(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】可変音響ラウドスピーカ
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20220512BHJP
H04R 3/14 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R3/14
(21)【出願番号】P 2019510655
(86)(22)【出願日】2017-08-31
(86)【国際出願番号】 US2017049543
(87)【国際公開番号】W WO2018045133
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-28
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592051453
【氏名又は名称】ハーマン インターナショナル インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ホーバック, ウルリック
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-007297(JP,A)
【文献】特開2006-109343(JP,A)
【文献】特開2005-218092(JP,A)
【文献】特開昭58-025796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0269071(US,A1)
【文献】特開2013-012991(JP,A)
【文献】特開2008-219228(JP,A)
【文献】特開平02-239798(JP,A)
【文献】特表2006-515490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
軸の周りに円筒構成で配置され及び第1の範囲の周波数で音声を再生するように構成されている第1の配列のM個のスピーカ要素と、
前記軸の周りに円筒構成で配置され及び第2の範囲の周波数で音声を再生するように構成されている第2の配列のN個のスピーカ要素と、
デジタル信号プロセッサであって、
入力チャネルから前記第1の範囲の周波数のための第1の複数の出力チャネルを生成し、
前記軸の周りの標的角度で音声コンテンツの第1のビームを生成するべく、第1の回転マトリックスを使用して前記第1の複数の出力チャネルを前記第1の配列のスピーカ要素に適用し、
前記入力チャネルから前記第2の範囲の周波数のための第2の複数の出力チャネルを生成し、
前記軸の周りの前記標的角度で音声コンテンツの第2のビームを生成するべく、第2の回転マトリックスを使用して前記第2の複数の出力チャネルを前記第2の配列のスピーカ要素に適用するようにプログラムされる
、デジタル信号プロセッサと、
を備え
、
前記第1の回転マトリックスは前記M個のスピーカ要素のそれぞれに対する前記第1の複数の出力チャネルのそれぞれの重み付け係数を含み、前記第2の回転マトリックスは前記N個のスピーカ要素のそれぞれに対する前記第2の複数の出力チャネルのそれぞれの重み付け係数を含む、システム。
【請求項2】
前記第1の配列のヘッド要素が公式head=1+ang div
360
/Mに従って定義され、θ=ang modulo
360
/M、β=θ/(
360
/M)、α=1-
βであり、
前記ヘッド要素は、前記第1の複数の出力チャネルの第1の出力チャネルからαだけ重み付けされた出力と、前記第1の複数の出力チャネルの第2の出力チャネルからβだけ重み付けされた出力とを受信し、
前記ヘッド要素に隣接する前記第1の配列の要素は、前記第1の複数の出力チャネルの第2の出力チャネルからαだけ重み付けされた出力と、前記第1の複数の出力チャネルの第3の出力チャネルからβだけ重み付けされた出力とを受信する、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記軸の周りの新しい標的角度への前記標的角度の変化に応答して、前記デジタル信号プロセッサは、
前記第1の複数の出力チャネルを前記第1の配列のスピーカ要素に適用し、前記軸の周りの前記新しい標的角度で前記音声コンテンツの前記第1のビームを生成するべく、前記第1の回転マトリックスの前記重み付け係数を更新し、
前記第2の複数の出力チャネルを前記第2の配列のスピーカ要素に適用し、前記軸の周りの前記新しい標的角度で前記音声コンテンツの前記第2のビームを生成するべく、前記第2の回転マトリックスの前記重み付け係数を更新するようにプログラムされる、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
M及びNは正の整数であり、相互に異なる値を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の複数の異なった出力チャネルは第1のセットの有限入力応答フィルタを使用して生成され、前記第2の複数の異なった出力チャネルは第2のセットの有限入力応答フィルタを使用して生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のセットの有限入力応答フィルタは、第1のビーム幅に対応する第1のサブセットの有限入力応答フィルタと、第2のビーム幅に対応する第2のサブセットの有限入力応答フィルタとを含み、前記第2のセットの有限入力応答フィルタは、前記第1のビーム幅に対応する第3のサブセットの有限入力応答フィルタと、前記第2のビーム幅に対応する第4のサブセットの有限入力応答フィルタとを含み、
前記デジタル信号プロセッサは、前記第1のビーム幅の選択に応答して、前記第1及び第3のサブセットの有限入力応答フィルタを選択するようにプログラムされ、
前記デジタル信号プロセッサは、前記第2のビーム幅の選択に応答して、前記第2及び第4のサブセットの有限入力応答フィルタを選択するようにプログラムされる、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第1のものは前記標的角度における前記第1の配列のスピーカ要素の第1のスピーカ要素に関する第1の出力チャネルを生成するように構成され、前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第2のものは前記第1のスピーカ要素に隣接する前記第1の配列のスピーカ要素の第2及び第3のスピーカ要素に関する第2の出力チャネルを生成するように構成され、前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第3のものは前記第2及び第3のスピーカ要素に隣接する前記第1の配列のスピーカ要素の第4及び第5のスピーカ要素に関する第3の出力チャネルを生成するように構成されている、請求項
5に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第1のものは前記標的角度における前記第2の配列のスピーカ要素の第1のスピーカ要素に関する第1の出力チャネルを生成するように構成され、前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第2のものは前記第1のスピーカ要素に隣接する前記第2の配列のスピーカ要素の第2及び第3のスピーカ要素に関する第2の出力チャネルを生成するように構成され、前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第3のものは前記第2及び第3のスピーカ要素に隣接する前記第2の配列のスピーカ要素の第4及び第5のスピーカ要素に関する第3の出力チャネルを生成するように構成されている、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
方法であって、
第1の範囲の周波数に関する入力チャネルから第1の複数の出力チャネルを生成することと、
前記第1の複数の出力チャネルを、軸の周りの円筒構成に配置される第1の配列のM個のスピーカ要素に、前記軸の周りの標的角度で音声コンテンツの第1のビームを生成するための第1の回転マトリックスを使用して適用し、第1の範囲の周波数で音声を再生することと、
第2の範囲の周波数に関する前記入力チャネルから第2の複数の出力チャネルを生成すること、
前記第2の複数の出力チャネルを、前記軸の周りの円筒構成に配置される第2の配列のN個のスピーカ要素に、前記軸の周りの前記標的角度で音声コンテンツの第2のビームを生成するための第2の回転マトリックスを使用して適用
し、第2の範囲の周波数で音声を再生することと、
を含
み、
前記第1の回転マトリックスは前記M個のスピーカ要素のそれぞれに対する前記第1の複数の出力チャネルのそれぞれの重み付け係数を含み、前記第2の回転マトリックスは前記N個のスピーカ要素のそれぞれに対する前記第2の複数の出力チャネルのそれぞれの重み付け係数を含む、方法。
【請求項10】
前記第1の配列のヘッド要素が公式head=1+ang div
360
/Mに従って定義され、θ=ang modulo
360
/M、β=θ/(
360
/M)、α=1-βであり、
前記ヘッド要素は、前記第1の複数の出力チャネルの第1の出力チャネルからαだけ重み付けされた出力と、前記第1の複数の出力チャネルの第2の出力チャネルからβだけ重み付けされた出力とを受信し、
前記ヘッド要素に隣接する前記第1の配列の要素は、前記第1の複数の出力チャネルの第2の出力チャネルからαだけ重み付けされた出力と、前記第1の複数の出力チャネルの第3の出力チャネルからβだけ重み付けされた出力とを受信する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記軸の周りの新しい標的角度への前記標的角度の変化に応答して、
