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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】射出成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/40 20060101AFI20220512BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20220512BHJP
   B29C 45/40 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
B29C33/40
B29C45/26
B29C45/40
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019209052
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021079626
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】中由 裕介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕児
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠雄
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-162883(JP,A)
【文献】特開2003-220629(JP,A)
【文献】特開2006-182011(JP,A)
【文献】特開2007-152627(JP,A)
【文献】特開2010-110999(JP,A)
【文献】特開2015-163470(JP,A)
【文献】特開昭61-242817(JP,A)
【文献】特開平06-315951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された状態で配置された固定型と、
前記固定型に対して移動可能な可動型と、
前記可動型に対して移動可能にされた取出部材とを備え、
透明な熱可塑性の樹脂材料又は透明な熱硬化性の樹脂材料によって形成された窓部材が前記可動型に対して着脱可能にされ、
前記固定型又は前記可動型の少なくとも一方には前記可動型に取り付けられた前記窓部材を通してキャビティを視認可能な観察穴が形成され、
前記固定型と前記可動型の離型時に前記取出部材によって前記窓部材が前記可動型から取り出される
射出成形用金型。
【請求項2】
前記キャビティが前記窓部材と前記固定型又は前記可動型の少なくとも一方とによって形成された
請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記窓部材が複数設けられ、
前記キャビティが複数の前記窓部材によって形成された
請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記取出部材として可動ピンが設けられ、
前記可動ピンによって前記窓部材が突き出されることにより前記可動型から取り出される
請求項1から請求項3の何れかに記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記キャビティに充填される溶融樹脂が固化されることにより形成される成形物を前記可動型から突き出すエジェクタピンが設けられ、
前記エジェクタピンと前記可動ピンが前記可動型に対して同時に移動され前記成形物と前記窓部材が前記可動型から同時に取り出される
請求項4に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
前記可動型に対して移動可能な駆動プレートが設けられ、
前記駆動プレートに前記エジェクタピンと前記可動ピンが取り付けられ、
前記エジェクタピンと前記可動ピンが前記駆動プレートの移動に伴って同時に移動される
請求項5に記載の射出成形用金型。
【請求項7】
前記可動型に前記窓部材を保持する保持部が形成された
請求項1から請求項6の何れかに記載の射出成形用金型。
【請求項8】
前記観察穴が複数形成され、
前記窓部材を通して前記キャビティを異なる方向から視認可能にされた
請求項1から請求項7の何れかに記載の射出成形用金型。
【請求項9】
前記固定型又は前記可動型の少なくとも一方に反射面が形成され、
前記観察穴から前記反射面を介し前記窓部材を通して前記キャビティが視認可能にされた
請求項1から請求項8の何れかに記載の射出成形用金型。
【請求項10】
前記窓部材の全光線透過率が70%以上にされた
請求項1から請求項9の何れかに記載の射出成形用金型。
【請求項11】
前記窓部材の熱変形温度が60度以上にされた
請求項1から請求項10の何れかに記載の射出成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定型と可動型を有する構成において製品として使用される成形品の形成に用いられると共に成形品の形成が行われる前の準備段階において使用される射出成形用金型についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
固定型と可動型を有し両者が突き合わされることにより形成される空間であるキャビティに溶融樹脂が充填されて製品として使用される成形品を形成する射出成形用金型がある。このような射出成形用金型は射出成型機に、その一部の構造として組み付けられている。
【0003】
このような射出成形用金型においては、キャビティに溶融樹脂が充填され、固化された溶融樹脂がエジェクタピンによってキャビティから取り出されることにより成形品が形成される。射出成形用金型においては、最適な成形条件の下で成形品の形成が行われることが望ましく、最適な成形条件を設定するために、例えば、キャビティに充填される溶融樹脂の充填圧力や流動速度等が形成される成形品の種類や形状等に応じて定められる。
【0004】
また、射出成形用金型においては、成形品の形成が行われる前の準備段階においてキャビティを外部から視認可能にし、溶融樹脂が射出されるキャビティの状態を観察することにより成形不良の把握及び改善を行い、成形品に関する歩留まりの向上を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1には、内部の空間に溶融樹脂が充填される樹脂型を透光性のある樹脂材料によって形成し、溶融樹脂を外部から肉眼で観察可能にした技術が示されている。
【0006】
特許文献2には、透明な石英ガラスによって形成されたプリズムを用いてキャビティの状態を可視化することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-162883号公報
【文献】特開2010-110999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載された技術においては、溶融樹脂の流動状態等の可視化を行うための樹脂型の形成が3Dプリンターによって行われるため、樹脂型の製造コストが高くなってしまう。
【0009】
また、特許文献2に記載された射出成形用金型のように、キャビティの可視化を行うために石英ガラスを用いた場合には、石英ガラスが熱衝撃による破損が生じ難い一方、高価な材料である上に引張強さが低く機械的な衝撃を受けた場合に破損し易いと言う不具合もある。
【0010】
一方、射出成形用金型においては、成形不良の把握及び改善を行うために、キャビティに射出される溶融樹脂の状態に関する高い視認性が確保されることが望ましい。
【0011】
そこで、本発明の射出成形用金型は、製造コストの高騰や機械的な衝撃による不具合の発生を来すことなくキャビティに射出される溶融樹脂の状態に関する高い視認性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1に、本発明に係る射出成形用金型は、固定された状態で配置された固定型と、前記固定型に対して移動可能な可動型と、前記可動型に対して移動可能にされた取出部材とを備え、透明な熱可塑性の樹脂材料又は透明な熱硬化性の樹脂材料によって形成された窓部材が前記可動型に対して着脱可能にされ、前記固定型又は前記可動型の少なくとも一方には前記可動型に取り付けられた前記窓部材を通してキャビティを視認可能な観察穴が形成され、前記固定型と前記可動型の離型時に前記取出部材によって前記窓部材が前記可動型から取り出されるものである。
【0013】
これにより、透明な樹脂材料によって形成された窓部材を通して観察穴からキャビティを視認することが可能にされると共に固定型と可動型の離型時に取出部材によって可動型から取り出される窓部材を新たな窓部材に交換することが可能にされる。
【0014】
第2に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記キャビティが前記窓部材と前記固定型又は前記可動型の少なくとも一方とによって形成されることが望ましい。
【0015】
これにより、キャビティの視認が可能な位置にのみ窓部材を配置すればよい。
【0016】
第3に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記窓部材が複数設けられ、前記キャビティが複数の前記窓部材によって形成されることが望ましい。
【0017】
これにより、キャビティが樹脂材料によって形成された複数の窓部材によって形成されるため、所望の形状のキャビティの形成が容易になる。
【0018】
第4に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記取出部材として可動ピンが設けられ、前記可動ピンによって前記窓部材が突き出されることにより前記可動型から取り出されることが望ましい。
【0019】
これにより、可動型に対して移動可能な可動ピンによって窓部材が突き出されて可動型から取り出される。
【0020】
第5に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記キャビティに充填される溶融樹脂が固化されることにより形成される成形物を前記可動型から突き出すエジェクタピンが設けられ、前記エジェクタピンと前記可動ピンが前記可動型に対して同時に移動され前記成形物と前記窓部材が前記可動型から同時に取り出されることが望ましい。
【0021】
これにより、エジェクタピンと可動ピンによって成形物200と窓部材21が時間差なく可動型から取り出される。
【0022】
第6に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記可動型に対して移動可能な駆動プレートが設けられ、前記駆動プレートに前記エジェクタピンと前記可動ピンが取り付けられ、前記エジェクタピンと前記可動ピンが前記駆動プレートの移動に伴って同時に移動されることが望ましい。
【0023】
これにより、エジェクタピンと可動ピンを移動させるための各別の駆動部を必要としない。
【0024】
第7に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記可動型に前記窓部材を保持する保持部が形成されることが望ましい。
【0025】
これにより、固定型と可動型の離型時に保持部によって窓部材が可動型に保持されるため、固定型と可動型の離型時に窓部材が可動型とともに固定型から離隔される。
【0026】
第8に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記観察穴が複数形成され、前記窓部材を通して前記キャビティを異なる方向から視認可能にされることが望ましい。
【0027】
これにより、複数の観察穴から窓部材を通してキャビティの状態を異なる方向から視認することが可能になる。
【0028】
第9に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記固定型又は前記可動型の少なくとも一方に反射面が形成され、前記観察穴から前記反射面を介し前記窓部材を通して前記キャビティが視認可能にされることが望ましい。
