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特許7071933浮遊病原体および刺激物に対して防御するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】浮遊病原体および刺激物に対して防御するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20220512BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 38/40 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K38/47
A61K38/40
A61P31/00
A61K9/12
A61K9/08
A61K47/10
A61P11/00
A61P31/14
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018563765
(86)(22)【出願日】2017-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 US2017019535
(87)【国際公開番号】W WO2017147540
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-02-25
(31)【優先権主張番号】62/299,775
(32)【優先日】2016-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518303387
【氏名又は名称】アプライド バイオロジカル ラボラトリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ラテフィ ナズリー
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-523453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121237(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093371(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0233129(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0034542(US,A1)
【文献】特表2013-515022(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02845606(EP,A1)
【文献】特表2001-525814(JP,A)
【文献】Nature,1990年,344,70-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 39/395
A61K 45/00
A61K 9/00
A61K 47/00
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)可溶性ICAM-1、
(ii)リゾチーム、および
(iii)ラクトフェリン、
を含み、さらに
薬学的に許容される担体
を任意に含んでいてもよい、ヒトライノウイルス(HRV)からの呼吸器感染を防止または処置するための医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物が薬学的に許容される担体を含み、前記薬学的に許容される担体が、鼻粘膜および/または口腔粘膜上での少なくとも1分間、または少なくとも5分間、または少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間、または少なくとも25分間、または少なくとも30分間の前記組成物の滞留時間をもたらすように適合されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が薬学的に許容される担体を含み、前記薬学的に許容される担体が、約5~50%(v/v)または約10~40%(v/v)または約15~35%(v/v)または約20~30%(v/v)の1,3-プロパンジオールを含む水溶液である、請求項1から2のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
それを必要とする個体の鼻粘膜および/または口腔粘膜に適用される、請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記それを必要とする個体の鼻粘膜および/または口腔粘膜が、それらに接触しているヒトライノウイルスを有する、請求項4に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.§119(e)下で、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれている、2016年2月25日出願の仮出願第62/299,755号に対する優先権を主張する。
本開示は、その天然の防御性分泌物の完全性を増強することにより、健康ならびに上皮および粘膜の濾過能を増大する組成物および方法に関する。特に、本開示は、ウイルス、細菌および真菌などの浮遊病原体による感染、ならびにアレルゲン、刺激物または臭気物質などの望ましくない浮遊粒子からの刺激から、対象の上皮および粘膜を防御するための組成物および方法に関する。本開示は、微生物感染およびウイルス感染、特にヒトライノウイルス(HRV)感染およびヒトインフルエンザウイルス感染を予防するために、ヒトの気道(例えば、鼻粘膜および口腔粘膜)に適用するための組成物にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
浮遊病原体が、吸入または摂取した液体またはエアゾール液滴を介して、粘膜(例えば、鼻膜、鼻毛、食道の膜など)と接触するようになると、呼吸器感染が通常、起こる。鼻または口からの病原体の吸入または摂取は、呼吸器疾患の主因であり、灰白髄炎または足および口腔疾患などの全身性疾患を引き起こすこともある。浮遊病原体は、吸入もしくは摂取後に肺に入ることがあるか、またはそれらは、病原体、アレルゲンもしくは刺激物が血流に入る進入点として働く上気道および下気道全体の鼻膜上および他の膜上に見出される受容体に結合することがあり、呼吸器および他のタイプの感染もしくはアレルギー反応を引き起こす。不運なことに、吸入または摂取された微生物により、感染またはアレルギーを最小限にするまたは防止する、便利な有効な方法は存在しない。したがって、浮遊病原体、アレルゲンおよび刺激物に対して、特に、ウイルス、特にヒトライノウイルス(HRV)、ヒトインフルエンザウイルスまたはそれらの両方に対して防御する新規組成物および方法を開発する必要性に迫られている。
【発明の概要】
【0003】
上述の目的などによれば、本開示は、鼻腔スプレー、口腔スプレー、口腔リンス液、ロゼンジ剤などの組成物、および上皮膜がある種の浮遊病原体を濾過する能力を増強するための、このような組成物を使用する関連方法を特徴とする。特に、本開示は、刺激物、アレルゲン、細菌、真菌およびウイルスによって引き起こされる呼吸器感染およびアレルギーを防止および処置する抗菌組成物を提供する。好ましい実施では、本組成物は、ウイルス感染、特にヒトライノウイルスおよび/またはヒトインフルエンザウイルスから対象を防御する。
【0004】
本発明の一態様では、呼吸器感染に罹患している、またはこれに罹患するリスクのあるヒト対象を予防または処置するための組成物が提供される。本組成物は、担体、通常、必ずしもではないが、液体担体中に分散させた1種または複数の抗菌化合物または抗ウイルス化合物を含むことができる。液体担体は、必ずしも必要としないが、理想的には、エアゾールまたは微細ミストとして噴霧されるのに好適なレオロジーがある。本組成物は、エモリエント、被覆剤(occlusive)、保湿剤、担体、賦形剤、乳化剤およびエッセンシャルオイルからなる群から選択される、1種または複数の成分を含むことができる。一部の実施形態では、呼吸器感染の予防または処置向けの組成物は、細胞間接着分子1(ICAM-1)に結合するウイルスおよび/またはシアル酸に結合する(またはその細胞外部分)に対して感染に対処する活性成分を含むことができる。一実施では、ヒトライノウイルス(HRV)による気道の感染に罹患しているまたはこれに罹患するリスクのあるヒト対象を予防または処置するための組成物であって、好適な液体担体中に、(i)可溶性ICAM-1(「sICAM-1」)および/またはICAM-1阻害剤;(ii)リゾチームおよび(iii)ラクトフェリン(例えば、アポラクトフェリン)を含む、組成物が提供される。別の実施では、ヒトインフルエンザウイルスによる気道の感染に罹患しているまたはこれに罹患するリスクのあるヒト対象を予防または処置するための組成物であって、好適な液体担体中に、(i)シアル酸(例えば、シアリルラクトース)、(ii)リゾチーム、(iii)ラクトフェリンを含み、さらに(iv)ノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、ケルセチンなど)を含んでもよい、組成物が提供される。さらに別の実施では、ヒトライノウイルス(HRV)およびヒトインフルエンザウイルスによる気道の感染に罹患しているまたはこれに罹患するリスクのあるヒト対象を予防または処置するための組成物であって、好適な液体担体中に、(i)可溶性ICAM-1(sICAM-1)および/またはICAM-1阻害剤、(ii)リゾチーム、(iii)ラクトフェリン、(iv)シアル酸および/またはその誘導体(例えば、シアリルラクトース)を含み、さらに(v)ノイラミニダーゼ阻害剤を含んでもよい、組成物が提供される。これらの実施形態による組成物のいずれも、過酸化亜鉛、銅および銀のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。これらの実施形態による組成物のいずれも、カラギーナンをさらに含むことができる。
【0005】
これらの実施形態による組成物のいずれも、IgA、IgGおよびIgMのうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。組成物は、ウスベニタチアオイ抽出物、キンセンカ(Calendula)抽出物、柑橘果皮抽出物、ハチミツ抽出物、ローズマリー抽出物、ミルラ抽出物、ヘリクリサム(Helichrysum)抽出物、クズウコン抽出物、ニームオイル、ビタミンC、ビタミンEおよびグレープフルーツ種子抽出物からなる群から選択される、1つまたは複数の成分をさらに含むことができる。担体は水性とすることができ、数例を挙げると、非限定的に、希釈剤、緩衝剤、pH調整剤(例えば、クエン酸など)、増粘剤および懸濁化剤(例えば、アカシアガム、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マイクロクリスタリンセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、レオロジー改質剤、保存剤(例えば、フェネチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、EDTAナトリウムなど)、等張性調整剤(例えば、塩化ナトリウム、ポリオール、スクロースなど)、保湿剤(例えば、グリセリン)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート(ポリソルベート80など)、パルミチン酸スクロース、クエン酸ステアリン酸グリセリル、アセチル化水素化植物性グリセリドなど)、および味覚改変剤を含めた、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。いずれの賦形剤も、ヒト粘膜および上皮と適合可能であるべきであり、粘膜または上皮に対して、過度の乾燥または刺激を引き起こすべきではない。賦形剤はまた、水が体温で蒸発する傾向があるということのためのであり、こうして、溶液中の可溶性構成成分を維持する一助となる二次溶媒が含まれてもよい。担体としては、非限定的に、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、水素化デンプン加水分解物、イソマルト、マルチトールなどを含めた、C2-C8ポリオールなどのポリオールを挙げることができる。本組成物は、エタノールなどのある量のアルコールを含んでもよいが、但し、粘膜を刺激しないまたは乾燥しない量であることを条件とする。一部の実施形態では、本組成物はエタノールを含まない。一実施形態では、担体は、(体積/体積)、(質量/体積)または(質量/質量)基準で、約1~95%、または約5~50%、または約10~40%、または約15~35%、または約20~30%の1,3-プロパンジオールを含む、水性担体である。一部の実施形態では、本組成物は、約1~1,500、または約5~1,000、または約10~750、または約20~500センチストークス(mm2/秒)の範囲の動粘度を有することができる。本組成物は、ニュートンまたは非ニュートンレオロジーを有することができる。本組成物は、これらが、スプレーノズルを容易に流れる、およびせん断時に好適な液滴サイズのミストを容易に形成するが、インシチュで濃厚であり、鼻腔または口腔からのクリアランスに耐性があるフィルムを粘膜上に形成して、その結果、粘膜に接触している病原体を中和する程十分な時間、粘膜上に活性物が留まるよう、例えば、ずり流動性および/またはチキソトロピーであってもよい。通常、本組成物は、適用後、鼻腔または口腔の粘膜上での少なくとも1分間、より好ましくは、少なくとも5、10、15、20、25または30分間の滞留時間を有する好適な粘度となる。本組成物は、溶液中で活性物を維持するために、水および揮発性溶媒の蒸発を阻害するのに十分なバリア機能を有しながらも、ビリオンおよび他の病原体が、フィルムを貫通して活性成分に接触するようになるために、半浸透性であるべきである。
【0006】
一部の実施形態では、本組成物は、
(i)約0.00000001質量%~10質量%のICAM-1(例えば、可溶性ICAM-1)、
(ii)0質量%(または約0.00000001質量%)~約10質量%のノイラミニダーゼ阻害剤、
(iii)約0.00000001質量%~約10質量%のシアル酸(例えば、シアリルラクトース、2,3'-シアリルラクトースおよび/または2,6'シアリルラクトース)、
(iv)約0.00000001質量%~約10質量%のリゾチーム、および
(v)約0.00000001質量%~約10質量%のラクトフェリン(例えば、アポラクトフェリン)、
薬学的に許容される担体を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
【0007】
一部の実施形態では、本組成物は、
(i)約0.000001質量%~1質量%(または約0.1質量%)のICAM-1(例えば、可溶性ICAM-1)、および/または
(ii)0質量%(または約0.000001質量%)~約1質量%(または約0.1質量%)のノイラミニダーゼ阻害剤、および/または
(iii)約0.000001質量%~約0.001質量%(または約0.01質量%)のシアル酸(例えば、シアリルラクトース、2,3'-シアリルラクトースおよび/または2,6'シアリルラクトース)、および/または
(iv)約0.0001質量%~約5質量%(または約1質量%)のリゾチーム、および/または
(v)約0.00005質量%~約5質量%(または約0.5質量%)のラクトフェリン(例えば、アポラクトフェリン)、
薬学的に許容される担体を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
【0008】
一部の実施形態では、本組成物は、
(i)約0.0005質量%~0.05質量%のICAM-1(例えば、可溶性ICAM-1)、および/または
(ii)0質量%(または約0.005質量%)~約0.05質量%のノイラミニダーゼ阻害剤、および/または
(iii)約0.000005質量%~約0.05質量%のシアル酸(例えば、シアリルラクトース、2,3'-シアリルラクトースおよび/または2,6'シアリルラクトース)、および/または
(iv)約0.0025質量%~約0.25質量%のリゾチーム、および/または
(v)約0.00005質量%~約0.1質量%のラクトフェリン(例えば、アポラクトフェリン)、
薬学的に許容される担体を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
本医薬組成物は、呼吸器感染を防止または処置する方法において使用することができる。呼吸器感染は、ヒトライノウイルスおよび/またはヒトインフルエンザウイルスによるものとすることができる。一部の実施形態では、ヒトライノウイルス(HRV)からの呼吸器感染を防止または処置するための組成物は、
(i)約0.00000001質量%~約10質量%の可溶性ICAM-1、
(ii)約0.000005質量%~約10質量%のリゾチーム、および
(iii)約0.00000025質量%~約10質量%のラクトフェリン、
ならびに薬学的に許容される担体
を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
【0009】
一部の実施形態では、ヒトライノウイルス(HRV)からの呼吸器感染を防止または処置するための組成物は、
(i)約0.000001質量%~1質量%(または約0.1質量%)の可溶性ICAM-1、
(ii)約0.0001質量%~約5質量%(または約1質量%)のリゾチーム、および
(iii)約0.00005質量%~約5質量%(または約0.5質量%)のラクトフェリン
ならびに薬学的に許容される担体
を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
【0010】
一部の実施形態では、ヒトライノウイルス(HRV)からの呼吸器感染を防止または処置するための組成物は、
(i)約0.0005質量%~0.05質量%の可溶性ICAM-1、および/または
(ii)約0.0025質量%~約0.25質量%のリゾチーム、および/または
(iii)約0.00005質量%~約0.1質量%のラクトフェリン
ならびに薬学的に許容される担体
を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
【0011】
一部の実施形態では、ヒトインフルエンザウイルスからの呼吸器感染を防止または処置するための組成物は、
(i)約0.0000001質量%~約10質量%の前記シアル酸(例えば、シアリルラクトース)、
(ii)約0.00000001質量%~約10質量%の前記リゾチーム、
(iii)約0.00000001質量%~約10質量%の前記ラクトフェリン、および
(iv)0質量%(または約0.00000001質量%)~約10質量%のノイラミニダーゼ阻害剤
ならびに薬学的に許容される担体
を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
【0012】
一部の実施形態では、ヒトインフルエンザウイルスからの呼吸器感染を防止または処置するための組成物は、
(i)約0.000005質量%~約0.05質量%の前記シアル酸(例えば、シアリルラクトース)、
(ii)約0.0001質量%~約5質量%(または約1%)の前記リゾチーム、
(iii)約0.00005質量%~約5質量%(または約0.5質量%)の前記ラクトフェリン、および
(v)0質量%(または約0.01質量%)~約10質量%のノイラミニダーゼ阻害剤、
ならびに薬学的に許容される担体
を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
一部の実施形態では、ヒトインフルエンザウイルスからの呼吸器感染を防止または処置するための組成物は、
(i)約0.000005質量%~約0.05質量%の前記シアル酸(例えば、シアリルラクトース)、および/または
(ii)約0.0025質量%~約0.25質量%の前記リゾチーム、および/または
(iii)約0.00005質量%~約0.1質量%の前記ラクトフェリン、および/または
(vi)0質量%(または約0.000001質量%)~約1質量%(または約0.1質量%)のノイラミニダーゼ阻害剤
ならびに薬学的に許容される担体
を含み、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。
【0013】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、約0.5~5000μg/mL(または約1~1000μg/mLまたは約5~500μg/mL)のラクトフェリン(例えば、アポラクトフェリン)を含む、水溶液または懸濁液となる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、約0.25~10000μg/mL(または約1~5000μg/mLまたは約25~2500μg/mL)のリゾチームを含む、水溶液または懸濁液となる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、約0.01~500μg/mL(または約0.1~100μg/mLまたは約0.5~50μg/mL)のICAM-1(例えば、可溶性ICAM-1)を含む、水溶液または懸濁液となる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、約0.01~2000μg/mL(または約0.1~1000μg/mLまたは約0.5~750μg/mL)のシアル酸(例えば、シアリルラクトース)を含む、水溶液または懸濁液となる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、約0.005~1000μg/mL(または約0.5~500μg/mL、または約0.25~375μg/mL)の3'シアリルラクトースおよび/または約0.005~1000μg/mL(または約0.5~500μg/mL、または約0.25~375μg/mL)の6'シアリルラクトースを含む、水溶液または懸濁液となる。
【0014】
本発明による医薬組成物は、鼻腔スプレー、点鼻薬、口腔スプレー、口腔リンス液またはロゼンジ剤の形態であってもよい。本医薬組成物の担体は、適用後、鼻粘膜および/または口腔粘膜上での少なくとも1分間、または少なくとも5分間、または少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間、または少なくとも25分間、または少なくとも30分間の組成物の滞留時間をもたらすよう選択することができる。一部の実施形態では、鼻粘膜または口腔粘膜に適用するための組成物は、約1~99%(v/v)の水、または約60~90%(v/v)の水、および約10~40%(または、20~30%)(v/v)のポリオールを含む液体担体中に分散した、1つまたは複数の抗ウイルス剤および/または抗菌剤を含む。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、約5~50%(v/v)、または約10~40%(v/v)、または約15~35%(v/v)、または約20~30%(v/v)の1,3-プロパンジオールを含む水溶液である。本組成物は、粘膜に噴霧される、または粘膜上で摂取されることが可能となり得、適用後、粘膜を実質的に刺激するまたは乾燥させることなく、少なくとも5分間(または、少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間、または少なくとも25分間または少なくとも30分間)、粘膜上に留まるように適合されている。
【0015】
様々なウイルス感染の予防および/または処置のための方法が提供される。一部の実施形態では、ヒトライノウイルス感染の予防および/または処置のための方法は、それを必要とする個体の鼻粘膜および/または口腔粘膜に、本明細書に記載されている組成物のいずれかを適用するステップを含む。一部の実施形態では、それを必要とする個体の鼻粘膜および/または口腔粘膜は、それらに接触しているヒトライノウイルスを有する。
【0016】
一態様では、本発明は、呼吸器感染に罹患している、またはこれに罹患するリスクのある対象を防止または処置するための医薬組成物であって、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物、ならびに担体、エモリエント、被覆剤、保湿剤、ポリオール、乳化剤、保存剤、増粘剤または懸濁化剤、界面活性剤、pH調整剤、等張剤およびエッセンシャルオイルからなる群から選択される1種または複数の成分を含む基礎混合物を含む医薬組成物を提供する。実施形態では、抗菌または抗ウイルス化合物は、抗体(IgA、IgGまたはIgMなど)、可溶性ICAM-1、ICAM-1阻害剤、シアル酸、ノイラミニダーゼ阻害剤、ラクトフェリン、リゾチーム、亜鉛、亜鉛化合物、銀、銀化合物、銅、銅化合物およびそれらの組合せからなる群から選択される1種または複数のものである。実施形態では、ノイラミニダーゼ阻害剤は、ケルセチン、オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビルおよびペラミビルからなる群から選択される。実施形態では、ICAM-1阻害剤は、抗ICAM-1抗体、サイトカイン、CD11a、エズリン(EZR)、CD18、グリチルレチン酸、ピロリジンジチオカルバメート、NFkB活性化阻害剤、複素環式チアゾール、リポ酸、エファリズマブ、4-[(4-メチルフェニル)チオ]チエノ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、シリビニン、スチルベン、(+)-エピガロイル-カテキン-ガレート[(+)-EGCG]、およびそれらの組合せからなる群から選択される。実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、可溶性ICAM-1およびシアル酸(例えば、シアリルラクトース、3'シアリルラクトースおよび/または6'シアリルラクトース)を含む。実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、ラクトフェリン、リゾチーム、ノイラミニダーゼ阻害剤、IgA、IgG、IgM、過酸化亜鉛(ZnO2)、銅および銀を含む。実施形態では、呼吸器感染は、ライノウイルス感染、インフルエンザウイルス感染、真菌感染および細菌感染からなる群から選択される。実施形態では、1つまたは複数の成分は、ウスベニタチアオイ抽出物、キンセンカ抽出物、柑橘果皮抽出物、ハチミツ抽出物、ローズマリー抽出物、ミルラ(myrhh)抽出物、ヘリクリサム抽出物、クズウコン抽出物、ニームオイル、アルガン油、ビタミンC、ビタミンE、グレープフルーツ種子抽出物およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0017】
