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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】間接活線工事用把持工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20220512BHJP
   H02G 7/00 20060101ALI20220512BHJP
   B25B 7/02 20060101ALI20220512BHJP
   B25B 7/12 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G7/00
B25B7/02
B25B7/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020548472
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036173
(87)【国際公開番号】W WO2020066706
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2018178864
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】岩間 保
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-107920(JP,A)
【文献】特開2008-284648(JP,A)
【文献】特開2013-110866(JP,A)
【文献】特開2019-205219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/00
B25B 7/02
B25B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と人体との間に安全を保つための安全距離以上の長さを有する絶縁性の絶縁操作棒と、
前記絶縁操作棒の軸線方向の先端に設けられ、前記絶縁操作棒に設けられた把持操作部の操作によって接離される可動把持部と固定把持部とを有する把持部と、
先端に接続した前記把持部の接離動作を補助する絶縁性の補助絶縁操作棒と、
前記絶縁操作棒の基端部近傍に取り付けられ前記補助絶縁操作棒の基端部に回動可能に接続し梃子の作用で前記補助絶縁操作棒をその長さ方向に往復移動させて前記把持部を操作する把持操作部と、
を備える間接活線工事用把持工具であって、
前記固定把持部は、
前記絶縁操作棒の先端に接続する基端部と、前記基端部に列設され前記絶縁操作棒の軸線方向を含む面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、前記中央部に列設される先端部と、を備え、
前記固定把持部の前記中央部は、前記面方向の内側で把持対象物と当接する部分であり、
固定把持部の中央部は、基端部側から先端部側に向かって連続して形成された、外向きに凹む第1凹部、内向きに突出する第1凸部及び外向きに凹む第2凹部を有し、
前記可動把持部は、
前記補助絶縁操作棒の先端に回動可能に接続する基端部と、前記基端部に列設され前記固定把持部の中央部の凸向きと逆の向きである前記面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、前記中央部に列設される先端部と、を備え、
前記把持操作部の操作によって前記固定把持部に対して接離可能であるように、前記基端部が前記固定把持部の基端部に枢軸を介して回動可能に連結され、
前記可動把持部の前記中央部は、前記面方向の内側で把持対象物と当接する部分であり、
可動把持部の中央部は、基端部側から先端部側に向かって連続して形成された、外向きに凹む第1凹部、内向きに突出する第1凸部及び外向きに凹む第2凹部を有し、
固定把持部の第1凹部は、可動把持部の第1凹部との間で把持対象物を挟み込むようにして把持するための部位であり、
前記一方の第1凹部は、中央部の軸線方向における基端側の位置ないし中間付近において中央部の内側面が外向きに凹むことにより形成される部分で、L字状に屈曲する凹部であり、把持部の先端部で把持できないほどの把持対象物を引き入れることができると共に中央部が有する第1凸部によって第1凹部に引き入れられた把持対象物が先端側に離脱することを防止するように構成され、
前記他方の第1凹部は、中央部の軸線方向における基端側の位置ないし中間付近において、中央部の内側面が外向きに凹むことにより形成される部分であり、U字状に湾曲する凹部であり、
固定把持部の第2凹部は、可動把持部の第2凹部との間で把持対象物を挟み込むようにして把持するための部位であり、
前記一方の第2凹部は、中央部の軸線方向における基端側の位置において中央部の内側面が外向きに凹むことにより形成される部分で、L字状に屈曲する凹部であり、把持対象物を引き入れることができると共に先端部が有する凸部によって第2凹部に引き入れられた把持対象物が先端側に離脱することを防止するように構成され、
前記他方の第2凹部は、中央部の軸線方向における先端側の位置において、中央部の内側面が外向きに凹むことにより形成される部分であり、U字状に湾曲する凹部であり、
前記可動把持部の先端部と前記固定把持部の先端部とは、前記可動把持部の先端部が前記固定把持部の先端部に接触する時に、略平行であるように形成されている、
間接活線工事用把持工具。
【請求項2】
前記固定把持部の中央部は、前記固定把持部の中央部の第1凸部の先端部側に列設されて前記面方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第2凹部を有し、
前記可動把持部の中央部は、前記可動把持部の中央部の第1凸部の先端部側に列設されて前記面方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第2凹部を有する、
請求項1に記載の間接活線工事用把持工具。
【請求項3】
電線と人体との間に安全を保つための安全距離以上の長さを有する絶縁性の絶縁操作棒と、
前記絶縁操作棒の軸線方向の先端に設けられ、前記絶縁操作棒に設けられた把持操作部の操作によって接離される可動把持部と固定把持部とを有する把持部と、
先端に接続した前記把持部の接離動作を補助する絶縁性の補助絶縁操作棒と、
前記絶縁操作棒の基端部近傍に取り付けられ前記補助絶縁操作棒の基端部に回動可能に接続し梃子の作用で前記補助絶縁操作棒をその長さ方向に往復移動させて前記把持部を操作する把持操作部と、
を備える間接活線工事用把持工具であって、
前記固定把持部は、
前記絶縁操作棒の先端に接続する基端部と、前記基端部に列設され前記絶縁操作棒の軸線方向を含む面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、前記中央部に列設される先端部と、を備え、
前記可動把持部は、
前記補助絶縁操作棒の先端に回動可能に接続する基端部と、前記基端部に列設され前記固定把持部の中央部の凸向きと逆の向きである前記面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、前記中央部に列設される先端部と、を備え、
前記把持操作部の操作によって前記固定把持部に対して接離可能であるように、前記基端部が前記固定把持部の基端部に枢軸を介して回動可能に連結され、
前記可動把持部の先端部と前記固定把持部の先端部とは、前記可動把持部の先端部が前記固定把持部の先端部に接触する時に、略平行であるように形成されているとともに、
前記固定把持部の先端部は、前記面方向に屈曲する波形を形成するように内向きに突出する凸部と外向きに凹む凹部とを有し、
前記可動把持部の先端部は、前記面方向に屈曲する波形を形成するように外向きに凹む凹部と内向きに突出する凸部とを有し、
先端部は、その先端側であって内側に複数の溝を有し、把持対象物と当接する面である先端部当接面を有し、
前記一方の凸部は、中央部の内側面に列設して、中央部の内側面及び先端部当接面よりも内向きに突出するように形成され、前記一方の凹部は、前記一方の凸部の先端側に列設して、先端部当接面よりも外向きに凹むように形成され、
前記他方の凹部は、中央部の内側面に列設して、中央部の内側面及び先端部当接面よりも外向きに凹むように形成され、前記他方の凸部は、前記他方の凹部の先端側に列設して、先端部当接面よりも内向きに突出するように形成され、
前記固定把持部の先端部の凸部と前記可動把持部の先端部の凹部とは、前記可動把持部の先端部が前記固定把持部の先端部に接触する時に、噛合し、
前記固定把持部の先端部の凹部と前記可動把持部の先端部の凸部とは、前記可動把持部の先端部が前記固定把持部の先端部に接触する時に、噛合する、
間接活線工事用把持工具。
