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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】シリンジポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018037591
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019150297
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 学
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-520625(JP,A)
【文献】特開2009-291323(JP,A)
【文献】特表2014-513590(JP,A)
【文献】特開2000-167047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジの押し子を押圧するスライダと、
前記押し子に当接する前記スライダの押圧部と向かい合い、前記押し子を把持可能な把持部と、
前記把持部を回動可能なレバーと、
前記レバーが初期位置から回動し、前記把持部が所定の閉位置から回動を開始した後に、前記押圧部から離間する方向に前記把持部を押し出す押出部と
を備え
前記押出部は、
前記レバーが前記初期位置から所定位置まで回動した後に前記把持部に摺動し、前記レバーが前記所定位置から回動するにつれて、前記離間する方向に前記把持部を押し出すように形成された押出傾斜面を備える
シリンジポンプ。
【請求項2】
シリンジの押し子を押圧するスライダと、
前記押し子に当接する前記スライダの押圧部と向かい合い、前記押し子を把持可能な把持部と、
前記把持部を回動可能なレバーと、
前記レバーが初期位置から回動し、前記把持部が所定の閉位置から回動を開始した後に、前記押圧部から離間する方向に前記把持部を押し出す押出部と
を備え、
前記押出部は、
前記押し子の周縁よりも外側である所定の開位置まで前記把持部が回動した後に、前記離間する方向に前記把持部を押し出す
シリンジポンプ。
【請求項3】
シリンジの押し子を押圧するスライダと、
前記押し子に当接する前記スライダの押圧部と向かい合い、前記押し子を把持可能な把持部と、
前記把持部を回動可能なレバーと、
前記レバーが初期位置から回動し、前記把持部が所定の閉位置から回動を開始した後に、前記押圧部から離間する方向に前記把持部を押し出す押出部と、
前記スライダに対して進退可能に設けられ、前記押し子の設置状態を検知する検知部材と
を備え、
前記押出部は、
前記レバーが前記初期位置から回動すると、前記検知部材に摺動し、前記レバーが回動するにつれて、前記検知部材が前記スライダ内に後退するように形成された後退傾斜面を備える
シリンジポンプ。
【請求項4】
前記押出部は、
前記レバーが前記初期位置から所定位置まで回動した後に前記把持部に摺動し、前記レバーが前記所定位置から回動するにつれて、前記離間する方向に前記把持部を押し出すように形成された押出傾斜面を備える
請求項2または3に記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記押出部は、
前記押し子の周縁よりも外側である所定の開位置まで前記把持部が回動した後に、前記離間する方向に前記把持部を押し出す
請求項1またはに記載のシリンジポンプ。
【請求項6】
前記スライダに対して進退可能に設けられ、前記押し子の設置状態を検知する検知部材
を備え、
前記押出部は、
前記レバーが前記初期位置から回動すると、前記検知部材に摺動し、前記レバーが回動するにつれて、前記検知部材が前記スライダ内に後退するように形成された後退傾斜面を備える
請求項1または2に記載のシリンジポンプ。
【請求項7】
前記レバーの回動が伝達される第1歯車と、
前記把持部に取り付けられ、前記第1歯車に噛み合う第2歯車と
を備え、
前記押出部は、
前記第2歯車が前記第1歯車に噛み合った状態で、前記離間する方向に前記把持部を押し出す
請求項1からのいずれか一つに記載のシリンジポンプ。
【請求項8】
前記把持部は、
一対設けられ、
各把持部は、
前記所定の閉位置から互いに離れる方向に回動する
請求項1からのいずれか一つに記載のシリンジポンプ。
【請求項9】
前記レバーは、
