(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】マルチスポット走査顕微鏡法のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20220512BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017022258
(22)【出願日】2017-02-09
【審査請求日】2020-01-31
(31)【優先権主張番号】10 2016 102 286.1
(32)【優先日】2016-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティーモ アンフット
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュヴェット
(72)【発明者】
【氏名】トビアス カウフホルト
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト ロッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム シュテファン
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-532878(JP,A)
【文献】特表2015-511028(JP,A)
【文献】特開2001-116696(JP,A)
【文献】特開2007-127740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0226977(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104359862(CN,A)
【文献】特開2009-103958(JP,A)
【文献】特開2005-140981(JP,A)
【文献】特表2013-525866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの照明光ビーム(18)を提供する多色光源(10)を有し、
前記照明光ビーム(18)を複数の照明サブビーム(11、・・・、14)に分割する分割デバイス(16)を有し、
前記個々の照明サブビーム(11、・・・、14)をそれぞれ、試験される検体(40)の上または中の光点(41、・・・、44)へとガイドし集束させる照明光路を提供する第1の光学手段(30)を有し、
前記検体(40)の上で前記光点(41、・・・、44)をガイドする走査ユニット(38)を有し、
個々の照明サブビーム(31、・・・、34)で照射した後に検出サブビーム(51、・・・、54)の形で前記検体(40)によって放射される検出光を検出する検出ユニット(D1、・・・、D4)を有し、
前記検出サブビーム(51、・・・、54)を前記検
出ユニット(D1、・・・、D4)へとガイドする検出光路(51、・・・、54)を提供する第2の光学手段(50)を有し、
前記走査ユニット(38)を制御し、前記検出ユニット(D1、・・・、D4)によって検出された前記検出光を評価する制御および評価ユニット(90)を有する、
マルチスポット走査顕微鏡法のためのデバイスであって、
前記照明サブビーム(11、・・・、14)のうち少なくとも2つのための前記照明光路内に、前記個々の照明サブビーム(11、・・・、14)のスペクトル組成を独立して設定する制御可能なビーム操作手段(21、22、23、24)が存在し、
前記制御および評価ユニット(90)が前記ビーム操作手段(21、・・・、24)を制御するように設計され、
前記検出サブビーム(51、・・・、54;71、・・・、74)のうち少なくとも2つのための前記検出光路内に、前記それぞれの検出サブビーム(51、・・・、54;71、・・・、74)を介して前記検出ユニット(D1、・・・、D4)に至る検出光のスペクトル組成に独立して影響を及ぼす制御可能なスペクトル選択手段(61、・・・、64)が存在し、
前記制御および評価ユニット(90)がまた、前記スペクトル選択手段(61、・・・、64)を制御するように設計される
ことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、各照明サブビーム(11、・・・、14)のための前記照明光路内に、前記照明サブビーム(11、・・・、14)のスペクトル組成を独立して設定するビーム操作手段(21、22、23、24)が存在することを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスであって、前記検出ユニット(D1、・・・、D4)が、前記検体(40)上の特定の光点(41、・・・、44)によって放射される前記検出光(51、・・・、54)を測定する複数の個々の検出器(D1、・・・、D4)を有することを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスであって、前記検出光路内の光学構成要素が点広がり関数を保存することを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスであって、前記制御可能なスペクトル選択手段(61、・・・、64)が点広がり関数を保存することを特徴とするデバイス。
【請求項6】
請求項3に記載のデバイスであって、前記個々の検出器(D1、・・・、D4)がそれぞれ空間分解検出器であることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
請求項3に記載のデバイスであって、前記個々の検出器(D1、・・・、D4)が、二次元フォトダイオードアレイ、単一光子アバランシェフォトダイオードアレイ(SPADアレイ)、マイクロチャネルプレート、およびファイバー結合光電子増倍管によって構成される群から選択されることを特徴とするデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスであって、前記ビーム操作手段(21、・・・、24)が複数の音響光学素子を有することを特徴とするデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスであって、前記ビーム操作手段(21、・・・、24)が、AOM、AOD、およびAOTFによって構成される群から選択された複数の音響光学素子を有することを特徴とするデバイス。
【請求項10】
請求項1に記載のデバイスであって、前記ビーム操作手段(21、・・・、24)が少なくとも1つの多重チャネルAOTFを有することを特徴とするデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のデバイスであって、前記空間的に多重チャネルのAOTFの異なるチャネルに対する制御信号(212、・・・、242)が、互いに対して一定の位相合わせを有することを特徴とするデバイス。
【請求項12】
請求項10に記載のデバイスであって、スイッチオンプロセス後の前記空間的に多重チャネルのAOTFの異なるチャネルに対する制御信号(212、・・・、242)が、互いに対して一定の位相合わせを有することを特徴とするデバイス。
【請求項13】
請求項10に記載のデバイスであって、空間的に隣接したチャネルに対する前記多重チャネルAOTFの励起信号(212、・・・、242)が、90°+n×180°(nは整数)の相対位相距離を有することを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項1に記載のデバイスであって、前記分割デバイス(16)が少なくとも1つの導波路チップを有することを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項1に記載のデバイスであって、前記制御および評価ユニット(90)が、一方では特定の照明サブビーム(11、・・・、14)における前記ビーム操作手段(21、22、23、24)の、他方では、前記検体(40)上の前記特定の照明サブビーム(11、・・・、14)によって生成される前記光点(41、・・・、44)からの検出サブビーム(51、・・・、54;71、・・・、74)におけるスペクトル選択手段(61、・・・、64)の相互に調整された制御のために設計されることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項15に記載のデバイスであって、前記制御および評価ユニット(90)が、前記ビーム操作手段(21、22、23、24)およびスペクトル選択手段(61、・・・、64)を制御して、前記検体(40)の上または中の少なくとも1つの特定の蛍光染料を検出するように設計されることを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項15に記載のデバイスであって、前記制御および評価ユニット(90)が、前記ビーム操作手段(21、22、23、24)および前記スペクトル選択手段(61、・・・、64)を制御して、前記検体(40)の上または中の正確に1つの特定の蛍光染料を検出するように設計されることを特徴とするデバイス。
【請求項18】
請求項1に記載のデバイスであって、前記選択手段(61、・・・、64)が、色フィルタ、分散手段、屈折手段、プリズム、回折手段、回折格子、スペクトル選択制の反射手段、およびミラーのうち少なくとも1つを有することを特徴とするデバイス。
【請求項19】
請求項18に記載のデバイスであって、前記色フィルタが段階的な色フィルタ(611、・・・、641、613、・・・、643)であることを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項1に記載のデバイスであって、前記制御可能な選択手段(611、・・・、641、613、・・・、643)がすべての検出サブビーム(51、・・・、54)に対して同じであることを特徴とするデバイス。
【請求項21】
請求項1に記載のデバイスであって、前記第1の光学手段(30)および前記第2の光学手段(50)が、共通の構成要素として、顕微鏡対物レンズ(55)、x-yスキャナユニット(38)、および主要な色スプリッタ(57)のうち少なくとも1つを有することを特徴とするデバイス。
【請求項22】
少なくとも1つの照明光ビーム(18)が多色光源(10)を用いて提供され、
前記照明光ビーム(18)が複数の照明サブビーム(11、・・・、14)に分割され、
前記個々の照明サブビーム(11、・・・、14)が照明光路内でそれぞれ、試験される検体(40)の上または中の光点(41、・・・、44)へとガイドされ、前記検体の上で走査され、
個々の照明サブビーム(31、・・・、34)で照射した後に検出サブビーム(51、・・・、54)の形で前記検体(40)によって放射される検出光が、検
出ユニット(D1、・・・、D4)上へとガイドされ、前記検
出ユニットによって検出される、
マルチスポット走査顕微鏡法のための方法であって、
前記照明サブビーム(11、・・・、14)のうち少なくとも2つのための前記照明光のスペクトル組成が独立して設定され、
