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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】顎矯正鋸及び位置決めインプラント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/62 20060101AFI20220512BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A61B17/62
A61C8/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017558705
(86)(22)【出願日】2016-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2016054988
(87)【国際公開番号】W WO2016180557
(87)【国際公開日】2016-11-17
【審査請求日】2019-02-13
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】102015107484.2
(32)【優先日】2015-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515121597
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテヒニーク ゲーエムベーハー ウント コーカーゲー
【氏名又は名称原語表記】KARL LEIBINGER MEDIZINTECHNIK GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbinger Strasse 10, 78570 Muehlheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ヴァイツェネッゲル
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】井上 哲男
【審判官】千壽 哲郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/043370(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/090964(WO,A2)
【文献】米国特許第5690631(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/80
A61B 17/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の骨の少なくとも一つの第1の骨領域を骨切り術によって哺乳類の骨の少なくとも一つの第2の骨領域から切断するための切断工具をガイドするように構成されており、且つ、前記少なくとも一つの第1の骨領域を、前記少なくとも一つの第1の骨領域から骨切り術によって切断された前記少なくとも一つの第2の骨領域に接合するように構成されている骨接合用インプラントであって、
複数の固定手段収容穴を有し、前記第1の骨領域に取り付けるために設けられた第1の固定領域と、
前記第1の固定領域に接続されており、複数の固定手段収容穴を有し、前記第2の骨領域に取り付けるために設けられた第2の固定領域と、
を備え、
前記第1の固定領域及び前記第2の固定領域の間で、切断線を指定する切断工具ガイド輪郭が形成されており、
前記切断工具ガイド輪郭は、前記第1の固定領域と前記第2の固定領域との間に構成されたフレーム構造の閉じた輪郭の内縁部によって形成され、
前記骨接合用インプラントは、上顎の前記第1の骨領域を前記上顎の前記第2の骨領域に接合するように設けられる、
骨接合用インプラント。
【請求項2】
前記切断工具ガイド輪郭は、帯状であることを特徴とする、請求項1に記載の骨接合用インプラント。
【請求項3】
前記切断工具ガイド輪郭は、前記第1の固定領域及び前記第2の固定領域に接続された接続バーによって直接的に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の骨接合用インプラント。