前記第1の複数の出力チャネルを前記スピーカ要素の前記第1の配列に適用し、前記軸の周りの前記新しい標的角度で前記音声コンテンツの前記第1のビームを生成するべく、前記第1の回転マトリックスの前記重み付け係数を更新することと、
前記第2の複数の出力チャネルを前記スピーカ要素の前記第2の配列に適用し、前記軸の周りの前記新しい標的角度で前記音声コンテンツの前記第2のビームを生成する
べく、前記第2の回転マトリックスの前記重み付け係数を更新することと、
を
行うことさらに含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
M及びNは正の整数であり、相互に異なる値を有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の複数の異なった出力チャネルは第1のセットの有限入力応答フィルタを使用して生成され、前記第2の複数の異なった出力チャネルは第2のセットの有限入力応答フィルタを使用して生成される、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のセットの有限入力応答フィルタは、第1のビーム幅に対応する第1のサブセットの有限入力応答フィルタと、第2のビーム幅に対応する第2のサブセットの有限入力応答フィルタとを含み、前記第2のセットの有限入力応答フィルタは、前記第1のビーム幅に対応する第3のサブセットの有限入力応答フィルタと、前記第2のビーム幅に対応する第4のサブセットの有限入力応答フィルタとを含み、さらに、
前記第1のビーム幅の選択に応答して、前記第1及び第3のサブセットの有限入力応答フィルタを選択することと、
前記第2のビーム幅の選択に応答して、前記第2及び第4のサブセットの有限入力応答フィルタを選択することと、
を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第1のものは前記標的角度における前記第1の配列のスピーカ要素の第1のスピーカ要素に関する第1の出力チャネルを生成するように構成され、前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第2のものは前記第1のスピーカ要素に隣接する前記第1の配列のスピーカ要素の第2及び第3のスピーカ要素に関する第2の出力チャネルを生成するように構成され、前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第3のものは前記第2及び第3のスピーカ要素に隣接する前記第1の配列のスピーカ要素の第4及び第5のスピーカ要素に関する第3の出力チャネルを生成するように構成されている、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第1のものは前記標的角度における前記第2の配列のスピーカ要素の第1のスピーカ要素に関する第1の出力チャネルを生成するように構成され、前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第2のものは前記第1のスピーカ要素に隣接する前記第2の配列のスピーカ要素の第2及び第3のスピーカ要素に関する第2の出力チャネルを生成するように構成され、前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第3のものは前記第2及び第3のスピーカ要素に隣接する前記第2の配列のスピーカ要素の第4及び第5のスピーカ要素に関する第3の出力チャネルを生成するように構成されている、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
想到される実施形態は、概して、デジタル信号処理に関し、より具体的には、係る技術に関連付けられる全ての機能及び動作を実施することに関連するシステム、ハードウェア、ソフトウェア、及びアルゴリズムの全ての態様を含む可変音響ラウドスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
周波数帯ごとに単一のドライバを採用する従来のラウドスピーカ(一般的に、2方向、最大5方向)は、ドライバサイズ、ラウドスピーカのエンクロージャの深さ、バッフル幅及び形状、ならびに交差フィルタ設計が変わる指向性パターンを表す。指向性パターンは、概して、強く周波数に依存し、制御するのが困難である。特に、垂直ロービングは、ドライバが放射波長に対して一致しないため発生し得、指向性は、中間周波数及び低周波数に向かって、かなり広くなり、したがって、意図されるように、聞き手に対してよりもむしろ、全ての部屋の方向に音エネルギーを発してしまう。通常、音響処理は、望まない反射を緩和することと、ステレオイメージングを確実にすることとのために必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つ以上の例証的実施形態では、スピーカ要素の第1の配列は、軸の周りに円筒構成で配置され、第1の範囲の周波数で音声を再生するように構成されている。スピーカ要素の第2の配列は、軸の周りに円筒構成で配置され、第2の範囲の周波数で音声を再生するように構成されている。デジタル信号プロセッサは、第1の範囲の周波数に関する入力チャネルから第1の複数の出力チャネルを生成し、第1の回転マトリックスを使用して第1の複数の出力チャネルをスピーカ要素の第1の配列に適用し、軸の周りの標的角度で音声コンテンツの第1のビームを生成し、第2の範囲の周波数に関する入力チャネルから第2の複数の出力チャネルを生成し、第2の回転マトリックスを使用して第2の複数の出力チャネルをスピーカ要素の第2の配列に適用し、軸の周りの標的角度で音声コンテンツの第2のビームを生成するようにプログラムされる。
【0004】
1つ以上の例証的実施形態では、第1の複数の出力チャネルは、第1の範囲の周波数に関する入力チャネルから生成される。第1の複数の出力チャネルは、第1の範囲の周波数を処理し、第1の回転マトリックスを使用して、軸の周りの円筒構成に配置される第1の配列のM個のスピーカ要素に適用され、軸の周りの標的角度で音声コンテンツの第1のビームを生成する。第2の複数の出力チャネルは、第2の範囲の周波数に関する入力チャネルから生成される。第2の複数の出力チャネルは、第2の範囲の周波数を処理し、第2の回転マトリックスを使用して、軸の周りの円筒構成に配置される第2の配列のN個のスピーカ要素に適用され、軸の周りの標的角度で音声コンテンツの第2のビームを生成する。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
システムであって、
軸の周りに円筒構成で配置され及び第1の範囲の周波数で音声を再生するように構成されている第1の配列のM個のスピーカ要素と、
前記軸の周りに円筒構成で配置され及び第2の範囲の周波数で音声を再生するように構成されている第2の配列のN個のスピーカ要素と、
デジタル信号プロセッサであって、
入力チャネルから前記第1の範囲の周波数のための第1の複数の出力チャネルを生成し、
前記軸の周りの標的角度で音声コンテンツの第1のビームを生成するべく、第1の回転マトリックスを使用して前記第1の複数の出力チャネルを前記第1の配列のスピーカ要素に適用し、
前記入力チャネルから前記第2の範囲の周波数のための第2の複数の出力チャネルを生成し、
前記軸の周りの前記標的角度で音声コンテンツの第2のビームを生成するべく、第2の回転マトリックスを使用して前記第2の複数の出力チャネルを前記第2の配列のスピーカ要素に適用するようにプログラムされる、前記デジタル信号プロセッサと、
を備える、前記システム。
(項目2)
前記第1の回転マトリックスは前記M個のスピーカ要素のそれぞれに対する前記第1の複数の出力チャネルのそれぞれの重み付け係数を含み、前記第2の回転マトリックスは前記N個のスピーカ要素のそれぞれに対する前記第2の複数の出力チャネルのそれぞれの重み付け係数を含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記第1の配列のヘッド要素が公式head=1+ang div 360/Mに従って定義され、θ=ang modulo 360/M、β=θ/(360/M)、α=1-βであり、
前記ヘッド要素は、前記第1の複数の出力チャネルの第1の出力チャネルからαだけ重み付けされた出力と、前記第1の複数の出力チャネルの第2の出力チャネルからβだけ重み付けされた出力とを受信し、
前記ヘッド要素に隣接する前記第1の配列の要素は、前記第1の複数の出力チャネルの第2の出力チャネルからαだけ重み付けされた出力と、前記第1の複数の出力チャネルの第3の出力チャネルからβだけ重み付けされた出力とを受信する、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記軸の周りの新しい標的角度への前記標的角度の変化に応答して、前記デジタル信号プロセッサは、
前記第1の複数の出力チャネルを前記第1の配列のスピーカ要素に適用し、前記軸の周りの前記新しい標的角度で前記音声コンテンツの前記第1のビームを生成するべく、前記第1の回転マトリックスの前記重み付け係数を更新し、
前記第2の複数の出力チャネルを前記第2の配列のスピーカ要素に適用し、前記軸の周りの前記新しい標的角度で前記音声コンテンツの前記第2のビームを生成するべく、前記第2の回転マトリックスの前記重み付け係数を更新するようにプログラムされる、項目2に記載のシステム。
(項目5)
