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特許7071908フォーカスリング及びこれを備えたプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】フォーカスリング及びこれを備えたプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20220512BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20220512BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H05H1/46 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018226186
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2019169699
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018053811
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】内田 亮平
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0224426(US,A1)
【文献】特開2009-290087(JP,A)
【文献】特開2011-003730(JP,A)
【文献】特開2015-159202(JP,A)
【文献】特開2015-114313(JP,A)
【文献】特開2002-110652(JP,A)
【文献】特表2013-512573(JP,A)
【文献】特開2012-109608(JP,A)
【文献】特開2011-176228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理される被処理基板を載置する基板載置台上に配設される環状のフォーカスリングであって、
前記フォーカスリングは、前記基板載置台上に載置された被処理基板の周囲を囲むように配設される内周リングと、前記内周リングの外周を囲むように配設される外周リングとから構成され、
前記内周リングは環状形状を有し、その周方向に複数に分割された分割リングを組み合わせてなり、
前記外周リングの内周面は、その底面に対する高さが外周側から内周側に進むに従って高くなる第1傾斜面となっており、
前記外周リングは、その第1傾斜面が前記各分割リングの外周面の少なくとも一部で当接することにより、前記各分割リングに対して中心部に向かった荷重を作用させるように構成されることを特徴とするフォーカスリング。
【請求項2】
前記外周リングは、前記基板載置台の配設面に対して所定の隙間が形成されるように前記基板載置台上に配設されることを特徴とする請求項1記載のフォーカスリング。
【請求項3】
前記外周リングの下面に対する第1傾斜面の第1傾斜角は、110度以上135度以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のフォーカスリング。
【請求項4】
前記内周リングの外周面は、底面に対する高さが内周側から外周側に進むに従って低くなる第2傾斜面となっており、
前記外周リングの下面に対する第1傾斜面の第1傾斜角は、前記内周リングの上面に対する第2傾斜面の第2傾斜角と略同一であることを特徴とする請求項3記載のフォーカスリング。
【請求項5】
前記外周リングは、前記外周リングを前記基板載置台上に配設したときに、該外周リングの外周面が前記外周リングの配設面の外縁よりも径方向に突出するように形成されていることを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか1つに記載のフォーカスリング。
【請求項6】
前記基板載置台はさらにバイアス電位を印加する下部電極を備え、
前記内周リングにおいて、該内周リングと前記下部電極とが接触する面を含む一部の部位は、前記フォーカスリングを構成する他の部位の材料よりも低誘電率の材料で形成されることを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか1つに記載のフォーカスリング。
【請求項7】
前記低誘電率の材料は石英であることを特徴とする請求項6記載のフォーカスリング。
【請求項8】
前記内周リングにおける各分割リングの接合部は、鉤型形状をしていることを特徴とする請求項1~7のうちのいずれか1つに記載のフォーカスリング。
【請求項9】
前記各分割リングは、その表面がイットリウムを含む酸化物又はフッ化物によりコーティングされていることを特徴とする請求項1~8のうちのいずれか1つに記載のフォーカスリング。
【請求項10】