前記スライダによって前記押し子を押圧する駆動力を発生させる駆動部から前記スライダへの駆動力伝達状態を、前記スライダに前記駆動力が伝達される連結状態と、前記スライダに前記駆動力が伝達されない解放状態との間で切り替える
請求項1からのいずれか一つに記載のシリンジポンプ。
【請求項10】
シリンジの押し子を押圧するスライダと、
前記押し子に当接する前記スライダの押圧部と向かい合い、前記押し子を把持可能な把持部と、
前記把持部を回動可能なレバーと、
前記レバーの操作により、前記押圧部から離間する方向に前記把持部を押し出す把持部材摺動部を有する押出部と、
前記レバーの操作により、前記押し子の設置状態を検知する検知部材を前記スライダ内に後退させる検知部材摺動部と、
を備え、
前記押出部は、
前記レバーが初期位置にある場合に、前記把持部材摺動部と第1クリアランスを有して近接する第1腕部と、
前記レバーが初期位置にある場合に、前記検知部材摺動部と第2クリアランスを有して近接する第2腕部と、
更に有し、
前記第1クリアランスの大きさは、前記第2クリアランスの大きさよりも小さい
シリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンジポンプにおいて、押しボタンが押されると、シリンジの押し子を保持する保持アームを前方に移動させるとともに、保持アームを回動させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-192399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記技術では、シリンジをシリンジポンプに設置する場合に、保持アームが開く前に保持アームが前方に移動し、保持アームが押し子に接触し、シリンジ内の薬剤が送出されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記を課題の一例とするものであり、シリンジをシリンジポンプに設置する場合に、シリンジ内の薬剤が送出されることを抑制するシリンジポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るシリンジポンプは、シリンジの押し子を押圧するスライダと、前記押し子に当接する前記スライダの押圧部と向かい合い、前記押し子を把持可能な把持部と、前記把持部を回動可能なレバーと、前記レバーが初期位置から回動し、前記把持部が所定の閉位置から回動を開始した後に、前記押圧部から離間する方向に前記把持部を押し出す押出部とを備える。前記押出部は、前記レバーが前記初期位置から所定位置まで回動した後に前記把持部に摺動し、前記レバーが前記所定位置から回動するにつれて、前記離間する方向に前記把持部を押し出すように形成された押出傾斜面を備える。
【0007】
本発明の一態様によれば、シリンジをシリンジポンプに設置する場合に、シリンジ内の薬剤が送出されることを抑制するシリンジポンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、シリンジが載置されていない状態のシリンジポンプの概略斜視図である。
図1B図1Bは、シリンジが載置されている状態のシリンジポンプの概略斜視図である。
図2図2は、シリンジポンプの概略正面図である。
図3図3は、駆動ユニットの斜視図である。
図4A図4Aは、噛み合い部がリードスクリューに噛み合う連結状態を示す断面図である。
図4B図4Bは、噛み合い部がリードスクリューに噛み合わない解放状態を示す断面図である。
図5図5は、図2におけるV-V断面図である。
図6図6は、把持部などを上方奥側から見た斜視図である。
図7図7は、把持部などを下方奥側から見た斜視図である。
図8図8は、図6におけるA矢視図である。
図9図9は、図8のIX-IX断面における第1斜面と摺動部との位置関係を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係るシリンジポンプについて説明する。なお、以下の説明で参照する各図面において、各要素の寸法の関係や比率等は実物と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一の役割を果たす構成要素には同一の符号が付されている。
【0010】