M及びNは正の整数であり、相互に異なる値を有する、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記第1の複数の異なった出力チャネルは第1のセットの有限入力応答フィルタを使用して生成され、前記第2の複数の異なった出力チャネルは第2のセットの有限入力応答フィルタを使用して生成される、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記第1のセットの有限入力応答フィルタは、第1のビーム幅に対応する第1のサブセットの有限入力応答フィルタと、第2のビーム幅に対応する第2のサブセットの有限入力応答フィルタとを含み、前記第2のセットの有限入力応答フィルタは、前記第1のビーム幅に対応する第3のサブセットの有限入力応答フィルタと、前記第2のビーム幅に対応する第4のサブセットの有限入力応答フィルタとを含み、
前記デジタル信号プロセッサは、前記第1のビーム幅の選択に応答して、前記第1及び第3のサブセットの有限入力応答フィルタを選択するようにプログラムされ、
前記デジタル信号プロセッサは、前記第2のビーム幅の選択に応答して、前記第2及び第4のサブセットの有限入力応答フィルタを選択するようにプログラムされる、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第1のものは前記標的角度における前記第1の配列のスピーカ要素の第1のスピーカ要素に関する第1の出力チャネルを生成するように構成され、前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第2のものは前記第1のスピーカ要素に隣接する前記第1の配列のスピーカ要素の第2及び第3のスピーカ要素に関する第2の出力チャネルを生成するように構成され、前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第3のものは前記第2及び第3のスピーカ要素に隣接する前記第1の配列のスピーカ要素の第4及び第5のスピーカ要素に関する第3の出力チャネルを生成するように構成されている、項目6に記載のシステム。
(項目9)
前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第1のものは前記標的角度における前記第2の配列のスピーカ要素の第1のスピーカ要素に関する第1の出力チャネルを生成するように構成され、前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第2のものは前記第1のスピーカ要素に隣接する前記第2の配列のスピーカ要素の第2及び第3のスピーカ要素に関する第2の出力チャネルを生成するように構成され、前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第3のものは前記第2及び第3のスピーカ要素に隣接する前記第2の配列のスピーカ要素の第4及び第5のスピーカ要素に関する第3の出力チャネルを生成するように構成されている、項目8に記載のシステム。
(項目10)
方法であって、
第1の範囲の周波数に関する入力チャネルから第1の複数の出力チャネルを生成することと、
前記第1の複数の出力チャネルを、軸の周りの円筒構成に配置される第1の配列のM個のスピーカ要素に、前記軸の周りの標的角度で音声コンテンツの第1のビームを生成するための第1の回転マトリックスを使用して適用し、第1の範囲の周波数で音声を再生することと、
前記第2の範囲の周波数に関する前記入力チャネルから第2の複数の出力チャネルを生成すること、
前記第2の複数の出力チャネルを、前記軸の周りの円筒構成に配置される第2の配列のN個のスピーカ要素に、前記軸の周りの前記標的角度で音声コンテンツの第2のビームを生成するための第2の回転マトリックスを使用して適用することと、
を含む、前記方法。
(項目11)
前記第1の回転マトリックスは前記M個のスピーカ要素のそれぞれに対する前記第1の複数の出力チャネルのそれぞれの重み付け係数を含み、前記第2の回転マトリックスは前記N個のスピーカ要素のそれぞれに対する前記第2の複数の出力チャネルのそれぞれの重み付け係数を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記第1の配列のヘッド要素が公式head=1+ang div 360/Mに従って定義され、θ=ang modulo 360/M、β=θ/(360/M)、α=1-βであり、
前記ヘッド要素は、前記第1の複数の出力チャネルの第1の出力チャネルからαだけ重み付けされた出力と、前記第1の複数の出力チャネルの第2の出力チャネルからβだけ重み付けされた出力とを受信し、
前記ヘッド要素に隣接する前記第1の配列の要素は、前記第1の複数の出力チャネルの第2の出力チャネルからαだけ重み付けされた出力と、前記第1の複数の出力チャネルの第3の出力チャネルからβだけ重み付けされた出力とを受信する、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記軸の周りの新しい標的角度への前記標的角度の変化に応答して、
前記第1の複数の出力チャネルを前記スピーカ要素の前記第1の配列に適用し、前記軸の周りの前記新しい標的角度で前記音声コンテンツの前記第1のビームを生成するべく、前記第1の回転マトリックスの前記重み付け係数を更新することと、
前記第2の複数の出力チャネルを前記スピーカ要素の前記第2の配列に適用し、前記軸の周りの前記新しい標的角度で前記音声コンテンツの前記第2のビームを生成する前記第2の回転マトリックスの前記重み付け係数を更新することと、
をさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
M及びNは正の整数であり、相互に異なる値を有する、項目11に記載の方法。
(項目15)
前記第1の複数の異なった出力チャネルは第1のセットの有限入力応答フィルタを使用して生成され、前記第2の複数の異なった出力チャネルは第2のセットの有限入力応答フィルタを使用して生成される、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記第1のセットの有限入力応答フィルタは、第1のビーム幅に対応する第1のサブセットの有限入力応答フィルタと、第2のビーム幅に対応する第2のサブセットの有限入力応答フィルタとを含み、前記第2のセットの有限入力応答フィルタは、前記第1のビーム幅に対応する第3のサブセットの有限入力応答フィルタと、前記第2のビーム幅に対応する第4のサブセットの有限入力応答フィルタとを含み、さらに、
前記第1のビーム幅の選択に応答して、前記第1及び第3のサブセットの有限入力応答フィルタを選択することと、
前記第2のビーム幅の選択に応答して、前記第2及び第4のサブセットの有限入力応答フィルタを選択することと、
を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第1のものは前記標的角度における前記第1の配列のスピーカ要素の第1のスピーカ要素に関する第1の出力チャネルを生成するように構成され、前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第2のものは前記第1のスピーカ要素に隣接する前記第1の配列のスピーカ要素の第2及び第3のスピーカ要素に関する第2の出力チャネルを生成するように構成され、前記第1のセットの有限入力応答フィルタの第3のものは前記第2及び第3のスピーカ要素に隣接する前記第1の配列のスピーカ要素の第4及び第5のスピーカ要素に関する第3の出力チャネルを生成するように構成されている、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第1のものは前記標的角度における前記第2の配列のスピーカ要素の第1のスピーカ要素に関する第1の出力チャネルを生成するように構成され、前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第2のものは前記第1のスピーカ要素に隣接する前記第2の配列のスピーカ要素の第2及び第3のスピーカ要素に関する第2の出力チャネルを生成するように構成され、前記第2のセットの有限入力応答フィルタの第3のものは前記第2及び第3のスピーカ要素に隣接する前記第2の配列のスピーカ要素の第4及び第5のスピーカ要素に関する第3の出力チャネルを生成するように構成されている、項目17に記載の方法。
【0005】
1つ以上の実施形態の列挙された特徴が上記に記載された様式を詳細に理解できるように、上記で簡潔に簡略化された1つ以上の実施形態のより具体的な説明は、ある特定の実施形態を参照することによって行われ得、特定の実施形態のそれぞれは添付図で示される。しかしながら、添付図が典型的な実施形態だけを示し、ひいては、同様に他の実施形態を含む様々な実施形態の範囲に対して、任意の様式でその範囲を限定することを考慮しないことを留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】可変音響ラウドスピーカの例に関するトランスデューサの例のレイアウトを示す。
【
図3】可変音響ラウドスピーカの例に関するシステムブロック図を示す。
【
図3B】高周波ビーム形成に使用される4つの有限入力応答フィルタの例を示す。
【
図3C】12個のツイータチャネルに対する4つの高周波フィルタの出力のルーティングの例を示す。
【
図3D】標的角度に対するビームの再配向の例を示す。
【
図3E】中間周波数ビーム形成に使用される5つの有限入力応答フィルタの例を示す。
【
図3F】8個の中音域チャネルに対する5つの中間周波数フィルタの出力のルーティングの例を示す。
【
図3G】低周波数ビーム形成フィルタの信号伝達を示す。
【
図3H】角度0度に関するツイータ回転マトリックスの例を示す。
【
図3I】角度90度に関するツイータ回転マトリックスの例を示す。
【
図3J】90度~120度の角度に関するツイータ回転マトリックスの例を示す。
【
図4】可変音響ラウドスピーカの例に関する垂直交差フィルタ及び受動ツイータフィルタの例を示す。
【
