(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層、粘着剤層付偏光フィルム、液晶パネル、及び、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 133/14 20060101AFI20220512BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220512BHJP
C09J 133/24 20060101ALI20220512BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220512BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20220512BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20220512BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220512BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220512BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J133/00
C09J133/24
C09J11/06
C09J9/02
C09J7/10
C09J7/38
G02B5/30
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2018542651
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2017034987
(87)【国際公開番号】W WO2018062283
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2016194942
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 潤枝
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-174739(JP,A)
【文献】特表2008-517138(JP,A)
【文献】特開2013-221067(JP,A)
【文献】特開2012-177022(JP,A)
【文献】特表2010-525098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/14
C09J 133/00
C09J 133/24
C09J 11/06
C09J 9/02
C09J 7/10
C09J 7/38
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、前記偏光フィルムの少なくとも片面に粘着剤組成物により形成される粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、アニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物を含有
し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、窒素含有モノマーを0.6重量%以上含有し、
前記アニオン成分の総炭素数が4以上であり、
前記アニオン成分が、下記一般式(1):
(C
nF
2n+1SO
2)
2N
- (1)
(一般式(1)中、nは2~10の整数)、及び、下記一般式(2):
CF
2(C
mF
2mSO
2)
2N
- (2)
(一般式(2)中、mは2~10の整数)、から選択される少なくとも1種で表されることを特徴とする
粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤組成物が、架橋剤を含有し、
前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤、及び/又は、過酸化物系架橋剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の
粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の粘着剤層付偏光フィルムを有し、かつ、前記粘着剤層を介して、前記偏光フィルムが、金属メッシュを含む透明導電層付液晶セルに貼り合わされていることを特徴とする液晶パネル。
【請求項4】
請求項
3に記載の液晶パネルを含むことを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、前記粘着剤組成物により形成される粘着剤層、及び、偏光フィルムの少なくとも片面に前記粘着剤層を有する粘着剤層付光学フィルムに関する。さらには、本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルムと透明導電層付液晶セルを有する液晶パネル、及び、前記液晶パネルを含む液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像表示装置に使用される液晶パネルは、透明導電層付きの液晶セルに粘着剤層を介して偏光フィルムが積層されている。このような液晶パネル等の光学用途の粘着剤層は、高い透明性が要求される。
【0003】
また、画像表示装置において、タッチセンサーの電極等として透明樹脂フィルム上にITO(インジウム・スズ複合酸化物)等の金属酸化物層を形成して得られる透明導電層が多用されている。
【0004】
画像表示装置において用いられる粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤が広く用いられており、例えば、粘着剤層付透明導電層の粘着剤層であって、炭素数2~14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートをモノマー単位として含むアクリル系ポリマーを含有する粘着剤層が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、炭素数4~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含むモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマー及びリン酸エステル系化合物を含む光学フィルム用粘着剤組成物等も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-016908号公報
【文献】特開2015-028138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この様な中、偏光フィルムと透明導電層とを、帯電防止機能が付与された粘着剤層を介して積層すると、透明導電層が端部から腐食する場合があり、特に、湿熱環境下において顕著であった。また、透明導電層は、接触する粘着剤層に含まれる水分と帯電防止機能を付与するための導電剤により、腐食していることが新たに分かった。更に、透明導電層の腐食により、粘着剤層と透明導電層の接触界面において、剥がれなどが生じたり、表面抵抗の悪化などの問題も生じていた。
【0007】
なお、透明導電層として用いられる金属酸化物のITO等では、水分や導電剤による腐食の問題がほとんど認められないことから、特に水分や導電剤により、腐食の問題が発生しやすい透明導電層としては、金属(単独種)や合金等が考えられる。
【0008】
これは、帯電防止機能を付与するために添加される導電剤により、粘着剤層の吸水率が高くなり、粘着剤層に含まれる水分により、例えば、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュを含む透明導電層の腐食が進行することが考えられる。また、粘着剤層と前記透明導電層との界面付近に導電剤が偏析(偏在)することで、前記透明導電層の腐食の進行が加速されることが考えられる。
【0009】