【請求項4】
前記固定領域及び前記切断工具ガイド輪郭は、1片の材料から形成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント。
【請求項5】
前記骨接合用インプラントは、金属材料から作製されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント。
【請求項6】
前記第2の固定領域と第3の固定領域との間に、切断線を指定する第2の切断工具ガイド輪郭が形成され、
前記第3の固定領域は、複数の固定手段収容穴を有し、前記第1の骨領域に取り付けるために設けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨切り術用途の/第1の骨領域を哺乳類の骨の第2の骨領域又は複数の骨領域に接合するための顎矯正骨接合用インプラント(位置決めインプラントとも呼ばれる)であって、複数の固定手段収容穴を有し、第1の骨領域に取り付けるために設けられた第1の固定領域を備え、第1の固定領域に接続され、複数の固定手段収容穴を備え、第2の骨領域に取り付けるために設けられた第2の固定領域を備えた、正顎骨接合用インプラントに関する。特に、例えば、下顎が叢生歯である場合等、下顎が2部分である場合、第1の骨領域が接合された複数の骨領域がある。哺乳類の骨/哺乳動物の骨とは、脊椎動物の特に硬い骨格生成中隔(skeletogenous septum)、したがってそのような骨組織の構造であると理解される。特に、腓骨及び脛骨のような骨だけでなく頭骨も含まれる。
【背景技術】
【0002】
現況技術から、一般的な骨接合用インプラントが既に知られている。その関連で、例えば、国際公開第2014/090964A2号は、インプラント及びガイドを、これらを構成する方法と一緒に開示している。インプラント及びガイドは、患者の上顎での骨切り術用途のために提供され、キットとして設計できる。術前及び術後の解剖学的構造の3次元モデルを使用して、ガイド及びインプラントの固定領域を画定する。次いで、当該固定領域をさらにインプラント及びガイドの構造を規定するために使用する。さらなる現況技術は、欧州特許第2698122A1号、国際公開第2011/136898A1号、国際公開第2013/156545A1号及び米国特許出願公開第2007/0276383A1号から公知である。
【0003】
文書D1(国際公開第2013/156545A1号)及び文書D2(米国特許出願公開第2007/0276383A1号)は両方とも、骨切り術を実施する前に1つのインプラントが挿入され、それとは異なるインプラントが互いに分離された骨領域を接合するために使用される、異なるインプラントを示す。
【0004】
しかしながら、従来技術から知られているこれらの構成は、通常、矯正され、その後、例えば上顎又は下顎のように再接合されるべきそれぞれの哺乳類の骨の切断処理に対して、2つの別個の要素を使用しなければならないという欠点を有する。好ましくは鋸引きプロセスによる哺乳類の骨の切断は、テンプレート型工具ガイドによって実現され、所望の位置における以前に分離された2つの骨領域の接合は、インプラントによって実現される。したがって、これまでの骨切り術用途では、ユーザ定義のツールガイド及びユーザ定義の位置決めインプラントの両方を作成する必要があった。これは、骨切り術用途に使用される要素の相対的に費用のかかる製造を必要とし、その結果間接的に比較的高い運転費も必要とした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術から知られている上記欠点をなくすことであり、特に、骨切り治療の経費をさらに削減すると同時に、骨接合用インプラントの患者専用/個人に合わせた改作が保証される骨接合用インプラントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、第1の固定領域と第2の固定領域との間で、(第1の)切断線を指定する(第1の)切断工具ガイド輪郭が形成されることによって達成される。第1の固定領域と第2の固定領域との間の位置によって、(空間的)位置が指定され、これは、哺乳類の骨に沿った空間的延長部で見ると、第1の固定領域と第2の固定領域との間に位置する。このように、切断工具ガイド輪郭は、第1の固定領域の第2の固定領域に面する側と、第2の固定領域の第1の固定領域に面する側との間に配置される。
