(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】螺旋管用帯状部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20220512BHJP
F16L 9/16 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L9/16
(21)【出願番号】P 2018074919
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
(72)【発明者】
【氏名】宮武 優太
(72)【発明者】
【氏名】西谷 悠希
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-014959(JP,A)
【文献】特開2017-057920(JP,A)
【文献】特開2018-52015(JP,A)
【文献】特開2018-52014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
F16L 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻回され、帯幅方向の一端部と他端部との互いに一周ずれた部分どうしが嵌合されて螺旋管となる帯状部材であって、
前記帯幅方向の中間部を挟んで一端側と他端側とに分かれて互いに並行するように延びる第1片帯部及び第2片帯部と、
前記中間部を跨いで前記第1片帯部と前記第2片帯部を連ねるとともにこれら片帯部と並行するように延び、かつ前記帯幅方向へ伸縮可能な連結帯部と、
前記第1片帯部の前記中間部側の端部に設けられた第1係止部と、
前記第2片帯部の前記中間部側の端部に設けられた第2係止部と、を備え、
前記連結帯部が縮んだ状態で前記第1、第2係止部どうしが
前記帯幅方向に押し合うことによって前記帯幅方向に係止可能であり、
前記係止の解除によって前記連結帯部の伸び変形が許容されることを特徴とする帯状部材。
【請求項2】
前記連結帯部が、延び方向に沿って形成された易変形部を中心に屈曲・展開可能であり、前記連結帯部が屈曲された状態では前記第1、第2係止部どうしが離れ、前記連結帯部が展開された状態で、前記第1、第2係止部どうしが係止可能であることを特徴とする請求項1に記載の帯状部材。
【請求項3】
前記展開された状態かつ前記係止が解除された状態で、前記易変形部が前記帯幅方向へ伸縮可能であることを特徴とする請求項2に記載の帯状部材。
【請求項4】
前記第1片帯部及び前記第2片帯部どうし、並びに前記連結帯部が、未巻回状態では
断面V字状に屈曲されており、巻回によって展開され
て前記第1片帯部及び前記第2片帯部どうしの断面が一直線をなし、前記連結帯部の前記易変形部を挟んで両側部分どうしの断面が一直線をなすように断面変形されることを特徴とする請求項2又は3に記載の帯状部材。
【請求項5】
請求項4に記載の帯状部材を前記屈曲された状態で押出成形した後、巻取ドラムに巻き付けることによって前記断面変形を起こさせて前記第1、第2係止部どうし
の前記係止
を起こさせることを特徴とする螺旋管用帯状部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材及びその製造方法に関し、特に螺旋状に巻回されて螺旋管となる帯状部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の埋設管の内周面に沿って帯状部材を巻回して螺旋管状の更生管を製管することによって、前記埋設管を更生する方法は公知である。
例えば特許文献1の帯状部材は、幅方向の一端側の基板部と他端側の基板部とに分割されている。2つの基板部がベローズ状の伸縮部材によって連結されている。帯状部材の成形~製管時の伸縮部材は収縮されている。該帯状部材からなる更生管において、地盤沈下や地震等による大きな荷重が作用したときは、2つの基板部が離間されるとともに伸縮部材が幅方向に伸び変形することにより、破損が防止され、流下機能が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲特許文献1の帯状部材においては伸縮部材の伸び変形を止める機構を有しない。このため、想定したレベルの地盤沈下や地震等による荷重(以下「想定荷重」と称す)よりも小さな外力によっても伸縮部材が伸び変形し得る。製管前に伸縮部材が伸び変形すると、帯幅寸法が一定しなくなり製管し難くなる。また、製管されて更生管として供用後に前記小さな外力で伸縮部材が伸び変形すると、更生管の断面が変形して段差などが生じ、内面の平滑性が損なわれる。
