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特許70718083留分への分離によるガソリンの処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】3留分への分離によるガソリンの処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/06 20060101AFI20220512BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20220512BHJP
   C10G 45/32 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
C10G65/06
C10G45/02
C10G45/32
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017182262
(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公開番号】P2018053246
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】1659016
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン ゴメス
(72)【発明者】
【氏名】クレメンティナ ロペス ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】フィリベール ルフレーヴ
(72)【発明者】
【氏名】アニック プッチ
(72)【発明者】
【氏名】マリー ゴダール-ピトン
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0166907(US,A1)
【文献】特表2008-525585(JP,A)
【文献】特表2017-516890(JP,A)
【文献】特開平11-315288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄含有化合物、オレフィンおよびジオレフィンを含有するガソリンを脱硫する方法であって、少なくとも以下の工程:
a) ガソリンを分画して、軽質ガソリン留分LCNおよび第1の重質ガソリン留分HCNを回収する工程であって、ここで軽質ガソリン留分LCNは全硫黄含有率が30重量ppm未満であるC5 炭化水素留分である、工程
b) 水素化脱硫触媒および水素の存在下に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で第1の重質ガソリン留分HCNを脱硫するための第1の工程を行い、その際の液体速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50~1000Nm/mの範囲内であり、第1の脱硫済み流出物を生じさせる、工程;
c) 工程b)から得られた第1の脱硫流出物を部分的に凝縮させて、水素およびHSによって必然的に構成される気相と、溶解HSを含む液体炭化水素相HCNとを生じさせるようにする、工程;
d) 液体炭化水素相HCNを、中間ガソリン留分MCNと、第2の重質ガソリン留分HHCNとに分離する工程であって、中間ガソリン留分MCNについての5%蒸留重量ポイントと95%蒸留重量ポイントとの間の温度差ΔTは20℃~65℃の範囲内にある、工程
e) 水素化脱硫触媒および水素の存在下に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で第2の重質ガソリン留分HHCNを脱硫するための第2の工程を行い、その際の液体速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される、水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50~1000Nm/mの範囲内であり、脱硫済みの第2の重質ガソリン留分HHCNを生じさせるようにする、工程;
を含み、
・ 工程c’);工程c)から得られた液体炭化水素相HCNの溶解HSを分離して、工程d)において処理される溶解HS含有率が低い液体炭化水素相HCNを生じさせる、工程、または
・ 工程d’);工程d)から得られた中間ガソリン留分MCNの溶解HSを分離して、溶解HS含有率が低い中間ガソリン留分MCNを生じさせる、工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程c’)またはd’)は、ガスによりストリッピングすることによって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c’)またはd’)は、吸収方法によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程c’)またはd’)は、安定化塔において行われ、該安定化塔は、HSを含有するC4炭化水素相と、溶解HS含有率が低い液体炭化水素相HCNとを分離するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程c’)およびd)は、分画塔において連続的に行われ、該分画塔は、
・ HSを必然的に含有する気相;塔の頭部から抜き出される;
・ 中間ガソリン留分MCN;側流として、塔頭部の下方から抜き出される;
・ 第2の重質ガソリン留分HHCN;塔の底部から抜き出される
を分離するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程c’)およびd)は、分画塔において連続的に行われ、該分画塔は、
・ 水素およびHSを含有する気相;塔の頭部から抜き出される;
・ 第2の重質ガソリン留分HHCN;塔の底部から抜き出される;
を分離するように構成され、前記気相は、冷却され、凝縮させられて、HSを必然的に含有する気体流と、中間ガソリン留分MCNとを生じるようにされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
中間ガソリン留分MCNは、安定化塔に送られる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程e)から得られた第2の脱硫済み重質ガソリン留分HHCNは、安定化塔に送られる、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
中間ガソリン留分MCNは、水素化脱硫工程f)において処理される、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
工程f)から得られた脱硫済み中間ガソリン留分MCNは、安定化塔に送られる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
中間ガソリン留分MCNは、液/液抽出方法または抽出蒸留方法または吸着方法において処理されて、チオフェン性硫黄含有化合物含有率が低い中間ガソリン留分MCNを生じさせるようにする、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
工程a)に先行して、ガソリンは、水素および選択的水素化触媒の存在下に処理されて、ジオレフィンを少なくとも部分的に水素化しかつ硫黄含有化合物の一部の分子量を増加させる反応を行うようにし、工程a)は、50~250℃の範囲内の温度、0.4~5MPaの範囲内の圧力で操作され、その際の空間速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される、水素の流量と、標準条件下での毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、2~100Nm/mの範囲内である、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
工程b)およびe)の水素化脱硫触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の元素と、第VIb族からの少なくとも1種の元素と、担体とを含む、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
ガソリン留分は、接触分解または熱分解の装置から得られる、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの水素化によって誘導されるオクタン価の喪失を制限し、かつ、操作および投資のコストを低減させながら、オレフィンタイプのガソリン中の硫黄含有化合物の量を低減させて脱硫されたと言われるガソリンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新環境規格に応じたガソリンの製造には、一般的には50ppm(mg/kg)を超えない、好ましくは10ppm未満の値へのそれらの硫黄含有率の大幅な低減が必要とされる。
【0003】
