(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】製管方法及び継ぎ目部材
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20220512BHJP
F16L 9/16 20060101ALI20220512BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L9/16
F16L1/00 J
F16L1/00 P
(21)【出願番号】P 2018075295
(22)【出願日】2018-04-10
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
(72)【発明者】
【氏名】久保 善央
(72)【発明者】
【氏名】吉野 克則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡俊
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-137132(JP,A)
【文献】特開2012-026494(JP,A)
【文献】特開2014-000769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 - 63/48
F16L 1/00
F16L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯幅方向の一端部に第1嵌合部が設けられ、帯幅方向の他端部に第2嵌合部が設けられた複数の帯状部材を
前記帯幅方向と直交する帯長方向に継ぎ足しながら螺旋状に巻回して
前記第1嵌合部と前記第2嵌合部との一周ずれた部分どうしを凹凸嵌合させることによって螺旋管を形成する製管方法であって、
接続すべき2つの帯状部材における前記螺旋管の内周面を画成する
とともに前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部を含む樹脂製の主帯材の
前記帯長方向に対向する端面どうし間に継ぎ目スペースを設け、
少なくとも前記継ぎ目スペースを超えるまで形成した前記螺旋管の管内空間側から前記継ぎ目スペースに継ぎ目部材を嵌め込んで
、
前記2つのうち一方の帯状部材の前記第2嵌合部における前記継ぎ目スペースに臨んで前記凹凸嵌合に供されていない部分からなる1の係止部と、前記継ぎ目部材の外周側部の前記帯幅方向に沿う方向の一端部の第1仮止め部とを嵌め合わせるとともに、
前記2つのうち他方の帯状部材の前記第1嵌合部における前記継ぎ目スペースに臨んで前記凹凸嵌合に供されていない部分からなる他の係止部と、前記継ぎ目部材の外周側部の前記帯幅方向に沿う方向の他端部の第2仮止め部とを嵌め合わせることによって、前記継ぎ目部材を仮止めし、
その後、前記継ぎ目部材
における前記管内空間に面する面板部の周縁部と前記主帯材とを接合することを特徴とする製管方法。
【請求項2】
前記主帯材と同一断面の帯端材から前記管内空間側からの嵌め込みの妨げとなる部分を除去し、除去後の前記帯端材を前記継ぎ目部材とすることを特徴とする請求項
1に記載の製管方法。
【請求項3】
前記面板部における前記巻回方向に沿う端縁と前記主帯材との境、及び前記面板部における前記巻回方向と交差する側縁と前記主帯材との境を含む溶接対象部を樹脂溶接し、前記巻回方向に沿う樹脂溶接部分の長さが、前記端縁の長さ以上であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の製管方法。
【請求項4】
帯長方向に継ぎ足されながら螺旋状に巻回されて
前記帯長方向と直交する帯幅方向の一端部の第1嵌合部と前記帯幅方向の他端部の第2嵌合部との一周ずれた部分どうしが凹凸嵌合されることによって螺旋管となる複数の帯状部材の継ぎ目に設けられる継ぎ目部材であって、
接続されるべき2つの帯状部材における
前記第1嵌合部及び前記第2嵌合部を含む樹脂製の主帯材の