本発明は、かかる事情に鑑み、更生管等の螺旋管となる帯状部材において、想定荷重に満たない外力では伸び変形しないよう規制することで、製管性や内面平滑性などを確保し、想定荷重以上の外力を受けたときは伸び変形を許容することで、破損を防止して流下機能などを確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、螺旋状に巻回され、帯幅方向の一端部と他端部との互いに一周ずれた部分どうしが嵌合されて螺旋管となる帯状部材であって、
前記帯幅方向の中間部を挟んで一端側と他端側とに分かれて互いに並行するように延びる第1片帯部及び第2片帯部(前掲特許文献1の2つの基板部に相当)と、
前記中間部を跨いで前記第1片帯部と前記第2片帯部を連ねるとともにこれら片帯部と並行するように延び、かつ前記帯幅方向へ伸縮可能な連結帯部(前掲特許文献1の伸縮部材に相当)と、
前記第1片帯部の前記中間部側の端部に設けられた第1係止部と、
前記第2片帯部の前記中間部側の端部に設けられた第2係止部と、を備え、
前記連結帯部が縮んだ状態で前記第1、第2係止部どうしが係止可能であり、
前記係止の解除によって前記連結帯部の伸び変形が許容されることを特徴とする。
【0006】
当該帯状部材は、好ましくは前記連結帯部が縮んだ状態かつ前記第1、第2係止部どうしが係止された状態で螺旋管に製管される。より好ましくは、あるレベルの地盤沈下や地震等を想定し、そのレベルの外力すなわち想定荷重に満たない外力(帯幅方向への引張力)では、前記係止が解除されないようにする。該係止による抵抗強度によって、連結帯部の伸び変形が阻止される。よって、帯状部材の帯幅寸法を一定に保持でき、製管性を確保できる。また、製管後(供用後)においては連結帯部の伸び変形に起因する螺旋管の断面変形を阻止できる。
前記想定荷重以上の外力が加わったときは、前記第1、第2係止部どうしの係止が解除される。これによって、連結帯部が第1、第2係止部の係止抵抗を受けることなく帯幅方向へ伸びることで、螺旋管の破損を防止できる。螺旋管が下水管などの流体を流す更生管である場合には、漏れを防止することで流下機能を確保できる。
【0007】
前記連結帯部が、延び方向に沿って形成された易変形部を中心に屈曲・展開可能であり、前記連結帯部が屈曲された状態では前記第1、第2係止部どうしが離れ、前記連結帯部が展開された状態で、前記第1、第2係止部どうしが係止可能であることが好ましい。
連結帯部の展開・屈曲に伴って、第1片帯部及び第2片帯部も易変形部を中心に展開・屈曲するように相対変形される。連結帯部及び第1、第2片帯部が屈曲された状態のときは、第1、第2係止部どうしが離れている。連結帯部ひいては第1、第2片帯部を展開させていくことで、第1、第2係止部どうしが接近して互いに係止される。
【0008】
前記展開された状態かつ前記係止が解除された状態で、前記易変形部が前記帯幅方向へ伸縮可能であることが好ましい。
これによって、易変形部の伸縮変形によって連結帯部が伸縮されるようにできる。
【0009】
前記連結帯部が、未巻回状態では屈曲されており、巻回によって展開されるように断面変形されることが好ましい。
未巻回状態とは、帯状部材の成形後、未だ巻回されていない状態を言う。一旦、帯状部材を巻回して曲率を付与すると、前記展開方向への断面変形によって第1、第2係止部どうしが係止される。
【0010】
本発明方法は、前記帯状部材を前記屈曲された状態で押出成形した後、巻取ドラムに巻き付けることによって前記断面変形を起こさせて前記第1、第2係止部どうしを係止させることを特徴とする。
