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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】顕微鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20220512BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20220512BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20220512BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20220512BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/00
G02B7/28 J
G02B7/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017202408
(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公開番号】P2019074711
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】武永 庄太
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-013996(JP,A)
【文献】特開2001-041711(JP,A)
【文献】特開昭63-167313(JP,A)
【文献】特開2000-099119(JP,A)
【文献】米国特許第05410338(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
G02B 7/28
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が配置されるステージと、
該ステージ上に配置された前記試料を観察する観察光学系と、
該観察光学系の焦点を該観察光学系の光軸方向に移動させる焦点位置調整部と、
前記ステージを前記光軸に交差する方向に移動させる送り機構と、
該送り機構によって前記ステージが前記光軸に交差する方向に移動させられたときの前記ステージの前記光軸方向の周期的な変動を示すZ方向変動情報が記憶されているZ方向変動情報記憶部と、
前記観察光学系の前記焦点を前記試料に合わせるように前記焦点位置調整部を制御する焦点制御部と
前記光軸に交差する方向の複数の焦点測定点における、前記焦点が前記試料に合う前記観察光学系の前記光軸方向の合焦位置の情報を含むフォーカスマップが記憶されているフォーカスマップ記憶部とを備え、
前記焦点制御部が、前記フォーカスマップ記憶部に記憶されている前記フォーカスマップにおける前記合焦位置を前記Z方向変動情報に基づいて補間し、前記合焦位置が補間されたフォーカスマップに基づいて前記焦点位置調整部を制御する顕微鏡装置。
前記焦点制御部は、
【請求項2】
前記Z方向変動情報が、前記光軸に交差する方向の複数の変動測定点における前記ステージの前記光軸方向の位置の情報を含み、
前記光軸に交差する方向における前記複数の変動測定点の間隔が、前記ステージの変動の前記光軸に交差する方向における周期よりも小さい請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記送り機構が、ボールねじを備え、
前記複数の変動測定点の前記間隔が、前記ボールねじのリードよりも小さい請求項2に記載の顕微鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、観察光学系の焦点を試料に合わせる合焦制御をフォーカスマップに基づいて行う顕微鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、試料表面上の複数の測定点に観察光学系の焦点が合うときの観察光学系のXYZ座標をフォーカスマップとして記憶装置に格納し、測定点間におけるXYZ座標を補間することで、試料表面の任意の点に観察光学系の焦点を合わせるためのXYZ座標をフォーカスマップから求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-303869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試料が配置されているステージが送り機構によってXY方向に移動させられたときに、ステージは送り機構の機械的要因によってZ方向にも変動し、それにより、観察光学系の焦点に対して試料がZ方向に移動する。