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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】車両用整備装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/04 20100101AFI20220512BHJP
   B67D 7/02 20100101ALI20220512BHJP
   B67D 7/14 20100101ALI20220512BHJP
【FI】
B67D7/04 F
B67D7/02 A
B67D7/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017194300
(22)【出願日】2017-10-04
(65)【公開番号】P2019064723
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈博
(72)【発明者】
【氏名】砂原 宏光
(72)【発明者】
【氏名】天野 義樹
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124846(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013845(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3131243(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0260350(US,A1)
【文献】特開2004-316933(JP,A)
【文献】特開2017-001677(JP,A)
【文献】特開2013-233904(JP,A)
【文献】特開2008-049731(JP,A)
【文献】特開2008-025784(JP,A)
【文献】特開平06-074622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7/04
B67D 7/02
B67D 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用トランスミッションフルードの交換を行う車両用整備装置において、
車両側に備えられる車載電子制御装置から故障診断システムコネクタを通じて、
前記車両用トランスミッションフルードの温度を取得する車両情報読取部と、
前記車両情報読取部で読み取った前記車両用トランスミッションフルードの温度を記憶する車両情報記憶部と、
前記車両用トランスミッションフルードの交換に適した温度と、前記車両用トランスミッションフルード交換作業の内容を設定する設定部とを備え、
前記車両情報記憶部に記憶した前記車両用トランスミッションフルードの温度が前記設定部で設定した前記車両用トランスミッションフルードの交換に適した油温に適合しているとき、
前記設定部で設定した前記車両用トランスミッションフルード交換作業の内容で該車両用トランスミッションフルードの油量調整動作を行う
ことを特徴とする車両用整備装置。
【請求項2】
前記車両用整備装置において、
車両用整備装置の外部から車両用整備装置とは別体の車両情報読取装置を接続可能にする車両用整備装置側故障診断システムコネクタを備え、
外部から車両用整備装置に接続した車両情報読取装置により車両側の車両情報を取得可能にしたことを特徴とする請求項1記載の車両用整備装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の各種フルード(例えばATF/CVTF)の交換や、エアコン装置用冷媒の交換を行う車両用整備装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスミッションにおけるフルードの交換を行う装置として、特許文献1に開示される装置が知られている。この装置は、トランスミッションに備えるフルードレベルゲージ挿通用のフィラーチューブからオイルパン内へノズルを挿入し、挿通したノズルでオイルパン内の古いフルードを抜き取り、その抜き取った量に基づいて新しいフルードを注入するという交換動作を複数回繰り返して行うことでオイルパン内のフルードを希釈交換するものである。そして、フルード交換作業を終了する段階では、適正量のフルードを注入するために、車両の整備書に記載された適正なフルード温度の範囲内でフルード量の調整を行っている。