【請求項4】
前記固定把持部の先端部は、前記面方向に屈曲する波形を形成するように内向きに突出する凸部と外向きに凹む凹部とを有し、
前記可動把持部の先端部は、前記面方向に屈曲する波形を形成するように外向きに凹む凹部と内向きに突出する凸部とを有し、
前記固定把持部の先端部の凸部と前記可動把持部の先端部の凹部とは、前記可動把持部の先端部が前記固定把持部の先端部に接触する時に、噛合し、
前記固定把持部の先端部の凹部と前記可動把持部の先端部の凸部とは、前記可動把持部の先端部が前記固定把持部の先端部に接触する時に、噛合する、
請求項に記載の間接活線工事用把持工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工事用把持工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる絶縁ヤットコと呼ばれる間接活線工事用把持工具は、絶縁操作棒の先端に把持部が設けられている。絶縁ヤットコの把持部は、固定把持部と可動把持部により構成され、可動把持部が固定把持部に向かって回動することにより、把持部における先端部が挟持するようにして、把持対象物を把持する。すなわち、絶縁ヤットコは、把持部の先端部で、把持対象物を把持するために用いられている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-298436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の絶縁ヤットコは、把持対象物が非常に大径の電線である場合には、把持部の先端部の開く角度が大きくなり、固定把持部の先端部と可動把持部の先端部とが対向しない程の角度となった場合には、当該把持対象物を把持することができないという問題があった。
また、従来の絶縁ヤットコは、把持部の中央部で挟み込むように把持対象物を把持することが想定されていない。
そのため、把持部の先端部で把持できない程の大径の把持対象物を把持する必要があるときには、更に大型の絶縁ヤットコを準備するか、把持部の中央部で挟み込むように把持対象物を把持することができるいわゆる絶縁クイックを準備する必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、把持部の中央部及び先端部で多様な把持対象物を把持することができる間接活線工事用把持工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る間接活線工事用把持工具は、電線と人体との間に安全を保つための安全距離以上の長さを有する絶縁性の絶縁操作棒と、絶縁操作棒の軸線方向の先端に設けられ、絶縁操作棒に設けられた把持操作部の操作によって接離される可動把持部と固定把持部とを有する把持部と、先端に接続した把持部の接離動作を補助する絶縁性の補助絶縁操作棒と、絶縁操作棒の基端部近傍に取り付けられ補助絶縁操作棒の基端部に回動可能に接続し梃子の作用で補助絶縁操作棒をその長さ方向に往復移動させて把持部を操作する把持操作部と、を備える間接活線工事用把持工具である。
固定把持部は、絶縁操作棒の先端に接続する基端部と、基端部に列設され絶縁操作棒の軸線方向を含む面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、中央部に列設される先端部と、を備える。固定把持部の中央部は、面方向の内側で把持対象物と当接する部分であり基端部側から先端部側に向かって連続して面方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第1凹部及び内向きに突出する第1凸部を有する。可動把持部は、補助絶縁操作棒の先端に回動可能に接続する基端部と、基端部に列設され固定把持部の中央部の凸向きと逆の向きである面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、中央部に列設される先端部と、を備え、把持操作部の操作によって固定把持部に対して接離可能であるように、基端部が固定把持部の基端部に枢軸を介して回動可能に連結される。
可動把持部の中央部は、面方向の内側で把持対象物と当接する部分であり基端部側から先端部側に向かって連続して面方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第1凹部及び内向きに突出する第1凸部を有する。
可動把持部の先端部と固定把持部の先端部とは、可動把持部の先端部が固定把持部の先端部に接触する時に、略平行であるように形成されている。
【0007】
この発明に係る間接活線工事用把持工具によれば、電線と人体との間に安全を保つための安全距離以上の長さを有する絶縁性の絶縁操作棒と、絶縁操作棒の軸線方向の先端に設けられ、絶縁操作棒に設けられた把持操作部の操作によって接離される可動把持部と固定把持部とを有する把持部と、先端に接続した把持部の接離動作を補助する絶縁性の補助絶縁操作棒と、絶縁操作棒の基端部近傍に取り付けられ補助絶縁操作棒の基端部に回動可能に接続し梃子の作用で補助絶縁操作棒をその長さ方向に往復移動させて把持部を操作する把持操作部と、を備える。
そして、可動把持部の先端部と固定把持部の先端部とは、可動把持部の先端部が固定把持部の先端部に接触する時に、略平行であるように形成されているときには、対向した状態で比較的小径、板状又は布状の把持対象物を挟持するように把持することができる。
【0008】
さらに、固定把持部は、絶縁操作棒の先端に接続する基端部と、基端部に列設され絶縁操作棒の軸線方向を含む面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、中央部に列設される先端部と、を備え、固定把持部の中央部は、面方向の内側で把持対象物と当接する部分であり基端部側から先端部側に向かって連続して面方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第1凹部及び内向きに突出する第1凸部を有する。
そして、可動把持部は、補助絶縁操作棒の先端に回動可能に接続する基端部と、基端部に列設され固定把持部の中央部の凸向きと逆の向きである面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、中央部に列設される先端部と、を備え、把持操作部の操作によって固定把持部に対して接離可能であるように、基端部が固定把持部の基端部に枢軸を介して回動可能に連結され、可動把持部の中央部は、面方向の内側で把持対象物と当接する部分であり基端部側から先端部側に向かって連続して面方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第1凹部及び内向きに突出する第1凸部を有するときには、固定把持部の中央部と可動把持部の中央部との間で、比較的大径の把持対象物を把持することができる。
【0009】
定把持部の中央部が有する第1凹部に、把持部の先端部で把持できない程の大径の把持対象物を引き入れることができるとともに、固定把持部の中央部が有する第1凸部によって、第1凹部に引き入れられた把持対象物が先端側に離脱することを防止することができる。
そして、固定把持部の第1凹部に引き入れられた把持対象物は、把持操作部による操作によって固定把持部に接近する可動把持部の中央部が有する第1凹部によって、固定把持部の第1凹部に挟み込まれるように、安定的に把持することができる。さらに、固定把持部の第1凹部と可動把持部の第1凹部とに把持された把持対象物は、可動把持部の中央部が有する第1凸部によっても、把持対象物が先端側に離脱することを防止することができる。
【0010】
この発明に係る間接活線工事用把持工具は、更に次のように構成されていてもよい。すなわち、固定把持部の中央部は、更に、固定把持部の中央部の第1凸部の先端部側に列設されて面方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第2凹部を有し、可動把持部の中央部は、更に、可動把持部の中央部の第1凸部の先端部側に列設されて面方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第2凹部を有する。
【0011】
この発明に係る間接活線工事用把持工具によれば、固定把持部の中央部が有する第2凹部と可動把持部の中央部が有する第2凹部との間で、比較的中径の把持対象物を把持することができる。
【0012】
この発明に係る間接活線工事用把持工具は、次のように構成されていてもよい。
