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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/04 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
A47C3/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017190943
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019063203
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】池田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】上田 伸行
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-149834(JP,A)
【文献】特開2002-136380(JP,A)
【文献】実開昭49-100851(JP,U)
【文献】特開2015-084791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0164744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座を支持し得る支持フレームと、床面に当接し得る床当接面を有し前記支持フレームの下端に取り付けられ使用状態において前記支持フレームと前記床面との間に位置するスペーサと備えてなり、同一構造をなす他の椅子を上下方向にスタッキング可能に構成した椅子であって、
前記支持フレームが、左右に対をなし前後方向に延びてなるベースフレーム部と、これらベースフレーム部の前端部に立設された前脚フレーム部とを備えてなるものであり、
前記スペーサが、前記ベースフレーム部の前下面ねじにより取り付けられたものであり、且つ、前端部内面側に凹陥部を有しているものであり、
前記凹陥部が、スタッキング時において他の椅子における前脚フレーム部の一部を位置させ得る収容空間を形成したものである椅子。
【請求項2】
前記床当接面が、メイン当接面構成部と、このメイン当接面構成部よりも幅狭に設けられた延長当接面構成部とを備えている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記凹陥部が、側面視において前傾した凹陥部形成面を有している請求項1又は2記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィス等において好適に使用される椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、座を支持し得る支持フレームと、床面に当接し得る床当接面を有し支持フレームに取り付けられたスペーサと備えてなり、同一構造をなす他の椅子を上下方向にスタッキング可能に構成した椅子が種々知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来のスペーサは、単純なブロック形状をなしているものが一般的であった。また、特殊な形状部分を有している従来のスペーサとしては、例えば、左右に隣接した他の椅子との連結を行い得る形状を有したものが存在している。
【0004】
ところが、従来のスペーサは、同一形状をなす他の椅子を上下方向にスタッキングする際に、他の椅子における支持フレームのベースフレーム部上に載置するだけのものとなっており、他の椅子に対しての格別な位置決め機能を発揮し得るものとはなっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-016033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、同一形状をなす他の椅子とのスタッキングを好適に行い得るスペーサを備えてなる椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0008】
請求項1に記載の発明は、座を支持し得る支持フレームと、床面に当接し得る床当接面を有し前記支持フレームの下端に取り付けられ使用状態において前記支持フレームと前記床面との間に位置するスペーサと備えてなり、同一構造をなす他の椅子を上下方向にスタッキング可能に構成した椅子であって、前記支持フレームが、左右に対をなし前後方向に延びてなるベースフレーム部と、これらベースフレーム部の前端部に立設された前脚フレーム部とを備えてなるものであり、前記スペーサが、前記ベースフレーム部の前下面ねじにより取り付けられたものであり、且つ、前端部内面側に凹陥部を有しているものであり、前記凹陥部が、スタッキング時において他の椅子における前脚フレーム部の一部を位置させ得る収容空間を形成したものである椅子である。