一態様では、本発明は、呼吸器感染に罹患している、またはこれに罹患するリスクのある対象における、呼吸器感染を予防または処置する方法であって、対象が呼吸器感染に罹患している、またはこれに罹患するリスクのあることを決定するステップ、ならびに1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物、および担体エモリエント、被覆剤、保湿剤、乳化剤およびエッセンシャルオイルからなる群から選択される1つまたは複数の成分を含む基礎混合物を含む、本発明による組成物を投与するステップを含む方法を提供する。実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、可溶性ICAM-1を含む。実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、シアル酸またはその誘導体(例えば、シアリルラクトース)を含む。一実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、ラクトフェリン(例えば、アポラクトフェリン)を含む。一実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、リゾチームを含む。一実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、ノイラミニダーゼ阻害剤を含む。一実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、IgA、IgGおよび/またはIgMを含む。一実施形態では、1つまたは複数の抗菌または抗ウイルス化合物は、過酸化亜鉛(ZnO2)、銅および/または銀を含む。本組成物は、経口、局所、経鼻およびそれらの組合せを含めた、任意の好適な経路によって投与することができる。実施形態では、本組成物は、鼻膜に投与される。実施形態では、本組成物は、アトマイザー、吸入器、ネブライザー、スプレーボトルおよびスプレーポンプからなる群から選択される装置を使用して投与される。本組成物は、噴射剤を含んでもよく、または噴射剤を含まなくてもよい。
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細説明および添付の特許請求の範囲を参照することにより、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】A16型ライノウイルスに感染した組織の完全性に対する、500マイクログラム/ml(HRV1-1)、50マイクログラム/ml(HRV1-2)、および5マイクログラム/ml(HRV1-3)のアポラクトフェリン処置の効果を例示する図である。TEERは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図2】A16型ライノウイルスに感染した組織の完全性に対する、2500マイクログラム/ml(HRV2-1)、250マイクログラム/ml(HRV2-2)、および25マイクログラム/ml(HRV2-3)のリゾチーム処置の効果を例示する図である。TEERは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図3】A16型ライノウイルスに感染した組織の完全性に対する、50マイクログラム/ml(HRV3-1)、5マイクログラム/ml(HRV3-2)、および0.5マイクログラム/ml(HRV3-3)の可溶性ICAM-1処置の効果を例示する図である。TEERは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図4】A16型ライノウイルスに感染した組織の完全性に対する、表5に示した3つの異なる用量(HRV4-1、HRV4-2、およびHRV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、および可溶性ICAM-1の組合せによる処置の効果を例示する図である。TEERは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図5】A16型ライノウイルスに感染した細胞のLDH放出に対する、500マイクログラム/ml(HRV1-1)、50マイクログラム/ml(HRV1-2)、および5マイクログラム/ml(HRV1-3)のアポラクトフェリン処置の効果を例示する図である。細胞傷害は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図6】A16型ライノウイルスに感染した細胞のLDH放出に対する、2500マイクログラム/ml(HRV2-1)、250マイクログラム/ml(HRV2-2)、および25マイクログラム/ml(HRV2-3)のリゾチーム処置の効果を例示する図である。細胞傷害は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図7】A16型ライノウイルスに感染した細胞のLDH放出に対する、50マイクログラム/ml(HRV3-1)、5マイクログラム/ml(HRV3-2)、および0.5マイクログラム/ml(HRV3-3)の可溶性ICAM-1処置の効果を例示する図である。細胞傷害は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図8】A16型ライノウイルスに感染した細胞のLDH放出に対する、表5に示した3つの異なる用量(HRV4-1、HRV4-2、およびHRV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、および可溶性ICAM-1の組合せの効果を例示する図である。細胞傷害は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図9】線毛運動に対する、500マイクログラム/ml(HRV1-1)、50マイクログラム/ml(HRV1-2)、および5マイクログラム/ml(HRV1-3)のアポラクトフェリン処置の効果を例示する図である。線毛運動周波数は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図10】2500マイクログラム/ml(HRV2-1)、250マイクログラム/ml(HRV2-2)、および25マイクログラム/ml(HRV2-3)のリゾチーム処置を伴う上皮細胞の線毛運動周波数に対する、A16型ライノウイルス感染の影響を例示する図である。線毛運動周波数は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図11】50マイクログラム/ml(HRV3-1)、5マイクログラム/ml(HRV3-2)、および0.5マイクログラム/ml(HRV3-3)の可溶性ICAM-1処置を伴う上皮細胞の線毛運動周波数に対する、A16型ライノウイルス感染の影響を例示する図である。線毛運動周波数は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図12】表5に示した3つの異なる用量(HRV4-1、HRV4-2、およびHRV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、および可溶性ICAM-1の組合せを伴う上皮細胞の線毛運動周波数に対する、A16型ライノウイルス感染の影響を例示する図である。線毛運動周波数は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図13】HRV処置を伴う上皮細胞の粘膜線毛クリアランスに対する、A16型ライノウイルス感染の影響を例示する図である。粘膜線毛クリアランスは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図14】500マイクログラム/ml(HRV1-1)、50マイクログラム/ml(HRV1-2)、および5マイクログラム/ml(HRV1-3)のアポラクトフェリン処置を伴うA16型ライノウイルス感染のゲノムコピー数を例示する図である。ウイルス負荷は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の3.5、24、および48時間後において測定した。
図15】2500マイクログラム/ml(HRV2-1)、250マイクログラム/ml(HRV2-2)、および25マイクログラム/ml(HRV2-3)のリゾチーム処置を伴うA16型ライノウイルス感染のゲノムコピー数を例示する図である。ウイルス負荷は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の3.5、24、および48時間後において測定した。
図16】50マイクログラム/ml(HRV3-1)、5マイクログラム/ml(HRV3-2)、および0.5マイクログラム/ml(HRV3-3)の可溶性ICAM-1処置を伴うA16型ライノウイルス感染のゲノムコピー数を例示する図である。ウイルス負荷は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の3.5、24、および48時間後において測定した。
図17】表5に示した3つの異なる用量(HRV4-1、HRV4-2、およびHRV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、および可溶性ICAM-1の組合せを伴うA16型ライノウイルス感染のゲノムコピー数を例示する図である。ウイルス負荷は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の3.5、24、および48時間後において測定した。
図18】500マイクログラム/ml(HRV1-1)、50マイクログラム/ml(HRV1-2)、および5マイクログラム/ml(HRV1-3)のアポラクトフェリン処置を伴う頂端部培地に由来するELLAアッセイにより測定されるムチン量、ならびにMucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)におけるA16型ライノウイルス感染を例示する図である。
図19】2500マイクログラム/ml(IAV2-1)、250マイクログラム/ml(HRV2-2)、および25マイクログラム/ml(HRV2-3)のリゾチーム処置を伴う頂端部培地に由来するELLAアッセイにより測定されるムチン量、ならびにMucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)におけるA16型ライノウイルス感染を例示する図である。
図20】50マイクログラム/ml(HRV3-1)、5マイクログラム/ml(HRV3-2)、および0.5マイクログラム/ml(HRV3-3)の可溶性ICAM-1処置を伴う頂端部培地に由来するELLAアッセイにより測定されるムチン量、ならびにMucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)におけるA16型ライノウイルス感染を例示する図である。
図21】500マイクログラム/ml(HRV1-1)、50マイクログラム/ml(HRV1-2)、および5マイクログラム/ml(HRV1-3)のアポラクトフェリン処置を伴う頂端部培地に由来するELLAアッセイにより測定されるムチン量、ならびにMucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)におけるA16型ライノウイルス感染を例示する図である。
図22】500マイクログラム/ml(IAV1-1)、50マイクログラム/ml(IAV1-2)、および5マイクログラム/ml(IAV1-3)のアポラクトフェリン処置を伴う組織の完全性に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。TEERは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図23】2500マイクログラム/ml(IAV2-1)、250マイクログラム/ml(IAV2-2)、および25マイクログラム/ml(IAV2-3)のリゾチーム処置を伴う組織の完全性に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。TEERは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図24】各々、327マイクログラム/ml(IAV3-1)、3.27マイクログラム/ml(IAV3-2)、および0.327マイクログラム/ml(IAV3-3)の3’-シアリルラクトース処置および6’シアリルラクトース処置の組合せを伴う組織の完全性に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。TEERは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図25】表5に示した3つの異なる用量(IAV4-1、IAV4-2、およびIAV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、およびシアリルラクトースの組合せを伴う組織の完全性に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。TEERは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図26】500マイクログラム/ml(IAV1-1)、50マイクログラム/ml(IAV1-2)、および5マイクログラム/ml(IAV1-3)のアポラクトフェリン処置を伴う上皮細胞からのLDH放出に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。細胞傷害は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図27】2500マイクログラム/ml(IAV2-1)、250マイクログラム/ml(IAV2-2)、および25マイクログラム/ml(IAV2-3)のリゾチーム処置を伴う上皮細胞からのLDH放出に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。細胞傷害は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図28】各々、327マイクログラム/ml(IAV3-1)、3.27マイクログラム/ml(IAV3-2)、および0.327マイクログラム/ml(IAV3-3)の3’-シアリルラクトース処置および6’シアリルラクトース処置の組合せを伴う上皮細胞からのLDH放出に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。細胞傷害は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図29】表5に示した3つの異なる用量(IAV4-1、IAV4-2、およびIAV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、およびシアリルラクトースの組合せを伴う上皮細胞からのLDH放出に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。細胞傷害は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図30】500マイクログラム/ml(IAV1-1)、50マイクログラム/ml(IAV1-2)、および5マイクログラム/ml(IAV1-3)のアポラクトフェリン処置を伴う上皮細胞の線毛運動周波数に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。線毛運動周波数は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図31】2500マイクログラム/ml(IAV2-1)、250マイクログラム/ml(IAV2-2)、および25マイクログラム/ml(IAV2-3)のリゾチーム処置を伴う上皮細胞の線毛運動周波数に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。線毛運動周波数は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図32】各々、327マイクログラム/ml(IAV3-1)、3.27マイクログラム/ml(IAV3-2)、および0.327マイクログラム/ml(IAV3-3)の3’-シアリルラクトース処置および6’シアリルラクトース処置の組合せを伴う上皮細胞の線毛運動周波数に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。線毛運動周波数は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図33】表5に示した3つの異なる用量(IAV4-1、IAV4-2、およびIAV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、およびシアリルラクトースの組合せを伴う上皮細胞の線毛運動周波数に対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。線毛運動周波数は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図34】IAV処置を伴う上皮細胞の粘膜線毛クリアランスに対する、A H1N1型インフルエンザ感染の影響を例示する図である。粘膜線毛クリアランスは、MucilAir(商標)3D培地上の接種の48時間後(2日後)においてモニタリングした。
図35】500マイクログラム/ml(IAV1-1)、50マイクログラム/ml(IAV1-2)、および5マイクログラム/ml(IAV1-3)のアポラクトフェリン処置を伴うA H1N1型インフルエンザ感染のゲノムコピー数を例示する図である。ウイルス負荷は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の3.5、24、および48時間後において測定した。
図36】2500マイクログラム/ml(IAV2-1)、250マイクログラム/ml(IAV2-2)、および25マイクログラム/ml(IAV2-3)のリゾチーム処置を伴うA H1N1型インフルエンザ感染のゲノムコピー数を例示する図である。ウイルス負荷は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の3.5、24、および48時間後において測定した。
図37】各々、327マイクログラム/ml(IAV3-1)、3.27マイクログラム/ml(IAV3-2)、および0.327マイクログラム/ml(IAV3-3)の3’-シアリルラクトース処置および6’シアリルラクトース処置の組合せを伴うA H1N1型インフルエンザ感染のゲノムコピー数を例示する図である。ウイルス負荷は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の3.5、24、および48時間後において測定した。
図38】表5に示した3つの異なる用量(IAV4-1、IAV4-2、およびIAV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、およびシアリルラクトースの組合せを伴うA H1N1型インフルエンザ感染のゲノムコピー数を例示する図である。ウイルス負荷は、MucilAir(商標)3D培地上の接種の3.5、24、および48時間後において測定した。
図39】500マイクログラム/ml(IAV1-1)、50マイクログラム/ml(IAV1-2)、および5マイクログラム/ml(IAV1-3)のアポラクトフェリン処置を伴う頂端部培地に由来するELLAアッセイにより測定されるムチン量、ならびにMucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)におけるA H1N1型インフルエンザ感染を例示する図である。
図40】2500マイクログラム/ml(IAV2-1)、250マイクログラム/ml(IAV2-2)、および25マイクログラム/ml(IAV2-3)のリゾチーム処置を伴う頂端部培地に由来するELLAアッセイにより測定されるムチン量、ならびにMucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)におけるA H1N1型インフルエンザ感染を例示する図である。
図41】各々、327マイクログラム/ml(IAV3-1)、3.27マイクログラム/ml(IAV3-2)、および0.327マイクログラム/ml(IAV3-3)の3’-シアリルラクトース処置および6’シアリルラクトース処置の組合せを伴う頂端部培地に由来するELLAアッセイにより測定されるムチン量、ならびにMucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)におけるA H1N1型インフルエンザ感染を例示する図である。
図42】表5に示した3つの異なる用量(IAV4-1、IAV4-2、およびIAV4-3)のアポラクトフェリン、リゾチーム、およびシアリルラクトースの組合せを伴う頂端部培地に由来するELLAアッセイにより測定されるムチン量、ならびにMucilAir(商標)3D培地上の接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)におけるA H1N1型インフルエンザ感染を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、以下の詳細説明、およびその中に含まれている実施例を参照することによって一層容易に理解することができる。本方法および技法を開示して記載する前に、本開示は、本明細書に記載されている具体的な分析方法および合成方法に限定されないことが、当業者により理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載するためだけのものであり、限定する意図するものではないこともやはり理解されたい。特に定義されない限り、本明細書において使用される技術的および科学的用語はすべて、この開示が属する当業者によって一般的に理解される意味を有する。
「薬剤」または「治療剤」とは、任意の低分子化学化合物、抗体、核酸分子、またはポリペプチドもしくはそれらの断片であることを意味する。「治療剤」とは、本明細書に記載されている呼吸器感染を防止または処置するよう特化されている任意の組成物を意味する。
「改善する」とは、呼吸器疾患またはそれらの症状の発症または進行を低減する、抑制する、弱める、減少させる、抑止するまたは安定化させることを意味する。
【0020】
「アナログ」とは、同一ではないが、類似の機能的特徴または構造的特徴を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチドアナログは、天然ポリペプチドと比べて、アナログの機能を増強するある種の生化学的修飾を有すると同時に、対応する天然ポリペプチドの生物活性を保持している。このような生化学的修飾により、例えばリガンド結合性を改変することなく、アナログのプロテアーゼ耐性、膜浸透性または半減期を向上することができる。アナログは、非天然アミノ酸を含んでもよい。
本明細書で使用する場合、用語「予防」とは、感染(例えばウイルス感染など)を防止する、感染の程度を低下させる、または感染速度を遅延させることを指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、「干渉性RNA」とは、RNA干渉を媒介することにより遺伝子発現を、直接または間接的に(すなわち、変換時)、阻害するまたは下方調節することが可能な、任意の二本鎖または一本鎖RNA配列を指す。干渉性RNAには、以下に限定されないが、低分子干渉RNA(「siRNA」)および小ヘアピンRNA(「shRNA」)が含まれる。「RNA干渉」は、配列互換性メッセンジャーRNA転写の選択的分解を指す。
本明細書で使用する場合、「shRNA」(小ヘアピンRNA)とは、アンチセンス領域、ループの一部およびセンス領域を含むRNA分子を指し、この場合、センス領域は、アンチセンス領域と塩基対を形成して、二重鎖ステムを形成する相補性ヌクレオチドを有する。転写後プロセシングの後に、小ヘアピンRNAは、RNアーゼIIIファミリーメンバーである、ダイサーという酵素によって媒介される切断事象によって、低分子干渉RNAに変換される。