すなわち、電線と人体との間に安全を保つための安全距離以上の長さを有する絶縁性の絶縁操作棒と、絶縁操作棒の軸線方向の先端に設けられ、絶縁操作棒に設けられた把持操作部の操作によって接離される可動把持部と固定把持部とを有する把持部と、先端に接続した把持部の接離動作を補助する絶縁性の補助絶縁操作棒と、絶縁操作棒の基端部近傍に取り付けられ補助絶縁操作棒の基端部に回動可能に接続し梃子の作用で補助絶縁操作棒をその長さ方向に往復移動させて把持部を操作する把持操作部と、を備える間接活線工事用把持工具であって、固定把持部は、絶縁操作棒の先端に接続する基端部と、基端部に列設され絶縁操作棒の軸線方向を含む面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、中央部に列設される先端部と、を備え、可動把持部は、補助絶縁操作棒の先端に回動可能に接続する基端部と、基端部に列設され固定把持部の中央部の凸向きと逆の向きである面方向の外向きに凸の略円弧状に形成された中央部と、中央部に列設される先端部と、を備え、把持操作部の操作によって固定把持部に対して接離可能であるように、基端部が固定把持部の基端部に枢軸を介して回動可能に連結され、可動把持部の先端部と固定把持部の先端部とは、可動把持部の先端部が固定把持部の先端部に接触する時に、略平行であるように形成されている。
固定把持部の先端部は、面方向に屈曲する波形を形成するように内向きに突出する凸部と外向きに凹む凹部とを有し、可動把持部の先端部は、面方向に屈曲する波形を形成するように外向きに凹む凹部と内向きに突出する凸部とを有し、固定把持部の先端部の凸部と可動把持部の先端部の凹部とは、可動把持部の先端部が固定把持部の先端部に接触する時に、噛合し、固定把持部の先端部の凹部と可動把持部の先端部の凸部とは、可動把持部の先端部が固定把持部の先端部に接触する時に、噛合する。
【0013】
この発明に係る間接活線工事用把持工具によれば、固定把持部の先端部は、面方向に屈曲する波形を形成するように内向きに突出する凸部と外向きに凹む凹部とを有し、可動把持部の先端部は、面方向に屈曲する波形を形成するように外向きに凹む凹部と内向きに突出する凸部とを有し、固定把持部の先端部の凸部と可動把持部の先端部の凹部とは、可動把持部の先端部が固定把持部の先端部に接触する時に、噛合し、固定把持部の先端部の凹部と可動把持部の先端部の凸部とは、可動把持部の先端部が固定把持部の先端部に接触する時に、噛合するので、可動把持部の先端部が固定把持部の先端部に接触する時に略平行であるように形成されている可動把持部の先端部と固定把持部の先端部とは、布状の把持対象物をその両面から挟持することができるとともに、噛合する固定把持部の先端部の凸部及び凹部と可動把持部の先端部の凹部及び凸部とが、布状の把持対象物を、波形状に屈曲するそれぞれの凸部及び凹部に入れ込んで、把持部の先端部からすり抜けて離脱しないように、より強固に把持することができる。
【発明の効果】
【0014】
したがって、本発明に係る間接活線工事用把持工具によれば、把持部の中央部及び先端部で多様な把持対象物を把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る間接活線工事用把持工具の正面図である。
図2】本発明に係る間接活線工事用把持工具の開いた状態にある把持部を示す斜視図である。
図3図1のa部拡大図であり、本発明に係る間接活線工事用把持工具の開いた状態にある把持部を示す正面図である。
図4】本発明に係る間接活線工事用把持工具の固定把持部を示す正面図である。
図5】本発明に係る間接活線工事用把持工具の可動把持部を示す正面図である。
図6】本発明に係る間接活線工事用把持工具の把持部の中央部において比較的大径の把持対象物を把持している様子を示す正面図である。
図7】本発明に係る間接活線工事用把持工具の把持部の中央部において比較的中径の把持対象物を把持している様子を示す正面図である。
図8】本発明に係る間接活線工事用把持工具の把持部の先端部において布状の把持対象物を把持している様子を示す正面図である。
図9】本発明に係る間接活線工事用把持工具の変形例を示す図であって、開いた状態にある把持部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る間接活線工事用把持工具について、図を参照して詳細に説明する。
なお、明細書及び特許請求の範囲の説明において用いられる方向又は面を、次のように定義する。間接活線工事用把持工具を構成する絶縁操作棒の軸線と直交ないし交差する向きであって軸線に接近する向きを内向きとし、絶縁操作棒の軸線と直交ないし交差する向きであって軸線から遠ざかる向きを外向きとする。また、絶縁操作棒において、作業者の手に把持される側の端を基端とし、把持部が設けられる側の端を先端とする。基端と先端との位置関係は、把持部ないし間接活線工事用把持工具の全体において、同様とする。また、絶縁操作棒の軸線を通り、基端向き又は先端向きを含む方向を、軸線方向Aとする。また、把持操作部の操作によって接離される可動把持部と固定把持部とを有する把持部において、その接離する方向をB方向とする。また、絶縁操作棒の軸線方向を含む面Vとは、絶縁操作棒の軸線方向と、軸線方向に交差するB方向と、により定義される面である。
【0017】
なお、以下に示す実施の形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
図1に示すように、間接活線工事用把持工具10は、絶縁操作棒14と、絶縁操作棒14の先端に設けられる把持部12と、絶縁操作棒14の基端部近傍に設けられる把持操作部26と、把持操作部26による操作を把持部12に伝達する補助絶縁操作棒24と、を備える。把持部12は、可動把持部20と固定把持部22とを有し、把持操作部26は、把持部12を構成する可動把持部20のB方向における固定把持部22との接離動作を操作するためのものである。以下、各構成要素について詳述する。
【0019】
絶縁操作棒14は、絶縁性の材料で構成された円柱状の棒状部材である。
間接活線工事用把持工具10は、高圧配電線の引下げ線の切断作業等に用いられる工具であることから、絶縁操作棒14は、電線と人体との間に安全を保つための安全距離以上の長さを有する。
絶縁操作棒14には、沿面放電や漏電を避けるために、雨切16や鍔18が設けられている。
前述のように、絶縁操作棒14の先端には把持部12が設けられており、絶縁操作棒14の基端部近傍には把持操作部26が設けられている。
この絶縁操作棒14により、作業者は、先端に設けられた把持部12を作業位置に位置決めする。そして、作業者は、把持操作部26により把持部12の接離操作を行う。
【0020】
補助絶縁操作棒24は、絶縁操作棒14と同じ材質で構成され、同様に漏電、沿面放電を防止するため雨切16や鍔18が設けられている。
補助絶縁操作棒24の先端部は、後述する可動把持部20の基端部20aと回動可能に連結されている。
補助絶縁操作棒24の基端部は、後述する把持操作部26の作動片26eと回動可能に連結されている。
補助絶縁操作棒24は、絶縁操作棒14に並設され、絶縁操作棒14の先端に取り付けられた把持部12の把持操作部26による接離操作を補助する。
補助絶縁操作棒24の先端部には、可動把持部20の基端部20aと回動可能に連結するための先端具25が設けられている。
【0021】
図2図3等に示すように、先端具25は、先端25b側が途中から二股状に2つに分かれる略円柱状体で基端25a側が開口するような略円筒状に形成され、補助絶縁操作棒24の軸線方向に伸びるように形成されている。
先端具25は、基端25a側の開口部分の内径が補助絶縁操作棒24の径と一致しており、基端25a側の開口部分において補助絶縁操作棒24の先端部を嵌装できるように形成されている。先端具25は、先端25b側が先端25bから基端25aに向かって且つ径方向を横断するように、側面視凹状に切り欠かれた形状となるように、形成されている。
また、先端具25は、先端25bの近傍に、リベット孔25dが形成され、リベット孔25dは、前記凹状の切欠と直交するように且つ中心線を径方向に通るように開口する。
また、先端具25は、基端25aの近傍に、ボルト孔25cが形成され、ボルト孔25cは、リベット孔25dと平行に開口する、すなわち、中心線を径方向に通るように開口している。
先端具25は、基端25a側から補助絶縁操作棒24の先端部が嵌装され、ボルト孔25cから補助絶縁操作棒24の先端部を貫通するボルト25eが挿通されて、補助絶縁操作棒24と一体化される。
さらに、先端具25は、リベット孔25dと先端具25の先端25b側に位置する可動把持部20の基端部20aの後述する基端側リベット孔20eとを一致させ、リベット42をリベット孔25dとリベット孔20eとに挿通して、可動把持部20を補助絶縁操作棒24に接続する。
【0022】
把持部12は、間接活線工事用把持工具10において、把持対象物84に接近して、先端部において、把持対象物84を挟持するようにして把持することができ、中央部において、把持対象物84を挟み、抱き込むようにして把持するものである。