【0003】
また、自動車のエアコン装置内に充填されている冷媒を回収し、回収した冷媒を再生処理し、再生した冷媒をエアコン装置内に充填するといった処理を行う装置として、特許文献2に開示される装置が知られている。特許文献2の装置は、自動車のエンジンを駆動させた状態で、エアコン装置内の冷媒を回収して再生処理を行った後、その時の外気温とエンジン回転数に基づいて設定した適正な充填圧力で充填を行う循環再生工程と、エンジンを駆動させない状態で真空引きにより冷媒を回収して再生処理を行った後、規定充填量に基づいて充填を行う真空引き再生工程との2つの工程から何れか一方を選択して充填作業を実行するものである。この装置では、自動車のバッテリー端子におけるリップル電圧に基づいてエンジン回転数の検出を行っている。
【0004】
このように車両用整備装置では、フルード温度やエンジン回転数といった車両側の情報を取得し、取得した情報を用いて装置の動作制御が行われており、そうすることで整備対象となる車両の状態に合わせた好適な車両整備サービスの提供を可能にしている。この場合の車両側情報を得る方法としては、例えば上記のフルード温度であれば、トランスミッションから装置内に抜き取ったフルードの温度を計測することにより行っている。エンジン回転数に関しては、既に説明したように、エンジンに連動されるオルタネーターの出力から得られる直流電圧に含まれるリップルを基にしてエンジン回転数の検出を行うようにしている。
【0005】
ところで、近年、自動車には故障診断システムが搭載されており、例えばOBD2の規格に対応した故障診断システムでは、OBD2スキャンツールを外部から着脱自在に装着するコネクタを備えている。そのコネクタにOBD2スキャンツールを接続することにより、エンジン回転数、冷却水温度、エンジンオイル温度、トランスミッションフルード温度、といった様々な車両情報を得ることができる。OBD2コネクタは、通常は故障診断を行うためのデータ読み出しに使用するものであるが、汎用のOBD2スキャンツールを接続することで多くの車両情報が得られるため、これを故障診断の用途以外にも有効活用できる可能性を有している。そこで、上記のような車両用整備装置においてもOBD2スキャンツールで読み出した情報を整備士が入力する方法が考えられるが、それには、整備士がOBD2の操作方法に習熟する必要がある。OBD2スキャンツールによって読み出される車両情報は広い範囲にわたるため、車両用整備装置を動作させるために必要な情報はその内の一部である。したがって、読み出された情報の中から必要な情報のみを抽出し、車両用整備装置を操作して車両情報を入力するのである。そのため、整備士は車両用整備装置とOBD2スキャンツールとの両方について操作方法を習得する必要があり、また、両方を同時に並行して操作する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-335400号公報
【文献】特開2004-316933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の様な問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、汎用のOBD2スキャンツールを必要とすることなく、車両用整備装置が有するOBD2コネクタ(故障診断システムコネクタ)を車両のOBD2コネクタに接続することで車両用整備装置の作動に必要な車両情報のみを読み出し、人の手による入力操作なしに読み出した車両情報を用いて装置の動作制御を行う車両整備装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために本発明は、車両用フルードの交換や車両用冷媒の交換を行う車両用整備装置において、車両側に備えられる車載電子制御装置から故障診断システムコネクタを通じて車両情報を読み取る車両情報読取部と、前記車両情報読取部で読み取った車両情報を記憶する車両情報記憶部とを備え、前記車両情報記憶部に記憶する車両情報に基づいてフルードや冷媒の抜き取り動作及び新しいフルードや冷媒の充填動作を行うことを特徴とする車両用整備装置を提案する。
【0009】
(2)上記提案の車両用整備装置は、車両用整備装置の外部から車両用整備装置とは別体の車両情報読取装置を接続可能にする車両用整備装置側故障診断システムコネクタを備え、外部から車両用整備装置に接続した車両情報読取装置により車両側の車両情報を取得可能にすることが望ましい。
【0010】
