(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】移動通信ネットワークの制御装置
(51)【国際特許分類】
H04W 40/22 20090101AFI20220512BHJP
H04W 16/32 20090101ALI20220512BHJP
H04W 88/12 20090101ALI20220512BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20220512BHJP
H04W 40/20 20090101ALI20220512BHJP
H04W 40/12 20090101ALI20220512BHJP
【FI】
H04W40/22
H04W16/32
H04W88/12
H04W88/04
H04W40/20
H04W40/12
(21)【出願番号】P 2018230155
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-01-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度総務省「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発~複数移動通信網の最適利用を実現する制御基盤技術に関する研究開発~」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】趙 兵選
(72)【発明者】
【氏名】北川 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】新保 宏之
(72)【発明者】
【氏名】堅岡 良知
(72)【発明者】
【氏名】山口 明
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158194(JP,A)
【文献】特開2001-211487(JP,A)
【文献】特表2018-533308(JP,A)
【文献】5G端末間リレー通信における信号量削減手段に関する検討,第26回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集,2018年10月31日,https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?active_action=respository_view_main_item_snippet&page_id=13&block_id=8&index_id=9576&pn=1&count=75&order=8&lang=japanese
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基地局が提供する第1セルと、1つ以上の第2基地局それぞれが提供する第2セルと、を有し、前記1つ以上の第2基地局それぞれが提供する前記第2セルは、前記第1セルと重複領域を有し、第2基地局とユーザ装置との通信を、当該第2基地局が提供する第2セルに在圏する他のユーザ装置と当該ユーザ装置との間で設定された中継チャネルを利用して当該他のユーザ装置が中継するリレー通信を行うことができる様に構成された移動通信ネットワークで使用される制御装置であって、
前記第1セル内のユーザ装置のうちの直接通信可能なユーザ装置のペアを示す近接情報に基づき、前記第1セル内の前記リレー通信において中継を行うユーザ装置の候補である1つ以上の候補ユーザ装置を選択する第1選択手段と、
前記1つ以上の候補ユーザ装置それぞれと前記リレー通信において中継される対象ユーザ装置との間の通信状態に基づき前記1つ以上の候補ユーザ装置から前記リレー通信において中継を行う中継ユーザ装置を選択する第2選択手段と、
前記近接情報の更新周期と、前記リレー通信において前記中継ユーザ装置の切り替えを行うか否かを判定するために使用する閾値と、を決定する決定手段と、
を備え
、
前記閾値は、前記リレー通信で利用されている前記中継チャネルの状態を示す評価値の下限を示す下限値に対してマージンだけ前記評価値が示す評価を高くした値であり、
前記決定手段は、前記第1セル内にて行われている前記リレー通信において利用されている前記中継チャネルのうち、前記評価値が前記下限値を下回っている前記中継チャネルが生じているか否かと、前記第1セル内において前記リレー通信のために前記第2選択手段が前記中継ユーザ装置を選択できない頻度と、に基づき、前記近接情報の更新周期と、前記閾値と、を決定することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記マージンを決定することで前記閾値を決定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記リレー通信において利用されている前記中継チャネルの前記評価値が前記閾値を下回ると、前記リレー通信において前記中継ユーザ装置の切り替えを行うと判定されることを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記第1セル内にて行われている前記リレー通信において利用されている前記中継チャネルのうち、前記評価値が前記下限値を下回っている前記中継チャネルが生じていると、前記更新周期を減少させることと、前記マージンを増加させることとのいずれかを行うことを特徴とする請求項
