできる。従って、下地材を係る平坦な面に接合でき、石膏ボードと下地材との密着性を高めることができる。
【0172】
このため、例えば該石膏ボード、下地材により形成した壁等の構造体を含む建造物等について、風や地震等により剪断力が加わった場合でも、下地材と石膏ボードとがずれにくくなり、構造体や、該構造体を含む建造物の強度を高めることができる。
【0173】
さらに、
図8A、
図8Bに示した構造物のように、下地材に石膏ボードを並べて配置、接合する場合において、従来のように石膏ボードの、下地材と接合する部分に段差部が含まれると、隣接する石膏ボード間の目地部に目違いが生じる場合があった。なお、目違いとは、隣接する石膏ボードの接する端部に高さの違いを生じ、隣接する石膏ボードの接する部分に凹凸が生じることをいう。
【0174】
しかしながら、本実施形態の石膏ボードによれば、石膏ボードの長手方向に沿って配置する下地材と接合する部分に段差部が含まれないため、隣接する石膏ボード間の目地部に目違いが生じることを抑制できる。
【0175】
このため、従来は隣接する石膏ボード間の目違いを目立たなくするためにパテ処理に多くの手間を要していたが、本実施形態の石膏ボードを用いた場合、目違いの発生を抑制できるため、パテ処理の手間を低減できる。また、本実施形態の石膏ボードを用いた場合、目違いの発生を抑制できるため、パテ処理を行わないこともでき、この場合、目地部の美観を向上させることができる。
【実施例】
【0176】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、
図3A、
図3Bに示した成形体を製造し、該成形体から石膏ボードを製造した。また、該石膏ボードの裏面に
図6に示したように桟を設置し、評価を行った。
【0177】
まず、石膏ボードの製造手順について説明する。
【0178】
図2中右側から左側へと表面カバー原紙21を、生産ラインに沿って連続的に搬送した。
【0179】
そして、単一のミキサー22において、焼石膏100質量部に対して、凝結調整剤1質量部、減水剤0.3質量部、接着性向上剤0.5質量部、水80質量部の組成になるように混練して石膏スラリー(石膏泥漿)を調製した(混練工程)。
【0180】
次いで、ミキサー22において得られた石膏スラリーについて、分取口221、222から送出管223、224を通じて、ロールコーター25の搬送方向における上流側で表面カバー原紙21及び裏面カバー原紙26上に供給した。
【0181】
表面カバー原紙21及び裏面カバー原紙26上の第2の石膏スラリー23は、それぞれ、ロールコーター25の延展部に至り、延展部で延展される。第2の石膏スラリー23の薄層が、表面カバー原紙21上に形成される。また、同様に第2の石膏スラリー23の薄層が、裏面カバー原紙26上に形成される。
【0182】
表面カバー原紙21は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙26は、転向ローラ28A、28Bによって表面カバー原紙21の搬送ライン方向と同じ方向に転向される。
【0183】
そして、表面カバー原紙21及び裏面カバー原紙26の両方は、成形機29に達する。ここで、表面カバー原紙21、裏面カバー原紙26の上に形成された上記薄層の間に、第1の石膏スラリー24が、管路226を通じて供給される。
【0184】
なお、分取口225では、石膏芯の比重が0.7となるように泡を添加した。また、泡は発泡剤(主成分:アルキルエーテル硫酸塩)を発泡して作製した。
【0185】
上述のように、第1の石膏スラリー24が供給されることで、表面カバー原紙21上に第2の石膏スラリー23の薄層を介して第1の石膏スラリー24が配置される。また、第1の石膏スラリー24上に裏面カバー原紙26が搬送される。これにより、第2の石膏スラリー23の薄層が第1の石膏スラリー24と対向する面にそれぞれ形成された表面カバー原紙21と、裏面カバー原紙26とで第1の石膏スラリー24を挟む様に構成される。
【0186】
次いで、表面カバー原紙21の幅方向(図中のX軸方向)の両端部が、第1の石膏スラリー24の上部に回り込むように、表面カバー原紙21を長手方向(図中のY軸方向)と平行な折り曲げ線に沿って折り曲げた。そして、成形機29で表面カバー原紙21、第1の石膏スラリー24、及び裏面カバー原紙26を板状の成形体に成形した(成形工程)。
【0187】
得られた成形体は
図3A、
図3Bに示した成形体30と同様の構造を有していた。そして、石膏コア31の上部に位置する、裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、辺322B、すなわち段差部と、成形体30の幅方向の端部30C、30Dとの間の距離L1、L2はそれぞれ50mmであった。なお、表1中では距離L1、L2について、それぞれの裏面における裏面カバー原紙の幅方向の端部と、成形体の幅方向の端部との間の距離の平均値として示している。以下の他の実施例、比較例についても同様である。
【0188】
得られた成形体30中の石膏コア31の石膏スラリーは、搬送する過程で硬化させた(硬化工程)。そして、硬化すると共に図示しない粗切断カッターに至る。粗切断カッターは、成形体30の長手方向と垂直な切断線に沿って、連続的な積層体である成形体を所定の長さの板状体に切断し、原紙で被覆された石膏を主体とする芯材からなる板状体、すなわち、石膏ボードの半製品が形成される。
【0189】
粗切断された積層体は、更に、乾燥機(図示せず)を通過し、強制乾燥されて余分な水分を除去した(乾燥工程)。その後、成形体の長手方向と垂直な切断線に沿って所定の長さの製品に裁断して石膏ボードを製造した。
【0190】
得られた石膏ボードの幅は470mmであり、該石膏ボードについて、石膏ボードの表面及び側面を覆うように化粧シートを貼付した(化粧シート貼付工程)。なお、化粧シートは一部が石膏ボードの裏面にも達し、貼付されている。
【0191】
次いで、