本明細書で使用する場合、「RNAi」(RNA干渉)とは、配列相同性を有する遺伝子の発現を抑制する小さな二本鎖RNA分子によって開始される、転写後サイレンシング機構を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、「対照と比較して変化した」試料または対象は、正常の、未処置のもしくは対照の試料または対象に由来する試料とは統計学的に異なるレベルで検出される、分析的または診断的または治療的指標となるレベルを有するものとして理解される。対照試料としては、例えば、培養物中の細胞、1つもしくは複数の実験室試験動物、または1名もしくは複数名のヒト対象が挙げられる。対照試料を選択して試験する方法は、当業者の能力の範囲内にある。分析物質は、細胞もしくは生物(例えば、抗体、病原性ペプチドまたは粒子など)、またはポーター構築物によって産生される物質(例えば、β-ガラクトシラーゼまたはルシフェラーゼ)によって、特徴的に発現されるまたは産生される天然物質とすることができる。使用される検出方法に応じて、変化の量および測定値は、様々となり得る。統計的有意性の決定は、当業者の能力の範囲内にある。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「共投与すること」または「共投与」などは、2種以上の薬剤(例えば、抗菌剤および抗ウイルス剤)、化合物、治療剤などを同時にまたはほぼ同時に投与する行為を指す。本開示の様々な薬剤、例えば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬または免疫療法剤を投与する順序または並びは、様々とすることができ、いかなる特定の並びに制限されない。共投与することはまた、2種以上の薬剤が、身体の異なる領域に、または異なる送達機構により投与される状況、例えば、第1の薬剤が経鼻投与され、第2の薬剤が全身的に投与される、またはその反対となる状況を指すことができる。共投与することはまた、2種以上の薬剤が、同じ送達機構により投与されること、例えば、第1の薬剤が経鼻投与され、第2の薬剤が経鼻投与されることを指すことができる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有している(containing)」および「有する(having)」などは、米国特許法により定義されているオープンエンドなものであり、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」などを意味することができる。用語「実質的になる(consisting essentially of)」または「実質的になる(consists essentially)」などは、米国特許法においてそれらの用語に帰する意味を有し、オープンエンドであり、列挙されているものの基本的または新規な特徴が、列挙されているもの以外の存在によって変化を受けない限り、列挙されているもの以外の存在を認めるが、先行技術の実施形態を除外する。
【0025】
「細胞に接触させる」とは、本明細書では、薬剤が細胞(例えば、処置される鼻膜細胞)と相互作用することができる、および/または細胞により取り込まれ得る、および細胞に影響を及ぼすことができるよう、細胞に薬剤を供給することとして理解される。薬剤(例えば、抗菌剤または抗ウイルス剤)は、細胞に直接、送達することができる(例えば、経鼻送達向けに、ゲル製剤またはエアゾール製剤に薬剤を添加することによって)。当業者は、対象への治療剤の投与は、該治療剤を対象の細胞または組織に接触させることを含むことを容易に理解するであろう。
本明細書で使用する場合、用語2種以上の薬剤が一緒に「結合されている」と参照されるような「結合されている」という用語は、2種以上の薬剤の間の、共有結合性会合またはそうでない場合、安定な会合を指す。例えば、治療剤は、共有結合、共有結合により拘束されたリンカー部分、またはイオン性相互作用もしくは水素結合による非共有結合によって、抗菌剤と結合し得る。一緒に結合されている1種または複数の薬剤は、実質的にそれらの同じ独立した機能および特徴を保持する。例えば、治療剤は、別の薬剤と結合されると、あたかも独立しているかのように、その同じ活性を保持することができる。
「サイクル」または「薬物サイクル」とは、規定された期間の繰り返し投与の管理を意味し、これには、数分間から数時間まで、数日まで、数週間まで、数か月まで、または数年にさえ及ぶことがある。
「サイトカイン」とは、局所的に作用し、個体の免疫応答をモジュレートするホルモンを意味する。
【0026】
本明細書で使用する場合、「検出する」、「検出」などは、試料の1つまたは複数の特徴を決定するために行われるアッセイ、例えば、検出される分析対象の存在、非存在または量を特定することを含むことが理解される。例えば、検出は、試料中の具体的な分析対象、または試料中の薬剤の活性の同定を含むことができる。検出は、PCR、免疫アッセイ(例えば、ELISA、ELLAなど)、顕微鏡法、病原体チャレンジなどによる、核酸またはタンパク質(例えば、抗体、サイトカインなど)の存在の決定を含むことができる。試料中で検出される分析対象の量または活性は、全くないことがあり、またはアッセイもしくは方法の検出レベル未満となることがある。
「疾患」とは、細胞、組織または器官の正常な機能に損傷をもたらす、またはそれらを妨害する、任意の状態または障害を意味する。例示的な疾患は、呼吸器感染である。
【0027】
用語「有効量」、「治療有効量」または「薬学的有効量」とは、本明細書で使用する場合、障害、例えばがんを防止または処置するのに十分な薬剤または化合物の量を指す。
一部の実施形態では、結果は、障害の徴候、症状もしくは原因の低減および/または緩和、あるいは生物系の任意の他の所望の改変である。例えば、治療のための「有効量」は、疾患/障害(例えば、呼吸器感染)の臨床的に有意な低減を実現するために必要な、本明細書において開示されている化合物を含む、組成物の量とすることができる。本開示の薬剤もしくは本開示の薬剤の組合せの「有効量」または治療有効量はまた、感染を実質的に縮小するもしくは解消する、またはその発生を防止するのに有効な、そのような量または用量とすることもできる。適切な「有効」量は、いずれの個体の場合でも、任意の好適な技法(例えば、用量増大試験)を使用して決定され、医師の判断に委ねられる。しかし、好適な投与量範囲は、当業者によって容易に決定可能である。
【0028】
有効な用量を供給するために、2回分以上の用量が必要とされることがある。1つの集団における、有効用量は、すべての集団に十分であることがあり、そうでないことがあることが理解される。したがって、治療剤の投与に関すると、治療剤は、臨床的に適切な投与により、少なくとも統計学的に有意性のある比率の対象にとって有益な効果(疾患発症の防止、症状の改善、治癒、疾患徴候もしくは症状の低減、寿命の延長、生活の質の改善、または特定のタイプの疾患もしくは状態の処置に精通した医師によりポジティブと一般に認識される他の効果など)をもたらす場合、疾患または状態「に対して有効」となり得る。
「増強する」とは、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、またはそれらの間のいずれかの数字のポジティブな改変を意味する。
本明細書で使用する場合、「免疫アッセイ」は、少なくとも1種の抗体のある抗原への特異的結合に基づく検出方法、例えばELISA、ELLA、RIA、ウエスタンブロットなどである。
本明細書で使用する場合、「免疫原」、「免疫原性」などは、少なくとも1つの生物における、免疫応答、例えば、抗体をベースとするまたは細胞が媒介する免疫応答を促進することができる物質を指す。
「免疫原性組成物」とは、対象において、免疫応答の誘発またはモジュレートを可能にする分子を含む組成物を意味する。このような免疫応答は、予防的または治療的免疫応答であってもよい。
本明細書で使用する場合、用語「免疫療法剤」とは、宿主の免疫系をモジュレートすることが可能な、任意の薬剤、化合物または生物剤を指す。例えば、免疫療法剤は、呼吸器感染に対して免疫系の刺激を誘発することが可能である。
【0029】
本明細書で使用する場合、「免疫を誘発する」は、抗原に対して生じた任意の免疫応答を指す。実施形態では、免疫は、感染性病原体に対する抗体により媒介され、これは、脊椎動物(例えば、ヒト)によって示され、感染を防止もしくは改善する、または少なくとも1つのそれらの症状を軽減する。本開示の免疫原性組成物は、例えば、浮遊病原体/感染性病原体を中和する、感染性病原体が細胞に進入するのを阻止する、感染性病原体の複製を阻止する、ならびに/または感染および破壊から宿主細胞を防御する抗体の産生を刺激することができる。この用語はまた、脊椎動物(例えば、ヒト)によって示される、感染性病原体に対して、T-リンパ球および/または他の白血球により媒介される免疫応答であって、感染を防止もしくは改善する、またはそれらの症状の少なくとも1つを軽減する、免疫応答を指すことができる。
【0030】
用語「単離された」とは、本明細書で使用する場合、以下に限定されないが、抽出、遠心分離、クロマトグラフィー分離(すなわち、例えば、薄層クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィー)を含めた、実験室での精製手順を受ける、任意の組成物、分子または混合物を指す。通常、このような精製手順は、物理的、化学的または電位特性に基づいた、単離組成物、分子または混合物をもたらす。手順の選択に応じて、単離組成物、分子または混合物は、類似した化学的性質を有する、他の組成物、化合物または混合物を含有することがある。例えば、単離組成物、分子または混合物は、類似した化学的性質を有する組成物または混合物を、1~20%、1~10%または1~5%の間で含有することができる。
本明細書で使用する場合、1種または複数の治療剤の局所投与または共投与のように、用語「局所」または「局所的に」とは、感染の部位に最も近い身体部位(例えば、鼻膜)もしくは感染部位の近傍に、感染部位に隣接してもしくは直ぐ近傍に、感染の周囲もしくはそれに接触させて、または感染組織の範囲内もしくはその内側に、治療剤を送達することを指す。局所投与は、一般に、全身性投与経路を除外する。
【0031】
本明細書で使用する場合、細胞に送達するための核酸のような「核酸」は、少なくとも2つの塩基-糖-リン酸組合せをつなぎ合わせたものを指す、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドとしての、当分野でのその通常の意味によって理解される。ヌクレオチドは、核酸ポリマーのモノマー単位である。この用語は、オリゴヌクレオチドメッセンジャーRNAの形態であるデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)、アンチセンス、プラスミドDNA、一対のプラスミドDNA、ウイルスに由来する遺伝物質などを含む。ポリヌクレオチドは、少なくとも2つのモノマーからなる核酸を含む。アンチセンスポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAの機能を妨害する核酸である。siRNAまたはshRNAは、例えば、標的とされる細胞の核酸(例えば、mRNA、マイクロRNAなど)のスプライシングまたはプロセッシングの後退を促進することにより、活性もしくは翻訳を阻害または撹乱する二本鎖RNAである。本明細書で使用する場合、siRNAおよびshRNAは、二本鎖核酸の少なくとも1本の鎖がハイブリッド形成するRNAの安定性、翻訳またはスプライシングをモジュレートすることができる、任意の二本鎖RNA分子を含む。RNAは当分野において周知であり、例えば、それらのすべてが参照により本明細書に組み込まれている、国際特許公開第2002/044321号、同第2003/099298号、米国特許公開第20050277610号、同第20050244858号;および米国特許第7,297,786号、同第7,560,438号および同第7,056,704号を参照されたい。核酸は、本明細書で使用する場合、非天然ヌクレオチド(天然に発生しない)、例えば、オスホロチオエート(phosphothionate)またはペプチド核酸(直前に引用した特許および特許出願に記載されているものなど)などの、天然ヌクレオチドの誘導体を含むことが理解される。核酸は、治療的または予防的な細胞変化を生じさせるために、細胞に送達することができる。核酸は、タンパク質またはポリペプチド、例えば、細胞または対象において存在しないまたは非機能的なタンパク質を発現することがある。核酸は、一本鎖または二本鎖とすることができ、センスまたはアンチセンスとすることができ、ウイルスベクターなどの文脈では、細胞への核酸取り込みを促進する作用剤(例えば、トランスフェクション試薬)と組み合わせて、裸のDNAとして細胞に送達することができる。核酸は、細胞に内因性の核酸(mRNAまたはマイクロRNA)、または非相同性の核酸(例えば、ウイルス遺伝子などの病原体に由来する核酸)に標的化することができる。核酸の送達は、対象の外側から、対象における細胞の細胞外膜の内部に、核酸を移動させることを意味する。
「得ること」とは、本明細書では、製造する、購入する、合成する、単離する、精製する、または他には所有状態になることとして理解される。
【0032】
用語「薬学的に許容される」とは、本明細書で使用する場合、本明細書において記載されている化合物の生物活性または特性を抑止しない物質(例えば、担体または希釈剤)であって、比較的非毒性の物質を指す(すなわち、この物質は、組成物に含まれる構成成分のいずれかにより、望ましくない生物的作用または有害な相互作用を引き起こすことなく、個体に投与される)。
【0033】
「薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤」という言い回しは、当分野において認識されており、哺乳動物に本開示の化合物を投与するのに好適な、薬学的に許容される物質、組成物または媒体を含む。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」とは、連邦政府または州政府の監督機関により承認されていること、または米国薬局方、欧州薬局方、もしくは哺乳動物、例えばヒトにおける使用のために、一般に認識されている他の薬局方に列挙されているものを意味する。
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に有効なレジメン」とは、1種または複数の治療剤を投与するための全身的計画を指し、これには、治療剤のタイプ、治療剤濃度およびそれらの任意の変化であって、投与されると、感染の処置および/または防止に有効な薬物投与の経過中になされた上記の変化などの態様を含む。このような考慮は、医師の判断に依存し、当業者によって容易に決定可能である。
【0034】
「ポリペプチド」または「ペプチド」は、本明細書で使用する場合、共有結合により連結した(例えば、ペプチド結合)、2つ以上の独立して選択される天然または非天然アミノ酸として理解される。ペプチドは、ペプチド結合により連結した、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多い、天然または非天然アミノ酸を含むことができる。本明細書に記載されているポリペプチドは、完全長タンパク質(例えば、完全に加工されたタンパク質)、およびより短いアミノ酸配列(例えば、天然タンパク質の断片、または合成ポリペプチド断片)を含む。
【0035】
本明細書において提示されている範囲は、該範囲の境界値を含めた、その範囲内の値のすべての略記法であることが理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15,16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50からなる群からの任意の数、数の組合せ、または部分範囲、ならびに例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8および1.9などの上述の整数の間の介在する小数値のすべてを含むことが理解される。部分範囲に関すると、範囲の端点のどちらか一方から拡張する「入れ子の部分範囲」が具体的に企図される。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子の部分範囲は、一方向に、1~10、1~20、1~30および1~40、またはもう一方の方向に、50~40、50~30、50~20および50~10を含むことができる。
「低減する」とは、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、またはそれらの間のいずれかの数字の負の改変を意味する。
「参照」とは、標準または対照状態を意味する。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「レジメン」とは、投与レベル、時機および反復、ならびに互いに異なる薬物または薬剤の比を含めた、薬物または薬剤が投与される方法を特徴付ける様々なパラメータを指す。用語「薬学的に有効なレジメン」とは、所望の治療的結果または効果を実現する特定のレジメンを指す。用語「反復」とは、1つまたは複数の薬剤の一組の投与を繰り返すという、一般的な概念を指す。例えば、薬物Xおよび薬物Yの組合せは、第1の日に、用量Zで、患者に投与(同時にまたはほぼ同時に、任意の順序で共投与)することができる。次に、薬物XおよびYは、第2の日に、用量Zまたは別の用量で再度、投与(同時にまたはほぼ同時に、任意の順序で共投与)することができる。第1の日と第2の日の間の時機は、1日間、または最大7日間、もしくは1週間、もしくは数週間、もしくは数か月のいずれかとすることができる。反復投与はまた、指定数の分数(例えば、10分間、20分間、30分間またはそれより長い)または時間数(例えば、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間)によって隔てられた、同一日に行ってもよい。有効な投与レジメンは、標準的習慣を使用して、当業者、例えば処方医師によって決定可能となり得る。
【0037】
「試料」とは、本明細書で使用する場合、その環境から単離された生物学的物質(例えば、動物に由来する血液または組織、細胞、組織培養物からの馴化培地)を指す。実施形態では、試料は、目的とする感染性病原体またはタンパク質(例えば、抗体、サイトカインなど)などの、分析対象を含有することが疑われる、または含有していることが知られている。試料はまた、組織または体液の部分精製フラクションとすることもできる。参照試料は、疾患もしくは状態の流体を有していないドナーに由来する、または疾患もしくは状態を有する対象における正常組織に由来する、「正常な」試料とすることができる、あるいは対象に対して未処置なもの(例えば、ワクチンにより処置されていない対象)とすることができる。基準試料はまた、試験される薬剤または治療的介入により、細胞または対象に接触させる前の「ゼロ時間点」で採取され得る。
本明細書で使用する場合、用語「選択的に」とは、1つの集団において、別の集団においてよりも、高い頻度で発生する傾向を意味する。
「特異的に結合する」とは、試料、例えば生物試料において、他の分子を実質的に認識しないおよび/または結合しないと同時に、標的(例えば、ポリペプチド、細胞など)に対する認識および結合を意味する。
【0038】
用語「対象」とは、本明細書で使用する場合、呼吸器感染を受けることが可能な任意の生物を指す。このような生物には、以下に限定されないが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット、モルモット、サル、霊長類、非ヒト霊長類、鳥類、爬虫類などが含まれる。
【0039】
特定の疾患、状態または症候群(例えば、呼吸器感染)に「罹患している、または罹患していることが疑われる」対象は、十分な数のリスク要因を有する、あるいは疾患、状態もしくは症候群の徴候または症状の十分な数もしくは組合せを呈し、その結果、その対象が疾患、状態または症候群に罹患していると、有資格個体が診断するかまたはそれを疑う。呼吸器感染に罹患している、または罹患していることが疑われる対象を特定する方法は、当業者の能力の範囲内にある。特定の疾患、状態または症候群に罹患している、および罹患していることが疑われる対象は、必ずしも2つの個別のグループではない。
【0040】
本明細書で使用する場合、特定の疾患または状態に「感受性が高い」または「かかる傾向がある」または「罹患し易い」などとは、遺伝的、環境的、健康および/または他のリスク因子に基づいて、一般集団よりも疾患または状態を発症する可能性が高い個体を指す。疾患を発症する可能性の向上は、約10%、20%、50%、100%、150%、200%またはそれ超の向上とすることができる。
本明細書で使用する場合、用語「処置」、「処置すること」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。この効果は、疾患もしくはそれらの症状を完全に、または部分的に防止するという点で予防的とすることができ、かつ/または疾患に対する部分的または完全な治癒、および/もしくは疾患に起因する有害作用に関して、治療的とすることができる。
用語「糖脂質」とは、本明細書で使用する場合、セラミド、脂肪酸鎖または任意の他の脂質に連結した、少なくとも1つの炭水化物鎖を有する任意の分子を指す。代替として、糖脂質は、恐らく、糖スフィンゴ脂質と呼ぶことができる。
【0041】
本明細書および添付されている特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が特に明白に示さない限り、複数の参照物を含む。したがって、例えば、「遺伝子(a gene)」と言うのは、1つまたは複数の遺伝子と言うことであり、当業者に公知のその等価物などを含む。
具体的に明記しない、または文脈から明白でない限り、本明細書で使用する場合、用語「または」は、包括的であることが理解される。
【0042】
具体的に明記しない限り、または文脈から明白でない限り、本明細書で使用する場合、用語「約」は、当分野において通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差以内として理解される。約は、明記されている値の、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%または0.01%内として理解され得る。文脈から特に明確でない限り、本明細書において提示されている数値はすべて、約という用語によって修飾され得る。
【0043】
特に示さない限り、濃度の言及はすべて、質量対質量、質量対体積または体積対体積基準の指示量を含む。%濃度の言及はいずれも、質量/質量、質量/体積または質量/体積を指すことが理解される。ある種の実施形態は、質量/質量または質量/体積としての濃度によって記載されているが、このような組成物は、質量/質量または質量/体積基準で同じ%を開示していることを理解すべきである。本発明の任意の形態の密度は、0.8g/mL~1.2g/mLの間、例えば0.9g/mL~1.1g/mLの間、または0.95g/mL~1.05g/mLの間とすることができる。
本明細書における変数の任意の定義における、化学基の一覧表の列挙は、任意の単一の群として、または一覧表示された群の組合せとして、そのような変数の定義を含む。本明細書における変数または態様に関する実施形態の列挙は、任意の単一の実施形態として、または任意の他の実施形態との組合せとして、またはそれらの一部としてのそのような実施形態を含む。
他の定義は、本開示全体の文脈において現れる。
本明細書において提供されている、任意の治療剤、組成物または方法は、本明細書において提供されている、他の治療剤、組成物および方法のいずれかのうちの1つまたは複数のものと組み合わせることができる。
【0044】
本開示は、呼吸器感染を防止および処置するための組成物および方法を提供する。本開示は、鼻膜の濾過能を増強するため、ならびに鼻膜の健康を増進するおよび鼻粘膜の濾過能を増強することにより浮遊病原体に対して防御するための方法ならびに組成物を特徴とする。特に、本開示は、インフルエンザウイルスおよびライノウイルス(例えば、インフルエンザおよび風邪をそれぞれ引き起こすウイルス)を含めた、細菌、ウイルスおよび真菌により引き起こされる呼吸器感染を防止および処置する、抗菌、抗ウイルスおよび抗真菌組成物を特徴とする。本開示は、少なくとも一部、抗菌性、抗ウイルス性および/または抗真菌性官能基を含めた組成物は、健康を増進するためおよび鼻膜の濾過能を増強するため、ならびに浮遊病原体に対して防御するために使用することができるという発見に基づいている。その際には、それらの組成物はまた、健康的なPhおよびオスモル濃度を維持する、および健康的な微生物叢の増殖を促すことによるなどの、膜の生理学的健康を維持しなければならない。特定の例示的な実施形態では、本開示は、前鼻孔または前鼻膜内側に最も近くに局所適用するために製剤化された、抗菌および抗真菌濾過組成物に関し、この場合、該組成物は、鼻毛を覆うこともでき、鼻の濾過能を増強することもできる。有利には、本開示は、本明細書に記載されている通り、呼吸器膜または粘膜の化学的性質に悪影響を及ぼさず(および、その天然の濾過能を増強する)、かつ重症な疾患を引き起こす微生物を特異的に標的としこれに対して防御する、鼻および/または経口適用向けの、局所適用される濾過組成物を提供する。
【0045】
本開示はまた、呼吸器膜の天然の濾過特性を増強する、ならびに鼻から身体に進入するまたは呼吸器膜に沿って増殖する微生物、アレルゲンおよび臭気物質の数を低減する方法を提供する。一部の実施形態では、この方法は、口腔、喉、鼻腔の開口部、鼻腔の鼻上皮内側、および/または鼻毛への、抗菌、抗ウイルス、抗真菌および/または臭気中和組成物の局所または吸入または摂取溶液の適用を含む。抗菌性、抗ウイルス性および抗真菌性溶液は、ゲル剤、ローション剤、ロゼンジ剤、蒸気またはエアゾール形態とすることができ、これらの組成物が望ましくない作用を有するのを防止しながらも、その活性物の形態で、活性成分が十分に耐容可能となる基礎媒体中に、鼻の天然濾過能を高めることが意図されている活性成分の組合せを有することができる。本明細書における組成物はまた、例えば、pHおよびオスモル濃度などの、天然の健康な粘膜または唾液の化学的性質を模倣することもできる。成分は、該成分のいずれか単独よりも強力な相乗効果を生成するようバランスを保つことができ、健康的なpHおよびオスモル濃度は、疾患の伝播およびアレルギー反応の可能性に影響を及ぼすことが示されているので、呼吸器膜において、これらのパラメータを維持するようバランスをやはり保つことができる。活性成分は、以下に限定されないが、抗菌特性を有する任意の植物抽出物(以下に限定されないが、果実果皮抽出物およびカラギーナン)、抗菌特性があることが証明されている銀、銅、または亜鉛のマイクロ粒子およびラウリン酸に加えて、組み換えた、天然に由来の、または精製された、ラクトフェリン、リゾチーム、ICAM、陽イオン性ペプチド、グリコシル化ペプチド、シアル酸、ケルセチンまたは他のバイオフラボノイドを含むことができる。様々な実施形態はまた、以下の成分:炭酸水素ナトリウム、活性炭、カカオ脂、シアバター、ビーワックス、植物性バター、グリセリン、ハチミツ、アルギネート、または植物粘物質、およびビタミンC、ビタミンEまたはロスマリン酸などの保存剤のうちの1つまたは複数を含むことができる。様々な実施形態は、上述の活性成分と混合されると、鼻腔の開口部、鼻腔の内側の鼻上皮または鼻毛に適用されると、十分に耐容される製剤であって、かつ活性成分が、適用前の感染またはアレルギーを防止するのに十分な時間、適用域に粘着することを可能にする製剤を生成する活性成分を含むことができる。
【0046】
呼吸機能