2又は3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記頻度が基準値より多いと、前記更新周期を減少させることを特徴とする請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記頻度が基準値より少ないと、前記マージンを増加させることを特徴とする請求項
4又は
5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記決定手段は、前記第1セル内にて行われている前記リレー通信において利用されている前記中継チャネルのうち、前記評価値が前記下限値を下回る前記中継チャネルが生じていないと、前記マージンを減少させ、かつ、前記更新周期を増加させることを特徴とする請求項
2から
6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記中継チャネルの
前記評価値は、前記中継チャネルの通信速度又は通信遅延であることを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載の制御装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信ネットワークにおけるユーザ装置を利用したリレー通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マクロセル内に1つ以上のスモールセルを配置し、マクロセルによりユーザ装置(UE)との接続性を確保しつつ、スモールセルによるUEへの高速・大容量通信を行う構成が検討されている。以下の説明において、マクロセルを提供する基地局を大セル局と呼び、スモールセルを提供する基地局を小セル局と呼ぶものとする。非特許文献1は、小セル局が提供するスモールセルに在圏してはいないが、当該スモールセルを包含するマクロセルに在圏しているUEにデータを高速に伝送するため、当該スモールセルに在圏しているUEを中継局として利用するリレー通信技術を開示している。以下の説明において、他のUEに送信するデータを中継する中継局として利用されるUEを、中継UEと呼び、当該他のUEを対象UEと呼ぶものとする。
【0003】
非特許文献1は、中継UEを選択する方法として、対象UEが自律分散的に選択する方法と、移動通信ネットワークが選択する方法の2つの方法が存在することと、これら2つの方法の問題点を述べている。そして、非特許文献1は、これら2つの方法の問題点を解消する方法として、UE間の近接情報を利用することで、スモールセルに在圏しているUEから候補UEを選択し、候補UEから中継UEを選択するPF(ProSe Function:近接ファンクション)ベース制御を開示している。なお、近接情報とは、直接通信できるUEのペアを示す情報であり、PFS(近接ファンクション・サーバ)が維持・管理している。PFSは、各UE間で送受信されるビーコン信号等の情報を各UEから収集することで近接情報を生成・更新する。
【0004】
図1は、非特許文献1が開示するPFベース制御のシーケンス図である。S1で、対象UEは、大セル局を介して制御装置にリレー通信を要求する。
図1には示していないが、対象UEは、リレー通信を要求すると品質測定用の基準信号を送信する。制御装置は、対象UEからのリレー通信の要求に応答して、S2で、PFSに近接情報を要求する。PFSは、S3で、保持している近接情報を制御装置に送信する。制御装置は、S4で近接情報に基づき候補UEを選択する。候補UEは、対象UEと直接通信ができ、かつ、スモールセルに在圏しているUEである。
図1においては、N個の候補UE#1~候補UE#Nが選択されている。S5で、制御装置は、大セル局を介して、選択した候補UE#1~候補UE#Nに測定指示を送信する。測定指示を受信した候補UE#1~候補UE#Nは、対象UEが送信している基準信号を測定し、測定結果、例えば、基準信号の受信品質を、S6で、大セル局を介して、制御装置に送信する。制御装置は、S7で、候補UE#1~候補UE#Nそれぞれから受信した測定結果に基づき中継UEを選択する。本例では、候補UE#1が選択されたものとする。この場合、制御装置は、S8で、大セル局を介して、候補UE#1に中継UEとして選択されたことを通知する。その後、対象UEと中継UE(候補UE#1)は、リレー通信のための中継チャネルを設定し、移動通信ネットワークは、中継UEを介して対象UEにデータを送信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】北川 幸一郎、他、"5G端末間リレー通信における信号量削減手段に関する検討"、第26回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集、90-96、2018年10月31日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、対象UEが中継UEを介してデータを受信している際に、対象UE又は中継UEが移動すると対象UEと中継UEとの間の通信状態が劣化し得る。ここでの通信状態とは、通信品質、通信速度及び/又は通信遅延である。対象UEへの高速データ伝送を維持するには、対象UEと中継UEとの間の通信状態が所定の基準を下回る前に、中継UEを切り替える必要がある。例えば、対象UEは、中継UEとの間の通信状態の劣化を検出すると、