以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、シリンジポンプ1のケース2の延伸方向をX軸方向および前後方向とし、鉛直方向に平行な方向をZ軸方向および上下方向とし、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸方向とする。なお、ケース2の延伸方向は、シリンジ100の押し子102を押圧する方向と平行である。
【0011】
また、X軸正方向を「前方」とし、X軸負方向を「後方」とし、前方に移動することを「前進」とし、後方に移動することを「後退」とする。また、Y軸正方向を「手前」とし、Y軸負方向を「奥側」とする。
【0012】
実施形態に係るシリンジポンプ1について図1A図1Bおよび図2を参照し説明する。図1Aは、シリンジが載置されていない状態のシリンジポンプ1の概略斜視図である。図1Bは、シリンジが載置されている状態のシリンジポンプ1の概略斜視図である。図2は、シリンジポンプ1の概略平面図である。
【0013】
シリンジポンプ1は、ケース2と、駆動ユニット3とを備える。
【0014】
ケース2には、シリンジ100が載置される置き台2Aが形成される。置き台2Aは、前後方向に沿って形成される。置き台2Aには、シリンジ100の筒部101を置き台2Aに固定するクランプ2Bが設けられる。クランプ2Bは、例えば、置き台2Aに回動可能に取り付けられ、シリンジ100を置き台2Aに固定する固定位置と、シリンジ100を着脱可能な着脱位置との間で回動可能である。なお、クランプ2Bは、スライドさせることでシリンジ100を置き台2Aに固定し、着脱可能としてもよい。
【0015】
また、ケース2には、置き台2Aに隣接する凹部2Cが形成される。ケース2には、前後方向に沿って凹部2Cと置き台2Aとが並んで形成され、凹部2Cは、置き台2Aよりも後方に形成される。凹部2Cは、置き台2Aよりも奥側に窪むように形成される。
【0016】
凹部2Cには、前後方向と直交する面2Dから、蛇腹25に覆われたシャフト17が突出し、シャフト17に接続されるスライダ18が設けられる。
【0017】
また、凹部2Cには、筒部101のフランジ101aを保持するフランジホルダ4が設けられる。フランジホルダ4は、凹部2Cを形成する奥側の面2Eに板バネ5を介して取り付けられる。
【0018】
シリンジポンプ1は、シリンジ100の押し子102をスライダ18によって押圧することで、シリンジ100から薬剤を送出する。
【0019】
駆動ユニット3について、図3を参照し説明する。図3は、駆動ユニット3の斜視図である。なお、図3では、説明のため一部の構成を省略している。駆動ユニット3の一部は、ケース2に収容される。
【0020】
駆動ユニット3は、一対の平板部10a、10bと、モータ11と、ギア群12と、リードスクリュー13と、噛み合い部14と、受け部材15と、一対のガイドシャフト16と、シャフト17と、スライダ18と、切替レバー19と、一対の把持部20a、20bと、押出機構21とを有する。
【0021】
平板部10a、10bは、前後方向に直交するように設けられ、ケース2(図1A図1B参照)内に収容され、ケース2に固定される。なお、一対の平板部10a、10bのうち、スライダ18に近い後方側の平板部10aを第1平板部10aとし、第1平板部10aよりもスライダ18から遠い前方側の平板部10bを第2平板部10bとして称する場合がある。
【0022】
モータ11は、たとえば、HB(Hybrid)モータやステッピングモータなどであり、第1平板部10aに取り付けられる。ギア群12は、直列に連結される複数のギアで構成され、第1平板部10aに回転可能に取り付けられる。ギア群12は、モータ11により発生された駆動力をリードスクリュー13に伝達する。なお、モータ11およびギア群12は、第2平板部10bに取り付けられてもよい。モータ11は、駆動部を構成する。
【0023】
リードスクリュー13は、平板部10a、10bに回転可能に支持される。リードスクリュー13は、モータ11から、ギア群12を経由して駆動力が伝達されることにより、所定の回転方向に回転する。リードスクリュー13には、らせん溝(不図示)が形成されている。
【0024】
噛み合い部14は、シャフト17の内側シャフト17bに固定される。噛み合い部14は、図4Aに示すように、リードスクリュー13と向かい合うハーフナット14aを備える。ハーフナット14aには、リードスクリュー13に形成されたらせん溝に噛み合い可能な歯形状を有する噛合面14bが形成される。図4Aは、噛み合い部14がリードスクリュー13に噛み合う連結状態を示す断面図である。
【0025】