転化ガソリン、より特定的には、接触分解から得られたものは、ガソリンプールの30~50%を示し得るものであり、このようなものの、オレフィンおよび硫黄の含有率は高いことも知られている。
【0004】
この理由のために、ガソリン中に存在する硫黄のほぼ90%が、接触分解方法から得られたガソリンに帰せられ得、このようなガソリンは、ここから先において、FCC(Fluid Catalytic Cracking:流動接触分解)ガソリンと称されることになる。FCCガソリンは、それ故に、本発明の方法のための好ましい供給原料を構成する。
【0005】
硫黄含有率が低い燃料を製造するための考えられる経路の中で、非常にポピュラーになったものは、水素および触媒の存在下に水素化脱硫方法を用いて硫黄リッチなガソリンベースを特に処理することからなる。伝統的な方法では、モノオレフィンの大部分を水素化することにより非選択的な方法でガソリンが脱硫され、これにより、オクタン価の大幅な降下および高い水素消費がもたらされる。最近の方法、例えば、Prime G+法(登録商標)は、モノオレフィンの水素化を制限し、かつ、その結果として、オクタン価の降下およびそれが引き起こす水素の高消費を制限しながら、オレフィンリッチな分解ガソリンを脱硫するために用いられ得る。このタイプの方法の例は、特許文献1および2において記載されている。
【0006】
特許文献1および3に記載されるように、水素化処理工程に先行して、処理されるべき供給原料の選択的水素化の工程を行うことが有利である。この第1の水素化工程は、ジオレフィンを選択性に水素化することから必然的になる一方で、同時に、飽和軽質硫黄含有化合物を(それらの分子量を増加させることにより)より重質にすることによってこれらを変換する。これらの硫黄含有化合物は、チオフェン、例えば、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオールおよびジメチルスルフィドの沸点より低い沸点を有してよい。選択的水素化工程から得られたガソリンを分画することによって、5または6個の炭素原子を含有するモノオレフィンから主としてなる軽質脱硫ガソリン留分(またはLCN(Light Cracked Naphtha))が、オクタン価の損失なく生じさせられ、これは、車両燃料を配合するようにガソリンプールに品質向上させられ得る。特定の操作条件下に、この水素化は、処理されるべき供給原料中に存在するジオレフィンの少なくとも一部さらには全部の、より良好なオクタン価を有するモノオレフィン化合物への水素化を選択的に行う。選択的水素化の他の効果は、触媒の表面におけるまたは反応器中のポリマー化ガム状物の形成に起因して、選択的水素化脱硫触媒が徐々に失活することを防ぐことおよび/または反応器が徐々に閉塞することを回避することにある。実際に、ポリ不飽和化合物は不安定であり、ポリマー化によってガム状物を形成する傾向を有する。
【0007】
特許文献4には、ポリ不飽和化合物、より特定的にはジオレフィンを選択的に水素化して、軽質硫黄含有化合物、例えば、メルカプタンまたはスルフィドの合同の分子量増加を行う方法が開示されている。当該方法では、第VIb族からの少なくとも1種の金属と第VIII族からの少なくとも1種の非貴金属とを多孔質担体上に沈着させられて含有する触媒が採用される。
【0008】
硫黄の含有率が非常に低い、典型的には、欧州において要求されるような含有率が10重量ppm未満であるガソリンを得るには、少なくとも1回の水素化脱硫工程も必要とされ、これは、有機硫黄化合物をHSに転化することからなる。しかしながら、この工程が正しく制御されないならば、それは、ガソリン中に存在するモノオレフィンの大部分の水素化を引き起こすかもしれず、このことにより、ガソリンのオクタン価の大幅な降下並びに水素の過剰消費がもたらされる。水素化脱硫工程の間に直面される別の課題は、水素化脱硫反応器において形成されたHSの、ガソリン供給原料中に存在するモノオレフィン上への付加反応に由来するメルカプタンタイプの化合物の形成である。メルカプタンは、化学式R-SHを有し、ここで、Rは、アルキル基であり、このものは、チオールまたは組み換え型メルカプタンとしても知られており、一般的に、脱硫済みガソリン中の残留硫黄の20~80重量%を示す。
【0009】
これらのデメリットを制限するために、種々の解決方法が、存在するモノオレフィンの水素化を避けてオクタン価を維持するように注意深く選択された技術により、水素化脱硫および組み換え型メルカプタンの除去の工程の組み合わせを活用して分解ガソリンを脱硫するために文献に記載されている(例えば、特許文献5~8参照)。
【0010】
しかしながら、組み換え型メルカプタンを除去するための最終工程を用いるこれらの組み合わせが特に適しているのは、非常に低い硫黄含有率が望まれる場合であるが、それらは、除去されるべきメルカプタンの量が多い場合に非常に高価であることが判明し得るようである;実際に、これには、例えば、多量の吸着剤または溶媒の消費量が必要とされる。
【0011】
硫黄含有率が低減したガソリンの製造のために文献において提案された解決方法のいくつかには、分解方法から得られた全範囲分解ナフサ(full range cracked naphthaまたはFRCN)の蒸留による分離が提案されている。いくつかの特許(例えば、特許文献1および9)において、蒸留は、2留分:軽質留分(LCN)および重質留分(Heavy Cracked NaphthaまたはHCN)を得ることを目的とする。FRCNガソリンは、蒸留の上流で、例えば、ガソリンのジオレフィンの選択的水素化を可能にしおよび/または軽質硫黄含有化合物の分子量を増加させることを可能にすることのできる方法を用いて処理されてよく、蒸留操作の後に、これらの硫黄含有化合物は、重質留分(HCN)中に回収される。重質留分の硫黄含有化合物は、次いで、種々の方法により、例えば、1基以上の反応器により行われる接触水素化脱硫を介してガソリンから除去される。
【0012】
別の解決方法は、2回の水素化脱硫工程においてガソリン供給原料の接触水素化脱硫を行う工程と、第1の工程において形成されたHSの分離のための中間工程とからなる。このタイプの解決方法は、例えば、特許文献2および10に例示される。
【0013】
いくつかの特許も、重質留分と軽質留分への分離と、2基の反応器により行われ、かつ第1の工程において形成されたHSの分離を伴う接触水素化脱硫とを組み合わせる解決方法に関する。この場合、軽質留分の分離は、特許文献11に例示されるように2回の水素化脱硫工程の上流で行われ、重質留分のみがその後に脱硫されるか、または、軽質留分の分離が、2回の水素化脱硫工程の間に行われ、第1の工程は、分解方法から得られた全範囲ガソリン(FRCN:Full Range Cracked Naphtha)を処理し、第2の工程は、重質留分のみを処理するかのいずれかであってよい。この後者の解決方法の例は、特に、特許文献12および13において例示された。
【0014】
他の解決方法では、全範囲ガソリンFRCNを2超の留分に蒸留により分離し、硫黄含有率が低減した、さらには10重量ppm程度の、硫黄含有率が非常に低いガソリンを製造することが採用される。このタイプの方法において、得られた留分は、別個にまたは一部組み合わされて処理されて、有機性硫黄が得られた留分の少なくとも一部から除去され、その目的は、処理済み留分の全部または少なくとも一部を混合した後に脱硫ガソリンを得ることにある。
【0015】
例として、特許出願(特許文献14)には、蒸留操作によりFRCNガソリンを3留分:軽質留分、中間留分および重質留分に分離することによってFCCガソリンの硫黄含有率を低減させるために用いられ得る方法が記載されている。重質留分は、脱硫され、流出物は、中間留分と合わされ、ついで、それは、その全体において、第2の水素化脱硫工程の間に脱硫される。軽質留分中に含有されるメルカプタンは、3留分への分離の上流でのチオエーテル化または腐食性の下流処理のいずれかによって除去され得ることが明記される。
【0016】
特許文献15には、類似の方法が記載され、FRCN(Full Range Cracked Naphtha)ガソリンも、蒸留操作によって3留分に分離される。軽質留分は、ガソリンの50~80%を示すことおよび重質留分は、FRCNガソリンの5~20%を示すことが明記される。中間留分および重質留分は、2つの触媒床を含有する単一の反応器において水素化脱硫されることも明記される。重質留分は、第1の触媒床において処理され、中間留分は、2つの床の間に加えられて、第1の床から得られた部分脱硫された重質留分との同時処理が第2の触媒床において行われる。著者は、硫黄の除去は、ほぼ完全であること、また、重質留分のオレフィンの水素化は、ほぼ完全であることを指し示す。
【0017】
特許文献16にも、選択的水素化工程と、その後の、少なくとも3フラクションへの分離とを含むガソリンの脱硫方法が記載されている。最軽質のフラクションは、事実上硫黄不含有である。最重質のフラクションは、少なくとも1回、留分中の不飽和硫黄含有化合物の脱硫をするために処理される。中間フラクションは、比較的低いオレフィンおよび芳香族化合物の含有率によって特徴付けられる。当該留分の一部または全部は、少なくとも1回の脱硫および脱窒の工程と、その後の、接触改質工程とを経る。