しかしながら、特許文献1では、このようなステージのZ方向の変動を考慮していない。したがって、送り機構に因るステージのZ方向の変動量が観察光学系の焦点深度に対して無視できない程度に大きい場合には、フォーカスマップから算出されるXYZ座標に観察光学系を配置したときに、焦点が試料の表面に合わなくなる。特に、ステージのZ方向の変動の周期がフォーカスマップの測定点のピッチよりも小さい場合には、試料表面に焦点が正確に合うXYZ座標をフォーカスマップから求めることが難しい。
【0005】
XYZ座標を測定する測定点の数を増やして測定点のピッチを小さくすることで、ステージのZ方向の変動も加味したフォーカスマップを作成することもできるが、この場合には、フォーカスマップの作成に時間を要するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ステージの光軸方向の変動に関わらず観察光学系の焦点を試料に合わせる合焦制御を効率的に行うことができる顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、試料が配置されるステージと、該ステージ上に配置された前記試料を観察する観察光学系と、該観察光学系の焦点を該観察光学系の光軸方向に移動させる焦点位置調整部と、前記ステージを前記光軸に交差する方向に移動させる送り機構と、該送り機構によって前記ステージが前記光軸に交差する方向に移動させられたときの前記ステージの前記光軸方向の周期的な変動を示すZ方向変動情報が記憶されているZ方向変動情報記憶部と、前記観察光学系の前記焦点を前記試料に合わせるように前記焦点位置調整部を制御する焦点制御部とを備え、該焦点制御部が、前記Z方向変動情報に基づいて前記焦点の前記光軸方向の位置を補正する顕微鏡装置である。
【0008】
本態様によれば、焦点位置調整部によって観察光学系の焦点を光軸方向(Z方向)に移動させることで観察光学系の焦点をステージ上の試料に合わせることができる。また、送り機構によってステージを光軸に交差する方向(XY方向)に移動させることで、観察光学系による試料上の観察位置を変更することができる。
【0009】
この場合に、送り機構によってステージがXY方向に移動させられたときに、送り機構の機械的要因によってステージはZ方向にも変動し、それにより、観察光学系の焦点に対してステージ上の試料がZ方向に移動する。焦点制御部は、Z方向変動情報記憶部に予め記憶されているZ方向変動情報に基づいて、ステージのZ方向の変動に因る焦点と試料とのZ方向の相対位置の変化を相殺するように焦点のZ方向の位置を補正する。これにより、ステージの光軸方向の変動に関わらず観察光学系の焦点を試料に合わせる合焦制御を効率的に行うことができる。
【0010】
上記態様においては、前記Z方向変動情報が、前記光軸に交差する方向の複数の変動測定点における前記ステージの前記光軸方向の位置の情報を含み、前記光軸に交差する方向における前記複数の変動測定点の間隔が、前記ステージの変動の前記光軸に交差する方向における周期よりも小さくてもよい。
このように、ステージのZ方向の変動がXY方向において周期的に生じる場合には、Z方向変動情報における変動測定点の間隔をステージの変動の周期よりも小さくすることで、試料への観察光学系の合焦精度をさらに向上することができる。
【0011】
上記態様においては、前記送り機構が、ボールねじを備え、前記複数の変動測定点の前記間隔が、前記ボールねじのリードよりも小さくてもよい。
ボールねじを使用してステージをXY方向に移動させる場合、ボールねじのリードと等しい周期で、ステージのZ方向の変動が生じる。したがって、Z方向変動情報における変動測定点の間隔をボールねじのリードよりも小さくすることで、試料への観察光学系の合焦精度をさらに向上することができる。
【0012】
上記態様においては、前記光軸に交差する方向の複数の焦点測定点における、前記焦点が前記試料に合う前記観察光学系の前記光軸方向の合焦位置の情報を含むフォーカスマップが記憶されているフォーカスマップ記憶部を備え、前記焦点制御部は、前記フォーカスマップ記憶部に記憶されている前記フォーカスマップにおける前記合焦位置を前記Z方向変動情報に基づいて補間し、前記合焦位置が補間されたフォーカスマップに基づいて前記焦点位置調整部を制御する
