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特許7071919含窒素複素環化合物の製造方法及び含窒素複素環化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】含窒素複素環化合物の製造方法及び含窒素複素環化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/048 20060101AFI20220512BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20220512BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220512BHJP
【FI】
C07D491/048 CSP
C07D519/00 301
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018531802
(86)(22)【出願日】2017-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2017025102
(87)【国際公開番号】W WO2018025590
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2016151693
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308014846
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 修一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 栄作
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-084531(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038650(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/008100(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/132295(WO,A1)
【文献】特表2014-533237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[3]で表される構造を有する化合物と臭素とを、銀塩、硫酸及びカルボン酸の存在下で反応させて、下記一般式[4]で表される構造を有する化合物を合成する含窒素複素環化合物の製造方法。
【化1】
(式中、Xは、酸素原子を表す。R~Rは、水素原子を表し、Rは、水素原子又は置換基を表す。)
【請求項2】
前記一般式[3]で表される構造を有する化合物が、下記一般式[5]で表される構造を有する化合物であり、かつ
前記一般式[4]で表される構造を有する化合物が、下記一般式[6]で表される構造を有する化合物である請求項1に記載の含窒素複素環化合物の製造方法。
【化2】
(式中、Xは、酸素原子を表す。Xは、ヨウ素原子を表す。R~Rは、水素原子を表す。)
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法により前記一般式[4]で表される構造を有する化合物を合成する工程の後、
記一般式[4]で表される構造を有する化合物と下記一般式[7]で表される構造を有する化合物を反応させ、さらに酸と反応させることにより下記一般式[8]で表される構造を有する化合物を合成する含窒素複素環化合物の製造方法。
【化3】
(式中、Xは、酸素原子を表す。R~Rは、水素原子を表し、Rは、水素原子又は置換基を表す。Rは、アルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項4】
下記一般式[6]で表される構造を有する化合物である含窒素複素環化合物。
【化4】
(式中、Xは、酸素原子を表す。Xは、ヨウ素原子を表す。R~Rは、水素原子を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素複素環化合物の製造方法及び含窒素複素環化合物に関する。より詳しくは、本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として有用な含窒素複素環化合物を高収率で提供することができる含窒素複素環化合物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
下記アザジベンゾフランを硫酸と水の存在下で臭素と反応し33%の収率でブロム体を得ることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この条件では、アザジベンゾフラン34gに対して硫酸35mL、水100mLを使用しているが撹拌が困難であるため、生産適性の点から改善が求められている。
【0003】
【化1】
【0004】
例えば、水を増量することが考えられるが、反応基質の析出及び反応性の著しい低下がみられるため有効とはいえない。
また、硫酸を増量すると撹拌は可能となるが、反応系が非常に活性になるためジブロム化等の副反応がおこることや、中和処理による廃液が大量となり環境適性上好ましくないため、新たな合成方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-84531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高収率かつ高純度であり、生産適性及び環境適性に優れた含窒素複素環化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく上記問題の原因等について検討した結果、特定構造を有する化合物と臭素とを、銀塩、硫酸及びカルボン酸の存在下で反応させることにより、高収率かつ高純度であり、生産適性及び環境適性に優れた特定構造の含窒素複素環化合物の製造方法が得られることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
【0009】
記一般式[3]で表される構造を有する化合物と臭素とを、銀塩、硫酸及びカルボン酸の存在下で反応させて、下記一般式[4]で表される構造を有する化合物を合成する含窒素複素環化合物の製造方法。
【化5】
(式中、Xは、酸素原子を表す。R は、水素原子を表し、、水素原子又は置換基を表す。)
【0010】
.前記一般式[]で表される構造を有する化合物が、下記一般式[5]で表される構造を有する化合物であり、かつ