前記帯長方向に対向する端面どうし間に形成された継ぎ目スペースに
、少なくとも前記継ぎ目スペースを超えるまで形成された前記螺旋管の管内空間側から嵌め込まれて
、周縁部が前記主帯材と接合され、かつ前記螺旋管の管内空間に面する面板部と、
前記面板部の外周側部
の前記帯幅方向に沿う方向の一端部に
一体に設けられ、
前記2つのうち一方の帯状部材
の前記第2嵌合部における前記継ぎ目スペースの奥に臨
んで前記凹凸嵌合に供されていない部分からなる1の係止部に係止される
第1仮止め部と
、
前記面板部の外周側部の前記帯幅方向に沿う方向の他端部に一体に設けられ、前記2つのうち他方の帯状部材の前記第1嵌合部における前記継ぎ目スペースの奥に臨んで前記凹凸嵌合に供されていない部分からなる他の係止部に係止される第2仮止め部と、
を含むことを特徴とする継ぎ目部材。
【請求項5】
前記面板部の内周側面が、前記主帯材における内周側面とほぼ面一をなして前記螺旋管 の内周面の一部を画成することを特徴とする請求項
4に記載の継ぎ目部材。
【請求項6】
前記主帯材の断面形状のうち、前記螺旋管の管内空間側から前記継ぎ目スペースへ嵌め込む場合に妨げとなる部分を省いた断面形状を有していることを特徴とする請求項
4又は
5に記載の継ぎ目部材。
【請求項7】
弾性変形可能な樹脂からなることを特徴とする請求項
4~
6の何れか1項に記載の継ぎ目部材。
【請求項8】
前記主帯材と同種の樹脂からなることを特徴とする請求項
4~
7の何れか1項に記載の継ぎ目部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材から螺旋管を製管する方法及び継ぎ目部材に関し、特に複数の帯状部材を継ぎ足しながら螺旋管を製管する方法及び該方法に用いる継ぎ目部材に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管の内周面に沿って帯状部材(プロファイル)を螺旋状に巻回して螺旋管からなる更生管を製管し、これによって、既設管を更生する方法は公知である。帯状部材の長さが足りないときは新たな帯状部材を継ぎ足す。
継ぎ足し方法としては、たとえば2つの帯状部材のスチール製の補強帯材どうし間に跨るように継手を設け、該継手と各補強帯材とをリベットや溶接によって接合する(特許文献1)。或いは、一方の帯状部材については補強帯材を樹脂製の主帯材よりも帯長方向へ突出させ、他方の帯状部材については補強帯材を主帯材よりも帯長方向へ引っ込ませ、該引っ込んだ部分に前記突出した補強帯材を挿し込むことで2つの帯状部材を接合する(特許文献2の
図6)。
2つの帯状部材における樹脂製の主帯材どうしは、互いに突き当てて樹脂溶接する。または、2つの主帯材どうし間に隙間を設け、該隙間及びその周辺部に当て板を被せ、当て板を主帯材と樹脂溶接する(特許文献2の
図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲特許文献2における当て板(継ぎ目部材)は、溶接だけで帯状部材と接合されている。このため、未溶接段階では位置が安定せず、溶接作業が容易でない。特に更生管の施工現場では継ぎ目が更生管の内周の上側部や側方部に配置されることもあり、溶接し難い。また、溶接だけで接合強度を確保する必要がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、複数の帯状部材が継ぎ足されながら製管される螺旋管において、継ぎ目に配置される継ぎ目部材の接合作業を容易化し、更に接合強度を一層確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明方法は、複数の帯状部材を帯長方向に継ぎ足しながら螺旋状に巻回して螺旋管を形成する製管方法であって、
接続すべき2つの帯状部材における前記螺旋管の内周面を画成する樹脂製の主帯材の端面どうし間に継ぎ目スペースを設け、前記螺旋管の管内空間側から前記継ぎ目スペースに継ぎ目部材を嵌め込んで仮止めし、前記継ぎ目部材と前記主帯材とを接合することを特徴とする。