図5】可変音響ラウドスピーカの例に関する交差周波数応答の例を示す。
【
図6】1つまたは2つのツイータの列を有する可変音響ラウドスピーカの例に関する垂直応答の例を示す。
【
図7】可変音響ラウドスピーカの例に関するカーディオイドウーファ機能ブロック図の例を示す。
【
図8】可変音響ラウドスピーカの例に関する2つのビーム形成の位相差の例を示す。
【
図9】可変音響ラウドスピーカの例のカーディオイドウーファセクションに関する、フィルタ振幅関数及び結果として生じる音響応答の例を示す。
【
図10】可変音響ラウドスピーカの例の円筒状エンクロージャの算出された極応答の例を示す。
【
図11】可変音響ラウドスピーカの例に関する60度及び120度の対象範囲の規定の空間フィルタの例を示す。
【
図12】可変音響ラウドスピーカの例に関する180度及び240度の対象範囲の規定の空間フィルタの例を示す。
【
図13】未加工の及び平滑化された、様々な水平角の下で測定された中音域周波数応答の例を示す。
【
図14】可変音響ラウドスピーカの例に関する、モデル化及び測定された中音域周波数応答の比較の例を示す。
【
図15】可変音響ラウドスピーカの例に関するフィルタB0~B3を伴う中音域ドライバのレイアウトの例を示す。
【
図16】可変音響ラウドスピーカの例に関する、180度の対象範囲の中音域フィルタ周波数応答及び結果として生じる水平軸外音響応答の例を示す。
【
図17】可変音響ラウドスピーカの例の中音域180度のビームに関する、正規化されたビーム形成フィルタの位相応答の例を示す。
【
図18】可変音響ラウドスピーカの例に関する、60度の対象範囲の中音域フィルタ周波数応答及び結果として生じる水平軸外音響応答の例を示す。
【
図19】可変音響ラウドスピーカの例の中音域60度のビームに関する、正規化されたビーム形成フィルタの位相応答の例を示す。
【
図20】可変音響ラウドスピーカの例に関するフィルタB0~B6を伴うツイータドライバのレイアウトの例を示す。
【
図21】可変音響ラウドスピーカの例に関する、180度の対象範囲のツイータ周波数応答及び結果として生じる水平軸外音響応答の例を示す。
【
図22】可変音響ラウドスピーカの例のツイータ180度のビームに関する、正規化されたビーム形成フィルタの位相応答の例を示す。
【
図23】可変音響ラウドスピーカの例に関する、60度の対象範囲のツイータ周波数応答及び結果として生じる水平軸外音響応答の例を示す。
【
図24】可変音響ラウドスピーカの例のツイータ60度のビームに関する、正規化されたビーム形成フィルタの位相応答の例を示す。
【
図25】可変音響ラウドスピーカの例に関する、ビーム形成、同等化、及び交差を含む、組み合わされた中音域フィルタ応答の例を示す。
【
図26】可変音響ラウドスピーカの例に関する、ビーム形成、同等化、及び交差を含む、組み合わされたツイータ応答の例を示す。
【
図27】可変音響ラウドスピーカの例に関する組み合わされたシステム音響応答の例を示す。
【
図28】可変音響ラウドスピーカの例に関する狭いビーム+/-30度に関する3次元システム放射プロットの例を示す。
【
図29】可変音響ラウドスピーカの例に関する幅広いビーム+/-60度に関する3次元システム放射プロットの例を示す。
【
図30】可変音響ラウドスピーカの例に関するビーム形成の例示的プロセスを示す。
【
図31】様々な実施形態の1つ以上の態様を実装するように構成されているコンピューティングシステムの概念的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書中に開示されるが、開示された実施形態は、様々なかつ代替の形式で具現化され得る発明の単なる例であることが理解されよう。図は必ずしも縮尺通りではなく、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張または最小化され得る。したがって、本明細書に開示される具体的な構造的及び機能的詳細は、限定するものではなく、単に当業者が本発明を様々に採用するのに教示するための代表的な基礎として解釈されたい。
【0008】
想到される実施形態は、概して、ドライバの配列を有する可変音響ラウドスピーカ(VAL)を駆動する際に使用されるデジタル信号処理に関する。いくつかの実施形態では、ドライバの配列は、音波ビームが様々に異なる方向に形作られる及び進むことを可能にする円筒形状に配置され得る。ドライバの配列は、例えば、限定することなく、ツイータ、中音スピーカ、ウーファ、及び/またはサブウーファを含み得る。多くの例が大体円筒状である一方、ドライバ配列の異なる配置または軸を使用し得ることを留意されたい。
【0009】
デジタルビーム形成フィルタは、ラウドスピーカの配列と併せて実装され得る。例えば、好ましい方向に音響エネルギーを強めることによって、ビームを形成する。ビームを選択可能な標的方向または角度に進ませることができる。左チャネル及び右チャネルの両方のビームを形成することによって及びビームを適切に指向することによって、2つのビームの交差は、イメージングに関するスイートスポットを形成し得る。ある例では、異なるビーム幅は、ユーザによって選択可能であり得、異なるスイートスポットサイズを可能にする。したがって、ドライバの配列を使用することによって、VALは、任意の部屋で(及び部屋処置なしで)働く垂直角度、水平角度、及び斜角で精密に制御可能な指向性をもたらすように設計され得る。
【0010】
VALは、空間指向性機能及びその周波数依存性の独立制御を実施し得る。本明細書に詳細に説明されるように、VALは、集束したスイートスポットと拡散音(パーティモード)との比を伴うリスニングエリアの調整可能サイズと、正確な指向性パターンを適合させることによる声及び楽器の自然音と、望まない部屋反射による拡散なしのステレオパノラマにおける音声オブジェクトの自然イメージと、音場の360度全部の球体制御と、異なるチャネルを異なるビームに割り当てることによる部屋に別個の音ゾーンを作る能力と、(側壁反射を使用する)単一のスピーカによるマルチチャネルの再生と、(例えば、40Hz~20KHzの範囲内で)サイドローブなしで、低周波数に下がるまで少なくとも20dBだけの後部エネルギーの抑制と、超指向性ビーム形成技術に起因するエンクロージャ寸法よりも大きい波長におけるコンパクトサイズのかなりスケーリング可能なビーム制御とを提供し得る。
【0011】
以前のラウドスピーカと比較すると、本開示では、反復する方法は、米国特許出願公開第2013/0058505号「Circular Loudspeaker Array With Controllable Directivity」と題されるもの(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に説明されるような空間フーリエ解析に基づく解析手法とは対照的に、測定データに基づいてビーム形成に適用される。本方法の利点は、フィルタ周波数応答にわたって、高精度、広帯域化、直接制御が挙げられ、空間内の任意の形状及び周波数を規定することができることである。加えて、ラウドスピーカは、デジタル交差フィルタを使用して円筒状ビーム形成配列を垂直アレイと組み合わせるだけによる水平制御のみとは対照的に、全球体制御を提供し得る。デジタル交差フィルタは、米国特許第7,991,170号「Loudspeaker Crossover Filter」と題されるもの(また、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に詳細に説明される。
【0012】
図1は、可変音響ラウドスピーカ102の例100を示す。第1のVAL102Aは実用試作機で示され、第2のVAL102Bは製品実現品として示される(まとめて、VAL102と称される)。VAL102の全体形状は、大体円筒状であり、トランスデューサの配列がその周りで均一に分布する。高周波ドライブ104の1つまたは2つの列(例えば、それぞれ、12ツイータ)を伴う中央ツイータセクションは、中音域の列106(例えば、6または8個のドライバ)の1つまたは2つのペアと、低周波数トランスデューサの2つのペアを使用する随意的サブウーファセクション108とが脇にあり、各々、前方及び後方に放射する。各セクション(例えば、ツイータ104のセクション、中音域106のセクション、及び低周波数108のセクション)は、専用周波数帯で個別の水平ビーム制御を提供する。垂直制御を最適な交差設計によって達成し、交差周波数の選択によって変わり得る。
【0013】
ビーム形成は、好ましい方向に音響エネルギーを指向するために使用され得る技術である。
図1に示される例等のVAL102は、音響ビーム形成を使用して、VAL102に関する音場を形成し得る。
【0014】
下記に説明されるように、プロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ/CODEC構成要素)は、ビーム形成用の信号処理を提供する。信号プロセッサに対する入力は、モノラルチャネルまたは左右のステレオチャネルを含み得る。信号プロセッサからの出力は複数のチャネルを含み得、当該出力は、ビームを各ドライバから指向するように様々なフィルタリング及び混合動作に基づくコンテンツを含む。
【0015】
ビーム形成の目的のために、周波数帯を別個に取り扱い得る。ある例では、ラウドスピーカは、別個に、高周波数、中音域周波数、及びバス周波数を扱い得る。具体的な可能性として、高周波数は12チャネルの信号プロセッサから24つのツイータに出力され得る。中音域周波数は8チャネルの信号プロセッサから8個の中音域ドライバに出力され得る。バス周波数は2つのチャネルの信号プロセッサから4つのバスドライバに出力され得る。別の例では、ラウドスピーカは、2方向であり得、高周波数及び低周波数を別個に扱い得る。
【0016】
