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特許7071896カーボンナノチューブを添加剤として使用して、バインダー及び集電体を含まないLiイオン電池用自立電極を連続的に製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブを添加剤として使用して、バインダー及び集電体を含まないLiイオン電池用自立電極を連続的に製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20220512BHJP
【FI】
H01M4/139
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018142338
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2019050185
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】15/665,142
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517090303
【氏名又は名称】ナノシンセシス・プラス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】ニール ピアス
(72)【発明者】
【氏名】アヴェチク アルチュニアン
(72)【発明者】
【氏名】エレナ モーラ ピゴス
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-077969(JP,A)
【文献】国際公開第2017/127674(WO,A1)
【文献】特表2012-512956(JP,A)
【文献】特開2014-234338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立電極の製造方法であって、
電極活物質を流動化する工程と、
流動化した前記電極活物質と単層カーボンナノチューブとを移動可能な多孔質フレキシブル基板上に共沈着させ、前記電極活物質と前記単層カーボンナノチューブとの複合材である自立電極を形成する工程と、
を含む、
製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法において、前記方法はさらに、
カーボンナノチューブ合成反応器中で前記単層カーボンナノチューブを合成する工程を含む、
製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の製造方法において、
前記電極活物質は、グラファイト、硬質炭素、リチウム金属酸化物、リン酸鉄リチウム、及び金属酸化物から選択される、
製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の製造方法において、
前記カーボンナノチューブと前記電極活物質とを前記基板上に共沈着させるまで、前記カーボンナノチューブと前記電極活物質とを互いに接触させない、
製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の製造方法において、
前記電極活物質を流動化する前記工程では、活物質容器中の多孔質フリット及び前記電極活物質の床にキャリアガスを連続的に流してエアロゾル状電極活物質を形成する、
製造方法。
【請求項6】
自立電極を製造する装置であって、該装置は、
カーボンナノチューブを合成するためのカーボンナノチューブ合成反応器と、
電極活物質を流動化するための活物質容器と、
前記カーボンナノチューブと流動化した前記電極活物質とを集め、前記カーボンナノチューブと前記電極活物質との複合材を含む自立電極を形成するための移動可能な多孔質フレキシブル基板と、
を有する、
装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
前記活物質容器は、多孔質フリット及び垂直振とう機を有する、
装置。
【請求項8】
請求項6記載の装置において、
前記移動可能な多孔質フレキシブル基板はロールツーロールシステムに連結されている、
装置。
【請求項9】
請求項6記載の装置において、
前記電極活物質は、グラファイト、硬質炭素、リチウム金属酸化物、リン酸鉄リチウム、及び金属酸化物から選択される、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
共同研究契約
本願の特許請求の範囲に係る発明は、共同研究契約の下記の当事者によって、又は当該当事者のために、なされたものである。共同研究契約は本発明がなされた日以前に有効であり、本発明は共同研究契約の範囲内で行われた業務の結果としてなされたものである。共同研究契約の当事者は1)Honda Research Institute USA,Inc.及び2)NanoSynthesis Plus,Ltd.である。
【背景技術】
【0002】
単層カーボンナノチューブ(SWNT)は優れた電気的特性及び機械的特性、並びに複合材料に不可欠な高いアスペクト比を有する。そのため、様々なマトリックスの添加剤としてSWNTを利用することが、最も重点的に研究される応用分野の1つとなっている。様々な応用のうち、電池電極の性能を改善するためのSWNT添加剤が有望視されている。SWNTの混合は主に液体プロセスによって行われ、a)ナノチューブの合成、b)適当な溶媒中でのナノチューブの分散(脱凝集)、c)ナノチューブ表面の機能化(凝集からの保護)、d)バインダーとの混合、及びe)活物質との混合(スラリー調製)という5つの工程を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなプロセスは高コストであり、加えてナノチューブの特性の低下につながる。例えば、ボールミルや超音波によって分散を行うと、アスペクト比低下と欠陥発生が避けられず、そのため性能を改善するためにはより多くのナノチューブ添加量(重量%)が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
