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  • 特許-同軸照明装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】同軸照明装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20220512BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20220512BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20220512BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
G01N21/84 E
F21S2/00 310
F21V7/00 570
G02B21/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016074059
(22)【出願日】2016-04-01
(65)【公開番号】P2017187296
(43)【公開日】2017-10-12
【審査請求日】2019-01-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 顕治
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】蔵田 真彦
【審判官】樋口 宗彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-261839(JP,A)
【文献】特開2013-7588(JP,A)
【文献】特開2012-225690(JP,A)
【文献】特開2009-15180(JP,A)
【文献】米国特許第5608529(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/84-21/958
G02B19/00-21/00, 21/06-21/36
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象であるワークと該ワークを観察する観察部とを結ぶ観察軸上に該観察軸に対して45度の角度で配置された第1ハーフミラーと、観察軸とは異なる方向から第1ハーフミラーに光を照射する光源部とを具備し、前記光源部から射出された光が前記第1ハーフミラーで反射して前記ワークに照射するように構成された同軸照明装置において、
前記光源部が敷設領域に敷き詰められた複数の光源を備えるものであり、
前記第1ハーフミラーとワークとの間の前記観察軸上に前記観察軸に対して垂直に配置された第2ハーフミラーを具備し、
前記第2ハーフミラーが、観察部側の面に設けられた誘電体多層膜と、ワーク側の面に設けられた反射防止膜とを備えるものである、同軸照明装置。
【請求項2】
光の入射する方向と前記観察軸との成す角度が所定の値よりも小さい場合には、前記光源部から射出される光の波長のうち少なくとも一部の波長における前記第2ハーフミラーの反射率が0%以上30%以下であり、前記角度が前記所定の値よりも大きい場合には、前記反射率が20%以上60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の同軸照明装置。
【請求項3】
前記所定の値が15度以上35度以下である請求項2に記載の同軸照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、表面検査用の照明装置として、図1に示すように、光源12から観察方向とは異なる方向に向けて射出された光を、ハーフミラー11によってカメラM等による観察方向Cと同じ方向に反射して観察対象であるワークWを照明する同軸照明装置1が知られている。
【0003】
このようなハーフミラー型同軸照明装置1は、例えば、同様に光を反射するビームスプリッターに比べて比較的安価で大きなサイズのものを簡単に製造できるので様々なサイズのワークWに対応できる一方で、ワークW側から見たときに角度によってはハーフミラー11により生じる光源12の虚像12′が見えない領域Aが生じるので、ワークに均一な光を照射できず、照射ムラが生じる恐れがある。
【0004】
この問題を解決するための方策として、特許文献1には、カメラとワークの間に形成された観察孔を覆う透明板を配置して、この透明板が光源からの光を反射することによってワークに対する均一な光照射を可能にしたハーフミラー型同軸照明装置が記載されている。
【0005】
しかしながら、前記透明板に入射する光の中には、透明板で反射してカメラに向かう光も生じるので、前記透明板の反射率が高すぎると、ワークを観察する際に視野の全体又は部分が過剰に明るくなりコントラストが下がる白浮という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-261839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、ワークへの照射ムラがなくかつ白浮が起こらないハーフミラー型同軸照明装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る同軸照明装置は、観察対象であるワークと該ワークを観察する観察部とを結ぶ観察軸上に斜めに配置された第1ハーフミラーと、観察軸とは異なる方向から第1ハーフミラーに光を照射する光源部とを具備し、前記光源部から射出された光が前記第1ハーフミラーで反射して前記ワークに照射するように構成された同軸照明装置において、前記第1ハーフミラーとワークとの間の前記観察軸上に該観察軸及び前記第1ハーフミラーとは異なる角度で配置された第2ハーフミラーを具備し、該第2ハーフミラーの反射率が30%以下であることを特徴とする。
