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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】アンテナシステムを有する聴覚機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
H04R25/00 Q
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018092772
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019004455
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】17175135.7
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503021401
【氏名又は名称】ジーエヌ ヒアリング エー/エス
【氏名又は名称原語表記】GN Hearing A/S
【住所又は居所原語表記】Lautrupbjerg 7, 2750 Ballerup, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー タイセン
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-156634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0207225(US,A1)
【文献】特開2016-042698(JP,A)
【文献】特開2001-145197(JP,A)
【文献】特表2011-518488(JP,A)
【文献】特開平07-202774(JP,A)
【文献】特開平09-331282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補聴器であって、
音声を受信するとともに、当該受信した音声を対応する第1のオーディオ信号に変換するマイクロフォンと、
前記第1のオーディオ信号を処理して、当該補聴器のユーザの聴力損失を補う第2のオーディオ信号を得る信号プロセッサと、
前記信号プロセッサの出力に接続され、前記第2のオーディオ信号を出力音声信号に変換するスピーカと、
無線通信のために前記信号プロセッサに接続された無線通信ユニットと、
前記無線通信ユニットに接続され、電磁場の放射および受信のために構成され、複数のアンテナ素子とスイッチ装置とを備えるアンテナシステムと、
を備え、
前記スイッチ装置は、前記補聴器の決定された所期の使用態様に応じて提供されるスイッチ制御情報に応じて、前記複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子を前記無線通信ユニットに接続し、前記複数のアンテナ素子の内の少なくとも第2のアンテナ素子を、前記補聴器の接地電位に接続するように構成され
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子とは、対称面に対して対称に配置されている、補聴器。
【請求項2】
前記第1のアンテナ素子は、前記補聴器の第1の側に設けられ、前記第2のアンテナ素子は、前記補聴器の第2の側に設けられる、請求項1に記載の補聴器。
【請求項3】
前記補聴器が、ユーザの耳の動作位置に装着されると、前記補聴器の前記第1の側がユーザの頭部に隣接する、請求項2に記載の補聴器。
【請求項4】
前記補聴器の設定の際に、前記スイッチ装置に前記スイッチ制御情報が提供される、請求項1から3のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項5】
前記補聴器がユーザの右耳または左耳に装着されるように設定されたという判定に応じて、前記スイッチ制御情報が提供される、請求項1から4のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項6】
前記スイッチ装置は、単一又は限定数の切替動作を実行するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項7】
前記補聴器は、少なくとも第3のアンテナ素子をさらに備え、前記第3のアンテナ素子は前記補聴器の前記接地電位に接続される、請求項1から6のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項8】
前記スイッチ制御情報は、電気的な部分を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項9】
前記スイッチ制御情報は、機械的な部分を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項10】
前記補聴器は、コネクタ受入部とコネクタ要素とを備え、
前記コネクタ要素は、機械的スイッチ制御情報を提供するために、前記コネクタ受入部を介して前記スイッチ装置に係合するように構成される、請求項9に記載の補聴器。
【請求項11】
前記コネクタ要素は、耳挿入レシーバコネクタ要素、イヤフックコネクタ又は管状コネクタである、請求項10に記載の補聴器。
【請求項12】
前記補聴器は、所期の動作位置に設けられると、ユーザの耳の後ろに位置するように構成された少なくとも1つの耳かけモジュールを含み、
前記耳かけモジュールは、少なくとも前記信号プロセッサと前記複数のアンテナ素子とを備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項13】
補聴器を設定する方法であって、前記補聴器は、
音声を受信し、当該受信した音声を対応する第1のオーディオ信号に変換するマイクロフォンと、
前記第1のオーディオ信号を処理して、当該補聴器のユーザの聴力損失を補う第2のオーディオ信号を得る信号プロセッサと、
前記信号プロセッサの出力に接続され、前記第2のオーディオ信号を出力音声信号に変換するスピーカと、
無線データ通信のために前記信号プロセッサに接続され無線通信ユニットと、
電磁場の放射および電磁場の受信のためのアンテナシステムであって、複数のアンテナ素子とスイッチ装置とを備える前記アンテナシステムと、を備え、
前記方法は、
前記補聴器の所期の動作位置を決定することと、
前記補聴器の前記決定された所期の動作位置に応じて、前記スイッチ装置にスイッチ制御情報を提供することにより、前記スイッチ制御情報が前記補聴器の決定された所期の使用態様に応じて提供されることと、