幾つかの実施形態において、本開示は自立電極の製造方法に関する。当該製造方法は、電極活物質を流動化する工程と、流動化した電極活物質と単層カーボンナノチューブとを移動可能な多孔質フレキシブル基板上に共沈着させ、電極活物質と単層カーボンナノチューブとの複合材である自立電極を形成する工程と、を含む。
【0005】
幾つかの実施形態において、本開示は自立電極を製造する装置に関する。当該製造装置は、カーボンナノチューブを合成するためのカーボンナノチューブ合成反応器と、電極活物質を流動化するための活物質容器と、カーボンナノチューブと流動化した電極活物質とを集め、カーボンナノチューブと電極活物質との複合材を含む自立電極を形成するための移動可能な多孔質フレキシブル基板と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は本開示の一実施形態による自立電極の製造方法の一例を示す概略ブロック図である。
図2図2は本開示の一実施形態による自立電極の製造装置の一例を示すフロー図である。
図3図3は本開示の一実施形態による容器を示す概略図である。
図4図4は本開示の一実施形態による装置の一例を示す概略図である。
図5図5は本開示の一実施形態による装置の他の例を示す概略図である。
図6図6は本開示の一実施形態による合成カーボンナノチューブのラマン特性(λ=633nm)を示す。
図7図7は本開示の一実施形態による合成カーボンナノチューブのラマン特性(λ=532nm)を示す。
図8図8は本開示の一実施形態による合成カーボンナノチューブの微分熱重量分析(DTG)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は自立電極を製造するための方法及び装置を提供する。また、ナノチューブと電極活物質の混合物を含む自立電極を提供する。
【0008】
一実施形態においては、エアロゾル状ナノチューブとエアロゾル状電極活物質とを別々に供給し、これらエアロゾル状ナノチューブとエアロゾル状電極活物質とを移動可能な多孔質基板に移し、当該基板上にカーボンナノチューブと電極活物質との混合物を含む自立電極を形成する。
【0009】
本開示は、可動多孔質基板上にカーボンナノチューブと電極活物質とを一段階で共沈着(共堆積)(co-deposition)させる工程を用いて、Liイオン電池用の自立電極を連続的に製造するための方法及び装置に関する。合成反応器から供給されるカーボンナノチューブと流動化した活物質粉末とを、ロールツーロールシステムに取り付けられた多孔質フレキシブル基板上に、容器から直接堆積させてよい(図4及び図5)。
【0010】
得られた沈着層ではナノチューブが電極活物質中に良好に分散している。ナノチューブと活物質の沈着速度をそれぞれ独立に調整することによって、活物質に対するナノチューブの比率(重量%)を調節できる。例えば所定の沈着速度に応じて基板の移動速度を変更して、得られる複合材の厚さを調整してよい。複合材は多孔質基板から分離可能である。沈着層は自立可能でフレキシブルであり、所望の大きさに切断可能である。この複合材は、バインダーや集電体(電極の種類に応じてアルミナ又は銅)を追加することなく、電極として使用できる。この電極の開発は電池のエネルギー密度及び出力密度を改善する機会を広げる。また、ロールツーロールシステムを用い、ナノチューブと活物質粉末を沈着させるために別々の供給源を使用することで、ナノチューブ充填量(loading)(重量%)と複合材の厚さを調整できる。さらに、本開示の方法は連続的に実行可能であり、コスト効率が高い。
【0011】
幾つかの実施形態において、本開示は自立電極の製造方法に関する。この方法は電極活物質を流動化させる工程、並びに流動化した電極活物質と単層カーボンナノチューブとを移動可能な多孔質フレキシブル基板上に共沈着させ、電極活物質と単層カーボンナノチューブとの複合材を含む自立電極を形成する工程を含む。
【0012】
本明細書において、「電極活物質」は電極に含まれる導電性物質を表す。「電極」は電解質及び外部回路との間でイオン及び電子を交換する導電体を表す。「正極」及び「カソード」は本明細書において同義であり、電気化学電池中で電極電位が高いほうの電極(即ち、負極よりも高い電極電位を示す電極)を表す。「負極」及び「アノード」は本明細書において同義であり、電気化学電池中で電極電位が低いほうの電極(即ち、正極よりも低い電極電位を示す電極)を表す。カソード還元はある化学種が電子を獲得することを表し、アノード酸化はある化学種が電子を放出することを表す。
【0013】
図1に示すように、非限定的な一例においては、工程S100でエアロゾル状カーボンナノチューブとエアロゾル状電極活物質とを別々に供給し、工程S101でエアロゾル状カーボンナノチューブとエアロゾル状電極活物質とを多孔質基板に移動させ、当該カーボンナノチューブと電極活物質との混合物を含む複合材自立電極を所望の厚さで形成することによって、Liイオン電池用自立電極を製造する。例えば自立電極の密度を増加させるために、工程S102で自立電極を任意に処理してもよい。自立電極は自立型で、フレキシブルであり、且つ任意に所望の電池電極寸法に切断できる。自立電極はバインダーを含まないものであってよく、また金属系集電体(電極の種類に応じ、典型的にはアルミナ又は銅)を使用せずに利用可能である。
【0014】
エアロゾル状カーボンナノチューブとエアロゾル状電極活物質を供給する装置は限定されない。図2に示す説明用の例では、自立電極を製造する装置5が示されている。カーボンナノチューブと電極活物質をそれぞれ別の容器10A、10Bに入れる。カーボンナノチューブと電極活物質は、各製造プロセスから別々に集められ(collected)、自立電極内で所望の比率になるように該製造プロセスから直接的又は間接的に容器10A、10Bに投入されてよい。次に、ナノチューブと電極活物質をエアロゾル化するために、1種以上のキャリアガス20A、20Bを容器10A、10Bに導入してよい。キャリアガスにそれぞれ取り込まれたナノチューブと電極活物質をそれぞれ含むエアロゾル流30A、30Bを、移動可能な多孔質基板40(フィルター等)に向けて移動させる。キャリアガスはガス流50として多孔質基板40を通過する。その間、ナノチューブと電極活物質の混合物は多孔質基板40の表面上に捕獲され、自立電極60を形成する。自立電極60が所望の厚さになると、該自立電極60を移動可能な多孔質基板40から分離できる。
