(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】対象地域の不動産の稼働率を推定するプログラム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20220512BHJP
【FI】
G06Q30/02 310
(21)【出願番号】P 2019154858
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木村 塁
【審査官】田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/036222(WO,A1)
【文献】特開2010-200283(JP,A)
【文献】特開2001-117973(JP,A)
【文献】特開2001-243299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
位置を取得可能な携帯端末を所持したユーザ毎に、時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域A毎に、当該地域Aの1つ以上の特性量を記憶する地域特性量記憶手段と、
ユーザ位置データベースを用いて、所定期間Tに、各地域Aに滞在する捕捉ユーザ数#Aを抽出する捕捉ユーザ数抽出手段と、
地域特性量記憶手段を用いて、対象地域Aiの特性量と、当該対象地域Aiに対する複数Nの周辺地域Aj(j=1~N)の特性量との類似度dに応じた各重み係数ω(Ai,Aj)を決定する重み係数決定手段と、
対象地域Aiに対する各周辺地域Ajの捕捉ユーザ数#Ajに、重み係数ω(Ai,Aj)を重み付けた総和を、所定期間Tにおける対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Biとして算出する周辺地域捕捉ユーザ数算出手段と、
対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ数Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築した相関学習エンジンと
して機能させ、
相関学習エンジンは、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
対象地域Aiの不動産の稼働率Ciに代えて、対象地域Aiに現に滞在する滞在ユーザ数Ciを推定するために、
相関学習エンジンは、
学習段階として、対象地域Aiについて、滞在した滞在ユーザ数Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ数Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築し、
推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを入力し、現に滞在する滞在ユーザ数Ciを推定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
所定期間Tについて、当該対象地域Aiの周辺地域Aj(j=1~N)全体における周辺地域許容ユーザ数を記憶する周辺地域許容ユーザ数記憶手段と、
周辺地域許容ユーザ数に対する周辺地域捕捉ユーザ数Biの周辺地域捕捉ユーザ率Biを算出する周辺地域捕捉ユーザ率算出手段と
して更に機能させ、
相関学習エンジンは、
学習段階として、対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ率Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築し、
推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ率Biを入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
周辺地域許容ユーザ数は、対象地域Aiの不動産と所定条件で類似する不動産について、許容可能なユーザ数又は部屋数である
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
複数の所定期間T×mにおける周辺地域捕捉ユーザ数Biの推移傾向を表す回帰関数fを導出する回帰関数導出手段と、
現在の周辺地域捕捉ユーザ数Biと、回帰関数fに基づく予測の周辺地域捕捉ユーザ数f(Bi)との傾向差分DIFFi(=Bi-f(Bi))を算出する傾向差分算出手段と
して更に機能させ、
相関学習エンジンは、
学習段階として、対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、傾向差分DIFFiを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築し、
推定段階として、対象地域Aiについて、傾向差分DIFFiを入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
重み係数決定
手段は、複数の特性量kそれぞれの差の平方和の平方根を、類似度dとする
d(i,j)=√(Σ
k=1
K(CHARi,k-CHARj,k)
2)
CHARi,k:地域iの特性量k
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
重み係数決定
手段は、複数の特性量kそれぞれの影響度αkを、特性量kの差の平方に乗算し、乗算値の和の平方根を、類似度dとする。
類似度d(i,j)=√(Σ
k=1
K((CHARi,k-CHARj,k)
2×αk))
CHARi,k:地域iの特性量k
αk:特性量kの影響度
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項8】
重み係数決定手段は、対象地域Aiの特性量と周辺地域Ajの特性量との類似度dとして、対象地域Aiから周辺地域Ajまでの距離を用いる