【0009】
請求項に記載の発明は、前記床当接面が、メイン当接面構成部と、このメイン当接面構成部よりも幅狭に設けられた延長当接面構成部とを備えている請求項1記載の椅子である。
【0010】
請求項に記載の発明は、前記凹陥部が、側面視において前傾した凹陥部形成面を有している請求項1又は2記載の椅子である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、同一形状をなす他の椅子とのスタッキングを好適に行い得るスペーサを備えてなる椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における斜視図。
図3】同実施形態における正面図。
図4】同実施形態における背面図。
図5】同実施形態における右側面図。
図6】同実施形態における平面図。
図7】同実施形態における底面図。
図8図3におけるX-X線断面図。
図9図8における部分拡大断面図。
図10】同実施形態における分解斜視図。
図11】同実施形態における分解斜視図。
図12】同実施形態における斜視図。
図13】同実施形態における底面図。
図14】同実施形態における右側面図。
図15】同実施形態におけるスペーサの説明用の拡大図。
図16】同実施形態におけるスペーサの説明用の斜視図。
図17】同実施形態における分解斜視図。
図18】同実施形態における分解斜視図。
図19】同実施形態における背凭れ(背板)の正面図。
図20図19におけるY部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図1~20を参照して説明する。
【0014】
この実施形態は、本発明を、オフィスや会議室や教育施設等において好適に使用される椅子Aに適用したものである。この椅子Aは、図14~16に示すように、同一形状をなす他の椅子Aを上下方向にスタッキング可能に構成したものである。
【0015】
椅子Aは、支持フレームBに座Eを支持させるとともに支持フレームBに背凭れFを支持させているものである。支持フレームBの下端には、使用状態において支持フレームBと床面との間に位置するスペーサたる前スペーサCと後スペーサDが設けられている。
【0016】
支持フレームBは、左右に対をなし床面と略平行に前後方向に延びてなるベースフレーム部g1と、ベースフレーム部g1の前端部に立設された前脚フレーム部g2と、ベースフレーム部g1の後端部に立設された後脚フレーム部g3と、前脚フレーム部g2の上端部と後脚フレーム部g3の上端部間に架設された側座受フレーム部g4と、側座受フレーム部g4の前端部間を繋ぐ前横架フレーム部Hと、側座受フレーム部g4の後端部間を繋ぐ横架フレーム部たる後横架フレーム部Iと、後脚フレーム部g3の上端部から上方に延設された背支持フレーム部たる外背支持フレーム部Jと、側座受フレーム部g4の後端部から外背支持フレーム部Jに沿うように上方に延設された内背支持フレーム部Kとを備えてなるものである。
【0017】
外背支持フレーム部J、後脚フレーム部g3、ベースフレーム部g1、前脚フレーム部g2、側座受フレーム部g4、及び、内背支持フレーム部Kは、この順番で、一本の金属製パイプ材により連続して形成されている。換言すれば、支持フレームBは、外背支持フレーム部J、後脚フレーム部g3、ベースフレーム部g1、前脚フレーム部g2、側座受フレーム部g4、及び、内背支持フレーム部Kを一体に設けてなるものである。
【0018】
左右に対をなして配設された後脚フレーム部g3、ベースフレーム部g1、前脚フレーム部g2、及び、側座受フレーム部g4は、左の脚要素Gと右の脚要素Gを構成している。これら左右の脚要素G間を繋いでいる前横架フレーム部H、及び、後横架フレーム部Iは、金属板により形成されている。
【0019】
ベースフレーム部g1の前端部下面には、スペーサである前スペーサCがねじv1により取り付けられている。ベースフレーム部g1の後端部下面には、後スペーサDがねじv2により取り付けられている。
【0020】
左右に対をなして配設されている前脚フレーム部g2の離間距離は、同一形状をなす他の椅子Aとのスタッキングを可能とするために、左右に対をなして配されている後脚フレーム部g3の離間距離よりも短く設定されている。前脚フレーム部g2は、ベースフレーム部g1の前端部から連設され正面視において内向きに傾斜して延びた下前脚フレーム部分g21と、下前脚フレーム部分g21の上端から上方に向かって略鉛直に延びた上前脚フレーム部分g22とを備えている。
【0021】