【0015】
自立電極60、61を連続的に製造するために、装置5は複数の可動型多孔質基板40、41を有していてもよい。2つの多孔質基板のみを図示するが、装置5は任意の数の多孔質基板を有していてもよいと解されるべきである。非限定的な一例においては、エアロゾル流30A、30Bを移動可能な多孔質基板40に流通させて所望の厚さの自立電極60を製造する際、エアロゾル流30A、30Bの流れが第2の移動可能な多孔質基板41に向かうように、バルブ33A、33Bを調節してよい。自立電極61を移動可能な多孔質基板41上に形成する間、自立電極60を第1の移動可能な多孔質基板40から分離してよい。エアロゾル流30A、30Bを第2の移動可能な多孔質基板41に流通させて所望の厚さの自立電極61を製造する際、エアロゾル流30A、30Bの流れが第1の移動可能な多孔質基板40に戻るように、バルブ33A、33Bを調節してよい。自立電極61の厚さ及び/又は断面積は自立電極60と同じであっても異なっていてもよい。例えば、自立電極61は自立電極60よりも大きな厚さ及び/又は断面積を有してよい。
【0016】
バルブ33A、33Bを自動的に切り替え、エアロゾル流30A、30Bの流れ方向を一方の移動可能な多孔質基板から他方の基板に変えるために、様々な異なる方法を用いてよいと理解されるべきである。バルブ33A、33Bを調節してエアロゾル流30A、30Bの流れ方向を変えるために使用できるシステムの例としては、自立電極60及び自立電極61の厚さを検出するための1つ以上のセンサー、移動可能な多孔質基板40、41前後での圧力低下(自立電極60及び自立電極61の厚さに対応)を検知するための1つ以上の圧力センサー、エアロゾル流30A、30Bの所定の流量において、設定時間(自立電極60及び自立電極61の厚さに対応)が経過した後にバルブ33A、33Bを切り替えるタイマー、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。1つ以上の圧力センサーによって多孔質基板40又は多孔質基板41上の自立電極60又は自立電極61の所望の厚さに対応する圧力低下を測定した後、或いは1つ以上の厚さセンサーによって多孔質基板40又は多孔質基板41上の自立電極60又は自立電極61の所望の厚さを検出した後、或いはタイマーによって多孔質基板40又は多孔質基板41上の自立電極60又は自立電極61の所望の厚さに対応する設定時間を観測した後に、混合物の方向を一方の多孔質基板から他方の基板に変える。移動可能な多孔質基板40及び/又は多孔質基板41は、自立電極60及び/又は自立電極61で製造される電池の使用において必要とされる断面積を有すると理解されるべきである。従って、最終製品の電池内で組み立てる前に、自立電極60及び/又は自立電極61の更なる断面積加工(切断等)は必要ではない。
【0017】
容器10A、10Bの構造は限定されない。図3に示す説明用の例では、容器10A(及び/又は容器10B)は、ナノチューブを受領するホッパー11A(及び/又は電極活物質を受領するホッパー11B)を有する、ベンチュリフィーダー等の空気圧式粉末供給装置であってよい。容器10A(及び/又は容器10B)はさらに、回転弁12A(及び/又は回転弁12B)も有してよい。該回転弁は、ナノチューブ(及び/又は電極活物質)を供給し、容器10Aに導入されたキャリアガス20A(及び/又は容器10Bに導入されたキャリアガス20B)と接触させ、エアロゾル流30A(及び/又はエアロゾル流30B)を形成する。
【0018】
図4に示すように、ナノチューブ合成反応器として構成した容器10Aから、ナノチューブをエアロゾル流30Aに直接供給してもよく、並行して供給源106から電極活物質のエアロゾル流30Bを供給してよい。即ち、エアロゾル流30Aはナノチューブ合成反応器から流れ出た生成物流であってよい。例えば、1種以上のキャリアガス20Aの存在下、炭素源又は炭素前駆体130を容器10Aに投入して、カーボンナノチューブを形成してよい。カーボンナノチューブのエアロゾル流30Aは反応器出口175から出て、パイプ又はチューブ412を下ってフード27に達し、エアロゾル状カーボンナノチューブが電極活物質のエアロゾル流30Bと共に自立層60として多孔質フレキシブル基板40上に沈着する。フード27につながるパイプは、フード27に達する前に90°の角度α1、α2で屈曲するように図示したが、他の角度α1、α2で曲がっていてもよい。非限定的な一例においては、図5に示すように、角度α1、α2の1つ以上が180°であってもよい。この場合、エアロゾル流30A、30Bのフード27から多孔質基板40への流通が容易になる。図示しないが、図2に関して説明したように、複数の多孔質基板40を使用してもよい。
【0019】
本開示での使用に適したキャリアガス及び流動化ガスとしては、アルゴン、水素、窒素、これらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。ナノチューブと電極活物質をエアロゾル化し、エアロゾル状ナノチューブとエアロゾル状電極活物質を移動可能な多孔質基板へと十分な速度で輸送し、該基板の表面上に自立電極を形成するために、キャリアガスは任意の好適な圧力及び任意の好適な流量で使用される。幾つかの実施形態においては、キャリアガスはアルゴン、水素、ヘリウム、又はこれらの混合物であってよい。幾つかの実施形態においては、キャリアガスは、毎分850立方センチメートル(850sccm)の流量のアルゴン及び300sccmの流量の水素を含む。