【0029】
これにより、反射面で反射される光によって観察穴から窓部材を通してキャビティの状態を視認することが可能になる。
【0030】
第10に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記窓部材の全光線透過率が70%以上にされることが望ましい。
【0031】
これにより、窓部材が高い透光性を有する。
【0032】
第11に、上記した本発明に係る射出成形用金型においては、前記窓部材の熱変形温度が60度以上にされることが望ましい。
【0033】
これにより、窓部材が高い耐熱性を有する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、透明な樹脂材料によって形成された窓部材を通して観察穴からキャビティを視認することが可能にされると共に固定型と可動型の離型時に取出部材によって可動型から取り出される窓部材を新たな窓部材に交換することが可能にされるため、製造コストの高騰や機械的な衝撃による不具合の発生を来すことなくキャビティに射出される溶融樹脂の状態に関する高い視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図2乃至図7と共に本発明の第1の実施の形態を示すものであり、本図は、射出成形用金型の断面図である。
図2】窓部材を断面にして示す可動型の平面図である。
図3】溶融樹脂が固化されて成形物が形成されたときの可動型に対する成形物の結合力が高くなる構成の例を示す断面図である。
図4】窓部材を形成する熱可塑性の樹脂材料の物性を示す図表である。
図5】キャビティに溶融樹脂が充填された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
図6図5に引き続き、固定型と可動型が離型された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
図7図6に引き続き、窓部材と成形物が可動型から突き出された状態を示す射出成形用金型の断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態を示す射出成形用金型の断面図である。
図9図10と共に本発明の第3の実施の形態を示すものであり、本図は、射出成形用金型の断面図である。
図10】窓部材に代えて金属型が用いられた状態を示す射出成形用金型の断面図である。
図11図12と共に本発明の第4の実施の形態を示すものであり、本図は、射出成形用金型の断面図である。
図12】窓部材に代えて金属型が用いられた状態を示す射出成形用金型の断面図である。
図13】本発明の第5の実施の形態を示す射出成形用金型の断面図である。
図14】本発明の第6の実施の形態を示す射出成形用金型の断面図である。
図15】本発明の第7の実施の形態を示す射出成形用金型の断面図である。
図16】本発明の第8の実施の形態を示す射出成形用金型の断面図である。
図17】本発明の第8の実施の形態において別の例を示す可動型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の射出成形用金型を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0037】
以下の説明においては、射出成形用金型の固定型と可動型が離接される方向を上下方向として上下前後左右の方向を示す。尚、以下に示す上下前後左右の方向は、説明の便宜上示すものであり、本発明はこれらの方向に限定して適用されることはない。また、各部品の数量、形状、配置等は、本発明の意図を逸脱しない範囲において図示された内容に限定されて適用されることはない。
【0038】
<第1の実施の形態に係る射出成形用金型>
先ず、第1の実施の形態に係る射出成形用金型1について説明する(図1乃至図7参照)。射出成形用金型1はコールドランナとしての機能を有している。但し、本発明はホットランナとしての機能を有する射出成形用金型にも適用することが可能である。
【0039】
射出成形用金型1は射出成型機に、その一部の構造として組み付けられ、上下方向において離接される固定型2と可動型3を有している(図1及び図2参照)。
【0040】
固定型2は上下方向を向く平板状の固定側取付板4と固定側取付板4の下面に固定された固定側キャビティプレート5とを有している。
【0041】
固定側キャビティプレート5には下方及び側方における一方に開口されたキャビティ用凹部5aが形成されている。固定側キャビティプレート5にはキャビティ用凹部5aの側方における一方に連続して上下に貫通された挿入孔5bが形成されている。固定側キャビティプレート5には挿入孔5bの側方における一方に連続して下方及び側方に開口された観察用凹部5cが形成され、観察用凹部5cは固定型2の一方の側面2aに開口されている。固定側キャビティプレート5には挿入孔5bを形成する一方の側面が傾斜面5dとして形成され、傾斜面5dは下方へ行くに従って側面2aに近付くように緩やかに傾斜されている。
【0042】
固定側取付板4の中央部における上面には環状のロケートリング6が取り付けられ、ロケートリング6は射出成型機に組み付けられるときの射出成形機に対する位置決めを行う機能を有している。
【0043】
固定型2には溶融樹脂を供給する樹脂供給部として機能する図示しない供給ノズルが取り付けられる。供給ノズルは先端部がロケートリング6に挿入された状態で固定型2に取り付けられる。
【0044】
固定型2の中央部にはスプル7が設けられている。スプル7は固定型2の中央部において挿入された状態で配置され、上下に延びる略円筒状に形成されている。スプル7は上側の開口が供給ノズルの内部の空間に連通され下側の開口が固定側キャビティプレート5の下端に一致されている。
【0045】
固定側キャビティプレート5の内部における四つの角部にはそれぞれ上下に貫通されたスリーブ8、8、・・・が配置されている。
【0046】
可動型3には内部空間が形成され、この内部空間が配置空間9とされている。可動型3は固定型2に対して上下方向へ移動されて離接される。
【0047】
可動型3は、上下方向を向く平板状の可動側取付板10と、可動側取付板10の上方に位置された連結プレート11と、連結プレート11の上面に固定された可動側キャビティプレート12と、可動側取付板10の外周部と連結プレート11の外周部とを連結する連結板13とを有している。可動側取付板10と連結板13と連結プレート11によって可動型3の内部に配置空間9が形成される。
【0048】
可動側キャビティプレート12には上方及び側方における一方に開口されたキャビティ用凹部12aが形成されている。可動側キャビティプレート12にはキャビティ用凹部12aの側方における一方に連続して上下に貫通された挿入孔12bが形成され、挿入孔12bは固定側キャビティプレート5に形成された挿入孔5bの真下に位置されている。可動側キャビティプレート12には挿入孔12bの側方における一方に連続して上方及び側方に開口された観察用凹部12cが形成され、観察用凹部12cは可動型3の一方の側面3aに開口されている。可動側キャビティプレート12にはキャビティ用凹部12aの側方における他方に連続して上方に開口されたランナ用凹部12dが形成されている。
【0049】
可動側キャビティプレート12には第1の保持部14が形成されている。第1の保持部14は、例えば、側方及び下方に開口された凹部(アンダーカット部)として形成され、挿通孔12bの下端部に連通されている。
【0050】
可動側キャビティプレート12には第2の保持部15が形成されている。第2の保持部15は、例えば、側方及び上方に開口された凹部として形成され、挿通孔12bの上端部とキャビティ用凹部12aとに連通されている。
【0051】
可動側取付板10には上下方向へ移動可能な図示しない駆動ロッドが支持されている。駆動ロッドはシリンダ及びピストンや電気的なモータ等によって構成された図示しない駆動源によって駆動される。
【0052】
可動側キャビティプレート12には被ガイドピン16、16、・・・が四つの角部に取り付けられ、被ガイドピン16、16、・・・はそれぞれ一部が可動側キャビティプレート12から上方に突出されている。被ガイドピン16、16、・・・は可動型3が固定型2に対して近付く方向へ移動するときに、それぞれ固定型2に設けられたスリーブ8、8、・・・に挿入される。従って、可動型3が固定型2に対して適正な姿勢で移動される。
【0053】
可動型3の配置空間9には駆動プレート17が上下方向へ移動自在に支持されている。駆動プレート17は駆動ロッドの駆動力によって上下方向へ移動される。
【0054】
駆動プレート17にはリターンピン18、18、・・・の下端部が結合されている(図1には一つのリターンピン18のみを示す。)。リターンピン18、18、・・・はそれぞれ駆動プレート17の角部に結合され、連結プレート11を挿通されて可動側キャビティプレート12に摺動自在に支持されている。従って、駆動プレート17はリターンピン18、18、・・・が可動側キャビティプレート12にガイドされて上下方向へ移動される。
【0055】
駆動プレート17には上下方向へ移動可能なエジェクタピン19、19、・・・の下端部が結合されている。エジェクタピン19は連結プレート11を挿通されて可動側キャビティプレート12に摺動自在に支持され、駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面がキャビティ用凹部12aを形成する底面又はランナ用凹部12dを形成する底面に一致されている。
【0056】
駆動プレート17には取出部材として機能し上下方向へ移動可能な可動ピン20、20、・・・の下端部が結合されている。可動ピン20は連結プレート11に摺動自在に支持され、駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面が挿入孔12bを形成する底面に一致されている。
【0057】
可動型3には挿入孔12bに樹脂材料によって形成された窓部材21が挿入されて配置される。窓部材21は、例えば、厚み方向が固定型2と可動型3の離接方向に対して直交する方向にされた略矩形の板状(直方体状)に形成され、透明な樹脂材料によって形成されている。窓部材21は下端部が挿入孔12bに嵌合された状態で挿入される。窓部材21の上端部における一方の側面は上方へ行くに従って他方の側面に近付くように緩やかに傾斜された斜面21aとして形成されている。
【0058】
尚、上記には、駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において、エジェクタピン19の上面(先端面)がキャビティ用凹部12aを形成する底面又はランナ用凹部12dを形成する底面に一致されている例を示したが、例えば、エジェクタピン19の上端部(先端部)に溝19aが形成され上面の一部がキャビティ用凹部12aを形成する底面又はランナ用凹部12dを形成する底面に一致されていてもよい(図3参照)。
【0059】
エジェクタピン19の上端部に溝19aが形成されることにより、後述するキャビティに溶融樹脂が射出されたときに溶融樹脂が溝19aに高い圧力で充填されるため、溶融樹脂が固化されて成形物が形成されたときの可動型3に対する成形物の結合力が高くなり、固定型2と可動型3の離型時に成形物を可動型3に確実に保持させることが可能になる。
【0060】
射出成形用金型1にあっては、窓部材21が樹脂材料によって形成され、後述するように、ともに樹脂材料によって形成された窓部材21と成形物が密着された状態で一体になって可動型3から取り出される。従って、上記のように、エジェクタピン19の上端部に溝19aを形成し、固定型2と可動型3の離型時に成形物を可動型3に確実に保持させることにより、窓部材21も離型時に可動型3に確実に保持されるため、溝19aは可動型3に窓部材21を確実に保持させる保持手段としても機能する。
【0061】