請求項1~9のうちのいずれか1つに記載のフォーカスリングを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスリング及びこれを備えたプラズマ処理装置に関し、特に、プラズマ処理を行う処理チャンバ内にあって、プラズマ処理される半導体基板の周囲を囲むように配設されるフォーカスリング及びこれを備えたプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理チャンバ内に所定のガスを供給してプラズマ化させ、プラズマ中のラジカルやイオンを衝突させることによって、処理チャンバ内の静電チャック(ESC)上に載置された半導体基板(被処理基板)にエッチング処理を施すプラズマ処理装置が知られている。ここで、プラズマ中のラジカルやイオンを半導体基板に集中させて、効率良くエッチング処理を施すために半導体基板の周囲を囲むように環状のフォーカスリングが取り付けられるのが一般的である。このフォーカスリングの内径は、静電チャックの外径よりも大径に設計されており、静電チャックとフォーカスリングとの間には所定の隙間が存在する。プラズマ処理(エッチング処理も含む)で生じた反応生成物がこの隙間内にデポジットとして堆積し、このデポジットが剥がれた際に静電チャック表面上に付着すると、基板の静電吸着に不具合が生じる静電吸着エラー(以下、単に、静電吸着エラーという。)が発生するという問題があった。さらに、下部電極に高周波電力を印加すると、プラズマ中のイオンやラジカルがフォーカスリング表面に強いエネルギーで衝突してその表面が削られる。そして、削られたフォーカスリングの構成物質がその隙間内に入り込んでパーティクルとして半導体基板の裏面に付着するという問題があった。
【0003】
この問題を解消するための対策が従来から検討されてきており、例えば特許文献1(特開2009-290087号)には静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間を出来るだけ狭くするフォーカスリングが開示されている。ここでは、環状の周方向に沿って複数に分割されたフォーカスリング片の組み合わせ体からなるフォーカスリングであって、複数のフォーカスリング片をそれぞれフォーカスリングの中心に向かって付勢する樹脂材料又はゴム材料からなるOリングを設けることが開示されている。これにより、温度変化に起因する静電チャックの拡大又は縮小に応じてフォーカスリングの内径を追従させることができるので、静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間を可及的に小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-290087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来技術では、フォーカスリングを構成する各フォーカスリング片を外周側から締め付ける樹脂材料又はゴム材料からなるOリングを設ける必要がある。このOリングの材質は、フッ素系やパーフロ系のものが考えられる。フッ素系Oリングは、交換時にシール面に貼り付くことは稀であるが、耐プラズマ性が悪く、劣化により頻繁に交換しなければならない。パーフロ系Oリングは、耐プラズマ性は比較的良好であるものの、交換時にシール面に貼り付きやすく、作業効率が悪いという問題がある。また、シリコーンゴム製Oリングは、耐プラズマ性やアウトガスの点で問題がある。さらに、一般にOリングの耐熱性には限度がある。従って、何れのものも、上記プラズマ処理装置の処理チャンバ内にOリングを装着する場合には、メンテナンス性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、Oリングなどの消耗品を使用することなしに、静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間が増大しないフォーカスリング及びこれを備えたプラズマ処理装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、プラズマ処理される被処理基板を載置する基板載置台上に配設される環状のフォーカスリングであって、前記フォーカスリングは、前記基板載置台上に載置された被処理基板の周囲を囲むように配設される内周リングと、前記内周リングの外周を囲むように配設される外周リングとから構成され、前記内周リングは環状形状を有し、その周方向に複数に分割された分割リングを組み合わせてなり、前記外周リングの内周面は、その底面に対する高さが外周側から内周側に進むに従って高くなる第1傾斜面となっており、前記外周リングは、その第1傾斜面が前記各分割リングの外周面の少なくとも一部で当接することにより、前記各分割リングに対して中心に向かった荷重を作用させるように構成されたフォーカスリングに係る。
【0008】
このフォーカスリングでは、外周リングがその第1傾斜面で内周リングの外周面の少なくとも一部で当接することにより、各分割リングに対してフォーカスリングの中心に向けた荷重を作用させる。ここで、「荷重を作用させる」とは、荷重を作用させ続けるという意味だけでなく、各分割リングに対してフォーカスリングの中心に向う荷重を作用させた結果、各分割リングが、正規の位置に配設され、その位置の移動が規制されている状態をも含む。したがって、頻繁に交換しなければならないOリング等の消耗品を使用することなしに、静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間を可及的に小さくすることが可能となるので、プラズマ処理で生じた反応生成物などが隙間内にデポジットとして堆積する量が低減される。このため、デポジットが剥がれた際に、これが静電チャック表面に付着することによって生じる静電吸着エラーを回避することができる。
【0009】
また、内周リングには外周リングの重量(荷重)がその径方向だけでなく重力方向にも作用するので、各種外乱によって生じる内周リングの浮き上りも抑制できる。したがって、各種外乱によって静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間が増大することはない。
【0010】
また、このフォーカスリングによれば、外周リングと内周リングとの接合部において、平面から視た状態でその下方に位置する部材が見えない(露出しない)構造とすることが可能となる。