【0018】
特許文献17には、オクタン価の損失が小さいガソリンの製造方法が記載されている。発明者らによると、ジオレフィンの飽和の後に、FRCNガソリンは、蒸留によって70℃の終点を有する軽質留分と、中間留分(70~90℃)と、重質留分(90~210℃)とに分離される。軽質留分のメルカプタンは、CFC(Continuous Film Contactor)設備として知られている設備における腐食性処理により除去される。重質留分は、主に、チオフェン硫黄含有化合物を含有しており、このものは、接触水素化脱硫または反応性吸着方法によって脱硫される。中間留分は、異性化装置または接触改質装置に送られてよい。場合によっては、中間留分は、メルカプタン含有率を低減させるためにCFC設備において軽質留分と同時処理されてよく、または、実際に、この留分は、重質留分と同時処理されてよい。当該方法には、中間留分のための別個の脱硫処理は提案されていない。
【0019】
特許文献18には、FRCNガソリンの選択的脱硫のための方法が開示されている。FRCNガソリンは、反応性蒸留塔に導入されて、供給原料中に含有されるメルカプタンのチオエーテル化処理と、軽質留分、中間留分および重質留分への分離との両方が行われる。中間留分は、側流として抜き出され、脱硫反応器において処理される。
【0020】
特許文献19には、炭化水素の流れの硫黄含有率を低減させる方法であって、FRCNガソリンを、水素化触媒と接触させて、ジエンの少なくとも一部を水素化し、メルカプタンの少なくとも一部をチオエーテルに転化する工程を含む、方法が記載されている。このFRCNガソリンは、次いで、軽質フラクション、中間フラクションおよび重質フラクションに分画される。重質フラクションは、接触水素化脱硫方法において脱硫される。中間フラクションは、水素およびガスオイル留分と混合されて、混合物が形成され、これは、水素化脱硫反応器において触媒と接触させられ、次いで、分離され、脱硫済み中間フラクションが得られ、ガスオイル留分は回収され、これは、方法に再循環させられ、場合によってはパージされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】欧州特許出願公開第1077247号明細書(特開2001-55584号公報)
【文献】欧州特許出願公開第1174485号明細書(特開2002-47497号公報)
【文献】欧州特許出願公開第1800748号明細書(特開2007-177245号公報)
【文献】欧州特許出願公開第2161076号明細書(特開2010-90366号公報)
【文献】米国特許第7799210号明細書
【文献】米国特許第6960291号明細書
【文献】米国特許第6387249号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/114156号明細書
【文献】国際公開第02/072738号
【文献】米国特許第7785461号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1354930号明細書(特開2003-327970号公報)
【文献】米国特許第6913688号明細書
【文献】米国特許第7419586号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/188327号明細書
【文献】米国特許第6103105号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2807061号明細書(特開2001-279263号公報)
【文献】米国特許第9260672号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0195151号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0054198号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の一つの目的は、3留分に分画する工程を含む、オレフィン性ガソリンの脱硫方法であって、該3留分は、オクタン価の損失を制限することによって、全硫黄含有率が低い、典型的には30重量ppm未満、より好ましくは10重量ppm未満であり、かつ、組み換え型メルカプタン含有率が非常に低いガソリンを生じさせることができる、方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため、本発明は、以下に示す発明を提案する。
【0024】
すなわち、本発明は、硫黄含有化合物、オレフィンおよびジオレフィンを含有するガソリンを脱硫する方法であって、少なくとも以下の工程:
a) ガソリンを分画して、軽質ガソリン留分LCNおよび第1の重質ガソリン留分HCNを回収する工程;
b) 水素化脱硫触媒および水素の存在下に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で第1の重質ガソリン留分HCNを脱硫するための第1の工程を行い、その際の液体速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50~1000Nm/mの範囲内であり、第1の脱硫済み流出物を生じさせる、工程;
c) 工程b)から得られた第1の脱硫流出物を部分的に凝縮させて、水素およびHSによって必然的に構成される気相と、溶解HSを含む液体炭化水素相HCNとを生じさせるようにする、工程;
d) 液体炭化水素相HCNを、中間ガソリン留分MCNと、第2の重質ガソリン留分HHCNとに分離する工程;
e) 水素化脱硫触媒および水素の存在下に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で第2の重質ガソリン留分HHCNを脱硫するための第2の工程を行い、その際の液体速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される、水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50~1000Nm/mの範囲内であり、脱硫済みの第2の重質ガソリン留分HHCNを生じさせるようにする、工程;
を含み、
・ 工程c’);工程c)から得られた液体炭化水素相HCNの溶解HSを分離して、工程d)において処理される溶解HS含有率が低い液体炭化水素相HCNを生じさせる、工程、または
・ 工程d’);工程d)から得られた中間ガソリン留分MCNの溶解HSを分離して、溶解HS含有率が低い中間ガソリン留分MCNを生じさせる、工程
を含む。
【0025】
好ましくは、工程c’)またはd’)は、ガスによりストリッピングすることによって行われる。
【0026】
好ましくは、工程c’)またはd’)は、吸収方法によって行われる。
【0027】
好ましくは、工程c’)またはd’)は、安定化塔において行われ、該安定化塔は、HSを含有するC4炭化水素相と、溶解HS含有率が低い液体炭化水素相HCNとを分離するように構成される。
【0028】
好ましくは工程c’)およびd)は、分画塔において連続的に行われ、該分画塔は、
・ HSを必然的に含有する気相;塔の頭部から抜き出される;
・ 中間ガソリン留分MCN;側流として、塔頭部の下方から抜き出される;
・ 第2の重質ガソリン留分HHCN;塔の底部から抜き出される
を分離するように構成される。
【0029】
好ましくは、工程c’)およびd)は、分画塔において連続的に行われ、該分画塔は、
・ 水素およびHSを含有する気相;塔の頭部から抜き出される;
・ 第2の重質ガソリン留分HHCN;塔の底部から抜き出される;
を分離するように構成され、前記気相は、冷却され、凝縮させられて、HSを必然的に含有する気体流と、中間ガソリン留分MCNとを生じるようにされる。
【0030】
好ましくは、中間ガソリン留分MCNは、安定化塔に送られる。
【0031】
好ましくは、中間ガソリン留分MCNの、5%と95%の蒸留される重量のポイントの間の温度差ΔTは75℃以下である。
【0032】
好ましくは、中間ガソリン留分MCNについての5%と95%の蒸留される重量のポイントの間の温度差ΔTは、20~65℃の範囲内である。
【0033】
好ましくは、工程e)から得られた第2の脱硫済み重質ガソリン留分HHCNは、安定化塔に送られる。
【0034】
好ましくは、中間ガソリン留分MCNは、水素化脱硫工程f)において処理される。
【0035】
好ましくは、工程f)から得られた脱硫済み中間ガソリン留分MCNは、安定化塔に送られる。
【0036】
好ましくは、中間ガソリン留分MCNは、液/液抽出方法または抽出蒸留方法または吸着方法において処理されて、チオフェン性硫黄含有化合物含有率が低い中間ガソリン留分MCNを生じさせるようにする。
【0037】
好ましくは、工程a)に先行して、ガソリンは、水素および選択的水素化触媒の存在下に処理されて、ジオレフィンを少なくとも部分的に水素化しかつ硫黄含有化合物の一部の分子量を増加させる反応を行うようにし、工程a)は、50~250℃の範囲内の温度、0.4~5MPaの範囲内の圧力で操作され、その際の空間速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される、水素の流量と、標準条件下での毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、2~100Nm/mの範囲内である。