【0007】
このような構成は、骨接合用インプラントを、位置決めインプラントとしてだけでなく、哺乳類の骨の2つの骨領域の先立つ切断のために切断テンプレートとしても使用することを可能にする。したがって、哺乳類の骨のそれぞれの奇形の矯正は、特に費用効果の高い方法で実施される。切断及び再接合のために同じインプラントを使用することの後述する他の利点は、特に従来の別個に構成されたツールガイド及び位置決めインプラントとの間の製造公差が回避されるという事実にもある。すると、2つの骨領域は、哺乳類の骨の治癒プロセスがさらに促進されるように、接合後に予め計算された目標位置に確実により正確に配置される。
【0008】
さらなる有利な実施形態は下位クレームに記載されており、以下で詳細に説明する。
【0009】
さらに、(第1の)切断工具ガイド輪郭が帯状である場合有利である。このようにして、切断工具、例えば鋸/丸鋸は、切断線/骨切り線に沿って2つの骨領域を切断するように、切断工具ガイド輪郭によって特に安定するように支持される。
【0010】
加えて、切断工具ガイド輪郭が、第1の固定領域及び/又は第2の固定領域に接続された接続バーによって直接構成されている場合有利である。これにより、骨接合用インプラントの特にコンパクトな設計が可能になる。
【0011】
切断工具ガイド輪郭が、第1の固定領域と第2の固定領域との間で設計/構成されたフレーム構造の内縁部によって形成される場合、切断工具ガイド輪郭は、骨接合用インプラントの特に寸法的に安定した領域に配置され、切断操作によってその構造を簡単に改変できないことが意図される。
【0012】
(第1及び第2の)固定領域と切断工具ガイド輪郭とが1つの材料で/互いに一体的に形成/接合されると、骨接合用インプラントがいっそうさらに安定する。したがって、固定領域及び切断工具ガイド輪郭は、互いに対して寸法的に安定するように構成されることがさらに好ましい。
【0013】
また、骨接合用インプラントが、生体適合性材料及び/又は生体吸収性材料から製造/完全に作製される場合も有利である。これにより、骨接合用インプラントを特に効率的に使用可能になる。
【0014】
これに関連して、骨接合用インプラントが金属材料、好ましくはチタン材料から作製される場合も特に有利である。さらに好ましくは、チタン材料を熱処理する。したがって、それ自体が特に寸法的に安定している骨接合用インプラントが実現される。
【0015】
また、第2の固定領域とさらなる第3の固定領域との間に、(第2の)切断線を指定する別の/第2の切断工具ガイド輪郭が形成される場合有用であり、第3の固定領域は複数の固定手段収容穴を備え、第1の骨領域に取り付けるために準備される。このようにして、2つの骨領域は、両方の骨領域によって固定された状態で互いに対して所定の位置においてさらに安定して固定される。第2の切断工具ガイド輪郭は、さらに好ましくは、第1の切断工具ガイド輪郭と同様に構成されている。
【0016】
骨接合用インプラントが、第1の骨領域を上顎骨/上顎又は下顎骨/下顎の第2の骨領域に接合させるために提供される場合にも有利である。これにより、骨接合用インプラントは特に効率的に機能する。
【0017】
加えて、本発明はまた、
a)治療される哺乳類の骨の実際の3Dモデルを第1のデータセットに記録するステップと、
b)実際の3Dモデル上に少なくとも1つの切断線を固定し、また互いに対して2つの仮想骨領域(すなわち、第2の骨領域に対して第1の骨領域)を移動させることによって、第2のデータセットにおいて目標3Dモデルを生成するステップと、
c)目標3Dモデル/第2のデータセットにより骨接合用インプラントを製造するステップであって、第1の固定領域は目標3Dモデルの第1の(仮想)骨領域に固定されるように形成され、第2の固定領域は、目標3Dモデルの第2の(仮想)骨領域に固定されるように形成され、切断工具ガイド輪郭は、切断線を少なくとも部分的にエミュレートすることによって形成される、ステップと
を好ましくは時間的に連続して実施することを含む、上記の実施形態の少なくとも1つによる骨インプラントの個人に合わせた製造方法に関する。
【0018】