窓部材21は、例えば、熱可塑性の樹脂材料又は熱硬化性の樹脂材料によって形成されている。熱可塑性の樹脂材料としては、例えば、PMMA(アクリル)、PS(ポリスチレン)、AS(アクリロニトリル ・スチレン共重合体)、PC(ポリカーボネート)、PVC(ポリ塩化ビニル)等が用いられる。熱硬化性の樹脂材料としては、例えば、UF(ユリア)、MF(メラミン)、PAR(ポリアリレート)、PSU(ポリスルフォン)等が用いられる。
【0062】
図4に、熱可塑性の樹脂材料(PMMA、PS、AS、PC、PVC)の物性を示す。窓部材21は高い耐熱性を有する材料によって形成されることが望ましく、熱変形温度が60度以上にされることが望ましく、好ましくは90度、より好ましくは120度以上にされることが望ましい。また、窓部材21は高い機械的強度を有する材料によって形成されることが望ましく、1平方センチメートル当たりの引張強さが370Kgf以上にされることが望ましく、好ましくは600Kgf以上にされることが望ましい。さらに、窓部材21は高い透明度を有する材料によって形成されることが望ましく、全光線透過率が70%以上にされることが望ましく、好ましくは90%以上にされることが望ましい。
【0063】
図4に示すように、PMMA、PS、PC、AS、PVCにおいては、何れも望ましい値である熱変形温度が60度以上、1平方センチメートル当たりの引張強さが370Kgf以上、全光線透過率が70%以上の値を満足する材料であり、特に、窓部材21として有用な材料である。
【0064】
上記のように構成された射出成形用金型1において、可動型3が固定型2に対して上方へ移動され固定型2と可動型3が突き合わされると、固定型2の挿入孔5bと可動型3の挿入孔12bと両者の間の空間とによって部材配置空間22が形成され、固定型2の観察用凹部5cと可動型3の観察用凹部12cとによって観察穴23が形成される(図1参照)。また、固定型2と可動型3が上下で突き合わされた状態において、可動型3のランナ用凹部12dは溶融樹脂の流路であるランナ24として形成され、ランナ24にスプル7の内部の空間が連通される。ランナ24のキャビティ用凹部12a側の開口部はゲート24aとされる。
【0065】
可動型3が固定型2に対して上方へ移動され固定型2と可動型3が突き合わされるときには、窓部材21の上端部が固定型2の挿入孔5bに挿入され、窓部材21が部材配置空間22に配置される。窓部材21が部材配置空間22に配置されることにより、固定型2のキャビティ用凹部5aと可動型3のキャビティ用凹部12aと窓部材21とによってキャビティ25が形成される。
【0066】
固定型2と可動型3が突き合わされてキャビティ25が形成されると、供給ノズルから溶融樹脂100がスプル7に供給される(図5参照)。溶融樹脂100はスプル7からランナ24を流動されゲート24aからキャビティ25に射出され、キャビティ25に溶融樹脂100が充填される。キャビティ25に溶融樹脂100が充填されると、供給ノズルからの溶融樹脂100のキャビティ25へ向けての供給が停止される。
【0067】
キャビティ25への溶融樹脂100の射出時には、作業者が観察穴23から窓部材21を通してキャビティ25の状態を矢印A方向から視認することができ、キャビティ25への溶融樹脂100の射出状態を観察することができる。キャビティ25への溶融樹脂100の射出状態を観察することにより成形不良の把握及び改善を行い、製品として使用される成形品の歩留まりの向上を図ることができる。
【0068】
また、キャビティ25への溶融樹脂100の射出時には、固定型2と可動型3の温度が上昇し、固定型2及び可動型3から窓部材21に熱が伝達されると共に高温の溶融樹脂100からも窓部材21に熱が伝達される。従って、窓部材21は伝達される熱に応じて膨張され、第1の保持部14に窓部材21の膨張部分21bが形成される。また、キャビティ25に射出された溶融樹脂100の一部が第2の保持部15に充填される。第2の保持部15に充填された溶融樹脂100の一部は保持用充填部100aとされ、保持用充填部100aはキャビティ25への溶融樹脂100の射出に伴って高い圧力で第2の保持部15に充填される。
【0069】
溶融樹脂100のキャビティ25へ向けての供給が停止されると、一定時間経過後に、キャビティ25に充填された溶融樹脂100が冷却されて固化され成形物200が形成される。このときランナ24に充填された溶融樹脂100も固化され、ランナ24に充填されて固化された溶融樹脂100はランナ成形部200aとされる。溶融樹脂100が冷却されると、第2の保持部15に充填された保持用充填部100aは窓部材21に密着された状態で固化される。
【0070】
キャビティ25に充填された溶融樹脂100が冷却されて固化されると、可動型3が下方へ移動されて成形物200とともに固定型2から離隔され固定型2と可動型3が離型される(図6参照)。
【0071】
可動型3が下方へ移動されるときには第1の保持部14に窓部材21の膨張部分21bが形成されていると共に第2の保持部15に充填された保持用充填部100aが窓部材21に密着された状態で固化され、窓部材21の可動側キャビティプレート12に対する結合力が高くされているため、窓部材21が可動型3と成形物200と一体になって下方へ移動される。
【0072】
従って、第1の保持部14と第2の保持部15は、固定型2と可動型3の離型時に窓部材21が固定型2よりも可動型3に高い結合力を有する状態にして可動型3に窓部材21を確実に保持させる保持手段として機能する。
【0073】
上記のように可動型3は下方へ移動されるが、このとき固定型2には傾斜面5dが形成され窓部材21には斜面21aが形成されているため、窓部材21の上端部が固定型2の挿入孔5bから円滑に引き出され窓部材21が可動型3に結合され易く、窓部材21が可動型3とともに下方へ移動される。
【0074】
従って、窓部材21の斜面21aも、固定型2と可動型3の離型時に窓部材21が固定型2よりも可動型3に高い結合力を有する状態にして可動型3に窓部材21を確実に保持させる保持手段として機能する。
【0075】
固定型2と可動型3が離型されると、駆動プレート17が駆動ロッドの駆動力によって上方へ移動され、駆動プレート17の移動に伴ってエジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が同時に上方へ移動される(図7参照)。エジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が上方へ移動されることにより、成形物200と窓部材21がエジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・によって突き出されて挿入孔12bから取り出される。
【0076】
窓部材21には固定型2と可動型3から伝達される熱や溶融樹脂100から伝達される熱や溶融樹脂100の流動時における圧力と流動抵抗等によって摩耗や変形が生じるおそれがある。従って、挿入孔12bから窓部材21が取り出されると、挿入孔12bには新たな窓部材21が挿入されて窓部材21の交換が行われる。窓部材21は一つの成形物200が形成される溶融樹脂100のワンショット毎に新たな窓部材21に交換される。
【0077】
尚、上記には、窓部材21を可動型3から取り出す取出部材として可動ピン20が設けられた例を示したが、取出部材は可動ピン20に限られることはなく、取出部材として、例えば、ストリッパープレートが設けられてもよい。
【0078】
また、上記には、固定型2と可動型3の離型時に窓部材21が固定型2よりも可動型3に高い結合力を有する状態にして可動型3に窓部材21を確実に保持させる保持手段として、第1の保持部14と第2の保持部15と斜面21aを例として示したが、例えば、窓部材21の外周面と固定型2の挿入孔5bとの間のクリアランスより窓部材21の外周面と可動型3の挿入孔12bとの間のクリアランスを小さくして窓部材21が固定型2よりも可動型3に高い結合力を有する状態にしてもよい。
【0079】
このようにクリアランスを異ならせることにより、成形物200の成形時に生じる熱により膨張する窓部材21が固定型2よりも可動型3に高い結合力を有する状態になり、離型時に窓部材21を可動型3とともに下方へ移動させることが可能になる。従って、上記のようなクリアランスを異ならせることも、固定型2と可動型3の離型時に窓部材21が固定型2よりも可動型3に高い結合力を有する状態にして可動型3に窓部材21を確実に保持させる保持手段とされる。
【0080】
射出成形用金型1においては、観察穴23から窓部材21を通してキャビティ25への溶融樹脂100の射出状態を観察することにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25に射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ25に射出される溶融樹脂100の流速や温度等の条件を設定することが可能である。
【0081】
一方、成形物200を形成する準備段階として成形条件の設定等を行う場合には、窓部材21に代えて窓部材21と同じ形状及び同じ大きさに形成された図示しない金属型を使用してもよい。金属型は溶融樹脂100の複数回の射出を行う連続成形時に繰り返し使用することが可能であり、溶融樹脂100の射出圧や流速等の成形条件の設定等を行う場合の他、射出成形用金型1の昇温時や各部に滞留する溶融樹脂100の排出や置換等を行う場合にも使用することが可能である。
【0082】
上記したように、射出成形用金型1にあっては、キャビティ25が窓部材21と固定型2と可動型3によって形成されているため、キャビティ25の視認が可能な位置にのみ窓部材21を配置すればよく、射出成形用金型1の構造と窓部材21の形状を簡素化して製造コストの高騰を来すことなくキャビティ25への溶融樹脂100の射出状態を観察することができる。
【0083】
尚、上記には、キャビティ25が窓部材21と固定型2と可動型3によって形成された例を示したが、キャビティ25は窓部材21と固定型2又は可動型3の一方とによって形成されていてもよい。この場合にもキャビティ25の視認が可能な位置にのみ窓部材21を配置すればよく、射出成形用金型1の構造と窓部材21の形状を簡素化して製造コストの高騰を来すことなくキャビティ25への溶融樹脂100の射出状態を観察することができる。
【0084】
また、射出成形用金型1にあっては、可動型3に窓部材21を保持する第1の保持部14や第2の保持部15等の窓部材21が固定型2よりも可動型3に高い結合力を有する状態にして可動型3に窓部材21を保持させる保持手段が形成されている。
【0085】
従って、固定型2と可動型3の離型時に第1の保持部14や第2の保持部15等によって窓部材21が可動型3に保持されるため、固定型2と可動型3の離型時に窓部材21が可動型3とともに固定型2から確実に離隔され、固定型2と可動型3の離型後に窓部材21を可動型3から確実に取り出して新たな窓部材21に容易に交換することができる。
【0086】
さらに、固定型2と可動型3が突き合わされた状態において窓部材21が固定型2の挿入孔5bと可動型3の挿入孔12bの双方に挿入されるため、窓部材21の高い強度及び安定した保持状態を確保した上でキャビティ25に溶融樹脂100を充填することができる。
【0087】
さらにまた、窓部材21の全光線透過率が70%以上にされることにより、窓部材21が高い透光性を有するため、窓部材21を介してのキャビティ25に対する高い視認性を確保することができる。
【0088】
加えて、窓部材21の熱変形温度が60度以上にされることにより、窓部材21が高い耐熱性を有するため、溶融樹脂100の射出時に窓部材21に変形や溶融が生じ難く、窓部材21を介してのキャビティ25に対するより高い視認性を確保することができる。
【0089】
尚、窓部材21が固定型2よりも可動型3に高い結合力を有する状態にして可動型3に窓部材21を確実に保持させる保持手段は、上記したエジェクタピン19の溝19a、第1の保持部14、第2の保持部15、斜面21a又はクリアランスの相違による手段のうち、少なくとも一つの手段が形成されていればよい。
