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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】飛翔体用容器
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/22 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
B64B1/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021153606
(22)【出願日】2021-09-21
(65)【公開番号】P2022051566
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2020157849
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021046076
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 圭介
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-97345(JP,A)
【文献】特表2010-519119(JP,A)
【文献】特許第6932408(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体が備える容器であって、
器本体と、
前記容器本体の内部の空間を、収容物を収容する第1の小空間と、前記第1の小空間とは異なる第2の小空間に仕切る仕切り板と
を備え、
前記仕切り板は、前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に生じた圧力差を解消するように前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に気体の出入りを生じさせるが、前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に気体の対流を生じさせない大きさの1以上の孔を有し、
前記第1の小空間内の気体が接する前記容器本体の面積に対する前記第1の小空間内の気体の容積は、前記第2の小空間内の気体が接する前記容器本体の面積に対する前記第2の小空間内の気体の容積より大きい
容器。
【請求項2】
飛翔体が備える容器であって、
器本体と、
前記容器本体の内部の空間を、収容物を収容する第1の小空間と、前記第1の小空間とは異なる第2の小空間に仕切る仕切り板と
を備え、
前記容器本体の前記第2の小空間を形成している部分、前記第2の小空間と前記容器本体の外部の空間の間に生じた圧力差を解消するように前記第2の小空間と前記容器本体の外部の空間の間に気体の出入りを生じさせるが、前記第2の小空間と前記容器本体の外部の空間の間に気体の対流を生じさせない大きさの1以上の孔を有する
容器。
【請求項3】
前記第1の小空間に前記容器本体の外部から光が透過するように、前記容器本体の少なくとも一部と前記仕切り板の少なくとも一部が光を透過する
請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
飛翔体が備える容器であって、
収容物を収容する第1の容器本体と、
前記第1の容器本体を収容する第2の容器本体と
を備え、
前記第1の容器本体の内部の空間を第1の小空間とし、前記第1の容器本体と前記第2の容器本体の間の空間を第2の小空間とするとき、
前記第1の容器本体は、前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に生じた圧力差を解消するように前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に気体の出入りを生じさせるが、前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に気体の対流を生じさせない大きさの1以上の孔を有する
容器。
【請求項5】
飛翔体が備える容器であって、
収容物を収容する第1の容器本体と、
前記第1の容器本体を収容する第2の容器本体と
を備え、
前記第1の容器本体と前記第2の容器本体の間の空間を小空間とするとき、
前記第2の容器本体は、前記小空間と前記第2の容器本体の外部の空間の間に生じた圧力差を解消するように前記小空間と前記第2の容器本体の外部の空間の間に気体の出入りを生じさせるが、前記小空間と前記第2の容器本体の外部の空間の間に気体の対流を生じさせない大きさの1以上の孔を有する
容器。
【請求項6】
前記第1の容器本体の内部の空間に前記第2の容器本体の外部から光が透過するように、前記第1の容器本体の少なくとも一部と前記第2の容器本体の少なくとも一部が光を透過する
請求項4又は5に記載の容器。
【請求項7】
前記収容物は人を含む
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気球、飛行船等の飛翔体のための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