特許文献1に記載された粘着剤層は、透明プラスチック基材の透明導電層を有さない面に設けられるものであって、粘着剤層と透明導電層が接触するものではなく、粘着剤層による腐食については何ら検討がなされていないものであった。また、特許文献2においては、透明導電層の腐食について検討がなされているものの、粘着剤層にリン酸エステル系化合物を添加することで腐食を抑制するものであり、特定の導電剤については何ら記載されていないものであった。
【0010】
従って、本発明は、湿熱環境下であっても、発泡や剥がれを生じない耐久性を満足する粘着剤層、前記粘着剤層表面の表面抵抗の上昇を抑え、ひいては、透明導電層(特に、金属メッシュを含む透明導電層)の表面抵抗の上昇を抑え、安定した帯電防止能を付与でき、更には、透明導電層の腐食も抑える粘着剤層を形成することができる粘着剤組成物、前記粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルム、前記粘着剤層付偏光フィルムを用いた液晶パネル、及び、前記液晶パネルを含む画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、アニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物を含有する粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、窒素含有モノマーを0.6重量%以上含有し、前記アニオン成分の総炭素数が4以上であり、前記アニオン成分が、下記一般式(1):
(CnF2n+1SO2)2N- (1)
(一般式(1)中、nは2~10の整数)、及び、下記一般式(2):
CF2(CmF2mSO2)2N- (2)
(一般式(2)中、mは2~10の整数)、から選択される少なくとも1種で表されることを特徴とする。
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有し、前記架橋剤が、イソシアネート系架橋剤、及び/又は、過酸化物系架橋剤を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物により形成されることが好ましい。
【0016】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、前記偏光フィルムの少なくとも片面に前記粘着剤層を有することが好ましい。
【0017】
本発明の液晶パネルは、前記粘着剤層付偏光フィルムを有し、かつ、前記粘着剤層を介して、前記偏光フィルムが、金属メッシュを含む透明導電層付液晶セルに貼り合わされていることが好ましい。
【0018】
本発明の画像表示装置は、前記液晶パネルを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粘着剤組成物は、特定のモノマーを特定割合含有する(メタ)アクリル系ポリマー、及び、特定のアニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物を含有することで、湿熱環境下であっても、発泡や剥がれを生じない耐久性を満足する粘着剤層、前記粘着剤層表面の表面抵抗の上昇を抑え、ひいては、透明導電層(特に、金属メッシュを含む透明導電層)の表面抵抗の上昇を抑え、安定した帯電防止能を付与でき、更には、透明導電層の腐食も抑える粘着剤層を形成することができる粘着剤組成物、前記粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層、前記粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルム、前記粘着剤層付偏光フィルムを用いた液晶パネル、及び、前記液晶パネルを含む画像表示装置を提供することができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の粘着剤層付偏光フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.粘着剤組成物
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、アニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物を含有することを特徴とする。
【0022】
(1)(メタ)アクリル系ポリマー
前記粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーを含有することを特徴とする。前記(メタ)アクリル系ポリマーを用いることで、透明性や耐熱性に優れ、好ましい態様となる。(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート、及び/又は、メタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0023】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等を例示できる。これらは単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【0024】
前記アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中の主成分とするものである。ここで、主成分とは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、アルキル(メタ)アクリレートが60~99.4重量%であることをいい、60~99重量%が好ましく、65~90重量%がより好ましい。前記アルキル(メタ)アクリレートを前記範囲内で用いることは、接着性を確保する上で好ましい。
【0025】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、窒素含有モノマーを含有することを特徴とする。前記窒素含有モノマーは、その構造中に窒素原子を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を有するものを特に制限なく用いることができる。
【0026】
前記窒素含有モノマーとしては、例えば、マレイミド、N-シクロへキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド;N-アクリロイルモルホリン;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミドやN-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル、3-(3-ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド、N-アクリロイルモルホリンなどのスクシンイミド系モノマーなどが挙げられる。
【0027】
また、前記窒素含有モノマーとしては、例えば、環状窒素含有モノマーを用いることができる。環状窒素含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ環状窒素構造を有するものを特に制限なく用いることができる。環状窒素構造は、環状構造内に窒素原子を有するものが好ましい。環状窒素含有モノマーとしては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、メチルビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等の窒素含有複素環を有するビニル系モノマー等が挙げられる。また、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環等の複素環を含有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。具体的には、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等が挙げられる。特に、窒素含有モノマーの中でも、N-ビニルピロリドン等のラクタム系ビニルモノマーを添加することで、粘着剤層中の導電剤が偏析するのを抑制する効果が高いため、耐腐食性が良好となり、好ましい。