前記一般式[]で表される構造を有する化合物が、下記一般式[6]で表される構造を有する化合物である第1項に記載の含窒素複素環化合物の製造方法。
【化6】
(式中、Xは、酸素原子を表す。X、ヨウ素原子を表す。R~R、水素原子を表す。)
【0011】
3.第1項に記載の製造方法により前記一般式[4]で表される構造を有する化合物を合成する工程の後、
記一般式[4]で表される構造を有する化合物と下記一般式[7]で表される構造を有する化合物を反応させ、さらに酸と反応させることにより下記一般式[8]で表される構造を有する化合物を合成する含窒素複素環化合物の製造方法。
【化5】
(式中、Xは、酸素原子を表す。R~Rは、水素原子を表し、Rは、水素原子又は置換基を表す。Rは、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0012】
.下記一般式[6]で表される構造を有する化合物である含窒素複素環化合物。
【化8】
(式中、Xは、酸素原子を表す。X、ヨウ素原子を表す。R~R、水素原子を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記手段により、高収率かつ高純度であり、生産適性及び環境適性に優れた含窒素複素環化合物の製造方法を提供することができる。
【0014】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、水や硫酸を増量する代わりに酢酸を使用することで、反応が穏やかになり、副生成物の生成を抑制することができるものと推察している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の含窒素複素環化合物の製造方法は、前記一般式[3]で表される構造を有する化合物と臭素とを、銀塩、硫酸及びカルボン酸の存在下で反応させて、前記一般式[4]で表される構造を有する化合物を合成する。
本発明の含窒素複素環化合物の製造方法は、上記製造方法により前記一般式[4]で表される構造を有する化合物を合成する工程の後、前記一般式[4]で表される構造を有する化合物と前記一般式[7]で表される構造を有する化合物を反応させ、さらに酸と反応させることにより前記一般式[8]で表される構造を有する化合物を合成する。
また、本発明の含窒素複素環化合物は、前記一般式[6]で表される構造を有する化合物である。
これらの特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0017】
また、前記一般式[]で表される構造を有する化合物が、前記一般式[5]で表される構造を有する化合物であり、かつ前記一般式[]で表される構造を有する化合物が、前記一般式[6]で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0019】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、以下の説明において示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0020】
《含窒素複素環化合物の製造方法の概要》
本発明の含窒素複素環化合物の製造方法は、下記一般式[]で表される構造を有する化合物と臭素とを、銀塩、硫酸及びカルボン酸の存在下で反応させて、下記一般式[]で表される構造を有する化合物を合成することを特徴とする。
【0021】
【化9】
【0022】
式中、Xは、酸素原子を表す。 ~R は、水素原子を表し、R は、水素原子又は置換基を表す。
【0023】
で表される置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、複素環(例えばジベンゾフラン環、アザジベンゾフラン環等)基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスホニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、イミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシ基等の各基が挙げられる。
【0024】
上記の置換基は、いずれもさらに置換基によって置換されていてもよく、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、複素環基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスホニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シロキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、イミド基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルボキシ基等の各基が挙げられる。
【0025】
〈臭素〉
本発明で用いられる臭素の使用量は、一般式[]で表される構造を有する化合物に対してモル比で0.8~1.3倍の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.9~1.2倍の範囲内である。
【0026】
〈銀塩〉
本発明で用いられる銀塩は、例えば酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、硝酸銀、リン酸銀、酸化銀、ハロゲン化銀等が挙げられる。これらの内で好ましいものは硫酸銀である。
本発明で用いられる銀塩の使用量は一般式[]で表される構造を有する化合物1molに対して0.3~3molの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5~1.5molの範囲内である。
【0027】
〈硫酸〉
本発明で用いられる硫酸の使用量は、一般式[]で表される構造を有する化合物1gに対して1~5mLの範囲内が好ましく、特に好ましくは1~3mLの範囲内である。
【0028】
〈カルボン酸〉
本発明で用いられるカルボン酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸等が挙げられ、特に酢酸が好ましい。
カルボン酸を用いる利点として、反応が穏和になり副生成物の生成を抑制できること、撹拌が良好で生産適性に優れること、カルボン酸は弱酸であるため中和する必要がなく廃液が抑えられ環境適性にすぐれること等が挙げられる。
本発明で用いられるカルボン酸の使用量は、一般式[]で表される構造を有する化合物1gに対して5~50mLの範囲内が好ましく、特に好ましくは10~30mLの範囲内である。
【0029】