そうすることで、第1、第2係止部どうしを離した状態で帯状部材を押出成形でき、成形を容易化できる。その後の巻取ドラムへの巻き付けによって、連結帯部が自然と展開されるように断面変形され、前記第1、第2係止部どうしが係止されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外力があるレベルに満たないときは帯状部材の拡幅変形を規制することで、製管性を確保したり螺旋管の断面形状を維持したりできる。あるレベル以上の外力が加わったときは、帯状部材の拡幅変形が許容されることで、螺旋管の破損を防止できる。螺旋管を下水管などの更生管として適用する場合、流下機能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1(a)】
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る帯状部材を押出成形後かつ巻取り前の状態で示す、
図2のIa-Ia線に沿う断面図である。
【
図1(b)】
図1(b)は、前記帯状部材を巻取り後の状態で示す、
図2のIb-Ib線に沿う断面図である。
【
図1(c)】
図1(c)は、前記帯状部材を想定荷重以上の外力(帯幅方向に沿う引張力)が作用した状態で示す断面図である。
【
図2】
図2は、前記帯状部材の製造装置を解説的に示す側面図である。
【
図3】
図3(a)は、前記帯状部材の押出成形後かつ巻取り前の第1、第2係止部を二点鎖線で示し、第1、第2係止部どうしが係止される途中段階を実線で示す、ハッチングを省略した断面図である。
図3(b)は、前記第1、第2係止部を係止状態で示す、ハッチングを省略した断面図である。
図3(c)は、前記第1、第2係止部を想定荷重以上の外力による係止解除状態で示す、ハッチングを省略した断面図である。
【
図4】
図4(a)は、前記帯状部材からなる更生管によって更生された既設埋設管の側面断面図である。
図4(a)は、前記更生管の斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、製管時の前記帯状部材の第1、第2嵌合部が嵌合される様子を示す断面図である。
図5(b)は、前記更生管における第1、第2嵌合部の嵌合状態を示し、
図4の円部Vbを拡大した断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第2実施形態に係る帯状部材の押出成形後かつ巻取り前の第1、第2係止部を実線で示し、第1、第2係止部どうしが係止される途中段階を二点鎖線で示す、ハッチングを省略した断面図である。
図6(b)は、前記第2実施形態の第1、第2係止部を係止状態で示す、ハッチングを省略した断面図である。
図6(c)は、前記第2実施形態の第1、第2係止部を想定荷重以上の外力による係止解除状態で示す、ハッチングを省略した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1~
図5は、本発明の第1実施形態を示したものである。
図4(a)に示すように、老朽化した下水道管等の既設の埋設管1の内面に更生管2(螺旋管)がライニングされることで、埋設管1が更生されている。埋設管1としては、下水道管の他、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管などが挙げられる。
【0014】
図4(b)に示すように、更生管2は、帯状部材3(プロファイル)によって形成されている。帯状部材3が、埋設管1の内周に沿って螺旋状に巻回されて更生管2となっている。
帯状部材3の材質は、ポリ塩化ビニルなどの樹脂である。
以下の説明では、特に断らない限り、帯状部材3は、後述する縮み状態かつ展開状態かつ係止状態であるものとする(
図1(b))。
【0015】
図1(b)に示すように、帯状部材3は、第1片帯部10と、第2片帯部20と、連結帯部30を備えている。第1片帯部10と第2片帯部20は、帯状部材3の帯幅方向(
図1(b)において左右)の中間部を挟んで一端側と他端側とに分かれて、互いに並行するように帯長方向(
図1(b)の紙面と直交する方向)へ延びている。帯状部材3の帯幅方向の中間部には、第1片帯部10と第2片帯部20との分かれ目3dが形成されている。