人(搭乗員)を収容する容器であるキャビンの設けられた気球、飛行船等の飛翔体がある。そのような飛翔体によれば、人は空中を移動できる。
【0003】
人を収容するキャビンを備える飛翔体を開示している特許文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、人を収容したドローン本体を気球で吊って飛翔させる構造を備えた有人ドローンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-97345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛翔体の地上からの高度が高くなる程、一般的に周囲の温度は低下する。従って、飛翔体のキャビンの内側の空気の温度に対し、キャビンの壁面の温度が低くなり、キャビンの壁面に接する空気が冷却されて、空気中に含まれる水蒸気が水に変化し、壁面の内側に露として付着する現象である結露が生じる場合がある。
【0006】
キャビンの壁面の一部が窓(光を透過する板)である場合、その窓に結露が生じると、キャビン内の搭乗員がキャビン外を視認しにくくなる。また、キャビンの壁面に結露が生じて、発生した水がその近辺の電子機器等に浸水すると、浸水された電子機器等が故障する等の不都合が生じ得る。
【0007】
また、飛翔体が、撮影装置等の装置を収容した容器を備える場合がある。そのような容器においても、上述したキャビンと同様に、容器の壁面の内側に結露が生じると、発生した水により容器内の装置が故障する等の不都合が生じ得る。
【0008】
また、飛翔体が、撮影装置を収容した容器を備える場合、撮影装置の画角内に入る容器の壁面は光を透過する窓とする必要がある。この窓に結露が生じると、撮影装置が撮影する画像の焦点が合わなかったり、結露により生じた水滴が撮影した画像に写り込んだりする。
【0009】
上記の事情に鑑み、本発明は、飛翔体が備える容器内で結露が生じる確率を低減する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、飛翔体が備える容器であって、器本体と、前記容器本体の内部の空間を、収容物を収容する第1の小空間と、前記第1の小空間とは異なる第2の小空間に仕切る仕切り板とを備え、前記仕切り板は、前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に生じた圧力差を解消するように前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に気体の出入りを生じさせるが、前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に気体の対流を生じさせない大きさの1以上の孔を有し、前記第1の小空間内の気体が接する前記容器本体の面積に対する前記第1の小空間内の気体の容積は、前記第2の小空間内の気体が接する前記容器本体の面積に対する前記第2の小空間内の気体の容積より大きい容器を第1の態様として提案する。
【0011】
また、本発明は、飛翔体が備える容器であって、器本体と、前記容器本体の内部の空間を、収容物を収容する第1の小空間と、前記第1の小空間とは異なる第2の小空間に仕切る仕切り板とを備え、前記容器本体の前記第2の小空間を形成している部分、前記第2の小空間と前記容器本体の外部の空間の間に生じた圧力差を解消するように前記第2の小空間と前記容器本体の外部の空間の間に気体の出入りを生じさせるが、前記第2の小空間と前記容器本体の外部の空間の間に気体の対流を生じさせない大きさの1以上の孔を有する容器を第2の態様として提案する。
【0012】
第1又は第2の態様に係る容器において、前記第1の小空間に前記容器本体の外部から光が透過するように、前記容器本体の少なくとも一部と前記仕切り板の少なくとも一部が光を透過する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
また、本発明は、飛翔体が備える容器であって、収容物を収容する第1の容器本体と、前記第1の容器本体を収容する第2の容器本体とを備え、前記第1の容器本体の内部の空間を第1の小空間とし、前記第1の容器本体と前記第2の容器本体の間の空間を第2の小空間とするとき、前記第1の容器本体は、前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に生じた圧力差を解消するように前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に気体の出入りを生じさせるが、前記第1の小空間と前記第2の小空間の間に気体の対流を生じさせない大きさの1以上の孔を有する容器を第4の態様として提案する。
【0014】
また、本発明は、飛翔体が備える容器であって、収容物を収容する第1の容器本体と、前記第1の容器本体を収容する第2の容器本体とを備え、前記第1の容器本体と前記第2の容器本体の間の空間を小空間とするとき、前記第2の容器本体は、前記小空間と前記第2の容器本体の外部の空間の間に生じた圧力差を解消するように前記小空間と前記第2の容器本体の外部の空間の間に気体の出入りを生じさせるが、前記小空間と前記第2の容器本体の外部の空間の間に気体の対流を生じさせない大きさの1以上の孔を有する容器を第5の態様として提案する。
【0015】
