(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】棒状体及び製造方法、梁及び製造方法、ブレード並び風力発電ユニット
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
F03D1/06 A
(21)【出願番号】P 2021505991
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 CN2019122721
(87)【国際公開番号】W WO2021097915
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】201911159124.3
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521045461
【氏名又は名称】中材科技▲風▼▲電▼叶片股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SINOMA WIND POWER BLADE CO LTD
【住所又は居所原語表記】C-9th Floor, Building B-6, No.66 Xixiaokou Road, Haidian District, Beijing 100192, China
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲スー▼成功
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼敬▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】宋秋香
(72)【発明者】
【氏名】曾▲鴻▼▲銘▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ファン▼▲リー▼
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208950768(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0160837(US,A1)
【文献】特表2016-529437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0145079(US,A1)
【文献】特開2012-176542(JP,A)
【文献】特開2018-145898(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0143143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
B29C 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードに用いられる棒状体であって、
前記棒状体は、角柱状構造体であり、
対向配置され、且つ互いに前記棒状体の厚さを画定する第1の側面及び第2の側面と、
前記第1の側面から前記厚さ方向に凹設され、前記第1の側面の長手方向に延びる第1の凹溝と、
を含み、
前記第1の凹溝の溝底面の幅は、前記第2の側面の幅以上であ
り、
前記第1の側面及び前記第2の側面と共に断面が台形である前記棒状体を画定する第3の側面及び第4の側面を更に含み、
前記棒状体は、
前記第3の側面から前記棒状体内に凹設され、前記第3の側面の長手方向に沿って延在し、溝底面が前記第2の側面に接続されている第1のエッジ溝と、
前記第4の側面から前記棒状体内に凹設され、前記第4の側面の長手方向に延在し、溝底面が前記第2の側面に接続されている第2のエッジ溝とを更に含む棒状体。
【請求項2】
前記第1の凹溝の溝底面及び前記第2の側面が粗面である請求項1に記載の棒状体。
【請求項3】
前記第1の側面及び/又は前記第2の側面が曲面である請求項1に記載の棒状体。
【請求項4】
前記第1の凹溝の溝底面の少なくとも一部が、第1の剥離層で覆われている請求項1~
3のいずれか一項に記載の棒状体。
【請求項5】
前記第1のエッジ溝の溝底面、前記第2のエッジ溝の溝底面及び前記第2の側面の少なくとも一部が第2の剥離層で覆われているか、
又は、前記第2の側面が第2の剥離層で覆われている請求項