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
重み係数決定手段は、対象地域Aiの特性量と周辺地域Ajの特性量との類似度dとして、対象地域Ai及び周辺地域Ajの不動産の種別、ランク及び/又は評価を用いる
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
重み係数決定手段は、対象地域Aiの特性量と周辺地域Ajの特性量との類似度dとして、更に、建物の階数、部屋数、部屋面積、従業員数及び/又は使用料金を用いる
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
正解値としての不動産の稼働率Ciは、最大収容数に対する利用収容数の利用率、又は、当該不動産に基づく決算書によって開示された稼働率である
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する装置であって、
位置を取得可能な携帯端末を所持したユーザ毎に、時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域A毎に、当該地域Aの1つ以上の特性量を記憶する地域特性量記憶手段と、
ユーザ位置データベースを用いて、所定期間Tに、各地域Aに滞在する捕捉ユーザ数#Aを抽出する捕捉ユーザ数抽出手段と、
地域特性量記憶手段を用いて、対象地域Aiの特性量と、当該対象地域Aiに対する複数Nの周辺地域Aj(j=1~N)の特性量との類似度dに応じた各重み係数ω(Ai,Aj)を決定する重み係数決定手段と、
対象地域Aiに対する各周辺地域Ajの捕捉ユーザ数#Ajに、重み係数ω(Ai,Aj)を重み付けた総和を、所定期間Tにおける対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Biとして算出する周辺地域捕捉ユーザ数算出手段と
対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ数Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築した相関学習エンジンと
して機能させ、
対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを、相関学習エンジンに入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ことを特徴とする装置。
【請求項13】
対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する装置の推定方法であって、
装置は、
位置を取得可能な携帯端末を所持したユーザ毎に、時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域A毎に、当該地域Aの1つ以上の特性量を記憶する地域特性量記憶部と
を有し、
装置は、
ユーザ位置データベースを用いて、所定期間Tに、各地域Aに滞在する捕捉ユーザ数#Aを抽出する第1のステップと、
地域特性量記憶部を用いて、対象地域Aiの特性量と、当該対象地域Aiに対する複数Nの周辺地域Aj(j=1~N)の特性量との類似度dに応じた各重み係数ω(Ai,Aj)を決定する第2のステップと、
対象地域Aiに対する各周辺地域Ajの捕捉ユーザ数#Ajに、重み係数ω(Ai,Aj)を重み付けた総和を、所定期間Tにおける対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Biとして算出する第3のステップと
を実行すると共に、
学習段階として、相関学習エンジンを用いて、対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ数Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築し、
推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを、相関学習エンジンに入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ことを特徴とする推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象地域の不動産の稼働率を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
不動産の稼働率は、物件価値の指標として極めて重要なものである。例えば不動産投資ファンドのような投資家や関係者(銀行、格付け機関、証券会社など)にとっては、投資判断の指標となる。不動産投資ファンドとして、J-REIT(Japan Real Estate Investment Trust)がある。これは、複数の商業用不動産を裏付け資産として、株や債券を代替した証券化金融商品であり、証券取引所に上場し、日々売買されている。REITの評価に重要な情報として、「物件価値」としての「稼働率」がある。
【0003】
例えばホテルのような不動産毎では、滞在ユーザ数が日々変化している。ここで、「不動産の稼働率」は、その不動産の対象地域における「滞在ユーザ数」と相関性があると考えられる。滞在ユーザ数が多いということは、不動産の稼働率も高く、滞在ユーザ数が少ないということは、不動産の稼働率も低いと想定される。
【0004】
滞在ユーザ数を、例えばユーザが所持する携帯端末の位置を収集することによって、その地域のユーザ数をカウントする技術がある(例えば特許文献1参照)。一般的に、全ての通信事業者に対する特定の通信事業者の加入者割合を用いて、比較的広い地域について、特定の通信事業者の通信事業設備に接続したユーザ数に、加入者割合を乗算することによって、大凡の滞在ユーザ数(例えば数万人単位)を推定することができる。これは、一般に「拡大推計方法」と称される。例えば災害時における数万人規模の人口移動を推計する場合、1%のユーザの位置移動が捕捉できれば、数百人の位置移動を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、地域毎の滞在ユーザ数の変化を把握するには、十分な母集団を必要とする。特に不動産のような狭い地域になるほど、捕捉ユーザ数も少なくなり、推定される滞在ユーザ数のばらつきも大きくなる。