このように、フォーカスマップの合焦位置をZ方向変動情報に基づいて補間することで、焦点測定点の数が少ないフォーカスマップから、ステージのZ方向の変動も加味した精細なフォーカスマップを作成することができる。すなわち、焦点測定点の数を減らしてフォーカスマップの作成に要する時間を短縮することができる。特に、試料の凹凸の周期がステージのZ方向の変動の周期よりも大きい場合に、フォーカスマップにおける焦点測定点の数を効果的に減らすことができるので有利である。
【0013】
上記態様の参考例においては、前記観察光学系の前記焦点を所定の開始位置から前記光軸方向に移動させて前記焦点が前記試料に合う合焦位置を検出する自動焦点測定部を備え、前記焦点制御部が、前記Z方向変動情報記憶部に記憶されている前記Z方向変動情報に基づいて、前記所定の開始位置を補正してもよい。
このようにすることで、ステージをXY方向に移動させたときに合焦位置の探索を開始する開始位置が、ステージのZ方向の変動に応じて変化する。これにより、合焦位置の探索に要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光軸方向のステージの変動に関わらず観察光学系の焦点が試料に正確に合うように合焦制御を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置の全体構成図である。
図2図1の顕微鏡部のステージおよび送り機構の構成を示すZ方向に見た平面図である。
図3】XY方向の移動に伴うステージのZ位置の変動と、ステージ上の試料に焦点が合う対物レンズの合焦Z位置とを示すグラフである。
図4図1の顕微鏡装置のステージキャリブレーションを説明する図である。
図5】記憶装置に記憶されるZ方向変動情報を示すグラフである。
図6】オートフォーカスマップと、Z方向変動情報を用いて補間されたオートフォーカスマップとを説明する図である。
図7】本発明の参考実施形態に係る顕微鏡装置の全体構成図である。
図8図7の顕微鏡装置のAF動作における対物レンズの移動開始位置の補正方法を説明する図である。
図9図7の顕微鏡装置のAF動作における対物レンズの移動開始位置の補正方法の変形例を説明する図である。
図10】本発明の第の実施形態に係る顕微鏡装置の全体構成図である。
図11図10の顕微鏡装置のステージキャリブレーションを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡装置100について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100は、図1に示されるように、試料Sを観察する顕微鏡部1と、顕微鏡部1を制御する制御部2と、顕微鏡部1のカメラ75によって取得された画像を表示するモニタ3と、マウスおよびキーボードのような入力装置4とを備えている。
【0017】
顕微鏡部1は、試料Sが配置されるステージ5と、ステージ5を移動させる送り機構6と、対物レンズ71を有しステージ5上の試料Sを観察する観察光学系7と、対物レンズ71の焦点を対物レンズ71の光軸方向に移動させる焦準部(焦点位置調整部)8と、ステージ5、観察光学系7および焦準部8を支持するフレーム9とを備えている。
以下、対物レンズ71の光軸方向をZ方向と定義し、光軸方向にそれぞれ直交し、かつ相互に直交する方向をX方向およびY方向と定義する。また、X方向、Y方向、およびZ方向におけるステージ5および対物レンズ71の位置を、X位置、Y位置、およびZ位置とそれぞれ言う。
【0018】
ステージ5は、Z方向に垂直なXY平面に配置されており、試料Sは観察光学系7によってZ方向に観察されるようになっている。
送り機構6は、ステージ5をX方向およびY方向に移動させることができるようになっている。
【0019】
図2は、ステージ5および送り機構6の具体的な構成を示している。図2に示されるように、ステージ5および送り機構6は、単一のユニットとして構成されている。
ステージ5は、顕微鏡部1のフレーム9に対して固定されたベース板51と、ベース板51上に配置されたY軸可動板52と、Y軸可動板52上に配置されたX軸可動板53とを備えている。Y軸可動板52は、Y軸ガイド54によってY方向に移動可能にベース板51に支持されている。X軸可動板53は、X軸ガイド55によってX方向に移動可能にY軸可動板52に支持されている。試料Sは、X軸可動板53上に配置され、X軸可動板53の移動によってX方向に移動し、Y軸可動板52の移動によってY方向に移動する。ステージ5は、試料SをX軸可動板53に対して固定するためのクレンメルのような機構をさらに備えていてもよい。
【0020】