前記受信したスイッチ制御情報に応じて、前記複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子が前記無線通信ユニットに接続され、前記複数のアンテナ素子の内の第2のアンテナ素子が前記補聴器の接地電位に接続されるように、前記スイッチ装置を切り替えることと、を含み、
前記第1のアンテナ素子と前記第2のアンテナ素子とは、対称面に対して対称に配置されている、方法。
【請求項14】
前記スイッチ装置は、単一の又は限定数の切替動作を実行するように構成される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの聴力損失を補う聴覚機器に関し、特に無線通信機能を有するために通信用のアンテナを備える聴覚機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、聴覚機器は周辺通信機能を拡大させている。遠隔制御、配偶者のマイクロフォン、別の聴覚機器との通信が実現されてきたが、最近ではスマートフォンやその他外部電子機器との直接通信が可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
聴覚機器は非常に小型で繊細な装置であり、上述の通信を実現するために、数多くの電子的および金属的構成要素をハウジング内に有する必要がある。そのハウジングは人の外耳道内または外耳の後ろに装着できる程小さくなくてはならない。このように多くの電子的および金属的構成要素が必要であること、さらに聴覚機器ハウジングが小型である必要があることで、無線通信機能を有する聴覚機器における無線周波数アンテナの使用に関する設計がかなり限定される。
【0004】
さらに、聴覚機器においてアンテナ、典型的には無線周波数アンテナは、十分な電池寿命、あらゆる環境において頭部、耳、髪型のあらゆるサイズおよび形状に対する良好な通信、補聴器のサイズによる空間的制約やその他の設計的制限の中で可能な限り広い周波数帯を実現するように設計される必要がある。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を少なくとも一部解決することであり、さらなる目的は無線通信可能な聴覚機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では聴覚機器が提供され、前記聴覚機器は、音声を受信し、当該受信した音声を対応する第1のオーディオ信号に変換するマイクロフォンと、前記第1のオーディオ信号を処理して、当該聴覚機器のユーザの聴力損失を補う第2のオーディオ信号を得る信号プロセッサと、前記信号プロセッサの出力に接続され、前記第2のオーディオ信号を出力音声信号に変換するスピーカと、複数のアンテナ素子とスイッチ装置とを備えるアンテナシステムであって、電磁場の放射および受信のための前記アンテナシステムと相互接続され、無線通信のために前記信号プロセッサに接続される無線通信ユニットと、を備える。前記スイッチ装置は、スイッチ制御情報に応じて、前記複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子を前記無線通信ユニットに接続し、前記複数のアンテナ素子の内の少なくとも第2のアンテナ素子を、前記聴覚機器の接地電位に接続するように構成される。
【0007】
別の態様では聴覚機器を設定する方法が提供され、前記聴覚機器は、音声を受信し、当該受信した音声を対応する第1のオーディオ信号に変換するマイクロフォンと、前記第1のオーディオ信号を処理して、当該補聴器のユーザの聴力損失を補う第2のオーディオ信号を得る信号プロセッサと、前記信号プロセッサの出力に接続され、前記第2のオーディオ信号を出力音声信号に変換するスピーカと、複数のアンテナ素子とスイッチ装置とを備えるアンテナシステムであって、電磁場を放射および受信するための前記アンテナシステムと相互接続され、無線通信のために前記信号プロセッサに接続される無線通信ユニット(送受信機)と、を備える。
【0008】
前記方法は、前記聴覚機器の所期の動作位置を決定することと、前記聴覚機器の前記決定された所期の動作位置に応じて、前記スイッチ装置にスイッチ制御情報を提供することと、前記受信したスイッチ制御情報に応じて、前記複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子が前記無線通信ユニットに接続され、前記複数のアンテナ素子の内の第2のアンテナ素子が前記聴覚機器の接地電位に接続されるように、前記スイッチ装置の切り替えを行うことと、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記スイッチ装置は単一の切替動作を実行するように構成される。
【0010】
さらなる態様では聴覚機器が提供され、前記聴覚機器は、マイクロフォンと、スピーカと、電子回路と、電磁場の放射および受信のためのアンテナシステムと相互接続されて無線通信を行う無線通信ユニットとを備え、アンテナシステムは複数のアンテナ素子とスイッチ装置とを備える。前記スイッチ装置は、スイッチ制御情報に応じて、前記複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子を前記無線通信ユニットに接続し、前記複数のアンテナ素子の内の少なくとも第2のアンテナ素子を、前記聴覚機器の接地電位に接続するように構成される。
【0011】
無線通信ユニットは、無線データ通信を含む無線通信を行うように構成され、そのために電磁場の放射および受信のためのアンテナと相互接続される。無線通信ユニットはトランスミッタ、レシーバ、送受信機といったトランスミッタとレシーバの組、無線機ユニット、を含み得る。無線通信ユニットは、当業者が知り得る任意のプロトコルを使用して通信を行うように構成されてもよい。当該プロトコルとしては、Bluetooth Low EnergyやBluetooth Smart等を含むBluetooth(登録商標)、WLAN標準規格、製造業者特有のプロトコル、例えば、専用近接アンテナプロトコル、例えばプロプラエタリプロトコル、例えば低電力無線通信プロトコル、例えばCSRメッシュ等が挙げられる。
【0012】
聴覚機器は、聴覚機器のユーザの聴力損失を補う任意の聴覚機器、またはユーザに音声を届ける任意の聴覚機器等、任意の聴覚機器であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、聴覚機器は所期の動作位置に設けられた際に、ユーザの耳の後ろに配置されるように構成された少なくとも1つの耳かけ(BTE)モジュールを備える。耳かけモジュールは、従来から少なくとも信号プロセッサと無線通信ユニットとを備え、いくつかの実施形態では少なくとも1つのアンテナ素子を備える。典型的には、聴覚機器電池も、耳かけ要素内に設けられる。
【0014】