【0007】
図1は、地域毎に、特定の通信事業者における捕捉ユーザ数を表す説明図である。
【0008】
図1によれば、不動産毎に、特定の通信事業者の通信事業設備に接続した捕捉ユーザ数が表されている。特定の通信事業者による捕捉ユーザ数は、その地域における実際の滞在ユーザ数よりも、極めて少数しかカウントできない。即ち、全ての通信事業者から、全てのユーザの位置情報を収集できるわけでもない。
【0009】
例えばホテルのような不動産における狭い地域について、滞在ユーザ数を推定するべく、単に、通信事業者毎の加入者割合を用いることはできない。
例えば許容部屋数100室のホテルについて滞在ユーザ数を推定する場合、実際の滞在ユーザ数が10名であっても、特定の通信事業者における捕捉ユーザ数は0名である場合もある。
特定の通信事業者における加入者割合が例えば20%である場合、捕捉ユーザ数が0名であれば、そのホテルの滞在ユーザ数は0名と推定され、捕捉ユーザ数が1名であれば、そのホテルの滞在ユーザ数は5名と推定されてしまう。
同様に、特定の通信事業者について、そのホテルの捕捉ユーザ数が3名であっても、加入者割合に応じて推定された滞在ユーザ数15名となるわけでもない。
このように、比較的狭い地域の不動産になるほど、捕捉ユーザ数の数名の違いが、滞在ユーザ数の推定に大きく影響してしまう。このような不安定な捕捉ユーザ数では、滞在ユーザ数を推定することもできない。
【0010】
このように考えると、従来の拡大推計方法では、狭い地域の不動産における滞在ユーザ数を推定することは非常に難しい。
一方で、不動産の投資家や関係者にとっては、不動産の稼働率につながる滞在ユーザ数を正確に知るためには、決算期毎の利用者数の発表を待つしか無くなる。一方で、不動産の稼働率の変動リスクを抱えなければならず、この不透明性が、物件価値に基づく投資難易度を高めることにもなる。
【0011】
そこで、本発明は、特定の通信事業者の通信設備に接続した捕捉ユーザ数であっても、比較的狭い対象地域の不動産の稼働率を、できる限り正確に推定することができるプログラム、装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
位置を取得可能な携帯端末を所持したユーザ毎に、時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域A毎に、当該地域Aの1つ以上の特性量を記憶する地域特性量記憶手段と、
ユーザ位置データベースを用いて、所定期間Tに、各地域Aに滞在する捕捉ユーザ数#Aを抽出する捕捉ユーザ数抽出手段と、
地域特性量記憶手段を用いて、対象地域Aiの特性量と、当該対象地域Aiに対する複数Nの周辺地域Aj(j=1~N)の特性量との類似度dに応じた各重み係数ω(Ai,Aj)を決定する重み係数決定手段と、
対象地域Aiに対する各周辺地域Ajの捕捉ユーザ数#Ajに、重み係数ω(Ai,Aj)を重み付けた総和を、所定期間Tにおける対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Biとして算出する周辺地域捕捉ユーザ数算出手段と、
対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ数Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築した相関学習エンジンと
して機能させ、
相関学習エンジンは、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0013】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
対象地域Aiの不動産の稼働率Ciに代えて、対象地域Aiに現に滞在する滞在ユーザ数Ciを推定するために、
相関学習エンジンは、
学習段階として、対象地域Aiについて、滞在した滞在ユーザ数Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ数Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築し、
推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを入力し、現に滞在する滞在ユーザ数Ciを推定する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0014】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
所定期間Tについて、当該対象地域Aiの周辺地域Aj(j=1~N)全体における周辺地域許容ユーザ数を記憶する周辺地域許容ユーザ数記憶手段と、
周辺地域許容ユーザ数に対する周辺地域捕捉ユーザ数Biの周辺地域捕捉ユーザ率Biを算出する周辺地域捕捉ユーザ率算出手段と
して更に機能させ、
相関学習エンジンは、
学習段階として、対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ率Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築し、
推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ率Biを入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0015】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
周辺地域許容ユーザ数は、対象地域Aiの不動産と所定条件で類似する不動産について、許容可能なユーザ数又は部屋数である
