(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】改善された種類のステレオリソグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/259 20170101AFI20220512BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20220512BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20220512BHJP
B29C 64/25 20170101ALI20220512BHJP
B29C 64/343 20170101ALI20220512BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220512BHJP
【FI】
B29C64/259
B29C64/124
B29C64/241
B29C64/25
B29C64/343
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020525887
(86)(22)【出願日】2018-11-12
(86)【国際出願番号】 IB2018058869
(87)【国際公開番号】W WO2019097390
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】102017000129468
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516369778
【氏名又は名称】ディーダブリューエス エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】コスタベベール,エトレ,マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ブサト,レンツォ
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047603(JP,A)
【文献】特開2015-033825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオリソグラフィシステム(1)であって、
感光性液体物質を含有するように適合され、側壁(102)によって区切られる底面(101)を備える、タンク(100)と、
ステレオリソグラフィ機械(200)であって、
実質的に水平なベアリング面(π)上に載るように適合される支持フレーム(201)と、
前記タンク(100)を収容するように構成される筐体(203)を画定し、可逆的様式で前記支持フレーム(201)に対して、前記筐体(203)内に前記タンク(100)を導入するのに適切な少なくとも1つの第1の位置と、前記タンク(100)が前記ベアリング面(π)に対して傾斜位置に一致する少なくとも1つの第2の位置とを取るように構成された、支持構造(202)と、
前記タンク(100)が前記筐体(203)内に導入されるとき、実質的に平行位置で前記底面(101)に対面するモデリングプレート(204)と、
前記支持フレーム(201)と結合され、前記タンク(100)が前記筐体(203)内に導入されているとき、前記底面(101)に実質的に垂直である移動方向(Z)に従って、前記タンク(100)の上方に前記モデリングプレート(204)を移動するように構成される、移動ユニット(205)と、が設けられる、ステレオリソグラフィ機械(200)と、を備え、
前記タンク(100)は、前記タンク(100)の第1の端(100a)及び第2の端(100b)と各々流体力学的に連通する第1の口(103a)及び第2の口(103b)が設けられる、
エラストマー材料から作られるダクト(103)を備え、前記ダクト(103)は、前記タンク(100)の外側からアクセスすることができ、前記タンク(100)
が含む境界面(104)
に沿うように配置される、少なくとも1つの区分(103c)を有し、
前記支持構造(202)は、前記支持フレーム(201)に対して、前記筐体(203)内に前記タンク(100)を導入するのに適切な少なくとも1つの第1の位置と、前記タンク(100)が前記ベアリング面(π)に対して傾斜位置に一致する少なくとも1つの第2の位置とを取るように構成され、
前記ステレオリソグラフィ機械(200)は対抗手段(206)の回転軸(Y1)を中心に回転するように構成される対抗手段(206)を備え、前記対抗手段(206)が前記第1の位置の高さにおいて前記ダクト(103)の前記区分(103c)と接触しないように、及び前記対抗手段(206)が前記第2の位置で前記
