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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】イオン挿入バッテリ電極及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20220512BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20220512BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220512BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220512BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220512BHJP
【FI】
H01M4/13
C01G23/00
H01M4/139
H01M10/052
H01M10/058
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018568381
(86)(22)【出願日】2017-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2017066417
(87)【国際公開番号】W WO2018007277
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-04-14
(31)【優先権主張番号】16177826.1
(32)【優先日】2016-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(73)【特許権者】
【識別番号】599098493
【氏名又は名称】カトリーケ・ユニフェルシテイト・ルーヴァン
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
(73)【特許権者】
【識別番号】504346525
【氏名又は名称】ネーデルランツェ・オルガニザーティ・フォール・トゥーヘパストナトゥールウェテンシャッペレイク・オンダーズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・モイツハイム
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・フェレーケン
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ポート
(72)【発明者】
【氏名】ヨアン・エリザベト・バルデル
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0086809(US,A1)
【文献】特開2010-275509(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161749(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102569768(CN,A)
【文献】CHUNMEI BAN ET AL,Atomic layer deposition of amorphous TiO2 on graphen as an anode for Li-ion batteries,NANOTECHNOLOGY,英国,IOP Publishing,2013年10月23日,vol.24,no.42,p.424002
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
C01G 23/00
H01M 4/139
H01M 10/052
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極層を備えるイオン挿入バッテリセルの負極であって、
前記負極層は、塩素を含む酸化チタンで形成された材料からなり、
前記塩素を含む酸化チタンは、塩素を含むアモルファス酸化チタン、または
前記塩素を含むアモルファス酸化チタンと塩素を含む結晶酸化チタンの混合物を含み、
前記負極層の塩素とチタンの比は、ラザフォード後方散乱分光法で測定したとき0.06から0.1である、負極。
【請求項2】
前記負極層のチタンに対する塩素の割合は、ラザフォード後方散乱分光法で測定したとき、0.06から0.09である、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記塩素を含む酸化チタンは、一般式TiO2-yClで、式中、yは0.06から0.1である、請求項1に記載の負極。
【請求項4】
前記負極層の厚さは、5nmから2μmの範囲である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の負極。
【請求項5】
前記負極層は薄膜電極層である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の負極。
【請求項6】
前記負極層は、粒子ベースの電極層である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の負極。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の負極を備えるイオン挿入バッテリセル。
【請求項8】
少なくとも1つの請求項7に記載のイオン挿入バッテリセルを備えるイオン挿入バッテリ。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の負極を形成する方法であって、前記方法は、50℃から150℃の範囲の堆積温度で、TiClとHOの前駆体を用いた原子層堆積プロセスを実行することによって、基板に塩素を含む酸化チタンの薄膜を堆積するステップを備え、
前記塩素を含む酸化チタンは、塩素を含むアモルファス酸化チタン、または
前記塩素を含むアモルファス酸化チタンと塩素を含む結晶酸化チタンの混合物を含む、方法。
【請求項10】
前記薄膜を堆積するステップは、非平面基板に前記薄膜を堆積するステップを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
イオン挿入バッテリセルを製造する方法であって、前記方法は、請求項9または10に記載の負極を形成するステップを備える、イオン挿入バッテリセルを製造する方法。
【請求項12】
前記負極を形成するステップは、第1の正極層と電解質層を備える積層に前記負極層を堆積するステップを備える、請求項11に記載のイオン挿入バッテリセルを製造する方法。
【請求項13】
少なくとも1つのイオン挿入バッテリセルを備えるイオン挿入バッテリを製造する方法であって、前記方法は、請求項11または12に記載の方法によって少なくとも1つのイオン挿入バッテリセルを製造するステップを備える、イオン挿入バッテリを製造する方法。
【請求項14】
50℃から150℃の範囲の堆積温度で、TiClとHOの前駆体を用いて、原子層堆積プロセスを実行することによって、基板に塩素を含む酸化チタンの薄膜を堆積することによって得られる負極層を含む負極であって、
前記塩素を含む酸化チタンは、塩素を含むアモルファス酸化チタン、または
前記塩素を含むアモルファス酸化チタンと塩素を含む結晶酸化チタンの混合物を含み、
前記負極層の塩素とチタンの比は、ラザフォード後方散乱分光法で測定したとき0.06から0.1である、負極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばLiイオンバッテリなどの、イオン挿入型バッテリ及びイオン挿入型バッテリの製造方法に関する。
【0002】
さらに特には、本開示は、イオン挿入型バッテリのための電極及び電極層に関し、そのような電極及び電極層を形成する方法に関する。これらの電極層は、例えば薄膜バッテリ、粒子ベースのバッテリ、全固体バッテリ、または電解液バッテリの電極として用いられることができる。
【背景技術】
【0003】
高い理論容量(335mAh/gまたは約1280mAh/cmのアナターゼTiO)を提供し、現在の電極材料に対して、潜在的に安く、環境に友好的で、安定な代替物を提供するので、例えばリチウムイオンバッテリなどのイオン挿入型バッテリの電極としてかなり注目される材料は、TiOである。しかしながら、低導電率及び低Liイオン伝導性によって、実用用途に適しない、乏しいレート性能を有する。
【0004】
レート性能を改善するために、ドーピング、ナノ構造化、ナノサイズ化及び異なるTiO多形体の使用などの方法が研究されている。TiO材料のドーピングは、材料の改善された導電率につながり、さらにイオン伝導(イオン拡散)は促進される。そのような正の伝導度効果は、カチオンとアニオンがドープされたアナターゼ及びスピネルTiOベースの粒子のLiイオン拡散として報告されている。また、Hによる還元型ドーピングが提案され、高い充電率が得られるさらなる容量を備えた、アナターゼTiOの強化された導電率と改善されたLiイオン貯蔵反応速度論、すなわち高効率のLiイオンの挿入と脱離を生じさせる。そのような水素ドーピングプロセスは、通常アモルファスTiOと相容れない300℃より高い、例えば450℃などの温度でなされる。TiOのレート性能を改善するための異なる戦略の中で、結晶(例えばアナターゼ)TiOの代わりにアモルファスTiOの使用は、有望な結果を示す。しかしながら、この場合において、ナノ構造化またはTiO/炭素複合材料などの複合材料の創造は、よいレート性能を達成するために必要である。
【0005】
ナノサイズ化は、貯蔵容量を強化できるように、イオンと電子の拡散パスの減少につながる。例えばアモルファスTiOへの(メソの)多孔性の導入、ナノチューブの創造など、アモルファスTiOのためのナノサイズ化戦略に基づく改善された貯蔵容量を示すいくつかの報告がある。例えば、アモルファスTiOのナノサイズ化は、チタンシートの陽極酸化処理によってナノチューブを形成するステップを備える。
【0006】
例えば、TiO/炭素ナノ複合材料(例えば、炭素-二酸化チタン/チタン酸塩)などの、アモルファスTiOに基づいたナノ複合材料の創造は、改善されたイオン挿入及び脱離特性につながる。例えば、アモルファスTiO薄膜を、炭素ナノシートにALD(原子層堆積(Atomic Layer Deposition)によって、堆積することができる。TiOの重量あたりの高容量は、このアプローチを用いて達成されるが、容積はかなり低い。
【0007】
一般に、例えば、ナノ粒子、ナノチューブまたはナノシートなどを備えるナノシステムは、薄膜ベースのシステムよりかなり高価である傾向がある。さらに、Liイオンバッテリなどのイオン挿入型バッテリという観点において、ナノ構造の体積あたりの拡大表面面積による、寄生容量損失は、電極表面において電解質の劣化の結果として増加するかもしれない。これは、バッテリ用途のためのナノスケール構造を使用する主な欠点である。Aarikら(thin solid films,vol.305,no 1-2,1 august 1997,p.270-273)は、ALDによって成長された塩素を含む酸化チタンの薄膜を開示する。それらの光学特性は、研究され、それらは電極を形成するために用いられない。
【0008】
米国特許公開公報第2011/052994号は、塩素を含む酸化チタンの膜を備えるリチウムイオンバッテリのための負極を開示する。この膜は結晶である。
【0009】
米国特許公開公報第2015/086809号は、純二酸化チタンの薄層が負極に用いられる半導体基板に堆積されたリチウムイオン固体バッテリを開示する。
【0010】
Chunmei Banら(nanotechnology,vol.24,no 42,25 September 2013,p.424002)は、ALDによるリチウムバッテリの負極のためのTiO層を製造する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許公開公報第2011/052994号