把持部12は、可動把持部20と固定把持部22とを有する。
絶縁操作棒14に連接された可動把持部20は、絶縁操作棒14に連結された基端部22aから補助絶縁操作棒24側に伸び、さらに絶縁操作棒14とは反対側で上方に向けて伸びており、一方、補助絶縁操作棒24に連接された固定把持部22は、補助絶縁操作棒24に連結された可動把持部の基端部aから絶縁操作棒14側に伸び、さらに絶縁操作棒14の伸びる上方に向けて伸びている。可動把持部20と固定把持部22とは、枢軸(後述する枢軸30)を中心にして交差し、U の字状態に伸びる挟持構造を形成する。
【0023】
固定把持部22は、把持部12を構成する部材である。固定把持部22は、硬質材料、例えば金属材料で形成されている。図4に示すように、固定把持部22は、絶縁操作棒14の先端部を嵌装するための嵌装部15と、嵌装部15の先端側に列設された基端部22aと、基端部22aの先端側に列設された中央部22bと、中央部22bの先端側に列設された先端部22cと、を有する。
固定把持部22は、図4に示すように、全体形状として、絶縁操作棒14の軸線方向Aに対して外向きに略45度傾斜し、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V上で外向きに凸の略円弧状に形成されているとともに、基端部22aから先端部22cにかけて、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V上で徐々に細くなるように形成されている。なお、図4において、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面Vは、紙面と一致する。
絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面Vは、図4図示のように、固定把持部22の先端部22cの先端部分から固定把持部の基端部22aの後端部にかけて拡がる縦断面とほぼ一致する平面であり、固定把持部22の幅方向とは直交する平面である。
【0024】
嵌装部15は、図4に示すように、先端側が閉じて基端部22aに一体的に列設するように形成され、基端15a側が略円筒状に開口するように形成されている。嵌装部15は、基端15a側の開口部分の内径が絶縁操作棒14の径と一致しており、基端15a側の開口部分において絶縁操作棒14の先端部を嵌装できるように形成されている。
嵌装部15は、円筒面を形成している側面に、中心線を径方向(内外方向)に通るように開口するボルト孔15cが形成されている。図3に示すように、嵌装部15は、基端15a側から絶縁操作棒14の先端部を内包し、絶縁操作棒14の先端部を貫通するボルト15eを、ボルト孔15cから挿通させて、絶縁操作棒14と接続されている。
【0025】
図3及び図4に示すように、固定把持部22の基端部22aは、嵌装部15に列設されている。図4に示すように、基端部22aは、絶縁操作棒14の軸線方向Aに対して略45度外向きに傾斜するように形成され、さらに、基端部22aの途中から、外向きに湾曲し、絶縁操作棒14の軸線方向Aに対して略90度となるように延びる屈曲部22avが形成されている。
図4に示すように、基端部22aは、可動把持部20を回動可能に連結するボルト30を通すためのボルト孔22dが形成され、ボルト孔22dは、屈曲部22avの近傍において、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面Vと直交する方向に開けられている。
【0026】
図4に示すように、中央部22bは、基端部22aに列設され、全体形状が絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V上で外向きに凸の略円弧状であるように形成されている。
中央部22bは、外側面において、絶縁操作棒14の軸線方向Aに対して略90度傾斜する基端部22aに滑らかに連続しながらも、徐々に内向きに曲率を変えて湾曲する。
また、中央部22bは、内側面において、4つの平面で構成されており、把持対象物84と当接するための当接面である中央部第1当接面221b、中央部第2当接面222b、中央部第3当接面223b及び中央部第4当接面224bが形成されている。
【0027】
例えば、中央部第1当接面221bは、基端部22aの内側面から連続して、絶縁操作棒14の軸線方向Aに対して外向きに傾斜している面である。
また、中央部第2当接面222bは、中央部第1当接面221bの先端側端縁から内向きに屈曲しながら連続する平面である。中央部第3当接面223bは、中央部第2当接面222bの先端側端縁から外向きに屈曲しながら連続する面である。
中央部第4当接面224bは、中央部第3当接面223bの先端側端縁から内向きに屈曲しながら連続する面である。
また、中央部第1当接面221b、中央部第2当接面222b、中央部第3当接面223b及び中央部第4当接面224bは、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面Vに対して、直交するように形成されている。
【0028】
さらに、固定把持部22の中央部22bは、図2図3及び図4に示すように、軸線方向Aを含む面V方向の内側で把持対象物84と当接する部分であり、基端部22a側から先端部22c側に向かって連続して軸線方向Aを含む面V方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように、外向きに凹む第1凹部22b1s、内向きに突出する第1凸部22b1t及び外向きに凹む第2凹部22b2sを有する。
固定把持部22の第1凹部22b1s及び凹む第2凹部22b2sは、可動把持部20の後述する中央部20bの第1凹部20b1s及び第2凹部20b2sとの間で挟み包み込むようにして、把持対象物84を把持するための部分である。
【0029】
詳細には、第1凹部22b1sは、固定把持部22の中央部22bの軸線方向Aにおける基端側の位置ないし中間付近において、中央部22bの内側面が外向きに凹むことにより形成される部分である。例えば、第1凹部22b1sは、図4に示すように、L字状に屈曲する凹部であり、その屈曲角度は、略134度である。第1凹部22b1sにより、中央部22bの内側面は、外向きへの傾斜を内向きないし軸線方向Aへの傾斜に変える。すなわち、第1凹部22b1sは、中央部第1当接面221bと中央部第2当接面222bとの接続部である。
【0030】
第1凸部22b1tは、第1凹部22b1sから内向きないし軸線方向Aかつ先端側に向かって連続する中央部22bの内側面が内向きに突出することにより形成される部分である。例えば、第1凸部22b1tは、図4に示すように、L字状に屈曲する凸部であり、その屈曲角度は、略114度である。第1凸部22b1tにより、中央部22bの内側面は、内向きないし軸線方向Aへの傾斜を再び外向きへの傾斜に変える。
すなわち、第1凸部22b1tは、中央部第2当接面222bと中央部第3当接面223bとの接続部である。
【0031】
第2凹部22b2sは、固定把持部22の中央部22bの軸線方向Aにおける先端側の位置において、中央部22bの内側面が外向きに凹むことにより形成される部分である。例えば、第2凹部22b2sは、図4に示すように、L字状に屈曲する凹部であり、その屈曲角度は、略137度である。
第2凹部22b2sにより、中央部22bの内側面は、外向きへの傾斜をその傾斜角を低下したすなわち緩やかな外向きへの傾斜に変える。すなわち、第2凹部22b2sは、中央部第3当接面223bと中央部第4当接面224bとの接続部である。
【0032】
第1凹部22b1s、第1凸部22b1t及び第2凹部22b2sを、基端部22aに形成されているボルト孔22dから先端部22cに向かって伸ばした仮想平面C1との関係で説明する。
図4に示すように、仮想平面C1に対して、第1凹部22b1sは、外側に位置する。一方、仮想平面C1に対して、第1凸部22b1tは、内側に位置する。そして、仮想平面C1に対して、第2凹部22b2sは、外側に位置する。
【0033】
固定把持部22の先端部22cは、その内側で把持対象物84と当接し、対向する可動把持部20の先端部20cとの間に挟持して、把持対象物84を把持するための部分である。
図3及び図4に示すように、先端部22cは、中央部22bと列設する。先端部22cの外側面は、基端側が中央部22bの外側面に滑らかに連続して列設し、先端側にかけて外向きに若干湾曲するように形成され、絶縁操作棒14の軸線方向Aに対して外向きに略45度傾斜する方向に伸びている。
【0034】
また、先端部22cは、図3及び図4に示すように、その先端側であって内側に複数の溝を有し把持対象物84と当接する面である先端部当接面220cを有する。先端部当接面220cは、仮想平面C1に沿って先端部22cに形成される面である。そして、先端部22cは、その全体形状として、仮想平面C1と略平行となっている。