境界面(104)の反対側の前記ダクト(103)の前記区分(103c)と接触するように、前記対抗手段(206)は前記支持フレーム(201)に関連付けられることを特徴とする、ステレオリソグラフィシステム(1)。
【請求項2】
前記ダクト(103)の前記区分(103c)が円(Crf1)の弧(a1)の形状の軌道に沿って定義されることを特徴とする、請求項1に記載のステレオリソグラフィシステム(1)。
【請求項3】
前記対抗手段(206)は本体(207a)が設けられる回転子(207)を備え、前記回転子(207)の中心に、前記回転軸(Y1)が定義され、前記回転子(207)の周縁は、前記
境界面(104)と協働して、前記対抗手段(206)が前記回転子(207)の回転中に所与の角度間隔(β)にわたって前記区分(103c)を狭くするように、前記第2の位置の高さにおいて
境界面(104)の前記反対側で前記ダクト(103)の前記区分(103c)に接触して設置されるように適合される少なくとも1つの対抗要素(207b)と結合されることを特徴とする、請求項2に記載のステレオリソグラフィシステム。
【請求項4】
前記第2の位置では、前記対抗手段(206)の前記回転軸(Y1)は、実質的に、前記円(Crf1)の中心を通過することを特徴とする、請求項3に記載のステレオリソグラフィシステム(1)。
【請求項5】
前記支持構造(202)は、前記ベアリング面(π)に実質的に平行であり、前記タンク(100)が前記筐体(203)内に導入されるとき、前記第1の位置から前記第2の位置まで(逆の場合も同じ)、前記支持構造(202)及び前記タンク(100)を回転させるように構成される、回転軸(Y2)を定義する傾斜手段(208)によって前記支持フレーム(201)に関連付けられるように動作することを特徴とする、請求項4に記載のステレオリソグラフィシステム。
【請求項6】
前記ダクト(103)の前記区分(103c)は、前記タンク(100)が前記筐体(203)内に導入されるとき、前記対抗手段(206)に向かって対面する凹部を有し、前記対抗手段(206)の前記回転軸(Y1)及び前記傾斜手段(208)の前記回転軸(Y2)は相互に及び前記ベアリング面(π)に実質的に平行であることを特徴とする、請求項5に記載のステレオリソグラフィシステム。
【請求項7】
前記タンク(100)が前記筐体(203)内に導入されているとき、前記対抗手段(206)の前記回転軸(Y1)及び前記ダクト(103)の前記区分(103c)は、実質的に円周(Crf2)に沿って位置し、前記円周(Crf2)の前記中心(C2)は、前記傾斜手段(208)の前記回転軸(Y2)の点の1つであることを特徴とする、請求項6に記載のステレオリソグラフィシステム(1)。
【請求項8】
前記支持構造(202)は、前記筐体(203)を画定し、少なくとも部分的に開放上面(210)を識別することが可能である、箱型構造(209)と、前記上面(210)の下側から突出する少なくとも2つの側壁(211)と、前記上面(210)に対して実質的に直角な並進方向(X)に従って、前記側壁(211)に対して並進することができるように、前記側壁(211)に関連付けられるように動作する底面(212)とを備え、前記箱型構造(209)は、前記筐体(203)内の前記タンク(100)の導入を可能にするように構成される、少なくとも1つの開口部(213)が設けられることを特徴とする、請求項
5~7のいずれか一項に記載のステレオリソグラフィシステム(1)。
【請求項9】
前記ステレオリソグラフィ機械(200)は押出ユニット(214)が設けられ、前記押出ユニット(214)は、前記箱型構造(209)の下に画定され、前記箱型構造(209)が前記第2の位置に向かって移動するとき、前記底面(212)と前記上面(210)との間の相対接近移動を定義し、前記底面(212)と前記上面(210)との間で前記タンク(100)をロックするように、前記底面(212)の移動に対抗するように構成されることを特徴とする、請求項8に記載のステレオリソグラフィシステム(1)。
【請求項10】
前記開口部(213)は、
前記箱型構造において、前記傾斜手段(208)が備えられた側面(209b)と向かい合う面(209a)に設けられることを特徴とする、請求項9に記載のステレオリソグラフィシステム(1)。
【請求項11】
可塑性材料の前記ダクト(103)は、エラストマー材料から作られることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載のステレオリソグラフィシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性液体物質を含有するように適合されるタンクと、ステレオリソグラフィ機械とを備える、ステレオリソグラフィシステムに関し、当該ステレオリソグラフィシステムは、3次元物体を作るために使用されるステレオリソグラフィプロセスを速く及び簡略化することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