【0011】
さらに、このフォーカスリングによれば、内周リングは、複数の分割リングの組み合わせ体であるので、内周リング自身の熱歪み又は熱衝撃による当該内周リングのひび割れ等を抑制することが可能となる。またさらに、各分割リングを径方向にスライドさせながら取り外すことができるので、フォーカスリングを取り外す時にオリフラ部における噛み込みを防止することができ、各分割リングを基板載置台上から容易に取り外すことができる。
【0012】
本明細書で、「重力方向」とは、厳密な意味での「重力方向」に加え、分割リングが浮き上がるのを規制する方向で、斜め方向も含むものとする。例えば特許文献1記載のように、Oリングを用いて径方向(水平方向)だけに力が作用するように構成される場合には、分割リングの形状や、Oリングの捻れなどに起因して、分割リングが浮き上がる虞がある。これに対して、このような浮き上りを規制する方向を「重力方向」とする。
【0013】
また、本明細書で、「外乱」とは、基板載置台の昇降動作、排気用ポンプ及びガス供給装置の動作、リフタ(リフトピン)の昇降動作、熱膨張と冷却との繰り返しなど、静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間に影響を与えるあらゆる事象を含む。
【0014】
また、前記フォーカスリングにおいて、前記外周リングは、前記基板載置台の配設面に対して所定の隙間が形成されるように前記基板載置台上に配設されてもよい。
【0015】
このフォーカスリングによれば、フォーカスリングの径方向及び重力方向へ向けた押圧力をさらに増大させることが可能となる。したがって、静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間をより小さくし、各種外乱による隙間の増大をより抑制することができる。
【0016】
また、前記フォーカスリングにおいて、前記外周リングの下面に対する第1傾斜面の第1傾斜角は、110度以上135度以下であるのが好ましい。
【0017】
このフォーカスリングによれば、当該フォーカスリングによる径方向及び重力方向へ向けた押圧力をさらに増大させることが可能となる。したがって、静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間をより小さくし、各種外乱による隙間の増大をより抑制することができる。
【0018】
さらに、前記フォーカスリングにおいて、前記内周リングの外周面は、底面に対する高さが内周側から外周側に進むに従って低くなる第2傾斜面となっている。尚、前記外周リングの下面に対する第1傾斜面の第1傾斜角は、前記内周リングの上面に対する第2傾斜面の第2傾斜角と略同一であってもよい。
【0019】
このフォーカスリングによれば、外周リングが内周リングの外周面に沿って装着しやすくなりメンテナンス性が向上するとともに外周リングと内周リングとの位置関係が変わるのを防止できる。
【0020】
さらに、前記フォーカスリングにおいて、前記外周リングは、前記外周リングを前記基板載置台上に配設したときに、該外周リングの外周面が前記外周リングの配設面の外縁よりも径方向に突出するように形成されてもよい。
【0021】
このフォーカスリングによれば、外周リングを基板載置台上から容易に取り外すことが可能となりメンテナンス性が向上する。
【0022】
前記基板載置台はさらにバイアス電位を印加する下部電極を備え、前記内周リングにおいて、該内周リングと前記下部電極とが接触する面を含む一部の部位は、前記フォーカスリングを構成する他の部位の材料よりも低誘電率の材料、例えば石英などで形成されていてもよい。
【0023】
このフォーカスリングによれば、内周リングと下部電極との接触面が低誘電率の材料で形成されているので、プラズマから見るインピーダンスを高くでき、内周リングへのイオン衝撃を低減することが可能となる。
【0024】
さらに、前記内周リングにおける各分割リングの接合部は、鉤型形状となっていてもよい。
【0025】
このフォーカスリングによれば、内周リングを構成する各分割リングの接合部において、平面から視た状態でその下方に位置する下部電極が見えない(露出しない)構造とすることが可能となる。したがって、下部電極にプラズマが集中するのを防止することができ、これによってプロセスが変動するのを抑制することができる。
【0026】
さらに、前記各分割リングは、その表面がイットリウムを含む酸化物又はフッ化物によりコーティングされていてもよい。
【0027】
このフォーカスリングによれば、プラズマ中のイオンやラジカルがフォーカスリングの表面に強いエネルギーで衝突したとしてもその表面が削られにくくなる。
【0028】
また、本発明は、前記フォーカスリングを備えたプラズマ処理装置を提供する。
【0029】
このプラズマ処理装置によれば、静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間を可及的に小さくすることができるので、プラズマ処理で生じた反応生成物が隙間内にデポジットとして堆積する量が低減される。このため、デポジットが剥がれた際に、当該デポジットが静電チャック表面に付着することによって生じる静電吸着エラーを回避することができる。さらに、下部電極が露出されず、プラズマ集中が生じないのでプロセスの変動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明に係るフォーカスリングによれば、静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間を可及的に小さくすることができる。さらに、各種外乱によって静電チャックとフォーカスリングとの間の隙間が増大するのを抑制することができるので、プラズマ処理で生じた反応生成物などがデポジットとして前記隙間内に堆積する量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の概略的な構成を示す縦断面図である。