【0035】
さらに、先端部22cは、図3及び図4に示すように、その基端側であって内側に、軸線方向Aを含む面V方向に屈曲する波形を形成するように内向きに突出する凸部22ctと外向きに凹む凹部22csとを有する。
凸部22ctは、中央部22bの内側面に列設して、中央部22bの内側面よりも内向きに突出する部分である。
凹部22csは、凸部22ctの先端側に列設して、先端部当接面220cよりも外向きに凹む部分である。
固定把持部22の先端部22cの凸部22ctと後述する可動把持部20の先端部20cの凹部20csとは、可動把持部20の先端部20cが固定把持部22の先端部22cに接触する時に、噛合する。同時に、固定把持部22の先端部22cの凹部22csと可動把持部20の先端部20cの凸部20ctとは、可動把持部20の先端部20cが固定把持部22の先端部22cに接触する時に、噛合する。
【0036】
詳細には、固定把持部22の先端部22cの凸部22ctは、固定把持部22の幅方向に拡がる3つの面により構成されており、凸部傾斜面22ct1と凸部天面22ct2と凸部垂面22ct3とにより構成されている。
凸部垂面22ct3は、中央部22bの内側面の先端側端縁から仮想平面C1に直交するように内向きに伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する平面である。
凸部天面22ct2は、凸部垂面22ct3の内側端縁から仮想平面C1に平行に伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する面である。凸部天面22ct2は、凸部22ctの天面を構成する面である。凸部天面22ct2は、仮想平面C1よりも内側の位置にある。
凸部傾斜面22ct1は、凸部天面22ct2の先端側端縁から外向きかつ先端向きに伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する面である。凸部傾斜面22ct1は、凸部22ctを先端側から見たときに徐々に内向きに突出させるための面である。
これにより、把持部12の先端側から布状の把持対象物84を挿入して、把持部12が布状の把持対象物84を把持しようとするときに、布状の把持対象物84の端縁が凸部22ctに引っかかり、把持部12の中央部にまで挿入できなくなることを防止することができる。
凸部傾斜面22ct1の先端側端縁は、仮想平面C1よりも外側に位置している。
【0037】
また、固定把持部22の先端部22cの凹部22csは、固定把持部22の幅方向に拡がる2つの面により構成されており、凹部傾斜面22cs1と凹部底面22cs2とにより構成されている。
凹部底面22cs2は、凸部傾斜面22ct1の先端側端縁から仮想平面C1にそって先端向きに伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する面である。凹部底面22cs2は、仮想平面C1よりも外側の位置にある。凹部傾斜面22cs1は、凹部底面22cs2の先端側端縁から内向きかつ先端向きに伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する面である。凹部傾斜面22cs1の先端側端縁は、仮想平面C1上に位置する。
そして、凹部傾斜面22cs1の先端側端縁は、先端部当接面220cに接続している。
【0038】
また、図2に示すように、固定把持部22には、長穴22gが形成されている。長穴22gは、ボルト30の伸びる方向と直交する方向である絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面Vに沿って伸び、基端部22aから中央部22bの先端側にかけて連続するとともに内側面と外側面とを貫通するように開けられている穴である。
長穴22gは、図2に示すように、固定把持部22内に可動把持部20の後述する基端部20aが移動可能に挿通されるための穴である。
【0039】
可動把持部20は、把持部12を構成する部材であり、固定把持部20に対して、図1に示すB方向に、絶縁操作棒14に設けられた把持操作部26の操作によって接離するように構成されている。可動把持部20は、硬質材料、例えば金属材料で形成されている。
図5に示すように、可動把持部20は、基端部20aと、基端部20aの先端側に列設された中央部20bと、中央部20bの先端側に列設された先端部20cと、を有する。
可動把持部20は、全体形状として、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V上で固定把持部22の全体形状の凸向きと逆の向きである外向きに凸の略円弧状に形成されているとともに、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V上で徐々に、基端部20aから先端部20cにかけて細くなるように形成されている。
なお、図5において、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面Vは、紙面と一致する。
絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V は、図5図示のように、可動把持部20の可動把持部の先端部20Cの先端部分から可動把持部の基端部20aの後端部にかけて拡がる縦断面とほぼ一致する平面であり、可動把持部20の幅方向とは直交する平面である。
【0040】
図1図2及び図3に示すように、可動把持部20の基端部20aは、補助絶縁操作棒24の先端に接続されている。明確には図示していないが、具体的には、基端部20aは、その基端20fが補助絶縁操作棒24の先端具25の先端25bに形成された凹状の切り欠きに挟み込まれている。そして、基端部20aは、可動把持部20の基端20fの近傍に絶縁操作棒14の軸線方向Aと直交する方向に開けられた基端側リベット孔20eと補助絶縁操作棒24の先端具25に開けられたリベット孔25dとに挿通されるリベット42によって、補助絶縁操作棒24に連結されている。すなわち、基端部20aは、補助絶縁操作棒24の先端に回動可能に接続する。
また、基端部20aは、基端20fの近傍において、軸線方向Aを含む面Vに直交する方向である幅方向すなわちリベット42が挿通される方向に薄くなるように形成されている。
図5に示すように、基端部20aは、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V上で、当該軸線方向Aの先端向きに、基端20fからC字状に湾曲するように形成されている。図5に示すように、基端部20aは、中央付近において、絶縁操作棒14の軸線方向Aと直交する方向にボルト孔20dが開けられており、ボルト孔20dは、可動把持部22を固定把持部22に回動可能に連結するボルト30を通すために形成されている。
【0041】
図5に示すように、中央部20bは、基端部20aに接続され、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V上で固定把持部22の中央部22bの凸向きと逆の向きである外向きに凸の略円弧状に形成されている。
中央部20bは、外側面において、基端部20aに滑らかな円弧を描くように接続され、絶縁操作棒14の軸線方向Aの先端向きから内向きに向きを変えながら、さらにC字状に湾曲する。
また、中央部20bは、内側面において、把持対象物84と当接するための当接面である中央部第1当接面201b及び中央部第2当接面202b2が形成されている。
また、中央部20bは、軸線方向Aを含む面Vに直交する方向である幅方向に薄く形成された基端部20aよりも厚みを厚く形成されており、固定把持部22の中央部22aの厚みと同じ厚みを備えるように、形成されている。
【0042】
例えば、中央部第1当接面201bは、基端部20aの内側面から連続し、中央部の外側面よりも曲率を大きくして内向きに湾曲している面である。
中央部第2当接面202bは、中央部第1当接面201bに列設するものの、中央部第1当接面201bの先端側端縁に対して若干外向きないし軸線方向Aに屈曲又は湾曲して列設する面である。
そして、中央部第2当接面202bは、中央部第1当接面201bよりも曲率を小さくして内向きに湾曲している面である。また、中央部第1当接面201b及び中央部第2当接面202bは、絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面Vに対して、直交するように形成されている。
【0043】