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0016】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
複数の所定期間T×mにおける周辺地域捕捉ユーザ数Biの推移傾向を表す回帰関数fを導出する回帰関数導出手段と、
現在の周辺地域捕捉ユーザ数Biと、回帰関数fに基づく予測の周辺地域捕捉ユーザ数f(Bi)との傾向差分DIFFi(=Bi-f(Bi))を算出する傾向差分算出手段と
して更に機能させ、
相関学習エンジンは、
学習段階として、対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、傾向差分DIFFiを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築し、
推定段階として、対象地域Aiについて、傾向差分DIFFiを入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0017】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
重み係数決定手段は、複数の特性量kそれぞれの差の平方和の平方根を、類似度dとする
d(i,j)=√(Σk=1
K(CHARi,k-CHARj,k)2)
CHARi,k:地域iの特性量k
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0018】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
重み係数決定手段は、複数の特性量kそれぞれの影響度αkを、特性量kの差の平方に乗算し、乗算値の和の平方根を、類似度dとする。
類似度d(i,j)=√(Σk=1
K((CHARi,k-CHARj,k)2×αk))
CHARi,k:地域iの特性量k
αk:特性量kの影響度
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0019】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
重み係数決定手段は、対象地域Aiの特性量と周辺地域Ajの特性量との類似度dとして、対象地域Aiから周辺地域Ajまでの距離を用いる
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0020】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
重み係数決定手段は、対象地域Aiの特性量と周辺地域Ajの特性量との類似度dとして、対象地域Ai及び周辺地域Ajの不動産の種別、ランク及び/又は評価を用いる
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0021】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
重み係数決定手段は、対象地域Aiの特性量と周辺地域Ajの特性量との類似度dとして、更に、建物の階数、部屋数、部屋面積、従業員数及び/又は使用料金を用いる
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0022】
本発明のプログラムにおける他の実施形態によれば、
正解値としての不動産の稼働率Ciは、最大収容数に対する利用収容数の利用率、又は、当該不動産に基づく決算書によって開示された稼働率である
ようにコンピュータを機能させることも好ましい。
【0023】
本発明によれば、対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する装置であって、
位置を取得可能な携帯端末を所持したユーザ毎に、時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域A毎に、当該地域Aの1つ以上の特性量を記憶する地域特性量記憶手段と、
ユーザ位置データベースを用いて、所定期間Tに、各地域Aに滞在する捕捉ユーザ数#Aを抽出する捕捉ユーザ数抽出手段と、
地域特性量記憶手段を用いて、対象地域Aiの特性量と、当該対象地域Aiに対する複数Nの周辺地域Aj(j=1~N)の特性量との類似度dに応じた各重み係数ω(Ai,Aj)を決定する重み係数決定手段と、
対象地域Aiに対する各周辺地域Ajの捕捉ユーザ数#Ajに、重み係数ω(Ai,Aj)を重み付けた総和を、所定期間Tにおける対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Biとして算出する周辺地域捕捉ユーザ数算出手段と
対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ数Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築した相関学習エンジンと
して機能させ、
対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを、相関学習エンジンに入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ことを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する装置の推定方法であって、
装置は、
位置を取得可能な携帯端末を所持したユーザ毎に、時系列の位置を蓄積したユーザ位置データベースと、
地域A毎に、当該地域Aの1つ以上の特性量を記憶する地域特性量記憶部と
を有し、
装置は、
ユーザ位置データベースを用いて、所定期間Tに、各地域Aに滞在する捕捉ユーザ数#Aを抽出する第1のステップと、
地域特性量記憶部を用いて、対象地域Aiの特性量と、当該対象地域Aiに対する複数Nの周辺地域Aj(j=1~N)の特性量との類似度dに応じた各重み係数ω(Ai,Aj)を決定する第2のステップと、