【0028】
前記窒素含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、0.6重量%以上であり、好ましくは0.01~30重量%であり、より好ましくは0.03~25重量%であり、更に好ましくは0.05~20重量%である。本発明においては、前記窒素含有モノマーを前記範囲内で用いることで、腐食抑制効果が十分に得られ、好ましい。また、0.6重量部未満であると、導電剤が偏析しやすくなり耐腐食性が悪化するため、好ましくない。
【0029】
また、本発明においては、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートや窒素含有モノマー以外に、カルボキシル基含有モノマー、及び/又は、ヒドロキシル基含有モノマーを含有することが、耐久性や透明導電層(特に、金属メッシュを含む透明導電層)の腐食抑制の観点から好ましい。特に、耐腐食性の観点からは、前記窒素含有モノマーが好ましいが、次いで、ヒドロキシル基含有モノマーを含むことが好ましく、カルボキシル基含有モノマーを含むことがその次に好ましい。
【0030】
前記ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等が挙げられる。前記ヒドロキシル基含有モノマーの中でも、耐久性やイオン性化合物(導電剤)の均一な分散性、腐食抑制の効果の観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、0.01~10重量%が好ましく、0.03~5重量%がより好ましく、0.05~3重量%がさらに好ましい。前記ヒドロキシル基含有モノマーが前記範囲内であれば、粘着剤層の架橋が十分となり、耐久性を満足でき、また、イオン性化合物(導電剤)の均一な分散性、より高い腐食抑制効果が得られ、好ましい。
【0032】
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて使用できる。イタコン酸、マレイン酸はこれらの無水物を用いることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。一般的に、カルボキシル基含有モノマーをモノマー単位として含むポリマーを含む粘着剤層を、例えば、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュを含む透明導電層等の金属を含む層に用いた場合、カルボキシル基に起因する金属層の腐食を発生させる場合がある。従って、通常、カルボキシル基含有モノマーは、耐腐食性を目的とする粘着剤には用いられないものである。本発明においては、前記粘着剤組成物に、カルボキシル基含有モノマーを含むことにより、イオン性化合物(導電剤)の分散性を向上することができる。イオン性化合物の分散性が向上した粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、イオン性化合物が偏析(偏在)することがなく、金属メッシュを含む透明導電層の腐食抑制効果が得られるため、好ましい。
【0033】
前記カルボキシル基含有モノマーの割合は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、好ましくは、5重量%以下であり、より好ましくは、0.1~3重量%であり、更に好ましくは、0.1~1重量%である。前記カルボキシル基含有モノマーの割合が5重量%を超えると、粘着剤の架橋が促進され、粘着物性が著しく硬くなり(貯蔵弾性率が高くなり)、耐久性試験でハガレ等の不具合を引き起こすため、好ましくない。また、本発明においては、前記カルボキシル基含有モノマーを5重量%以下程度の微量含むことで、腐食抑制効果が得られるため、好ましい。
【0034】
また、本発明においては、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートや窒素含有モノマー以外に、芳香環含有(メタ)アクリレートを含有することが、耐久性などの観点から好ましい。前記芳香環含有(メタ)アクリレートは、その構造中に芳香環構造を含み、かつ(メタ)アクリロイル基を含む化合物である。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、またはビフェニル環が挙げられる。芳香環含有(メタ)アクリレートは、耐久性(特に、金属メッシュを含む透明導電層に対する耐久性)を満足し、かつ周辺部の白ヌケによる表示ムラを改善することができる。
【0035】
前記芳香環含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートフェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を有するもの;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のナフタレン環を有するもの;ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を有するもの挙げられる。
【0036】
前記芳香環含有(メタ)アクリレートの割合は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中、3~25重量%であり、8~22重量%が好ましく、さらには12~18重量%が好ましい。前記芳香環含有(メタ)アクリレートが前記範囲内であれば、耐久性(特に、金属メッシュを含む透明導電層に対する耐久性)を満足でき、かつ周辺部の白ヌケによる表示ムラを改善することができ、好ましい。
【0037】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、前記アルキル(メタ)アクリレート、窒素含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、及び、芳香環含有(メタ)アクリレート以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、上記モノマー以外の共重合モノマーを導入することができる。その配合割合は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー中10重量%以下程度であることが好ましい。
【0038】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量(Mw)が50万~300万の範囲のものが用いられる。なお、得られる粘着剤層の耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は70万~270万であるものを用いることが好ましい。さらには80万~250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万よりも小さいと、架橋剤量を増やす必要があり架橋の柔軟性が失われるため、偏光フィルムの収縮による応力を緩和できず、耐久性でハガレが発生するため、好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると、塗工するための粘度に調整するために多量の希釈溶剤が必要となり、コストアップとなることから好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0039】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0040】
前記溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。具体的な溶液重合例としては、窒素等の不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50~70℃程度で、5~30時間程度の反応条件で行われる。
【0041】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず、適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0042】