なお、中間部の分かれ目3dは、帯状部材3の帯幅方向のちょうど中央部に配置されている必要はなく、帯幅方向の一端側(
図1(b)において左側)に偏って配置されていてもよく、帯幅方向の他端側(
図1(b)において右側)に偏って配置されていてもよい。
【0016】
図1(b)に示すように、帯状部材3における一端側(同図において左側)の第1片帯部10は、平坦な第1平帯部11と、リブ12と、第1嵌合部13と、第1係止部14を有している。第1平帯部11の内周側面(更生管2に製管されたとき内周を向く面、
図1(b)において下面)は平滑面となっている。第1平帯部11の外周側面(更生管2に製管されたとき外周を向く面、
図1(b)において上面)にはリブ12が形成されている。
【0017】
第1平帯部11の一端側ひいては帯状部材3の一端部(
図1(b)において左端部)に凹凸形状の第1嵌合部13が形成されている。
第1平帯部11の他端部(
図1(b)において右端部)すなわち分かれ目3d側の端部には第1係止部14が形成されている。
図3(c)に示すように、第1係止部14は、係止案内部14cと、係止段差14dを含む。第1平帯部11の先端面が断面半円状に形成されることによって係止案内部14cとなっている。第1平帯部11の外周側面と係止案内部14cとの間に係止段差14dが形成されている。
【0018】
図1(b)に示すように、帯状部材3における他端側(同図において右側)の第2片帯部20は、平坦な第2平帯部21と、リブ22と、第2嵌合部23と、第2係止部24を有している。第2平帯部21の内周側面(更生管2に製管されたとき内周を向く面、
図1(b)において下面)は平滑面となっている。第2平帯部21の外周側面(更生管2に製管されたとき外周を向く面、
図1(b)において上面)にはリブ22が形成されている。
【0019】
図1(b)に示すように、第2片帯部20の分かれ目3d側(同図において左側)の端部には、第2係止部24が設けられている。
図3(c)に示すように、第2係止部24は、断面L字状のアーム部24aと、アーム部24aの先端部に形成された断面半円状の係止案内部24cと、アーム部24aの側面と係止案内部24cとの間に形成された係止段差24dを含む。
【0020】
図1(b)及び
図3(b)に示すように、係止部14,24の係止段差14d,24dどうしが互いに引っ掛かるように係止されている。以下、係止部14,24どうしが係止された状態を「係止状態」と称す。これによって、第1片帯部10と第2片帯部20とが帯幅方向へ離間するのが阻止されている。
一方、
図1(c)及び
図3(c)に示すように、設定荷重以上の引張力が帯幅方向に作用したときは、前記係止が解除され、第1片帯部10と第2片帯部20が分離され得る。以下、係止部14,24どうしの係止が外れた状態を「係止解除状態」と称す。
【0021】
図1(b)に示すように、第2片帯部20の他端側(同図において右側)ひいては帯状部材3の他端部には、凹凸形状の第2嵌合部23が形成されている。
図5(b)に示すように、更生管2においては、第1嵌合部13と第2嵌合部23の互いに一周ずれた部分どうしが対向して嵌合されている。これら嵌合部13,23どうしの嵌合強度は、係止部14,24どうしの係止強度よりも十分に高い。言い換えると、係止部14,24は、嵌合部13,23よりも十分に小さな力で係止解除され得る。
【0022】
図1(b)に示すように、帯状部材3の外周側部における第1片帯部10と第2片帯部20の間に連結帯部30が設けられている。連結帯部30は、分かれ目3dを跨いで第1片帯部10と第2片帯部20を連ねとともに、片帯部10,20と並行するように帯長方向(
図1(b)の紙面直交方向)へ延びている。
【0023】
詳しくは、連結帯部30は、一対の平帯部分31,32と、一対の連結部分33,34と、易変形部35を含む。平坦な平帯部分31,32が互いに並行するように配置されている。第1平帯部分31は、第1平帯部11と平行に配置され、第2平帯部分32は、第2平帯部21と平行に配置されている。これら平帯部分31,32の帯幅方向の外側の端部がそれぞれ連結部分33,34を介して平帯部11,12と連なっている。連結部分33,34は、それぞれ断面S字状になっている。一対の平帯部分31,32どうし間には、易変形部35が挟まれるように配置されている。該易変形部35を介して平帯部分31,32が連ねられている。
