(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】メマンチン経皮送達システム
(51)【国際特許分類】
A61K 31/13 20060101AFI20220512BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220512BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220512BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220512BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220512BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220512BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220512BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A61K31/13
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/12
A61P25/00
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2019504002
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(86)【国際出願番号】 US2017044051
(87)【国際公開番号】W WO2018022818
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-20
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503360296
【氏名又は名称】コリウム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リ, ウン ス
(72)【発明者】
【氏名】シン, パーミンダー
(72)【発明者】
【氏名】サギ, アパラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン, アミット ケー.
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-513447(JP,A)
【文献】国際公開第2007/129427(WO,A1)
【文献】特開平03-072416(JP,A)
【文献】特開2013-060395(JP,A)
【文献】特表2013-528631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムであって、
(a)使用者の皮膚に前記経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層、
(b)前記接触用粘着剤層に直接接する中間層、
(c)前記中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)メマンチンの塩、(ii)アルカリ塩、(iii)アクリレートコポリマー、(iv)
一価の飽和または不飽和のC
10~30
脂肪族アルコールである透過促進剤、および(v)親水性溶媒担体から構成される、薬物リザーバ層
を含み、
前記経皮送達システムの対象の皮膚への適用後に、前記メマンチンの塩と前記アルカリ塩との反応によってin situでメマンチン塩基が生成され、
前記薬物リザーバ層における前記アルカリ塩は、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、
シュウ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される、
経皮送達システム。
【請求項2】
前記アクリレートコポリマーが、アクリル酸/酢酸ビニルのコポリマーを含む、請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項3】
前記
透過促進剤が、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される、請求項2に記載の経皮送達システム。
【請求項4】
前記担体が、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項5】
前記皮膚接触用粘着剤層が、透過促進剤をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項6】
前記薬物リザーバが、ポリビニルピロリドン(PVP)もしくはポリビニルアルコール(PVA)、またはそれらの架橋誘導体から選択される崩壊剤を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
【請求項7】
前記崩壊剤が、ポリビニルピロリドン架橋材料(PVP-CLM)である、請求項6に記載の経皮送達システム。
【請求項8】
前記中間層が、速度制御膜である微多孔質膜である、請求項1から7のいずれかに記載の経皮送達システム。
【請求項9】
微多孔質膜が、前記透過促進剤を含有する複数の細孔を有する微多孔質ポリプロピレンから構成される、請求項8に記載の経皮送達システム。
【請求項10】
前記中間層が、不織ポリエステルである、請求項8に記載の経皮送達システム。
【請求項11】
前記メマンチンの塩が、メマンチンのハロゲン化物塩である、請求項1から10のいずれかに記載の経皮送達システム。
【請求項12】
前記メマンチンのハロゲン化物塩が、メマンチン塩酸塩である、請求項11に記載の経皮送達システム。
【請求項13】
前記薬物リザーバ層内の前記アルカリ塩が、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである、請求項1に記載の経皮送達システム。
【請求項14】
前記皮膚接触用粘着剤層が、
一価の飽和または不飽和のC
10~30
脂肪族アルコール、生体適合性ポリマーまたはコポリマー、ならびにマトリックス改質剤および分散性シリカのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から13のいずれかに記載の経皮送達システム。
【請求項15】
前記
一価の飽和または不飽和のC
10~30
脂肪族アルコールが、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される、請求項14に記載の経皮送達システム。
【請求項16】
前記生体適合性ポリマーが、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、それらの混合物、またはそれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項14に記載の経皮送達システム。
【請求項17】
前記マトリックス改質剤が、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性PVP、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびクレイからなる群から選択される、請求項14に記載の経皮送達システム。
【請求項18】
(i)メマンチンの塩、(ii)アルカリ塩、(iii)親水性溶媒担体、(iv)アクリレートコポリマー、および(v)
一価の飽和または不飽和のC
10~30
脂肪族アルコールを含む、粘着剤マトリックス薬物リザーバを含む、組成物であって、前記メマンチンの塩と前記アルカリ塩とが前記薬物リザーバ中でin situで反応して治療有効量のメマンチン塩基を生成
し、
前記アルカリ塩が、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される、組成物。
【請求項19】
前記親水性溶媒担体が、グリセロールである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記
一価の飽和または不飽和のC
10~30
脂肪族アルコールが、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択され
る、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
薬物リザーバが、架橋ポリビニルピロリドンをさらに含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記メマンチンの塩が、メマンチン塩酸塩であ
る、請求項18から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
経皮送達システムにおける使用のための組成物であって、前記組成物は、メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、透過促進剤、親水性溶媒担体、ならびに架橋ポリビニルピロリドンおよびアクリレートポリマーを含むポリマー性の粘着剤マトリックスからなる薬物リザーバを含み、ここで、前記アルカリ塩は炭酸水素塩である
、組成物。
【請求項24】
(a)10~30重量%のメマンチンHClと5~15重量%の炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、
(b)5~15重量%のオクチルドデカノール、
(c)5~15重量%のグリセロール、
(d)10~30重量%の架橋ポリビニルピロリドン、ならびに
(e)20~65重量%のアクリレートポリマー
からなる薬物リザーバを含む、経皮送達システムにおける使用のための組成物。
【請求項25】
(a)22~27重量%のメマンチンHClと7~12重量%の炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、
(b)8~12重量%のオクチルドデカノール、
(c)8~12重量%のグリセロール、
(d)13~17重量%の架橋ポリビニルピロリドン、ならびに
(e)25~50重量%のアクリレートポリマー
からなる薬物リザーバを含む、経皮送達システムにおける使用のための組成物。
【請求項26】
(a)請求項18から25のいずれか一項に記載の組成物から構成される薬物リザーバ、
(b)複数の細孔を有する速度制御膜、および
(c)皮膚接触用粘着剤
を含む、経皮送達システムにおける使用のための組成物。
【請求項27】
前記速度制御膜が、微多孔質ポリプロピレン膜である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記複数の細孔が、透過促進剤またはオクチルドデカノールを含有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記皮膚接触用粘着剤が、一価の飽和または不飽和のC
10~30脂肪族アルコールおよび生体適合性ポリマーまたはコポリマーを含む、請求項26から28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記一価の飽和または不飽和のC
10~30脂肪族アルコールが、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記生体適合性ポリマーが、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、またはそれらの混合物を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
メマンチンの送達を必要とする対象に対してメマンチンを送達するための方法において使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の経皮送達システムであって、前記方法は、前記対象の組織を前記経皮送達システムと接触させることを含み、
それによって、前記接触させることが、前記対象に対するメマンチンの経皮送達を達成する、
システム。
【請求項33】
前記組織が皮膚組織である、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記対象が、CNS障害を患っているか、またはその診断を受けている、請求項32または請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記CNS障害が、アルツハイマー病および血管性認知症から選択される、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記対象がヒト対象である、請求項32から35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
メマンチンの送達を必要とする対象に対してメマンチンを送達するための方法において使用するための、請求項18から31のいずれか一項に記載の組成物であって、前記方法は、前記対象の組織を前記組成物と接触させることを含み、
それによって、前記接触させることが、前記対象に対するメマンチンの経皮送達を達成する、
組成物。
【請求項38】
前記組織が皮膚組織である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記対象が、CNS障害を患っているか、またはその診断を受けている、請求項37または請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記CNS障害が、アルツハイマー病および血管性認知症から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記対象がヒト対象である、請求項37から40のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、米国仮出願第62/504,391号(2017年5月10日出願);米国仮出願第62/457,794号(2017年2月10日出願);米国仮出願第62/457,791号(2017年2月10日出願);米国仮出願第62/444,763号(2017年1月10日出願);米国仮出願第62/444,745号(2017年1月10日出願);米国仮出願第62/423,133号(2016年11月16日出願);および米国仮出願第62/367,502号(2016年7月27日出願)の利益を主張する。各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
技術分野
本明細書に記載される複数の実施形態は、メマンチン塩基を全身的に送達するための、メマンチンまたはその塩を含有する経皮送達システムに関する。他の実施形態では、メマンチン化合物を含有する送達システムを投与することによって、対象の神経学的障害を処置するための方法が記載される。
【背景技術】
【0003】
背景
メマンチンは、N-メチル-D-アスパルテート(NMDA)受容体に対して低度から中度の親和性を有するアマンタジン誘導体である。これは、NMDA受容体作動性カチオンチャネルに優先的に結合する非競合的なNMDA受容体アンタゴニストである。これは、神経機能障害をもたらし得る過剰なレベルのグルタメートの効果を遮断する。これは現在、アルツハイマー病の処置のため調査中である。これは、3,5-ジメチルアダマンタン-1-アミン(式I)の化学構造を有する。
【化1】
【0004】
メマンチンは179.31g/molの分子量を有し、親油性である(LogP値3.08;報告値範囲3.31~2.07;DRUGBANK受託番号DB01043を参照されたい)。メマンチンはしばしば、医学文献において1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン、1,3-ジメチル-5-アダマンタンアミン、3,5-ジメチル-1-アダマンタンアミン、3,5-ジメチル-1-アミノアダマンタン、および3,5-ジメチルトリシクロ(3.3.1.1(3,7))デカン-1-アミンとも呼ばれている。
【0005】
米国では、メマンチン塩酸塩の経口錠剤(NAMENDA(登録商標);メマンチンHClの分子量は215.77g/molである)が、単独で、またはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)と組み合わせて、中等度から重度のアルツハイマー病の処置に使用するために認可されている。認知障害の性質上、経口薬では、1日中服用が必要な配合物の場合は特に、患者コンプライアンスの問題が起こる可能性がある。
【0006】
現在、臨床的に認可されたメマンチン塩酸塩薬は、溶液または錠剤の形態で経口投与されている。投薬レジメンをより簡便にし、丸剤負荷量を低下させ、療法へのアドヒアランスを改善するために、メマンチンの徐放性(extended-release、ER)配合物(NAMENDA XR(登録商標))が2010年にアルツハイマー病の処置のために認可された。しかしながら、不定のピーク・トラフ変動率(PTF)という欠点により、メマンチンの投与は経口経路に限定されている(Chladekら、J. Appl. Biomed.、6巻:39~45頁、2008年)。したがって、メマンチンの経皮投与は、アルツハイマー病および血管性認知症などの神経学的疾患を処置するための魅力的な代替の治療選択肢であり得る。
【0007】
メマンチンをin vivo送達するための既存の配合物およびシステムを改善するため、経皮、注射、および直腸(坐薬)の投与経路を含め、様々な方策が提唱されてきた。例えば、米国特許公開第2008-0107719号には、抗緑内障薬として使用するためのメマンチンの経皮的吸収調製物が記載されている。米国特許公開第2006-0035888号には、統合失調症を処置するためのメマンチンの持続放出配合物が記載されている。他の経皮送達システムでは、薬物の経皮送達のための促進剤を使用することが提唱される。例えば、米国特許第6,929,801号を参照されたい。これらの教示にもかかわらず、米国で利用可能なメマンチンの経皮パッチまたはデバイスは存在しない。
【0008】
活性であるために十分に強力であり、かつ臨床的必要性を満たす、皮膚を透過することができる低分子の送達のための経皮パッチが、FDAによって認可されている(Pastoreら、Br J Pharmacol.、172巻(9号):2179~2209頁、2015年)。これらは、抗ムスカリン剤(例えば、スコポラミン、オキシブチニン)、ホルモン(例えば、エストラジオール、テストステロン)、ナトリウムチャネル遮断薬(例えば、リドカイン)、ニトレート(例えば、ニトログリセリン)、アドレナリン作用薬(例えば、クロニジン)、ドーパミン作用薬(例えば、メチルフェニデート)、MAO阻害剤(例えば、セレギリン)、ドーパミンアゴニスト(例えば、ロチゴチン)、およびコリン作用薬(例えば、リバスチグミン)に限定されている。しかしながら、抗認知症薬の経皮送達用製品でFDAの認可を受けたものは現在1つしかない(Novartis Pharmaceuticals製のEXELON(登録商標)リバスチグミンパッチ)。
メマンチンを含む塩基性薬物の経皮送達は、不十分な皮膚透過性のために特に困難であり得る。さらに、一部の活性剤は、典型的な経皮配合物に使用される粘着剤および/または他の構成成分における溶解性が不十分であるか、または低い。さらに、薬剤の投与期間にわたる安定かつ有効な放出をもたらし、長期投与に好適な接着性を有する、抗認知症剤の安定した長期にわたる(例えば、1~10日間またはそれを超える)投与が必要とされている。
したがって、これらの欠点に対処する経皮組成物、デバイス、および方法の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許公開第2008-0107719号明細書
【文献】米国特許公開第2006-0035888号明細書
【文献】米国特許第6,929,801号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Chladekら、J. Appl. Biomed.、6巻:39~45頁、2008年
【文献】Pastoreら、Br J Pharmacol.、172巻(9号):2179~2209頁、2015年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡単な要旨
下に記載され例証される、以下の態様およびその実施形態は、例示的かつ例証的であることを意図したものであり、範囲に関して限定的なものではない。
【0012】
本明細書に記載される複数の実施形態は、例えば限定されるものではないがアルツハイマー病などの神経学的疾患を処置する組成物、システム、および方法を提供する。本発明の複数の態様および実施形態は、活性成分の経皮送達のために配合された組成物を提供することにより、既存の方法を改善する。
【0013】
特に、合成機構の構成成分を適用部位に提供することによりメマンチン塩基のin situ合成を行うことは、本組成物、システム、および実施形態の目的および利点である。in situ機構の使用は、薬物のバイオアベイラビリティを大きく改善するだけでなく、様々な治療的用途で薬物の一定かつ持続的な送達を可能にもすることが企図される。
【0014】
追加的に、本明細書に記載される送達システムは、容易な用量設定、最適な一定の投薬、改善された患者コンプライアンス、および既存の送達様式と比較してより良好な薬へのアドヒアランスをもたらすことが企図される。
【0015】
本明細書に記載される複数の実施形態はさらに、これらのシステムおよびデバイスを用いて、中枢神経系(CNS)障害、特にアルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病などの神経学的障害を有利に処置することに関する。本発明のシステムおよび方法は、前述の神経学的障害を患っている患者において、経口投与されたメマンチンに関連する吸収のばらつきおよび高い初回通過代謝を排除または低減するのに役立ち得る。追加的に、本発明の組成物およびシステムはさらに、皮下針および注射システムを必要とせずに血流への迅速かつ広範な薬物吸収をもたらし得る。さらに、本明細書におけるシステムおよび組成物によりもたらされる送達の容易さは、誤投薬のリスクを最小限に抑えると同時に患者のアドヒアランスを増加させ得る。最後に、本明細書に記載されるシステムおよび方法は、医療関係者による常時の監督を必要としない患者による自己処置を可能にし得る。
【0016】
一態様では、メマンチン塩基を全身的に送達するための経皮送達システムが提供される。複数の実施形態では、システムは、皮膚に面する側から順に、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層(skin contact adhesive layer)であって、メマンチン塩基および/またはメマンチン塩を任意選択で含まない粘着剤配合物から構成される、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、皮膚接触用粘着剤層と直接接触している中間層、(c)中間層と接触している薬物リザーバ、ならびに(d)薬物リザーバと接触している少なくとも第1のバッキング層を含む。複数の実施形態では、システムは、任意選択で、(e)第1のバッキング層と接触している粘着剤オーバーレイ、および/または(f)第1のバッキング層もしくは粘着剤オーバーレイと接触している第2のバッキング層をさらに含む。複数の実施形態では、薬物リザーバは、(i)アクリレートポリマーまたはコポリマー、(ii)溶解剤、(iii)担体、(iv)任意選択の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される。一部の実施形態では、送達システムは中間層を含む。
【0017】
複数の実施形態では、薬物リザーバ層は、(i)アクリル酸/酢酸ビニルのコポリマーを含むアクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)任意選択の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される。
【0018】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)酢酸ビニルと、2-エチルヘキシル-アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリシジルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のアクリレートとを含むアクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。
【0019】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールである少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)任意選択の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。
【0020】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)存在する場合は、中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。