【文献】米国特許公開公報第2015/086809号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Aarikら(thin solid films,vol.305,no 1-2,1 august 1997,p.270-273)
【文献】Chunmei Banら(nanotechnology,vol.24,no 42,25 September 2013,p.424002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
イオン挿入型バッテリの、電極層材料及び例えば薄膜電極層または(ナノ)粒子ベースの電極層などの電極層を提供することが本開示の目的であり、電極層は良好なレート性能と高い貯蔵容量を提供する。
【0014】
さらに特には、イオン挿入型バッテリの電極層を提供することが本開示の目的であり、電極層は、1Cより高い充電率と、理論最大容量の少なくとも70%の容量を提供する。
【0015】
イオン挿入型バッテリの、電極層材料及び例えば薄膜電極層または(ナノ)粒子ベースの電極層などの電極層を提供することが、本開示の目的であり、電極層材料は、良好な導電性と良好なイオン伝導性を有する。
【0016】
さらに特には、イオン挿入型バッテリの電極層材料及び電極層を提供することが本開示の目的であり、電極層材料は、放電状態で10-7S/cmより高い電子伝導度と放電状態で10-14cm/sより高いイオン拡散率を有する。
【0017】
イオン挿入型バッテリのための電極層を形成する方法を提供することがさらなる本開示の目的であり、電極層材料は、良好なレート性能と高容積貯蔵容量を提供する。
【0018】
本開示はそれらに限定されるものではないが、本開示の実施形態による電極層は、例えばLiイオン、Kイオン、Naイオン、MgイオンまたはAlイオンバッテリなどのイオン挿入型バッテリに統合される。
【0019】
上記目的は、本開示の方法及び装置によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の態様において、本開示は、好ましくはチタンに対する塩素の割合が、ラザフォード後方散乱分光法で測定したとき、0.01から0.1、好ましくは0.06から0.09、さらに好ましくは0.060から0.090である、塩素を含むアモルファス酸化チタンと塩素を含む結晶酸化チタンのアモルファスまたは混合物である塩素を含む酸化チタンを含む負極層を備えるイオン挿入バッテリセルの負極に関する。塩素を含む酸化チタンは本開示に関し、これは、一般式TiOCl及び好ましくはTiO2-yClの材料を言う。実施形態において、式中、yは、0.01から0.1、好ましくは0.06から0.09である。実施形態において、塩素を含む酸化チタン層は、一般式TiO2-yClを有し、式中、yは、0.01から0.1、好ましくは0.06から0.09である。本開示の実施形態による電極層の厚さは、例えば5nmから2μmの範囲であり、例えば100nmから1μmの範囲である。
【0021】
負極層は、アモルファス電極層であることが好ましく、塩素を含む酸化チタンは、アモルファス状態である。本開示の他の実施形態において、負極層は、塩素を含むアモルファス酸化チタンと塩素を含む結晶酸化チタンの混合物を含む。
【0022】
本開示の実施形態において、負極層は、薄膜電極層である。
【0023】
本開示の実施形態において、負極層は、(ナノ)粒子ベースの電極層である。
【0024】
本開示の実施形態による負極層は、イオン挿入型バッテリセルのアノードの機能を有する。
【0025】
第2の態様において、本開示は、第1の態様に従って、負極を備える挿入バッテリセルに関する。
【0026】
第3の態様において、本開示は、第2の態様に従って、少なくとも1つのイオン挿入バッテリセルを備えるイオン挿入型バッテリに関する。
【0027】
第4の態様において、本開示は、第1の態様に従って、薄膜イオン挿入バッテリセルの負極を形成する方法に関し、方法は、原子層堆積プロセスを実行することによって、基板に塩素を含む酸化チタンの薄膜を堆積するステップを備え、堆積温度は、50℃から150℃の範囲であり、TiCl及びHOは前駆体として用いられ、塩素を含む酸化チタンは、塩素を含むアモルファス酸化チタン及び塩素を含む結晶酸化チタンのアモルファス又は混合物である。
【0028】
薄膜を堆積するステップは、平面基板または例えば3D基板など非平面基板に薄膜を堆積するステップを備える。3D基板は、例えば複数の高アスペクト比マイクロピラー、高アスペクト比マイクロトレンチ、複数のナノワイヤ、メッシュ、(ナノ)多孔質構造及び/または3次元の足場などの3D機構を備える構造化された基板である。3D機構は、例えば規則的な配列など、規則的なパターンで存在し、またはそれらは、基板上に無作為に分配される。
【0029】
第5の態様において、本開示は、イオン挿入バッテリセルを製造する方法に関し、方法は、第4の態様によって負極層を形成するステップを備える。
【0030】
本開示の実施形態によるイオン挿入バッテリセルを製造する方法は、第1の正極層と電解質層を備える積層に負極層を堆積するステップを備える。
【0031】
第6の態様において、本開示は、少なくとも1つのイオン挿入バッテリセルを備えるイオン挿入バッテリを製造する方法に関し、方法は、第5の態様に従った方法によって少なくとも1つのイオン挿入バッテリセルを製造するステップを備える。
【0032】
第7の態様において、本開示は、50℃から150℃の範囲の堆積温度で、TiCl及びHOの前駆体を用いた原子層堆積プロセスを実行することによって基板に塩素を含む酸化チタンの薄膜を堆積することによって得られた負極に関し、塩素を含む酸化チタンは、塩素を含むアモルファス酸化チタンと塩素を含む結晶酸化チタンのアモルファスまたは混合物である。そのような塩素を含む酸化チタンは、通常電気及びイオン伝導材料である。
【0033】
第8の態様において、本開示は、イオン挿入電極に塩素を含む酸化チタンの層を使用することに関し、塩素を含む酸化チタンは、塩素を含むアモルファス酸化チタンと塩素を含む結晶酸化チタンのアモルファスまたは混合物である。イオン挿入電極は、例えばイオン挿入型バッテリセルまたはイオン挿入型バッテリの電極である。
【0034】
ナノ構造化またはナノサイズ化の必要なく及び/または炭素ナノ複合材料を形成する必要なく、高貯蔵容量を得ることが、本開示の実施形態による電極層の利点である。しかしながら、本開示の実施形態による電極層は、ナノ構造化アプローチと組み合わせることができる。
【0035】
それらは、良好に制御された厚さと良好に制御された塩素含有量を有する滑らかな電極層を形成することが、本開示の実施形態による方法の利点である。
【0036】
それらが、よい共形を備える薄膜電極層、すなわち層が均一な厚さと下層の基板の形状に正確に従う、層を形成することが本開示の実施形態による方法の利点である。それゆえ、本開示の方法は、有利に例えば複数の高アスペクト比マイクロピラー、高アスペクト比マイクロトレンチ、複数のナノワイヤ、メッシュ、(ナノ)多孔質構造及び/または3次元の足場を備える構造など、3D構造にそのような層を形成する(例えば3Dバッテリ構造を製造するプロセスにおいて)ために用いられる。本開示の実施形態による方法に基づくALDを使用した層の共形の堆積によって、層の厚さは、実質的に3D構造及びそのような構造の間の凹部とそのような構造の側面と同じである。
【0037】
それらが容易にスケールアップできることが、本開示の実施形態による方法の利点である。本開示の有利な実施形態において、空間ALDを、電極層を形成するために使用できる。電極層の、例えば10倍速い堆積など、速い堆積が、一時的ALDと比較した空間ALDの利点である。これは、製造スループットを高め、潜在的にコストを下げることをもたらす。これは、潜在的にロールツーロール製造できる。
【0038】
例えば、50℃から150℃の範囲の堆積温度など、低堆積温度が使用されることが、本開示の実施形態による方法の利点である。本開示の実施形態による電極層の堆積は、例えば、LiPONまたはLiS-Pなどのガラス状態でのみ機能するいくつかの固体電解質と適合性があることが、そのような低温の利点である。用いられた低堆積温度は、可能な最も高い性能を達成するために重要である、そのような材料の結晶化を妨げることができる。さらに、集電体の酸化、またはバッテリスタックに用いられる他の材料の化学(または構造)変化を和らげることが、そのような低堆積温度の利点である。
【0039】
堆積したままの電極層は結晶電極層と比較して強化された貯蔵容量を生じさせる、アモルファス電極層であることが、本開示の実施形態による方法の利点である。本開示の実施形態による電極層を、バッテリでアモルファス状態で使う。しかしながら、必要に応じて、それらは例えば約300℃など、比較的低温でのアニール工程を実行することによって、結晶状態に変換することができ、本開示はそれらに限定されない。
【0040】
開示の具体的な及び好ましい態様は、添付された独立及び従属請求項に提示される。従属請求項からの特徴は、独立請求項の特徴、適切に他の従属請求項に組み合わすことができ、単に請求項に明確に提示されない。
【0041】
本開示の上記の及び他の特性、特徴及び利点は、実施例を手段として開示の原理を描く、添付された図面と併用された、続く詳細な説明から明白になるであろう。この記載は、開示の範囲を限定することなく、実施例の目的を与えられるのみである。以下で引用符付きの参照図は、添付された図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】バッテリセルの概略断面図を示す。
図2】ALD堆積温度の関数として、本開示の実施形態に従った、塩素を含む酸化チタンのALD薄膜のチタンに対する塩素の割合(黒丸)及びチタンに対する酸素の割合(黒四角)を描く、XPS測定結果を示す。
図3】ALD堆積温度の関数として、本開示の実施形態に従った、塩素を含む酸化チタンのALD薄膜のCl/Ti割合を示す、RBS測定結果を示す。
図4】異なるCl含有量(y=0.06;y=0.07及びy=0.09)の本開示の実施形態に従った0.4CのCレートの塩素を含む酸化チタンの100nmの厚さの薄膜と、1CのCレートの35nmの厚さのアモルファスTiO層の充電、放電測定から決定された電位-容量曲線を示す。
図5】異なるCl含有量(y=0.06;y=0.07及びy=0.09)の本開示の実施形態に従った塩素を含む酸化チタンの100nm厚さの薄膜のため充電/放電測定から決定されたCレートの関数として脱リチウム化容量を示す。
図6】本開示の実施形態に従って形成された塩素を含む酸化チタンの100nmの厚さの層のCl含有量yの関数として、0.4(5.3μA/cm)の割合で測定された容積測定の脱リチウム化容量を示す。
図7】マイクロピラーの頂上からの距離の関数として、複数のマイクロピラーを備える、3D基板に本開示の方法に従って堆積された塩素を含む酸化チタンの層の測定された厚さを示す。
図8】平面と本開示の方法に従って堆積された0.09のTiに対する塩素の割合で塩素を含む酸化チタンの平面(黒四角)と3D(黒丸)薄膜層の測定されたレート性能を示す。設置面積あたりの容量は、Cレートの関数として与えられる。
図9】2C(設置面積あたり0.53mA/cm)で測定された、本開示の方法に従ってシリコンマイクロピラーに堆積された塩素を含む酸化チタンの100nm厚さの層の充電/放電サイクルの関数として、設置面積あたりの測定されたリチウム化及び脱リチウム化容量を示す。
図10】本発明の実施形態によって成長された膜のTi-Cl結合のエネルギ範囲のXPSスペクトルを示す。
図11】本発明の実施形態によって準備された電極及び比較のアモルファスTiO膜の電気化学特性評価を示す。
図12】本発明による電極及び比較の電極の貯蔵容量を示す。
図13】a:ピラー(上面図)及び本発明の実施形態により被覆されたピラー(b:傾斜上面図、c:断面図)のSEM顕微鏡写真を示す。