このようにして、骨接合用インプラントの特に効率的な製造が実現される。
【0019】
さらに、本発明はまた、
a)骨接合用インプラントの第1の固定領域を哺乳類の骨の第1の骨領域に取り付けるステップと、
b)切断工具が切断工具ガイド輪郭に接触している間に切断線に沿って哺乳類の骨を切断するステップと、
c)第1の骨領域から切断された第2の骨領域を所望の目標位置に位置合わせするステップと、
d)第2の固定領域を第2の骨領域に固定するステップと
を含む、上記実施形態のいずれか1つによる骨接合用インプラントを使用して、好ましくはヒトである哺乳類の骨の治療方法に関する。
【0020】
このようにして、治療プロセスも特に効率的に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下、本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1】第1の固定領域及び第2の固定領域、ならびに第1の固定領域の接続バー上に形成された(第1の)切断工具ガイド輪郭が特に明らかである、有利な実施形態による本発明に係る骨接合用インプラントの等角図を示す。
図2図1に示す骨接合用インプラントの正面図を示し、この場合、第1の固定領域及び第2の固定領域とは別に、第2の固定領域に同じく接続されたさらなる第3の固定領域が明らかであり、当該第3の固定領域は(第2の)切断工具ガイド輪郭を形成する接続バーを含む。
図3】ヒト頭蓋の形態の哺乳類の骨の実際の3Dモデルの正面図を示しており、2つの2次詳細図によれば、図1及び図2による骨接合用インプラントの第1の固定領域及び第3の固定領域それぞれは、頭蓋の上顎に固定され、切断線は切断工具ガイド輪郭において光学的に強調される。
図4】切断工具ガイド輪郭に沿って切断工具によって形成される上顎の部分的な切開を施した後、またその後骨接合用インプラントを実際の3Dモデルから取り外した後の、図3に示す実際の3Dモデルの等角図を示す。
図5】以前に部分的に形成された切断線に沿って上顎の完全な切断を実施した後の実際の3Dモデルの等角図を示し、1つの切断線が光学的に強調されている。
図6】骨接合用インプラントが再び固定される前の上顎の先に切断された2つの骨領域を有する実際の3Dモデルの等角図を示す。
図7】第1の固定領域及び第3の固定領域が、順に第1の骨領域に取り付けられるが、第2の固定領域は依然として第2の骨領域から離間している、骨接合用インプラントの再取り付け状態における実際の3Dモデルの等角図を示す。
図8】第2の骨領域が第2の固定領域に接触するまで、第2の骨領域が第1の骨領域に対して移動矢印に沿って移動される下側からの頭蓋が示されている実際の3Dモデルの底面図を示す。
図9】第1の固定領域及び第3の固定領域、ならびに第2の固定領域の両方において、それぞれ第1の骨領域及び第2の骨領域にしっかりと接合された、骨接合用インプラントが完全に取り付けられた実際の3Dモデルの等角図を示す。
図10】上部接続バーの下側が波状又はジグザグ状である、他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面は単に概要であり、本発明の理解のためにのみ役立つ。同様の要素には同様の参照番号が付されている。
【0024】
図1から、好ましい実施形態による本発明に係る骨接合用インプラント1が特に明らかである。この図では、特に、複数の固定手段収容穴5aを有し、哺乳類の骨4の第1の骨領域2に取り付けるために設けられた第1の固定領域6と、第1の固定領域6に接続された第2の固定領域7とが明らかである。また、第2の固定領域7も複数の固定手段収容穴(以下、第2の固定手段収容穴5bと称する)を備えることにより、第2の固定領域7を哺乳類の骨4の第2の骨領域3に取り付けるために設けられる。
【0025】
図2からさらにはっきりと分かるように、メインバー22によって実質的に形成された第2の固定領域7も第3の固定領域16に接合される。メインバー22には第2の固定手段収容穴5bが鎖状に並置されている。メインバー22は、次に詳細に説明するように、第2の接続バー11及び第の接続バー13を順に形成する。第3の固定領域16も、第1の固定領域6と実質的に同様に構成され、以下で第3の固定手段収容穴5cと呼ぶ複数の固定手段収容穴を等しく有する。当該第3の固定手段収容穴5cも、以下で詳細に説明するように、第1の骨領域2に固定するのに役立つ。第1の固定領域6及び第3の固定領域16は、互いに三角形状に配置された第1の固定手段収容穴5a及び第3の固定手段収容穴5cをそれぞれ2組有している。