少なくとも2つの検出サブビーム(51、・・・、54;71、・・・、74)の場合、前記それぞれの検出サブビーム(51、・・・、54;71、・・・、74)を介して前記検出ユニット(D1、・・・、D4)上に至る検出光のスペクトル組成が独立して設定されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、請求項1に記載のデバイスを使用することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、前記照明光のスペクトル組成が各照明サブビーム(11、・・・、14)に対して独立して設定されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法であって、
ビーム操作手段(21、・・・、24)が、すべての照明サブビーム(31、・・・、34)の前記スペクトル組成が同じであるように制御されることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法であって、
ビーム操作手段(21、・・・、24)が、各照明サブビーム(11、・・・、14)が異なるスペクトル組成を有するように制御されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項22に記載の方法であって、制御可能な選択手段(611、・・・、641、613、・・・、643)がすべての検出サブビーム(51、・・・、54)に対して同じであることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項23に記載の方法であって、一方では、特定の照明サブビーム(11、14)における
ビーム操作手段(21、22、23、24)が、他方では、前記検体(40)上の前記特定の照明サブビーム(11、・・・、14)によって生成される前記光点(41、・・・、44)からの前記検出サブビーム(51、・・・、54;71、・・・、74)におけるスペクトル選択手段(61、・・・、64)が、制御され、互いに合わせて調整されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記照明サブビーム(11、・・・、14)の前記照明光の前記スペクトル組成が設定され、前記スペクトル選択手段(61、・・・、64)が、前記検出サブビーム(51、・・・、54;71、・・・、74)において少なくとも1つの特定の蛍光染料を検出するように制御されることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、前記照明サブビーム(11、・・・、14)の前記照明光の前記スペクトル組成が設定され、前記スペクトル選択手段(61、・・・、64)が、前記検出サブビーム(51、・・・、54;71、・・・、74)において正確に1つの特定の蛍光染料を検出するように制御されることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項22に記載の方法であって、前記照明サブビーム(11、・・・、14)の前記照明光の前記スペクトル組成を独立して設定するために、少なくとも1つの多重チャネルAOTFがビーム操作手段(21、・・・、24)として使用されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記多重チャネルAOTFの異なるチャネルに対する制御信号が互いに対して一定の位相合わせを有することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であって、スイッチオンプロセス後の前記多重チャネルAOTFの異なるチャネルに対する制御信号が互いに対して一定の位相合わせを有することを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項22に記載の方法であって、空間的に隣接したチャネルに対する
多重チャネルAOTFの励起信号が、90°+n×180°(nは整数)の相対位相距離を有することを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項22に記載の方法であって、結果として得られる画像が、それぞれ検出された前記検出サブビームから計算され、生成され、および示された画像のうちの少なくとも1つであることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様では、請求項1のプリアンブルによる、マルチスポット走査顕微鏡法のためのデバイスに関する。第2の態様では、本発明は、請求項24のプリアンブルによる、マルチスポット走査顕微鏡法のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチスポット走査顕微鏡法のための一般的なデバイスは、例えば、国際出願公開第13/131808A1号に記載されており、少なくとも1つの照明光ビームを提供する多色光源と、照明光ビームを複数の照明サブビームに分割する分割デバイスと、個々の照明サブビームをそれぞれ、試験される検体の上または中の光点へとガイドし集束させる照明光路を提供する第1の光学手段と、光点を検体の上でガイドする走査ユニットと、個々の照明サブビームで照射した後に検出サブビームの形で検体によって放射される検出光を検出する検出ユニットと、検出サブビームを検出器ユニットへとガイドする検出光路を提供する第2の光学手段と、走査ユニットを制御し、検出ユニットによって検出された検出光を評価する制御および評価ユニットとを有する。
【0003】
マルチスポット走査顕微鏡法のための一般的な方法も、国際出願公開第13/131808A1号に記載されている。ここでは、少なくとも1つの光ビームを多色光源によって提供するステップと、照明光ビームを複数の照明サブビームに分割するステップと、照明光路内で個々の照明サブビームをそれぞれ、試験される検体の上または中の交点へとガイドし、この上を走査するステップと、個々の照明サブビームで照射した後に検出サブビームの形で検体によって放射される検出光を検出器ユニットへとガイドし、これによって検出するステップとが実施される。
【0004】
レーザー走査顕微鏡法は、ライフサイエンスにおいて不可欠なツールへと発展してきた。特に、三次元構造を散乱バックグラウンドで画像化することによって、方法はさらに、広範囲の生物学医学的用途に適したものとなる。特に、方法の多面的な性質は、対応するシステムの広い普及および広範な応用分野に結び付いている。
【0005】
しかしながら、方法は一連の課題を有し続けている。これらの課題としては、第一に、蛍光が退色し、また一般に検体に光損傷を与える傾向が顕著であること、第二に、画像記録速度が比較的遅いこと、第三に、広範囲の方法に比べてノイズが多いことが挙げられる。
【0006】
これらの課題の理由は、画像形成のタイプにある。これは、一般に、点、より具体的には照明点広がり関数(PSF)が、検体を連続的にラスタ走査または走査するようにして実施される。焦点はずれの光は、ピンホールにおける焦点信号光に対して区別される。このことは、光学セクショニングの性質を有する画像生成に結び付く。これは、焦点面からの光のみが信号に寄与することを意味する。このようにして、光学的に稠密でわずかに散乱している検体のぶれがない画像化も可能である。レーザービームを用いた検体の走査は、一方では、焦点の高出力に結び付く。これは照明スポットであり、その上またはその中に至る照明光が、検体の上または中で集束される。他方では、検体の走査は、スキャナの速度によって、または検体中の染料の排出速度によって制限される、低速の画像形成のみを促進する。検体中の染料の排出速度は、少量のみがそれぞれ検体中で走査されるため、本質的に低速である。
【0007】
ライフサイエンスにおいて非常に広く普及していることとは無関係に、共焦点顕微鏡法は、特に、容認可能な信号対雑音比(SNR)の信号生成の場合、特定数の光子を短時間で発生させなければならないという課題がある(例えば、SNR約3のピクセル時間1μmで10個の光子を検出する場合に信号光子は速度10MHz、システム内の損失に起因して検体中の速度は顕著に高いままでなければならない)。このことは、第一に検体の退色と関連付けられ、第二に損傷と関連付けられ、それによって生細胞顕微鏡法の分野における多くのパラメータの試験が不可能になるか、または少なくとも大幅に困難になる。
【0008】
ピクセル時間の短縮は、ある程度高速の画像形成に結び付くが、他方では、高い信号生成に十分な焦点の電力がさらに高くなる。したがって、1)画像の速度、2)良好な信号対雑音比、および3)低い光損傷という3つの基本的要件に関連する特有のジレンマは、単一スポットレーザー走査顕微鏡では解決することができない。
【0009】
蛍光顕微鏡法のさらに重要な性質は、スペクトル帯域が広いことである。異なる染料の励起極大は、UVから可視スペクトルを介して赤外スペクトル範囲までの範囲内にある。標準的な市販のシステムでは、波長範囲400nm~645nmまたはそれ以上での励起が一般に利用可能である。1つのみのレーザー焦点を用いた検体の走査も、この点に関連して不利である。複数の励起波長を同じ焦点で集束させることができ、したがって、複数の蛍光体を同時に励起することができる。しかしながら、スペクトル選択的な検出の場合であっても、いわゆるクロス励起が常に生じ、望ましくないスペクトル部分の検出が、構造の誤った割当てまたは望ましくないバックグラウンドに結び付く場合がある。
【0010】
達成可能なSNRに対するある程度良好な条件が、回転盤(SD)システムによって提示される。ここで、光は、多数(約1000)の焦点体積上に分配される。ほぼ同じSNRでは、検体中の特定の領域の照明時間は結果的に増加し、それと同時に焦点体積当たりの強度は低下する。このことは全体的に、光毒性を通した光損傷に関して大幅に改善された挙動に結び付く。しかしながら、これらのシステムは柔軟に使用することができない。特に、焦点距離を変動させることができない。それに加えて、検出はカメラに限定され、そのため、2つを超えるスペクトルチャネルの検出が大幅に困難になる。それに加えて、これらのスキャナに基づかないシステムを用いて、検体に電子的にズームすることは不可能である。蛍光相関分光法などの点測定は、これらのシステムでは完全に不可能である。
【0011】
さらなる多点システムが、独国特許第102 15 162 B4号、国際出願公開第13/131808A1号、米国特許第6,028,306A号に記載されている。これらのシステムの課題は、常に、走査レーザー点を提供することにおいて生じる。このための構成は、例えば、独国特許第102 15 162 B4号および独国出願第10 2010 047 353 A1号に記載されている。
【0012】
それに加えて、これらのシステムすべての性質は、受動的な多ビームの発生のみを提示している点である。このことは、例えば、色分割が一般に固定され、またすべてのビームに関してほぼ等しいことを意味する。オーストリア特許第131942-E号では、異なる走査点に対して異なるレーザーが使用され、それによってこのシステムの柔軟性が大幅に制限される。さらに、個々のビームの明るさおよび色を個別に調整することができず、そのことにより、異なる染料で異なるレベルの印を有する構造を試験する際の問題が構成される。