【0024】
図1(b)に示すように、易変形部35は、断面U字状ないしは断面半円状に形成され、連結帯部30の延び方向(
図1(b)の紙面直交方向)に沿って延びている。
図1(a)~同図(b)に示すように、易変形部35は、断面が拡縮するように変形可能である。これ伴って、連結帯部30が、易変形部35を中心に屈曲・展開可能である。
図1(a)に示すように、連結帯部30が屈曲された状態(以下「屈曲状態」と称す)のとき、平帯部11,21ひいては片帯部10,20どうしが断面V字状をなす。このとき、係止部14,24どうしは離間し、係止解除状態になっている。
図1(b)に示すように、連結帯部30が展開された状態(以下「展開状態」と称す)のとき、平帯部11,21ひいては片帯部10,20どうしが互いに断面一直線をな
し、係止部14,24どうしが係止可能である。
【0025】
さらに、
図1(b)~同図(c)に示すように、易変形部35は帯幅方向へ伸縮可能な形状になっている。このため、連結帯部30が帯幅方向へ伸縮可能である。ただし、
図1(b)に示すように、前記係止状態のときは、易変形部35ひいては連結帯部30が縮んだ状態(以下「縮み状態」と称す)に維持され、伸び変形が阻止される。
図1(c)に示すように、係止解除状態のとき、連結帯部30が伸び変形可能である。
図示は省略するが、断面S字状の連結部分33,34が伸び変形することによっても、連結帯部30が帯幅方向へ更に伸縮可能である。
【0026】
帯状部材3は、次のようにして作製されて使用に供される。
図2は、帯状部材3の製造装置5を示したものである。製造装置5は、押出成形機5aと、巻取ドラム5bを含む。押出成形機5によってポリ塩化ビニル等の樹脂材料から帯状部材3が押出成形される。
図1(a)に示すように、押出成形時の帯状部材3は、断面V字状の屈曲状態かつ係止解除状態になっている。
図3(a)の二点鎖線に示すように、係止部14,24どうしを離して押出成形することで成形を容易化できる。
【0027】
図2に示すように、押出成形機5から出た帯状部材3は、巻取ドラム5bに巻き取られる。このとき、帯状部材3に曲率が付与されることで連結帯部30が自然と展開されるように断面変形される。これに伴って、係止部14,24どうしが接近される。やがて、
図3(a)の実線に示すように、係止案内部14c,24cどうしが当接して互いに係止方向へ向けて案内される。そして、
図1(b)に示すように、連結帯部30ひいては帯状部材3が展開状態になるとともに、
図3(b)に示すように、係止段差14d,24dどうしが係止して係止状態になる。係止によって、連結帯部30が縮み状態に保持され、伸び変形が阻止される。
【0028】
前記の帯状部材3が、
図4(a)に示す埋設管1の更生施工現場に搬入され、人孔4から埋設管1へ導入される。そして、製管機(図示せず)によって、帯状部材3が埋設管1の内周面に沿って螺旋状に巻回されるとともに、
図5(a)~同図(b)に示すように、第1嵌合部13と第2嵌合部23の互いに一周ずれた対向部分どうしが嵌合される。これによって、
図4(a)及び同図(b)に示すように、埋設管1の内周面に沿う螺旋管からなる更生管2が製管される。
前記製管時において、帯状部材3に多少の外力がかかっても、係止部14,24どうしの係止抵抗によって、連結帯部30が帯幅方向へ伸び変形するのが阻止される。したがって、帯状部材3の帯幅寸法を一定に保持でき、容易に製管することができる。
埋設管1の内周面と更生管2との間には裏込め材(図示せず)が充填される。これによって、埋設管1が更生される。
【0029】
更生管2として供用後、外力が加わったとしても、それが想定荷重に満たない限り、係止部14,24どうしの係止によって帯幅方向への変形抵抗強度が発揮され、連結帯部30の伸び変形が阻止される。したがって、想定レベルに達しない地震等によって螺旋管2がむやみに断面変形を来して段差や凹凸が形成されるのを阻止でき、螺旋管2の内面平滑性を確保できる。
【0030】