既知のように、ステレオリソグラフィ機械は、光線によって層内で重合する感光性液体物質(好ましくは、感光性樹脂)が起源となる複雑な3次元物体を作るために使用される。説明を簡略化するために、以後、単語「樹脂」は、単に、3次元物体を作るためのステレオリソグラフィプロセスで使用される感光性樹脂、または感光性樹脂と同等のいずれかの他の感光性液体物質を示すために使用される。
【0003】
また、ステレオリソグラフィ機械は、当該樹脂を含有するように適合されるタンクと、実質的に平行位置にあるタンクの底面に対面するモデリングプレートとを備え、形成されている3次元物体を支持することが知られている。モデリングプレートは、タンクの底面に実質的に直角である移動方向に従って、プレート自体を移動するように設計された移動ユニットに関連付けられる。物体の各層を作るために、前の層の表面、または第1の層の場合のモデリングプレートのモデリング表面は、液体樹脂の対応する層を画定するように、その表面がタンクの底面からのその距離が取得される層の厚さに等しい位置に到達するまで樹脂に浸漬する。連続的に、当該樹脂層は、タンクの透明底面が発生源となる光線による照射によって重合する。
【0004】
具体的には、ステレオリソグラフィ方法に従って、層の重合と連続層の重合との相互間で、モデリングプレートは、液体樹脂から現れる固化層を作り、ひいては、連続層を処理するのに必要な液体樹脂層の厚さを復元することを可能にするように、底面から離れて移動する。
【0005】
実際に、モデリングプレート及び固化層を持ち上げるとき、凹部は液体樹脂に残され、樹脂自体の自然な流動によって満たされる。
【0006】
当該高さ調整動作は、物体の新しい層の固化に必要な液体樹脂層の厚さを復元し、さらに、連続層の完全性に影響を及し得る気泡が、3次元物体モデリングプレートの連続的下降中に液体樹脂に取り込められたままになることを防止する。
【0007】
いったん当該凹部が自発的に高さ調整されると、既に説明したモデリングプレートは、再度、液体樹脂に浸漬され、物体のさらなる層は固化される。
【0008】
上記に説明した方法は、3次元物体を取得するために設計された処理サイクル全体が、物体の各層の固化後の液体樹脂の高さ調整に必要な待機時間によってかなり長くなるという欠点をもたらす。
【0009】
ステレオリソグラフィによって取得された物体を形成する層の数が数百個に達することができるため、当該待機時間は、かなり長期間の処理サイクルを含むことを理解することができる。
【0010】
明らかに、待機時間は、使用される液体樹脂の粘度に比例する。
【0011】
上記に言及した欠点を克服するために、樹脂と接触する高さ調整手段(好ましくは、ヘラ)を備えるステレオリソグラフィ機械が設計されており、そのヘラは、樹脂を凹部に向かって押すために、モデリングプレートが持ち上げられるとき、そのヘラが介入するように構成される。
【0012】
より具体的には、当該高さ調整手段は、樹脂を再分配し、タンクの上側表面を高さ調整するように、タンクの底面に対して当該高さ調整手段を移動するように構成される、電動手段に関連付けられる。
【0013】
この動作が、上記に説明した樹脂の自然な再分配と比較して、当該凹部をより急速に満たすことを可能にすることは明らかである。その結果、3次元物体の生成に要求される全処理時間は、当該高さ調整手段が設けられないステレオリソグラフィ機械を使用するときに要求される時間と比較して短くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、当技術分野で既知のこの最後の解決策は、上記に説明したステレオリソグラフィ機械に存在しない追加要素及び関連の移動システムを提供するのに必要であるため、ステレオリソグラフィ機械自体のより複雑な構造を含む。さらに、不利になるように、当該高さ調整手段は、モデリングプレートが、高さ調整手段自体が、プレートと下部のタンクとの間に画定される空間を通って摺動することを可能にするために十分な高さに持ち上げられた後だけに介入することが知られている。したがって、ステレオリソグラフィ機械が、当該高さ調整手段が設けられないステレオリソグラフィ機械と比較して、3次元物体の生産時間を短くすることを可能にする当該高さ調整手段を備えていても、上記に説明した正確な一連の動作は、いずれかの場合、無視できない処理時間を含む不利点をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記に説明した欠点及び既知の技術に関連する欠点の全てを克服することを目的とする。