図14】本発明の実施形態による3D電極と比較した平面電極の電気化学特性を示す。
図15】比較電極と本発明の実施形態による電極の設置面積容量(左上)、活物質容量(右上)、及び3D電極容量の比較である。
【0043】
異なる図において、同じ符号は、同じ又は類似の要素を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、特定の実施形態に対して、いくつかの図を参照して記載されるが、開示は、それらによって限定されるものではなく、請求項によってのみ限定される。記載された図は、概略のみであり、限定するものではない。図において、要素のいくつかの大きさは、誇張され、理解を助ける目的のための大きさに描かれない。大きさ及び相対的な大きさは、本開示の実施のための実際の縮小に対応していない。
【0045】
明細書及び請求項の第1、第2、第3などの用語は、同様の要素を区別するために用いられ、必ずしも一時的に、空間的に、ランキングで、または他の方法で、順序を記述するためでない。よく用いられる用語は、適切な事情下で交換可能であり、本明細書で記載された開示の実施形態は、本明細書で記載され、描かれたのとは別の順序で操作できると理解されるべきである。
【0046】
さらに、明細書及び請求項の上部、下部、上に、下になどの用語は、説明する目的で用いられ、必ずしも相対位置を記載するためでない。よく用いられる用語は、適切な事情下で交換可能であり、本明細書で記載された開示の実施形態は、本明細書で記載され、描かれたのとは別の配置で操作できると理解されるべきである。
【0047】
請求項で用いられる「備える」(comprising)という用語は、その後に載せられた意味に制限されるように解釈されるべきでないことに留意すべきであり、他の要素または工程を排除しない。したがって、言及されたように述べられた特徴、整数、工程または構成要素の存在を特定すると解釈されるべきであり、1以上の特徴、整数、工程または構成要素、またはそれらの群の存在または追加を排除しない。それゆえ、「装置は、手段AとBを備える」との表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置と限定されるべきでない。本開示に関して、装置の唯一の関連構成要素がAとBであることを意味する。
【0048】
本明細書を通して、「1つの実施形態」(one embodiment)または「実施形態」(an embodiment)への参照は、実施形態に関連して記載された具体的な特徴、構造または特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本出願を通して様々な場所での「1つの実施形態において」(in one embodiment)または「実施形態において」(in an embodiment)との言い回しの出現は、必ずしも同じ実施形態を全て参照しないが、参照するかもしれない。さらに、具体的な特徴、構造または特性は、1以上の実施形態において、本開示から当業者にとって明白であるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0049】
同様に、開示の例示の実施形態の記載において、開示の様々な特徴は、時々1以上の様々な本発明の態様の開示の合理化及び理解の助けの目的のために、それらの1つの実施形態、図、または記載にまとめられると理解されるべきである。開示のこの方法は、しかしながら、権利主張された開示は、それぞれの請求項に明白に記載される以上の特徴を要求している意図を反映するように解釈されるべきである。むしろ、添付された特許請求の範囲は、反映するように、発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態の全ての特徴より少ない部分にある。したがって、詳細な説明に添付された特許請求の範囲は、本開示の分離した実施形態として、それ自身独立しているそれぞれの請求項とともにこの詳細な説明の中にここで明確に組み込まれる。
【0050】
さらに、本明細書で記載された、いくつかの実施形態がいくつか含まれ、他の実施形態に含まれる他の特徴は含まれない一方で、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者に理解されるように、開示の範囲内であり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、主張された実施形態のいずれかは、任意の組み合わせで使うことができる。
【0051】
本明細書で提供された記載において、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、開示の実施形態は、これらの具体的な詳細なく実施されることが理解される。他の場合には、周知の方法、構造及び技術は、この説明の理解を曖昧にしないために、詳細に示されない。
【0052】
続く用語は、開示の理解の助けるために単独で提供される。
【0053】
本開示の内容において、バッテリセルは、間に電解質層を挟んだ2つの電極層を備える構造、すなわち、第1の電極層/電解質層/第2の電極層の積み重ねを備える構造である。バッテリは、単一のバッテリセルを備え、またはそれは例えば少なくとも2つなど、複数のバッテリセルを備える。バッテリは、直列または並列に接続された2以上のバッテリセル、またはバッテリセルが接続された直列及び並列の組み合わせを備える。
【0054】
本開示の内容において、イオン挿入バッテリは、バッテリ動作の間、カチオンまたはアニオンを受容し、解放できる、電極を備えるバッテリである。イオン挿入型バッテリは、1つのカチオン要素のみ、複数のカチオン要素、アニオンのみまたはアニオンとカチオン要素の混合物の挿入/脱離を頼りにすることができる。イオン挿入型バッテリは、さらに使用された電極材料に対して(電気)化学的に安定である一方で、個々の用いられたイオンのイオン伝導ができる電解質を含む。
【0055】
再充電できるバッテリにおいて、電極のそれぞれは、放電の間、第1の極性(すなわち、バッテリ動作)及び充電の間、第2の反対の極性を有する。技術的に言えば、しかしながら、負極は、放電の間アノードであり、充電の間カソードである。逆に、正極は、放電の間カソードであり、バッテリを充電するときアノードである。本開示の内容において、放電(すなわちバッテリ動作)の用語が用いられる。本明細書では更に負極はアノードを意味し、正極はカソードを意味する。開示を通して、「アノード材料」(anode material)を参照するとき、負極材料を意味し、「カソード材料」(cathode material)を参照するとき、正極材料を意味する。
【0056】
本明細書で用いられるように、NCは、バッテリの定格電流容量CのN倍である充電または放電率を言う。Nは数字であり、自然数または分数であることができる。
【0057】
本開示の内容において、薄膜は、10nmから10μmの範囲の厚さを有する薄層または薄い被膜である。薄膜バッテリは、薄膜層からなるバッテリであり、すなわち、カソード層、電解質層及びアノード層は、10nmから10μmの範囲の厚さの薄層であるバッテリである。
【0058】
本開示の内容において、ナノ粒子は、1nmから500nm、通常10nmから100nmの範囲の直径を有する粒子である。ナノ粒子は、例えば、球、立方体、8面体、または円すい形状の粒子形状を有し、またはそれらは、ランダムな形状を有する。電極層に基づく(ナノ)粒子は、(ナノ)粒子を含む電極層と、例えばバインダ及び/または例えばカーボンブラックなどの電子導電体、などの任意の添加剤である。
【0059】
開示は、開示のいくつかの実施形態の詳細な説明によってこれから記載されるであろう。開示の他の実施形態は、開示の真実の精神または技術教示から逸脱することなく、当業者の知識によって構成され、開示は、添付された請求項の用語によってのみ限定される。
【0060】
さらなる記載において、本開示は、主に薄膜固体Liイオンバッテリについて記載されるが、本開示はそれに限定されない。例えば、本開示の実施形態による電極層と方法は、また、粒子ベースのバッテリの背景及び/または液体電解質バッテリの背景で使用することもできる。さらに、本開示の実施形態による電極層と方法は、例えばMgイオン、NaイオンまたはAlイオンバッテリなどの他のイオン挿入型バッテリに使用することもできる。
【0061】
図1は、薄膜バッテリセル100の概略断面図を示す。それは、第1の集電体層11、第1の電極層12、電解質層13、第2の電極層14及び第2の集電体層15の積み重ねを備える。この積み重ねは、基板10に提供される。第1の電極層12は、負極層またはアノード層であり、第2の電極層14は、正極層またはカソード層であり、またはその逆に、第1の電極層12は、正極層またはカソード層であり、第2の電極層14は、負極層またはアノード層である。
【0062】
さらなる記載において、第1の電極層12は、正極層であり、第1の集電体層11は正の集電体層であると見なされ、第2の電極層14は、負極層であり、第2の集電体層15は、負の集電体層であると見なされる。
【0063】
本開示の実施形態による電極層は、有利に図1に示される構造の第2(負)の電極層14として用いられ、すなわち、それは、有利に基板10に第1(正)の集電体層11、第1(正)の電極層12、電解質層13が積層された後、積層される。さらに記載されるように、本開示の実施形態による電極層は、有利にアモルファス層である。積層の他の層を積層した後に、本開示の実施形態による電極層を積層することによって、例えばアナターゼ相への結晶化など、アモルファス電極層の結晶化のリスクを回避することができる。アモルファス電極層が最初に積層されるならば、そのような結晶化がアニールを必要とする積層の他の層の堆積の結果として起きるリスクがあるかもしれない。アモルファス電極層の結晶化は、容量の損失をもたらすので、避けることが好ましい。アモルファス(ガラス質)固体電解質層が用いられ、電極層を提供する前に積層される実施形態において、本開示の実施形態に従った電極層の低堆積温度が、高レート性能を維持することができるように、電極層を低温で堆積することが、本開示の実施形態の利点である。
【0064】
基板10は、例示として、例えばシリコンなどの、4族半導体材料のような半導体材料、金属(例えば金属ホイル)、カーボンナノシート、プラスチックホイルまたはケイ酸塩などのセラミック材料を備える。図1に示される実施例において、基板10は、平面基板である。しかしながら、基板10は、例えば複数のマイクロピラー、複数のナノワイヤなどの複数の3D機構または3D微細構造を備える非平面基板、3D(ナノ)メッシュ、ナノチューブ及び/または例えば多孔質陽極酸化されたアルミナなどの他の多孔質構造である。3D機構は、例えば規則配列パターンなど規則的なパターンで基板に存在し、またはそれらは基板上にランダムに分配される。例えば、基板10は、第1の集電体層11が被覆された、例えばシリコンピラーなど、高アスペクト比ピラーの配列を備える。ピラーは、例えば、0.5μmから10μmの範囲の直径、1μmから20μmの空間、10μmから200μmの範囲の高さ、を有し、本開示はこれに限定されない。増加したバッテリ容量をもたらすことが、複数の3D微細構造を備える基板を使う利点である。
【0065】
第1の集電体層11は、例えば正の集電体層である。正の集電体層12は、例えば金属層(例えば、Pt、Al、Cu、Ti、WまたはAuを含む)、導電性ポリマ層(例えばポリアニリン)、導電性セラミック層(例えばTiN)または導電性酸化物(例えばRuO)、またはカーボン層などの電気導電層であり、本開示はこれに限定されない。基板10が導電性基板である本開示の実施形態において、基板は、また第1の集電体層として機能し、専用の第1の集電体層11を提供する必要がない。
【0066】