送り機構6は、モータ61と、Y軸可動板52に接続されモータ61の回転をY方向の直線運動に変換するボールねじ62とを備えている。ボールねじ62は、ボールベアリング等の支持部65によってY方向の中心軸回りに回転可能にベース板51に支持され、カップリング66を介してモータ61に接続されている。
【0021】
Y軸可動板52にはフラグ52aが取り付けられ、ベース板51には、Y方向に相互に間隔をあけた2つの位置にフラグ52aを検出するフォトインタラプタのような2つのセンサ10a,10bが固定されている。センサ10a,10bの一方が原点センサとして機能し、原点センサによってフラグ52aが検出される位置がY方向の原点と定義される。モータ61は、例えばステッピングモータであり、制御部2内のステージ制御部21(後述)からモータ61に供給される駆動パルス数によってY軸可動板52のY位置が制御されるようになっている。
【0022】
また、送り機構6は、モータ63と、X軸可動板53に接続されモータ63の回転をX方向の直線運動に変換するボールねじ64とを備えている。ボールねじ64は、ボールベアリング等の支持部67によってX方向の中心軸回りに回転可能にY軸可動板52に支持され、カップリング68を介してモータ63に接続されている。
【0023】
X軸可動板53にはフラグ53aが取り付けられ、Y軸可動板52には、X方向に相互に間隔をあけた2つの位置にフラグ53aを検出するフォトインタラプタのような2つのセンサ10c,10dが固定されている。センサ10c,10dの一方が原点センサとして機能し、原点センサによってフラグ53aが検出される位置がX方向の原点と定義される。モータ63は、例えばステッピングモータであり、ステージ制御部21からモータ63に供給される駆動パルス数によってX軸可動板53のX位置が制御されるようになっている。
【0024】
ボールねじ62,64を使用した送り機構6によってステージ5がX方向およびY方向に移動させられたときに、送り機構6の機械的要因によってステージ5のZ位置が変動する。具体的には、ボールねじ62によってY軸可動板52がY方向に移動させられたときに、ボールねじ62の組立精度や製造誤差等が要因で、図3に示されるように、Y軸可動板52のZ位置が、ボールねじ62のリードLyと等しい周期で変動する。同様に、ボールねじ64によってX軸可動板53がX方向に移動させられたときに、ボールねじ64の組立精度や製造誤差等が要因で、X軸可動板53のZ位置が、ボールねじ64のリードLxと等しい周期で変動する。
したがって、焦点が試料Sに合うときの対物レンズ71のZ位置(合焦Z位置)は、図3に示されるように、試料Sの凹凸のみならず、ステージ5のZ位置の変動にも応じて変化する。
【0025】
観察光学系7は、対物レンズ71と、結像レンズ72と、光路分割部73と、接眼レンズ74と、デジタルカメラ75とを備えている。
対物レンズ71は、ステージ5とZ方向に対向して配置され、焦準部8を介してフレーム9に支持されている。
【0026】
光路分割部73は、対物レンズ71および結像レンズ72を通過した試料Sからの光が、接眼レンズ74およびカメラ75のいずれかに向かうように光路を切り替えることができるようになっている。このような光路分割部73は、例えば、プリズムと、結像レンズ72と接眼レンズ74およびカメラ75との間にプリズムを挿脱する切替機構とからなる。プリズムに代えてミラーを使用してもよい。
【0027】
焦準部8は、対物レンズ71をZ方向に移動させることで対物レンズ71の焦点をZ方向に移動させる。このような焦準部8は、例えば、制御部2内の焦準部制御部23(後述)からの駆動パルスによって回転するステッピングモータと、対物レンズ71に接続されステッピングモータの回転をZ方向の直線運動に変換するボールねじと、対物レンズ71のZ方向の原点を定義するための原点センサとを備えている。
【0028】
制御部2は、ステージ制御部21と、カメラ制御部22と、焦準部制御部23と、記憶装置24,25と、画像出力部26と、入力制御部27と、演算装置(焦点制御部)28とを備えている。
【0029】
制御部2は、例えば、専用または汎用のコンピュータによって実現される。すなわち、制御部2は、CPU(中央演算処理装置)のようなプロセッサと、プロセッサの作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリ)のような主記憶装置と、補助記憶装置とを備える。補助記憶装置は、ハードディスクドライブのようなコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であり、各部21,22,23,26,27,28の後述の処理をプロセッサに実行させるプログラムを記憶している。モニタ3および入力装置4は、制御部2を構成するコンピュータに接続されている。ユーザは、顕微鏡部1の操作に必要な指示を入力装置4を使用して制御部2に入力することができるようになっている。