【0090】
また、これらの保持手段は、以下に示す各実施の形態に適宜に形成されていればよく、以下に示す各実施の形態においては、これらの各保持手段の説明及び図示は省略する。
【0091】
<第2の実施の形態に係る射出成形用金型>
次に、第2の実施の形態に係る射出成形用金型1Aについて説明する(図8参照)。
【0092】
尚、以下に示す射出成形用金型1Aは、上記した射出成形用金型1と比較して、観察穴が可動型にのみ形成されていることのみが相違する。従って、以下の射出成形用金型1Aの説明においては、射出成形用金型1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については射出成形用金型1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0093】
射出成形用金型1Aは固定型2Aと可動型3を有している。
【0094】
固定型2Aは固定側取付板4と固定側キャビティプレート5Aを有している。固定側キャビティプレート5Aにはキャビティ用凹部5aと挿入孔5bと観察用凹部5cの何れもが形成されていない。
【0095】
可動型3には挿入孔12bに窓部材21Aが挿入されて配置される。窓部材21Aは、例えば、厚み方向が固定型2Aと可動型3の離接方向に対して直交する方向にされた略矩形の板状(直方体状)に形成され、透明な樹脂材料によって形成されている。窓部材21Aは下側略半分の部分が挿入孔12bに嵌合された状態で挿入される。
【0096】
上記のように構成された射出成形用金型1Aにおいて、可動型3が固定型2Aに対して上方へ移動され固定型2Aと可動型3が突き合わされると、可動型3の挿入孔12bと挿入孔12bの真上の空間とによって部材配置空間22Aが形成され、可動型3の観察用凹部12cが観察穴23Aとして形成される。
【0097】
可動型3が固定型2Aに対して上方へ移動され固定型2Aと可動型3が突き合わされるときには、窓部材21Aは上面が固定側キャビティプレート5Aの下面に密着した状態にされる。窓部材21Aが部材配置空間22Aに配置されることにより、固定型2Aにおける固定側キャビティプレート5Aの下面と可動型3のキャビティ用凹部12aと窓部材21Aとによってキャビティ25Aが形成される。
【0098】
キャビティ25Aへの溶融樹脂100の射出時には、作業者が観察穴23Aから窓部材21Aを通してキャビティ25Aの状態を矢印A方向から視認することができ、キャビティ25Aへの溶融樹脂100の射出状態を観察することができる。
【0099】
射出成形用金型1Aにおいては、観察穴23Aから窓部材21Aを通してキャビティ25Aへの溶融樹脂100の射出状態を観察することにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25Aに射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ25Aに射出される溶融樹脂100の流速や温度等の条件を設定することが可能である。
【0100】
また、射出成形用金型1Aにあっては、観察穴23Aが可動型3にのみ形成されているため、窓部材21Aの小型化を図ることができる。また、窓部材21Aには固定型2Aに挿入される部分が存在しないため、離型時に窓部材21Aが固定型2Aに結合されることがなく、離型時に窓部材21Aを確実に可動型3とともに移動させることができる。
【0101】
一方、成形物200を形成する準備段階として成形条件の設定等を行う場合には、窓部材21Aに代えて窓部材21Aと同じ形状及び同じ大きさに形成された図示しない金属型を使用してもよい。金属型は溶融樹脂100の複数回の射出を行う連続成形時に繰り返し使用することが可能であり、溶融樹脂100の射出圧や流速等の成形条件の設定等を行う場合の他、射出成形用金型1Aの昇温時や各部に滞留する溶融樹脂100の排出や置換等を行う場合にも使用することが可能である。
【0102】
<第3の実施の形態に係る射出成形用金型>
次に、第3の実施の形態に係る射出成形用金型1Bについて説明する(図9及び図10参照)。
【0103】
尚、以下に示す射出成形用金型1Bは、上記した射出成形用金型1と比較して、窓部材にキャビティの一部を構成する凹部が形成されていることのみが相違する。従って、以下の射出成形用金型1Bの説明においては、射出成形用金型1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については射出成形用金型1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0104】
射出成形用金型1Bは固定型2Bと可動型3Bを有している(図9参照)。
【0105】
固定型2Bは固定側取付板4と固定側キャビティプレート5Bを有している。
【0106】
固定側キャビティプレート5Bには下方及び側方における一方に開口されたキャビティ用凹部5eが形成されている。
【0107】
可動型3Bは可動側取付板10と連結プレート11と可動側キャビティプレート12Bと連結板13を有している。
【0108】
可動側キャビティプレート12Bには上方に突出されたキャビティ用凸部12eが設けられている。可動側キャビティプレート12Bにはランナ用凹部12dが形成されていない。
【0109】
エジェクタピン19は駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面がキャビティ用凸部12eの上面に一致されている。
【0110】
可動型3Bには挿入孔12bに窓部材21Bが挿入されて配置される。窓部材21Bは、例えば、厚み方向が固定型2Bと可動型3Bの離接方向に対して直交する方向にされた略矩形の板状(直方体状)に形成され、透明な樹脂材料によって形成されている。窓部材21Bには側方に開口されたキャビティ用凹部21cが形成されている。
【0111】
上記のように構成された射出成形用金型1Bにおいて、可動型3Bが固定型2Bに対して上方へ移動され固定型2Bと可動型3Bが突き合わされるときには、窓部材21Bの上端部が固定型2Bの挿入孔5bに挿入され、窓部材21Bが部材配置空間22に配置される。窓部材21Bが部材配置空間22に配置されることにより、固定型2Bのキャビティ用凹部5eと可動型3Bのキャビティ用凸部12eと窓部材21Bのキャビティ用凹部21cとによってキャビティ25Bが形成される。
【0112】
また、固定型2Bと可動型3Bが上下で突き合わされた状態においては、スプル7の内部の空間がキャビティ25Bの中央部に連通される。
【0113】
キャビティ25Bへの溶融樹脂100の射出時には、作業者が観察穴23から窓部材21Bを通してキャビティ25Bの状態を矢印A方向から視認することができ、キャビティ25Bへの溶融樹脂100の射出状態を観察することができる。
【0114】
成形物200は窓部材21Bとともに可動型3Bから突き出される。
【0115】
上記のように射出成形用金型1Bにあっては、窓部材21Bにキャビティ25Bを構成するキャビティ用凹部21cが形成されており、窓部材21Bが樹脂であるためキャビティ用凹部21cの形成を容易に行うことが可能である。従って、キャビティ用凹部21cを所望の形状に形成することにより、キャビティ25Bを必要とされる成形物200の形状に応じて容易に形成することができ、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0116】
また、射出成形用金型1Bにおいては、観察穴23から窓部材21Bを通してキャビティ25Bへの溶融樹脂100の射出状態を観察することにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25Bに射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ25Bに射出される溶融樹脂100の流速や温度等の条件を設定することが可能である。
【0117】
さらに、窓部材21Bを用いることにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25Bに射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ用凹部21cの形状を任意に変更することもできる。
【0118】
さらにまた、固定型2Bと可動型3Bが突き合わされた状態において窓部材21Bが固定型2Bの挿入孔5bと可動型3Bの挿入孔12bの双方に挿入されるため、窓部材21Bの高い強度及び安定した保持状態を確保した上でキャビティ25Bに溶融樹脂100を充填することができる。
【0119】
一方、成形物200を形成する準備段階として成形条件の設定等を行う場合には、窓部材21Bに代えて直方体状の金属型26を使用してもよい(図10参照)。金属型26は溶融樹脂100の複数回の射出を行う連続成形時に繰り返し使用することが可能であり、溶融樹脂100の射出圧や流速等の成形条件の設定等を行う場合の他、射出成形用金型1Bの昇温時や各部に滞留する溶融樹脂100の排出や置換等を行う場合にも使用することが可能である。
【0120】
<第4の実施の形態に係る射出成形用金型>
次に、第4の実施の形態に係る射出成形用金型1Cについて説明する(図11及び図12参照)。
【0121】
尚、以下に示す射出成形用金型1Cは、上記した射出成形用金型1と比較して、二つの窓部材によってキャビティを形成することのみが相違する。従って、以下の射出成形用金型1Cの説明においては、射出成形用金型1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については射出成形用金型1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0122】
射出成形用金型1Cは固定型2Cと可動型3Cを有している(図11参照)。
【0123】
固定型2Cは固定側取付板4と固定側キャビティプレート5Cを有している。
【0124】
固定側キャビティプレート5Cにはキャビティ用凹部5aが形成されていない。
【0125】
可動型3Cは可動側取付板10と連結プレート11と可動側キャビティプレート12Cと連結板13を有している。
【0126】
可動側キャビティプレート12Cにはキャビティ用凹部12aとランナ用凹部12dが形成されていない。
【0127】
射出成形用金型1Cにはそれぞれ透明な樹脂材料によって形成された窓部材21Lと窓部材21Mが配置される。窓部材21Lには下方に開口されたキャビティ用凹部21dと上下に貫通された流入孔21eとが形成されている。流入孔21eは上端が窓部材21Lの上面に開口され下端がキャビティ用凹部21dに開口されている。窓部材21Mには上方に突出されたキャビティ用凸部21fが設けられている。窓部材21Mには上下に貫通されたピン挿通孔21g、21g、・・・が形成され、ピン挿通孔21g、21g、・・・は上端がキャビティ用凸部21fの上面に開口され下端が窓部材21Mの下面に開口されている。
【0128】
窓部材21Lと窓部材21Mは、例えば、結合ピン27、27、・・・等によって上下で結合されている。窓部材21Lと窓部材21Mが結合されることにより、内部にキャビティ用凹部21dとキャビティ用凸部21fによってキャビティ25Cが形成される。窓部材21Mは窓部材21Lと結合された状態で可動型3Cの挿入孔12bに挿入されて配置される。窓部材21Mが挿入孔12bに挿入された状態においては、エジェクタピン19、19、・・・がそれぞれピン挿通孔21g、21g、・・・に挿通される。エジェクタピン19は駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面がキャビティ用凸部21fの上面に一致されている。
【0129】
上記のように構成された射出成形用金型1Cにおいて、可動型3Cが固定型2Cに対して上方へ移動され固定型2Cと可動型3Cが突き合わされると、窓部材21Lが固定型2Cの挿入孔5bに挿入され、窓部材21Lと窓部材21Mが部材配置空間22に配置される。窓部材21Lが挿入孔5bに挿入された状態においては、スプル7の内部の空間が窓部材21Lの流入孔21eに連通される。