【0013】
高品質であることが特に重要な因子である測定の場合、時間的なマルチトラックが一般に記録される。ここで、励起のための特定の波長および検出のための特定のスペクトル構成をそれぞれ要する、異なる蛍光体の画像が、時間的に連続して記録されるが、従来のシステムでは、原則的に同時記録が可能になる。ユーザが時間の面で不利な点を有している場合であっても、品質に関して達成される利益がこれに勝る。
【0014】
オーストリア特許第131942-E号は、スペクトル励起が検体のそれぞれ異なる場所で行われることによるスペクトルクロストークの影響を回避するシステムを示している。ここでは、空間的なスペクトルマルチトラックを参照している。しかしながら、色チャネルはそれによって固定的に予め定義され、構成不能である。このシステムは、したがって、波長分布が固定的に予め定義されているので、例えば検体の保存または速度などの他のパラメータに対して、原則的に検出できる染料の数よりも少数を含有する検体の場合、最適化することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】独国特許第10215162号
【文献】国際公開第13/131808号
【文献】米国特許第6,028,306号
【文献】オーストリア特許第131942-E号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、上述の課題が広範囲にわたって回避される、デバイスおよび方法を示すことと考えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、請求項1の特徴を有するデバイスを用いて、また請求項24の特徴を有する方法を用いて達成される。
【0018】
本発明によるデバイスの有利な実施形態、および本発明による方法の好ましい変形例について、特に従属請求項および図面と関連して、以下に記載する。
【0019】
上述した一般的なデバイスは、制御可能なビーム操作手段が、それぞれの照明サブビームのスペクトル組成の独立した設定に関して、照明サブビームの少なくとも2つに対する照明光路内に存在するという点で、またさらに、制御および評価ユニットがビーム操作手段を制御するように設計されるという点で、本発明にしたがってさらに発展してきた。
【0020】
上述した一般的な方法は、照明光のスペクトル組成が照明サブビームの少なくとも2つに対して独立して設定されるという点で、本発明にしたがってさらに発展した。
【0021】
本発明の本質的な利点は、本発明によるデバイスを、検体に依存して最適化することができる点、またはさらには、走査速度の顕著な増加、光損傷の低減、スペクトルのクロス励起の回避、または信号対雑音比の増加を達成できるように、デバイス自体を最適化することができる点に見出すことができる。さらに、そのようにして形成される異なる励起/検出経路において、異なるタイプのセンサを組み合わせることができる(例えば、点広がり関数(PSF)を空間的に測定するのに用いることができる、空間分解、例えばピクセル化検出器と、積分検波器との組み合わせ)。生物医学的画像化における異なる測定タスクに合わせた柔軟な光学的配置が、そのようにして提供される。同時に、新しいスペクトル選択的な顕微鏡法が提供される。
【0022】
第1の光学手段および第2の光学手段は、好ましくは、共通の構成要素として、少なくとも1つの顕微鏡対物レンズ、x-yスキャナユニット、および/または少なくとも1つの主要な色スプリッタを有する。
【0023】
本発明の本質的な利点は、照明光のスペクトルが複数の照明サブビームにおいて別個に独立して設定されることによって、既に実現されている。しかしながら、制御可能なスペクトル選択手段が、本発明によるデバイスにおいて、検出サブビームの少なくとも2つに対する検出光路に付加的に存在して、それぞれの検出サブビームを介して検出ユニットに至る検出光のスペクトル組成に独立して影響を及ぼし、また制御および評価ユニットも、スペクトル選択手段を制御するように設計されることが、特に好ましい。本発明による方法の変形例はそれに対応し、少なくとも2つの検出サブビームの場合、それぞれの検出サブビームを介して検出ユニット上に至る検出光のスペクトル組成は独立して影響を受ける。これらの変形例の場合、照明側およびさらに検出側の両方でスペクトル選択が存在するという、特定の利点が達成される。したがって、それぞれの検体に合わせて、特にそれぞれ使用される蛍光染料に合わせて、非常に具体的に測定を調整することができる。
【0024】
原則的に、本発明の本質的な観念は、少なくとも2つの照明サブビームにおいてスペクトル組成を独立して設定できる場合に既に実現されている。しかしながら、それぞれの照明サブビームのスペクトル組成を独立して設定または調節するため、各照明サブビームに対する照明光路にビーム操作手段が存在する、本発明によるデバイスの変形例は特に好ましい。照明光のスペクトル組成が各照明サブビームに対して独立して設定される、本発明による方法の変形例は、これらの例示的な実施形態に対応する。照明および検出を、原則的に任意の種類の検体に合わせて、また原則的に任意の所望の蛍光染料に合わせて特に良好に適合させることができるという、本発明による上述の利点は、それによって特定の方法で達成される。特に、本発明によるデバイスを用いて、スペクトルが重なり合う帯域を測定することも可能である。
【0025】
同じ理由で、制御可能なスペクトル選択手段が、それぞれの検出サブビームを介して検出ユニットに至る検出光のスペクトル組成に独立して影響を及ぼす各検出サブビームに対する検出光路に存在する、本発明によるデバイスの例示的な実施形態が好ましい。本発明による方法の変形例では、各検出サブビームにおいて、それぞれの検出サブビームを介して検出ユニットに至る検出光のスペクトル組成は、適宜独立して影響を受ける。最もばらつきが大きい測定状況に対して包括的に構成することができる、非常に機能的なデバイスならびに方法が、これらの例示的な実施形態を用いて提供される。
【0026】
原則的に、例えば、多重化技術が使用される場合、単一の検出器が検出光を検出するのに十分であり得る。しかしながら、検出ユニットは、好ましくは、検体上の特定の光点によってそれぞれ放射される検出光を測定する、複数の個々の検出器を有する。それ故、測定データを特に効率的に記録することができる。
【0027】
本発明によるデバイスのさらに好ましい例示的な実施形態は、検出光路の光学構成要素、特に制御可能なスペクトル選択手段が、点広がり関数を保存する構成要素である点を特徴とする。試験される検体に関するさらに有用な情報を、点広がり関数から得ることができる。
【0028】
原則的に、個々の検出器は、例えば、光電子増倍管または個々のフォトダイオードであることができる。しかしながら、例えば、点広がり関数が測定されるべきものである場合、個々の検出器がそれぞれ空間分解検出器であること、特にそれぞれ二次元フォトダイオードアレイであることが有用である。ここで、単一光子アバランシェダイオードアレイ(SPADアレイ)が特に有利である。これらは非常に良好な感度を有し、それを用いて個々の光子を計数することもできる。それに加えて、これらのアバランシェフォトダイオードのピクセル化構造を作り出すことができる。しかしながら、これらのセンサの他に、従来の光電子増倍管が光拡散手段(ZeissによるAiryscan Module)を備える場合、それらを使用することもできる。最後に、マイクロチャネルプレートおよび/またはファイバー結合光電子増倍管を使用することもできる。異なるセンサタイプが使用される場合、例えば、積分検波器と組み合わされた空間分解検出器を用いた点広がり関数の空間測定の場合に、特に有利である。原則的に、スペクトル選択性の所望の機能を有するすべての構成要素を、ビーム操作手段として使用することができる。原則的に、屈折、回折、選択的反射、および/または吸収の際に、この機能に基づくことができる。
【0029】
レーザー光の強度を迅速に変動または変調できるようにするため、音響光学素子が、好ましくは、レーザー走査顕微鏡法においてビーム操作手段として使用される。1つのレーザー線のみの強度が影響を受ける場合、音響光学変調器(AOM)を使用することができる。他方で、強度がそれぞれ変動させられる、波長が異なる複数のレーザー線の多重化したものがある場合、音響光学(AOF)フィルタを使用しなければならない。一般に、音響光学変調器(AOM)により、AOTFよりも高い変調周波数が可能になる。かかる音響光学素子は、(例えばTeO2の)特別に切断され研磨された結晶であり、トランスデューサを励起して振動させる高周波信号を使用して回折格子が作り出される。
【0030】
音響光学素子のスペクトルの性質およびさらに光学的性質の両方が、実質的に、このトランスデューサの形態およびサイズによって決定される。音響光学素子に結合されたレーザー光の一部は、結晶中の励起された格子において回折される。回折によって屈折するレーザー光のこの部分は、供給される高周波信号の出力を変動させることによって強度を調節することができる。
【0031】
AOMの場合、波長λの1つのレーザー線に影響を及ぼすために、特性周波数fλの高周波搬送波のみを供給する必要があるが、AOTFでは、複数のレーザー線の強度を変動させるために、複数の高周波搬送波の多重化したものが必要とされる。
【0032】
かかる音響光学素子は、空間的に単一のチャネルおよびさらに多重チャネルの両方として提示される。単一チャネルのAOM/AOTFでは、1つのトランスデューサのみが結晶上に配置される。結果として、1つのレーザービームまたは1つのバンドルの複数のレーザー線に影響を及ぼすことができる。空間的に多重チャネルのAOM/AOTFでは、1つの同じ結晶上に複数のトランスデューサが並んで配置される。それにより、同じ波長の複数の平行レーザービーム(AOM)、または同時であるが強度が互いに独立して同一直線上にある(AOTF)複数の平行レーザー線バンドル(AOTF)に影響を及ぼすことが可能である。
【0033】
ビーム操作手段は、好ましくは、複数の音響光学素子を、特にAOM、AOD、および/またはAOTFを有する。音響光学構成要素は、市販されており、特に、顕微鏡法には有利な非常に小型構造のサイズのものでもある。しかしながら、さらに、例えば多重チャネル電気光学変調器(EOM)または空間光変調器(SLM、DMD、MEMSなど)など、代替のセグメント化ビーム操作手段も有利に使用することができる。
【0034】
本発明によるデバイスの特定の好ましい例示的な実施形態では、ビーム操作手段は少なくとも1つの空間的に多重チャネルのAOTFを有する。それに対応して、照明サブビームにおける照明光のスペクトル組成を独立して設定または調節するための、本発明による方法の特に好ましい変形例では、少なくとも1つの空間的に多重チャネルのAOTF/AOMがビーム操作手段として使用される。かかる空間的に多重チャネルのAOTF/AOMは、これらの構成要素を用いて照明ビームを互いに並んで比較的稠密にガイドすることができるので、マルチスポット走査顕微鏡法に特に適している。したがって、使用されるレンズも比較的小型であることができる。
【0035】