【0016】
より具体的には、本発明の目的は、当技術分野で既知のいくつかの種類のステレオリソグラフィ機械と同じ構造の複雑性を特徴付けるが、当技術分野で既知のステレオリソグラフィ機械と比較してより急速に層の液体樹脂の固化によって3次元物体を作ることを可能にするステレオリソグラフィシステムを提供することである。
【0017】
それに加えて、本発明のさらなる目的は、前述の3次元物体を作るために同じ処理時間を要求するが、当技術分野で既知のいくつかの種類のステレオリソグラフィ機械と比較して、簡単な構造を有するステレオリソグラフィ機械を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、既知の技術のステレオリソグラフィ機械が使用されるときに必要な樹脂量と比較して、より少ない樹脂量を使用することを可能にするステレオリソグラフィ機械を提供することである。
【0019】
上記に示した物体は、請求項1に記載の層の3次元物体を作るために、ステレオリソグラフィシステムによって達成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のさらに詳細な特性は、関連の従属請求項に説明される。
【0021】
利点をもたらすように、本発明のステレオリソグラフィシステムは、タンクの内側の樹脂の再循環を達成することを可能にする。その結果、さらに有利になるように、本発明のステレオリソグラフィ機械は、連続的な瞬間において、異なる色調の顔料、またはタンク内に既に存在する樹脂と急速にかつ均質に混合され及び合体する異なる色の樹脂を導入することによって、急速に及び漸進的に、樹脂の色を変えることを可能にする。したがって、このように、本発明のステレオリソグラフィ機械について、単純及び急速に、異なる色を有する層を伴う3次元物体を作ることが可能であり、各層は均質な色を有する。
【0022】
本発明の主題であるステレオリソグラフィシステムのさらなる利点は、タンクの内側の樹脂の当該再循環の機能を用いて、オペレータの介入が必要なく、ステレオリソグラフィサイクルと以下のものとの間でタンク自体を掃除することが意図される掃除動作を実行することが可能である点にある。
【0023】
本発明のステレオリソグラフィシステムによって取得された別の利点は、ステレオリソグラフィ機械内へのタンクの簡略化された導入である。
【0024】
下記に示される他のものと一緒に上記に示した目的及び利点は、全て、添付図を参照して、非限定例によって提供される本発明のいくつかの好ましい実施形態の説明において強調される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の主題であるステレオリソグラフィシステムの不等角投影図を示す。
【
図2】本発明の主題であるステレオリソグラフィシステムの側面図を示す。
【
図3】
図1及び
図2に示されるステレオリソグラフィシステムに付属する格納タンクの不等角投影図を示す。
【
図4】
図1及び
図2に示されるステレオリソグラフィシステムに付属する格納タンクの上面図を示す。
【
図5a】タンクが機械内に導入されない第1の構成における不等角投影図による、各々、ステレオリソグラフィ機械の支持構造と、本発明のステレオリソグラフィシステムに付属する格納タンクとを概略的に示す。
【
図5b】タンクが機械内に導入されない第1の構成における側面図による、各々、ステレオリソグラフィ機械の支持構造と、本発明のステレオリソグラフィシステムに付属する格納タンクとを概略的に示す。
【
図6a】導入の第2の構成における不等角投影図による、各々、ステレオリソグラフィ機械の支持構造と、本発明のステレオリソグラフィシステムに付属する格納タンクとを概略的に示し、その両方が支持フレームの対抗手段に対して第1の位置に配置される。
【
図6b】導入の第2の構成における側面図による、各々、ステレオリソグラフィ機械の支持構造と、本発明のステレオリソグラフィシステムに付属する格納タンクとを概略的に示し、その両方が支持フレームの対抗手段に対して第1の位置に配置される。
【
図7a】導入の第2の構成における不等角投影図による、各々、ステレオリソグラフィ機械の支持構造と、本発明のステレオリソグラフィシステムに付属する格納タンクとを概略的に示し、その両方が支持フレームの対抗手段に対して第2の位置に配置される。
【
図7b】導入の第2の構成における側面図による、各々、ステレオリソグラフィ機械の支持構造と、本発明のステレオリソグラフィシステムに付属する格納タンクとを概略的に示し、その両方が支持フレームの対抗手段に対して第2の位置に配置される。
【
図8a】不等角投影図による、本発明の好ましい実施形態による、本発明のステレオリソグラフィシステムに付属するステレオリソグラフィ機械の支持構造を概略的に示す。