【0038】
好ましくは、工程b)およびe)の水素化脱硫触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の元素と、第VIb族からの少なくとも1種の元素と、担体とを含む。
【0039】
好ましくは、ガソリン留分は、接触分解または熱分解の装置から得られる。
【発明の効果】
【0040】
本発明による方法によって、上記の工程の組み合わせのために、オレフィンの水素化を制限しかつ脱硫済み流出物中の組み換え型メルカプタン含有率を低減させながら、オレフィン性ガソリンを脱硫することができ上記の課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による方法のための第1のフロー図である。
図2】本発明による方法のバリエーションのための方法フロー図である。
図3】本発明による方法の別のバリエーションのための方法フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(発明の概要)
本発明は、硫黄含有化合物、オレフィンおよびジオレフィンを含有するガソリンの処理方法であって、少なくとも以下の工程:
a) ガソリンを分画し、軽質ガソリン留分LCNおよび第1の重質ガソリン留分HCNを回収する工程;
b) 水素化脱硫触媒および水素の存在下に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で第1の重質ガソリン留分HCNを脱硫するための第1の工程を行い、その際の液体速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される、水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50~1000Nm/mの範囲内であり、第1の脱硫流出物が生じる、工程;
c) 工程b)から得られた第1の脱硫流出物を一部凝縮させて、水素とHSとによって必然的に構成される気相と、溶解HSを含む液体炭化水素相HCNとを生じさせるようにする、工程;
d) 液体炭化水素相HCNを、中間ガソリン留分MCNと第2の重質ガソリン留分HHCNとに分離する工程;
e) 水素化脱硫触媒および水素の存在下に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で第2の重質ガソリン留分HHCNを脱硫するための第2の工程を行い、その際の液体速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルm3で表される、水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50~1000Nm/mの範囲内であり、脱硫済みの第2の重質ガソリン留分HHCNを生じさせるようにする、工程
を含み、
該方法は、
・ 工程c’):工程c)から得られた液体炭化水素相HCNの溶解HSを分離して、溶解HS含有率が低い液体炭化水素相HCNを生じさせ、溶解HS含有率が低い前記液体炭化水素相HCNは、工程d)において処理されるものである、工程、または、
・ 工程d’):工程d)から得られた中間ガソリン留分MCNの溶解HSを分離して、溶解HS含有率が低い中間ガソリン留分MCNを生じさせる、工程
を含む、方法に関する。
【0043】
本発明による方法によって、上記の工程の組み合わせのために、オレフィンの水素化を制限しかつ脱硫済み流出物中の組み換え型メルカプタン含有率を低減させながら、オレフィン性ガソリンを脱硫するという課題が解決される。それ故に、工程a)は、オレフィンの一部の水素化を引き起こすだろう接触水素化脱硫反応を含む必要なく、オクタン価が高く硫黄含有化合物含有率が低減した軽質ガソリン留分を分離するように操作される。工程b)は、HCNガソリン留分(LCN留分に対する補完)の部分的な脱硫を行い、その間に、オレフィンと形成されたHSとの反応によって得られる組み換え型メルカプタンが形成される。工程d)が本方法の効率に参加するのは、部分的に脱硫されたHCNガソリン留分の、硫黄含有率が低い中間MCNガソリン留分と、組み換え型メルカプタンが得られる元となるオレフィンの沸点より高い沸点を有する組み換え型メルカプタンを含む有機性硫黄含有化合物を含有する第2の重質ガソリン留分HHCNとへの分離のためであり、これは、注意深く操作される。第2の重質ガソリン留分HHCNの脱硫のための工程e)は、工程b)におけるより厳しい条件下に操作されてよく、これは、最もオレフィンリッチな部分が、すでに分離されており、硫黄含有率が低い流出物を提供するために激しい処理を行うために用いられ得るからである。
【0044】
本発明による方法は、脱硫工程b)の間に生じ、一部は、工程c)から得られた液体炭化水素相に溶解した形態にあるHSの分離のための工程も含む。この分離工程は、最後に、HS含有率が低い重質ガソリン留分HHCNを提供することを目的とする。この重質ガソリン留分HHCNは、次いで、脱硫工程e)において処理されてよい。HSは、工程c)から得られた液体炭化水素相HCN上で直接的に分離されてよい(工程c’))。あるいは、本発明による方法は、HSの分離のための工程(工程d’))を含み、これは、液体炭化水素相HCNを、中間ガソリン留分MCN(これもHSを含有する)とMCN留分より重質である第2の重質ガソリン留分HHCNとに分離するための工程d)の後に行われる。この工程d’)は、それ故に、形成されたHSの大部分を含有する中間ガソリン留分MCNについて行われる。例として、工程d’)は、中間留分MCNと、ガソリン留分MCN中に存在する溶解HSを同伴させるために用いられ得るガスとを、ストリッピング塔に送ることからなる。工程d’)は、安定化塔を採用してもよく、この安定化塔は、塔の頭部におけるHSを含有するC4留分と、塔底部における安定化MCN留分とを分離する。
【0045】
工程a)は、後の水素化脱硫工程を必要とすることなく軽質ガソリン留分の最終沸点が、硫黄含有率が低い(全硫黄含有率は、典型的には、30重量ppm未満、好ましくは10重量ppm未満である)軽質ガソリン留分LCNを提供するように行われる。
【0046】
好ましくは、中間ガソリン留分MCNの、蒸留された重量の5%と95%とに対応するポイントの間の温度差(ΔT)は、75℃未満である(文献Oil Gas Sci. Technol. Vol. 54 (1999), No. 4, pp. 431-438に記載されたCSD方法に従って測定される)。好ましくは、5%と95%との蒸留された重量のポイントの間の温度差ΔTは、20~65℃の範囲内である。中間ガソリン留分MCNは、5~8個の炭素原子を含有する炭化水素、主に、6個の炭素原子を含有する炭化水素を含有してよい。
【0047】
本発明によると、工程c’)またはd’)は、ガスによるストリッピングによって行われる。例として、ストリッピングガスは、水素、窒素または水蒸気である。
【0048】
あるいは、工程c’)またはd’)は、吸収方法によって行われる。
【0049】
本方法の別の実施形態によると、工程c’)またはd’)は、安定化塔において行われ、この安定化塔は、HSを含有するC4炭化水素相と、溶解HS含有率が低い(安定化)液体炭化水素相HCNとを分離するように構成され、溶解HS含有率が低い前記液体炭化水素相HCNは、工程d)において処理される。
【0050】
別の実施形態によると、工程c’)およびd)は、分画塔において連続的に行われて、以下のものが分離される:
・ 気相:HSを必然的に含有しており、塔の頭部から抜き出される;
・ 中間ガソリン留分MCN:還流ドラムからまたは塔頭部より下の側流として抜き出される;
・ 溶解HSを精製した第2の重質ガソリン留分HHCN;塔底部から抜き出される。
【0051】
この場合、好ましくは、分画から得られた中間ガソリン留分MCNは、安定化塔、場合によっては、工程e)において得られた脱硫済みHHCN留分を処理するために用いられるものに送られる。
【0052】
本発明によると、中間ガソリン留分MCNは、場合によっては、水素化脱硫工程f)において処理される。工程f)は、水素化脱硫触媒および水素の存在下に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で行われ、その際の液体速度は、0.5~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される、水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は50~1000Nm/mの範囲内である。
【0053】
好ましくは、工程f)から得られた脱硫済み中間ガソリン留分MCNは、安定化塔に送られる。
【0054】
代替の実施形態において、中間ガソリン留分MCNは、液/液抽出方法または抽出蒸留または吸着で処理されて、チオフェン性の硫黄含有化合物含有率が低い中間ガソリン留分MCNを生じさせるようにする。