本発明はまた、複数のチャネルを用いた、音響光学素子の、例えばAOTF/AOMの有利な制御または駆動に関する。
【0036】
AOM/AOTFの制御の場合、用途に応じて、個別の正弦高周波信号(AOM)または異なる周波数の複数の高周波信号の多重化したもの(AOTF)を提供する、専用のHFシンセサイザーアセンブリが使用される。高周波信号の出力は、シンセサイザーアセンブリの設計に応じて、アナログ制御信号の影響を受ける、またはデジタル変調される場合がある。空間的に多重チャネルのAOM/AOTFの制御の場合、原則的に、トランスデューサ間の出力スプリッタの助けによってシンセサイザーアセンブリによって提供される制御信号を、分割(split)または分割(divide)することが可能である。しかしながら、このように進行することによって、空間的に多重チャネルのAOM/AOTFのすべてのトランスデューサに対して同期して変調が行われるので、柔軟性は大幅に制限される。
【0037】
空間的に多重チャネルの音響光学素子の各トランスデューサが、別個のシンセサイザーアセンブリによって制御される場合、実質的にさらに柔軟な制御が可能である。空間的に多重チャネルの音響光学素子のトランスデューサ間の相互作用によって、望ましくない二次効果を回避するために、シンセサイザーアセンブリの設計における一連の条件が満たされる。
【0038】
したがって、本発明のサブタスクは、空間的に多重チャネルのAOTF/AOMのトランスデューサ間におけるそれらの影響(クロス結合)をできるだけ最小限に抑えることに結び付く、シンセサイザーアセンブリの構成および動作モードを提供することである。
【0039】
このサブタスクは変形例によって達成され、空間的に多重チャネルのAOTF/AOMの異なるチャネルに対する制御信号は、特にスイッチオンプロセスの後、互いに対して一定位相位置を有する。多重チャネルAOTFを使用することの主な利点は、その構造サイズが比較的小さいため、照明ビームを互いに近付けてガイドできることである。これにより、比較的小型の構成要素を、特に比較的小型のレンズを使用することが容易になる。光ビームの横方向距離は、光ビームの直径の好ましくは5~50倍、特に好ましくは8~15倍である。
【0040】
本発明によれば、信号発生器の微分位相θnを調節することによって、空間的に多重チャネルのAOTF/AOMのチャネル間の絶縁を顕著に改善することが可能であることが認識された。
【0041】
それに加えて、本発明は、シンセサイザーアセンブリをそれぞれ新しく開始する場合、即ち、空間的に多重チャネルのAOTF/AOMのトランスデューサに対する制御信号を提供するアセンブリの場合、既定の相対初期位相位置が空間チャネル間に設定されるのが有利であることを認識した。これは、空間的に多重チャネルの音響光学素子を、本明細書で記載するタイプの並列化された画像記録におけるマルチスポット用途の場合の等化器として使用するときに、特に顕著である。このモードでは、各サブビームは検体の特定部分を越え、サブ画像を生成する。最終画像は、サブ画像を制御および評価ユニット内で合わせることによって最終的に合わせられる。すべてのサブ画像が接続点において同じ明るさを有することが必要であるが、これは、そうでなければ検体の最終画像に妨害構造が生じるためである。制御信号の既定の相対初期位相位置を担保することができない場合、空間的に多重チャネルの音響光学素子のトランスデューサ間の相互作用が理由で、位相位置に応じてチャネル内で強度差が生じる可能性がある。音響光学素子が波長λの複数のレーザー線の多重化したものを伝送する場合、既定の微分位相Δθを各励起周波数fλに対して別個に設定しなければならない。
【0042】
直接隣接したトランスデューサの微分位相Δθを適切に選択することによって、それらによって励起される回折格子間の相互作用を低減することができ、結果として絶縁の最適化が達成される。今日までの測定により、微分位相Δθに対して次式が当てはまる場合に相互作用が最も小さくなることが示されている。
Δθ=90°+k×180°(kは整数)
【0043】
この値からの逸脱の可能性があり、例えば、信号合成のためのアセンブリおよびシステム配線における実行時間の違いによって引き起こされる場合がある。
【0044】
したがって、本発明によるデバイスの一実施形態および本発明による方法の変形例において、さらなる改善が可能であり、その場合、空間的に隣接したチャネルに対する多重チャネルAOTFの励起信号は、90°+n×180°(nは整数)の相対位相距離を有する。驚くことに、本発明の範囲内において、多重チャネルAOTFにおける隣接したチャネルの信号のクロストークは、かかる位相距離が選択される場合に特に低いことが認識された。空間的に多重チャネルのAOTF/AOMを照明する場合、照明光ビームは、光学分割デバイスを用いて複数の照明サブビームに分割される。
【0045】
原則的に、照明ビームの所望の分割を達成することができる任意の構成要素を、分割デバイスに使用することができる。これらの構成要素は、特に、屈折または回折構成要素であることができる。分割デバイスが少なくとも1つの導波路チップを有する変形例が、特に好ましい。導波路チップは市販の構成要素である。
【0046】
本発明によるデバイスの特に好ましい例示的な実施形態は、制御および評価ユニットが、一方では、特定の照明サブビームにおいてビーム操作手段を、他方では、検体上の特定の照明サブビームによって生成される光点からの検出サブビームにおいて、スペクトル選択手段を、互いに合わせて調整するように設計されることを特徴とする。方法に関して、一方では特定の照明サブビームにおけるビーム操作手段、他方では、検体上の特定の照明サブビームによって作成される光点からのその検出サブビームにおけるスペクトル選択手段が、好ましくは互いに合わせて調整される。この実施形態では、本発明による利点が特に有効である。スペクトル選択は、照明側において、またそれに合わせて調整された検出側において、両方で実施される。それにより、検出側のフィルタシステムの複雑さを著しく低減することができる。それと関連して、フィルタ構成の高い光透過を保証することができる。
【0047】
この変形例は、制御および評価ユニットが、ビーム操作手段およびスペクトル選択手段を制御して、検体の上または中の少なくとも1つの、特に正確に1つの決定された蛍光染料を検出するように設計されることによって、特に有用かつ有利に発展させることができる。方法の観点では、照明光のスペクトル組成を好ましくは照明サブビームで設定することができ、スペクトル選択手段を、少なくとも1つの特定の、特に正確に1つの蛍光染料を検出するように、検出サブビームで制御することができる。したがって、個々の蛍光染料を、本発明によるデバイスおよび本発明による方法を用いて、特に良好に分離することができる。それに加えて、デバイスを、特定の蛍光染料を検出するように意図的に設定することができる。特に、スペクトルが重なり合う帯域も検出することができる。
【0048】
原則的に、検出を達成できるように求められる検出光のスペクトル部分の選択に用いられるすべての構成要素は、制御可能なスペクトル選択手段として使用することができる。例えば、選択手段は、少なくとも1つの色フィルタ、および/または少なくとも1つの分散手段、特に屈折手段、例えばプリズム、および/または回折手段、例えばミラーリング要素と組み合わせた回折格子を有することができる。本質的に、本発明を有利に使用することができる蛍光顕微鏡法では、使用される染料の放射光が検出される。
【0049】
1つの好ましい変形例では、選択手段は複数の色フィルタを有する。これらは、例えば段階的な色フィルタであることができる。制御可能な選択手段は、例えば、すべての検出サブビームに対して同じであることができる。段階的な色フィルタは、入射光の波長が閾値波長未満の場合はこの光を反射させ、入射光の波長が閾値波長超過の場合は透過させるか、またはその逆の構成要素である。これらの構成要素は、したがって、閾値波長がこれらの構成要素に対する入射光の接触点に応じて異なり、特に光の接触位置に伴って継続的に変化するので、段階的な色フィルタとして説明される。これらの段階的な色フィルタを変位させることによって、結果として閾値波長を有利に継続的に調節することができる。それに加えて、離散的な色スプリッタまたは調節可能(調整可能)な色スプリッタを使用することができ、その波長選択挙動は、光学軸に対するそれらの角度配向に応じて決まる(例として、ここで、Semrockによって市販されているVersaChromeフィルタに言及することができる)。しかしながら、異なる回転位置で異なるスペクトル性質を有する回転フィルタもこの地点で使用することができる。
【0050】
単一の染料のみが検体領域において走査された場合、スペクトル組成がすべての照明サブビームに対して同じであるようにビーム操作手段が制御されるのが好ましい場合がある。したがって、検体領域のより迅速な記録、または信号対雑音比がより良好な記録のどちらかを達成することができる。
【0051】
別の方法として、またはそれに加えて、制御可能な選択手段は、すべての検出サブビームにおいて同じであり、かつ/または同じに設定することができる。
【0052】
本発明によるデバイスは、したがって、原則的に同一である複数の照明サブビームおよび検出サブビームを用いて、マルチスポット走査顕微鏡法を実施できるように構成することができる。
【0053】
本発明による方法のさらに好ましい変形例では、ビーム操作手段は、各照明サブビームが異なるスペクトル組成を有するように制御される。この変形例は、複数の染料が検体領域で同時に検出される場合に使用することができる。
【0054】
記載した変形例を混合した形態も可能であり、有利であり得る。このことは、例えば合計4つの照明サブビームの場合、これらのサブビームのそれぞれ2つが同じ照明スペクトルを有することができることを意味する。したがって、照明サブビームと関連付けられた検出サブビーム、およびそこに位置するビーム操作手段をそれぞれ同じに設定することができる。原則的に、かかる構成を用いて、2つの同一の照明サブビームおよびそれに続く検出サブビームがそれぞれの場合に存在する。
【0055】
この構成は、検体に依存して最適化することができ、または走査速度の明確な増加、および/または光損傷の低減、および/またはスペクトルのクロス励起の回避、および/または信号対雑音比の増加が達成されるように、デバイス自体を最適化することができる。
【0056】
本発明の方法の好ましい一実施形態は、最終的に、それぞれ検出された検出サブビームが計算され、生成され、および/または示されて、測定タスクを解決した結果としての画像によって特徴付けられる。
【0057】
生物医学的画像化における異なる測定タスクに合わせた柔軟な光学的配置が、そのようにして利用可能になる。同時に、新しいスペクトル選択性の顕微鏡法が記載される。
【0058】
本発明のさらなる利点、特徴、および性質が、添付図面を参照して後述される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図2】本発明によるデバイスおよび本発明による方法で使用される、スペクトル選択手段の例示的な実施形態を示す図である。
【
図3】異なる動作状態にある