【0021】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤または透過促進剤、(iii)親水性溶媒である少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含み、ここで皮膚接触用粘着剤層は、親水性溶媒担体を含まない。
【0022】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)ポリビニルピロリドン(PVP)もしくはポリビニルアルコール(PVA)、またはそれらの架橋誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。一部の実施形態では、崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドンである。
【0023】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層であって、メマンチン塩基の速度制御膜である、中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。一部の実施形態では、速度制御膜は、微多孔質ポリプロピレンを含む。一部の実施形態では、速度制御膜は、不織ポリエステルを含む。
【0024】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンのハロゲン化物塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。一実施形態では、ハロゲン化物塩は、メマンチンの塩化物塩(メマンチンHCl)を含む。
【0025】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、オキシル酸ナトリウム(sodium oxylate)、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される、メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。一部の実施形態では、アルカリ塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムを含む。
【0026】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、および(vi)ソルビタンモノラウレートおよび乳酸ラウリルから選択される追加的な薬剤から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。
【0027】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを、任意選択でマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で分散性シリカとともに含む、使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)任意選択の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、高級アルコール、生体適合性ポリマー、およびマトリックス改質剤を含む。別の特定の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、高級アルコール、生体適合性ポリマー、および分散性シリカを含む。
【0028】
別の実施形態では、メマンチン塩基を全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコール、ならびに生体適合性ポリマーを、任意選択でマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で分散性シリカとともに含む、使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。
【0029】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)高級アルコール、ならびにポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、それらの混合物またはそれらのコポリマーからなる群から選択される生体適合性ポリマーを、任意選択でマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で分散性シリカとともに含む、使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)任意選択の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。一部の実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリイソブチレン、またはポリイソブチレンおよびポリブテンのブレンドもしくは混合物を含む。
【0030】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを、任意選択で、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性PVP、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびクレイからなる群から選択されるマトリックス改質剤、ならびにさらに任意選択で分散性シリカとともに含む、使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。一部の実施形態では、マトリックス改質剤は、架橋ポリビニルピロリドンである。
【0031】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムは、上記に詳述したように、(a)高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを、任意選択でマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で医薬品グレードの非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素とともに含む、使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)1つまたは複数の追加的なバッキング層を含む。
【0032】
別の実施形態では、メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムが提供される。送達システムは、(a)使用者の皮膚に経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層であって、メマンチンを含まない粘着剤配合物を含む、皮膚接触用粘着剤層、(b)任意選択で、接触用粘着剤層に直接接する中間層、(c)中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートポリマー、(ii)少なくとも1種の溶解剤、(iii)少なくとも1種の担体、(iv)少なくとも1種の崩壊剤、および(v)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層、ならびに(d)粘着剤マトリックス薬物リザーバ層と接触している第1のバッキング層;第1のバッキング層と接触している、ポリイソブチレン、ポリブテン、またはそれらの混合物を含む粘着剤オーバーレイ;および粘着剤オーバーレイと接触している第2のバッキング層を含む。特定の一実施形態では、粘着剤オーバーレイは第1の層および第2の層から構成され、第1の層は、ポリイソブチレン、ポリブテン、またはそれらの混合物を含み、第2の層は、アクリル粘着剤で構成される。別の実施形態では、粘着剤オーバーレイは、薬物リザーバマトリックスに融合しているか、リザーバマトリックスの上に層状になっているか、または少なくとも1つの中間層によってリザーバマトリックスから分離されている。別の実施形態では、粘着剤オーバーレイは、アクリレートポリマーまたはコポリマーから構成される単一層である。
【0033】
関連する実施形態では、(i)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、(ii)担体、および(iii)アクリレートポリマーを含む、固体モノリス型薬物リザーバを含む、組成物が提供される。一実施形態では、担体は、グリセロールである。
【0034】
別の実施形態では、(i)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、(ii)少なくとも1種の担体、(iii)アクリレートポリマー、および少なくとも1種の溶解剤を含む、粘着剤マトリックスを含む、組成物が提供される。一部の実施形態では、溶解剤は、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールである。
【0035】
別の実施形態では、(i)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、(ii)少なくとも1種の担体、および(iii)アクリレートポリマーを含む、粘着剤マトリックスを含む、組成物であって、粘着剤マトリックスが架橋ポリビニルピロリドンを含む、組成物が提供される。
【0036】
別の実施形態では、(i)メマンチン塩酸塩と、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、オキシル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムからなる群から選択されるアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、(ii)担体、および(iii)アクリレートポリマーを含む、粘着剤マトリックスが提供される。
【0037】
さらに別の実施形態では、メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、少なくとも1種の溶解剤、少なくとも1種の担体、ならびに架橋ポリビニルピロリドンおよびアクリレートポリマーを含むポリマー性の粘着剤マトリックスから本質的になる粘着剤マトリックスまたはポリマー性固体モノリスを含む、組成物が提供される。
【0038】
一実施形態では、(a)約5~50重量%または10~30重量%のメマンチン塩と約5~15重量%のアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基;(b)約5~15重量%の溶解剤;(c)約5~15重量%の担体;(d)約10~30重量%の崩壊剤;ならびに(e)約10~65重量%または20~65重量%または20~50重量%のアクリレートコポリマーから本質的になる薬物リザーバを含む組成物が提供される。一部の実施形態では、メマンチン塩は、メマンチン塩酸塩(メマンチンHCl)であり;一部の実施形態では、アルカリ塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムであり;一部の実施形態では、溶解剤は、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールであり;一部の実施形態では、担体は、グリセロールであり;一部の実施形態では、崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP-CLM)であり;一部の実施形態では、アクリレートポリマーは、酢酸ビニルと、2-エチルヘキシル-アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリシジルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のアクリレートとを含む。
【0039】
別の実施形態では、(a)約22~27重量%のメマンチン塩と約7~12重量%のアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基;(b)約8~12重量%の溶解剤;(c)約8~12重量%の担体;(d)約13~17重量%の崩壊剤;ならびに(e)約28~35重量%のアクリレートポリマーから本質的になる薬物リザーバを含む組成物が提供される。複数の実施形態では、メマンチン塩は、メマンチン塩酸塩(メマンチンHCl)であり;一部の実施形態では、アルカリ塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムであり;一部の実施形態では、溶解剤は、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールであり;一部の実施形態では、担体は、グリセロールであり;一部の実施形態では、崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン(PVP-CLM)であり;一部の実施形態では、アクリレートポリマーは、酢酸ビニルと、2-エチルヘキシル-アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリシジルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1種のアクリレートとを含む。
【0040】
別の実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数、(b)速度制御膜または不織層、および(c)粘着性マトリックス、ならびに(d)任意選択で、透過促進剤を含む、組成物が提供される。一部の実施形態では、速度制御膜は、微多孔質ポリプロピレン膜である。
【0041】
一実施形態では、微多孔質膜は、複数の細孔を有する。微多孔質膜における複数の細孔は、溶媒または溶媒組成物を含有する。一実施形態では、微多孔質膜の細孔内の溶媒組成物は、薬物リザーバ内の親水性溶媒または担体を除く、薬物リザーバおよび接触用粘着剤の一方または両方に存在する溶媒のうちの1種または複数種から構成される。
【0042】
別の実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数、(b)速度制御膜または不織層、ならびに(c)高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを、任意選択でマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で分散性シリカとともに含む粘着性マトリックスを含む、組成物が提供される。一部の実施形態では、粘着性マトリックスは、高級アルコール、生体適合性ポリマー、およびマトリックス改質剤を含む。一部の実施形態では、粘着性マトリックスは、高級アルコール、生体適合性ポリマー、および分散性シリカを含む。一部の実施形態では、粘着性マトリックスは、薬物リザーバに親水性溶媒または担体を含まず、特定の実施形態では、グリセロールを含まない。
【0043】
関連する実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;ならびに(c)ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコール、ならびにポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、またはそれらの混合物もしくはそれらのコポリマーを含む生体適合性ポリマーを、任意選択で、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性PVP、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびクレイからなる群から選択されるマトリックス改質剤、ならびにさらに任意選択で高純度の非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素とともに含む粘着剤マトリックスを含む組成物が提供される。
【0044】
特定の一実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;ならびに(c)約5~15重量%の高級アルコールおよび約50~95重量%の生体適合性ポリマーを、任意選択で約10~30重量%のマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で約4~12重量%の分散性シリカとともに含む粘着剤マトリックスを含む組成物が提供される。一部の実施形態では、粘着剤マトリックスは、オクチルドデカノールである高級アルコール、ポリイソブチレンを含む生体適合性ポリマー、および任意選択で架橋ポリビニルピロリドン(PVP)を含むマトリックス改質剤、ならびにさらに任意選択で高純度の非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素を含む分散性シリカを含む。
【0045】
別の特定の実施形態では、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;ならびに(c)約8~12重量%の高級アルコールおよび約65~90重量%の生体適合性ポリマーを、任意選択で約15~25重量%のマトリックス改質剤、およびさらに任意選択で約5~10重量%の分散性シリカとともに含む粘着剤マトリックスを含む組成物が提供される。一部の実施形態では、粘着性マトリックスは、オクチルドデカノールである高級アルコール、ポリイソブチレンを含む生体適合性ポリマー、および任意選択で架橋ポリビニルピロリドン(PVP)を含むマトリックス改質剤、ならびにさらに任意選択で高純度の非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素を含む分散性シリカを含む。
【0046】
関連の実施形態では、1つまたは複数のパッケージに、(a)前述の薬物リザーバのうちの1つまたは複数;(b)速度制御膜または不織層;および(c)粘着剤マトリックスを、任意選択で、構成要素(a)~(c)を送達システムへと組み立てるための説明書とともに、および追加的にまたは任意選択で、それを必要とする対象に対して組成物または送達システムを投与するための説明書とともに含むキットが提供される。
【0047】
追加的な態様では、1つまたは複数のパッケージに、(i)組成物であって、(a)薬物リザーバであって、(i)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、(ii)担体、および(iii)アクリレートポリマーを含む粘着剤マトリックスから構成される、薬物リザーバ、(b)速度制御膜または不織層、ならびに(c)粘着性マトリックスを含む、組成物、(ii)構成要素を送達システムへと組み立てるための説明書、ならびに/または(iii)それを必要とする対象に対して組成物または送達システムを投与するための説明書を含む、キット。
【0048】
さらなる態様では、それを必要とする対象に対してメマンチンを送達するための方法であって、対象の組織を本明細書に記載される経皮送達システムまたは本明細書に記載される組成物を含む経皮送達システムと接触させることを含む、方法が提供される。特定の実施形態では、組織は、皮膚組織、例えば、皮膚性皮膚組織または粘膜皮膚組織である。複数の実施形態では、対象は、CNS障害、例えば、アルツハイマー病、血管性認知症、もしくはそれらの組合せを患っているか、またはその診断を受けているヒト対象である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1A~1Dは、いくつかの実施形態による経皮送達システムの例証である。
【0050】
【
図2】
図2は、in vitro皮膚透過試験における、時間(時間単位)の関数としての、メマンチン経皮送達デバイスのin vitroでの平均皮膚フラックス(μg/cm
2・時間単位)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
詳細な説明
これより、以下において、様々な態様についてより完全に説明する。しかしながら、そのような態様は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ完全であり、当業者にその範囲を完全に伝えることができるように提供されるものである。
【0052】
本開示全体を通じて、様々な特許、特許出願、および刊行物が参照される。これらの特許、特許出願、および刊行物の開示は、本開示の日付時点で当該技術分野の当業者に公知の最新技術をより完全に説明するために、それら全体が参照により本開示に援用される。引用される特許、特許出願、および刊行物と、本開示との間において任意の矛盾が存在する場合、本開示が優先される。
I.定義
【0053】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれの介在値、および明言された範囲内の任意の他の明言された値または介在値が、本開示内に包括されることが意図される。例えば、1μmから8μmの範囲が明言された場合、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、および7μm、ならびに1μmよりも大きいまたはそれに等しい値の範囲および8μm未満またはそれに等しい値の範囲もまた明示的に開示されていることが意図される。
【0054】
文脈が別途明確に規定しない限り、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「ポリマー」に対する言及は、単一のポリマー、および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なるポリマーを包含し、「賦形剤」に対する言及は、単一の賦形剤、および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なる賦形剤、ならびに同類のものを包含する。
【0055】
「約」という語は、数値の直前にある場合は、その値のプラスまたはマイナス10%の範囲を意味し、本開示の文脈により別途示されない限りまたは本開示の文脈がそのような解釈と矛盾しない限り、例えば、「約50」は45から55を意味し、「約25,000」は22,500から27,500などを意味する。例えば、数値のリスト、例えば「約49、約50、約55」などにおいては、「約50」は、前述の値と後続の値との間の間隔の半分未満まで拡張する範囲、例えば49.5超から52.5未満を意味する。さらに、「約(ある値)未満」または「約(ある値)超」という語句は、本明細書において提供される「約」という用語の定義の見地から理解されるべきである。
【0056】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ全体的または完全に、例えば、何らかの所与の量の90~95%またはそれよりも多くを意味する。「実質的に含まない」は、何らかの所与の量がほぼ全体的または完全に存在しないこと、例えば、何らかの所与の量の約1~5%未満のレベルで存在することを意味する。一部の実施形態では、「実質的に含まない」は、医薬組成物の1~5重量%未満またはそれと等しいレベルで存在することを意味する。
【0057】
本明細書において使用される場合、「皮膚」組織または「皮膚性」組織という用語は、角質層、または淡明層、および/または他の粘膜によって覆われた組織を包含するものとして定義される。この用語にはさらに、粘膜内壁を有する体腔、例えば頬、鼻、直腸、膣などの内面を含む、粘膜組織も包含される。「皮膚」という用語は、「粘膜組織」を包含するものとして解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0058】
「経皮」および「局所」という用語は、本明細書において、薬物が体表面、例えば皮膚を通過して個体の血流中に入るように、ヒトを含む動物の皮膚表面または粘膜に対して、薬物、例えばメマンチン化合物またはその組成物を投与することを指すために、その最も広い意味で使用される。「経皮」という用語は、経粘膜投与、すなわち、薬剤が粘膜組織を通過して個体の血流中に入るように、個体の粘膜(例えば、舌下、口腔、膣、直腸)表面に対して薬物を投与することを包含することが意図される。
【0059】
皮膚組織を介した薬物の送達経路を指す、「局所送達システム」、「経皮送達システム」、および「TDS」という用語は、交換可能に使用される。
【0060】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、理にかなった医学的判断の範囲内にあり、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わずに人間および/または他の哺乳動物の組織と接触させて使用するのに好適であり、妥当な損益比と釣り合うような、化合物、塩、組成物、剤形などを指すために用いられる。一部の態様では、「薬学的に許容される」は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって認可されていること、または哺乳動物(例えば、動物)、より具体的にはヒトにおける使用のために、米国薬局方もしくは他の一般に認知されている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0061】