重合開始剤としては、例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリル、2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´-アゾビス(N,N´-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2´-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(商品名:VA-057、和光純薬工業(株)製)等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー100重量部に対して、0.005~1重量部程度であることが好ましく、0.02~0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0044】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全モノマー100重量部に対して、0.06~0.2重量部程度とするのが好ましく、0.08~0.175重量部程度とするのがより好ましい。
【0045】
また、連鎖移動剤、乳化重合する場合に用いる乳化剤又は反応性乳化剤を用いる場合、これらは従来公知のものを適宜用いることができるものである。また、これらの添加量としては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定することができる。
【0046】
(2)イオン性化合物(導電剤)
前記粘着剤組成物は、アニオン成分及びカチオン成分を有するイオン性化合物(導電剤)を含有し、前記アニオン成分の総炭素数が4以上であり、前記アニオン成分が、下記一般式(1):
(CnF2n+1SO2)2N- (1)
(一般式(1)中、nは2~10の整数)、及び、下記一般式(2):
CF2(CmF2mSO2)2N- (2)
(一般式(2)中、mは2~10の整数)、から選択される少なくとも1種で表されることを特徴とする。前記イオン性化合物を使用することにより、粘着剤層の帯電防止機能を確保できる。なお、粘着剤層中にイオン性化合物を含有することで、前記粘着剤層を接触する透明導電層(特に金属メッシュを含む透明導電層)が腐食する恐れがあり、特に湿熱環境下では、粘着剤層中のイオン性化合物が金属メッシュを含む透明導電層と接触側に偏析(偏在)し、腐食される恐れがある。このため、イオン性化合物を構成するアニオン成分として、総炭素数が4以上であり、総炭素数5以上が好ましく、総炭素数6以上がより好ましく、総炭素数7以上が更に好ましい。また、アニオン成分の総炭素数の上限値は特に限定されるものではないが、16以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。総炭素数が4以上の高分子量のアニオン成分を使用することで、イオン性化合物の分子量(モル分子量)が大きくなり、イオン性化合物を含む粘着剤層の吸水率が低くなり、かつ、粘着剤層と透明導電層が接触する界面での前記イオン性化合物の偏析(偏在)が起こりにくくなり、イオン性化合物が均一に分散した状態を保持しやすいため、結果として、透明導電層(特に金属メッシュを含む透明導電層)の腐食を抑制することができ、かつ、粘着剤層表面の表面抵抗の上昇を抑え、ひいては、透明導電層の表面抵抗上昇などを抑制できる。
【0047】
なお、イオン性化合物(導電剤)を構成するアニオン成分として、総炭素数が4未満になると、粘着剤層の吸水率が高くなり、粘着剤層に含まれる水分により、例えば、金属(単独種)や合金から構成される金属メッシュを含む透明導電層の腐食が進行すると考えられる。また、イオン性化合物の分子量が小さくなると、イオン性化合物が粘着剤層中において、金属メッシュを含む透明導電層との界面付近に移動しやすくなるため、偏析(偏在)してしまい、前記界面付近のイオン性化合物により、腐食を引き起こしてしまうことが考えられる。また、低分子量のイオン性化合物は、粘着剤層中において、金属メッシュを含む透明導電層との界面付近に多く偏析(偏在)する傾向があり、前記界面付近のイオン性化合物により腐食の進行が加速されると考えられる。これらの現象は、金属メッシュを含む透明導電層において顕著であり、特に、湿熱環境下において、より顕著となる。
【0048】
前記イオン性化合物を構成するアニオン成分、及び、カチオン成分について、以下に説明する。
【0049】
(イオン性化合物のアニオン成分)
本発明においては、イオン性化合物を構成するアニオン成分として、総炭素数が4以上であることで、イオン性化合物自体の疎水性が高くなるため、粘着剤層中に水分を含みにくくなり、その結果、透明導電層(特に、金属メッシュを含む透明導電層)の腐食が抑制できるため好ましい。
【0050】
アニオン成分としては、下記一般式(1):
(CnF2n+1SO2)2N- (1)
(一般式(1)中、nは2~10の整数(好ましくはnは4~10の整数))、及び、下記一般式(2):
CF2(CmF2mSO2)2N- (2)
(一般式(2)中、mは2~10の整数(好ましくはnは3~10の整数))、から選択される少なくとも1種で表されるアニオン成分であることが、腐食抑制の観点から好ましい。
【0051】
上記一般式(1)で表されるアニオン成分としては、具体的には、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ウンデカフルオロペンタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(トリデカフルオロヘキサンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンダデカフルオロヘプタンスルホニル)イミドアニオン等が挙げられる。これらの中でも、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオンが好ましい。
【0052】
上記一般式(2)で表されるアニオン成分としては、具体的には、N,N-デカフルオロペンタン-1,5-ジスルホニルイミドアニオンが挙げられ、好適に使用可能である。
【0053】
(イオン性化合物のカチオン成分)
本発明においては、カチオン成分としては、有機カチオンが好ましい。カチオンの炭素数は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また、カチオンの炭素数の上限値は特に限定されないが、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。カチオン成分の炭素数が6以上であることで、イオン性化合物自体の疎水性が高くなるため、粘着剤層中に水分を含みにくくなり、その結果、透明導電層(特に、金属メッシュを含む透明導電層)の腐食が抑制できるため好ましい。
【0054】
また、前記カチオン成分は、有機基を有することが好ましく、前記有機基としては、炭素数3以上の有機基が好ましく、炭素数7以上の有機基がより好ましい。
【0055】
イオン性化合物のカチオン成分が有機カチオンである場合、上記アニオン成分と共に、イオン性化合物としての有機カチオン-アニオン塩を構成する。有機カチオン-アニオン塩は、イオン性液体、イオン性固体とも言われる。有機カチオンとしては、具体的には、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0056】
有機カチオン-アニオン塩の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分との組み合わせからなる化合物が適宜選択して用いられ、例えば、ブチルメチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N-ブチル-メチルピリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、メチルプロピルピロリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0057】