聴覚機器は耳かけ型聴覚機器であってもよい。その場合、動作位置においてユーザの耳の後ろに装着されるように構成されたハウジング内に、耳かけモジュールの聴覚機器構成要素が組立部品として設けられる。典型的には、音声管が聴覚機器ハウジングからユーザの外耳道内へと延びる。
【0015】
聴覚機器は、耳挿入レシーバ(RITE)型聴覚機器であってもよい。その場合、使用中にレシーバはユーザの外耳道内等、耳内に配置されて、例えば耳あな(ITE)モジュールの一部となる。一方、プロセッサ、無線通信ユニット、電池等のその他聴覚機器構成要素は耳かけモジュールとして設けられる。典型的には、管は耳あなモジュールと耳かけモジュールとを接続する。管を備える管モジュールは、さらなる聴覚機器構成要素やコネクタを備えてもよいことが想定される。
【0016】
聴覚機器は、ユーザの耳内に設けられる、耳あなまたは完全外耳道挿入型聴覚機器であってもよい。この場合、耳あなモジュールはプロセッサ、無線通信ユニット、電池、マイクロフォン、スピーカ等を含む聴覚機器構成要素を備える。
【0017】
耳あなモジュールは、外耳道内に延びる部位を1または複数有してもよい。したがって、耳あなモジュールは、耳内および外耳道内に配置されるように構成されてもよい。
【0018】
上述のように、モジュールの任意組合わせ、およびモジュール間の聴覚機器構成要素の任意分散が考えられる。例えば、聴覚機器構成要素の多くが耳あなモジュールに設けられた聴覚機器は、例えば電池等の電源が耳の後ろモジュールに設けられて、電源接続のみが管モジュールを介して実現されてもよい。いくつかの例では、このような耳かけモジュールは、1または複数のアンテナ素子も備えてもよい。
【0019】
例えば、いくつかの実施形態では、耳かけ聴覚機器は耳かけモジュールと、耳あなモジュールと、管モジュールのようなこれら2つのモジュール間の接続部を有するように設けられてもよい。典型的には、聴覚機器の構成要素はこれらモジュール間に分散されてもよい。多くの聴覚機器において、レシーバは耳あなモジュール内に配置される。
【0020】
いくつかの実施形態では、聴覚機器は耳あなモジュールを有し、耳かけモジュールを有さなくてもよい。例えば、聴覚機器は、聴覚機器構成要素が全て設けられた耳あなモジュールから成ってもよい。いくつかの実施形態では、聴覚機器は耳あなモジュールと、耳あなモジュールに相互接続される追加モジュールを有してもよい。追加モジュールは、耳甲介内、耳輪内等、外耳内に設けられるように構成されてもよい。追加モジュールは、ユーザの耳の後ろ以外の、耳の任意の部分に配置されるように構成されてもよい。追加モジュールは、マイクロフォンおよび/またはその他トランスデューサ構成要素、電池等を備えてもよい。
【0021】
この種の、およびその他種類の聴覚機器は、典型的にはITE、耳あな型、フルシェル、ハーフシェル、ITC、外耳道挿入型、極小耳あな型(IIC)、完全外耳道挿入(CIC)、外マイク耳あな型(MIH)等の名称で市販されている。
【0022】
なお、聴覚機器のスピーカは、本技術分野では「レシーバ」としても知られているが、他の聴覚機器構成要素との混同を避けるために、本明細書ではスピーカという用語を使用していることが理解されよう。
【0023】
アンテナシステムは、複数のアンテナ素子とスイッチ装置とを備える。1または複数の実施形態において、複数のアンテナ素子は複数の導電性部材である。無線通信ユニットまたは接地電位に接続されたアンテナ素子は、電磁場を放射および受信するように構成されてもよい。複数のアンテナ素子は、それぞれ独立した素子であってもよく、少なくとも一部のアンテナ素子が自由端を有してもよい。
【0024】
複数のアンテナ素子の内の、少なくとも第1のアンテナ素子は、無線通信ユニットに接続されて、アクティブ供給アンテナとなってもよい。複数のアンテナ素子の内の、少なくとも第2のアンテナ素子は、聴覚機器の接地電位に接続されて、パッシブ供給アンテナ素子となってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のアンテナ素子は聴覚機器の第1の側に設けられ、第2のアンテナ素子は聴覚機器の第2の側に設けられる。第1のアンテナ素子と、第2のアンテナ素子とは、聴覚機器のそれぞれ反対側に設けられてもよい。例えば、第1のアンテナ素子と、第2のアンテナ素子とは、耳かけモジュールのそれぞれ反対側に設けられてもよい。第1のアンテナ素子と、第2のアンテナ素子とは、耳あなモジュールのそれぞれ反対側に設けられてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子はそれぞれ、は少なくとも部分的に上述の第1モジュールおよび第2モジュールが設けられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、聴覚機器がユーザの耳の動作位置に装着されると、聴覚機器の第1の側がユーザの頭部に隣接する。その反対側は、聴覚機器の、聴覚機器がユーザの耳の動作位置に装着されると、ユーザの頭部から離間する方向に向く側である。例えば、耳かけ聴覚機器において反対側は、所期の動作位置に配置された際にユーザの耳たぶに向かう方向であってもよい。
【0028】
ユーザの頭部に隣接する補聴器の第1の側に沿って設けられたアンテナ素子の方が、聴覚機器の反対側に沿って設けられたアンテナ素子よりも、ユーザの頭部によるアンテナ素子からの放射パターンへの影響を大きく受ける。ユーザの頭部による影響は、ユーザの頭部に隣接する補聴器の第1の側に沿って設けられたアンテナ素子に対して最大となる。ユーザの頭部から離間する方向に沿って設けられたまたは、ユーザの頭部による影響が聴覚機器により遮蔽される側のアンテナ素子に対しては、ユーザの頭部によるアンテナ素子からの放射パターンの影響が最大限抑えられ、最少となり得る。
【0029】
アクティブアンテナ素子がユーザの頭部に隣接したアンテナシステムと、アクティブアンテナ素子がユーザの頭部から離れているアンテナシステムとの間の、放射電磁場の差は、アンテナシステムの全体的な性能に影響することが確認されている。
【0030】
聴覚機器がユーザの頭部の所期の動作位置に装着されると、パッシブアンテナ素子がユーザの頭部に隣接し、アクティブアンテナ素子がユーザの頭部から最遠となる等のように聴覚機器の反対側に配置されることが保証されるように、アクティブアンテナ素子を切り替えることができることは有利である。
【0031】