II.経皮送達システムおよび経皮送達システムにおいて使用するための組成物
メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システム、および経皮送達システムにおいて使用するための組成物が提供される。この経皮システムは概して、皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバから構成され、これら2つは、常にそうとは限らないが典型的には布もしくは膜または他の非粘着剤材料である、中間層によって分離されていてよい。これより、システムの組成物および層について説明する。
【0062】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、活性成分として、1種または複数種の薬物を含む。好ましくは、「薬物」または「活性剤」または「治療剤」という用語はそれぞれ、メマンチン化合物を、それらの誘導体、それらの塩、それらの水和物もしくはアルコラート、それらの互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの混合物を含めて指す。「活性剤」、「薬物」、または「治療活性剤」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0063】
薬物リザーバ層は、一実施形態では、1種または複数種の粘着剤ポリマーと、メマンチン、例えばメマンチン塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基とを含む組成物から構成される。一部の実施形態では、薬物リザーバ層は、1種または複数種の粘着剤ポリマーと、少なくとも1種の溶解剤とを、任意選択で透過促進剤と、少なくとも1種の担体と、任意選択で少なくとも1種の崩壊剤と、メマンチン、例えばメマンチン塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基とともに含む組成物から構成される。組成物は、他の構成成分および薬剤、例えばゲル化剤、エモリエント、界面活性剤、保湿剤、粘度向上剤、乳化剤などをさらに含んでもよい。
【0064】
「薬物リザーバ」という用語は、経皮送達のために薬物を保持し、放出するように作製された組成物を意味し、この組成物は、薬物およびマトリックス材料を組み合わせることによって製造される。薬物リザーバは、薬物リザーバ組成物、固体層、固体粘着剤層、または液体層であってもよい。一部の実施形態では、薬物リザーバは、多層積層型経皮薬物送達医療デバイスにおける、薬物リザーバ固体層であってもよい。粘着剤と組み合わされた場合、薬物リザーバは、固体粘着剤層であってもよく、これは例えば、モノリス型経皮薬物送達医療デバイスにおいて使用することができる。薬物リザーバはまた、別途注記されない限り、透過促進剤、可塑剤、および任意の他の好適な添加剤を含んでもよい。
【0065】
複数の実施形態では、組成物は、活性成分として、メマンチン化合物またはその誘導体を含む。メマンチンは、アダマンタン(admantane)クラスの活性剤に属する化合物である。一部の実施形態では、この化合物は、上記式Iに示される構造を含む。別の実施形態では、メマンチン化合物は、3,5-ジメチルアダマンタン-1-アミン;1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン;1,3-ジメチル-5-アダマンタンアミン;3,5-ジメチル-1-アダマンタンアミン;3,5-ジメチル-1-アミノアダマンタン;および3,5-ジメチルトリシクロ(3.3.1.1(3,7))デカン-1-アミンとしても公知である。
【0066】
別の実施形態では、組成物は、前述のメマンチン化合物の誘導体を含む。本明細書において使用される場合、「誘導体」という用語は、前述の化合物の塩、アミド、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物、またはプロドラッグを包含する。そのような誘導体は、当業者であれば、そのような誘導体化に関して公知の方法を使用して容易に調製することができる。ある特定の実施形態では、誘導体は、実質的な毒性効果を伴わずに動物またはヒトに対して投与することができ、薬学的に活性であるか、またはプロドラッグであるかのいずれかである。メマンチン誘導体の代表的な形式については、米国特許第3,391,142号;同第4,122,193号;同第4,273,774号;および同第5,061,703号;米国特許出願公開第2004-0087658号;同第2005-0113458号;同第2006-0205822号;同第2009-0081259号;同第2009-0124659号;および同第2010-0227852号;欧州特許出願公開第EP2260839A2号;同第EP1682109B1号;ならびに国際特許出願公開第WO2005079779号に記載されている。例えば、抗酸化剤である、N-アセチル-Cys-OHおよびN-アセチル-Cys(アリル)-OHを含有するメマンチン誘導体については、Cacciatoreら、Cent Nerv Syst Agents Med Chem.、2016年(PMID:27356627)に記載されている。
【0067】
別の実施形態では、組成物は、前述のメマンチン化合物の塩を含む。「塩」という用語には、当該技術分野において周知の様々な有機および無機対イオンに由来する塩が包含され、例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタリン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、グリコール酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、L-リンゴ酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)塩、3-フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、第三級ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、ムコン酸塩、酪酸塩、フェニル酢酸塩、フェニル酪酸塩、またはバルプロ酸塩が挙げられる。一部の実施形態では、化合物の塩は、塩酸塩である。
【0068】
複数の実施形態では、メマンチン化合物は、メマンチンハロゲン化物塩(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、特にメマンチンの塩酸塩である。
【0069】
一部の実施形態では、化合物の塩は、化合物を無機酸と反応させることによって形成される。一部の実施形態では、化合物の塩は、化合物を、無機酸(ここで、無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、またはメタリン酸である)と反応させることによって形成される。一部の実施形態では、化合物の塩は、化合物を有機酸と反応させることによって形成される。一部の実施形態では、化合物の塩は、化合物を、有機酸(ここで、有機酸は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、L-リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、L-酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、酪酸、フェニル酢酸、フェニル酪酸、またはバルプロ酸である)と反応させることによって形成される。
【0070】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるのは、式(I)の構造を有する化合物の塩酸塩である。特定の実施形態では、メマンチン塩は、メマンチン塩酸塩を包含する。
【0071】
別の実施形態では、組成物は、前述のメマンチン化合物の溶媒付加形態、例えば溶媒和物およびアルコラートを含む。溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含有し、水、エタノール、および同類のものなどの許容可能な溶媒によって、結晶化のプロセス中に形成され得る。水和物は、溶媒が水である場合に形成され;アルコラートは、溶媒がアルコールである場合に形成される。本明細書に記載される化合物の溶媒和物は、簡便に、常用の技法を使用して調製または形成することができる。一実施形態では、溶媒和物は、メマンチン化合物と1個もしくは複数の溶媒(例えば、水またはアルコール)分子、またはメマンチン化合物1分子当たり1から約100、もしくは1から約10、もしくは1から約2、3、もしくは4個の溶媒分子との複合体を含む。他の実施形態では、本明細書において提供される化合物は、非溶媒和形態で存在してもよく、溶媒和形態で存在してもよい。
【0072】
別の実施形態では、組成物は、前述のメマンチン化合物のアミドまたはエステルを含む。「アミド」という用語は、-N(R1)-C(=O)-または-C(=O)-N(R1)-のいずれかを指す(式中、R1は本明細書において定義されており、水素および他の基が含まれる)。「置換アミド」という用語が、R1が水素ではない状況を指す一方で、「非置換アミド」という用語は、R1が水素である状況を指す。一実施形態では、アミド基は、非置換であるか、または窒素原子を介して、アルキル(C1~C8)基、アリール(C1~C8)基、フェニル、炭素環式(C3~C8)基、複素環式(C3~C8)基、アシル、アルキル(C1~C8)ハロゲン化物、もしくはアルケニル(C1~C8)基によって置換されている。「エステル」という用語は、少なくとも1個のヒドロキシル基がアルコキシ基によって置き換えられている、酸(有機または無機)に由来する化学物質を指す。「エステル」の代表的な形式としては、限定されるものではないがカルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、およびボロン酸を含む酸性基の、限定されるものではないがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、およびヘテロシクリルエステルが挙げられる。
【0073】
別の実施形態では、組成物は、前述のメマンチン化合物の異性体を含む。「異性体」という用語は、同じ式を有するが、分子内における原子の配置が異なる化合物を包含する。好ましくは、メマンチン化合物の異性体は、式Iの化合物の「互変異性体」または「立体異性体」である。「立体異性体」という用語は、1つまたは複数の立体中心のキラリティーにおいて異なる化合物を指す。立体異性体には、エナンチオマーおよびジアステレオマーが包含される。「互変異性体」という用語は、プロトンの位置において異なる化合物の交互に繰り返される形態、例えばエノール-ケト互変異性体およびイミン-エナミン互変異性体、またはピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、およびテトラゾールなどの、環の-NH-部分および環の=N-部分の両方に結合する環原子を含有するヘテロアリール基の互変異性形態などを指す。好ましくは、式Iの化合物の互変異性体および立体異性体は、例えばNMDA受容体拮抗作用に関して、親化合物と類似するかまたはそれと同じ生物学的特性を有する。
【0074】
一部の実施形態では、組成物は、前述のメマンチン化合物のプロドラッグを含む。「プロドラッグ」という用語は、対象に対して投与された場合に、実施形態の化合物、またはその活性代謝物もしくは残基を直接的または間接的に提供することが可能である、実施形態の化合物の任意の誘導体を指す。特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、そのような化合物が対象に対して投与された場合に、実施形態の化合物のバイオアベイラビリティを増加させる(例えば、経皮投与される化合物が皮膚組織内へとより容易に吸収されるようにすることによって)か、または親種と比較して、生物学的区画(例えば、脳)に対する親化合物の送達を促進するようなものである。プロドラッグには、化合物のアミドおよびエステル形態が包含される。エステルプロドラッグの例としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、およびエチルコハク酸エステル誘導体が挙げられる。プロドラッグの一般的概要については、Higuchiら、Pro drugs as Novel Delivery Systems、American Chemical Society Symposium Seriesの第14巻およびEdward B. Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年に提供されており、これらは両方とも、参照により本明細書に援用される。
【0075】
一部の実施形態では、化合物は、前述のメマンチン化合物の混合物を含む。「混合物」という用語は、2種またはそれよりも多くの物質が、それらがそれら個別の特性を失ってしまう反応を発生させずに一緒に混ぜられていることを指す。例えば、化合物Aおよび化合物Bの混合物は、混合物の総重量が100%になるような任意の重量比の化合物Aおよび化合物B、例えば、99:1重量比の化合物A/化合物B、または1:99重量比の化合物A/化合物Bを含有してよい。典型的な混合物は、約2、3、4、5種、またはそれよりも多くの前述のメマンチン化合物を含有してもよい。
【0076】
一実施形態では、メマンチンを含有する活性成分は、微粒子化形態である。「微粒子化」という用語は、直径が数ミクロンである極度に細かい粒子を指す。化合物を微粒子化するための方法、例えば公開PCT出願のWO2011/070361号に開示されているジェットミル粉砕技法が、当該技術分野において公知である。一実施形態では、組成物およびシステムで使用される微粒子化メマンチンHClの平均粒径は、約20μm未満、約5μm未満、または約1μm未満、例えば約0.5μmまたは約0.1μmですらある。
【0077】
一実施形態では、メマンチン化合物の活性成分は、アンモニウムイオンの形態である。イオン形態は水(および血液)に対してより溶解性であるものの、膜を通るその通過はややゆっくりとなる。遊離塩基形態(遊離アミン)のメマンチンは親油性であり、皮膚細胞を通ってより容易に吸収され、これらの薬物の塩形態(親水性)よりも速く皮膚バリアに浸透する。システムの一部の実施形態では、塩形態の薬物の遊離塩基形態への変換は、構成成分、例えば炭酸水素塩およびメマンチンHClを一緒に、または互いに対して近接させて提供することによって、in situで達成される。任意選択で、親油性溶媒が、より疎水性の遊離塩基形態の薬物を溶解させるために含まれてもよい。反応を実行するための、in situ合成プロセスの他の構成成分、例えば極性または両親媒性媒体が、組成物中に含まれてもよく、または外部から提供されてもよい。
【0078】
本明細書において使用される場合、「化合物(単数)」および「化合物(複数)」という用語は、本明細書に開示される一般式、それらの一般式の任意の亜属によって包括される化合物、ならびに一般式および亜属の式内の任意の特定の化合物を指す。特に、本明細書において使用される「メマンチン」は、遊離塩基としてのメマンチンのほか、3,5-ジメチルアダマンタン-1-アミンの塩酸塩を含むメマンチン塩も指す。
【0079】
一実施形態では、経皮送達システムは、遊離塩基の形態のメマンチン、例えば、その遊離塩基としての実験式がC12H21Nである化合物(約10.7のpKaを有する)を含む。「遊離塩基」または「自由塩基」という用語は、アミンの共役酸(プロトン化)形態に対する、アミンの共役塩基(脱プロトン化)形態を指す。アミンは、第一級アミン(例えば、RNH2[式中、Rはアルキル基である])であってもよく、第二級アミン(例えば、R1R2NH[式中、R1およびR2はそれぞれ個別に、同じまたは異なるアルキル基である])であってもよく、または第三級アミン(例えば、R1R2R3N[式中、R1、R2、およびR3はそれぞれ個別に、同じまたは異なるアルキル基である])であってもよい。
【0080】
ある特定の実施形態では、アミン塩は、分解反応を介してin situで塩基形態へと変換される。本明細書において使用される場合、「in situ」という用語は、周囲の環境、例えばデバイスが接触している生物的物質を含む、システムまたはデバイスの文脈内に存在するかまたはそこで生じる、プロセス、事象、物体、または構成成分を指す。例として、in situ反応は、ヒトの皮膚組織によって提供される構成成分(例えば、水[これにより、メマンチン塩および炭酸水素塩などのアルカリ塩を溶解させることによって、構成成分が水性形態で反応することが可能になる])を含む、デバイス中に存在する様々な構成成分(例えば、メマンチン塩および炭酸水素塩などのアルカリ塩)の反応を指し得る。この用語は、環境の外側を指すex situと対比される。
【0081】
複数の実施形態では、分解反応は、薬物リザーバ層に含まれているアルカリ塩との反応を含む。本明細書において使用される場合、「アルカリ塩」または「塩基性塩」は、水中に溶解された場合、7.0を超えるpHを有する溶液を生み出す塩を指す。一部の実施形態では、塩基性塩またはアルカリ塩は、弱酸の無機塩、例えば酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、およびリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、オキシル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される、弱酸のアルカリ金属塩である。一部の実施形態では、アルカリ塩は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである。特定の実施形態では、アルカリ塩は、弱酸に由来するその共役塩基が加水分解して塩基性溶液を形成するものである。例えば、炭酸水素ナトリウム(Na2CO3)では、炭酸(弱酸)に由来する炭酸塩(共役塩基)が、水または他の極性媒体中で加水分解して、塩基性溶液が形成される。そのようなアルカリ塩の代表例としては、Li+、Na+、K+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、またはBa2+、好ましくはNa+、K+、Mg2+、Ca2+の塩が挙げられ、共役塩基は、例えば硫酸塩(SO4
-)、硝酸塩(NO3
-)、リン酸二水素塩(H2PO4
-)、酢酸塩(CH3COO-)、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸水素塩(HCO3
-)、炭酸塩(CO3
2-)、リン酸塩(PO4
3-)、リン酸水素塩(HPO4
2-)、および硫化水素塩(HS-)である。一部の実施形態では、アルカリ/塩基性塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、特にNa+またはK+の炭酸水素塩である。
【0082】
複数の実施形態では、塩は、Na+、K+、Mg2+、またはCa2+の、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸水素塩、または硫化水素塩、例えばNa+HCO3
-、K+HCO3
-、Mg2+(HCO3
-)2、またはNa+ CH3COO-などから選択される。
【0083】
一部の実施形態では、アルカリ塩は、炭酸水素塩である。代表的な炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、またはそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウムである。
【0084】
ひとえに代表例として、塩が炭酸水素塩である場合、この塩は、メマンチンHCl塩とのin situ反応を経て、水、CO2、および遊離アミンを以下の様式で放出する。
【0085】
Mex(HCO3)x+x*(R-NH3
+Cl-)→MexClx+xH2O+xCO2+xR-NH2[式中、Meは金属(例えば、Li+、Na+、K+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、またはBa2+)であり、xは金属の原子価(例えば、1から3)であり、Rはメマンチンのアダマンタン環であり、-NH2はメマンチンのアミン基である]。
【0086】
一実施形態では、反応は、極性媒体中で起こる。別の実施形態では、反応は、両親媒性媒体中で起こる。
【0087】
別の実施形態では、メマンチン遊離塩基は、当該技術分野において公知の他の技法を使用することで生成できる。例えば、一実施形態では、遊離塩基はイオン交換体を使用して塩から生成される。好ましいアニオン交換樹脂は、第四級アンモニウム基、第三級スルホニウム基、第四級ホスホニウム基、またはアルキルピリジニウム基などの塩基性(カチオン性)基を含有する、市販の樹脂である。特に好ましいアニオン交換樹脂は、REXYN(商標)201(Fisher Scientific Co.)、AMBERLITE(商標)IR A-400(Mallinckrodt Chemical Works)、IONAC(商標)A-540(Matheson,Coleman and Bell)、DOWEX(商標)Iおよび21K(Dow Chemical Co.)、ならびにDUOLITE(商標)A-101DおよびES-109(Diamond Shamrock Chemical Co.)などの第四級アミンを含有するようなものである。
【0088】
ある特定の実施形態では、メマンチン化合物およびアルカリ塩は、任意選択で任意の他の成分またはアジュバントとともに、一緒に共微粒子化されて、配合物にされてもよい。成分を共微粒子化するための方法については、当該技術分野において公知である。例えば、エアジェットミル製法によって、ソルビトール、グリセロール、および炭酸水素カリウムを共微粒子化(0.05~0.5μmの粒径範囲)する方法について開示している、米国特許第5,424,077号を参照されたい。
【0089】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、粘着剤マトリックス薬物リザーバの重量に対して少なくとも約1~50重量%、5~50重量%、または5~35重量%のメマンチン化合物を含む(部分範囲を包含する)。複数の実施形態では、粘着剤マトリックス薬物リザーバは、少なくとも約5~30%、少なくとも約5~25%、少なくとも約5~20%、少なくとも約5~15%、少なくとも約5~10%、少なくとも約10~35%、少なくとも約10~30%、少なくとも約10~25%、少なくとも約10~20%、少なくとも約10~15%、少なくとも約20~35%、少なくとも約20~30%、少なくとも約20~25%、少なくとも約25~30%、または少なくとも約30~35%のメマンチン化合物を含む(百分率はすべて重量%単位である)。一実施形態では、薬物リザーバは、少なくとも約22~27重量%のメマンチン化合物を含む。一部の実施形態では、薬物リザーバは、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、少なくとも19重量%、少なくとも20重量%、少なくとも21重量%、少なくとも22重量%、少なくとも23重量%、少なくとも24重量%、少なくとも25重量%、少なくとも26重量%、少なくとも27重量%、少なくとも28重量%、少なくとも29重量%、少なくとも30重量%、少なくとも31重量%、少なくとも32重量%、少なくとも33重量%、少なくとも34重量%、少なくとも35重量%、少なくとも36重量%、少なくとも37重量%、少なくとも38重量%、少なくとも39重量%、少なくとも40重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてがリザーバ全体の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約0.1重量%のメマンチン化合物を含む。
【0090】
一部の実施形態では、薬物リザーバ組成物は、粘着剤マトリックス薬物リザーバの重量に対して少なくとも約1~20重量%の1種または複数種のアルカリ塩を含む(部分範囲を包含する)。複数の実施形態では、薬物リザーバは、少なくとも約1~15%、少なくとも約1~10%、少なくとも約1~5%、少なくとも約5~20%、少なくとも約5~15%、少なくとも約5~10%、少なくとも約10~20%、少なくとも約10~15%、または少なくとも約15~20%の少なくとも1種のアルカリ塩を含む(百分率はすべて重量%単位である)。一部の実施形態では、粘着剤マトリックス薬物リザーバ組成物は、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも7重量%、少なくとも8重量%、少なくとも9重量%、少なくとも10重量%、少なくとも11重量%、少なくとも12重量%、少なくとも13重量%、少なくとも14重量%、少なくとも15重量%、少なくとも16重量%、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、少なくとも19重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、またはそれよりも多い重量%を含めた、少なくとも約0.1重量%の1種または複数種のアルカリ塩を含む。