【
図8b】側面図による、本発明の好ましい実施形態による、本発明のステレオリソグラフィシステムに付属するステレオリソグラフィ機械の支持構造を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1及び
図2に全体的に表される本発明のステレオリソグラフィシステム(1によって示される)は、格納タンク100及びステレオリソグラフィ機械200を備える。
【0027】
特に、以下の説明及び本出願に要求される保護の範囲は、上記に明記したように、格納タンク100及びステレオリソグラフィ機械200を備える、全体的な当該ステレオリソグラフィシステム1に関することを強調したい。
【0028】
しかしながら、出願者は、下記に説明されるように、必ずしも、タンク100及びステレオリソグラフィ機械200のそれぞれ1つを他のものに関連付ける必要がなく、タンク100単体及びステレオリソグラフィ機械200単体の両方の場合の保護を要求し得ることを除外できない。実際に、タンク100及びステレオリソグラフィ機械200は、個々に、本明細書で下記に説明されるいくつかの技術的利点の達成を可能にする。
【0029】
再度、具体的にはタンク100に関する本発明のステレオリソグラフィシステム1の特性の説明を参照すると、これは、明らかに、感光性液体物質(具体的には、樹脂)を含有するように構成され、側壁102によって区切られる好ましくは透明な底面101が設けられる。明らかに、透明底面は、タンク100がステレオリソグラフィ機械200等のステレオリソグラフィ機械に関連付けられる場合に必要であり、放射線放出源(図に示されない)はタンク100自体の下に配置される。
【0030】
図1及び
図2に示されるように、本発明のステレオリソグラフィシステム1に付属する当該ステレオリソグラフィ機械200に関して、これは、通常水平であるベアリング面π(例えば、作業場のテーブルの上側表面等)上に載るように適合される支持フレーム201が設けられる。
【0031】
ステレオリソグラフィ機械200は、さらに、支持フレーム201に関連付けられるように動作し、可逆的様式でタンク100を収容するように構成される筐体203を画定する、支持構造202を備える。
【0032】
より正確に言えば、下記にさらに詳細に説明されるように、当該支持構造202は、オペレータが簡略化された様式でタンク100を、筐体203内に挿入し、筐体203から抽出することを可能にする。
【0033】
また、ステレオリソグラフィ機械200は、タンク100が当該筐体203内に導入されるとき、実質的に平行位置で底面101に対面するモデリングプレート204を備える。より簡潔に明らかになるように、この状態は、タンク100が当該ステレオリソグラフィ機械200に対して取ることができる単一の位置にも存在するとして理解する必要がある。
【0034】
さらに、ステレオリソグラフィ機械200は、支持フレーム201と結合され、タンク100自体が筐体203内に導入されるとき、底面101に実質的に垂直である移動方向Zに従って、及び少なくとも当該単一の位置に、モデリングプレート204をタンク100の上方に移動させるように構成される移動ユニット205を含む。さらに、ステレオリソグラフィ機械200は、支持構造202の下に、ひいては、当該筐体203内に導入されるタンク100の下に配置される当該放射線放出源(図に表されない)を備える。
【0035】
本発明に従って、ステレオリソグラフィシステム1は、本明細書で下記に説明される一連の追加特性を有する。
【0036】
タンク100に関して、
図3及び
図4に示されるように、タンク100はダクト103を備え、ダクト103は可塑性材料から作られ、タンク100自体の第1の端100aと、第1の端の反対側の第2の端100bと各々流体力学的に連通する第1の口103a及び第2の口103bを有する。好ましくは、可塑性材料の当該ダクト103は、エラストマー材料から作られる。
【0037】
当該ダクト103は、タンク100内に存在する樹脂用の再循環回路を画定する利点をもたらす。好ましくは、ダクト103は、タンク100内に画定される筐体内に挿入される。しかしながら、ダクト103が全体的にタンク100の側壁102の外側を通過することを除外できない。しかしながら、両方の場合、
図3に見ることができるように、ダクト103内に、タンク100の外側から到達することができ、それに加えて、タンク100
が含む境界面104
に沿うように配置される、少なくとも1つの区分103cがあるはずである。
【0038】
再度、ステレオリソグラフィ機械200に付属する支持構造202に関して、これは、支持フレーム201に対して、
図6a及び