図1のS1に示す様に大セル局を介して制御装置に中継UEの切替を要求する。制御装置は、中継UEの切替要求に応答して、近接情報をPFSから取得し、S7で新たな中継UEを選択する。そして、S8の処理により対象UEと新たな中継UEとの間で中継チャネルが設定されると、移動通信ネットワークは、新たな中継UEを介して対象UEへのデータ伝送を行うことで、対象UEへの高速データ伝送を維持することができる。
【0007】
しかしながら、S3で制御装置が取得した近接情報が古く、近接情報が示すUEの近接関係が、その時点での実際の近接関係とは異なるものであると、S4で選択された候補UEが、その時点において対象UEと直接通信できないものとなり得る。この場合、制御装置は、S7において中継UEを選択できなくなる。S7において中継UEを選択できないと、制御装置は、PFSに近接情報の更新を要求し、更新後の近接情報をPFSから取得してS4から処理を繰り返すことになるが、新たな中継UEを決定するまでの時間が長くなる。新たな中継UEを決定するまでの時間が長くなると、その間に候補UEへのデータ伝送の通信速度、通信品質及び/又は通信遅延が劣化し得る。これを防ぐには、PFSにおける近接情報の更新周期を短くする必要があるが、短くしすぎると近接情報を収集するための制御信号及び処理負荷が増加する。
【0008】
本発明は、近接情報の更新を適切に行わせる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、第1基地局が提供する第1セルと、1つ以上の第2基地局それぞれが提供する第2セルと、を有し、前記1つ以上の第2基地局それぞれが提供する前記第2セルは、前記第1セルと重複領域を有し、第2基地局とユーザ装置との通信を、当該第2基地局が提供する第2セルに在圏する他のユーザ装置と当該ユーザ装置との間で設定された中継チャネルを利用して当該他のユーザ装置が中継するリレー通信を行うことができる様に構成された移動通信ネットワークで使用される制御装置は、前記第1セル内のユーザ装置のうちの直接通信可能なユーザ装置のペアを示す近接情報に基づき、前記第1セル内の前記リレー通信において中継を行うユーザ装置の候補である1つ以上の候補ユーザ装置を選択する第1選択手段と、前記1つ以上の候補ユーザ装置それぞれと前記リレー通信において中継される対象ユーザ装置との間の通信状態に基づき前記1つ以上の候補ユーザ装置から前記リレー通信において中継を行う中継ユーザ装置を選択する第2選択手段と、前記近接情報の更新周期と、前記リレー通信において前記中継ユーザ装置の切り替えを行うか否かを判定するために使用する閾値と、を決定する決定手段と、を備え、前記閾値は、前記リレー通信で利用されている前記中継チャネルの状態を示す評価値の下限を示す下限値に対してマージンだけ前記評価値が示す評価を高くした値であり、前記決定手段は、前記第1セル内にて行われている前記リレー通信において利用されている前記中継チャネルのうち、前記評価値が前記下限値を下回っている前記中継チャネルが生じているか否かと、前記第1セル内において前記リレー通信のために前記第2選択手段が前記中継ユーザ装置を選択できない頻度と、に基づき、前記近接情報の更新周期と、前記閾値と、を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、近接情報の更新を適切に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】一実施形態による移動通信ネットワークの構成図。
【
図3】一実施形態による中継UEの切り替えの説明図。
【
図4】一実施形態による閾値、マージン及び許容下限値の関係を示す図。
【
図5】一実施形態による更新周期及びマージンの更新処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0013】
図2は、本実施形態による移動通信ネットワークの構成図である。大セル局10は、マクロセル1を提供する。小セル局20及び30は、それぞれ、マクロセル1より小さいスモールセル2及び3を提供する。なお、本実施形態においては、