【0091】
薬物リザーバ内の粘着剤構成成分は、様々な粘着剤材料のいずれか、例えば感圧性粘着剤ポリマーであり得る。ポリアクリレート感圧性粘着剤ポリマーが一例であり、典型的には、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択されるモノマー(単数)もしくはモノマー(複数)のポリマーまたはコポリマーであるポリアクリレートを含む。アクリル酸および酢酸ビニルといった他のモノマーが存在してもよい。複数の実施形態では、アクリルポリマーは、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)およびアクリル酸エチルなどのアクリルエステルに基づく。一部の実施形態では、ポリアクリレートポリマーは、アクリル酸および酢酸ビニルから選択されるモノマー(単数)もしくはモノマー(複数)のポリマーまたはコポリマーである。複数の実施形態では、アクリルポリマー粘着剤は、カルボキシル(-COOH)またはヒドロキシル(-OH)のペンダント官能基を有する。複数の実施形態では、アクリルポリマー粘着剤は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、それらの誘導体、およびそれらのコポリマーのうちの少なくとも1つを含む。複数の実施形態では、アクリル粘着剤は、アクリルエステルモノマー、アクリル酸、および/または酢酸ビニルモノマーを含むアクリレートコポリマーから構成される。アクリル酸および酢酸ビニルのコポリマーが一例である。アクリレートコポリマーは、DURO-TAK(登録商標)の商品名で販売されており、限定されるものではないが、DURO-TAK 387-2516、387-2051、387-2074、および387-2287(酢酸ビニル、2-エチルヘキシル-アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびグリシジルアクリレートのモノマー組成を有する。PCT公開第WO96/40087号を参照されたい)が含まれる。複数の実施形態では、粘着剤ポリマーは、アクリレートポリマーまたはコポリマー、例えば、ヒドロキシル基含有ポリアクリレートなどから選択されるアクリル酸/酢酸ビニルのコポリマー(それらの架橋誘導体を含む)である。
【0092】
薬物リザーバは、ポリビニルピロリドン(PVP)を含んでもよい。PVPは、N-ビニルピロリドンモノマーから構成される水溶性ポリマーであり、架橋および非架橋を含む様々な形態で利用可能である。本明細書における作業実施例の一部では、KOLLIDONとして販売されておりKOLLIDON CL-Mを含む架橋ポリビニルピロリドンなどの架橋PVPが、粘着剤マトリックス薬物リザーバに含まれる。
【0093】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、粘着剤マトリックス薬物リザーバの重量に対して少なくとも約20~80重量%の粘着剤ポリマーを含む(部分範囲を包含する)。複数の実施形態では、粘着剤マトリックス薬物リザーバは、少なくとも約35~80%、30~75%、少なくとも約40~75%、少なくとも約50~75%、少なくとも約60~75%、少なくとも約25~70%、少なくとも約30~70%、少なくとも約40~70%、少なくとも約50~70%、少なくとも約60~70%、少なくとも約25~60%、少なくとも約30~60%、少なくとも約40~60%、少なくとも約50~60%、少なくとも約20~50%、少なくとも約25~50%、少なくとも約30~50%、少なくとも約35~50%、少なくとも約40~50%、少なくとも約20~45%、少なくとも約25~45%、少なくとも約30~45%、少なくとも約40~45%、少なくとも約50~45%、少なくとも約20~40%、少なくとも約25~40%、少なくとも約30~40%、少なくとも約35~40%、少なくとも約20~35%、少なくとも約25~35%、少なくとも約30~35%、少なくとも約25~30%、少なくとも約20~30%、少なくとも約20~25%の粘着剤ポリマーもしくはコポリマーまたはポリマーおよび/もしくはコポリマーの混合物を含む(百分率はすべて重量%単位である)。複数の実施形態では、薬物リザーバは、少なくとも約8%、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約45%、約50%、またはそれよりも多くの粘着剤ポリマーもしくはコポリマーまたはポリマーおよび/もしくはコポリマーの混合物を含む(百分率はすべて重量%単位である)。薬物リザーバ粘着剤マトリックスは、1種もしくは複数種、または少なくとも1種の粘着剤ポリマーもしくはコポリマーを含んでもよいことが理解されるであろう。複数の実施形態では、粘着剤マトリックス薬物リザーバは、個々のポリマーを、マトリックス内のポリマーの総重量に対して少なくとも約5~75%含む。複数の実施形態では、粘着剤マトリックス薬物リザーバは、個々のポリマーを、少なくとも約5~10%、5~15%、5~20%、5~25%、5~30%、5~40%、5~50%、5~60%、5~70%、5~75%、10~15%、10~20%、10~20%、10~25%、10~30%、10~40%、10~50%、10~60%、10~70%、10~75%、15~20%、15~25%、15~30%、15~40%、15~50%、15~60%、15~70%、15~75%、20~25%、20~30%、20~40%、20~50%、20~60%、20~70%、20~75%、25~30%、25~40%、25~50%、25~60%、25~70%、25~75%、30~40%、30~50%、30~60%、30~70%、30~75%、40~50%、40~60%、40~70%、40~75%、50~60%、50~70%、50~75%、60~70%、60~75%、または70~75%含む。一実施形態では、粘着剤マトリックス薬物リザーバは、約28~35重量%または約13~17重量%の個々の粘着剤ポリマーもしくはコポリマーまたはコポリマーの混合物を含む。
【0094】
一部の実施形態では、薬物リザーバ層の組成物は、少なくとも1種の担体を追加的に含む。本明細書において使用される場合、「担体」という用語は、組織、例えば血液組織、皮膚組織、脂肪組織、神経組織などに前述のメマンチン化合物を送達するために設計された、溶液、エマルション、懸濁液、ゲル、ゾル、コロイド、および固体を含む。「溶液」という用語は、主要な構成成分(例えば、緩衝液)中に少量の構成成分(例えば、メマンチン化合物)が均一に分布している液体混合物を指す。「エマルション」は、1種の液体の微小な液滴が可溶性または混和性でない別の液体に入った(例えば、油および水の)微細分散体を指す。「懸濁液」は、溶質粒子が媒体の大部分に溶解しないが全体的に懸濁される不均質混合物を指す。「ゲル」は、軟質で弱いものから硬質で堅いものまで様々な特性を有してよく、流動を呈さない実質的に希薄な架橋システムと定義される、固体のゼリー様物質を指す。「ゾル」は、連続的な液体媒体中に極めて小さな固体粒子をもつコロイド状懸濁液を指す。「コロイド」という用語は、「ゲル」、「ゾル」、および「懸濁液」という用語と交換可能に使用することができ、1種の物質の超微細粒子が第2の物質全体に分散した均質混合物を指す。
【0095】
一部の実施形態では、担体は、液体である。一部の実施形態では、担体は、親水性溶媒である。液体担体は、皮膚または粘膜への適用に好適な賦形剤を含み得る。好適な担体および/または賦形剤には、水性もしくは非水性の希釈剤またはそれらの組合せが含まれる。水性担体および/または賦形剤の例としては、限定されるものではないが、食塩水、水、デキストロース、またはそれらの組合せが挙げられる。非水性担体および/または賦形剤としては、限定されるものではないが、アルコール、特にポリヒドロキシアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ならびに植物油および鉱油が挙げられる。これらの水性および/または非水性の担体および/または賦形剤は、溶液、懸濁液、水中油型エマルション、または油中水型エマルションを形成するために、様々な濃度および組合せで添加することができる。ある特定の実施形態では、担体および/または賦形剤は、C3~C4ジオール、C3~C6トリオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される極性溶媒材料、ならびに/または脂肪アルコールエステル、脂肪酸エステルからなる群から選択される極性脂質材料である。また、例えば溶媒材料の脂質材料に対する重量比が約60:40から約99:1である、極性溶媒材料および脂質材料の混合物を使用することもできる。他の好適な担体については、米国特許第5,026,556号(Drustら)に提供されている。
【0096】
一実施形態では、担体は、2種またはそれよりも多くのアルコールを含む組成物である。この実施形態の下では、担体は、例えばオクチルドデカノール(octydodecanol)およびグリセロールの重量比が2:1から1:2の間、特に3:2から2:3の間、特に10:7から7:10の間、例えば、1:1である、オクチルドデカノールおよびグリセロールの混合物を含んでもよい。本明細書全体を通じて、文脈が別途要求しない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含んでいる(comprising)」という語は、明言されたステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群は包含されるが、任意の他のステップもしくは要素、またはステップもしくは要素の群も除外されないことを暗示するものとして理解される。したがって、担体がオクチルドデカノールおよびグリセロールを含む場合、その組成物は、他の要素、例えば緩衝液、界面活性剤、エモリエント、および同類のものを含んでもよい。
【0097】
一部の実施形態では、担体は、グリコール、特に、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールから選択されるものである。別の実施形態では、担体は、グリセロールを含む混合物である。この混合物は、グリセロール、および水を含む任意の親水性溶媒から構成されてもよい。
【0098】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、薬物リザーバの重量に対して少なくとも約5~20重量%の1種または複数種の担体を含む(部分範囲を包含する)。複数の実施形態では、薬物リザーバは、少なくとも約5~15%、少なくとも約5~10%、少なくとも約8~12%、少なくとも約10~20%、少なくとも約10~15%、または少なくとも約15~20%の1種または複数種の担体を含む(百分率はすべて重量%単位である)。一部の実施形態では、薬物リザーバ組成物は、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも25%(すべてがリザーバ層全体の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約0.1重量%の1種または複数種の担体を含む。他の実施形態では、薬物リザーバは、0.1~50重量%、0.1~25重量%、0.5~25重量%、1~50重量%、1~25重量%、2~25重量%、5~25重量%、5~20重量%、または5~15重量%の担体を含む。
【0099】
別の実施形態では、担体は、2種またはそれよりも多くのアルコールから本質的になる。さらに別の実施形態では、担体は、2種のアルコールからなる。
【0100】
一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバ層の一方または両方の組成物は、上皮層を横断するメマンチンの透過を助長する1種または複数種の構成成分をさらに含む。そのような構成成分は、局部pHを上昇させる薬剤(例えば、アルカリ化剤および/または緩衝液)と組み合わせて含まれていてよい。組成物の流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用すること、分散体の場合は必要とされる粒径を維持すること、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、および/または塩化ナトリウムが組成物中に含まれ得る。
【0101】
ある特定の実施形態では、薬物リザーバおよび/または皮膚接触用粘着剤は、真皮を横断する活性剤の透過を促進するための構成成分も含む。組成物における使用に好適な透過促進剤としては、pKaおよびlog Pと無関係に粘膜の経細胞透過性および/または傍細胞透過性を増加させることにより、即時的な局部吸収を助長するキトサンも挙げられる。他の好適な透過促進剤としては、レゾルシノール、界面活性剤、ポリエチレングリコール、またはバイオ酸(bioacids)、例えばクエン酸、乳酸などが挙げられる。あるいは、リポソームやポリサッカライドによるメマンチンのマイクロカプセル化を使用して、酵素分解を制限するとともに透過性を促進することもできる。本明細書における使用に好適な他の透過促進剤としては、米国特許第7,176,185号に開示されているものなどのペプチド輸送剤が挙げられる。加えて、好適な透過促進剤としては、限定されるものではないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド(CIOMSO)、ポリエチレングリコールモノラウレート、グリセロールモノラウレート、レシチン、1-置換アザシクロヘプタン-2-オン、例えば1-n-ドデシルシクロアザシクロヘプタン-2-オン(AZONE(登録商標)、Nelson Research&Development Co.、Irvine、CA)、低級アルカノール(例えば、エタノール)、SEPA(登録商標)(MACROCHEM Co.、Lexington、MAから入手可能)、コール酸、タウロコール酸、胆汁酸塩型促進剤、ならびにTERGITOL(登録商標)、NONOXYNOL-9(登録商標)、およびTWEEN-80(登録商標)などの界面活性剤を挙げることができる。特定の実施形態では、透過促進剤はメントールである(典型的には天然に存在する立体異性体1R,2S,5R-メントールだが、任意の他の立体異性体を使用してよい)。
【0102】
システムおよびデバイスが粘膜、例えば口腔粘膜、膣粘膜、直腸粘膜、および同類のものに配されるある特定の実施形態では、例えば米国特許第7,682,628号に開示されているものなど、当該技術分野において公知の透過(または浸透)促進剤を使用することができる。好適な浸透促進剤としては、限定されるものではないが、ポリオキシエチレン23-ラウリルエーテル、アプロチニン(aprotin)、azone、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、シクロデキストリン、デキストラン硫酸、ラウリン酸、プロピレングリコール、リゾホスファチジルコリン、メントール、メトキシサリチレート、オレイン酸メチル、オレイン酸、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルベート、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシドおよびグリコシド、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0103】
複数の実施形態では、浸透または透過促進剤は、粘着剤マトリックスの重量に対して約1~15%、約1~10%、約1~5%、約5~15%、約5~10%、約2~15%、約2~10%、または約2~5%の間の量(部分範囲を包含する)で含まれる。
【0104】
ある特定の実施形態では、薬物リザーバ内の担体または他の構成成分は緩衝されていてもよい。一実施形態では、薬物リザーバは、アルカリ性緩衝液、例えばアンモニウム緩衝液で緩衝されている。別の実施形態では、担体は、酸性緩衝液、例えばエタン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酢酸塩などで緩衝されている。別の実施形態では、緩衝担体は、双性イオン緩衝液、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、およびフェニルアラニン、TRIS、MES、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、コラミンクロリド、MOPS、BES、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、アセトアミドグリシン、TEA、POPSO、HEPPSO、EPS、HEPPS、トリシン、TRIZMA、グリシンアミド、グリシルグリシン、HEPBS、ビシン、TAPS、AMPB、CHES、AMP、AMPSO、CAPSO、CAPS、ならびにCABSなどを含有する。GRAS(Generally Recognized as Safe、一般に安全と認められる)と指定された緩衝液が特に好ましい。例えば、適正に較正されたpHプローブの使用を介して、緩衝組成物を配合する方法が、当該技術分野において公知である。
【0105】
一部の実施形態では、薬物リザーバ組成物は、1種もしくは複数種の溶解剤または透過促進剤をさらに含む。溶解剤の例としては、高級脂肪酸エステル(パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸オレイルなど)、高級アルコール(ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコールなど)、脂肪酸(イソステアリン酸、ラウリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ミリスチン酸など)、二塩基酸ジエステル(セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピルなど)、トリアセチン、ベンジルアルコール、乳酸セチル、乳酸オクチルドデシル、流動パラフィン、およびそれらのうちの2種またはそれよりも多くの種類の混合物を挙げることができる。
【0106】
一部の実施形態では、溶解剤または透過促進剤は、高級アルコール、例えば一部の実施形態ではヒドロカルビル基部分が直鎖または分岐状である、特に一価飽和または不飽和脂肪族アルコールであるC10~30アルコールである。一部の実施形態では、高級アルコールは、少なくとも40℃の融点を有する。本発明において使用されるC10~30高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2-デシルテトラデシノール、コレステロール、シトステロール、フィトステロール、ラノステロール、ラノリンアルコール、水素化ラノリンアルコール、およびその他が挙げられる。特定の実施形態では、高級アルコールは、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールから選択される。
【0107】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、薬物リザーバの重量に対して少なくとも約2~20重量%の1種もしくは複数種の溶解剤または透過促進剤を含む(部分範囲を包含する)。複数の実施形態では、薬物リザーバは、少なくとも約2~10%、少なくとも約5~20%、少なくとも約5~15%、少なくとも約5~10%、少なくとも約7~8%、少なくとも約8~12%、少なくとも約10~20%、少なくとも約10~15%、または少なくとも約15~20%の1種もしくは複数種の溶解剤または透過促進剤を含む(百分率はすべて重量%単位である)。他の実施形態では、薬物リザーバ層内の溶解剤または透過促進剤の重量%は、リザーバ全体の重量に対して、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、かつ典型的には約50%未満、約45%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満である(すべてがリザーバ層全体の重量に対する値である)。
【0108】
一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバ層の一方または両方の組成物は、1種または複数種の透過促進剤をさらに含む。様々な透過促進剤が当業界で公知であり、本明細書における使用のために企図される。組成物において使用するための透過促進剤の例としては、限定されるものではないが、ラウリン酸メチル、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および酢酸ドデシルが挙げられる。追加的な透過促進剤については、米国特許第8,874,879号に記載されており、これは参照により本明細書に援用される。本発明の組成物は、1種もしくは複数種、または少なくとも1種の透過促進剤を含んでもよいことが理解されるであろう。
【0109】
ある特定の実施形態では、薬物リザーバ層組成物は、1種または複数種の放出制限剤をさらに含む。そのような放出制限剤の代表例としては、例えば、ポリカーボネート(例えば、ポリマー鎖において炭酸基が繰り返し生じる炭酸の線状ポリエステル)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(例えば、NYLONを含むポリヘキサメチレンアジパミド);モダクリルコポリマー(例えば、DYNEL);ポリスルホン;ハロゲン化ポリマー(例えば、KYNAR);ポリフッ化ビニル(例えば、TEDLAR);ポリフルオロハロカーボン(例えば、ACLAR);ポリクロロエーテル(polychlorethers)(例えば、PENTON);アセタールポリマー(例えば、ポリホルムアルデヒド);アクリル樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルポリメチルメタクリレート、ポリn-ブチルメタクリレート);ポリウレタン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリ酢酸ビニル、芳香族および脂肪族、ポリエーテル、セルロースエステル(例えば、三酢酸セルロース;セルロース;コロジオン);エポキシ樹脂;オレフィン(例えば、ポリエチレンポリプロピレン);多孔質ゴム;架橋ポリエチレンオキシド;架橋ポリビニルピロリドン;架橋ポリビニルアルコール;米国特許第3,549,016号および同第3,546,141号に示されている種類のものでイオン的に会合した2種のポリマーから形成された多価電解質構造体が挙げられる。他の実施形態では、放出制限剤は、ポリスチレンの誘導体、例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウムおよび塩化ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム;ポリヒドロキシエチルメタクリレート;ポリイソブチルビニルエーテル、ならびに同類のものを含む。前出の前記リストのポリマーから様々な割合のモノマーを反応させることによって形成され得る多数のコポリマーもまた、本明細書において利用される放出制限剤を調製するのに有用である。
【0110】
ある特定の実施形態では、放出制限剤は、崩壊剤および/または溶解促進剤としての役割も果たし得る。複数の実施形態では、崩壊剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)であり、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)およびポリビニルピロリドン架橋材料(PVP-CLM)といったその架橋誘導体を含む。他の実施形態では、ポリビニルアルコール(PVA)または架橋ポリビニルアルコール(PVA)も用いられ得る。好ましくは、崩壊剤は、約1,000~2,000,000の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(例えば、KOLLIDON(登録商標)12 PF、KOLLIDON(登録商標)17 PF、KOLLIDON(登録商標)25 PF、KOLLIDON(登録商標)30、KOLLIDON(登録商標)90;BASF社)、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(例えばKOLLIDON(登録商標)VA 64;BASF社)、架橋ポリビニルピロリドン(例えばKOLLIDON(登録商標)CL;BASF社)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、デンプン(誘導体)、デキストリンおよびデキストラン、例えば、α-、β-およびγ-シクロデキストリン、ジメチル-βシクロデキストリンならびに2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど、ステロール(例えばコレステロール)または胆汁酸(例えばコール酸またはリトコール酸)から選択される。
【0111】