今日、世界中で、最も一般的なタイプの伝染性疾患に呼吸器感染がある。ほとんど毎年、中東呼吸器症候群(MERS)、ならびにトリおよびブタインフルエンザなどの、新規の死に至る可能性のある疾患が、世界的中の関心および懸念を引いている。インフルエンザウイルスの新規かつ普通ではない株が、絶え間なく現れており、数か月で世界中に伝染病をもたらすことができる。さらに、ワクチンおよび抗ウイルス技術の現状は、これらの突発的発生に適時に取り込むよう十分には備えられていない。よくても、新規ウイルス株への標的ワクチンは、6か月~1年で入手可能であり、この時点で、伝染病は十分に蔓延している。
【0047】
毎日、約12,000リットルの空気が、平均的な鼻により濾過されている。鼻孔は、空気から直径が15μmより大きな粒子の95%を濾過する。それら(the)は、粘膜によって通常、捕捉され、次に、摂取される。微生物およびアレルゲンは、通常、この閾値よりも数桁小さく、鼻における天然の粘膜防御を回避または克服して、鼻膜に浸透し、かつ/または口もしくは喉を介して、下気道に進入するよう進化を遂げてきた。本明細書における技法によれば、抗菌剤および濾過剤により、呼吸器膜および粘膜を増強させると、かなりの数の呼吸器感染およびアレルギーを、容易に、目立たずかつ便利に防止することが可能になる。さらに、鼻に進入する望ましくない粒子の多数は、不快なものとなり得る臭気物質であって、それらが臭気物質受容体に結合することができる前に、以下に限定されないが、担体中で懸濁した活性炭または炭酸水素ナトリウムなどのある種の物質によって濾過または中和され得る、臭気物質である。
本開示は、鼻粘膜のある種の化学的特性を刺激し、鼻膜の健康または完全性に障害をもたらさない、またはその有益な微生物叢に悪影響を及ぼさず、さらにまた浮遊刺激物および病原体が鼻膜に浸透するかつ/または下気道に進入するのを防止するフィルターとして働く、抗菌性、抗ウイルス性、抗真菌性、臭気中和性の局所適用を対象としている。その場合に、本明細書における組成物は、刺激および/またはアレルギー反応をやはり防止しながらも、気道の感染を防止する。
【0048】
さらに、本明細書における組成物は、鼻上皮および鼻粘膜に対して等張性であってもよく、健康を増進する特性を有する化合物を含有する。オスモル濃度およびpHなどの鼻膜の有益な微生物叢およびある種の特性は、感染の可能性に影響を及ぼすことが示されている。人々に呼吸器感染への感受性を高める、いくつかの投薬および健康状態を特定される。例えば、糖尿病患者は、乾燥鼻粘膜を有する、および真菌性静脈洞炎に罹患する可能性が高い。経口避妊薬、睡眠無呼吸機械およびアレルギーもまた、鼻膜を一層乾燥させ、感染に対して感受性をさらに高めることが示されている。
【0049】
本開示の組成物は、以下に限定されないが、ICAM-1、ICAM-1阻害剤、シアル酸、ノイラミニダーゼ阻害剤、リゾチーム、ラクトフェリン、柑橘油、抽出物または誘導体、植物粘物質、ペプチド、グリコペプチド、アミノ酸、抗菌性油、抗菌性植物抽出物またはデフェンシンを含めた、証明された抗菌特性を有する指定活性成分を含むことができる。本組成物は、以下に限定されないが、活性炭または炭酸水素ナトリウムなどの、臭気中和化合物を含むことができる。本組成物は、付着特性を有することができ、長期間、鼻上皮の表面に、活性成分および抗菌剤/抗ウイルス剤を維持するよう、特に製剤化され得る。これを実現するために、本明細書における組成物は、例えば、ポリオール、シアバターまたは他の植物性バター、ココナッツ油、ビーワックス、および生体付着性物質(粘物質またはアルギネートなど)などの、低揮発性の物質または被覆性物質を含むことができる。
本明細書に記載されている鼻用製剤およびその活性成分は、十分耐容性があるよう意図されており、繊毛機能に有益な効果を発揮し、良好な調剤特性、高い付着度を有しており、粘膜の化学的性質を維持する。一部の実施形態では、成分は、相乗効果を生成するよう、バランスが保たれている。
【0050】
本明細書における技法によれば、活性成分の1つまたは複数が、望ましくない微生物およびウイルスを特異的に標的とすることができる。ライノウイルスおよびインフルエンザなどの多数の浮遊病原体は、特定の細胞表面標的から、鼻上皮細胞、鼻粘膜または下気道の細胞に進入する。数十年の研究により、大部分のライノウイルスに対して1つのこのような標的として、およびインフルエンザに対して別のこのような標的として、ICAM-1(細胞内接着分子-1)が特定された(AbrahamおよびColonno 1984年)。ICAM-1は、鼻上皮細胞の細胞表面上、および下気道の細胞上に発現される、細胞間接着分子である。ICAM-1のN末端基ドメインは、ある種のライノウイルスカプシド上の受容体によって認識される。ICAM-1に結合すると、上記のウイルスはそのカプシドを取り除き、細胞に輸送され、ここで、宿主により、感染および炎症応答を開始させる。インフルエンザウイルスは、感染の類似した機構を示す:ヒトでは、ウイルス表面のヘマグルチニン(HA)が、赤血球の宿主細胞膜および上気道の細胞上で、ガラクトースに結合したシアル酸(例えば、アルファ2,6連結(6'-シアリルラクトース)により、またはアルファ2,3連結により(3'-シアリルラクトース))に結合する。
【0051】
例えば、米国特許第8,211,448号、米国特許第8,940,339号および米国特許第8,211,448号などの先行技術は、製造したポリマーまたは化合物を使用することにより、浮遊粒子を捕捉する方法を開示している。これらの先行技術法とは際立って対照的に、本開示は、浮遊粒子を不活性にし、鼻膜が疾患またはアレルギーを引き起こす微生物および望ましくない他の粒子それ自体を取り除く能力を増大する。本開示はまた、本明細書の技法が、1つ超の活性成分を有する点で従来技術とは異なり、その結果、この技法は、1つ超の病原体または刺激物から、同時にかつ増強された様式で防御することができる。これは、1週間しか、または中程度にしか、病原体の1つのタイプしか標的とし得ない従来技術の方法とは異なる(例えば、米国特許第7,132,395号;米国特許第6,514,936号;米国特許第6,051,231号;米国特許第6,649,592号;Turner et al. JAMA 281 (19). 1797-1804. (1999))。このことは、疾患またはアレルギーを引き起こす微生物の具体的な正体が、対象への初期曝露の時点では不明であることが多いので、重要である。本開示は、一部の先行技術と同様に、鼻膜に薬物を送達すること、または生体付着性であることを意図するものではない(例えば、米国特許第6,391,452号;米国特許出願公開第2001/0053359号;米国特許第8,679,484号;米国特許第6,456,26号;米国特許第7,087,245号)。本明細書において開示されている技法は、他の成分と相乗的に働く特異的に標的とする抗菌剤を添加して、例えば、それらのpHおよびオスモル濃度などの、鼻膜または鼻粘膜の特定の生理学的および化学的特性を維持するので、本開示はまた、幅広い抗菌特性を有する防御層を付与する従来技術とは異なる(例えば、米国特許出願公開第2007/0135377号;米国特許第7,166,435号;米国特許第8,658,775号;米国特許第8,658,775号;米国特許第7,083,814号;米国特許第7,807,656号;米国特許第9,045,855号;米国特許第6,649,592号;米国特許第9,029,351号)。同様に、本発明は、一部の従来技術(例えば、米国特許第8,999,406号;米国特許第8,778,415号;米国特許第7,638,147号)のように、鼻膜のpHまたはオスモル濃度を変化させる、または微生物叢に負に影響を及ぼす、アルコール、過酸化物または他の刺激の強い成分を含み得る、鼻膜に標的化されていない、無差別な抗菌剤を添加することを意図するものではない。
【0052】
抗菌組成物
本明細書における抗菌組成物は、吸収される前に、少なくとも30分間(例えば、30~60分間、1~2時間、2~4時間、4~8時間、8~12時間、12~24時間、1~2日間、2~7日間、1週間またはそれ超)、適用部位またはその近くに、上記の抗菌組成物を留まらせることを可能にし、粘膜に対して類似のpHおよびオスモル濃度を有しており、かつ細孔を詰まらせない、水、ポリオール、エモリエント、被覆剤、保湿剤、乳化剤、保存剤、増粘剤および懸濁化剤、pH調整剤、等張剤およびエッセンシャルオイルのうちの1種または複数を含む、基礎混合物中に1種または複数の抗菌活性成分および抗ウイルス活性成分を配合することができる。抗菌組成物が吸収されるのにかかる時間は、サッカリンテストまたは他の類似テストにより決定することができる。一実施形態では、活性成分は、まさに細胞外ドメイン、または細菌中で組換え発現されたICAM-1の別のドメインを含む、可溶性ICAM-1とすることができる。他の実施形態では、活性成分は、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)中で組換え発現された可溶性ICAM-1とすることができる。他の実施形態では、活性成分は、別の種の藻、または別の生存系において組換え発現された、可溶性ICAM-1とすることができる。
【0053】
別の実施形態では、活性成分は、シアル酸(例えば、いくつかの可能な立体構造の1つの糖分子に連結されたノイラミン酸)である。シアル酸は、天然源から精製されてもよく、または発酵および組換え操作により産生されてもよい。別の実施形態では、活性成分は、柑橘果皮または他の天然源から単離したバイオフラボノイドである、ケルセチンなどのノイラミニダーゼ阻害剤とすることができる。別の実施形態では、活性成分は、細菌中で組換え発現したラクトフェリンである。他の実施形態では、活性成分は、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardti)または別の適切な発現系、例えば、藻、酵母もしくは細菌中で組換え発現した、または天然源から精製したラクトフェリンである。別の実施形態では、活性成分は、コナミドリムシ、または別の適切な発現系、例えば、藻中で組換え発現した、または天然源から精製したリゾチームであってもよい。本明細書において開示されている通り、追加の抗菌活性成分が、単独または組合せのどちらかで、本開示の組成物中で使用されてもよい。
【0054】
別の実施形態では、活性成分は、IgA、IgGまたはIgMなどの、天然または遺伝子操作された抗体、またはいくつかの可能な立体構造の1つにおけるそれらの任意のドメインである。抗体は、天然源から精製されてもよく、あるいはコナミドリムシ、または別の藻、細菌、酵母もしくは哺乳動物細胞などの、任意の適切で経済的に実現可能な発現系において、組換え操作により産生されてもよく、または天然源から精製されてもよい。別の実施形態では、活性成分は、柑橘果皮または他の天然源から単離したバイオフラボノイドである、ケルセチンなどのノイラミニダーゼ阻害剤とすることができる。
【0055】
組換え操作した藻は、哺乳動物細胞または細菌よりもかなり経済的に栽培して収穫されるので、藻または別の植物が、好ましい発現系である。藻は、それ自体、栄養補助剤として使用するために栽培されており、オメガー3脂肪酸およびカルテノイドなどの市販製品向けのある種の栄養化合物を生物操作するためにも使用されている(Gimpel JA, Henriquez V, and Mayfield SP Frontiers in Microbiology 2015)。大部分のメタボリックエンジニアリング戦略は、これらの化合物の商業的生産を強化する方向に、およびバイオ燃料として藻を使用するために発展されている。有利なことに、藻は、効率的にある種の特徴を有する、広範囲の様々な代謝産物を生産するために最適化することができる。活性成分の発現は、最適化することができる。
【0056】
トランスジェニック藻は、葉緑体と核ゲノムの両方からの組換えタンパク質発現を支援することが知られている(Rasal BA et al., Plant Biotechnology J 2010)。元々、核ゲノムしか使用されなかったが、葉緑体ゲノムにおける組換えタンパク質を発現するために必要な技法の開発により、プラットフォームへの多様性が付与され、核ゲノムでは発現され得ないタンパク質を発現すること、または一層効率的にタンパク質を発現することのどちらかが可能になっている。現在、生産されている大多数の組換えタンパク質は、主に、細菌、酵母(出芽酵母(S.cervisiae))、または哺乳動物細胞培養物中で産生されている。大規模産生のために開発中にある他の系は、酵母、ピキア酵母(P.pastoris)、昆虫細胞、ならびに他の動物および植物を含む。いかなる実現可能な植物または動物発現系も使用され得るが、最初は、高い精製度を必要としない組換え発現系などの、最もコスト効率が高い可能性が高いものが検討されて探索されることになろう。これにより、本実施形態は、臨床試験の必要なしに、店頭で販売することが可能になろう。必要な場合、より高い精製度を必要とし得る他の組換え発現系が使用される。
表1に図示されている通り、組成物の薬剤は、組成物の以下の質量百分率に従って、存在することができる。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されている通り、ノイラミニダーゼ阻害剤が選択肢になるが、特に、組成物がヒトインフルエンザウイルス感染の予防または処置向けである一部の実施形態では、望ましいことがある。シアル酸は、遊離シアル酸の形態であってもよく、またはシアル酸と、ガラクトース、ラクトースなどのサッカライドとのコンジュゲートまたは付加物であってよい。シアル酸は、任意のシアル酸、例えば、九炭糖であるノイラミン酸の少なくとも43の誘導体コンジュゲートまたは付加物を含むシアル酸ファミリー内の酸であってもよい。重要なことは、シアル酸が、いかなる形態でも、インフルエンザビリオンに結合することができることである。さらに、表1に示されているラクトフェリンは、鉄とのキレートから遊離しているラクトフェリン(アポラクトフェリン)、鉄が豊富なラクトフェリン(ホロラクトフェリン)またはそれらの組合せを含めた、任意の形態のラクトフェリンとすることができる。本明細書で使用する場合、「ICAM-1」は、非限定的に、ICAM-1の細胞外ドメイン部分、特に、可溶性ICAM-1(「sICAM-1」)を含めた、任意の形態のICAM-1を含む。ICAM-1を求める本発明の組成物のいずれにおいても、可溶性ICAM-1が適切に含まれ得ることが理解されよう。
【0059】
表1に図示されている通り、成分は、組成物の%質量の範囲で存在することができる。ICAM-1(可溶性ICAM-1を含む)は、組成物の約0.00000001質量%~10質量%の量で存在することができる。より典型的には、ICAM-1(可溶性ICAM-1を含む)は、組成物の0.0000001質量%~0.1質量%の量で存在することができる。より典型的には、ICAM-1(可溶性ICAM-1を含む)は、組成物の0.000001質量%~0.01質量%の量で存在することができる。ICAM-1は、組成物の約0.00000001質量%、0.0000001質量%、0.000001質量%、0.00001質量%、0.0001質量%、0.001質量%、0.01質量%、0.05質量%、1質量%、0.1質量%、0.15質量%、0.2質量%、0.25質量%、0.3質量%、0.35質量%、0.4質量%、0.45質量%、0.5質量%、0.55質量%、0.6質量%、0.65質量%、0.7質量%、0.75質量%、0.8質量%、0.85質量%、0.9質量%、0.95質量%、1.0質量%、1.05質量%、1.1質量%、1.15質量%、1.2質量%、1.25質量%、1.3質量%、1.35質量%、1.4質量%、1.45質量%、1.5質量%、1.55質量%、1.6質量%、1.65質量%、1.7質量%、1.76質量%、1.8質量%、1.85質量%、1.9質量%、1.95質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%および10.0質量%の量で存在することができる。一部の実施形態では、ICAM-1は、組成物の0.2質量%~1.0質量%で存在することができる。一部の実施形態では、ICAM-1は、組成物の約0.000005質量%~0.05質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、ICAM-1は、組成物の約0.00005質量%~0.005質量%で存在することができる。
【0060】
ノイラミニダーゼ(neuraminadase)阻害剤(例えば、ケルセチンなど)は組成物の約0.00000001質量%~10質量%の量で存在することができる。より典型的には、ノイラミニダーゼ阻害剤は、組成物の0.0000001質量%~0.1質量%の量で存在することができる。より典型的には、ノイラミニダーゼ阻害剤は、組成物の0.000001質量%~0.01質量%の量で存在することができる。ノイラミニダーゼ阻害剤は、組成物の約0.00000001質量%、0.0000001質量%、0.000001質量%、0.00001質量%、0.0001質量%、0.001質量%、0.01質量%、0.05質量%、1質量%、0.1質量%、0.15質量%、0.2質量%、0.25質量%、0.3質量%、0.35質量%、0.4質量%、0.45質量%、0.5質量%、0.55質量%、0.6質量%、0.65質量%、0.7質量%、0.75質量%、0.8質量%、0.85質量%、0.9質量%、0.95質量%、1.0質量%、1.05質量%、1.1質量%、1.15質量%、1.2質量%、1.25質量%、1.3質量%、1.35質量%、1.4質量%、1.45質量%、1.5質量%、1.55質量%、1.6質量%、1.65質量%、1.7質量%、1.76質量%、1.8質量%、1.85質量%、1.9質量%、1.95質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%および10.0質量%の量で存在することができる。一部の実施形態では、ノイラミニダーゼ阻害剤は、組成物の0.2質量%~1.0質量%で存在することができる。一部の実施形態では、ノイラミニダーゼ阻害剤は、組成物の約0.000005質量%~0.05質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、ノイラミニダーゼ阻害剤は、組成物の約0.00005質量%~0.005質量%で存在することができる。
【0061】
ラクトフェリンは、組成物の0.0000001質量%~10.0質量%で存在することができる。ラクトフェリンは、組成物の0.00000025質量%、0.0000003質量%、0.0000004質量%、0.0000005質量%、0.0000006質量%、0.0000007質量%、0.00000075質量%、0.0000008質量%、0.0000009質量%、0.000001質量%、0.000002質量%、0.000003質量%、0.000004質量%、0.000005質量%、0.000006質量%、0.000007質量%、0.000008質量%、0.000009質量%、0.00001質量%、0.00002質量%、0.00003質量%、0.00004質量%、0.00005質量%、0.00006質量%、0.00007質量%、0.00008質量%、0.00009質量%、0.0001質量%、0.0002質量%、0.0003質量%、0.0004質量%、0.0005質量%、0.0006質量%、0.0007質量%、0.0008質量%、0.0009質量%、0.001質量%、0.002質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.005質量%、0.006質量%、0.007質量%、0.008質量%、0.009質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%および10.0質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、ラクトフェリンは、組成物の0.0000001~1.0質量%で存在することができる。
【0062】
リゾチームは、組成物の0.000001%~10.0質量%で存在することができる。リゾチームは、組成物の0.000005質量%、0.000006質量%、0.000007質量%、0.000008質量%、0.000009質量%、0.00001質量%、0.00002質量%、0.00003質量%、0.00004質量%、0.00005質量%、0.00006質量%、0.00007質量%、0.00008質量%、0.00009質量%、0.0001質量%、0.0002質量%、0.0003質量%、0.0004質量%、0.0005質量%、0.0006質量%、0.0007質量%、0.0008質量%、0.0009質量%、0.001質量%、0.002質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.005質量%、0.006質量%、0.007質量%、0.008質量%、0.009質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%および10.0質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、リゾチームは、組成物の0.000001~1.0質量%で存在することができる。
【0063】
シアル酸は、組成物の0.000000001%~10.0質量%で存在することができる。シアル酸は、組成物の0.000005質量%、0.000006質量%、0.000007質量%、0.000008質量%、0.000009質量%、0.00001質量%、0.00002質量%、0.00003質量%、0.00004質量%、0.00005質量%、0.00006質量%、0.00007質量%、0.00008質量%、0.00009質量%、0.0001質量%、0.0002質量%、0.0003質量%、0.0004質量%、0.0005質量%、0.0006質量%、0.0007質量%、0.0008質量%、0.0009質量%、0.001質量%、0.002質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.005質量%、0.006質量%、0.007質量%、0.008質量%、0.009質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%および10.0質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、シアル酸は、組成物の0.000001~1.0質量%で存在することができる。シアル酸は、シアリルラクトース(例えば、3'-シアリルラクトース、6'-シアリルラクトース、またはそれらの組合せ)の形態であってもよい。
別の実施形態では、製剤は、表2に示されている成分を有してもよい。
【0064】
【表2】
【0065】
カラギーナン(carageenan)は、組成物の0.0000005質量%~10.0質量%で存在することができる。リゾチームは、組成物の0.0000005質量%、0.0000006質量%、0.0000007質量%、0.0000008質量%、0.0000009質量%、0.000001質量%、0.000002質量%、0.000003質量%、0.000004質量%、0.000005質量%、0.000006質量%、0.000007質量%、0.000008質量%、0.000009質量%、0.00001質量%、0.00002質量%、0.00003質量%、0.00004質量%、0.00005質量%、0.00006質量%、0.00007質量%、0.00008質量%、0.00009質量%、0.0001質量%、0.0002質量%、0.0003質量%、0.0004質量%、0.0005質量%、0.0006質量%、0.0007質量%、0.0008質量%、0.0009質量%、0.001質量%、0.002質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.005質量%、0.006質量%、0.007質量%、0.008質量%、0.009質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%および10.0質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、カラギーナンは、組成物の0.000001~4.0質量%で存在することができる。
【0066】
亜鉛(例えば、過酸化亜鉛)は、組成物の0.0000001~5質量%で存在することができる。亜鉛は、組成物の0.01質量%、0.015質量%、0.02質量%、0.025質量%、0.03質量%、0.035質量%、0.04質量%、0.045質量%、0.05質量%、0.055質量%、0.060質量%、0.065質量%、0.070質量%、0.075質量%、0.080質量%、0.085質量%、0.090質量%、0.095質量%、0.1質量%、0.15質量%、0.2質量%、0.25質量%、0.3質量%、0.35質量%、0.4質量%、0.45質量%、0.5質量%、0.55質量%、0.6質量%、0.65質量%、0.7質量%、0.75質量%、0.8質量%、0.85質量%、0.9質量%、0.95質量%、1.0質量%、1.05質量%、1.1質量%、1.15質量%、1.2質量%、1.25質量%、1.3質量%、1.35質量%、1.4質量%、1.45質量%、1.5質量%、1.55質量%、1.6質量%、1.65質量%、1.7質量%、1.76質量%、1.8質量%、1.85質量%、1.9質量%、1.95質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%、10.0質量%、10.5質量%、11.0質量%、11.5質量%、12.0質量%、12.5質量%、13.0質量%、13.5質量%、14.0質量%、14.5質量%、15.0質量%、15.5質量%、16.0質量%、16.5質量%、17.0質量%、17.5質量%、18.0質量%、18.5質量%、19.0質量%、19.5質量%および20.0質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、過酸化亜鉛(ZnO2)は、組成物の0.000001質量%~5.0質量%で存在することができる。
【0067】