当該方法によれば、継ぎ目部材を継ぎ目スペースに嵌め込んで仮止めすることで、継ぎ目部材が継ぎ目スペースから脱落しないようにでき、継ぎ目部材の位置を安定させた状態で溶接等の接合作業を行なうことができる。また、溶接等だけでなく嵌め込み又は仮止めによっても継ぎ目部材の接合強度を確保できる。溶接等によって止水性などの封止性を確保できる。
【0006】
前記嵌め込みの際、前記継ぎ目部材の外周側部に設けられた仮止め部を、何れかの帯状部材における前記継ぎ目スペースの奥に臨む係止部に係止することが好ましい。
これによって、溶接等の接合作業の際、継ぎ目部材が継ぎ目スペースから脱落するのを確実に防止でき、接合作業を容易化できる。前記何れかの帯状部材は、好ましくは前記接続すべき2つの帯状部材のうちのどちらかである。
「前記継ぎ目部材の外周側部」とは、継ぎ目部材が継ぎ目スペースに設置された状態で螺旋管の外周側を向く側部を言う。
「前記継ぎ目スペースの奥」とは、継ぎ目スペースの螺旋管内への開口よりも螺旋管の外周側の位置を言い、外周側であれば前記開口に対して螺旋管の周方向の側方又は管軸方向の側方へずれた位置であってもよい。
【0007】
前記主帯材と同一断面の帯端材から前記管内空間側からの嵌め込みの妨げとなる部分を除去し、除去後の前記帯端材を前記継ぎ目部材とすることが好ましい。
これによって、継ぎ目部材を継ぎ目に容易に嵌め込むことができる。
【0008】
前記継ぎ目部材における前記螺旋管の管内空間に面する面板部における前記巻回方向に沿う端縁と前記主帯材との境、及び前記面板部における前記巻回方向と交差する側縁と前記主帯材との境を含む溶接対象部を樹脂溶接し、前記巻回方向に沿う樹脂溶接部分の長さが、前記端縁の長さ以上であることが好ましい。
これによって、継ぎ目部材を確実に溶接でき、止水性等の封止性を確保できる。
【0009】
また、本発明物は、帯長方向に継ぎ足されながら螺旋状に巻回されて螺旋管となる複数の帯状部材の継ぎ目に設けられる継ぎ目部材であって、
接続されるべき2つの帯状部材における樹脂製の主帯材の端面どうし間に形成された継ぎ目スペースに嵌め込まれて前記主帯材と接合され、かつ前記螺旋管の管内空間に面する面板部と、
前記面板部の外周側部に設けられ、何れかの帯状部材における前記継ぎ目スペースの奥に臨む係止部に係止される仮止め部と
を含むことを特徴とする。
当該継ぎ目部材によれば、帯状部材へ係止しておくことによって溶接等の接合作業を容易化でき、かつ接合強度を確保することができる。
【0010】
前記面板部の内周側面が、前記主帯材における内周側面とほぼ面一をなして前記螺旋管の内周面の一部を画成することが好ましい。
これによって、継ぎ目部材と主帯材との間に段差ができるのを防止できる。
【0011】
前記主帯材の断面形状のうち、前記螺旋管の管内空間側から前記継ぎ目スペースへ嵌め込む場合に妨げとなる部分を省いた断面形状を有していることが好ましい。
これによって、継ぎ目部材を継ぎ目に容易に嵌め込むことができる。
【0012】
前記継ぎ目部材が、弾性変形可能な樹脂からなることが好ましい。
継ぎ目スペースと継ぎ目部材の形状が多少一致していなくても、継ぎ目部材を弾性変形させることで、継ぎ目部材を継ぎ目スペースに確実に嵌め込むことができる。また、仮止め部を弾性変形させて帯状部材の係止部に係止させることで、継ぎ目部材を仮止めできる。
【0013】
前記継ぎ目部材が、前記主帯材と同種の樹脂からなることが好ましい。
そうすることで、継ぎ目部材と主帯材との間の物性値に差がなくなる。したがって、例えば温度変化に対する膨張、収縮度合を一致させて熱応力の発生を抑制できる。また、耐薬品性能が同じであるために共通の対策で対応できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の帯状部材が継ぎ足されながら製管される螺旋管において、継ぎ目に配置される継ぎ目部材の接合作業を容易化でき、更に接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る製管方法によって既設管の内周に沿って製管された更生管(螺旋管)の内周面における継ぎ部分を示し、