1に記載の棒状体。
【請求項6】
ブレードに用いられる梁であって、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の複数の棒状体を備え、
前記複数の棒状体は、所定の態様で積層されて配列されており、厚さ方向に隣接する前記棒状体の間において、前記第2の側面が隣接する前記第1の凹溝の溝底面に当接されている梁。
【請求項7】
横方向に隣接する前記棒状体の前記第2の側面の向きが同じであるか、
又は、横方向に隣接する前記棒状体の前記第2の側面の向きが反対である請求項
6に記載の梁。
【請求項8】
前記棒状体は、横方向に沿って平面状又は曲面状に配列されている請求項
6又は
7に記載の梁。
【請求項9】
横方向に隣接する前記棒状体の間に隙間があり、複数の前記棒状体のうち隣接する前記棒状体の間に樹脂が充填されているか、
又は、隣接する棒状体の間にガイド中間層が配置され、樹脂で充填されている請求項
6又は
7に記載の梁。
【請求項10】
前記ガイド中間層は、繊維布である請求項
9に記載の梁。
【請求項11】
樹脂で被覆された繊維束及び剥離層を引き抜いて、引き抜き金型を通過させるステップを含み、
前記引き抜き金型の断面は、請求項1~
5のいずれか一項に記載の棒状体の断面に対応している棒状体の製造方法。
【請求項12】
前記第1の凹溝の縁部突起に対し材料除去処理を施して、前記第1の凹溝の深さを減少させるステップをさらに含む請求項
11に記載の棒状体の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の棒状体を複数提供するステップと、
複数の前記棒状体を所定の態様で積層配列して、厚さ方向に隣接する前記棒状体の間において、前記第2の側面を隣接する前記第1の凹溝の溝底面に当接させるステップと、
隣接する前記棒状体の間に樹脂を供給するステップと、
樹脂を硬化させて、棒状体を結合させるステップと、
を含む梁の製造方法。
【請求項14】
請求項
6ないし
10のいずれか一項に記載の梁を含むブレード。
【請求項15】
請求項
14に記載のブレードを備える風力発電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互引用]
本願は2019年11月22日に提出した「棒状体及び製造方法、梁及び製造方法、ブレード並び風力発電ユニット」という名称の中国専利出願201911159124.3の優先権を主張する。当該出願の全ての内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、風力発電分野に関し、具体的には、棒状体及び製造方法、梁及び製造方法、ブレード並び風力発電ユニットに関する。
【背景技術】
【0003】
風力発電技術の絶えずの発展に伴い、運行の安定したより大きな電力を提供する風力発電ユニットが業界の発展傾向になっているが、高出力の風力発電ユニットは一方ではブレードをますます長くさせる。ブレードの長さの増加により、ブレードの構造設計に対し新たな要求が高まっている。
【0004】
風力発電ブレードは、通常、上下2つのハウジングで外部輪郭を構成し、内部は梁-ウェブ構造を用いて耐荷され、梁は主な耐荷部品である。ブレードの長さが増加するにつれて、梁にかかる負荷も増加し、梁の耐荷能力に対する要求もますます高くなっている。板材は梁構造として力学性能に優れ、加工方法が簡単である利点を有し、板材を棒状体として使用すること及び補強構造部材を積層形成することは風力発電分野のブレード設計の重要な技術構想である。
【0005】
しかしながら、従来の棒状体及びその積層形成された梁部材では、一般に、棒状体の積層安定性が悪く、積層時の位置決めが容易でないという問題や、棒状体間の隙間の設定が不適切であるという問題があった。
【発明の概要】
【0006】
本願は、棒状体の積層時に嵌合構造を形成することで、積層構造の全体的な安定性と強度を増加させ、全体的な耐荷重能力を向上させることができる棒状体及び製造方法、梁及び製造方法、ブレード並び風力発電ユニットを提供する。
【0007】
第1の様態によると、本願の実施例は、ブレードに用いられる棒状体であって、棒状体は、角柱状構造体であり、対向配置され、且つ互いに棒状体の厚さを画定する第1の側面及び第2の側面と、第1の側面から厚さ方向に凹設され、第1の側面の長手方向に延びる第1の凹溝と、を含み、第1の凹溝の溝底面の幅は、第2の側面の幅以上である棒状体を提供する。