【0026】
第1の固定手段収容穴5aは、第1の固定領域6に割り当てられた第1の接続バー10上に配置され、この接続バーは、哺乳類の骨4に固定された状態で実質的に水平に並ぶ。このように、第1の固定領域6は、2組の第1の固定手段収容穴5a(第1の固定手段収容穴5aを3つずつ含む)を相互に連結している帯状の第1の接続バー10を形成する。次に、第1の固定領域6には、第1の接続バー10に対して実質的に垂直に並ぶ2つのブリッジバー21が接続されている。各ブリッジバー21は、固定手段収容穴5aの領域に第1の固定領域6と一体に形成されている。ブリッジバー21は、第2の固定領域7に形成されており、第1の接続バー10に対して実質的に平行に延びている、等しく帯状の第2の接続バー11に、第1の固定領域6及び第1の接続バー10を接続する。2つのブリッジバー21及び第2の固定領域7の第2の接続バー11は、第1の固定領域6の第1の接続バー10と共に、第1の実質的に菱形/矩形のフレーム構造15aを形成する。
【0027】
同様に、次に、第3の固定領域16は、第2の固定領域7に接続される。第3の固定手段収容穴5cは、第3の固定領域16に割り当てられた第3の接続バー12に配置される。第3の接続バー12は、哺乳類の骨4に固定された状態で、実質的に水平に並ぶ。このように、第3の固定領域16は、2組の第3の固定手段収容穴5c(第3の固定手段収容穴5cを3つずつ含む)を相互に連結している帯状の第3の接続バー12を構成する。次に、第3の接続バー12に対して実質的に垂直に並ぶ2つのブリッジバー21が第3の固定領域16に接続されている。各ブリッジバー21はそれぞれ、固定手段収容穴5cの領域で第3の固定領域16と一体に形成されている。ブリッジバー21は、第2の固定領域7に形成されており、第3の接続バー12に対して実質的に平行に延びている、等しく帯状の第4の接続バー13に、第3の固定領域16及び第3の接続バー12を接続する。2つのブリッジバー21及び第2の固定領域7の第4の接続バー13は、第3の固定領域16の第3の接続バー12と共に、第2の実質的に菱形/矩形のフレーム構造15bを形成する。
【0028】
この実施形態では、第1のフレーム構造15aは、第2のフレーム構造15bとは多少異なるように設計されている。第2のフレーム構造15bは、第3の接続バー12と第4の接続バー13の間の距離が第1の接続バー10と第2の接続バー11の間の距離よりも大きくなるように異なって設計されている。
【0029】
第3の固定手段収容穴5cは、第1の固定手段収容穴5a及び第2の固定手段収容穴5bと等しく設計されている。固定手段収容穴5a、5b、5cはすべて、通常の方法で骨ねじの形態の固定手段のための座を形成し、固定手段収容穴5a、5b、5cの各々は、それぞれの骨領域2、3から離れる方を向く側に円錐形ねじ頭接触面20を備える。2つの骨領域2、3へ骨接合用インプラント1を固定した状態では、骨ねじのねじ頭は、当該固定手段収容穴5a、5b、5cの皿穴に完全に埋められる。
【0030】
図1及び図2の概略からさらに明らかなように、固定領域6、7、16及びそれぞれのフレーム構造15a、15bに配置されたそれぞれの切断工具ガイド輪郭9、18は互いに一体的に、すなわち、1片の材料から形成される。
【0031】
この構成では、内縁部、すなわち、第1の接続バー10の第1の内縁部14aは、切断工具、すなわち鋸工具/丸鋸用のガイドレールとして機能するように設けられた第1の切断工具ガイド輪郭9を直接形成する。第1の切断工具ガイド輪郭9は、哺乳類の骨4に生成される第1の切断線8をエミュレートする。これに代えて又はこれに加えて、このような第1の切断工具ガイド輪郭9のように第2の接続バー11の(第2の)内縁部14bを構成することも可能である。第1の内縁部14a及び第2の内縁部14bは、互いに対向する接続バー10、11の側縁部である。
【0032】