第4又は第5の態様に係る容器において、前記第1の容器本体の内部の空間に前記第2の容器本体の外部から光が透過するように、前記第1の容器本体の少なくとも一部と前記第2の容器本体の少なくとも一部が光を透過する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容器内に形成される2つの空間における温度に差が生じる結果、結露が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る飛翔体の全体構成を示した図。
図2】第1実施形態に係る容器の構成を示した図。
図3】第2実施形態に係る容器の構成を示した図。
図4】第3実施形態に係る容器の構成を示した図。
図5】第4実施形態に係る容器の構成を示した図。
図6】一変形例に係る容器の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る飛翔体1の全体構成を示した図である。飛翔体1は、ヘリウム等の空気より軽い気体を収容する球皮11と、球皮11に吊られて飛翔する容器12と、球皮11に一方の端部が連結され容器12に他方の端部が連結されて球皮11が容器12を吊るために設けられている複数の索体である吊索13を備える。
【0020】
図2は、容器12の構成を示した図である。容器12は、搭乗員H1等の収容物を収容する気密な中空の箱体である容器本体121と、容器本体121の内部の空間を小空間S1(第1の小空間の一例)と小空間S2(第2の小空間の一例)に仕切る仕切り板122を備える。
【0021】
小空間S1は、搭乗員H1等の収容物を収容する空間であり、搭乗員H1が快適に呼吸を行える濃度の酸素を含む空気が充填されている。
【0022】
仕切り板122の少なくとも一部は、光を透過する。図2の例では、仕切り板122のうち範囲Aの部分が、光を透過する素材(例えば、透明なポリカーボネートやアクリル樹脂等)で作られている。仕切り板122のうち範囲A以外の部分は、例えば、繊維強化プラスチック、繊維強化プラスチック以外のプラスチック、アルミ等の軽金属等で作られている。
【0023】
また、容器本体121のうち、小空間S2を形成する部分の少なくとも一部は、光を透過する。図2の例では、容器本体121のうち範囲Bの部分が、光を透過する素材(例えば、透明なポリカーボネートやアクリル樹脂等)で作られている。容器本体121のうち範囲B以外の部分は、例えば、繊維強化プラスチック、繊維強化プラスチック以外のプラスチック、アルミ等の軽金属等で作られている。
【0024】
上記のように、仕切り板122の範囲Aの部分及び容器本体121の範囲Bの部分が光を透過するため、小空間S1に収容される搭乗員H1は、小空間S1に容器12の外部から透過する光によって、容器12の外部を視認することができる。
【0025】
仕切り板122は、1以上の微細な孔Hを有する。孔Hは、小空間S1と小空間S2の間における緩やかな気体の出入りを生じさせる。孔Hは、小空間S1内の気体の温度と小空間S2内の気体の温度に差が生じた場合に、その温度差により生じた圧力差が短時間で解消するように小空間S1と小空間S2の間に気体の出入りを生じさせる。一方、孔Hは、小空間S1と小空間S2の間に気体の対流を生じさせるほどに大きくはない。従って、小空間S1内の気体の温度と小空間S2内の気体の温度の差が解消するには、数分乃至数十分程度の時間を要する。
【0026】
一般的に、飛翔体1が飛翔により高度(地上からの高さ)を上げるに伴い、容器12の周囲の空気は希薄かつ低温となる。飛翔体1の飛翔により容器本体121が外部から急激に冷却された場合、容器本体121に内側から接触する気体内の水蒸気が容器本体121に冷却されて水となり、容器本体121の内側面に水滴として付着する、という現象、すなわち、容器本体121における結露が生じ易い。
【0027】
しかしながら、小空間S1内の気体が接する容器本体121の面積に対する小空間S1内の気体の容積は、小空間S2内の気体が接する容器本体121の面積に対する小空間S2内の気体の容積より大きい。従って、小空間S1内の気体の温度が容器本体121により冷却される速度は、小空間S2内の気体の温度が容器本体121により冷却される速度より遅い。また、上述したように、小空間S1と小空間S2の間には対流による気体の出入りはほとんど生じない。
【0028】
その結果、(小空間S1内の温度)>(小空間S2内の温度)>(容器本体121外の空間の温度)、という温度の関係が生じる。そのため、小空間S1と小空間S2の温度の差異、及び、小空間S2と容器本体121外の空間の温度の差異のいずれも、仮に仕切り板122がない場合に生じる容器本体121内の空間の温度と容器本体121外の空間の温度との差異よりも小さくなる。
【0029】
上記のような理由で、仮に仕切り板122がない場合に容器本体121において結露が発生する確率と比較し、本実施形態に係る容器12の仕切り板122において結露が発生する確率、及び、本実施形態に係る容器12の容器本体121のうち小空間S2を形成している部分において結露が発生する確率は低い。
【0030】