さらに、可動把持部20の中央部20bは、図2図3及び図5に示すように、軸線方向Aを含む面V方向の内側で把持対象物84と当接する部分であり、基端部22a側から先端部22c側に向かって連続して軸線方向Aを含む面V方向に屈曲又は湾曲する波形を形成するように、外向きに凹む第1凹部20b1s、内向きに突出する第1凸部20b1t及び外向きに凹む第2凹部20b2sを有する。
可動把持部20の中央部20bの第1凹部20b1s及び第2凹部20b2sは、対向する固定把持部22の第1凹部22b1s及び第2凹部22b2sとの間に挟み込むようにして、把持対象物84を把持するための部分である。
【0044】
詳細には、第1凹部20b1sは、可動把持部20の中央部20bの軸線方向Aにおける基端側の位置ないし中間付近において、中央部20bの内側面が外向きに凹むことにより形成される部分である。例えば、第1凹部20b1sは、図5に示すように、U字状に湾曲する凹部であり、その曲率半径は略46mmであり、その曲率半径により円弧が形成される角度は、略136度である。
第1凹部20b1sにより、中央部20bの内側面は、外向きへの傾斜を内向きないし軸線方向Aへの傾斜に変える。すなわち、第1凹部20b1sは、中央部第1当接面201bにより形成される凹部である。
【0045】
第1凸部20b1tは、第1凹部20b1sから内向きないし軸線方向Aかつ先端側に向かって連続しており、中央部20bの内側面が内向きに突出することにより形成される部分である。例えば、第1凸部20b1tは、図5に示すように、U字状に湾曲する凸部である。
第1凸部20b1tにより、中央部20bの内側面は、内向きないし軸線方向Aへの傾斜を再び外向きへの傾斜に変える。すなわち、第1凸部20b1tは、中央部第1当接面201bと中央部第2当接面202bとの接続部である。
【0046】
第2凹部20b2sは、可動把持部20の中央部20bの軸線方向Aにおける先端側の位置において、中央部20bの内側面が外向きに凹むことにより形成される部分である。例えば、第2凹部20b2sは、図5に示すように、U字状に湾曲する凹部であり、その曲率半径は略50mmであり、その曲率半径により円弧が形成される角度は略38度である。
第2凹部20b2sにより、中央部20bの内側面は、外向きへの傾斜を内向きないし軸線方向Aへの傾斜に変える。すなわち、第2凹部20b2sは、中央部第2当接面202bにより形成される凹部である。
【0047】
第1凹部20b1s、第1凸部20b1t及び第2凹部20b2sを、基端部20aに形成されているボルト孔20dから先端部20cに向かって伸ばした仮想平面C2との関係で説明する。
図5に示すように、仮想平面C2に対して、第1凹部20b1s、第1凸部20b1t及び第2凹部20b2sは、いずれも外側に位置する。
【0048】
可動把持部20の先端部20cは、その内側で把持対象物84と当接し、対向する固定把持部22の先端部22cとの間に挟持して、把持対象物84を把持するための部分である。図5に示すように、先端部20cは、中央部20bに列設されている。先端部20cの外側面は、基端側が中央部20bの外側面に滑らかに連続して列設され、先端側にかけて外向きに若干湾曲するように形成されている。
【0049】
また、先端部20cは、図3及び図5に示すように、その先端側であって内側に複数の溝を有し把持対象物84と当接する面である先端部当接面200cを有する。先端部当接面200cは、仮想平面C2に沿って先端部20cに形成される面である。そして、先端部20cは、その全体形状として、仮想平面C2と略平行となっている。
【0050】
さらに、先端部20cは、図3及び図5に示すように、その基端側であって内側に、軸線方向Aを含む面V方向に屈曲する波形を形成するように、外向きに凹む凹部20csと内向きに突出する凸部20ctとを有する。
凹部20csは、中央部20bの内側面例えば中央部第2当接面202bに列設して、中央部20bの内側面および先端部当接面200cよりも外向きに凹む部分である。
凸部20ctは、凹部20csの先端側に列設して、先端部当接面200cよりも内向きに突出する部分である。
可動把持部20の先端部20cの凹部20csと固定把持部22の先端部22cの凸部22ctとは、可動把持部20の先端部20cが固定把持部22の先端部22cに接触する時に、噛合する。同時に、可動把持部20の先端部20cの凸部20ctと固定把持部22の先端部22cの凹部22csとは、可動把持部20の先端部20cが固定把持部22の先端部22cに接触する時に、噛合する。
【0051】
詳細には、可動把持部20の先端部20cの凹部20csは、可動把持部20の幅方向に拡がる2つの面により構成されており、凹部傾斜面20cs2と凹部底面20cs1とにより構成されている。
凹部傾斜面20cs2は、中央部20bの内側面例えば中央部第2当接面202bの先端側端縁から先端向きかつ外向きに伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する面である。
凹部底面20cs1は、凹部傾斜面20cs2の外側端縁から仮想平面C2に平行に伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する面である。
凹部底面20cs1は、仮想平面C2よりも外側の位置にある。
【0052】
また、可動把持部20の先端部20cの凸部20ctは、可動把持部20の幅方向に拡がる3つの面により構成されており、凸部垂面20ct3と凸部天面20ct2と凸部傾斜面20ct1とにより構成されている。
凸部垂面20ct3は、凹部底面20cs1の先端側端縁から仮想平面C2に直交するように内向きに伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する平面である。凸部天面20ct2は、凸部垂面20ct3の内側端縁から仮想平面C2に平行に伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する面である。凸部天面20ct2は、凸部20ctの天面を構成する面である。凸部天面20ct2は、仮想平面C2よりも内側の位置にある。
凸部傾斜面20ct1は、凸部天面20ct2の先端側端縁から外向きかつ先端向きに伸びる面であり、軸線方向Aを含む面Vに直交する面である。凸部傾斜面20ct1は、凸部20ctを先端側から見たときに徐々に内向きに突出させるための面である。
これにより、把持部12の先端側から布状の把持対象物84を挿入して、把持部12が布状の把持対象物84を把持しようとするときに、布状の把持対象物84の端縁が凸部20ctに引っかかり、把持部12の中央部にまで挿入できなくなることを防止することができる。
凸部傾斜面20ct1の先端側端縁は、仮想平面C2上に位置する。そして、凸部傾斜面20ct1の先端側端縁は、先端部当接面200cに接続している。
【0053】
また、図2に示すように、可動把持部20には、ボルト30の伸びる方向と直交する方
向である絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面Vに沿って伸びる長穴20gが形成されている。長穴20gは、中央部20bの基端側から先端側にかけて連続するとともに内側面と外側面とを貫通するように開けられている穴である。
長穴20gは、可動把持部20ひいては間接活線工事用把持工具10の重量を軽量化するための穴である。
固定把持部22の中央部22bに長穴22gが形成され、かつ、可動把持部20の中央部20bに長穴20gが形成されている。しかしながら、固定把持部22の中央部22bと可動把持部20の中央部20bとは、幅方向すなわち軸線方向Aを含む面Vに直交する方向に同じ厚みで形成されているので、固定把持部22の中央部22bの内側面である中央部第1当接面221b、中央部第2当接面222b、中央部第3当接面223b及び中央部第4当接面224bと、可動把持部20の中央部20bの内側面である中央部第1当接面201b及び中央部第2当接面202bとは、それぞれ対向しており、かつ、把持対象物84を把持するだけの面積を有している。
【0054】
可動把持部20は、図2に示すように、把持部12において、固定把持部22の長穴22gに内側から外側に向かって、可動把持部20の基端20fから挿入されて、可動把持部20のボルト孔20dと固定把持部22のボルト孔22dとを絶縁操作棒14の軸線方向Aを含む面V上で重ね合わされて、固定把持部22に配置される。
そして、可動把持部20は、重ねあわされたボルト孔20dとボルト孔22dとを挿通するボルト30とナット(符号なし)とを用いられて、図1のB方向に、固定把持部22に対して回動可能かつ接離可能なように、固定把持部22に連結される。
このとき、ボルト30は、可動把持部20の固定把持部22に対する回動時における枢軸として機能する。すなわち、可動把持部20が把持操作部26の操作によって固定把持部22に対してB方向に回動可能かつ接離可能であるように、基端部20aは、固定把持部22の基端部22aに枢軸たるボルト30を介して連結される。