【0020】
本開示で使用するナノチューブの種類は限定されない。ナノチューブは炭素のみからなるものであってよく、置換され炭素以外の格子原子を含んでいてもよい。カーボンナノチューブを外的に誘導体化し、側鎖及び/又は末端部に1つ以上の官能部分を導入してもよい。幾つかの実施形態においては、カーボンナノチューブ及び無機ナノチューブが金属や半金属のような更なる成分を含み、このような成分がナノチューブ構造に組み込まれている。ある実施形態においては、このような更なる成分はドーパント、表面被覆物、又はこれらの組み合わせである。
【0021】
ナノチューブは、そのカイラリティーによって、金属性、半金属性、又は半導電性になり得る。カーボンナノチューブのカイラリティーは2つの指標(n,m)によって表される。本技術分野で広く知られているように、n及びmはチューブ構造の六角形状グラファイトの切断及び巻き方を示す整数である。(m,n)配置のナノチューブは絶縁性である。(n,n)配置、即ち「アームチェア」配置のナノチューブは金属性であり、そのため電気伝導性及び熱伝導性が高い。カーボンナノチューブの直径は約0.6nm(単層カーボンナノチューブ)から最大で500nm以上(単層又は複層ナノチューブ)までの範囲であってよい。ナノチューブの長さは約50nmから約10cm以上の範囲であってよい。
【0022】
移動可能な多孔質基板は、当業者に公知の任意の適切な手段によって移動可能とされる。幾つかの実施形態においては、移動可能な多孔質基板は、コンベヤーベルト又はロールツーロールシステム(図4及び図5に示すロールツーロールシステム45等)に取り付けられた多孔質フレキシブル基板であってよい。コンピューター又はオペレーターによる手動操作等によって、多孔質基板の移動速度を調整できる。移動速度を調整することによって、得られる複合材の厚さが調整可能となり或いは調整容易となる。好適な多孔質フレキシブル基板としてはフィルターやフリット等が挙げられるが、これらに限定されない。そのような多孔質フレキシブル基板は複合材が通過しない適当な大きさの孔を有する。幾つかの実施形態においては、孔はキャリアガス及び/又は流動化ガスの通過を許容する大きさであってよい。
【0023】
非限定的な一例においては、反応器又は加熱炉中で、触媒又は触媒前駆体の存在下、約1000℃~約1500℃の温度(例えば約1300℃)で、炭素源又は炭素前駆体からカーボンナノチューブを合成してよい。
【0024】
本開示は特定のカーボンナノチューブ製造用触媒の種類又は形態に限定されない。様々な実施形態において、触媒粒子はエアロゾル状で存在する。幾つかの実施形態においては、触媒材料はナノ粒子として供給される。ナノ粒子としては、遷移金属、ランタニド金属、又はアクチニド金属を含むコロイド状金属性ナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、触媒はクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の第VI族遷移金属、又は鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の第VIII族遷移金属を含んでいてもよい。幾つかの実施形態においては、2種以上の金属の組み合わせを使用する。このような組み合わせとしては、例えば、鉄、ニッケル、及びコバルトの混合物が挙げられ、より具体的にはニッケルとコバルトの50:50混合物(重量比)が挙げられる。触媒は純金属、金属酸化物、金属炭化物、金属硝酸塩、及び/又は1種以上の金属を含む他の化合物を含んでよい。約0.1~10原子%の触媒を反応器に添加してよい。ここで、原子%は反応器中の原子の総数(触媒及び炭素前駆体の原子)に対する触媒原子の数の百分率を示す。
【0025】
上記触媒の替わりに、或いは上記触媒と組み合わせて、触媒前駆体を投入してもよい。触媒前駆体は反応器中の条件下で活性触媒へと変換され得る。触媒前駆体は、遷移金属硝酸塩、遷移金属酢酸塩、遷移金属クエン酸塩、遷移金属塩化物、遷移金属フッ化物、遷移金属臭化物、遷移金属ヨウ化物、これらの水和物等の、1種以上の遷移金属塩を含んでよい。触媒前駆体はメタロセン、金属アセチルアセトナート、金属フタロシアニン、金属ポルフィリン、金属塩、有機金属化合物、又はこれらの組み合わせ等であってよい。例えば、触媒前駆体はフェロセン、ニッケロセン、コバルトセン、モリブデノセン、ルテノセン、鉄アセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、モリブデンアセチルアセトナート、ルテニウムアセチルアセトナート、鉄フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、鉄ポルフィリン、ニッケルポルフィリン、コバルトポルフィリン、鉄塩、ニッケル塩、コバルト塩、モリブデン塩、ルテニウム塩、又はこれらの組み合わせであってよい。触媒前駆体は可溶性塩を含んでよく、例えばFe(NO33、Ni(NO32、又はCo(NO32等を水等の液体に溶解させて使用してよい。触媒前駆体は、反応器の触媒粒子成長領域で中間触媒状態となり、その後、反応器のナノ構造成長領域でナノ構造成長条件下において活性触媒へと変換されるものであってよい。例えば、触媒前駆体は、触媒粒子成長領域で遷移金属酸化物へと変換され、その後、ナノ構造成長領域で活性触媒ナノ粒子に変換される遷移金属塩であってよい。
【0026】
触媒粒子は、dブロック遷移金属、fブロック遷移金属、これらの組み合わせ等の遷移金属を含んでよい。例えば、触媒粒子は鉄、ニッケル、コバルト、金、銀、これらの組み合わせ等のdブロック遷移金属を含んでよい。触媒粒子は触媒支持体上に支持されていてよい。触媒支持体はアルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、及びゼオライトから選択されるものであってよい。例えば、触媒支持体はナノ多孔性酸化マグネシウム支持体であってよい。触媒支持体はマトリックスに用いられる材料と同じであっても異なっていてもよい。触媒支持体上に触媒粒子を配置するために、触媒を反応器に投入する前に、触媒支持体材料を触媒材料に添加してよい。例えば、モリブデン/コバルト混合物等の触媒材料の溶液を、硝酸マグネシウム溶液と混合し、加熱し、冷却して、ナノ多孔性MgO支持体上に触媒を調製してよい。或いは、シリカ支持体に硝酸コバルト及び七モリブデン酸アンモニウムを含侵させ、数時間乾燥して、多孔質シリカ支持体上にコバルト/モリブデン触媒を調製してもよい。