(3)上記提案の車両用整備装置は、車両側からエンジン回転数に関する車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて冷媒の交換を行うことが望ましい。
【0011】
(4)上記提案の車両用整備装置は、車両側からトランスミッションフルードの温度に関する車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいてトランスミッションフルードの交換を行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両用整備装置を作動させて車両整備を行う場合に、人の手による入力操作を要することなく車両側の情報を読み出して設定し、自動的に動作制御を行うことができる。車両用整備装置がトランミッションフルードの交換装置であれば、フルードの交換作業が完了して最終的な油量調整を行う段階で、車両側で検出しているフルード温度をOBD2故障診断システムから取得し、温度が適正温度範囲になったタイミングで油量調整を行うことができる。トランスミッション用のフルードは熱膨張率が高く、フルード温度の上昇とともに体積が膨張することから、油量調整作業の際には、適確な温度データの取得と、温度に依存する油量調整タイミングという点で専門性と豊富な作業経験が求められていたが、そのような専門的スキルを備えずとも質の高い交換作業を提供することができる。
【0013】
また、車両用整備装置が自動車用エアコンの冷媒再生処理装置であれば、自動車のエンジンを駆動させた状態でエアコンから冷媒を回収して再生処理を行い、続いて、再生した冷媒をエアコン側に充填する場合に、その時のエンジン回転数をOBD2故障診断システムから取得し、取得したエンジン回転数と外気温とに基づいて算出した適正な充填圧力で充填を行うことができる。したがって、自動車のバッテリー端子におけるリップル電圧からエンジン回転数の検出を行う検出回路を用いることなく質の高い冷媒再生処理作業を提供することができる。
【0014】
また、車両用整備装置に備えるOBD2コネクタに車両用整備装置の外部から車両情報読取装置を接続し、その車両情報読取装置により車両側の車両情報を読み取って車両情報読取装置の機能を用いた作業を行うことができる。これにより、車両の故障診断システムに関する車両情報の読み取りを専ら行うOBD2スキャンツールを接続し、車両用整備装置を経由して故障診断システムに関する作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明実施例1のフルード交換装置を示す説明図である。
図2】本発明実施例1の制御系を示すブロック図である。
図3】設定時の操作画面を示す説明図である。
図4】自動コースの動作フローを示すフローチャート図である。
図5】フルード注入作業の動作を示す説明図である。
図6】フルード抜取作業の動作を示す説明図である。
図7】本発明実施例2の冷媒処理装置を示す説明図である。
図8】本発明実施例2の制御系を示すブロック図である。
図9】回収再生工程の動作フローを示すフローチャート図である。
図10】回収再生工程における冷媒の流れを示す説明図である。
図11】充填工程の動作フローを示すフローチャート図である。
図12】充填工程における冷媒の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<実施例1>
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る車両用整備装置としてのフルード交換装置を示している。
1はフルード交換装置本体で、内部に正逆転可能なポンプ2と、車両へ注入する新しいフルードを貯える新油タンク3と、車両から抜き取った古いフルードを貯える廃油タンク4を備えている。ポンプ2には、新油タンク3と連通する吸込管路5と、廃油タンク4と連通する排出管路6と、先端にオーバーフロープラグ用アダプタ7を接続する注入ホース8及び抜取ホース9が取り付けられ、正転と逆転とを切り替えることで新油タンク3から吸込管路5を通じて新油を吸い上げ、注入ホース8からトランスミッションのオイルパンに新油を注入する新油注入系統と、トランスミッションのオイルパンから抜取ホース9を通じて旧油を抜き取り、排出管路6から廃油タンク4に旧油を排出する廃油抜取系統とを構成する。オーバーフロープラグ用アダプタ7は、トランスミッションのオイルパンに備えられるプラグと付け替えて接続し、オイルパンに対してフルードの抜取・注入を行う。
【0017】