また、アルカリ金属塩としては、具体的には、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドカリウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドカリウム等が挙げられる。
【0058】
本発明の粘着剤組成物におけるイオン性化合物の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.001~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましく、0.3~3重量部がさらに好ましい。前記イオン性化合物が0.001重量部未満では、表面抵抗値を下げる効果が乏しくなる場合がある。一方、前記イオン性化合物が10重量部より多いと、耐腐食性や耐久性が悪化する場合がある。
【0059】
(3)架橋剤
本発明の粘着剤組成物には、架橋剤を含有することができる。架橋剤を使用することで、粘着剤の耐久性に関係する凝集力を付与できるため好ましい。架橋剤としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0060】
中でも、本発明の粘着剤組成物には、前記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、及び/又は、過酸化物系架橋剤を含有することが好ましい。
【0061】
イソシアネート系架橋剤としては、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を用いることができる。たとえば、一般にウレタン化反応に用いられる公知の脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が用いられる。
【0062】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
脂環族イソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソソアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
また、イソシアネート系架橋剤としては、上記ジイソシアネートの多量体(2量体、3量体、5量体等)、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させたウレタン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、アルファネート変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。
【0066】
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、商品名「ミリオネートMT」「ミリオネートMTL」「ミリオネートMR-200」「ミリオネートMR-400」「コロネートL」「コロネートHL」「コロネートHX」[以上、日本ポリウレタン工業社製];商品名「タケネートD-110N」「タケネートD-120N」「タケネートD-140N」「タケネートD-160N」「タケネートD-165N」「タケネートD-170HN」「タケネートD-178N」「タケネート500」「タケネート600」[以上、三井化学社製];等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
イソシアネート系架橋剤としては、脂肪族ポリイソシアネートおよびその変性体である脂肪族ポリイソシアネート系化合物が好ましい。脂肪族ポリイソシアネート系化合物は、他のイソシアネート系架橋剤に比べて、架橋構造が柔軟性に富み、光学フィルムの膨張/収縮に伴う応力を緩和しやすく、耐久性試験で剥がれが発生をしにくい。脂肪族ポリイソシアネート系化合物としては、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその変性体が好ましい。
【0068】
過酸化物系架橋剤としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃~160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃~140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0069】
用いることができる過酸化物としては、たとえば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ-n-オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)等が挙げられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)等が好ましく用いられる。
【0070】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログ等に記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」等に記載されている。
【0071】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0072】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mLに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10mL加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μLをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0073】
架橋剤の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01~3重量部が好ましく、さらには0.02~2重量部が好ましく、さらには0.03~1重量部が好ましい。なお、架橋剤が0.01重量部未満では、粘着剤層が架橋不足になり、耐久性や粘着特性を満足できないおそれがあり、一方、3重量部より多いと、粘着剤層が硬くなりすぎて耐久性が低下する傾向が見られる。
【0074】
(4)シランカップリング剤
本発明の粘着剤組成物には、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤を用いることにより、耐久性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、具体的には、たとえば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。前記例示のシランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0075】
また、シランカップリング剤として、分子内に複数のアルコキシシリル基を有するものを用いることもできる。具体的には、たとえば、信越化学工業社製X-41-1053、X-41-1059A、X-41-1056、X-41-1805、X-41-1818、X-41-1810、X-40-2651などが挙げられる。これらの分子内に複数のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、揮発しにくく、アルコキシシリル基を複数有することから耐久性向上に効果的であり好ましい。特に、粘着剤層付光学フィルムの被着体が、ガラスに比べてアルコキシシリル基が反応しにくい透明導電層の場合にも耐久性が好適である。また、分子内に複数のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、分子内にエポキシ基を有するものが好ましく、エポキシ基は分子内に複数有することがさらに好ましい。分子内に複数のアルコキシシリル基を有し、かつエポキシ基を有するシランカップリング剤は被着体が透明導電層の場合にも耐久性が良好な傾向がある。分子内に複数のアルコキシシリル基を有し、かつエポキシ基を有するシランカップリング剤の具体例としては、信越化学工業社製X-41-1053、X-41-1059A、X-41-1056が挙げられ、特に、エポキシ基含有量の多い、信越化学工業社製X-41-1056が好ましい。