図7(a)の円部Iを拡大した正面図である。
【
図6(a)】
図6(a)は、前記継ぎ部分に設けられる継ぎ目部材の断面図である。
【
図6(b)】
図6(b)は、前記継ぎ目部材の斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、前記更生管によって更生された既設管の断面図である。
図7(b)は、前記更生管の一部分の斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る製管方法によって既設管の内周に沿って製管された更生管(螺旋管)の内周面における継ぎ部分を示す正面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3実施形態に係る製管方法によって既設管の内周に沿って製管された更生管(螺旋管)の内周面における継ぎ部分を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図7(a)に示すように、老朽化した下水道管等の既設管1の内面に更生管2(螺旋管)がライニングされることで、既設管1が更生されている。既設管1としては、下水道管の他、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管などが挙げられる。
【0017】
図7(b)に示すように、更生管2は、複数の帯状部材3(プロファイル)によって形成されている。複数の帯状部材3が、帯長方向へ継ぎ足されるとともに、既設管1の内周に沿って螺旋状に巻回されて更生管2となっている。
【0018】
図4に示すように、各帯状部材3は、主帯材10と、補強帯材20を含む。主帯材10の材質は、ポリ塩化ビニルなどの樹脂である。補強帯材20の材質は、スチールなどの金属である。
【0019】
主帯材10は、平帯部11と、嵌合部13,14と、リブ15,16と、サブロック片17を一体に有し、同図の紙面直交方向へ延びている。平帯部11は平坦な帯状に形成されている。平帯部11によって更生管2の滑らかな内周面2aが画成され、ひいては更生管2の管内空間2cが画成されている。
【0020】
平帯部11の帯幅方向の一端部には、内周側(
図4において下側)から見て凹状の第1嵌合部13が設けられている。平帯部11の帯幅方向の他端部には、外周側(同図において上側)へ突出する凸状の第2嵌合部14が設けられている。
第1嵌合部13から外周側へリブ15が突出されている。平帯部11の第2嵌合部14寄りの部分から外周側へリブ16が突出されている。リブ16の先端にはL字状のサブロック係止部分16bが形成されている。
更に、第1嵌合部13から帯幅方向の外側かつ外周側へ向かって、サブロック片17が斜めに延び出ている。
【0021】
図4に示すように、リブ15,16間における平帯部11の外周側(同図において上側)には、補強帯材20が設けられている。補強帯材20は、胴部21と、一対の肩部22と、一対の腕部23を有し、概略断面W字状をなして
図4の紙面と直交する方向へ延びている。断面コ字状の胴部21の両端部に肩部22が連なっている。肩部22が平帯部11に宛がわれている、各肩部22から帯幅方向の外側かつ外周側へ向かって、腕部23が斜めに延び出ている。腕部23の先端部がリブ15,16に係止されている。
なお、図示した帯状部材10の断面形状は例示であり、本発明の帯状部材としては、図示した断面形状のものに限られず、種々の形態を適用できる。
【0022】
図4に示すように、螺旋管状に製管された更生管2においては、第1嵌合部13と第2嵌合部14の互いに一周ずれた部分どうしが対向して嵌合されている。かつ、サブロック片17とサブロック係止部分16bとの互いに一周ずれた部分どうしが係止されている。
【0023】
さらに更生管2においては、前述したように2以上(複数)の帯状部材3が帯長方向ないしは巻回方向に沿って一列に接続されている。