図2に示す様に、スモールセル2及び3は、マクロセル1に包含されている。しかしながら、スモールセル2及び3は、マクロセル1と重複領域を有するものであれば良く、マクロセル1に完全に包含されるものである必要はない。大セル局10並びに小セル局20及び30は、コアネットワーク4に接続される。コアネットワーク4は、制御装置40と、PFS41と、を有する。制御装置40は、例えば、AMF(アクセス及びモビリティ管理機能)サーバであり得る。PFS41は、近接情報を保持し、かつ、制御装置40から通知される更新周期毎に近接情報を更新する。なお、近接情報は、例えば、マクロセル1毎に設けられる。つまり、移動通信ネットワークは、複数の大セル局10を有し、それぞれが、マクロセル1を提供するが、近接情報は、各マクロセル1に対して設けられる。対象UE5は、マクロセル1に在圏しているが、スモールセル2及び3には在圏していない。本実施形態の移動通信ネットワークは、スモールセルに在圏していない対象UE5に高速データ通信サービスを提供するため、上述したリレー通信を行える様に構成されている。つまり、移動通信ネットワークは、小セル局20又は小セル局30に在圏している図示しない中継UEを介して、対象UE5にデータを伝送することができる。このリレー通信において、中継UEは、対象UE5との間に設定した中継チャネルを利用して対象UE5にデータを転送する。
【0014】
図3は、本実施形態による中継チャネル切替の説明図である。対象UE5は、小セル局20が提供するスモールセル2に在圏する中継UE21を介して通信している。中継UE21と対象UE5は中継チャネル60を介して通信している。対象UE5が図中の矢印の方向に移動すると、中継UE21と対象UE5との距離が長くなり、チャネル60の通信状態が劣化する。本実施形態においては、通信状態を評価する評価値を通信速度(スループット)とする。しかしながら、通信状態を評価する評価値は、例えば、通信遅延や誤り発生率(通信品質)であって良い。通信速度の低下を避けるため、移動通信ネットワークは、新たな中継UEを決定して、対象UE5へのデータ通信を中継するUEを、中継UE21から変更する制御を行う。
図3においては、小セル局30が提供するスモールセル3に在圏する中継UE31が新たな中継UEに決定されている。中継UEの変更後、移動通信ネットワークは、中継UE31を介して対象UE5へのデータ送信を行う。このデータ送信においては、中継UE31と対象UE5との間に設定された中継チャネル61が利用される。
【0015】
なお、本実施形態において中継UEの選択は、
図1を用いて説明したPFベース制御に従う。つまり、制御装置40は、近接情報を利用して候補UEを選択し、対象UE5が送信する基準信号の各候補UEにおける測定結果に基づき候補UEから中継UEを選択する。なお、S1における要求は、リレー通信の開始時は、リレー通信の要求であり、リレー通信を行っている際の中継UEの切り替え時には、中継UEの切り替えの要求になる。また、本実施形態において、対象UE5が送信する基準信号の候補UEでの測定結果が所定基準を満たさず、よって、制御装置40がS7で中継UEを選択できないと、制御装置40は、PFS41に近接情報の更新を指示し、PFS41による近接情報の更新後、S4から処理を繰り返すものとする。
【0016】
図4のグラフ70は、
図3のシナリオにおける対象UE5の移動による、中継チャネル60の通信速度の時間変化を示している。中継UE21と対象UE5との距離が時間の経過により長くなっているため、中継チャネル60の通信速度は時間の経過と共に低下している。
図4の許容下限値は、移動通信ネットワークとして許容できる通信速度の下限値である。中継UE31への切り替えは、中継チャネル60の通信品質が許容下限値に達する前に完了させなければならない。また、
図4の閾値は、中継チャネル切替を開始するトリガとなる通信速度である。中継チャネル60の通信速度が閾値に達すると、対象UE5は、中継チャネル切替を開始する。中継チャネル切替を開始してから完了するまでには所定期間がかかり、この所定期間の間においても中継チャネル60の通信速度は低下する。したがって、閾値は、許容下限値に対してこの所定期間をマージンとして見込んで設定する必要がある。なお、所定期間は、近接情報に基づく候補UEの選択と、候補UEから中継UEを決定するまでの期間を含む。
【0017】
ここで、マージンの設定が小さいと、中継チャネル60から中継チャネル61への切替が完了するまでに中継チャネル60の通信速度が下限許容値を下回ることになり得る。同様に、近接情報が古く、近接情報が現在のUEの近接関係を表していないと中継UEを決定するまでの期間が長くなり、中継チャネル60から中継チャネル61への切替が完了するまでに中継チャネル60の通信速度が下限許容値を下回ることになり得る。このため、本実施形態では、マージンMと近接情報の更新周期Δtとを、動的に更新する。
【0018】
図5は、制御装置40が実行する更新周期Δt及びマージンMの更新処理のフローチャートである。制御装置40は、
図5の処理を、所定の周期で繰り返す。なお、