【0130】
固定型2Cと可動型3Cが突き合わされると、供給ノズルから溶融樹脂100がスプル7に供給される。溶融樹脂100はスプル7から窓部材21Lの流入孔21eを通してキャビティ25Cに射出され、キャビティ25Cに溶融樹脂100が充填される。
【0131】
キャビティ25Cへの溶融樹脂100の射出時には、作業者が観察穴23から窓部材21Lを通してキャビティ25Cの状態を矢印A方向から視認することができ、キャビティ25Cへの溶融樹脂100の射出状態を観察することができる。
【0132】
キャビティ25Cに充填された溶融樹脂100が冷却されて固化されると、可動型3Cが下方へ移動されて窓部材21Lと窓部材21Mが成形物200とともに固定型2Cから離隔され固定型2Cと可動型3Cが離型される。
【0133】
固定型2Cと可動型3Cが離型されると、駆動プレート17が上方へ移動され、駆動プレート17の移動に伴ってエジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が同時に上方へ移動される。エジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が上方へ移動されることにより、窓部材21Mに結合された状態で窓部材21Lが成形物200とともに突き出されて挿入孔12bから取り出される。
【0134】
射出成形用金型1Cにおいては、観察穴23から窓部材21Lを通してキャビティ25Cへの溶融樹脂100の射出状態を観察することにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25Cに射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ25Cに射出される溶融樹脂100の流速や温度等の条件を設定することが可能である。
【0135】
また、射出成形用金型1Cにあっては、窓部材21Lと窓部材21Mによってキャビティ25Cが形成されており、窓部材21Lと窓部材21Mが樹脂であるためキャビティ25Cの形成を容易に行うことが可能である。従って、キャビティ25Cを所望の形状に形成することにより、キャビティ25Cを必要とされる成形物200の形状に応じて容易に形成することができ、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0136】
さらに、窓部材21Lと窓部材21Mを用いることにより、成形物200の成形状態の評価を行うことができ、評価結果に応じてキャビティ25Cの形状を任意に変更することもできる。
【0137】
さらにまた、固定型2Cと可動型3Cが突き合わされた状態において窓部材21Lが固定型2の挿入孔5bに挿入され窓部材21Mが可動型3の挿入孔12bに挿入されるため、窓部材21Lと窓部材21Mの高い強度及び安定した保持状態を確保した上でキャビティ25Cに溶融樹脂100を充填することができる。
【0138】
一方、成形物200を形成する準備段階として成形条件の設定等を行う場合には、窓部材21Lと窓部材21Mに代えて金属型28、29を使用してもよい(図12参照)。金属型28、29は溶融樹脂100の複数回の射出を行う連続成形時に繰り返し使用することが可能であり、溶融樹脂100の射出圧や流速等の成形条件の設定等を行う場合の他、射出成形用金型1Cの昇温時や各部に滞留する溶融樹脂100の排出や置換等を行う場合にも使用することが可能である。
【0139】
固定型2Cと可動型3Cにはそれぞれ締結用のボルト穴が形成されており、金属型28は、例えば、ボルト30、30、・・・等の固定部材がボルト穴に螺合されることにより固定型2Cに固定され、金属型29は、例えば、ボルト30、30、・・・等の固定部材がボルト穴に螺合されることによりに可動型3Cに固定される。
【0140】
金属型28は窓部材21Lと略同様の構成にされている。金属型28には下方に開口されたキャビティ用凹部28aと上下に貫通された流入孔28bとが形成されている。
【0141】
金属型29は窓部材21Mと略同様の構成にされている。金属型29には上方に突出されたキャビティ用凸部29aが設けられている。金属型29には上下に貫通されたピン挿通孔29b、29b、・・・が形成され、ピン挿通孔29b、29b、・・・にはそれぞれエジェクタピン19、19、・・・が挿通される。エジェクタピン19は駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面がキャビティ用凸部29aの上面に一致されている。
【0142】
金属型29にはピン挿通孔29b、29b、・・・の周囲の位置に上下に貫通された外側挿通孔29c、29c、・・・が形成され、外側挿通孔29c、29c、・・・はキャビティ25Cに連通されていない。外側挿通孔29c、29c、・・・の真下にはそれぞれ可動ピン20、20、・・・が位置され、可動ピン20、20、・・・は駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面が連結プレート11の上面に一致されている。
【0143】
金属型28、29が用いられた場合に、キャビティ25Cに充填された溶融樹脂100が冷却されて固化されると、可動型3Cが下方へ移動されて金属型29と成形物200とともに固定型2Cから離隔され固定型2Cと可動型3Cが離型される。
【0144】
固定型2Cと可動型3Cが離型されると、駆動プレート17の移動に伴ってエジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が同時に上方へ移動される。エジェクタピン19、19、・・・が上方へ移動されることにより、成形物200が突き出されて金属型29から取り出される。このとき可動ピン20、20、・・・は金属型29の外側挿通孔29c、29c、・・・に挿入される。
【0145】
尚、上記には、窓部材21Lと窓部材21Mの二つの窓部材によってキャビティ25Cが形成される例を示したが、三つ以上の窓部材によってキャビティが形成されてもよい。
【0146】
<第5の実施の形態に係る射出成形用金型>
次に、第5の実施の形態に係る射出成形用金型1Dについて説明する(図13参照)。
【0147】
尚、以下に示す射出成形用金型1Dは、上記した射出成形用金型1と比較して、窓部材の配置される向きが異なること、観察穴から反射面を通してキャビティの視認が可能なこと及び観察穴が固定型にのみ形成されていることのみが相違する。従って、以下の射出成形用金型1Dの説明においては、射出成形用金型1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については射出成形用金型1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0148】
射出成形用金型1Dは固定型2Dと可動型3Dを有している。
【0149】
固定型2Dは固定側取付板4と固定側キャビティプレート5Dを有している。
【0150】
固定側キャビティプレート5Dにはキャビティ用凹部5aと観察用凹部5cが形成されていない。固定側キャビティプレート5Dには挿入孔5bの側方における他方に連続して下方に開口されたランナ用凹部5fが形成されている。
【0151】
固定側キャビティプレート5Dには観察穴23Dが形成されている。観察穴23Dは直交する方向に屈曲され、左右に延びる第1の空間23aと上下に延びる第2の空間23bとを有している。固定側キャビティプレート5Dには第1の空間23aと第2の空間23bの連続部分に反射面23cが形成されている。第1の空間23aは一端が側面2aに開口され、第2の空間23bは一端が挿入孔5bに連通されている。
【0152】
反射面23cは左右方向及び上下方向に対して傾斜され、例えば、アクリル等の反射成分がスプレー等によって固定側キャビティプレート5Dの所定の面に吹き付けられることにより形成されたり、ステンレス板が固定側キャビティプレート5Dの所定の面に貼り付けられたり、銀の溶液が固定側キャビティプレート5Dの所定の面に塗布されたりすることにより形成されている。
【0153】
可動型3Dは可動側取付板10と可動側キャビティプレート12Dと連結板13を有し、可動型3Dには連結プレート11が設けられていない。可動型3Dには可動側取付板10と可動側キャビティプレート12Dと連結板13によって内部に配置空間9が形成されている。
【0154】
可動側キャビティプレート12Dにはキャビティ用凹部12aと挿入孔12bと観察用凹部12cとランナ用凹部12dの何れも形成されていない。
【0155】
エジェクタピン19と可動ピン20は可動側キャビティプレート12Dに摺動自在に支持され、駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面が可動側キャビティプレート12Dの上面に一致されている。
【0156】
固定型2Dには挿入孔5bに窓部材21Dが挿入されて配置される。窓部材21Dは、例えば、厚み方向が固定型2Dと可動型3Dの離接方向に一致する方向にされた略矩形の板状(直方体状)に形成され、透明な樹脂材料によって形成されている。窓部材21Dには下方に開口されたキャビティ用凹部21hが形成されている。
【0157】
上記のように構成された射出成形用金型1Dにおいて、固定型2Dと可動型3Dが突き合わされると、固定型2Dのランナ用凹部5fが溶融樹脂の流路であるランナ24Dとして形成され、ランナ24Dにスプル7の内部の空間が連通される。また、可動型2Dと固定型3Dが突き合わされことにより、窓部材21Dの下面が可動側キャビティプレート12Dの上面に密着され、窓部材21Dのキャビティ用凹部21hがキャビティ25Dとして形成される。キャビティ25Dはランナ24Dに連通される。
【0158】
キャビティ25Dへの溶融樹脂100の射出時には、作業者が観察穴23Dから反射面23cを介し窓部材21Dを通して窓部材21Dの厚み方向においてキャビティ25Dの状態を矢印A方向から視認することができ、キャビティ25Dへの溶融樹脂100の射出状態を観察することができる。
【0159】
このように射出成形用金型1Dにおいては、窓部材21Dを通して窓部材21Dの厚み方向においてキャビティ25Dの状態を視認することができるため、視認可能な面積が大きくなり、キャビティ25Dへの溶融樹脂100の射出状態に関する高い視認性を確保することができる。
【0160】
溶融樹脂100のキャビティ25Dへ向けての供給が停止されると、一定時間経過後に、キャビティ25Dに充填された溶融樹脂100が冷却されて固化され成形物200が形成される。
【0161】
キャビティ25Dに充填された溶融樹脂100が冷却されて固化されると、可動型3Dが下方へ移動されて窓部材21Dと成形物200とともに固定型2Dから離隔され固定型2Dと可動型3Dが離型される。
【0162】
固定型2Dと可動型3Dが離型されると、駆動プレート17が駆動ロッドの駆動力によって上方へ移動され、駆動プレート17の移動に伴ってエジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が同時に上方へ移動される。エジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が上方へ移動されることにより、成形物200と窓部材21Dが突き出されて可動型3Dから取り出される。
【0163】
可動型3Dから成形物200と窓部材21Dが取り出されると、挿入孔5bには新たな窓部材21Dが挿入されて窓部材21Dの交換が行われる。従って、窓部材21Dは一つの成形物200が形成される溶融樹脂100のワンショット毎に新たな窓部材21Dに交換される。
【0164】
射出成形用金型1Dにおいては、観察穴23Dから窓部材21Dを通してキャビティ25Dへの溶融樹脂100の射出状態を観察することにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25Dに射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ25Dに射出される溶融樹脂100の流速や温度等の条件を設定することが可能である。