【0027】
本開示では、カーボンナノチューブの形成に使用される炭素前駆体又は炭素源は、特定の種類(例えば、1種以上の炭素含有ガス、1種以上の炭化水素溶媒、これらの混合物等)に限定されない。炭素前駆体の例としては、炭化水素ガス(メタン、アセチレン、エチレン等)、アルコール(エタノール、メタノール等)、ベンゼン、トルエン、CO、CO2等が挙げられるが、炭素前駆体はこれらに限定されない。カーボンナノチューブの合成及び成長に用いる燃料は、1種以上の炭素前駆体又は炭素源と1種以上の触媒又は触媒前駆体との混合物を含む。
【0028】
燃料又は前駆体は、一注入器あたり約0.05~1ml/分の範囲(例えば約0.1ml/分又は約0.3ml/分)で投入してよい。幾つかの実施形態においては、例えば大規模製造で、複数の注入器を使用してよい。ガス流量は、水素が約0.1~5L/分及び/又はヘリウム又はアルゴンが約0.2~2L/分であり、例えば、水素を約5L/分或いは約0.3L/分で投入し且つアルゴンを約1L/分で投入してよい。特定の理論に束縛されるものではないが、水素濃度を希釈するために(例えば水素濃度を爆発限界未満に保つために)、ヘリウム又はアルゴンをキャリアガスに添加してもよい。当業者に明らかなように、燃料投入流量及び/又はガス流量は、例えば反応器の容積に応じて選択してよい。幾つかの実施形態においては、複数の反応器を連結して使用してよい。幾つかの実施形態においては、開始温度が低く、これをピーク温度又は最高温度まで昇温し、その後降温(好ましくは開始温度まで降温)するという反応器温度プロファイルを用いる。特定の理論に束縛されるものではないが、所与の反応器温度プロファイルにおいて、反応器の内側の注入器の位置を前駆体温度との関係で決定するべきである。例えば、当業者は、沸点及び分解等を考慮して、液滴形成や分解が起こることなく投入位置から前駆体が蒸発するように注入器の位置を決定できる。幾つかの実施形態においては、注入器の先端を例えば約8インチほど反応器内に挿入してよい。注入器の先端での投入温度は、反応器又は加熱炉の温度、及び注入器を反応器又は加熱炉に挿入する深さに応じて決定され得る。幾つかの実施形態においては、注入器先端の投入温度は約750℃である。幾つかの実施形態においては、注入器先端を反応器の内側に約8インチ挿入する。所望の組成及び厚さを得るために、出発物質が存在する限りにおいて、カーボンナノチューブ反応器を任意の適当な時間だけ駆動させてよい。当業者はこのような時間を決定できる。
【0029】
本開示で合成したカーボンナノチューブの特性評価は、本技術分野において公知の手段を用いて行ってよい。この手段としては、微分熱重量分析(DTG)やラマン分光法が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、米国特許出願公開第2009/0274609号明細書に開示されているG/D比の計算を利用してよく、該文献はこの参照により本開示に含まれる。SWNTのラマンスペクトルは、Gバンド(約1590cm-1)、Dバンド(約1350cm-1)、及びラジアルブリージングモード(RBM)(約100~300cm-1)に、3つの主要なピークを示す。RBM周波数はSWNTの直径の逆数に比例し、そのためSWNTの直径の計算に使用できる。通常、RBMピークの赤色側へのシフトはSWNTの平均直径の増加に対応する。ラマン許容フォノンモードE2gに関連する接線モードGバンドでは、2つのピークが重なっていてもよい。約1593cm-1と1568cm-1の2本のピークは半導体性SWNTに帰属され、一方、約1550cm-1の広いブライト-ウィグナー-ファノ線(Breit-Wigner-Fano line)は金属性SWNTに帰属される。従って、Gバンドによって金属性SWNTと半導体性SWNTとを区別できる。Dバンド構造は不規則炭素、アモルファス炭素の存在、及びsp2炭素網によるその他の欠陥に関連している。SWNTのラマンスペクトル中のDバンドに対するGバンドの比(IG:ID又はG/D比)は、SWNT製品の純度及び品質を決定する指標として使用できる。好ましくは、IG:IDは約1~500であり、好ましくは約5~400であり、より好ましくは約7を超える値である。本開示において合成したカーボンナノチューブのラマン特性の非限定的な典型例を図6及び図7に示す。本開示において合成したカーボンナノチューブのDTGの非限定的な典型例を図8に示す。
【0030】
本明細書において、2つ以上の物質の「共沈着」は、互いに接触していなかった2つ以上の物質を同時に沈着させることを表す。共沈着は当業者に公知の適当な手段によって行ってよい。この手段としては化学蒸着が挙げられるが、これに限定されない。共沈着は当業者に公知のドラフト(fume hood)又は他の適当な装置内で行ってよい。幾つかの実施形態においては、基板上に共沈着させるまで、カーボンナノチューブと電極活物質は互いに接触しない。
【0031】