図5の処理は、大セル局毎に個別に行われる。つまり、マージンMと更新周期Δtは、大セル局毎に異なる値になり得る。制御装置40は、S10で、大セル局10内におけるリレー通信で使用されている中継チャネルのうち、その通信速度が許容下限値未満となっている中継チャネルが存在しているか否かを判定する。なお、この判定は、対象UE又は中継UEからの報告に基づく。許容下限値未満となっているものが存在していないと、制御装置40は、S11で、マージンMを減少させ、近接情報の更新周期Δtを増加させる。なお、どの様にマージンMを減少させるかは予め決まっている。同様に、どの様に更新周期Δtを増加させるかについても予め決まっている。
【0019】
許容下限値未満となっているものが存在していると、制御装置40は、S12で、
図1のS7において中継UEが見つからない事象の発生頻度が所定頻度(基準値)より高いかを判定する。例えば、所定の単位期間、又は、
図5の繰り返し周期毎に、その間に行った
図1の処理のS7において中継UEが見つからなかった回数を制御装置40は求める。そして、その回数が所定値より大きいと、S12の判定は"Yes"となる。なお、所定値は0とすることができ、この場合、所定の単位期間、又は、
図5の繰り返し周期の間に行った
図1の処理のS7において中継UEが見つからなかった回数が1回でもあると、S12の判定は"Yes"となる。S12の判定結果が"No"であると、制御装置40は、許容下限値未満となっている原因がマージンMの値が小さすぎることであると判定し、よって、S13でマージンを増加させる。12の判定結果が"Yes"であると、制御装置40は、許容下限値未満となっている原因が、不正確な近接情報であると判定し、よって、近接情報の更新周期Δtを減少させる。なお、どの様にマージンMを増加させるかは予め決まっている。同様に、どの様も更新周期Δtを減少させるかについても予め決まっている。
【0020】
また、制御装置40は、大セル局10についての更新周期Δtを変更(更新)すると、変更後の更新周期ΔtをPFSサーバ41に通知する。PFSサーバ41は、制御装置40から通知された更新周期Δt毎に、大セル局10の近接情報を更新する。また、制御装置40は、大セル局10についてのマージンMを変更(更新)すると、許容下限値に基づき大セル局10のUEが使用する閾値も更新する。
図4に示す様に、閾値は許容下限値にマージンを加えた値である。そして、制御装置40は、閾値を更新すると、更新後の閾値を大セル局10に通知する。大セル局10は、更新後の閾値を少なくとも対象UE5に通知する。よって、対象UE5は、更新後の閾値に基づき中継チャネル切替を移動通信ネットワークに要求することができる。なお、マージンMを更新すると、更新後のマージンMを大セル局10や対象UE5に通知する構成であっても良い。この場合、対象UE5は、自装置が保持している許容下限値と、通知されたマージンMとに基づき閾値を更新することができる。なお、本実施形態では、対象UE5が閾値に基づき中継チャネル切替を移動通信ネットワークに要求するものとしたが、移動通信ネットワークの任意の装置、例えば、制御装置40が閾値に基づき中継チャネル切替の要否を判定する構成とすることもできる。この場合、制御装置40は、対象UE5又は中継UEから中継チャネルの評価値、例えば、通信速度を受信し、閾値と比較することで中継チャネル切替の要否を判定する。この場合、制御装置40は、マージンMを大セル局10や対象UE5に通知する必要はない。
【0021】
なお、本実施形態においては、中継チャネルの評価値を通信速度とし、よって、閾値は許容下限値にマージンを加えた値とした。しかしながら、中継チャネルの評価値を通信遅延とする場合、閾値は許容下限値からマージンを減じた値となる。つまり、閾値は、評価値の許容下限値に対してマージンだけ評価値が示す評価を高くした値であり、マージンを加算するか減算するかは評価値が示す評価の内容に依存する。
【0022】
図6は、本実施形態による制御装置40の構成図である。通信部404は、PFS41、大セル局10、小セル局20及び30と制御信号の送受信を行う。第1選択部401は、PFSから近接情報を取得する。なお、取得する近接情報は、少なくともリレー通信を行う対象UEが在圏するマクロセル1に在圏するUEについての近接情報を含む。第1選択部401は、近接情報に基づきマクロセル1内のリレー通信において中継を行うUEの候補である1つ以上の候補UEを選択する。第2選択部402は、1つ以上の候補UEと、リレー通信における対象UEとの間の通信状態に基づき、1つ以上の候補UEから当該リレー通信において中継を行う中継UEを選択する。決定部404は、近接情報の更新周期と、リレー通信において中継UEの切り替えを行うか否かを判定するために使用する閾値と、を
図5で説明した処理に基づき決定する。
【0023】
なお、本発明による制御装置40は、1つの装置として実現することも、ネットワークを介して相互に通信できる複数の装置により実現することもできる。また、制御装置40は、コンピュータを上記制御装置40として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0024】
401:第1選択部、402:第2選択部、403:決定部、404:通信部