【0008】
本願の実施例の一つの様態によると、第1の凹溝の溝底面及び第2の側面が粗面である。
本願の実施例の一つの様態によると、第1の側面及び第2の側面と共に断面が台形である棒状体を画定する第3の側面及び第4の側面を更に含む。
【0009】
本願の実施例の一つの様態によると、棒状体は、第3の側面から棒状体内に凹設され、第3の側面の長手方向に沿って延在し、溝底面が第2の側面に接続されている第1のエッジ溝と、第4の側面から棒状体内に凹設され、第4の側面の長手方向に延在し、溝底面が第2の側面に接続されている第2のエッジ溝とを有する。
【0010】
本願の実施例の一つの様態によると、第1の側面及び/又は第2の側面が曲面である。
【0011】
本願の実施例の一つの様態によると、第1の凹溝の溝底面の少なくとも一部が、第1の剥離層で覆われている。
【0012】
本願の実施例の一つの様態によると、第1のエッジ溝の溝底面、第2のエッジ溝の溝底面及び第2の側面の少なくとも一部が第2の剥離層で覆われているか、又は、第2の側面が第2の剥離層で覆われている。
【0013】
第2の様態によると、本願の実施例は、ブレードに用いられる梁であって、上記のいずれかの実施例の複数の棒状体を備え、複数の棒状体は、所定の態様で積層されて配列されており、厚さ方向に隣接する棒状体の間において、第2の側面が隣接する第1の凹溝の溝底面に当接されている梁を提供する。
【0014】
本願の実施例の一つの様態によると、横方向に隣接する棒状体の第2の側面の向きが同じであるか、又は、横方向に隣接する棒状体の第2の側面の向きが反対である。
【0015】
本願の実施例の一つの様態によると、棒状体は、横方向に沿って平面状又は曲面状に配列されている。
【0016】
本願の実施例の一つの様態によると、横方向に隣接する棒状体の間に隙間があり、複数の棒状体のうち隣接する棒状体の間に樹脂が充填されているか、又は、隣接する棒状体の間にガイド中間層が配置され、樹脂で充填されている。
【0017】
本願の実施例の一つの様態によると、ガイド中間層は、繊維布である。
【0018】
第3の様態によると、本願の実施例は、棒状体の製造方法であって、樹脂で被覆された繊維束及び剥離層を引き抜いて、引き抜き金型を通過させるステップを含み、引き抜き金型の断面は、上記のいずれかの実施例の棒状体の断面に対応している棒状体の製造方法を提供する。
【0019】
本願の実施例の一つの様態によると、第1の凹溝の縁部突起に対し材料除去処理を施して、第1の凹溝の深さを減少させるステップをさらに含む。
【0020】
第4の様態によると、本願の実施例は、梁の製造方法であって、上記のいずれかの実施例に記載の棒状体を複数提供するステップと、複数の棒状体を所定の態様で積層配列して、厚さ方向に隣接する棒状体の間において、第2の側面を隣接する第1の凹溝の溝底面に当接させるステップと、隣接する棒状体の間に樹脂を供給するステップと、樹脂を硬化させて、棒状体を結合させるステップとを含む梁の製造方法を提供する。
【0021】
第5の様態によると、本願の実施例は、上記のいずれかの実施例の梁を含むブレードを提供する。
【0022】
第6の様態によると、本願の実施例は、上記のいずれかの実施例のブレードを備える風力発電ユニットを提供する。
【0023】
本願の実施例に係る棒状体によれば、第1側面が厚さ方向において第1の凹溝を有し、第2側面の幅が第1溝の溝底面幅以下であり、厚さ方向に隣接する棒状体の間には嵌合構造が形成されている。これにより、棒状体の積層構造の安定性と強度を増加させ、全体的な耐荷重能力を向上させる。一方、棒状体の積層時、棒状体の位置決め及び位置規制を容易にさせる。さらに、第1の凹溝の溝壁の近くに接着剤の流れ及び充填のための空隙が残され、棒状体間に接着剤が十分かつ均一に浸潤することができる。
【0024】
いくつかの選択可能な実施例において、第1の凹溝の溝底面及び第2の側面は、接着剤が流れる間隙を形成する粗面であるため、接着剤の接触面間の通過及び分布を促進し、接着面を形成することに有利である。
【0025】