単層カーボンナノチューブとエアロゾル状電極活物質粉末の混合物をある表面上に集めて回収すること、並びにキャリアガスを除去することは、任意の好適な手段を用いて行える。多孔質基板40、41の収集面は多孔質表面であってよい。このような多孔質基板40、41としては、キャリアガスと流動化ガスを通過させながらカーボンナノチューブと電極活物質の混合物を保持して自立電極を形成できるような適当な大きさに調整された孔を有するフィルター、フリット等が挙げられるが、これらに限定されない。キャリアガス及び流動化ガスは、該表面を通過した後、出口を経由して、除去することができる。幾つかの実施形態においては、真空源によって容易にキャリアガスを除去できる。フィルターはシート状であってよく、織布や不織布等の様々な異なる材料を含んでいてもよい。フィルター材料の例としては、綿、ポリオレフィン、ナイロン、アクリル、ポリエステル、繊維ガラス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられるが、これらに限定されない。多孔質基板が高温に敏感である限りにおいて、流れ30A及び流れ30Bのうちの1又は複数の流れは、移動可能な多孔質基板に接触する前に、より低い温度を含む希釈ガスによって、或いは該流れを熱交換機に通すことによって、予冷却されてもよい。
【0032】
本明細書において、「流動化(fluidizing)」は粒状材料を静的な固体状態から、流れやすさによって特徴づけられる動的な流体のような状態へと変換することを表す。流動化は、当業者に知られているように、液体や気体等の流体を粒状材料に通すことによって、行うことができる。幾つかの実施形態においては、電極活物質を流動化するステップは、該物質をエアロゾル化するステップを含む。
【0033】
幾つかの実施形態においては、電極活物質をエアロゾル化する工程は、エアロゾル化チャンバ中の第1の多孔質フリット及び電極活物質の床にエアロゾル化ガスを流通させ、エアロゾル状電極活物質粉末を調製するステップを含む。エアロゾル化チャンバは、ガスが通過することでエアロゾル化が可能であるが活物質が落下しないような、適切な大きさの孔を有する多孔質材料で構成される。エアロゾル化チャンバは特定の構造に限定されない。好適なエアロゾル化ガスとしてはアルゴン、ヘリウム、窒素等が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、エアロゾル化ガスはキャリアガスと同じであってよい。
【0034】
幾つかの実施形態においては、本方法はさらにカーボンナノチューブ合成反応器中で単層カーボンナノチューブを合成する工程を含む。この反応器は触媒又は触媒前駆体、炭素源、1つ以上のガス入口、1つ以上の出口、及びカーボンナノチューブ成長領域を含んでよい。この1つ以上のガス入口は1種以上のキャリアガスが導入されるように構成されてよい。
【0035】
幾つかの実施形態においては、カーボンナノチューブ合成反応器は25mm外径×22mm内径×760mm長の石英管を有していてよく、大気圧で作動するものであってよい。或いは、カーボンナノチューブ合成反応器は、米国特許出願第15/452,509号(2017年3月7日出願)及び米国特許出願第15/452,500号(2017年3月7日出願)に記載されているように設計されたものであってよい。これら文献はこの参照により本開示に含まれる。カーボンナノチューブ合成反応器は他の装置に対して様々な角度で配置され得る。
【0036】
幾つかの実施形態においては、電極活物質は、グラファイト、硬質炭素、リチウム金属酸化物、リン酸鉄リチウム、及び金属酸化物から選択される。幾つかの実施形態においては、アノード用の電極活物質はグラファイト又は硬質炭素であってよい。幾つかの実施形態においては、カソード用の電極活物質はリチウム金属酸化物又はリン酸鉄リチウムであってよい。
【0037】
或いは、電極活物質は、米国特許出願第15/452,509号(2017年3月7日出願)及び同15/452,500号(2017年3月7日出願)に記載されているものから選択してもよい。これら文献はこの参照により本開示に含まれる。
【0038】
非限定的な一例において、電極活物質はエアロゾル化が可能な任意の固体金属酸化物粉末であってもよい。例えば、金属酸化物は電池のカソード用の材料である。金属酸化物の非限定的な例としては、Ni、Mn、Co、Al、Mg、Ti、及びこれらの混合物の酸化物等が挙げられる。金属酸化物をリチオ化してもよい。ある例において、金属酸化物はリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(LiNiMnCoO2)である。金属酸化物粉末は約1ナノメートルから約100ミクロンの間の範囲の粒子サイズを有してよい。非限定的な一例において、金属酸化物粒子は約1~10ナノメートルの平均粒子サイズを有する。
【0039】
本開示で用いるリチウム金属酸化物中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アルミニウム、ポスト遷移金属、及びこれらの水和物の1種以上であってよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、電極活物質はリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物(LiNiMnCoO2)である。
【0040】
「アルカリ金属」は元素周期表の第I族の金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等)である。
【0041】
「アルカリ土類金属」は元素周期表の第II族の金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等)である。
【0042】
「遷移金属」は元素周期表のdブロックの金属(ランタニド類及びアクチニド類を含む)である。遷移金属としてはスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「ポスト遷移金属」としてはアルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
幾つかの実施形態においては、本方法はキャリアガス中の単層カーボンナノチューブと電極活物質の混合物を、エアロゾル化反応器、カーボンナノチューブ合成反応器、及び収集チャンバを連結する1又は複数のチューブ内に流す工程をさらに含む。幾つかの実施形態においては、この1つ以上のチューブは少なくとも外径約0.5インチのステンレスチューブである。