本発明では、副生成物の生成を抑制できるため反応率(HPLCで測定)が向上し、収率を改善することができる。収率は、好ましくは75%以上であり、特に80%以上が好ましい。
【0030】
本発明で用いられる水の使用量は、一般式[]で表される構造を有する化合物1gに対して1~5mLの範囲内が好ましく、特に好ましくは1~3mLの範囲内である。
【0034】
前記一般式[]で表される構造を有する化合物が、下記一般式[5]で表される構造を有する化合物であり、かつ前記一般式[]で表される構造を有する化合物が、下記一般式[6]で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
また、本発明の含窒素複素環化合物は、下記一般式[6]で表される構造を有する化合物である。
【0035】
【化9】
【0036】
、ヨウ素原子を表す。
【0037】
また、上記製造方法により前記一般式[4]で表される構造を有する化合物を合成する工程の後、前記一般式[4]で表される構造を有する化合物と下記一般式[7]で表される構造を有する化合物を反応させ、さらに酸と反応させることにより下記一般式[8]で表される構造を有する化合物を合成することを特徴とする。
【0038】
【化10】
【0039】
式中、Xは、酸素原子を表す。 ~R は、水素原子を表し、R は、水素原子又は置換基を表す。Rは、アルキル基又はアリール基を表す。
で表される置換基は、一般式[]及び[のR で表される置換基と同じものを使うことができ、さらに置換基で置換されていてもよい点も同様である。
【0040】
で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、オクチル基等が挙げられる。
また、Rで表されるアリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0041】
〈酸〉
一般式[]で表される構造を有する化合物と一般式[7]で表される構造を有する化合物を反応させた後に用いられる酸としては、特に制限はないが硫酸、濃塩酸、リン酸、酢酸、トシル酸又はメタンスルホン酸等が挙げられる。
反応温度は、通常0~40℃の範囲内で行われるのが好ましく、10~30℃の範囲内で行われるのが特に好ましい。
【0042】
〈パラジウム(Pd)触媒〉
一般式[]で表される構造を有する化合物と、一般式[7]で表される構造を有する化合物とを反応させる場合、Pd触媒又はCu触媒を用いることが好ましく、特にPd触媒が好ましい。
Pd触媒として使用できるものとしては、特に限定はないがPdCl、Pd(OAc)、Pd(pph、PdCl(dppf)、Pd(dba)、Pd/C等が挙げられる。
Pd触媒とともにリガンドを併用してもよく、例えばトリアルキルホスフィン(例えば、トリブチルホスフィン、トリt-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン)、アリール基を少なくとも一つ有するホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン、SPhos、XPhos、t-BuXPhos等)が挙げられる。これらの内好ましいものはアリール基を一つ有するホスフィンであり、特に好ましくはt-BuXPhosである。
【0043】
〈銅(Cu)触媒〉
Cu触媒として使用できるものとしては、特に限定はないがCuCl、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、CuI、CuO、CuO、CuSO、CuSO、CuOCOCH、Cu(OCOCH等が挙げられる。これらのうちで特に好ましいものはCuI及びCuOである。
Cu触媒とともにリガンドを併用してもよく、例えば4級アンモニウム塩(フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)、ヨウ化テトラエチルアンモニウム)、2,2′-ビピリジン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(DPPP)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DPPB)、1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、トリシクロヘキシルホスフィン(PCy)、アリールアルコール類(例えば2-フェニルフェノール、1-ナフトール、2,6-ジメチルフェノール、サリチルアルドキシム、N,N-ジエチルサリチルアミド、8-ヒドロキシキノリン等)、アルキルアミン類(例えば、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジメチルアミノ)グリシン等)、脂環式アミン類(例えば、L-プロリン、DBU等)、ジアミン類(例えば、1,2-シクロヘキサンジアミン、N,N′-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′-テトラメチルエチレンジアミン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル等)、イミダゾリウムカルベン類(例えば、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾリウムテロラフルオロボレート、1,3-ビス(2,6-ジメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾリウムテロラフルオロボレート等)、ピリジン類(例えば、ピコリン酸、3-メチルピコリン酸、3-ヒドロキシピコリンアミド、6-メチルピコリン酸、2-アミノメチルピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン等)、β-ジケトン類(例えばジピバロイルメタン)若しくはフェナントロリン類(例えば、1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン等)より少なくとも1種選択される。
【0044】
〈本発明に用いられる化合物の具体例〉
以下に、本発明の一般式[3]又は一般式[5]で表される構造を有する化合物の具体例(A-1、A-2、A-4及びA-5)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、上記具体例以外の化合物例については、参考例とする。
【0045】
【化11】
【0046】
【化12】
【0047】
以下に、本発明の一般式[4]又は一般式[6]で表される構造を有する化合物の具体例(B-1、B-2、B-4及びB-5)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、上記具体例以外の化合物例については、参考例とする。
