(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】気体発生抑制剤、発泡性組成物の製造方法および発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20220512BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2019058689
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真裕子
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 巧
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-189516(JP,A)
【文献】特開2012-090564(JP,A)
【文献】特開平07-238008(JP,A)
【文献】特開平11-152217(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1651088(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスリトールと発泡成分とを含有する
、容器・包装に密封された発泡性組成物(食品
、経口摂取される医薬品
および口腔用品を除く)。
【請求項2】
発泡性の入浴剤または発泡性の洗浄剤である、請求項
1に記載の発泡性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリスリトールを有効成分とする、発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制する剤、これを用いる発泡性組成物の製造方法および発泡性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸塩および酸等の発泡成分を含有する製品は、様々な分野において展開されている。例えば、食品分野では、シュワシュワという「発泡感」を付与したキャンディやグミ、タブレットなどの菓子が小売店に数多く陳列されており、市場を拡大させている。また、非食品分野では、温浴効果の向上を謳った入浴剤、高い洗浄効果を謳った洗顔料や義歯用・配管用の洗浄剤等の製品があり、その用途は非常に多岐に渡る。
【0003】
一方、これらの製品における発泡成分は、使用時に唾液や水などの液体と接触させることにより気体ないし気泡を発生させることを意図したものであるが、保存時に、当該製品や環境中に含まれる水分と反応して気体を発生してしまい、その結果、容器・包装が膨張・変形したり、使用時の発泡感や洗浄効果が低下することが問題となっている。
【0004】
そこで、発泡成分を含有する組成物(発泡性組成物)において、保存時の気体発生を抑制する技術が研究開発されており、例えば、特許文献1には、炭酸塩を芯物質として内包する多芯型マイクロカプセルの外部に有機酸を配置することで、保存中に炭酸塩と有機酸とが接触せず炭酸ガスの生成が抑制された発泡性食品が開示されている。また、特許文献2には、有機酸に水溶性バインダーを担持させ、更に特定の水溶性表面処理成分を固着させた表面処理有機酸粉体と炭酸塩とを含有することで、長期保存しても炭酸塩の分解や劣化が生じない発泡性浴用剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-171416号公報
【文献】特開2018-65759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の技術は、製品に特殊な構造を持たせたり、発泡成分に特殊な処理を施す必要があることから、製品用途が限定され、汎用性に欠ける。また、製造設備や製造方法が限定され、製造コストも大きくなる懸念がある。すなわち、これら特許文献を鑑みても、発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制する、簡便で汎用性の高い技術は十分に提供されている状況ではない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制する剤を提供することを目的とする。また、これを用いる発泡性組成物の製造方法および発泡性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、エリスリトールを発泡性組成物に配合することにより、保存時の気体発生を抑制できることを見出した。そこで、この知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0009】
(1)本発明に係る発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制する剤は、エリスリトールを有効成分とする。
【0010】
(2)本発明に係る剤において、気体は二酸化炭素であってよい。
【0011】
(3)本発明に係る発泡性組成物の製造方法は、本発明に係る剤と発泡成分とを混合する工程を有する。
【0012】
(4)本発明に係る発泡性組成物は、エリスリトールと発泡成分とを含有する。本発明に係る発泡性組成物は、食品および経口摂取される医薬品を除くものであってよい。