【0045】
複合材自立電極品中のカーボンナノチューブの含有量又は重量%は、ナノチューブ(又は該ナノチューブの形成に用いる炭素源)と電極活物質との相対量に基づいて決定される。複合材自立電極品中のカーボンナノチューブの含有量又は重量%が所定の値となるように開始時の炭素源、触媒/触媒前駆体、及び電極活物質の相対量を決定することは、当業者レベルの範囲内である。非限定的な一例において、自立電極は0.1~4重量%のカーボンナノチューブを含んでよく、残りは、電極活物質と、任意に1種以上の添加剤とを含んでよい。自立電極は0.2~3重量%のカーボンナノチューブを含んでよく、残りは、電極活物質と、任意に1種以上の添加剤とを含んでよい。自立電極は0.75~2重量%のカーボンナノチューブを含んでよく、残りは、電極活物質と、任意に1種以上の添加剤とを含んでよい。添加剤及び/又はドーパントはそれぞれ0~5重量%の範囲で添加される。非限定的な一例において、自立電極は基本的にカーボンナノチューブ及び電極活物質粉末からなる。非限定的な一例において、自立電極はカーボンナノチューブ及び電極活物質粉末のみからなる。上記範囲において、自立電極はバインダーを含まないものであってよい。バインダーを含まないことにより、自立電極の柔軟性(flexibility)が改善される。また、カーボンナノチューブ含量が高いと自立電極の柔軟性が改善されることが見出されている。特定の理論に束縛されるものではないが、この改善は自立電極のウェブ状構造による結果であると考えられる。当該ウェブ状構造において、カーボンナノチューブはウェブ状に配置され、電極活物質はウェブ内に含まれているか、或いは埋め込まれている。
【0046】
非限定的な一例において、自立電極は0.9~1.75g/ccの密度を有してよい。自立電極は0.95~1.25g/ccの密度を有してもよい。自立電極は0.75~2.0g/ccの密度を有してもよい。自立電極は0.95~1.60g/ccの密度を有してもよい。
【0047】
非限定的な一例においては、多孔質基板上に集められた自立電極は750μm以下の厚さを有してよい。多孔質基板上に集められた自立電極は50~500μmの厚さを有してもよい。多孔質基板上に集められた自立電極は100~450μmの厚さを有してもよい。多孔質基板上に集めたれた自立電極は175~250μmの厚さを有してもよい。
【0048】
幾つかの実施形態においては、本開示の方法は複合材又は自立電極を処理する工程をさらに含んでよい。このような工程としては、複合材又は自立電極をプレス処理する工程が挙げられるが、これに限定されない。特定の理論に束縛されるものではないが、プレス処理によって密度が増加し、且つ/或いは自立電極の厚さが減少し得る。これによってレート特性(rate performance)、エネルギー密度、電池寿命等の特性が改善され得る。自立電極のプレス処理では、例えば当業者に公知のロールプレス機、カレンダー機、プラテンプレス機、又は他の好適な手段を用いて力を加え、所望の厚さ及び/又は密度を達成できる。所望の厚さ、密度、及び/又はインピーダンスを得るために好適な力を加えてよい。当該力は、約1トン、約2トン、約3トン、約4トン、約5トン、約6トン、約7トン、約8トン、約9トン、約10トン、約15トン、或いは特定の整数値の力、或いは約7~10トンのような範囲内の力であってよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、プレス処理工程では、約20ミクロン、約30ミクロン、約40ミクロン、約50ミクロン、約60ミクロン、約70ミクロン、約80ミクロン、約90ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン等といった整数値又は特定の範囲内の厚さまでプレスしてよい。特定の理論に束縛されるものではないが、電極が厚すぎると、エネルギー生成が遅くなるか、或いは好適な柔軟性が得られないおそれがある。幾つかの実施形態においては、酸化物や割れの形成が無いフレキシブルな電極薄片を製造することが望ましい場合がある。電極が薄すぎると、エネルギー生成は速いが、十分なエネルギーが生成されないおそれがある。加えて、当業者に公知の好適な手段によって、ロールプレス機又はカレンダー機のロール又はローラー間の距離、或いはプラテンプレス機のプレート間の距離を調整することが望ましい場合がある。
【0049】
好適なプレス量の決定は当業者のレベルの範囲内である。過度のプレスによって電極内に電解質が侵入しすぎる場合があることは当業者に知られている。このことはインピーダンス及び/又は拡散抵抗を測定することによって判定される。当業者には明らかなように、インピーダンスによって測定される、所与の電解質の拡散抵抗又は拡散係数を最小化することは興味深い。非限定的な一例において、プレス処理後の自立電極の厚さは、未処理の自立電極又は多孔質基板上に収集した後の自立電極の厚さの40%~75%であってよい。プレス処理後の自立電極の厚さは、未処理の自立電極又は多孔質基板上に収集した後の自立電極の厚さの45%~60%であってよい。
【0050】
非限定的な一例において、プレス処理後の自立電極の密度は、未処理の自立電極又は多孔質基板上に集められ後の自立電極の密度よりも、40%~125%だけ高い。プレス処理後の自立電極の密度は、未処理の自立電極又は多孔質基板上に集められた後の自立電極の密度よりも、45%~90%だけ高くてもよい。
【0051】
より薄くプレス処理した電極は不適当に脆い場合がある。プレス処理を行った場合と行わなかった場合の電極の厚さ及び密度の非限定的な例を下記表に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