側座受フレーム部g4は、座Eを支持するべく座Eにおける側座枠部11の下面に添接し得る形状をなしている。側座受フレーム部g4は、側面視において緩やかなS字形状をなしている。側座受フレーム部g4は、前から順に、第一の前傾フレーム部分g41、後傾フレーム部分g42、及び、第二の前傾フレーム部分g43を備えてなる。
【0022】
第一の前傾フレーム部分g41は、座枠1における側座枠部11の第一の前傾部分111の下面に添接し得るものである。後傾フレーム部分g42は、座枠1における側座枠部11の後傾部分112の下面に添接し得るものである。第二の前傾フレーム部分g43は、座枠1における側座枠部11の第二の前傾部分113の下面に添接し得るものである。
【0023】
前横架フレーム部Hは、左右方向中間部が上向きコ字状に形成された金属板により構成されたものであり、座枠1の前座枠部12の下面側に嵌合し当該前座枠部12を下側から支持し得るものである。前横架フレーム部Hは、その左右端部近傍に座枠1を止着するためのねじv3が挿通し得るねじ挿通孔h1を有している。前横架フレーム部Hの左右端は、溶接により側座受フレーム部g4の前端部に取り付けられている。
【0024】
後横架フレーム部Iは、座枠1の後座枠部13を下側から支持し得るものである。後横架フレーム部Iは、左右の側座受フレーム部g4の後端部間を繋いでいる。後横架フレーム部Iは、平面視又は底面視において後方に向かって凸をなすように湾曲した形状をなしている。後横架フレーム部Iは、上下面を有し前傾した姿勢をなす後横架フレーム部本体i1と、後横架フレーム部本体i1の後端縁から一体に立設された起立フレーム部分i2とを備えている。
【0025】
後横架フレーム部本体i1は、その左右端部近傍に座枠1を止着するためのねじv4が挿通し得る上下方向に貫通したねじ挿通孔i11を有している。起立フレーム部分i2は、その左右端部近傍に背板Lを止着するための背凭れ用止着具たるねじv5が挿通し得る前後方向に貫通したねじ挿通孔i22を有している。起立フレーム部分i2のねじ挿通孔i22は、当該起立フレーム部分i2の左右端部近傍において上向きに突出した凸部i21に設けられている。後横架フレーム部Iの左右端は、溶接により側座受フレーム部g4の後端部に取り付けられている。
【0026】
前スペーサC、及び、後スペーサDは、座E及び背凭れFを支持した支持フレームBを床面に対して安定支持させるためのものである。前スペーサC、及び、後スペーサDは、合成樹脂により形成されたブロック状のものである。前スペーサC、及び、後スペーサDの外側面c3、d3は、側面視において略台形状をなし且つ面一に形成されている。前スペーサC、及び、後スペーサDの最大幅寸法は、ベースフレーム部g1の幅寸法よりも大きく、且つ、ベースフレーム部g1の幅寸法の1.2倍以下の大きさに設定されている。
【0027】
前スペーサCは、使用状態において床面に当接し得る床当接面c2を有している。前スペーサCは、支持フレームBにおけるベースフレーム部g1の前部にねじv1により取り付けられている。前スペーサCは、その前端部内面側に凹陥部c1を有している。前スペーサCには、上下方向に貫通したねじ挿通孔c4を備えている。
【0028】
床当接面c2は、前スペーサCの下面をなすものである。床当接面c2は、後部に設けられたメイン当接面構成部c21と、メイン当接面構成部c21の前に位置し当該メイン当接面構成部c21よりも幅狭に設けられた延長当接面構成部c22とを備えている。
【0029】
凹陥部c1は、スタッキング時において他の椅子Aにおける支持フレームBの一部を位置させ得る収容空間spを形成したものである。凹陥部c1は、側面視において前傾した凹陥部形成面c11を有している。この凹陥部形成面c11は、スタッキング時において、同一構造をなす他の椅子Aの前脚フレーム部g2における下端部の一部に当接し得るようになっている。すなわち、前スペーサCの凹陥部c1に形成された凹陥部形成面c11は、他の椅子Aにおける前脚フレーム部g2の下前脚フレーム部分g21の上面に当接し、スタッキング時における椅子Aと他の椅子Aとの相対位置を位置決めし得るようになっている。
【0030】
前スペーサCは、外側面が略長方形をなし、前端から後端まで全面が段差や凹部のない平面状をなしている。前スペーサCは、全体形状が直方体をベースにしており、その範囲内で前端部内面側から床当接面c2に至る凹陥部c1を有している。しかして、同一形状をなす椅子Aを上下方向に複数積み重ねたときに、下の椅子Aの前脚フレーム部g2が上の椅子Aの前スペーサCの凹陥部c1に嵌合するように位置するものとなっている。前スペーサCは、ベースフレーム部g1の延伸方向に沿った直方体をなしている。つまり、前スペーサCは、ベースフレームg1から外方に向けて大きく張り出したものとはなっていないため、椅子A全体をコンパクトにすることができる。
【0031】