図2は、トランスデューサの配置及び距離のさらなる詳細の例200を提供する。例200に示されるように、ツイータ配列104の中心線は中音域配列106の中心線から71ミリメートル(mm)にあり、中音域配列106の中心線は低周波数配列108の中心線から160ミリメートル(mm)にある。加えて、例200では、ツイータ配列104の直径は170mmであり、ツイータ中心間の間隔は43mmである。
【0017】
図3は、システムの制御デジタル信号プロセッサ(DSP)によって行われる処理のシステムブロック
図300を提供する。
図300に示されるように、フィルタ長を短くすために及び処理電力を節約するために、入力は1/8にサブサンプリングされるサブウーファセクションに関するサブサンプラに提供され得る。サブサンプラは、低域交差フィルタHC_LOWが後に続き、次に、各々、前方サブウーファ及び後方サブウーファを供給するビーム形成フィルタH1及びH2のペアが続く。上側及び下側トランスデューサは、概して、同じフィルタの各々の増幅器出力に並列に及びそれに接続される。
【0018】
中音域セクション及びツイータセクションは、トランスデューサの数に対応する、必要であるより大きい数のビーム形成フィルタがあることを除いて、同様に動作する。示されるように、入力は、また、1/2倍にサブサンプリングされる中音域セクションに関するサブサンプラに提供され得る。サブサンプラは、帯域通過交差フィルタHC_MIDが後に続き、次に、中音域配列106のドライバを供給するビーム形成フィルタB0...BNのセットが続く。入力は、高域通過交差フィルタHC_Hに、次に、ツイータ配列104のドライバに供給されるビーム形成フィルタB0...BMのセットに、供給される。トランスデューサのペアは、水平な対称ビームが所望される場合及びトランスデューサ許容値を無視することができる場合、同じフィルタに接続され得ることを留意されたい。
【0019】
異なる可聴周波数を選択的にフィルタリングすることによって、ビーム形成を達成する。異なるフィルタを入力チャネルに適用することによって、違った出力チャネルが生成され、円筒配列で異なるドライバに送られる。当該出力における「回転マトリックス」は、所望角度までビームを回転させるために、ビーム形成フィルタ出力を異なるトランスデューサに再割り当てすることを可能にする。例えば、ビームを再指向するために、配列のドライバに対するフィルタ出力は、単に、適切な数の位置だけシフトする。この順応性を得るために、フィルタ出力を各ドライバに直接接続する代わりに、回転マトリックスまたは混合マトリックスは、配列のドライバへの接続前にフィルタの出力を調整するために使用される。
【0020】
図3Bは高周波ビーム形成に使用される長さ256の4つの有限インパルス応答(FIR)フィルタ(F1~F4)の例300Bを示す。示されるフィルタはフィルタの4つのバンクを含み、フィルタバンクのそれぞれ1つは異なるビーム幅に対応する。4つのフィルタバンクの1つは、ビーム幅パラメータ∈{1,2,3,4}に基づいてツイータ配列に対して選択され得る。ビーム幅は下記にさらに詳細に説明される。
【0021】
図3Cは12個のツイータチャネルに対する4つの高周波フィルタの出力のルーティングの例300Cを示す。12個のツイータドライバの例は、図にあるように配列され及び番号付けられる。ビーム角は0度であり、図の下に向いている。ボックスは、この構成の各ドライバに送られるフィルタ出力を示す。この場合、ノード1はヘッドと言われる。
【0022】
その例では、0度でビームを生成するために、4つのフィルタ出力は、例300Cに示されるように、12個のチャネルに送られる。スピーカユニットは、前方に向くドライバ番号1と並んでいることが想定される。フィルタF1はドライバ#1に向かう。フィルタF2は、ドライバ#1に隣接するチャネル(ドライバ#12及び#2)に送られる。フィルタF3及びF4は、同様に対称的に送られる。
【0023】
図3Dは標的角度に対するビームの再配向300Dの例を示す。例300Dでは、ビームの再配向の角度は、前向きで反時計回りであるように示されるが、これは任意であり、他の基準を使用することもあり得る。例示的な図が当該配列の12個の等距離のドライバを含むので、当該配列の各ドライバは前のドライバから30度オフセットされる。したがって、信号30度を回転させるために、フィルタ出力は1つの位置だけシフトすることになる。ビームがn×30度だけ回転する場合、ヘッド及びフィルタマッピングはn個のノードだけ前進する。ある例では、信号を90度回転させるために、フィルタ出力は3つの位置だけシフトする。それを行うために、F1出力はツイータ#4を駆動するために回転し得、F2出力はツイータ#3及び#5を駆動するために回転し得る等が行われる(F1の出力を含有するドライバは、ヘッドドライバと称され得る)。線形補間のスキームを使用して、周囲のフィルタを混合することによって、30度の倍数ではない角度を達成する。ある例では、ドライバ間のオフセット量未満である残りの角度(この例では、30度オフセット)を算出し、ひいては、補間によって調整され得る。
【0024】
図3Eは、中間周波数ビーム形成に使用される長さ256の5つのFIR応答フィルタ(F1~F5)の例300Eを示す。高周波フィルタを用いて説明されるものと同様に、示される中間周波数フィルタはフィルタの4つのバンクを含み、フィルタバンクのそれぞれ1つは異なるビーム幅に対応する。
【0025】
図3Fは8個の中音域チャネルに対する5つの中間周波数フィルタの出力のルーティングの例300Fを示す。示されるように、8個の中音域ドライバは、図にあるように配列され及び番号付けられる。初期設定のビーム角は0度であり、図の下に向いている。ボックスは、この構成の各ドライバに送られるフィルタ出力を示す。この場合、ノード1はヘッドと言われる。例300Fは、また、角度に関する例示的な反時計回りの慣例を使用する。ここで、8個のドライバがあるので、1つのノードをシフトすることによって、45度の変化をもたらす。また、上記に説明されるようなものと同様に、線形補間によって周囲のフィルタを混合することによって、45度の倍数ではない角度を達成する。
【0026】
フィルタバンクの1つの選択に関して上記に言及されたように、VAL102は4つの異なるビームサイズをサポートする。ツイータ周波数及び中間周波数に関して、サイズ毎にフィルタの異なるセットがある。しかしながら、低音処理に関して、異なるスキームを使用する。2つの低音チャネルだけがある。一方は前方に向いている2つのウーファに送信され(ビーム#1)、他方は後方に向いている2つのウーファに送信される(ビーム#2)。固定されたままの2つの512のタップFIRフィルタがある。各チャネルの出力は線形混合によって決定され、その線形混合の係数はビーム角度及びビーム幅の関数である。
【0027】
図3Gは、(2つのバイカッドを通過した後の)各々の512のタップフィルタの伝達関数を表すH1及びH2を示す。説明されるようなアルゴリズムは、いくつかの指向性を、約85Hzを下回る可聴周波数に与えることを可能にする。数学的に考察すると、
【数1】
式中、aは、ビーム幅に応じて、0、0.15、0.3、または0.75のうちの1つであり、θは、ビーム角の度数である。
【0028】
ツイータドライバ及び中音域ドライバの円形配置は、ビームがフィルタ出力の円形シャッフルによって粗野な様式で進むことを可能にする。12個のツイータ及び8個の中音スピーカの例では、ツイータビームは、30度の増分だけ、この様式で移動することができ、中音域は45度の増分だけ移動することができる。この順応性を得るために、フィルタ出力を各ドライバに直接接続する代わりに、混合マトリックスまたは回転マトリックスを使用する。フィルタの出力とドライバへの入力との間における回転マトリクスが
図3に見られ得る。
【0029】
図3Hは0度の角度に関するツイータ回転マトリクス300Hの例を示す。
図3Cに対応するように、マトリクス300Hに見られ得るように、ドライバ1はフィルタF1から出力を受信するヘッドドライバである一方、ヘッドドライバが脇にあるドライバは、次に連続するフィルタから出力を受信する。
【0030】
図3Iは90度の角度に関するツイータ回転マトリクス300Iの例を示す。マトリクス300Iに見られ得るように、ドライバ4はフィルタF1から出力を受信するヘッドドライバである一方、ヘッドドライバが脇にあるドライバは、次に連続するフィルタから出力を受信する。
【0031】
図3Jは90度~120度の角度に関するツイータ回転マトリックス300Iの例を示す。高品質の制御を達成するために、隣接ドライバに対する「中間」角度の部分的関係に基づいて、線形補間を使用し得る。
【0032】
図3Dに戻って参照すると、ツイータビームに対して90度~120度である角度angが示される。それに応じて、残りの角度θは(ang modulo 30)として定義され得る。重み付け係数α及びβはθから定義される。数学的に説明すると、head=1+ang div 30、式中、θ=ang modulo 30、β=θ/30、及びα=1-βである。例証される例では、描写されたビーム角度に関してhead=4、式中、低インデックスはαによって重み付けられ、高インデックスはβによって重み付けられる。したがって、回転マトリクス300Iと比較すると、回転マトリクス300Jでは、1sはαに代わり、それに代わるノードエントリが0からβに変わっている。
【0033】
図4は、可変音響ラウドスピーカの例に関する垂直交差フィルタ及び受動ツイータフィルタの例400を示す。垂直ビーム制御に関して、VAR102は、
図2及び
図4に示されるようなツイータ、中音スピーカ、及びウーファの対称配列を適用することによって垂直軸外角度で大体一定の指向性を達成し得る。交差フィルタの設計のさらなる態様は、上記で言及されるような米国特許第7,991,170号で見つけられ得る。