第1の電極層12は、例えば正の電極層またはカソード層である。Liイオンバッテリのために、例えば、LiCoO、MnO、LiMn、LiNiO、Li(MnNi1-y2-x、LiNi1-xCo、LiNiCoAl、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、LiFePO、LiFePOF、V、V-TeO、WO-V、TiS、MO、MSまたはLi-VOを含み、本開示はこれに限定されない。他のイオン挿入型バッテリの場合、第1の電極層12は、例えば、Liイオンバッテリの上記に記載されたものと同様の材料を含むことができるが、Liが他のイオンによって置き換えられる。例えば、Naイオンバッテリの場合、第1の電極層12は、例えばNaMnを含み、Mgイオンバッテリの場合、第1の電極層は、例えばMgMnを含み、Alイオンバッテリの場合、第1の電極層は、例えばAlxVを含み、本開示は、これに限定されない。
【0067】
電解質層13は、例えば液体電解質、ゲル-ポリマ電解質、または固体電解質に浸されたセパレータ(例えば、微小多孔質セパレータ)を備える。液体解質の実施形態の場合、セパレータは、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの、ポリオレフィン材料を備える。液体電解質は、例えば有機溶媒(例えばプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート)または水などの溶媒を含む。Liイオンバッテリの場合、可動イオン(Liイオン)は、溶媒に例えばリチウムヘキサフルオロリン酸塩またはリチウム過塩素酸塩を溶解することによって、液体電解質に提供される。他のイオン挿入バッテリの場合、可動イオンは、使用される特定の溶媒に溶ける塩を使うことによって提供される。例えば、Mgイオンバッテリの場合、Mg(ClOは、液体電解質を形成するためにプロピレンカーボネートに溶解される。ポリマ-ゲル電解質は、可塑剤及び塩と共に、例えばポリ(エチレンオキサイド)またはポリ(プロピレンオキサイド)などポリマホストを備える。固体電解質は、固体イオン伝導体であり、Liイオンバッテリの場合、例えばポリ(エチレンオキサイド)/LiCFSOなどの有機材料、または例えばリチウム超イオン伝導体材料(LISICON材料、例えばLi14ZnGe16)、チオ-LISICON材料(例えばLi10GeP12)、ナトリウム超イオン伝導体材料(NASICON材料、例えばLi1.3Al0.3Ti1.7(PO)、ペロブスカイト材料(例えばLa0.5Li0.5TiO)、ガーネット材料(例えばLiLaZr12)またはアモルファス材料(例えばLiPON、Li2.88PO3.730.14)などの無機材料を備えるが、本開示は、これに限定されない。
【0068】
第2の電極層14は、例えば負極層またはアノード層である。さらに記載されるように、本開示の実施形態において、負極層またはアノード層は、例えば塩素を含む酸化チタン層など、塩素を含む酸化チタン層である。
【0069】
第2の集電体層15は、例えば負の集電体層である。負の集電体層15は、例えば、金属層(例えばCu、Ni、Al)、有機導電体層(例えばポリピロール)導電性セラミック層(例えばTiN、ITO)または(ナノ)カーボン(例えばアモルファスカーボン、カーボンナノシート)などの導電層であり、本開示は、これに限定されない。
【0070】
本開示は、ナノ構造化または炭素複合材料形成さえなく、例えば1Cより高い充電レートなどの良好なレート性能及び理論最大容量の少なくとも70%の容量を提供する負極層を備える、例えば薄膜Liイオンバッテリ及びバッテリセル(本開示はこれに限定されない)などの、イオン挿入バッテリセル及びイオン挿入バッテリに関する。本開示の実施形態において、負極層14の電極材料は、塩素を含むアモルファス酸化チタンと塩素を含む結晶酸化チタンのアモルファスまたは混合物である塩素を含む酸化チタンからなるものを備えることが好ましい。負極層14の電極材料は、アモルファス酸化チタンからなるものを備えることが好ましい。負極層14のチタンに対する塩素の割合は、ラザフォード後方散乱分光法で測定したとき、0.01から0.1が好ましく、さらに0.06から0.09であることが好ましい。塩素を含む酸化チタンは、一般式TiOClで1≦x<2.0及び0.01≦y≦0.1を有する。塩素を含む酸化チタンは、一般式TiOClでxが約2で0.01≦y≦0.1を有する。理論にとらわれずに、塩素を含む酸化チタンは、化学式TiO2-yClでyは0.01から0.1、好ましくは0.06から0.09を有する。本発明による実施例で測定された容量は、膜がTi(IV)-Ti(III)酸化還元対を使うことによって、Tiあたり1Liを受容することができるならば、計算される理論容量よりも大きい。これは、1より多いLiがTi(III)及びTi(II)酸化還元状態を使うことによって、TiOユニット化学式あたりに挿入されることを強く示唆する。本発明の実施形態に観察された強化された導電性は、TiOでO2-がClによって置換された後、Ti(III)状態の永続的な存在も示唆する。これは次のように塩素を含む酸化チタンの一般式を強く示唆する。(TiO1-y(TiOCl)は、次のように単純化することができる。TiO2-yCl。電極層の厚さは、例えば5nmから2μmの範囲であり、例えば、100nmから1μmなど、例えば5nmから1μmであり、本開示はこれに限定されない。3Dバッテリ構造に本開示の実施形態による負極層を用いたとき、負極層の厚さは、3D構造の特定の形状に、例えば限定され、依存する。
【0071】
本開示は、またそのような負極層14を形成する方法を提供する。本開示の実施形態による電極層を、原子層堆積プロセスによって提供でき、堆積温度は、例えば50℃から130℃など、150℃より低く、TiClとHOは前駆体として用いられる。
【0072】
実験は実行され、Clの量が変えられた塩素を含む酸化チタンを備える100nmの厚さのアモルファス層は、堆積された。これらの層は、0.2C(5時間で完全に充電することに対応)のレートで理論Liイオン挿入容量近く、充電速度を速くしたとき非常に良好な容量の保持を示した。これは、多くのサイクルを通して安定である一方で、優秀なLiレート性能を生させる。
【0073】
実験において、塩素を含む酸化チタンを含むアモルファス層は、150℃より低い堆積温度で、前駆体としてTiCl及びHOを用いて、原子層堆積(ALD)によって、堆積された。前駆体は、TiClを50sccm、HOを500sccmの流量で、投与された。塩素を含む酸化チタンを備える100nmの薄膜電極層は、製造され、容量とレート性能に関して優れた性能を示した。堆積温度を下げることによって、さらなる塩素が組み入れられ、容量とレート性能を強化する。理論にとらわれずに、この機構は、電極層内に導電性及び/または改善されたLi拡散の増加から生じる。
【0074】
実験において、塩素を含む酸化チタンを含むアモルファス薄膜電極層は、前駆体としてTiCl及びHOを用いて空間原子層堆積(s-ALD)によって堆積された。一時的原子層堆積と比較して、100nm厚さの層で例えば10倍速く堆積するなど、堆積率を早くすることができることが、空間原子層堆積の利点である。そのような速い堆積率は、潜在的に製造コストを下げる。しかしながら、本開示はこれに限定されない。本開示の実施形態において、また一時的原子層堆積は、他の方法と同じように、塩素を含む酸化チタンを備えるアモルファス薄膜電極層を形成するために用いられる。
【0075】
本開示の実施形態による電極層を形成するための代わりのアプローチにおいて、例えばゾル-ゲルベースの合成方法が用いられ、TiOを製造するための既知のルートに基づくが、Cl含有化合物(例えばHCl)を含むように変更される。例えば、ゾル-ゲルベースの合成を用いて、チタン(IV)イソプロポキシドまたはチタン(IV)ブトキシドなどのチタンの有機金属前駆体は、溶液で塩酸(HCl)と混合される。そのようなアプローチは、例えば、(ナノ)粒子ベースの電極層の活物質としての使用で、塩素を含む酸化チタンを含む(ナノ)粒子の製造ができるだろう。
【0076】
例えば良好に制御された層の厚さと良好に制御されたCl含有量などの良好に制御された特性を備えるなめらかな膜の堆積ができることが、本開示の実施形態に従って薄膜電極層を堆積するためのALDを使用する利点である。これは、例えば堆積温度、TiCl及び/またはHO投与量及び曝露時間を変えることによって達成される。例えば、Cl含有量は、堆積温度を変えることによってまたはTiCl前駆体への曝露時間を変えることによって、制御され/変えられることができる。空間ALDシステムで実行された実験において、堆積温度を下げるとき、さらなるClが電極層に取り込まれることが観察された。堆積温度が例えば50℃から150℃など、150℃より低いことが、ALD堆積の利点である。そのような低堆積温度は、負極層の結晶化を防ぐことができる。これは、さらに例えば≦5nmのRMS粗さ、≦1nmのRMS粗さなど、低い表面粗さで滑らかな層をもたらす。ALDの自己制限成長によって、さらに3D薄膜バッテリの開発のために必要とされる共形堆積ができることが、ALDを使う利点である。必要に応じて、ポスト堆積アニールは、例えば単結晶または多結晶薄層などの塩素を含む酸化チタンを含む結晶薄層、または結晶及びアモルファス状態の混合物を備える層を達成するために実行される。
【0077】
空間ALD概念は、一時的分離の代わりに半反応の空間分離に基づく。空間ALD反応器は反応器の下に動く基板へ一つずつ異なる前駆体を曝す分離領域を有する。反応領域の間及び周りで、不活性ガスのシールドが前駆体の流れを分離する。ここで記載された実験において、塩素を含む酸化チタンを含む層は、反応容器に堆積され、分離反応領域注入口は、基板を保持する回転テーブルの上部に取り付けられた丸い反応器ヘッドに組み込まれた。前駆体注入口は、丸い反応器ヘッドに組み込まれ、排気領域によって取り囲まれる。
【0078】
本開示の実施形態に従って、塩素を含む酸化チタンを含むアモルファス薄膜は、TiN/Si基板に堆積された。基板は、200mmSiウェハ上の70nm厚さのTiN層のスパッタ堆積によって準備された。ウェハは、2cm×2cmピースにダイスカットされ、さらにALD堆積及び特性評価が実行された。空間原子層堆積(s-ALD)の場合、4つの2cm×2cmサンプルがホルダに取り付けられ、s-ALD反応器に積み込まれた。堆積の前駆体は、TiClとHOであり、それぞれ50sccmと500sccmで投与された。20、30及び40rpm基板回転速度での堆積が実行され、基板への前駆体の曝露時間に直接影響を与えた。回転サイクルの量は、得られた膜厚が100nmであるように調整された。温度に依存して、これは1155から1538サイクルの間であった。基板の温度は、堆積の間制御され、50℃から130℃の異なる温度で固定された。
【0079】
塩素を含む酸化チタンを含む膜の化学量論組成は、X線光電子分光法(XPS)及びラザフォード後方散乱分光法(RBS)を用いて決定された。図2は、ALD堆積温度の関数として、塩素を含む酸化チタンを含むALD薄膜のチタンに対する塩素の割合(黒丸)及びチタンに対する酸素の割合(黒四角)を描くXPS測定結果を示す。図3は、ALD堆積温度の関数として、塩素を含む酸化チタンのALD薄膜のCl/Ti率を示すRBS測定結果を示す。
【0080】
XPS測定(図2)から、Cl/Ti率は、50℃から130℃の堆積温度で実行された堆積で0.01から0.07であり、Cl/Ti率は堆積温度が増えると減ることが結論づけられる。O/Ti率は、この範囲の異なる堆積温度で約2.3であることがわかり、実質的に堆積温度と独立であることを意味する。これらの測定において、OH表面種の存在を考慮するために収集されてないので、XPS測定から得られたO/Ti率は、期待された割合の約2より高い。
【0081】