【0013】
(5)本発明に係る発泡性組成物は、本発明に係る剤と発泡成分とを含有する。
【0014】
(6)本発明に係る発泡性組成物は、発泡性の入浴剤または発泡性の洗浄剤であってよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制することができる。したがって、例えば、保存時の気体発生の結果生じる、発泡性組成物を内包する容器包装の膨張・変形、あるいは、発泡感や洗浄効果の低下といった発泡性組成物を含有する製品の品質低下を抑制することができる。
【0016】
また、本発明によれば、エリスリトールと発泡成分とを混合するという簡便で汎用性の高い方法で、保存時の気体発生を抑制した発泡性組成物を製造することができる。したがって、特別な製造設備や製造方法を要することなく、広範な産業分野の発泡性組成物を含有する製品において、保存時の気体発生を抑制することができる。
【0017】
また、本発明によれば、保存時の気体発生が抑制された発泡性組成物を得ることができる。すなわち、流通や保管等の過程を経ても、容器・包装の膨張・変形や使用時の気体発生の低減等が抑制されて、製品品質が比較的維持された発泡性組成物を市場に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は、各種の賦形剤を配合した粉末状の発泡性組成物を入れた袋の、保存中の体積変化量を示す折れ線グラフ、(B)は当該体積変化量の数値を示す表である。
【
図2】(A)は、賦形剤としてグルコース(試料1)またはエリスリトール(試料2)を配合した錠剤形状の発泡性組成物を入れた袋の、体積変化量を示す折れ線グラフ、(B)は当該体積変化量の数値を示す表である。
【
図3】賦形剤としてグルコース(試料1)またはエリスリトール(試料2)を配合した錠剤形状の発泡性組成物を入れた袋の、4日間保存後の外観を示す写真である。
【
図4】賦形剤としてグルコース(試料1)またはエリスリトール(試料2)を配合した錠剤形状の発泡性組成物の外観および断面を示す写真である。
【
図5】(A)~(D)はそれぞれ、賦形剤と発泡成分とを90:10、70:30、30:70および10:90(質量%比)で配合した粉末状の発泡性組成物を入れた袋の、体積変化量を示す折れ線グラフおよび表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、エリスリトールを有効成分とする、発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制する剤を提供する。また、本発明は、エリスリトールと発泡成分とを含有する発泡性組成物を提供する。
【0020】
本発明において、発泡性組成物とは、液体と接触した際に気体を発生する組成物をいう。係る気体発生反応が液体中で起こった場合は、発生した気体は気泡を形成する。よって、本発明においては、液体と接触した際に気体を発生する反応を起こす成分を「発泡成分」という。
【0021】
発泡成分としては、炭酸塩と酸(二酸化炭素が発生する)や過酸化カルシウム(酸素が発生する)を例示することができるが、これらに限らず、気体発生反応を起こす成分であればいかなるものも用いることができる。
【0022】
発泡性組成物の用途は特に限定されず、例えば、医薬品、飲食品、入浴剤や洗浄剤などの日用品・工業用品・清掃用品等の各種用途であってよい。発泡性組成物は、気体や液体を除いた固体であればよく、その形状は、粉末状、顆粒状、ゲル状、錠剤等の固形物などを例示することができるが、その用途や含有成分等に応じて適宜設定することができる。
【0023】
本発明に係る発泡性組成物の一態様としては、食品を除くものであってもよい。また、別の一態様として、経口摂取される医薬品を除くものであってもよい。食品および経口摂取される医薬品を除く発泡性組成物の具体例としては、上述の入浴剤や洗浄剤などの日用品・工業用品・清掃用品等を挙げることができる。なお、この場合の「経口摂取される医薬品」とは、ヒトの身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされている物のうち、経口摂取される物をいう。
【0024】
エリスリトールは、化学名が1,2,3,4-Butaneterolである糖アルコールであり、エリトリトールとも呼ばれる。エリスリトールは、市販されているものを用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。
【0025】
公知の製造方法としては、グルコースなどを炭素源としてエリスリトール生産菌を培養して生産させ、これを精製して得る方法を挙げることができる。ここで、エリスリトール生産菌としては、例えば、トリゴノプシス属またはカンジダ属に属する微生物(特公昭47-41549号公報)、トルロプシス属、ハンゼヌラ属、ピヒア属またはデバリオミセス属に属する微生物(特公昭51-21072号公報)、モニリエラ属に属する微生物(特開昭60-110295号公報、特開平10-215887)、オーレオバシデュウム属に属する微生物(特公昭63-9831号公報)、イエロビア属に属する微生物(特開平10-215887号公報)などを挙げることができ、培養条件は、各菌に適した通常の条件で行うことができる。また、エリスリトールの精製は、菌体分離、クロマトグラフィーによるエリスリトールの分取、脱塩、脱色、晶析、結晶分解および乾燥の工程を常法に従って行うことができる。