なお、支持フレームBの安定性(例えば、前方への傾動に対する安定性)を考慮した場合、前スペーサCは、できるだけ支持フレームBの前側に取り付けることが好適である。また、前スペーサCと後スペーサDとの間隔はできるだけ広くとることが好適である。その一方で、前スペーサCの位置を支持フレームBの前側に過度に及ばせようとした場合には、スタッキング状態において、下に位置する他の椅子Aの前脚フレーム部g2と干渉してしまうという不具合が生じ得る。この実施形態の前スペーサCは、前端部内面側の一部に凹陥部c1を形成することにより、かかる不具合を解消したものとなっている。
【0032】
座Eは、支持フレームBに支持されたものである。座Eは、略四角枠状をなす座枠1とこの座枠1内に張設された張地2とを有したものである。座枠1及び張地2は熱圧成型により一体化されている。
【0033】
座枠1は、前後方向に延びた左右の側座枠部11と、この左右の側座枠部11の前端間を繋ぐ左右方向に延びた前座枠部12と、左右の側座枠部11の後端間を繋ぐ後座枠部13とを備えてなるものである。
【0034】
左右の側座枠部11は、支持フレームBの側座受フレーム部g4によって下側から支持されるものである。左右の側座枠部11は、側座受フレーム部g4の形状に沿うように側面視において緩やかなS字形状をなしている。すなわち、左右の側座枠部11は、前端部に位置してなり側面視において前傾した姿勢をなす第一の前傾部分111と、この第一の前傾部分111の後端から連設され側面視において後傾した姿勢をなす後傾部分112と、この後傾部分112の後端から連設され側面視において前傾した姿勢をなす第二の前傾部分113とを備えている。
【0035】
第一の前傾部分111は、側座受フレーム部g4の第一の前傾フレーム部分g41に下側から支持される。後傾部分112は、側座受フレーム部g4の後傾フレーム部分g42に下側から支持される。第二の前傾部分113は、側座受フレーム部g4の第二の前傾フレーム部分g43に下側から支持される。
【0036】
また、図7及び図10に示すように、左右の側座枠部11の下面には、底面視において略矩形状をなすとともに正面視及び背面視において略L字状をなす引き寄せ部材11aがねじv6により取り付けられている。引き寄せ部材11aは、その外方端部が側座受フレーム部g4の下面に係わり合い、ねじv6を左右の側座枠部11に螺着することにより左右の側座枠部11と側座受フレーム部g4とを引き寄せるようにしてある。
【0037】
前座枠部12は、左右の側座枠部11の前端間に架け渡されている。前座枠部12は、支持フレームBの前横架フレーム部Hに下側から支持される。
【0038】
後座枠部13は、後横架フレーム部Iに下側から支持されるものである。後座枠部13は、その後端縁に下方に向けて突出させた垂下壁131を備えている。後座枠部13の左右両端部には、外背支持フレーム部J、内背支持フレーム部K、及び、背板Lにおける左右の延出部Nを配設するための切欠部132が設けられている。
【0039】
座Eは、背板Lを支持フレームBの後横架フレーム部Iに止着する背凭れ用止着具たるねじv5を隠蔽し得るものとなっている。すなわち、座Eにおける座枠1の後座枠部13が、背板Lを後横架フレーム部Iにねじ止めするためのねじv5を外部から視認し難いように覆い得るものとなっている。
【0040】
本実施形態に示す椅子Aは、座Eの一部である後座枠部13が、背凭れFの背板Lに一体に形成された突出部6の上を覆うように配されている。そして、椅子Aは、支持フレームBに背板Lを取り付けた後に、当該支持フレームBに座Eを取り付けている。椅子Aは座Eを外さない限り背板Lは外れないものとなっている。換言すれば、この実施形態における椅子Aは、背板Lの一部である突出部6、及び、突出部6のねじ挿通孔61を挿通するねじv5を隠蔽し得る座Eを備えている。しかして、座Eは、背板Lを支持フレームBから外すことなく、座Eのみを独立して、支持フレームBから無理なく離脱させることができるものとなっている。
【0041】
張地2は、座枠1に張り設けられたシート状をなしている。張地2は可撓性を備えた織物により構成されており、それ自体では保形性を有しないものとなっている。張地2は、その周縁が座枠1に支持されている。換言すれば、張地2は、座枠1によって囲まれた領域に配設されている。
【0042】
張地2は、前後方向の張力すなわち前座枠部12と後座枠部13とを相寄る方向に引っ張る力よりも左右方向の張力すなわち左右の側座枠部11同士を相寄る方向に引っ張る力が強くなるように設定されている。より具体的に言えば、張地2は、左右方向に延びてなる複数の緯糸(図示せず)と、前後方向に延びてなり緯糸とは弾力特性が異なる複数の経糸(図示せず)を備えてなるものである。張地2は、緯糸の弾力特性が経糸の弾力特性よりも高く設定されている。