一部の実施形態では、薬物リザーバ層は、粘着剤マトリックス薬物リザーバの重量に対して少なくとも約5~30重量%の1種または複数種の崩壊剤を含む(部分範囲を包含する)。複数の実施形態では、粘着剤マトリックス薬物リザーバは、少なくとも約5~20%、少なくとも約5~15%、少なくとも約5~10%、少なくとも約10~30%、少なくとも約10~25%、少なくとも約10~20%、少なくとも約10~15%、少なくとも約12~18%、少なくとも約13~17%、少なくとも約15~30%、少なくとも約15~25%、または少なくとも約15~20%の1種または複数種の担体を含む(百分率はすべて重量%単位である)。他の実施形態では、粘着剤マトリックス薬物リザーバ層は、少なくとも約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、またはそれよりも多くを含む(すべてリザーバ全体の重量に対する値である)。
【0112】
ある特定の実施形態では、薬物リザーバ組成物は、任意選択で、1種または複数種の界面活性剤をさらに含有してもよい。好適な、追加的な界面活性剤の例としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびそれらの組合せが挙げられる。好適な界面活性剤の具体例が当該技術分野において公知であり、組成物およびワイプへの組み込みにとって好適なものが含まれる。組成物は、好適なことには、組成物の約0.01重量%から組成物の約2重量%の量で、1種または複数種の界面活性剤を含んでもよい。1種または複数種の界面活性剤が用いられる場合、組成物中に存在する量は、選択された特定の界面活性剤、特定の投与様式(例えば、経皮または粘膜)、および所望される効果に応じて変動することになる。
【0113】
薬物リザーバ組成物はまた、1種または複数種の追加的な乳化剤をさらに含有してもよい。例えば、天然脂肪酸、エステル、およびアルコール、ならびにそれらの誘導体、ならびにそれらの組合せが、組成物中の乳化剤として作用し得る。好適な乳化剤の他の例としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80などの非イオン性物質、リン酸DEAなどのアニオン性物質、ベヘントリモニウムメトサルフェートなどのカチオン性物質、および同類のものが挙げられる。組成物は、好適なことには、組成物の約0.01重量%から組成物の約2重量%の量で、1種または複数種の乳化剤を含んでもよい。
【0114】
本薬物リザーバ組成物は、好ましくは皮膚を刺激しない量で選択された、粘度を増加させ、保持時間を増加させる1種または複数種の薬剤を含んでもよい。粘度を増加させる好ましい薬剤としては、限定されるものではないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、カラゲナン、カーボポール、および/またはそれらの組合せが挙げられる。粘度を増加させ、保持時間を増加させるために使用される最も好ましい薬剤は、メチルセルロースまたはカーボポールである。典型的には、粘度を増加させる薬剤は、約0.1重量%から約10重量%の量で、組成物に添加される。
【0115】
様々な実施形態の組成物は、当然ながら、許容される界面活性剤、共溶媒、粘着剤、pHおよびモル浸透圧濃度を調整する薬剤などの追加的な成分を含んでもよい。
【0116】
薬物リザーバ組成物は、医薬組成物において従来見出される補助的な構成成分を、それらの技術分野において確立された様式で、かつそれらの技術分野において確立されたレベルで、追加的に含んでもよい。例えば、組成物は、併用療法のための追加的な適合性の薬学的に活性である材料、例えば、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、もしくは(+)イソプロピル2-メトキシエチル4-(2-クロロ-3-シアノ-フェニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチルピリジン-3,5-ジカルボキシレート、またはそれらの組合せから選択されるL型カルシウムチャネル遮断薬を含む、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))、リバスチグミン(EXCELON(登録商標))、ガランタミン(RAZADYNE(登録商標))、イコペジル、ピリドスチグミン、エドロホニウム、ネオスチグミン、フィゾスチグミン、フペルジンA、フェンセリン、タクリンを含有してもよい。米国特許公開第2009/0156639号を参照されたい。
【0117】
複数の実施形態では、任意選択の成分、例えば透過促進剤、ゲル化剤、エモリエント、界面活性剤、保湿剤、粘度向上剤、乳化剤のそれぞれの量は、個別に、リザーバ全体の約0.2重量%、約0.4重量%、約0.6重量%、約0.8重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%、約7.5重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、約10重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてがリザーバ層全体の重量に対する値である)を含めた、約0.1重量%から約10重量%の範囲であってもよい。
【0118】
ある特定の実施形態では、組成物は、親水性溶媒担体とともにメマンチン化合物を含む医薬組成物である。「医薬組成物」という用語は、本書では、治療的(例えば、薬学的)な効果の全体的または部分的な原因であると考えられる活性化合物として、化合物のうちの少なくとも1つまたはそれらの組合せを含み、かつ、任意選択で、少なくとも1種の薬学的に許容される非活性成分を賦形剤、担体などとしてさらに含んでもよい、任意の組成物を意味する。
【0119】
別の実施形態では、医薬組成物は、医薬品グレードであり、例えば、臨床試験および/または医学的使用のために予期される純度および稠度で配合されている。
【0120】
特に、医薬組成物は、メマンチンを含有する標準的な配合物または調製物と比較して匹敵する効力をもつ。一実施形態では、標準的な配合物は、メマンチン塩酸塩(例えば、NAMENDA)を含有する医薬組成物である。一実施形態では、医薬組成物は、標準的な配合物と比較して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、またはそれよりも高い効力を有する。したがって、医薬組成物の効力は、メマンチン塩酸塩(例えば、NAMENDA)を含有する医薬組成物と比較して、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.9、またはそれよりも高くてよい。例えば、in vitroのNMDA受容体結合アッセイまたはin vivo抗認知症活性アッセイを使用して、メマンチンを含有する医薬品調製物の効力を決定するための方法は、当該技術分野において公知である。
【0121】
一実施形態では、薬物リザーバ組成物は、乾燥組成物である。別の実施形態では、薬物リザーバ組成物は、半固体またはゲル組成物である。
【0122】
本明細書および上文に記載されているような組成物から構成される薬物リザーバは、皮膚接触用粘着剤を追加的に含む経皮送達システムにおける使用が企図される。複数の実施形態では、本明細書において企図される経皮送達システムは、対象の皮膚表面に局所的に適用されたとき、対象に活性剤、特にメマンチンを経皮送達するように構成される。一部の実施形態では、システムおよび組成物は、組成物が対象に局所的に適用されたとき、前記対象に治療有効量のメマンチンを複数日送達するように配合される。複数日送達とは、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、またはそれよりも長い、例えば2週間の期間にわたって組成物が対象の皮膚部位に適用されたとき、対象に治療有効量を提供するように層が配合されていることを意味する。治療有効量とは、組成物が、その意図される適用期間中に対象の皮膚部位に適用されたとき、例えば、適用の3日以内または7日以内に、所望される治療活性をもたらす全身的量のメマンチンをもたらすことを意味する。一部の実施形態では、組成物は、3日間の期間(すなわち、3日間;72時間)にわたって約1.0mg/日である標的投薬量の活性剤の送達をもたらす。他の実施形態では、同じ3日間の期間にわたり、活性剤の標的投薬量は、約3mg/日、約5mg/日、約8mg/日、約10mg/日、約12mg/日、約15mg/日、約20mg/日、約25mg/日、約30mg/日、またはそれよりも多くの投薬量である。関連する実施形態では、組成物は、1週間の期間(すなわち、7日間;168時間)にわたって約7.0mg/日である標的投薬量の活性剤の送達をもたらす。他の実施形態では、同じ7日間の期間にわたり、活性剤の標的投薬量は、約3mg/日、約5mg/日、約8mg/日、約10mg/日、約12mg/日、約15mg/日、約20mg/日、約25mg/日、約30mg/日、またはそれよりも多くの投薬量である。
【0123】
本開示のある特定の実施形態に従う経皮組成物は、長期間にわたって治療上十分なメマンチンの皮膚フラックスを呈する。長期間にわたって治療上十分なメマンチンのフラックスとは、着用の第1日における平均送達フラックスが最終日における一日の平均フラックスから(例えば1日目および3日目、または1日目および7日目で)一定の基準を超えてはならないように定義され得る。一定の基準は、5倍~1倍、例えば4倍~1.25倍の範囲で様々であってよく、一部の事例では、一定の基準は、3倍、または2倍、または1.5倍である。実質的にフラックスが観察される長期間は様々であってよく、一部の事例では、24時間またはそれよりも長い期間、例えば48時間またはそれよりも長い期間、例えば72時間またはそれよりも長い期間、例えば、96時間またはそれよりも長い期間、例えば120時間またはそれよりも長い期間、例えば144時間またはそれよりも長い期間、例えば168時間またはそれよりも長い期間、例えば240時間またはそれよりも長い期間である。実際のフラックスは様々であってよいが、一部の事例では、約40μg/cm2/時間またはそれよりも少ない、例えば20μg/cm2/時間またはそれよりも少ないフラックスを含む、少なくとも約1μg/cm2/時間、例えば、約4μg/cm2/時間、約5μg/cm2/時間、約6μg/cm2/時間、またはそれよりも多い皮膚透過速度が、組成物によってもたらされる。
【0124】
ある特定の態様では、治療的な皮膚フラックスは、例えば長期間(例えば、5日間またはそれよりも長い期間、例えば、7日間またはそれよりも長い期間を含め、2~10日間)にわたり、1~40μg/cm2/時間、例えば1~20μg/cm2/時間、例えば2~20μg/cm2/時間、例えば2~15μg/cm2/時間、例えば4~15μg/cm2/時間または5~15μg/cm2/時間の範囲である。一部の実施形態では、本明細書に記載されるデバイス、システム、および組成物は、少なくとも約1~10日間の期間にわたり、約1~35μg/cm2/時間、1~30μg/cm2/時間、1~25μg/cm2/時間、1~20μg/cm2/時間、1~15μg/cm2/時間、1~12μg/cm2/時間、1~10μg/cm2/時間、1~7.5μg/cm2/時間、1~5μg/cm2/時間、2~40μg/cm2/時間、2~35μg/cm2/時間,2~30μg/cm2/時間、2~25μg/cm2/時間、2~20μg/cm2/時間、2~15μg/cm2/時間、2~12μg/cm2/時間、2~10μg/cm2/時間、2~7.5μg/cm2/時間、2~5μg/cm2/時間、4~40μg/cm2/時間、4~35μg/cm2/時間、4~30μg/cm2/時間、4~25μg/cm2/時間、4~20μg/cm2/時間、4~15μg/cm2/時間、4~12μg/cm2/時間、4~10μg/cm2/時間、4~7.5μg/cm2/時間、4~5μg/cm2/時間、5~40μg/cm2/時間、5~35μg/cm2/時間、5~30μg/cm2/時間、5~25μg/cm2/時間、5~20μg/cm2/時間、5~15μg/cm2/時間、5~12μg/cm2/時間、5~10μg/cm2/時間、5~7.5μg/cm2/時間、10~40μg/cm2/時間、10~35μg/cm2/時間、10~30μg/cm2/時間、10~25μg/cm2/時間、10~20μg/cm2/時間、10~15μg/cm2/時間、10~12μg/cm2/時間、15~40μg/cm2/時間、15~35μg/cm2/時間、15~30μg/cm2/時間、15~25μg/cm2/時間、15~20μg/cm2/時間、20~40μg/cm2/時間、20~35μg/cm2/時間、20~30μg/cm2/時間、20~25μg/cm2/時間、30~40μg/cm2/時間、または30~35μg/cm2/時間の間のin vitroメマンチン皮膚フラックスをもたらす。複数の実施形態では、システムのための経皮デバイスは、約1~5日間、約2~5日間、約2~10日間、または約5~10日間の期間にわたって上記の皮膚フラックスをもたらす。複数の実施形態では、システムのための経皮デバイスは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間の期間にわたって上記の皮膚フラックスをもたらす。
【0125】
本明細書に記載される経皮組成物は、望ましいCmin/Cmaxをもたらす。Cmin/Cmaxは、着用期間(例えば3日間またはそれよりも長い期間、例えば5日間またはそれよりも長い期間、例えば7日間またはそれよりも長い期間)にわたるメマンチンの最低血漿中レベル/最大血漿中レベルを指し、着用期間にわたる局所配合物からのメマンチンの枯渇の尺度である。Cmin/Cmaxが低い場合、局所配合物が着用期間中の薬物投与を保っておらず、血中濃度が着用期間にわたって低下し続けているという結論を下すことができる。一部の事例では、局所配合物は、少なくとも約0.4、約0.5、約0.6、約0.7のCmin/Cmaxをもたらし、一部の事例では、Cmin/Cmaxは、1.0またはそれよりも低く、例えば0.8またはそれよりも低く、例えば、0.6またはそれよりも低い。
【0126】
複数の実施形態では、システムは、皮膚接触用粘着剤層をさらに含む。
【0127】
経皮デバイスおよびシステムまたはそれらの任意の層のサイズ(すなわち、面積)は、必要性および/または組成に応じて様々であってよい。ある特定の実施形態では、組成物のサイズは、所望される活性剤の経皮フラックス速度および標的投薬量の見地から選択される。例えば、経皮フラックスが40μg/cm2/時間であり、標的投薬量が12mg/日である場合、経皮組成物は、5~15cm2の範囲の面積を有し得る。または例えば、経皮フラックスが20μg/cm2/時間であり、標的投薬量が6mg/日である場合、経皮パッチは、5~15cm2の範囲の面積を有し得る。ある特定の態様では、組成物は、皮膚部位に適用されたとき、10~200cm2、例えば20~150cm2、例えば40~140cm2、例えば60cm2の範囲の皮膚面積を覆うような寸法を有する。ある特定の実施形態によれば、活性剤層の寸法は、5~75cm2、例えば15~60cm2、例えば10~50cm2、例えば20~50cm2、例えば20~40cm2、例えば35cm2の範囲である。
【0128】
組成物のメマンチン含有活性剤層は、塗工重量において様々であってよい。一部の事例では、活性剤層の塗工重量は、2.5mg/cm2~100mg/cm2、例えば2.5mg/cm2~50mg/cm2、例えば5mg/cm2~20mg/cm2、例えば7.5mg/cm2~15mg/cm2、例えば9mg/cm2~12mg/cm2の範囲の塗工重量である。活性剤層の厚みが増すと製造の困難さおよびコストが増加するが、層がより厚ければ薬物の枯渇が減り、よって着用中のフラックス減少が抑えられるため、一部の事例では、これらのパラメーターのバランスをとる塗工重量、例えば、10~90mg/cm2、例えば20~70mg/cm2、例えば25~50mg/cm2の範囲の塗工重量が用いられる。
【0129】
本開示のある特定の実施形態に従う経皮組成物の一態様は、それらに保管安定性があることである。保管安定性とは、メマンチンが著しく分解したり、喪失したり、かつ/またはその活性が著しく低減したりすることなく、組成物が長期間にわたって保管され得ることを意味する。ある特定の実施形態では、本組成物は、WHO technical Report Series No. 953(2009年)に定義されているように25℃および60%相対湿度(RH)で維持されたとき、6か月間またはそれよりも長い期間、例えば1年間またはそれよりも長い期間、例えば18か月間またはそれよりも長い期間、2年間またはそれよりも長い期間、例えば3年間またはそれよりも長い期間などにわたって安定である。場合により、約60℃で少なくとも1か月間保管した後の、組成物中のメマンチンの初期量に対する組成物中のメマンチンの量の比は、50%またはそれを超える比、60%またはそれを超える比、例えば70%またはそれを超える比、例えば80%またはそれを超える比、またはそれを上回る比、例えば90%またはそれを上回る比、95%またはそれを上回る比、98%またはそれを上回る比、例えば99%またはそれを上回る比、一部の事例では最大100%または実験誤差およびコーティングのばらつきに相当するそれを上回る比である。
【0130】
本明細書において使用される場合、「システム」という用語は、皮膚、皮膚の下の局部組織、循環系、もしくは他の部位に対して投与するための、または皮膚透過部位を介して人体を標的とする、メマンチン化合物またはその組成物を含有する、物品、装置、またはデバイスとして定義される。
【0131】
一部の事例では、経皮組成物は、単一層組成物として構成される。「単一層」とは、経皮送達デバイスが、マトリックスを含有する活性剤層を1つしか含まず、感圧性粘着剤、経皮活性剤層などの分離した別個の層を含まないことを意味する。同様に、単一層経皮送達デバイスは、感圧性粘着剤から分離した別々の活性剤リザーバ(すなわち、活性剤リザーバ)をさらに含まない。したがって、単一層経皮組成物は、下により詳細に記載するように、本方法を実践するために必要な量で経皮組成物の各構成成分を単一のマトリックスに含み得る。例えば、一部の実施形態では、目的の単一層経皮組成物は、メマンチンの単一層マトリックスおよび粘着剤を含む。一部の実施形態によれば、本開示の組成物は、バッキング、およびメマンチン含有活性剤層を含む。組成物は、剥離ライナーをさらに含んでもよい。
【0132】
一実施形態では、送達システムは、多層を含む。本明細書において使用される場合、「多層」という用語は、少なくとも第1の底層および第2の上層を有する、ポリマー、コポリマー、ポリマーのブレンド、コポリマーのブレンド、またはそれらの任意の組合せの、2つまたはそれよりも多くの層を指す。代表例として、多層状パッチは、通常は(すべての場合ではないが)膜によって他の層から分離されている、粘着剤中薬物の別の層を含有してもよい。このやり方では、1つの層によって、薬物の即時放出をもたらすことができ、別の層によって、リザーバからの薬物の制御放出をもたらすことができる。多層状パッチは、任意選択で、一時的なライナー層および恒久的なバッキングを含有してもよい。様々な層からの薬物放出速度は、薬物分子の膜透過性および拡散作用に左右される。多層状パッチの代表的な一例を、
図1Bに提供する。
【0133】
1つの例示的な薬物リザーバ層では、メマンチンHClと炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるメマンチン塩基;担体としてのオクチルドデカノールおよびグリセロールの透過促進剤;ならびに架橋ポリビニルピロリドンおよびアクリル酸/酢酸ビニルのコポリマーのポリマー性粘着剤マトリックスを含むか、またはそれらから本質的になる、マトリックスが企図される。約10~30重量%の間のメマンチンHClと約5~15重量%の間の炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるメマンチン塩基;約5~15重量%のオクチルドデカノール;約5~15重量%のグリセロール;約5~30重量%の架橋ポリビニルピロリドン;ならびに約20~50重量%のアクリレート-酢酸ビニルコポリマーを含むか、またはそれらから本質的になる粘着剤マトリックスを含む、別の例示的な薬物リザーバが企図される。さらに別の例では、約20~30重量%の間のメマンチンHClと約8~10重量%の間の炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるメマンチン塩基;約8~12重量%のオクチルドデカノール;約8~12重量%のグリセロール;約13~17重量%の架橋ポリビニルピロリドン;ならびに約30~35重量%のアクリレート-酢酸ビニルコポリマーから本質的になる薬物リザーバを含む、組成物が企図される。
【0134】
本明細書および上文に記載されているような組成物から構成される薬物リザーバは、皮膚接触用粘着剤を追加的に含む経皮送達システムにおける使用が企図される。皮膚接触用粘着剤層は、本明細書に列挙される粘着剤材料のいずれかから製作することができる。一実施形態では、皮膚接触用粘着剤は、高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを含む。一実施形態では、皮膚接触用粘着剤は、薬物リザーバ内に存在する親水性溶媒担体を除外し、一実施形態ではグリセロールを除外する。
【0135】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、C10~30高級アルコールを含む。特に、高級アルコールは、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される。
【0136】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層内の高級アルコール、例えばオクチルドデカノールの量は、粘着剤層の重量に対して、少なくとも約4重量%、例えば、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、またはそれよりも多い重量%、かつ典型的には約50%未満、約45%未満、約30%未満、約25%未満、または約20%未満、または約15%未満(すべてが粘着剤層の重量に対する値である)を含めた、少なくとも約0.5または1重量%である。特に、粘着剤層内の高級アルコールの重量%は、粘着剤層全体の約1~25重量%、5~20重量%、5%~15%、特に約8%~12%の間である。
【0137】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、それらの混合物およびコポリマーのうちの1種または複数種から選択される、1種または複数種の生体適合性ポリマーを含む。一実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリイソブチレンである。
【0138】
一実施形態では、生体適合性ポリマーは、PIB Oppanol B100(BASF、MW=1,100,000)、PIB Oppanol B12(BASF、MW=51,000、MW/MN=3.2)、およびポリブテン(PB)Indopol H1900(INEOS oligomers、MW=4500、MW/MN=1.8)を含む、PIB系マトリックスである。PIBマトリックスの構成成分間における重量比は、以下の通りである:PIB Oppanol B100:PIB Oppanol B 12:Indopol H1900=10:50:40(Brantsevaら、European Polymer Journal、76巻、228~244頁、2016年を参照されたい)。
【0139】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、生体適合性ポリマーを含み、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、約61重量%、約62重量%、約63重量%、約64重量%、約65重量%、約66重量%、約67重量%、約68重量%、約69重量%、約70重量%、約71重量%、約72重量%、約73重量%、約74重量%、約75重量%、約76重量%、約77重量%、約78重量%、約79重量%、約80重量%、約81重量%、約82重量%、約83重量%、約84重量%、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、約99重量%、約99.9、またはそれよりも多い重量%(すべてが粘着剤層の重量に対する値である)を含有する。特に、粘着剤層内の生体適合性ポリマーの重量%は、皮膚接触用粘着剤層全体の約50%~95%、特に約60%~80%の間である。一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層内の生体適合性ポリマーの量は、少なくとも約50~90%、50~85%、50~80%、50~75%、50~70%、50~65%、50~60%、50~55%、55~95%、55~90%、55~85%、55~80%、55~75%、55~70%、55~65%、55~60%、60~95%、60~90%、60~85%、60~80%、60~75%、60~70%、60~65%、65~95%、65~90%、65~85%、65~80%、65~75%、65~70%、70~95%、70~90%、70~85%、70~80%、70~75%、75~95%、75~90%、75~85%、75~80%、80~95%、80~90%、80~85%、85~95%、85~90%、または90~95%である。