【0034】
減衰係数aは、以下のように、垂直軸外角度αで音響応答Hに関して規定されることができる。
【数2】
式中、例えば、a=0.25、α=45°である。交差関数
【数3】
を用いると、
【数4】
式中、
【数5】
はポイントソースのペアに関するモデルであり、音響波長は
【数6】
であり、c=346m/sec(音速)であり、
【数7】
は、各々、中音スピーカとツイータペアとの間の距離をモデル化するものである。
【0035】
方程式(1)から、交差関数
【数8】
を以下のように算出することができる。
【数9】
【0036】
図5は、上記の公式を使用して設計される、
図4に示される3方向交差の例500を示す。交差フィルタは、交差伝達関数w(f)から導出されており、そのさらなる態様は、上記に言及されたような米国特許第7,991,170号で見つけられ得る。
【0037】
図6は、1つまたは2つのツイータの列を有する可変音響ラウドスピーカの例に関する垂直応答600の例を示す。トレース602が示すように、VAL102は、ツイータが引き継がれる点である、最大約3KHzまで一定の指向性だけを達成し得る。これは、
図1のVAL102Aに及び
図4に示されるように、ツイータの第2の列を第1の列の近くに追加することによって改善することができる。第2のツイータ列は、1次交差H_Lpを使用して、ローパスフィルタ信号によって供給される。
図4の概略
図404でモデル化されたように、このフィルタは、単に、直列接続及びバイパスコンデンサC(一般的に、5~10uF)で実現されることができる。トレース604は、約30mmの垂直距離で第2のツイータ列を追加することによって、一定の指向性を最大10KHzまで拡張することができることを示している。
【0038】
低周波数で水平ビーム制御に関して、エンクロージャサイズを小さく維持するために及びトランスデューサの数を制限するために、ある周波数点を上回る既定の後方減衰を伴う固定のカーディオイド状ビームパターンは、中間周波数帯及び高周波数帯でより複雑なパターンの代わりに利用され得る。
【0039】
図7は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関するカーディオイドウーファ機能ブロック
図700の例を示す。ある例では、
図7に示されるような
図2のウーファのペアは、ウーファ間の定義された距離dで、共有の密閉エンクロージャに内蔵されている。無響室内のテスト用マイクロホンは、マイクロホンH
S2に対面するウーファのトランスデューサ応答を測定し、次に、反対のウーファH
S1からの応答を測定するために使用され得る。したがって、ウーファフィルタH
1及びH
2のペアは、他方の側で音圧を最大にしながら、一方の側で音圧を最小にする目的で設計され得る。これらの条件を用いて、下式を計算する。
【数10】
【0040】
方程式(6)及び(7)から、以下のようなフィルタ伝達関数が生じる。
【数11】
【0041】
例えば、H
rear=0.05(-20dB)、H
front=1の値が設定され得る。さらに、ゲインを制限し、フィルタの前提条件を調整するために、帯域制限周波数点f
1=80Hz、f
2=300Hzが導入され得、以下のように設定され得る。
【数12】
【0042】
次に、有限インパルス応答(FIR)フィルタは、逆フーリエ変換及び時間領域ウィンドウイングによって取得されることができる。フィルタの次数は、一般的に、小さいサイズのウーファのエンクロージャ及び(80...300)Hzの帯域幅に関して1Kを下回る。
【0043】
図8は、2つのウーファフィルタ間の位相差の周波数応答800を示す。
図9は、ログ振幅の周波数応答A
1,2=20log|H
1,2|と、その下に、前方及び後方に結果として生じる音響応答とを示す。係る設計を使用して、低周波数で必要なゲインを低く及び同一に維持し、それによって、十分なダイナミックレンジを維持しながら、約100Hzを上回る20dBの減衰を達成し得る。100Hzを下回ると、全方向放射に対するスムーズな移行がある。
【0044】
中間周波数及び高周波数における水平ビーム制御に関して、音源に内蔵される角半径αの短い長方形膜を伴う半径αの長い円筒の周りの水平角φにおける遠距離場音圧Pは、(Earl.G.Williams、Fourier Acoustics、Academic Press(1999年)に説明されるように)以下のように算出されることができる。
【数13】
式中、
【数14】
左式は、第1種
【数15】
のハンケル関数の導関数である。
【数16】
は波数である。
【数17】
は、高精度に算出される項数である(1つの一般的な例では、K=30)。
【0045】
図10は、可変音響ラウドスピーカ102の例の円筒状エンクロージャの算出された極応答1000の例を示す。より具体的には、
図10は、各々、f=2KHz及びf=8KHzにおいて、半径
【数18】
のトランスデューサ及び半径
【数19】
の円筒に関して結果として生じる応答を示す。例証される例では、ビーム形成をサポートする十分な後方減衰(例えば、20dB)は超短波だけで達成し得ることを見ることができる。低周波数において、トランスデューサの配列は、本開示の範囲である最適なビーム形成フィルタとともに採用される必要がある。
【0046】
ある例では、4つのビームパターンat
1~at
4は以下のように定義され得る。
【数20】
別々の角度(α
k=[0 15 39 45 60 90 120 150 180]度、k=1~9)で、デシベル単位での減衰を規定している。当該パターンは、各々、
図11~
図12に示されるように、対象範囲の角度60度、120度、180度、240度を伴う「空間フィルタ」として解釈されることができる。
【0047】
図11は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関する60度及び120度の対象範囲の規定の空間フィルタ1100の例を示す。
図12は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関する180度及び240度の対象範囲の規定の空間フィルタ1200の例を示す。
【0048】
図13は、未加工の及び平滑化された、様々な水平角の下で測定された中音域周波数応答1300の例を示す。開示されたビーム形成フィルタ設計は、無響室で音響測定によって取り込まれるデータに基づいている。トレース1302は、15度のステップにでの角度(15度...180度)で、
図1のVAL102Aの6つの中音域トランスデューサのペアの1つに関する測定のセットを示す。下側及び上側トランスデューサはペアで接続される。1つのトランスデューサのペアを測定することによって及びソフトウェア制御ターンテーブル上のラウドスピーカを回転させることによって、結果を取得する。
【0049】
データは、特に、音源>120度の反対側(影がある側)の角度において円筒の表面上の反射に起因する強い変動を示す。当該反射は、表面上の2次的な発信源の機能を果たす隣接のトランスデューサによって生じ、音波回折を生じさせる。さらなる処理に関するデータを準備するために、平滑化アルゴリズムが適用され、平滑化アルゴリズムは、位相情報を保存しながら、データを平滑化する。はじめに、別々の複素周波数応答
【数21】
、k=1...N、大きさ
【数22】
及びアンラップ位相
【数23】
が算出され、次に、大きさ及び位相値のそれぞれは、可変長のウィンドウにわたるその平均値に代わる。
【数24】
及び
【数25】
式中、ブロック長N=2048であり、s=(1.01...1.20):平滑化の所望量に応じた係数(一般的には、s=1.1)
平滑化周波数応答を
【数26】
として再構成することができる。
【0050】
トレース1304は、平滑化後の大きさのプロットを示す。
【0051】
図14は、可変音響ラウドスピーカの例に関する、モデル化及び測定された中音域周波数応答の比較1400の例を示す。それに基づいて、方程式(12)に従って、平滑化及び測定された予測応答間で良好な一致があることを見ることができる。
【0052】
ビームフィルタは、以下のセクションで概要を説明するように、反復的に設計される。
【0053】
図15は、可変音響ラウドスピーカの例に関するフィルタB0~B3を伴う中音域ドライバのレイアウト1500の例を示す。中音域ドライバのレイアウト1500では、ひとつの前方ドライバはフィルタB0に接続され、+/-60度のドライバのペアの両方はフィルタB1によって供給され、+/-120度の別のドライバのペアはB2に接続され、後方ドライバはB3に接続される。
【0054】
以下の基本手順を少なくとも4つのドライバを伴う任意の対称ドライバレイアウトに適用し得る。空間分解能を増加させるために、任意の数のドライバペアを追加することができる。
【0055】
測定及び平滑化された複数周波数応答(14)をマトリクス形式で記載することができる。
【数27】
【0056】
周波数のインデックスはiであり、NはFFT長であり、Mは、区間[0...180]度の角度測定の数である。実際には、ツイータに関してN=512及び中音域に関してN=2048であり、15度のステップの場合、M=13が選ばれる。
【0057】
R個のドライバの配列(ここで、Rは偶数)は、0度の1つの前方ドライバと、180度の1つの後方ドライバと、角度
【数28】
に位置するドライバペア
【数29】
とを含む。目標は、ドライバペアに接続される
【数30】
個のビーム形成フィルタ
【数31】
と、後方ドライバに関する追加フィルタ
【数32】
との設計である。
【0058】
最初に、測定された周波数応答はドライバ周波数応答を消去するために、前面応答に対してゼロよりも大きい角度で正規化される。この正規化は後で、ドライバ同等化の形式で最終フィルタを設計するときに戻す。
【数33】
【0059】