【0055】
有利には、工程a)に先行して、ガソリンは、水素および選択的水素化触媒の存在下に処理されて、ジオレフィンを少なくとも部分的に水素化しかつ硫黄含有化合物の一部の分子量を増加させるための反応を行うようにし、工程a)は、100~190℃の範囲内の温度、1~4MPaの範囲内の圧力で操作され、その際の空間速度は、1~20h-1の範囲内であり、毎時のノルマルmで表される、水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、2~100Nm/mの範囲内である。
【0056】
工程b)およびe)のための水素化脱硫触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の元素と、第VIb族からの少なくとも1種の元素と、担体とを含む。
【0057】
本発明による方法は、接触分解または熱分解の装置、例えば、ディレードコーカーまたはビスブレーキング装置から得られたガソリン留分を処理するために採用される。
【0058】
(発明の詳細な説明)
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明を読むことから明らかになることになるが、この説明は、限定されない例証の目的でのみ与えられ、添付の図面が参照される。
【0059】
一般に、図面において類似の要素は、同一の参照符号によって表記される。
【0060】
(供給原料の説明)
本発明による方法は、あらゆるタイプの硫黄含有オレフィン性ガソリン留分であって、沸点範囲が、典型的には、2または3個の炭素原子を含有する炭化水素(CまたはC)の沸点くらいから250℃くらいにまで、好ましくは、2または3個の炭素原子を含有する炭化水素(CまたはC)の沸点くらいから220℃くらいにまで、より好ましくは4個の炭素原子を含有する炭化水素の沸点くらいから220℃くらいにまで広がるものを処理するために用いられ得る。本発明による方法は、上記の終点未満の終点、例えばC5-200℃またはC5-160℃留分を有する供給原料を処理するために用いられてもよい。
【0061】
本発明による方法は、好ましくは、接触分解または熱分解の装置、例えば、ディレードコーカーまたはビスブレーキング装置から得られたガソリン留分を処理するために用いられてよい。これらの種々の起源のものから得られた留分を混合することによって得られた供給原料も可能である。特に、本発明による方法からのガソリン留分は、接触分解装置から得られ、接触分解装置のための供給原料は、予備処理されたものであるか、または、プロピレン収率を増加させるか、さらには、最大にするように機能する。この後者の場合、接触分解装置の操作の様式は、典型的には、厳しい操作条件(高い温度および触媒対供給原料の高い比)によって、形状選択性を有するゼオライト(例えば、MFI結晶構造を有するもの)を含む触媒を用いることによって特徴付けられ、場合によっては、生じたガソリン留分の一部またはC4留分のオリゴマー化物の接触分解装置中の再循環を伴い、この再循環させられる流れは、場合によっては、供給原料と同時に(同時処理として知られている)または重質供給原料を分解するための条件と再循環させられた流れのための条件とを離すように専用の反応器において(2ライザー(two-riser)法として知られている)処理される。
【0062】
接触分解(FCC)または非触媒分解によって生じたガソリン留分の硫黄含有率は、処理される供給原料の硫黄含有率、供給原料の予備処理の存在または非存在、さらには、留分の終点に依存する。一般に、全体としてのガソリン留分、特に、FCCからのものの硫黄含有率は、100重量ppmより高く、大部分の時点で500重量ppmより高い。200℃超の終点を有するガソリンについて、硫黄含有率は、しばしば、1000重量ppm超であり、場合によっては、4000~5000重量ppmの程度の値に達することさえある。
【0063】
例として、接触分解装置(FCC)から得られたガソリンは、平均で、0.5~5重量%のジオレフィン、20~50重量%のオレフィン、10重量ppm~0.5重量%の硫黄を含有し、一般的には、300ppm未満のメルカプタンを含む。メルカプタンは、一般的には、ガソリンの軽質フラクション中に、より正確には、120℃未満の沸点を有するフラクション中に濃縮される。
【0064】
本発明の方法によって処理される供給原料中に含まれる硫黄含有種は、メルカプタンまたはヘテロ環化合物、例えば、チオフェンまたはアルキルチオフェン、または、より重質の化合物、例えば、ベンゾチオフェンであってよい。メルカプタンとは対照的に、これらのヘテロ環化合物は、抽出法によって除去され得ない。これらの硫黄含有化合物は、結果として、炭化水素およびHSへのそれらの変換をもたらす水素化処理によって除去される。
【0065】
ここで、本発明の特定の実施形態を示す図1を参照すると、オレフィン性ガソリン供給原料、例えば、上記の接触分解済みガソリンは、場合による工程において処理される。この場合による工程は、ジオレフィンの選択的水素化およびオレフィンとの反応による、供給原料中に存在するメルカプタン化合物(RSH)の一部のチオエーテルへの転化(分子量増加)を行うものである。典型的には、場合による選択水素化工程の間に反応し得るメルカプタンは、以下の通りである(包括的ではないリスト):メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、iso-プロピルメルカプタン、iso-ブチルメルカプタン、tert-ブチルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、sec-ブチルメルカプタン、iso-アミルメルカプタン、n-アミルメルカプタン、α-メチルブチルメルカプタン、α-エチルプロピルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、および2-メルカプト-ヘキサン。この目的で、FRCNガソリン供給原料は、ライン(1)を介して、選択的水素化触媒反応器(2)に送られる。この選択的水素化触媒反応器(2)は、ジオレフィンを選択的に水素化しかつメルカプタンの分子量を増加させるための触媒の少なくとも1基の固定床または移動床を含有する。ジオレフィンの選択的水素化およびメルカプタンの分子量の増加のための反応は、好ましくは、第VIII族(新周期律分類(Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition, 1995-1996)の8、9および10族)からの少なくとも1種の元素と、場合による、第VIb族(新周期律分類(Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition, 1995-1996)の6族)からの少なくとも1種の元素と、担体とを含む硫化触媒上で行われる。第VIII族からの元素は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択され、特にはニッケルである。第VIb族からの元素は、それが存在した場合、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選択される;大いに好ましくは、それはモリブデンである。
【0066】
触媒担体は、好ましくは、アルミナ、アルミン酸ニッケル、シリカ、炭化ケイ素またはこれらの酸化物の混合物から選択される。好ましくは、アルミナが用いられ、より好ましくは高純度アルミナが用いられる。好ましい実施形態によると、選択的水素化触媒は、(NiOの形態にある)酸化ニッケルの重量含有率4~12%にあるニッケルと、(MoOの形態にある)酸化モリブデンの重量による量として、6~18%の範囲内の量にあるモリブデンとを含有し、ニッケル/モリブデンのモル比は、1~2.5の範囲内であり、金属は、アルミナによって構成される担体上に沈着させられ、触媒を構成する金属の硫化度は、80%超である。
【0067】
場合による選択的水素化工程の間、処理されるべきガソリンは、典型的には、50~250℃の範囲内、好ましくは80~220℃の範囲内、一層より好ましくは90~200℃の範囲内の温度で触媒と接触させられ、その際の液体空間速度(liquid space velocity:LHSV)は、0.5~20h-1の範囲内であり、液体空間速度の単位は、触媒の容積(リットル)当たりかつ時間当たりの供給原料の容積(リットル)(L/L・h)である。圧力は、0.4~5MPaの範囲内、好ましくは0.6~4MPaの範囲内、一層より好ましくは1~2MPaの範囲内である。場合による選択的水素化工程は、典型的には、H/HC比:供給原料の容積(m)当たり水素2~100Nmの範囲内、好ましくは供給原料の容積(m)当たり水素3~30Nmの範囲内で行われる。
【0068】
供給原料の全体が、一般的に、反応器への入口に注入される。しかしながら、場合によっては、供給原料の一部または全部を、反応器中に置かれた2つの連続する触媒床の間に注入することが有利であってよい。この実施形態は、特に、反応器は、反応器への入口が供給原料中に存在するポリマー、粒子またはガム状物の沈着によってブロックされたならば、操作されることを継続することができることを意味する。