第1のアンテナ素子および第2のアンテナ素子は、互いの形態および形状が対応するように、対称的なアンテナ素子であってもよい。第1のアンテナ素子および第2のアンテナ素子は、自由空間における聴覚機器からの電磁放射のような、聴覚機器からの電磁放射が、第1のアンテナ素子または第2のアンテナ素子が無線機に接続されているか否かに関わらず全体として実質的に一定となるような形態および形状を有してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1のアンテナ素子および第2のアンテナ素子は、長さ、構造が同一または同様である等、互いに実質的に同じ形態および形状を有することができる。いくつかの他の実施形態では、第1のアンテナ素子および第2のアンテナ素子は、長さ、構造が異なる等、互いに実質的に異なる形態および形状を有してもよい。
【0033】
無線通信ユニットに接続された1または複数のアンテナ素子は、接続されることで共振アンテナを形成してもよい。いくつかの実施形態では、聴覚機器のアンテナを形成するアンテナ素子は、共振アンテナであってもよい。いくつかの実施形態では、聴覚機器のアンテナを形成するアンテナ素子は、1つのブランチを有してもよく、当該1つのブランチはモノポールアンテナを形成してもよい。別の実施形態では、アンテナは、無線通信ユニットから延在する2つのブランチを有してもよい。当該2つのブランチは、ダイポールアンテナを形成してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、アンテナ素子は、無線通信ユニットに接続されて被駆動導体となる、2つのブランチを有してもよい。ブランチの形態と形状は互いに同様または同一でも、互いに異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、2つのブランチはダイポールアンテナを形成してもよい。いくつかの実施形態では、アンテナ素子の両ブランチの長さは、聴覚機器からの電磁放射のための共振アンテナ素子を実現するように設定される。典型的には、アンテナ素子の長さは、ユーザの耳の所期の動作位置に配置された聴覚機器から射出される電磁放射の波長λに基づいて定義される。なお、自由空気中でアンテナが共振するためには、共振素子の長さは、聴覚機器から射出される電磁放射の波長λの1/4波長λ/4の奇数倍に対応するように選択される。
【0035】
聴覚機器は、典型的には特定の周波数範囲または周波数帯内で、電磁場放射および受信を実行するように構成される。いくつかの実施形態では、周波数帯はアンテナ素子の共振周波数を含むように設定される。典型的には、アンテナ素子の長さは、ピーク共振周波数を中心とした、またはピーク共振周波数から広がる帯域等、当該特定の周波数帯内での使用のために最適化される。
典型的には、所望の周波数帯内等、特定の周波数で最適な共振が実現されるように選択されたもの等の特定の周波数または特定の周波数帯内において使用されるアンテナを最適化するように、アンテナ素子の長さは選択される。典型的には、アンテナは、GSMバンドまたはWLANを含むISMバンド、例えばセルラーバンドまたはWLANバンドを含むように最適化される。
【0036】
周波数帯は、433MHz、800MHz、915MHz、1800MHz、2.4GHz、5.8GHz等から選択される周波数を含む周波数帯であってもよい。したがって、周波数帯はこれら周波数の内の任意のものを1つまたは複数含むGSMバンドまたはWLANバンド等のISMバンドとして選択されてもよい。
【0037】
本明細書開示の聴覚機器は、ISM周波数帯で動作するように構成されてもよい。好ましくは、アンテナは800MHz以上、1GHz以上、1.5GHzから6GHzの間の周波数、1.5GHzから3GHzの間の周波数、2.4GHzの周波数等、少なくとも400MHzの周波数で動作するように構成される。アンテナは、400MHzと1GHzの間、800MHzと1GHzの間、800MHzと6GHzの間、800MHzと3GHzの間等、400MHzと6GHzとの間の周波数で動作するように最適化されてもよい。
【0038】
ただし、本明細書で開示される聴覚機器は、当該周波数帯での動作に限定されるものではなく、任意の周波数帯で動作するように構成されてもよいことが想定される。
【0039】
したがって、耳かけモジュールを有する聴覚機器等の聴覚機器には、聴覚機器のそれぞれ反対側、すなわち、第1の側および第2の側等に沿って設けられる第1のアンテナ素子および第2のアンテナ素子が設けられる。聴覚機器の例えば耳かけモジュール等がユーザの耳の所期の動作位置に装着された状態で、第1の側はユーザの頭部に対して遠位側、すなわちユーザの頭部から離間する方向を指す側であって、第2の側はユーザの頭部の最近傍等、ユーザの頭部に隣接する側である。
【0040】
典型的には、聴覚機器は、製造現場側、および聴覚機器販売およびフィッティング現場の両方において、効率性のため、ユーザの右耳および左耳の両方の後ろ側に装着できるように製造される。聴覚機器の所期のユーザへのフィッティングの際、聴覚機器が特定のユーザの特定の耳の聴力損失を最適に補うために、設定およびフィッティングが行われる。したがってこのフィッティング処理により、聴覚機器は右耳または左耳専用とされる。いくつかの実施形態では、スイッチ制御情報がこの段階にて生成されてもよい。
【0041】
聴覚機器はスイッチ装置を備え、スイッチ装置は複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子を無線通信ユニットに接続し、複数のアンテナ素子の内の少なくとも第2のアンテナ素子を聴覚機器の接地電位に接続するように構成される。このための切り替えは、スイッチ制御情報に応じて実行される。
【0042】
いくつかの実施形態では、スイッチ装置は第1のスイッチ制御情報に応じて、複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子を無線通信ユニットに接続し、複数のアンテナ素子の内の少なくとも第2のアンテナ素子を聴覚機器の接地電位に接続するように構成される。スイッチ装置は第2のスイッチ制御情報に応じて、複数のアンテナ素子の内の第2のアンテナ素子を無線通信ユニットに接続し、複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子を聴覚機器の接地電位に接続するように構成される。
【0043】
スイッチ装置は、スイッチ制御情報に応じて、アンテナ素子を無線通信ユニットまたは聴覚機器の接地電位に接続可能な任意の形態のスイッチ装置であってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、聴覚機器の初期設定時、聴力的フィッティング時、事前フィッティング時等、聴覚機器の設定中にスイッチ制御情報がスイッチ装置に提供される。
【0045】
聴覚機器は、多くの特徴を有する複合的装置であって、さらに典型的には、ユーザに多くの選択肢が与えられている。そのため、例えばフィッティング時においてスイッチ装置にスイッチ制御情報が提供されるのが有利であり得る。
【0046】