噛み合い部14は、モータ11からスライダ18への駆動力伝達状態を、モータ11からスライダ18へ駆動力が伝達される連結状態と、モータ11からスライダ18へ駆動力が伝達されない解放状態との間で変更する。
【0026】
噛み合い部14は、図4Aに示す連結状態から、切替レバー19(図3参照)が操作されると、内側シャフト17bとともに図4Bに示すように回動する。これにより、噛合面14bが、らせん溝から離間し、噛合面14bと、らせん溝との噛み合いが解除され、駆動力伝達状態は、解放状態となる。図4Bは、噛み合い部14がリードスクリュー13に噛み合わない解放状態を示す断面図である。
【0027】
駆動力伝達状態が連結状態となっており、リードスクリュー13を所定の回転方向に回転させると、噛み合い部14によって、回転運動が直線運動に変換されて、噛み合い部14が前進する。なお、駆動力伝達状態が解放状態となっている場合には、手動によってスライダ18(図3参照)を容易に前後方向に移動させることができる。
【0028】
図3に戻り、受け部材15は、一対の壁部15a、15bを有し、噛み合い部14に隣接して設けられ、前後方向において噛み合い部14を挟持するように配置される。
【0029】
一対のガイドシャフト16は、ともに平板部10a、10bで支持され、前後方向に沿って延びる。一対のガイドシャフト16は、受け部材15を前後方向に移動可能となるように支持する。
【0030】
シャフト17は、円筒状の外側シャフト17aと、外側シャフト17aに挿通される内側シャフト17bとを備える。
【0031】
外側シャフト17aの後方の端部は、スライダ18に取り付けられ、前方の端部は、例えば、ケース2(図1参照)に摺動可能に支持される。外側シャフト17aは、回転することはない。ケース2から突出する外側シャフト17aは、蛇腹25に覆われている。
【0032】
内側シャフト17bは、前方で噛み合い部14に固定され、後方で切替レバー19に連結されている。そのため、内側シャフト17bは、切替レバー19が操作されて回動した場合に、外側シャフト17aの中で回動する。
【0033】
次に、スライダ18について、図5を参照し説明する。図5は、図2におけるV-V断面図である。
【0034】
スライダ18は、有底状の第1カバー30と、有底状の第2カバー31とを備える。スライダ18は、各カバー30、31の開口を合わせ、ネジなどにより、第1カバー30に第2カバー31を取り付けて形成される。スライダ18は、略直方体に形成される。スライダ18は、押出機構21などを収容する。
【0035】
第1カバー30の底部30aには、内側シャフト17bが挿入される孔33aが形成される。孔33aの周囲には、前方に突出する円筒状の突出部34が形成される。突出部34の先端には、突出部34の径方向外側に向けて突出し、蛇腹25が取り付けられる取付部34aが形成される。突出部34の内周壁と内側シャフト17bとの間には、外側シャフト17aが挿入される。
【0036】
また、第1カバー30の底部30aには、把持部20a、20bの軸部40a、40bを摺動可能および回動可能に支持する第1支持部35が形成される。第1支持部35には、把持部20a、20bの軸部40a、40bが挿入される孔(不図示)が形成される。なお、第1支持部35は、把持部20a、20bに対応して一対形成される。
【0037】
また、第1カバー30の底部30aには、押し子検知用部材60が挿入される孔33bが形成される。孔33bの周囲には、後方に突出する円筒状の第2支持部36が形成される。第2支持部36は、ストッパー65を介して押し子検知用部材60を前進および後退可能に支持する。
【0038】
第2カバー31には、切替レバー19の操作部19cが回動可能となるように凹部31bが形成される。第2カバー31は、押し子検知用部材60を前方に付勢するバネ64を収容する収容部38が形成される。第2カバー31の底部31aには、前方に向けて窪んだ第3支持部39が形成される。
【0039】
第3支持部39は、有底円筒状に形成され、切替レバー19の基端部19aが挿入される。第3支持部39は、切替レバー19を回動可能に支持する。第3支持部39の底部39aには、スライダカム51の取付部52bが挿入される孔39bが形成される。また、底部39aは、ワッシャ70を介してスライダカム51と、切替レバー19の基端部19aとによって挟持される。
【0040】