【0069】
図1において指し示されるように、オレフィン性ガソリン供給原料は、ライン(1)を介して選択的水素化反応器(2)に送られる。ジオレフィンおよびメルカプタンの含有率が低い流出物が、ライン(3)を介して反応器(2)から抜き出され、工程a)に従って、分画塔(またはスプリッタ)(4)に送られる。この分画塔は、ガソリンを2留分である、軽質ガソリン留分LCN(または軽質ガソリン)(5)と(第1の)中間重質ガソリン留分HCN(6)に分離するように構成される。この中間重質ガソリン留分HCN(6)は、軽質ガソリンLCNに対する補完である重質フラクションによって構成される。軽質留分の最終沸点は、続く水素化脱硫工程の必要なく、硫黄含有率が低い(全硫黄含有率は、典型的には、30重量ppm未満、好ましくは10重量ppm未満である)軽質ガソリン留分LCNを提供するように選択される。それ故に、好ましくは、軽質ガソリン留分LCNは、C5炭化水素留分である(すなわち、分子当たり5個以下の炭素原子を含有する炭化水素を含有する)。第1の重質ガソリン留分HCNは、好ましくは、C6留分であり(すなわち、分子当たり6個以上の炭素原子を含有する炭化水素を含有する)、このものは、選択的水素化脱硫工程b)において処理される(選択的HDS)。この工程b)の目的は、下記の触媒および水素を用いて重質ガソリン留分HCNの硫黄含有化合物の一部をHSおよび炭化水素に転化することにある。
【0070】
第1の重質ガソリン留分HCN(6)は、次いで、ライン(7)を介して供給される水素および選択的HDS触媒と、少なくとも1基の水素化脱硫装置(8)において接触させられる。この水素化脱硫装置(8)は、触媒の固定床または移動床を有する少なくとも1基の反応器を含む。水素化脱硫反応は、一般的に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で行われる。液体空間速度は、一般的に、0.5~20h-1の範囲内(触媒の容積当たりかつ時間当たりの液体の容積として表される)、好ましくは1~8h-1の範囲内である。H/第1の重質ガソリン留分(HCN)の比は、所望の水素化脱硫度に応じて調節され、標準条件下のm当たり50~1000ノルマルmの範囲内である。好ましくは、第1の重質ガソリン留分HCNと水素との混合物は、工程b)において触媒と接触させられ、この混合物は、全体的に、蒸気相にある。好ましくは、温度は、200~400℃の範囲内、より好ましくは200~350℃の範囲内である。好ましくは、圧力は、1~3MPaの範囲内である。
【0071】
硫化された形態で採用される選択的HDS触媒は、第VIII族(新周期律分類(Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition, 1995-1996)の8、9および10族)からの少なくとも1種の元素と、第VIb族(新周期律分類(Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition, 1995-1996)の6族)からの少なくとも1種の元素と、担体とを含む。第VIII族からの元素は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択され、特にはコバルトである。第VIb族からの元素は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選択され、一層より好ましくはモリブデンである。触媒は、例えば、特許FR2840315、FR2840316、FR2904242またはFR3023184において記載されたような触媒であってよい。触媒のための担体は、好ましくは、アルミナ、アルミン酸ニッケル、シリカ、炭化ケイ素、またはこれらの酸化物の混合物から選択される。好ましくは、アルミナが用いられる。
【0072】
ライン(7)を介して供給される水素は、補給水素または本方法の工程、特に工程b)を起源とする再循環水素であってよいことが留意されるべきである。好ましくは、ライン(7)の水素は、補給水素である。工程b)から得られ、ライン(9)を介して排出された第1の脱硫流出物は、次いで、分離器(10)において冷却され、部分的に凝縮させられ、2相を生じさせる(工程c)):水素を豊富に含み、工程b)における脱硫によって生じたHSの一部を含有する気相(11)および溶解HS、未転化硫黄含有化合物および組み換え型メルカプタンを含有する液体炭化水素相HCN(12)。
【0073】
図1において見られ得るように、分離器(10)から抜き出された溶解HSを含む液体炭化水素相HCN(12)は、溶解HSの分離のための工程に送られる(工程c’))。図1の実施形態において、この工程c’)は、HSをストリップングするための塔(13)において行われる。溶解HSを含む液体炭化水素相HCN(12)は、ガス、例えば、ライン(15)を介してHSストリッピング塔(13)に供給される水素と接触させられ、そこから、ストリッピングガスおよびHSを含有するガス状の流れ(14)は頭部から抜き出され、塔底部から、溶解HS含有率が低い液体炭化水素相HCN(16)が抜き出される。ストリッピングガスが水素である場合、ガス流(14)は、有利には、HSから水素を分離するように処理されて、精製された水素の流れを生じさせるようにしてよく、精製された水素の流れは、水素化脱硫装置、例えば、第1の水素化脱硫装置(8)に再循環させられてよいことが留意されるべきである。HS除去工程のために、ストリッピング装置に置き換えて、例えば、アミンを用いる吸収デバイスを用いることも可能である。溶解HS含有率が低い液体炭化水素相HCN(16)は、好ましくは、C6留分(すなわち、好ましくは分子当たり6個以上の炭素原子を含有してよい炭化水素を含有するもの)であり、このものは、本方法の工程d)に従って、分画塔(17)に送られる。この分画塔(17)は、塔頂の中間ガソリン留分MCNと、第2の重質ガソリン留分HHCNとを分離するように構成され、この中間ガソリン留分MCNは、ライン(18)を介して抜き出され、第2の重質ガソリン留分HHCNは、ライン(19)を介して底部から抜き出される。軽質チオフェン性硫黄含有化合物(主としてチオフェンおよびメチルチオフェン)の高い転化率を提供するように工程b)が操作されることを考えれば、工程d)の分画の後に得られた中間ガソリン留分MCNは、少量のみの未転化チオフェン性硫黄含有化合物を含有する。分画工程d)のために、中間ガソリン留分MCNはまた、水素化脱硫工程b)の間に形成された流出物中に含有される組み換え型メルカプタンの大部分を不含有である。一般に、組み換え型メルカプタンは、それらが得られる元になるオレフィンの沸点より高い沸点を有する。例として、2-メチル-2ペンテン(高純度の場合に沸点は標準条件下に67℃である)は、5個の炭素原子を含有する組み換え型メルカプタン、例えば、2-メチル-2ペンタンチオール(沸点は、高純度の場合、標準条件下に125℃である)を形成することができる。この特性は、それ故に、工程d)において、硫黄含有率および組み換え型メルカプタン含有率が低い中間ガソリン留分MCNを生じさせるために用いられる。沸点が中間ガソリン留分MCNの沸点より高い前記組み替え型メルカプタンは、第2の重質ガソリン留分HHCNに同伴されるからである。
【0074】
中間ガソリン留分MCNを得るために、分画塔のための操作条件は、蒸留された重量の5%および95%に対応する温度の間の温度差(ΔT)が75℃以下、好ましくは20~65℃の範囲内である炭化水素留分を得るように調節される。中間ガソリン留分MCNの蒸留された重量の5%に対応する温度は、好ましくは50~80℃の範囲内であり、中間ガソリン留分MCNの蒸留された重量の95%に対応する温度は、好ましくは88~125℃の範囲内である。例として、中間ガソリン留分MCNの蒸留された重量の5%に対応する温度は、65℃±2℃に等しいか、または、60℃±2℃に等しいか、または、55℃±2℃に等しい。好ましくは、中間ガソリン留分MCNの蒸留された重量の95%に対応する温度は、120℃±2℃に等しいか、さらには115℃±2℃に等しい。蒸留された重量の5%および95%に対応する温度を決定するために用いられる方法は、文献:Oil Gas Sci. Technol. Vol. 54 (1999), No. 4, pp. 431-438に記載されており、名称「CSD法」は、「Conventional Simulated Distillation」の略記である。
【0075】
好ましい実施形態において、中間ガソリン留分MCNは、6または7個の炭素原子を含有する炭化水素、主として、6個の炭素原子を含有する炭化水素を必然的に含有する。
【0076】
典型的には、工程d)の分画塔の頭部において回収される中間ガソリン留分MCN中の全有機硫黄含有率は、全硫黄の30重量ppm未満、好ましくは15重量ppm未満、より好ましくは10重量ppm未満である。
【0077】