本願の実施例の梁によれば、厚さ方向に隣接する棒状体が第1の凹溝を介して互いに嵌合されることで、梁の安定性と強度を増加させ、耐荷重能力を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本願の実施例の特徴、利点及び技術的効果について説明する。図面では、実際の縮尺で描かれていない。
【
図1】本願の一実施例に係る棒状体の概略斜視図である。
【
図2】本願の一実施例に係る棒状体の断面構造を示す模式図である。
【
図3】本願の一実施例に係る棒状体の剥離層を含む断面構造を示す模式図である。
【
図4a】本願の他の実施例に係る棒状体の異なる実施例の断面構造を示す模式図である
【
図4b】本願の他の実施例に係る棒状体の異なる実施例の断面構造を示す模式図である。
【
図5a】本願の他の実施例による棒状体の異なる実施例の剥離層を含む断面構造を示す概略図である。
【
図5b】本願の他の実施例による棒状体の異なる実施例の剥離層を含む断面構造を示す概略図である。
【
図6a】本願の実施例に係る梁の異なる実施例の断面構造を示す模式図である。
【
図6b】本願の実施例に係る梁の異なる実施例の断面構造を示す模式図である。
【
図7】本願の実施例に係る梁の一部の断面構造を示す模式図である。
【
図8】本願の実施例に係る梁の製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】本願の実施例に係るブレードの模式図である。
【
図11】本願の実施例に係る風力発電ユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面及び実施例を参照して、本発明の実施例をさらに詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明及び添付図面は、本願の原理を例示的に説明するために使用されるものであり、本願の範囲を限定するものではない。即ち、本願は、記載された実施例に限定されるものではない。
【0028】
以下、本願の各態様の特徴及び実施例を詳細に説明するが、本願の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、添付図面及び具体的な実施例を参照して、本願についてさらに詳細な説明を行う。なお、本明細書に記載された具体的な実施例は、単に本願を説明するように構成されており、本願を限定するように構成されていない。当業者にとって、本願は、これらの特定の詳細のいくつかを必要とせずに実施することができる。以下の実施例の説明は、単に本願の例を示すことによって本願に対するより良い理解を提供するためのものである。
【0029】
以下の説明に現れる方位用語は、いずれも図に示される方向であり、本願の棒状体及び製造方法、梁及び製造方法、ブレード並び風力発電ユニットの具体的な構造を限定するものではない。なお、本明細書において、「装着」、「接続」とは、特に明示的に規定、限定されない限り、広義に解釈されるべきものであり、例えば、固定式であってもよいし、着脱式であってもよいし、一体的に連結されていてもよい。また、直接連結されていてもよいし、間接連結されていてもよい。本願における上記用語の具体的な意味は、当業者には、特定の状況に従って理解することができる。
【0030】
本願をより良く理解するために、本願の実施例に係る棒状体及び製造方法、梁及び製造方法、ブレード並び風力発電ユニットについて、
図1~
図11を参照して以下のように詳細に説明する。
【0031】
本願の実施例は、ブレード、特に、風力発電ユニットのブレードに用いられる棒状体を提供する。
図1及び
図2を参照すると、
図1は、本願の一実施例に係る棒状体の概略斜視図を示し、
図2は、本願の一実施例に係る棒状体の概略断面構造を示す。本願の実施例によって提供される棒状体100は、軸方向に延びる長手方向を有する角柱状構造体である。棒状体100は、例えば、引き抜き、注入、予備硬化などの技術によって形成された予備成形物であってもよい。棒状体100は、好ましくは、引き抜き部材であってもよい。棒状体100は、高強度繊維構造体であってもよい。棒状体100は長尺状の板材であってもよく、