対象地域Aiに対する各周辺地域Ajの捕捉ユーザ数#Ajに、重み係数ω(Ai,Aj)を重み付けた総和を、所定期間Tにおける対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Biとして算出する第3のステップと
を実行すると共に、
学習段階として、相関学習エンジンを用いて、対象地域Aiについて、不動産の稼働率Ciを目的変数とし、周辺地域捕捉ユーザ数Biを説明変数とした教師データで予め相関モデルを構築し、
推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを、相関学習エンジンに入力し、不動産の稼働率Ciを推定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明のプログラム、装置及び方法によれば、特定の通信事業者の通信設備に接続した捕捉ユーザ数であっても、比較的狭い対象地域の不動産の稼働率を、できる限り正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】地域毎に、特定の通信事業者における捕捉ユーザ数を表す説明図である。
【
図2】本発明における推定装置の第1の機能構成図である。
【
図3】対象地域に対する周辺地域の滞在ユーザ数を表す説明図である。
【
図4】対象地域に対する周辺地域の捕捉ユーザ数を表す説明図である。
【
図5】重み係数ωに基づく周辺地域捕捉ユーザ数を算出する説明図である。
【
図6】本発明における推定装置の第2の機能構成図である。
【
図7】本発明における推定装置の第3の機能構成図である。
【
図8】本発明における推定装置の第4の機能構成図である。
【
図9】重み係数ωに基づく影響度αを決定する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
図2は、本発明における推定装置の第1の機能構成図である。
【0029】
推定装置1は、対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する。
図2によれば、推定装置1は、「対象地域Aiの不動産の稼働率Ci」と、「対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Bi」との間の相関性に基づいて構成されたものである。
正解値としての不動産の稼働率Ciは、最大収容数に対する利用収容数の利用率、又は、当該不動産に基づく決算書によって開示された稼働率であるとする。これは、過去のデータに基づくものである。
【0030】
推定装置1は、ユーザ位置データベース11と、地域特性量記憶部12と、捕捉ユーザ数抽出部13と、重み係数決定部14と、周辺地域捕捉ユーザ数算出部15と、相関学習エンジン10とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムとして実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、不動産稼働率推定方法としても理解できる。
【0031】
ここで、稼働率Ciの推定対象となる対象地域Aiと、周辺地域Ajとは、以下のように定義する。
対象地域Ai:推定作業のオペレータによって設定される。
(推定対象となる特定の不動産であってもよい)
周辺地域Aj:対象地域Aiを含む所定地域範囲に設定される。
周辺地域Ajは、対象地域Aiを中心として所定半径内であってもよいし、住所の県市町村単位であってもよい。
【0032】
図3は、対象地域に対する周辺地域の滞在ユーザ数を表す説明図である。
【0033】
図3によれば、対象地域A1に対して、所定地域範囲内に、周辺地域A2~A8が存在している。具体的には、対象地域A1の不動産のホテルにおける位置を中心に、所定半径内に、他のホテルA2~A8が存在している。対象地域A1の不動産における滞在ユーザ数は、同じ種別等となる近隣の周辺地域Ajの不動産における滞在ユーザ数と同じように、その傾向が変化すると考えられる。
【0034】
[ユーザ位置データベース11]
ユーザ位置データベース11は、位置を取得可能な携帯端末を所持したユーザ毎に、時系列の位置を蓄積したものである。
図2によれば、ユーザ位置データベース11は、特定の通信事業者によって運用管理されており、加入者ID(ユーザID)毎に、時刻と位置情報とを対応付けて蓄積している。
ここで、重要な点として、ユーザ位置データベース11は、特定の通信事業者の通信事業設備による捕捉ユーザであって、現実のユーザ全てではない。即ち、特定の通信事業者と契約した携帯端末2を保持するユーザについてのみ、位置情報が収集されたものである。
【0035】
ユーザ位置データベース11に蓄積された位置とは、例えば以下のようなものである。
(1)ユーザに所持された携帯端末2によって測位された端末測位位置
携帯端末2が自ら、GPS(Global Positioning System)によって測位した緯度経度情報である。
(2)通信事業者の基地局やアクセスポイントに接続した携帯端末の基地局測位位置
携帯端末2を配下とする基地局やアクセスポイントの位置情報から、携帯端末2の位置を推定したものであってもよい。但し、この位置情報は、空間的粒度が粗いものとなる。
これら位置情報は、緯度経度又は地図座標によって表記されるものであってもよいし、住所名や地図メッシュ番号に変換されたものであってもよい。
【0036】
[地域特性量記憶部12]
地域特性量記憶部12は、地域A毎に、地域範囲と共に、当該地域Aの1つ以上の特性量を記憶する。
「特性量」としては、例えば以下のようなものがある。
対象地域Aの不動産の位置
対象地域Aの不動産の種別、ランク及び/又は評価
【0037】
不動産の位置は、例えば地域Aiと地域Ajとの間の距離の算出に用いられる。
不動産の種別は、対象地域Aの不動産における階数、部屋数、部屋面積、従業員数、使用料金であってもよい。例えばホテルの場合、ホテル態様(高級、ビジネス、民宿、カプセルなど)や宿泊料金であってもよい。