以下のフィルタ設計の反復は、別個に周波数点毎に働く。周波数のインデックスは、下式を定義する利便性のために消去され得る。
【数34】
この式では、別々の角度
【数35】
で測定及び正規化された周波数応答のように定義される。
【0060】
放射相称円筒形状エンクロージャ及び同一のドライバを仮定すると、配列の周波数応答
【数36】
は、同じオフセット角度を全てのドライバに適用することによって、角度
【数37】
で算出されることができる。
【数38】
【0061】
スペクトルフィルタ値
【数39】
は、2次誤差関数を最小にすることによって、反復的に取得されることができる。
【数40】
【0062】
【数41】
は、ビーム形状またはビーム対象範囲を規定する目的関数(13)の1つであり得、例えば、
【数42】
である。その代わりに、他の目的関数が選ばれ得る、または、異なる周波数帯に関する異なる目的関数が選ばれ得る、この場合、tは周波数に依存するようになる(
【数43】
)。
【0063】
(19)のパラメータaは、選ばれた入力パラメータである。以下のように、アレイゲインを規定する。
【数44】
【0064】
これは、設計に関する目的条件の1つである。アレイゲインは、アレイが1つの単体トランスデューサと比較してどのくらい大きく再生するのかを規定する。1よりも大きくなるはずであるが、トランスデューサの数Rの合計よりも大きくなることができない。超指向性ビーム形成に必要なある程度の音キャンセルを可能にするために、アレイゲインはR未満であるが、1よりもかなり大きくなるはずである。
【0065】
Qは、角度目的点の数(例えば、方程式(13)のQ=9)。
【0066】
【数45】
は、より高精度が、特定の近似点と対別との比において要求される場合に使用されることができる重み関数である(通常、
【数46】
)。
【0067】
最適化される変数は、周波数インデックス毎に
【数47】
の複素フィルタ値であり、
【数48】
である。着目帯域の第1の周波数点で始まり(
【数49】
、例えば、
【数50】
)、開始解として
【数51】
として設定し、次にその後、最終点に到達するまで毎回、インデックスをインクリメントすることによって算出する(
【数52】
、例えば、
【数53】
)。
【0068】
実部及び虚部の代わりに、大きさ
【数54】
及び位相
【数55】
は、変数として非線形最適化ルーチンに使用されることができる。
【0069】
この有界の非線形最適化問題を標準ソフトウェア、例えば、Matlab最適化ツールボックスの一部である関数「fmincon」で解くことができる。以下の境界は
【数56】
最大許容フィルタゲインとして適用されることができ、入力パラメータ
【数57】
によって規定される、ある計算された周波数点から、計算された点の次のものまでの強度値に関する下限及び上限が求められる。
【数58】
結果として生じる周波数応答の平滑度を制御するために計算される。
【0070】
中音スピーカの例では、
図16~
図18は、
図1の例の中音域ドライバの結果を示す。中音域の例に関するパラメータは次のとおりである。
【表1-1】
【表1-2】
【0071】
図のフィルタB
1...B
3はビーム形成フィルタであるが、軸上応答B
0に対して正規化される。
【数59】
【0072】
図16は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関する、180度の対象範囲の中音域周波数応答及び結果として生じる水平軸外音響応答の例1600を示す。例1600に示されるように、かなり平滑な軸外応答を実現することができる。
【0073】
図17は、可変音響ラウドスピーカ102の中音域180度のビームに関する、正規化されたビーム形成フィルタの位相応答の例1700を示す。
図18は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関する、60度の対象範囲の中音域周波数応答及び結果として生じる水平軸外音響応答の例1800を示す。例1900は、ビーム形成フィルタ間の一般的な広域周波数依存位相オフセットを記録したものである。例1800の狭いビームにより、約20dBの後方減衰がサイドローブなしで達成されていることを裏付ける。
【0074】
図19は、可変音響ラウドスピーカ102の中音域60度のビームに関する、正規化されたビーム形成フィルタの位相応答1900の例を示す。
【0075】
図20は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関するフィルタB0~B6を伴うツイータドライバのレイアウトの例2000を示す。上述に概要が説明された基本手順から2つの逸脱がある。最初に、本システムは、合計12個のツイータの中から前方7個のものだけを使用する。後方ツイータは、ビーム回転の目的のためだけに使用される(
図3参照)。第2に、別個のフィルタは、右側(B
1...B
3)と左側(B
4...B
6)との比に関して計算される。
【0076】
図21~
図24は結果を示す。
図21は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関する、180度の対象範囲のツイータ周波数応答及び結果として生じる水平軸外音響応答の例を示す。
図22は、可変音響ラウドスピーカ102の例のツイータ180度のビームに関する、正規化されたビーム形成フィルタの位相応答2200の例を示す。
図23は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関する、60度の対象範囲のツイータ周波数応答2300及び結果として生じる水平軸外音響応答の例を示す。
図24は、例示的可変音響ラウドスピーカ102のツイータ60度のビームに関する、正規化されたビーム形成フィルタの位相応答2400の例を示す。ツイータの例に関するパラメータは次のとおりである。
【表2】
【0077】
グラフは、再度、かなり平滑に制御された指向性が可聴周波数帯全体を通して達成されることができることを示す。
【0078】
システムインテグレーション及び結果に関して、交差フィルタ、ビーム形成フィルタ、及びドライバ同等化を1つのフィルタF
rに組み合わせることができる。
【数60】
式中、
B
rは、方程式(23)に従って、正規化されたビーム形成フィルタである。
H
cは、
図3及び
図4の交差フィルタの1つである(方程式5参照)。
H
0は、ドライバの音響周波数応答である。
交差フィルタを統合する利点は、その帯域制限特性があることが挙げられる。組み合わせられたフィルタは、より安定するようになり(インパルス応答がすぐにゼロに収束する)、それによって、フィルタ長及び複雑性が減少する。
【0079】
図25は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関する、ビーム形成、同等化、及び交差を含む、組み合わされた中音域フィルタ応答2500の例を示す。
図26は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関する、ビーム形成、同等化、及び交差を含む、組み合わされたツイータ応答2600の例を示す。
【0080】
図27は、軸外に水平に0度、60度、及び120度で、
図1の可変音響ラウドスピーカの例に関する組み合わせられた音響応答2700を示す。
【0081】
図28及ぶ
図29は、+/-30度の対象範囲の狭い幅(13のat
1)及び+/-60度の対象範囲の広い幅(at
3)を伴い、
図1の可変音響ラウドスピーカの例に関する一連の十分な球体制御音響測定2800、2900を表示する。
【0082】
図30は、可変音響ラウドスピーカ102の例に関するビーム形成の例示的プロセス3000を示す。ある例では、本プロセスは、上記に説明された概念を使用して、可変音響ラウドスピーカ102によって行われ得る。3002において、可変音響ラウドスピーカ102は入力チャネルを受信する。ある例では、入力は、デジタル信号プロセッサによって処理される可変音響ラウドスピーカ102に提供され得る。いくつかの例では、入力チャネルはモノラルチャネルを含み得る一方、いくつかの例では、ステレオチャネル、またはより多くのチャネルは可変音響ラウドスピーカ102に提供され得る。
【0083】
動作3004において、可変音響ラウドスピーカ102は、第1の範囲の周波数に関する第1の複数の出力チャネルを生成する。ある例では、少なくとも
図3及び
図3Bに関して説明されるように、有限入力応答フィルタのセットは、デジタル信号プロセッサによって使用され、高周波数ビーム形成に使用される複数の出力チャネルを生成し得る。3006において、可変音響ラウドスピーカ102は、第1の回転マトリクスを使用して、標的角度で音声コンテンツの第1のビームを生成する。ある例では、少なくとも
図3、
図3C、
図3D、
図3H、
図3I、及び
図3Jに関して説明されるように、4つの高周波数フィルタの出力は、標的角度で12個のツイータチャネルに送られ得る。例えば、
図3に示されるように、3008において、可変音響ラウドスピーカ102は、音声コンテンツの第1のビームをスピーカ要素の第1の配列に適用する。ある例では、スピーカ要素の第1の配列は、
図1及び
図2に示されるように、ツイータ配列104のドライバである。
【0084】
動作3010において、可変音響ラウドスピーカ102は、第2の範囲の周波数に関する第2の複数の出力チャネルを生成する。ある例では、少なくとも
図3及び
図3Eに関して説明されるように、有限入力応答フィルタのセットは、デジタル信号プロセッサによって使用され、中間周波数ビーム形成に使用される複数の出力チャネルを生成し得る。3012において、可変音響ラウドスピーカ102は、第2の回転マトリクスを使用して、標的角度で音声コンテンツの第2のビームを生成する。ある例では、少なくとも