なお、既述のように、小空間S1と小空間S2の間に生じる温度差の解消には長時間を要するが、小空間S1と小空間S2の間に生じる気圧差は速やかに解消する。従って、小空間S1と小空間S2の間に生じる気圧差により仕切り板122が強い力を受けて変形したり破損したりすることはない。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る容器12によれば、少なくとも仕切り板122及び容器本体121のうち小空間S2を形成している部分において結露が発生しにくい。
【0032】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態に係る容器12を説明する。第2実施形態に係る容器12は、第1実施形態に係る容器12と同様に、飛翔体1(図1参照)が備える容器であり、吊索13を介して球皮11に吊られて飛翔する。第2実施形態に係る容器12は第1実施形態に係る容器12と比較し、以下の点が異なっている。
(1)第2実施形態に係る容器12の仕切り板122は、第1実施形態に係る容器12の仕切り板122が有している孔Hを有しない。
(2)第2実施形態に係る容器12の容器本体121は、小空間S2を形成している部分に、第1実施形態に係る容器12の仕切り板122が有している孔Hと同様の孔Iを1以上、有している。
【0033】
図3は、本実施形態に係る容器12の構成を示した図である。
【0034】
本実施形態に係る容器12においては、飛翔体1の飛翔の高度が上がるに伴い容器本体121の外部の空間における温度が急激に低下すると、小空間S2と容器本体121の外部の空間との間の圧力差は速やかに解消する一方、小空間S2と容器本体121の外部の空間との間の温度差の解消には時間を要する。その結果、第1実施形態に係る容器12における場合と同様に、(小空間S1内の温度)>(小空間S2内の温度)>(容器本体121外の空間の温度)、という温度の関係が生じる。
【0035】
その結果、第1実施形態において説明した理由と同様の理由で、仮に仕切り板122がない場合に容器本体121(孔Iを有さない)において結露が発生する確率と比較し、本実施形態に係る容器12の仕切り板122において結露が発生する確率、及び、本実施形態に係る容器12の容器本体121のうち小空間S2を形成している部分において結露が発生する確率は低い。
【0036】
なお、既述のように、小空間S2と容器本体121の外部の空間の間に生じる温度差の解消には長時間を要するが、小空間S2と容器本体121の外部の空間の間に生じる気圧差は速やかに解消する。従って、小空間S2と容器本体121の外部の空間の間に生じる気圧差により容器本体121(小空間S2を形成する部分)が強い力を受けて変形したり破損したりすることはない。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る容器12による場合も、少なくとも仕切り板122及び容器本体121のうち小空間S2を形成している部分において結露が発生しにくい。
【0038】
[第3実施形態]
以下に、本発明の第3実施形態に係る容器22を説明する。第3実施形態に係る容器22は、第1実施形態に係る容器12と同様に、飛翔体1(図1参照)が備える容器であり、吊索13を介して球皮11に吊られて飛翔する。
【0039】
図4は、容器22の構成を示した図である。容器22は、搭乗員H1を含む収容物を収容する第1容器本体221(第1の容器本体の一例)と、第1容器本体221を収容する気密な第2容器本体222(第2の容器本体の一例)と、第1容器本体221と第2容器本体222の間の空間の一部に充填された断熱材223を備える。なお、容器22は、断熱材223を備えなくてもよい。
【0040】
以下、第1容器本体221の内部の空間を小空間S3と呼び、第1容器本体221と第2容器本体222の間の区間を小空間S4と呼ぶ。
【0041】
小空間S3及び小空間S4には、搭乗員H1が快適に呼吸を行える濃度の酸素を含む空気が充填されている。
【0042】
第1容器本体221の少なくとも一部は、光を透過する。図4の例では、第1容器本体221のうち範囲Cの部分が、光を透過する素材(例えば、透明なポリカーボネートやアクリル樹脂等)で作られている。第1容器本体221のうち範囲C以外の部分は、例えば、繊維強化プラスチック、繊維強化プラスチック以外のプラスチック、アルミ等の軽金属等で作られている。
【0043】
また、第2容器本体222の少なくとも一部は、光を透過する。図4の例では、第2容器本体222のうち範囲Dの部分が、光を透過する素材(例えば、透明なポリカーボネートやアクリル樹脂等)で作られている。第2容器本体222のうち範囲D以外の部分は、例えば、繊維強化プラスチック、繊維強化プラスチック以外のプラスチック、アルミ等の軽金属等で作られている。
【0044】
上記のように、第1容器本体221の範囲Cの部分及び第2容器本体222の範囲Dの部分が光を透過するため、第1容器本体221に収容される搭乗員H1は、第1容器本体221の内部の空間に第2容器本体222の外部から透過する光によって、容器22の外部を視認することができる。
【0045】
第1容器本体221は、1以上の微細な孔Jを有する。孔Jは、小空間S3と、第1容器本体221と小空間S4との間における緩やかな気体の出入りを生じさせる。孔Jは、小空間S3内の気体の温度と小空間S4内の気体の温度に差が生じた場合に、その温度差により生じた圧力差が短時間で解消するように、小空間S3と小空間S4の間に気体の出入りを生じさせる。一方、孔Jは、小空間S3と小空間S4の間に気体の対流を生じさせるほどに大きくはない。従って、小空間S3内の気体の温度と小空間S4内の気体の温度の差が解消するには、数分乃至数十分程度の時間を要する。