本方法の工程e)によると、第2の重質ガソリン留分HHCNは、水素化脱硫によって処理される。前記ガソリン留分は、ライン(19)を介して塔(17)の底部から抜き出されたものであり、このものは、ライン(23)を介して供給された水素と、少なくとも1基の水素化脱硫装置(24)において接触させられる。この選択的水素化脱硫工程e)は、それ故に、(水素化脱硫工程b)において形成された大部分の組み換え型メルカプタンを含む)重質ガソリン留分HHCNの硫黄含有化合物をHSおよび炭化水素に転化するために用いられてよい。選択的水素化脱硫工程e)は、ライン(23)を介して供給された水素および選択的水素化脱硫触媒の存在下に操作される。この選択的水素化脱硫触媒は、第VIII族(新周期律分類(Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition, 1995-1996)の8、9および10族)からの少なくとも1種の元素と、第VIb族(新周期律分類(Handbook of Chemistry and Physics, 76th edition, 1995-1996)の6族)からの少なくとも1種の元素と、担体とを含む。第VIII族からの元素は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択され、特には、コバルトである。第VIb族からの元素は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選択され、大いに好ましくはモリブデンである。触媒は、例えば、特許FR2840315、FR2840316、FR2904242またはFR3023184に記載されたような触媒であってよい。水素化脱硫反応は、一般的に、200~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で行われる。液体空間速度は、一般的に、0.5~20h-1の範囲内(触媒の容積当たりかつ時間当たりの液体の容積として表される)、好ましくは1~8h-1の範囲内である。H/HHCN留分の比は、所望の水素化脱硫度に応じて調節されるものであり、このものは、標準条件下の容積(m)当たり50~1000ノミナルmの範囲内である。
【0078】
好ましくは、温度は、200~400℃の範囲内、大いに好ましくは200~350℃の範囲内である。好ましくは、圧力は、0.5~3MPaの範囲内である。
【0079】
工程e)の終わりに、脱硫がなされた第2の重質ガソリン留分HHCNは、ライン(25)を介して選択的水素化脱硫装置から抜き出され、典型的には、30重量ppm未満、好ましくは15重量ppm未満、より好ましくは10重量ppm未満の有機硫黄含有率を有する。
【0080】
場合によっては、中間ガソリン留分MCN(18)も、水素化脱硫工程において処理される。この目的で、それは、ライン(20)を介して供給された水素および選択的水素化脱硫触媒と、少なくとも1基の水素化脱硫装置(21)において接触させられる(場合による工程f))。この水素化脱硫装置(21)は、触媒の固定床または移動床を有する少なくとも1基の反応器を含む。水素化脱硫反応は、一般的に、160~450℃の範囲内の温度、0.5~8MPaの範囲内の圧力で行われる。液体空間速度は、一般的に、0.5~20h-1の範囲内(触媒の容積当たりかつ時間当たりの液体の容積として表される)、好ましくは1~8h-1の範囲内である。H/中間ガソリン留分(MCN)の比は、所望の水素化脱硫度に応じて調節され、標準条件下の容積(m)当たり50~1000ノミナルmである。好ましくは、中間ガソリン留分MCNと水素との混合物は、場合による工程f)において触媒と接触させられ、この混合物は、全体的に、蒸気相にある。好ましくは、温度は、200~400℃の範囲内、より好ましくは200~350℃の範囲内である。好ましくは、圧力は、1~3MPaの範囲内である。工程f)において採用される触媒は、工程b)およびe)に用いられたタイプの触媒であってよい。ライン(20)を介して供給される水素は、補給水素または本方法の工程を起源とする再循環水素であってよいことが留意されるべきである。
【0081】
本方法は、水素化脱硫工程の間に形成されたHSと混合された軽質炭化水素フラクションC4と水素とを分離するために、ガソリン留分HHCNおよびMCNのそれぞれの水素化脱硫のための工程e)およびf)から得られた流出物の安定化の工程を含んでよい。図1の実施形態によると、ライン(22)からの脱硫済みの中間ガソリン留分MCNおよびライン(25)からの第2の重質ガソリン留分HHCNは、混合物として、ライン(26)を介して、安定化塔(27)に送られ、この安定化塔(27)から、HSと混合されたC4炭化水素フラクションが、ライン(28)を介して塔の頭部から抜き出され、脱硫済みガソリンMCNおよびHHCNの安定化済み混合物は、ライン(29)を介して塔の底部から抜き出される。
【0082】
あるいは、中間ガソリン留分MCN中に含有される残留チオフェン性硫黄含有化合物は、適切な極性溶媒により、液-液抽出方法または抽出蒸留方法で、または、実際に、適切な吸着剤(シリカ、アルミナ、ゼオライト、例えば、文献FR2889539 A1に記載されたもの)上への吸着によって抽出されてよい。
【0083】
本発明による方法によって生じた軽質ガソリン留分LCNと、脱硫済みガソリンMCNおよびHHCNの混合物とは、有利には、ガソリン燃料の配合のためのベースとして用いられる。
【0084】
図示されない別の実施形態によると、本方法は、液体炭化水素相HCN中に溶解したHSを分離するための工程c’)を採用しないが、工程d)の下流で、中間ガソリン留分MCNおよび第2の重質ガソリン留分HHCNを分離するための工程d’)を採用する。工程d’)は、工程d)において得られた中間ガソリン留分MCN中に存在するHSを除去することからなる。例として、工程d’)は、ガスによりストリッピングすることによってまたは安定化塔を採用することによって行われ、安定化塔は、塔の頭部からのC4炭化水素留分およびHSを含有する流れと、底部からの安定化中間ガソリン留分MCNとを分離する。
【0085】
図2は、別の実施形態による方法のためのフロー図である。この実施形態は、工程c’)およびd)を行う方法によって、図1の実施形態とは区別される。図2を参照して、工程c)から得られた溶解HSを含む液体炭化水素相HCNは、ライン(12)を介して、分画塔(30)に送られる。分画塔(30)は、連続的に工程c’)およびd)を行うように設計されかつ操作され、以下のものを分離する:
・ 気相;HSを必然的に含有する;ライン(14)を介して塔(30)の頭部から抜き出される;
・ 中間ガソリン留分MCN(18);側流として塔頭部下の複数プレートから抜き出される;
・ 第2の重質ガソリン留分HHCN(19);塔の底部から抜き出される。
【0086】
塔(30)は、場合によっては、HSの分離を改善するためにライン(15)を介して、ストリッピングガス、例えば水素を供給されてよい。
【0087】
中間ガソリン留分MCN(18)は、次いで、図1において既に指し示されたように水素化脱硫反応器において処理されてよく(場合による工程f))、次いで、単独でまたは工程e)から得られた脱硫済みの第2の重質ガソリン留分HHCNとの混合物として安定にされてよい。
【0088】
図3は、本発明による方法の代替の実施形態を示し、工程c’)およびd)は、以下を分離するように構成された分画塔(31)において連続して行われる:
・ 気相;中間ガソリン留分MCNの炭化水素およびHSを含有する;塔の頭部から抜き出される(ライン(32));
・ 第2の重質ガソリン留分HHCN(溶解HS含有率は低い);ライン(19)を介して塔の底部から抜き出される。
【0089】
気相(32)は、次いで、中間ガソリン留分MCNを凝縮させるように冷却される。この目的で、前記気相(32)は、冷却機装置(33)を用いて冷却され、冷却された流出物は、次いで、分離器ドラム(34)に送られ、気体流(35)と、ドラムの底部からの液体炭化水素相(18)とが回収される。この気体流(35)は、水素およびHSを必然的に含有し、場合によっては、軽質炭化水素を伴い、液体炭化水素相(18)は、中間ガソリン留分MCNに対応する。図3に指し示されるように、中間ガソリンMCN(18)の一部は、還流液として分画塔(31)に再循環させられる。中間ガソリンMCNの他の部分は、(場合による工程f)において)水素化脱硫されるか、または、簡単に安定化させられてよい。中間ガソリン留分MCNの安定化のための工程(脱硫その他)は、塔(27)において脱硫済みの第2の重質ガソリン留分HHCNとの混合物として操作されてよい。
【0090】
(実施例1:選択的水素化によるFCCガソリン供給原料の予備処理)
表1には、本発明の図1による方法を用いて処理されるFRCNガソリンの特徴が提供される。
【0091】
FCCガソリン(ライン(1))は、触媒Aの存在下に選択的水素化反応器(2)において処理された(場合による工程)。触媒Aは、ガンマアルミナ上担持NiMoタイプのものであった。金属の各量は、全触媒重量に対してNiO 7重量%およびMoO 11重量%であり、すなわち、Ni/Moのモル比は1.2であった。触媒の比表面積は、230m/gであった。それを用いる前に、触媒Aは、大気圧において硫化バンク上で、15容積%のHSによって構成されるHS/H混合物下に、1L/g・h(触媒)で、400℃で2時間にわたって硫化された。この手順は、80%超の硫化度を得るために用いられ得た。