図2のスペクトル選択手段を示す図である。
【
図4】本発明によるデバイスの照明光路における制御可能なビーム操作手段として使用することができる、多重チャネルAOTFを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明によるデバイスを用いた測定の基本原理は、レーザー走査顕微鏡に基づく。顕微鏡の光学的配置は、並行モードの動作が光学的に作られるようにして設計される。複数の照明光ビームを顕微鏡へと結合できることが重要である。
【0061】
特定の数のレーザー線を、スペクトル照明のためにこの顕微鏡に提供することができる。第一に、離散的なレーザー線であるか、調整可能なレーザーであるか、または白色光レーザーであるかは無関係である。それに加えて、レーザーが連続的であるかまたはパルス化されているかは重要ではない。最後に、本発明の有用性は、例えば通常の蛍光励起など、特定の励起メカニズムに限定されない。非線形プロセス、特に、二光子蛍光またはCARS顕微鏡法など、二光子プロセスを使用することができる。これらのスペクトル成分を、特に主要な色スプリッタを使用して、顕微鏡の光路内へとミラーリングすることができる。このため、主要な色スプリッタは、すべての波長が顕微鏡へと結合されることに対応していなければならない。これは、主要な色スプリッタが、結合されるすべての波長に対するミラーとして作用しなければならないことを意味する。これは、例えば二色素子を用いて可能である。しかしながら、ここでは、複数の主要な色スプリッタをそれらの効果の点で組み合わせ、スペクトル分割空間内の一方または両方のビームを操作することも可能である。さらに、検出光を主要な色スプリッタで分割することができる。しかしながら、従来の二色ビームスプリッタの他に、励起と検出との間で波長分離するさらなる方法も可能である。このように、音響光学ビームスプリッタ(AOBS)も使用することができる。
【0062】
従来、レーザー走査顕微鏡法では、オブジェクトは1つのレーザー点のみを用いて走査される。しかしながら、他の構成、例えば線走査システムも知られている。本発明では、励起光は、複数の照明スポットがオブジェクトをラスタ走査するようにして検体に導入されるものである。このため、レーザー源からの光を空間的に分割しなければならない。検体を走査するために複数の照明スポットを提供する光学的配置について以下に記載する。これらの照明スポットは、本発明にしたがって、それらの強度およびさらにそれらの色の両方について個別に設定することができる。
【0063】
さらに、個々のビームを個別に変調することもできる。個々の照明サブビームのビーム品質が非常に高いことが特に好ましく、このことにより、高い画像品質が達成されるべきである場合にレーザー走査顕微鏡に対する基本の必須条件が構成される。
【0064】
同じ構成要素および類似の構成要素は、一般に、すべての図面において同じ参照符号を備える。
【0065】
本発明によるデバイス100の
図1に概略的に示される例示的な実施形態は、少なくとも1つの照明光ビーム18を提供する多色光源10と、照明光ビームを複数の照明サブビーム11、12、13、14に分割する分割デバイス16と、個々の照明サブビーム11、12、13、14、31、32、33、34をそれぞれ、試験される検体40の上または中の光点41、42、43、44へとガイドし集束させる照明光路を提供する第1の光学手段30、35、56、38、55との、主要な構成要素を有する。
【0066】
光点41、42、43、44を検体40の上でガイドする(第1の光学手段30の部分としての)走査ユニット38と、個々の照明サブビーム31、32、33、34で照射した後に検出サブビーム51、52、53、54の形で検体40によって放射される検出光を検出する検出器D1~D4を有する検出ユニットとが、さらに存在する。
【0067】
さらに、デバイス100は、検出サブビーム51、52、53、54を検出器ユニットにガイドする検出光路を提供する第2の光学手段50と、最後に、走査ユニット38を制御し、検出ユニットによって検出された検出光を評価する、制御および評価ユニット90とを有する。第1の光学手段30および第2の光学手段50は、部分的に、同じ光学構成要素を、特に顕微鏡対物レンズを有することができる。走査ユニット38は、例えば、電流測定ミラーを備えた従来のx-yスキャナであることができる。光源10は、接続95を介して制御および評価ユニット90によって制御することができる。
【0068】
本発明によれば、制御可能なビーム操作手段21、22、23、24も照明光路に存在し、それを用いて、それぞれの照明サブビーム11、12、13、14のスペクトル組成を、それぞれの場合において独立して設定することができる。制御可能なビーム操作手段21、22、23、24は、
図1に示される例示的な実施形態で概略的にまとめられて、正確にはこれらのビーム操作手段21、22、23、24を含む制御可能なビーム操作デバイス20を形成する。さらに、制御可能なスペクトル選択手段61、62、63、64は、本発明によれば、検出光路に存在し、それを用いて、それぞれの検出サブビーム51、52、53、54、71、72、73、74を介して検出ユニットに至る検出光のスペクトル組成に独立して影響を及ぼすことができる。
【0069】
多色光源10は、特に、図示される例L1およびL2のような、複数のレーザー源を備えたレーザーユニットであることができる。光源10によって放射される照明光ビーム18は、図示される例では、ミラー36、67を介して、特に導波路チップであることができる、分割デバイス16に至る。照明光ビーム18を分割デバイス16へ結合することは、例えば、分割デバイスに光学的および機械的に接続される光ファイバーの助けによって実現することができる。その結果、ファイバーから出る放射光が分割デバイスへと結合される。しかしながら、フリービーム結合も可能である。分割デバイス16は、例えば、2n個のサブビームにわたって照明光ビーム18の分割を実現するのに使用される。「n」の文字は、分割デバイス16内の、即ち例えば導波路チップ内の、分割カスケードの数を示す。
【0070】
各カスケードにおいて、y個のスプリッタを用いて、経路の光をほぼ等しい部分で2つの新しい経路上へと分割することができる。2n個のサブビームにわたる、またはその上への分割が効率上の理由で好ましいのは、正確にはこのためである。しかしながら、原則的に、例えば不要なサブビームをフェードアウトさせることによって、任意の数のビームを生成することができる。
【0071】
この機能性を備えたビームスプリッタは、通信工学によって知られている。しかしながら、光学条件は、観察しなければならないのは1つの波長のみ、例えば1300nmまたは1550nmであるという点で、より簡単である。
【0072】
本発明の予備的作業の範囲内で、特に、層構造導波路に基づくビームスプリッタを顕微鏡法において有利に使用することができる点、また、特に広帯域の態様に関する高い要件を満たすことができる点が認識された。例えば、すべての波長にわたる照明光のそれぞれの強度を、互いの中で50%超、さらには25%超、または最終的には10%超、より良好に調整可能であることが認識された。個々の照明サブビームにわたって行われるこのスペクトル強度の調整が良好であるほど、記載する用途に対してレーザー源をより効率的に使用することができる。しかしながら、ビームスプリッタはまた、本発明によるデバイスおよび本発明による方法に対して不完全な調整で使用される場合があり、かかるビームスプリッタを用いて画像品質を改善することもできる。
【0073】
例えば、平均化スキャンを実施することができる。この動作モードでは、照明サブビームそれぞれによって検体の対象範囲を完全にラスタ走査することができ、その後、平均化画像がすべての個々の画像から計算される。ビーム同士の完全な調整は、かかる平均化にとって絶対に必要なものではない。しかしながら、最初は受動的であるこのビーム生成を、依然として著しく改善することができ、したがって最終的にはさらに大幅に広範囲で使用することができる。
【0074】
これは、異なる光路の強度に影響を及ぼすことによって、分割デバイス16で、例えばしたがって導波路チップで直接のいずれかで実現することができる。これに関して、例えば、Mach-Zehnder干渉計などの集積光回路が知られている。ここで、Mach-Zehnder干渉計の光路間の位相シフトを使用して、チップ上におけるこの干渉計の出力側の電力を設定することができる。それにより、分割デバイスの光出力の調整を迅速に、例えば数ミリ秒以内で達成することができる。
【0075】
図1に概略的に示される例示的な実施形態では、第2段と称することができるビーム操作ユニット20は、分割デバイス16の下流である。この第2段には、各照明サブビーム11、12、13、14に対して制御可能なビーム操作手段21、22、23、24がある。これらの制御可能なビーム操作手段はまた、スペクトル選択的に作用する要素として説明することができ、これらを用いて、強度およびさらにスペクトル組成の両方を各照明サブビーム11、12、13、14に対して設定することができる。
【0076】
特に好ましい変形例では、AOTF(音響光学調整可能なフィルタ)を制御可能なビーム操作ユニット20として使用することができる。第一に、このAOTFに対する分割デバイス16の光学接続を実現することができる。これは、例えば、適切なフリービーム光学システムを介して行われる。しかしながら、原則的に、ファイバー束を介した結合および直接結合制御可能ビーム操作手段、例えば直接結合AOTFも可能である。
【0077】
制御可能なビーム操作手段21、22、23、24は、照明サブビーム11、12、13、14それぞれに、個別に他の照明サブビーム11、12、13、14とは独立して影響を及ぼすことができるように、または換言すれば変調することができるように設計される。照明サブビームは、関連する制御可能な操作手段21、22、23、24と併せて、単一空間チャネルとも呼ばれる。AOTFを使用すると、例えば8色以下を1つの空間チャネルで処理することができる。例えば、実質的にTeO
2から成る異なる結晶、またはセグメント化トランスデューサ電極を有する単結晶を備えた、AOTFを使用することができる。各照明サブビームの強度に独立して影響を及ぼすことができる。それに加えて、それぞれの照明サブビームにおける光のそれぞれの波長およびそのスペクトル強度の選択は、単独で、個別に、また他の照明サブビームとは独立して設定することができる。これらの性質により、配置およびかかる制御可能なビーム操作手段は、空間波長セレクタと称される。これらの技術的態様については、
図4を参照してさらに詳細に以下で説明する。
【0078】
照明サブビーム11、12、13、14内にそれぞれ配置される制御可能なビーム操作手段21、22、23、24の効果によって、照明サブビーム31、32、33、34が作成される。照明サブビーム31は、照明サブビーム11上の制御可能なビーム操作手段21の効果によって生じる。同じことが、さらなる照明サブビーム32、33、34にも対応して当てはまる。照明サブビーム31、32、33、34は次に、図示される実施例では、具体的には、定型化されたレンズ35、主要な色スプリッタ56、走査デバイス38、および検体40上への顕微鏡対物レンズ55として示される光学構成要素を備えた、第1の光学手段30を用いてガイドされる。照明サブビーム31は、それにより、試験される検体40の上または中の、焦点とも呼ぶことができる光点41へとガイドされ集束される。さらなる照明サブビーム32、33、34はそれに対応して、それぞれ光点42、43、または44へとガイドされ集束される。光学手段30は原則的に、マルチスポット走査顕微鏡法で使用される既知の構成要素である。