図6bに示され、また筐体203内へのタンク100の簡略化された導入を可能にすることが意図される導入の位置として本明細書で下記に定義される、少なくとも1つの第1の位置と、
図7a及び
図7bに示され、またタンク100がベアリング面πに対して傾斜する動作位置として本明細書で下記に定義される、少なくとも1つの第2の位置とを取ることができるように構成される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態に従って、放射線放出源及び移動ユニット205は、固定様式で支持構造202に関連付けられる。したがって、また、放射線放出源及び移動ユニット205は、支持構造202と一緒に当該2つの位置を取るように構成される。
【0040】
この状況では、移動ユニット205は、当該位置の両方でタンク100が筐体203内に導入されるとき、タンク100の底面101に垂直な当該方向Zに沿って、モデリングプレート204を並進させるように構成される。
【0041】
しかしながら、本発明の代替実施形態に従って、放射線放出源及び移動ユニット205は、支持構造202に固定して接続されない場合があり、各々、タンク100の底面101に向かって光放射を放出し、支持構造202自体が当該第2の動作位置にあるときだけ、底面101に垂直な当該方向Zに沿ってモデリングプレート204を並進させるように構成されることを除外できない。
【0042】
さらに、本発明に従って、ステレオリソグラフィ機械200は、また、対抗手段206を備え、対抗手段206は、それが対抗手段206の回転軸Y1を中心に回転するように構成され、支持フレーム201に関連付けられ、これにより、タンク100が筐体203内に導入されるとき、
図6a及び
図6bに示されるように、対抗手段206は、当該第1の位置の高さにおいてダクト103の当該区分103cから解放され、一方、
図7a及び
図7bに示されるように、対抗手段206は、当該第2の位置で
境界面104の反対側で区分103cと接触するように関連付けられる。
【0043】
言い換えれば、利点をもたらすように、当該第2の位置では、区分103cと対抗手段206との関連性及び回転軸Y1を中心とする対抗手段206の連続回転は、タンク100の内側の樹脂の再循環のための蠕動システムを設定することを可能にする。さらにより正確に言えば、当該区分103cと接触する対抗手段206の回転は、境界面104と協働して、所与の角度間隔βで前述の区分103cを狭くし、ひいては、蠕動の原理をダクト103に適用することを可能にする。
【0044】
現時点では、好ましい実施形態に従った本発明のステレオリソグラフィシステム1の特性の説明に進む前に、本発明のステレオリソグラフィシステム1の当該3つの特性の組み合わせから取得され、少し前に上記に紹介した技術的利点を強調することが適切である。
【0045】
まず、明白に3次元物体が実際に印刷されている位置である当該第2の動作位置のベアリング面πに対するタンク100の底面101の傾斜構成は、第2の端101bよりも高い位置に配置されるタンク100自体の第1の端101aの高さにおいて導入される樹脂の流動に重力を活用することを可能にする。
【0046】
したがって、本発明によって提案される解決策は、上記に説明したように、ステレオリソグラフィ機械200に当該高さ調整手段が装備されない場合でさえ、いったん層が仕上げられると、モデリングプレート204を持ち上げることによって作られる凹部を急速に満たすことを可能にする利点をもたらす。一方、重力による樹脂の流動に必要な時間は、当該高さ調整手段によって実行される高さ調整動作によって要求される時間よりも短くない場合に相当する。
【0047】
これに関連して、実際に、モデリングプレート204が下側位置にあり、3次元物体の層の作成中に樹脂に浸漬する瞬間に、タンク100の第1の端101aの高さに存在する樹脂は、重力により下向きに移動し、モデリングプレート204の上側縁に接触し、その上に蓄積する傾向がある。この状況は、モデリングプレート204が物体の特定の層の作成中に下側にあるままである限り、安定したままである。いったんモデリングプレート204が当該層の作成後に(その結果、当該凹部の作成後に)持ち上げられると、利点をもたらすように、前述のモデリングプレート204の上側縁の高さに蓄積される樹脂は、重力によって下向きに即座に流動し、ひいては、事前に形成された凹部を急速に満たすことができる。
【0048】
さらに、蠕動システムが第2の動作位置の高さにおいて設定されるという事実が、上記に言及したように、印刷ステップ中に、タンク100の内側で樹脂を再循環することを可能にする利点をもたらし、これにより、ステレオリソグラフィの全プロセス中、蠕動システムは、作られている3次元物体を構成する個々の層を作成するのに十分なタンク100自体の底面101上に分配されるある量の樹脂を有することが可能である。