【0092】
FRCNガソリン(ライン(1))は、水素と、反応器において接触させられた。この反応器は、触媒Aを含有していた。本方法のこの工程により、供給原料中に存在するジオレフィンの選択的水素化およびメルカプタン化合物(RSH)の一部の転化(分子量の増大)が行われた。ジオレフィン含有率は、MAV(Maleic Anhydride Value)についての値に直接的に比例していた。ジオレフィンは、望まれない化合物である。それらが、ガソリン中のガム状物の前駆体であるからである。
【0093】
選択的水素化反応器において採用される操作条件は、以下の通りであった:温度:140℃、全圧:2.5MPa、加えられたH/FRCNガソリン供給原料の容積比:ガソリンの容積(リットル)当たり水素5ノルマルリットル(vol/vol)、毎時空間速度(VVH):3h-1
【0094】
【表1】
【0095】
選択的水素化工程からの流出物(3)は、共役ジオレフィン含有率(MV=0.6mg/g)が低くかつ軽質硫黄含有化合物含有率(分子量は、選択的水素化工程において増加させられる)が低く、このものは、分画塔(4)に送られ、本発明の工程a)に従って、塔の頭部における軽質ガソリンLCN(5)と、塔の底部からの第1の重質ガソリン留分HCN(6)とが分離された。軽質ガソリンLCNおよび第1の重質ガソリン留分HCNの特徴は、表2において指し示される。表2に指し示されるように、得られたLCNガソリン(ライン(5))の硫黄含有率は低かった(15ppm)。第1の重質ガソリン留分HCNは、FRCNガソリンの約68重量%に対応しており、非常に高い硫黄含有率を有しており(1430ppm)、ガソリンプールに組み入れられる前に補足処理を必要とされた。
【0096】
【表2】
【0097】
(実施例2(比較):第1の重質ガソリン留分HCNの水素化脱硫)
この実施例は、従来技術の参照となる(特許EP1174485)。実施例1において得られた第1の重質ガソリン留分HCNは、水素と混合され、選択的水素化脱硫装置(8)において処理された。これは、第1の水素化脱硫工程に対応していた。第1の水素化脱硫工程は、アルミナ上担持CoMo触媒(Axensによって販売されるHR806)の存在下に行われた。圧力は、2MPaであり、液体毎時空間速度(触媒の容積当たりかつ時間当たりの液体の容積として表される)は、4h-1であり、H/HCN留分の比は、標準条件下の容積(m)当たり360ノルマルmであった。反応器からの流出物は、次いで、凝縮させられ(10)、水素によりストリップングされ(13)、溶解HSが抽出された。HS含有率が低い液体炭化水素相HCN(ライン(16))の有機硫黄含有率およびオレフィン含有率は、表3に指し示される。
【0098】
S含有率が低い液体炭化水素相HCN(16)は、次いで、第2の選択的水素化脱硫装置(24)において処理され、これは、第2の水素化脱硫工程に対応していた。この工程は、アルミナ上担持CoMo触媒(Axensによって販売されるHR806)の存在下に行われた。圧力は、2MPaであり、液体空間速度(触媒の容積当たりかつ時間当たりの液体の容積として表される)は、4h-1であり、H/HCN留分の比は、標準条件下の容積(m)当たり360ノルマルmであった。反応器からの流出物は、例えば、安定化塔に送られ得、塔の頭部からの、場合によっては軽質炭化水素を伴う、水素およびHSと、塔底部からの第2の水素化脱硫工程から得られた炭化水素留分HCNとが回収された。水素化脱硫および安定化のための第2の工程の後に得られたHCNの特徴は、表3において示される。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
実施例2による方法は、硫黄含有率が低いHCNガソリンを得るために用いられ得た(15重量ppm)。第1の重質ガソリン留分HCNと、第2の水素化脱硫工程の後に得られた安定化ガソリンとの間のオレフィンの損失は、7.8重量%(絶対的)であった。
【0102】
(実施例3:第1の重質ガソリン留分HCNの水素化脱硫(本発明に合致する))
この実施例は、本発明の参照をなす。実施例1において得られた第1の重質ガソリン留分HCNは、水素と混合され、選択的水素化脱硫装置(8)において処理された。これは、本発明の工程b)に対応していた。水素化脱硫工程b)は、アルミナ上担持CoMo触媒(Axensによって販売されるHR806)の存在下に行われた。圧力は2MPaであり、液体空間速度(触媒の容積当たりかつ時間当たりの液体の容積として表される)は、4h-1であり、H/HCN留分の比は、標準条件下の容積(m)当たり360ノルマルmであった。反応器(8)からの流出物は、次いで、(本発明の工程c)により)凝縮させられて、水素および硫化水素が蒸気相中に除去された。溶解HSを含む液体炭化水素相HCNは、図1のストリッピング塔(13)によって例示されるストリッピング工程(本発明による工程c’))に送られた。ストリッピングガスおよびHSを含有するガス流(14)は、塔の頭部から抜き出され、溶解HS含有率が低い液体炭化水素相HCN(16)は、塔の底部から抜き出された。
【0103】
溶解HS含有率が低く(かつ、工程b)において少なくとも部分的に水素化脱硫されていた)液体炭化水素相HCNは、分画塔(17)に送られた(本発明による工程d))。塔は、塔頂の中間ガソリン留分MCNと、第2の重質ガソリン留分HHCNとを分離するように構成されていた。中間ガソリン留分MCNは、ライン(18)を介して塔頂から抜き出され、第2の重質ガソリン留分HHCNは、ライン(19)を介して底部から抜き出された。分画塔の操作は、中間ガソリン留分MCNについての蒸留された重量の95%における温度が102℃±5℃であるMCN留分を得るように調節された(温度は、文献:Oil Gas Sci. Technol. Vol. 54(1999), No. 4, pp. 431-438に記載されたCDS法を用いて測定された)。分画塔の操作はまた、塔の底部から、蒸留された重量の5%の温度が102℃±5℃である第2の重質ガソリン留分HHCNを得るように調節された(温度は、文献:Oil Gas Sci. Technol. Vol. 54(1999), No. 4, pp. 431-438に記載されたCDS法を用いて測定された)。
【0104】
第2の重質ガソリン留分HHCN(19)は、水素と混合され、本発明の工程e)に従って選択的水素化脱硫装置(24)において処理された。水素化脱硫工程e)は、アルミナ上担持CoMo触媒(Axensによって販売されるHR806)の存在下に行われた。圧力は2MPaであり、液体毎時空間速度(触媒の容積当たりかつ時間当たりの液体の容積として表される)は、4h-1であり、H/HCN留分の比は、標準条件下の容積(m)当たり360ノルマルmであった。脱硫済みの第2の重質ガソリン留分HHCNは、工程e)の後に安定にされた。
【0105】
中間ガソリン留分MCN(18)、第2の重質ガソリン留分HHCN(19)および脱硫済みの第2の重質ガソリン留分HHCN(安定化後)の特徴は、表5に指し示される。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
それ故に、本発明による方法は、安定化の後の、有機硫黄含有率が低い(15ppm)中間ガソリン留分MCNと、安定化の後の、有機硫黄含有率が低い(15ppm)第2の脱硫済み重質ガソリン留分HHCNとを得るために用いられ得る。実施例1において得られた軽質ガソリンLCNと共に、これらのガソリンは、ガソリンプールにおいて車両燃料の配合のために品質向上させられ得る。
【0109】
大いに有利には、第1の重質ガソリン留分HCNの混合物および中間ガソリン留分MCNの混合物および脱硫済みおよび安定化済みの第2の重質ガソリン留分HHCNガソリン(本発明の実施例3による)は、硫黄含有率が低い(15ppmS)ガソリンを生じさせるために用いられ得る一方で、同時に、第2の脱硫工程の後の脱硫済み重質ガソリンHCN(比較例2において提示される)と比較して絶対的オレフィン損失を低減させる。実際に、実施例2において、第1の重質ガソリン留分HCNと第2の水素化脱硫工程の後に得られたガソリンとの間の(重量%としての)オレフィンの損失は、7.8%であり、本発明による実施例3において、第1の重質ガソリン留分HCNと中間ガソリン留分MCNおよび脱硫済みかつ安定化済みの第2の重質ガソリン留分HHCNの混合物との間のオレフィンの損失は、6.6%であった。それ故に、本発明による実施例3は、第1の重質ガソリン留分中に存在するオレフィンに対して15%を保つために用いられ得る一方で、同時に、硫黄含有率が低い(15ppm)ガソリンを生じさせる。第1の重質ガソリン留分HCN中に存在するオレフィンの保持は、生じたガソリンのオクタン価に肯定的な影響力を有する。
【符号の説明】
【0110】
2 選択的水素化触媒反応器
4 分画塔
8 水素化脱硫装置
10 分離器
13 HSストリッピング塔
17 分画塔
24 水素化脱硫装置
27 安定化塔
図1
図2
図3