【0076】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.001~5重量部が好ましく、さらには0.01~1重量部が好ましく、さらには0.02~1重量部がより好ましく、さらには0.05~0.6重量部が好ましい。耐久性を向上させ、ガラスおよび透明導電層への接着力を適度に保持する量である。
【0077】
(4)その他
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0078】
2.粘着剤層
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物から形成されることを特徴とする。
【0079】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレータ等に塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を形成する方法を挙げることができる。また、後述する偏光フィルムに前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を偏光フィルムに形成する方法等により作製することもできる。なお、粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0080】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する場合、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0081】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0082】
前記粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0083】
粘着剤層の厚さ(乾燥後)は、特に制限されず、例えば、1~100μm程度であるが、好ましくは、2~50μm、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは、5~35μmである。粘着剤層の厚さが1μm未満では、被着体(例えば、偏光フィルムや透明導電層)に対する密着性が乏しくなり、湿熱環境下での耐久性が十分ではない傾向がある。一方、粘着剤層の厚さが100μmを超える場合には、粘着剤層を形成する際の粘着剤組成物の塗布、乾燥時に十分に乾燥しきれず、気泡が残存したり、粘着剤層に厚みムラが発生したりして、外観上の問題が顕在化し易くなる傾向がある。
【0084】
3.粘着剤層付偏光フィルム
本発明に用いられる粘着剤層付偏光フィルムは、偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、前記偏光フィルムの少なくとも片面に(前記粘着剤組成物より形成される)前記粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを有することが好ましい。例えば、
図1に示すように、本発明で用いられる粘着剤層付偏光フィルム3は、偏光フィルム1と粘着剤層2が積層されたものである。また、
図2~4に示すように、本発明で用いられる粘着剤層付偏光フィルム3は、透明導電層付きの液晶セル(ガラス基板5+液晶層6+ガラス基板5)の透明導電層4に貼り合わされて用いられる。
【0085】
粘着剤層を形成する方法としては、上述の通りである。
【0086】
本発明に用いられる粘着剤層付偏光フィルムは、粘着剤層を剥離処理したセパレータ上に形成した場合、前記セパレータ上の粘着剤層を偏光フィルムの透明保護フィルム面に転写して粘着剤層付偏光フィルムを形成することができる。また、偏光フィルムに直接前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層付偏光フィルムを形成することもできる。
【0087】
また、前記偏光フィルムの粘着剤組成物を塗布する表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理等の各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0088】
また、粘着剤層付偏光フィルムにおいて粘着剤層が露出する場合には、透明導電層に貼り合せるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0089】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等を挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0090】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0091】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは5~100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0092】
なお、上記の粘着剤層付偏光フィルムの作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着剤層付偏光フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0093】
偏光フィルムは、偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有するものが用いられる。
【0094】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好ましく、ヨウ素及び/又はヨウ素イオンを含有するヨウ素系偏光子がより好ましい。また、これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5~80μm程度である。
【0095】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0096】
また、本発明においては、厚みが10μm以下の薄型偏光子も用いることができる。薄型化の観点から言えば、厚みは1~7μmであるものが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
【0097】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51-069644号公報や特開2000-338329号公報や、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、又は特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法により得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
【0098】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることができる点で、国際公開第2010/100917号パンフレット、国際公開第2010/100917号パンフレット、又は特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許4751481号明細書や特開2012-073563号公報に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
【0099】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0100】