幾つかの実施形態においては、電極活物質を流動化させる工程は、活物質容器内の多孔質フリット及び電極活物質の床にエアロゾル化ガスを連続的に流通させ、エアロゾル状電極活物質を形成する工程を含む。多孔質フリットの孔の大きさは、エアロゾル化ガスが通過できエアロゾル化を実施することが可能であるが、活物質が孔に落下しない程度に調整してよい。活物質容器は電極活物質の流動化(エアロゾル化等)が可能であれば、任意の容器でよく、例えば修飾ガス洗浄瓶(modified gas washing bottle)であってよいがこれに限定されない。本開示での使用に適したエアロゾル化ガスとしては、不活性ガス(アルゴンガス、ヘリウムガス等)、水素ガス、窒素ガス、これらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、エアロゾル化ガスはキャリアガスと同じである。
【0054】
幾つかの実施形態においては、本開示は自立電極を製造するための装置に関する。当該装置は、カーボンナノチューブを合成するためのカーボンナノチューブ合成反応器、電極活物質を流動化するための活物質容器、及びカーボンナノチューブと流動化した電極活物質を集め(collect)、カーボンナノチューブと電極活物質の複合材を含む自立電極を形成するための移動可能な多孔質フレキシブル基板を有する。本開示の方法について上述した全ての実施形態は、同等の力(force)が装置にも適用され、その逆も同様である。
【0055】
幾つかの実施形態においては、カーボンナノチューブ合成反応器は1つ以上のガス入口、1つ以上のガス出口、及びカーボンナノチューブ成長領域を有する。カーボンナノチューブ成長領域では、カーボンナノチューブを成長させるために触媒又は触媒前駆体と炭素源とが使用される。
【0056】
幾つかの実施形態においては、活物質容器は多孔質フリット及び垂直振とう機(vertical shaker)を有する。活物質容器はさらに1つ以上のガス入口及び1つ以上のガス出口を有し、ガス入口は1種以上の流動化ガス(1種以上のエアロゾル化ガス等)を取り込むように構成されている。
【0057】
幾つかの実施形態においては、移動可能な多孔質フレキシブル基板はロールツーロールシステムに連結されている。
【0058】
幾つかの実施形態においては、本開示は自立電極に関する。該自立電極は電極活物質と単層カーボンナノチューブの複合材を含み、バインダー材料や金属系集電体材料を含まない。
【0059】
幾つかの実施形態においては、電極はウェブ状又は網状の構造を有する。幾つかの実施形態においては、当該構造においてカーボンナノチューブがウェブ状に配置されており、電極活物質がカーボンナノチューブのウェブ又は網に含まれているか或いは包埋されている(埋め込まれている)。
【0060】
本開示により製造された複合材又は自立電極は、任意の所望の厚さを有していてもよく、必要に応じて切断加工してもよい。厚さは様々な因子で制御でき、該因子としては基板の移動速度、カーボンナノチューブ及び/又は電極活物質の沈着速度(堆積速度)(rate of deposition)、カーボンナノチューブ充填量(loading)(重量%)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0061】
本明細書では上述の例を用いて実施形態を記載したが、様々な代替、修飾、変更、又は改善を行った物、及び/又は実質的に等価な物も、それが公知か、現在予期できないか、或いは予期できない可能性があるかにかかわらず、当業者には明らかになり得る。上記実施形態は例示を意図したものであって、本発明を限定するものではない。本開示の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。即ち、本開示は、公知の又は後に開発される、様々な代替、修飾、変更、又は改善を行った物、及び/又は実質的に均等な物を、全て包含することを意図している。
【0062】
特許請求の範囲は本明細書に記載した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の文言に適合する全ての範囲が許容されるべきである。単数形で記載した構成要素は、特に説明が無い限り、「唯一」であることを意味するわけではなく、「1つ以上」であることを意味する。本開示の様々な実施形態による構成要素の構造的及び機能的均等物は全て、当業者に既に公知であっても後に公知になるものであっても、参照により本開示に明確に含まれ、特許請求の範囲に包含されるべきである。さらに、本明細書の開示は、特許請求の範囲に明示されているか否かにかかわらず、公共利用を意図したものではない。特許請求の範囲に記載の構成は、「means for」という表現で明記されていない限り、ミーンズプラスファンクション形式として解釈されるべきではない。
【0063】
さらに、本明細書において、「例(example)」という語は、単なる例示(example、instance、又はillustration)に用いられるものを意味する。本明細書で「例」として記載した実施形態は、必ずしも他の形態よりも好ましい又は有利であるわけではない。特に明記しない限り、「幾つかの(some)」という語は、1つ以上であることを意味する。「A、B、又はCの少なくとも1つ」、「A、B、及びCの少なくとも1つ」、「A、B、C、又はこれらの組み合わせ」等のコンビネーションは、A、B、及び/又はCのいかなる組み合わせも包含し、複数のA、複数のB、又は複数のCも包含し得る。具体的には、「A、B、又はCの少なくとも1つ」、「A、B、及びCの少なくとも1つ」、「A、B、C、又はこれらの組み合わせ」等のコンビネーションは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、又はAとBとCであってよく、各組み合わせは1種以上の部材A、B、又はCを含み得る。特許請求の範囲に明示されているか否かにかかわらず、本明細書の開示は公益を意図したものではない。
【0064】
さらに、本願明細書に記載の全ての参照文献(例えば、発行特許、登録特許、又は均等物等の特許文献、特許出願公開公報、非特許文献、他の情報源等)は、個々に開示されているのと同様に、参照により本開示に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8