RBS測定(図3)から、同様の傾向はCl/Ti率で測定され、低堆積温度は、塩素を含む酸化チタンのALD堆積膜の高Cl/Ti率につながる。RBSを用いて、0.064から0.088の範囲のCl/Ti率は、100℃から130℃の間で堆積された塩素を含む酸化チタンの膜で測定された。理論にとらわれずに、図2で示されるXPS測定結果と図3で示されるRBS測定結果の間の相違は、XPSが表面感度技術である一方、RBSは「バルク」技術であることに関連する。それゆえ、XPS結果は、塩素を含む酸化チタンの層の上部数ナノメータの組成を示す一方で、RBS結果は、バルク組成を示し、総Cl含有量を反映する。また、RBS測定の場合、Cl含有量を高くまたは低く見積もることにつながる下にあるTiN基板のいくつかの障害を有するかもしれない。さらに、Cl/Ti率の基板を保持する回転テーブルの回転速度(すなわち前駆体の曝露時間)の小さい影響により、低回転速度で低Cl/Ti率が観察された。この効果は、しかしながら堆積温度の効果よりかなり小さい。それにもかかわらず、これは堆積温度と分離してまたは加えて、回転速度もまた本開示の実施形態における塩素を含む酸化チタンの層のCl含有量を変更するための制御機構として用いられることができる。
【0082】
RBS測定結果から、また層の絶対Ti含有量が抽出された。100nmの層の厚さを用いて、yの全ての値で材料の密度は、約2.8g/cmであることが計算された。これは、アナターゼTiOの密度(3.8g/cm)の実施例よりかなり低い。
【0083】
塩素を含む酸化チタンの薄膜の電気化学特性評価の場合、カスタムメイドの3電極テフロン(登録商標)セルが用いられ、基板に固定され、電解質で満たされた。セルは、2つの区画を含み、一つの区画は、対向電極としてLi金属ホイルを備え、他の区画は、参照電極としてLi金属ホイルを備える。Li参照電極の区画は、作用電極の表面に近いラギングキャピラリによって主区画に接続された。すべての実験は、電解質としてプロピレンカーボネート(PC)で1M LiClOを用いて室温(21℃)で実行された。測定は、1ppm Oと0ppm HOでArを満たしたグローブボックスでなされた。接触は、サンプルの裏面をひっかき、GaInペーストを塗り、Cuホイルで接触することによって基板に作られた。電気化学セルは、Nova1.10ソフトウェアを用いて、PGSTAT101 Autolab(Metrohm)によって制御された。
【0084】
サイクリックボルタンメトリは、10mVs-1で0.1Vから3.2Vまで5サイクル実行された。その後、定電流充電/放電実験が、Liイオン貯蔵容量の特性を明らかにするために、3.0と0.1Vのカットオフ電圧で2.6から530μA/cmの電流密度で実行された。全ての電圧は、vsLi/Liを与えられる。
【0085】
理想の場合において、塩素を含む酸化チタンの膜は、アナターゼTiO密度に対応する密度を推定する~1280mAh/cmの最大理論容量につながる、Tiあたり1Liイオンを受容する(Ti(IV)-Ti(III)酸化還元対を使うことによって)ことができる。
【0086】
図4は、異なるCl含有量で本開示の実施形態に従って塩素を含む酸化チタンの100nm厚さの薄膜で0.4Cのレートで(5.3μA/cm)で充電/放電測定から決定された電位-容量カーブを示す(カーブa:y=0.06;カーブb:y=0.07及びカーブc:y=0.09)。塩素含有量(y値)は、RBS測定から決定された。さらに、35nm厚さアモルファスTiO層(Cl組み込みなしで)で測定された電位-容量カーブは、リファレンスとして示される(カーブd)。全ての層において、傾斜した電位プロファイルが得られ、これはアモルファスTiOで典型的である。最大容量は、最大Cl含有量で達した(RBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンの場合)。RBSによって測定されたCl/Ti率が0.06の塩素を含む酸化チタンの100nmの膜は、最も低い容量を有する。
【0087】
理想のシステムにおいて、薄膜電極の総容量(mAh/cmで表される容量)は、膜厚さ(層厚さ)に直線的に依存する。電極層が厚くなると、面積あたりの容量は、面積あたりの活物質が多くなるので、多く利用できる。それゆえ、35nmから100nmのアモルファスTiO膜の厚さが増加するとき、容量の直線的な増加があると期待されるであろう(または他で述べられた、体積測定容量がかわらないことが期待されるであろう。)。従来の35nmアモルファスTiO層と図4で示されるような本開示の実施形態に従うRBSによって測定されたCl/Ti率が0.06の塩素を含む100nmの厚さの酸化チタンで容量を比較したとき(mAh/cmで)、期待されたことに反して、面積容量で減少があることが観察される。これは、増加した膜厚の第2の効果によって説明されることができ、すなわち層内の電荷輸送距離が増加するので、電気的、イオン的抵抗が増加することである。これらの増加した抵抗は、効果的にある充電レートで利用できる容量を制限するかもしれない。この問題を回避する方法は、充電レートを制限することであり、電極を充電/放電するために非常に時間がかかることを意味するであろう。図4で示される結果に基づいて、実験からRBSによって測定されたCl/Ti率が0.06の塩素を含む酸化チタンの100nmの電極層の場合、抵抗損失は、同じ充電レートで従来技術の35nmアモルファスTiO電極層より少ない面積容量をもたらす。これは、この特定の場合において、単純に膜厚を増加することは、膜のレート性能を制限し、利用できる容量を減らすことを示す。しかしながら、実験結果は、またこの実施例に従って、本開示の実施形態による電極層が高いCl含有量を有するとき(例えば、RBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンの電極層)、約12μAh/cm(または約1200mAh/cm)の高容量が、100nm厚さの電極層で達成されることも示す。RBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンの層の優秀なレート性能により、100nmより厚いそのような層の厚さを増加することは、1Cより高い充電容量を維持する一方で、さらに容量(12μAh/cm)を増加するであろう。
【0088】
図5は、異なるCl含有量で本開示の実施形態に従って塩素を含む酸化チタンの100nm厚さの薄膜で充電/放電測定から決定されたCレートの関数として、体積測定容量を示す(カーブa:y=0.06;カーブb:y=0.07及びカーブc:y=0.09)。レート性能は、充電及び放電の間与えられた電流密度を変えることによって調査された(1C=~12.8μA/cmまたは1280mA/cm)。図5の結果は、それぞれRBSによって測定されたCl/Ti率が0.09、0.07、0.06の塩素を含む酸化チタンで、1189、791及び204mAh/cmの体積測定容量を、測定された最も低いCレート(0.5C)で示す。100nm厚さのTiO層の理論容量は、1280mAh/cmであり(アナターゼ密度を仮定する)、本開示の実施形態によるRBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンの層は、0.5Cでこの理論体積測定容量の約94%を達成できることを示す。例えば20Cにおいて、RBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンの膜は、0.5C容量の50%のままであり、この厚さ(すなわち100nm)の体制である活物質において極めて高い。理論容量の計算において、アナターゼ酸化チタンの密度(3.82g/cm)が用いられ、理論容量を高く見積もることにつながり、本開示の実施形態によるアモルファス層は、おそらく密度が低いとRBSによって示されると考える。計算でRBSで測定した密度(2.8g/cm)を用いて、理論容量は、940mAh/cmであろう。これは、RBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンで測定された値(1189mAh/cm)より低く、TiOのユニット式あたり、1より多いLiの挿入を示唆するか(Ti(III)及びTi(II)酸化還元状態を用いて)、及び/またはRBSから計算された密度が低く見積もられることを示す。
【0089】
図6は、本開示の実施形態に従った塩素を含む酸化チタンの100nmの厚さの層でCl含有量yの関数として、5.3μA/cm(0.4C)の電流密度で測定される、体積測定脱リチウム化容量を示す。これらの電気化学特性が測定された最も高いCl含有量はCl含有量y=0.09であった。この層は、100℃の堆積温度で空間ALDによって堆積された。高Cl含有量の層は、さらにALD堆積温度を下げることによって堆積できる。
【0090】
さらなる実験は、実行され、本開示の実施形態に従った塩素を含む酸化チタンの電極層は3D構造を備える基板、さらに特にはシリコンマイクロピラーを備える基板に堆積された。シリコンマイクロピラーは、フォトリソグラフィ及び深堀り反応性イオンエッチングによって300mmSiウェハに製造された。シリコンマイクロピラーは、1cm×1cmの領域上に(正方格子に配置された)規則的なパターンで提供された。50μmの高さのマイクロピラーの直径は、約2μmであり、ピラー間隔は2μmであった。21nm厚さのTiN集電体層は、一時的ALDによってマイクロピラーに堆積された。次の塩素を含む酸化チタン電極層は、異なる堆積温度(100℃、115℃及び130℃)で、空間ALDによって、TiN集電体層を備えるシリコンマイクロピラーを備える基板上に堆積された。TiCl及びHOはTiClが50sccm、HOが500sccmの流量で、前駆体として用いられた。
【0091】
塩素を含む酸化チタンの層の共形の特性を明らかにするために、マイクロピラーアレイの端部における壁に層厚は、深さの関数として測定された(すなわちマイクロピラーの頂上からの距離の関数として)。実用的な理由のために、これらの測定は、マイクロピラーアレイの端部においてなされたが、アレイ端部のRBSによって測定されたCl/Ti率が0.06の塩素を含む酸化チタンの層の厚さが、マイクロピラーの厚さを代表すると推定される。それらの厚さ測定の結果は図7に示される。上部の厚さ(頂上から0μmの距離)を底部の厚さ(頂上から50μmの距離)と比較したとき、ピラーの深さに沿った厚さでせいぜい20%の低下であることがわかる。プロセスはさらに例えば堆積の回転速度を低下することによってなどで、前駆体への曝露を増加することによって最適化されることができる。
【0092】
3Dピラーアレイ構造に100℃で堆積された塩素を含む酸化チタンの薄膜電極層は、レート性能に関して電気化学的に特性を明らかにされ、結果は、平面の基板に堆積された同じ組成の塩素を含む酸化チタンの薄膜電極層のレート性能と比較された。図8は、平面のTiNで被覆されたシリコン基板に堆積された、RBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンの100nm厚さの層の測定されたレート性能と、上述のように3Dシリコンマイクロピラーに堆積されたRBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の100nm厚さの塩素を含む酸化チタンの測定されたレート性能を示す。最も低く適用されたCレート(0.2C)において、11.9μAh/cmの容量は、平面基板に堆積された電極層で測定され、(設置面積あたり)242μAh/cmの容量は、3D基板に堆積された電極層で測定された。これは、3D電極の容量は、平面電極の容量より約20.3倍高く、マイクロピラーアレイの期待された面積増加と一致する(すなわち約20.6倍増加)。図8に示される測定結果は、さらにこの容量増加は、レート性能において大きな損失なしに達成されることを描く。例えば、20Cレートで、4.56μAh/cmの容量は、平面の基板に堆積された電極層で測定され、89μAh/cmの容量(設置面積あたり)は、3D基板に堆積された電極層で測定され、容量の19.5倍の増加に対応した。これは、容量が3D構造を用いて効果的に拡大する一方で、最初の充電特性を維持できることを示す。
【0093】