図1には棒状体100の長手方向の一部のみが模式的に示されている。棒状体100の幅は50mm~250mmであってもよく、厚さは2mm~15mmであってもよい。棒状体100は、対向して配置された第1の側面110及び第2の側面120を含み、第1の側面110及び第2の側面120は、互いに棒状体100の厚さを画定する。棒状体100の厚さは、ほぼ均一である。第1の側面110及び第2の側面120は、いずれも、棒状体100の長手方向に沿って延びており、角柱状構造体の2つの側面として機能する。第1の側面110及び第2の側面120は、長手方向に垂直な幅方向を有する。一実施例では、第1の側面110及び第2の側面120の幅は、長手方向に沿って均一である。
【0032】
引き続き
図1及び
図2を参照すると、棒状体100は、第1の側面110に設けられた第1の凹溝111をさらに含む。第1の凹溝111は、第1の側面110から厚さ方向に沿って凹設されており、その深さは略均一である。第1の凹溝111は、第1の側面110の長手方向に沿って延びている。一実施例では、第1の凹溝111の溝底面の中心線は、第1の側面110の中心線と平行である。第1の凹溝111の深さは、50μm~500μmとすることができる。第1の凹溝111の壁は、溝底面に対して垂直であってもよいし、溝底面と鈍角で交差していてもよくて、第1の凹溝111は、溝底よりも幅が小さくない開口部を有する。一実施例では、第1の凹溝111の溝幅は、長手方向に沿って均一であり、即ち、第1の凹溝111の溝底面の幅は、長手方向に沿って均一である。第1の凹溝111の溝底面の幅は、第2の側面120の幅以上である。
【0033】
本願の実施例の棒状体100によれば、第1の側面110は、厚さ方向に第1の凹溝111を有し、第2の側面120の幅は、第1の凹溝111の溝底面幅以下であることで、複数の棒状体100を積層して配置すると、厚さ方向に隣接する棒状体100の間に嵌合構造を形成することができる。即ち、一方の棒状体100の第2の側面120の対応する端部を他方の棒状体100の第1の凹溝111に嵌め込むことができる。嵌合構造では積層された棒状体100の構造の安定性と強度を強化し、全体構造が荷重に耐える能力を向上させる。一方、棒状体100の積層時、棒状体の位置決め及び位置規制を容易にさせる。さらに、第1の凹溝111の溝壁の近くに接着剤の流れ及び充填のための空隙が残され、棒状体100間に接着剤が十分かつ均一に浸潤することができる。
【0034】
図3を参照すると、いくつかの実施例では、第1の凹溝111の溝底面の少なくとも一部は、第1の剥離層112で覆われている。
図3は、本願の一実施例に係る棒状体の剥離層を含む断面構造を示す概略図である。第1の剥離層112は、棒状のシート状構造であり、対向する2つの面を有し、一方の面が第1の凹溝111の溝底面に貼り付けられ、他方の面が第1の側面110と面一になっている。第1の剥離層112は、離型布であってもよいし、表面を粗面化する他の層であってもよい。即ち、第1の剥離層112は、棒状体100の第1の側面110に、棒状体100の引き抜き成形時に剥離可能に形成され、第1の剥離層112の形成位置は第1の凹溝111に対応しており、第1の剥離層112を剥離すると、第1の凹溝111が露出した棒状体100が得られる。いくつかの選択可能な実施例では、第1の凹溝111を露出させた棒状体100を得た後、第1の凹溝111の深さを減少させるために、第1の凹溝111の片側又は両側縁の突出部に対して材料除去処理を行うこともできる。いくつかの選択可能な実施例では、第1の凹溝111の深さは、ミクロン又はミリメートルレベルまで減少させることができ、ゼロであってもよい。例えば、ラッピング、切削、エロージョン等の手段により材料除去作業を行うことができる。
【0035】
一実施例では、第1の凹溝111の溝底面及び第2の側面120は、接触面を形成した後に接着剤が流れる隙間を提供する粗面であるため、接着剤の接触面間の通過及び分布を促進し、接着剤が均一に分布された接着面を形成することに有利である。具体的には、第1の剥離層112を剥離すると、粗面化された第1の凹溝111の溝底面を得ることができる。粗面化された表面は、ラッピング、切削、エロージョンなどの手段によっても実現できる。
【0036】
いくつかの実施例において、
図1及び
図2を参照すると、棒状体100は、第1の側面110と第2の側面120との間に挟まれた第3の側面130及び第4の側面140をさらに含む。第3の側面130及び第4の側面140は、第1の側面110及び第2の側面120と共に、断面が台形である棒状体100を画定する。第3の側面130及び第4の側面140の傾斜角度は、5°~89.9°、好ましくは85°~89°である。本明細書における断面は、特に、棒状体100の軸方向に対して垂直な断面を意味する。好ましい実施例において、棒状体100の断面は、等脚台形である。