【0055】
把持操作部26は、図1に示すように、絶縁操作棒14の基端部近傍に設けられ、操作レバー26aと、支持金具26bと、解除レバー26cと、操作用回動軸26dと、作動片26eと、を有する。
支持金具26bには、操作レバー26aが操作用回動軸26dで軸支されている。
操作レバー26aと同一側に突出した作動片26eは、補助絶縁操作棒24の基端部に回動可能に連結されている。
したがって、作業者が操作レバー26aを握る操作を行うと、梃子の作用で補助絶縁操作棒24が下向きに引っ張られ、ボルト30を中心として可動把持部20が固定把持部22に向かって閉じるように動作する。
【0056】
また、支持金具26bと操作レバー26aの間には、操作レバー26aを開く向きに付勢するバネ28が取り付けられており、作業者が操作レバー26aを操作していないときには、操作レバー26aが開状態となり、それに伴って、可動把持部20も固定把持部22に対し離間した開状態に保持される。
【0057】
支持金具26bにはロック機構が備えられており、このロック機構は、周知のものであるので、以下に簡単に説明する。
ロック機構は、操作レバー26aの梃子の支点位置に取り付けたころ(図示せず)を使用するベアリング状のワンウェイクラッチ(図示せず)と、このワンウェイクラッチを軸支する操作用回動軸26dと、この操作用回動軸26dの回動を任意の位置で固定・開放する複数の係止機構(図示せず)と、を備えている。
この係止機構は、図示省略しているが、操作用回動軸26dに固定した係止歯車と、係止歯車を係止する係止ピンと、係止ピンを係止歯車の向きに付勢する係止スプリングと、係止ピンのピンを押し上げて係止ピンの係止を解除する解除レバー26cと、解除レバー26cを回動可能に支持するレバー支持軸と、解除レバー26cを係止解除位置に保持または開放する係止解除つまみと、係止解除つまみを回動可能に支持するつまみ支持軸と、を備えている。
【0058】
そして、係止機構を開放位置にセットしてロック機構を開放した場合には、操作用回動軸26dが自由に回動可能となり、ワンウェイクラッチの作用が操作レバー26aの操作と無関係となって操作レバー26aが自由に回動し、操作レバー26aの開閉操作が補助絶縁操作棒24に伝わり、可動把持部20が操作レバー26aの開閉操作に応じて開閉する。
一方、係止機構を係止位置にセットしてロック機構が作用するようにした場合には、操作用回動軸26dが係止されて、ワンウェイクラッチの作用により操作レバー26aが閉じる向き、つまり補助絶縁操作棒24を下向きに引っ張る様にしか回動せず、且つ無段階で任意の位置に操作レバー26aがロックされる。
【0059】
したがって、作業者が操作レバー26aを閉じる向きに操作すると、操作レバー26aは、作業者が閉じる向きに操作した位置に停止し、可動把持部20は、補助絶縁操作棒24を介して操作レバー26aの閉じ位置に応じた位置でロックされる状態となる。
この際、把持対象物84の大きさの如何に関らず、作業者が把持対象物84を作業に適した力で把持できたと判断した時点で操作レバー26aから手を離せば、その状態で、そのまま操作レバー26aをロックできるようになっている。
【0060】
図8に示すように、把持操作部26の操作によって、可動把持部20の先端部20cは、ボルト30を中心として図1のB方向に回転しながら、固定把持部22の先端部22cに接触する。
可動把持部20の先端部20cの先端部当接面200cは、仮想平面C2上に位置し、仮想平面C2と平行である。
固定把持部22の先端部22cの先端部当接面220cは、仮想平面C1上に位置し、仮想平面C1と平行である。
そして、可動把持部20の先端部20cが固定把持部22の先端部22cに接触するとき、仮想平面C1と仮想平面C2とは、重なる。そして、先端部当接面220cと先端部当接面200cとは、重なった仮想平面C1と仮想平面C2と、平行となる。すなわち、可動把持部20の先端部20cと固定把持部22の先端部22cとは、可動把持部20の先端部20cが固定把持部22の先端部22cに接触する時に、略平行であるように形成されている。
仮想平面C1は、固定把持部22の幅方向に拡がる平面である。
仮想平面C2は、可動把持部20の幅方向に拡がる平面である。
【0061】
(使用状態及び作用効果)
つぎに、図6ないし図8に基づいて、間接活線工事用把持工具10が把持対象物84を把持する使用状態及び作用効果について説明する。図6は、本発明に係る間接活線工事用把持工具の把持部の中央部において比較的大径の把持対象物を把持している様子を示す正面図である。図7は、本発明に係る間接活線工事用把持工具の把持部の中央部において比較的中径の把持対象物を把持している様子を示す正面図である。図8は、本発明に係る間接活線工事用把持工具の把持部の先端部において布状の把持対象物を把持している様子を示す正面図である。
【0062】
図6に示すように、間接活線工事用把持工具10が、比較的大径の把持対象物84、例えば、径の大きな電線84を把持する場合において、可動把持部20は、固定把持部22から比較的離間した配置となる。このとき、可動把持部20の中央部20bは、固定把持部22の中央部22bとの間で、略閉じられた領域T1を形成し、この略閉じられた領域T1に把持対象物84を閉じ込めて、把持対象物84を把持することを可能とする。
【0063】
詳細には、可動把持部20の中央部20bの中央部第1当接面201bが形成する凹曲面と、固定把持部22の中央部22bの中央部第1当接面221b及び中央部第2当接面222bと、が対向した位置となる。
そして、比較的大径の把持対象物84の断面視における側面に、中央部第1当接面201bと中央部第1当接面221bと中央部第2当接面222bとが接触して、比較的大径の把持対象物84は、安定的に把持された状態となる。
このとき、中央部第1当接面201bと中央部第1当接面221bと中央部第2当接面222bとは、把持部12の内側において、略閉じられた領域T1を形成し、この略閉じられた領域T1に、把持対象物84を閉じ込めている態様となる。
【0064】
上記の作用を言いかえれば、固定把持部22の中央部22bが有する第1凹部22b1sに、把持部12の先端部で把持できない程の大径の把持対象物84を引き入れることができるとともに、固定把持部22の中央部22bが有する第1凸部22b1tによって、第1凹部22b1sに引き入れられた把持対象物84が先端側に離脱することを防止することができる。
そして、固定把持部22の第1凹部22b1sに引き入れられた把持対象物84は、把持操作部26による操作によって固定把持部22に接近する可動把持部20の中央部20bが有する第1凹部20b1sによって、固定把持部22の第1凹部22b1sに挟み込まれるように、安定的に把持されることとなる。
さらに、固定把持部22の第1凹部22b1sと可動把持部20の第1凹部20b1sとに把持された把持対象物84は、可動把持部20の中央部20bが有する第1凸部20b1tによっても、把持対象物84が先端側に離脱することを防止することができる。
【0065】
また、図7に示すように、間接活線工事用把持工具10が、比較的中径の把持対象物84、例えば、中程度の径の電線84を把持する場合において、可動把持部20は、固定把持部22から若干離間した配置となる。
このとき、可動把持部20の中央部20bは、固定把持部22の中央部22bとの間で、略閉じられた領域T2を形成し、この略閉じられた領域T2に把持対象物84を閉じ込めて、把持対象物84を把持することを可能とする。
【0066】
詳細には、可動把持部20の中央部20bの中央部第2当接面202bが形成する凹曲面と、固定把持部22の中央部22bの中央部第3当接面223b及び中央部第4当接面224bと、が対向した位置となる。
そして、比較的中径の把持対象物84の断面視における側面に、中央部第2当接面202bと中央部第3当接面223bと中央部第4当接面224bとが接触して、比較的中径の把持対象物84は、安定的に把持された状態となる。このとき、中央部第2当接面202bと中央部第3当接面223bと中央部第4当接面224bとは、把持部12の内側において、略閉じられた領域T2を形成し、この略閉じられた領域T2に、把持対象物84を閉じ込めている態様となる。
【0067】
上記の作用を言いかえれば、固定把持部22の中央部22bが有する第2凹部22b2sに、比較的中径の把持対象物84を引き入れることができるとともに、固定把持部22の先端部22cが有する凸部22ctによって、第2凹部22b2sに引き入れられた把持対象物84が先端側に離脱することを防止することができる。