切替レバー19は、第2カバー31の第3支持部39に挿入される基端部19aと、基端部19aから第2カバー31の底部31aに沿って延びる腕部19bと、腕部19bの先端から前方に突出する操作部19cとを備える。基端部19aは、第2カバー31の第3支持部39内で、スライダカム51の取付部52bと接続される。切替レバー19は、レバーを構成する。
【0041】
次に、把持部20a、20bについて、図5図7を参照し説明する。図6は、把持部20a、20bなどを上方奥側から見た側斜視図である。図6は、説明のためスライダ18を省略している。図7は、把持部20a、20bなどを下方奥側から見た側斜視図である。図7は、説明のためスライダ18を省略している。
【0042】
把持部20a、20bは、左右方向(Y軸方向)に並んで配置される。なお、ここでは、把持部20a、20bのうち、右側(Y軸正方向)に配置された把持部20aを第1把持部20aとし、左側(Y軸負方向)に配置された把持部20bを第2把持部20bとして称する場合がある。また、ここでは、第1把持部20a、および第2把持部20bを備える場合を一例として説明するが、これに限られることはなく、第1把持部20aまたは第2把持部20bの一方のみが備えられてもよい。
【0043】
把持部20a、20bは、略L字状に形成され、前後方向に沿って形成される円柱状の軸部40a、40bと、軸部40a、40bの前方の先端から軸部40a、40bに直交するように形成される爪部41a、41bとを備える。把持部20a、20bは、前後方向に沿った軸である軸部40a、40bの軸を中心に回動する。
【0044】
軸部40a、40bは、第1カバー30の第1支持部35(図5参照)に形成された孔(不図示)に挿入され、第1支持部35によって回動可能に支持される。軸部40a、40bには、爪開閉ギア42a、42bと、バネ取付部43a、43bとが取り付けられる。爪開閉ギア42a、42bおよびバネ取付部43a、43bは、軸部40a、40bに固定されている。爪開閉ギア42a、42bは、第2歯車を構成する。
【0045】
爪部41a、41bは、第1カバー30の底部30a(図5参照)と向かい合うように形成される。把持部20a、20bは、第1カバー30の底部30aとによって押し子102を前後方向で挟持し、把持することができる。
【0046】
把持部20a、20bは、軸部40a、40bが連結部44によって回動可能に支持されている。第1把持部20aの爪開閉ギア42aは、内側シャフト17bに固定されたクランクギア45と噛み合っており、第2把持部20bの爪開閉ギア42bは、クランクギア45と噛み合うカウンターギア46と噛み合っている。カウンターギア46は、スライダ18(図5参照)に回動可能に支持される。クランクギア45は、第1歯車を構成する。カウンターギア46は、第1歯車を構成する。
【0047】
第2把持部20bは、カウンターギア46を介してクランクギア45の回動が伝達されるため、第1把持部20aと第2把持部20bとは、内側シャフト17b(クランクギア45)が回動した場合に、逆方向に回動する。
【0048】
また、クランクギア45および第1把持部20aの爪開閉ギア42aは、噛み合った状態で、第1把持部20aが前後方向に移動可能となるように形成される。また、カウンターギア46および第2把持部20bの爪開閉ギア42bは、噛み合った状態で、第2把持部20bが前後方向に移動可能となるように形成される。なお、第1把持部20aおよび第2把持部20bは、連結部44によって連結されており、前後方向に一体的に移動する。
【0049】
把持部20a、20bは、バネ取付部43a、43bに取り付けられたバネ47によって爪部41a、41bが近接するように付勢される。また、把持部20a、20bは、第1カバー30の第1支持部35と爪開閉ギア42a、42bとの間に設けられたバネ48a、48bによって後方に付勢されている。
【0050】
次に、押出機構21について、図5図8を参照し説明する。図8は、図6におけるA矢視図である。押出機構21は、把持部20a、20bを押し出すための摺動部50(以下、「押し出し用摺動部50」と称する。)と、スライダカム51とを備える。押し出し用摺動部50は、把持部材摺動部を構成する。
【0051】
押し出し用摺動部50は、左右方向における連結部44の中央に取り付けられる。押し出し用摺動部50の後方の先端は、半球状に形成される。押し出し用摺動部50は、連結部44、すなわち把持部20とともに前後方向に移動する。
【0052】