13、14、15、16は電磁弁で、それぞれ吸込管路5、排出管路6、注入ホース8、抜取ホース9の開閉を行う。17はストレーナで、電磁弁16を開いた時に抜取ホース9を通じて抜き取った旧油に含まれる不純物の濾過を行う。18、19はロードセルで、新油タンク3及び廃油タンク4の底部に設けられ、タンク3、4の重量をそれぞれ検出してタンク内のフルード量を検知する。
【0018】
22は車両情報読取部であり、信号ケーブルを通じて延出するOBD2コネクタ23(特許請求の範囲に記載の故障診断システムコネクタ)を車両側に具備される車両側OBD2コネクタに接続し、車両の車載電子制御装置が保持している車両情報の読み取りを行う。読み取る車両情報としては、少なくともフルード温度に関する情報を取得する。24は車両情報記憶部であり、車両情報読取部22が読み取った車両情報を一時的に記憶する。25はフルード交換装置本体と一体に備える装置本体側OBD2コネクタで、この装置本体側OBD2コネクタ25に対して、フルード交換装置本体1の外部から車両情報読取装置26を接続可能にしている。車両情報読取装置26を接続することにより、フルード交換装置本体1を経由して車両情報読取部22及びOBD2コネクタ23を通じて車両情報を直接読み取ることができる。従って、車両情報読取装置として市販のOBD2スキャンツールを用いてフルード交換装置本体1に接続し、OBD2スキャンツールによる作業を行うことができる。
【0019】
20は操作パネルで、タッチパネル機能付きの液晶表示装置からなり、交換する油種を選択する油種選択画面、実行するコースを選択するコース選択画面、交換量の調整を行う調整画面、選択したコースを開始させるスタート画面、装置の動作を停止させるストップ画面といった操作画面表示と、抜取量表示、注入量表示、設定量表示、手順表示といった案内画面表示とを可能にしており、状況に応じた画面表示を行う。
【0020】
次に、図2を基にして本発明に係るフルード交換装置の制御系について説明する。21はマイクロコンピュータからなる制御部で、ポンプ2、車両情報読取部22、車両情報記憶部24、電磁弁13~16、ロードセル18、ロードセル19、操作パネル20が接続され、ロードセル18及び19からの信号と操作パネル20での設定に基づいてポンプ2及び電磁弁13~16を作動させるとともに、車両情報読取部22から出力されて車両情報記憶部24に記憶されるフルード温度情報に基づいて油量調整のタイミングを判定する。
【0021】
このように構成するフルード交換装置でレベルゲージレスのトランスミッションのCVTフルードを交換する作業について、図3図6を用いて説明する。なお、ここで表示する具体的な数値は一例であり、本実施例に限定されるものではない。
まず、フルード交換作業の準備として、フルード交換を行う車両のエンジンをかけて水平にリフトアップした後、トランスミッションのオイルパン底部にあるプラグを外し、フルード交換装置1のオーバーフロープラグ用アダプタ7をドレン孔に接続する。次に、設定操作として、操作パネル20の画面表示に沿ってフルードの油種、交換方法、交換コース、交換量、適正油温範囲を選択し、設定内容を確認した後にスタートを入力すると交換作業動作が開始される。
【0022】
すなわち、図3に示すように、油種選択画面(A)から『CVTF』を選択し、交換方法選択画面(B)から『下抜き』を選択し、コース選択画面(C)から『全自動』を選択し、交換量設定画面(D)から希望する交換量を設定し、適正油温範囲設定画面(E)から希望する油温範囲を設定し、設定内容確認画面(F)で『確認』を入力した後、スタート確認画面(G)で『スタート』を入力すると交換作業動作が開始される。尚、各画面において『戻る』を入力すると1つ前の画面表示に戻り、設定をやり直すことができる。
【0023】
次に、図4は、フルードの油種(CVTF)、交換方法(下抜き)、交換コース(全自動コース)、交換量(ここでは6L)、適正温度範囲(例えば35~45℃)が設定されたときの動作フローチャートを示している。
交換作業動作が開始されると、オーバーフロープラグ用アダプタ7で接続されたオイルパン内に新油タンク3から新しいフルードを供給する注入工程が実行される(1)。注入工程では、図5に示すように、電磁弁13及び電磁弁15を開き、ポンプ2を正転して、新油タンク3から吸込管路5及び注入ホース8を通じてオイルパン内に新しいフルードが注入され、オイルパン内の古いフルードと希釈混合される。この注入工程は、新油タンク3のロードセル18で注入量を測定し、規定量a(ここでは2リットル)の注入が行われると、電磁弁13及び電磁弁15を閉じ、ポンプ2を停止して終了する。