図1及び
図5に示すように、2つの帯状部材3どうしの接続部分には、接続部材30と、継ぎ目部材40が設けられている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、接続部材30は、断面コ字状に形成され、帯状部材2の帯長方向ないしは更生管2(螺旋管)の巻回方向へ延びている。接続部材30の材質は、スチールなどの金属である。
図5に示すように、該接続部材30が、前記2つの帯状部材3どうし間に架け渡されている。接続部材30の両端部が、それぞれ対応する帯状部材3の補強帯材20の胴部21の内部に挿し込まれ、かつビス35によって補強帯材20と固定されている。
なお、接続部材30の形状は、断面コ字状に限らず、四角筒形、板状、断面L字状、断面H字状などであってもよい。接続部材30の材質は、金属に限らず、硬質樹脂などであってもよい。接続部材30と補強帯材20の固定手段は、ビス35に限らず溶接や接着剤などであってもよい。
【0025】
図1及び
図5に示すように、前記2つの帯状部材3の主帯材10における、互いに対向する端面10eどうしが間隔を置いて対峙している。これら端面10eどうし間に継ぎ目スペース2sが設けられている。
継ぎ目スペース2sに継ぎ目部材40が嵌め込まれている。
継ぎ目部材40の材質は、樹脂であり、好ましくは弾性変形可能な樹脂である。より好ましくは、継ぎ目部材40は、主帯材11と同種の樹脂すなわちポリ塩化ビニルからなる。
【0026】
図6に示すように、継ぎ目部材40は、主帯材11の一部を省略した断面形状になっている。詳しくは、
図6(a)の実線及び
図6(b)に示すように、継ぎ目部材40は、面板部41と、第1仮止め部43と、第2仮止め部44と、リブ46を有している。
【0027】
図5及び
図6に示すように、面板部41は、長方形の平板状に形成されており、前記2つの主帯材10の平帯部11とほぼ面一に配置されている。特に、面板部41の内周側面41aが、前記2つの平帯部11の内周側面(
図5のおいて下面)とほぼ面一になっている。面板部41の内周側面41aは、更生管2の管内空間2cに面し、更生管2の内周面2aの一部を画成している。
図3に示すように、面板部41の外周側面41bには接続部材30の内周側の端部(
図3において下端部)が当接又は近接されている。接続部材30によって、継ぎ目部材40が、継ぎ目スペース2sの奥側すなわち更生管2の外周側(
図3において上側)へ変位するのが規制されている。接続部材30は、隣接する補強帯材20を接続する役割に加えて、継ぎ目部材40を継ぎ目スペース2sの奥側から支持ないしは位置規制する役割をも担っている。
【0028】
図6に示すように、面板部41の幅方向の一端部(
図6(a)において左端部)には、内周側(同図において下方)から見て凹状の第1仮止め部43が設けられている。面板部41の幅方向の他端部(同図において右端部)には、外周側(同図において上側)へ突出する凸状の第2仮止め部44が設けられている。面板部41の第2仮止め部44寄りの部分から外周側へリブ46が突出されている。
【0029】
図3に示すように、仮止め部43は、一方(同図において左側)の帯状部材3の第2嵌合部14における、継ぎ目スペース2sの奥に臨む部分(係止部14B)の外周に嵌まっている。
仮止め部44は、他方(同図において右側)の帯状部材3の第1嵌合部13における、継ぎ目スペース2sの奥に臨む部分(係止部13B)内に挿し込まれている。かつ他方の帯状部材3のサブロック片17の先端部がリブ46に当接されている。
【0030】
継ぎ目部材40と主帯材11との断面形状を対比すると、継ぎ目部材40は、主帯材11における平帯部11と嵌合部13,14とリブ16の一部にそれぞれ対応する部分41,43,44,46を有している一方で、主帯材11におけるリブ15とサブロック片17とサブロック係止部分16bに対応する部分を有していない。要するに、継ぎ目部材40は、管内空間2c側から継ぎ目スペース2sに嵌め込まれることを想定して、主帯材11の断面形状のうち、前記管内空間2c側からの嵌め込みの妨げとなる嵌め込み阻害部分15,17,16bが省かれた断面形状となっている。