【0043】
張地2の後部は、後方に向かって漸次上側に位置するように設定された弾性変形可能な着座面である後着座面23を形成している。張地2における前後方向中央部は、後方に向かって漸次下側に位置するように設定された弾性変形可能な着座面である中央着座面22を形成している。張地2における前部は、後方に向かって漸次上側に位置するように設定された弾性変形可能な前着座面21を形成している。
【0044】
つまり、座枠1の側座枠部11において第一の前傾部分111間に支持されている張地2の前部が前着座面21を構成しており、座枠1の側座枠部11において後傾部分112間に支持されている張地2の前後方向中央が中央着座面22を構成しており、座枠1の側座枠部11において第二の前傾部分113間に支持されている張地2の後部が後着座面23を構成している。なお、図9においては、張地2の断面を把握しやすいように太線で示している。
【0045】
この実施形態における座枠1に支持された張地2は、当該張地2のみによって、いわゆる三次元的に隆起した形態を採り得るものとなっている。換言すれば、張地2は、その周端縁よりも内側の部位に対して他の部材による外力を加えられることなく三次元的に隆起した形態を採り得るものとなっている。つまり、張地2全体は側面視において張地2を支持する側座枠部11の形状に追従して側面視においてS字状に起伏する形態をなしている。これに加えて、張地2における前後方向と左右方向の張力を相違させることにより、張地2の左右方向中央部分におけるS字状の起伏の程度は、それよりも側座枠部11に近い位置におけるS字状の起伏の程度よりも緩やかに設定されている。
【0046】
背凭れFは、合成樹脂により形成された背板Lを備えたものである。
【0047】
背板Lは、前面側に背凭れ面を形成した本体部Mと、この本体部Mから下方に突設された左右の延出部Nとを備えたものである。
【0048】
本体部Mは、前後方向に貫通した複数の孔pが形成された背板本体3と、この背板本体3の左右に配設された上下に延びる縦背支持部4とを備えてなるものである。
【0049】
背板本体3は略矩形状をなしている。背板本体3には前後方向に貫通した複数の孔pが設けられている。背板本体3に形成された複数の孔pは正面視において略矩形状をなしている。より具体的に言えば、複数の孔pは正面視において略正方形状をなしている。
【0050】
なお、この明細書における「略正方形」には、四辺が外方または内方に凸をなすように若干湾曲してなるものを含むものとする。
【0051】
背板本体3は、着座者の背中を支持し得る主要部を構成するものである。背板本体3は、上側に向かって漸次厚み寸法が短くなるように形成されている。背板本体3は、図20に示すように、上下方向に隣接し合う孔pの間に、縦背支持部4間を繋ぎ左右方向に略直線状に延びた横帯部分31を備えている。横帯部分31は、背板本体3における上下端部33、34を除く略全域において上下方向に複数並び配されている。
【0052】
なお、図20において、横帯部分31の把握の便宜のため、横帯部分31に該当する領域上に直線状の一点鎖線を示している。
【0053】
背板本体3は、図19に示すように、左右方向に隣接し合う孔pの間に、当該背板本体3の上下端部33、34間を繋ぐように上下方向に略直線状に延びた縦帯部分32を備えている。縦帯部分32は、背板本体3における左右端部領域3aにのみ左右方向に複数並び配されている。
【0054】
なお、図20において、縦帯部分32の把握の便宜のため、縦帯部分32に該当する領域上に直線状の一点鎖線を示している。
【0055】
背板本体3の中央領域3bに設けられた孔pの幅寸法は、図19に示すように、中央領域3bの外周域に位置する周縁領域3cに設けられた孔pの幅寸法よりも大きく設定されている。すなわち、背板本体3に設けられた孔pの大きさは、中央領域3bから周縁領域3cに向かって、漸次小さくなるように設定されている。
【0056】
略同一高さ位置に左右方向に直線状に並び配された複数の孔pは、隣り合う孔pの中心点間の距離が周縁領域3cに向かうほど大きくなるように背板本体3に設けられている。換言すれば、左右方向に直線状に並び配された複数の孔pのピッチは、中央領域3bから周縁領域3cに向かうほど大きくなるように設定されている。左右方向に直線状に並び配された複数の孔pの中心点同士を結んでなる仮想線ksは、正面視において上下方向に平行且つ略等間隔をなすように設定されている。
【0057】
上下に最も近接して隣り合う一方の孔pと他方の孔pが、中心点が鉛直方向に一致しないように背板本体3に設けられている。
【0058】
左右の縦背支持部4は、背板本体3を挟むように左右に配設されている。左右の縦背支持部4は背板本体3を支持し得る剛性を保持したものであり、前後方向に貫通する孔は設けられていない。左右の縦背支持部4の下端には、下方に向けて突出する左右の延出部Nが一体に設けられている。