図2図1の基板載置台の縦断面拡大図である。
図3】(a)は図1のフォーカスリングの平面図であり、(b)は(a)のA-A線に沿って切断したときのフォーカスリングの縦断面図である。
図4図3の内周リングにおいて、隣接する分割リングの接合部の形状の例を示す説明図である。
図5図2におけるフォーカスリングを概略的に示す拡大断面図である。
図6図1のフォーカスリングをプラズマ処理装置の基板載置台上に配設する手順を示した説明図である。
図7図1のフォーカスリングをプラズマ処理装置の基板載置台上から取り外す手順を示した説明図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係るフォーカスリングを概略的に示す拡大断面図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るフォーカスリングを概略的に示す拡大断面図である。
図10】(a)は図3(a)の分割リング2aの斜視図であり、(b)は図3(a)の分割リング2bの斜視図であり、(a)は図3(a)の分割リング2cの斜視図である。
図11】フォーカスリングの接合状態を説明するための説明図である。
図12】本発明の更に他の実施形態に係るフォーカスリングを概略的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0033】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係るプラズマ処理装置10の概略的な構成を示した縦断面図である。図1のプラズマ処理装置10は、閉塞空間を有する処理チャンバ11と、この処理チャンバ11内に、昇降シリンダ(図示せず)に接続された支持部材69により昇降自在に配設され、50mm~300mmの大きさのウェハ等の被処理基板Kが載置される基板載置台15と、該基板載置台15内に設けられたリフタ(図示せず)を昇降させることにより、該基板載置台15上の被処理基板Kを昇降させる昇降シリンダ19と、基板載置台15上に載置された被処理基板Kの周囲を囲むように配設される環状のフォーカスリング1とを備えて構成される。さらに、図1のプラズマ処理装置10は、処理チャンバ11内にエッチングガス、保護膜形成ガス及び不活性ガスを供給するガス供給装置20と、処理チャンバ11内に供給されたエッチングガス、保護膜形成ガス及び不活性ガスをプラズマ化するプラズマ生成装置30と、処理チャンバ11内の圧力を減圧する排気装置40と、基板載置台15にバイアス電位用の高周波電力を供給する高周波電源35と、基板載置台15に静電吸着用の電圧を印加する静電吸着用電源(図示せず)とを備えて構成される。
【0034】
図1に示すように、処理チャンバ11は、相互に連通した内部空間を有する上チャンバ12及び下チャンバ13から構成される。
【0035】
ガス供給装置20は、エッチングガスとして、SFガスを供給するSFガス供給部21と、保護膜形成ガスとして、Cガス及びOガスをそれぞれ供給するCガス供給部22及びOガス供給部23と、不活性ガスとして、例えば、Arガスなどを供給する不活性ガス供給部24とを備える。ガス供給用の供給管25は、一端が上チャンバ12の上面に接続し、他端が分岐してSFガス供給部21、Cガス供給部22、Oガス供給部23及び不活性ガス供給部24にそれぞれ接続している。SFガス供給部21、Cガス供給部22、Oガス供給部23及び不活性ガス供給部24から供給管25を介して、処理チャンバ11内にSFガス、Cガス、Oガス及び不活性ガスが供給される。なお、本例では、上述したガスを用いるが、エッチングする対象によっては、例えばHBr、Cl、Ar、Nなどのガスを用いてもよい。
【0036】
プラズマ生成装置30は、誘導結合プラズマ(ICP)を生成する装置であって、上チャンバ12に配設された螺旋状(環状)のコイル31と、このコイル31に高周波電力を供給する高周波電源32とから構成されている。高周波電源32によってコイル31に高周波電力を供給することで、上チャンバ12内に供給されたSFガス、Cガス、Oガス及び不活性ガスがプラズマ化される。
【0037】
基板載置台15に接続される高周波電源35は、基板載置台15の下部電極61に高周波電力を供給することで、下部電極61とプラズマとの間にバイアス電位を与え、SFガス、Cガス、Oガス及び不活性ガスのプラズマ化により生成されたイオンを、基板載置台15上に載置された被処理基板Kに入射させる。
【0038】
排気装置40は、処理チャンバ11内の気体を吸引し、排気する真空ポンプ41と、排気管42とから構成されており、排気管42は、一端が真空ポンプ41に接続し、他端が下チャンバ13の側面に接続している。この排気管42を介して、真空ポンプ41が処理チャンバ11内の気体を吸引し、処理チャンバ11内を真空状態とする。
【0039】