さらに、マイクロピラーを備える3Dシリコン基板に堆積されたRBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンの電極層の安定性は、試験された。図9は、2Cのレート(0.53mA/cm設置面積)で測定されたリチウム化及び脱リチウム化容量を示す。第1のサイクルにおける容量は、177μAh/cmで、その95.4%は、50サイクルにおいて保持される。それゆえ、リチウムイオン挿入/脱離で、RBSによって測定されたCl/Ti率が0.09の塩素を含む酸化チタンの3D電極層は、安定であり、容量の最小損失で、多くのサイクルのリチウムイオンの挿入/脱離を可逆的にできることが結論づけられる。
【0094】
さらなる実施例
【0095】
平面とマイクロピラー基板の準備の方法
【0096】
平面基板:200mm n型リンドープ結晶Siウェハは、物理蒸着によって60nmTiNで被覆され、1×1cmピースにダイスカットされ、その後、そのまま空間原子層堆積(s-ALD)アモルファスTiO(am-TiO)堆積と、その後電気化学特性評価が用いられた。TiNは、集電体及びSiにリチウムの拡散バリアとして機能するので選ばれた。s-ALD am-TiOプロセスのサイクル決定あたりの成長は、am-TiO堆積152mmSiウェハで実行された。
【0097】
シリコンマイクロピラー基板:300mm n型リンドープSiウェハは、Siマイクロピラー製造に用いられた。深堀り反応性イオンエッチングと組み合わされた、標準のフォトリソグラフィパターニングが、ピラー構造を製造するために用いられた。Siマイクロピラーアレイは、1×1cm平方で300mmウェハに、アレイの間に1cmの間隔を持って画定された。ピラーは、(通常の)高さ50μmで、直径及びピラー間隔は2μmで、正方格子に並べられた(概略的に補足情報参照)。23nmTiN集電体は、370℃のプラズマベースのプロセスを用いて、従来のALDによってピラーに堆積された。SEMと、電気化学特性評価が用いられた平面及びマイクロピラー基板は、s-ALD堆積が実行される2×2cm平方に(中心のマイクロピラーアレイと共に)ダイスカットされた。
【0098】
構造特性評価
【0099】
本開示の残りから明らかになるように、実験結果は、塩素を含む酸化チタンの一般式についてのaTiO2-yClを示す。これは、それゆえコンパクト化のためのこの文章の残りの部分で用いられる、表記である。平面TiN/Si及びマイクロピラー基板に堆積されたTiO2-yCl膜の厚さと表面モルフォロジは、NOVA200(FEI)走査電子顕微鏡(SEM)で調べられた。TiO2-yCl層の塩素の化学状態と含有量は、X線光電子分光法(XPS)及びラザフォード後方散乱分光法(RBS)を用いて決定された。XPSは、ULVAC-PHI社製Quanteraツール(Q1)で実施した。XPS測定の前に、サンプルの表面汚染は、Arイオンの1keVで2分間スパッタ洗浄によって取り除かれた。RBS測定のために、Heビームは、1.52MeVのエネルギで加速され、膜から散乱される。後方散乱イオンは、飛行時間型エネルギ望遠鏡によって検知され、元素組成の情報を与える。
【0100】
電気化学特性評価
【0101】
カスタムメイドの3電極ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)セルは、用いられ、Kalrez(登録商標)Oリングを用いて基板に固定され(それぞれ平面及び3D基板の1.1と1.79cmの曝露表面領域)、液体電解質(10-15mL)で満たされた。セルは、2つの区画を含み、1つの区画は、対向としてLi金属ホイルを備え、他方は、参照電極としてLi金属ホイルを備える。Li参照電極を備える区画は、作用電極の表面の近く(~4mmで)のラギングキャピラリによって主区画に接続された。全ての実験は、ポリプロピレンカーボネート電解質溶液のLiClOを用いて室温(21℃)で実行された。準備を容易にするために、LiClOを含むアンプル(100g、バッテリグレード、ドライ、99.99%、Sigma Aldrich)は、ポリプロピレンカーボネート(100mL、99.7%、Sigma Aldrich)に溶解され、0.94M溶液をもたらす。測定は、O及びHOが1ppm未満を保たれたArで満たされたグローブボックスでなされた。電気接触は、サンプルの裏面をひっかき、ガリウムインジウム共晶混合物を塗り(Alfa Aesar)、Cuホイルで接触することによってサンプルに作られた。電気化学セルは、Nova1.10ソフトウェアを用いて、PGSTAT101 Autolab(Metrohm)ポテンショスタット/ガルバノスタットによって制御された。5サイクリックボルタモグラム(CV)サイクルを、0.1Vから3.2Vの範囲で10mVs-1で記録した後に、定電流リチウム化/脱リチウム化実験を3.0と0.1Vのカットオフ電圧で実施した。CVとリチウム化/脱リチウム化実験の間、電極は、1/50Cカットオフ電流に到達するまで、3.0Vで緩和した。特に、平面サンプルの場合、5、10、25、50、100、250、500、2.5、5μAの電流は、連続して与えられた。3Dサンプルの場合、0.1、0.2、0.5、1、2及び5、0.05及び0.1mAが順番通りに与えられた。長期間サイクルテストが、100℃/70msで堆積されたTiO2-yClで3D電極を用いてなされた。長期間サイクルの前に、5CVサイクルは、10mVs-1で記録された。その後、10Cのレートにおいて、1000のリチウム化及び脱リチウム化サイクル、及び1Cにおいて5サイクルが与えられた。全ての電圧は、vs Li/Liを与えられた。
【0102】
結果
【0103】
(塩素ドープ)酸化チタン膜の空間ALD
【0104】
回転型反応器が用いられ、それは、152mmの丸い基板まで取り付けることが可能である。前駆体注入口は、排気領域によって囲まれ、サンプル上に置かれた150mm直径の丸い反応器ヘッドに組み込まれる。注入口は、異なる反応領域を分離し、前駆体が混合することを防ぐ、気体軸受平面に囲われる。気体軸受は、気体軸受表面に設置された穴を通って加圧されたNを流すことによって形成される。サンプルテーブルは、異なる回転周波数で回転することができる。全構造物は、堆積温度を制御する対流式オーブンに取り付けられる。堆積は、同時にホルダに取り付けられ、s-ALD反応器に積み込まれた4つの2×2cmのサンプルになされた。それぞれの堆積運転において、2つの平面2つの3D基板が積み込まれた。堆積前駆体は、それぞれ50sccmと500sccmでそれぞれ投与される、TiClとHOであった。前駆体ボトルの温度は、反応器の外側に制御され、TiClで室温及びHOで50℃に保たれた。20、30及び40rpmの基板回転周波数での堆積は、実行され、それぞれサンプルの中央においてガス曝露時間の140、90及び70msに対応した。基板温度は、100、115または130℃に固定され、アモルファスTiO膜を形成するのに十分低かった。サイクルあたりの成長は、同じ堆積運転においていくつかの曝露時間を調べることができる、ウェハの中央からの距離に依存する、全152mmSiウェハに堆積されたTiO層で分光エリプソメトリによって決定された(データは図示せず)。100、115及び130℃において、0.085、0.080及び0.075nm/サイクルのサイクルあたりの成長が決定された。これらの値を用いて、1155、1225及び1538回転サイクルは、それぞれ100nm膜を達成するために適用された。塩素のないリファレンスとして、am-TiOサンプルは、前駆体としてチタンテトライソプロポキシド(TTIP)とHOを用いて、100℃、10rpmの回転周波数でs-ALDによって堆積された。TTIP(TiClに対して)の長い曝露時間は、自己制限成長を確実にするために必要とされる。
【0105】
平面TiN/Si基板に堆積された膜の厚さとモルフォロジは、走査電子顕微鏡(SEM)で決定され、100と115℃で堆積された層で、なめらかで、閉じて、クラックのない膜を示した。130℃で堆積された膜の場合、しかしながら、いくつかの粒状特徴がSEMで見られた(図示せず)。正確な膜密度を決定する際に130℃TiO2-yClの不均一と関連する困難のため、我々は、電気化学性能でさらにこれらを評価しなかった。
【0106】
塩素ドープ酸化チタン膜の化学分析
【0107】
塩素ドープTiO膜の化学量論組成は、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)を用いて測定された。表1は、異なる堆積条件で、Ti含有量、Cl:Ti原子比及び膜密度の結果を与える。等しいTi含有量は100と115℃で実行された堆積で測定される一方で(TiCl及びTTIPの両方で)、Ti含有量は、130℃で高い。TiO2-yCl化学量論組成に基づいて、2.8gcm-3の密度は、曝露時間に関係なく、100℃から115℃で堆積された層で計算された。この密度は、実施例バルクアナターゼTiO(~3.8gcm-2)よりも、かなり低いことに留意する。130℃での堆積の場合、3.3gcm-3の密度が計算され、理論にとらわれることなく、表面の上部に存在する塊による閉じた膜における、Ti含有量の高い見積もりに関連しそうである。Ti含有量に基づき、Ti(IV)からTi(III)への還元を推定することによって、935mAhcm-3の理論体積測定容量は、100℃と115℃で堆積されたTiCl及びTTIPベースのTiO2の両方で計算される。
【0108】
次に、Cl含有量は、TiCl及びTTIP前駆体で堆積された異なる層で分析された。最も高いCl含有量(TiO1.912Cl0.088)は、最も低い堆積温度100℃で達成された。115℃と130℃での堆積は、全て100℃と比較して低いCl含有量につながる。115℃での堆積の場合、Cl含有量のガス前駆体曝露時間の影響は調べられ、短い曝露時間は、さらなる取り込まれたClにつながることを示す。この理由で、堆積温度と曝露時間の両方は、Cl含有量を制御するために用いられることができる。s-ALDによって堆積されたTTIPベースのアモルファスTiO層の場合、Clは、前駆体に塩素がないので、測定されない。
【0109】
表1において、異なる堆積条件(温度/曝露時間)及びガス前駆体でS-ALDによって堆積された100nmアモルファスTiO膜がRBSで測定された、Ti含有量、Cl:Ti原子比、膜密度及び理論体積測定容量が表される。
【0110】
【表1】
【0111】
図10は、Ti-Cl結合エネルギに対応する、199eV付近のピークで、s-ALDによって100から130℃で成長したTiO2-yClのTi-Cl結合のエネルギ範囲のXPSスペクトルを示す。スペクトルに現れる肩は、3p3/2と3p1/2への軌道分割による。同様な層の厚さの場合、塩素の量は、RBS測定に従って、低い温度で高い。これは、さらなる塩素は、低温度でチタンに結びつくことを意味する。理論にとらわれずに、いくつかの機構は、薄膜でTi-Cl結合の存在を説明することができる。膜の理想成長は、次の反応パスに続く。
【0112】
【数1】
【0113】
【数2】
【0114】
理論にとらわれずに、永続的なClの存在の第1の可能な説明は、-Clと-OHの不完全な配位子交換反応であるかもしれない(式(2))。これは、HO投与(すなわち、HOの分圧と曝露時間の組み合わせ)は、完全な反応につながるのに不十分であるときに起きることができる。他方で、観察されたCl/Ti率は、特定の堆積時間において形成する化学平衡の結果かも知れない。この場合において、HO投与の増加は、Cl/Ti率に変化つながらないだろう。
【0115】
非成長配位子交換反応のように、さらなる錯体機構が、起きることもできる。例えば、次の反応が起きることができる。
【0116】
【数3】
【0117】
この反応で形成された種は、材料の表面に移動することもできる移動種である。これらの種は、通常、200℃以上の堆積温度でのみ観察される。可能な変化は、形成された表面水酸基とともに、HOまたはTiClパルスの間形成される、ガス状HClの競争反応である。
【0118】
【数4】
【0119】