【0030】
ステージ制御部21は、X軸可動板53をX方向に移動させるための駆動パルスを送り機構6のモータ63に供給し、Y軸可動板52をY方向に移動させるための駆動パルスを送り機構6のモータ61に供給することで、ステージ5のX位置およびY位置を制御する。
カメラ制御部22は、カメラ75の動作を制御するとともに、カメラ75によって取得された画像信号を受信して処理する。
焦準部制御部23は、対物レンズ71をZ方向に移動させるための駆動パルスを焦準部8に供給することで、焦準部8を介して対物レンズ71のZ位置を制御する。
【0031】
画像出力部26は、カメラ制御部22から受信した画像信号から表示用の画像信号を生成し、生成された画像信号をモニタ3に出力する。
入力制御部27は、入力装置4からの入力信号を処理して演算装置28に送信する。
演算装置28は、ステージ制御部21、カメラ制御部22、焦準部制御部23、記憶装置24,25、画像出力部26、入力制御部27からの情報を処理するとともに、これら21,22,23,24,25,26,27を制御する。
【0032】
記憶装置(Z方向変動情報記憶部)24は、ステージ5がX方向およびY方向に移動させられたときの送り機構6に起因するステージ5のZ位置の変動を示すZ方向変動情報を記憶している。Z方向変動情報は、顕微鏡部1による試料Sの観察に先立って行われるステージキャリブレーションによって取得される。ステージキャリブレーションは、ユーザによって行われてもよく、顕微鏡装置100の出荷前に製造業者によって行われてもよい。
【0033】
ステージキャリブレーションは、図4に示されるように、試料Sの代わりに、平坦度が確保されたゲージ13を使用して行われる。ゲージ13は、ステージ5上に配置される。
ステージキャリブレーションにおいて、送り機構6によってXY方向の複数の変動測定点P(Xp,Yp)にステージ5を順に移動させ、各変動測定点P(Xp,Yp)において焦点がゲージ13に合う対物レンズ71のZ位置を求める。変動測定点PのX方向の間隔Δxは、ボールねじ64のリードLxよりも小さく、例えば、リードLxの8分の1以下である。変動測定点PのY方向の間隔Δyは、ボールねじ62のリードLyよりも小さく、例えば、リードLyの8分の1以下である。
【0034】
ステージキャリブレーションによって得られた対物レンズ71のZ位置は、各変動測定点P(Xp,Yp)におけるステージ5のZ位置を示す情報であり、図5に示されるように、ステージ5のZ位置と同じく変動する。図5において、白丸が変動測定点P(Xp,Yp)を示している。複数の変動測定点Pにおける対物レンズ71のZ位置は、Z方向変動情報として記憶装置24に記憶される。このようなZ方向変動情報によれば、図3に示されるように、試料Sに焦点が合う対物レンズ71の合焦Z位置が、Z方向変動情報と試料Sの凹凸情報との和として表わされる。
【0035】
ステージキャリブレーションは、演算装置28が、補助記憶装置に格納されたキャリブレーションプログラムに従ってステージ制御部21および焦準部制御部23を制御することで行われる。あるいは、ステージキャリブレーションは、ユーザまたは製造業者がステージ5および焦準部8を手動で移動させることで行われてもよい。
【0036】
記憶装置(フォーカスマップ記憶部)25は、試料Sの観察直前に作成される試料S用のフォーカスマップを記憶する。
演算装置28は、記憶装置24に記憶されているZ方向変動情報および記憶装置25に記憶されているフォーカスマップに基づいて、ステージ5のZ位置の変動に応じて変動するように補正された各XY位置の合焦Z位置を算出し、算出された合焦Z位置に対物レンズ7を配置することで、対物レンズ71の合焦制御を行う。
フォーカスマップおよび演算装置28による対物レンズ71の合焦制御の詳細については、後述する。
【0037】
次に、このように構成された顕微鏡装置100の作用について説明する。
顕微鏡装置100を用いて試料Sを観察するためには、まず、ステージ5上に配置された試料Sのフォーカスマップが作成される。