図2図1の基板載置台15の縦断面拡大図である。図2の基板載置台15は、例えばアルミナや窒化アルミニウムなどで形成され、円盤状の被処理基板Kと略同形状の静電チャック71と、この静電チャック71の下側に配置され、バイアス電位を印加する下部電極61とを備えて構成される。また、下部電極61は、静電チャック71と略同形状の上側円盤部61aと、この上側円盤部61aよりも大きな径を有する下側円盤部61bとから構成され、これらは一体形成されている。ここで、下部電極61は凸状を有し、その上面が静電チャック71の下面に接するように配置されている。また、静電チャック71は、静電吸着用の電極を内部に含むように構成され、静電吸着用電極に電圧を印加すると、静電誘導により、被処理基板Kが静電チャック71の上面である上端チャック面に吸着保持される。なお、静電チャック71は、被処理基板Kを静電吸着するための静電フィルムを静電チャック71の上面(上端チャック面)に貼付するように構成されていてもよい。
【0040】
さらに、図2の基板載置台15は、下部電極61のうちの下側円盤部61bの径方向外側を囲む環状カバー65と、環状カバー65の径方向の外周を囲む外郭ケース68とを備えて構成される。そして、下部電極61のうちの上側円盤部61a及び静電チャック71の側壁部分の外周を囲むようにフォーカスリング1が配設される。また、ヘリウムガス供給部52は、ブラケット(図示せず)に螺着された継手及びガス通路を介して静電チャック71の上面(チャック面)に連通しており、被処理基板Kの裏面にHeガスを供給できるように構成されている。さらに、チラーユニット51は、下部電極61内に冷却用の冷媒を供給する。
【0041】
前記フォーカスリング1は、下部電極61のうちの上側円盤部61aの径方向外側において、下側円盤部61bの上面を覆っている。静電チャック71の上端チャック面は、フォーカスリング1の上面より僅かに高くなるように設定され、かつ、被処理基板Kの外周端の形状とフォーカスリング1の内周縁の形状が略一致している。
【0042】
ここで、本例のフォーカスリング1の構成について詳述する。本例のフォーカスリング1は、径方向に対して同心円状に環状の内周リング2と環状の外周リング3とに2分割されて構成され、さらに、内周リング2が環状の周方向に沿って3分割された円弧状の分割リング(分割片)の組み合わせ体から構成されている。ここで、当該フォーカスリング1は、3つの分割リングがそれぞれその外周部に沿って配設される環状の外周リングによって、フォーカスリング1の中心に向けた荷重を受けるように構成されている。この構成により、各種外乱によるフォーカスリング1(特に、内周リング2)の浮き上りを防止でき、静電チャック71と内周リング2との間の隙間が増大するのを抑制することができるという特有の効果を奏するものである。以下詳細に説明する。
【0043】
図3(a)は図1のフォーカスリング1の平面図であり、図3(b)は図3(a)のA-A線に沿って切断したときのフォーカスリング1の縦断面図である。また、図4(c)は図3の内周リング2における分割リングの接合部の形状を示した説明図である。また、図10(a)は図3(a)の分割リング2aの斜視図であり、図10(b)は図3(a)の分割リング2bの斜視図であり、図10(c)は図3(a)の分割リング2cの斜視図である。上述したように、フォーカスリング1は基板載置台15上に載置された被処理基板Kの周囲を囲むように配設される環状の内周リング2と該内周リング2の外周を囲む外周リング3とから構成される。
【0044】
図3(a)に示すように、内周リング2は環状の周方向に沿って3分割された円弧状の分割リング2a,2b,2cがそれぞれに組み合わされて構成される。ここで、分割リング2a,2b,2cそれぞれの両端部は、隣接する分割リング2a,2b,2cの端部が互いに重なるような形状を有している。
【0045】
図3(b),図4(c)及び図10に示すように、分割リング2a,2b,2cの相互接合部は鉤型形状となっており、このように、接合部を鉤型形状とすることで、平面から視た状態で、その接合部において、その下方に位置する部材、即ち、下部電極61及び環状カバー65が見えない(露出しない)構造にすることができる。これにより、下部電極61にプラズマが集中するのを防止することができ、プラズマ集中によって、プロセスに変動が生じるのを抑制することができる。ここで、「鉤型形状」とは端部が鉤のように直角に曲がった形状をいう。
【0046】
また、各分割リング2a,2b,2cは、各分割リング2a,2b,2cの重心が内周面より中心側に位置するように構成されるのが好ましい。この構成により、各分割リング2a,2b,2cが配設される際に内側に傾こうとするので基板載置台15への各分割リング2a,2b,2cの配設が容易となる。
【0047】
一方、外周リング3はその下面に対する傾斜角がθである傾斜面を有する。したがって、外周リング3は各分割リング2a,2b,2cに対してフォーカスリング1の中心に向けた荷重を作用させることが可能となる。さらに、内周リング2が周方向に沿った3つの分割リング2a,2b,2cにより構成されているので、内周リング2自身の熱歪み又は熱衝撃よる当該内周リング2のひび割れ等を抑制することが可能となる。
【0048】
図5図2におけるフォーカスリング1を概略的に示す拡大断面図である。図3(a)で説明したように、フォーカスリング1は、分割リング2a,2b,2cを組み合わせて構成されており、この3つの分割リング2a,2b,2cは、それぞれその外周部に沿って配設される環状の外周リング3によって、その径方向及び重力方向に向けた荷重を受けるように構成されている。したがって、各分割リング2a,2b,2cの重力方向の移動を規制することが可能となる。詳細には、外周リング3の内周面は、底面に対する高さが外周側から内周側に進むに従って高くなる傾斜面3nとなっており、当該外周リング3は、傾斜面3nが内周リング2の外周面2mの少なくとも一部で当接することにより、各分割リング2a,2b,2cに対して中心に向けた荷重を作用させる。したがって、頻繁に交換しなければならないOリング等の消耗品を使用することなしに、静電チャック71とフォーカスリング1との間の隙間Pを可及的に小さくすることができる。また、内周リング2には外周リング3の重量(荷重)がその径方向だけでなく重力方向にも作用する。したがって、各種外乱によって生じる内周リング2の浮き上りを抑制することができ、これにより、静電チャック71と内周リング2との間の隙間Pが増大するのを抑制することができる。