【0026】
市販のエリスリトールまたは上述の方法により製造したエリスリトールはそのまま用いてもよいが、発泡性組成物を錠剤の形状とする場合は、造粒して、エリスリトールを主成分とする顆粒(エリスリトール顆粒)としてから用いてもよい。
【0027】
本発明において、「発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制する」とは、当該発泡性組成物の本来意図した使用に至るまでのいずれかの期間において、当該発泡性組成物に含有される発泡成分が、当該発泡性組成物や保存環境中に含まれる液体と反応して発生する気体の量を低減することをいう。ここで、保存時の気体発生を抑制したか否かは、簡便には、発泡性組成物を内包する容器包装の膨張の程度により確認することができる。すなわち、エリスリトールを配合した発泡性組成物と配合していない発泡性組成物とを気体透過率の低い包装材により包装し、同条件下で一定時間保存する。その後、容器包装の膨張の程度を目視あるいは体積を測定することにより確認する。前者の方が膨張の程度が小さければ、本発明の剤により保存時の気体発生が抑制されたと判断することができる。
【0028】
エリスリトールは、発泡性組成物の通常の製造工程において、発泡性成分等の他の材料と混合することにより用いることができる。すなわち、本発明は、本発明に係る剤と発泡成分とを混合する工程を有する、発泡性組成物の製造方法も提供する。
【0029】
発泡性組成物におけるエリスリトールの配合量(含有量)は、当該発泡性組成物の用途や形態等に応じて適宜設定することができる。なお、保存時の気体発生抑制効果を高くする観点からは、発泡成分1重量部に対してエリスリトールを0.11重量部以上、0.2重量部以上もしくは0.3重量部以上の配合量を例示することができ、あるいは、発泡性組成物においてエリスリトールを10(w/w)%以上、15(w/w)%以上、20(w/w)%以上もしくは25(w/w)%以上の配合量を例示することができる。
【0030】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。また、本実施例においては、別段に記載のない限り「%」は「質量%」を意味する。
【実施例】
【0031】
<試験方法>
(1)使用材料
本実施例で使用した材料を表1に示す。また、保存用の袋はアルミラミネートフィルムの平袋またはスタンド袋を用いた。各袋の仕様を以下に示す。ラミネート構成は左端が最外面、右端が最内面を示す。
平袋:[大きさ]チャック上20mm+チャック下120mm×袋巾85mm、[ラミネート構成]ポリエチレンテレフタレート(PET)12/ポリエチレン(PE)15/アルミニウム(AL)7/PE15/PE40、[製品名]AL-D(生産日本)
スタンド袋:[大きさ]チャック下115mm×袋巾90mm+底ガゼット巾28mm、[ラミネート構成]PET12/PE15/AL7/PE80、[製品名]AL-9(生産日本)
【表1】
【0032】
(2)体積測定
あらかじめ一定量の水を入れたメスシリンダーに試料を投入し、増加した水の量を測定して、当該試料の体積とした。
【0033】
<実施例1>粉末混合物における気体発生抑制効果の検討
表2の処方となるように各材料を混合して粉末状の発泡性組成物を得た。これを保存用の袋(アルミラミネートフィルムの平袋)に6gずつ入れ、袋の口をヒートシーラーで密封して、試料1~3を作製した。試料は各処方2つずつ用意した。これを温度40℃、湿度非管理の環境下で10日間静置保存した。保存期間中、経時的に体積を測定し、測定値から保存開始時の体積を減ずることにより、体積変化量(mL)を算出した。その結果を
図1に示す。
図1に示す体積変化量は、各処方2つの平均値である。
【表2】
【0034】
図1に示すように、試料1(賦形剤:グルコース)の体積変化量は、1、2、3、4、7、8、9および10日目のいずれの時点においても顕著に大きく、10日目が149mLで最大であった。試料2(賦形剤:ソルビトール)の体積変化量も同様であり、1~4および7~10日目のいずれの時点においても顕著に大きく、10日目が123mLで最大であった。これに対して、試料3(賦形剤:エリスリトール)の体積変化量は、1、2および3日目は0mLであり、4、7、8、9および10日目は増加が見られたがその程度は小さく、10日目が最大であるものの僅か16mLであった。
【0035】
すなわち、グルコースやソルビトールを配合した粉末状の発泡性組成物を入れた袋は、保存中に体積が顕著に増加(膨張)したのに対して、エリスリトールを配合したものは膨張が顕著に抑制されたことが明らかになった。この結果から、エリスリトールは、発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制できることが明らかになった。
【0036】
<実施例2>錠剤における気体発生抑制効果の検討
(1)エリスリトール顆粒の調製