【0024】
注入工程が終了すると、注入量の総和がプリセット注入量(=交換量6リットル)に達したか否かを確認(2)し、プリセット注入量に達していない場合は、所定の待機時間t(ここでは60秒)をとり、エンジンのアイドリングによってトランスミッション内でフルードを対流させる。待機時間tが経過すると(3)、オイルパン内のオーバーフローチューブより上側にある希釈されたフルードを廃油タンク4に回収する抜取工程が実行される(4)。抜取工程では、図6に示すように、電磁弁14及び電磁弁16を開き、ポンプ2を逆転して、抜取ホース9を通じてオイルパン内のフルードが抜き取られ、ストレーナ17で不純物が濾過されて廃油タンク4に回収される。この抜取工程は、廃油タンク4のロードセル19で抜取量の変化を測定し、注入工程で注入した規定量aと同量(すなわち2リットル)のフルードが抜き取られると、電磁弁14及び電磁弁16を閉じ、ポンプ2を停止して終了する。
【0025】
上記のような注入工程-待機-抜取工程を繰り返し、オイルパン内のフルードの新油希釈率を高めていき、処理(2)で注入量の総和がプリセット注入量(6リットル)に達したと判断すると、オイルパン内のフルード温度情報を取得する油温情報取得工程に移行する(5)。油温情報取得工程は、最終的な油量調整を行う前に、オイルパン内のフルード温度に関する情報を取得するもので、車両に接続したOBD2コネクタ23によって車両情報読取部22がフルード温度情報を読み取ることで取得する。
【0026】
ここで、取得したフルード温度の値が設定した適正温度範囲(35~45℃)にあるかを確認し(6)、適正温度範囲内であれば、オイルパン内のフルード量を適正化する油量調整工程に移行する(7)。油量調整工程は、オイルパン内のフルードをオーバーフローチューブの上端レベルに水準させてオイルパン内のフルード量を適正化するものであり、抜取工程と同様に、電磁弁14及び電磁弁16を開き、ポンプ2を逆転して、オイルパン内のフルードをオーバーフローチューブから抜き取る。フルードの抜取量が規定量b(ここでは0.2リットル)を越えたことを確認し、ロードセル19で抜取量が所定時間内に一定量以上変化しなくなると(8)、電磁弁14及び電磁弁16を閉じ、ポンプ2を停止して終了となる。終了後は、オーバーフロープラグ用アダプタ7をオイルパンから取り外してプラグを元通りに取り付けるよう注意を促す案内画面(H)を操作パネル20に表示し、プラグを取り付けた後に『確認』を入力すると作業が完了する。処理(7)でオーバーフローチューブからフルードが規定量b排出されなかった場合には、オイルパン内に入っていたフルードがオーバーフローチューブの上端より少なかった可能性があるため、再度注入工程(1)を実行して規定量のフルードを注入し、オーバーフローチューブからフルードが規定量b以上排出されたことを確認して油量調整を図る。
【0027】
処理(6)でフルードの温度が適正温度範囲によりも高温(例えば60℃)であれば、フルード温度が高く油量調整ができないと判断して、動作を一旦停止する。操作パネル20には、図3に示すように車両側から取得したフルード温度と、フルード温度が高温のため油温が下がるまで待機を促す旨の案内画面(I)を表示する。
【0028】
<実施例2>
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。図7は本発明に係る車両用整備装置としての自動車用エアコン装置の冷媒再生処理装置を示す全体構成図である。31は装置本体で、車両用エアコン装置の高圧サービスバルブVH及び低圧サービスバルブVLと接続する高圧ホース32及び低圧ホース33を延出している。高圧ホース32及び低圧ホース33は、一端に逆止弁付のカプラ34,35を備え、他端を装置本体31内の高圧管路36及び低圧管路37にそれぞれ接続している。
【0029】
高圧管路36は、高圧用圧力センサ38と、冷媒を減圧気化するためのエバポレータ39とを備え、回収冷媒から冷凍機油を分離するオイルセパレータ40と、冷媒から不純物や水分を除去するためのフィルタドライヤ41を経由してコンプレッサ42に配管されている。低圧管路37は、低圧用圧力センサ43と、車両用エアコン装置内を真空引きする真空ポンプ44とを備え、低圧用圧力センサ43と真空ポンプ44との間に接続管路45を連結して高圧管路36に接続している。
【0030】