その結果、TiClパルスで非活性部位が形成され、膜に塩素が取り込まれる。Leemらによる研究は、ALDサイクルへTiClパルス後のHClパルスの追加は、層の厚さを減らし、それゆえ活性部位の数を減らす。
【0120】
RBSから、パルスとパージ時間の増加において(これらは現在の設定に関連する)、取り込まれた塩素の量は減少することは明らかである。これは、他の可能性が引き起こすことを排除しないが、不完全な配位子交換反応を示唆する。
【0121】
塩素ドープ酸化チタン膜の電気化学性能
【0122】
平面TiN-Si基板にTiCl及びTTIP(am-TiO)前駆体からs-ALDによって堆積された100nmアモルファスTiO2-yClのLiイオン挿入/脱離特性は、図11で示されるように、サイクリックボルタンメトリ及び定電流充電/放電実験によって決定された。異なるam-TiO2-yCl及びam-TiO層で10mVs-1で実行され、3.2と0.1Vで測定された、第5のサイクリックボルタモグラム(CV)は図11aに与えられる。電流応答は、膜の具体的な堆積条件及びそれゆえ塩素含有量に明確に依存する。最大の全体の電流密度は、TiO1.912Cl0.088膜(100℃/70ms)(実線)で測定された。この層において、よく定義された、幅広い還元酸化ピークは、1.3及び1.6V vs Li/Li付近で観察され、それぞれ、アモルファスTiO1.912Cl0.088構造にLiイオンの挿入及び脱離に割り当てられる。CVカーブの形状は、前に報告されたナノサイズ化されたam-TiO及び塩素のないTTIP am-TiOリファレンス(長い破線)と同様である。TiClベースのTiO2-yCl膜の場合、低Cl含有量は、定電流密度で定義された還元ピークの損失につながる。一点鎖線は、TiO1.926Cl0.074膜(115℃/70ms)に対応する。点線は、TiO1.940Cl0.060膜(115℃/90ms)に対応する。短い破線は、TiO1.941Cl0.059膜(115℃/140ms)に対応する。
【0123】
図11bは、定電流充電/放電実験と異なるTiO2-yCl膜で0.5C(+4.5μAcm-2)のレートで得られた結果の電位対容量プロファイル(定電流脱リチウムカーブ)を示す。測定された容量は強くCl-含有量に依存し、最高容量は、最大Cl含有量(y=0.088、実線)で達成された。一点鎖線は、TiO1.926Cl0.074膜(115℃/70ms)に対応する。点線は、TiO1.940Cl0.060膜(115℃/90ms)に対応する。短い破線は、TiO1.941Cl0.059膜(115℃/140ms)に対応する。長い破線は、塩素のないTTIP am-TiOリファレンスに対応する。電圧-容量プロファイルは、また前に報告されたナノサイズ化されたam-TiOと同様であり、試験された全てのサンプルにとって、ほとんどの脱リチウム化(>65%)は、1V vs Li/Liと2V vs Li/Liの間で起きる。異なるCレートに渡る全てのリチウム化/脱リチウム化試験の平均クーロン効率は、93%付近であった。一般に、我々は、レート性能は、脱リチウム化ステップによって制限されることがわかった、それゆえ、脱リチウム化容量は、次のように示される。
【0124】
TiO2-yCl膜のレート性能は、3.0から0.1の電圧範囲で異なるCレートを与える(0.25-50C)ことによって調べられた。Cレートに対する(脱リチウム化)容量は、図11cに示される。0.25Cにおいて、10.3、6.8、3.7、1.8μAhcm-2の容量は、それぞれy=0.088(黒丸)、0.074(菱形)、0.060(三角)及び0.059(四角)で得られた。さらに、TiO1.912Cl0.088層は、塩素のないam-TiOリファレンス(2.4μAhcm-2、白丸)より330%大きい容量を供給する。高Cレートにおいて、TiO1.911Cl0.088でアクセス可能な容量は、1Cと50Cのレートで、それぞれ最大容量の83%と26%である。
【0125】
図11dにおいて、0.25Cにおいて得られた最大脱リチウム化容量は、RBSから得られたCl:Ti原子比に対してプロットされた。四角、三角、菱形、黒及び白丸の意味は、図11cに定義されたのと同様である。リファレンスとして、塩素のない膜の容量は同様に与えられる。容量対Cl:Ti原子比の線形フィットはCl含有サンプルで実行された(R=0.95)。全ての電圧は、vs Li/Liを与えられる。上記で示されるように、塩素が多いとLiイオン貯蔵容量も大きい。興味深いことに、線形関係は、y=0.06付近のClのないam-TiOの容量を妨害するCl:Ti原子比及び最大容量の間で見出される。この理由から、最大容量の強化において、y>0.06のTiO2-yClの組成は有利である。
【0126】
y=0.09の場合、塩素のないam-TiOの容量の5倍の強化が得られる。この点において、飽和はまだ見られず、さらなる強化は、さらに高Cl含有量で可能である。100℃より低い堆積温度の減少は、原理的にCl含有量を増加することができる。しかしながら、100℃は、現在のところ自己制限ALDプロセスの限界に近い。
【0127】
膜厚とRBS密度から決定されたその重量に対して最大Cl含有量(TiO1.912Cl0.088)を含む膜の最大脱リチウム化容量を正規化することは、0.25Cにおいて362mAhg-1の重量測定容量につながる。興味深いことに、この値は、TiOあたり1Liの挿入で期待されるもの(=336mAhg-1)より高い。これは、Ti(III)の割合(~10%)は、可逆的にTi(II)に還元されることができる。熱力学的に、結晶TiOのTi(III)からTi(II)への還元は、0.37V vs Li/Liの電位から可能である。しかしながら、速度論的にアクセス不可能であり、我々の知る限りでは、Li金属で被覆された小さな二酸化チタンナノ粒子(<10nm)の場合に一回のみ観察されたと考える。
【0128】
理論にとらわれずに、本結果は、さらなるサブミクロン厚さのam-TiO膜のTi(II)への還元は、塩素をドーピングすることによって、得ることができると示唆する。
【0129】
図12において、我々は、本開示の最良の性能の塩素ドープam-TiO(TiO1.912Cl0.088、黒星)と従来技術で報告されたナノスケール化されたTiO電極を備える塩素のないam-TiO電極の1C(=336mAg-1)において重量測定貯蔵容量を比較する。図12に存在する1Cにおける従来技術の重量測定貯蔵容量は、次のリファレンスから導き出される。M. J. Sussman et al., Chem. Eng. 2015, 3, 334; G. Lui et al., Nano Energy 2016, 24, 72; B. Wang et al., ChemNanoMat 2015, 1, 96; K. Saravanan et al., Energy Environ. Sci. 2010, 3, 939; J. Ye et al., ACS Nano 2015, 9, 2194°; Y. Shen et al., Nanoparticle Res. 2013, 15, 1913°; Z. Jin et al., Nanotechnology 2014, 25, 395401°; J. Cheng et al., J. Mater. Chem. A 2014, 2, 2701; X. Xin et al., ACS Nano 2012, 6, 11035°; J. Liu et al, Adv. Mater. 2011, 23, 998°; N. Li et al, Adv. Funct. Mater. 2011, 21, 1717; H. Yang et al., J. Power Sources 2015, 288, 401; Y. Zhang et al. ACS Appl. Mater. Interfaces 2014, 6, 4458;M. Samiee et al., J. Power Sources 2014, 245, 594; W. Li et al., Chem. Mater. 2015, 27, 5014; J.-Y. Shin et al., J. Mater, Chem. Mater. 2012, 24, 543; M. Li et al., Electrochem. commun. 2015, 57, 43; M. Xie et al, J. Electrochem. Soc. 2015, 162, A974; H. Xiong et al., J. Phys. Chem. C 2012, 116, 3181; X. H. Wang et al., J. Mater. Chem. A 2015, 3, 15394。
【0130】
四角は、アナターゼナノ構造である。菱形はアモルファスTiOである。丸は、アナターゼ/C複合材料である。三角はドープされたアナターゼである。黒星は、本発明の実施形態によるTiO1.912Cl0.088である。白星は、本開示で準備されたTTIP am-TiOである。異なるナノ構造を(薄膜、ナノ粒子及びナノチューブ)を比較するために、これらのナノ構造の中のLiイオン拡散で典型的な距離、TiO膜で膜厚、粒子で半径、ナノチューブで壁厚の半分が取られた。1Cのレートにおいて、我々の100nmアモルファスTiO1.912Cl0.088膜は、最良のナノサイズ化された電極(10nmのチューブ壁厚を備えるam-TiOナノチューブで250mAhg-1)より20%大きい容量(301mAhg-1)を供給する。さらに50Cにおいて、我々のアモルファスTiO1.912Cl0.088は、92mAhg-1を達成し、さらにam-TiOナノチューブを除いた、ナノサイズ化されたベースのTiO電極より性能が優れている。
【0131】
理論にとらわれずに、強化された容量と優秀なレート性能における我々の仮説は、イオン伝導度と導電性の両方の強化に基づく。強化された導電性は、TiOのO2-をClで置換した後、Ti(III)状態の永続的な存在によって説明することができる。Ti(III)の存在は、導電性を増加し、レート性能と、続いてアクセス可能な容量を強化することが知られている。ドーピングによって永続的なTi(III)の導入は、最大容量を犠牲にして行ってもよいことに留意する。しかしながら、我々の場合において、容量の増加は、アクセス可能な容量の損失なく、9%(Ti(III)(x Cl=0.088)まで観察された。それどころか、最大容量は、さらに増え、特にTiの~90%のみがTi(IV)のとして入手可能である(すなわち、Li0.9TiO1.91Cl0.09~302mAhg-1)ことを考慮したとき、Ti(IV)からTi(III)に完全に還元したものを超える。仮定の下で、約17%のTi(II)は、362mAhg-1の最大容量において形成される。Liのイオン伝導性は、また結晶TiOよりアモルファスTiOの方が高いことが知られている。リチウム拡散係数は、アモルファスで3.5×10-12cm-1のオーダで、アナターゼで~1×10-14cm-1のオーダである。Ti(II)の有意な割合が形成できる事実は、Clドープ材料のLiイオンの優秀なアクセスを示す。酸素と比較して大きい塩素のイオン半径は、Liが拡散するためののいくぶん広い「チャネル」を作り出す。さらに、局所的なイオン分配の変化は、クーロン作用力を減らし、Ti(II)の形成とTiあたり1より多いLiのリチウム挿入ができるかもしれない。
【0132】
アモルファスTiO(及び我々の場合TiO2-yCl)におけるリチウム化及び脱リチウム化の機構は、アナターゼTiOと異なり、アモルファスTiOにおける「電圧プラトー」の欠如につながる(図11b参照)。そのようなプラトーは、通常Liリッチ、Liプア領域の間の一次相転移の結果である。アモルファス構造は、そのような遷移が発生することを抑制し、広い電位範囲に渡ってLiイオンの連続挿入を許す。アナターゼTiOの場合において、斜方晶系のLi0.6TiO相が形成され、Liイオン拡散係数の桁違いの減少をもたらし、さらなるリチウム化を阻止する。TiOの無秩序なアモルファス構造は、さらにランダムな通路が材料内でアクセス可能であるので、さらに容易なLiイオン拡散を許すだろう。傾斜した電位応答は、完全バッテリセルの電位プラトーは望ましくないかどうかが議論されうるが、一つの利益は、セル電圧を直接測定することによって、充電状態を決定できることである。また、TiO1.911Cl0.088の平均脱リチウム化電位は、1.65V vs Li/Li(1Cにおいて測定)であり、アナターゼTiO(~1.9V)の脱リチウム化電位より0.25V低い。二酸化チタンは、Liイオンバッテリの負極として考えられるので、低脱リチウム化電位は、放電の間、高エネルギ密度をもたらすであろう。