スライダカム51は、基端部52と、第1腕部53と、第2腕部54とを備える。基端部52は、略円柱状に形成され、内側シャフト17bと切替レバー19との間に設けられる。基端部52に形成された凹部52aには、内側シャフト17bが挿入される。また、基端部52は、後方に突出する取付部52bを備える。取付部52bは、第2カバー31の底部31aに形成された孔39bに挿入され、切替レバー19の基端部19aに形成された凹部19dに挿入される。スライダカム51は、切替レバー19および内側シャフト17bに固定され、切替レバー19の回動に伴い、内側シャフト17bとともに回動する。スライダカム51は、押出部を構成する。
【0053】
第1腕部53は、基端部52から、基端部52の径方向外側に向けて形成される。第1腕部53には、押し出し用摺動部50と摺動可能な第1斜面53aが形成される。第1斜面53aは、切替レバー19が初期位置から回動された場合に、押し出し用摺動部50を前方に押し出すように、すなわち把持部20a、20bを前方に押し出すように傾斜して形成される。第1斜面53aは、押出傾斜面を構成する。
【0054】
なお、切替レバー19が初期位置にある場合には、図9に示すように第1斜面53aが押し出し用摺動部50に当接しないように第1所定クリアランス(第1クリアランス)が設けられる。すなわち、第1腕部53は、切替レバー19が初期位置にある場合に、押し出し用摺動部50と第1所定クリアランスを有して、押し出し用摺動部50に近接するように設けられる。図9は、図8のIX-IX断面における第1斜面53aと押し出し用摺動部50との位置関係を示す概略図である。
【0055】
図5図8に戻り、第2腕部54は、第1腕部53の先端から前方に向けて形成される。第2腕部54には、手前側の面から突出する突出部54aが形成される。突出部54aには、押し子検知用部材60の摺動部62(以下、「押し子検知用摺動部62」と称する。)に摺動可能な第2斜面54bが形成される。第2斜面54bは、切替レバー19が初期位置から回動された場合に、押し子検知用部材60の押し子検知用摺動部62に摺動し、押し子検知用部材60がスライダ18内に後退するように傾斜して形成される。第2斜面54bは、後退傾斜面を構成する。押し子検知用摺動部62は、検知部材摺動部を構成する。
【0056】
なお、第2斜面54bは、切替レバー19が初期位置にある場合に、第2斜面54bと押し子検知用摺動部62との間に、第1所定クリアランスよりも大きい第2所定クリアランス(第2クリアランス)が生じるように形成される。第2腕部54は、切替レバー19が初期位置にある場合に、押し子検知用摺動部62と第2クリアランスを有して、押し子検知用摺動部62と近接するように設けられる。すなわち、第1クリアランスの大きさは、第2クリアランスの大きさよりも小さく、第2斜面54bは、第1斜面53aが押し出し用摺動部50に摺動を開始した後に、押し子検知用摺動部62に摺動を開始するように形成される。
【0057】
なお、スライダカム51には、第2カバー31に一端が取り付けられたバネ55の他端が取り付けられ、切替レバー19が初期位置から回動した場合に、切替レバー19(スライダカム51)が初期位置に向けて回動するように付勢されている。
【0058】
押し子検知用部材60は、前後方向に延びる略円柱状の本体部61と、本体部61から奥側に突出する押し子検知用摺動部62と、本体部61から手前側に突出する切替部63とを備える。押し子検知用部材60は、第2カバー31の収容部38に収容されたバネ64によって前方に付勢される。本体部61には、全周にわたって凹部61aが形成され、凹部61aにはストッパー65が設けられる。ストッパー65が、第1カバー30の底部30aに当接することで、押し子検知用部材60は、前方への移動が規制される。押し子検知用部材60は、検知部材を構成する。
【0059】
押し子検知用部材60は、切替レバー19が初期位置であり、本体部61の前方の先端が第1カバー30の底部30aよりも前方に突出した初期状態では、切替部63が検知回路(不図示)のスイッチ(不図示)をOFFにする。そして、押し子検知用部材60が、初期状態から後退すると、切替部63が検知回路のスイッチをONにする。そのため、検知回路の通電状態を検出することで、押し子検知用部材60の設置状態、すなわちスライダ18が押し子102に当接しているか否かを判定することが可能となる。
【0060】
上記構成を有するシリンジポンプ1では、切替レバー19が初期位置から回動すると、切替レバー19とともに、スライダカム51、クランクギア45、内側シャフト17b、および噛み合い部14が回動する。