不動産のランクは、例えばホテルの場合、クラス(4つ星又はファイブスターなど)であってもよい。
不動産の評価は、例えばSNS(Social Networking Service)によるユーザの評価であってもよい。
【0038】
[捕捉ユーザ数抽出部13]
捕捉ユーザ数抽出部13は、ユーザ位置データベース11を用いて、所定期間Tに、各地域Aに滞在する捕捉ユーザ数#A(T)を抽出する。前述した
図1のように、地域A毎に、特定の通信事業者の通信事業設備に接続した捕捉ユーザ数#A(T)が抽出される。
【0039】
ここで、「地域」とは、地図上の平面的なメッシュを細かく区分するほど、ビルや施設のような不動産を特定することができる。また、「地域」とは、そのビルや施設の階数のように、多次元空間に区分されたものであってもよい。例えば3次元で区切る場合、その空間を「キューブ」と称すこともできる。
【0040】
図4は、対象地域に対する周辺地域の捕捉ユーザ数を表す説明図である。
【0041】
図4によれば、
図3と比較して、特定の通信事業者の通信事業設備に接続した捕捉ユーザ数のみが表されている。対象地域A1の不動産のホテルにおける捕捉ユーザ数と、他のホテルA2~A8の捕捉ユーザ数とが表されている。
【0042】
[重み係数決定部14]
重み係数決定部14は、地域特性量記憶部12を用いて、対象地域Aiの特性量と、当該対象地域Aiに対する複数Nの周辺地域Aj(j=1~N)の特性量との類似度dに応じた各重み係数ω(Ai,Aj)を決定する。
尚、重み係数ωには、期間Tに応じて可変となるものであってもよく、ω(Ai,Aj,T)としたものであってもよい。
【0043】
重み係数ωは、特性量に応じて、例えば以下のような実施形態で決定される。
(特性量が、不動産の位置である場合)
重み係数決定部14は、対象地域Aiの特性量と、周辺地域Ajの特性量との類似度dとして、対象地域Aiから周辺地域Ajまでの「距離」を用いる。ここでの距離は、経度緯度の差分から算出可能な、物理的な近さや遠さを表現するための直線距離である。
距離 :d(Ai,Aj)
重み係数:ω(Ai,Aj)=1/(1+d(Ai,Aj))
尚、周辺地域Ajには、対象地域Aiと同一の地域(Ai=Aj)も含むとする。i=jとなるとき、d(Ai,Aj)=0となる。
【0044】
(特性量が、不動産の種別、ランク及び/又は評価である場合)
重み係数決定部14は、対象地域Aiの特性量と周辺地域Ajの特性量との類似度dとして、対象地域Aiの不動産の「種別、ランク及び/又は評価」を用いる。
例えば対象地域Aiの不動産が、ランク「☆☆」である場合、周辺地域Ajの不動産の重み係数は、以下のようになる。
対象地域Aiの不動産:ランク「☆☆」
周辺地域Ajの不動産:ランク「☆☆☆」の場合
d(Ai,Aj)=1 (☆☆と☆☆☆との差分=1)
ω(Ai,Aj)=1/(1+1)=0.5
周辺地域Ajの不動産:ランク「☆☆」の場合
d(Ai,Aj)=1 (☆☆と☆☆との差分=0)
ω(Ai,Aj)=1/(1+0)=1
周辺地域Ajの不動産:ランク「☆」の場合
d(Ai,Aj)=1 (☆☆と☆☆☆との差分1)
ω(Ai,Aj)=1/(1+1)=0.5
【0045】
重み係数決定部14は、複数の特性量k(例えば態様、ランク、評価など)に基づいて類似度dを算出するものであってもよい。最も簡易には、以下のように、特性量kそれぞれの差の平方和の平方根を、類似度dとしてもよい。
d(i,j)=√(Σk=1
K(CHARi,k-CHARj,k)2)
CHARi,k:地域iの特性量k
【0046】
[周辺地域捕捉ユーザ数算出部15]
周辺地域捕捉ユーザ数算出部15は、対象地域Aiに対する各周辺地域Ajの捕捉ユーザ数#Ajに、重み係数ω(Ai,Aj)を重み付けた総和を、所定期間Tにおける対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Biとして算出する。
Bi(T)=Σj=1
N(#Aj(T)×ω(Ai,Aj))
=Σj=1
N(#Aj(T)×(1/(1+d(Ai,Aj))))
【0047】
本発明によれば、対象地域A1の不動産の稼働率C1を、近隣の周辺地域Ajの不動産の捕捉ユーザ数に基づいて推定する。即ち、1つの不動産について推定された捕捉ユーザ数にばらつきが生じても、同種の周辺の不動産まで拡大した捕捉ユーザ数を推定することによって、母集団を拡大させている。
【0048】
図5は、重み係数ωに基づく周辺地域捕捉ユーザ数を算出する説明図である。
【0049】
図4及び
図5によれば、例えばホテルのような周辺地域Ajの不動産について、以下のようにランク付けされている。
対象地域A1の不動産:ランク「☆☆」
周辺地域A2の不動産:ランク「☆」
周辺地域A3の不動産:ランク「☆☆」
周辺地域A4の不動産:ランク「☆☆☆」
周辺地域A5の不動産:ランク「☆☆」
周辺地域A6の不動産:ランク「☆☆☆」
周辺地域A7の不動産:ランク「☆」
周辺地域A8の不動産:ランク「☆☆☆」
この場合、対象地域A1の周辺地域捕捉ユーザ数B1は、以下のように算出される。
B1=#A3×ω(A1,A3)+#A5×ω(A1,A5)
+#A4×ω(A1,A4)+#A6×ω(A1,A6)+#A8×ω(A1,A8)
+#A2×ω(A1,A2)+#A7×ω(A1,A7)
ここで算出された、対象地域A1の周辺地域捕捉ユーザ数B1は、対象地域A1と特性量の類似度dが高い周辺地域の捕捉ユーザ数から影響を強く受け、逆に対象地域A1と特性量の類似度dが低い周辺地域の捕捉ユーザ数から影響を受けにくいものとなる。
【0050】
[第1の相関学習エンジン10]
第1の相関学習エンジン10は、推定段階として、不動産の稼働率Ciを推定する。
第1の相関学習エンジン10は、学習段階として、対象地域Aiについて、以下の教師データに基づいて予め相関モデルを構築したものである。
目的変数:不動産の稼働率Ci
説明変数:周辺地域捕捉ユーザ数Bi