【0031】
図1に示すように、継ぎ目部材40は、主帯材11と樹脂溶接によって接合されている。継ぎ目部材40と主帯材11との間に樹脂溶接部50が形成されている。樹脂溶接部50の溶接材の材質としては、好ましくはポリ塩化ビニルが用いられている。
【0032】
樹脂溶接部50は、一対の巻回方向樹脂溶接部分51と、一対の帯幅方向樹脂溶接部分52を含む。巻回方向樹脂溶接部分51は、面板部41における巻回方向に沿う端縁41dと主帯材10との境に沿って設けられ、帯状部材3の巻回方向(
図1において上下方向)に延びている。さらに、巻回方向樹脂溶接部分51は、継ぎ目部材40よりも巻回方向の両側へ延び出ている。巻回方向樹脂溶接部分51の長さは、端縁41dの長さより大きい。
なお、巻回方向樹脂溶接部分51の両端部が、面板部41の端縁41dの両端部とちょうど一致していてもよい。巻回方向樹脂溶接部分51の長さは、端縁41dの長さ以上であればよい。
【0033】
帯幅方向樹脂溶接部分52は、面板部41における端縁41dと直交(交差)する側縁41eと主帯材10との境に設けられ、巻回方向と直交(交差)する帯幅方向(
図1において左右)に延びている。帯幅方向樹脂溶接部分52の両端部が巻回方向樹脂溶接部分51と交差している。
【0034】
更生管2は次のようにして製管される。
図示しないドラムに巻かれた帯状部材3を繰り出して、地上から人孔4(
図7(a))に挿し入れ、製管機(図示省略)に導入する。製管機によって、帯状部材3を螺旋状に巻回しながら嵌合部13,14どうしを嵌合させることにより、既設管1の内周面に沿って螺旋管状の更生管2を製管する。
【0035】
本発明形態においては、既設管1の全長にわたって更生管2をライニングするには、帯状部材3の長さが1本では足りないために、帯状部材3の継ぎ足しを行なう。詳しくは、先行の帯状部材3の巻回方向の終端部と、後続の帯状部材3の巻回方向の始端部とをそれぞれジグソー、サンダーその他の工具でカットするなどして、これらの端面10eが帯長方向に対して直交する面になるように整える。そのうえで、これら先後2つの帯状部材3の補強帯材20どうし間に接続部材30を架け渡し、接続部材30の両端と各補強帯材20とをビス止めする(
図5)。好ましくは、ビス35の頭部を削ることで、製管機のピンチローラなどにビス35の頭部が引っ掛からないようにする。
【0036】
2つの帯状部材3の主帯材10どうし間には継ぎ目スペース2sを設定しておく。つまり、2つの主帯材10どうしをぴったりと突き当てる必要が無く、接続作業を容易化できる。
好ましくは、帯状部材3どうしの接続部分が製管機を通過するときは、接続が外れないように、製管機を低速で運転する。
【0037】
図6(b)に示すように、別途、継ぎ目部材40を用意する。継ぎ目部材40は、次のようにして作製する。
図6(a)に示すように、1の主帯材10の端部を切断して、帯端材19を切り出す。切り出し時の帯端材19は、主帯材10と同一断面になっている。帯長方向(
図6(a)の紙面と直交する方向)に沿う帯端材19の寸法は、継ぎ目スペース2sの同方向寸法に合わせる。
図6(a)の二点鎖線にて示すように、該帯端材19から嵌め込み阻害部分すなわちリブ15とサブロック片17とサブロック係止部分16bを切断して除去する。
図6(a)の実線にて示すように、除去後の帯端材19が継ぎ目部材40となる。
【0038】
図3に示すように、更生管2(螺旋管)の製管後、或いは少なくとも前記接続部分の製管後、継ぎ目部材40を更生管2の管内空間2c側から継ぎ目スペース2s内に嵌め込む。継ぎ目部材40においては嵌め込み阻害部分15,17,16bが省かれているため、前記管内空間2c側からの嵌め込み操作を支障なく容易に行なうことができる。このとき、接続部材30が継ぎ目スペース2sの奥側(
図3において上側)から継ぎ目部材40に当たることによって、継ぎ目部材40を位置規制できる。