スイッチ制御情報は、例えば聴覚機器が使用中にユーザの右耳または左耳に装着されるように設定されているという判断に応じて、提供されてもよい。
【0047】
したがって、スイッチ制御情報は、聴覚機器が使用中にユーザの右耳または左耳のいずれに装着されるように設定された、または設定されているという情報を含んでもよい。
【0048】
スイッチ装置は、複数のアンテナ素子のうち、無線通信ユニットと接続されてアクティブアンテナとなるものを選択可能で、複数のアンテナ素子のうち、接地電位と接続されてパッシブアンテナ素子となるものを選択可能となるように構成されてもよい。
【0049】
スイッチ装置を有することで、すなわち複数のアンテナ素子の内、無線通信ユニットに接続されるものを選択可能とすることで、聴覚機器の所期の使用の際のあらゆる特徴または聴覚機器の所期のユーザのあらゆる特徴に応じて、聴覚機器のアンテナシステムによる電磁放射を最適化できる。任意特徴は、例えば使用中の聴覚機器の所期の動作位置、ヘルメットの所期の使用方法(例えば、消防隊員、兵士、建設現場作業員等のヘルメットの着用義務がある作業者の場合)、所期のユーザの耳の形態および形状、髪型、メガネの着用有無、イヤホン、ピアスの有無等が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、スイッチ装置は、単一の切替動作のように、限定数の切替動作を実行するように構成される。いくつかの実施形態では、切替動作は、聴覚機器が聴覚機器フィッティングソフトウェアのような聴覚機器フィッティングシステムと通信する間にのみ実行されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では選択は、不変なものであってもよい。第1のアンテナ素子の無線通信ユニットへの接続は不変な接続であってもよい。同様に、第2のアンテナ素子の聴覚機器の接地電位への接続も不変なものであってもよい。いくつかの実施形態では、第1のアンテナ素子の無線通信ユニットへの接続は不変な接続であって、第2のアンテナ素子の聴覚機器の接地電位への接続は可逆および/または可変であってもよく、またはその逆であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、切り替えによる第1のアンテナ素子の無線通信ユニットへの接続は不変、例えば半不変な接続であってもよく、少なくとも第2のアンテナ素子の接地電位への接続は可逆および/または可変であってもよい。
【0053】
聴覚機器は少なくとも、聴覚機器の接地電位に接続される、第3のアンテナ素子を備えてもよい。スイッチ装置は、スイッチ制御情報に応じて、第3のアンテナ素子を接地電位に接続するように構成されてもよい。聴覚機器は、聴覚機器の接地電位に接続されて、パッシブアンテナ素子として機能するように構成される1または複数のアンテナ素子を有してもよい。スイッチ装置は、スイッチ制御情報に応じて、1または複数のアンテナ素子を接地電位に接続するように構成されてもよい。
【0054】
アンテナシステムは複数のアンテナ素子を備えてもよい。いくつかの実施形態では、当該複数のアンテナ素子の内の1つ、例えば複数のアンテナ素子の内の単一の素子等は、設定の際に無線通信ユニットに接続される。複数のアンテナ素子の内の他の素子、例えば1つのアンテナ素子、2つのアンテナ素子(第2および第3のアンテナ素子等)、2つ以上のアンテナ素子等が、接地電位に接続され、パッシブアンテナ素子として、アンテナシステムが生成する所望の電磁場の生成に寄与してもよい。例えば、第3のアンテナ素子は、聴覚機器の別側、例えば耳かけモジュールの頂部側等の、耳かけモジュールの別側等に沿って配置されてもよい。第3のアンテナ素子は、聴覚機器の設定中に接地電位に接続されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、スイッチ制御情報は電気的な部分を含む。いくつかの実施形態では、スイッチ制御情報は機械的な部分を含む。いくつかの実施形態では、スイッチ制御情報は、機械的な部分と電気的な部分とを含む。いくつかの実施形態では、スイッチ制御情報の機械的な部分に応じて実現される接続は、不変または半不変なものであってもよく、スイッチ制御情報の電気的な部分に応じて実現される接続は、可変であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、スイッチ制御情報はフィッティングシステムから受信される。スイッチ制御情報は典型的には電気的情報である。いくつかの実施形態では、スイッチ制御情報は聴覚機器の信号プロセッサを介して取得される。
【0057】
いくつかの実施形態では、聴覚機器はコネクタ受入部とコネクタ要素とを備え、コネクタ要素は、機械的スイッチ制御情報を提供するため、コネクタ受入部を介してスイッチ装置に係合するように構成される。
【0058】
コネクタ要素は、耳挿入レシーバコネクタ要素、イヤフックコネクタ、管コネクタ等であってもよい。
【0059】
例えば、聴覚機器のフィッティング中に、コネクタ要素は、耳かけモジュールまたは耳あなモジュールに対して組付けられるように構成されてもよい。コネクタ要素は、管モジュールの一部として、耳かけモジュールまたは耳あなモジュールに対して組付けられてもよい。
【0060】
開示の特徴および実施形態は、組み合わせで、さらに本発明の任意の態様とともに使用可能であることが想定される。本発明の上述の、およびその他特徴および利点が、添付の図面を参照にする詳細な例示的実施形態の説明により、当業者に対してより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】典型的な聴覚機器のブロック図を示す。
図2】耳かけモジュールおよび耳あなモジュールを有する聴覚機器を示す。
図3】アンテナと無線通信ユニットとを有する耳あな式聴覚機器を示す。
図4】アンテナと無線通信ユニットとを有する耳かけ式聴覚機器を示す。
図5】スイッチ装置の概略図である。
図6】機械的スイッチング制御情報を提供するためのプラグを示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図面を参照しながら、各種実施形態を以下で説明する。図面の全体を通して、同様の構造または機能の要素は同じ参照符号によって示されている。また、図面は実施形態の説明を容易にすることを意図するものに過ぎないことに留意すべきである。図面は、特許請求の範囲に記載された発明の包括的な説明としても、または特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲に対する制限としても意図されていない。加えて、図示した実施形態は、示されるすべての態様または利点を有する必要はない。特定の実施形態とともに記載される態様または利点は必ずしも、その実施形態に限定されず、示されていなかったり、または明示的に説明されていなくても、任意の他の実施形態で実施可能である。