フォーカスマップの作成において、送り機構6によってXY方向の複数の焦点測定点Q(Xq,Yq)にステージ5を順に移動させ、各焦点測定点Q(Xq,Yq)において焦点が試料Sに合う対物レンズ71の合焦Z位置を求める。これにより、複数の焦点測定点Q(Xq,Yq)における対物レンズ71の合焦Z位置が、フォーカスマップとして記憶装置25に記憶される。焦点測定点QのX方向およびY方向の間隔は、変動測定点Pの間隔Δx,Δyよりも大きくなるように、試料Sの凹凸の周期に応じて設定される。
ここで、焦点測定点QのX方向およびY方向の間隔は、制御部2によって自動的に設定されてもよいし、ユーザが入力装置4を使用して制御部2に入力してもよい。
【0038】
フォーカスマップの作成後、演算装置28は、フォーカスマップにおける焦点測定点Q(Xq,Yq)間の合焦Z位置を、記憶装置24に記憶されているZ方向変動情報に基づいて補間する。
まず、演算装置28は、図5および図6に示されるように、Z方向変動情報に含まれているZ位置に基づいて、変動測定点P(Xp,Yp)間のZ位置を補間する補間式Fp(X,Y)を算出する。補間式Fp(X,Y)の算出には、線形補間、多項式補間等の任意の手法が用いられる。
【0039】
次に、演算装置28は、フォーカスマップと補間式Fp(X,Y)から、試料SのZ方向の凹凸(高さ)を表す式Fs(X,Y)を算出する。すなわち、演算装置28は、フォーカスマップの各焦点測定点Q(Xq,Yq)における合焦Z位置から、補間式Fpから算出された各焦点測定点Q(Xq,Yq)におけるZ位置を減算する(すなわち、ステージ5のZ位置の変動成分を除去する)ことで、各焦点測定点Q(Xq,Yq)における試料Sの凹凸情報Zsを算出する。次に、演算装置28は、焦点測定点Q(Xq,Yq)間における凹凸情報を補間する補間式Fs(X,Y)を算出する。
【0040】
次に、演算装置28は、下式の通り、補間式Fs(X,Y)と補間式Fp(X,Y)とを加算することで、フォーカスマップにおける焦点測定点Q間の合焦Z位置を補間する補間式G(X,Y)を得る。
G(X,Y)=Fs(X,Y)+Fp(X,Y)
このような補間式G(X,Y)によれば、試料Sの凹凸情報Fs(X,Y)に応じて変動する合焦Z位置が算出される。さらに、焦点測定点Q以外の位置では、補間式Fp(X,Y)の項によって、ステージ5のZ位置の変動に応じて変動するように補正された合焦Z位置が算出される。
【0041】
フォーカスマップの作成は、演算装置28が、補助記憶装置に格納されたフォーカスマップ作成プログラムに従ってステージ制御部21および焦準部制御部23を制御することで行われ、フォーカスマップの補間は、演算装置28が、補助記憶装置に格納されたフォーカスマップ補間プログラムに従って演算処理することで行われる。フォーカスマップの作成は、ユーザがステージ5および焦準部8を手動で移動させることで行われてもよい。
【0042】
ユーザは、入力装置4を使用して、所望の点αのXY位置を入力する。入力されたXY位置は、入力制御部27を介して演算装置28に送られる。演算装置28は、点αのXY位置にステージ5を移動させる。また、演算装置28は、点αにおける対物レンズ71の合焦Z位置を補間式G(X,Y)から算出し、算出された合焦Z位置に対物レンズ71を移動させるように焦準部制御部23を介して焦準部8を制御する。これにより、焦点が試料Sに合うように対物レンズ71の合焦制御が演算装置28によって行われる。
【0043】
このように、送り機構6の機械的要因によってステージ5がXY方向の移動時にZ方向にも周期Lx,Lyで変動する。したがって、フォーカスマップの離散的な焦点測定点Qでの合焦Z位置のみに基づいて、ステージ5のZ位置の変動に関わらず対物レンズ71の焦点を試料Sに正確に合わせることは難しい。特に、焦点測定点QのXY方向の間隔が周期Lx,Lyよりも大きい場合には、焦点測定点Q間での合焦Z位置の変動を焦点測定点Qにおける合焦Z位置から予測することができない。
【0044】
本実施形態によれば、ステージ5がXY方向に移動させられたときのステージ5のZ位置の変動を示すZ方向変動情報が記憶装置24に予め記憶されている。そして、Z方向変動情報に基づいて、ステージ5のZ位置の変動に応じて変動するように補正された合焦Z位置が焦点測定点Q間に補間される。このように補間されたフォーカスマップ(すなわち、補間式G(X,Y))に基づいて、対物レンズ71の焦点を正確に試料Sに合わすことができる。また、凹凸の周期が大きい試料Sの場合には、フォーカスマップの焦点測定点Qの間隔を大きく設定して焦点測定点Qの数を減らすことができるので、フォーカスマップの作成に要する時間を短縮し、対物レンズ71の合焦制御を効率的に行うことができる。
【0045】