【0037】
図4a及び4bは、本願の別の実施例に係る棒状体の異なる実施例の断面構造の概略図を示す。いくつかの実施例において、
図4a及び4bを参照すると、棒状体100は、第3の側面130から棒状体100に向かって略均一な深さで凹設された第1のエッジ溝131をさらに含む。第1のエッジ溝131は、第3の側面130の長手方向に沿って延びており、第1のエッジ溝131の溝幅は、長手方向に沿って均一であり、即ち、第1のエッジ溝131の溝底面の幅は、長手方向に沿って均一である。第1のエッジ溝131の溝底面は、第2の側面120に接続されている。
【0038】
いくつかの実施例において、
図4a及び4bを引き続き参照すると、棒状体100は、第4の側面140から棒状体100に向かって略に均一な深さで凹設された第2のエッジ溝141をさらに含む。第2のエッジ溝141は、第4の側面140の長手方向に沿って延びており、第2のエッジ溝141の溝幅は、長手方向に沿って均一であり、即ち、第2のエッジ溝141の溝底面の幅は、長手方向に沿って均一である。第2のエッジ溝141の溝底面は、第2の側面120に接続されている。
【0039】
図4a及び
図4bは、棒状体100における第1のエッジ溝131及び第2のエッジ溝141の異なる配置形態を示す。
図4aに示す実施例では、第1のエッジ溝131及び第2のエッジ溝141の溝底面は、それぞれ第2の側面120と鈍角で交差しており、第1のエッジ溝131及び第2のエッジ溝141の溝底面は、それぞれ第3の側面130及び第4の側面140と略平行に設けられている。
図4aに示す実施例では、第1のエッジ溝131及び第2のエッジ溝141の溝底面は、それぞれ第2の側面120と実質的に鈍角で交差しており、第1のエッジ溝131及び第2のエッジ溝141の溝壁は、第2の側面120に対して略平行に設けられている。
【0040】
図5a及び5bを参照すると、
図5a及び5bは、本願の別の実施例に係る棒状体の異なる実施例の剥離層を含む断面構造の概略図を示す。いくつかの実施例において、
図5aに示すように、第1のエッジ溝131の溝底面、第2のエッジ溝141の溝底面、及び第2の側面120の少なくとも一部は、第2の剥離層122で覆われている。第2の剥離層122は、長尺状であり、一方の面が第1のエッジ溝131の溝底面、第2のエッジ溝141の溝底面及び第2の側面120に貼り付けられている。第2の剥離層122は、離型布であってもよく、即ち、第2の剥離層122は、棒状体100の第2の側面120と、第2の側面120から第3の側面130及び第4の側面140に至る部分とに、棒状体100の引き抜き成形時に剥離可能に形成されており、第2の剥離層122を剥離すると、第1のエッジ溝131、第2のエッジ溝141及び第2の側面120が露出される。第1のエッジ溝131の溝底面及び第2のエッジ溝141の溝底面は粗面であってもよい。他の実施例において、
図5bに示すように、第2の側面120は、第2の剥離層122で覆われている。好ましくは、第2の剥離層122の幅は、第2の側面120の幅と等しい。当該実施例において、第2の剥離層122は、棒状体100の第2の側面120に、棒状体100の引き抜き成形時に剥離可能に形成され、第2の剥離層122を剥離すると、粗面化された第2の側面120が露出される。
【0041】
いくつかの実施例において、第1の側面110及び第2の側面120は、略平面である。他の実施例において、第1の側面110及び第2の側面120は曲面であり、ブレードの曲面輪郭によりよく適合することができる。
【0042】
本願の実施例は、ブレード、特に風力発電ユニットのブレードに用いられる梁13を提供する。
図6a、6b及び7を参照すると、
図6a及び6bは、本願の実施例に係る梁の異なる実施例の断面構造の概略図を示し、
図7は、本願の実施例に係る梁の一部の断面構造の概略図を示す。本願の実施例によって提供される梁13は、上述の実施例のいずれかによる複数の棒状体100を含み、複数の棒状体100は、所定の態様で積層されて配置されている。