【0059】
左右の延出部Nは、内部に上下方向に穿設され外背支持フレーム部J及び内背支持フレーム部Kが収容される図示しない収容部を有した柱状の外観をなす延出部本体5と、延出部本体5の下端部から内方に突設された突出部6と、延出部本体5の下端部から前方に突設された鍔部7を備えてなる。
【0060】
突出部6は、板状をなしており延出部本体5の下端部から後横架フレーム部Iにおける起立フレーム部分i2の背面側に沿うように突設されている。すなわち、左右の突出部6は、突片状のものである。左右の突出部6は、その中央部に背凭れ用止着具であるねじv5が挿通し得る前後方向に貫通した止着具挿通孔たるねじ挿通孔61が形成されている。
【0061】
鍔部7は、側座受フレーム部g4の後端部上に位置しているものである。鍔部7は、座Eの切欠部132を臨む側座枠部11の後端部によって上側から被覆されるようになっている。つまり、鍔部7は、支持フレームBと座Eとの間に挟まれ得る位置に配されている。
【0062】
背板Lは、起立姿勢をなす外背支持フレーム部J、及び、起立姿勢をなす内背支持フレーム部Kに外嵌して支持フレームBに支持されている。また、背板Lは、外背支持フレーム部J、及び、内背支持フレーム部Kから抜け出ないように、支持フレームBを構成する左右方向に延びた後横架フレーム部Iに対してねじv5により止着されている。この実施形態では、ねじv5は、座Eの一部分である後座枠部13によって隠蔽されており座面よりも上方から見た場合、すなわち、使用者が通常採り得る姿勢で見た場合に視認不可能となっている。椅子Aは、斜め上方から視認されやすいものであり、外観の良さを向上させるためには後斜め上方からの外観を気にする必要がある。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子Aは、座Eを支持し得る支持フレームBと、床面に当接し得る床当接面c2を有し支持フレームBに取り付けられたスペーサたる前スペーサCと備えている。そして、椅子Aは、同一構造をなす他の椅子Aを上下方向にスタッキング可能に構成したものである。支持フレームBが、左右に対をなし前後方向に延びてなるベースフレーム部g1と、これらベースフレーム部g1の前端部に立設された前脚フレーム部g2とを備えてなるものであり、前スペーサCが、ベースフレーム部g1の前部に取り付けられたものであり、且つ、前端部内面側に凹陥部c1を有している。このため、同一形状をなす他の椅子Aとのスタッキングを好適に行い得る前スペーサCを有した椅子Aを提供することができるものとなる。つまり、前スペーサCがその前端部内面側に凹陥部c1を有しているものであるため、その凹陥部c1と他の椅子Aにおける前脚g2とを係わり合わすことにより、上下方向のスタッキングを良好に実現し得るものとなっている。
【0064】
前スペーサCの凹陥部c1が、スタッキング時において他の椅子Aにおける前脚フレーム部g2の一部を位置させ得る収容空間spを形成したものである。このため、スタッキング効率に優れるとともに他の椅子Aとの位置決めを好適に行い得る前スペーサCを有した椅子Aを提供することができるものとなっている。
【0065】
床当接面c2が、メイン当接面構成部c21と、このメイン当接面構成部c21よりも幅狭に設けられた延長当接面構成部c22とを備えている。このため、前スペーサCは、凹陥部c1を設けた構成でありながら、床当接面c2が床面に対して適切に設置し得るものとなっているため支持フレームBに支持された座E及び背凭れFを好適に支持し得るものとなっている。
【0066】
凹陥部c1が、側面視において前傾した凹陥部形成面c11を有している。このため、凹陥部形成面c11がスタッキング時において同一形状をなす他の椅子Aの前脚g2に当接し得るものとなるため、スタッキング時における前後方向の位置決めを好適に実現し得るものとなっている。
【0067】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0068】
椅子は、必ずしも背凭れを備えてなるものには限られない。換言すれば、椅子は背凭れを有していないものであってもよい。
【0069】
スペーサは、前スペーサに限られるものではない。例えば、スペーサが、各ベースフレーム部に取り付けられる単一のものであってもよい。
【0070】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
A…椅子
B…支持フレーム
C…前スペーサ(スペーサ)
c1…凹陥部
c2…床当接面
E…座
g1…ベースフレーム部
g2…前脚フレーム部
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