【0063】
ここで実施形態を、本発明の例示的実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下でより完全に説明する。しかしながら、請求された発明は異なる形態で実施することができ、また本明細書で記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0064】
図1は、典型的な(従来技術の)聴覚機器10のブロック図である。聴覚機器10は、入ってくる音声を受信し、それをオーディオ信号、すなわち第1のオーディオ信号に変換するための第1のトランスデューサ、すなわちマイクロフォン11を備える。第1のオーディオ信号は、信号プロセッサ12に送られて処理されることで、補聴器のユーザの聴力損失を補う第2のオーディオ信号となる。レシーバ13は、信号プロセッサ12の出力に接続され、第2のオーディオ信号を出力音声信号に変換する。出力音声信号は、例えばユーザの聴力損失を補うよう変調された信号である。この出力音声が、トランスデューサ14に送られる。典型的には、レシーバ13とトランスデューサ14とは組み合わされて、スピーカ15と称される。これはレシーバ13とトランスデューサ14を含むことが示唆される。
【0065】
聴覚機器信号プロセッサ12はアンプ、コンプレッサ、ノイズリダクションシステム等の要素を備える。聴覚機器または補聴器は更に、出力信号を最適化するための、調整フィルター18等のフィルター機能を有してもよい。補聴器は更に、電磁場の放射および受信のためのアンテナシステム17と相互接続された、無線データ通信用の無線通信ユニット16を備えてもよい。無線機または送受信機等の無線通信ユニット16は、聴覚機器信号プロセッサ12とアンテナシステム17とに接続されることで、外部装置や別の聴覚機器と通信する。別の聴覚機器は、特に両耳用聴覚機器システムの場合、他方の耳における他方の聴覚機器である。聴覚機器10は更に、電池等の電源19を備える。
【0066】
聴覚機器は、耳かけ式聴覚機器であってもよく、耳かけモジュール20として設けられてもよい。
図2は、聴覚機器モジュールの概略図である。耳かけモジュール20は、マイクロフォン11と、プロセッサ12と、無線機(すなわち無線通信ユニット)16と、電源19と、アンテナシステム17の部品17’および17’’を有する。管モジュール25は、アンテナシステム17のその他部品17’’’と、管要素21とを備える。管要素は、ユーザの耳に音声を音響信号または電気信号として提供できる。耳あなモジュール29はスピーカ15を備える。
【0067】
図2に示す構成は、あくまで例示的である。耳かけ補聴器は、耳かけモジュール20と管モジュール25のみを備える種類のものがある。耳あな補聴器または完全外耳道挿入補聴器は、耳あなモジュール29のみを備え、耳あなモジュール29がマイクロフォン11、信号プロセッサ12、無線機16、電源18、およびアンテナシステム17を含む聴覚機器構成要素を備える種類のものがある。モジュール同士は、点線22、22’で示すように、機械的および/または電気的等、任意の形態で相互接続されてもよい。典型的には、コネクタが管、即ち管の第1および第2端に取り付けられる。
【0068】
図2に示すように、耳かけモジュールは第1のアンテナ素子17’および第2のアンテナ素子17’’を備える。スイッチ装置31は、信号プロセッサ12より受信されるスイッチ制御情報23に応じて、無線通信ユニットまたは無線機16に接続されるのを、第1のアンテナ素子17’と第2のアンテナ素子17’’との間で切り替えるように構成されてもよい。第1および第2のアンテナ素子17’’の内の他方は、接地電位に接続されてもよい。アンテナ素子17’’’は第3のアンテナ素子であってもよく、いくつかの実施形態では、スイッチ装置は第1または第2のアンテナ素子に加えてまたは代えて、第3のアンテナ素子を接地電位に接続するように切り替えを行うように構成されてもよい。第3のアンテナ素子は、管モジュール、耳かけモジュール、耳あなモジュール等の両方のようにどこに配置されてもよいことが想定される。
【0069】
聴覚機器の現行機種は、モジュールの組み合わせや内容について、幅広い選択肢や可能性があり得ることが理解されよう。例えば、耳あな聴覚機器は、電源が耳かけモジュールに配置されて、その他全ての聴覚機器構成要素を含む種類のものがある。その他非常に多様な選択肢が存在する。
【0070】
各モジュールは、ハウジング内に設けられてもよい。耳かけモジュール20の構成要素は、耳かけハウジングに設けられてもよい。耳あなモジュールの構成要素は、耳あなハウジングに設けられてもよい。その他同様である。
【0071】
いくつかの実施形態では、アンテナシステム17は耳かけハウジングまたは耳あなハウジング内に完全に収容されてもよい。すなわち、アンテナ部位がハウジングからはみ出ないように、またはハウジングがアンテナ素子の特殊部位を収容するための特殊な突起部を含むことがないように、収容が実現される。同様に、アンテナシステムは複数のハウジング内のそれぞれの中に完全に収容されてもよい。例えば耳かけハウジングおよび相互接続管または管モジュールハウジング内に収容されてもよい。
【0072】
アンテナシステムのさらに別の実施形態や、さらに別の構成も考えられる。例えば、アンテナシステムは一部が1つのモジュールに設けられ、他部が1つまたは複数のモジュールに設けられてもよい。
【0073】
図3は、本開示の一実施形態に係るアンテナシステム17を有する例示的な耳あな聴覚機器30を示す。この耳あな聴覚機器は、フェースプレート39と、ハウジングまたはシェル40とを備える。聴覚機器30は、電磁場を放射および/または受信するアンテナシステム17と相互接続される、無線通信用の無線通信ユニット36を含む、聴覚機器構成要素を有する耳あなモジュール29を備える。無線通信ユニット36は聴覚機器信号プロセッサ32に接続される。無線通信ユニット36は、両耳用補聴器システムにおいて、例えば外部装置または他方の耳に配置された他方の聴覚機器等の他方の聴覚機器と通信するために、アンテナシステム17と接続される。聴覚機器用の接地電位は、グランド35として設けられる。
【0074】
アンテナシステム17は、スイッチ装置31を備え、スイッチ装置31は入力側が無線通信ユニット36、第1の伝送線路33、第2の伝送線路34に接続されている。スイッチ装置31は入力側がさらにグランド35に接続されている。
【0075】