【0165】
また、射出成形用金型1Dにあっては、観察穴23Dから反射面23cを介して窓部材21Dを通してキャビティ25Dの状態を視認することが可能な構成にされているため、反射面23cの位置や向きや大きさを変更することにより作業者において最適な視認性を確保することができる。
【0166】
さらに、射出成形用金型1Dにおいては、窓部材21Dの厚み方向が固定型2Dと可動型3Dの離接方向に一致する方向にされているため、窓部材21Dの向きが固定型2Dと可動型3Dの離接方向に対して最適化され、製品として使用される成形品を形成するときの成形作業において最適化を図ることができる。
【0167】
一方、成形物200を形成する準備段階として成形条件の設定等を行う場合には、窓部材21Dに代えて窓部材21Dと同じ形状及び同じ大きさに形成され固定型2Dにボルト等によって固定される図示しない金属型を使用してもよい。金属型は溶融樹脂100の複数回の射出を行う連続成形時に繰り返し使用することが可能であり、溶融樹脂100の射出圧や流速等の成形条件の設定等を行う場合の他、射出成形用金型1Dの昇温時や各部に滞留する溶融樹脂100の排出や置換等を行う場合にも使用することが可能である。
【0168】
尚、射出成形用金型1Dには、ボルトが螺合される締結用のボルト穴が形成されているが、ボルト穴の説明及び図示は省略し、以下の第6の実施の形態乃至第8の実施の形態においても同様にボルト穴の説明及び図示は省略する。
【0169】
また、上記した射出成形用金型1Dにおいては、窓部材21Dのキャビティ用凹部21hがキャビティ25Dとして形成される例を示したが、例えば、可動型3Dがキャビティ用凹部を有し窓部材21Dのキャビティ用凹部21hと可動型3Dのキャビティ用凹部によってキャビティ25Dが形成されてもよい。また、キャビティ用凹部21hに代えて可動型3Dにキャビティ用凹部が形成され、可動型3Dのキャビティ用凹部がキャビティ25Dとして形成されてもよい。
【0170】
<第6の実施の形態に係る射出成形用金型>
次に、第6の実施の形態に係る射出成形用金型1Eについて説明する(図14参照)。
【0171】
尚、以下に示す射出成形用金型1Eは、上記した射出成形用金型1と比較して、窓部材の配置される向きが異なること、観察穴から反射面を通してキャビティの視認が可能なこと及び観察穴が可動型にのみ形成されていることのみが相違する。従って、以下の射出成形用金型1Eの説明においては、射出成形用金型1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については射出成形用金型1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0172】
射出成形用金型1Eは固定型2Eと可動型3Eを有している。
【0173】
固定型2Eは固定側取付板4と固定側キャビティプレート5Eを有している。
【0174】
固定側キャビティプレート5Eにはキャビティ用凹部5aと挿入孔5bと観察用凹部5cの何れもが形成されていない。
【0175】
可動型3Eは可動側取付板10と可動側キャビティプレート12Eと連結板13を有し、可動型3Eには連結プレート11が設けられていない。可動型3Eには可動側取付板10と可動側キャビティプレート12Eと連結板13によって内部に配置空間9が形成されている。
【0176】
可動側キャビティプレート12Eには挿入孔12bの側方における他方に連続して上方に開口されたランナ用凹部12dが形成されている。可動側キャビティプレート12Eにはキャビティ用凹部12aと観察用凹部12cが形成されていない。
【0177】
可動側キャビティプレート12Eには観察穴23Eが形成されている。観察穴23Eは直交する方向に屈曲され、左右に延びる第1の空間23dと上下に延びる第2の空間23eとを有している。可動側キャビティプレート12Eには第1の空間23dと第2の空間23eの連続部分に反射面23fが形成されている。第1の空間23dは一端が側面3aに開口され、第2の空間23eは一端が挿入孔12bに連通されている。
【0178】
反射面23fは左右方向及び上下方向に対して傾斜され、例えば、アクリル等の反射成分がスプレー等によって可動側キャビティプレート12Eの所定の面に吹き付けられることにより形成されたり、ステンレス板が可動側キャビティプレート12Eの所定の面に貼り付けられたり、銀の溶液が可動側キャビティプレート12Eの所定の面に塗布されたりすることにより形成されている。
【0179】
エジェクタピン19と可動ピン20は可動側キャビティプレート12Eに摺動自在に支持され、駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面が挿入孔12bを形成する底面又はランナ用凹部12dを形成する底面に一致されている。
【0180】
可動型3Eには挿入孔12bに窓部材21Eが挿入されて配置される。窓部材21Eは、例えば、厚み方向が固定型2Eと可動型3Eの離接方向に一致する方向にされた略矩形の板状(直方体状)に形成され、透明な樹脂材料によって形成されている。窓部材21Eには上方に開口されたキャビティ用凹部21iが形成されている。
【0181】
上記のように構成された射出成形用金型1Eにおいて、固定型2Eと可動型3Eが突き合わされると、固定型2Eのランナ用凹部12dが溶融樹脂の流路であるランナ24として形成され、ランナ24にスプル7の内部の空間が連通される。このとき窓部材21Eの上面が固定側キャビティプレート5Eの下面に密着され、窓部材21Eのキャビティ用凹部21iがキャビティ25Eとして形成される。キャビティ25Eはランナ24に連通される。
【0182】
キャビティ25Eへの溶融樹脂100の射出時には、作業者が観察穴23Eから反射面23fを介し窓部材21Eを通して窓部材21Eの厚み方向においてキャビティ25Eの状態を矢印A方向から視認することができ、キャビティ25Eへの溶融樹脂100の射出状態を観察することができる。
【0183】
このように射出成形用金型1Eにおいては、窓部材21Eを通して窓部材21Eの厚み方向においてキャビティ25Eの状態を視認することができるため、視認可能な面積が大きくなり、キャビティ25Eへの溶融樹脂100の射出状態に関する高い視認性を確保することができる。
【0184】
溶融樹脂100のキャビティ25Eへ向けての供給が停止されると、一定時間経過後に、キャビティ25Eに充填された溶融樹脂100が冷却されて固化され成形物200が形成される。
【0185】
キャビティ25Eに充填された溶融樹脂100が冷却されて固化されると、可動型3Eが下方へ移動されて窓部材21Eと成形物200とともに固定型2Eから離隔され固定型2Eと可動型3Eが離型される。
【0186】
固定型2Eと可動型3Eが離型されると、駆動プレート17が駆動ロッドの駆動力によって上方へ移動され、駆動プレート17の移動に伴ってエジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が同時に上方へ移動される。エジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が上方へ移動されることにより、成形物200と窓部材21Eが突き出されて可動型3Eから取り出される。
【0187】
可動型3Eから成形物200と窓部材21Eが取り出されると、挿入孔12bには新たな窓部材21Eが挿入されて窓部材21Eの交換が行われる。従って、窓部材21Eは一つの成形物200が形成される溶融樹脂100のワンショット毎に新たな窓部材21Eに交換される。
【0188】
射出成形用金型1Eにおいては、観察穴23Eから窓部材21Eを通してキャビティ25Eへの溶融樹脂100の射出状態を観察することにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25Eに射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ25Eに射出される溶融樹脂100の流速や温度等の条件を設定することが可能である。
【0189】
また、射出成形用金型1Eにあっては、観察穴23Eから反射面23fを介して窓部材21Eを通してキャビティ25Eの状態を視認することが可能な構成にされているため、反射面23fの位置や向きや大きさを変更することにより作業者において最適な視認性を確保することができる。
【0190】
さらに、射出成形用金型1Eにおいては、窓部材21Eの厚み方向が固定型2Eと可動型3Eの離接方向に一致する方向にされているため、窓部材21Eの向きが固定型2Eと可動型3Eの離接方向に対して最適化され、製品として使用される成形品を形成するときの成形作業において最適化を図ることができる。
【0191】
一方、成形物200を形成する準備段階として成形条件の設定等を行う場合には、窓部材21Eに代えて窓部材21Eと同じ形状及び同じ大きさに形成され可動型3Eにボルト等によって固定される図示しない金属型を使用してもよい。金属型は溶融樹脂100の複数回の射出を行う連続成形時に繰り返し使用することが可能であり、溶融樹脂100の射出圧や流速等の成形条件の設定等を行う場合の他、射出成形用金型1Eの昇温時や各部に滞留する溶融樹脂100の排出や置換等を行う場合にも使用することが可能である。
【0192】
尚、上記した射出成形用金型1Eにおいては、窓部材21Eのキャビティ用凹部21iがキャビティ25Eとして形成される例を示したが、例えば、固定型2Eがキャビティ用凹部を有し窓部材21Eのキャビティ用凹部21iと固定型2Eのキャビティ用凹部によってキャビティ25Eが形成されてもよい。また、キャビティ用凹部21iに代えて固定型2Eにキャビティ用凹部が形成され、固定型2Eのキャビティ用凹部がキャビティ25Eとして形成されてもよい。
【0193】
<第7の実施の形態に係る射出成形用金型>
次に、第7の実施の形態に係る射出成形用金型1Fについて説明する(図15参照)。
【0194】
尚、以下に示す射出成形用金型1Fは、上記した射出成形用金型1と比較して、二つの窓部材によってキャビティを形成すること、窓部材の配置される向きが異なること、観察穴から反射面を通してキャビティの視認が可能なこと及び二つの観察穴が形成されていることのみが相違する。従って、以下の射出成形用金型1Fの説明においては、射出成形用金型1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については射出成形用金型1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0195】
射出成形用金型1Fは固定型2Fと可動型3Fを有している。
【0196】
固定型2Fは固定側取付板4と固定側キャビティプレート5Fを有している。
【0197】
固定側キャビティプレート5Fにはキャビティ用凹部5aと挿入孔5bと観察用凹部5cの何れもが形成されていない。
【0198】
固定側キャビティプレート5Fには観察穴23Fが形成されている。観察穴23Fは直交する方向に屈曲され、左右に延びる第1の空間23gと上下に延びる第2の空間23hとを有している。固定側キャビティプレート5Fには第1の空間23gと第2の空間23hの連続部分に反射面23iが形成されている。第1の空間23gは一端が側面2aに開口され、第2の空間23hは一端が固定側キャビティプレート5Fの下面に開口されている。
【0199】
反射面23iは左右方向及び上下方向に対して傾斜され、例えば、アクリル等の反射成分がスプレー等によって固定側キャビティプレート5Fの所定の面に吹き付けられることにより形成されたり、ステンレス板が固定側キャビティプレート5Fの所定の面に貼り付けられたり、銀の溶液が固定側キャビティプレート5Fの所定の面に塗布されたりすることにより形成されている。
【0200】
可動型3Fは可動側取付板10と連結プレート11と可動側キャビティプレート12Fと連結板13を有している。