【0049】
このため、プラズマ処理で生じた反応生成物が隙間P内の領域Rにデポジットとして堆積する量を低減することができ、これにより、デポジットが剥がれた際に、当該デポジットが静電チャック71の表面に付着することによって生じる静電吸着エラーを回避することができる。さらに、前記隙間を可及的に小さくすることで、下部電極61が露出するのを防ぐことができ、これにより、当該下部電極61にプラズマが集中するのを防止することができるとともに、このようにプラズマ集中を防止することで、プロセスが変動するのを抑制することができる。
【0050】
また、図5に示すように、外周リング3は、配設面Tに対して所定の隙間Sが形成されるように基板載置台15上に配設される。この構成により、外周リング3の径方向及び重力方向に向けた押圧力をさらに増大させることができる。したがって、静電チャック71と内周リング2との間の隙間Pをより小さくし、各種外乱によって隙間Pが増大するのをより効果的に抑制することができる。
【0051】
また、本例のフォーカスリング1では、図5に示すように、外周リング3と内周リング2との接合部において、平面から視て(矢印F方向から視て)、その下方に位置する部材である環状カバー65が見えない(露出しない)構造となっている。ここで、分割リング2a,2b,2c同士の接合部を鉤型形状とし、さらに外周リング3と内周リング2との接合部も鉤型形状とすれば、その接合部において、平面から視て、その下方の部材が見えない(露出しない)構造とすることが可能となるように思われる。しかしながら、図11に示すように、内周リング2’同士の接合部を鉤型形状とし、さらに内周リング2’と外周リング3’との接合部も鉤型形状とすると、内周リング2’同士の隙間と外周リング3’と内周リング2’との隙間とが重なるため、これを平面から視ると(矢示G方向から視ると)、その下方の部材が見える(露出された)状態となっている。これに対して、本例では、外周リング3の内周面を傾斜面3nとすることにより(図5参照)、外周リング3と内周リング2との接合部において、その下方の部材が露出するのを防止することができる。なお、図11では、下方の部材が露出することを分かりやすくするために、外周リング3’を任意の断面で切断した状態を示している。
【0052】
さらに、外周リング3の傾斜面3nは、下面3tに対する傾斜角θが110度以上135度以下であることが好ましい。この構成により、外周リング3の径方向及び重力方向に向けた押圧力をさらに増大させることが可能となる。したがって、静電チャック71と内周リング2との間の隙間Pをより小さくし、各種外乱によって隙間Pが増大するのをより効果的に抑制することができる。
【0053】
次に、本例のフォーカスリング1をプラズマ処理装置10の基板載置台15上に配設する手順、及びこれを取り外す手順について説明する。
【0054】
図6図1のフォーカスリング1をプラズマ処理装置10の基板載置台15上に配設する手順を示した説明図である。このフォーカスリング1を基板載置台15上に設置する際には、図6(a)に示すように、作業者は先ず、分割リング2aのオリフラ部(平坦部)OF1が、静電チャック71の外周縁付近に設けられたオリフラ部(平坦部)OF2に合致するように、当該分割リング2aを静電チャック71の外周縁部に、その半径方向外側から中心に向けてスライドさせながら、或いは上方から降下させるようにして配置する。次に、図6(b)に示すように、分割リング2bを、その分割リング2a側の端部が当該分割リング2aの端部に接合されるように、静電チャック71の外周縁部に、その半径方向外側から中心に向けてスライドさせながら、或いは上方から降下させるようにして配置する。次に、図6(c)に示すように、両端部が分割リング2a及び分割リング2bの各端部に接合されるように、分割リング2cを静電チャック71の外周縁部に、その半径方向外側から中心に向けてスライドさせながら、或いは上方から降下させるようにして配置する。これにより内周リング2の設置が完了する。最後に、図6(d)に示すように、外周リング3を内周リング2の外周縁部に載せる。このようにして、作業者はフォーカスリング1を基板載置台15上に設置する。
【0055】
図7は、図1のフォーカスリング1をプラズマ処理装置10の基板載置台15上から取り外す手順を示した説明図である。フォーカスリング1を基板載置台15上から取り外す際には、図7(a)に示すように、作業者は先ず、内周リング2に載せた状態にある外周リング3を上方に(矢印Bの方向に)持ち上げて取り外す。次に、図7(b)に示すように、設置した手順とは逆の手順で、例えば、分割リング2cを半径方向の外側に向けて(矢示E方向に)スライドさせながら取り外し、次に、分割リング2bを半径方向の外側に向けて(矢示D方向に)スライドさせながら取り外し、ついで、分割リング2aを半径方向の外側に向けて(矢示C方向に)スライドさせながら取り外す。このように、内周リング2は3つの分割片である分割リング2a,2b,2cの組み合わせ体であるので、各分割片を半径向にスライドさせながら取り外すことができる。したがって、フォーカスリング1を取り外す際に、オリフラ部OF1(OF2)における噛み込みを防止することができるとともに、フォーカスリング1を基板載置台15上から容易に取り外すことができる。斯くして、これらについてのメンテナンス性を向上させることができる。より具体的に説明すると、一体型のフォーカスリングを回転させて取り外す場合には、フォーカスリングと静電チャックとの間の隙間が小さいと、フォーカスリングを回転させて取り外す際に、オリフラ部で噛み込むという問題を生じるが、本例では、内周リングを複数の分割リングから構成しているので、当該内周リングを取り外す際には、これを分解することによって取り外すことができ、このため、オリフラ部で噛み込むという問題を生じない。