尚、第1の相関学習エンジン10の学習段階で教師データとして入力される周辺地域捕捉ユーザ数Biは、過去に周辺地域捕捉ユーザ数算出部15によって算出されたものである。
【0051】
相関モデルは、不動産の稼働率Ciと周辺地域捕捉ユーザ数Biとの間で、相関が最大となるように構築される。
ここで、教師データとしての不動産の稼働率Ci及び周辺地域捕捉ユーザ数Biは、過去にカウントされたものである。例えば不動産1の稼働率C1が、不動産1の決算書の情報に基づくものである場合、同時期に、推定装置1によって算出された周辺地域捕捉ユーザ数Biと対応付ける。
尚、不動産の稼働率Ciは、不動産が宿泊用ホテルである場合、全ての宿泊部屋数に対して現に宿泊された部屋数の割合であってもよい。
【0052】
そして、第1の相関学習エンジン10は、推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数算出部15によって算出された周辺地域捕捉ユーザ数Biを入力する。これに対して、不動産の稼働率Ciを出力する。
【0053】
図6は、本発明における推定装置の第2の機能構成図である。
【0054】
図6によれば、推定装置1は、対象地域Aiの不動産の滞在ユーザ数Ciを推定する。
推定装置1は、「対象地域Aiの不動産の滞在ユーザ数Ci」と、「対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Bi」との間の相関性に基づいて構成されたものである。
正解値としての不動産の滞在ユーザ数Ciは、例えば、当該不動産でカウントされたユーザ数、又は、当該不動産に基づく決算書によって開示された滞在ユーザ数であるとする。これは、過去のデータに基づくものである。
【0055】
図6によれば、
図2と比較して、相関学習エンジン10のみが異なる。
【0056】
[第2の相関学習エンジン10]
第2の相関学習エンジン10は、推定段階として、対象地域Aiに現に滞在する滞在ユーザ数Ciを推定する。
第2の相関学習エンジン10は、学習段階として、対象地域Aiについて、以下の教師データで予め相関モデルを構築したものである。
目的変数:滞在ユーザ数Ci
説明変数:周辺地域捕捉ユーザ数Bi
尚、第2の相関学習エンジン10の学習段階で教師データとして入力される周辺地域捕捉ユーザ数Biは、過去に周辺地域捕捉ユーザ数算出部15によって算出されたものである。
【0057】
相関モデルは、不動産の滞在ユーザ数Ciと周辺地域捕捉ユーザ数Biとの間で、相関が最大となるように構築される。
ここで、教師データとしての不動産に滞在した滞在ユーザ数Ci及び周辺地域捕捉ユーザ数Biは、過去にカウントされたものである。
【0058】
そして、第2の相関学習エンジン10は、推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数算出部15によって算出された周辺地域捕捉ユーザ数Biを入力する。これに対して、不動産に滞在した滞在ユーザ数Ciを出力する。
【0059】
図7は、本発明における推定装置の第3の機能構成図である。
【0060】
図7によれば、推定装置1は、対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する。
推定装置1は、「対象地域Aiの不動産の稼働率Ci」と、「対象地域Aiの周辺地域捕捉ユーザ数Bi」との間の相関性に基づいて構成されたものである。
【0061】
図7によれば、
図2と比較して、周辺地域許容ユーザ数記憶部16と、周辺地域捕捉ユーザ率算出部17とを更に有すると共に、相関学習エンジン10が異なる。
【0062】
[周辺地域許容ユーザ数記憶部16]
周辺地域許容ユーザ数記憶部16は、所定期間Tについて、当該対象地域Aiの周辺地域Aj(j=1~N)全体における周辺地域許容ユーザ数を記憶する。
周辺地域許容ユーザ数は、対象地域Aiの不動産と所定条件で類似する不動産について、許容可能な部屋数に基づくユーザ数である。例えば、周辺地域Ajの不動産がホテルである場合、周辺地域許容ユーザ数は、全ての周辺地域Ajのホテルの宿泊部屋数に基づくユーザ数であってもよい。
【0063】
[周辺地域捕捉ユーザ率算出部17]
周辺地域捕捉ユーザ率算出部17は、周辺地域許容ユーザ数に対する周辺地域捕捉ユーザ数Biの周辺地域捕捉ユーザ率Biを算出する。
周辺地域捕捉ユーザ率Bi=周辺地域捕捉ユーザ数Bi
/周辺地域許容ユーザ数
【0064】
[第3の相関学習エンジン10]
第3の相関学習エンジンは、推定段階として、不動産の稼働率Ciを推定する。
第3の相関学習エンジン10は、学習段階として、対象地域Aiについて、以下の教師データで予め相関モデルを構築したものである。
目的変数:不動産の稼働率Ci
説明変数:周辺地域捕捉ユーザ率Bi
尚、第3の相関学習エンジン10の学習段階で教師データとして入力される周辺地域捕捉ユーザ率Biは、過去に周辺地域捕捉ユーザ率算出部17によって算出されたものである。
相関モデルは、不動産の稼働率Ciと周辺地域捕捉ユーザ率Biとの間で、相関が最大となるように構築される。
【0065】
第3の相関学習エンジンは、推定段階として、対象地域Aiについて、周辺地域捕捉ユーザ数算出率17によって算出された周辺地域捕捉ユーザ率Biを入力する。そして、不動産の稼働率Ciを推定する。
【0066】
図8は、本発明における推定装置の第4の機能構成図である。
【0067】
図8によれば、推定装置1は、対象地域Aiの不動産の稼働率Ciを推定する。
推定装置1は、「対象地域Aiの不動産の稼働率Ci」と、「対象地域Aiの傾向差分DIFFi」との間の相関性に基づいて構成されたものである。
【0068】
図8によれば、
図2と比較して、回帰関数導出部18と、傾向差分算出部19と、傾向差分を更に有すると共に、相関学習エンジン10が異なる。
【0069】
[回帰関数導出部18]
回帰関数導出部18は、複数の所定期間T×mにおける周辺地域捕捉ユーザ数Biの推移傾向を表す回帰関数fを導出する。