【0201】
可動側キャビティプレート12Fには、挿入孔12bの側方における他方に連続して上方に開口されたランナ用凹部12dが形成され、挿入孔12bの側方における一方に連続して上方及び側方に開口された観察用凹部12cが形成されている。観察用凹部12cは可動型3Fの側面3aに開口されている。可動側キャビティプレート12Fにはキャビティ用凹部12aが形成されていない。
【0202】
可動型3Fにはそれぞれ透明な樹脂材料によって形成された窓部材21Pと窓部材21Qが配置される。窓部材21Pと窓部材21Qは、例えば、厚み方向が固定型2Fと可動型3Fの離接方向に一致する方向にされた略矩形の板状(直方体状)に形成されている。窓部材21Qには上方に開口されたキャビティ用凹部21jが形成されている。窓部材21Qには上下に貫通されたピン挿通孔21k、21k、・・・が形成され、ピン挿通孔21k、21k、・・・は上端がキャビティ用凹部21jを形成する底面に開口され下端が窓部材21Qの下面に開口されている。
【0203】
窓部材21Pと窓部材21Qは、例えば、結合ピン31、31、・・・等によって上下で結合されている。窓部材21Pと窓部材21Qが結合されることにより、キャビティ用凹部21jがキャビティ25Fとして形成される。窓部材21Qは窓部材21Pと結合された状態で可動型3Fの挿入孔12bに挿入されて配置される。窓部材21Qが挿入孔12bに挿入された状態においては、エジェクタピン19、19、・・・がそれぞれピン挿通孔21k、21k、・・・に挿入される。エジェクタピン19は駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面がキャビティ用凹部21jを形成する底面又はランナ用凹部12dを形成する底面に一致されている。
【0204】
上記のように構成された射出成形用金型1Fにおいて、可動型3Fが固定型2Fに対して上方へ移動され固定型2Fと可動型3Fが突き合わされると、観察用凹部12cが観察穴23Pとして形成される。観察穴23Pは可動型3Fの側面3aに開口されている。固定型2Fと可動型3Fが突き合わされると、ランナ用凹部12dがスプル7の内部の空間に連通され、ランナ用凹部12dがランナ24Fとして形成される。キャビティ25Fはランナ24Fに連通される。
【0205】
固定型2Fと可動型3Fが突き合わされると、供給ノズルから溶融樹脂100がスプル7に供給される。溶融樹脂100はスプル7からランナ24Fを通してキャビティ25Fに射出され、キャビティ25Fに溶融樹脂100が充填される。
【0206】
キャビティ25Fへの溶融樹脂100の射出時には、作業者が観察穴23Fから窓部材21Pを通して窓部材21Pの厚み方向においてキャビティ25Fの状態を矢印A方向から視認することができると共に観察穴23Pから窓部材21P及び窓部材21Qを通して厚み方向に直交する方向においてキャビティ25Fの状態を矢印B方向から視認することができ、キャビティ25Fへの溶融樹脂100の射出状態を異なる2方向から観察することができる。
【0207】
このように射出成形用金型1Fにおいては、窓部材21Pを通して窓部材21Pの厚み方向においてキャビティ25Fの状態を視認することができるため、視認可能な面積が大きくなり、キャビティ25Fへの溶融樹脂100の射出状態に関する高い視認性を確保することができる。
【0208】
キャビティ25Fに充填された溶融樹脂100が冷却されて固化されると、可動型3Fが下方へ移動されて窓部材21Pと窓部材21Qが成形物200とともに固定型2Fから離隔され固定型2Fと可動型3Fが離型される。
【0209】
固定型2Fと可動型3Fが離型されると、駆動プレート17が上方へ移動され、駆動プレート17の移動に伴ってエジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が同時に上方へ移動される。エジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が上方へ移動されることにより、窓部材21Qと窓部材21Pが結合された状態で成形物200とともに突き出されて挿入孔12bから取り出される。
【0210】
このように射出成形用金型1Fにあっては、窓部材21Pと窓部材21Qによってキャビティ25Fが形成されており、窓部材21Pと窓部材21Qが樹脂であるためキャビティ25Fの形成を容易に行うことが可能である。従って、キャビティ25Fを所望の形状に形成することにより、キャビティ25Fを必要とされる成形物200の形状に応じて容易に形成することができ、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0211】
また、射出成形用金型1Fにおいては、観察穴23Fと観察穴23Pから窓部材21Pと窓部材21Qを通してキャビティ25Fへの溶融樹脂100の射出状態を観察することにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25Fに射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ25Fに射出される溶融樹脂100の流速や温度等の条件を設定することが可能である。
【0212】
さらに、窓部材21Pと窓部材21Qを用いることにより、成形物200の成形状態の評価を行うこともでき、評価結果に応じてキャビティ25Fの形状を任意に変更することもできる。
【0213】
さらにまた、射出成形用金型1Fにあっては、観察穴23Fから反射面23iを介して窓部材21Pを通してキャビティ25Fの状態を視認することが可能な構成にされているため、反射面23iの位置や向きや大きさを変更することにより作業者において最適な視認性を確保することができる。
【0214】
また、射出成形用金型1Fにおいては、窓部材21Pと窓部材21Qの厚み方向が固定型2Eと可動型3Eの離接方向に一致する方向にされているため、窓部材21Pと窓部材21Qの向きが固定型2Eと可動型3Eの離接方向に対して最適化され、製品として使用される成形品を形成するときの成形作業において最適化を図ることができる。
【0215】
加えて、観察穴23Fと観察穴23Pによりキャビティ25Fの状態を異なる2方向から視認することができるため、キャビティ25Fに射出される溶融樹脂100の流動状態に対する高い視認性を確保することができる。
【0216】
一方、成形物200を形成する準備段階として成形条件の設定等を行う場合には、窓部材21Pと窓部材21Qに代えて窓部材21Pと窓部材21Qとそれぞれ同じ形状及び同じ大きさに形成され固定型2F又は可動型3Fにボルト等によって固定される二つの金属型を使用してもよい。これらの金属型は溶融樹脂100の複数回の射出を行う連続成形時に繰り返し使用することが可能であり、溶融樹脂100の射出圧や流速等の成形条件の設定等を行う場合の他、射出成形用金型1Fの昇温時や各部に滞留する溶融樹脂100の排出や置換等を行う場合にも使用することが可能である。
【0217】
尚、上記には、窓部材21Pと窓部材21Qの二つの窓部材によってキャビティ25Fが形成される例を示したが、三つ以上の窓部材によってキャビティが形成されてもよい。
【0218】
<第8の実施の形態に係る射出成形用金型>
次に、第8の実施の形態に係る射出成形用金型1Gについて説明する(図16及び図17参照)。
【0219】
尚、以下に示す射出成形用金型1Gは、上記した射出成形用金型1と比較して、二つの窓部材によってキャビティを形成すること、窓部材の配置される向きが異なること、観察穴から反射面を通してキャビティの視認が可能なこと及び三つの観察穴が形成されていることのみが相違する。従って、以下の射出成形用金型1Gの説明においては、射出成形用金型1と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については射出成形用金型1における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0220】
射出成形用金型1Gは固定型2Gと可動型3Gを有している(図16参照)。
【0221】
固定型2Gは固定側取付板4と固定側キャビティプレート5Gを有している。
【0222】
固定側キャビティプレート5Gには挿入孔5bと観察用凹部5cが形成されている。観察用凹部12cは挿入孔12bの側方における一方に連続し下方及び側方に開口され、固定型2Gの側面2aに開口されている。固定側キャビティプレート5Gにはキャビティ用凹部5aが形成されていない。
【0223】
固定側キャビティプレート5Gには観察穴23Gが形成されている。観察穴23Gは直交する方向に屈曲され、左右に延びる第1の空間23lと上下に延びる第2の空間23mとを有している。固定側キャビティプレート5Gには第1の空間23lと第2の空間23mの連続部分に反射面23nが形成されている。第1の空間23lは一端が側面2aに開口され、第2の空間23mは一端が挿入孔5bに開口されている。
【0224】
反射面23nは左右方向及び上下方向に対して傾斜され、例えば、アクリル等の反射成分がスプレー等によって固定側キャビティプレート5Gの所定の面に吹き付けられることにより形成されたり、ステンレス板が固定側キャビティプレート5Gの所定の面に貼り付けられたり、銀の溶液が固定側キャビティプレート5Gの所定の面に塗布されたりすることにより形成されている。
【0225】
可動型3Gは可動側取付板10と可動側キャビティプレート12Gと連結板13を有している。可動型3Gには連結プレート11が設けられていない。可動型3Gには可動側取付板10と可動側キャビティプレート12Gと連結板13によって内部に配置空間9が形成されている。
【0226】
可動側キャビティプレート12Gには、挿入孔12bの側方における他方に連続して上方に開口されたランナ用凹部12dが形成され、挿入孔12bの側方における一方に連続して上方及び側方に開口された観察用凹部12cが形成されている。観察用凹部12cは可動型3Gの側面3aに開口されている。可動側キャビティプレート12Gにはキャビティ用凹部12aが形成されていない。
【0227】
可動側キャビティプレート12Gには観察穴23Qが形成されている。観察穴23Qは直交する方向に屈曲され、左右に延びる第1の空間23oと上下に延びる第2の空間23pとを有している。可動側キャビティプレート12Gには第1の空間23oと第2の空間23pの連続部分に反射面23qが形成されている。第1の空間23oは一端が側面3aに開口され、第2の空間23pは一端が挿入孔12bに開口されている。
【0228】
反射面23qは左右方向及び上下方向に対して傾斜され、例えば、アクリル等の反射成分がスプレー等によって可動側キャビティプレート12Gの所定の面に吹き付けられることにより形成されたり、ステンレス板が可動側キャビティプレート12Gの所定の面に貼り付けられたり、銀の溶液が可動側キャビティプレート12Gの所定の面に塗布されたりすることにより形成されている。
【0229】
射出成形用金型1Gにはそれぞれ透明な樹脂材料によって形成された窓部材21Vと窓部材21Wが配置される。窓部材21Vと窓部材21Wは、例えば、厚み方向が固定型2Gと可動型3Gの離接方向に一致する方向にされた略矩形の板状(直方体状)に形成されている。窓部材21Wには上方に開口されたキャビティ用凹部21lが形成されている。窓部材21Wには上下に貫通されたピン挿通孔21m、21m、・・・が形成され、ピン挿通孔21m、21m、・・・は上端がキャビティ用凹部21lを形成する底面に開口され下端が窓部材21Wの下面に開口されている。
【0230】
窓部材21Vと窓部材21Wは、例えば、結合ピン32、32、・・・等によって上下で結合されている。窓部材21Vと窓部材21Wが結合されることにより、キャビティ用凹部21lがキャビティ25Gとして形成される。窓部材21Wは窓部材21Vと結合された状態で可動型3Gの挿入孔12bに挿入されて配置される。窓部材21Wが挿入孔12bに挿入された状態においては、エジェクタピン19、19、・・・がそれぞれピン挿通孔21m、21m、・・・に挿入される。エジェクタピン19は駆動プレート17が下方の移動端に位置されている状態において上面がキャビティ用凹部21lを形成する底面又はランナ用凹部12dを形成する底面に一致されている。