【0133】
3D薄膜電極としてClドープアモルファス酸化チタンの実施
【0134】
小さな自立装置を可能とするために、統合されたエネルギ貯蔵は、小さな設置面積と速い充電能力を提供することが必要とされる。これを想像されたバッテリは、3次元(3D)全固体薄膜バッテリである。その実用的な実施のキーは、費用対効果の高い共形被覆技術と高レート性能電極材料である。全固体3Dバッテリにおいて、S-ALDによって堆積されたClドープam-TiO薄膜を統合するいくつかの利益がある。第1に、相対的に低い堆積温度(<150℃)は、下層または集電体の結晶化または酸化を防ぐので、完全3Dバッテリスタックの製造に利点がある。例えば、アモルファスLIPON固体電解質は、360℃より高くで結晶化し、室温でイオン伝導度の桁違いの減少をもたらすため、防ぐ必要がある。第2に、Clドープam-TiOの微結晶の欠如は、固体電解質のよいインターフェースと全スタックの統合性を確実にするためなめらかな層を生じさせる。最後にs-ALDは、従来のALDより非常に高い堆積レートで、高品質で自己制限膜を堆積するための優れた機会を提供する。3D薄膜電極としてs-ALDによって堆積されたClドープam-TiOを実施するために、100nm TiO2-yClは、TiNで被覆したシリコンマイクロピラーに堆積された。Siマイクロピラーは、フォトリソグラフィパターン及び深掘り反応性イオンエッチングによって製造され、正方格子に配置された。ピラーは、図13a-cのSEM顕微鏡に示されるように、約50μmの高さで、2μmの直径と空間を有する。図13aは、被覆されてないピラーの上面図である。図13bは、Clドープアモルファス酸化チタンが被覆されたピラーの斜視上面図であり、図13cは、その断面図である。差し込み図は、1×1cmSiマイクロピラーアレイのデジタル写真画像である。
【0135】
3D構造は、異なるTiO2-yCl s-ALD堆積条件が試験された、約21から25倍の面積拡大係数(AEF)を提供する。
【0136】
図14は、異なる堆積条件において堆積されたPCの1M LiClOの平面(2D)及び微細構造(3D)TiO2-yCl電極の電気化学結果を与える。図14aは、平面基板でTiO1.912Cl0.088の組成に対応する、100℃で70msの曝露時間で堆積された2D及び3D電極で、10mVs-1で記録されたサイクリックボルタモグラムを示す。3Dサンプルで還元及び酸化の形状は、平面サンプルの形状と同様である(図11aも参照)。ピーク電位は、いくぶん大きなオームドロップで期待されるようにシフトする。3D電極のピーク電流密度は、平面のものと比較して30倍の増加を示し、面積拡大からのみ予想されるものの範囲内である。
【0137】
図14bは、1Cの定電流で測定された2D及び3D電極の容量-電位プロファイル(2D及び3Dで、それぞれ9及び200μAcm-2)を示す。簡単にリチウム化と脱リチウム化特性を比較するために、測定容量は、3.0Vのカットオフ電流に到達され、0.25Cで測定されたそれらのそれぞれの最大脱リチウム化容量によって正規化される。2D及び3D電極で電位プロファイルの良好な一致は、3D被覆は厚さとCl含有量で同様であることを示す。図14cは、異なるCレートにおけるy=0.088とy=0.074の2D及び3D TiO2-yClの(脱リチウム化)設置面積容量を比較する。最大設置面積容量は、再び最大Cl含有量で見出される。242及び164μAhcm-2の設置面積容量はそれぞれy=0.088とy=0.074で0.25Cで到達する。両方のCl含有量において、3D電極の容量は、AEFと一致して、2D電極の容量の正確に24倍である。さらに、3D電極は、平面電極としてCレートに対する容量で同じ傾向を有し、レート性能は同じ膜厚で予期されるものと比較できることを示す。特に最良の性能の3D電極(TiO1.912Cl0.088)は、1及び20Cで、それぞれ最大容量の87%(211μAhcm-2)及び37%(89μAhcm-2)のアクセスができる。これは、平面サンプルでアクセス可能な容量の割合は同様であり、平面容量は、3D構造化によって効率的に強化される一方で、同じレート性能を保持できることを示す。
【0138】
3D TiO1.912Cl0.088電極のサイクル安定性は、1000定電流リチウム化/脱リチウム化サイクル(図示せず)を超えて調べられた。第1に、10Cレートで1000サイクル適用した後に、1Cで5サイクル適用した。3.0と0.1V vs Li+/Liのカットオフ電位が、定電流実験で用いられた。第1の30サイクル(10Cにおいて)において、設置面積容量は、133μAhcm-2から約140μAhcm-2にわずかに増加し、その後970サイクルで一定であった。それゆえ、10Cにおいて1000サイクルの間、容量の損失は、ClドープのアモルファスTiO膜で観察されない。完全サイクル実験で平均リチウム化脱リチウム化クーロン効率は、99.96%であった。10Cで測定した第1のサイクルは、83.4%のクーロン効率を有し、1Cにおける第1のクーロン効率は111.2%のクーロン効率を有した。これは、第1のサイクルの間、リチウムの一定量は、トラップされ、低いCレートで後に回復したことを示唆する。それゆえ、3D ClドープTiO電極は、容量の損失なく、高クーロン効率で、1000サイクルを超えて可逆的にリチウムを挿入/脱離できる。
【0139】
TiO薄膜電極と3D Clドープアモルファス酸化チタン電極の比較は、文献で見つけた。
【0140】
我々の最良の性能の3D TiO2-yCl電極を基準に従って評価するために、我々は、文献で見つけられた3D TiO薄膜電極とそのレート性能を比較した。特に、我々は、完全薄膜バッテリスタックの共形堆積のために十分間隔を開けた、周期構造を有する、3D集電体設計を選ぶ(固体電解質によって分離された正及び負極の両方)。この理由のために、例えば、TiO/炭素複合材料、またはTiO被覆ナノ多孔質Auの報告は、除外された。図15は、ALD(E. Eustache et al; M. Letiche et al.; S.K. Cheah et al.)及びCVD(J. Xie et al.)によって、共形堆積されたシリコンマイクロピラー(J. Xie et al, J. Electrochem. Soc. 2016, 163, A2385)、シリコンマイクロチューブ(E. Eustache et al., Adv. Energy Mater. 2014, 4, 1301612°; M. Letiche et al., Adv. Energy Mater. 2016, 201601402, 1601402)、アルミニウムナノロッド(S. K. Cheah, Nano Lett. 2009, 9, 3230)のTiO薄膜電極で得られる容量をまとめる。J. XieらのCVDアナターゼ膜は、この仕事で用いられた同じSiマイクロピラーアレイに堆積されたことを留意する。電極性能に関連した3つの異なる特性、(1)設置面積容量、(2)活物質容量及び(3)3D電極体積測定容量が、試験された。
【0141】
丸は、Siマイクロチューブ(E. Eustacheら)にALDによって堆積された150nm TiOアナターゼを表す。四角は、Siマイクロピラー(J. Xieら)でLPCVDによって堆積された40nm TiOアナターゼを表す。星は、Siマイクロチューブ(M. Leticheら)にALDによって堆積された155nm TiOアナターゼ/lIPOを表す。菱形は、Alナノロッド(S. K. Cheahら)にALDによって堆積された17nm TiOアナターゼ/アモルファスを表す。丸は、本発明の実施形態によるSiマイクロピラー上の100nm Clドープアモルファス酸化チタンを表す。
【0142】
図15aは、異なるCレートでの異なる3D TiO薄膜電極の設置面積容量を比較する(報告のように取られる)。0.06Cの低いレートにおいて、370μAhcm-2の最大設置面積容量は、Pt集電体と155nmアナターゼTiO/LiPO(LIPO)で被覆されたSiマイクロチューブアレイで得られる。報告されたSiマイクロチューブ構造は、約8.2μmの「同等の」TiO厚さに相当する約53倍のAEFを示し、Siマイクロピラーアレイ上の我々の3D TiOのそれの4倍を超える(AEF~21倍及び100nmの有効膜厚)。しかしながら、高設置面積容量及び早い充電は、エネルギ貯蔵の表面面積が制限され、再充電が例えば健康モニタ装置において、素早くされる必要がある、用途で非常に有利である。実際、3D薄膜バッテリで権利主張された主な利点は、それらの主な充電容量である。図15aで示されるように、しかしながら1Cより高く、3D Siマイクロチューブベースの電極の容量は、早くなくなり、10Cより高いCレートで、10μAhcm-2未満のままである。その一方、我々の早い反応速度論3D Clドープam-TiO電極は、10Cまで100μAhcm-2より大きい設置面積容量のままであり、すなわち全ての他の3D TiO電極より少なくとも10倍よい。
【0143】
図15bは、異なるCレートでのTiO活物質の体積測定容量(活物質堆積あたりの容量)を示す。この値は、同等なTiO厚さ(=AEF×有効TiO膜厚)で設置面積容量を割ることによって得られた。全てのCレートに渡って、我々の3D TiO1.912Cl0.088電極は、最大体積測定容量を提供する。この高体積測定容量は、面積拡大の半分(53倍に対する21倍のAEF)のみを備える3D構造上の薄いTiO膜(155nmアナターゼに対する100nm TiO1.912Cl0.088)が、まだ同様の設置面積容量を有したことを説明する。
【0144】
最後に、我々は、「3D電極容量」として表示される完全な3D構造の体積測定容量を分析した。この値は、ピラーまたはマイクロチューブの高さで設置面積容量を割ることによって得られた。3D電極容量は、最終のエネルギ貯蔵装置の体積測定容量の表示を与える(パッケージング及び基板支持を無視して)。成功した3D電極設計は、Liイオン挿入材料の体積を最大化する一方で、3D集電体(及び固体電解質)の体積を最小化するだろう。図15cは、異なる3D TiO電極での3D電極容量を示す。0.08Cの低いCレートにおいて、最大3D電極容量(57mAhcm-3)は、150nmアナターゼTiO(25倍のAEF)で被覆されたSiマイクロチューブ電極で得られる。しかしながら、図15a-bの結果と同様に、0.25から25Cのレートから、3DアモルファスTiO2-yCl電極は、最大3D体積測定容量を有する。
【0145】
前述の記載は、開示のいくつかの実施形態を詳細にする。しかしながら、前述の内容がどれほど詳細に記載に現れていたとしても、本開示は多くの方法で実施することができることが理解されるであろう。本開示の特定の特徴または態様を記載するとき、用語が、用語に関連する開示の特徴または態様の任意の具体的な特性を含むように制限されることを本明細書で再定義することを意味すると、具体的な用語の使用は、解釈されるべきでないことに留意するべきである。
図1
図2
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図4
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図6
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図10
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図15