さらに、第1仮止め部43を、帯状部材3の係止部14Bの外周側へ回り込ませて係止部14Bに嵌める。かつ、第2仮止め部44を係止部13Bに挿し込む。これによって、継ぎ目部材40が、更生管2の帯状部材3に係止(仮止め)される。機械的な嵌合による仮止めであるから、継ぎ目部材40を安定的に設定できる。接合時に継ぎ目部材40に対して奥側へ押し込む力が加わったとしても、接続部材30によって継ぎ目部材40が位置規制されているために、係止(仮止め)が外れたり、継ぎ目部材40が継ぎ目スペース2sの奥へ落ち込んだりするのを防止できる。
【0039】
継ぎ目部材40は主帯材10と同じ弾性樹脂によって構成されているから、継ぎ目スペース2sと面板部41の形状が多少一致していなくても、面板部41及び主帯材10を弾性変形させることで、面板部41を継ぎ目スペース2sに確実に嵌め込むことができる。また、継ぎ目部材40及び主帯材10の弾性変形によって、仮止め部43,44の係止部14B,13Bへの係止操作を容易に実行できる。
面板部41が継ぎ目スペース2s内に嵌め込まれることで、面板部41の内周側面41aが主帯材10の内周側面と略面一になる。したがって、面板部41と主帯材10との間に段差ができるのを防止できる。
【0040】
続いて、
図1に示すように、継ぎ目部材40を主帯材11に樹脂溶接する。詳しくは、面板部41の端縁41dと主帯材10との境、及び面板部41の側縁41eと主帯材10との境を含む溶接対象部を樹脂溶接する。溶接対象部が、樹脂溶接部50となる。
継ぎ目部材40は主帯材10にしっかりと仮止めされているから、溶接時に継ぎ目部材40を継ぎ目スペース2sから脱落しないように押さえている必要が無く、溶接作業を容易化できる。ひいては、継ぎ目処理を容易化できる。
さらに、溶接だけでなく、面板部41の継ぎ目スペース2sへの嵌め込み、及び仮止め部43,44の係止部14B,13Bへの係止(仮止め)によっても、継ぎ目部材50が帯状部材3に接合されるために、継ぎ目部材50の接合強度を十分に確保できる。
【0041】
溶接によって継ぎ目部材40と主帯材10との間を密封でき、帯状部材3の継ぎ目における更生管2の止水性を確保できる。
樹脂溶接部50のうち巻回方向樹脂溶接部分51は、継ぎ目部材40よりも巻回方向の両側へ延出させる。これによって、継ぎ目における更生管2の止水性を一層確保できる。
継ぎ目部材40の側縁41eと主帯材10との間に隙間があるときは、側縁41eに沿って樹脂溶接を反復して行なうことで帯幅方向樹脂溶接部分52を太くし、隙間を完全に埋める。
継ぎ目部材40は主帯材10の端材19によって構成され、材質が主帯材10と同じポリ塩化ビニルである。更に、樹脂溶接部50の溶接材についてもポリ塩化ビニルによって構成されている。したがって、主帯材10と継ぎ目部材40と樹脂溶接部50とは物性値に差が無く、例えば線膨張係数が一致する。このため、温度変化による膨張、収縮度合の違いによって、これら部材10,40,50どうしの間に熱応力が生じるのを回避又は抑制できる。また、耐薬品性能が同じであるために共通の対策で対応できる。
【0042】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の実施形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態では、主帯材11と継ぎ目部材40との接合手段として、溶接に代えて、FRP(繊維強化プラスチック)接合シート60が用いられている。詳細な図示は省略するが、FRP接合シート60は、エポキシ樹脂を含浸させたガラス繊維によって構成されている。ガラス繊維は、1層のマット(不織布)で構成されていてもよく、マット-クロス-マットの3層(複数層)の積層体であってもよい。
【0043】
図8に示すように、該FRP接合シート60が、継ぎ目部材40と主帯材11を跨ぐように、これら部材40,11の内周側面(