回帰関数fは、長期的な経過時間の中で、周辺地域捕捉ユーザ数Biにおける変化(トレンド)の差異、即ち、母集団全体の変化を表す。回帰モデルとしては、例えば以下のような1次式で表すこともできるが、それに限定するわけでもない。
f(Bi(T))=a×Bi(T)+b a:傾き、b:切片
【0070】
[傾向差分算出部19]
傾向差分算出部19は、現在の周辺地域捕捉ユーザ数Biと、回帰関数fに基づく予測の周辺地域捕捉ユーザ数f(Bi)との傾向差分DIFFiを算出する。
DIFFi=Bi-f(Bi)
【0071】
図9は、重み係数ωに基づく影響度αを決定する説明図である。
【0072】
重み係数決定部14は、複数の特性量kそれぞれの影響度αkによって、特性量kの差の平方を足し合わせたものであってもよい。即ち、強い影響度αを示す特性量kには加重し、最も影響度が低い特性量kは"0"となるように調整する。
重み係数決定部14は、複数の特性量k(例えば態様、ランク、評価など)それぞれの影響度αkを、特性量kの差の平方に乗算し、乗算値の和の平方根を、類似度dとする。
類似度d(i,j)=√(Σ
k=1
K((CHARi,k-CHARj,k)
2×αk))
CHARi,k:地域iの特性量k
αk:特性量kの影響度
図9によれば、地域A1と地域A4との間の類似度は、例えば以下のように算出される。
d(1,4)=√((ランク差
2・影響度α
1)+(距離
2・影響度α
2)
+(部屋数差
2・影響度α
3)+(従業員数差
2・影響度α
4)
=√((2-3)
2α
1+(0-1)
2α
2+(100-10)
2α
3+(30-28)
2α
4)
そして、特性量k毎に影響度αを考慮した類似度dから、以下のように重み係数ωが算出される。
ω(i,j)=1/(1+d(i,j))
【0073】
次に、周辺地域捕捉ユーザ数算出部15は、重み係数ωを用いて、周辺地域捕捉ユーザ数Biを、以下のように算出することができる。
Bi=Σj=1
N(#Aj×ω(i,j))
【0074】
次に、傾向差分算出部19は、周辺地域捕捉ユーザ数Biから、回帰関数導出部18を用いて、対象地域iの傾向差分DIFFiを算出する。
【0075】
図9によれば、影響度決定部141を更に有する。影響度決定部141は、稼働率Ciと傾向差分DIFFiとの間の相関が最大となる影響度αkを算出する。
argmax α ρ(Ci,DIFFi)
関数ρ:稼働率Ciと傾向差分DIFFiとの間の相関係数を算出する関数
影響度αを決定することによって、影響度の強い特性量と影響度の低い特性量とを考慮して類似度dを算出することができ、その類似度dによって重み係数ωを決定することができる。
影響度αには、特性量を基準化する効果と、実質的な特性量の強弱を付けることで、他の特性量と差別化する効果がある。これによって、稼働率Ciとの相関係数の推定精度が高めることができる。
【0076】
[第4の相関学習エンジン10]
第4の相関学習エンジン10は、推定段階として、不動産の稼働率Ciを推定する。
第4の相関学習エンジン10は、学習段階として、対象地域Aiについて、以下の教師データで予め相関モデルを構築したものである。
目的変数:不動産の稼働率Ci
説明変数:傾向差分DIFFi
尚、第4の相関学習エンジン10の学習段階で教師データとして入力される傾向差分DIFFiは、過去に傾向差分算出部19によって算出されたものである。
即ち、相関モデルは、不動産の稼働率Ciと傾向差分DIFFiとの間で、相関が最大となるように構築される。
【0077】
第4の相関学習エンジンは、推定段階として、対象地域Aiについて、傾向差分算出部19によって算出された傾向差分DIFFiを入力し、不動産の稼働率Ciを推定する。
【0078】
前述した第1~第4の相関学習エンジン10は、線形回帰の学習エンジンであればよい。オーバーフィットを避けるべく、パラメータ数は期待対数尤度を尺度として、教師データを最適化し、運用時のモデル精度を検証する必要もある。
例えば相関を最大化するパラメータは、目的変数を各パラメータで偏微分してゼロとおき、連立方程式を解くか、相関係数を最大とするパラメータを近似したものであってもよい。
【0079】
他の実施形態として、第1~第4の相関学習エンジン10によって推定された不動産の稼働率Ci(又は滞在ユーザ数Ci)に応じて、地域毎に、色合いの階調を濃く(又は薄く)表示した不動産稼働率マップを作成することもできる。不動産稼働率マップの色合いを見るだけで、不動産の稼働率Ci等を認識でき、その地域の不動産の物件価値を判断しやすくする。
【0080】
尚、本発明のアプリケーションによれば、地域を区分することによって、例えば以下のような不動産を想定することもできる。
(1)事業所主体型:例えば会社ビルや工場
(2)住居主体型:例えばマンションや住宅地域
(3)商業施設主体型:例えばショッピングモールやパチンコ店
(4)ホテル主体型:例えば宿泊施設や会議場
(5)公共施設主体型:例えば図書館
(6)ヘルスケア施設主体型:例えばスポーツジム
(7)(1)~(6)の統合・複合型
(8)その不動産を利用する「企業」の価値判断:例えば企業買収の際に利用可能
【0081】
以上、詳細に説明したように、本発明のプログラム、装置及び方法によれば、特定の通信事業者の通信設備に接続した捕捉ユーザ数であっても、比較的狭い対象地域の不動産の稼働率を、できる限り正確に推定することができる。
【0082】
また、本発明によれば、不動産の投資家や関係者にとって、決算期毎の利用者数の発表を待つことなく、不動産の稼働率を知ることができる。不動産の稼働率の変動リスクを抱え込む必要もなく、物件価値に基づく投資のリスクを管理することができる。
【0083】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0084】
1 推定装置
10 相関学習エンジン
11 ユーザ位置データベース
12 地域特性量記憶部
13 捕捉ユーザ数抽出部
14 重み係数決定部
141 影響度決定部
15 周辺地域捕捉ユーザ数算出部
16 周辺地域許容ユーザ数記憶部
17 周辺地域捕捉ユーザ率算出部
18 回帰関数導出部
19 傾向差分算出部
2 携帯端末