図6a及び6bには、3行4列に配列された棒状体100が概略的に示されているが、梁13内の棒状体100は、図示された配列に限定されないことは理解すべきである。具体的には、複数の棒状体100は同軸方向に配置され、即ち、複数の棒状体100の軸は略平行である。複数の棒状体100のうち厚さ方向に隣接する棒状体100の間では、第2の側面120が隣接する第1の凹溝111の溝底面に当接されている。棒状体100は、厚さ方向において第1の凹溝111を介して互いに嵌合される。即ち、一方の棒状体100の第2の側面120の対応する端部は、隣接する他方の棒状体100の第1の凹溝111内に埋め込まれている。横方向に隣接する棒状体100の間には隙間があり、複数の棒状体100のうち隣接する棒状体100の間には樹脂が充填されている。
【0043】
本願の実施例の梁13によれば、複数の棒状体100のうち厚さ方向に隣接する棒状体100の間では、第2の側面120が隣接する第1の凹溝111の溝底面に当接されており、これにより、梁13における厚さ方向に沿って設けられた棒状体100の間には嵌合構造が形成される。嵌合構造では梁13の構造安定性と強度を増加させ、梁13の耐荷重能力を向上させる。
【0044】
いくつかの実施例において、
図6aに示すように、横方向に隣接する棒状体100の第2の側面120の向きは同じである。横方向に隣接する棒状体の間にV字状の隙間が形成され、棒状体100の間の接着剤の分布を容易にするのに十分な接着剤の流動空間を提供することができる。
【0045】
他の実施例において、
図6bに示すように、横方向に隣接する棒状体100の第2の側面120の向きは反対である。即ち、横方向に隣接する棒状体100は、交互に逆さまに配置されているため、横方向に隣接する棒状体100の断面形状が合致し、その間に傾斜隙間が形成され、棒状体100間は緊密に配置され、横方向に隣接する棒状体100間の接着面積が増大する。
【0046】
いくつかの実施例において、棒状体100は、横方向に沿って平面的又は曲面的に配置されている。棒状体100は、ブレードの輪郭に従って横方向に沿って配置される。V字状の隙間を形成する実施例では、棒状体100を横方向に曲面状に配列する際に、横方向に隣接する棒状体100同士なす角度をV字状の隙間によって調整することができ、曲面状の配列によって隙間に閉空間が形成されることがなく、閉空間による樹脂の注入不良が回避される。
【0047】
いくつかの実施例において、隣接する棒状体100の間にガイド中間層が配置され、樹脂で充填されている。ガイド中間層は、樹脂が棒状体100の間で均一かつ良好に浸潤するのを促進し、棒状体100の間に樹脂が浸透されないリスクを低減する。ガイド中間層は、織物シート状部材であってもよい。具体的には、ガイド中間層は2次元織物繊維布のような繊維布であり、ガイド中間層の坪量は100~1200kg/m2であり、ガイド中間層の織り方は0°/90°織り又は±45°織りとすることができる。
【0048】
本願の実施例は棒状体の製造方法を提供し、以下のステップを含む。樹脂で被覆された繊維束及び剥離層を引き抜いて、引き抜き金型を通過させ、引き抜き金型の断面は、上記の実施例のいずれかに記載された棒状体100の断面に対応している。
【0049】
さらに、棒状体の製造方法は、第1の凹溝111の縁部突起に材料除去処理を施して、第1の凹溝111の深さを減少させるステップをさらに含む。いくつかの選択可能な実施例では、第1の凹溝111の深さは、ミクロン又はミリメートルレベルまで減少させることができ、ゼロであってもよい。例えば、ラッピング、切削、エロージョン等の手段により材料除去作業を行うことができる。
【0050】
図8を参照すると、本願の実施例による梁の製造方法のフローチャートが示されている。
【0051】
本願の実施例は、以下のステップを含む梁の製造方法を提供する。
【0052】
S110において、複数の棒状体を提供する。ここで、棒状体は、上述のいずれかの実施例に係る複数の棒状体100であってもよい。
【0053】
S120において、複数の棒状体100を所定の形態で積層して配列して、厚さ方向に隣接する棒状体100の間において、第2の側面120を隣接する第1の凹溝111の溝底面に当接させる。
【0054】
S130において、隣接する棒状体100の間に樹脂を供給する。
【0055】
S140において、樹脂を硬化させて棒状体100を結合させる。