図3、
図3F、
図3H、
図3I、及び
図3Jに関して説明されるように、5つの中間周波数フィルタの出力は、標的角度で8個の中音域チャネルに送られ得る。例えば、
図3に示されるように、3008において、可変音響ラウドスピーカ102は、音声コンテンツの第2のビームをスピーカ要素の第2の配列に適用される。ある例では、スピーカ要素の第1の配列は、
図1及び
図2に示されるように、中音域配列106のドライバである。
【0085】
図31は、様々な実施形態の1つ以上の態様を実装するように構成されている音声システム3100の概念的ブロック図である。示されるように、音声システム3100は、コンピューティングデバイス3101と、1つ以上のスピーカ3120と、1つ以上のマイクロホン3130とを含む。コンピューティングデバイス3101は、プロセッサ3102と、入出力(I/O)デバイス3104と、メモリ3110とを含む。メモリ3110は、データベース3114と相互作用するように構成されている音声処理アプリケーション3112を含む。
【0086】
プロセッサ3102は、データを処理するように及び/またはプログラムコードを実行するように構成されている処理デバイスの任意の技術的に実現可能な形態であり得る。プロセッサ3102は、例えば、限定することなく、システムオンチップ(SoC)、中央処理装置(CPU)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を含み得る。プロセッサ3102は1つ以上の処理コアを含む。動作中、プロセッサ3102はコンピューティングデバイス3101のマスタープロセッサであり、他のシステム構成要素の動作を制御及び連携する。
【0087】
入出力デバイス3104は、入力デバイスと、出力デバイスと、入力を受信すること及び出力を提供することの両方が可能であるデバイスとを含み得る。例えば、限定することなく、入出力デバイス3104は、スピーカ(複数可)3120、マイクロホン(複数可)3130、リモートデータベース、他の音声デバイス、他のコンピューティングデバイス等にデータを送信する及び/またはそれらからデータを受信する有線または無線通信デバイスを含み得る。
【0088】
メモリ3110は、メモリモジュール、またはメモリモジュールの群を含み得る。メモリ3110の内部の音声処理アプリケーション3112は、コンピューティングデバイス3101の機能全体を実装するために、ひいては、全体として、音声システム3100の動作を連動するために、プロセッサ3102によって実行される。例えば、限定することなく、1つ以上のマイクロホン3130を介して獲得したデータは、1つ以上のスピーカ3120に伝達される音パラメータ及び/または音声信号を生成するために、音声処理アプリケーション3112によって処理され得る。音声処理アプリケーション3112によって行われる処理は、例えば、限定ではなく、フィルタリング、統計分析、ヒューリスティック処理、音響処理、及び/または他の種類のデータ処理及び分析を含み得る。
【0089】
スピーカ(複数可)3120は、コンピューティングシステム3000及び/またはコンピューティングシステム3000と関連付けられる音声デバイス(例えば、電力増幅器)から受信される1つ以上の音声信号に基づいて音声を生成するように構成されている。マイクロホン(複数可)3130は、音響データを周辺環境から獲得するように及び音響データに関連付けられる信号をコンピューティングデバイス3101に伝達するように構成されている。次に、マイクロホン(複数可)3130によって獲得された音響データは、スピーカ(複数可)3120によって再現される音声信号を判定及び/またはフィルタリングするために、コンピューティングデバイス3101によって処理され得る。様々な実施形態では、マイクロホン(複数可)3130は、例えば、限定することなく、差動マイクロホン、圧電マイクロホン、光マイクロホン等を含む音響データを獲得することが可能である任意の種類のトランスデューサを含み得る。
【0090】
概して、コンピューティングデバイス3101は、音声システム3000の動作全体を連動させるように構成されている。他の実施形態では、コンピューティングデバイス3101は、音声システム3000の他の構成要素に、結合されながらも切り離され得る。係る実施形態では、音声システム3000は、周辺環境から獲得したデータを受信する及びデータをコンピューティングデバイス3101に伝達する分離したプロセッサを含み得、コンピューティングデバイス3101は、パーソナルコンピュータ、音声ビデオ受信機、電力増幅器、スマートフォン、ポータブルメディアプレイヤー、ウェアラブルデバイス等の分離したデバイスに含まれ得る。しかしながら、本明細書に開示される実施形態は、音声システム3000の機能を実装するように構成されている任意の技術的に実現可能なシステムを想到したものである。
【0091】
様々な実施形態の説明は、例証の目的で提示されているが、包括的に、または開示される実施形態に限定されることが意図されていない。多くの修正及び変形例は、説明される実施形態の範囲及び主旨から逸脱することなく当業者には明白である。
【0092】
本実施形態の態様は、システム、方法、またはコンピュータプログラム製品として具現化され得る。従って、本開示の態様は、全体的にハードウェア実施形態、全体的にソフトウェア実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、または全て一般的に「モジュール」もしくは「システム」と称され得るソフトウェア及びハードウェア態様を組み合わせる実施形態の形態をとり得る。さらに、本開示の態様は、1つ以上のコンピュータ可読媒体(複数可)(それに具現化されるコンピュータ可読プログラムコードを有する)に具現化されるコンピュータプログラム製品の形態をとり得る。
【0093】
1つ以上のコンピュータ可読媒体(複数可)の任意の組み合わせを利用し得る。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、限定ではないが、電子、磁気、光、電磁気、赤外線、もしくは半導体のシステム、装置、もしくはデバイス、または任意の前述の好適な組み合わせであり得る。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(網羅的ではないリスト)は、1つ以上の通信回線を有する電気的接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的消去可能PROM(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、または前述の任意の好適な組み合わせを含むであろう。本文書の文脈において、「コンピュータ可読記憶媒体」は、命令実行システム、装置、またはデバイスによって使用される、またはそれらと接続するプログラムを含有または記憶することができる任意の有形媒体であり得る。
【0094】
本開示の態様は、本方法の実施形態に従った方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/またはブロック図を参照して上記に説明されている。フローチャート図及び/またはブロック図の各ブロック、及びフローチャート図及び/またはブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施され得ることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータのプロセッサ、専用コンピュータ、または機械を製造するための他のプログラム可能データ処理装置に提供され得、それにより、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行する命令は、ブロックまたは複数のブロックのフローチャート及び/またはブロック図に規定される機能/行為の実施を可能にする。係るプロセッサは、限定ではなく、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、アプリケーション特有プロセッサ、またはフィールドプログラム可能プロセッサであり得る。
【0095】
図のフローチャート及びブロック図は、本開示の様々な実施形態に従ったシステム、方法、装置、及びコンピュータプログラム製品の可能である実施態様のアーキテクチャ、機能、及び動作を示す。この点で、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、規定された論理関数(複数可)を実装するための1つ以上の実行可能命令を含むモジュール、セグメント、またはコードの一部を表し得る。また、いくつかの代替実施態様では、ブロックで留意される機能は、図で留意される順序とは違う順序で起こり得ることを留意されたい。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際に、実質的に同時に実行され得る、または、ブロックは、時々、含有される機能に応じて、逆の順序で実行され得る。また、ブロック図及び/またはフローチャート図の各ブロック、及びブロック図及び/またはフローチャート図のブロックの組み合わせは、規定の機能もしくは行為、または特殊目的ハードウェア及びコンピュータ命令の組み合わせを行う特殊目的ハードウェアベースシステムによって実施され得ることを留意される。
【0096】
例示的な実施形態が上記に説明されるが、これらの実施形態が本発明の全ての可能な形式を記載することは意図されない。むしろ、明細書で用いられた単語は限定ではなく説明のための単語であり、発明の精神及び範囲から逸脱することなく多様な変更が成され得ることが理解される。加えて、様々な実装実施形態の特徴は組み合わされて本発明のさらなる実施形態を形成し得る。