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
以下に、本発明の一般式[7]で表される構造を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
【化15】
【0052】
以下に、本発明の一般式[8]で表される構造を有する化合物の具体例(D-1及びD-2)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、上記具体例以外の化合物例については、参考例とする。
【0053】
【化16】
【0054】
【化17】
【実施例
【0055】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0056】
合成例1(比較例)
《例示化合物B-1の合成》
例示化合物A-1を34g(0.2mol)、硫酸を35mL、水を100mL混合し、さらに硫酸銀を65g、臭素を48g(0.3mol)添加した。室温では反応が進行しないため5時間加熱還流を行ったが、撹拌は不十分であった。水を80mL加え、炭酸ナトリウムを84g、10分間で添加した。トルエン/テトラヒドロフラン(THF)の1:1混合液5000mLで抽出し、溶媒を除去した。メタノールで加熱還流した後、結晶を濾過、乾燥することにより、例示化合物B-1を14.9g得た(収率30%、純度90.5%)。
【0057】
【化18】
【0058】
合成例2(本発明)
《例示化合物B-1の合成》
例示化合物A-1を34g(0.2mol)、硫酸を35mL、水を10mL、酢酸を340mL混合し、さらに硫酸銀を65g、臭素を35g(0.22mol)添加した。反応は室温で進行し、撹拌は十分であった。3時間の撹拌を行った。水を300mL加え、炭酸ナトリウムを84g、10分間で添加した。THF800mLで抽出し、溶媒を除去した。メタノールで加熱還流した後、結晶を濾過、乾燥することにより、例示化合物B-1を40.1g得た(収率81%、純度98.4%)。
【0059】
【化19】
【0060】
合成例3(比較例)
《例示化合物B-1の合成》
合成例2の酢酸を同量の水に置き換えたところ、撹拌は十分であったが反応は進行しなかった。
【0061】
合成例4(比較例)
《例示化合物B-1の合成》
例示化合物A-1を34g(0.2mol)、硫酸を375mL、水を10mL混合し、さらに硫酸銀を65g、臭素を35g(0.22mol)添加した。反応は室温で進行し撹拌は不十分であったが、3時間の撹拌を行った。水を3000mL加え、炭酸ナトリウムを895g、1時間で添加した。THF5000mLで抽出し、溶媒を除去した。メタノールで加熱還流した後、結晶を濾過、乾燥することにより、例示化合物B-1を32g得た(収率65%、純度90.1%)。
【0062】
【化20】
【0063】
合成例5(本発明)
《例示化合物B-4の合成》
例示化合物A-4を50g(0.169mol)、硫酸を100mL、水を50mL、酢酸を1.2L混合し、さらに硫酸銀を52g添加した。臭素を29.7g(0.186mol)、10分間で滴下し、さらに3時間撹拌した。水を500mL加え、炭酸ナトリウムを240g、1時間で添加した。結晶を濾取、乾燥した。THF5Lに溶解し不溶分を除去した。減圧濃縮した後メタノールで加熱還流し、結晶を濾取、乾燥することにより、例示化合物B-4を53.7g得た(収率85%、純度97.0%)。
【0064】
【化21】
【0065】
合成例6(本発明)
《例示化合物B-4の合成》
例示化合物A-4を50g(0.169mol)、硫酸を100mL、水を50mL、プロピオン酸を1.2L混合し、さらに硫酸銀を52g添加した。臭素を29.7g(0.186mol)、10分間で滴下し、さらに3時間撹拌した。水500mLを加え、炭酸ナトリウム240gを1時間で添加した。結晶を濾取、乾燥した。THF5Lに溶解し不溶分を除去した。減圧濃縮した後メタノールで加熱還流し、結晶を濾取、乾燥することにより、例示化合物B-4を51.2g得た(収率81%、純度96.7%)。
【0066】
【化22】
【0067】
合成例7(本発明)
《例示化合物B-4の合成》
例示化合物A-4を50g(0.169mol)、硫酸を100mL、水を50mL、酢酸を1.2L混合し、さらに酢酸銀を28g添加した。臭素を29.7g(0.186mol)、10分間で滴下し、さらに3時間撹拌した。水を500mL加え、炭酸ナトリウムを240g、1時間で添加した。結晶を濾取、乾燥した。THF5Lに溶解し不溶分を除去した。減圧濃縮した後メタノールで加熱還流し、結晶を濾取、乾燥することにより、例示化合物B-4を51.2g得た(収率81%、純度96.0%)。
【0068】
【化23】
【0069】
合成例8(比較例)
《例示化合物B-4の合成》
合成例5の酢酸を同量の水に置き換えたが、反応は進行しなかった。
【0070】
【化24】
【0071】
合成例9(本発明)
《例示化合物D-2の合成》
例示化合物B-2を8.9g(0.0214mol)、例示化合物C-5を5.0g(0.0427mol)、t-CONaを4.1g、THFを160mL投入し窒素気流下で20分間撹拌を行った。この懸濁液にPd(dba)を1.3g、t-BuXPhosを0.7g投入し2時間還流した。THF600mLを投入し、不溶分を除去後、減圧濃縮した。水冷下3時間撹拌し、析出した結晶を濾過、水洗、乾燥した。トルエン、メタノールの混合液を5L投入し、不溶分を除去後、減圧濃縮した。得られた粗製物をアセトニトリルで加熱懸濁後濾過し、褐色結晶を12.7g得た。続いてエタノール100mL、濃塩酸10mLを加え1時間還流した。室温で1時間撹拌した後濾過した。得られた粗製物に酢酸エチル80mL、10%炭酸ナトリウム水溶液50mLを加え、1時間撹拌後濾取、乾燥することにより、例示化合物D-2を6.9g得た(収率89%、純度95.2%)。
【0072】
【化25】
【0073】
実施例中の各化合物の同定はMASS及びNMRスペクトルで行い、それぞれ目的化合物であることを確認した。その他の例示化合物も上記の方法に準じて合成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の含窒素複素環化合物の製造方法は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として用いられる含窒素複素環化合物を製造するために好適に用いることができる。また、本発明の含窒素複素環化合物の製造方法によって製造した含窒素複素環化合物、及び本発明の含窒素複素環化合物は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として好適に用いることができる。