【0061】
なお、切替レバー19が初期位置となっている場合には、スライダカム51は押し出し用摺動部50に当接しておらず、把持部20a、20bは、前方に押し出されていない。また、把持部20a、20bは、図6に示すように、爪部41a、41bの先端が当接する閉状態(閉位置)となっている。また、噛み合い部14の噛合面14bはリードスクリュー13のらせん溝に噛み合っており、駆動力伝達状態は、連結状態となっている。また、押し子検知用部材60は、スライダ18から前方に突出しており、検知回路のスイッチはOFFになっている。
【0062】
切替レバー19が、初期位置から回動すると、内側シャフト17bおよび内側シャフト17bに取り付けられたクランクギア45が回動する。これに伴い、クランクギア45に噛み合う爪開閉ギア42aが回動し、第1把持部20aが図6に示すR方向に回動する。また、これと同時に、クランクギア45と噛み合うカウンターギア46を介して爪開閉ギア42bが回動し、第2把持部20bが図6に示すL方向に回動する。
【0063】
このように、切替レバー19が初期位置から回動することで、把持部20a、20bは、各爪部41a、41bが互いに離れる方向に回動し、開状態になる。すなわち、把持部20a、20bは、各爪部41a、41bが離間するように回動し、開状態になる。
【0064】
また、切替レバー19が初期位置から回動することで、噛み合い部14の噛合面14bは、リードスクリュー13のらせん溝から離間し、駆動力伝達状態は、解放状態となる。これにより、スライダ18を手動により容易に前進、または後退させることができる。
【0065】
さらに、切替レバー19が回動し、所定位置まで回動すると、スライダカム51の第1斜面53aが押し出し用摺動部50に当接する。そして、切替レバー19がさらに回動すると、押し出し用摺動部50がスライダカム51の第1斜面53aに摺動し、前方に押し出される。これにより、把持部20a、20bが前方、すなわちスライダ18(第1カバー30の底部30a)から離間する方向に押し出される。
【0066】
把持部20a、20bは、開状態を維持しつつ、前方に押し出され、爪部41a、41bは、押し子102の周縁の外側を通り、図8において破線で示すように、押し子102よりも前方に押し出される。
【0067】
また、スライダカム51の第2斜面54bが押し子検知用摺動部62に摺動し、押し子検知用摺動部62がスライダカム51によって後方に押され、押し子検知用部材60が後退し、検知回路のスイッチがONになる。
【0068】
その後、スライダ18(第1カバー30の底部30a)が押し子102に当接する位置に調整され、切替レバー19が初期位置に向けて戻されると、把持部20a、20bの爪部41a、41bが接近するように回動する。また、バネ48a、48bによる付勢力で把持部20a、20bが後退し、把持部20a、20bとスライダ18とによって押し子102が挟持される。
【0069】
また、押し子検知用部材60は、バネ64によって付勢されて前進し、押し子検知用部材60の本体部61の先端が、押し子102に当接する。押し子検知用部材60は、押し子102によってスライダ18(第1カバー30の底部30a)から突出することが妨げられる。そのため、検知回路のスイッチはONのままである。
【0070】
また、切替レバー19が初期位置に向けて戻されると、噛み合い部14の噛合面14bは、リードスクリュー13のらせん溝に噛み合い、駆動力伝達状態は、連結状態となる。
【0071】
その後、モータ11によってリードスクリュー13が回転すると、内側シャフト17b、およびスライダ18が前進し、スライダ18によって押し子102が押圧され、シリンジ100内の薬剤が送出される。
【0072】
シリンジポンプ1は、切替レバー19が初期位置から回動すると、把持部20a、20bが閉状態から開状態となるように回動を開始した後に、把持部20a、20bがスライダ18から離間するように把持部20a、20bを前方に押し出す。具体的には、シリンジポンプ1は、切替レバー19が初期位置から所定位置まで回動し、把持部20a、20bが回動を開始した後に、スライダカム51の第1斜面53aが押し出し用摺動部50に摺動し、切替レバー19が所定位置からさらに回動するにつれて、把持部20a、20bを前方に押し出す。
【0073】