【0079】
走査ユニット38は、特に好ましくは、光路の瞳に配置される。
図1に概略的に示される状況では、光点41、42、43、44は(
図1の座標系45に対して)y方向でオフセットされている。検体40の走査は、例えば(4つの照明ビームのスペクトルがすべて異なる場合)、光点41、42、43、44が線毎に左から右に(したがって、
図1では、座標系45を参照すると線がx方向で走っているので、上から下に)移動し、1つの線の終わりで4つすべての光点が線1つ分下方に(したがって、
図1では左に)移るような形で実現することができる。しかしながら、原則的に、あらゆる変形例が可能である。例えば、すべての光点41、42、43、44を各検体位置上へとガイドする必要はない。例えば、上述した例では、線の終わりに、4つすべての光点が線4つ分下方に移ることができる。この変形例は、4つの照明ビームのスペクトルがすべて同じ場合に好ましい。一般に、異なるスペクトルの場合、すべての走査スポットを検体の各位置で走査すべきである。しかしながら、所望のようなシーケンスがあり得る。光点41、42、43、44が走査方向で順次ガイドされる変形例も可能である。原則的に、最終画像の計算で走査軌道が考慮される限り、あらゆる走査軌道が可能である。マルチスポット走査顕微鏡法の実質的な利点を、この様々な可能な変形例に見出すことができる。
【0080】
個別の光点41、42、43、44が試験される検体40に突き当たると、検体は検出サブビーム51、52、53、54の形で検出光を放射するが、検出サブビーム51は光点41から生じ、それに対応して検出サブビーム52、53、54はそれぞれ光点42、43、または44から生じる。照明サブビーム31、32、33、34は、原則的に、それぞれ異なるスペクトル組成を有することができ、したがってそれぞれの波長に対して異なる強度を有するので、試験される検体40が同一のタイプのものであっても、光点41、42、43、44によって照明される領域において、個々の検出サブビーム51、52、53、54の検出光も異なる。
【0081】
検出サブビーム51、52、53、54は次に、本発明によるデバイス100内で、第2の光学手段50、55、38、56、57を用いて、制御可能なスペクトル選択手段61、62、63、64上へとガイドされる。具体的には、検出サブビーム51、52、53、54は、顕微鏡対物レンズ55および走査ユニット38を介して、主要な色スプリッタ56へと逆にガイドされる。主要な色スプリッタ56は、検出サブビーム51、52、53、54の赤色シフト蛍光部分を透過するように、有用に設計される。検出サブビーム51、52、53、54は、定型化されたレンズ57として概略的に示される、さらなる光学構成要素を介して、次に制御可能なスペクトル選択手段61、62、63、64に達する。
【0082】
それにより、検出サブビーム41は制御可能なスペクトル選択手段61に突き当たり、それに応じて、検出サブビーム52、53、54がそれぞれ制御可能なスペクトル選択手段62、63、または64に突き当たる。制御可能なスペクトル選択手段は、一般に、入ってくるまたは入射する電磁放射、特に光を何らかの形で操作するデバイスである。吸収、散乱、屈折、および回折などの異なる物理的作用をそれによって有効にすることができる。特に、例えば光学プリズムにおける屈折の波長依存によって、および/または例えばミラーにおける反射の波長依存によって、分散効果も有効になる。調節可能なフィルタ、特に段階的なフィルタが、制御可能なスペクトル選択手段61、62、63、64として特に好ましく使用される。
【0083】
スペクトル選択手段61、62、63、64の制御は、概略的に示される接続、特に制御および評価ユニット90に対する電気線接続65を介して実現される。それに加えて、制御および評価ユニット90は、接続25、特に電気線接続を介して、照明光路内の制御可能なビーム操作手段21、22、23、24を制御する。
【0084】
検出サブビーム51、52、53、54に対する制御可能なスペクトル選択手段61、62、63、64の作用を通して、さらなる検出サブビーム71、72、73、74が上述の検出サブビームから生じる。具体的には、検出サブビーム71は、制御可能なスペクトル選択手段61の作用を通して、例えば段階的なフィルタの作用を通して、検出サブビーム51から生じる。同じことが、それに対応して、さらなる検出サブビーム52、53、54および72、73、74に当てはまる。検出ユニットは、異なる検出サブビーム71、72、73、74の検出光を検出する、個々の検出器D1、D2、D3、D4を有する。
【0085】
具体的には、検出光は、検出器D1によって検出サブビーム71で検出される。それに対応して、検出光は、個々の検出器D2、D3、またはD4を用いて検出サブビーム72、73、74で検出される。個々の検出器D1は、制御および評価ユニット90に対する出力信号81として、検出された検出光を伝送する。それに応じて、個々の検出器D2、D3、およびD4は、制御および評価ユニット90に対して出力信号82、83、および84を供給する。制御および評価ユニット90は、検出ユニットによって、したがって具体的には個々の検出器D1、D2、D3、D4によって検出された検出光を評価する。通常、コンピュータが制御および評価ユニット90として使用される。
【0086】
本発明によるデバイスおよび本発明による方法では、したがって、既に原則的に各光点のスペクトル組成を個別に設定することができる構成を用いて、対応するスペクトル選択的な検出がそれによって実施される。それにより、スペクトル検出が、換言すれば上述したような制御可能なスペクトル選択手段61、62、63、64が、フィルタから、例えば段階的なフィルタから構築されるという、特定の利点が可能である。このタイプのスペクトルフィルタは、例えば、独国出願第10 2006 034 908 A1号に記載されている。フィルタに基づく構成は、コスト的に好ましく効果的なスペクトル検出の可能性をもたらす。
【0087】
それに加えて、フィルタに基づく構成によって、点広がり関数(PSF)の走査測定が高い光学品質で可能になる。これは、検出効率および光学分割を向上させるために、例えば、仮想ピンホール(これに関係して、Handbook of Biological Confocal Microscopy, J.B.ポーリー(J. B. Pawley)、改訂第3版、2010年を参照のこと)、または点広がり関数の空間分解測定などによって、方法に使用することができる。原則的に、波長依存の回折または屈折に基づいて働く、同様のものを提供する分散構成も存在する。これらも、検出PSFの保存が担保されるように設計することができる。空間スペクトル選択的な照明と組み合わせた有利な使用を、フィルタに基づく例示的な実施形態と同様に実現することができる。
【0088】
他方で、かかるフィルタの効率はそれらの複雑な構造によって常に限定される。換言すれば、複数のこれらのフィルタが前後に配置された場合は非効率的である。しかしながら、前後に配置された2つの段階的なフィルタを用いて3つの異なる波長帯域上へと有意義かつ光効率良く分割することは、依然として有意義であって非常に実行可能である。同じ光学ビーム上の、したがって同じ検出サブビーム上のさらなるフィルタにより、検出ユニットの関連する出力がさらに非効率的になるであろう。このことは、今日のレーザー顕微鏡を用いて測定される蛍光染料がさらに広範囲であることと対照的である。測定は、迅速に、また空間的に高精度で実現されるべきである。特に、測定が単独の走査のみで同時に実現されることが望ましい。多くの場合、3つを超えるスペクトルチャネルが測定可能である。
【0089】
利点は、染料で印付けられた異なる構造の信号にクロストークがないという事実にある。しかしながら、試験される検体の移動は、例えば共存の測定において、アーチファクトに結び付く可能性がある。
【0090】
したがって、複数の波長を測定する際、第一に、すべての波長に対して効率的なスペクトル検出が達成されるべきであり、第二に、検体のクロス励起によるスペクトルのクロストークまたはスペクトルの不適当な配分が、検出において可能な場合は回避されるべきであるという、克服すべき2つの基本的問題がある。
【0091】
これに関係して、本発明によるデバイスおよび本発明による方法は、実質的な改善を作り出す。本発明にしたがって存在する制御可能なビーム操作手段21、22、23、24は、それらを用いて各照明サブビームに関してスペクトル組成が本発明の場合にそれぞれの強度として理解されるべきであり、個別に他の照明サブビームとは独立して設定することができ、スペクトル選択性の検出と組み合わせて、非常に効率的でスペクトル感度の高い顕微鏡を形成することができる。
【0092】
これは、波長セレクタを介して、顕微鏡のそれぞれの測定タスクに対して、検出および励起を最適に設定することによって実現することができる。異なる画像化モードを区別することができ、それによって最良の構成における上述の問題が解決される。
【0093】
本明細書に関して、光源10、分割デバイス16、ならびに制御および評価ユニット90による接続25を介して制御される制御可能なビーム操作デバイス20という構成要素全体は、空間波長セレクタ、または単にセレクタとも称される。
【0094】
記録速度が最大限にされ、かつ/または試験される検体に対して許容される光損傷が最小限にされる、本発明によるデバイスおよび本発明による方法の応用例について、以下に記載する。これに関して、セレクタはN個のビームを提供し、ここでNは、整数nを用いた2
nから構成することができ、特に有利であるが必須ではない。制御可能なスペクトル選択手段は、特にフィルタであることができ、したがって検出フィルタとして説明することもできるが、この励起設定では、それぞれ同じスペクトルシグネチャを有するように設定される。これについては、単純にするためにすべてのビームが構成に示されない
図2に関連して、さらに詳細に以下で説明する。
【0095】
図2は、
図1の検出光路からのカットアウトを示しており、制御可能なスペクトル選択手段の特定の例示的な実施形態が示されている。
図2では、検出サブビーム51、52、53、54は左側から入り、制御可能なスペクトル選択手段による影響を受けた検出サブビーム71、72、73、74が、検出ユニットの方向の右側に出る。制御可能なスペクトル選択手段は、4つすべての検出サブビーム51、52、53、54それぞれに対して、一対の段階的なフィルタによって形成される。検出サブビーム51の場合、これは段階的なフィルタ611および613の対である。それに応じて、参照符号621および623、631および633、641および643の対がそれぞれ、検出サブビーム52、53、54に属する。段階的なフィルタはそれぞれ、検出サブビーム51、52、53、および54を実質的に横断する方向で、これらの検出サブビームに対して機械的に調節することができる。この機械的な自由度は、両矢印612、614、622、624、632、634、642、644によって