銅は、組成物の0.00000001質量%~5質量%で存在することができる。銅は、組成物の0.000005質量%、0.000006質量%、0.000007質量%、0.000008質量%、0.000009質量%、0.00001質量%、0.00002質量%、0.00003質量%、0.00004質量%、0.00005質量%、0.00006質量%、0.00007質量%、0.00008質量%、0.00009質量%、0.0001質量%、0.0002質量%、0.0003質量%、0.0004質量%、0.0005質量%、0.0006質量%、0.0007質量%、0.0008質量%、0.0009質量%、0.001質量%、0.002質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.005質量%、0.006質量%、0.007質量%、0.008質量%、0.009質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%、10.0質量%、10.5質量%、11.0質量%、11.5質量%、12.0質量%、12.5質量%、13.0質量%、13.5質量%、14.0質量%、14.5質量%、15.0質量%、15.5質量%、16.0質量%、16.5質量%、17.0質量%、17.5質量%、18.0質量%、18.5質量%、19.0質量%、19.5質量%および20.0質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、銅は、組成物の0.00001~5.0質量%で存在することができる。
【0068】
銀は、組成物の0.00000001質量%~5質量%で存在することができる。銀は、組成物の0.000005質量%、0.000006質量%、0.000007質量%、0.000008質量%、0.000009質量%、0.00001質量%、0.00002質量%、0.00003質量%、0.00004質量%、0.00005質量%、0.00006質量%、0.00007質量%、0.00008質量%、0.00009質量%、0.0001質量%、0.0002質量%、0.0003質量%、0.0004質量%、0.0005質量%、0.0006質量%、0.0007質量%、0.0008質量%、0.0009質量%、0.001質量%、0.002質量%、0.003質量%、0.004質量%、0.005質量%、0.006質量%、0.007質量%、0.008質量%、0.009質量%、0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%、0.04質量%、0.05質量%、0.06質量%、0.07質量%、0.08質量%、0.09質量%、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、0.7質量%、0.8質量%、0.9質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%、3.0質量%、3.5質量%、4.0質量%、4.5質量%、5.0質量%、5.5質量%、6.0質量%、6.5質量%、7.0質量%、7.5質量%、8.0質量%、8.5質量%、9.0質量%、9.5質量%、10.0質量%、10.5質量%、11.0質量%、11.5質量%、12.0質量%、12.5質量%、13.0質量%、13.5質量%、14.0質量%、14.5質量%、15.0質量%、15.5質量%、16.0質量%、16.5質量%、17.0質量%、17.5質量%、18.0質量%、18.5質量%、19.0質量%、19.5質量%および20.0質量%で存在することができる。好ましい実施形態では、銀は、組成物の0.00001~5.0質量%で存在することができる。
本組成物はまた、活性炭または炭酸水素ナトリウムなどの臭気中和化合物を単独または組み合わせて含んでもよい。他の臭気中和化合物が、本組成物に含ませることが企図されている。
【0069】
表3に図示されている通り、例示的な抗菌組成物は、以下の追加成分を単独または組合せのどちらかでさらに含んでもよい:ウスベニタチアオイ抽出物、キンセンカ抽出物、柑橘果皮抽出物、ハチミツ、ローズマリー抽出物、ミルラ抽出物、ヘリクリサム(helichyrsum)抽出物、クズウコン抽出物、ニームオイル、ビタミンC、ビタミンEおよびグレープフルーツ種子抽出物。これらの追加成分は、組成物の以下の質量に従い、存在することができる。抽出溶媒および抽出工程は、抗菌組成物を最も効果的かつ耐容性となるよう最適化される。
【0070】
【表3】
【0071】
表4に図示されている通り、例示的な抗菌組成物は、以下の追加基礎成分を単独または組合せのどちらかでさらに含んでもよい:ポリオール、保湿剤(以下に限定されないが、グリセリン、アロエ(aloe vera)またはブチレングリコールなど)、エモリエント(以下に限定されないが、シアバター、ヒマシ油、ココナッツ油、カプリル酸、ステアリン酸ブチルまたはトリグリセリドなど)、被覆性物質(以下に限定されないが、ワセリン、ジメチコン、ラノリン、カカオ脂、シアバター、ビーワックス、植物性バターまたはカルナウバワックスなど)。これらの成分の添加および正確な濃度は、適用されると、細孔を詰まらせないバリア機能を達成するため、少なくとも30分間、その生物活性物の立体構造および定位置を維持するため、生理学的粘膜に似たオスモル濃度およびpHを維持するため、耐容性となるため、および効果的となるよう最適化することができる。
【表4】
【0072】
特に示さない限り、任意の賦形剤または添加物が、呼吸組織を損傷または刺激することなく、その所期の機能目的を果たすのに十分な量で含まれ得る。特に示さない限り、賦形剤はすべて、組成物の約0.000001質量%、または0.01質量%~約1、5、10もしくは25質量%の量で存在することができる。担体は、任意の薬学的に許容される希釈剤であってもよく、室温で固体、または室温で液体であってもよい。好適な担体としては、水、アルコール(エタノール)、プロピレングリコール、イソプロパノール、プロパンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、イソステアリン酸イソステアリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、オレイン酸オレイル、酢酸トコフェロール、ヤシ脂肪酸デシル、スクワレン、span40、ヤシカプリル酸/カプリン酸エステル、span80、トコフェロール、ステアリン酸(osstearic acid)、エルカ酸オレイル、span20、イソステアリン酸グリセリルおよびカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドが挙げられる。担体は、例えば、水溶液、油中水型エマルション、または水中油型エマルションの形態とすることができる。エマルション担体は、通常、エマルションを安定化するために好適な乳化剤を0.0001質量%~約10質量%、含む。一実施形態では、本組成物は、経口使用向けであり、以下の成分のうちの1つまたは複数を含んでもよい:グルコースシロップ、ダイズレシチン、アルギネート、スクラロース、コーンシロップ、ゼラチン、エリスリトール、レシチン、植物ムチン、カラギーナン、チコリー根抽出物、マルチトール(malitol)およびステビア。経口用製剤と鼻用製剤のどちらにおいても、賦形剤は、活性物の生物活性を妨害すべきではなく、活性物と溶液中で適合可能であるべきであることに留意すべきである。賦形剤はまた、上皮(呼吸器膜)に浸透するべきでない。したがって、溶液中で活性物を維持するよう、および上皮に活性物が浸透するのを阻止するよう、基礎組成物中の活性物の溶解度はより高いことが望ましい。鼻用製剤では、賦形剤は、粘膜およびその上の組成物フィルム中に水分を維持するよう働くべきであり、そうして活性成分が溶液から沈殿しない。一部の実施形態では、担体は、水、および活性物がやはり可溶な水よりも揮発性が低い二次溶媒を含む。理想的には、担体および賦形剤は、上皮の極性よりも活性成分の極性に近い極性を有するよう、それらは選択される。二次溶媒は、水が蒸発した後に、活性物の可溶化を維持するよう働くことができる。経口用製剤では、水分喪失は、それほど重要ではなく、唾液中への組成物の溶出を遅延させるよう、賦形剤を選択することが望ましいことがある。
【0073】
調製した化合物は、従来の方法を使用して精製し、不純物を含まない化合物を得る。調製した化合物は、>75%、>80%、>85%、>90%、>95%、>96%、>97%、>98%、>99%、>99.5%の純度を有する。場合により、好ましい化合物は、>99%純粋である。
【0074】
細胞内接着分子(ICAM-1)
ICAM-1は、接着分子の免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーである。ICAM-1は、505アミノ酸長の内在性膜タンパク質であり、i)アミノ末端(細胞外)に、5つの免疫グロブリン様細胞外ドメイン、ii)疎水性膜貫通ドメイン(454-477)、およびiii)カルボキシ末端に短い細胞質ドメイン(478-505)を有する。大部分のライノウイルスは、鼻の上皮膜上に発現するICAM-1を使用し、細胞に進入する。3つの主要なタイプのライノウイルス(HRV A、BおよびC)が存在する。HRV AおよびBは、約100種のサブタイプにさらに細分化することができる。85%のHRV Aおよび100%のHRV Bは、細胞に進入するために、ICAM-1を使用する。HRV Cは、認識可能な疾病を引き起こすことはほとんどない。本明細書における技法によれば、部分的または完全に精製された可溶形態のICAM-1、またはその組換え操作されたドメインのいずれかを本開示の組成物に添加すると、分子を安定な形態で維持することができ、これにより、ライノウイルス粒子が、細胞膜上の内在性ICAM-1と相互作用するのを競争的に阻害することが可能となり、こうして、感染の最初の過程が阻止される。
【0075】
一部の実施形態では、抗菌/抗ウイルス組成物は、ICAM-1阻害剤を含むことができる。抗菌組成物に使用されるICAM-1阻害剤は、以下に限定されないが、抗ICAM-1抗体、サイトカイン、CD11a、エズリン(EZR)、CD18、グリチルレチン酸、ピロリジンジチオカルバメート、NFkB活性化阻害剤、複素環式チアゾール、リポ酸、エファリズマブ、4-[(4-メチルフェニル)チオ]チエノ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、シリビニン、スチルベン、(+)-エピガロイル-カテキン-ガレート[(+)-EGCG]、ハイゴショウ(Piper sarmentosum)の抽出物およびそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、抗ICAM-1抗体は、エファリズマブ(RAPTIVA)である。
【0076】
シアル酸およびノイラミニダーゼ阻害剤
上気道の細胞上のシアル酸が豊富なオリゴサッカライドは、通常、表面の水を維持して、負電荷を生成する一助となる。シアル酸は、九炭主鎖を有する炭糖である、ノイラミン酸のN置換またはO置換誘導体の一般名称である。シアル酸はまた、このグループの最も一般的なメンバーである、N-アセチルノイラミン酸(Neu5AcまたはNANA)の名称でもある。インフルエンザまたは他のウイルスは、その表面のヘマグルチニン(HA)受容体を介してシアル酸残基に結合することが知られており、その後、ウイルスは複製を開始する。複製が完了すると、ウイルスの酵素であるノイラミニダーゼがウイルス粒子を切断して、その結果、ウイルスは自由に結合して、他の細胞を感染させる。本明細書における技法によれば、例えば、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、または任意の他のノイラミン酸誘導体またはそれらの組換え操作されたドメインのいずれかなどの、部分的または完全に精製されたシアル酸を添加して、分子を安定な形態で維持することができ、シアル酸は、インフルエンザウイルス粒子が呼吸器細胞または赤血球上のシアル酸と相互作用するのを競争的に阻害することができる。シアル酸ファミリーは、九炭糖ノイラミン酸の43の誘導体を含む。本質的に、これらの誘導体は、ムチン、グリコタンパク質および糖脂質のオリゴサッカライド(oligosacharride)鎖の構成成分として通常、見出される。インフルエンザに感受性の高い様々な種は、そのシアル酸-ガラクトース連結基においてわずかな変動を有すると考えられる。特定の種を感染させるインフルエンザウイルスは、その種特異的立体構造にあるガラクトースに結合したシアル酸に対して、特異的な親和力を有すると考えられている。例えば、ヒト呼吸器上皮細胞上では、シアル酸は、アルファ2,6連結基を介してガラクトースに主に結合しており、その結果、ヒトに感染するインフルエンザウイルスは、シアル酸のその立体構造に対して、通常、特異的に標的化される。ヒト上皮細胞は、ブタなどの別の種における主要な立体構造となり得るアルファ2,3連結基などの、それほど主要ではない他のタイプのシアル酸-ガラクトース連結基も有している。したがって、インフルエンザがどのように1つの種から別の種に広がるかに関する理論の1つは、1つ超の種において見出される立体構造に対する特異性を有すること、または変異して別の種に対して特異的となることによる。
【0077】
鼻粘膜および他の外分泌液は、可溶形態のシアル酸を含有しており、このシアル酸は、インフルエンザウイルスおよび他の微生物に結合することにより防御機能を果たして、それらを固定化することができる。インフルエンザウイルスは、ノイラミニダーゼと呼ばれる酵素を使用して、可溶性シアル酸から、それ自体を切断する方法を進化させてきた。タミフルなどのいくつかの抗ウイルス薬は、ノイラミニダーゼ阻害剤として働く。この点で、ノイラミニダーゼ阻害剤により、ウイルスは固定化されて、上皮細胞に感染することができない状態に維持される。感染を防止するために鼻腔に適用される局所溶液中でノイラミニダーゼ阻害剤を使用することを試みた先行技術は存在しない。ノイラミニダーゼ阻害剤は、感染を治癒するために、主に全身的に投与される。柑橘果皮および多数の他の果実および野菜中に見出されるバイオフラボノイドであるケルセチンは、天然ノイラミニダーゼ阻害剤の例である。
一部の実施形態では、抗菌組成物は、ノイラミニダーゼ阻害剤を含む。ノイラミニダーゼ阻害剤は、以下に限定されないが、ケルセチン、オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、アマンタジン、ペラミビルおよびそれらのアナログのいずれかを含む。
【0078】
抗ウイルス剤
本発明の抗ウイルス剤は、天然の過程(例えば、動物、植物、真菌、細菌などにICAM-1のアナログを産生するよう誘発することによる、または動物にポリクローナルもしくはモノクローナル抗ICAM-1(抗イディオタイプ)を産生するよう誘発させることによる)、合成方法(例えば、ICAM-1などの機能性誘導体のポリペプチドを合成するためのメリフィールド法を使用するによる)、組換え技術(例えば、多様な宿主(例えば、酵母、細菌、真菌、培養した哺乳動物細胞など)において、ICAM-1の抗ウイルス機能性誘導体を産生させる)、組換えプラスミドもしくはウイルスベクター、またはタンパク質加水分解によって得ることができる。使用する方法の選択は、便利さ、所望の収率などの要因に依存する。特定の抗ウイルス剤を産生するために、必ずしも、上記の方法、プロセスまたは技術の1つだけを使用する必要はない。特定の抗ウイルス剤を得るために、上記のプロセス、方法および技術を組み合わせることができる。成分は、相乗効果を生じるよう、バランスが保たれる。
【0079】
ラクトフェリン
ラクトフェリンは、鼻粘膜を含めた、外分泌液中に天然に存在しており、微生物からの防御機能を果たす。ラクトフェリンは、高度に陽イオン性の、抗菌性、抗ウイルス性および抗真菌性である。涙液中では、濃度は、総タンパク質の15~30%を占める、1~3mg/mlの範囲にある。ヒトの母乳は、1mg/mlを含有しており、気管支分泌液は、11.5%となる総タンパク質を有することができる。粘膜中の濃度は、チャレンジの場合、1μg/ml~8μg/mlの範囲であり、約1~3%の総タンパク質となる(Raphaelら、1989年)。粘膜分泌液中のラクトフェリンのレベルは、年齢に伴って低下すると考えられており、より高齢の成人ほど呼吸器感染になりやすい。
【0080】
ラクトフェリンは、単量体および四量体で存在しており、高濃度で重合する傾向がある。ラクトフェリンは、約703のアミノ酸および約80kDからなるグリコタンパク質である。一部の検討では、ヒトラクトフェリンとウシラクトフェリンとの間に69%の相同性があるにもかかわらず、ウシラクトフェリンは、抗菌効果についてヒトラクトフェリンの1/10の濃度が必要であった。様々なタイプのラクトフェリンが、ある種の変異またはヒト以外の感染性生物のタイプにとって一層有益となることがあり、伝染が差し迫っている場合、試験を行い最適化することができる。単純ヘルペスウイルス(局所適用)およびC型肝炎感染の検討では、ラクトフェリンは、ウイルスとの接触の前は防御性であるが、ウイルスに接触後はそうではなく、これにより、全身適用よりも、感染部位への適用(鼻膜など)の方が適切となる。
【0081】
リゾチーム
リゾチームは、ラクトフェリンのように、通常、外分泌液中に存在する。リゾチームは、高度に陽イオン性の、抗菌性、抗ウイルス性および抗真菌性である。1つの検討によれば(Atsushiら、1998年)、粘膜中の平均濃度は、20~30μg/mlである。涙液中では、リゾチームの濃度は、Raphaelら1989年によれば、約103mg/mlである。粘膜中のリゾチームのレベルは、年齢に伴って低下するとやはり考えられている。
【0082】
粘膜抗体
鼻の分泌液は、抗体媒介性防御をもたらす免疫グロブリンを含有しており、研究により、大部分はIgA(sIgA)の分泌形態であることが示されている(Kirkebyら、2000年)。S-IgA抗体は、微生物の結合、および潜在的アレルゲンを含めた分子抗原の吸収を阻止する。ある種の細菌は、IgAを切断することによりIgAプロテアーゼを産生し、これらの酵素は、これらの抗体のバリア機能を妨害することができる。研究により、IgAの切断は、アトピー疾患をもたらすことがあることが示されている。鼻の分泌物中に最も一般に見出され、防御機能として働くことができる他の抗体は、IgGおよびIgMである(Kirkebyら、2000年)。これらの抗体の量の増加により、本開示は、望ましくない刺激物または病原体に対して防御することができる。
【0083】
組換え操作
ヒトまたはウシの外分泌液などの、上述の生物学的化合物のいくつかの可能な供給源が存在する。しかし、これらは、供給に制限があり、安全性リスクを呈し得る。組換えバイオ生産は、化合物の別の可能な供給源である。バイオ生産は、細菌、真菌、動物細胞、酵母または植物(藻を含む)のような遺伝子操作された微生物を利用することができる。哺乳動物細胞系における発現、細菌および酵母は、高価であることが多い。この理由の1つは、精製の必要性である。藻は、非常に高いレベルの精製を必要としないことが多いという点で、他の方法に対していくつかの利点をもたらす。植物中のタンパク質産生は、未精製タンパク質基準の1グラム当たり、哺乳動物細胞培養物中での産生よりも、4桁安価になり得る。さらに、藻などの植物物質は、その遺伝子改変されている相当物のように、大部分が、「一般に、安全であると認められている」。いくつかの伝統的に高価な生物分子のための藻の組換えバイオリアクターは、有望であることが証明されているので、商業的規模の生産は、実現可能であると思われる(Rasala et al Plant Biotech. 2010を参照されたい)。
【0084】
処置方法
呼吸器膜の濾過能および浮遊病原体からの防御を増強するための新規方法および組成物が、本明細書に記載されている。本開示の送達方法は、浮遊病原体に対して防御する抗菌/抗ウイルス組成物への気道の曝露を最大化する。この新規な治療の方法はまた、治療剤として抗菌組成物の投与も含むことができる。
上記の態様または実施形態のいずれかにおいて、本方法は、呼吸器感染の成長を低減することができる、感染を縮小することができる、または感染を根絶することができる。関連実施形態では、感染は、その元のサイズに比べて、5%、10%、25%、50%、75%、85%、90%、95%または99%またはそれ超で縮小する。
【0085】
上記の態様または実施形態のいずれかにおいて、本方法は、1日当たり、治療剤を複数回、投与することを含むことができる。なおさらに関連する実施形態では、本方法は、最初の日に、治療剤を投与すること、およびその後の1日または複数の日に、投与を繰り返すことを含むことができる。なおさらに関連する実施形態では、最初の日、およびその後の1日または複数の日を、1日~約3週間の間で隔たりを設ける。関連実施形態では、治療剤および別の薬剤は共投与される。関連実施形態では、治療剤および他の薬剤は、約1:2、1:4、1:10、1:20、1:25、1:50、1:100、1:200の比、またはそれらの間の任意の比(治療剤:薬剤の質量比)で投与される。治療剤は、1つまたは複数のサイクルの過程にわたり投与されてもよいことが、本開示の範囲内にさらに企図されている。上記の態様または実施形態のいずれかにおいて、治療剤および別の薬剤は、同時に送達することができる。
【0086】
上記の態様または実施形態のいずれかにおいて、治療剤は、呼吸器疾患または障害を防止または処置するために使用される、本明細書に記載されている任意の抗菌組成物とすることができる。関連実施形態では、呼吸器疾患または障害は、浮遊病原体によって引き起こされる。ある種の実施形態では、治療剤は、抗菌剤/抗ウイルス剤である。
抗菌剤は、本明細書に記載されているものを含めた、当分野において周知の任意の薬剤とすることができるが、それらに限定されない。
さらに他の実施形態では、治療剤は治療用抗体とすることができる。治療用抗体は、本明細書に記載されているものを含めた、当分野において周知の任意の治療用抗体とすることができるが、これらに限定されない。
実施形態では、治療剤は、治療用核酸分子であってもよい。治療用核酸分子は、当分野において周知の任意の治療用核酸分子とすることができる。
実施形態では、治療剤は、放射性同位体とすることができる。放射性同位体は、当分野において周知の任意の放射性同位体であってもよい。
他の実施形態では、治療剤は、2種以上の薬物化合物の組合せであってもよい。
上記の態様または実施形態のいずれかにおいて、本方法は、治療有効量の免疫療法剤の投与を含む。免疫療法剤は、それにより、感染細胞の破壊を標的とする、さらなる免疫応答の引き金となる、任意の好適な手段とすることができる。
実施形態では、免疫療法剤は、治療剤の免疫調節性作用を増強する。関連実施形態では、免疫療法剤は、感染の成長をさらに低減する、または感染をさらに縮小させる。
免疫療法剤は、治療剤が投与される前、その間またはその後に、投与することができる。実施形態では、免疫療法剤は、治療剤の第1の投与前に投与される。実施形態では、免疫療法剤は、治療剤の第1の投与と同時に投与される。
上記の態様または実施形態のいずれかにおいて、治療剤および免疫療法剤は、約1:2、1:4、1:10、1:25、1:50、1:100、1:200の比、またはそれらの間の任意の比(治療剤:免疫療法剤の質量比)で投与することができる。
上記の態様または実施形態のいずれかにおいて、免疫療法剤は、経鼻、局所、局限または全身(例えば、静脈内)に投与することができる。
上記の態様または実施形態のいずれかにおいて、治療剤および免疫療法剤は、結合することができる。
【0087】
治療剤
本開示は、本明細書に記載されている方法において使用するのに好適な任意の治療剤(例えば、呼吸器疾患を処置するための任意のタイプの抗菌剤/抗ウイルス剤)を企図する。好適な治療剤には、以下に限定されないが、医薬または化合物(すなわち、低分子薬)、治療用抗体、治療用タンパク質またはバイオロジクス(例えば、ホルモン治療法)および核酸分子(例えば、siRNA)が含まれる。
一部の実施形態では、治療剤は、感染生物に対する抗菌特性を有することが示されている薬剤である。関連実施形態では、治療剤は、既存の上市承認されている医薬、または従来の手法を使用して感染を処置する他の上市承認されている組成物である。
【0088】
一部の実施形態では、治療剤は、本明細書に記載されている抗菌組成物である。一部の実施形態では、抗菌組成物は、抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌性特性を有する組成物を含む。抗菌組成物は、以下に限定されないが:抗体(IgA、IgGまたはIgMなど)、可溶性ICAM-1、ICAM-1阻害剤、シアル酸、ノイラミニダーゼ阻害剤、ラクトフェリン、リゾチーム、亜鉛化合物、銀、銀化合物、銅、銅化合物およびそれらの組合せを含む。ノイラミニダーゼ阻害剤は、以下に限定されないが、ケルセチン、オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビルおよびペラミビルを含む。ICAM-1阻害剤は、以下に限定されないが、可溶性ICAM-1、抗ICAM-1抗体、サイトカイン、CD11a、エズリン(EZR)、CD18、グリチルレチン酸、ピロリジンジチオカルバメート、NFkB活性化阻害剤、複素環式チアゾール、リポ酸、エファリズマブ、4-[(4-メチルフェニル)チオ]チエノ[2,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、シリビニン、スチルベン、(+)-エピガロイル-カテキン-ガレート[(+)-EGCG]、およびそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、抗ICAM-1抗体は、エファリズマブ(RAPTIVA)である。
【0089】
本開示はまた、前述の医薬剤および治療剤のいずれかの誘導体形態も企図する。一般的な誘導体化は、例えば、溶解度および/もしくは安定性を改善するための化学部分、または特定の細胞もしくは身体の領域に対して分子を一層特異的に標的となることを可能にする標的部分を加えることを含むことができる。医薬剤は、任意の適切な組合せで製剤化することもでき、この場合、薬物は、各薬物の官能基を保持する方法で、個々の形態で混合されるか、または一緒に結合されることができる。薬物はまた、放射性同位体を含むよう、または分子が細胞をさらに一層有効に死滅させるようにするために他の細胞死滅部分を含むよう、誘導体化されてもよい。さらに、薬物またはその一部は、身体内もしくは腫瘍内で薬物または薬剤を追跡することを可能にすることができる、蛍光化合物または他の検出可能な標識により修飾されていてもよい。医薬、または他には上述の治療剤のいずれかは、それらの薬物が、同じ方法で処理された後(例えば、細部による代謝)、その活性または機能を得るよう、前駆体形態で供給されてもよい。