【0140】
一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、任意選択で、高度に分散性のシリカ、例えば疎水性の薬物および他の疎水性成分を効果的に吸着することができる疎水性コロイド状シリカを含む。疎水性コロイド状シリカをある特定の百分率で賦形剤として使用することによって(配合物中約3%から約20%、好ましくは約5%から約10%)、マトリックスを通じた活性成分の拡散作用を、保管中に制御することができる。組成物において使用するための分散性シリカの例としては、限定されるものではないが、AEROSILの名称で販売されている、医薬製品において使用するための高純度の非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素、例えばAEROSIL(登録商標)90、AEROSIL(登録商標)130、AEROSIL(登録商標)150、AEROSIL(登録商標)200、AEROSIL(登録商標)300、AEROSIL(登録商標)380、AEROSIL(登録商標)OX50、AEROSIL(登録商標)TT600、AEROSIL(登録商標)MOX80、AEROSIL(登録商標)COK84、AEROSIL(登録商標)R202、AEROSIL(登録商標)R805、AEROSIL(登録商標)R812、AEROSIL(登録商標)812S、AEROSIL(登録商標)R972、および/もしくはAEROSIL(登録商標)R974、または任意の他の高度に分散性のシリカが挙げられ、特に、AEROSIL(登録商標)200および/またはAEROSIL(登録商標)R972を、高度に分散性のシリカとして使用することができる。
【0141】
一実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、少なくとも約3重量%、例えば約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてが粘着剤層全体の重量に対する値である)を含めた、粘着剤層の重量に対して少なくとも約1重量%を含めた、粘着剤層全体の重量に対して少なくとも約40重量%の高度に分散性のシリカを含む。
【0142】
一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、任意選択で、1種または複数種のマトリックス改質剤を含む。理論によって束縛されることを意図するものではないが、マトリックス改質剤は、粘着剤マトリックスの均質化を助長すると考えられる。親水性部分の吸着が、このプロセスに関して可能性のあるメカニズムである。したがって、ある程度水吸着剤である公知のマトリックス改質剤を使用することができる。例えば、可能性のあるマトリックス改質剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、ヒュームドシリカ、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性PVP、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、またはカオリンもしくはベントナイトなどのクレイが挙げられる。例示的な市販のヒュームドシリカ製品は、Cab-O-Sil(Cabot Corporation、Boston、Mass.)である。また、米国特許出願公開第2003/0170308号に記載されている親水性混合物、例えば、PVPとPEGの混合物、またはPVP、PEG、および水膨潤性ポリマー、例えばEUDRAGIT(登録商標)L100-55などの混合物を用いることもできる。
【0143】
複数の実施形態では、マトリックス改質剤は、少なくとも約3重量%、例えば約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、またはそれよりも多い重量%(すべてが粘着剤接触層全体の重量に対する値である)を含めた、粘着剤マトリックスの重量に対して約1~40%、約10~30%、約15~25%、約5~7%、約7~20%、または約7~25%の間の量(部分範囲を包含する)で、個別に含まれる。一部の実施形態では、マトリックス改質剤は、エチルセルロースを含まない。一部の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層内のマトリックス改質剤の量は、少なくとも約1~35%、1~30%、1~25%、1~20%、1~15%、1~10%、1~5%、5~40%、5~35%、5~30%、5~25%、5~20%、5~15%、5~10%、10~40%、10~35%、10~30%、10~35%、10~20%、10~30%、10~35%、10~25%、10~20%、10~15%、15~40%、15~35%、15~30%、15~25%、15~20%、20~40%、20~35%、20~30%、20~25%、25~40%、25~35%、25~30%、30~40%、30~35%、または35~40%である。
【0144】
一部の実施形態では、疎水性薬物(例えば、メマンチン)および他の疎水性成分が、当該技術分野において公知の技法を使用して、シリカ粒子の疎水性表面に吸着されてもよい。そのような実施形態では、疎水性コロイド状シリカは、薬物堆積のために大きい比表面積を有するとともに、疎水性薬物の強力な吸着を呈する。
【0145】
一実施形態では、粘着剤接触層は、少なくとも1種の高級アルコール、少なくとも1種の生体適合性ポリマー、および少なくとも1種のマトリックス改質剤を含む(分散性ケイ酸塩を含まない)。別の実施形態では、粘着剤接触層は、少なくとも1種の高級アルコール、少なくとも1種の生体適合性ポリマー、および分散性シリカを含む(マトリックス改質剤を含まない)。他の実施形態では、粘着剤接触層は、少なくとも1種の高級アルコール、少なくとも1種の生体適合性ポリマー、マトリックス改質剤、および分散性シリカを含有する。
【0146】
皮膚接触用粘着剤層は、少なくとも1種の透過促進剤を含んでもよく、そのような様々な促進剤は当業界で公知であり、上に記載されている。複数の実施形態では、皮膚接触用粘着剤層は、クエン酸トリエチル、ソルビタンモノラウレート、および/または乳酸ラウリルのうちの1種または複数種を透過促進剤として含む。
【0147】
皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバ粘着剤マトリックス層の一方または両方における浸透または透過促進剤は、当該技術分野において公知の多種多様なそのような化合物から選択することができる。一部の実施形態では、粘着剤マトリックスにおいて使用するための透過促進剤としては、限定されるものではないが、ラウリン酸メチル、プロピレングリコールモノラウレート、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレエート、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、および酢酸ドデシルが挙げられる。一部の実施形態では、クエン酸トリエチル、ソルビタンモノラウレート、α-ヒドロキシ酸促進剤(例えば、乳酸またはグリコール酸のエステル、すなわち乳酸ラウリル)から選択される透過促進剤が含まれてもよい。追加的な透過促進剤については、米国特許第8,874,879号に記載されており、これは参照により本明細書に援用される。本発明の組成物は、1種もしくは複数種、または少なくとも1種の透過促進剤を含んでもよいことが理解されるであろう。複数の実施形態では、浸透または透過促進剤は、粘着剤マトリックスの重量に対して約1~10%、約2~5%、約2~10%の間の量で含まれる。
【0148】
一実施形態では、製造されたばかりの皮膚接触用粘着剤層は、全身的送達を意図した薬学的活性剤を含まない。例えば、皮膚接触用粘着剤層を形成するために組み合わされる成分は、メマンチン塩基またはメマンチン塩を含まない。しかしながら、皮膚接触用粘着剤層は、経皮送達システムへと製作され、ある期間保管された場合、および/または使用中に、全身的送達を意図した薬学的活性剤を含有してよい。これは、この薬剤が、薬物リザーバ粘着剤マトリックスから皮膚接触用粘着剤層へと拡散し得るためである。
【0149】
皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバ粘着剤マトリックスの一方または両方は、当該技術分野において公知であるような、他の従来の添加剤、例えば接着薬剤、抗酸化剤、架橋剤または硬化剤、pH調節剤、顔料、染料、屈折粒子、伝導性種、抗菌剤、乳白剤、ゲル化剤、粘度調整剤または増粘剤、安定化剤、および同類のものなどをさらに含んでもよい。また、接着性を低減するまたは除く必要があるような実施形態では、従来の減粘剤を使用することもできる。また、保管中の変質を防止するため、すなわち、酵母菌およびカビなどの微生物の増殖を阻害するために、他の薬剤、例えば抗菌剤などを添加することもできる。好適な抗菌剤は、典型的には、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステルおよびプロピルエステル(すなわち、メチルパラベンおよびプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。これらの添加剤およびそれらの量については、それらが粘着剤および/または活性剤の所望される化学的特性および物理的特性に対して有意に干渉しないようなやり方で選択される。
【0150】
また、皮膚接触用粘着剤層および薬物リザーバ粘着剤マトリックスの一方または両方は、薬物、促進剤、または組成物の他の構成成分に起因する皮膚刺激および/または皮膚損傷の可能性を最小化または排除するために、刺激軽減添加剤をさらに含有してもよい。好適な刺激軽減添加剤としては、例えば:α-トコフェロール;モノアミンオキシダーゼ阻害剤、特に2-フェニル-1-エタノールなどのフェニルアルコール;グリセリン;サリチル酸およびサリチレート;アスコルビン酸およびアスコルベート;モネンシンなどのイオノフォア;両親媒性アミン;塩化アンモニウム;N-アセチルシステイン;シス-ウロカニン酸;カプサイシン;クロロキン;ならびにコルチコステロイドが挙げられる。
【0151】
薬物リザーバおよび皮膚接触用粘着剤から構成される経皮送達システムは、様々な構成を有することができ、いくつかの非限定的な例が、
図1A~1Dに描写され、記載されている。
図1Aは、速度制御膜または非速度制御材料、例えば不織ポリエステルまたはポリプロピレンで構成されるタイ層16などによって分離された、薬物リザーバ12および接触用粘着剤14から構成される、経皮送達システム10を例証している。また、バッキング層18および剥離ライナー20も存在している。
図1Bは、第1の薬物リザーバ24および第2の薬物リザーバ26から構成される、第2の実施形態の経皮送達システム22であって、第1の薬物リザーバおよび第2の薬物リザーバが、非速度制御材料、例えば不織ポリエステルまたはポリプロピレンで構成されるタイ層28などによって分離されている、経皮送達システムを例証している。接触用粘着剤層30が、使用者の皮膚に対するシステムの付着をもたらし、速度制御膜32が、第2の薬物リザーバから接触用粘着剤への、そして最終的には使用者の皮膚への治療剤の放出を制御する。また、剥離ライナー34およびバッキング層36も存在している。
図1Cは、薬物リザーバ42、および使用者の皮膚に対するシステムの付着をもたらす接触用粘着剤層44から構成される、別の実施形態の経皮送達システム40を示している。また、バッキング層46および剥離ライナー48も存在している。
【0152】
図1Dは、メマンチン塩基を全身的に送達するための経皮送達システムの別の実施形態を示す。システム50は、皮膚に面する側54から外部環境に面する側52への順に、使用者の皮膚にシステムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層56を含む。一実施形態では、製造される皮膚接触用粘着剤層は、メマンチン塩基またはメマンチン塩を含まない粘着剤配合物から製造される。皮膚接触用粘着剤層とは、中間層58が直接接触している。中間層は、例えば、不織ポリエステル材料または薬物速度制御膜、例えば微多孔質ポリエチレンまたはポリプロピレン(polyprolylene)であり得る。中間層は、皮膚に面する側(皮膚接触用粘着剤層54と接触している側)および環境に面する側という対向しあう側を有する。中間層の環境に面する側には、粘着剤マトリックス薬物リザーバ層60がある。薬物リザーバ層は、粘着剤材料、メマンチンHCl、およびアルカリ塩で製造されている。後者の2つの構成成分が薬物リザーバ層においてin situで反応してメマンチン塩基が生成され、これがシステムの皮膚への適用後に使用者に送達される。粘着剤マトリックス薬物リザーバ層60とは第1のバッキング層62が接触しており、第1のバッキング層とは粘着剤オーバーレイ64が接触している。第2のバッキング層66は、粘着剤オーバーレイおよび環境と接触している。一実施形態では、粘着剤オーバーレイ64は、2つの異なる粘着剤層、例えば、架橋ポリビニルピロリドンありまたはなしのポリイソブチレンおよびポリブテンの第1の層と、アクリル粘着剤の第2の層とで構成される。
【0153】
したがって、一実施形態では、メマンチン塩基を全身的に送達するための経皮送達システムが提供される。システムは、皮膚に面する側から外部環境への順に、使用者の皮膚にシステムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層を含み、この皮膚接触用粘着剤層は、任意選択で、メマンチン塩基またはメマンチン塩を含まない粘着剤配合物から製造されている。皮膚接触用粘着剤層とは、中間層が直接接触している。中間層の反対の表面には、(i)アクリレートコポリマー、(ii)オクチルドデカノールおよびグリセロール、ならびに(iii)メマンチンHClとアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される薬物リザーバ層がある。薬物リザーバ層とは第1のバッキング層が接触しており、任意選択で、第1のバッキング層とは粘着剤オーバーレイが接触している。任意選択の第2のバッキング層は、粘着剤オーバーレイおよび環境と接触している。
【0154】
布層、膜、またはタイ層とも呼ばれる中間層は、限定されるものではないが、ポリエステル、酢酸ビニルポリマーおよびコポリマー、ポリエチレン、ならびにそれらの組合せを含む、任意の好適な材料で形成されていてよい。一実施形態では、中間層は、Reemay(登録商標)の名称で販売されているフィルム(Kavon Filter Products Co.)などのポリエステル繊維の不織層である。複数の実施形態では、中間層は、粘着剤層からの活性剤の放出速度に影響を及ぼさない。別の実施形態では、中間層は、メマンチン塩基の速度制御膜である。例えば、速度制御膜は、微多孔質ポリプロピレンまたはポリエチレンであってよい。
【0155】
一実施形態では、中間層は、複数の細孔を含む微多孔質膜である。実施例に記載されるように調製された例示的な経皮システムにおいて、微多孔質膜における複数の細孔は、単独の溶媒または溶媒組成物を含有する。一実施形態では、微多孔質膜の細孔内の溶媒組成物は、薬物リザーバおよび接触用粘着剤の一方または両方に存在する溶媒のうちの1種または複数種から構成される。しかしながら、一実施形態では、微多孔質膜における複数の細孔は、薬物リザーバ内に存在する親水性溶媒担体を含有しない。微多孔質膜の細孔内に含有される例示的溶媒組成物は、透過促進剤および界面活性剤のうちの1つまたは複数である。例示的な溶媒としては、クエン酸トリエチルおよびオクチルドデカノールが挙げられる。例示的な実施形態は、微多孔質膜の細孔が充填されているか、もしくは部分的に充填されているか、または溶媒オクタドデカノールを含有するか、もしくは部分的に含有するものである。一実施形態では、微多孔質膜の細孔内に含有されるのは、単一溶媒のオクタドデカノールである。微多孔質膜は、その細孔に溶媒または溶媒組成物を染み込ませるか、それを充填するか、またはそれを部分的に充填するように、溶媒または溶媒組成物で前処理してもよい。微多孔質膜は、一実施形態ではポリプロピレン微多孔質膜であり、約0.001μmから約100μm、約1μmから約10μm、約0.010μmから約0.100μm、または約0.040μmから約0.050μmの範囲の平均孔径を有し得る。例えば、平均孔径は、約0.035μm、0.036μm、0.037μm、0.038μm、0.039μm、0.040μm、0.041μm、0.042μm、0.043μm、0.044μm、0.045μm、0.046μm、0.047μm、0.048μm、0.049μm、または0.050μmであってもよい。一部の実施形態では、微多孔質膜は、約0.043μmの平均孔径を有する。微多孔質膜は、一実施形態ではポリプロピレン微多孔質膜であり、約30%から約50%、約35%から約45%、または約40%から約42%の範囲の多孔度を有する。例えば、微多孔質膜は、約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または50%の多孔度を有してもよい。
【0156】
図1Dの送達システムにおける粘着剤オーバーレイは、一実施形態では、ポリイソブチレンおよびポリブテンの混合物から構成される。別の実施形態では、粘着剤オーバーレイヤは第1の層および第2の層から構成され、第1の層は、ポリイソブチレン、ポリブテン、および架橋ポリビニルピロリドンの混合物で構成され、第2の層は、アクリル粘着剤で構成される。ポリイソブチレンは、イソブチレンモノマーから構成されるビニルポリマーである。ポリブテンは、小量のイソブチレンを合わせた1-ブテンおよび2-ブテンの共重合によって調製される、粘性があり乾燥しない液体ポリマーである。一部の実施形態では、一実施形態におけるポリブテンは、約750~6000ダルトンの間、好ましくは約900~4000ダルトンの間、好ましくは約900~3000ダルトンの間の分子量を有する。一部の実施形態では、混合物は、ポリイソブチレンブレンド中のポリブテンを約40重量パーセントで含む。より一般には、ポリブテンは、ポリイソブチレンブレンド中に、20~50重量パーセントの間、または25~45重量パーセントの間の量で存在する。別の実施形態では、粘着剤オーバーレイヤは単一層であり、単一層粘着剤オーバーレイを形成するアクリレートコポリマーから構成される。例示的なアクリレートコポリマーは、DuroTak(登録商標)387-2052である。
【0157】
複数の実施形態では、経皮送達システムは、下にある粘着剤層を保持または支持するための構造要素となる少なくとも1つのバッキング層を含む。バッキング層は、当該技術分野において公知であるような任意の好適な材料で形成されていてもよい。一部の実施形態では、バッキング層は、閉塞性である。一部の実施形態では、バッキングは、好ましくは、湿分に対して不透過性または実質的に不透過性である。1つの例示的な実施形態では、バリア層は、約50g/m2・日未満の水蒸気通気率を有する。一部の実施形態では、バッキング層は、好ましくは、不活性であり、かつ/または活性剤を含めた、粘着剤層の構成成分を吸収しない。一部の実施形態では、バッキング層は、好ましくは、バッキング層を通じた粘着剤層の構成成分の放出を防止する。バッキング層は、可撓性であってもよく、または非可撓性であってもよい。バッキング層は、好ましくは、パッチが適用される皮膚の形状に対してバッキング層が少なくとも部分的に適合することができるように、少なくとも部分的に可撓性である。一部の実施形態では、バッキング層は、パッチが適用される皮膚の形状に対してバッキング層が適合するように、可撓性である。一部の実施形態では、バッキング層は、運動、例えば皮膚の運動を伴う適用部位において接触を維持するのに十分なほど可撓性である。典型的には、バッキング層のために使用される材料は、デバイスが、皮膚または他の適用部位の外形をなぞり、かつ関節または他の屈曲点などの、機械的歪みに通常供される皮膚の領域において快適に着用することができ、皮膚とデバイスとの可撓性または弾力性における差異に起因してデバイスが皮膚から脱落する可能性がほとんどないか、またはまったくないようなものであるべきである。
【0158】
一部の実施形態では、バッキング層は、フィルム、不織布、織布、積層体、およびそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、フィルムは、1種または複数種のポリマーから構成されるポリマーフィルムである。好適なポリマーは当該技術分野において公知であり、エラストマー、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、およびポリエーテルアミドが含まれる。一部の実施形態では、バッキング層は、ポリエチレンテレフタレート、様々なナイロン、ポリプロピレン、金属化ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデン、およびアルミニウム箔のうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、バッキング層は、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリエチレンのうちの1つまたは複数で形成される布である。特定の、非限定的な一実施形態では、バッキング層は、ポリエステルフィルム積層体で形成される。1つの特定のポリエステルフィルム積層体は、SCOTCHPAK(商標)#9723の名称で販売されている積層体などの、ポリエチレンおよびポリエステルの積層体である。
【0159】
複数の実施形態では、デバイスは、適用前に粘着剤層を保護するために少なくとも接触用粘着剤層と少なくとも部分的に接触している剥離ライナーを含む。剥離ライナーは、典型的には、処置部位に対してデバイスを適用する前に取り外される、使い捨ての層である。一部の実施形態では、剥離ライナーは、活性剤を含めた、粘着剤層の構成成分を吸収しないことが好ましい。一部の実施形態では、剥離ライナーは、粘着剤層の構成成分(活性剤を含む)に対して不透過性であり、粘着剤層の構成成分が剥離ライナーを通じて放出されることを防止することが好ましい。一部の実施形態では、剥離ライナーは、フィルム、不織布、織布、積層体、およびそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、剥離ライナーは、シリコーンでコーティングされたポリマーフィルムまたは紙である。一部の非限定的な実施形態では、剥離ライナーは、シリコーンでコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、フルオロカーボンフィルム、またはフルオロカーボンでコーティングされたPETフィルムである。
【0160】
デバイスおよび/または粘着剤マトリックスの厚さおよび/またはサイズは、当業者であれば、少なくとも着用性および/または必要とされる用量の検討に基づいて決定することができる。デバイスの投与部位が、その投与部位の利用可能なサイズおよび投与部位の使用(例えば、運動を支持するための可撓性の必要性)に起因して、着用性の検討に影響を及ぼすことが理解されるであろう。一部の実施形態では、デバイスおよび/または粘着剤マトリックスは、約25~500μmの間の厚さを有する。一部の実施形態では、デバイスおよび/または粘着剤マトリックスは、約50~500μmの間の厚さを有する。一部の実施形態では、パッチは、約16cm2~225cm2の範囲のサイズを有する。ここで提供される厚さおよびサイズは単なる例示であり、実際の厚さおよびまたはサイズは、特定の配合物に関する必要に応じて、より薄く/小さくても、またはより厚く/大きくてもよいことが理解されるであろう。
【0161】
本明細書で考察されるように、パッチデバイス(例えば、
図1A~1Dのパッチデバイス)は、少なくとも1つの追加的な非粘着剤ポリマー環境、例えばバッキング層をさらに含んでもよい。この層は、粘着剤ポリマー拡散環境に隣接して配設され、活性成分の皮膚への送達を助長するよう機能する。この追加的な層は、粘着剤ポリマー拡散環境または非粘着剤ポリマー拡散環境として、同じかまたは異なる組合せのポリマーを含んでもよい。
【0162】
一部の実施形態では、バッキング層は、追加的な医薬、例えば、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、もしくは(+)イソプロピル2-メトキシエチル4-(2-クロロ-3-シアノ-フェニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチルピリジン-3,5-ジカルボキシレート、またはそれらの組合せから選択されるL型カルシウムチャネル遮断薬を含む、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))、リバスチグミン(EXCELON(登録商標))、ガランタミン(RAZADYNE(登録商標))、メチルフェニデート、イコペジル、ピリドスチグミン、エドロホニウム、ネオスチグミン、フィゾスチグミン、フペルジンA、フェンセリン、タクリンなどを含む。一部の実施形態では、バッキング層は、リザーバ内に配設された医薬、例えばメマンチンの一方向性フラックスを助長するためのバリアとして機能する。別の実施形態では、バッキング層は、組織への薬物の吸収を助長する受食性ポリマーとしての役割も果たし得る。一部の実施形態では、バッキング層は、組織表面からの放散を防止する。そのような事例では、医薬の過半量、すなわち少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、またはそれよりも多くが、接触組織に向かって流れる。他の実施形態では、非粘着剤ポリマー環境で粘着剤ポリマー拡散環境の境界を取り囲むことにより、医薬が確実に標的組織に向かって流れるようにすることができる。