46は供給管路で、コンプレッサ42の排出側に接続され、オイルセパレータ40内で熱交換するコンデンサ47と、オイルセパレータ40外で液化するコンデンサ48を経由して冷媒回収タンク49に配管されている。50は冷凍機油受けで、オイルセパレータ40で分離された冷凍機油を排油パイプ51を通じて排出される。52は安全弁で、冷媒回収タンク49の上部に取り付けられ、タンク49内の圧力が所定以上になると大気開放してタンク49上部の空気を排出する。53はロードセルで、冷媒回収タンク49に取り付けられ、タンク49内に貯留される冷媒の重量を計量する。
【0031】
54は充填管路で、冷媒回収タンク49と接続管路45とを連結し、タンク49内の冷媒を車両用エアコン装置に充填する。55は循環管路で、先端に高圧ホース32及び低圧ホース33のカプラ34,35が接続されるバルブ56,57を備え、充填管路54に連結し、装置本体31内に閉回路を形成する。58は補充管路で、接続管路45に連結し、再生冷媒充填時に冷凍機油を補充するためのオイル缶59と、冷媒回収タンク49内の再生冷媒の量が不足した場合に新規な冷媒をタンク49内に補充するためのフロン缶60が接続される。
【0032】
61~69は管路切換用の電磁弁で、高圧管路36における高圧用圧力センサ38と接続管路45の連結位置との間に電磁弁61・接続管路45の連結位置とエバポレータ39との間に電磁弁62を設け、低圧管路37における低圧ホース35の接続位置と低圧用圧力センサ43との間に電磁弁63・接続管路45の連結位置と真空ポンプ44との間に電磁弁64を設け、排油パイプ51に電磁弁65を設け、充填管路54に電磁弁66を設け、循環管路55に電磁弁67を設け、補充管路58におけるオイル缶59側に電磁弁68・フロン缶60側に電磁弁69を設けている。70~73は逆止弁で、充填管路54に逆止弁70を設け、循環管路55に逆止弁71を設け、補充管路58におけるオイル缶59
側に逆止弁72・フロン缶60側に逆止弁73を設けている。
【0033】
22は車両情報読取部であり、信号ケーブルを通じて延出するOBD2コネクタ23を車両側に具備される車両側OBD2コネクタに接続し、車両の車載電子制御装置が保持している車両情報の読み取りを行う。読み取る車両情報としては、少なくともエンジン回転数に関する情報を取得する。24は車両情報記憶部であり、車両情報読取部22が読み取った車両情報を一時的に記憶する。25は冷媒再生処理装置本体と一体に備える装置本体側OBD2コネクタで、この装置本体側OBD2コネクタ25に対して、冷媒再生処理装置本体31の外部から車両情報読取装置26を接続可能にしている。車両情報読取装置26を接続することにより、冷媒再生処理装置本体31を経由して車両情報読取部22及びOBD2コネクタ23を通じて車両情報を直接読み取ることができる。従って、車両情報読取装置として市販のOBD2スキャンツールを用いて冷媒再生処理装置本体31に接続し、OBD2スキャンツールによる作業を行うことができる。
【0034】
次に、図8は本発明第2実施形態に係る冷媒再生処理装置の制御系を示すブロック図である。
74は制御部で、操作パネル75から信号を受け取り、記憶されたプログラムに基づいて装置の各機器を作動させる。操作パネル75は、表示機能として冷媒充填量を表示する充填量表示部76と、高圧側の圧力を表示する高圧用圧力表示部77と、低圧側の圧力を表示する低圧用圧力表示部78とを備え、入力機能として、コース選択キー79と、充填量等を調整する調整キー80と、スタートキー81と、作業を一時中断させるための一時停止キー82と、全作業終了後、装置を初期状態に戻すための終了キー83を備えている。
【0035】
続いて、このように構成する冷媒再生処理装置の動作について説明する。
本装置では、コース選択キー79で再生充填コースと手動コースとが選択できるようになっている。このうち再生充填コースについて、図を用いて説明する。
【0036】
図9、11は再生充填コースのフローチャート、図10、12は動作説明図である。再生充填コースは、自動車用エアコン装置からほぼ全量の冷媒を抜き取り、装置本体31で冷媒と冷凍機油とを分離して冷媒の洗浄・補充、冷凍機油の交換等を行って再生する回収再生工程と、適量の冷媒を自動車用エアコン装置に充填する充填工程とが順次実行される。
【0037】
<回収再生工程> 図9のフローチャート図、図10の動作説明図。
作業者は、まず準備作業として、エンジンを停止し、自動車用エアコン装置の高圧サービスバルブVH及び低圧サービスバルブVLに、装置本体31の高圧ホース32及び低圧ホース33をカプラ34・35によって接続する。この状態から操作部75のコース選択キー79で『再生充填コース』を選択し、充填量表示部76を見ながら調整キー80で充填する規定冷媒量Cを設定した後、スタートキー81を入力すると、回収再生工程が開始される。