造粒装置「マルチプレックス FD-MP-01ND(パウレック)」に、粉末状のエリスリトールを仕込み、熱風入口温度が80℃、風量が0.6m3/分、噴霧圧力が0.2MPaにて、噴霧液を噴霧しながら造粒を行って、顆粒状のエリスリトール(エリスリトール顆粒)を得た。噴霧液には、ヒドロキシプロピルセルロース(セルニーSSL(日本曹達))を9%となるよう溶解した水溶液を用いた。調製したエリスリトール顆粒中にはHPCが3%の濃度で含有されていた。
【0037】
(2)錠剤の調製
表3の処方となるように各材料を混合して、連続式単発型打錠機「AUTOTAB-200(市橋精機)」に仕込み、普通Rの円形錠に圧縮成型した。錠剤のサイズは、直径が10mmで1錠当たりの重量が600mgとした。打錠圧は、各処方で錠剤硬度が同程度となるように設定した。錠剤硬度はロードセル式錠剤硬度計PC‐30(岡田精工)により測定し、各処方につき3錠の平均値を算出した。打錠圧および平均錠剤硬度も表3の下段に示す。
【表3】
【0038】
(3)保存
錠剤を保存用の袋(アルミラミネートフィルムのスタンド袋)に10錠ずつ入れ、袋の口をヒートシーラーで密封して、試料1および試料2を作製した。試料は各処方2つずつ用意した。これを温度40℃、湿度非管理の環境下で4日間保存した。
【0039】
(4)評価
保存期間中、経時的に体積を測定し、測定値から保存開始時の体積を減ずることにより、体積変化量(mL)を算出した。その結果を
図2に示す。
図2に示す体積変化量は、各処方2つの平均値である。また、保存後の袋の外観を目視で観察した結果を
図3に示す。さらに、保存開始時および保存後において、錠剤の外観を目視で観察し、錠剤の断面を電子顕微鏡VHX-2000(キーエンス社)で観察した。それらの結果を
図4に示す。
【0040】
図2に示すように、試料1(賦形剤:グルコース)の体積変化量は、1、2、3および4日目のいずれの時点においても顕著に大きく、4日目が122mLで最大であった。これに対して、試料2(賦形剤:エリスリトール)の体積変化量は、1、2、3および4日目のいずれの時点においても小さく、4日目が最大であるものの僅か45mLであった。また、
図3に示すように、試料1(賦形剤:グルコース)の袋は大きく膨張したのに対して、試料2(賦形剤:エリスリトール)の袋はほとんど膨張していなかった。すなわち、グルコースを配合した錠剤形状の発泡性組成物を入れた袋は、保存中に顕著に膨張したのに対して、エリスリトールを配合したものは膨張が抑制されたことが明らかになった。
【0041】
さらに、
図4の左側図に示すように、錠剤の外観は、試料1(賦形剤:グルコース)では、保存後は保存開始時と比較して変色し、表面性状が著しく粗くなっていた。これに対して、試料2(賦形剤:エリスリトール)では、保存後も保存開始時と比較して変色はほとんど無く、表面の滑らかさもあまり変化が無かった。また、
図4の右側図に示すように、錠剤の断面は、試料1(賦形剤:グルコース)では、保存後は保存開始時と比較して粗くなり、直径の大きい気泡跡の数が顕著に増加していた。これに対して、試料2(賦形剤:エリスリトール)では、保存後は保存開始時と比較してやや粗くなったものの、直径の大きい気泡跡の数は、保存後の試料1の錠剤断面と比較して顕著に少なかった。すなわち、グルコースを配合した錠剤形状の発泡性組成物は、保存中の気体発生により品質が劣化したのに対して、エリスリトールを配合したものは品質劣化が抑制されたことが明らかになった。
【0042】
以上の
図2、
図3および
図4に示す結果から、エリスリトールは、発泡性組成物の保存時の気体発生を抑制し、もって品質劣化を抑制できることが明らかになった。
【0043】
<実施例3>エリスリトールの配合割合の検討
実施例1に記載の方法により試料1~3を作製して10日間保存し、体積変化量を測定した。ただし処方は表4のとおりとし、賦形剤と発泡成分との配合割合を90:10~10:90(質量%比)の間で変化させた試験I~IVを行った。その結果を
図5に示す。なお、表4において、「賦:発」は、「賦形剤:発泡成分」を意味する。
【表4】
【0044】
図5に示すように、試験I(賦形剤:発泡成分=90%:10%)、試験II(賦形剤:発泡成分=70%:30%)、試験III(賦形剤:発泡成分=30%:70%)および試験IV(賦形剤:発泡成分=10%:90%)の全試験で、1、2、3、4、7、8、9および10日目のいずれの時点においても試料1(賦形剤:グルコース)および試料2(賦形剤:ソルビトール)の体積変化量が顕著に大きかった(ただし、試験IIIの試料1および試料2は、保存5日目に袋が膨張により破裂したため、以降の体積測定は不可となった。)。これに対して、全試験で、1~4および7~10日目のいずれの時点においても、試料3(賦形剤:エリスリトール)の体積変化量は試料1および試料2と比較して顕著に小さかった。
【0045】
すなわち、エリスリトールと発泡成分とを質量比90:10~10:90で配合した発泡性組成物(発泡成分1重量部に対してエリスリトールを0.11重量部~9重量部配合した発泡性組成物)は、いずれも保存時の気体発生が抑制された。この結果から、エリスリトールは、発泡性組成物において、その配合量が極少量であっても、保存時の気体発生を抑制できることが明らかになった。