【0163】
バッキング層(例えば、水受食性の非粘着剤バッキング層)は、少なくとも1種の水受食性フィルム形成ポリマーをさらに含むことができる。この層は、任意選択で薬物を含んでもよい。このポリマー(単数)またはポリマー(複数)には、ポリエーテルおよび多価アルコールのほか、ヒドロキシアルキル基置換またはヒドロキシアルキル基およびアルキル基置換のいずれかを有し、好ましくは、中度から高いヒドロキシアルキル基のアルキル基に対する比を有する、水素結合セルロースポリマーが含まれ得る。例としては、限定されるものではないが、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、エチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマー、およびそれらの組合せが挙げられる。水受食性の非粘着剤バッキング層構成成分は、任意選択で架橋していてもよい。
【0164】
ある特定の実施形態では、非粘着剤バッキング層は、架橋ポリマーを含まない。一部の実施形態では、非粘着剤バッキング層は、ポリアクリル酸を含まない。何らかの特定の理論によって束縛されることを意図するものではないが、薬剤の保持時間は、前記ポリアクリル酸が存在しないことによって低減すると推定される。好ましい実施形態では、水受食性の非粘着剤バッキング層は、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含む。
【0165】
本明細書に記載される経皮デバイスは、所望される保持時間を少なくとも部分的にもたらすために用いられる成分を含み得る。一部の実施形態では、これは、より緩徐な速度のバッキング層の受食をもたらす適切なバッキング層配合物の選択の結果である。したがって、非粘着剤バッキング層は、受食性を制御するようにさらに改質されており、受食性の制御は、バッキング層フィルムを、他の医薬品剤形における使用のために認可されている、FDAに認可されたEUDRAGIT(商標)ポリマー、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの群から選択される、より疎水性のポリマーでコーティングすることにより、達成することができる。他の疎水性ポリマーを単独で使用しても、または他の疎水性もしくは親水性ポリマーと組み合わせて使用してもよい。ただし、これらのポリマーまたはポリマーの組合せに由来する層が湿潤環境において受食することを条件とする。溶解特徴は、バッキング層に含まれたときの薬物の保持時間および放出プロファイルを改変するように調整することができる。
【0166】
一部の実施形態では、経皮デバイスにおける他の追加的な層は、前述の材料のうちのいずれかを含む。ある特定の実施形態では、追加的な層、例えば支持層は、組織内のこの層の「可撓性」を改善するため、また例えば、特に高密度の汗腺を含む皮膚におけるデバイスの受侵速度を調整するために、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはグリセリンなどの可塑化剤を、小量、0~15重量%で含有してもよい。加えて、デバイスの「柔軟性」および「感触」を改善するために、ヒアルロン酸、グリコール酸、および他のアルファヒドロキシル酸などの保湿剤を添加してもよい。最後に、着色料および乳白剤を添加して、結果として得られる非粘着剤バッキング層を粘膜付着性ポリマー拡散環境と区別するのに役立ててもよい。一部の乳白剤は、二酸化チタン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウムなどを含む。
【0167】
経皮デバイスは、任意選択で、薬学的に許容される溶解速度調整剤、薬学的に許容される崩壊補助剤(例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリカルボフィル、カルボキシメチルセルロース、またはポロクサマー)、薬学的に許容される可塑剤、薬学的に許容される着色剤(例えば、FD&Cブルー1番)、薬学的に許容される乳白剤(例えば、二酸化チタン)、薬学的に許容される抗酸化剤(例えば、酢酸トコフェロール)、薬学的に許容されるシステム形成促進剤(例えば、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン)、薬学的に許容される保存剤、風味剤(例えば、サッカリンおよびペパーミント)、中和剤(例えば、水酸化ナトリウム)、緩衝剤(例えば、一塩基性または三塩基性のリン酸ナトリウム)、またはそれらの組合せのうちの1つもしくは複数を含んでもよい。好ましくは、これらの構成成分は、個別に、デバイスの最終重量の約1%以下で存在するが、その量は他の構成成分に応じて異なり得る。
【0168】
一部の実施形態では、非粘着剤ポリマー拡散環境、例えばバッキング層は、緩衝環境である。一部の実施形態では、バッキング層のpHは、5.0から9.0の間、より特定すると6.2から8.5の間、さらにより特定すると7.0から8.0の間である。一実施形態では、バッキング層のpHは約7.4である。これらの値および範囲の間のすべての値および範囲が包括されるよう意図されることを理解されたい。
【0169】
バッキング層のpHは、限定されるものではないが、緩衝剤の使用またはデバイスの組成を調整することを含む方法により、調整および/または維持することができる。一部の実施形態では、ポリマー拡散環境の特性は、その緩衝能に影響される。
【0170】
経皮送達システムの製作は当業者によって日常的に行われ、剥離ライナーなどの好適なフィルムまたは経皮送達システムの別の層に粘着剤層のそれぞれを流延または押出し、必要であれば乾燥させて溶媒および/または揮発性化合物を除去することを含む。経皮送達システムの複数の層を一緒に積層して最終的なシステムを形成することができる。
【0171】
本明細書に記載される実施形態を例証するために、経皮送達システムおよび薬物リザーバ粘着剤マトリックスを調製した。実施例1~2は、例示的な組成物および送達システムを示す。実施例1に記載されているように、経皮送達システムは、
図1Aに描写されているように、薬物リザーバ層および接触用粘着剤層を含んで調製され、速度制御膜層が、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に配置されている。固体モノリス型粘着剤リザーバの形態の薬物リザーバは、指定の溶解剤、担体、および任意選択で透過促進剤(表1)と併せてアクリル酸/酢酸ビニルコポリマー粘着剤および架橋ポリビニルピロリドン(PVP-CLM)を使用して調製されている。薬物リザーバは、in situでメマンチン塩基を生成するために、およそ25重量%のメマンチン塩酸塩および9.73重量%の炭酸水素ナトリウムを含有する。高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを含有する接触用粘着剤層を合成する。第2のバリアントでは、接触用粘着剤は、高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを分散性シリカと併せて含有した。薬物リザーバからのメマンチン塩基の拡散放出を制御するため、速度制御膜を薬物リザーバと接触用粘着剤との間に導入してもよい。
【表1】
【0172】
実施例1に記載されているように、経皮送達システムが調製され、これらは中間層によって分離されている薬物リザーバおよび皮膚接触用粘着剤層をから構成される。例示的なシステムにおける薬物リザーバは、コポリマーのアクリル酸/酢酸ビニルおよび架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON-CLM)を含む。これらの基材を、指定の担体および溶解剤、メマンチン塩酸塩、ならびに炭酸水素ナトリウム(表2)と混合する。薬物リザーバは、in situでメマンチン塩基を生成するために、およそ25重量%のメマンチン塩酸塩および9.73重量%の炭酸水素ナトリウムを含有する。皮膚接触用粘着剤層は、高級アルコールおよび生体適合性ポリマーを含有する。
【表2】
【0173】
アミン塩形態の活性剤および両性無機塩基化合物から配合された活性剤の送達を実証するために、メマンチン経皮システムを実施例2に記載のように調製した。メマンチン経皮システムは、システムからヒトの皮膚を越えて放出されるメマンチンを測定することによって、in vitroで評価した。この結果を
図2(四角)に示す。皮膚に対する経皮システムの適用から約18時間後に、約12~15μg/cm
2・時間の間の定常状態フラックス速度が達成された。このフラックス速度は、減少するまで約6.5日間にわたって定常なままであった。したがって、一実施形態では、塩基形態の活性剤を送達するための経皮送達システムが、アミン塩形態の活性剤および炭酸水素ナトリウムから調製されて、少なくとも約3日間、または5日間、または7日間(または3~7日間)の期間にわたって治療的である、皮膚フラックス速度または透過速度を提供する。一実施形態では、定常状態のin vitro皮膚フラックス速度は、少なくとも約3日間、または5日間、または7日間(または3~7日間)の期間にわたって、15%、20%、25%、または30%以内に留まる。すなわち、時間点yにおいて測定したin vitro皮膚フラックスは、より早い隣接する時間点xにおいて測定したin vitro皮膚フラックスと、15%、20%、25%、または30%未満しか異ならない(xおよびyはそれぞれ、3日間、5日間、または7日間の測定期間内の時間点である)。
【0174】
本明細書に記載される発明的な組成物、システム、および方法を例証するために、比較例も実行した。
図2は、遊離塩基形態の薬物で調製された粘着剤組成物(経皮システム)(ひし形)、アミン塩形態の薬物で調整されているが、炭酸水素ナトリウムを伴わない粘着剤組成物(丸)、または塩形態のアミン薬物および両性無機塩基化合物で調製されているが、両性無機塩基化合物のpKaがアミン塩形態の活性剤のものよりも低くなく、それよりも高い、粘着剤組成物(三角)を例証する。これらの比較例では、薬物のin vitro皮膚フラックスは、療法にとって不十分である。
【0175】
組成物を含有するキット/物品
ある特定の態様では、メマンチン化合物を担体とともに含むシステムを、任意選択で、メマンチン化合物を含むパッチまたは坐薬を配合するための説明書とともに含むキットが、本明細書に記載される。キットの構成要素、例えば、メマンチン化合物および担体を、任意選択で他の成分、例えば、ゲル化剤、エモリエント、界面活性剤、保湿剤、粘度向上剤、乳化剤などとともに、1つまたは複数の区画に含むシステム。キットは、任意選択で、CNS疾患の処置において、システムを配合するための説明書および/または構成要素を使用するための説明書を、個別あるいは一緒に含んでもよい。
【0176】
関連する実施形態では、本キットは、前述の組成物を含む物品(例えば、皮内、皮下、または経皮パッチもしくはインプラント)を含む。代わりに、キットは、個別の構成要素、例えば組成物および組成物を投与するための物品を、別々に、任意選択で構成要素の組み立ておよび/または使用に関する二次的情報とともに含んでもよい。
【0177】
一部の実施形態では、単回または複数用量の組成物が充填された送達システムが提供される。好ましくは、デバイスには、単回用量の組成物が1つ充填されている。好ましい実施形態では、医薬組成物が入っているリザーバおよびその密閉手段は滅菌可能であり、最も好ましくは、組成物と接触している送達システムの少なくとも一部は、滅菌することができる構成で構築され、組み立てられる。1つまたは複数のユニット用量を含む送達システムは、当該技術分野において周知の方法および技術を用いて、パッケージング前または後のいずれでも滅菌することができる。個別の送達システムをパッケージングし、滅菌し、輸送してもよいし、あるいは、輸送および保管パッケージ全体を同時に滅菌し、残りのユニットの滅菌性に影響を及ぼすことなくデバイスを個別に取り出して分配してもよい。
【0178】
処置の方法
他の態様では、経皮組成物、デバイス、および/またはシステムにより、少なくとも1種の活性剤を経皮投与することによって、疾患、状態、および/または障害を処置する方法が、本明細書に記載される。
【0179】
一部の実施形態では、組成物および送達システムを使用したCNS障害の療法が記載される。本明細書に記載される組合せおよび方法を使用して処置することができるCNS障害の例としては、限定されるものではないが、認知症(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、前頭側頭型認知症、血管性認知症、正常圧水頭症、ハンチントン病(HD)、および軽度認知障害(MCI))、神経関連状態、認知症関連状態、例えばてんかん、発作性障害、急性疼痛、慢性疼痛、慢性神経障害性疼痛が挙げられる。てんかん性の状態としては、複雑部分てんかん、単純部分てんかん、続発性全般てんかんを伴う部分てんかん、全般てんかん(欠神、大発作(強直間代性)、強直性、無緊張性、ミオクローヌス性、新生児、および点頭てんかんを含む)が挙げられる。追加的な特定のてんかん症候群は、若年性ミオクローヌスてんかん、レノックス・ガストー、内側側頭葉てんかん、夜間前頭葉てんかん、精神遅滞を伴う進行性てんかん、および進行性ミオクローヌスてんかんである。これらの組合せはまた、脳血管性疾患、運動ニューロン疾患(例えば、ALS、脊髄運動萎縮症、テイ・サックス病、サンドホフ病(Sandoff disease)、家族性痙性対麻痺)、神経変性疾患(例えば、家族性アルツハイマー病、プリオン関連疾患、小脳性運動失調症、フリードライヒ運動失調症、SCA、ウィルソン病、RP、ALS、副腎白質ジストロフィー、メンケス症候群(Menke's Sx)、皮質下梗塞を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、脊髄性筋萎縮症、家族性ALS、筋ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース病、神経線維腫症、フォン・ヒッペル-リンダウ、脆弱X、痙性対麻痺(spastic paraplesia)、精神障害(例えば、パニック症候群、全般性不安障害、すべての型の恐怖症候群、躁病、躁うつ病、軽躁、単極性うつ病、うつ病、ストレス障害、PTSD、身体表現性障害、人格障害、精神病、および統合失調症)、および薬物依存(例えば、アルコール、精神刺激薬(例えば、クラック、コカイン、スピード、メタンフェタミン)、オピオイド、およびニコチン)、結節性硬化症、ならびにワールデンブルグ症候群(Wardenburg syndrome))、脳卒中(例えば、血栓性、塞栓症、血栓塞栓性、出血性(hemmorhagic)、静脈収縮性、および静脈性)、運動障害(例えば、PD、ジストニア、良性本態性振戦、遅発性ジストニア、遅発性ジスキネジア、およびトゥーレット症候群)、失調性症候群、交感神経系の障害(例えば、シャイ・ドレーガー、オリーブ橋小脳変性症、線条体黒質変性(striatonigral degenration)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、ギラン・バレー、カウザルギー、複合性局所性疼痛症候群I型およびII型、糖尿病性ニューロパチー、ならびにアルコール性ニューロパチー)、脳神経障害(例えば、三叉神経障害、三叉神経痛、メニエール症候群、舌咽神経痛(glossopharangela neuralgia)、嚥下障害、発声障害、および脳神経麻痺)、ミエロパチー(myelopethies)、外傷性脳および脊髄損傷、放射線脳損傷、多発性硬化症、髄膜炎後症候群(Post-menengitis syndrome)、プリオン病、脊髄炎(myelities)、神経根炎、ニューロパチー(例えば、ギラン・バレー、タンパク異常血症と関連する糖尿病、トランスサイレチン誘発性ニューロパチー、HIVと関連するニューロパチー、ライム病と関連するニューロパチー、帯状疱疹と関連するニューロパチー、手根管症候群、足根管症候群、アミロイド誘発性ニューロパチー、らい性ニューロパチー、ベル麻痺、圧迫性ニューロパチー、サルコイドーシス誘発性ニューロパチー、多発性脳神経炎、重金属誘発性ニューロパチー、遷移金属誘発性ニューロパチー、薬物誘発性ニューロパチー)、軸索性脳傷害、脳症、ならびに慢性疲労症候群を含む障害によって引き起こされる疼痛の処置および予防にとっても有用である。本明細書に記載されるシステムおよび方法によって、上の障害のすべてを処置することができる。
【0180】
本明細書において使用される場合、「処置」、「療法」、「治療的」、および同類の用語は、病理学的状態に向けた、あらゆる一連の医学的介入を包括し、疾患の根治だけでなく、疾患の予防、制御、または疾患もしくは病徴を軽減するために採用されるステップすら包含する。例えば、アルツハイマー病などの障害を処置する方法に関して、実施形態は一般に、化合物または組成物を受容しない対象と比較して、対象における医学的状態(例えば、アルツハイマー病)の頻度を低減するか、またはその発症、症状を遅延させる化合物または組成物の投与を包含する。これには、対象の状態(例えば、精神的機能の退行)を改善または安定化するような様式で、状態の症状、臨床徴候、および根底にある病理を逆転させること、低減すること、または阻止することが含まれ得る。
【0181】
本開示の組成物は、開示される構成成分を含んでもよく、それらから本質的になってもよく、またはそれらからなってもよい。
【0182】
一実施形態では、治療的実施形態は、対象の組織、例えば皮膚組織を、経皮送達システムと接触させることによって実行される。本明細書の定義では、「接触させる」とは、活性成分を含む組成物が、試験管、フラスコ、組織培養物、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、毛細管、または同類のものにおいて、標的、例えば細胞標的を含有する試料に導入され、標的に対する組成物の結合を可能にするのに十分な温度および時間においてインキュベートされることを意味する。化合物または他の特定の結合構成成分に試料を接触させるための方法は、当業者に公知であり、実行されるアッセイプロトコールの種類に応じて選択され得る。インキュベーション方法も標準的であり、当業者に公知である。別の実施形態では、「接触させる」という用語は、使用される化合物が、CNS障害、例えばアルツハイマー病または認知症、ならびに他の関連疾患および状態の処置のために患者または対象に導入され、化合物が患者または対象とin vivoで接触することができることを意味する。
【0183】
別の実施形態では、治療的実施形態は、対象、例えばアルツハイマー病および/または認知症などのCNS障害を患っている患者に対して組成物およびキットを投与することによって実行される。「投与する」という用語は、例えば、薬物が例えば経皮的に受容され、その意図した目的を実行するのに有効であるような様式でそのような薬物を配置することによって、治療法として適用することを意味する。
【0184】
治療化合物の投与が疾患または障害にとって有効な治療レジメンである「対象」または「患者」は、好ましくはヒトであるが、治験、またはスクリーニング、または活性実験の文脈における実験動物を含む、任意の動物であってもよい。したがって、当業者であれば容易に理解することができるように、方法、化合物、および組成物は、任意の動物、特に哺乳動物であって、決して限定されるものではないが、ヒト、飼育動物、例えばネコ科またはイヌ科対象など、家畜、例えば限定されるものではないがウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、およびブタ対象など、野生動物(野生であるかまたは動物園にいるかにかかわらず)、例えば獣医学的な医学的使用のための研究動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなど、鳥類の種、例えばニワトリ、シチメンチョウ、鳴禽類などを含む動物への投与に特に適している。
【0185】
本明細書において使用される「治療有効量」という用語は、無毒性であるが所望される治療効果をもたらすのに十分である活性剤の量を指す。「有効」である量は、個体の年齢および全般的状態、特定の活性剤、ならびに当業者に公知である同類のものに応じて、対象毎に異なるであろう。
【0186】
組合せによる対象の処置は、当該技術分野において公知の方法を使用して監視することができる。例えば、Forchettiら、「Treating Patients with Moderate to Severe Alzheimer's Disease: Implications of Recent Pharmacologic Studies」、Prim Care Companion J Clin Psychiatry、7巻(4号):155~161頁、2005年(PMID:16163398)を参照されたい。組成物を使用する処置の有効性は、好ましくは、対象の症状を定量的方法で調査することによって、例えば、有害な症状、挙動、もしくは攻撃の頻度における低下、または症状の持続的悪化に要する時間の増加に注目することによって評価される。処置が成功した場合、対象の状態は改善している(すなわち、再発の頻度が低下しているか、または持続的な進行までの時間が増加している)。「処置する」という用語は、本明細書において、例えばアルツハイマー病などの障害を処置する方法に関して使用され、一般に、化合物または組成物を受容しない対象と比較して、対象における医学的状態(例えば、アルツハイマー病)の頻度を低減するか、またはその発症、症状を遅延させる化合物または組成物の投与を包含する。これには、対象の状態(例えば、精神的機能の退行)を改善または安定化するような様式で、状態の症状、臨床徴候、および根底にある病理を逆転させること、低減すること、または阻止することが含まれ得る。
【0187】
本明細書に記載される例示的な組成物および経皮送達システム(経皮デバイスまたはデバイスとも呼ばれる)に基づき、メマンチンで好適な状態を処置するための方法が提供される。複数の実施形態では、認知障害または疾患の症状を処置し、その進行を遅延させ、その発症を遅延させ、その進行を遅らせ、それを予防し、その寛解および改善をもたらすのに有用である、メマンチンを含む組成物およびデバイスが、本明細書において提供される。複数の実施形態では、限定されるものではないが、思考、記憶、話すスキルを維持すること、および認知障害または疾患の1つまたは複数の行動症状を管理または緩和することのうちの少なくとも1つを含む、精神機能を維持するための、メマンチンを含む組成物およびデバイスが、提供される。複数の実施形態では、認知障害は、アルツハイマー病である。特定の実施形態では、認知障害は、アルツハイマー型認知症である。複数の実施形態では、軽度、中等度、または重度のアルツハイマー病の処置などにおいて使用するための、メマンチンを含む組成物およびデバイスが、提供される。
【0188】
アルツハイマー病およびその症状の処置
アルツハイマー病は、老年認知症の最も一般的な原因であり、コリン作動性ニューロンの変性に関連する認知欠損により特徴付けられる。アルツハイマー病は、65歳を超える人々の6~8%、および85歳を超える人々の約30%に影響を及ぼし(Sozioら、Neurophsychiatric Disease and Treatment、2012年、8巻:361~368頁)、認知機能および行動能力の喪失を伴う。アルツハイマー病の原因は未だ完全には分かっていない。アルツハイマー病は、アセチルコリン(Ach)を含むいくつかの脳内神経伝達物質の低いレベルに関連付けられるため、現在の処置は、コリンエステラーゼ阻害剤を投与することを含む。コリンエステラーゼ阻害剤は、コリンエステラーゼおよび/またはブチリルコリンエステラーゼを阻害することによりシナプス間隙におけるアセチルコリンの加水分解を低減させ、これによりアセチルコリンレベルが上昇し、結果として神経伝達が改善する(同上)。
【0189】
本明細書に記載される経皮デバイスは、長期の使用および/または活性剤の継続投与のために設計することができる。FDAは、2mg、5mg、7mg、10mg、14mg、21mg、および28mgのメマンチン用量を認可している。経皮デバイス当たりの活性剤の総用量は、デバイスのサイズおよび粘着剤マトリックス内の活性剤の装填量によって決定されることが理解されるであろう。ある実施形態では、活性剤は、遊離塩基形態のメマンチンである。塩形態(例えばメマンチン塩酸塩)と比較して、より低い薬物装填量のメマンチン塩基が有効である場合がある。より低い薬物装填量を含んで有効性を達成することができれば、デバイスのプロファイルがより低く(より薄く)かつ/またはサイズがより小さくなり、これらはいずれも、不快感を低減させるために望ましい。一部の実施形態では、経皮デバイスの適用期間は、約1~10日間、1~7日間、1~5日間、1~2日間、3~10日間、3~7日間、3~5日間、5~10日間、および5~7日間の間(両端を含む)である。一部の実施形態では、活性剤は、適用期間にわたって、粘着剤マトリックスから継続放出および/または持続放出として放出される。