【0009】
このような同軸照明装置であれば、2枚のハーフミラーによる多重反射によって、前記光源部の他に該光源部の虚像がいくつも出来るので、ワークから見た光源部の見かけ上の面積が広がり、ワークに対する照射ムラを減らすことができる。
【0010】
また前記第2ハーフミラーの反射率が30%以下であり、前記第2ハーフミラーから前記観察部に向けての光反射を減らして、前記観察部から見たときにワークと重なって見える光源部の虚像を生じにくくすることができるので、白浮を低減することができる。
【0011】
本発明の具体的な実施態様としては、前記第1ハーフミラーが前記観察軸に対して45度の角度で配置されており、前記第2ハーフミラーが前記観察軸に対して垂直に配置されている同軸照明装置が挙げられる。
【0012】
前記第2ハーフミラーが、光の入射する方向と前記観察軸との成す角度が所定の値よりも小さい場合には反射率が0%以上30%以下であり、前記角度が前記所定の値よりも大きい場合には、反射率が20%以上60%以下である同軸照明装置であれば、前記第2ハーフミラーから前記観察部の方向に反射する光を減らすことができるので白浮を低減することができる。
【0013】
本発明の具体的な実施態様としては、前記第2ハーフミラーが、光の入射する方向と前記観察軸との成す角度が所定の値よりも小さい場合には反射率がほぼ0%であり、前記角度が前記所定の値よりも大きい場合には、反射率がほぼ50%である同軸照明装置が挙げられる。
【0014】
本発明の具体的な実施態様としては、前記所定の値が15度以上35度以下である同軸照明装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる同軸照明装置によれば、2枚のハーフミラーによる多重反射によって、前記光源部の他に該光源部の虚像がいくつも出来るので、ワークから見た光源部の見かけ上の面積が広がり、ワークに対する照射ムラを減らすことができる。
【0016】
また前記第2ハーフミラーの反射率が30%以下であり、前記第2ハーフミラーから前記観察部に向けての光反射を減らして、前記観察部から見たときにワークと重なって見える光源部の虚像を生じにくくすることができるので、白浮を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来のハーフミラー型同軸照明装置の断面図。
図2】本発明の一実施形態に係る同軸照明装置の断面図。
図3】同実施形態に係る第2ハーフミラーの断面図。
図4】同実施形態に係る第2ハーフミラーの反射特性を表すグラフ。
図5】同実施形態に係る同軸照明装置において2枚のハーフミラーにより生じる光源部の虚像を示す図。
図6】同実施形態に係る同軸照明装置の光路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る同軸照明装置1は、例えば製品等の対象物であるワークWに光を照射して、ワークW表面の傷や文字等をカメラ等で観測して自動検査する表面検査等に用いられるものであり、図2に示すように、ワークWと該ワークWを観察する、例えば、カメラ等の観察部Mとを結ぶ観察軸C上の前記ワークWと観察部Mとの間に設置されるものである。
【0020】
前記同軸照明装置1は、前記観察軸C上に配置された第1ハーフミラー11と、前記第1ハーフミラー11に向けて光を射出する光源部12と、これらを収容する筐体13とを具備するものである。
【0021】
前記第1ハーフミラー11は、ガラス板の表面を誘電体多層膜や金属薄膜等でコーティングしたものであり、その表面に対する入射角が45度の光に対して、反射率がほぼ50%、かつ透過率がほぼ50%のものである。
【0022】
前記第1ハーフミラー11は矩形板状のものであり、前記観察軸C上に、反射面を前記観察軸Cに対して45度傾けた状態で前記筐体13の内部に固定されている。
【0023】
前記光源部12は、矩形状、例えば、正方形状の発光面121から面発光するものであり、該発光面121の輝度が可及的に均一化された拡散光を射出するものである。
【0024】
前記光源部12は、前記観察軸Cと平行に配置された平板である基板122に設定された正方形状のLED敷設領域に敷き詰められた複数のLED123と、光を拡散する拡散板124とを具備する。
【0025】
前記拡散板124は、前記LED123と前記第1ハーフミラー11との間に前記基板122と平行に配置されたすりガラス状の薄板であり、位置調節スリット124Sによって前記LED123との距離を調整できるように構成されている。
【0026】
前記発光面121は、前記拡散板124の表面であり、前記第1ハーフミラー11の反射面に向かい合うように、前記観察軸Cに対して平行に配置されている。
【0027】
前記筐体13は、例えば、アルミ合金等からなる直方体状のもので、その内部壁面のうち、前記第1ハーフミラー11と前記光源部12との間の面が鏡面になっている。
【0028】
前記観察部MからワークWを観察するために、前記筐体13の観察部M側の面には、例えば、光学ガラス等が嵌め込まれたカメラ窓131が形成されており、前記筐体13のワークW側の面には、光射出口132が形成されている。
【0029】
前記光射出口132は、前記第1ハーフミラー11と前記ワークWとの間に形成されており、前記光射出口132を塞ぐように矩形板状の第2ハーフミラー14が嵌め込まれている。なお、前記第2ハーフミラー14は、前記観察軸C上に、該観察軸Cと前記第2ハーフミラーの反射面が垂直に交わるように配置されている。