さらに、第3の接続バー12の(第3の)内縁部14cもまた、切断工具ガイド輪郭、すなわち、第2の切断工具ガイド輪郭18として構成されている。第2の切断工具ガイド輪郭18もまた、第2の骨領域3から第1の骨領域2を切断する切断工具、すなわち、鋸工具/丸鋸のガイドレールとして機能する。第2の切断工具ガイド輪郭18は、哺乳類の骨4に生成される第2の切断線17をエミュレートする。これに代えて又はこれに加えて、ここでもこのような第2の切断工具ガイド輪郭18のように第4の接続バー13の(第4の)内縁部14dを設けることも可能である。第3の内縁部14c及び第4の内縁部14dは、互いに対向する接続バー10、11の側縁部である。
【0033】
第2の接続バー1及び第4の接続バー1もまた、翼状に配置された2つのフレーム構造15a、15bを寸法的に安定するように相互に連結するメインバー22の一体部分である。さらに別の実施形態によれば、メインバー22は、再閉鎖可能な機構を持つフレーム構造15a、15bの間の中央に構成され、その結果、フレーム構造15a、15bは互いに独立して骨領域2、3に固定でき、その後、当該機構を介して寸法的に安定するように相互に連結できることにも注目されたい。
【0034】
骨接合用インプラント1は、インプラントとしての構成により、生体適合性材料、すなわち、硬質チタン材料から形成/製造される。これに加えて又はこれに代えて、骨接合用インプラント1は、一部又は全部が生体吸収性材料で製造されてもよく/生体吸収性であってもよい。
【0035】
図3図9に関連して、本発明による骨インプラント1の製造方法も特に明らかになっている。この目的のために、例えば図3から明らかなように、最初に、ここではヒトの頭蓋の形態の、骨切り術によって治療される哺乳類の骨4の実際の3Dモデルが生成される。これは、哺乳類の骨4を走査し、哺乳類の骨4の3次元形状を含む/反映する第1のデータセットを確立する断層画像検出装置(CT法)によって行われる。
【0036】
当該哺乳類の骨4は、哺乳類の骨4の上顎/上顎骨19の奇形を既に含んでおり、これは、顎骨異常切断術(severing dysgnathic surgery)/骨切り治療によって治療できる。当該仮想の実際の3Dモデルを介して、上顎/哺乳類の骨4の目標3Dモデルが作成され、第1の固定領域6及び第3の固定領域16それぞれに対して、仮想の実際の3Dモデル上で切断線8及び17が決定される。実際の3Dモデルに配置された切断線8、17の各々には、切断工具ガイド輪郭9、18のうち1つが割り当てられ、切断工具ガイド輪郭9、18のうち1つが当該切断線8、17に対応して形成される。2つの切断線8、17を指定した後、2つの骨領域2、3は互いに仮想的に分離され、互いに対して所望の相対位置へと移動されるため、最終的に仮想目標3Dモデル(第2のデータセットで計算済み)が、図9で得られ、図9によれば、固定領域6、7、16が当該目標3Dモデルの形状に適合される。第1の固定領域6及び第3の固定領域16が第1の骨領域2と全面接触するように構成され、第2の固定領域7が、第2の骨領域3と全面接触するように構成されるように、固定領域6、7、16は互いに対して適合され、変形される。
【0037】
また、図3図9に関連して、哺乳類の骨4/頭蓋の治療プロセスが特に明らかになっている。この目的のために、最初に、既に製造された骨接合用インプラント1は、第1の固定領域6及び第3の固定領域16によって哺乳類の骨4に固定されるのに対して、第2の固定領域7は上顎の第2の骨領域3から分離されたままである(図3)。続いて、切断工具ガイド輪郭9及び18によって形成された切断線8、17に沿って、2つの骨領域2、3が、フレーム構造15a及び15b内で互いから部分的に切断されるが、これは、図1の2次詳細図に見ることができる。続いて、図4によると、骨接合用インプラント1を取り外して第1の骨領域2から除去し、図5のステップにおいて、既に描写されていた切断線8、17に沿って、さらに鋸引きすることによって第1の骨領域2を第2の骨領域3から完全に切断する。2つの骨領域2及び3が互いから完全に分離された後、骨接合用インプラント1は、第1の固定領域6及び第3の固定領域16によって第1の骨領域2に再び固定され(図6)、各固定手段収容穴5a、5cには骨ねじが差し込まれ、これは第1の骨領域2にねじ込まれる。図7による2つの固定領域6及び16が第1の骨領域2に固定された状態では、図8によれば、第1の骨領域から取り外された第2の骨領域3は、図9のように、第2の骨領域3が特に第2の固定手段収容穴5bの領域において第2の固定領域7に接触するまで、第1の骨領域2に対して移動される。第1の骨領域2と第2の骨領域3との間のこの意図して矯正された位置では、次に複数の骨ねじが第2の固定手段収容穴5bに差し込まれ、第2の骨領域3とねじ止めされる。最後に、このことにより、2つの骨領域2、3が骨接合用インプラント1によって互いに強固に接合されることになる。