図6に示したように、石膏ボードとなった成形体30の裏面の幅方向の端部に桟51、及び桟52を接着剤により固定した(桟配置工程)。この際、桟51、桟52の石膏ボードとなった成形体30との接着面512、522は、裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、辺322Bと、石膏ボードとなった成形体30の幅方向の端部30C、30Dとの間に配置した。
【0192】
得られた裏桟付き石膏ボードについて、オス桟である桟52の裏桟取付試験を実施した。裏桟取付試験は、長手方向の長さが10cmとなるように切断した裏桟付き石膏ボードの桟配置工程で取り付けた裏桟のうち、オス桟を剥がし、カバー原紙の層間で剥がれた面積を評価した。具体的には、オス桟の石膏ボードに接着した側の面のうち、石膏ボードとなった成形体30の幅方向端部よりも該石膏ボードの中央部側の接着可能な部分の面積を分母とし、オス桟を剥がした際にカバー原紙の層間で剥がれ、オス桟に付着した部分の面積を分子として、100%の場合には〇、それ以外の場合には×と評価した。
【0193】
また、得られた裏桟付き石膏ボードの側面の美観を評価する側面の美観評価を行った。貼付した化粧シートに膨らみや剥がれが見られず、美観に優れている場合には〇、添付した化粧シートに膨らみや剥がれが見られた場合には×と評価した。
【0194】
結果を表1に示す。
[実施例2]
成形工程において、裏面カバー原紙26を用いず、表面カバー原紙21のみにより、
図5A、
図5Bに示した成形体を製造した点以外は、実施例1と同様にして成形体(石膏ボード)、裏桟付き石膏ボードを製造し、評価を行った。
【0195】
なお、成形体40について、石膏コア41の上部に位置する表面カバー原紙の幅方向の端部である、辺421A、辺421B、すなわち段差部と、成形体40の幅方向の端部40C、40Dとの間の距離は235mmであった。
【0196】
評価結果を表1に示す。
[比較例1]
成形工程において、石膏コア31の上部に位置する裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、辺322Bと、成形体30の幅方向の端部30C、30Dとの間の距離L1、L2が10mmとなるように成形体を製造した点及び石膏ボードの幅を530mmとした点以外は、実施例1と同様にして成形体(石膏ボード)を製造した。
【0197】
ただし、この場合、得られた石膏ボードの裏面において、裏面カバー原紙の幅方向の端部が石膏ボードの幅方向の端部近傍に位置した。このため、
図1A、
図1Bを用いて説明したように、石膏ボードの裏面の段差部を含む紙合わせ部近傍を除去できるように石膏ボード10の幅方向の端部から30mmに位置する切断線13A、13Bで切断し、両端部14A、14Bを除去し。そして、両端部14A、14Bを除去した後の石膏ボードに対して、化粧シート貼付工程、桟配置工程を実施した。
【0198】
評価結果を表1に示す。
[比較例2]
成形工程において、石膏コア31の上部に位置する裏面カバー原紙322の幅方向の端部である辺322A、辺322Bと、成形体30の幅方向の端部30C、30Dとの間の距離L1、L2が10mmとなるように成形体を製造した点以外は、実施例1と同様にして成形体(石膏ボード)、裏桟付き石膏ボードを製造し、評価を行った。
【0199】
評価結果を表1に示す。
【0200】
【表1】
表1に示した結果によると、成形工程で作製した成形体において、カバー原紙の重なり合いにより生じた段差部と、成形体の幅方向の端部との間の距離が15mm以上となる実施例1、実施例2については、いずれの評価も〇となることが確認できた。
【0201】
これは、該成形体から得られた石膏ボードについて、幅方向の端部近傍に段差部を含む紙合わせ部に起因する平滑性の悪い部分がなく、平坦であるため、桟と石膏ボードとの接着性が十分に高かったためと考えられる。また、石膏ボードの側面に石膏コアが露出していないため、化粧シートとの密着性にも優れていたためと考えられる。
【0202】
一方、比較例1では石膏ボードの裏面に生じた段差部を含む紙合わせ部に起因する平滑性の悪い部分を除去したため、裏桟取付試験の評価は〇となったものの、切断した際に石膏ボードの側面に石膏コアが露出したため化粧シートとの密着性が悪く、側面の美観評価は×になった。
【0203】
また、比較例2では石膏ボードの裏面において、石膏ボードの幅方向端部の近傍に、段差部を含む紙合わせ部に起因する平滑性の悪い部分が生じていたため、桟と、石膏ボードとの密着性が低く、裏桟取付試験の結果は×となった。
【0204】
以上のように、実施例1、2においては裏桟付き石膏ボードに適した、すなわち桟の取付や、化粧シートの貼付に適した石膏ボードが得られていることを確認できた。一方、比較例1、2においては、桟と石膏ボードとの接着性が低かったり、化粧シートと石膏ボードとの密着性が低く裏桟付き石膏ボードに適さない石膏ボードとなることが確認できた。
【0205】
以上に石膏ボードの製造方法、石膏ボードを、実施形態等で説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0206】
本出願は、2017年10月23日に日本国特許庁に出願された特願2017-204776号に基づく優先権を主張するものであり、特願2017-204776号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0207】
21、321、3211、421、7211、7212、7213 表面カバー原紙
23 第2の石膏スラリー
24 第1の石膏スラリー
26、322、3221、7221、7222、7223 裏面カバー原紙
30、301、40 成形体
30C、30D、301C、301D、40C、40D、701D、702C、702D、703C 端部
31、311、41、711、712、713 石膏コア
L1、L2、L12、L21、L22、L31 距離
501、502、503、701、702、703 石膏ボード
51、52、5012、5021、5022、5031 桟
731、732 下地材