スイッチ装置31は、その出力において第1のアンテナ素子37および第2のアンテナ素子38に接続される。スイッチ装置31は双方向スイッチを備え、第1のアンテナ素子37の接続先を無線通信ユニット36と接地電位35との間で切り替える。同様に、スイッチ装置31は第2のアンテナ素子38の接続先を無線通信ユニット36と接地電位35との間で切り替える。図3に示すように、スイッチの状態により、第1のアンテナ素子37が、点線342に示すように、グランド35に接続される電位を有する状態で、伝送路341を介して無線通信ユニット36に接続されるように構成され、第2のアンテナ素子38が、点線343に示すように、無線通信ユニット36に接続される電位を有する状態で、伝送路344を介して接地電位35に接続されるように構成される。
【0076】
第1のアンテナ素子37と第2のアンテナ素子38とは、対称面401に対して対称に配置されてもよい。図示のように、第1のアンテナ素子37は第1の自由端371を有し、アンテナ素子38は第2の自由端381を有する。したがって、無線通信ユニット36に接続された状態の第1のアンテナ素子はモノポールアンテナとなり得る。同様に、無線通信ユニット36に接続された状態の第2のアンテナ素子はモノポールアンテナとなり得る。
【0077】
図4は、本開示の一実施形態に係るアンテナシステム17を有する例示的な耳かけ聴覚機器50を示す。この耳かけ聴覚機器は、ハウジングまたはシェル42を備え、管要素21と相互接続される。聴覚機器50は、電磁場を放射および/または受信するアンテナシステム17と相互接続される、無線通信用の無線通信ユニット46を含む、聴覚機器構成要素を有する耳かけモジュールを備える。無線通信ユニット46は聴覚機器信号プロセッサ(不図示)に接続される。無線通信ユニット46は、両耳用補聴器システムにおいて、例えば外部装置または他方の耳に配置された他方の聴覚機器等の他方の聴覚機器と通信するために、アンテナシステム17と接続される。聴覚機器用の接地電位は、グランド45として設けられる。
【0078】
アンテナシステム17は、スイッチ装置41を備え、スイッチ装置41は入力側が無線通信ユニット46、第1の伝送線路43、第2の伝送線路44に接続されている。スイッチ装置41は入力側がさらにグランド45に接続されている。
【0079】
スイッチ装置41は、その出力において第1のアンテナ素子47および第2のアンテナ素子48に接続される。スイッチ装置41は双方向スイッチを備え、第1のアンテナ素子47の接続先を無線通信ユニット46と接地電位45との間で切り替える。同様に、スイッチ装置41は第2のアンテナ素子48の接続先を無線通信ユニット46と接地電位45との間で切り替える。図4に示すように、スイッチの状態により、第1のアンテナ素子47が、グランド45に接続される電位を有する状態で、無線通信ユニット46の出力441に接続されるように構成され、第2のアンテナ素子48が、無線通信ユニット46に接続される電位を有する状態で、伝送路442を介して接地電位45に接続されるように構成される。
【0080】
第1のアンテナ素子47と第2のアンテナ素子48とは、対称面501に対して対称に配置されてもよい。図示のように、第1のアンテナ素子47は第1の自由端471を有し、アンテナ素子48は第2の自由端481を有する。したがって、無線通信ユニット46に接続された状態の第1のアンテナ素子はモノポールアンテナとなり得る。同様に、無線通信ユニット46に接続された状態の第2のアンテナ素子はモノポールアンテナとなり得る。
【0081】
聴覚機器50は、第1の側51と第2の側52とを有し、第1のアンテナ素子は第1の側に沿って延在し、第2のアンテナ素子は第2の側に沿って延在する。ユーザの右耳に装着されるように設定された聴覚機器の場合、聴覚機器50の第2の側52がユーザの頭部に隣接する。
【0082】
ユーザの左耳に装着されるように設定された聴覚機器の場合、聴覚機器50の第1の側51がユーザの頭部に隣接する。
【0083】
したがって、ユーザの右耳に装着されるように設定された聴覚機器の場合、スイッチ装置が第1のアンテナ素子を無線通信ユニット46に接続することが想定される。これにより、聴覚機器の第1の側でアクティブアンテナ素子が実現され、ユーザの頭部に隣接する聴覚機器の第2の側52においてパッシブアンテナ素子が実現される。
【0084】
同様に、ユーザの頭部の左耳に装着されるように設定された聴覚機器の場合、スイッチ装置が第2のアンテナ素子48を無線通信ユニット46に接続することが想定される。これにより、聴覚機器の第2の側52でアクティブアンテナ素子が実現され、ユーザの頭部に隣接する聴覚機器の第1の側51においてパッシブアンテナ素子が実現される。
【0085】
スイッチ制御情報23は信号プロセッサを介してスイッチ装置41に送られ、信号プロセッサからスイッチ装置に制御入力として送られる。例えば、スイッチ制御情報23はフィッティングシステムのような外部装置から、無線通信ユニットを介して聴覚機器プロセッサに送られてもよい。当該システムは、聴覚機器のユーザに対するフィッティングのためのソフトウェアを有するシステムである。
【0086】
図5は、双方向スイッチ装置の概略図である。簡略化のため、単一の双方向スイッチングのみを示すが、スイッチ装置の切り替えの対象となるアンテナ素子がより多くてもよい。この場合、例えばユーザの頭部または聴覚機器の所期のユーザに対してより適切な電磁放射を実現するように、特定のアンテナ素子をより多く接地電位に接続できる。
【0087】
第1のアンテナ素子37は、無線通信装置36の第1のアンテナ素子に接続された、スイッチ装置の第1の部位31’に接続される。第2のアンテナ素子38は、第2のアンテナ素子を接地電位35に接続する、スイッチ装置の第2の部位31’’に接続される。図5は、第1のアンテナ素子37と、第2のアンテナ素子38と、スイッチ装置31’および31’’とを備えるアンテナシステム17を示す。
【0088】
図6は、機械的スイッチング制御情報を提供するプラグを示す。耳かけモジュール20、コネクタ53、管21により構成されるように図示される聴覚機器は、コネクタ受入部55と、コネクタ要素53とを備える。コネクタ要素は、機械的スイッチ制御情報を提供するよう、コネクタ受入部55およびコネクタスイッチング部位54を介してスイッチ装置31に係合するように構成される。
【0089】
コネクタ要素53は、スイッチ装置を切り替えるように構成される場合、図6a)、図6b)に示すように、スイッチング部位54が設けられた簡易的な形態をとってもよい。図6b)において、コネクタ要素は受入部55に係合するように示され、スイッチング部位54はスイッチ31を図6a)に示す第1の位置から、第2の位置に切り替えるように示されている。コネクタ要素53は、スイッチ装置を切り替えるように構成されない場合、図6c)および図6d)に示すように、スイッチング部位54を有さない簡易的な形態をとってもよい。図6d)において、コネクタ要素は受入部55に係合するように示され、その際スイッチング部位54が存在しないため、スイッチ装置31は図6c)に示す第1の位置に維持される。