【0030】
前記第2ハーフミラー14は、また、図3に示すように、ガラス板141の観察部M側の面を、例えば誘電体多層膜142でコーティングし、さらにワークW側の面を反射防止膜143でコーティングしたものであり、前記観察軸Cと光の入射方向との間の角度である第2ハーフミラー14への入射角αが所定の値よりも大きいか小さいかによって反射特性が異なるように加工されたものである。
【0031】
ここで、前記所定の値とは、図2に示すように、観察部MからワークW側を見たときに前記光射出口132を通して見える視野の外縁部と観察部Mを結んだ線と前記観察軸Cとの間の角度θの値であり、本実施形態では、前記角度θを25度としている。
【0032】
本実施形態における具体的な反射特性は、図4に示す通りであり、ここでは625nm及びその前後30nmの範囲の波長について、第2ハーフミラー14への入射角αが0度から45度までそれぞれの場合の反射率を示している。
【0033】
前記第2ハーフミラー14の反射率は、入射角αが0度の時にはほぼ0%で透過率がほぼ100%であり、入射角αが大きくなるにつれて上昇し、入射角αが40度以上になると反射率がほぼ50%で透過率がほぼ50%となるように加工されている。なお、グラフの縦軸は反射率(単位:%)を、横軸は波長(単位:nm)を、それぞれ示している。
【0034】
このように構成された同軸照明装置1であれば、図5に示すように、光源部12から射出された光が前記第1ハーフミラー11だけではなく、筐体13の内面や第2ハーフミラー14によっても多重反射して、光源部12の虚像12′M、12″M及び12′W等が生じて、例えば、図1の従来の同軸照明装置ではワークW側から光が見えなかった領域Aにおいても光が見えるようになる等、ワークW側から見たときに光源部12の見かけ上の面積が大きくなるので、ワークWに対する照射ムラを減らすことができる。
【0035】
また、第2ハーフミラー14に対する入射角αが、前記観察部MからワークWを見たときに視野に入る範囲を示す角度θである25度よりも小さい光に対しては、反射率が許容レベル以下となるので、図6に破線で示したような第2ハーフミラー14から観察部Mに向けて反射する光を減らすことができ、図5中のワークW側に生じる光源部12の虚像12″Wを生じにくくすることが出来るので、この虚像12″Wを原因とする白浮を低減することができる。
【0036】
前記拡散板124を配置し、その位置を調節することができるので、ワークWの種類や照射目的によって、光源部12からの光の均一性や指向性を調節することができる。
【0037】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0038】
本実施形態では、第2ハーフミラーの一例として、図4に示すような特性のものを採用したが、例えば、第2ハーフミラー14への入射角αが所定の値よりも小さい場合には反射率がほぼ0%で透過率がほぼ100%、前記入射角αが前記所定の値よりも大きい場合には反射率がほぼ50%で透過率がほぼ50%となるものや、前記入射角αに関係なく、反射率が30%以下のものを採用しても良い。
【0039】
例えば、前記第1ハーフミラーの観察軸に対する角度は、製造のしやすさやスペースの有効利用等の観点から45度であることが好ましいが、45度に限らず、前記第1ハーフミラーが前記観察軸と異なる方向に向けて光源部から射出された光を前記観察軸と同じ方向に反射してワークを照明できる角度で配置されていても良い。
【0040】
同様に、前記光源部は、前記発光面が前記観察軸に対して平行に配置されたものが好ましいが、これに限らず、光源部から射出された光が第1ハーフミラーによって反射してワークに照射される位置に配置されていれば良い。
【0041】
また、前記光源は複数のLEDを敷き詰めて面発光させるものに限らず、一つのLEDから射出する光をレンズ等によって拡散して均一な面発光を形成するようなものであっても良い。
【0042】
前記第2ハーフミラーは、製造のしやすさやスペースの有効活用等の観点から、前記観察軸に対して垂直に配置されることが好ましいが、前記観察軸に対して前記観察軸及び第1ハーフミラーとは異なる角度で配置されていれば良い。
【0043】
例えば、前記第1ハーフミラーが前記観察軸に対して45度の角度で配置され、前記第2ハーフミラーが前記観察軸に対して45度より大きく90度よりも小さい角度で配置された場合には、前記第2ハーフミラーによってワーク側に生じる光源の虚像(図5中の12″W)が前記第2ハーフミラーの傾きの分だけ外側に移動し、前記光源の虚像12″Wが観察部の視野から外側に外れるので、さらに白浮を低減できるという効果もある。
【0044】
前記第2ハーフミラーが該第2ハーフミラーに対する光の入射角が所定の値よりも小さいときには反射率がほぼ0%であり、透過率がほぼ100%であることが好ましいが、反射率が0%以上30%以下であっても良い。
【0045】
また前記入射角が所定の値よりも大きい場合の、第2ハーフミラーの反射率は50%に限らず、20%以上60%以下の範囲であれば良いが、反射率が50%±5%であることが好ましく、反射率がほぼ50%であることがより好ましい。
【0046】
前記所定の値は、前記観察部と前記光射出口との距離や前記カメラ窓及び光射出口の大きさ等に依存して変化するものであるので、25度に限らず、15度以上35度以下の範囲であれば良い。
【符号の説明】
【0047】
同軸照明装置・・・1
ワーク・・・W
観察部・・・M
観察軸・・・C
第1ハーフミラー・・・11
光源部・・・12
第2ハーフミラー・・・14

図1
図2
図3
図4
図5
図6