本実施形態においては、補間式Fp(X,Y)の算出を試料Sの観察時に行うこととしたが、これに代えて、ステージキャリブレーションにおいて補間式Fp(X,Y)の算出を行ってもよい。この場合、演算装置28は、Z方向変動情報として補間式Fp(X,Y)を記憶装置24に記憶させる。あるいは、演算装置28は、各XY位置におけるZ位置を補間式Fp(X,Y)から算出し、XY位置とZ位置とを相互に対応付けたテーブルデータをZ方向変動情報として記憶装置24に記憶させてもよい。
このようにすることで、試料Sの観察時の計算量および計算時間を削減することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、焦点測定点QのX方向およびY方向の間隔を、変動測定点Pの間隔Δx,Δyよりも大きくなるように設定したが、変動測定点Pの間隔Δx,Δy以下となるように設定してもよい。この場合、制御部2は、フォーカスマップの補間演算を行わないように制御する。
【0047】
参考実施形態)
次に、本発明の参考実施形態に係る顕微鏡装置200について図面を参照して説明する。
本実施形態においては、第1の実施形態と異なる構成について説明し、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る顕微鏡装置200は、対物レンズ71の焦点を試料Sに自動的に合わせるオートフォーカス(AF)機能を備えている点において、第1の実施形態と異なっている。
【0048】
顕微鏡装置200は、図7に示されるように、顕微鏡部1と、顕微鏡部1に搭載されたAFユニット(自動焦点測定部)11と、制御部201と、モニタ3と、入力装置4とを備えている。
【0049】
オートフォーカス(AF)ユニット11は、焦点が試料Sに合う対物レンズ71の合焦Z位置を検出する。AFユニット11としては、光路差方式、瞳分割方式、または位相差方式等の公知の方式のものが使用される。AFユニット11に代えて、カメラ75によって取得された画像のコントラストに基づいて合焦Z位置を検出するコントラストオートフォーカス方式の自動焦点測定部を用いてもよい。
【0050】
制御部201は、ステージ制御部21、カメラ制御部22、焦準部制御部23、記憶装置24、画像出力部26、入力制御部27、および演算装置28に加えて、オートフォーカス(AF)ユニット制御部29を備えている。
記憶装置24には、Z方向変動情報として、ステージキャリブレーションによって取得された複数の変動測定点Pにおける対物レンズ71のZ位置が少なくとも記憶されており、補間式Fp(X,Y)がさらに記憶されていてもよい。
【0051】
演算装置28は、ステージ制御部21を介してステージ5をXY方向に移動させたときに、対物レンズ71の合焦Z位置を検出して合焦Z位置に対物レンズ71を移動させるAF動作を、焦準部制御部23およびAFユニット制御部29を介して焦準部8およびAFユニット11に実行させる。
【0052】
AF動作において、焦準部8は、焦点が所定の開始位置からZ方向に移動するように対物レンズ71を所定のZ位置からZ方向に移動させ、AFユニット11が各Z位置における対物レンズ71の合焦状態を評価することで、焦点が試料Sに合う合焦Z位置を探索する。AFユニット11によって検出された合焦Z位置は、AFユニット制御部29を介して演算装置28に送られる。演算装置28は、検出された合焦Z位置に対物レンズ71を配置するように焦準部制御部23を介して焦準部8を制御する。
【0053】
このときに、演算装置28は、一度AF動作を実行させた後は、記憶装置24に記憶されているZ位置変動情報に基づいて、AF動作の合焦Z位置の探索における焦点の移動の開始位置を補正する。
具体的には、図8に示されるように、演算装置28は、ステージ5を、既にAF動作が実行されたXY位置(測定済位置)から、未だAF動作が実行されていないXY位置(未測定位置)へステージ5を移動させるときに、測定済位置と未測定位置との間でのステージ5のZ方向の変動量をZ位置変動情報から算出する。次に、演算装置28は、ステージ5を測定済位置から未測定位置へXY方向に移動させるとともに、測定済位置と未測定位置との間でのステージ5のZ方向の変動を相殺する方向にこの変動量の分だけ対物レンズ71を所定のZ位置からZ方向に移動させることで焦点の開始位置を補正する。その後、対物レンズ71の移動を開始させる。
【0054】