【0231】
上記のように構成された射出成形用金型1Gにおいて、可動型3Gが固定型2Gに対して上方へ移動され固定型2Gと可動型3Gが突き合わされると、観察用凹部5cと観察用凹部12cによって観察穴23Rが形成される。固定型2Gと可動型3Gが突き合わされると、ランナ用凹部12dがスプル7の内部の空間に連通され、ランナ用凹部12dがランナ24Gとして形成される。キャビティ25Gはランナ24Gに連通される。
【0232】
固定型2Gと可動型3Gが突き合わされると、供給ノズルから溶融樹脂100がスプル7に供給される。溶融樹脂100はスプル7からランナ24Gを通してキャビティ25Gに射出され、キャビティ25Gに溶融樹脂100が充填される。
【0233】
キャビティ25Gへの溶融樹脂100の射出時には、作業者が観察穴23Gから窓部材21Vを通して窓部材21Vの厚み方向においてキャビティ25Gの状態を矢印A方向から視認することができると共に観察穴23Rから窓部材21V及び窓部材21Wを通して厚み方向に直交する方向においてキャビティ25Gの状態を矢印B方向から視認することができると共に観察穴23Qから窓部材21Wを通して窓部材21Wの厚み方向においてキャビティ25Gの状態を矢印C方向から視認することができ、キャビティ25Gへの溶融樹脂100の射出状態を異なる3方向から観察することができる。
【0234】
このように射出成形用金型1Gにおいては、窓部材21Vを通して窓部材21Vの厚み方向においてキャビティ25Gの状態を視認することができると共に窓部材21Wを通して窓部材21Wの厚み方向においてもキャビティ25Gの状態を視認することができるため、視認可能な面積が大きくなり、キャビティ25Gへの溶融樹脂100の射出状態に関する高い視認性を確保することができる。
【0235】
また、射出成形用金型1Gにおいては、観察穴23Gと観察穴23Qと観察穴23Rから窓部材21Vと窓部材21Wを通してキャビティ25Gへの溶融樹脂100の射出状態を観察することにより、成形物200の成形状態の評価やキャビティ25Gに射出される溶融樹脂100の評価を行うことができ、これらの評価結果に応じてキャビティ25Gに射出される溶融樹脂100の流速や温度等の条件を設定することが可能である。
【0236】
キャビティ25Gに充填された溶融樹脂100が冷却されて固化されると、可動型3Gが下方へ移動されて窓部材21Vと窓部材21Wが成形物200とともに固定型2Gから離隔され固定型2Gと可動型3Gが離型される。
【0237】
固定型2Gと可動型3Gが離型されると、駆動プレート17が上方へ移動され、駆動プレート17の移動に伴ってエジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が同時に上方へ移動される。エジェクタピン19、19、・・・と可動ピン20、20、・・・が上方へ移動されることにより、窓部材21Wと窓部材21Vが結合された状態で成形物200とともに突き出されて挿入孔12bから取り出される。
【0238】
このように射出成形用金型1Gにあっては、窓部材21Vと窓部材21Wによってキャビティ25Gが形成されており、窓部材21Vと窓部材21Wが樹脂であるためキャビティ25Gの形成を容易に行うことが可能である。従って、キャビティ25Gを所望の形状に形成することにより、キャビティ25Gを必要とされる成形物200の形状に応じて容易に形成することができ、設計の自由度の向上を図ることができる。
【0239】
また、窓部材21Vと窓部材21Wを用いることにより、成形物200の成形状態の評価を行うこともでき、評価結果に応じてキャビティ25Gの形状を任意に変更することもできる。
【0240】
さらに、射出成形用金型1Gにあっては、観察穴23Gと観察穴23Qからそれぞれ反射面23nと反射面23qを介して窓部材21Vと窓部材21Wを通してキャビティ25Gの状態を視認することが可能な構成にされているため、反射面23nと反射面23qの位置や向きや大きさを変更することにより作業者において最適な視認性を確保することができる。
【0241】
さらにまた、射出成形用金型1Gにおいては、窓部材21Vと窓部材21Wの厚み方向が固定型2Gと可動型3Gの離接方向に一致する方向にされているため、窓部材21Vと窓部材21Wの向きが固定型2Gと可動型3Gの離接方向に対して最適化され、製品として使用される成形品を形成するときの成形作業において最適化を図ることができる。
【0242】
加えて、観察穴23Gと観察穴23Qと観察穴23Rによりキャビティ25Gの状態を異なる3方向から視認することができるため、キャビティ25Gに射出される溶融樹脂100の流動状態に対するより高い視認性を確保することができる。
【0243】
また、固定型2Gと可動型3Gが突き合わされた状態において窓部材21Vが固定型2Gの挿入孔5bに挿入され窓部材21Wが可動型3Gの挿入孔12bに挿入されるため、窓部材21Vと窓部材21Wの高い強度及び安定した保持状態を確保した上でキャビティ25Gに溶融樹脂100を充填することができる。
【0244】
一方、成形物200を形成する準備段階として成形条件の設定等を行う場合には、窓部材21Vと窓部材21Wに代えて窓部材21Vと窓部材21Wとそれぞれ同じ形状及び同じ大きさに形成され固定型2G又は可動型3Gにボルト等によって固定される二つの金属型を使用してもよい。これらの金属型は溶融樹脂100の複数回の射出を行う連続成形時に繰り返し使用することが可能であり、溶融樹脂100の射出圧や流速等の成形条件の設定等を行う場合の他、射出成形用金型1Gの昇温時や各部に滞留する溶融樹脂100の排出や置換等を行う場合にも使用することが可能である。
【0245】
尚、上記には、固定型2Gと可動型3Gの離接方向に並んで位置された三つの観察穴23Gと観察穴23Rと観察穴23Qが形成された射出成形用金型1Gの例を示したが、例えば、三つの観察穴23Gと観察穴23Rと観察穴23Qが固定型2Gと可動型3Gの離接方向に直交する方向に並んで位置されてもよい(図17参照)。この場合に、観察穴23Gと観察穴23Rと観察穴23Qが可動型3Gに形成されていてもよく、観察穴23Gと観察穴23Rと観察穴23Qの少なくとも一つが固定型2Gと可動型3Gに亘る位置に形成されていてもよい。
【0246】
この場合にも観察穴23Gと観察穴23Qと観察穴23Rによりキャビティ25Gの状態を異なる3方向から視認することができるため、キャビティ25Gに射出される溶融樹脂100の流動状態に対するより高い視認性を確保することができる。
【0247】
また、2方向から観察可能な構成(図15参照)と3方向から観察可能な構成(図17参照)とを組み合わせて4方向から観察可能な構成とされてもよく、また、3方向から観察可能な構成(図16参照)と3方向から観察可能な構成(図17参照)とを組み合わせて5方向から観察可能な構成とされてもよい。
【0248】
これらの場合には観察方向が一層多くなり、溶融樹脂100の流動状態に対するより一層高い視認性を確保することができる。
【0249】
尚、上記には、窓部材21Vと窓部材21Wの二つの窓部材によってキャビティ25Gが形成される例を示したが、三つ以上の窓部材によってキャビティが形成されてもよい。
【0250】
<まとめ>
以上に記載した通り、射出成形用金型1(射出成形用金型1A乃至射出成形用金型1Gを含む。以下、同じ。)にあっては、透明な樹脂材料によって形成された窓部材21(窓部材21A乃至窓部材21Wを含む。以下、同じ。)が可動型3(可動型3A乃至可動型3Gを含む。以下、同じ。)に対して着脱可能にされ、窓部材21を通してキャビティ25(キャビティ25A乃至キャビティ25Gを含む。以下、同じ。)を視認可能な観察穴23(観察穴23A乃至観察穴23Rを含む。以下、同じ。)が形成され、固定型2と可動型3の離型時に取出部材によって窓部材21が可動型3から取り出される。
【0251】
従って、透明な樹脂材料によって形成された窓部材21を介して観察穴23からキャビティ25を視認することが可能にされると共に固定型2と可動型3の離型時に取出部材によって可動型3から取り出される窓部材21を新たな窓部材21に交換することが可能にされる。これにより、製造コストの高騰や機械的な衝撃による不具合の発生を来すことなくキャビティ25に射出される溶融樹脂100の状態に関する高い視認性を確保することができる。
【0252】
特に、窓部材21が樹脂材料によって形成されているため、キャビティ25への溶融樹脂100の充填時における圧力によって窓部材21が変形したときに破断し難く、破断による破片の拡散を生じ難いと共に破片による安全性の低下を来し難い。
【0253】
また、窓部材21が樹脂材料によって形成されるため、市販の材料の切削加工等により窓部材21を容易に形成することが可能であり、窓部材21を低コストで容易かつ大量に形成することができる。
【0254】
さらに、窓部材21や金属型(金属型26、28、29を含む。)を用いて最適な成形条件の設定や滞留する溶融樹脂100の排出等を行うことが可能であるため、製品として使用される成形品の形成時に連続成形を行って成形品の生産性の向上を図ることができる。
【0255】
また、射出成形用金型1にあっては、取出部材として可動ピン20が設けられ、可動ピン20によって窓部材21が突き出されることにより可動型3から取り出される。
【0256】
従って、可動型3に対して移動可能な可動ピン30によって窓部材21が突き出されて可動型3から取り出されるため、簡素な構造によって窓部材21を可動型3から容易かつ確実に取り出すことができる。
【0257】
さらに、射出成形用金型1にあっては、キャビティ25に充填される溶融樹脂100が固化されることにより形成される成形物200を可動型3から突き出すエジェクタピン19が設けられ、エジェクタピン19と可動ピン20が可動型3に対して同時に移動され成形物200と窓部材21が可動型3から同時に取り出される。
【0258】
従って、エジェクタピン19と可動ピン20によって成形物200と窓部材21が時間差なく可動型3から取り出されるため、射出成形用金型1における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0259】
さらにまた、射出成形用金型1にあっては、可動型3に対して移動可能な駆動プレート17が設けられ、駆動プレート17にエジェクタピン19と可動ピン20が取り付けられ、エジェクタピン19と可動ピン20が駆動プレート17の移動に伴って同時に移動される。
【0260】
従って、エジェクタピン19と可動ピン20を移動させるための各別の駆動部を必要としないため、構造の簡素化及び部品点数の削減を図った上で射出成形用金型1における作業時間の短縮化を図ることができる。
【符号の説明】
【0261】
1 射出成形用金型
2 固定型
3 可動型
14 第1の保持部
15 第2の保持部
17 駆動プレート
19 エジェクタピン
20 可動ピン
21 窓部材
25 キャビティ
100 溶融樹脂
200 成形物
1A 射出成形用金型
2A 固定型
21A 窓部材
25A キャビティ
1B 射出成形用金型
2B 固定型
3B 可動型
21B 窓部材
25B キャビティ
1C 射出成形用金型
2C 固定型
3C 可動型
25C キャビティ
21L 窓部材
21M 窓部材
1D 射出成形用金型
2D 固定型
3D 可動型
21D 窓部材
25D キャビティ
23c 反射面
1E 射出成形用金型
2E 固定型
3E 可動型
21E 窓部材
25E キャビティ
23f 反射面
1F 射出成形用金型
2F 固定型
3F 可動型
25F キャビティ
21P 窓部材
21Q 窓部材
23i 反射面
1G 射出成形用金型
2G 固定型
3G 可動型
25G キャビティ
21V 窓部材
21W 窓部材
23n 反射面
23q 反射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17