【0056】
次に、このフォーカスリング1を備えたプラズマ処理装置10の動作について説明する。
【0057】
本例のプラズマ処理装置10により、基板載置台15上に載置された被処理基板Kに対して反応性イオンエッチング処理を行うには、先ず、フォーカスリング1が設置された基板載置台15上に被処理基板Kを載置する。次に、ガス供給装置20から上チャンバ12内にSFガス、Cガス、Oガス及び不活性ガスを供給するとともに、高周波電源32からコイル31に高周波電力を供給することにより、SFガス、Cガス、Oガス及び不活性ガスが高周波電力により励起されてプラズマとなる。一方、基板載置台15には高周波電源35から高周波電圧が印加され、これにより、当該基板載置台15と処理チャンバ11中のプラズマとの間で電位差(バイアス電位)が生じる。斯くして、プラズマ中の反応種によるエッチング作用や、バイアス電位によってプラズマ中のイオンが前記被処理基板Kの表面に引き込まれることにより、当該被処理基板Kに対してエッチング処理が施される。
【0058】
以上のように、本例のフォーカスリング1を備えたプラズマ処理装置10では、フォーカスリング1は、同心円状に配設される内周リング2と外周リング3との2つ部材から構成され、また、内周リング2は周方向に沿って3分割された分割リング2a,2b,2cの組み合わせ体から構成される。そして、3つの分割リング2a,2b,2cは外周リング3によって、その中心に向かう荷重を受けるように構成されているので、静電チャック71と内周リング2との間の隙間Pを可及的に小さくすることができる。これにより、プラズマ処理で生じた反応生成物等がデポジットとして隙間P内に堆積する量が低減され、このデポジットが剥がれて静電チャック71の表面に付着することによって生じる静電吸着エラーを回避することができる。さらに、下部電極61が露出されない態様となっているので、下部電極61にプラズマが集中することによってプロセスに変動が生じるのを効果的に抑制することができる。
【0059】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るフォーカスリングについて説明する。図8は、第2の実施形態に係るフォーカスリングを概略的に示した拡大断面図である。図8に示すように、このフォーカスリング1Aは、図5に示したフォーカスリング1と比較すると、内周リング2の代わりに内周リング2Aを備え、外周リング3の代わりに外周リング3Aを備えた点で、その構成が相違する。したがって、図8において、第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、以下では、その詳しい説明を省略する。
【0060】
本例の内周リング2Aは、第1の実勢形態に係る内周リング2と比較すると、その外周面が、底面に対する高さが内周側から外周側に進むに従って低くなる傾斜面2Amとなっている点で、その構成が相違する。ここで、外周リング3Aの下面3tに対する傾斜面3nの傾斜角θ1は、内周リング2Aの上面2Atに対する傾斜面2Amの傾斜角θ2と略同一である。
【0061】
この構成により、外周リング3が内周リング2の外周面に沿って装着しやすくなりメンテナンス性が向上するとともに外周リング3と内周リング2との位置関係が変わるのを防止できる。また、外周リング3の内周面と内周リング2の外周面との間に空間が生じないので、異常放電の発生を抑制することができる。さらに、外周リング3を設置するときに、これが内周リング2の角部にあたって、当該内周リング2や外周リング3が欠けるのを防止することができる。
【0062】
さらに、本例の外周リング3Aは、第1の実施形態に係る外周リング3と比較すると、外周リング3Aの外周面3Asが基板載置台15上の配設面Tの外縁から径方向に突出するように形成されている点で、その構成が相違する。この構成により、外周リング3Aを基板載置台15から容易に取り外すことが可能となりメンテナンス性が向上する。
【0063】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係るフォーカスリングについて説明する。図9は、第3の実施形態に係るフォーカスリングを概略的に示した拡大断面図である。図9に示すように、このフォーカスリング1Bは、図5に示したフォーカスリング1と比較すると、内周リング2の代わりに内周リング2Bを備えた点で、その構成が相違する。また、本例の内周リング2Bは、図5に示した内周リング2と比較すると、本例の内周リング2Bは、当該内周リング2Bと下部電極61とが接触する面を含む部位2Baが、フォーカスリング1Bを構成する他の部位の材料よりも低誘電率の石英で形成された点で、その構成が相違する。したがって、図9において、第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、以下では、その詳しい説明を省略する。
【0064】