前記偏光子の少なくとも片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされる。偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5~60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。電子線硬化型偏光フィルム用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
【0101】
本発明に用いられる粘着剤層付偏光フィルムは、例えば、金属(特に、金属メッシュ)を含む透明導電層付液晶セルの透明導電層に前記粘着剤層を貼り合せて用いるものである。透明導電層に用いられる金属の形状は、空隙の無い平面板状、空隙を有するパターン状、細線でパターン化された金属メッシュなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、金属メッシュを含む透明導電層とは、金属細線が格子状のパターンに形成されてなる金属メッシュを形成して得られるものであり、特に腐食しやすい金属細線を用いた金属メッシュに対して、本発明による耐腐食性の効果が顕著である。
【0102】
前記金属メッシュを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いることができる。上記金属メッシュを構成する金属としては、金、白金、銀、アルミニウム、及び銅からなる群より選ばれた1種以上の金属が好ましく、導電性の観点からは、アルミニウム、銀、銅、又は金であることが好ましい。特に、金属としてアルミニウムを含む構成において、耐腐食性の効果が顕著であり、好ましい。
【0103】
金属メッシュを含む透明導電層は、任意の適切な方法により形成させることができる。該透明導電層は、例えば、銀塩を含む感光性組成物(透明導電層形成用組成物)を離型フィルム等の被着体上に塗布し、その後、露光処理及び現像処理を行い、金属細線を所定のパターンに形成することにより得ることができる。金属細線の線幅や形状は特に限定されるものではないが、線幅としては、10μm以下のものが好ましい。また、該透明導電層は、金属微粒子を含むペースト(透明導電層形成用組成物)を所定のパターンに印刷して得ることもできる。このような透明導電層及びその形成方法の詳細は、例えば、特開2012-18634号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。また、金属メッシュから構成される透明導電層及びその形成方法の別の例としては、特開2003-331654号公報に記載の透明導電層及びその形成方法が挙げられる。金属メッシュはスパッタリング法やインクジェット法等により形成してもよく、特にスパッタリング法を用いることが好ましい。
【0104】
透明導電層の厚みは、0.01~10μm程度であることが好ましく、0.05~3μm程度であることがより好ましく、0.1~1μmであることがさらに好ましい。
【0105】
また、前記透明導電層上には、オーバーコート(OC)層(不図示)を有してもよい。
【0106】
オーバーコート層としては、本分野において通常用いられているものを特に制限なく用いることができるが、例えば、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂等から形成される層を挙げることができる。オーバーコート層の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、0.1~10μmであることが好ましい。
【0107】
4.液晶パネル
本発明の液晶パネルは、偏光子及び前記偏光子の少なくとも片面に透明保護フィルムを有する偏光フィルム、及び、前記偏光フィルムの少なくとも片面に(前記粘着剤組成物より形成される)前記粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを有し、かつ、前記粘着剤層を介して、前記偏光フィルムが、金属メッシュを含む透明導電層付液晶セルに貼り合わされていることが好ましい。なお、その他の構成については特に限定されるものではない。本発明においては、特定の粘着剤層を用いることで、液晶パネル全体としての耐久性の向上などを図ることができる。
【0108】
5.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、前記液晶パネルを含むことが好ましい。以下、一例として、液晶表示装置について説明するが、本発明は、液晶パネルを必要とするあらゆる表示装置に適用され得るものである。
【0109】
本発明の液晶パネルが適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:FieldEmission Display)等を挙げることができる。
【0110】
本発明の画像表示装置は、本発明の液晶パネルを含むものであればよく、その他の構成は、従来の画像表示装置と同様である。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は、全て23℃×55%RHである。
【0112】
(偏光フィルムの作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍になるように延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ20μmの偏光子を得た。当該偏光子の両面に、けん化処理した厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタオプト(株)社製)を、それぞれ、ポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光フィルムを作製した。
【0113】
<実施例1>
(アクリル系ポリマーの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート80.3部、フェノキシエチルアクリレート16部、N-ビニルピロリドン3部、アクリル酸0.3部、及び、アクリル酸4-ヒドロキシブチル0.4部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量160万のアクリル系ポリマー溶液を調製した。
【0114】
(粘着剤組成物の調製)
得られた前記アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、イオン性化合物として、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成(株)社製)1部、イソシアネート系架橋剤(D160N、三井化学社製のタケネートD160N、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体)0.1部、過酸化物系架橋剤(BPO、日本油脂社製のナイパーBMT、ベンゾイルパーオキサイド)0.3部、及び、シランカップリング剤(X-41-1810、信越化学工業社製のX-41-1810、チオール基含有シリケートオリゴマー)0.1部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0115】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
次いで、上記アクリル系粘着剤溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、作製した偏光フィルムに、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0116】
<実施例2~10、比較例1~6>
実施例1に対して、アクリル系ポリマー、粘着剤組成物、偏光フィルム、及び、粘着剤層付偏光フィルムの調製にあたり、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。なお、反応条件や配合量などは、実施例1と同じ加熱条件やモル濃度となる量等に調整・添加した。
【0117】