【0049】
さらに、当該蠕動システムの存在は、樹脂をタンク100自体の内側で一定に混合されること、ひいては、均質に維持することを可能にする。
【0050】
最終的に、さらに利点をもたらすために、当該2つの位置の存在、すなわち、当該支持構造202及び対応する筐体203が実質的に水平位置であり、対抗手段206から解放される導入の第1の位置、代わりに、前述の支持構造202(ひいては、タンク100)がベアリング面πに対して傾斜位置に配置され、さらに、ダクト103の区分103cが対抗手段206に拘束される、第2の動作位置の存在は、一方では、処理サイクル中に、上記に示した利点を取得することを可能にし、他方では、オペレータが当該第1の位置に筐体203内にタンク100を導入することをより容易にする。
【0051】
実際に、
図5a及び
図5bに示されるように、当該導入の第1の位置では、筐体203は、実質的に水平方向に従ってアクセスすることができ、したがって、第2の動作位置よりもタンク100に快適にアクセスすることを可能にする。
【0052】
ここで、本発明のステレオリソグラフィシステム1の好ましいが非限定である実施形態を検討すると、まず、本実施形態では、当該第2の動作位置におけるベアリング面πに対する支持構造202(ひいては、タンク100)の傾斜角度は、20°以上(好ましくは、35°)として定義される。
【0053】
さらに、
図5bの詳細図で観察することができるようなタンク100に関して、本発明の好ましい実施形態では、ダクト103の区分103cは、円Crf1の弧の形状の軌道a1に沿って定義される。より具体的には、
図6b及び
図7bの両方に示されるように、区分103cの当該弧状の軌道a1は、タンク100が筐体203内に導入されるとき、当該両方の位置で、その凹部が対抗手段206に向かって対面するように定義される。
【0054】
対抗手段206に関して、本発明の好ましい実施形態では、それは、回転軸Y1が定義される中心に本体207aが設けられる回転子207を備え、回転子207の周縁は、タンク100が筐体203内に導入され、第2の動作位置の高さに位置するとき、境界面104の反対側で区分103cに接触して設置されることができる少なくとも1つの対抗要素207bと結合されることが好ましいが、必ずしもそうではない。したがって、これは、当該対抗要素207bが、境界面104と協働して、回転子207の回転中、決められた角度間隔βにわたって区分103cを狭くすることを可能にする。
【0055】
より具体的には、
図7bの詳細図に示されるように、本発明の好ましい実施形態に従って、支持構造202(ひいては、タンク100)が第2の動作位置にあるとき、回転子207の回転軸Y1は、実質的に、当該円Crf1の中心を通過する。
【0056】
好ましい実施形態に従って、導入の第1の位置から第2の動作位置まで(逆の場合も同じ)通過するタンク100の位置を変更することを可能にするために、ステレオリソグラフィ機械200において、支持構造202は、ベアリング面πに実質的に平行に回転軸Y2を定義する傾斜手段208(好ましくはアクチュエータに関連付けられるヒンジシステムによって構成される)によって支持フレーム201に関連付けられるように動作する。
【0057】
再度、
図1及び
図2に示されるように、傾斜手段208の当該回転軸Y2及び対抗手段206の回転軸Y1は、それらが相互に及びベアリング面πに実質的に平行であるように定義されることが好ましいが、必ずしもそうではない。
【0058】
さらに、本発明の好ましい実施形態に従って、
図6b及び
図7bに観察することができるように、支持構造202及び対抗手段206は、支持フレーム201に関連付けられ、具体的には、タンク100が当該筐体203内に導入されるとき、ダクト103の区分103c及び当該対抗手段206の回転軸Y1は実質的に円Crf2に沿って位置し、円Crf2の中心C2は傾斜手段208の回転軸Y2の点の1つであるように関連付けられる。これは、支持構造202、ひいては、タンク100が第1の位置から第2の位置まで移動するとき、当該対抗手段206が、当該区分103aに到達し、区分103aに接触することを可能にする利点をもたらす。
【0059】
上記に説明したように、本発明の好ましい実施形態に従って、放射線放出源及び移動ユニット205は、固定して、支持構造202に関連付けられる。したがって、また、放射線放出源及び移動ユニット205は、当該傾斜手段208によって、支持構造202と一緒に当該2つの位置を取ることができるように構成される。
【0060】
具体的には支持構造202に関して、本発明の好ましい実施形態に従って、
図8a及び