このフォーカスリング1Bによれば、上述した第1及び第2の実施形態と同様の動作及び作用効果を得ることができる。さらに、本例のフォーカスリング1Bでは内周リング2Bの下部電極61と接触する面を含む部位2Baが、他の部位の材料よりも低い誘電率の石英で形成されているので、プラズマから見たインピーダンスを前記他の部位に比べて高くすることでき、これにより、当該内周リング2Bへのイオン衝撃を低減させることができる。
【0065】
なお、本例では、内周リング2Bにおいて、該内周リング2Bと下部電極61とが接触する全ての面を含む部位2Baを低誘電率の石英から構成ようにしたが(図9参照)、これに限定されるものではなく、該内周リング2Bと下部電極61とが接触する面の一部を含む部位を低誘電率の石英から構成してもよい。さらに、本例では、内周リング2Bの一部が低誘電率の材料から構成されるようにしたが、たとえば、石英などの低誘電率材料で形成された別部材(下部電極61の凸部の側面を囲むようなリング状の部材など)を内周リング2Bと下部電極61との間に介在させるように構成されてもよい。
【0066】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上述した第1~第3の実施形態に限定されるものではない。
【0067】
例えば、上述した第1~第3の実施形態では、図5図8及び図9に示したように、内周リング2、2A及び2Bの上面の高さを静電チャック71の上面の高さよりも、若干低くしたが、これに限られるものではなく、内周リング2、2A及び2Bの上面の高さは、静電チャック71の上面の高さと略同じ高さか、或いはこれよりも高い位置に設定されていても良い。
【0068】
また、内周リング2、2A及び2Bの上面の高さは、静電チャック71上に載置される被処理基板Kの上面の高さよりも高い位置に設定されていても良い。そして、被処理基板Kの外径が静電チャック71の外径よりも大径である場合には、図12に示すような構成の内周リング2Cとすることができる。同図12に示すように、この内周リング2Cは、内周面が下側の小径部2Cnと上側の大径部2Cpとからなる断面段付き状に形成されており、小径部2Cnが静電チャック71を囲み、大径部2Cpが被処理基板Kを囲むように配置される。また、小径部2Cnと大径部2Cpとを接続する端面2Cuの高さは、静電チャック71の上面、即ち、被処理基板Kの下面よりも低い位置に設定され、内周リング2Cの上面2Ctの高さは、被処理基板Kの上面Ktの高さと、ほぼ同じ高さに設定されるか、若しくは若干低く、或いは逆に若干高く設定される。内周リング2Cをこのように構成することで、静電チャック71から外方にはみ出した被処理基板Kの裏面にデポジットが付着するのを低減することができる。尚、この内周リング2Cも周方向に3分割されている。また、図12において、符号3Cは外周リングを示し、符号3Cnは外周リング3Cの内周面を示し、符号2Cmは内周リング2Cの外周面を示し、符号1Cは、内周リング2C及び外周リング3Cから構成されるフォーカスリングを示している。
【0069】
また、図4(a),(b)は、図3の内周リング2における分割リングの接合部の形状の例を示した説明図である。ここで、分割リング2aと分割リング2bとが組み合わされた例について説明したが、他の分割リング同士の組み合わせについても同様である。図4(a)では隣接する分割リング2aと分割リング2bとが組み合わされる接合部が垂直面となるように分割リング2aと分割リング2bとの端部がそれぞれ形成されている。図4(b)では隣接する分割リング2aと分割リング2bとが組み合わされる接合部が傾斜面となるように分割リング2aと分割リング2bとの端部がそれぞれ形成されている。本発明の内周リングは、図4(b)に示した態様と採ることができる。図4(b)に示した内周リング2の態様でも、上述した第1~第3の実施形態に係る内周リング2、2A及び2Bと同様に、平面から視た状態で、その接合部において、その下方に位置する下部電極61が露出されない。このため、プラズマ集中が生じることがないのでプロセスに変動が生じるのを抑制することができる。
【0070】
また、上述した全ての態様の内周リングにおいて、当該内周リングは、その表面がイットリウムを含む酸化物又はフッ化物によりコーティングされてもよい。例えば、Y、YF、YOF等の材質が例示できる。この構成によれば、プラズマ中のイオンやラジカルがフォーカスリングの表面に強いエネルギーで衝突したとしてもその表面が削られにくくなる。
【0071】
上述した各実施形態では、エッチング処理について説明したが、本発明はこれに限定されず、CVD法(化学気相成長法)などを用いた成膜処理にも利用することが可能である。また、上述した各実施形態では、内周リング2、2A、2B、2Cをそれぞれ3分割された分割リングの組み合わせ体としたが、環状の外周に沿って、2分割または4分割以上の分割リングの組み合わせ体としてもよい。但し、分割数は、静電チャックとの隙間の埋め易さ、部品点数(コスト)、各分割リングの重心位置の点から、3分割が最も望ましい。
【0072】
繰り返しになるが、上述した実施形態は例示に過ぎず、この発明の範囲から逸脱することなく種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B フォーカスリング
2,2A,2B、2C 内周リング
3,3A、3C 外周リング
10 プラズマ処理装置
11 処理チャンバ
15 基板載置台
19 昇降シリンダ
20 ガス供給装置
21,22,23,24 ガス供給部
30 プラズマ生成装置
31 コイル
35 高周波電源
40 排気装置
61 下部電極
K 被処理基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12