【0090】
本開示によって企図された治療用抗体は、抗菌もしくは抗ウイルス抗体の任意のアイソタイプ(IgA、IgG、IgE、IgMまたはIgD)、または免疫活性断片もしくはその誘導体を含んでもよい。このような断片は、例えば、抗原またはエピトープ結合領域を含有するように改変した、一本鎖可変断片(scFv)、抗体結合断片(Fab)、結晶性断片(Fc)、およびドメイン抗体を含むことができる。治療用抗体の誘導型は、ダイアボディ、ナノボディ、二重特異性抗体、および適切かつ有効な抗原結合部位を含む、または含むように操作された実質的に任意の抗体により誘導された構造を含むことができる。
本開示により利用することができる抗体をベースとする抗菌治療剤の例は、例えば、ICAM-1に対する特異的抗体を含むことができる。一部の実施形態では、抗ICAM-1抗体は、エファリズマブ(RAPTIVA)である。
【0091】
本開示はまた、呼吸器疾患の防止または処置は、感染においてある役割を有する、特定の「標的遺伝子」を標的とする核酸分子を使用して行うことができることも企図している。標的遺伝子に及ぼす核酸分子の作用は、操作可能にコードされたポリペプチドに対する標的遺伝子の発現および/または転換のレベルが、がんが、薬剤により阻害および/または破壊されるように、実質的に影響を受ける(上方または下方)よう、遺伝子スプライシング、mRNA破壊、または転写の阻害などを含むことができる。用語「標的遺伝子」とは、標的タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドをコードする、または感染においてある役割を有する調節性核酸(例えば、本開示の目的のための「標的遺伝子」は、miRNAまたはmiRNAをコードする遺伝子配列とすることもできる)をコードする、または該調節性核酸である、核酸配列(例えば、ゲノムDNAまたはmRNA)を指す。ある種の実施形態では、用語「標的遺伝子」はまた、標的遺伝子のアイソフォーム、変異体、多形およびスプライス変異体を含むことが意図されている。
【0092】
当分野において周知の任意の核酸をベースとする薬剤は、本開示において使用するのに好適となり得る。核酸をベースとする薬剤の例示的なタイプは、以下に限定されないが、一本鎖リボ核酸剤(例えば、microRNA)、アンチセンス-タイプのオリゴヌクレオチド剤、二本鎖リボ核酸剤などを含む。
【0093】
治療用核酸を構築するための方法は、当分野において周知である。例えば、RNA干渉は、2つの個別のオリゴヌクレオチドから組み立てることができ、この場合、1つの鎖はセンス鎖であり、もう一方の鎖はアンチセンス鎖であり、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、自己相補性である(すなわち、各鎖は、その他方の鎖におけるヌクレオチド配列に対して相補性であるヌクレオチド配列を含む。アンチセンス鎖およびセンス鎖は、二重(duplex)または二本(double)鎖構造を形成する場合など)。アンチセンス鎖は、標的核酸分子またはそれらの一部におけるヌクレオチド配列に対して相補性であるヌクレオチド配列を含み、センス鎖は、標的核酸配列またはそれらの一部に対応するヌクレオチド配列を含む。
【0094】
代替として、RNA干渉は、単一オリゴヌクレオチドから組み立てることができ、この場合、自己相補性センス領域およびアンチセンス領域は、核酸をベースとするまたは非核酸をベースとするリンカーにより連結される。RNA干渉は、自己相補性センス領域およびアンチセンス領域を有する、二重、非対称二重、ヘアピンまたは非対称ヘアピン二次構造を有するポリヌクレオチドとすることができ、この場合、アンチセンス領域は、個別の標的核酸遺伝子またはその一部におけるヌクレオチド配列に相補性のヌクレオチド配列を含み、センス領域は、標的核酸配列またはその一部に対応するヌクレオチド配列を有する。RNA干渉は、2つ以上のループ構造ならびに自己相補性センス領域およびアンチセンス領域を含むステムを有する環状一本鎖ポリヌクレオチドとすることができ、この場合、アンチセンス領域は、標的核酸分子またはそれらの一部における、ヌクレオチド配列に相補性のヌクレオチド配列を含み、センス領域は、標的核酸配列またはそれらの一部に対応するヌクレオチド配列を有し、環状ポリヌクレオチドは、インビボまたはインビトロのどちらかで処理されて、RNA干渉を媒介することができる活性siRNA分子を生成することができる。
【0095】
治療用核酸を投与/送達するための方法は、当分野において周知である。例えば、治療用核酸分子は、脂質ベシクル、または当分野において公知の他のポリマー担体物質などの、送達用媒体で送達することができる。本開示において使用するのに好適なさらなる脂質をベースとする担体系(これは、本開示の少なくとも1つの修飾された陽イオン性脂質を用いて調製することができる)の非限定的な例には、リポプレックス(例えば、米国特許公開第20030203865号、およびZhang et al., J. Control Release, 100:165-180 (2004)を参照されたい)、pH感受性リポプレックス(米国特許公開第2002/0192275号を参照されたい)、可逆的にマスクされているリポプレックス(例えば、米国特許公開第2003/0180950号を参照されたい)、陽イオン性脂質をベースとする組成物(例えば、米国特許第6,756,054号;および米国特許公開第2005/0234232号を参照されたい)、陽イオン性リポソーム(例えば、米国特許公開第2003/0229040号、同第2002/0160038号および同第2002/0012998号;米国特許第5,908,635号;およびPCT公開番号WO01/72283を参照されたい)、陰イオン性リポソーム(例えば、米国特許公開第2003/0026831号を参照されたい)、pH感受性リポソーム(例えば、米国特許公開第2002/0192274号;およびオーストラリア特許出願公開第2003/210303号を参照されたい)、抗体をコーティングしたリポソーム(例えば、米国特許公開第2003/0108597号;およびPCT公開番号WO00/50008を参照されたい)、リポソームに特異的な細胞タイプ(例えば、米国特許公開第2003/0198664号を参照されたい)、核酸およびペプチドを含有するリポソーム(例えば、米国特許第6,207,456号を参照されたい)、放出性親水性ポリマーにより誘導体化されている脂質を含有するリポソーム(例えば、米国特許公開第2003/0031704号を参照されたい)、脂質に捕捉された核酸(例えば、PCT公開番号WO03/057190およびWO03/059322を参照されたい)、脂質に封入された核酸(例えば、米国特許公開第2003/0129221号;および米国特許第5,756,122号を参照されたい)、他のリポソーム組成物(例えば、米国特許公開第2003/0035829号および同第2003/0072794号;および米国特許第6,200,599号を参照されたい)、リポソームとエマルションとの安定化混合物(例えば、欧州特許第1304160号を参照されたい)、エマルション組成物(例えば、米国特許第6,747,014号を参照されたい)および核酸マイクロエマルション(例えば、米国特許公開第2005/0037086号を参照されたい)が含まれる。
好適な場合、医薬を含む本開示の薬剤、バイオロジクスおよび治療用抗体のいずれも、上記の担体系によって送達することができる。担体系はすべて、呼吸器の気道における感染の部位への組成物の送達を促進するため、標的部分などによりさらに修飾されてもよい。
【0096】
活性剤を送達するための従来的な手段は、生物学的、化学的および物理的障壁により、かなり制限を受けることが多いことが認識されている。通常、これらの障壁は、送達が行われる環境、送達するための標的の環境または標的それ自体によって課される。生物学的または化学的な活性剤は、特に、このような障壁に対して脆弱である。生物学的に活性なまたは化学的に活性な薬理学剤および治療剤を動物に送達する場合、物理的および化学的障壁は、身体によって課される。物理的な障壁(bather)の例は、標的に到達する前に通過する皮膚および様々な器官膜であり、化学的障壁の例には、以下に限定されないが、pHの変動、脂質二重層および分解性酵素が含まれる。細胞膜はまた、薬物送達の有効性に及ぼす有意な効果を有する重要な障壁にもなる。
【0097】
免疫療法剤
別の態様では、本開示は、抗菌性/抗ウイルス性治療剤の使用によって付与される呼吸器感染の排除効果(clearing effect)をさらに増強することができる、1つまたは複数の免疫療法剤を使用する。例えば、免疫療法剤は、抗菌剤の効果が始まった後に送達することができるが、本開示はこの概念に制限されない。本開示は、薬剤のそれぞれに寄与し得る治療的利益が、起こり得る限り、複数の薬剤を含む任意の投与レジメンを企図する。1つまたは複数の免疫療法剤の投与が、感染のさらなる再発に対する予防を実現する免疫賦活活性を有することができることが、本開示の範囲内にやはり企図される。この免疫賦活作用は、薬剤が経鼻または全身的に投与されると、実現され得る。
当業者は、免疫療法剤が、感染または疾患と戦うため、個体の自己免疫系を使用することを狙いとした処置であることを認識している。これは、個体の自己免疫系を亢進することにより、または他の防御免疫系もしくは欠損免疫系の補足部分を提供するために行うことができる。
【0098】
免疫療法は、治療剤による処置の効果を補足および/または増強するために、本開示において使用することができる、生物学的治療法の形態である。一般に、2つの認識されている免疫療法の形態が存在しており、これらは、能動免疫療法および受動免疫療法と呼ばれる。能動免疫療法は、疾患と戦うために身体の自己免疫系を刺激する。受動免疫療法は、身体の免疫応答レベルを増強するため、身体の外側で調製された、抗体などの免疫系構成成分を使用する。免疫療法はまた、ある種のタイプの細胞または抗原を標的とすることにより働くことができるか(特異的免疫療法)、またはそれらは、免疫系をより一般に刺激することにより働くことができる(非特異的免疫療法、または時には、アジュバントと呼ばれる)。本開示によって企図される免疫療法の一部の例は、モノクローナル抗体治療法、非特異的免疫療法およびアジュバント(インターロイキン-2およびインターフェロン-アルファなどの免疫応答を亢進する物質)、免疫調節薬(サリドマイドおよびレナリドマイドなど)およびワクチンを含む。
【0099】
したがって、「免疫調節剤」と称することもできる免疫療法剤は、例えば、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-7またはIL-12)、ある種の他のサイトカイン(例えば、インターフェロン、成長コロニー刺激因子(G-CSF)、イミクイモド)、ケモカインおよび他のタイプの薬剤(抗原、エピトープ、抗体、モノクローナル抗体を含むことができる)、またはこれらの化合物の1つまたは複数を送達する送達用媒体をも含むことができ、組換え免疫系細胞を含むことさえあり得る。このような免疫療法剤は、組換え形態、合成形態、および天然調製物を含むことができる(D'Alessandro, N. et al., Cancer Therapy: Differentiation, Immunomodulation and Angiogenesis, New York: Springer-Verlag, 1993を参照されたい)。
別の実施形態では、免疫療法剤は、身体の先天性免疫系を利用するものであり、望ましくない病原体に対する自然免疫応答の誘発を導入すると、効果を発揮する。
【0100】
本開示の免疫療法剤の導入により、呼吸器感染に、その近傍またはその内部で、薬剤の局所または局限投与によるものを含めた、任意の好適な手法を使用して実現することができる。薬剤はまた、好適な場合、遺伝子治療法によって送達することもできる。例えば、抗体誘発性抗原は、遺伝ベクター、または他には所望の抗原を発現することができる核酸分子を注入する、または他には直接投与することにより導入することができる。抗原自体はまた、標的感染組織に直接投与されてもよい。
標的呼吸器疾患
本開示は、すべてのタイプの感染、場所、サイズおよび特徴を含めた、幅広い範囲の呼吸器疾患を処置することを企図している。例えば、本開示の方法は、例えば、静脈洞炎、インフルエンザおよびライノウイルス(風邪)を処置するのに好適である。
他の実施形態では、以下に限定されないが、以下の呼吸器感染:扁桃炎、咽頭炎、喉頭炎、静脈洞炎、中耳炎、ある種のタイプのインフルエンザ、気管支炎、肺炎および風邪を含めた、実質的にいずれのタイプの呼吸器関連感染も、本開示により処置され得る。
【0101】
本発明の組成物は、ヒトライノウイルス(HRV)の任意の血清型に由来する感染の予防および/または処置に好適なものになるよう企図される。HRVは、非限定的に、A型ライノウイルス(血清型HRV-A1、HRV-A2、HRV-A7、HRV-A8、HRV-A9、HRV-A10、HRV-A11、HRV-A12、HRV-A13、HRV-A15、HRV-A16、HRV-A18、HRV-A19、HRV-A20、HRV-A21、HRV-A22、HRV-A23、HRV-A24、HRV-A25、HRV-A28、HRV-A29、HRV-A30、HRV-A31、HRV-A32、HRV-A33、HRV-A34、HRV-A36、HRV-A38、HRV-A39、HRV-A40、HRV-A41、HRV-A43、HRV-A44、HRV-A45、HRV-A46、HRV-A47、HRV-A49、HRV-A50、HRV-A51、HRV-A53、HRV-A54、HRV-A55、HRV-A56、HRV-A57、HRV-A58、HRV-A59、HRV-A60、HRV-A61、HRV-A62、HRV-A63、HRV-A64、HRV-A65、HRV-A66、HRV-A67、HRV-A68、HRV-A71、HRV-A73、HRV-A74、HRV-A75、HRV-A76、HRV-A77、HRV-A78、HRV-A80、HRV-A81、HRV-A82、HRV-A85,HRV-A88、HRV-A89、HRV-A90、HRV-A94、HRV-A95、HRV-A96、HRV-A98、HRV-A100、HRV-A101、HRV-A102およびHRV-A103を含む)、B型ライノウイルス(血清型HRV-B3、HRV-B4、HRV-B5、HRV-B6、HRV-B14、HRV-B17、HRV-B26、HRV-B27、HRV-B35、HRV-B37、HRV-B42、HRV-B48、HRV-B52、HRV-B69、HRV-B70、HRV-B72、HRV-B79、HRV-B83、HRV-B84、HRV-B86、HRV-B91、HRV-B92、HRV-B93、HRV-B97およびHRV-B99を含む)、およびC型ライノウイルス(非限定的に、血清型HRV-C1、HRV-C2、HRV-C3、HRV-C4、HRV-C5、HRV-C6、HRV-C7、HRV-C8、HRV-C9、HRV-C10、HRV-C11、HRV-C12、HRV-C13、HRV-C14、HRV-C15、HRV-C16、HRV-C17、HRV-C18、HRV-C19、HRV-C20、HRV-C21、HRV-C22、HRV-C23、HRV-C24、HRV-C25、HRV-C26、HRV-C27、HRV-C28、HRV-C29、HRV-C30、HRV-C31、HRV-C32、HRV-C33、HRV-C34、HRV-C35、HRV-C36、HRV-C37、HRV-C38、HRV-C39、HRV-C40、HRV-C41、HRV-C42、HRV-C43、HRV-C44、HRV-C45、HRV-C46、HRV-C47、HRV-C48、HRV-C49、HRV-C50およびHRV-C51を含む)を含むことができる。一部の実施形態では、本発明の組成物は、任意のライノウイルスまたはエンテロウイルス、特に細胞間接着分子1(ICAM-1)に結合する任意のウイルスに由来する、ウイルス感染の予防または処置において有用であることが企図されている。本発明の組成物はまた、非限定的に、A型インフルエンザウイルス(数種の例を挙げると、非限定的に、血清型H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7およびH7N9を含む)、B型インフルエンザウイルスおよびC型インフルエンザウイルスの種を含めた、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルスの属のものを含めた、ヒトインフルエンザウイルスの任意の血清型に由来する、感染の予防および/または処置に好適であることが企図されている。一部の実施形態では、本発明の組成物は、インフルエンザウイルス、レオウイルス、アデノウイルスおよび/またはロタウイルスを含めた、任意のシアル酸結合性ウイルスに由来するウイルス感染の予防または処置に有用であることが企図されている。本発明の組成物は、鼻腔および/または口腔に噴霧されると、理想的には、粘膜上での長期滞留時間(例えば、少なくとも1分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも20分間、少なくとも25分間または少なくとも30分間)を有する、粘膜上に液滴を形成するが、望ましくは、粘膜の過度の乾燥または刺激を引き起こさない。本発明による好ましい組成物は、ヒトライノウイルスおよびヒトインフルエンザウイルス感染を予防または処置するために、鼻粘膜および/または口腔粘膜に適用される。
【0102】
本開示は、一般に、上記の感染のすべての形態を処置および/または防止することができる。例えば、本開示の方法は、有利には、以下に限定されないが、上気道(鼻、鼻洞、喉頭および咽頭)および下気道(気管、一次気管支、気管支、細気管支および肺)を含めた、気道の任意の部分に起こる感染を処置または防止することができる。
【0103】
感染の低減は、感染の成長の測定可能な低下を意味する。例えば、および非限定的に、感染は、本明細書で定義されている処置前に、経時的に測定した成長と比べて、少なくとも約1/10(例えば、1/100、1/1000またはそれ未満)に低減され得る、または少なくとも約10%(例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、95、99または100%)、低下され得る。本発明による感染の低減は、理想的には、本発明の組成物に含有されている活性成分の非存在下で、他は同一の感染組織と比べて、統計学的に有意な程度である。
感染の完全な根絶も、本開示の方法により実現可能である。根絶は、感染および感染生物の排除を指す。感染は、当分野において公知の検出方法を使用して、もはや検出不能である場合、排除されたとみなされる。
医薬組成物
本開示は、本明細書で記載される方法のうちのいずれかにおける使用のための医薬組成物を提示する。医薬組成物は、抗菌/抗ウイルス治療剤を含有し、免疫療法剤を含有してもよい。
【0104】
複数の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に許容される」という用語は、動物における使用であり、より特定すると、ヒトにおける使用について、米国連邦政府もしくは米国州政府の規制機関により承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般に認知されている薬局方において列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、それらと共に治療剤が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体を指す。このような医薬担体は、水、およびラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油、オリーブ油、ゲル(例えば、ハイドロゲル)、ヒマシ油など、石油由来、動物由来、植物由来、または合成由来の油を含む油など、滅菌の液体であり得る。生理食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合に好ましい担体である。また、生理食塩液ならびに水性のデキストロース溶液およびグリセロール溶液も、特に、注射用溶液のための液体担体として援用することができる。
【0105】
薬学的に許容される担体は、対象の粘膜内で、指定された滞留時間をもたらすように選択することができる。一部の実施形態では、本発明の組成物の、粘膜上の「滞留時間」とは、集団を全体として近似するのに十分な複数の個体についての試料を使用する、複数の適用(鼻腔内および/または経口)を伴う研究による、平均滞留時間を表す。一部の実施形態では、初期に適用された有効成分のうちの、少なくとも質量で25%(および、好ましくは、少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)が、指定された時間の持続の後で、粘膜上に依然として存在する。一部の実施形態では、25℃の薬学的に許容される担体は、分散に由来するエネルギーについてのハンセン溶解度パラメータ(δd)、分子間の双極子分子間力に由来するエネルギーについてのハンセン溶解度パラメータ(δp)、水素結合に由来するエネルギーについてのハンセン溶解度パラメータ(δh)であって、それぞれ、約15~約18の間、約12~約15の間の、および約21~約25の間である、ハンセン溶解度パラメータを有する。
【0106】
薬学的に許容される担体は、水性であり得る。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、水銀系保存剤を含有しない。溶媒は、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオールであることが可能であり、例えば、緩衝水、0.9パーセントの生理食塩水、緩衝水性エタノール溶液など、様々な水性担体を使用することができる。これらの担体のうちのいずれかの組合せは、本発明の範囲内にある。これらの組成物は、従来の、周知の滅菌法により滅菌処理することもでき、滅菌濾過することもできる。結果として得られる溶液は、使用のためにパッケージングすることもでき、別の医薬に対するアジュバントとして混合することもできる。組成物は、pH調整剤およびpH緩衝剤、等張性調整剤、香味改変剤、甘味剤、保湿剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなど、生理学的条件を近似するのに要請される、薬学的に許容される補助物質を含有し得る。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、水およびポリオールの混合物である。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、水およびプロパンジオール(例えば、1,2-プロパンジオール(1,2-propendediol)、1,3-プロパンジオール)の混合物である。一部の実施形態では、医薬組成物は、水およびグリセリンの混合物である。薬学的に許容される担体は、プロパンジオールまたはグリセリンの、水性担体の質量で、約1%~約35%(例えば、約5%~約30%など)の水溶液であり得る。一部の薬学的に許容される担体は、20%の1,3-プロパンジオール水溶液、20%のグリセリン水溶液、10%の1,3-プロパンジオール水溶液、10%のグリセリン水溶液、1%のヒマワリ油および5%のポリソルベート80を伴う20%の1,3-プロパンジオール水溶液、1%のヒマワリ油および5%のポリソルベート80を伴う20%のグリセリン水溶液、1%のヒマワリ油および5%のポリソルベート80を伴う10%の1,3-プロパンジオール水溶液、1%のヒマワリ油および5%のポリソルベート80を伴う10%のグリセリン水溶液、Versaflex V-175ポリマー乳化系(すなわち、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸グリセリル、クエン酸ステアリン酸(sterate)グリセリル、スクロース、マンナン、およびキサンタンガム)、3%のヒマワリ油を伴うVersaflex V-175ポリマー乳化系、3%のヒマワリ油および約5~約30%のプロパンジオールまたはグリセリンを伴うVersaflex V-175ポリマー乳化系、3%のアセチル化モノグリセリドを伴うVersaflex V-175乳化系、ならびに3%のアセチル化モノグリセリドおよび約5~約30%のプロパンジオールまたはグリセリンを伴うVersaflex V-175乳化系を含む。
【0107】
適切な医薬賦形剤は、デンプン、ブドウ糖、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。組成物は、所望の場合、また、少量の保湿剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有し得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル、粉剤、徐放製剤などの形態を取り得る。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど、標準的な担体を含み得る。適切な医薬担体の例については、"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E. W. Martinにおいて記載され、その内容が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。このような組成物は一般に、患者への適正な投与のための形態をもたらすように、治療有効量の治療剤および/または免疫療法剤を、適量の担体と共に、精製形態で含有するであろう。製剤は、投与方式に適するものとする。
【0108】