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、以下の方法により測定した。
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8ml/min
・注入量:100μl
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0118】
上記実施例及び比較例で得られた、粘着剤層付偏光フィルムについて以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0119】
<表面抵抗値(Ω/□)>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムのセパレータフィルムを剥がし、室温放置条件にて、1分間放置した後、粘着剤層表面の表面抵抗値(初期)を測定した。また、更に、前記粘着剤層付偏光フィルムを60℃×95%RHの環境に500時間投入した後、40℃で1時間乾燥させてから、セパレータフィルムを剥がした後、粘着剤表面の表面抵抗値(湿熱後)を測定した。測定は、三菱化学アナリテック社製MCP-HT450を用いて行った。
なお、初期値と湿熱後の表面抵抗値の差は小さければ小さいほど、粘着剤中の導電剤の偏析が抑制されるため、耐腐食性が好ましい。また、表2中の1.0E+12とは、表面抵抗値1.0×1012(Ω/□)を指す。
【0120】
<透明導電層(メタル)腐食試験>
ガラス(無アルカリガラス)表面に、スパッタリング法にて形成された厚さ0.1μmのアルミニウム系金属層を形成した導電性ガラスに、実施例及び比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを15mm×15mmに切断し、セパレータフィルムを剥がして貼り合わせた後、50℃、5atmで15分間オートクレーブにかけたものを耐腐食性の測定サンプル(透明導電層付液晶セルに相当する導電性ガラスに粘着剤層付偏光フィルムを貼り合わせたサンプル)とした。得られた測定用サンプルを60℃×95%RHの環境に、500時間投入した後に、目視及び光学顕微鏡にて金属層の外観を評価した。なお、欠陥の大きさは、欠陥の一番長い部分を測定した。
(評価基準)
◎:欠陥なし
○:周辺の一部に僅かに欠陥(欠陥の大きさは0.5mm未満)あるが、内部には欠陥がなく、実用上問題なし。
△:周辺部に断続的な欠陥(欠陥の大きさは0.5mm以上、1mm未満)があるが、内部には欠陥がなく、実用上問題なし。
×:周辺部に連続的な欠陥(欠陥の大きさは1mm以上)があるか、又は内部に欠陥があり、実用上問題あり。
【0121】
<耐久性試験(発泡・剥がれ)>
実施例、比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを15インチサイズに切断したものをサンプルとした。当該サンプルからセパレータフィルムを剥がした後、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、EG-XG)にラミネーターを用いて貼着した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、上記サンプルを完全に無アクリルガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、60℃×95%RHの各雰囲気下で500時間処理を施した後(加湿試験)、偏光フィルムとガラスの間の外観を下記基準で目視にて評価した。
(評価基準)
◎:発泡、剥がれ等の外観上の変化が全くなし。
○:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし。
△:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
×:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0122】
【0123】
表1中の略語を以下に示す。
<モノマー成分>
BA:ブチルアクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
NVP:N-ビニル-ピロリドン
DMAEA:N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート
AA:アクリル酸
HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
【0124】
<架橋剤>
D160N:イソシアネート系架橋剤、三井化学社製のタケネートD160N(トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体)
BPO:過酸化物系架橋剤、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製、ナイパーBMT)
【0125】
<イオン性化合物(導電剤)>
Li-NFSI:リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成(株)社製)
Li-HFSI:リチウムビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド(和光純薬社製)
Li-PFSI:ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(東京化成社製)
MTOA-NFSI:メチルトリオクチルアンモニウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成(株)社製)
BMI-NFSI:ブチルメチルイミダゾリウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成(株)社製)
Li-TFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(三菱マテリアル電子化成(株)社製)
Li-CTFSI:リチウム N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3‐ジスルホニルイミド(三菱マテリアル電子化成(株)社製)
EMI-FSI:1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(第一工業製薬(株)社製)
4MOPy-FSI:1‐オクチル‐4‐メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(第一工業製薬(株)社製)
【0126】
<シランカップリング剤>
X-41-1810:チオール基含有シリケートオリゴマー(信越化学工業社製)
KBM403:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製)
【0127】
【0128】
表2の評価結果より、全ての実施例において、特定のモノマーを所望の割合で含有する(メタ)アクリル系ポリマー、及び、特定のアニオン成分を含むイオン性化合物を使用して得られる粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを用いることで、湿熱環境下でも表面抵抗の上昇がなく、安定した帯電防止性を満足し、耐腐食性や耐久性にも優れることが確認できた。一方、全ての比較例で、特定のモノマーを所望の割合で含有しない(メタ)アクリル系ポリマーや、特定のアニオン成分を含まないイオン性化合物を使用して得られる粘着剤層を有する粘着剤層付偏光フィルムを用いることで、実施例よりも、耐腐食性や耐久性に劣ることが確認された。特に、比較例2及び3においては、窒素含有モノマーを一切含まないため、初期の表面抵抗値に比べて、湿熱後の表面抵抗値の上昇が大きく、安定した帯電防止性能が得られないことが確認された。
【符号の説明】
【0129】
1 偏光フィルム
2 粘着剤層
3 粘着剤層付偏光フィルム
4 金属メッシュを含む透明導電層
5 ガラス基板
6 液晶層
7 駆動電極
8 粘着剤層
9 偏光フィルム
10 駆動電極兼センサー層
11 センサー層