図8において紙面手前側の面)に貼られている。貼り付け時におけるFRP接合シート60のエポキシ樹脂は、未硬化であり接着性ないしは粘着性を有している。貼り付け後、エポキシ樹脂が硬化する。これによって、主帯材11と継ぎ目部材60がFRP接合シート60を介して接合される。
【0044】
さらにFRP接合シート60は、一対の巻回方向シート部分61と、一対の帯幅方向シート部分62を含む。巻回方向シート部分61は、面板部41の端縁41dと主帯材10との境に沿って、帯状部材3の巻回方向(
図8において上下方向)へ延びるようにして、面板部41と主帯材10とに跨っている。さらに、巻回方向シート部分61は、継ぎ目部材40よりも巻回方向の両側へ延び出ている。巻回方向シート部分61の長さは、端縁41dの長さより大きい。
なお、巻回方向シート部分61の両端部が、面板部41の端縁41dの両端部とちょうど一致していてもよい。巻回方向シート部分61の長さは、端縁41dの長さ以上であればよい。
【0045】
帯幅方向シート部分62は、面板部41の側縁41eと主帯材10との境に沿って、帯幅方向(
図8において左右)へ延びるようにして、面板部41と主帯材10とに跨っている。帯幅方向シート部分62の両端部が巻回方向シート部分61と交差している。
帯幅方向シート部分62の各端部と巻回方向シート部分61とは互いに重なっていてもよい。帯幅方向シート部分62と巻回方向シート部分61とが一体に連なっていてもよい。
【0046】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態を示したものである。第3実施形態は、第2実施形態(
図8)の変形例に係り、FRP接合シート60Cが、面板部41よりも大面積の四角形状になっている。該FRP接合シート60Cが、面板部41の内周側面41aの全域及びその周辺の主帯材11の内周側面(
図9において紙面手前側の面)に貼り付けられている。これによって、FRP接合シート60Cが、継ぎ目部材40と主帯材11を跨ぎ、これら部材40,11どうしを接合している。
【0047】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、2つの帯状部材3どうしの接続方法として、前掲特許文献2と同様に、一方の帯状部材3については補強帯材20を主帯材10よりも帯長方向へ突出させ、他方の帯状部材3については補強帯材20を主帯材10よりも帯長方向へ引っ込ませ、該引っ込んだ部分に前記突出した補強帯材20を挿し込んでもよい。
帯状部材3は補強帯材を有していなくてもよい。帯状部材3が、樹脂製の主帯材だけで構成されていてもよい。
継ぎ目部材の材質は、主帯材と溶接可能であれば、主帯材の材質とは異なっていてもよい。
継ぎ目部材と主帯材とを接合する溶接材の材質は、これら継ぎ目部材及び主帯材を溶接可能であれば、継ぎ目部材の材質又は主帯材の材質とは異なっていてもよい。
本発明の帯状部材は、既設管の内周にライニングされる更生管に限られず、種々の螺旋管の製管に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば老朽化した下水道管等の既設管の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 既設管
2 更生管(螺旋管)
2a 内周面
2s 継ぎ目スペース
3 帯状部材(プロファイル)
4 人孔
10 主帯材
10e 端面
11 平帯部
13 凹状の第1嵌合部
13B 係止部
14 凸状の第2嵌合部
14B 係止部
15 リブ
16 リブ
16b サブロック係止部分
17 サブロック片
19 帯端材
20 補強帯材
21 胴部
22 肩部
23 腕部
30 接続部材
35 ビス
40 継ぎ目部材
41 面板部
41a 面板部の内周側面
41b 面板部の外周側面
41d 巻回方向に沿う端縁
41e 巻回方向と直交する側縁
43 第1仮止め部
44 第2仮止め部
46 リブ
50 樹脂溶接部(溶接対象部)
51 巻回方向樹脂溶接部分
52 帯幅方向樹脂溶接部分
60,60C FRP接合シート