複数の実施形態では、治療剤および/または免疫療法剤を、即時放出組成物、または、例えば、活性物質の溶解および/もしくは拡散を制御することによる制御放出組成物として、局所投与する。溶解および/または拡散を制御した放出は、活性物質を、適切なマトリックスへと組み込むことにより達成することができる。制御放出マトリックスは、シェラック、蜜蝋、糖蝋(glycowax)、カストールワックス、カルナウバロウ、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセロール、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリ-dl-乳酸、酪酸酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリレート、メチルメタクリレート、2-ヒドロキシメタクリレート、メタクリレートハイドロゲル、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリレート、および/またはポリエチレングリコールのうちの1つまたは複数を含み得る。制御放出マトリックス製剤では、マトリックス材料はまた、例えば、水和メチル(metyl)セルロース、カルナウバロウおよびステアリルアルコール、カルボポール934、シリコーン、トリステアリン酸グリセリル、メチルアクリレート-メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、および/またはハロゲン化フルオロカーボンも含み得る。
【0109】
関連する実施形態では、制御放出マトリックスは、ハイドロゲルである。ハイドロゲルは、大量の水を取り込むことが可能な、三次元の、親水性または両親媒性のポリマー性ネットワークである。ネットワークは、共有結合的な化学的架橋または物理的架橋(例えば、イオン性相互作用、疎水性相互作用、エンタングルメント)の存在に起因して不溶性である、ホモポリマーまたはコポリマーからなる。架橋は、ネットワーク構造および物理的完全性を提供する。ハイドロゲルは、それらが、水性媒体中で膨潤することを可能とする、水との熱力学的適合性を呈示する。ネットワーク鎖は、小孔が存在し、これらの小孔の実質的な画分が、1nm~1000nmの間の大きさとなるような形で接続されている。
【0110】
ハイドロゲルは、親水性の生体ポリマーまたは合成ポリマーを架橋することにより調製することができる。親水性生体ポリマーの物理的架橋または化学的架橋から形成されるハイドロゲルの例は、ヒアルロナン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、デキストラン、ペクチン、カラギーナン、ポリリシン、ゼラチン、アガロース、アクリレート(メタクリレート)-オリゴラクチド-PEO-オリゴラクチド-アクリレート(メタクリレート)、ポリ(エチレングリコール)(PEO)、ポリ(プロピレングリコール)(PPO)、PEO-PPO-PEOコポリマー(Pluronics)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、PL(G)A-PEO-PL(G)Aコポリマー、ポリ(エチレンイミン)などを含むがこれらに限定されない。それの内容が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Hennink and van Nostrum, Adv. Drug Del. Rev. 54:13-36 (2002); Hoffman, Adv. Drug Del. Rev. 43:3-12 (2002); Cadee et al., J Control. Release 78:1-13 (2002); Surini et al., J. Control. Release 90:291-301 (2003);および米国特許第7,968,085号を参照されたい。これらの材料は、直鎖状または分枝状の多糖またはポリペプチドから作られた、高分子量の骨格鎖からなる。
【0111】
呼吸器感染またはアレルギーを処置または防止するのに有効な、本開示の医薬組成物の量は、病原体の性格に依存する場合があり、血液検査および/またはイメージング法を含む、標準的な臨床的技法により決定することができる。加えて、in vitroアッセイを援用して、最適な投与量範囲を同定する一助としてもよい。製剤中で援用される正確な用量はまた、投与経路、および感染の重症度にも依存する場合があり、医療従事者の判断および各患者の状況に従い決定するべきである。有効用量は、in vitro試験系または動物モデル試験系から導出された、用量反応曲線から外挿することができる。
投与量および投与レジメン
これらの薬剤を含有する、治療剤、免疫療法剤、または組成物を、剤形と適合的な方式で、かつ、治療的に有効であり、防御的であり、免疫原性であり得るような量で投与する。
【0112】
薬剤および/または組成物は、経鼻経路、エアゾール経路、局所経路、口内および舌下経路、経口経路、皮内経路、皮下経路、ならびに非経口経路を含むがこれらに限定されない、異なる経路を通して投与することができる。本明細書で使用される非経口という用語は、例えば、眼内注射、皮下注射、腹腔内注射、皮内注射、静脈内注射、筋内注射、関節内注射、動脈内注射、滑膜内注射、胸骨下(intrastemal)注射、髄腔内注射、病変内注射、および頭蓋内注射、または他の注入法を含む。
一部の実施形態では、治療剤の投与を、局所送達または領域内(例えば、鼻腔内)送達する。一部の実施形態では、デバイスを使用して、抗菌組成物を、気道へと送達する。組成物は、吸入器、アトマイザー、ネブライザー、経鼻スプレーボトル、経鼻スプレーポンプ、人工吸入器、圧搾空気タンク、噴霧器、および経鼻カニューレの使用を介して送達することができる。組成物は、送気、吸入、経口服用、舌下、およびこれらの任意の組合せを介して送達することができる。
【0113】
複数の実施形態では、本開示に従い製剤化された薬剤および/または組成物は、全身性免疫反応を惹起するような方式で製剤化および送達される。したがって、一部の実施形態では、製剤を、有効成分を、液体担体と、一様かつ緊密に会合させることにより調製する。投与に適する製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および、製剤を所期のレシピエントの血液と等張性とする溶質を含有し得る、水性および非水性の滅菌溶液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。製剤は、単位用量の容器内に存在する場合もあり、複数回投与用量の容器内に存在する場合もあり、例えば、シーリングされたアンプル内およびバイアル内に存在することが可能であり、使用の直前に、滅菌の液体担体、例えば、水の添加だけを要請する、冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即席溶液および即席懸濁液は、当業者が一般に使用する、滅菌粉剤、顆粒、および錠剤から調製することができる。
薬剤および/または組成物は、ガス、溶液、エマルションおよび懸濁液、ゲル、フォーム、スプレー、ミスト、ローション、マイクロスフェア、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、リポソームなどを含むがこれらに限定されない、異なる形態で投与することができる。
【0114】
薬剤および/または組成物を、剤形と適合的な方式で、かつ、治療的に有効であり、免疫原性であり、防御的であり得るような量で投与する。投与される量は、例えば、感染の規模、および抗体を合成し、かつ/または細胞介在性免疫反応をもたらす個体の免疫系の能力を含む、処置される対象に依存する。投与するのに要請される有効成分の正確な量は、医療従事者の判断に依存する。しかし、適切な投与量範囲は、当業者にたやすく決定可能であり、投与1回当たりの有効成分マイクログラム~ミリグラムのオーダーであり得る。投与量はまた、投与経路にも依存する場合があり、宿主の体格に従い変動し得る。
【0115】
薬剤および/または組成物は、対象へと、対象における防御的免疫反応を刺激するのに有効な量で投与されるものとする。任意の特定の対象のための、具体的な投与量および処置レジメンは、援用される具体的化合物の活性、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食餌、投与回数、排出速度、薬物の組合せ、感染、状態、または症状の重症度および経路、対象の疾患、状態、または症状に対する素因、投与法、および処置する医師の判断を含む様々な因子に依存し得る。実際の投与量は、当業者がたやすく決定することができる。
例示的な単位剤形は、投与される成分の用量もしくは単位、またはその適切な画分を含有する単位剤形である。本開示の製剤は、本明細書で言及される成分に加えて、当業者が一般に使用する他の薬剤も含み得ることを理解されたい。
【0116】
従来の全身投与処置では、治療有効投与量が、化合物の、約0.1ng/ml~約50~100μg/mlの血清濃度をもたらすことが典型的である。医薬組成物は典型的に、1日当たり体重1キログラム当たりの化合物約0.001mg~約2000mgの投与量をもたらす。例えば、ヒト患者への投与のための投与量は、1~10μg/kg、20~80μg/kg、5~50μg/kg、75~150μg/kg、100~500μg/kg、250~750μg/kg、500~1000μg/kg、1~10mg/kg、5~50mg/kg、25~75mg/kg、50~100mg/kg、100~250mg/kg、50~100mg/kg、250~500mg/kg、500~750mg/kg、750~1000mg/kg、1000~1500mg/kg、1500~2000mg/kg、5mg/kg、20mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、500mg/kg、1000mg/kg、1500mg/kg、または2000mg/kgの範囲であり得る。医薬の単位剤形は、単位剤形1つ当たりの化合物または必須成分の組合せ、約1mg~約5000mg、例えば、約100~約2500mgをもたらすように調製される。
【0117】
一般に、剤形中の本化合物の治療有効量は通例、使用される化合物、処置される状態または感染、および投与経路に応じて、1日当たり患者1kg当たり約0.025mg~約2.5gをやや下回る範囲であり、好ましくは、1日当たり患者1kg当たり約0.1mg~約100mg、またはこれを大幅に上回る範囲であるが、本開示では、この投与量範囲に対する例外も想定することができる。例示的な実施形態では、本開示に従う抗菌/抗ウイルス組成物は、投与溶液1ml当たり約0.5mg~1ml当たり約50mgの範囲の量で、鼻腔内投与することができる。別の例示的な実施形態では、本開示に従う抗菌組成物は、約10mg/ml~約30mg/mlの範囲の量で鼻腔内投与することができる。抗菌組成物の投与量は、処置される感染の種類、使用される特定の化合物、治療剤、および他の臨床的因子、ならびに患者の状態に依存し得る。本開示は、ヒトへのおよび獣医科における使用の両方に適用されることを理解されたい。
薬剤および/または組成物は、所望の効果を達成するのに要請される、1回または複数回の投与で投与することができる。したがって、薬剤および/または組成物は、1、2、3、4、5、またはこれを超える回数の投与で投与することができる。さらに、投与は、任意の期間、例えば、数時間、数日間、数週間、数か月間、および数年間隔てることもできる。
薬剤および/または組成物は、液体もしくは乾燥粉末、またはマイクロスフェアの形態として製剤化することができる。
薬剤および/または組成物は、保存の持続期間に応じて、約-100℃~約25℃の温度で保存することができる。薬剤および/または組成物はまた、室温を含む異なる温度の凍結乾燥状態でも保存することができる。薬剤および/または組成物は、当業者に公知の従来の手段により滅菌処理することができる。このような平均値は、濾過を含むがこれらに限定されない。
【0118】
単一の剤形を作製するのに、担体材料と組み合わせ得る有効成分の量は、処置される宿主および特定の投与方式に応じて変動し得る。複数の実施形態では、調製物は、約0.1%~約95%(質量比)の活性化合物、約20%~約80%の活性化合物、またはこれらの間の任意の百分率の活性化合物を含有し得る。
複数の実施形態では、製剤のpHは、製剤化される化合物またはその送達形態の安定性を増強するように、薬学的に許容される酸、塩基、または緩衝剤で調整することができる。
複数の実施形態では、医薬担体は、滅菌の液体調製物、例えば、滅菌の水性懸濁液または油性懸濁液の形態であり得る。
援用され得る、許容される媒体および溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。
【0119】
加えて、滅菌の固定油も溶媒または懸濁媒として従来から援用されている。この目的で、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む、任意の銘柄の固定油を援用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸も、オリーブ油またはヒマシ油、とりわけ、それらのポリオキシエチル化形など、天然の薬学的に許容される油と同様、注射剤の調製において有用である。これらの油溶液または油懸濁液はまた、長鎖アルコールによる希釈剤または分散剤、あるいはカルボキシメチルセルロース、またはエマルションおよび/もしくは懸濁液など、薬学的に許容される剤形の製剤中で一般に使用される類似の分散剤も含有し得る。
TWEEN(登録商標)もしくはSPAN(登録商標)など、一般に使用される他の界面活性剤、および/または薬学的に許容される固体、液体、もしくは他の剤形の製造において一般に使用される、他の類似の乳化剤もしくはバイオアベイラビリティー増強剤もまた、製剤化の目的で使用することができる。
複数の実施形態では、薬剤および/または組成物は、エクソソーム送達系で送達することができる。エクソソームとは、多小胞体の、細胞膜との融合時に、細胞外環境へと放出される小型の膜小胞である。エクソソームは、造血系細胞、正常上皮細胞、さらには一部の腫瘍細胞を含む、多様な細胞型により分泌される。エクソソームは、MHCクラスI、多様な共刺激分子、および一部のテトラスパニンを保有することが公知である。近年の研究は、天然のエクソソームを、免疫刺激因子として使用する潜在的可能性を示している。
【0120】
本開示ではまた、ナノ粒子を使用する、薬剤および/または組成物の送達も想定される。例えば、本明細書で提示される薬剤および/または組成物は、少なくとも1つまたは複数の薬剤をそれへと連結した、例えば、ナノ粒子の表面へと連結したナノ粒子を含有し得る。組成物は典型的に、少なくとも1つまたは複数の薬剤をそれへと連結した各ナノ粒子を伴う、多くのナノ粒子を含む。ナノ粒子は、コロイド金属であり得る。コロイド金属は、液体の水の中に分散させた、任意の水不溶性の金属粒子または金属化合物を含む。典型的に、コロイド金属は、水溶液中の、金属粒子の懸濁液である。コロイド形態とし得る任意の金属であって、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、白金、パラジウム、および鉄を含む金属を使用することができる。場合によって、例えば、HAuCl4から調製された金ナノ粒子を使用する。ナノ粒子は、任意の形状であることが可能であり、約1nm~約10nmのサイズ、例えば、約2nm~約8nm、約4~約6nm、または約5nmのサイズの範囲であり得る。当業者には、HAuCl4に由来する金コロイドナノ粒子を含むコロイド金属ナノ粒子を作製するための方法が公知である。例えば、本明細書で記載される方法のほか、別の場所(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2001/005581号;同第2003/0118657号;および同第2003/0053983号)に記載されている方法は、ナノ粒子を作製するためのガイダンスとして有用である。
【0121】
ある特定の場合に、ナノ粒子は、その表面へと連結した、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の活性薬剤を有し得る。典型的に、多くの活性薬剤分子は、多くの位置で、ナノ粒子の表面へと連結されている。したがって、ナノ粒子について、例えば、それへと連結された2つの活性薬剤を有すると記載する場合、ナノ粒子は、各々がその表面へと連結された、その固有の分子構造を有する、2つの活性薬剤を有する。場合によって、1つの活性薬剤分子を、単一の接合部位を介して、ナノ粒子へと連結することもでき、複数の接合部位を介して、ナノ粒子へと連結することもできる。活性薬剤は、ナノ粒子表面へと、直接的に連結することもでき、間接的に連結することもできる。例えば、活性薬剤は、ナノ粒子の表面へと、直接的に連結することもでき、介在リンカーを介して、間接的に連結することもできる。
【0122】
任意の種類の分子を、リンカーとして使用することができる。例えば、リンカーは、少なくとも2個の炭素原子(例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはこれを超える炭素原子)を含む脂肪族鎖であることが可能であり、ケトン、エーテル、エステル、アミド、アルコール、アミン、尿素、チオウレア、スルホキシド、スルホン、スルホンアミドを含む、1つまたは複数の官能基、および官能基に対するジスルフィドで置換することができる。ナノ粒子が、金を含む場合、リンカーは、任意のチオール含有分子であり得る。チオール基の金との反応は、共有結合的スルフィド(-S-)結合を結果としてもたらす。当技術分野では、リンカーのデザインおよび合成が周知である。
【0123】
複数の実施形態では、ナノ粒子を、標的化剤/部分へと連結する。標的化官能基は、ナノ粒子が、標的(例えば、鼻粘膜)に、他の組織内より高濃度で蓄積することを可能とし得る。一般に、標的化分子は、結合対の第2のメンバーに対するアフィニティーおよび特異性を呈示する、結合対の1つのメンバーであり得る。例えば、抗体または抗体断片による治療剤は、ナノ粒子を、体内の特定の領域または分子(例えば、抗体が特異的である領域または分子)へと標的化し得る一方で、また、治療的機能も果たす。場合によって、受容体または受容体断片は、ナノ粒子を、体内特定の領域、例えば、その結合対メンバーの位置へと標的化し得る。低分子など、他の治療剤も同様に、ナノ粒子を、受容体、タンパク質、または治療剤に対してアフィニティーを有する他の結合性部位へと標的化し得る。
本開示の組成物が、1つまたは複数のさらなる治療剤または予防剤を含む場合、治療剤/増強剤/免疫療法剤およびさらなる薬剤は、単剤療法レジメンで通常投与される投与量の、約0.1~100%の間、または約5~95%の間の投与量レベルで存在するものとする。さらなる薬剤は、複数の投与レジメンの一部として、本開示の薬剤と別個に投与することができる。あるいはこれらのさらなる薬剤は、本開示の薬剤と併せて、単一の組成物へと混合された、単一剤形の一部でもあり得る。
【0124】
本開示の薬剤および/または組成物の投与は、病原体に対する免疫反応を誘発する。典型的に、用量は、例えば、対象の年齢、対象の健康状態および全身状態、対象の免疫系が免疫反応をもたらす能力、対象の体重、対象の性別、食餌、投与回数、所望される防御の程度、および他の臨床因子に基づき、この範囲内に調整することができる。当業者はまた、生物学的半減期、バイオアベイラビリティー、投与経路、ならびに本開示の薬剤および/または組成物を製剤化する場合の毒性などのパラメータもたやすく扱うことができる。
以下の例は、本開示のいくつかの実施形態をさらに裏付ける。例は、本開示を例示するが、本開示を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0125】
本明細書で記載される構造、材料、組成物、および方法は、本開示の代表例であることを意図するものであり、本開示の範囲が、例の範囲により限定されるわけではないことを理解されたい。当業者は、本開示が、開示される構造、材料、組成物、および方法についての変動を伴って実施される場合があり、このような変動も、本開示の範囲内にあるとみなされることを認識するであろう。
(例1)
感染を防止する、非ヒト対象における抗菌組成物の投与
表1による成分を含有する様々な濃度の抗菌組成物を、年齢、性別、および体重について選択された健常の非感染マウス群へと、鼻腔内投与する。組成物が効果を及ぼすことを可能とするのに適する時間の後、マウスに、用量を変動させる呼吸器病原体(インフルエンザ、ライノウイルス、細菌、および真菌)を、経鼻接種する。その後の異なる時点に、試料をマウスから抽出し、微生物感染について解析する。感染の欠如は、抗菌組成物が、浮遊病原体が、マウスに感染することを防止することを示す。抗菌組成物は、鼻粘膜の濾過能を増強し、浮遊病原体に対して防御する。
【0126】
(例2)
感染を処置する、非ヒト対象における抗菌組成物の投与
年齢、性別、および体重について選択された健常の非感染マウス群に、用量を変動させる呼吸器病原体(インフルエンザ、ライノウイルス、細菌、および真菌)を、経鼻接種する。病原体がマウスに感染するのに適する時間を与えた後で、表1による成分を含有する様々な濃度の抗菌組成物(例1と同様の)を、感染したマウスへと、鼻腔内投与する。組成物が効果を及ぼすことを可能とするのに適する時間の後、試料をマウスから抽出し、微生物感染について解析する。感染の欠如は、抗菌組成物が、マウスにおける呼吸器感染を処置することを示す。抗菌組成物は、鼻粘膜の濾過能を増強し、浮遊病原体により引き起こされる感染を処置する。
【0127】
(例3)
感染を処置する、ヒト対象における抗菌組成物の投与
既存のインフルエンザ感染またはライノウイルス感染を提示しないヒト対象群を、処置、および呼吸器感染のマーカーについてスクリーニングするのに、それらのベースラインの血液の採取のために選択する。表1による成分(例1および2と同様の)を含有する抗菌組成物を、対象へと、鼻腔内投与する。組成物が効果を及ぼすことを可能とするのに適する時間の後、対象を、浮遊ライノウイルスまたは浮遊インフルエンザへと曝露する。対象が感染したのかどうかを決定するのに適する時間の後、対象の血液を再度採取し、呼吸器感染の全身性マーカーについてスクリーニングし、対象を観察し、呼吸器感染の目視可能な証拠について問題とする。感染の欠如は、抗菌組成物が、呼吸器感染を防止することを示す。抗菌組成物は、鼻粘膜の濾過能を増強し、ウイルスが、呼吸器感染を引き起こすことを防止する。
【0128】
(例4)
A16型ライノウイルスを接種された、ヒト気道上皮の完全分化3D細胞モデル上の組成物についての測定
多様な組成物を、鼻腔生検、気管生検、または気管支生検から単離されたばかりの初代ヒト上皮細胞で構成された、ヒト気道上皮の3Dモデル(MucilAir(商標))を保護するそれらの能力について調べた。MucilAir(商標)は、気道に由来する、基底細胞、線毛細胞、および粘液細胞からなる。これらの多様な細胞型の比率は、in vivoにおいて観察される比率と比較して保存されている(Huang et al., Drug Discovery and Development-Present and Future, 8, 201)。さらに、上皮は、脱分化細胞にも由来している。上皮(MucilAir(商標)プール)は、14例の異なる正常鼻腔ドナーから単離された細胞の混合物で再構成し、41日間にわたり培養した。上皮細胞は、生検(鼻腔および気管支)から新たに単離し、次いで、半多孔性膜(Costar Transwell、小孔サイズ0.4μm)へと播種した。気液界面における約45日間にわたる培養の後、上皮は、形状および機能の両面において、完全に分化した。45日間にわたる培養の後、上皮は、完全に線毛性であり、粘液を分泌し、電気的に密着している(TEER>200Ωcm2)。CFTR、EnaC、Na/K ATPアーゼなど、主要な上皮イオンチャネルの活性は保存され、上皮は、炎症促進性刺激である、TNF-αに対して、調節的かつ有向的に反応することが示される(Huang et al., 2011 and Huang et al., 3R-Info-Bulletin No. 41, October 2009)。
【0129】
多様な有効成分を伴う組成物は、表5に示す通りに調製した。各組成物は、緩衝生理食塩液(0.9%のNaCl、1.25mMのCaCl2、10mMのHEPES)中で調製した。本明細書で使用される「HRV1」とは、アポラクトフェリンを単独有効成分として含む組成物(すなわち、HRV1-1、HRV1-2、およびHRV1-3)を指し、「HRV2」とは、リゾチームを単独有効成分として含む組成物(すなわち、HRV2-1、HRV2-2、およびHRV2-3)を指し、「HRV3」への言及は、可溶性ICAM-1(sICAM)を単独有効成分として含む組成物(すなわち、HRV3-1、HRV3-2、およびHRV3-3)を指す。「HRV4」への言及は、アポラクトフェリン、リゾチーム、および可溶性ICAM-1の組合せを含む組成物を指す。
【0130】
【表5】
【0131】
A16型ヒトライノウイルスによる接種 (時間=0)の直前に、20μLの各製剤を、個別のMucilAir(商標)プールの頂端部へと適用した。20μLの製剤の各々はまた、接種の3.5および24時間後(「pi」)にも適用した。A16型ヒトライノウイルスの接種は、34℃、5%CO2の、3Dモデルの頂端側において、3時間にわたる、1ml当たり2×106個のヒトA16型ライノウイルス(臨床株:QCHRV.16)50μLの適用により達成した。ウイルス原液は、MucilAir(商標)培養液中で作製し、精製または濃縮を伴わずに、培養培地中で希釈した。
接種(時間=0)の後、接種物を除去するために、上皮を、MucilAir(商標)用培養培地で、2回洗浄した。200μlのMucilAir(商標)用培養培地による、無細胞の、頂端部洗浄(20分間)液を、接種の3.5時間後に回収し、次いで、接種の24および48時間後に、-80℃で保存した。
【0132】
QIAamp(登録商標)ウイルスRNAキット(Qiagen)により、頂端部洗浄液から、ウイルスRNAを抽出した。ウイルスRNAを、TaqMan ABI 7000を伴う定量的RT-PCR(QuantiTect Probe RT-PCR、Qiagen)により定量化した。既知濃度の、対応するウイルスRNAを使用して検量線を確立し、定量化は、絶対定量化とした。データは、そうでないことが示されない限りにおいて、ウイルスの複製についての結果を例示するグラフ上に、1ml当たりのゲノムコピー数として提示する。「(+)」表示を伴う実験およびデータは、接種された培地上で実施された実験を指し、「(-)」表示を伴う実験およびデータは、ウイルスを接種されていない培地上で実施された実験を指す。2つのデータセットを比較するには、スチューデントの対応のないt検定を使用した。3つまたはこれを超える試料の平均値を比較するには、デネットの多重比較検定により、一元分散分析(ANOVA)を実施した(***=p<0.001、**=p<0.01、*=p<0.05)。陰性対照としては、非感染培養物および非処置培養物(モック)を使用した。