【0038】
再生充填コースが開始されると、最初に車両エンジンが停止しているかの確認を行う。この確認は、車両に接続したOBD2コネクタ23によって車両情報読取部22がエンジン回転数を読み取ることによって行う。その結果、エンジンの回転が確認されなければ車両エンジンは停止しているものとして判断する(101)。次に、高圧管路36の電磁弁61・62を開き(102)、コンプレッサ42を駆動させる(103)。コンプレッサ42の駆動に伴い、図10の[A]に沿って、高圧ホース32から自動車用エアコン装置の冷媒が高圧液体の状態で導入され、高圧管路36を通じてエバボレータ39で減圧気化されて、オイルセパレータ40で冷凍機油が分離された後、供給管路46を通じてフィルタドライヤ41で濾過及び除水され、コンデンサ47,48で液化されて冷媒回収タンク49に回収される。このとき、オイルセパレータ40では、内蔵したコンデンサ47による冷媒の凝縮液化が行われるため、気化と液化が相乗的に作用して熱交換が効率良く実行される。
【0039】
高圧管路36の高圧用圧力センサ38で検出される圧力Pが第1所定圧P1以下になると(104)、エアコン装置の高圧側に残留している冷媒がほぼ気体状態であると判断して、電磁弁63を開き(105)、図10の[B]も通じて、エアコン装置の高圧側及び低圧側に残留している気体冷媒が冷媒回収タンク49に回収される。
【0040】
その後、低圧管路37の低圧用圧力センサ43で検出される圧力Pが第2所定圧P2以下になると(106)、電磁弁62を閉じ(107)、コンプレッサ42を停止する(108)とともに、電磁弁64を開き(109)、真空ポンプ44を作動して(110)、図10の[C]に沿って真空引きが行われる。そして、低圧用圧力センサ43で検出される圧力が第3所定圧P3以下になると(111)、ほぼ全量の冷媒回収が終了したと判断して、真空ポンプ44を停止して(112)、電磁弁61,63,64を閉じて(113)、回収を終了する。
【0041】
冷媒回収が終了すると、電磁弁65を開き(114)、図10の[D]を通じて、オイルセパレータ40内の分離された冷凍機油を排出パイプ51を通じて冷凍機油受け50に排出し、所定時間T1が経過すると(115)、電磁弁65を閉じて(116)、回収再生工程が終了となり、回収再生工程が終了したこと、充填工程に移行すること、車両エンジンを駆動させることの案内を出力する(117)。
【0042】
<充填工程> 図11のフローチャート図、図12の動作説明図。
作業者が、ステップ(117)の案内に従ってエンジンを駆動させ、スタートキー81を入力すると、充填工程が開始される。
【0043】
充填工程が開始されると、まず車両エンジンが駆動されているかの確認を行う。この確認は、車両に接続したOBD2コネクタ23によって車両情報読取部22がエンジン回転数を読み取ることによって行う。その結果、車両情報としてエンジン回転数が取得された場合には車両エンジンが駆動されている状態にあると判断する(118)。次に、充填管路54の電磁弁63,66,67を開き(119)、図12の[E]に沿って、冷媒回収タンク49内の冷媒が低圧側から自動車用エアコン装置に供給される。同時に補充管路58の電磁弁68を開き(120)、図12の[F]に沿って、オイル缶59の冷凍機油が自動車用エアコン装置に注入される。
【0044】
その後、ロードセル53で冷媒回収タンク49内の冷媒が設定した規定冷媒量Cだけ減少したことを検出すると(121)、自動車用エアコン装置内に規定量Cの冷媒が充填されたと判断して、充填管路54の電磁弁63,66,67を閉じ(122)、補充管路58の電磁弁68を閉じて(123)、充填の動作を終了とする。そして、充填工程が終了したこと、車両エンジンを停止させることの案内を出力する(124)。
【符号の説明】
【0045】
1 フルード交換装置本体
2 ポンプ
3 新油タンク
4 廃油タンク
5 吸込管路
6 排出管路
7 オーバーフロープラグ用アダプタ
8 注入ホース
9 抜取ホース
18 ロードセル
19 ロードセル
20 操作パネル
22 車両情報読取部
23 OBD2コネクタ(故障診断システムコネクタ)
24 車両情報記憶部
25 車両用整備装置本体側OBD2コネクタ
26 車両情報読取装置
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12