図2に示されている。
【0096】
段階的なフィルタ611、621、631、641は、閾値波長よりも低い波長の光は反射され、他方で閾値波長よりも高い波長の光は透過するように働く。閾値波長は、両矢印によって示される方向で段階的なフィルタをそれぞれ機械的に調節することによって、設定することができる。
図2に示される状況に関して、検出サブビーム54を参照してさらに詳細に説明する。
図2の左側から入ってくる検出サブビーム54は、照明光路内の関連の先行する照明サブビーム11、31のスペクトル組成、および試験される検体40の性質に実質的に依存した、特定のスペクトル組成を有する。特に、検出サブビーム54のスペクトル組成は、関連する光点44が突き当たった検体体積に含まれる蛍光染料に関する指定の情報を含む。検出サブビーム54は、特定の閾値波長に設定された段階的なフィルタ641に突き当たる。この段階的なフィルタ641によって反射されて戻った光541は、設定した閾値波長よりも低い波長の放射部分のみを含む。段階的なフィルタ641によって透過された検出サブビーム54の部分542は、本質的に、段階的なフィルタ641に対して設定された閾値波長よりも高い波長の放射部分のみを含む。
【0097】
段階的なフィルタ641を通過した放射部分542が次に突き当たる、さらなる段階的なフィルタ643は、逆の特性を有する。段階的なフィルタ643に対して設定された閾値波長よりも高い波長の入射放射は反射するが、段階的なフィルタ643に対して設定された閾値波長よりも低い波長の放射部分は通過させる。したがって、右に向かって出る検出サブビーム74は放射部分のみを含み、その波長は、段階的なフィルタ641の閾値波長よりも高く、段階的なフィルタ643の閾値波長よりも低い。段階的なフィルタ643によって放射されて戻る放射部分543は、段階的なフィルタ641の第1の閾値波長よりも高く、またさらに段階的なフィルタ643の閾値波長よりも高い波長のみを含む。
【0098】
段階的なフィルタ641および643を組み合わせることによって、これは、段階的なフィルタ641の閾値波長と段階的なフィルタ643の閾値波長との間の波長の放射部分のみを通過させる帯域フィルタをもたらす。放射を完全に透過させられるようにするために、段階的なフィルタ643の閾値波長が段階的なフィルタ641の閾値波長よりも高いことが絶対的に必須である。したがって、出力541、543、および74には3つの検出可能な波長帯域があり、541では、段階的なフィルタ641の閾値周波数よりも短い波長の部分を、543では、641および643の閾値波長よりも高い波長の部分を、74では、2つの閾値波長の間の波長を有する部分を検出することができる。したがって、光はロングパスフィルタを、次にショートパスフィルタを通過する。しかしながら、一連の通路はショートパス-ロングパスの組み合わせも含むことができる。
【0099】
検出サブビーム51、71の段階的なフィルタ611および613、検出サブビーム52、72の段階的なフィルタ621、623、ならびに検出サブビーム53、73の段階的なフィルタ631、633は、検出サブビーム54、74の段階的なフィルタ641および643と同じように働く。しかしながら、段階的なフィルタによって反射して戻った放射部分はそれぞれ、検出サブビーム51、71・・・53、73に関して独立して示されていないが、これは単純にするためである。原則的に、一方では段階的なフィルタ611、621、631、および641、他方では段階的なフィルタ613、623、633、および643は、それぞれ異なる段階的なフィルタであることができる。しかしながら、それぞれ同一の段階的なフィルタが特に好ましく使用される。
【0100】
図2に示される状況では、一方では、検出光路の第1の段階的なフィルタ611、621、631、641に対する閾値波長、他方では、検出光路の後に続く段階的なフィルタ613、623、633、643の閾値波長は、それぞれ同じである。これは、同一の帯域フィルタが、段階的なフィルタ611および613、621および623、631および633、ならびにさらに641および643の対によって提供されることを意味する。この構成は、検体を並行モードで走査するために使用することができる。走査点として説明することもできる各光点は、検体の一部のみを測定する。例えば、上下に垂直に並んだ4つの光点を、試験される検体の左から右へとガイドすることができ、第1の領域を走査した後、4つの光点が比較的大きく飛躍して次に走査される領域にジャンプするように、スキャナを設定することができる。これはタオル走査(Handtuch-Scan)と呼ばれる。
【0101】
所与のピクセルドウェル時間を用いて、特定の検体領域が走査される時間が、光点または走査点の数に対応する係数の分だけ低減されることは明らかである。図示される例では、この時間は係数4の分だけ低減される。
図2に示される構成はまた、改善された信号対雑音比を達成するために、さらなるモードで使用することができる。このため、それによって各光点は、上述した変形例からの逸脱により、検体で使用される画像フィールド全体を調べる。検体上の各点は、このように、4つの照明サブビームが使用される場合、4回走査される。単一の光点のみが検体の上でラスタ走査または走査される、走査顕微鏡法と比較して、飽和または退色効果がないものと仮定すると、信号の増加がある係数によって達成され、その係数は使用される光点の数に対応し、上述の例では係数4によって達成される。これに続いて、このようにして得られた画像が平均化され、信号対雑音比が係数√Nの分だけ改善された平均化画像が表現される。これに関する前提条件は、染料の発光がまだ飽和していないことである。この画像化モードは、例えば共振スキャナを用いて、非常に迅速な走査システムで検体がラスタ走査される場合、特に興味深いが排他的なものではない。
【0102】
共振走査システムの重要な変数はピクセルドウェル時間であり、したがって、光点が特定の検体領域もしくは検体体積上で滞留または残留する時間である。これは一般に、標準的な設定では、例えば512×512ピクセル、および8kHz以上の共振周波数で動作する共振スキャナでは、明らかに100ns未満である。
【0103】
ここで、平均化モードは、大きい画像フィールドに対しても可能である共振システムの高速画像化の場合、事実上係数Nの分だけ長いピクセルドウェル時間が、また結果として係数√Nの分だけ大きい信号対雑音比が達成されることに結び付く場合がある。しかしながら、SNRの正確な利得係数は、染料および使用されレーザー出力にも依存するので、√Nから逸脱する可能性がある。特に、飽和している染料の場合、レーザー出力を増加させることによって、信号をわずかのみ増加させることができるが、検体はより一層損傷する。それに加えて、ピクセル時間が非常に短い画像の力学は、検体がこのときに少数の光子のみを依然として放射できることによって制限される。平均化モードは有効ピクセル時間を増大させるので、画像の力学が同時に増大する。したがって、かかるモードはそれに加えて、高速走査と組み合わせて、特に共振走査システムと組み合わせて大きな利点を有する。
【0104】
図2と関係して説明される段階的なフィルタの構成のさらなる例示的な応用例について、
図3を参照して説明する。この図に示される段階的なフィルタの構成は、原則的に
図2と同じである。違いは、個々の段階的なフィルタに対する閾値波長のそれぞれの設定にある。一方では光路内の第1の段階的なフィルタ611、621、631、および641、他方では光路内の後続の段階的なフィルタ613、623、633、および643に対する閾値波長が同じであり、結果として同一の帯域フィルタが4つすべての検出サブビーム51、52、53、54に対して提供される、
図2に示される構成からの逸脱により、
図3に示される構成における閾値波長の設定は、すべての段階的なフィルタに対して異なる。しかしながら、一般に、閾値波長は通常、いずれの場合も、最終的な幅を有する帯域フィルタが提供されるように設定される。これは、段階的なフィルタ613の閾値波長が段階的なフィルタ611よりも高いことを意味する。同じことが、それに対応して、段階的なフィルタ621および623、631および633、ならびに641および643の対に当てはまる。しかしながら、一般に、それぞれ提供される帯域フィルタが網羅する波長間隔は異なる。
【0105】
具体的には、検出サブビーム41に対する段階的なフィルタ611および613の設定は、光路内で先行する関連した照明サブビーム31のスペクトル組成に依存して、したがって換言すれば、対応する検出サブビーム51が生じる光点41に突き当たる照明光のスペクトル組成に依存して実現される。同じことが、それに対応して、他の検出サブビーム52、53、および54に当てはまる。このことは、第1の検出サブビーム51の例に留まった場合、一方では、制御可能なビーム操作手段21の制御、したがって特に好ましくは多重チャネルAOTFのチャネルの制御、他方では、制御可能なスペクトル選択手段、したがって例えば段階的なフィルタ611および613の制御が、互いに合わせて調整することによって実現されることを意味する。
【0106】
それにより、制御および評価ユニットを、一方では特定の照明サブビームにおけるビーム操作手段の、他方では、検体上の特定の照明サブビームによって生成される光点から生じる検出サブビームにおけるスペクトル選択手段の、相互に調整された制御のために有利に設計することができる。例えば、ビーム操作手段21およびスペクトル選択手段611、613が、特定の蛍光染料が検体の上または中で意図的に励起され、その蛍光放射が検出されるような形で制御されることが特に好ましい。
【0107】
測定方法における照明、したがって励起と、検出との組み合わせを、このように本発明で有利に実現することができ、それにより、制御可能なビーム操作手段の助けによって、N個の照明サブビームそれぞれに対して既定のスペクトルシグネチャが設定される。それに依存して、またそれに対応して、制御可能なスペクトル選択手段、したがって特に、
図2および3の段階的なフィルタ全体によって形成されるフィルタユニットを、スペクトル励起シグネチャに最適な検出を、各照明および検出チャネルにおいて実現できるように設定することができる。
【0108】
スペクトルモードとも呼ぶことができる、かかるモードでの画像形成は、異なるスペクトル画像部分が検体の部分的に異なる位置で記録され、マージされて、即ち統合されてスペクトル画像を形成するという点で実現することができる。この画像は次に、コンピュータ画面上に、例えば擬似色表現の形で表示することができる。これに関連する擬似色表現は、特定の蛍光染料から放射された光がそれぞれ異なる色で示されるが、その波長はそれぞれの観察された染料によって実際に放射された放射に対応しなくてもよい表現であると理解される。個々の検出サブビームから生じるそれぞれのサブ画像をマージするため、1つの同じスキャナ設定における光点41、42、43、44が異なる検体位置にあるので、適切な座標変位を実施するのが必要なことがある。