【0133】
HRV化合物の潜在的な作用を比較するため、陽性対照を含めた。毒性作用については、培養物を、緩衝生理食塩液(0.9%のNaCl、1.25mMのCaCl2、10mMのHEPES)中に10%のTriton X-100 20μLで処理した。抗ライノウイルス効果については、5μMのルピントリビル20μLを、基本培地へと添加した。DMSO中に2mMのルピントリビル(Santa Cruz Biotechnologies)原液(-20℃)を、MucilAir(商標)培地中に5μM(最終濃度を0.25%のDMSOとする)へと希釈した。
任意の図中の誤差バーは、平均値の標準誤差(SEM)を指す。すべての比較は、媒体感染(有効成分を伴わない)に由来するデータであり、報告されるすべてのデータは、3つの個別のインサート(n=3)における単回の測定値である。すべての報告結果は、統計学的に有意である。
【0134】
TEERの測定
組織の完全性は、経上皮電気抵抗(「TEER」)の測定を使用してモニタリングした。TEERは、いくつかの因子の影響を受け得る上皮の状態を反映する動的パラメータである。例えば、穴が存在した場合、または細胞の結合が破壊された場合、TEER値は一般に、100Ωcm2を下回るであろう。これに対し、上皮が損傷されていない場合、TEER値は典型的に、200Ωcm2を上回る。TEER値の顕著な低下(しかし>100Ωcm2である)は一般に、イオンチャネルの活性化を反映する。TEER値の大幅な増大は、イオンチャネル活性の遮断または線毛細胞の破壊を反映する。上皮が損傷されている場合、TEERの低下は、LDH放出の増大または細胞生存率の低下と関連するであろう。TEERモニタリングは、接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)に実施した。Triton X-100対照は、細胞損傷後のTEERの喪失(<100Ωcm2)に対応する。200μLのMucilAir(商標)培地の、MucilAir(商標)培養物の頂端コンパートメントへの添加の後で、EVOMXボルトオームメーター(World Precision Instruments UK、Stevenage)により、各状態について、抵抗を測定した。上皮へと直列で接続された膜抵抗(100Ω)により、測定された抵抗値(Ω)を、TEER(Ωcm2)へと転換した。上皮の総表面積は、0.33cm2である。TEERは、以下の式:
TEER(Ωcm2)=(抵抗値(Ω)-100(Ω))×0.33(cm2
により計算することができる。
TEERの測定結果は、図1~4に見出される。見て分かるように、接種の24時間後(1日後)および接種の48時間後(2日後)において、被験HRV製剤のうちのいずれについても、TEERの著明な変化は観察されなかった。
【0135】
乳酸デヒドロゲナーゼの放出
乳酸デヒドロゲナーゼ(「LDH」)は、細胞膜が破断すると、培養培地へと急速に放出される、安定的な細胞質酵素である。各時点において回収された、100μlの側底部培地を、製造元の指示書(Sigma、Roche、11644793001)に従い、Cytotoxicity Detection KitPLUSの反応混合物と共にインキュベートした。次いで、マイクロプレートリーダーにより、490nmにおける各試料の吸光度を測定することにより、LDHの放出量を定量化した。細胞傷害の百分率を決定するために、以下の式:
細胞傷害(%)=(Aexp-Alow)/(Ahigh-Alow
を使用して、実験による吸光度(Aexp)の、低値対照との差違を、低値対照の吸光度値(Alow)と、高値対照の吸光度値(Ahigh)との差違と比較する。5%を下回る百分率は、LDHの、培地中の生理学的放出を反映する。LDHの測定は、接種の24時間後および48時間後において行った。結果を、図5~8に示す。見て分かるように、薬物製剤は、3DモデルにおけるLDH放出を増大させない。
【0136】
線毛運動周波数
線毛運動周波数(「CBF」)は、3つの部分:カメラ(Sony XCD V60 Firewire)、PCIカード、および特殊なソフトウェアパッケージからなる実験系により測定した。256の画像を、室温、高フレームレート(125fps)で捕捉し、次いで、Epithelixソフトウェアを使用して、線毛運動周波数を計算した。CBF値は、温度、粘液の粘性、またはMucilAir(商標)3D上皮モデルの頂端部表面に適用される液体(緩衝生理食塩液など)などのパラメータに起因して、変動を被り得る。したがって、結果は、感染媒体対照と、薬物組成物との比が>20%に達した場合に、著明であると考える。図9~12は、接種の24時間後および48時間後においてなされた、線毛運動周波数測定の結果を例示する。見て分かるように、HRVによる処置は、線毛運動周波数に対する著明な効果を示さなかった。
【0137】
粘膜線毛クリアランス
粘膜線毛クリアランス(「MCC」)は、5倍の対物レンズを伴うOlympus BX51顕微鏡へと接続された、Sony XCD-U100CRカメラを使用してモニタリングした。MucilAir(商標)の頂端部表面に、直径を30μmとするポリスチレン製のマイクロビーズ(Sigma、84135)を添加した。マイクロビーズの運動を、室温、毎秒2フレームで、30画像にわたり、ビデオトラック化した。インサート1つ当たり3つの動画を撮影した。平均ビーズ運動速度(Ωm/秒)は、ImageProPlus 6.0ソフトウェアにより計算した。毎秒10μm未満の粘膜線毛クリアランス値を、病理学的と考える。図13は、接種の48時間後に測定された、単独および組合せによる有効成分の各々による処置時における、A16型ライノウイルス感染の、MCCに対する影響を例示する。見て分かるように、組合せ処置は、被験用量にわたり、他の被験製剤と比較して、優れ、かつ、一貫した反応を実証した。低濃度のHRV1製剤およびHRV3-3製剤では、MCCが低下した。しかし、これらの負の影響は、HRV4製剤については、いかなる濃度でも見られなかった。驚くべきことに、ある用量(例えば、HRV1-1およびHRV1-2を参照されたい)のアポラクトフェリン(apolactoferring)単独では、線毛運動が阻害されたが、各用量のHRVを組み合わせたところ、影響は完全に改善された。
【0138】
頂端部におけるライノウイルスの複製
200μLの頂端部洗浄液からの20μLを、QIAamp(登録商標)ウイルスRNAキット(Qiagen)によるウイルスRNAの抽出に使用する結果として、60μLのRNA溶出容量をもたらした。ウイルスRNAを、5μLのウイルスRNA、Mastermix、ピコルナウイルス科特異的であり、かつ、汎ピコルナウイルス科用である、2つのプライマー、ならびにピコルナウイルス科用プローブを、FAM-TAMRAレポーター-クエンチャー染料と共に使用する、定量的RT-PCR(QuantiTect Probe RT-PCR、Qiagen)により定量化した。既知濃度のA16型ライノウイルスの4つの希釈液のほか、RNA抽出およびRT-PCRについての対照を含め、プレートを、Applied Biosystems製のTaqMan ABI 7000にかけた。カウント(「Ct」)データは、希釈率で補正された検量線に照らして報告し、1ml当たりのゲノムコピー数として提示した。図14~17は、A16型ライノウイルスの複製についての結果を例示する。見て分かるように、ライノウイルスは、著明な複製を示したが、これは、ルピントリビルにより阻害された。HRV1製剤およびHRV2製剤を使用したところ、ライノウイルス複製の著明な変化は、達成されなかった。HRV3製剤の適用は、ルピントリビルの用量反応関係と類似の用量反応関係を結果としてもたらす。HRV4製剤は、ルピントリビル処置より、はるかに大きな程度で、A16型ライノウイルス複製に対する用量依存性反応を示す。
【0139】
酵素連結レクチンアッセイ
ムチン分泌を、回収された粘液の炭水化物基を検出する、酵素連結レクチンアッセイ(「ELLA」)プロトコールを使用して定量化した。96ウェルプレートを、pH6.8に調整されたリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)中に6μg/mlのコムギ(Triticum vulgaris(wheat))(Sigma、L0636)由来レクチンでコーティングし、37℃で1時間にわたりインキュベートした。高塩濃度のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.5MのNaCl、PBS中に0.1%のTween-20)による洗浄ステップの後、試料および標準物質(Mucin from porcine stomach Type II、Sigma、M2378)を、37℃で30分間にわたりインキュベートした。洗浄の後、プレートを、pH7.4に調整された0.1%のBSA-PBS中に1μg/mlの、Glycine Max(ダイズ)(Sigma、L2650)に由来する、ペルオキシダーゼコンジュゲートレクチンを含有する検出溶液と共に、37℃で30分間にわたりインキュベートした。最終的な洗浄ステップの後、基質試薬(TMB)を添加し、暗所内、室温で10分間にわたりインキュベートした。反応を、2NのH2SO4により停止させ、プレートを、450nmで読み取った。図18~21は、24時間後および48時間後における、頂端部培地に由来するムチン量を例示する。見て分かるように、HRV被験製剤は、ムチン分泌に対して、著明な効果を示さなかった。
【0140】
(例5)
A H1N1型インフルエンザを接種された、ヒト気道上皮の完全分化3D細胞モデル上の組成物についての測定
上皮(MucilAir(商標)プール)は、14例の異なる正常鼻腔ドナーから単離された細胞の混合物で再構成し、41日間にわたり培養した。多様な有効成分を伴う組成物は、表6に示す通りに調製した。各組成物は、緩衝生理食塩液(0.9%のNaCl、1.25mMのCaCl2、10mMのHEPES)中で調製した。本明細書で使用される「IAV1」とは、アポラクトフェリンを含む組成物(すなわち、IAV1-1、IAV1-2、およびIAV1-3)を指し、「IAV2」への言及は、リゾチームを含む組成物(すなわち、IAV2-1、IAV2-2、およびIAV2-3)を指し、「IAV3」への言及は、可溶性ICAM-1を含む組成物(すなわち、IAV3-1、IAV3-2、およびIAV2-3)を指す。「IAV4」への言及は、アポラクトフェリン、リゾチーム、3’-シアリルラクトース、および6’-シアリルラクトースの組合せを含む組成物の例を指す。これらの多様な被験製剤を、下記の表6に示す。
【0141】
【表6】
【0142】
A H1N1型インフルエンザによる接種の直前に、20μLの各製剤を、個別のMucilAir(商標)プールの頂端部へと適用した。20μLの各製剤はまた、接種の3.5および24時間後にも適用した。A H1N1型インフルエンザ(t=0)の接種は、34℃、5%CO2の、MucilAir(商標)組織の頂端部において、3時間にわたる、1ml当たり2×106個のH1N1(臨床株:A/California/7/09)50μLの適用により達成した。ウイルス原液は、MucilAir(商標)培養液中で作製し、精製または濃縮を伴わずに、培養培地中で希釈した。TEER、LDH放出、CBF、MCC、およびムチン分泌についての測定は、抗ウイルス効果の製剤に、ルピントリビルの代わりに、10μMのオセルタミビルを使用したことを除き、他の点では、上記で記載したのと同一の方式で実施した。抗ウイルス効果のために、10μMのオセルタミビルを、基本培地へと添加した。DMSO中に4mMのオセルタミビル酸(Carbosynth)原液(-20℃)を、MucilAir(商標)側底部培地中に10μM(最終濃度を0.25%のDMSOとする)へと希釈した。
【0143】
TEERの測定
図22~25は、A H1N1型インフルエンザを伴うTEERの測定の結果を例示する。見て分かるように、インフルエンザウイルスの細胞変性効果は、TEER抵抗の測定において、低下を引き起こした。IAV3被験製剤およびIAV4被験製剤は、接種の48時間後(2日後)において、TEERの低下を制限すると考えられ、抵抗喪失の緩和は、高濃度の有効成分を含む製剤(すなわち、IAV4-2およびIAV4-1)において最も顕著であった。
乳酸デヒドロゲナーゼの放出
図26~29は、上皮細胞からのLDH放出の結果を例示する。見て分かるように、IAV製剤のいずれについても、細胞傷害は、観察されなかった。
線毛運動周波数
図30~33は、H1N1型インフルエンザ感染を伴う上皮細胞のCBFに対する、多様な処置の効果を例示する。見て分かるように、IAV4は、CBFに対して、著明な効果を示さなかった。
粘膜線毛クリアランス
図34は、指定された被験製剤による処置の後における、粘膜線毛クリアランスについての結果を例示する。見て分かるように、IAV製剤は、粘膜線毛クリアランスに対して、著明な効果を示さなかった。
【0144】
頂端部におけるライノウイルスの複製
200μLの頂端部洗浄液からの20μLを、QIAamp(登録商標)ウイルスRNAキット(Qiagen)によるウイルスRNAの抽出に使用する結果として、60μLのRNA溶出容量をもたらした。ウイルスRNAを、5μLのウイルスRNA、Mastermix、2つのA型インフルエンザ特異的プライマー、およびA型インフルエンザ用プローブを、FAM-BHQ1レポーター-クエンチャー染料と共に使用する、定量的RT-PCR(QuantiTect Probe RT-PCR、Qiagen)により定量化した。既知濃度のH1N1の4つの希釈液のほか、RNA抽出およびRT-PCRについての対照を含め、プレートを、Applied Biosystems製のTaqMan ABI 7000にかけた。Ctデータは、希釈率で補正された検量線に照らして報告し、1ml当たりのゲノムコピー数として提示した。図35~38は、指定された被験製剤の存在下における、A HIN1型インフルエンザの複製についての結果を例示する。見て分かるように、インフルエンザは、著明な複製を示したが、これは、オセルタミビルにより阻害された。IAV製剤を使用したところ、A H1N1型インフルエンザ複製の著明な変化は、達成されなかった。
酵素連結レクチンアッセイ
図39~42は、接種の24時間後(1日後)および48時間後(2日後)における、頂端部培地に由来するムチン量を例示する。見て分かるように、IAV4は、ムチン分泌において、用量依存性反応を示した。
【0145】
TEERの測定により示される通り、H1N1感染は、ヒト気道上皮における組織の完全性の喪失をもたらし、結果として気道の障壁機能の失調を引き起こす。これは、さらなる感染および炎症を結果としてもたらす。TEERの低下は、H1N1感染の影響を受ける、最も早期かつ最も高感度なパラメータである。組合せ製剤であるIAV3およびIAV4は、組織の完全性のこの失調の、部分的な緩和を結果としてもたらした。加えて、これらの製剤は、IAV1製剤およびIAV2製剤において見られる、CBFに対する負の影響のいずれも防止した。
【0146】
こうして、本開示の多数の好ましい実施形態について、詳細に記載してきたが、上記の段落で規定された本開示は、上記の記載で明示された特定の詳細に限定されるものではなく、その多くの見かけの変動も、本開示の精神または範囲から逸脱しない限りにおいて可能であることを理解されたい。
【0147】
本明細書で引用または参照されるすべての文献、ならびに本明細書で言及される任意の製品についての、任意の製造元による指示書、記載、製品仕様、および製品シートと併せて、本明細書で引用される文献中、または参照により本明細書に組み込まれる任意の文献中で引用または参照されるすべての文献は、参照により組み込まれ、本開示の実施において援用することができる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕(i)可溶性ICAM-1またはICAM-1阻害剤、
(ii)シアル酸(例えば、シアリルラクトース)、
(iii)リゾチーム、および
(iv)ラクトフェリン、ならびに
薬学的に許容される担体
を含む、呼吸器感染を防止または処置するための医薬組成物。
〔2〕鼻腔スプレー、点鼻薬、口腔スプレー、口腔リンス液またはロゼンジ剤の形態である、前記〔1〕に記載の医薬組成物。
〔3〕過酸化亜鉛、銅および銀のうちの1つまたは複数をさらに含む、前記〔1〕から〔2〕のいずれか1項に記載の医薬組成物。
〔4〕ノイラミニダーゼ阻害剤および/またはカラギーナンをさらに含む、前記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の医薬組成物。
〔5〕IgA、IgGおよびIgMのうちの1つまたは複数をさらに含む、前記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の医薬組成物。
〔6〕ウスベニタチアオイ抽出物、キンセンカ抽出物、柑橘果皮抽出物、ハチミツ抽出物、ローズマリー抽出物、ミルラ抽出物、ヘリクリサム抽出物、クズウコン抽出物、ニームオイル、ビタミンC、ビタミンEおよびグレープフルーツ種子抽出物からなる群から選択される、1つまたは複数の成分をさらに含む、前記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔7〕ノイラミニダーゼ阻害剤が、ケルセチン、オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビルおよびペラミビルからなる群から選択される、前記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の医薬組成物。
〔8〕前記組成物がICAM-1阻害剤を含み、前記ICAM-1阻害剤が、抗ICAM-1抗体、サイトカイン、CD11a、エズリン(EZR)、CD18、グリチルレチン酸、ピロリジンジチオカルバメート(pyrrolidiniedithiocarbamate)、NFkB活性化阻害剤、複素環式チアゾール(heteryclic thiazole)、リポ酸、エファリズマブ、4-[4-メチルフェニル)チオ]チエノ92,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、シリビニン、スチルベンおよび(+)-エピガロイル-カテキン-ガレート[(+)-EGCG]からなる群から選択される、前記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔9〕マイクロスフィアとして製剤化される、前記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔10〕可溶性ICAM-1を含有する、前記〔1〕から〔9〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔11〕(i)約0.00000001質量%~約10質量%の可溶性ICAM-1、
(ii)0質量%(または約0.00000001質量%)~約10質量%のノイラミニダーゼ阻害剤、
(iii)約0.00000001質量%~約10質量%の前記シアル酸またはシアリルラクトース、
(iv)約0.0000001質量%~約10質量%の前記リゾチーム、および
(v)約0.00000001質量%~約10質量%の前記ラクトフェリン
を含む、前記〔1〕から〔10〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔12〕(i)可溶性ICAM-1またはICAM-1阻害剤、
(ii)シアル酸(例えば、シアリルラクトース(siallyllactose))、
(iii)リゾチーム
(iv)ラクトフェリン、および
薬学的に許容される担体
を含む組成物をヒトの鼻粘膜または口腔粘膜に投与するステップ
を含む、呼吸器感染を防止または処置する方法。
〔13〕前記呼吸器感染が、ヒトライノウイルスおよび/またはヒトインフルエンザウイルスに起因する、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記組成物が、鼻腔スプレー、点鼻薬、口腔スプレー、口腔リンス液またはロゼンジ剤の形態である、前記〔12〕から〔13〕のいずれか1項に記載の方法。
〔15〕前記組成物が、過酸化亜鉛、銅および銀のうちの1つまたは複数をさらに含む、前記〔12〕から〔14〕のいずれか1項に記載の方法。
〔16〕前記組成物が、IgA、IgGおよびIgMのうちの1つまたは複数をさらに含む、前記〔12〕から〔15〕のいずれか1項に記載の方法。
〔17〕ノイラミニダーゼ阻害剤が、ケルセチン、オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビルおよびペラミビルからなる群から選択される、前記〔12〕から〔16〕のいずれか1項に記載の方法。
〔18〕前記組成物がICAM-1阻害剤を含み、前記ICAM-1阻害剤が、抗ICAM-1抗体、サイトカイン、CD11a、エズリン(EZR)、CD18、グリチルレチン酸、ピロリジンジチオカルバメート、NFkB活性化阻害剤、環式チアゾール、リポ酸、エファリズマブ、4-[4-メチルフェニル)チオ]チエノ92,3-c]ピリジン-2-カルボキサミド、シリビニン、スチルベンおよび(+)-エピガロイル-カテキン-ガレート[(+)-EGCG]からなる群から選択される、前記〔12〕から〔17〕のいずれか1項に記載の方法。
〔19〕ウスベニタチアオイ抽出物、キンセンカ抽出物、柑橘果皮抽出物、ハチミツ抽出物、ローズマリー抽出物、ミルラ抽出物、ヘリクリサム抽出物、クズウコン抽出物、ニームオイル、ビタミンC、ビタミンEおよびグレープフルーツ種子抽出物からなる群から選択される、1つまたは複数の成分をさらに含む、前記〔12〕から〔18〕のいずれか1項に記載の方法。
〔20〕前記組成物が、
(i)約0.00000001質量%~約10質量%の前記ICAM-1、
(ii)0質量%(または約0.01質量%)~約10質量%のノイラミニダーゼ阻害剤、
(iii)約0.00000001質量%~約10質量%の前記シアル酸(例えば、シアリルラクトース)、
(iv)約0.00000001質量%~約10質量%の前記リゾチーム、および
(v)約0.00000001質量%~約10質量%の前記ラクトフェリン
を含む、前記〔12〕から〔19〕のいずれか1項に記載の方法。
〔21〕(i)約0.00000001質量%~約10質量%の可溶性ICAM-1、
(ii)約0.00000001質量%~約10質量%のリゾチーム、および
(iii)約0.00000001質量%~約10質量%のラクトフェリン、ならびに薬学的に許容される担体
を含む、ヒトライノウイルス(HRV)からの呼吸器感染を防止または処置するための医薬組成物。
〔22〕前記担体が、鼻粘膜および/または口腔粘膜上での少なくとも1分間、または少なくとも5分間、または少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間、または少なくとも25分間、または少なくとも30分間の前記組成物の滞留時間をもたらすように適合されている、前記〔21〕に記載の医薬組成物。
〔23〕前記薬学的に許容される担体が、約5~50%(v/v)または約10~40%(v/v)または約15~35%(v/v)または約20~30%(v/v)の1,3-プロパンジオールを含む水溶液である、前記〔21〕から〔22〕のいずれか1項に記載の医薬組成物。
〔24〕前記〔21〕~〔23〕のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする個体の鼻粘膜および/または口腔粘膜に適用するステップを含む、ヒトライノウイルス感染を予防および/または処置するための方法。
〔25〕前記それを必要とする個体の鼻粘膜および/または口腔粘膜が、それらに接触しているヒトライノウイルスを有する、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕(i)約0.0000005質量%~約10質量%の前記シアル酸(例えば、シアリルラクトース)、
(ii)約0.000005質量%~約10質量%の前記リゾチーム、
(iii)約0.00000025質量%~約10質量%の前記ラクトフェリン、および
(iv)0質量%(または約0.01質量%)~約10質量%のノイラミニダーゼ阻害剤、ならびに
薬学的に許容される担体
を含む、ヒトインフルエンザウイルスからの呼吸器感染を防止または処置するための医薬組成物。
〔27〕前記担体が、鼻粘膜および/または口腔粘膜上での少なくとも1分間、または少なくとも5分間、または少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間、または少なくとも25分間、または少なくとも30分間の前記組成物の滞留時間をもたらすように適合されている、前記〔26〕に記載の医薬組成物。
〔28〕前記薬学的に許容される担体が、約5~50%(v/v)、または約10~40%(v/v)、または約15~35%(v/v)、または約20~30%(v/v)の1,3-プロパンジオールを含む水溶液である、前記〔26〕から〔27〕のうちの1項に記載の医薬組成物。
〔29〕前記〔26〕から〔28〕のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする個体の鼻粘膜および/または口腔粘膜に適用するステップを含む、ヒトインフルエンザウイルス感染を予防および/または処置するための方法。
〔30〕前記それを必要とする個体の鼻粘膜および/または口腔粘膜が、それらに接触しているヒトインフルエンザウイルスを有する、前記〔29〕に記載の方法。
〔31〕約60~90%(v/v)の水および約10~40%(または20~30%)(v/v)のポリオールを含む液体担体に分散されている1つまたは複数の抗ウイルス剤および/または抗菌剤を含む、鼻粘膜または口腔粘膜に適用するための組成物であって、粘膜上に噴霧することができ、適用後、粘膜を実質的に刺激するまたは乾燥させることなく、少なくとも5分間(または、少なくとも10分間、または少なくとも15分間、または少なくとも20分間、または少なくとも25分間または少なくとも30分間)、粘膜上に留まるように適合されている、組成物。
〔32〕前記ポリオールが、1-3プロパンジオールを含む、前記〔31〕に記載の組成物。
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