【0190】
一部の実施形態では、経皮送達システムは、併用療法のための他の薬学的に活性である材料、例えば、アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、もしくは(+)イソプロピル2-メトキシエチル4-(2-クロロ-3-シアノ-フェニル)-1,4-ジヒドロ-2,6-ジメチルピリジン-3,5-ジカルボキシレート、またはそれらの組合せから選択されるL型カルシウムチャネル遮断薬を含む、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))、リバスチグミン(EXCELON(登録商標))、ガランタミン(RAZADYNE(登録商標))、メチルフェニデート、イコペジル、ピリドスチグミン、エドロホニウム、ネオスチグミン、フィゾスチグミン、フペルジンA、フェンセリン、タクリンとともに投与されてもよい。FDAは、次の一日投薬量を認可している:(a)ドネペジル:5mg、10mg、および23mg;(b)リバスチグミン:1.5mg、2.0mg、3.0mg、4.5mg、4.6mg、6.0mg、9.0mg、9.5mg、および13.3mg;(c)メチルフェニデート:2.5mg、5mg、10mg、15mg、18mg、20mg、27mg、30mg、36mg、40mg、50mg、54mg、および60mg;(d)ガランタミン:4mg、8mg、12mg、4mg/mL、16mg、24mg;(e)ピリドスチグミン:5mg/mL、180mg、60mg、60mg/5mL;(f)エドロホニウム:10mg/mL;(g)ネオスチグミン/フィゾスチグミン:0.5~2.0mg(静脈内;腹腔内);(h)L型カルシウムチャネル遮断薬、例えば、イスラジピン:5~20mg/日。
【0191】
対象に対してメマンチン塩基を経皮的に送達するための方法が提供される。この方法では、経皮送達システムが皮膚に適用され、対象の皮膚に対して経皮送達システムを適用すると、メマンチン塩基の経皮送達が起こって、治療剤の経口投与と生物学的に同等である、薬剤(または代謝物)の全身的血中濃度がもたらされる。下で考察されるように、生物学的同等性は、(a)経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間が、0.80から1.25の間にあること、または(b)経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、AUCおよびCmaxの比の90%信頼区間が、0.80から1.25の間にあることによって確立される。
【0192】
in vivoにおける(換言すれば、動物またはヒト対象に対して投与された場合の)ある剤形の挙動を評価するために日常的に使用される標準的薬物動態(PK)パラメーターとしては、Cmax(血漿中の薬物のピーク濃度)、Tmax(ピーク薬物濃度が達成された時間)、およびAUC(血漿中濃度対時間曲線の下の面積)が挙げられる。これらのパラメーターを決定および評価するための方法については、当該技術分野において周知である。本明細書に記載される経皮送達システムの望ましい薬物動態プロファイルには、限定されるものではないが、(1)同じ投薬量で投与された、経口送達もしくは静脈内送達形態の薬物のCmaxと生物学的に同等である、投与後に哺乳動物対象の血漿中でアッセイした場合の経皮送達形態のメマンチンのCmax、および/または(2)同じ投薬量で投与された、経口送達もしくは静脈内送達形態の薬物に関するAUCと好ましくは生物学的に同等である、投与後に哺乳動物対象の血漿中でアッセイした場合の経皮送達形態のメマンチンに関するAUC、および/または(3)同じ投薬量で投与された、経口送達もしくは静脈内送達形態の薬物に関するTmaxの約80~125%以内である、投与後に哺乳動物対象の血漿中でアッセイした場合の経皮送達形態のメマンチンに関するTmaxが含まれる。好ましくは、経皮送達システムは、前述の文章中の特色(1)、(2)、および/または(3)のうちの2つまたはそれよりも多くの組合せを有するPKプロファイルを呈する。あるいは、経皮送達システムは、特色(1)および/または(2)を有するPKプロファイルを呈する。
【0193】
医薬品開発の分野では、「生物学的同等性」という用語は、当業者であれば容易に理解および認識するであろう。様々な規制当局が、2種の薬物製品が生物学的に同等であるか否かを評価するための厳格な判定基準および試験を有している。これらの判定基準および試験は、医薬品業界全体で一般に使用されており、生物学的同等性の評価は、1つの製品の特徴および性能を別の製品のものと比較する薬物開発プログラムにおいては、標準形式の活動として認識されている。実際、ある特定の種類の製品(例えば、FDAの「略式新薬承認申請」手順の下で評価されたもの)を販売する認可を得ようとする場合、次の開発段階にある製品が基準製品と生物学的に同等であることを示すことは、必要条件である。
【0194】
一実施形態では、方法は、特に米国食品医薬品局および対応する欧州規制機関(EMEA)が提供するCmaxおよびAUCのガイドラインによって定義されているように、絶食状態の対象に対してメマンチン塩基を含む経皮送達システムを準備することおよび/またはそれを投与することは、同様に絶食状態の対象に対する薬剤の(塩基または塩形態の)経口投与または静脈内投与と生物学的に同等であることを包括する。米国FDAおよび欧州のEMEAのガイドラインの下では、2種の製品または方法は、AUCおよびCmaxに関する90%信頼区間(CI)が、0.80から1.25の間にある場合に、生物学的に同等である(Tmaxの測定値は、規制目的に関して、生物学的同等性とは関連性がない)。欧州のEMEAは、以前は異なる標準を使用しており、そこでは0.80から1.25の間にある、AUCに関する90% CI、および0.70から1.43の間にある、Cmaxに関する90% CIが必要とされていた。CmaxおよびAUCを決定するための方法については、当該技術分野において周知である。
【0195】
したがって、一実施形態では、対象に対してメマンチン塩基を送達するための方法が提供される。この方法は、メマンチンから構成される経皮送達システムを準備すること、および対象の皮膚に対して経皮送達システムを投与することまたはそれを投与するように指示することを含む。方法は、治療剤の経口投与と生物学的に同等である、定常状態におけるメマンチンの経皮送達を達成し、ここで、生物学的同等性は、(a)0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にある、経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、相対的な平均CmaxおよびAUCの90%信頼区間、または(b)0.70から1.43の間もしくは0.80から1.25の間にある、経皮送達システムから、および経口送達を介して投与される治療剤の、AUCおよびCmaxの幾何平均比の90%信頼区間によって確立される。
【実施例】
【0196】
以下の実施例は、本質的に例証的なものであり、決して限定的であることを意図するものではない。
【0197】
(実施例1)
メマンチン経皮送達システム
メマンチンを含む経皮送達システムを、以下の通りに調製する。
【0198】
薬物リザーバの調製:メマンチン塩およびアルカリ塩を、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、およびレブリン酸の混合物に溶解して、透明な溶液を形成する。1つのバリエーションでは、ヒュームドシリカ(AEROSIL(登録商標)200P)を添加し、混合物を均質化する。この均質混合物に、アクリル酸/酢酸ビニルのコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287)を添加し、混合物が均質になるまで混合する。
【0199】
この粘着剤配合物混合物を、シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートライナー上にコーティングし、60℃のWerner Mathisコーター内で8分間乾燥させて、乾燥粘着剤層を得る。
【0200】
経皮送達システムは、2枚の乾燥粘着剤層を、これら2枚の粘着剤層の間に挟まれた不織ポリエステル布とともに使用することで製作する。次いで、コーティングされたポリエチレンテレフタレートライナーを、バッキングフィルムで置き換える。
【0201】
接触用粘着剤の調製:オクチルドデカノール、架橋微粒子化ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)、および任意選択の溶媒を混合し、この混合物を均質化する。この均質化された混合物に対して、ポリイソブチレン/ポリブテン(PIB/PB)を添加し、よく混合する。ポリイソブチレン/ポリブテン粘着剤溶液は、10%の、Oppanol(登録商標)B-100として公知であるポリイソブチレン、50%の、Oppanol(登録商標)B-12として公知であるポリイソブチレン、および40%の、Indopol(登録商標)H 1900として公知であるポリブテンの混合物であった。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させる。
【0202】
積層およびダイカット:速度制御膜(CELGARD(登録商標)2400)または不織膜層(Reemay(登録商標)2250)を、薬物リザーバの粘着剤側に積層する。次いで、接触用粘着剤を、薬物リザーバで積層された速度制御膜の上に積層する。薬物リザーバ側の剥離ライナーを、バッキングフィルムで置き換えて積層する。
【0203】
次いで、この積層体から経皮送達システムをダイカットする。
【0204】
(実施例2)
炭酸水素ナトリウムを含むメマンチン塩経皮配合物
粘着剤中薬物の調製:2.0gの量のグリセリンおよび2.0gのオクチルドデカノールを、29.35gの酢酸エチルおよび1.86gのイソプロピルアルコールの混合物と混合した。溶液中で、5.0gのメマンチン塩酸塩および1.95gの炭酸水素ナトリウムを、撹拌することによって分散させた。この分散体に対して、3.0gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、Silversonミキサーホモジナイザーを使用して均質化した。この均質化された薬物/架橋ポリビニルピロリドン分散体に対して、11.99gのアクリレートコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、Werner Mathisコーターを使用することで乾燥させて、15mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0205】
接触用粘着剤の調製:2.0gの量のオクチルドデカノールを、20.67gのn-ヘプタンと混合した。この溶液に対して、4.00gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加した後、Silversonミキサーホモジナイザーを使用して混合物を均質化した。この均質化された混合物に対して、23.33gの量のポリイソブチレン/ポリブチレン(60/40)粘着剤溶液(固形分含量60%)を添加し、よく混合した。ポリイソブチレン/ポリブテン粘着剤溶液は、10%の、Oppanol(登録商標)B-100として公知であるポリイソブチレン、50%の、Oppanol(登録商標)B-12として公知であるポリイソブチレン、および40%の、Indopol(登録商標)H 1900として公知であるポリブテンの混合物であった。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0206】
積層およびダイカット:ポリプロピレン微多孔質膜(Celgard(登録商標)2400)を、粘着剤中薬物層と接触用粘着剤層との間に積層した。微多孔質膜を積層する前に、これをオクチルドデカノールでコーティングして膜の細孔を充填することにより、これを前処理した。粘着剤中薬物側の剥離ライナーを、バッキングである3M SCOTCHPAK(登録商標)1012で置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
図4には、パッチの設計が描写されている。
【0207】
In Vitro皮膚フラックスの評価:デルマトーム処理されたヒト死体皮膚を、皮膚バンクから入手し、使用の準備ができるまで凍結しておいた。解凍した後、この皮膚を60℃の水中に1~2分間入れ、表皮を真皮から慎重に分離した。表皮は、直ぐに使用したか、または後で使用するために包装し、凍結しておいた。
【0208】
In vitro皮膚フラックス研究を、0.64cm2の有効拡散面積を有するFranz型拡散セルを使用することで実施した。表皮を、拡散セルのドナー区画とレセプター区画との間に固定した。経皮送達システムを皮膚の上に置き、2つの区画を一緒にきつく締め付けた。
【0209】
レセプター区画には、0.01%のゲンタマイシンを含有する、0.01Mのリン酸緩衝液、pH=6.5を充填した。レセプター区画内の溶液は、レセプター区画内で磁気撹拌子を使用することで絶えず撹拌した。温度は、32±0.5℃に維持した。定期的な間隔を置いて、レセプター溶液から試料を抜き取り、レセプター溶液を新鮮なリン酸緩衝溶液で置き換えた。試料中の薬物含有量を、メマンチンに関してLCMSを使用することで分析した。
【0210】
フラックスプロファイル結果を
図2(四角)に示す。この実施例におけるフラックスは比較的高く、7日間にわたって比較的一定のままである。
【0211】
(実施例3)
経皮送達システムによるメマンチンのIn vivo投与
メマンチンを含む経皮送達システムを、実施例1に記載されているように調製する。ヒト対象を、経皮送達システムによって処置される群または研究の1日目および7日目に服用される7mgのメマンチン(NAMENDA(登録商標))の経口投与によって処置される群の2つに無作為化する。経皮送達システムは、皮膚に対して適用され、1週間着用された後、取り外される。経皮送達システムで処置される対象からは、血液試料を毎日採取する。経口送達したメマンチンで処置された群では、血液試料を1日目および7日目に頻度の高い時間間隔で採取し、8、10、12、および14日目にも再度採取した。処置群におけるメマンチンの平均血漿中濃度を測定する。
【0212】
多くの例示的態様および実施形態について上で考察してきたが、当業者であれば、ある特定の修正、並べ替え、追加、およびそれらの部分的組合せを認識するであろう。したがって、以下に添付される特許請求の範囲および下文にて導入される請求項は、すべてのそのような修正、並べ替え、追加、および部分的組合せを、それらの本来の趣旨および範囲内にあるものとして包含するように解釈されることが意図される。
【0213】
便宜上、本明細書、実施例、および特許請求の範囲において用いられるある特定の用語について、ここに集めてある。別途定義されない限り、本開示において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。
【0214】
別途指定されない限り、すべての百分率、部、および比は、局所用組成物の総重量に基づき、すべての測定は、約25℃において行われる。
【0215】
ある範囲に従ってまたは任意の類似する様式で特許請求することができる任意のそのような群の任意の個別のメンバー(群内の任意の部分範囲または部分範囲の組合せを含む)を、排除または除外する権利を留保することによって、本開示の全体の記載よりも少ないものを任意の理由で特許請求することができる。さらに、任意の個別の置換基、類似体、化合物、リガンド、構造、もしくはそれらの群、または特許請求される群の任意のメンバーを、排除または除外する権利を留保することによって、本開示の全体の記載よりも少ないものを任意の理由で特許請求することができる。
【0216】
本開示全体を通じて、様々な特許、特許出願、および刊行物が参照される。これらの特許、特許出願、受託情報(例えば、PUBMEDまたはPUBCHEM受託番号として特定されるもの)、および刊行物の開示は、本開示の日付時点で当該技術分野の当業者に公知の最新技術をより完全に説明するために、それら全体が参照により本開示に援用される。引用される特許、特許出願、および刊行物と、本開示との間において任意の矛盾が存在する場合、本開示が優先される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
メマンチンを全身的に送達するための経皮送達システムであって、
(a)使用者の皮膚に前記経皮送達システムを付着させるための皮膚接触用粘着剤層、
(b)前記接触用粘着剤層に直接接する中間層、
(c)前記中間層に接する薬物リザーバ層であって、(i)アクリレートコポリマー、(ii)高級アルコールである透過促進剤、(iii)親水性溶媒担体、および(iv)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基から構成される、薬物リザーバ層
を含む、
経皮送達システム。
(項目2)
前記アクリレートコポリマーが、アクリル酸/酢酸ビニルのコポリマーを含む、項目1に記載の経皮送達システム。
(項目3)
前記高級アルコールが、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される、項目2に記載の経皮送達システム。
(項目4)
前記担体が、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールからなる群から選択される、項目1から3のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
(項目5)
前記皮膚接触用粘着剤層が、透過促進剤をさらに含む、項目1から4のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
(項目6)
前記薬物リザーバが、ポリビニルピロリドン(PVP)もしくはポリビニルアルコール(PVA)、またはそれらの架橋誘導体から選択される崩壊剤を含む、項目1から5のいずれか一項に記載の経皮送達システム。
(項目7)
前記崩壊剤が、ポリビニルピロリドン架橋材料(PVP-CLM)である、項目6に記載の経皮送達システム。
(項目8)
前記中間層が、速度制御膜である微多孔質膜である、先行する項目のいずれかに記載の経皮送達システム。
(項目9)
微多孔質膜が、前記透過促進剤を含有する複数の細孔を有する微多孔質ポリプロピレンから構成される、項目8に記載の経皮送達システム。
(項目10)
前記中間層が、不織ポリエステルである、項目8に記載の経皮送達システム。
(項目11)
前記メマンチンの塩が、メマンチンのハロゲン化物塩である、先行する項目のいずれかに記載の経皮送達システム。
(項目12)
前記メマンチンのハロゲン化物塩が、メマンチン塩酸塩である、項目11に記載の経皮送達システム。
(項目13)
前記薬物リザーバ層内の前記アルカリ塩が、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、オキシル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される、先行する項目のいずれかに記載の経皮送達システム。
(項目14)
前記薬物リザーバ層内の前記アルカリ塩が、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである、項目13に記載の経皮送達システム。
(項目15)
前記皮膚接触用粘着剤層が、高級アルコール、生体適合性ポリマーまたはコポリマー、ならびにマトリックス改質剤および分散性シリカのうちの少なくとも1つを含む、先行する項目のいずれかに記載の経皮送達システム。
(項目16)
前記高級アルコールが、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される、項目15に記載の経皮送達システム。
(項目17)
前記生体適合性ポリマーが、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、それらの混合物、またはそれらのコポリマーからなる群から選択される、項目15に記載の経皮送達システム。
(項目18)
前記マトリックス改質剤が、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性PVP、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびクレイからなる群から選択される、項目15に記載の経皮送達システム。
(項目19)
(i)メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、(ii)親水性溶媒担体、および(iii)アクリレートコポリマーを含む、薬物リザーバを含む、組成物。
(項目20)
前記親水性溶媒担体が、グリセロールである、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記薬物リザーバが、透過促進剤をさらに含む、項目19または20に記載の組成物。
(項目22)
前記透過促進剤が、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される高級アルコールである、項目21に記載の組成物。
(項目23)
薬物リザーバが、架橋ポリビニルピロリドンをさらに含む、項目19から22のいずれか一項に記載の組成物。
(項目24)
前記メマンチンの塩が、メマンチン塩酸塩であり、前記アルカリ塩が、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、オキシル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムからなる群から選択される、項目19から23のいずれか一項に記載の組成物。
(項目25)
メマンチンの塩とアルカリ塩との反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、透過促進剤、親水性溶媒担体、ならびに架橋ポリビニルピロリドンおよびアクリレートポリマーを含むポリマー性の粘着剤マトリックスから本質的になる薬物リザーバを含む、組成物。
(項目26)
(a)約10~30重量%のメマンチンHClと約5~15重量%の炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、
(b)約5~15重量%のオクチルドデカノール、
(c)約5~15重量%のグリセロール、
(d)約10~30重量%の架橋ポリビニルピロリドン、ならびに
(e)約20~65重量%のアクリレートポリマー
から本質的になる薬物リザーバを含む、組成物。
(項目27)
(a)約22~27重量%のメマンチンHClと約7~12重量%の炭酸水素ナトリウムとの反応によってin situで生成されるメマンチン塩基、
(b)約8~12重量%のオクチルドデカノール、
(c)約8~12重量%のグリセロール、
(d)約13~17重量%の架橋ポリビニルピロリドン、ならびに
(e)約25~50重量%のアクリレートポリマー
から本質的になる薬物リザーバを含む、組成物。
(項目28)
(a)項目19から27のいずれか一項に記載の組成物から構成される薬物リザーバ、
(b)複数の細孔を有する速度制御膜、および
(c)皮膚接触用粘着剤
を含む、組成物。
(項目29)
前記速度制御膜が、微多孔質ポリプロピレン膜である、項目28に記載の組成物。
(項目30)
前記複数の細孔が、透過促進剤またはオクチルドデカノールを含有する、項目29に記載の組成物。
(項目31)
前記皮膚接触用粘着剤が、高級アルコールおよび生体適合性ポリマーまたはコポリマーを含む、項目28から30のいずれか一項に記載の組成物。
(項目32)
前記高級アルコールが、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される、項目31に記載の組成物。
(項目33)
前記生体適合性ポリマーが、ポリイソブチレン(PIB)、シリコーンポリマー、アクリレートコポリマー、ブチルゴム、ポリブチレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、またはそれらの混合物を含む、項目31に記載の組成物。
(項目34)
それを必要とする対象に対してメマンチンを送達するための方法であって、前記対象の組織を項目1から33のいずれか一項に記載の経皮送達システムと接触させることを含み、
それによって、前記接触させることが、前記対象に対するメマンチンの経皮送達を達成する、
方法。
(項目35)
前記組織が皮膚組織である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記対象が、CNS障害を患っているか、またはその診断を受けている、項目34または項目35に記載の方法。
(項目37)
前記CNS障害が、アルツハイマー病および血管性認知症から選択される、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記対象がヒト対象である、項目34から37のいずれか一項に記載の方法。