そして、固定把持部22の第2凹部22b2sに引き入れられた把持対象物84は、把持操作部26による操作によって固定把持部22に接近する可動把持部20の中央部20bが有する第2凹部20b2sによって、固定把持部22の第2凹部22b2sに挟み込まれるように、安定的に把持されることとなる。
【0068】
また、間接活線工事用把持工具10が、比較的小径、板状又は布状の把持対象物84、例えば、図8に示すようにシート・カバー84を把持する場合において、可動把持部20は、固定把持部22に近接又は接触した配置となる。このとき、可動把持部20の先端部20cは、固定把持部22の先端部22bとの間で、挟持するようにして、把持対象物84を把持することを可能とする。
【0069】
詳細には、間接活線工事用把持工具10がシート・カバー84を把持する場合において、可動把持部20の先端部20cの先端部当接面200cと、固定把持部22の先端部22cの先端部当接面220cと、が近接して且つ互いの面を平行にして対向した位置となる。
そして、シート・カバー84の両面に、先端部当接面200cと先端部当接面220cとが当接して、シート・カバー84は、把持部12の先端部に挟持される。
さらに、噛合する可動把持部20の先端部20cの凸部20ctと固定把持部22の先端部22cの凹部22csと、噛合する可動把持部20の先端部20cの凹部20csと固定把持部22の先端部22cの凸部22ctとに、シート・カバー84は、入り込んだ態様となる。
そして、可動把持部20の先端部20cの凹部20cs及び凸部20ctと固定把持部22の先端部22cの凸部22ct及び凹部22csとが、それぞれ面方向に屈曲する波形を形成しているので、入り込んだシート・カバー84は、その波形に沿うように屈曲する。
【0070】
したがって、可動把持部20の先端部20cと固定把持部22の先端部22cとは、シート・カバー84をその両面から挟持することができるとともに、噛合する固定把持部22の先端部22cの凸部22ct及び凹部22csと可動把持部20の先端部20cの凹部20cs及び凸部20ctとが、シート・カバー84を、波形状に屈曲するそれぞれの凸部及び凹部に入れ込んで、把持部12の先端部からすり抜けて離脱しないように、より強固に把持することができる。
【0071】
なお、図示していないが、間接活線工事用把持工具10は、比較的小径又は板状の把持対象物84を、把持部12の先端部すなわち固定把持部22の先端部22cの先端部当接面220cと可動把持部20の先端部22cの先端部当接面200cとの間で、挟持するようにして、把持することができる。
【0072】
したがって、間接活線工事用把持工具10によれば、把持部12の中央部及び先端部で多様な把持対象物84を把持することができる。特に、上記の作用効果は、可動把持部20の先端部20cと固定把持部22の先端部22cとが交差できない間接活線工事用把持工具、いわゆる絶縁ヤットコにおいて、特に顕著な効果となる。
【0073】
(変形例)
この発明は、前記実施の形態に限定されず、この発明の思想に基づき種々変更することができる。以下、本発明の他の実施形態を説明する。
【0074】
前記実施の形態では、絶縁操作棒14の中ほどにおいて雨切16及び鍔18を設けていたが、雨切16及び鍔18は沿面放電や漏電を防止するための構成要素である。したがって、間接活線工事用把持工具10の絶縁操作棒14において雨切16及び鍔18を設けない構成としても、前記実施の形態と同様に、本発明の効果を得ることができる。
【0075】
また、例えば、可動把持部20と補助絶縁操作棒24とを回動可能に連結するものであるリベット42は、容易に連結解除できるよう、ボルトとナットとで構成されるものであってもよい。
【0076】
また、本発明の他の実施形態としての間接活線工事用把持工具10Aについて、図9に示すように形成されていてもよい。すなわち、把持部12において、固定把持部22の中央部22bは、軸線方向Aを含む面V方向の内側で把持対象物84と当接する部分であり基端部側から先端部側に向かって連続して軸線方向Aを含む面V方向に湾曲する波形を形成するように外向きに凹む第1凹部22Ab1s、内向きに突出する第1凸部22Ab1t及び外向きに凹む第2凹部22Ab2sを有していてもよく、可動把持部20の中央部20bは、軸線方向Aを含む面V方向の内側で把持対象物84と当接する部分であり基端部側から先端部側に向かって連続して軸線方向Aを含む面V方向に屈曲する波形を形成するように外向きに凹む第1凹部20Ab1s、内向きに突出する第1凸部20Ab1t及び外向きに凹む第2凹部20Ab2sを有していてもよい。
さらに、固定把持部22の先端部22cは、中央部22bの先端側に接続する凹部22Acsと、凹部22Acsの先端側に接続する凸部22Actと、により構成されていてもよく、可動把持部20の先端部20cは、中央部20bの先端側に接続する凸部20Actと、凸部20Actの先端側に接続する凹部20Acsと、により構成されていてもよい。固定把持部22の先端部22cの凹部22Acsは、凹部傾斜面22Acs2と凹部底面22Acs1とにより構成されており、凸部22Actは、凸部垂面22Act3と凸部天面22Act2と凸部傾斜面22Act1とにより構成されている。可動把持部20の先端部20cの凸部20Actは、凸部垂面20Act3と凸部天面20Act2と凸部傾斜面20Act1とにより構成されており、凹部20Acsは、凹部底面20Acs2と凹部傾斜面20Acs1とにより構成されている。
【0077】
間接活線工事用把持工具10Aによれば、前記実施の形態である間接活線工事用把持工具10と相対的に同じ作用効果により、把持部12の中央部及び先端部で多様な把持対象物84を把持することができる。
【0078】
以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配列等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
10、10A 間接活線工事用把持工具
12 把持部
14 絶縁操作棒
15 固定把持部の嵌装部
15a 嵌装部の基端
15c 嵌装部のボルト孔
15e 嵌装部のボルト
16 雨切
18 鍔
20 可動把持部
20a 可動把持部の基端部
20b 可動把持部の中央部
20b1s 可動把持部の中央部の第1凹部
20b1t 可動把持部の中央部の第1凸部
20b2s 可動把持部の中央部の第2凹部
201b 中央部第1当接面
202b 中央部第2当接面
20c 可動把持部の先端部
20ct 可動把持部の先端部の凸部
20ct1 凸部傾斜面
20ct2 凸部天面
20ct3 凸部垂面
20cs 可動把持部の先端部の凹部
20cs1 凹部底面
20cs2 凹部傾斜面
200c 可動把持部の先端部当接面
20d 可動把持部のボルト孔
20e 可動把持部の基端側リベット孔
20f 可動把持部の基端
20g 可動把持部の長穴
22 固定把持部
22a 固定把持部の基端部
22av 固定把持部の基端部の屈曲部
22b 固定把持部の中央部
22b1s 固定把持部の中央部の第1凹部
22b1t 固定把持部の中央部の第1凸部
22b2s 固定把持部の中央部の第2凹部
221b 中央部第1当接面
222b 中央部第2当接面
223b 中央部第3当接面
224b 中央部第4当接面
22c 固定把持部の先端部
22cs 固定把持部の先端部の凹部
22cs1 凹部傾斜面
22cs2 凹部底面
22ct 固定把持部の先端部の凸部
22ct1 凸部傾斜面
22ct2 凸部天面
22ct3 凸部垂面
220c 固定把持部の先端部当接面
22d 固定把持部のボルト孔
22g 固定把持部の長穴
24 補助絶縁操作棒
25 補助絶縁操作棒の先端具
25a 先端具の基端
25b 先端具の先端
25c 先端具のボルト孔
25d 先端具のリベット孔
25e 先端具のボルト
26 把持操作部
26a 操作レバー
26b 支持金具
26c 解除レバー
26d 操作用回動軸
26e 作動片
28 バネ
30 枢軸(固定把持部と可動把持部との連結用ボルト)
42 リベット(可動把持部と補助絶縁操作棒との締結用リベット)
84 把持対象物(比較的大径の電線、比較的中径の電線、比較的小径の電線、シート・
カバー等)
A 軸線方向(絶縁操作棒の軸線を通り基端向き又は先端向きを含む方向)
B 把持操作部の操作によって接離される可動把持部と固定把持部とを有する把持部に
おいて、その接離する方向(可動把持部の枢軸を中心とした回動方向)
V 仮想平面(絶縁操作棒の軸線方向を含む面)
C1 仮想平面(固定把持部のボルト孔から先端部に向かって伸ばした平面)
C2 仮想平面(可動把持部のボルト孔から先端部に向かって伸ばした平面)
T1 第1の略閉じられた領域
T2 第2の略閉じられた領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9