一方、
図1(c)及び
図3(c)に示すように、大きな地盤沈下や地震等が発生して、更生管2に想定荷重以上の外力が加わった時は、該外力によって係止部14,24どうしの係止が解除される。このため、連結帯部30の伸び変形が許容される。前記係止解除及び伸び変形によって地震のエネルギーが吸収される。これによって、螺旋管2に割裂や破断が生じたり嵌合部13,23が外れたりするのを防止できる。しかも、係止部14,24の係止解除によって片帯部10,20どうしが離間しても、伸びた連結帯部30が、これら片帯部10,20間の分かれ目3dを外周側(
図1(c)において上側)から塞ぐ。したがって、更生管2から水漏れが起きるのを防止でき、流下機能を確保できる。また、連結帯部30に平帯部分31,32を設けておくことで、更生管2の内面平滑性をできるだけ損なわないようにできる。
係止段差14d,24dの高さなどの設定によって、想定荷重に合わせて係止解除が確実に起きるようにできる。なお、係止部14,24に代えて、平帯部11,21どうしをウェルドライン等の連続部を介して一体に連続させ、かつ連続部において破断可能にすることも考えられるが、その場合、想定荷重に合わせて破断が起きるようにするのが容易でない。
【0031】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を適宜省略する。
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態は、係止部の変形例に係る。
図6(c)に示すように、第1係止部14Bは、第1平帯部11から延び出るアーム部14aと、該アーム部14aの先端部(分かれ目3d側の端部)に設けられた断面半円形の係止凸部14eを含む。係止凸部14eが、係止案内部14cと係止段差14dを有している。
【0032】
図6(c)に示すように、第2係止部24Bは、概略半円断面の収容凹部24eと、該収容凹部24eから先端(分かれ目3d側)へ延びる案内口部24fを有し、概略C字状の断面に形成されている。収容凹部24eに係止段差24dが設けられている。
図6(a)の実線に示すように、帯状部材3の押出成形時は、係止部14B,24Bどうしは離れている。
【0033】
図6(a)の二点鎖線及び
図6(b)に示すように、押出成形後の巻取時の断面変形によって、係止凸部14eが、案内口部24fを通って収容凹部24eに収容される。かつ係止段差14d,24dどうしが対向されることで、係止部14B,24Bどうしが係止状態になる。
図6(c)に示すように、製管後の更生管2において、想定荷重以上の外力が加わったときは、係止部14B,24Bどうしの係止が解除される。
【0034】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、易変形部35の断面形状は、伸縮性能を発現できる形状であればよく、U字状に限られず、三角形状や四角形状などであってもよい。
易変形部35の数は、1つに限られず、複数であってもよい。複数の易変形部の大きさが互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
易変形部35の配置位置は、分かれ目3dないしは係止部どうしの係止位置に対して帯幅方向の一側又は他側へずれていてもよい。
嵌合部13,23の断面形状は適宜改変できる。なお、互いに嵌合した状態で更生管2の内面に段差ができない形状であることが好ましい。
本発明の帯状部材は、既設管の内周にライニングされる更生管に限られず、柱用の螺旋管などにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば老朽化した下水道管等の埋設管の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
3 帯状部材
1 埋設管
2 更生管(螺旋管)
3 帯状部材(プロファイル)
3d 中間部の分かれ目
5 製造装置
5a 押出成形機
5b 巻取ドラム
10 第1片帯部
13 第1嵌合部
14,14B 第1係止部
20 第2片帯部
23 第2嵌合部
24,24B 第2係止部
30 連結帯部
35 易変形部