AF動作において、ステージ5をXY方向に移動させたときに、送り機構6によるステージ5のZ方向の変動により、ステージ5上の試料Sと対物レンズ71の焦点とのZ方向の相対位置が変化する。本実施形態によれば、ステージ5の移動に伴う試料Sと対物レンズ71の焦点とのZ方向の相対位置の変化が相殺されるように、合焦Z位置の探索における焦点の移動の開始位置が補正される。これにより、合焦Z位置の検出に要する時間を短縮し、Z方向のステージ5の変動に関わらず観察光学系7の合焦制御を効率的に行うことができる。
【0055】
本実施形態においては、演算装置28が、対物レンズ71の移動の開始位置の補正に加えて、図9に示されるように、既に検出された合焦Z位置に基づいて、合焦Z位置が未検出である点での合焦Z位置を外挿してもよい。図9の例では、既に検出された近傍の合焦Z位置から線形外挿によって未検出の合焦Z位置を予測しているが、合焦Z位置の予測には他の方法を用いてもよい。
このように、既に検出された合焦Z位置から未検出の点における合焦Z位置を予測して開始位置を補正することで、合焦Z位置の検出に要する時間をさらに短縮することができる。
【0056】
(第の実施形態)
次に、本発明の第の実施形態に係る顕微鏡装置300について図面を参照して説明する。
本実施形態においては、第1の実施形態と異なる構成について説明し、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る顕微鏡装置300は、図10に示されるように、ステージ5および送り機構6のユニット(以下、ステージユニット5,6という。)が顕微鏡部1に着脱可能であり、ステージユニット5,6の制御に必要なステージ制御部211および記憶装置241が、制御部202とは別体のステージコントローラ12に設けられている点において、第1および参考実施形態と異なっている。
【0057】
顕微鏡装置300は、顕微鏡部1と、制御部202と、モニタ3と、入力装置4と、ステージユニット5,6に接続されたステージコントローラ12とを備えている。
制御部202は、カメラ制御部22、焦準部制御部23、記憶装置25、画像出力部26、入力制御部27、および演算装置28に加えて、ステージコントローラ接続部30を備えている。
【0058】
ステージコントローラ12は、ステージコントローラ接続部30に着脱可能である。ユーザは、用意された複数種類のステージユニット5,6の中から所望のものを選択して顕微鏡部1に取り付け、そのステージユニット5,6のステージコントローラ12をステージコントローラ接続部30に接続する。ステージコントローラ12は、ステージコントローラ接続部30を介して演算装置28と接続される。
【0059】
ステージコントローラ12は、ステージ制御部211と、記憶装置(Z方向変動情報記憶部)241とを備えている。
ステージ制御部211は、第1の実施形態におけるステージ制御部21と同様にして、送り機構6を介してステージ5のX方向およびY方向の位置を制御する。
【0060】
本実施形態において、ステージキャリブレーションは、図11に示されるように、平坦度が確保されたゲージ14およびステージ較正器400を使用して行われる。符号402は、ステージ較正器400用の制御装置である。ゲージ14は、ステージ5上に配置される。
【0061】
ステージキャリブレーションにおいて、送り機構6によってXY方向の複数の変動測定点P(Xp,Yp)にステージ5を順に移動させ、各変動測定点P(Xp,Yp)におけるステージ5のZ位置が、レーザ測長器のような精密測定器401によって測定される。複数の変動測定点Pにおけるステージ5のZ位置は、Z方向変動情報として記憶装置241に記憶される。
【0062】
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏する。すなわち、Z方向変動情報が、ステージユニット5,6と共に持ち運び可能なステージコントローラ12内の記憶装置241に記憶されている。したがって、顕微鏡部1に新たに取り付けたステージ5用のステージキャリブレーションは不要であり、ユーザは、新たに取り付けたステージ5をすぐに使用することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0063】
100,200,300 顕微鏡装置
24,241 記憶装置(Z方向変動情報記憶部)
25 記憶装置(フォーカスマップ記憶部)
28 演算装置(焦点制御部)
5 ステージ
6 送り機構
62,64 ボールねじ
7 観察光学系
8 焦準部(焦点位置調整部)
11 オートフォーカスユニット(自動焦点測定部)
S 試料
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11