【0038】
言い換えれば、本発明による考えは、鋸引きテンプレートと、複合型鋸及び位置決めインプラント1を形成する患者専用の正顎インプラントとの組み合わせにある。副子、ナビゲーション器具、マーキングねじ、ミリングライン等の必要とされる位置合わせ補助器具を省略できることが特に有利である。また、追加の穿孔テンプレートは省略される。さらに、計画の実施及び手術的介入の精度が改善され、追加で使用され得るキャリアの省略によって胚負荷も改善される。手術の過程も、個々の手術ステップの減少によって容易になる。加えて、追加の器具交換の省略及び個々のステップの当該減少により、手術時間が短縮される。このようにして、最終的には、製造ステップを減少させることによって、より費用効果の高い製造も実現される。
【0039】
本発明による骨接合用インプラント1の構成では、各側に2つの水平に延びるバー10、11;12、13は、頬骨歯槽稜から梨状口(framen piriformis)のそれぞれの側方に延びている左右の上顎壁の領域に配置される。当該2本のバー10、11;12、13はそれぞれ、形成された隙間/スリットによって鋸引きテンプレートに対応するガイドを形成する。隙間は、骨切除術を行うときに非平行に延びてもよい。この場合、上部バーの下縁部14a;14c及び下部バーの上縁部14b;14dは、骨切り術のためのガイドとして機能する。必要に応じて、バー10、11;12、13はさらなる固定オプションを得るために、ボアホールを設けることができる。水平方向のバー10、11;12、13は、上下対のバー10、11;12、13間の結合部を構成する4つの垂直方向のバー21に接続されている。計画された変位情報は、この領域の湾曲によって符号化される。2つの水平方向のバー10、11;12、13は、外側領域(側方)において十分な安定性を達成するために、この領域でそれぞれの垂直バー21に接続されている。それらは、必要に応じて頬骨の方向に延長され、骨接合ねじ(骨ねじ)による追加の固定オプションを得ることができる。副鼻腔の両側には、さらなる固定のためのボアホールを備えた垂直方向のバーが配置されている。水平方向のバー10、11;12、13は、鼻棘の下の左右の辺を接続する。鼻棘の領域では、最初に挿入するとすぐに大きなインプラントを個々の部品に分解することができるように、手術中にアンカー又は係止の原理によってその場で接続を行うことができる。複数の顎部分、例えば、3部ルフォールI型骨切り術に同じタイプのインプラントを同様に提供することができる。
【0040】
図10には、接続バー10の波状の下側のみが示されているが、特に、切断工具ガイド輪郭9として機能するこれらの位置すべてにおいて、複数のこのような幾何学的に交互の構造が設けられてもよい。これにより、鋸刃等の骨切断に使用される工具の接触面が減少するという利点を提供する。さらに、材料投入量を減らすために、おそらくは「Revellキット」の場合のように挟み込むことによって、鋸引きを始めた後「鋸引きガイド領域」を切断することができる場合もまた合理的であるという考察がなされている。次に、その形状も、例えば、振動ナイフがガイドされるガイドスリットのように設計することができる。「止め帯」は、鋸刃との接触面を最小限にするために、少なくとも片側、できれば2つの側を、「波状」に形成することができる。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
第1の骨領域(2)を骨切り術によって前記第1の骨領域(2)から切断された第2の骨領域(3)に、又は哺乳類の骨(4)の複数の骨領域に接合するための骨接合用インプラント(1)であって、
複数の固定手段収容穴(5a)を有し、前記第1の骨領域(2)に取り付けるために設けられた第1の固定領域(6)と、