【0056】
具体的には、棒状体100を気密性被覆体と金型との間に積層して、棒状体100を囲む注入空間を形成し、気密性被覆体に1つ以上の注入口及び真空吸引口を配置し、真空吸引用のポンプは、真空吸引口を介して注入空間を真空化する。樹脂は注入口を通って真空状態の注入空間に入ると共に、ポンプを継続して作動させ、樹脂を棒状体100間に充填する。その後、樹脂は、金型を加熱することによって硬化されて、棒状体100を結合させることができる。
【0057】
本願の実施例の梁の製造方法によれば、複数の棒状体100のうち厚さ方向に隣接する棒状体100の間において、第2の側面120を隣接する第1の凹溝111の溝底面に当接させることにより、梁13における厚さ方向に配置された棒状体100の間に嵌合構造を形成することができる。これにり、得られた梁13の構造安定性が高く、かつ強度が高く、耐荷重能力がより強い。
【0058】
本願の実施例は、ブレード10を提供する。
図9及び
図10を参照すると、
図9には、本願の実施例に係るブレードの模式図が示されており、
図10には、
図9における領域Aの構造模式図が示されている。本願の実施例のブレード10は、ハウジング11及びウェブ12を含む。ウェブ12は、ハウジング11内に配置され、ハウジング11に接続される。ブレード10はさらに、上述の実施例のいずれかに係る梁13を含む。梁13は、ハウジング11に接続されたウェブ12の両端に位置し、ブレード10の長さ方向に延びている。本願の実施例によって提供されるブレード10は、上述の実施例のいずれかに係る梁13を含むことで、ブレード10の構造安定性が高く、かつ強度が高く、耐荷重能力がより強い。
【0059】
本願の実施例は風力発電ユニットを提供する。
図11を参照すると、
図11には、本願の実施例に係る風力発電ユニットの模式図が示されている。本願の実施例が提供する風力発電ユニットは、主に、タワー4、発電機室3、発電機2及びブレードホイール1を含み、発電機室3はタワー4の先端に設置され、発電機2は、発電機室3に設けられる。もちろん、発電機2は、発電機室3の内部に設けられていてもよいし、発電機室3の外部に設けられていてもよい。ブレードホイール1はハブ20を含み、発電機2はハブ20に接続され、発電機室3のベースに固定される。本願の実施例によって提供される風力発電ユニットは、上記の実施例のいずれかによるブレード10を含む。2つ以上のブレード10は、それぞれハブ20に接続されており、ブレード10は風荷重によってハブ20を回転させ、発電機2の発電を実現する。本願の実施例が提供する風力発電ユニットは上述のいずれかの実施例のブレード10を含むことで、ブレード10の構造安定性が高く、かつ強度が高く、風力発電ユニットがより安定して確実に連続運転することができる。
【0060】
本願の上述の実施例によれば、これらの実施例は、すべての詳細を詳述するものではなく、本発明が単に記載された特定の実施例に限定されるものでもない。以上の説明から明らかなように、多くの修正及び変更が可能である。本明細書は、本願の原理及び実際の適用をより良く説明するために、これらの実施例を選択して具体的に説明する。したがって、当業者は、本願及びそれに基づく修正の使用を十分に利用することができる。本願は、特許請求の範囲及びそのすべての範囲及び均等物のみによって限定される。
【0061】
以上、好適な実施例を挙げて本発明を説明したが、本願は上記実施例に限定されるものではなく、本願の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能であり、その中の構成要素を均等のものに置き換えることができる。特に、各実施例に記載された技術的特徴は、構造上の矛盾がない限り、任意の方法で組み合わせることができる。本願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれる全ての技術案を含む。
【符号の説明】
【0062】
1ブレードホイール、2発電機、3発電機室、4タワー、
10ブレード、11ハウジング、12ウェブ、13梁、20ハブ、
100棒状体、
110第1の側面、111第1の凹溝、112第1の剥離層、
120第2の側面、122第2の剥離層、
130第3の側面、131第1のエッジ溝、
140第4の側面、141第2のエッジ溝。