これにより、シリンジポンプ1は、シリンジ100を設置し、押し子102を把持部20a、20bとスライダ18とによって挟持する場合に、把持部20a、20bが押し子102に後方から当接することを抑制することができる。そのため、シリンジポンプ1は、シリンジ100を設置する場合に、シリンジ100内の薬剤が送出されることを抑制することができる。また、シリンジポンプ1は、把持部20a、20bの回動と把持部20a、20bの押し出しとを切替レバー19の回動により行うことができ、操作が容易となる。
【0074】
シリンジポンプ1は、内側シャフト17bに取り付けられたクランクギア45と、第1把持部20aに取り付けられた爪開閉ギア42aとが噛み合った状態、およびクランクギア45に噛み合うカウンターギア46と、第2把持部20bに取り付けられた爪開閉ギア42bとが噛み合った状態で、把持部20a、20bを前方に押し出す。
【0075】
これにより、シリンジポンプ1は、把持部20a、20bを開状態に維持したまま、把持部20a、20bを前方に押し出すことができる。そのため、シリンジポンプ1は、把持部20a、20bを前方に押し出す場合に、把持部20a、20bが閉状態に向けて戻ることを抑制し、把持部20a、20bと押し子102とが当接することを抑制することができる。従って、シリンジポンプ1は、シリンジ100を設置する場合に、シリンジ100内の薬剤が送出されることを抑制することができる。
【0076】
シリンジポンプ1は、把持部20a、20bを用いて押し子102を挟持し、把持することで、シリンジ100をシリンジポンプ1に設置した場合に、押し子102を安定して把持することができる。
【0077】
シリンジポンプ1は、切替レバー19が初期位置から回動すると、押し子検知用部材60をスライダ18内に後退させる。
【0078】
これにより、シリンジ100をシリンジポンプ1に設置する場合に、作業者は、スライダ18の位置を調整可能となった状態になっていることを容易に確認することができる。そのため、シリンジポンプ1は、スライダ18の誤操作が発生することを抑制することができる。
【0079】
切替レバー19は、初期位置から回動することで、駆動力伝達状態を連結状態から解放状態に切り替える。
【0080】
これにより、シリンジポンプ1は、1つの切替レバー19によって、把持部20を回動し、前方に押し出しつつ、駆動力伝達状態を連結状態から解放状態に切り替えることができ、操作が容易となる。
【0081】
シリンジポンプ1は、切替レバー19が初期位置にある場合に、押し出し用摺動部50と第1斜面53aとの第1所定クリアランスの大きさを、押し子検知用摺動部62と第2斜面54bとの第2所定クリアランスの大きさよりも小さくする。
【0082】
これにより、シリンジポンプ1は、切替レバー19が初期位置から回動された場合には、把持部20a、20bを前方に押し出した後に、押し子検知用部材60を後退させる。従って、作業者は、スライダ18の位置を調整可能となった状態になっていることを容易に確認することができ、スライダ18の誤操作が発生することを抑制することができる。
【0083】
なお、シリンジポンプ1は、切替レバー19が初期位置から回動し、把持部20a、20bが押し子102の周縁よりも外側に回動した所定の開状態(開位置)まで回動した後に、把持部20a、20bを前方に押し出してもよい。これにより、シリンジポンプ1は、シリンジ100を設置する場合に、把持部20a、20bがシリンジ100の押し子102に当接することをさらに抑制し、シリンジ100内の薬剤が送出されることをさらに抑制することができる。
【0084】
また、シリンジポンプ1は、切替レバー19が初期位置から回動し、把持部20a、20bが押し子102の周縁よりも外側に回動した後に、押し子検知用部材60を後退させてもよい。これにより、シリンジポンプ1は、スライダ18の誤操作が発生することをさらに抑制することができる。
【0085】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 シリンジポンプ、2 ケース、3 駆動ユニット、17a 外側シャフト、17b 内側シャフト、18 スライダ、19 切替レバー、20a 把持部、20b 把持部、21 押出機構、42a 爪開閉ギア、42b 爪開閉ギア、45 クランクギア、46 カウンターギア、50 摺動部、51 スライダカム、53a 第1斜面、54b 第2斜面、60 押し子検知用部材、100 シリンジ、102 押し子
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9