【0109】
並行モードでは、N個の照明サブビームを用いて、検出サブビームそれぞれが、各N番目の線のみに対するそれぞれの画像データを含むサブ画像(線毎に走査し、また走査においてN本の線ごとにさらにジャンプした場合)を提供する。これら個々のサブ画像をまとめて全体画像を形成することができる。全体画像の強度コントラストは、検体の個々の点で測定した強度に対応する。スペクトルモードと同じように、個々の検出サブビームから生じるそれぞれのサブ画像をマージするために、1つの同じスキャナ設定における光点41、42、43、44が異なる検体位置にあるので、適切な座標変位を実施することが必須になるであろう。
【0110】
最も単純な形で、平均化モードのために全体画像が作成され、検体の異なる点に関して個々の検出サブビームについて測定した強度がそれぞれ追加される。明らかに、ここでは、適正な強度、したがって1つの同じ検体の点に実際に属するものが、追加されることも担保されるべきである。このことは、平均化モードでも、1つの同じスキャナ設定で光点41、42、43、44が異なる検体位置にあるので、適切な座標変位を実施しなければならないことを意味する。並行モードと同様に、平均化モードにおける全体画像の強度コントラストは、検体の個々の点で測定それぞれされた強度に対応する。
【0111】
原則的に、照明サブビームそれぞれにおける励起のため、複数の色が同時に存在することができる。例えば、空間二重分割を用いた3チャネル検出の場合、結果的に6つのスペクトルチャネルを測定し使用することができる。異なる色シグネチャが各光点または走査点に対して形成された場合、四重の空間励起および3つのチャネル検出を用いて12のスペクトルチャネルを拡散させることができる。一般に、M個の検出チャネルを用いたN重の空間スペクトル励起によって、N×M個の成分を分割することが可能である。一般に、本発明によるデバイスおよび本発明による方法では、N個の励起チャネルを所望に応じて空間およびスペクトルチャネルに分割することができる。
【0112】
本発明を通して、このように光学的配置が示され、それを用いて、測定タスクおよび測定される検体に対して最適化された顕微鏡画像記録が可能である。それに加えて、本発明によるデバイスは、ユーザ指示に対応してデバイス自体を最適化するように制御することができる。これは、ユーザによって定義された測定タスクが、光学的配置の最適設定へと、したがって換言すれば、一方では制御可能なビーム操作手段の、他方では制御可能なスペクトル選択手段の最適設定に移行されることを意味する。アルゴリズムを使用して、特定の検体を測定するための最適化された戦略を、ハードウェア構成要素に見出し設定することができる。
【0113】
図4と関連して、本発明によるデバイスの制御可能なビーム操作デバイス20などとして使用することができる、多重チャネルAOTFが記載される。
図4は、原則的に例えばTeO
2の均質な結晶から成る、かかる多重チャネルAOTF 20を概略的に示している。破線によって、この結晶が合計4つの空間領域に、即ち4つの空間チャネルに分割され、そこを通して、原則的に個々のAOTFを機能的に構築するそれぞれ1つの制御可能なビーム操作手段21、22、23、34が形成される。これら個々のチャネルを、したがって個々のAOTF 21、22、23、24を制御するため、トランスデューサ211、221、231、および241がそれぞれ、
図4に概略的に示される形でこれらのAOTFに配置される。トランスデューサは圧電結晶であり、それぞれのAOTF 21、22、23、24に結合され、それらを用いて、所望の光学特性を達成するのに必要な音波が結晶に導入される。個々のトランスデューサ211、221、231、および241を制御するのに用いられる信号が、円212、222、232、および242によって
図4に概略的に示されている。原理を、本質的に任意の数nのチャネルに移行させることができる。
【0114】
アレイとしても説明されるトランスデューサの二次元配置も原則的に可能であり、ここで説明される原理もそれらに移行させることができる。単純にするため、トランスデューサ間の相互作用が単純化された形で示されている。
図4に示される例では、下からの照明サブビーム12が突き当たるAOTF 22が考慮されている。トランスデューサ221によってAOTF 22で生成される音波の効果によって、照明サブビーム12の光の一部が照明サブビーム32へと偏向され、より具体的には回折する。それに加えて、AOTF 22を通して回折せずに通過する放射部分19がある。以下の考察に関する重要な因子は、トランスデューサ221を介して付与される制御信号222が、AOTF 22の透過特性に対して顕著なだけでなく、AOTF 21、23、および24それぞれのトランスデューサ211、231、および241を制御する制御信号212、232、242も顕著である点である。したがって、さらなるAOTF 21、23、24の制御も、AOTF 22で生成される回折格子に影響を及ぼす。これらの相互作用は、矢印201、202、および203によって
図4に概略的に示されている。
【0115】
以下の考察に関して、すべてのトランスデューサ211、221、231、および241は等しい周波数の正弦信号を用いて制御され、f(λ)は、レーザー光の波長λに対して必要な、それぞれのAOTF 21、22、23、24の励起周波数であると想定する。信号発生器は、本発明にしたがってそれらの間で同期され、開始位相θ(n)を、信号発生器212、222、232、および242それぞれに対して別々に設定することができる。それに加えて、正弦搬送周波数の振幅は、変調関数mn(t)によって影響される。応用例に応じて、トランスデューサ211、221、231、241に対する変調関数mn(t)は異なるかまたは同一であることができる。次に、トランスデューサにおける時間信号を次式のように記述することができる。
Sn(t)=mn(t)×sin(2πfλt+θn)
【0116】
異なる波長λnを有するそれぞれM個のレーザー線の複数の束が音響光学素子20によって影響される場合、n番目のチャネルの結果として得られる制御信号は、M個の信号Sn(t)の重ね合わせ/合計によって生じる。トランスデューサ間のクロストークは回折したレーザー光の強度をもたらし、例えば、AOTF 22に属するチャネルでは、制御信号222によって影響されるだけでなく、多重チャネル音響光学素子20の他のトランスデューサ211、231、241における制御信号によっても影響される。
【0117】
影響の程度は、特に、異なるチャネル間の電気的絶縁、光学チャネルの互いからの距離、およびトランスデューサの具体的な幾何学形状に依存する。設計に応じて、チャネル間の光学絶縁が約30dBの値に達し、クロストークの主要部分はチャネル間の欠陥がある電気的絶縁によって引き起こされる。これは特に、トランスデューサ211、221、231、241が互いに空間的に近い場合に問題となり得る。しかしながら、正確には、これは、例えば多重チャネルレーザー走査顕微鏡で使用する際に存在するので、重要な応用例である。操作されるかまたは影響を受けるビームは、光学系に対する要件を許容可能な範囲内で維持するために、互いから可能な限り短い距離にあるべきである。したがって、緊密に隣接したトランスデューサが望ましい。しかしながら、これらは必ずしも所望のように絶縁できるわけではない。
【0118】
2つの隣接したチャネルの制御信号(212、222、232、242)の開始位相の差が、90°+k×180°(kは整数)であるように選択された場合、これらのチャネルの制御信号は互いに対して直交する。チャネルを相互に影響させるため、最小をこのように達成することができる。したがって、本発明により、例えば、多重チャネルAOTFまたは多重チャネルAOMなどの多重チャネル音響光学素子の場合に、トランスデューサの制御が位相剛性で実現される場合、これが特に有利であると認識された。これは、同時に、伝送される各波長λに対するすべてのチャネルのトランスデューサにおける制御信号が、正確に同じ励起周波数fλを有さなければならないことを意味する。これが該当しない場合、多重チャネル音響光学素子のチャネル間の相互作用により、レーザー光の強度ゆらぎが生じ、強度ゆらぎの周波数は制御信号の差動周波数に対応する。
【0119】
したがって、本発明は、マルチスポット走査顕微鏡法に対する新規なデバイスおよび新規な方法に関する。本発明による解決策は平行照明を要する。この照明は、各照明チャネルにおいて上述した意味で切替え可能でなければならないが、少なくともチャネルの部分量において、即ち特にこのチャネルの放射の強度および波長に関して切替え可能でなければならない。導波路チップは、上述したように、これによって有利であり得る。ビーム分割の他の可能性も可能である。
【0120】
検出はまた、スペクトル分離/分割を伴わず、本発明による教示の最も単純な構成で実現することができる。N個の空間スペクトルチャネルを用いて、スペクトル励起シグネチャにおける空間分割にわたって正確にN個のスペクトルチャネルの測定が可能である。他方で、より迅速な画像記録のため、または所与のフレーム率で画像の改善された信号対雑音比を利用するために、N個の空間チャネルも並行して使用することができる。フレーム率は、ここでは、時間単位毎に記録された顕微鏡画像の数であるものと理解される。
【0121】
本発明によるデバイスおよび本発明による方法を用いて、検体の最適な画像記録のために柔軟に調節可能な光学的配置が提供され、空間およびスペクトル測定チャネルに関して最適化が可能である。最適はまた、検体損傷および記録時間に関して設定し達成することができる。本発明による方法では、空間およびスペクトル測定チャネルに対して、またさらに時間分解能および検体損傷の低減に対して自己最適化された、検体の顕微鏡測定も可能である。
【0122】
特に有利な実施形態では、空間光分布は、光学導波路を用いて多色で生成される。空間光分布は、セグメント化された素子を用いて、例えば多重チャネルAOTFを用いて個々に変調することができる。空間光分布のスペクトルシグネチャは、各光ビームに対して個々に設定することができる。例えば、すべてのサブビームの同じスペクトルシグネチャを用いて、既定されているがそれぞれ異なる明るさを設定することもできる。したがって、画像における力学が向上した記録が可能である。本発明によるデバイスおよび本発明による方法は、ビーム間で時間的に影響を与えるために使用することもできる。特に、上述の平均化方法では、サブビームの明るさを、他のそれぞれのサブビームの信号に依存して調整することができる。画像の力学の向上、および場合によっては光損傷の低減が、これによって可能になる。
【0123】
それに加えて、検出は、特に励起に対応して、またこれと併せて、解決される測定タスクに関連して、柔軟に設定することもできる。最後に、光ビーム経路内の構成要素は、点広がり関数が維持されるように選択することができる。このため、フィルタアレイは検出光路で特に好ましく使用され、それとともに、信号対雑音比を増加させ、分解能を増加させるのに、点広がり関数の空間走査が使用される。これらの方法は、「光子再配置」またはAiryscan方法のキーワードでも知られている。