前記第1の固定領域(6)に接続されており、複数の固定手段収容穴(5b)を有し、前記第2の骨領域(3)に取り付けるために設けられた第2の固定領域(7)と、
を備え、
前記第1の固定領域(6)及び前記第2の固定領域(7)の間で、切断線(8)を指定する切断工具ガイド輪郭(9)が形成されている、
骨接合用インプラント(1)。
(項目2)
前記切断工具ガイド輪郭(9)は、帯状であることを特徴とする、項目1に記載の骨接合用インプラント(1)。
(項目3)
前記切断工具ガイド輪郭(9)は、前記第1の固定領域(6)及び/又は前記第2の固定領域(7)に接続された接続バー(10、11)によって直接的に形成されることを特徴とする、項目1又は2に記載の骨接合用インプラント(1)。
(項目4)
前記切断工具ガイド輪郭(9)は、前記第1の固定領域(6)と前記第2の固定領域(7)との間に構成されたフレーム構造(15a)の内縁部(14a、14b)によって形成されることを特徴とする、項目1~3のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント(1)。
(項目5)
前記固定領域(6、7)及び前記切断工具ガイド輪郭(9)は、1片の材料から形成されることを特徴とする、項目1~4のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント(1)。
(項目6)
前記骨接合用インプラント(1)は、金属材料から作製されることを特徴とする、項目1~5のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント(1)。
(項目7)
前記第2の固定領域(7)と第3の固定領域(16)との間に、切断線(17)を指定する第2の切断工具ガイド輪郭(18)が形成され、
前記第3の固定領域(16)は、複数の固定手段収容穴(5c)を有し、前記第1の骨領域(2)に取り付けるために設けられる、項目1~6のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント(1)。
(項目8)
前記骨接合用インプラント(1)は、第1の骨領域(2)を上顎(19)又は下顎の第2の骨領域(3)に接合するように設けられる、項目1~7のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント(1)。
(項目9)
項目1~8のいずれか一項に記載の骨接合用インプラント(1)の個別製造のための方法であって、
a)前記哺乳類の骨(4)の実際の3Dモデルを第1のデータセットに記録するステップと、
b)前記実際の3Dモデル上の少なくとも1つの切断線(8、17)を決定し、互いに対して前記少なくとも1つの切断線(8、17)により分離された2つの仮想骨領域(2、3)を相対的に移動させることによって、第2のデータセットにおいて目標3Dモデルを設計するステップと、
c)前記目標3Dモデルにより前記骨接合用インプラント(1)を製造するステップであって、
前記第1の固定領域(6)は、前記目標3Dモデルの前記第1の骨領域(2)に固定されるように形成され、
前記第2の固定領域(7)は、前記目標3Dモデルの前記第2の骨領域(3)に固定されるように形成され、
前記切断工具ガイド輪郭(9)は、前記少なくとも1つの切断線(8、17)を少なくとも部分的にエミュレートすることによって形成される、ステップと、
を含む、方法。
【符号の説明】
【0041】
1:骨接合用インプラント
2:第1の骨領域
3:第2の骨領域
4:哺乳類の骨
5a:第1の固定手段収容穴
5b:第2の固定手段収容穴
5c:第3の固定手段収容穴
6:第1の固定領域
7:第2の固定領域
8:第1の切断線
9:第1の切断工具ガイド輪郭
10:第1の接続バー
11:第2の接続バー
12:第3の接続バー
13:第4の接続バー
14a:第1の内縁部
14b:第2の内縁部
14c:第3の内縁部
14d:第4の内縁部
15a:第1フレーム構造
15b:第2フレーム構造
16:第3の固定領域
17:第2の切断線
18:第2の切断工具ガイド輪郭
19:上顎
20:ねじ頭接触面
21:ブリッジングバー
22:メインバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10