【0046】
そのため、飛翔体1の飛翔の高度が上がり、容器22が外部から冷却される場合、(小空間S3内の温度)>(小空間S4内の温度)>(第2容器本体222外の空間の温度)、という温度の関係が生じる。そのため、小空間S3と小空間S4の温度の差異、及び、小空間S4と第2容器本体222外の空間の温度の差異のいずれも、仮に第1容器本体221がない場合に生じる第2容器本体222内の空間の温度と第2容器本体222外の空間の温度との差異よりも小さくなる。
【0047】
上記のような理由で、仮に第1容器本体221がない場合に第2容器本体222において結露が発生する確率と比較し、本実施形態に係る容器22の第1容器本体221において結露が発生する確率、及び、本実施形態に係る容器22の第2容器本体222において結露が発生する確率は低い。
【0048】
なお、既述のように、小空間S3と小空間S4の間に生じる温度差の解消には長時間を要するが、小空間S3と小空間S4の間に生じる気圧差は速やかに解消する。従って、小空間S3と小空間S4の間に生じる気圧差により第1容器本体221が強い力を受けて変形したり破損したりすることはない。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る容器22によれば、第1容器本体221及び第2容器本体222において結露が発生しにくい。
【0050】
[第4実施形態]
以下に、本発明の第4実施形態に係る容器22を説明する。第4実施形態に係る容器22は、第1実施形態に係る容器12と同様に、飛翔体1(図1参照)が備える容器であり、吊索13を介して球皮11に吊られて飛翔する。第4実施形態に係る容器22は第3実施形態に係る容器22と比較し、以下の点が異なっている。
(1)第4実施形態に係る容器22の第1容器本体221は、第3実施形態に係る容器22の第1容器本体221が有している孔Jを有しない。
(2)第4実施形態に係る容器22の第2容器本体222は、第3実施形態に係る容器22の第1容器本体221が有している孔Jと同様の孔Kを1以上、有している。
(3)第4実施形態に係る小空間S4には、搭乗員H1が快適に呼吸を行える濃度の酸素を含む空気は充填されていない。
【0051】
図5は、本実施形態に係る容器22の構成を示した図である。
【0052】
本実施形態に係る容器22においては、飛翔体1の飛翔の高度が上がるに伴い第2容器本体222の外部の空間における温度が急激に低下すると、小空間S4と第2容器本体222の外部の空間との間の圧力差は速やかに解消する一方、小空間S4と第2容器本体222の外部の空間との間の温度差の解消には時間を要する。その結果、第3実施形態に係る容器22における場合と同様に、(小空間S3内の温度)>(小空間S4内の温度)>(第2容器本体222外の空間の温度)、という温度の関係が生じる。
【0053】
その結果、第3実施形態において説明した理由と同様の理由で、仮に第1容器本体221がない場合に第2容器本体222(孔Kを有さない)において結露が発生する確率と比較し、本実施形態に係る容器22の第1容器本体221において結露が発生する確率、及び、本実施形態に係る容器22の第2容器本体222において結露が発生する確率は低い。
【0054】
なお、既述のように、小空間S4と第2容器本体222の外部の空間の間に生じる温度差の解消には長時間を要するが、小空間S4と第2容器本体222の外部の空間の間に生じる気圧差は速やかに解消する。従って、小空間S4と第2容器本体222の外部の空間の間に生じる気圧差により第2容器本体222が強い力を受けて変形したり破損したりすることはない。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る容器22による場合も、第1容器本体221及び第2容器本体222において結露が発生しにくい。
【0056】
[変形例]
上述した実施形態に係る飛翔体1は、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下の変形例の2以上が適宜、組み合わされてもよい。
【0057】
(1)上述した第1実施形態又は第2実施形態における容器本体121、又は、上述した第3実施形態又は第4実施形態における第1容器本体221(又は第2容器本体222)は、人を収容するキャビンであるが、それらの容器本体の収容物は人でなくてもよい。図6は、例として、第1実施形態に係る容器12の容器本体121が撮影装置H2を収容する場合を例示した図である。
【0058】
(2)上述した実施形態において、飛翔体はガス気球であるものとしたが、飛翔体の種類はガス気球に限られず、熱気球や飛行船等の他の種類の飛行体であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…飛翔体、11…球皮、12…容器、13…吊索、22…容器、121…容器本体、122…仕切り板、221…第1容器本体、222…第2容器本体、223…断熱材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6