【0090】
いくつかの実施形態では、管とコネクタ要素はそれぞれ右耳、左耳用に設定されてもよい。したがって、コネクタ要素は右耳用に設定される場合、スイッチング部位54が設けられ、左耳用に設定される場合、スイッチング部位54が設けられないようにしてもよく、その逆であってもよい。
【0091】
機械的手段により、スイッチ制御情報を提供する方法が多々存在することが、当業者により理解可能であろう。また、当業者であれば、機械的スイッチ制御情報を様々な方法で提供できることが理解されよう。
【0092】
特定の実施形態が図示、説明されたが、請求項に係る発明が好ましい実施形態に限定する意図はないことが理解されよう。また、当業者であれば、請求項に係る発明の精神、範囲から逸脱することなく、様々な変更や変形が可能であることが明らかであろう。したがって、明細書および図面は限定的ではなく、例示的なものとして解されるべきである。請求項に係る発明は、代替物、変形例、均等物を網羅するものとする。本開示により、下記項目に記載された構成が把握される。
[項目1]
聴覚機器であって、
音声を受信するとともに、当該受信した音声を対応する第1のオーディオ信号に変換するマイクロフォンと、
前記第1のオーディオ信号を処理して、当該補聴機器のユーザの聴力損失を補う第2のオーディオ信号を得る信号プロセッサと、
前記信号プロセッサの出力に接続され、前記第2のオーディオ信号を出力音声信号に変換するスピーカと、
電磁場の放射および受信のためのアンテナシステムと相互接続された無線通信のために前記信号プロセッサに接続された無線通信ユニットであって、前記アンテナシステムが複数のアンテナ素子とスイッチ装置とを備える、前記無線通信ユニットと、
を備え、
前記スイッチ装置は、スイッチ制御情報に応じて、前記複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子を前記無線通信ユニットに接続し、前記複数のアンテナ素子の内の少なくとも第2のアンテナ素子を、前記聴覚機器の接地電位に接続するように構成される、聴覚機器。
[項目2]
前記第1のアンテナ素子は、前記聴覚機器の第1の側に設けられ、前記第2のアンテナ素子は、前記聴覚機器の第2の側に設けられる、項目1に記載の聴覚機器。
[項目3]
前記補聴機器が、ユーザの耳の動作位置に装着されると、前記聴覚機器の前記第1の側がユーザの頭部に隣接する、項目2に記載の聴覚機器。
[項目4]
前記聴覚機器の設定の際に、前記スイッチ装置に前記スイッチ制御情報が提供される、項目1から3のいずれか一項に記載の聴覚機器。
[項目5]
前記聴覚機器がユーザの右耳または左耳に装着されるように設定されたという判定に応じて、前記スイッチ制御情報が提供される、項目1から4のいずれか一項に記載の聴覚機器。
[項目6]
前記スイッチ装置は、単一(限定数の)切替動作を実行するように構成される、項目1から5のいずれか一項に記載の聴覚機器。
[項目7]
前記聴覚機器は、少なくとも第3のアンテナ素子をさらに備え、前記第3のアンテナ素子は前記聴覚機器の前記接地電位に接続される、項目1から6のいずれか一項に記載の聴覚機器。
[項目8]
前記スイッチ制御情報は、電気的な部分を含む、項目1から7のいずれか一項に記載の聴覚機器。
[項目9]
前記スイッチ制御情報は機械的要素を含む、項目1から8のいずれか一項に記載の聴覚機器。
[項目10]
前記聴覚機器は、コネクタ受入部とコネクタ要素とを備え、
前記コネクタ要素は、機械的スイッチ制御情報を提供するために、前記コネクタ受入部を介して前記スイッチ装置に係合するように構成される、項目9に記載の聴覚機器。
[項目11]
前記コネクタ要素は、耳挿入レシーバコネクタ要素、イヤフックコネクタ、管状コネクタ等である、項目10に記載の聴覚機器。
[項目12]
前記聴覚機器は、所期の動作位置に設けられると、ユーザの耳の後ろに位置するように構成された少なくとも1つの耳かけモジュールを含み、
前記耳かけモジュールは、少なくとも前記信号プロセッサと少なくとも1つのアンテナ素子とを備える、項目1から11のいずれか一項に記載の聴覚機器。
[項目13]
聴覚機器を設定する方法であって、前記聴覚機器は、
音声を受信し、当該受信した音声を対応する第1のオーディオ信号に変換するマイクロフォンと、
前記第1のオーディオ信号を処理して、当該補聴機器のユーザの聴力損失を補う第2のオーディオ信号を得る信号プロセッサと、
前記信号プロセッサの出力に接続され、前記第2のオーディオ信号を出力音声信号に変換するスピーカと、
複数のアンテナ素子とスイッチ装置とを備えるアンテナシステムであって、電磁場の放射および受信のための前記アンテナシステムと相互接続され、無線データ通信のために前記信号プロセッサに接続される無線通信ユニット(送受信機)と、を備え、
前記方法は、
前記聴覚機器の所期の動作位置を決定することと、
前記聴覚機器の前記決定された所期の動作位置に応じて、前記スイッチ装置にスイッチ制御情報を提供することと、
前記受信したスイッチ制御情報に応じて、前記複数のアンテナ素子の内の第1のアンテナ素子が前記無線通信ユニットに接続され、前記複数のアンテナ素子の内の第2のアンテナ素子が前記聴覚機器の接地電位に接続されるように、前記スイッチ装置を切り替えることと、を含む方法。
[項目14]
前記スイッチ装置は、単一の切替動作を実行するように構成される、項目13に記載の方法。
【符号の説明】
【0093】
10、30、50:聴覚機器
11:第1のトランスデューサマイクロフォン
12:信号プロセッサ
13:レシーバ
14:トランスデューサ
15:スピーカ
16:無線通信ユニット
17:アンテナシステム
17’:第1のアンテナ素子
17’’:第2のアンテナ素子
17’’’:第3のアンテナ素子
18:補償フィルター
19:電源
20:耳かけモジュール
21:管要素
22、22’:相互接続
23:スイッチ制御情報
24:スイッチ装置
25:管モジュール
29:耳あなモジュール
31、31’、31’’、41:スイッチ装置
32:信号プロセッサ
33、34、43、44:伝送線路
35、45:グランド
36、46:無線通信ユニット
37、47:第1のアンテナ素子
38、48:第2のアンテナ素子
371、471:第1のアンテナ素子の自由端
381、481:第2のアンテナ素子の自由端
39:フェースプレート
40、42 ハウジング、シェル
401、501:対称面
43、44:伝送線路
51:第1の側
52:第2の側
53:コネクタ
54:コネクタスイッチング部位
55:コネクタ受入部
441:出力
442:伝送路
図1
図2
図3
図4
図5
図6