図8bに示されるように、支持構造202は、筐体203が画定される箱型構造209を備える。具体的には、当該筐体203は、モデリングプレート204が上方からタンク100の内側に到達することを可能にするために、少なくとも部分的に開放している上面210によって、前述の上面210の下側から突出する少なくとも2つの側壁211によって、及び底面212によって画定される。さらにより具体的には、本発明の好ましい実施形態に従って、当該底面212は側壁211に関連付けられるように動作し、具体的には、底面212が、上面210に実質的に直角の並進方向Xに従って前述の側壁211に対して並進することを可能にするように動作する。言い換えれば、外力を受けるとき、下記に説明されるように、当該底面212は上面210に対して当該並進方向Xに沿って移動することができる。
【0061】
さらに、本発明の主題であるステレオリソグラフィ機械200では、箱型構造209は、少なくとも当該導入の第1の位置に、タンク100を筐体203内に導入することを可能にするように構成される少なくとも1つの開口部213を備える。開口部213は、箱型構造において、傾斜手段208が備えられた側面209bと向かい合う面209aに設けられ、傾斜手段208が関連付けられる側面209bに反対側の前述の箱型構造209の側面209aの高さに作られ、具体的には、タンク100をステレオリソグラフィ機械200の前面から筐体203内に導入することを可能にするように作られることが好ましいが、必ずしもそうではない。
【0062】
当該箱型構造209の構成と組み合わせて、本発明の主題であるステレオリソグラフィ機械200は、また、前述の箱型構造209の下で支持フレーム201に固定される押出ユニット214を備える。
【0063】
具体的には、
図7a及び
図7bに示されるように、押出ユニット214は、当該底面212の下側表面に対抗し、ひいては、導入の第1の位置から第2の動作位置に向かう箱型構造209の移動中、底面212の並進を制限するように構成される。したがって、これは、底面212と上面210との間の相対接近移動を判定し、順に、底面212と上面210との間で筐体203の内側に配置されるタンク100をロックする。
【0064】
言い換えれば、当該特性の最後の組み合わせは、タンク100が当該第2の動作位置に配置されるとき、下部の放射線源及び上部のモデリングプレート204に対して、明確に定義された不変の位置で、タンク100を保持するように適合されるクランプシステムを設定することを可能にする。
【0065】
したがって、
図5a及び
図5bに示されるように、動作の観点から説明すると、ステレオリソグラフィシステム1では、支持構造202は、当該導入の第1の位置に設置され、具体的には、オペレータが簡略化された様式でタンク100を筐体203内に導入することを可能にするように設置される。
【0066】
図6a及び
図6bに示されるように、タンク100の導入後に、ステレオリソグラフィシステム1は、支持構造202を当該第1の位置から第2の動作位置まで移動させる動作を含み、具体的には、
図7a及び
図7bに示されるように、実際のステレオリソグラフィプロセスの実行に適切である位置に前述のタンク100を配置するような動作を含む。好ましい実施形態に従って、この動作は、また、放射線放出源及び移動ユニット205の並進を含む。
【0067】
第1の位置から第2の位置まで支持構造202(ひいては、タンク100)を移動させるとき、上記に説明した本発明の好ましい実施形態に従って、押出ユニット214は、支持構造202の底面212と接触し、その前方移動に対抗し、したがって、底面212と上面210との間にタンク100をロックする。
【0068】
いったんタンク100の当該安定位置が取得されると、本発明のステレオリソグラフィシステム1は、既知の種類の実際のステレオリソグラフィプロセスを実行するためにアクティブになることができる。
【0069】
したがって、上記に従って、本発明の主題であるステレオリソグラフィシステムは、全ての設定された目的を達成する。
【0070】
具体的には、本発明は、既知の技術のいくつかの種類のステレオリソグラフィ機械と同じ構造の複雑性を特徴付けるが、当技術分野で既知のステレオリソグラフィ機械と比較してより急速に液体樹脂の層の固化によって3次元物体を作ることを可能にするステレオリソグラフィシステムを提供する目的を達成する。
【0071】
それに加えて、本発明はまた、前述の3次元物体を作るために同じ処理時間を要求するが、当技術分野で既知のいくつかの種類のステレオリソグラフィ機械よりも簡単な構造を有するステレオリソグラフィ機械を提供する目的を達成する。
【0072】
本発明は、既知の技術のステレオリソグラフィ機械が使用されるときに必要な樹脂量と比較して、より少ない樹脂量を使用することを可能にするステレオリソグラフィ機械を提供するさらなる目的を達成する。